JP2007205431A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関が過回転となった場合に、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用した強制的なアップシフト操作を行う自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】動力源の回転速度の上昇率もしくは上昇率推定値を検出する上昇率検出手段とを備え、許容限界は、前記上昇率検出手段により検出された上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように設定されているので、動力源の回転速度が上昇した場合に強制アップシフトを実行することができ、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【選択図】図1
【解決手段】動力源の回転速度の上昇率もしくは上昇率推定値を検出する上昇率検出手段とを備え、許容限界は、前記上昇率検出手段により検出された上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように設定されているので、動力源の回転速度が上昇した場合に強制アップシフトを実行することができ、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車の自動変速機の制御装置に関するものである。
運転者の手動操作に基づいて変速を行う手動変速モードを備えた車両用自動変速機が提案されている。
前記自動変速機の自動変速モード選択時においては、アップシフトおよびダウンシフトは予め定められた変速線(たとえば図5参照)に基づいて行われるため、内燃機関の回転速度に対応したギヤが選択され、内燃機関が過回転することがない。一方で、手動変速モード選択時においては、運転者が手動操作によりアップシフトおよびダウンシフトを行うため、内燃機関の回転速度が上昇しているにも関わらずアップシフト操作を運転者が行わなかった結果、内燃機関が過回転となることがある。
この改善策として、トルクコンバータの速度比が大きくなる低負荷側はその速度比が小さくなる高負荷側に比較して高車速側で行われるようにすることにより、常に一定した機関回転速度において強制的なアップシフトが行われるようにする技術が提案されている(たとえば特許文献1)。
特開平9−264414号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、機関負荷のみに応じて強制的なアップシフトのタイミングを決定するため、たとえば、車両が負荷を牽引しあるいは登坂路を走行している場合等のように、エンジン負荷は高いものの機関回転速度の上昇率が低くなる場合においては、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができず、運転者の意志にかなったエンジン又は車両挙動の応答性、円滑性すなわちドライバビリティが低下する恐れがあった。
前述のように、前記自動変速機の手動変速モード選択時において、内燃機関の回転速度が上昇しているにも関わらずアップシフト操作を運転者が行わなかった結果、内燃機関が過回転となることがあるという問題と、エンジン負荷は高いものの機関回転速度の上昇率が低くなる場合等において、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用して、運転者の意志にかなったエンジン又は車両挙動の応答性、円滑性すなわちドライバビリティを低下させないという問題の両者を同時に解決する発明は存在していなかった。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたもので、その目的とするところは、前記自動変速機の手動変速モード選択時において、内燃機関が過回転となることを防ぎ、かつ、エンジン負荷は高いものの機関回転速度の上昇率が低くなる場合等において、ドライバビリティを低下させない強制的なアップシフト操作を行う自動変速機の制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨は、運転者の手動操作により変速比もしくは変速範囲を選択可能な手動切替モードを備えた自動変速機の制御装置であって、その手動切替モードが選択されている場合に前記自動変速機が接続される動力源の回転速度もしくは回転速度推定値が許容限界に達したことが判定される場合に運転者の手動操作に関わらず前記変速機の変速比を自動的に低下させる強制アップシフト手段を備えた自動変速機の制御装置において、(a) 前記動力源の回転速度の上昇率もしくは上昇率推定値を検出する上昇率検出手段とを備え、(b) 前記許容限界は、前記上昇率検出手段により検出される上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように設定されていることにある。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の自動変速機の制御装置において、(a) 前記動力源の負荷もしくは負荷推定値を検出する負荷検出手段を備え、(b) 前記許容限界は、前記上昇率検出手段により検出される上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど、かつ、前記負荷検出手段により検出された機関負荷もしくは負荷相当値が小さくなるほど大きくなるように設定することにある。
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の自動変速機の制御装置において、前記回転速度推定値は車速であるものである。
また、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の自動変速機の制御装置において、前記上昇率推定値は、車両の加速度であるものである。
請求項1に係る発明の自動変速機の制御装置によれば、運転者の手動操作により変速比もしくは変速範囲を選択可能な手動切替モードを備えた自動変速機の制御装置であって、その手動切替モードが選択されている場合に前記自動変速機が接続される動力源の回転速度もしくは回転速度推定値が許容限界に達したことが判定された場合に運転者の手動操作に関わらず前記変速機の変速比を自動的に低下させる強制アップシフト手段を備えた自動変速機の制御装置において、(a)前記動力源の回転速度の上昇率もしくは上昇率推定値を検出する上昇率検出手段とを備え、(b)前記許容限界は、前記上昇率検出手段により検出された上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように設定されているので、動力源の回転速度が上昇した場合に強制アップシフトを実行することができ、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
また、請求項2に係る発明によれば、(a)前記動力源の負荷もしくは負荷推定値を検出する負荷検出手段を備え、(b)前記許容限界は、前記上昇率検出手段により検出された上昇率もしは上昇率推定値が小さくなるほど、かつ、前記負荷検出手段によりにより検出された機関負荷もしくは負荷相当値が小さくなるほど大きくなるように設定されていることから、動力源の回転速度が上昇した場合に強制アップシフトを実行することができ、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができ、好適にドライバビリティの向上を図ることができる。
また、請求項3に係る発明によれば、前記回転速度推定値は車速であることから、エンジン回転速度センサが故障した場合等においても好適に動力源の回転速度を推定できる。
また、請求項4に係る発明では、前記上昇率推定値は車両の加速度であることから、自動変速機搭載車両に特有の、アクセルオフからアクセルオンへの切換時における急激な動力源の回転速度の変化から生ずる動力源の回転速度の上昇率を用いる不都合を回避し、好適に動力源の回転速度の上昇率を推定することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1の(a) は、本発明が適用された車両用自動変速機(以下、自動変速機と表す)10の構成を説明する骨子図であり、(b) は複数の変速段を成立させる際の係合要素の作動を説明する作動表である。この自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、ケースと表す)26内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸である。出力軸24は出力回転部材に相当するものであり、例えば図示しない差動歯車装置(終減速機)や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1(a) の骨子図においてはその軸心の下半分が省略されている。
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備え、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1によって3つの回転要素が構成されている。キャリヤCA1は入力軸22に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にケース26に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して減速回転させられて、回転を第2変速部20へ伝達する。本実施例では、入力軸22の回転をそのままの速度で第2変速部20へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸22から第1遊星歯車装置12を経ることなく第2変速部20へ回転を伝達する直結経路PA1aと、入力軸22から第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1を経て第2変速部20へ回転を伝達する間接経路PA1bとがある。また、入力軸22からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部20へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比(>1.0)で入力軸22の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
前記第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、前記第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
上記第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。この第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤP2が第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース26に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース26に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、第2回転要素RM2とケース26との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図2は、上記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」を示し、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度を示している。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリヤCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比ρ1(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左側から右端へ向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびキャリヤCA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびリングギヤR3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
そして、この図2に示す共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度/出力軸24の回転速度)の第1変速段「1st」が成立させられる。
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第4回転要素RM4および第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられて第2変速部20が一体回転させられると、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第2クラッチC2係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部20が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸22と同じ回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比は1である。
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立させられる。
また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられて、第3回転要素RM3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、逆回転方向で変速比が最も大きい第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、第3回転要素RM3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。第1後進変速段「Rev1」、第2後進変速段「Rev2」は、それぞれ逆回転方向の第1変速段、第2変速段に相当する。
図1に戻り、図1の(b) の作動表は、上記各変速段を成立させる際のクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
このように本実施例の自動変速機10は、変速比が異なる2つの中間出力経路PA1、PA2を有する第1変速部14および2組の遊星歯車装置16、18を有する第2変速部20により、4つのクラッチC1〜C4および2つのブレーキB1、B2の係合切換えで前進8速の変速ギヤ段が達成されるため、小型に構成され、車両への搭載性が向上する。また、図1の(b) の作動表から明らかなように、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の何れか2つを掴み替えるだけで各変速段の変速を行うことができる。また、上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBと表す)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置である。
図3は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用等に分けて構成される。
図3において、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ52により検出されるとともに、そのアクセル操作量Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであることからアクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。
また、エンジン30の回転速度NE を検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、エンジン30の電子スロットル弁の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUT に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT (=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TO ILを検出するためのAT油温センサ78、車両の加速度(減速度)Gを検出するための加速度センサ80などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT 、AT油温TOIL 、車両の加速度(減速度)Gなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
上記シフトレバー72は例えば運転席の近傍に配設され、図4に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放し且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸24の回転を阻止(ロック)するための駐車位置であり、「R」ポジションは自動変速機10の出力軸24の回転方向を逆回転とするための後進走行位置であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放するための動力伝達遮断位置であり、「D」ポジションは自動変速機10の第1速乃至第8速の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で自動変速制御を実行させる前進走行位置であり、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジ或いは異なる複数の変速段を切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置である。この「S」ポジションにおいては、シフトレバー72の操作毎に変速範囲の上限段或いは変速段をアップ側にシフトさせるための「+」ポジション、シフトレバー72の操作毎に変速範囲の上限段或いは変速段をダウン側にシフトさせるための「−」ポジションが備えられている。前記レバーポジションセンサ74はシフトレバー72がどのレバーポジション(操作位置)PSHに位置しているかを検出する。
また、前記油圧制御回路98には、例えば上記シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブが備えられ、シフトレバー72の操作に伴ってそのマニュアルバルブが機械的に作動させられることにより油圧制御回路98内の油圧回路が切り換えられる。例えば、「D」ポジションおよび「S」ポジションでは前進油圧PD が出力されて前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」で変速しながら前進走行することが可能となる。電子制御装置90は、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。
上記電子制御装置90は、自動変速モードにおいて、例えば図5に示す車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を行い、その判断した変速段が得られるように自動的に変速制御を行う変速制御手段110(図7参照)を機能的に備えており、例えば車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられる。この自動変速制御においては、その変速判断された変速段が成立させられるように変速用の油圧制御回路98内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁や電流制御が実行されてクラッチCやブレーキBの係合、解放状態が切り換えられるとともに変速過程の過渡油圧などが制御される。すなわち、前記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁をそれぞれ制御することによりクラッチCおよびブレーキBの係合、解放状態を切り換えて第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の何れかの前進変速段を成立させる。なお、スロットル弁開度θTHや吸入空気量Q、路面勾配などに基づいて変速制御を行うなど、種々の態様が可能である。
上記図5の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図5の変速線図における変速線は、実際のアクセル操作量Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VS を越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VS すなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。なお、図5の変速線図は自動変速機10で変速が実行される第1変速段乃至第8変速段のうちで第1変速段乃至第6変速段における変速線が例示されている。
図6は、油圧制御回路98のうちリニアソレノイドバルブSL1〜SL6に関する部分を示す回路図であり、クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、38、40、42、44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL6により調圧されて供給されるようになっている。油圧供給装置46は、前記エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48(図1参照)や、ライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を備えており、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御するようになっている。リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成であり、電子制御装置90(図3参照)により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されるようになっている。そして、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図1(b) の係合作動表に示すように4速→5速のアップシフトでは、クラッチC2が係合されると共にクラッチC4が解放され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の係合過渡油圧とクラッチC4の解放過渡油圧とが適切に制御される。
ところで、上記自動変速モードの他に、運転者の手動操作により変速比もしくは変速範囲を選択可能な手動切替モードを備えた自動変速機を搭載した自動車においては、前記自動変速機の手動変速モード選択時において、内燃機関の回転速度が上昇しているにも関わらずアップシフト操作を運転者が行わなかった結果、内燃機関が過回転となるという問題があり、この過回転を生ずるという問題に対し、機関負荷のみに応じて強制的なアップシフトのタイミングを決定すると、たとえば、車両が負荷を牽引している場合等のように、エンジン負荷は高いものの機関回転速度の上昇率が低くなる場合においては、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができず、運転者の意志にかなったエンジン又は車両挙動の応答性、円滑性すなわちドライバビリティが低下するという問題を生ずる可能性があった。本実施例では、強制的なアップシフトを行うかの判断において、機関負荷に加えて機関回転速度または機関回転速度及び機関回転速度上昇率を考慮することにより、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用し、ドライバビリティを低下させない強制的なアップシフトを行う。以下に、その強制的なアップシフトを行う制御作動について具体的に説明する。
図7は、前記電子制御装置90の制御機能の要部すなわち原動機の過回転時に強制的なアップシフトを行う制御作動(以下、強制アップシフト制御作動と表す)を説明する機能ブロック線図である。図7において、変速制御手段110は、例えば図5に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を実行し、判断された変速、あるいは後述する強制アップシフト判定手段112により強制的なアップシフトを指示された場合の変速を実行させるための変速出力を油圧制御回路98に対して行うことにより、自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える。
強制アップシフト判定手段112は、後述する回転速度検出手段114によって検出されたエンジン30の回転速度もしくは回転速度推定値を表す値が、後述する許容限界設定手段118によって設定されるエンジン30の回転速度もしくは回転速度推定値の許容限界Vp を超えていないかの判断を行い、超えていれば変速制御手段110に対し、強制アップシフトによりアップシフトを指示する。
回転速度検出手段114は、強制アップシフト判定手段112においてアップシフトの判断に用いられる車両のエンジン30の回転速度もしくは回転速度推定値が検出される。ここで、本実施例においては回転速度推定値として、車速Vを用いる。この車速Vはたとえば車速センサ66によって測定される。
許容限界設定手段118は、現在選択されている変速段において、エンジン30の回転速度もしくは回転速度推定値である車速Vがとることを許容される限界値Vp を逐次設定する。このとき、その限界値Vp は、現在選択されている変速段および、後述する回転速度上昇率検出手段116によって検出される回転速度上昇率もしくは回転速度上昇率推定値により設定される。
回転速度上昇率検出手段116は、前述の回転速度検出手段114によって検出されるエンジン30の回転速度もしくは回転速度推定値の上昇率を回転速度上昇率もしくは回転速度上昇率推定値として検出する。本実施例においては、エンジン30の回転速度推定値として車速Vが採用されるので、回転速度上昇率推定値として車両の加速度Gが用いられる。このとき、その加速度Gは、加速度センサ80などにより求められる。
負荷検出手段120は、車両の負荷すなわち、エンジン30に加えられている負荷すなわちエンジン30の出力、或いはエンジン30に要求される負荷すなわち要求出力をスロットル開度θTH、吸収空気量Q、燃料噴射量等に基づいて検出する。ここで、負荷はたとえば、車両がたとえば牽引をしているか否か、あるいは登坂路を走行しているか否かなどにより変化する。
図8は、前記電子制御装置90の制御作動の要部、すなわち強制アップシフト制御作動を説明するフローチャートである。電子制御装置90においては、本フローチャートが適宜繰り返し実行される。
図8において、前記変速制御手段110に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)S1において、自動変速機10が現在手動モードであるか自動モードであるかの判断がなされる。ここで、このS1の判断が肯定されればすなわち手動モードであると判断されれば、現在の変速段が何段であるかの情報が許容限界設定手段118に渡される。また、S1の判断が否定されれば、すなわち自動モードであると判断されれば自動変速機はたとえば図5のような変速線図に沿って自動的に変速が行われ、強制アップシフトの必要はないから、フローチャートは終了させられる。
続く回転速度上昇率検出手段116に対応するS2では、車両に設けられた加速度センサなどによりエンジン30の回転速度上昇率推定値として車両の加速度Gが検出される。その加速度Gは加速度センサ80等により検出され、或いは逐次検出される車速Vの変化率に基づいて算出される。検出された加速度は許容限界設定手段118に対応するS4に渡される。
負荷検出手段120に対応するS3では、車両のエンジン30に加えられている負荷の大きさが検出される。検出された負荷の値は許容限界設定手段118に対応するS4に渡される。
許容限界設定手段118に対応するS4では、現在の車両状態下において、許容される車速の最大値が算出され、許容限界Vp として設定される。ここで、現在の車両状態とは、変速制御手段110によって検出される現在選択されている変速段、回転速度上昇率検出手段116によって検出される回転速度上昇率推定値である車両の加速度G、負荷検出手段120によって検出されるエンジン30における負荷を指す。
上記S4においては、許容限界Vp は、たとえば、図9のように、各変速段について回転速度上昇率である車両加速度Gとエンジン30における負荷ごとに予め計算された許容限界についてのマップが予め記憶されており、そこから車両加速度G及びエンジン30の負荷に基づいて選択されることによって求められる。このマップにおいては、図9に示すように、エンジン30の負荷が小さくなるほど、また、車両加速度Gが小さくなるほど、許容限界Vp が大きくなるようになっている。
S5は、回転速度検出手段114に相当し、エンジン30の回転速度推定値として車速Vが検出される。車速Vは、たとえば車速センサ66により検出される。検出された車速は強制アップシフト判定手段112に対応するS6に渡される。
強制アップシフト判定手段112に対応するS6では、S5において検出されたエンジン30の回転速度推定値である車速Vが、S4において設定された許容限界Vp を超えていないかの判断がなされる。車速Vが許容限界Vp を超えていれば、そのS6の判断は肯定され、変速制御手段110に強制アップシフトを行う旨の指示を出し、続くS7が実行される。また、車速Vが許容限界Vp を超えていなければ、S6の判断は否定され、本フローチャートは終了させられる。
変速制御手段110に対応するS7は、S6の判断が肯定され、強制アップシフト判定手段112によって強制アップシフトを行う旨の指示を受けて、強制アップシフトが実行される。例えば、自動変速機10の変速段が第4変速段とされているときにS6によって強制アップシフトが指示された場合には、変速制御手段110は4速→5速アップシフトを実行すべく、クラッチC2を係合開始させ、その係合トルクがある程度維持されているときにクラッチC4の解放を開始させてその係合トルクが発生させられ、この状態で第4変速段の変速比γ4 から第5変速段の変速比γ5 へ移行させつつ、クラッチC2の係合とクラッチC4の解放とを完了させる指令が油圧制御回路98に出力される。
上述のように、本実施例によれば、許容限界設定手段118(S4)において、許容限界Vp が設定される際、回転速度上昇率検出手段116(S2)において検出された回転速度上昇率推定値である車両の加速度Gが考慮され、前記回転速度上昇率検出手段116(S2)により検出された上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように許容限界Vp が設定され、その許容限界により強制アップシフト判定手段112(S6)では強制アップシフトを行うか否かが判断されることから、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができ、ドライバビリティの向上が図られる。
また、本実施例においては、許容限界設定手段118(S4)において、許容限界Vp が設定される際、回転速度上昇率検出手段116(S2)において検出された回転速度上昇率推定値である車両の加速度Gならびに、負荷検出手段120(S3)により検出された負荷が考慮され、前記回転速度上昇率検出手段116(S2)により検出された回転速度上昇率もしくは回転速度上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように許容限界Vp が設定され、その許容限界Vp により強制アップシフト判定手段112(S6)では強制アップシフトを行うか否かが判断されることから、機関回転速度の許容される範囲を十分に利用することができ、ドライバビリティの向上が図られる。
また、本実施例においては、回転速度検出手段114(S5)における回転速度推定値として車速Vが用いられており、エンジン回転速度センサ58が故障した場合等においても本発明の自動変速機の制御装置を実施することができる。
また、本実施例においては、許容限界設定手段118(S4)において、許容限界Vp が設定される際、回転速度上昇率検出手段116(S2)において検出される回転速度上昇率推定値として車両の加速度Gが用いられており、自動変速機搭載車両に特有の、アクセルオフからアクセルオンへの切換時における急激なエンジン回転速度NE の変化から生ずるエンジン回転速度NE の上昇率を用いる不都合を回避し、良好に動力源の回転速度を推定することができる。
図10は、本実施例の効果を示すタイムチャートである。すなわち、ある変速段において過回転が生じ、強制アップシフトが行われる様子を横軸に時刻t、縦軸にエンジン回転速度NE をとって示したものである。なお、本図において、NEmaxは、エンジンの設計上或いは耐久性維持上これ以上の回転は望ましくないとされる回転速度である。なお、実施例においては、エンジン30の回転速度推定値として車速Vを用いているが、本図においては、強制アップシフト前後の様子を時系列的に一の図で表すため、縦軸にエンジン回転速度NE を用いている。
図10における実線は、車両が高負荷もしくは高加速度で走行している場合を表している。エンジン30の回転速度推定値である車速Vが上昇した結果、エンジン30の回転数NE が時刻t1において許容限界設定手段118によって設定された許容限界Vp1あるいはこれに対応する回転速度の許容限界NEp1を超えると、強制アップシフト判定手段112により、変速制御手段110に対し強制アップシフトが指示される。そして、アップシフトが開始された結果、時間Tだけ経過した後であるt1+Tにおいて、回転要素の回転変化が開始されるイナーシャ相が開始される。すなわち、イナーシャ相開始前である時刻t1+T以前においては、変速前のギヤ段が依然成立しており、エンジンの回転速度NE はNEa2まで増加し続け、イナーシャ相の開始後回転速度NE は低下する。このとき、この回転速度NE の増加により回転速度NE がNEmaxを超えることなく、かつNEmax近辺におけるエンジン回転速度NE の許容される範囲を十分に利用することが可能となるように許容限界NEp1は設定されるのである。
一方、図10における一点鎖線は、車両が低負荷もしくは低加速度で走行している場合であって、許容限界が車両が高負荷もしくは高加速度で走行している場合と同様のVp1、あるいはそれに対応する回転速度の許容限界NEp1に設定されている場合を表している。車速Vが上昇した結果、エンジンの回転速度NE が時刻t1において許容限界である回転速度NEp1を超え、アップシフトが開始された結果、時間Tだけ経過した後であるt1+Tにおいて、回転要素の回転変化が開始されるイナーシャ相が開始される。このとき、前述の高負荷もしくは高加速度の場合同様、イナーシャ相開始前である時刻t1+T以前においては、変速前のギヤ段が依然成立しており、エンジンの回転速度NE は増加するが、車両が低負荷もしくは低加速度で走行している場合は、エンジン回転速度NE の上昇率が低く、NEa1までしか増加しない。すなわち、このとき、この回転速度NE の増加により回転速度がNEmaxを超えることはないものの、かつNEmax近辺におけるエンジン回転速度の許容される範囲を十分に利用しているとはいえない。なお、本図における時間Tは、上述のように強制アップシフトの開始からイナーシャ相の開始までの時間を表すが、必ずしも上記高負荷もしくは高加速度の場合と低負荷もしくは低加速度の場合で同一であるとは限らない。
図10における二点鎖線は、車両が低負荷もしくは低加速度で走行している場合であって、本発明における許容限界設定手段118により、その場合に相応する許容限界Vp2あるいはそれに対応するエンジン30の回転速度の許容限界NEp2が設定された場合を表している。すなわち、許容限界設定手段118は、負荷検出手段120により検出された負荷および回転速度上昇率検出手段116により検出された車両加速度を考慮して許容限界としてVp2あるいはそれに対応するNEp2を設定するのである。この場合、車速Vが上昇した結果、エンジンの回転速度NE が上昇し、時刻t2において許容限界である回転速度NEp2を超え、アップシフトが開始された結果、時間T’だけ経過した後であるt2+T’において、回転要素の回転変化が開始されるイナーシャ相が開始される。このとき、前述の場合同様、イナーシャ相開始前である時刻t2+T’以前においては、変速前のギヤ段が依然成立しており、エンジンの回転速度NE は増加し、NEa2まで増加することとなる。すなわち、このとき、この回転速度NE の増加により回転速度がNEmaxを超えることはなく、かつNEmax近辺におけるエンジン回転速度の許容される範囲を十分に利用したこととなる。なお、本図における時間TおよびT’は、上述のように強制アップシフトの開始からイナーシャ相の開始までの時間を表すが、必ずしも上記Tと異なるとは限らない。
このように、許容限界設定手段118が、負荷検出手段120により検出された負荷および回転速度上昇率検出手段116により検出された車両加速度Gを考慮して許容限界Vp を設定することにより、さまざまな車両状態に応じてエンジン回転速度NE の許容される範囲を十分に利用しつつ強制アップシフトを行うことが可能となる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、許容限界設定手段118は、負荷検出手段120により検出された車両負荷と回転速度上昇率検出手段116により検出された回転速度上昇率推定値である車両の加速度Gの2つを用いて許容限界Vp を設定したが、これらのうち、回転速度上昇率である車両の加速度Gのみを用いて許容限界Vp を設定しても良い。
前述のフローチャートにおいては、S2およびS3において、回転速度上昇率推定値の検出および、負荷の検出がおこなわれたが、これらはこの順序でなくともよく、逆の順序で行われても良いし、両者が同時に行われても良い。また、S5において回転速度の検出が行われたが、S2の前、S2とS3の間、S3とS4の間に行われても良く、また、これらのいずれかと同時に行われても良い。
前述の実施例においては、回転速度検出手段114における原動機の回転速度推定値として、車速Vを用いたが、これはエンジン回転速度NE でもよく、トルクコンバータのタービン回転速度NT でもよい。また、この回転速度あるいは回転速度推定値は直接センサ等によって計測されてもよいし、他の値を計測することにより当該他の値より推定されてもよい。このとき、許容限界設定手段118によって設定される許容限界が原動機の回転速度推定値である車速Vと異なる種類のもの、例えば回転速度NE である場合は、許容限界を、回転速度における許容限界に変換する許容限界変換手段を許容限界設定手段118の後もしくは強制アップシフト判定手段112の前のいずれかに実行することなどにより、強制アップシフト判定手段112においては、原動機の回転速度と回転速度における許容限界とを比較することができる。
また、回転速度上昇率検出手段116における回転速度上昇率推定値として、車両の加速度Gを用い、この加速度Gは直接加速度センサ80等によって計測されたが、原動機の回転速度推定値である車速Vの微小時間ごとの上昇分を算出することによって求めてもよい。また、上述の回転速度あるいは回転速度推定値として採用される値に対応して、回転速度上昇率あるいは回転速度上昇率推定値として、エンジン30の回転数NE の上昇率を用いても良いし、トルクコンバータのタービン回転速度NT の上昇率を用いても良い。
また、負荷検出手段120は、車両に設けられたセンサ等によって得られた数値により直接負荷を算出してもよいし、これらの値から直接算出できない場合、推定されることによって得られてもよい。
また、許容限界設定手段118においては、各変速段について回転速度上昇率推定値である車両加速度Gと原動機における負荷ごとに予め計算された許容限界Vp についてのマップを準備し、そこから選択されることによって求められたが、各時刻ごとの回転速度上昇率あるいは回転速度上昇率推定値と原動機の負荷とその時刻における選択された変速段の関係から予め記憶させられた関係式に基づいて随時算出されてもよい。また、許容限界についてのマップを準備することに代えて、許容限界の補正値についてのマップを準備することによってもよい。
また、自動変速機10の手動モードは、本実施例にあるような運転者の手動操作により変速比が選択可能なギヤ切換のみならず、運転者の手動操作により変速範囲を選択可能にするレンジ切換においても同様に適用可能である。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:自動変速機
30:エンジン(動力源)
90:電子制御装置(変速制御装置)
110:変速制御手段
112:強制アップシフト判定手段
116:回転速度上昇率検出手段
118:許容限界設定手段
30:エンジン(動力源)
90:電子制御装置(変速制御装置)
110:変速制御手段
112:強制アップシフト判定手段
116:回転速度上昇率検出手段
118:許容限界設定手段
Claims (4)
- 運転者の手動操作により変速比もしくは変速範囲を選択可能な手動切替モードを備えた自動変速機の制御装置であって、該手動切替モードが選択されている場合に、前記自動変速機が接続される動力源の回転速度もしくは回転速度推定値が許容限界に達したことが判定された場合に運転者の手動操作に関わらず前記変速機の変速比を自動的に低下させる強制アップシフト手段を備えた自動変速機の制御装置において、
前記動力源の回転速度の上昇率もしくは上昇率推定値を検出する上昇率検出手段と、
前記許容限界を、前記上昇率検出手段により検出された上昇率もしくは上昇率推定値が小さくなるほど大きくなるように設定する許容限界設定手段と
を含むことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記動力源の負荷もしくは負荷推定値を検出する負荷検出手段を備え、
前記許容限界設定手段は、前記許容限界を、前記上昇率検出手段により検出された上昇率もしは上昇率推定値が小さくなるほど、かつ、前記負荷検出手段によりにより検出された機関負荷もしくは負荷相当値が小さくなるほど大きくなるように設定するものである
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記動力源の回転速度推定値は車速であることを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1乃至3に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記動力源の回転速度の上昇率推定値は、車両の加速度であることを特徴とする自動変速機の制御装置。
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