JP2007182407A - 徐放性ハイドロゲル製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】哺乳動物の生体内でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤を提供する。
【解決手段】カチオン性のゼラチンハイドロゲルと、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体と、を含む、徐放性ハイドロゲル製剤を提供する。このカチオン化ゼラチンハイドロゲルは、ゼラチンハイドロゲルのカルボキシル基のアミノ基への置換率が10%以上60%以下であってもよい。また、このカチオン化ゼラチンハイドロゲルは、含水率が80%以上99.8%以下であってもよい。
【選択図】図4

Description

本発明は、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を含む徐放性ハイドロゲル製剤に関する。
生体内の薬物濃度を長期間一定に保持するために、薬物を生体吸収性高分子のハイドロゲルやマイクロカプセル中に封入することにより、その放出を制御する方法が知られている。このような目的のために用いられる生体吸収性高分子としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−γ−グルタミン酸等の、多くの種類の天然または合成高分子が報告されている。
例えば、特許文献1は、生体分解性ポリマーに生理活性物質を配合してなるマトリクスと、生体内分解性ポリマー単独からなるマトリクスとの2種類のマトリクスを重層または隣接させてなる、徐放性埋込剤を開示する。
また、特許文献2は、少なくとも1つの第1負荷電薬理学的活性剤と複合体化した少なくとも1つのポリカチオンポリマーを含むと共に、患者に投与されたとき少なくとも1つの該第1負荷電薬理学的活性剤を徐放的に放出するよう構成される、徐放性薬剤送達組成物を開示する。この文献によれば、負に帯電した(負荷電)治療剤の完全な状態での放出は、ポリカチオンポリマーと治療剤との間の電荷の相互作用によって制御されると記載されている。また、この系は、負荷電オリゴヌクレオチドおよび負に帯電したペプチドおよびタンパク質のような負荷電を有する他の活性剤のような負荷電親水性薬の徐放に使用することができると記載されている。
また、特許文献3は、ガレクチン−1またはその誘導体を有効成分として含む、神経損傷、神経変性、神経移植機能低下を含む神経障害の治療剤が開示されている。この文献によれば、この治療剤は、ガレクチン−1またはその誘導体をコラーゲンゲル中に含有させ、必要に応じて他の神経栄養因子を添加し、神経障害局部に直接埋め込む形態のものであってもよい。この場合、薬剤、担体等の必要な成分を生体適合性材料(例えば、シリコンゴム、コラーゲン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなど)からなるチューブ内に封入される。
特許第2702729号明細書 特表2005−511523号公報 国際公開第00/06724号パンフレット
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、特許文献1の徐放性埋込剤では、ガレクチン−1を内包させた場合に、生体内でガレクチン−1がすぐに溶出してしまい、徐放性を実現することが困難であった。
第二に、特許文献2の徐放性薬剤送達組成物では、負に帯電した治療剤の放出は、ポリカチオンポリマーと治療剤との間の電荷の相互作用によって制御されると記載されているが、負に帯電した治療剤とポリカチオンポリマーとの相互作用は、一義的に電気的相互作用のみで決まるものではなく、さらに分子の大きさや立体構造など、様々な要素が複雑に絡み合って決まるものである。そのため、特許文献2の徐放性薬剤送達組成物でも、ガレクチン−1を内包させた場合に、生体内でガレクチン−1の溶出を制御することは難しく、やはり徐放性を実現することが困難であった。
第三に、特許文献3の神経障害の治療剤では、ガレクチン−1またはその誘導体をコラーゲンゲル中に含有させ、必要に応じて他の神経栄養因子を添加し、神経障害局部に直接埋め込む形態のものであり、ガレクチン−1の溶出を制御するための工夫を特に施していないため、やはり徐放性を実現することが困難であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、哺乳動物の生体内でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤を提供することを目的とする。
本発明によれば、カチオン性のゼラチンハイドロゲルと、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体と、を含む、徐放性ハイドロゲル製剤が提供される。本発明によれば、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体と、カチオン性のゼラチンハイドロゲルとが相互作用するため、哺乳動物の生体内でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られる。
なお、上記の徐放性ハイドロゲル製剤は本発明の一態様であり、本発明の徐放性ハイドロゲル製剤は、以上の構成要素の任意の組合せであってもよい。また、本発明に関連する徐放性ハイドロゲル組成物、徐放性ハイドロゲルの製造方法、徐放性ハイドロゲルのヒト以外の哺乳動物への投与方法なども、同様の構成(または対応する工程)を有する。
また、本発明において、ガレクチン−1誘導体とは、ガレクチン−1の分子内の小部分の変化によって生成する化合物を示す。ガレクチン−1誘導体は、ガレクチン−1のアミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基を置換、欠失、付加してなる変異型ガレクチン−1を含むものとする。
本発明によれば、カチオン性のゼラチンハイドロゲルを用いているため、哺乳動物の生体内でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られる。
本実施形態に係る徐放性ハイドロゲル製剤において、上述のカチオン化ゼラチンハイドロゲルは、ゼラチンハイドロゲルの10%以上60%以下のカルボキシル基がアミノ基へ置換されていてもよい。この構成によれば、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体と、カチオン性のゼラチンハイドロゲルとの静電的な作用を含むトータルとしての相互作用の強度が好適な範囲内に収まるため、哺乳動物の生体内でのガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出速度が哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適な範囲内に収まることになる。
本実施形態に係る徐放性ハイドロゲル製剤において、カチオン化ゼラチンハイドロゲルは、含水率が80%以上99.8%以下であってもよい。この構成によれば、哺乳動物の生体内でのガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出速度が哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適な範囲内に収まることになる。
本実施形態に係る徐放性ハイドロゲル製剤において、上述のガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体は、組換ガレクチン−1を含んでもよい。ここで、組換ガレクチン−1とは、天然由来のガレクチン−1ではなく、遺伝子組み換えの手法を用いて生成されたガレクチン−1を示す。この構成によれば、ガレクチン−1と同様の生理活性を有する組換ガレクチン−1を用いて、哺乳動物の生体内で組換ガレクチン−1の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られるため、哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適に用いることができる。
本実施形態に係る徐放性ハイドロゲル製剤において、上述のガレクチン−1誘導体は、ガレクチン−1のアミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基を置換、欠失、付加してなる変異型ガレクチン−1を含んでもよい。この構成によれば、ガレクチン−1と同様の生理活性を有する変異型ガレクチン−1を用いて、哺乳動物の生体内で変異型ガレクチン−1の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られるため、哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適に用いることができる。
本実施形態に係る徐放性ハイドロゲル製剤において、上述のガレクチン−1誘導体は、ガレクチン−1の一部またはガレクチン−1誘導体の一部を含んでもよい。例えば、ガレクチン−1の一部またはガレクチン−1誘導体の一部として、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体のうち、生理活性作用に重要であることが従来公知である部分を含むように構成することができる。この構成によれば、ガレクチン−1の一部またはガレクチン−1誘導体の一部であっても、ガレクチン−1と同様の生理活性を有する部分を用いることにより、哺乳動物の生体内でガレクチン−1の一部またはガレクチン−1誘導体の一部の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られるため、哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適に用いることができる。
本実施形態に係る徐放性ハイドロゲル製剤は、哺乳動物の脊髄近傍に投与可能に構成されていてもよい。例えば、この徐放性ハイドロゲル製剤は、哺乳動物の脊髄の損傷部位に対して浸透圧ポンプを用いて充填可能な流動性を有する状態に構成することができる。また、粒状に加工したゼラチンハイドロゲルを用いて徐放性ハイドロゲル製剤を作製することにより、哺乳動物の脊髄の損傷部位に対して注射する状態に構成することができる。この構成によれば、哺乳動物の脊髄近傍でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られるため、哺乳動物の脊髄の神経再生などの治療目的のために好適に用いることができる。
以下、本実施形態の実施の形態について説明する。
<ゼラチンハイドロゲル>
本実施形態においてゼラチンハイドロゲルとは、生体吸収性高分子ハイドロゲルの一種である。より詳しくは、ゼラチンハイドロゲルの原料はゼラチンであり、ゼラチンは動物の骨や皮に含まれるコラーゲンという物質を加熱変性し高度に精製して得られるタンパク質である。また、ハイドロゲルとは、多量の水を含んだ親水性の高分子を含むゲル状の物質である。すなわち、ゼラチンハイドロゲルは、ゼラチンを水和させることにより得られるゲル状の物質である。
ここで、ゼラチン誘導体は、ゼラチンに対して、グアニジル基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基、あるいはアルキル基、アシル基、ベンジル基などの疎水性の残基、および低分子量の疎水性物質等を導入した被修飾ゼラチンを含む。
ゼラチンとしては、好ましくは天然由来のゼラチンが用いられる。天然由来のゼラチンは、牛、豚、魚類などを始めとする各種の動物種の皮膚、骨、腱などの身体のあらゆる部位から採取できるコラーゲン、あるいはコラーゲンとして用いられている物質から、アルカリ加水分解、酸加水分解、および酵素分解等の種々の処理によって変性させて得ることができる。また、ゼラチン誘導体としては、遺伝子組換え型コラーゲンの変性体ゼラチンを用いてもよい。
本実施形態では、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体とより良く相互作用するゼラチンハイドロゲルとして発明者が見出した、正に荷電しているゼラチンハイドロゲルを用いている。おそらく、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体との安定な複合体形成には、ゼラチンハイドロゲルの有する正の電荷が重要な役割をはたしている。ゼラチンハイドロゲルを正に荷電させるためには、例えば、ゼラチンハイドロゲルに予めアミノ基等を導入することによってカチオン化することができる。このことにより、ゼラチンハイドロゲルと薬物との結合力が増し、より安定したゼラチンハイドロゲル複合体を形成することができる。
カチオン化の工程は、生理条件下でカチオン化する官能基を導入し得る方法であれば特に限定されないが、ゼラチンハイドロゲルの有する水酸基あるいはカルボキシル基等に1、2または3級のアミノ基またはアンモニウム基を温和な条件下で導入する方法が好ましい。例えばエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン等のアルキルジアミンや、トリメチルアンモニウムアセトヒドラジド、スペルミン、スペルミジンまたはジエチルアミド塩化物等を、種々の縮合剤、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、塩化シアヌル、N,N’−カルボジイミダゾール、臭化シアン、ジエポキシ化合物、トシルクロライド、ジエチルトリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−ペンタン酸ジ無水物等のジ無水物化合物、トリシルクロリド等を用いて反応させる方法がある。中でもエチレンジアミンまたはスペルミジンを反応させる方法が簡便且つ汎用性があり好適である。
このとき、カチオン化ゼラチンのカチオン化の程度を示す指標として、カチオン化率を用いることができる。カチオン化率=(カチオン化ゼラチンの一分子あたりのアミノ基の数/カチオン化前のゼラチン一分子あたりのアミノ基の数)/(カチオン化前のゼラチン一分子あたりのカルボキシル基の数)*100(%)であらわされる。
このカチオン化率は、好適には10%以上60%であり、特に好ましくは30%以上50%以下である。カチオン化率がこれらの下限以上であると、ゼラチンハイドロゲルとガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体との相互作用が強くなるので、徐放性の効果が向上する。一方、カチオン化率がこれらの上限を超えると、ゼラチンハイドロゲルのカチオン化が製造工程上困難になる場合がある。
本実施形態において薬物のより優れた徐放性制御効果を得るためには、ゼラチンハイドロゲルを水不溶性または水難溶性とすることが好ましい。このことにより、ゼラチンハイドロゲルの生体での分解性に応じて薬物の放出を自由に制御することが可能となる。すなわち薬物の徐放速度を生体におけるゼラチンハイドロゲルの分解によって制御することが可能となる。
ゼラチンハイドロゲルを水不溶性または水難溶性にするには、ゼラチンまたはゼラチン誘導体の分子鎖を化学的手法、紫外線照射、あるいは熱により脱水処理することによって水に溶解しにくいように架橋して作製する。このとき、架橋の程度の上昇とともに含水ハイドロゲルに対する水の重量比(含水率)は低下する。
ゼラチンハイドロゲルは、種々の化学的架橋剤を用いてゼラチンまたはゼラチン誘導体の分子間に化学架橋を形成させることにより不溶化または難溶化することができる。化学的架橋剤としては、例えばグルタルアルデヒド、例えばEDC等の水溶性カルボジイミド、例えばプロピレンオキサイド、ジエポキシ化合物、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、イミダゾール基などの間に化学結合を作る縮合剤を用いることができる。好ましいものは、グルタルアルデヒドである。また、生体吸収性高分子は、熱脱水処理、紫外線、ガンマ線、電子線照射によって化学架橋してもよい。さらに、これらの架橋処理を組み合わせて用いてもよい。他にも、塩架橋、静電的相互作用、水素結合、疎水性相互作用などを利用した物理架橋によりハイドロゲルを作製してもよい。
本実施形態において、ゼラチンハイドロゲルと薬物との複合体を形成する場合には、複合体中に取り込まれている薬物は、ゼラチンハイドロゲルが生体内で分解されるに従って複合体外部へと徐々に放出される。この放出速度は、使用するゼラチンハイドロゲルの生体における分解および吸収の程度、ならびに複合体内での薬物とゼラチンハイドロゲルとの結合の強さの程度および安定性により決定される。ゼラチンハイドロゲルの生体における分解および吸収の程度は、ハイドロゲル作製時における架橋の程度を調節することにより調節することができる。
ゼラチンハイドロゲルの原料としてゼラチンまたはゼラチン誘導体を用いる場合、ハイドロゲルの架橋度は含水率を指標として評価することができる。含水率とは膨潤ハイドロゲルの重量に対するハイドロゲル中の水の重量パーセントである。含水率が大きければハイドロゲルの架橋度は低くなる。そのため、具体的には、好ましい徐放性効果を示す含水率としては80wt%以上99.8wt%以下であり、特に好ましくは90wt%以上97wt%以下であり、最も好ましくは92wt%以上97wt%以下である。ゼラチンハイドロゲルの含水率がこれらの下限以上であれば、ゼラチンハイドロゲルの作成が製造工程上容易になるため、製造安定性が向上する。一方、ゼラチンハイドロゲルの含水率がこれらの上限以下であれば、ガレクチン−1の放出速度は抑制されるため、徐放性効果が向上する。
生体吸収性高分子としてゼラチンまたはゼラチン誘導体を用いるため、ハイドロゲルを調製する際のゼラチンまたはゼラチン誘導体と架橋剤の濃度の好ましい範囲は、ゼラチンまたはゼラチン誘導体の濃度1〜20w/w%、架橋剤濃度0.01〜1w/w%である。架橋反応条件は特に制限はないが、例えば、0〜40℃、好ましくは25−30℃で、1〜48時間、好ましくは12−24時間で行うことができる。一般に、ゼラチンまたはゼラチン誘導体の濃度および架橋剤の濃度、架橋時間が増大するとともにハイドロゲルの架橋度は増加し、生体吸収性は低くなる。
ゼラチンまたはゼラチン誘導体の架橋反応は、熱処理によっても行なうことができる。熱処理による架橋の例は以下のとおりである。ゼラチン水溶液(10重量%程度が好ましい)をプラスチックシャーレに流延し、風乾することによってゼラチンフィルムを得る。そのフイルムを減圧下、好ましくは10mmHg程度で通常110〜160℃、好ましくは120〜150℃、通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間放置することによって行なう。また、紫外線によりゼラチンフィルムを架橋する場合は、得られたゼラチンフィルムを殺菌ランプの下において通常室温、好ましくは0〜40℃で放置する。また、ゼラチン水溶液を凍結乾燥することによってスポンジ状成形体を得る。これを同様に、熱処理および紫外線、ガンマ線、電子線によって架橋することができる。あるいは、上述の架橋法を組み合わせて用いることもできる。
ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を内包するためのゼラチンハイドロゲルの形状(立体構造)は、特に制限はないが、例えば、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、ペースト状などがある。円柱状、角柱状、シート状、ディスク状のものは、埋込片として用いるのに特に適している。
円柱状、角柱状、シート状、ディスク状のゼラチンハイドロゲルは、ゼラチンまたはゼラチン誘導体の水溶液に架橋剤水溶液を添加するか、あるいは、架橋剤水溶液にゼラチンまたはゼラチン誘導体を添加し、所望の形状の鋳型に流し込んで、架橋反応させることにより調製することができる。また、成形したゼラチンゲルにそのまま、あるいは乾燥後に架橋剤水溶液を添加してもよい。架橋反応を停止させるには、エタノールアミン、グリシン等のアミノ基を有する低分子物質に接触させるか、あるいは、pH2.5以下の水溶液を添加する。反応に用いられた架橋剤および低分子物質を完全に除去する目的で、得られたゼラチンハイドロゲルは、蒸留水、エタノール、2−プロパノール、アセトン等により洗浄し、製剤調製に供される。
本実施形態のゼラチンハイドロゲルは適宜、適当な大きさ及び形に切断後凍結乾燥し滅菌して使用することができる。凍結乾燥は、例えば、ゼラチンハイドロゲルを蒸留水に入れ、液体窒素中で30分以上、又は−80℃で1時間以上凍結させた後に、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行うことができる。
本実施形態において、カチオン化ゼラチンまたはカチオン化ゼラチン誘導体は、上述のような構成を有するため、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体とゼラチンハイドロゲルとの複合体を形成するのに適した化学構造となっている。そのため、本実施形態のゼラチンハイドロゲルは、徐放するガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体と、物理化学的な相互作用によって複合体を形成することが可能なゼラチンまたはゼラチン誘導体を含むハイドロゲルとなる。その結果、本実施形態のゼラチンハイドロゲルは、生体内で加水分解および酸素分解により分解されるか、あるいは、生体のもつ生理活性物質、例えば酵素等の働きによって加水分解される。
<ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体>
本実施形態において徐放性製剤を製造するために使用される薬物としては、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を用いる。これらのガレクチン−1またはガレクチン−1は、ガレクチンファミリーに属する細胞質蛋白質である。これらの中でも、天然のガレクチン−1が特に好適である。なお、ガレクチン−1誘導体には、天然のガレクチン−1のアミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基を置換、欠失、付加してなる変異型ガレクチン−1が含まれる。また、ガレクチン−1誘導体には、遺伝子組換の手法を用いて得られる組換ガレクチン−1も含まれる。ヒトに対して投与する場合には、天然のヒトガレクチン−1または組換ヒトガレクチン−1が好ましい。
また、ガレクチン−1誘導体には、ガレクチン−1の一部またはガレクチン−1誘導体の一部であって、ガレクチン−1と同様の生理活性を有する部分が含まれる。このように、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の一部の領域が欠失していても、ガレクチン−1としての生理活性に重要であることが知られている領域が残存していれば、ガレクチン−1と同様の機能を発揮するため、哺乳動物の脊髄の神経再生などの治療目的のために用いることができる。
なお、ガレクチン−1を含むタンパク質ファミリーの総称であるガレクチンとは、動物レクチンの一ファミリーである。ガラクトースに対する結合特異性を有することと、ガレクチンファミリーを特徴づけることが知られている所定のアミノ酸一次配列をもつことがガレクチンとしての条件である。ガレクチンは、一般に、可溶性で、金属要求性はない。ガレクチンは、細胞質蛋白質としての属性を示し、ジスルフィド結合、付加糖鎖、シグナル配列をもたず、一般にN−末端アミノ酸はアセチル化されている。しかし、ガレクチンの発現場所は細胞質内にとどまらず、核、細胞表面、細胞外マトリックスと多彩で、ガレクチン分子の種類、組織、時期によって異なることが多い。
ガレクチンの分泌機構に関しては不明な点が多く、シグナル配列を介さない新規なモデルが想定されている。現在まで、ガレクチンは脊椎動物をはじめ、線虫、昆虫、海綿動物などの無脊椎動物にも広く分布することが知られているが、最近、真菌類(キノコ)においてもガラクトース結合活性をもったガレクチンの存在が証明されている。ガレクチンの関与する生命現象としては、発生、分化、形態形成、腫瘍転移、細胞死、RNAスプライシング等、多岐に及ぶが、機能発現の機構、特に糖鎖認識との関連については未解決部分が多い。
現在まで報告されているガレクチンはその分子構築様式にもとづいて、プロト、キメラ、直列反復型の三型に分類できる。一方、哺乳類ガレクチンについては、発見順(GenBankへの登録順)に番号を付して呼ぶことが提唱されている。ガレクチンファミリーは、現在までにガレクチン−1から14まで報告されている。
これらのガレクチンファミリーに含まれるガレクチン−1は、βガラクシドに結合する動物レクチンである。ガレクチン−1は、分子内に6個のシステインを持ち、還元状態でのみレクチン活性を示す。レクチン活性によって細胞表面の糖脂質や糖タンパク質糖鎖に結合することで細胞の接着および細胞増殖等へ関与していることが報告されている。なお、ガレクチン−1は、上記のプロト型に属する。ガレクチン−1の機能としては、例えば、活性化T細胞のアポトーシス誘導細胞増殖、mRNAスプライシング神経軸索の再生(酸化型ガレクチン−1)、臭覚神経の神経突起伸展異常などが知られている。
なお、ヒトトガレクチン−1の生理活性は、まだ不明な点が多くすべてが分かっているわけではない。ただし、少なくとも再生医療に応用可能であると考えられる、神経の再生に関わる機能があることは判明している。例えば、(酸化型)ガレクチン−1を起点として神経再生のカスケードを動かす事ができ、神経再生促進因子、神経軸索伸長としての作用もある。そのため、哺乳動物の生体内での徐放性を実現できれば、ガレクチン−1の生理活性は、脊椎損傷患者の治療に応用できる可能性がある。
ヒトガレクチン−1の生理活性作用については、組換ヒトガレクチン−1についての文献であるが、雑誌「生化学」 第72巻 第10号に「神経損傷後、細胞内で還元状態にあるガレクチン−1は、再生軸索やシュワン細胞から分泌され大半は、細胞表面に存在する糖鎖と結合する。分泌された一部のガレクチン−1は、間質液中へと拡散する。一方、損傷した細胞は細胞膜の透過性があがり、細胞外へとガレクチン−1が拡散する。細胞外へと放出されたガレクチン−1分子のうち糖と結合しなかったものは酸化的環境下でジスルフィド結合を形成し酸化型ガレクチン−1となり、単量体として存在する。レクチン活性を持たない酸化型ガレクチン−1は、単離された神経細胞に直接作用することがないことから、サイトカイン様の因子としてシュワン細胞、線維芽細胞、周膜細胞、リクルートマクロファージなどの神経以外の損傷部を構成する細胞系に作用し、軸索再生を促進させるものと考えられる。」という詳しい記載がある。
<徐放性ハイドロゲル製剤>
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤は、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を含有する徐放性のゼラチンハイドロゲル製剤である。この徐放性ハイドロゲル製剤は、例えば、上記の凍結乾燥したゼラチンハイドロゲルにガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を含有する溶液を滴下するか、あるいはゼラチンハイドロゲルをガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を含有する溶液中に浸漬させて、ハイドロゲル内にガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を含浸させることにより得ることができる。
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤では、ゼラチンハイドロゲルに対するガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体のモル比は約5倍量以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ゼラチンハイドロゲルに対してガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体は約5〜約1/104倍量のモル比である。この含浸操作は、通常、4−37℃で15分間−1時間、好ましくは4−25℃で15−30分間かけて終了し、その間にハイドロゲルはガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を含有する溶液で膨潤し、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体が生体吸収性高分子と物理化学的相互作用によって複合体を形成し、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体が生体吸収性高分子ハイドロゲル内に固定される。
こうして得られたゼラチンハイドロゲルとガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体との結合には、クーロン力、水酸結合力、疎水性相互作用などの物理学的相互作用の他、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の官能基または金属とハイドロゲル上の官能基との間の配位結合などが単独あるいは複合的に関与していると考えられる。そのため、本実施形態においては、ゼラチンハイドロゲルは、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の徐放性を実現するためには、上述の種々の特性を満たしていることが好ましい。
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤には、得られるハイドロゲルの安定性や薬物放出の持続性等の目的に応じて、所望により他の成分を加えることもできる。他の成分としては例えばアミノ糖あるいはその高分子量体やキトサンオリゴマー、塩基性アミノ酸あるいはそのオリゴマーや高分子量体、ポリアリルアミン、ポリジエチルアミノエチルアクリルアミド、ポリエチレンイミン等の塩基性高分子等が挙げられる。
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤は、任意の方法で生体に投与することができるが、目的とする特定部位でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体が方向性をもって持続的に放出されるためには、局所投与が特に好ましい。徐放性ハイドロゲル製剤は、更に必要に応じて製剤上許容し得る担体(安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)と混合することにより徐放性製剤を調製することができる。そのような担体としては公知のものが使用できる。さらに徐放効果を調節する各種添加剤を含めることもできる。本実施形態を製剤化するにあたり、除菌濾過等の無菌化工程を経ることが更に望ましい。
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤は、目的に応じて種々の形状の製剤化が可能である。例えば、粒状、円・角柱状、シート状、ディスク状、スティック状、ロッド状等の固形、半固形製剤が挙げられる。好ましくは目的とする特定部位での徐放効果に優れ、また局所投与に好適な固形製剤である。さらに、流動性を有するようなペースト状製剤として用いることもできる。例えばシート状に製剤した本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤は、局所に埋め込むのに適している。また、いずれの徐放性ハイドロゲル製剤も、その使用部位によっては、別の材料と組み合わせて使用することも可能である。例えば、徐放性ハイドロゲル製剤を特定部位に固定化することを目的として、糊状物質と混合して用いることも考えられる。
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤の投与量は、治療的応答をもたらすに十分であるように適宜選択することができる。通常成人患者当たり約0.01〜約10,000μgの範囲、好ましくは、約0.1〜約1,000μgの範囲から投与量が選択され、これを病巣またはその周辺部位に留置または注入することができる。また1回の投与で効果が不十分であった場合は、投与を複数回行うことも可能である。
本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤は、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の徐放性効果と安定化効果を持つため、所望の部位においてガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体を制御された放出速度をもって長時間にわたって放出することができる。そのため、ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の作用が病巣部位内で効果的に発揮される。本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤は、脊椎損傷の神経再生が目標である場合には、神経の周りに適用することが好ましい。
また、本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤によれば、ガレクチン−1と同様の生理活性を有する組換ガレクチン−1を用いて、哺乳動物の生体内で組換ガレクチン−1の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られるため、哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適に用いることができる。
また、本実施形態の徐放性ハイドロゲル製剤によれば、ガレクチン−1と同様の生理活性を有するガレクチン−1の一部または組換ガレクチン−1の一部を用いて、哺乳動物の生体内でガレクチン−1の一部または組換ガレクチン−1の一部の溶出を制御することのできる、徐放性ハイドロゲル製剤が得られるため、哺乳動物の神経再生などの治療目的のために好適に用いることができる。
以上、本実施形態の実施形態について述べたが、これらは本実施形態の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<1.実験サンプルの作製>
以下の実施例においては、カチオン化ゼラチンの作製時に、ゼラチンに対して加えるエチレンジアミンの量により作製するカチオン化ゼラチンにE50、E10、E3、E0.5などの名称を付けた。数字の意味は、カチオン化ゼラチンを作製するときに、ゼラチン中のカルボキシル基に対して、エチレンジアミンを加えた量(モル比)を表している。なお、上述したカチオン化ゼラチンの作製方法は、E50の作製方法であり、他の略号で表されるカチオン化ゼラチンは、適宜エチレンジアミンを加えた量(モル比)を変化させることにより作製可能した。
(i)E50、E10、E3、E0.5
E50、E10、E3、E0.5などのカチオン化ゼラチンがどの程度カチオン化されているかは、既知であり、カチオン化を示す指標は、実際にカルボキシル基の何%がアミノ基に置き換わっているかで示すことができる。例えばE50で約50%、E10で約43%程度、E3で約30%、E0.5で約14%となる。このE50、E10、E3、E0.5などのカチオン化ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してE50、E10、E3、E0.5のカチオン性のゼラチンハイドロゲルを作製した。
なお、毎回のカチオン化ゼラチンの作製後に、TNBS法でアミノ基を定量して確認した。この定量方法は、アミノ基の定量に良く用いられる一般的な方法である。また、TNBSとは、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物を意味する。
具体的にはE50の場合を例にとって、詳しく説明すると、ゼラチン(分子量100000、豚皮由来、等電点9.0、新田ゼラチンより供与)20.0gに0.1M リン酸緩衝液(pH=5.0)500mlを加え、室温下、1時間膨潤させた後、40℃、1時間撹拌し、溶解させた。エチレンジアミン(和光純薬、code 053−00936、lot No. CEN−33I3)55.8gを加えた後、濃塩酸(ナカライテスク、code 18321−05、lot No. V5H6401)を用いてpHを5.0に調製したのち、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(ナカライテスク、code 15022−02、lot No. M5B7686)10.7gを加えた。0.1M リン酸緩衝液(pH=5.0)を用いて、全量を1Lとし、40℃、18時間撹拌して反応を行った。その溶液をセルロースチューブ(三光純薬、UC30−32−100、分画分子量 12000〜14000)にいれ、蒸留水に対して、3日間、透析を行った。得られた水溶液を−80℃で凍結させ、凍結乾燥してE50のカチオン化ゼラチンを得た。
E50のカチオン化ゼラチン1.0gに蒸留水9.0ml加え、室温下、1時間膨潤させた後、40℃、1時間撹拌し、溶解させた。2×2cm2ポリプロピレン製バランスディッシュ(BIOBIK)に500μlずつ流延し、4℃、12時間静置してゲル化させた。このゲルを0.01M塩酸(ナカライテスク、code 37318−75、lot No. L5F5508)18mlとアセトン(キシダ化学、code 000−00306)42mlを混合し、ガラスシャーレに20mlずつ分けた。それぞれのシャーレに25%グルタルアルデヒド水溶液(ナカライテスク、code 17003−92、lot No. M5B8118)を、それぞれ12.8、24.8、62.4μL加えた。
その架橋溶液内に、一シャーレ当たり5枚のハイドロゲルを浸漬し、4℃、24時間架橋反応を行った。反応後のハイドロゲルは、0.1Mグリシン(和光純薬、code 077−00735、lot No. SDN−1C62)水溶液に、室温下1時間浸漬して未反応のアルデヒド基をブロックした後、2回蒸留水中で一時間浸漬し、グリシンを洗浄した。得られたハイドロゲルを凍結乾燥して、それぞれ含水率99.3%、96.4%、91.8%のE50のカチオン化ゼラチンハイドロゲルを得た。
なお、E10、E3、E0.5のカチオン化ゼラチンは、E50のカチオン化ゼラチンの製造方法と同様にして、適宜カチオン化の程度を調整して作製した。なお、E10、E3、E0.5のカチオン化ゼラチンハイドロゲルの含水率は80%以上99.8%以下とした。
(ii)PI=5
PI=5は、牛骨由来でアルカリ処理した(等電点つまりPIが5)のゼラチンである。このPI=5のゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してPI=5のゼラチンハイドロゲルを作製した。
(iii)PI=9
PI=9は、豚皮由来で酸処理した(等電点つまりPIが9)のゼラチンである。このPI=9のゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してPI=9のゼラチンハイドロゲルを作製した。
(iv)アニオン化ゼラチン(アニオン化率61%)
アニオン化ゼラチン(アニオン化率61%)は、カチオン化ゼラチンとは反対にアミノ基を減じたゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋して作製したハイドロゲルである。なお、アニオン化ゼラチンは、Pl=5のゼラチンハイドロゲルを作製するのに用いた架橋前のゼラチンのアミノ基に無水コハク酸を導入してアニオン化される。また、アニオン化率とは、上記TNBS法により完成したアニオン化ゼラチンのアミノ基を定量して、元のPl=5のゼラチンのアミノ基の何%に無水コハク酸を導入したかを表す指標である。つまりアニオン化率61%とは、元のアミノ基の61%が無水コハク酸に置き換わったと言う意味である。このアニオン化ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してアニオン性のゼラチンハイドロゲルを作製した。
なお、アニオン化ゼラチンについて、より詳しく説明すると、アニオン化ゼラチン(アニオン化率61%)は、pI=5のゼラチンを12.5%含むDMSO溶液16.2gに6.0% 無水コハク酸 DMSO溶液 9.05gをくわえ、37℃、1hr攪拌後、透析し、凍結乾燥したものである。また、アニオン化率=(アニオン化ゼラチンの一分子あたりのアミノ基の数)/(pI=5 ゼラチン一分子あたりのアミノ基の数)*100(%)の式が成り立つ。
(v)SM50
SM50はE50のカチオン化ゼラチンの作製方法のエチレンジアミンをスペルミンにかえたカチオン化ゼラチンである。このSM50のカチオン化ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してSM50のカチオン性のゼラチンハイドロゲルを作製した。
(vi)疎水基導入ゼラチン(C10)
疎水基導入ゼラチンを作製するために、まず、1.0gのpI=5のゼラチン/15ml 0.1M MES バッファ(pH 5.6)溶液にドデシルアミン 0.186gを加えた。その後、濃塩酸でpH 5.6に調整した。そして、0.0962g 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/10ml 0.1M MES バッファ(pH 5.6)溶液を、このゼラチン溶液に加え、40℃、18時間反応させた。溶液を透析した後、凍結乾燥して疎水基導入ゼラチンを得た。この疎水基導入ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋して疎水基導入ゼラチンハイドロゲルを作製した。
(vii)PLA−g−ゼラチン(分子量1000、グラフト量1.24)
PLA−g−ゼラチンを作製するために、まず、1.0gのpI=5のゼラチンにDMSO 30mlを加え、37℃、2日間攪拌した。その後、PLA(分子量 1000)37.5mg、ジスクシニルカーボネート 115mg、N,N’−ジメチルアミノピリ
ジン 55.1mgをDMSO 30mlに加え、37℃、6時間攪拌し、PLAの末端水酸基を活性化した。そのPLA DMSO溶液を上の、ゼラチン DMSO溶液に加え、37 ℃、12 時間反応させた。得られた溶液を透析、凍結乾燥してPLA−g−ゼラチンを得た。このPLA−g−ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してPLA−g−ゼラチンハイドロゲルを作製した。
(viii)コレステロール−g−ゼラチン(グラフト量13)
コレステロール−g−ゼラチンを作製するために、まず、pI=5のゼラチン 1.0gにDMSO 15gを加え、2日間攪拌して、溶解させた。その後、ジスクシニルカーボネート 28.8mgに、DMSO 5gを加えた。さらに、N,N’−ジメチルアミ
ノピリジン 13.8mgにDMSO 5gを加えた。次に、コレステロール 14.5mgをピリジン 10mlに溶解させた。そして、ジスクシニルカーボネートDMSO溶液、N,N’−ジメチルアミノピリジン DMSO溶液、コレステロールピリジン溶液を
混合し、60℃、3時間攪拌した。この溶液をゼラチン DMSO溶液に攪拌しながらゆっくり加えて、37℃、オーバーナイトで反応させた。反応溶液を透析、ろ過、凍結乾燥しコレステロール−g−ゼラチンを得た。このコレステロール−g−ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してコレステロール−g−ゼラチンハイドロゲルを作製した。
(ix)E50+疎水基導入ゼラチン
E50+疎水基導入ゼラチンを作製するにはE50と疎水基導入ゼラチンとの混合割合は1:1となるように作製した。このE50+疎水基導入ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してE50+疎水基導入ゼラチンハイドロゲルを作製した。
(x)ガラクトース導入ゼラチン
ガラクトース導入ゼラチンを作製するには、pI=9 ゼラチン 100mgを0.1M 炭酸緩衝液 10ml(pH=9.5)に溶解させ、galactopyranosyl phenyl isothiocyanate 8.60mgを加え、室温下、20時間攪拌した。その後、PD−10カラムを用いて、未反応のgalactopyranosyl phenyl isothiocyanateを除き、未反応のgalactopyranosyl phenyl isothiocyanateの量を282nmの吸光度を測定することから求め、グラフト量を算出した。グラフト量は、ゼラチン一分子あたりのgalactose導入量とし、25.6モル/モルゼラチンであった。このガラクトース導入ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してガラクトース導入ゼラチンハイドロゲルを作製した。
(xi)マンノース導入ゼラチン
マンノース導入ゼラチンを作製するには、pI=9 ゼラチン 100mgを0.1M 炭酸緩衝液 10ml(pH=9.5)に溶解させ、mannopyranosyl phenyl isothiocyanate 8.83mgを加え、室温下、20時間攪拌した。その後、PD−10カラムを用いて、未反応のmannopyranosyl phenyl isothiocyanateを除き、未反応のmannopyranosyl phenyl isothiocyanateの量を282nmの吸光度を測定することから求め、グラフト量を算出した。グラフト量は、ゼラチン一分子あたりのmannose導入量とし、29.2モル/モルゼラチンであった。このマンノース導入ゼラチンをグルタルアルデヒドにより架橋してマンノース導入ゼラチンハイドロゲルを作製した。
<2.組換ヒトガレクチン−1 インビトロ徐放試験>
100μg/ml 組換ヒトガレクチン−1(TECHNE Corporation、code 21152X)PBS 200μlに、Na125I(Perkinelmer life and analytical sciences、code NEZ033 I122904)0.1M NaOH 水溶液 5μlと0.2mg/mlクロラミンT(ナカライテスク、code 08005−52、lot No. M2T9497)0.5M リン酸カリウム緩衝液(pH=7.5、0.5M NaCl)100μlを加えて、2分間振とうした後、4mg/ml 二亜硫酸ナトリウム(ナカライテスク、code 316−09、lot No. M7B95)水溶液100μlを加えて、さらに2分間振とうした。
反応液をPD−10 カラム(amersham biosciences、code 17−0851−01)に通し、500μlごとのフラクションをauto well Gamma system(Aloka、ARC−300)を用いて測定し、ラベル化組換ヒトガレクチン−1と未反応のNa125Iに分けた。
上述のようにクロラミン T法を用いて放射標識した組換ヒトガレクチン−1 水溶液 20μlをPI=5、PI=9、アニオン化ゼラチン、E50、SM50、疎水基導入ゼラチンE50+疎水基導入ゼラチン、PLA−g−ゼラチン、コレステロール−g−ゼラチンの種々のカチオン化ゼラチンハイドロゲル 2mgに滴下し、4℃、オーバーナイトで含浸した。サンプルチューブに入れ、PBS(日水製薬、code 05913)1mlを加えて37℃、100rpmで浸透した。
0.5、1、2、4、8、12、24時間後に、PBSを全量抜き取り、サンプル溶液とした。PBS 1mlを新たに加え、引き続き37℃で振とうした。サンプル溶液の放射活性を測定し、残存量を測定した。得られた測定結果を図1に示す。
図1に示すように、インビトロ徐放試験では、上記のような多種のハイドロゲルを用いて組換ヒトガレクチン−1の徐放に最も適したハイドロゲルを実験によって確かめた。その結果、PI=5、コレステロール−g−ゼラチン、アニオン化ゼラチン(アニオン化率61%)のゼラチンハイドロゲルでは、組換ヒトガレクチン−1の放出量の増大が急激であり、充分な組換ヒトガレクチン−1の徐放性が実現しなかった。
しかし、PI=9、E50+疎水基導入ゼラチン、PLA−g−ゼラチン、疎水基導入ゼラチン、SM50のカチオン化ゼラチン、E50のカチオン化ゼラチンでは、組換ヒトガレクチン−1の放出量の増大が抑制されており、組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上していることが確認された。すなわち、カチオン性のゼラチンハイドロゲル、等電点pHの高いゼラチンハイドロゲルまたは疎水性のゼラチンハイドロゲルを用いることにより、インビトロでは組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上することを確認した。これらの中でも、総合的にE50およびSM50のハイドロゲルが最も徐放性に優れるとの結論を得たので、E50を中心的に用いて、さらに詳細に以下の追加実験を行った。
<3.組換ヒトガレクチン−1 インビボ短期徐放試験(1回目)>
上述のようにクロラミン T法を用いて放射標識した組換ヒトガレクチン−1 20μlを図2に示したpI=9、E50、SM50、疎水基導入ゼラチン、疎水基導入ゼラチン+E50、PLA−g−ゼラチンの種々のゼラチンハイドロゲル 2mgに滴下し、4℃ オーバーナイトで含浸した。そのハイドロゲルをマウスの背部皮下に埋め込み、1日後に取り出し、その放射活性から残存量を測定した。得られた測定結果を図2に示す。
その結果、インビボでは、カチオン性のゼラチンハイドロゲルを用いた、E50、SM50、疎水基導入ゼラチン+E50の場合には、他の実験サンプルの場合に比べて組換ヒトガレクチン−1の残存量が多く、組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上していることが確認された。すなわち、カチオン性のゼラチンハイドロゲルを用いることにより、インビボでも組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上することを確認した。一方、インビトロでは徐放性の向上効果が認められたPI=9、疎水基導入ゼラチンおよびPLA−g−ゼラチンの実験サンプルでは、組換ヒトガレクチン−1の残存量が少なく、充分な組換ヒトガレクチン−1の徐放性の向上効果が認められなかった。
<4.組換ヒトガレクチン−1 インビボ短期徐放試験(2回目)>
上述のようにクロラミン T法を用いて放射標識した組換ヒトガレクチン−1 20μlを図3に示したpI=9、ガラクトース導入ゼラチン、マンノース導入ゼラチン、E50、SM50、疎水基導入、疎水基+E50の種々のゼラチンハイドロゲル2mgに滴下し、4℃ オーバーナイトで含浸した。そのハイドロゲルをマウスの背部皮下に埋め込み、1日後に取り出し、その放射活性から残存量を測定した。得られた測定結果を図3に示す。
その結果、インビボでは、カチオン性のゼラチンハイドロゲルを用いた、E50、SM50、疎水基導入ゼラチン+E50の場合には、他の実験サンプルの場合に比べて組換ヒトガレクチン−1の残存量が多く、組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上していることが確認された。すなわち、カチオン性のゼラチンハイドロゲルを用いることにより、インビボでも組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上することを、再度の実験によっても同様に確認した。
一方、インビトロでは徐放性の向上効果が認められたPI=9、疎水基導入ゼラチンの実験サンプルでは、再度の実験によっても、同様に組換ヒトガレクチン−1の残存量が少なく、充分な組換ヒトガレクチン−1の徐放性の向上効果が認められなかった。また、ガラクトース導入ゼラチンおよびマンノース導入ゼラチンでは、ある程度の組換ヒトガレクチン−1の徐放性の向上効果は認められたが、E50、SM50、疎水基導入ゼラチン+E50の場合に比べると、組換ヒトガレクチン−1の徐放性の向上効果は充分ではなかった。
<5.組換ヒトガレクチン−1 インビボ徐放試験>
上述のようにクロラミン T法を用いて放射標識した組換ヒトガレクチン−1 20μlを図4のように含水率のそれぞれ異なる種々のカチオン化ゼラチンハイドロゲル(含水率 91.8、96.4、99.3wt%)2mgに滴下し、4℃ オーバーナイトで含浸した。
この組換ヒトガレクチン−1含有ハイドロゲルの放射活性をauto well Gamma systemを用いて測定し、マウス(ddY マウス、メス、5週齢)の背部皮下に埋め込んだ。3、7、14日目に取り出し、ハイドロゲルの放射活性から残存量を測定した。得られた測定結果を図4に示す。ここでは、分解試験の場合と、対照試験の場合の結果を示す。対照試験は、Bolton−hunter試薬(Perkinelmer life and analytical sciences、code NEZ033 I122904)により放射ラベル化したカチオン化ゼラチンハイドロゲルの分解を、同様の手順で行った。
その結果、インビボの分解試験においては、カチオン性のE50ゼラチンハイドロゲルの含水率を91.8wt%、96.4wt%、99.3wt%とした場合、含水率が91.8wt%および96.4wt%の場合には、組換ヒトガレクチン−1の残存量が多く、組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上していることが確認された。なお、これらの中でも、含水率が96.4%の場合には、特に組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上していた。すなわち、含水率が97wt%以下のカチオン性のE50ゼラチンハイドロゲルを用いることにより、インビボの分解試験で組換ヒトガレクチン−1の徐放性が向上することを確認した。また、特に含水率が92wt%以上97wt%以下のカチオン性のE50ゼラチンハイドロゲルを用いることにより、インビボの分解試験で組換ヒトガレクチン−1の徐放性がさらに向上することを確認した。
<6.ガレクチン−1の生理活性についての参考例>
なお、ガレクチン−1の生理活性を確認するために、上記のインビボ徐放試験の実験系と同様のマウスを用いて、麻酔下で成熟マウスの坐骨神経を露出し、凍結損傷による挫滅を行ったのち、挫滅部位の長さを7mmにして切断し、浸透圧ポンプを用いて酸化型ガレクチン−1を挫滅部位に送り、軸索再生に対する効果の検討をあわせて行った。このとき、麻酔下で成熟ラットの坐骨神経を構成するハイ骨神経を切断した。一端をガラスビーズで閉鎖したシリコンチューブ(酸化型ガレクチン−1を添加したコラーゲンゲルを充填)の多端をその中枢側切断端に縫合し、効果の検討などを行った。
その結果、実際に、酸化型ガレクチン−1をインビボの坐骨神経損傷モデルに作用させるとシュワン細胞の増殖・遊走の促進並びに軸索再生の増強が見られた。その抗体を作用させると神経再生に関る諸現象が一斉に低下した。このガレクチン−1の生理活性についての参考例の結果から、酸化型ガレクチン−1をインビボで徐放させることにより、坐骨神経損傷の再生医療に応用できることが示唆される。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、上記実施例では、ガレクチン−1として組換ヒトガレクチン−1を用いたが、天然のヒトガレクチン−1を用いてもよく、これらの一部からなるポリペプチドを用いてもよい。この場合もヒトガレクチン−1の生理活性が発揮され、上記実施例と同様に神経再生の作用効果が得られるためである。
以上のように、本発明にかかる徐放性ハイドロゲル製剤は、哺乳動物の生体内でガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体の溶出を御できるという効果を有し、徐放性ハイドロゲル製剤、徐放性ハイドロゲル組成物、徐放性ハイドロゲルの製造方法、徐放性ハイドロゲルのヒト以外の哺乳動物への投与方法等として有用である。
インビトロ徐放試験の結果を示すグラフである。 インビボ短期徐放試験(1回目)の結果を示すグラフである。 インビボ短期徐放試験(2回目)の結果を示すグラフである。 インビボ徐放試験の結果を示したグラフである。

Claims (7)

  1. カチオン性のゼラチンハイドロゲルと、
    ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体と、
    を含む、徐放性ハイドロゲル製剤。
  2. 請求項1記載の徐放性ハイドロゲル製剤において、
    前記カチオン化ゼラチンハイドロゲルは、
    ゼラチンハイドロゲルの10%以上60%以下のカルボキシル基がアミノ基へ置換されている、徐放性ハイドロゲル製剤。
  3. 請求項1または2記載の徐放性ハイドロゲル製剤において、
    前記カチオン化ゼラチンハイドロゲルは、
    含水率が80%以上99.8%以下である、徐放性ハイドロゲル製剤。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の徐放性ハイドロゲル製剤において、
    前記ガレクチン−1またはガレクチン−1誘導体は、組換ガレクチン−1を含む、徐放性ハイドロゲル製剤。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の徐放性ハイドロゲル製剤において、
    前記ガレクチン−1誘導体は、
    ガレクチン−1のアミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基を置換、欠失、付加してなる変異型ガレクチン−1を含む、徐放性ハイドロゲル製剤。
  6. 請求項5に記載の徐放性ハイドロゲル製剤において、
    前記ガレクチン−1誘導体は、
    前記ガレクチン−1の一部または前記ガレクチン−1誘導体の一部を含む、徐放性ハイドロゲル製剤。
  7. 請求項1乃至6いずれかに記載の徐放性ハイドロゲル製剤において、
    哺乳動物の脊髄近傍に投与可能に構成されている、徐放性ハイドロゲル製剤。

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