JP2007175823A - 長尺部材の加工方法及びその加工治具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自動車用エンジンの排気マニホルド等の長尺部材を切削加工する際に、ビビリ振動の発生を抑制して、所望の加工精度の得られる工具寿命を向上できる長尺部材の加工方法及びその加工治具を提供する。
【解決手段】 長尺部材の加工方法は、被加工物の長尺方向を略垂直に工作機械に固定し、切削工具を被加工物の上方から下方に移動しつつ加工する。長尺部材の加工治具は、被加工物を(1)加工面を上向きに載置するロケートと、(2)長尺方向に支持部に向け当接固定する締め付け手段と、(3a)長尺方向と略直交方向に当接するロケートと、(3b)長尺方向と略直交方向に、前記(3a)のロケートに向け当接固定する締め付け手段と、(4)長尺方向と略直交し、かつ加工面の近傍で当接するナチュラルクランプと、(5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプに向け当接固定する締め付け手段と、を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、長尺部材を切削加工する際の加工方法及びその加工治具に関し、より詳しくは、自動車用エンジンの排気マニホルド等の長尺部材の切削加工に好適な加工方法及びその加工治具に関する。
自動車用エンジンの排気マニホルド等の長尺部材は、フライス盤やマシニングセンタなどの工作機械により切削加工して製作されている。図5は、鋳造製の排気マニホルドの一例を示す模式図であり、(a)は図示しないエンジンのシリンダヘッドへの取付面51を正面にした平面図、(b)は側面図である。図5に示す排気マニホルド50は、エンジンへの取付フランジ54a〜54d、多数の取付孔52、排気ガスを導入する略円筒形の枝管55a〜55d、この枝管55a〜55dを集合する略円筒形の集合管56、及び排気管との連結部53などから構成される複雑形状の長尺部材である。図5に例示する排気マニホルド50は、4気筒1600cc相当のエンジンに取り付けられ、長尺(長手)方向の全長さLが約450mm、全高さHが約120mm、全幅Bは約115mmと長尺であり、また主要部の肉厚tは3〜4mmと薄肉である。鋳造製の排気マニホルド50は、一般にその材料は鋳鉄や鋳鋼からなり、鋳造後、湯口・湯道・押湯の除去、清浄(砂落し)、鋳仕上げを施して鋳造素材品とした後、エンジンへの取付面51、多数の取付孔52、及び連結部53などに加工を施して完成品とした後、自動車などのエンジンのシリンダヘッドに取り付け使用されている。素材品には、切削加工する部位のひとつである取付面51に加工代sが付与されている。
図6は、従来の排気マニホルドの切削加工における加工方法とその加工治具を示す模式図である。従来の加工方法とその加工治具としては、図6に示すように、排気マニホルド50の取付面51を上向きとして、回転軸が鉛直方向にある図示しない縦型マシニングセンタのパレット61に固定した加工治具62に、突き当て63で位置決めし、複数のロケート65、66(図6では2つのみ示す)に載置し、排気マニホルド50の側面57、58ほかを図示しないクランプで固定した後、縦型マシニングセンタの主軸70を起動して、切削工具である正面フライス71の切れ刃であるチップ72で取付面51の加工代sを切削加工し、さらに切削工具を交換して取付孔52、連結部53などを加工していた。
特許文献1には、被加工物である外形寸法1370×749mmで薄肉部を有する鋳造品(部材)を、横中ぐりフライス盤を用いてフライス削りする際に、被加工物を前記加工治具62に相当する固定具(イケール)に固定するための治具として、樹脂製シートと、固定治具と、支持用ボルトとからなる切削加工における被加工物の固定用治具が開示されている。
特開2000−5956号公報
回転する工具を被加工物に接触させて削る切削加工では、工作機械、治具、工具、被加工物などに発生する振動などにより、被加工物の表面粗さや寸法精度など加工精度の悪化や、工具の早期の損傷(摩耗や欠損)などの悪影響を生ずることがある。特に転削加工のひとつであるフライス切削は、多刃により機械的衝撃が繰り返し加わる断続切削となることから、ビビリ振動を生じやすいという特性を有している。また、加工能率の向上のため、切削速度や切り込み量などの切削条件を厳しくすると、ビビリ振動や衝撃により切れ刃に大きな負担がかかり工具の欠損などにより、その寿命を短縮してしまう。特に被加工物が長尺部材の場合は、被加工物自体の剛性不足や撓みによってもビビリ振動や衝撃が増大しやすいので、加工精度の確保や加工能率の向上が困難で、所望の表面粗さや寸法精度を確保するためには、工具を早期に交換する必要があり加工コストの上昇と生産性の低下を招いていた。さらに加工中の振動や衝撃は工具の摩耗に比例して増大するので、被加工物が難削材からなり切削抵抗が大きいなど、工具の摩耗が進行しやすい場合には、これに起因してビビリ振動や衝撃が助長され、所望の加工精度の得られる工具寿命を短縮していた。
図6のように、排気マニホルド50の取付面51を、正面フライス71で回転方向をn、送り方向をfとして切削すると、切削力の一部はロケート65、66から加工治具62の治具ベース62aを介してパレット61に伝達されるが、主切削力は横方向(矢印Cで示す)に作用する。主切削力Cを受けて撓みや歪が生じやすい突き当て63などの加工治具62を構成する部材を、通常考え得る程度で厚肉にするなどして剛性を増しても、加工中のビビリ振動と衝撃を抑制することは困難で、正面フライス71のチップ72の摩耗が進行すると、取付面51に波状の紋様が発生して表面粗さを悪化することがあった。取付面51の表面粗さが悪いと排気マニホルド50をエンジンに取り付け使用した際に排気ガスが漏洩する原因となる。表面粗さを所望の範囲に入れるためには、ビビリ振動が発生する前に、或いはビビリ振動が比較的軽微な段階でチップ72を交換する必要があった。
また、排気マニホルド50は長尺であるうえに、複雑形状で、かつ主要部は薄肉の枝管55a〜55dや集合管56から構成される。このためエンジンに取り付け使用した際には問題にならないものの、大きな切削力のかかる加工時には、排気マニホルド50自体の剛性不足や撓みやすさからビビリ振動を生じやすい。このため断続切削となるフライス切削では、チップ72の摩耗や欠損など損傷を生じやすく、表面粗さや寸法精度などの加工精度を確保するためはチップ72を早期に交換する必要があり、加工コストの上昇と加工能率の低下を招いていた。なお、排気マニホルド50自体の形状、寸法を変更して、その剛性や撓みを改善することも考えられるが、エンジンの軽量化などの要求特性に関わる仕様、シリンダーヘッドや排気管などとの寸法、干渉、組み付け関係などの設計事項、さらに排気マニホルド50の鋳造素材品としての鋳造性など、多岐に亘り影響を及ぼすことから排気マニホルド50自体の形状、寸法を変更することは容易ではない。
また、図6に示す従来の加工方法では、切削された切屑が正面フライス71の進行方向に溜まって排出されにくく、切屑が取付面51とチップ72との間に噛み込んだり、チップ72に絡んで付着するなどして切削の障害となり、その結果、加工面を擦過して表面粗さなど加工精度の低下を招き、またチップ72の寿命を短縮したり、しかも、噛み込んだり付着した切屑が加工時の振動や衝撃の一因となるおそれもあった。
また、近年、エンジンからの排気ガス温度の上昇に伴って排気マニホルドにも耐熱性が要求され、その材料として鋳鉄や鋳鋼のなかでも耐熱性に優れた高Si球状黒鉛鋳鉄、オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄などの耐熱鋳鉄や、フェライト系、或いはオーステナイト系の耐熱鋳鋼が多く採用されてきている。しかし、耐熱鋳鉄や耐熱鋳鋼は耐熱性に優れるものの、一般的には機械加工の観点からは被削性の悪い難削材料である。排気マニホルド50の材料を難削材とした場合、長尺部材であることに加え、切削抵抗の増大によりチップ72の摩耗を助長するのみならず、ビビリ振動と衝撃の発生傾向を一層増大させる。
排気マニホルド50等の長尺部材、なかでも難削材の切削加工においては、上記した種々の問題点を抱えている。このため図6に示す従来の加工方法とその加工治具では、所望の表面粗さや寸法精度を確保するために切削工具であるチップ72の交換頻度を多くする必要があり、チップ72当りの加工数の減少、即ち工具寿命の短縮を招いていた。
特許文献1に開示された固定用治具は、切削加工する被加工物を工作機械のイケール、定盤などの固定具に取付固定する際に、被加工物と固定具の取付座面との間に軟質の樹脂製シートを介在させて固定手段により押圧固定することにより、樹脂シートが被加工物の取付面に密着して被加工物が固定具の取付座面に安定して固定され、また、振動エネルギの吸収性を有する樹脂シートにより、被加工物のビビリ振動が抑制され、この結果、被加工物の良好な仕上がり面精度及び寸法精度が得られるとしている。
しかしながら、樹脂シートなどの弾性材料は減衰性を有するものの、一方で剛性が低く、使用方法によっては逆に振動を助長してしまう。また、樹脂シートは強度や耐久性の面で問題がある。さらに特許文献1の固定用治具により振動抑制効果を得るためには、樹脂製シートが被加工物と固定具の取付座面に対して広い接触面積をもって介在し、密着する必要がある。しかし、排気マニホルドなどの複雑形状の長尺部材の場合、加工治具である固定具に取付けるための被加工物の取付面は、取付フランジ54a〜54d、連結部53、薄肉で円筒形の枝管55a〜55dや集合管56などのなかから僅かな部位に限定され、かつ当該取付面の面積は小さい。このため複雑形状の長尺部材に樹脂製シートを適用して振動抑制効果を得ようとしても、介在させる樹脂製シートがシート状ではなく断片状となり、またその接触面積が狭く十分な振動の減衰効果は期待できない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、長尺部材、特に自動車用エンジンの排気マニホルド等を切削加工する際に、ビビリ振動の発生を抑制でき、所望の加工精度の得られる工具寿命を向上できる長尺部材の加工方法及びその加工治具を提供することを目的とする。
本発明者らは、長尺部材の被加工物を切削加工する際にビビリ振動の発生を抑えて加工できないか鋭意研究した。その結果、被加工物を工作機械へ取り付け固定するための加工治具を工夫し、また被加工物の工作機械への固定姿勢と切削工具の送り方向、さらには、被加工物の加工治具への取り付けや切削方式などの加工方法を工夫することで、上記課題が解決できるとの知見を得て本発明に想到した。
即ち、本発明の長尺部材の加工方法は、被加工物の長尺方向を略垂直に工作機械に固定し、切削工具を被加工物の上方から下方に移動しつつ加工することを特徴とする。被加工物の長尺方向を略垂直に工作機械に固定した状態で、被加工物の加工面を上方から下方に向けて加工すれば、被加工物の自重による重力方向と、切削工具の送りに基き垂直下向きに作用する主切削力の方向とが一致し、切削工具の切れ刃が被加工物を重力方向である下方に押し付けるように作用するので、加工中の被加工物の重力方向以外への逃げが生ずることなく、ビビリ振動の発生を抑制して加工することができる。また、本発明の加工方法によれば、切削された切屑が自重で落下してスムーズに排出されるので、加工精度の低下、工具寿命の短縮、さらには加工時の振動や衝撃の助長など切屑の滞留に起因して生ずる切削の障害を低減できる。
また、本発明の長尺部材の加工方法においては、被加工物の長尺方向を略垂直に工作機械に固定するに際して、被加工物はその長尺方向に、工作機械のパレットまたは治具ベースに一体成形または固着した支持部に当接して固定されていることが好ましい。工作機械のパレットまたは治具ベースに一体成形または固着して工作機械と実質的に隙間なく一体化した支持部に被加工物を当接して固定することで、支持部自体の撓みや歪が防止されるとともに、被加工物と、支持部と、工作機械とがリジッドに当接固定され、被加工物の取付け剛性が向上する。この状態で被加工物の加工面を上方から下方に向けて加工すれば、下向きの主切削力が支持部を介して工作機械及び工作機械を据付けた床に伝達作用し、構造物全体で主切削力を受けつつ加工することができる。従って前述の被加工物の重力方向と主切削力方向とが同一となる効果に加えて、支持部自体の撓みや歪の抑制効果と、被加工物の取付け剛性の向上の効果とにより、一層ビビリ振動の発生を抑制した切削加工が可能となる。
また、本発明の長尺部材の加工方法においては、切削工具が被加工物に喰いつく際に、アップカットで切削を開始することが好ましい。
ここで、アップカットについて説明する。切削加工は切削工具を回転させ、被加工物又は切削工具を送って切削する。切削加工には、切削工具の切れ刃の回転による進行方向(以下、「回転方向」という)と、切削工具と被加工物との相対運動方向と、の関係によって決まるアップカット(上向き削り)とダウンカット(下向き削り)の2つの切削方式があり、この違いによって切削量や切屑量、被加工物の加工精度、工具寿命などが変化することが知られている。
図7は、正面フライス81で切削加工する際のアップカットとダウンカットを説明する図であり、切削工具である正面フライス81を、図示しない工作機械の主軸側から見て矢印n方向に回転させつつ、かつ矢印f方向に移動させながら被加工物80の正面を切削する場合を示す。アップカットは図7(a)に示すように、正面フライス81の切削に寄与する側のチップ82の回転方向nと、正面フライス81と被加工物80との相対運動方向Fとが反対(逆向き)となる切削方式である。一方、ダウンカットは図7(b)に示すように、正面フライス81の切削に寄与する側のチップ82の回転方向nと、正面フライス81と被加工物80との相対運動方向Fとが同一となる切削方式である。アップカットとダウンカットは、図7(a)、(b)の紙面鉛直方向で見たときに、正面フライス81の回転中心pが、被加工物80の加工面に含まれない状態、即ち、正面フライス81の回転中心pに対して、右側又は左側の何れか一方側のチップ82で加工する切削方式である。これに対して、図7(c)に示すように、紙面鉛直方向で見たときに、正面フライス81の回転中心pが被加工物80の加工面に含まれる状態で、チップ82を回転方向n、送り方向fで切削していく場合には、正面フライス81の進行方向右側では、チップ82の回転方向nと、正面フライス81と被加工物80との相対運動方向Fとが反対のアップカット(領域uで示す)となり、一方、正面フライス81の進行方向左側では、チップ82の回転方向nと、正面フライス81と被加工物80との相対運動方向Fとが同一のダウンカット(領域dで示す)となり、アップカットとダウンカットの2つの切削方式が共存する合成切削となる。
ダウンカットは、チップ82が噛み込みながら削り進んでいく切削方式で、図7(b)中の斜線で示すような切り込みが行われ、正面フライス81が被加工物80に喰いつく(接触する)際に、最大の切屑厚さから切削が始まり、切削の進行とともに削り終りに向かって次第に切屑厚さが薄くなる。一方、アップカットは、図7(a)中の斜線で示すように、正面フライス81が被加工物80に喰いつく際に、切屑厚さが理論上ゼロから始まり、切削の進行とともに徐々に切屑厚さが厚くなる。また、図7(c)に示す合成切削では、正面フライス81が被加工物80に喰いつく際に、アップカットで切削を開始し、正面フライス81が被加工物80から離れる際に、ダウンカットで切削を終了する。
一般的に金属材料を切削加工する場合には、切削工具が被加工物に喰いつく際、即ち切削の始めにおいて、被加工物への切れ刃の喰いつきが良好で、刃先のすべりが生じにくく工具の摩耗が少ないなどの理由から、ダウンカットによる切削を採用することが多い。しかしながら、ダウンカットは、工具摩耗の点では有利なものの、切れ刃が最大の切屑厚さから切り込みを開始するので、喰いつき時の衝撃が大きく、また工作機械の送りネジのバックラッシュ(遊び)により送りの際に振動を生じやすく、これらに起因して加工時の衝撃や振動、工具の欠損を発生して、良好な加工精度を確保することが困難なうえ、工具寿命も低下するという問題がある。また、被加工物が長尺部材の場合には、部材自体の剛性不足や撓みにより振動が生じやすく、これにダウンカットによる衝撃がくわわると、ビビリ振動が増大して上記の問題が一層助長される。さらに被加工物が難削材などで切削速度を低くせざるを得ない場合に、切れ刃が噛み込みながら切削するダウンカットで切削すると、構成刃先の生成が促進されて表面粗さの悪化を招く。
本発明の長尺部材の加工方法においては、好ましくはアップカットのみの切削またはアップカットとダウンカットの合成切削による切削方式を選択することで、切削工具が被加工物に喰いつく際、即ち切削の始めにおいて、切削工具の切削に寄与する側の切れ刃の回転方向と、切削工具と被加工物との相対運動方向とが反対となるアップカットで切削を開始するので、切れ刃の被加工物への切り込みがゼロから次第に増加する切削となるので、喰いつき時の衝撃が小さく、加工時のビビリ振動が一層抑制され、良好な加工精度を確保できるとともに、被加工物が長尺部材であっても所望の加工精度の得られる工具寿命を向上できる。
また、被加工物の長尺方向を略垂直に工作機械に固定し、切削工具を被加工物の上方から下方に移動しつつ加工するという加工方法において、ダウンカットで切削した場合には、切削開始の喰いつき時はもとより、切削中も切削工具の切れ刃が被加工物を重力方向とは逆の上方にすくい上げるように作用するので、被加工物が重力方向以外へ逃げる現象を生じてビビリ振動の要因となる。これに対し、本発明の加工方法において、好ましくはアップカットのみの切削またはアップカットとダウンカットの合成切削として、切削工具が被加工物に喰いつく際に、アップカットで切削を開始するようにすれば、喰いつき時から切削中まで、切削工具の切れ刃が被加工物を重力方向である下方に押し付けるように作用しながら切削するので、加工中の被加工物が重力方向以外へ逃げることがなく、ビビリ振動の発生を一層抑制できる。
なお、本発明の長尺部材の加工方法においては、より好ましくは、その加工を、図7(a)に示すように、ダウンカットを含まないアップカットのみによる切削として、切削工具が被加工物に喰いつく際に、アップカットで切削を開始し、切削工具が被加工物から離れる際も、アップカットで切削を終了するようにすれば、喰いつき時や切削中に生ずる衝撃とビビリ振動をより一層効果的に抑制できる。また切削の開始から終了までアップカットのみで切削すれば、工作機械の送りネジのバックラッシュによる振動や、被加工物が難削材などで切削速度を低くした場合に生成しやすい構成刃先の影響などダウンカットに起因する加工時の衝撃や振動、表面粗さなど加工精度の悪化、工具の欠損や寿命の低下といった問題は生じない。
また、本発明の長尺部材の加工方法においては、前記工作機械としては、回転軸が水平方向にある横型マシニングセンタまたは横中ぐりフライス盤を、また前記切削工具としては回転工具を用いることが好ましい。本発明の加工方法で使用できる回転工具としては、フライス、エンドミル等の転削加工具があり、特に正面フライスの使用が好適である。
また、本発明の長尺部材の加工方法においては、被加工物の加工治具への取り付けは、被加工物を、
(1)加工面を上向きにしてロケートに載置し、
(2)長尺方向に支持部に当接し、支持部に向けて締め付け手段で締め付け固定し、
(3)長尺方向と略直交して設けたロケートに当接し、該ロケートに向けて締め付け手段で締め付け固定し、
(4)長尺方向と略直交し、かつ加工面の近傍に設けたナチュラルクランプに当接し、
(5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプに向けて締め付け手段で締め付け固定することを含むことが好ましい。
加工時に被加工物自体の剛性が低く撓みやすい長尺の被加工物を、前記(1)〜(5)を含む工程により加工治具へ取り付けることで、被加工物が加工治具に対して、強固に、しかも密着性の高い状態で安定的に加工治具に取り付け固定され、被加工物の取付け剛性が確保されて、加工時のビビリ振動の発生を抑制した切削加工が可能となる。
本発明の長尺部材の加工方法において、適用して好ましい長尺部材としては、例えば、排気マニホルド、タービンハウジングと排気マニホルドとを一体に鋳造したタービンハウジング一体排気マニホルド、または触媒ケースと排気マニホルドとを一体に鋳造した触媒ケース一体排気マニホルド等の長尺な排気系部品である。本発明の加工方法を前記の長尺な排気系部品に適用すれば、排気系部品が耐熱鋳鉄や耐熱鋳鋼など切削抵抗が大きな難削材からなる場合であっても、排気系部品の所望の表面粗さや寸法精度を確保するための工具寿命を向上でき、加工コストの上昇と加工能率の低下を抑制できるので、安価な排気系部品が得られる。
本発明の長尺部材の加工治具は、被加工物を、
(1)加工面を上向きにして載置するロケートと、
(2)長尺方向に支持部に向け当接固定する締め付け手段と、
(3a)長尺方向と略直交方向に当接するロケートと、
(3b)長尺方向と略直交方向に、前記(3a)のロケートに向け当接固定する締め付け手段と、
(4)長尺方向と略直交し、かつ加工面の近傍で当接するナチュラルクランプと、
(5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプに向け当接固定する締め付け手段と、を有することを特徴とする。
前記(1)〜(5)を有する本発明の加工治具を用いれば、加工時に被加工物自体の剛性が低く撓みやすい長尺の被加工物であっても、被加工物を加工治具に対して、強固に、かつ密着性の高い状態で安定的に取り付け固定できるので、被加工物の取付け剛性が確保されて、加工時のビビリ振動の発生を抑制した切削加工が可能となる。
以上、説明のとおり、本発明の長尺部材の加工方法及び加工治具によれば、長尺部材、特に自動車用エンジンの排気マニホルド等を切削加工する際に、ビビリ振動の発生を抑制でき、所望の加工精度の得られる工具寿命を向上できる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図4は、本発明の実施の形態の加工方法の概要を示す模式図であり、排気マニホルド50の加工方法における、(a)は取付工程で排気マニホルド50の長尺方向を略水平にした状態、(b)は加工工程で排気マニホルド50の長尺方向を略垂直にした状態を示す。
取付工程である図4(a)に示すように、排気マニホルド50は、パレットチェンジャが装備された図示しない横型マシニングセンタのパレット11と一体又は固定された加工治具12に、切削加工部位であるエンジンへの取付面51を上向きに、支持部14に当接して取り付け固定する。支持部14はボルト17でパレット11に固着され、実質的に隙間なくパレット11と一体化されている。次に、図示しないチルト機構によりパレット11と加工治具12とを天地方向に旋回(矢印Aで示す)するとともに、パレット11が横型マシニングセンタのテーブルに強固にクランプされる。こうして排気マニホルド50の長尺方向を略水平から略垂直の姿勢とし、加工工程である図4(b)の状態とする。加工工程では図4(b)に示すように、横型マシニングセンタの主軸20に取り付けた回転工具である正面フライス21を、回転方向nで回転させて、排気マニホルド50の上方から下方に向けて送り方向fで移動しつつ、植え込まれたチップ22で、取付面51の加工代sを切削加工する。
本実施の形態の加工方法によれば、排気マニホルド50の長尺方向を略垂直の姿勢として横型マシニングセンタに固定した状態で、加工面である取付面51を上方から下方に向けて切削加工するので、排気マニホルド50の重力方向と、正面フライス21の送り方向fに基く垂直下向きの主切削力(矢印Pで示す)の方向が一致する。これにより正面フライス21のチップ22が排気マニホルド50を下方に押し付けながら切削することとなるので、加工中に排気マニホルド50が正面フライス21の重力方向以外の、例えば上方へ逃げることがなく、ビビリ振動の発生を抑制できる。その結果、排気マニホルド50の取付面51に要求される加工精度を確保するためのチップ22の交換頻度を低減でき、チップ22の1回の交換当りの加工数が増加してチップ22の寿命が向上する。
また、排気マニホルド50を耐熱鋳鉄や耐熱鋳鋼など、被削性が悪く切削抵抗の大きな難削材とした場合であっても、また、断続切削をともなうフライス切削であっても、ビビリ振動と衝撃が抑制され、排気マニホルド50の加工精度を確保するためのチップ22の寿命を延長できる。
また、切削された切屑は落下してスムーズに排出されるので、取付面51の表面粗さなど加工精度の低下、チップ22の寿命の短縮、さらには加工時の振動や衝撃の助長など、噛み込んだり付着した切屑の滞留に起因して生ずる切削の障害が低減される。
また、本実施の形態の加工方法によれば、排気マニホルド50は、その長尺方向に、ボルト17でパレット11に固着され、横型マシニングセンタと実質的に隙間やガタがなく一体化した支持部14に当接して固定されているので好ましい。これにより支持部14自体の撓みや歪が防止されるとともに、排気マニホルド50と、支持部14と、横型マシニングセンタとがリジッドに当接固定され、排気マニホルド50の取付け剛性が向上する。この状態で排気マニホルド50の取付面51を上方から下方に向けて加工すれば、下向きの主切削力Pは支持部14、パレット11を介して横型マシニングセンタと横型マシニングセンタを据付けた床に伝達作用するので、高剛性で一体化した構造物全体で主切削力Pを受けつつ加工できる。従って、排気マニホルド50の重力方向と主切削力Pの方向が一致する効果に加えて、支持部14自体の撓みや歪の抑制と、排気マニホルド50の取付け剛性の向上の効果とにより、一層ビビリ振動の発生を抑制することができる。
なお、支持部14はボルト締結以外に、溶接等の接合手段でパレット11に固着してもよいし、パレット11と一体成形してもよい。また、パレット11ではなく治具ベース12aに一体成形または固着してもよい。要は支持部自体の撓みや歪が抑えられ、かつ被加工物と、支持部と、工作機械とがリジッドに当接固定され、被加工物の重力方向と同一の下向きの主切削力を、工作機械及び工作機械を据付けた床に伝達作用させて、構造物全体で切削力を受けつつ加工することができる構造であればよい。
次に、長尺部材の加工治具について説明する。
図2は、図4の詳細を説明する図であって、本発明の実施の形態の加工治具12の要部正面図であり、図3は図2でのE−E断面図である。図2、3の二点鎖線は、長尺部材として例示する排気マニホルド50と切削加工部位であるエンジンへの取付面51を示す。本実施の形態では、排気マニホルド50の加工治具12への取り付け固定は、前述した図4(a)の取付工程で、排気マニホルド50の取付面51を上向きに、その長尺方向を略水平の姿勢で行う場合について例示している。なお、支持部14は、ボルト17でパレット11に固着され、実質的に隙間なくパレット11と一体化されている。また、加工治具12はパレット11に、図示しない締め付け手段により締め付け固定されている。
図2及び図3に示す加工治具12は、排気マニホルド50を、
(1)取付面51を上向き(加工工程で切削工具からみて加工面が正面となる向き)にして載置するロケート1−1〜1−3と、
(2)長尺方向に支持部14に向け当接固定する締め付け手段であるクランプ2と、
(3a)長尺方向と略直交方向に当接するロケート15、16と、
(3b)長尺方向と略直交方向に、前記(3a)のロケート15、16に向け当接固定する締め付け手段であるクランプ3−1、3−2と、
(4)長尺方向と略直交し、かつ加工面である取付面51の近傍で当接するナチュラルクランプ4−1〜4−3と、
(5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプ4−1〜4−3に向け当接固定する締め付け手段であるクランプ5−1〜5−3と、を有している。
上記(1)〜(5)を有する加工治具12により、長尺なうえ複雑形状で薄肉部を含み、加工時に剛性が低く撓みやすい排気マニホルド50を、加工治具12に対して強固に、かつ密着して安定的に取り付け固定できるので、排気マニホルド50の取付け剛性が確保されて、加工時のビビリ振動を抑制した切削加工が可能となる。
さらに、加工治具12は、前記(1)〜(5)に加えて、(6)として被加工物を、加工面の下側で当接するナチュラルクランプを具備してもよい。(6)のナチュラルクランプにより、長尺部材自体の剛性が不十分な場合であっても、ナチュラルクランプで背面から支持(バックサポート)されるので取付け剛性が一層向上して好ましい。具体的には、図2、3に示すように、排気マニホルド50の取付面51の下側で当接するナチュラルクランプ6−1〜6−3を設ける。
クランプ2、3−1、3−2、5−1〜5−3及びナチュラルクランプ4−1〜4−3、6−1〜6−3は、図示しない油圧シーケンスバルブによって圧縮流体で作動させる。締め付け手段としては、油圧など圧縮流体で作動するクランプに限定されず、被加工物を強固に固定できるものであれば、機械的な機構、圧縮空気を利用した機構、モータ等の電機磁気を利用した機構により作動するクランプでもよいし、締結ボルトによる手動の締め付け手段であってもよい。
ナチュラルクランプ4−1〜4−3、6−1〜6−3は、図3の4−2で代表して示すように、スプリング4−2aの付勢力で排気マニホルド50の取付面51の近傍(側面)に当接した後、当接した位置でプランジャ4−2bを油圧でロック(4−2cの多数の矢印で模式的に示す)する構造からなる市販の装置を用いることができる。なお、加工治具12の各クランプやナチュラルクランプへの油圧系統や配管についてはその説明は省略するが、何れも従来の技術からなる装置や設備を適用できる。
また、ナチュラルクランプは、上記したものに限らず、被加工物へ向けて当接するように付勢でき、当接した位置で固定できる機構を備えていればよく、付勢手段としては、スプリングのほかゴム等の弾性体、圧縮流体や圧縮空気で作動するシリンダ、電動モータ等によるアクチュエータ、或いは機械的な嵌合構造によって付勢手段を構成したものなどを用いることができる。また、固定手段としては、油圧など圧縮流体で作動する機構のほか、上記したクランプの締め付け手段同様に、機械的な機構、圧縮空気を利用した機構、モータ等の電機磁気を利用した機構により作動する構造のもの、さらには締結ボルトにより手動で締め付ける構造のものも使用可能である。
次に、長尺部材の加工治具への取り付けについて説明する。
図1は、図4の詳細を説明する図であって、本発明の実施の形態の加工方法である排気マニホルドの加工治具への取り付けと切削方式を示す模式図であり、前述の図2、3に示す加工治具12に排気マニホルド50を取り付け固定する工程を、楕円及び四角で囲んだ符合により示す。本実施の形態では、排気マニホルド50の加工治具12への取り付け固定は、前述した図4(a)の取付工程で、排気マニホルド50の取付面51を上向きに、その長尺方向を略水平の姿勢で行う場合について例示している。
図1〜図3で、排気マニホルド50の加工治具12への取り付け固定は、加工治具12を動作させて以下の工程で行う。即ち、排気マニホルド50を、
(1)取付面51を上向き(加工工程で切削工具からみて加工面が正面となる向き)にしてロケート1−1〜1−3に載置し、
(2)長尺方向に支持部14に当接し、図示しない油圧シーケンスバルブによって作動する締め付け手段であるクランプ2で、長尺方向に支持部14に向けて締め付け固定し、
(3)長尺方向と略直交して設けたロケート15、16に当接し、長尺方向と略直交方向に、ロケート15、16に向けてクランプ3−1、3−2で締め付け固定し、
(4)長尺方向と略直交し、かつ取付面51の近傍に設けたナチュラルクランプ4−1〜4−3のプランジャに当接し、
(5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプ4−1〜4−3に向けてクランプ5−1〜5−3で締め付け固定する。
排気マニホルド50を、前記(1)〜(5)を含む工程により加工治具12へ取り付けることで、長尺なうえ複雑形状で薄肉部を含み、加工時に剛性が低く撓みやすい排気マニホルド50が加工治具12に対して、強固に、しかも密着して安定的に取り付け固定されるので、排気マニホルド50の取付け剛性が確保されて、加工時のビビリ振動の発生を一層抑制した切削加工が可能となる。
さらに、前記(1)〜(5)の工程に加えて、(6)の工程として、被加工物を、加工面の下側に設けたナチュラルクランプに当接する工程を含んでもよい。(6)の工程により、長尺部材自体の剛性が不十分な場合であっても、ナチュラルクランプで背面から支持されるので取付け剛性がより一層向上して好ましい。具体的には、図1〜図3に示すように、排気マニホルド50を、取付面51の下側に設けたナチュラルクランプ6−1〜6−3のプランジャに当接する。(6)の工程により、排気マニホルド50は、前記(1)のロケート1−1〜1−3に加えて、ナチュラルクランプ6−1〜6−3によって支持されるので、取付け剛性が向上する。ナチュラルクランプの当接部位は、剛性向上のためにできるだけ加工面の近傍の下側(裏側)が好ましいが、排気マニホルド50のように加工面である取付面51の近傍の下側(裏側)にナチュラルクランプのプランジャを当接できない形状の場合は、図3に示すように取付面51の下側の枝管に当接してもよい。
ナチュラルクランプの動作は前述したとおり、プランジャ4−2b、6−1b(図3で代表して示す)を作動して排気マニホルド50に当接後、当接した位置でプランジャを油圧でロックする。これにより凹凸の鋳肌面を有する排気マニホルド50とナチュラルクランプとが隙間やガタを生ずることなく接触する。そしてナチュラルクランプの動作に続けて、ナチュラルクランプに向けてクランプで締め付け固定することで、排気マニホルド50は強固に、しかも密着性の高い状態で安定的に加工治具12に固定されビビリ振動が抑えられる。
排気マニホルド50の取付面51の下側に設けたナチュラルクランプ6−1〜6−3で支持する工程(6)を含む場合には、加工時に切削工具と締め付け手段とが干渉するためナチュラルクランプ6−1〜6−3に向けて締め付けるクランプ等を使用できない。しかし、加工時に、排気マニホルド50は切削工具により、重力方向である下方のほかにナチュラルクランプ6−1〜6−3の方向にも押し付けられつつ加工される。従って、締め付け手段を使用したと同様の効果が得られ、排気マニホルド50と加工治具12との密着性が向上してビビリ振動が抑制される。
本実施の形態により排気マニホルド50を取り付け固定した加工治具12を、図4(a)及び(b)で説明したように、天地方向に旋回した後、パレット11を図示しない横型マシニングセンタのテーブルに強固にクランプ締結する。こうして図1に示すように長尺方向が略垂直の姿勢となった排気マニホルド50の取付面51を、図示しない横型マシニングセンタの主軸に取り付けた正面フライス21により、その主軸側から見たときに正面フライス21を、回転方向nで回転させつつ、送り方向fに移動させながら、図1の一点鎖線で示す移動軌跡線のように、上方から下方に向けて、アップカットにより切削する。このとき加工治具12、パレット11、及びテーブルには、送りは与えず、被加工物である排気マニホルド50は固定したまま、正面フライス21のみを移動して切削加工する。
ここで、本実施の形態でのアップカットによる切削について説明する。図1に示す態様では、正面フライス21の回転中心pを、排気マニホルド50の加工面である取付面51の中心線から、紙面向かって左側にオフセットxしている。これにより正面フライス21と取付面51との相対的な位置関係は、紙面鉛直方向で見たときに、正面フライス21の回転中心pが、排気マニホルド50の加工面に含まれない状態、即ち、正面フライス21の回転中心pを挟んで紙面向かって右側に取付面51の全ての加工面が位置することとなる。この状態で正面フライス21を回転方向nに回転すると、正面フライス21に植え込まれた紙面向かって右側のチップ22のみが切削に寄与することとなり、該右側のチップ22の回転による進行方向は下向きとなる。そして、この状態で正面フライス21を送り方向fとして移動すると、排気マニホルド50が固定されているので、正面フライス21と排気マニホルド50との相対的な運動方向は矢印Fの方向となる。こうして、チップ22の回転方向nと、正面フライス51と排気マニホルド50との相対運動方向Fとが反対となり、アップカットによる切削が可能となる。
図1に示す本発明の実施の形態の加工方法によれば、排気マニホルド50の長尺方向を略垂直に横型マシニングセンタに固定し、正面フライス21を排気マニホルド50の上方から下方に移動しつつ切削するので、排気マニホルド50の重力方向と主切削力Pの方向が一致し、また正面フライス21のチップ22が排気マニホルド50に喰いつく際に、アップカットにより切削を開始するので、正面フライス21のチップ22が排気マニホルド50を重力方向である下方に押し付けながら切削する。正面フライス21による上方から下方への移動と、喰いつき時にアップカットで切削を開始すること、との相乗効果により加工中に排気マニホルド50が重力方向以外の例えば上方へ逃げることがなくビビリ振動が抑制される。さらにアップカットで切削を開始するのでチップ22の排気マニホルド50への喰いつき時の衝撃とこれによる振動が小さな状態で切削できる。この結果、ビビリ振動や衝撃が一層抑制されるので、部材自体の剛性不足や撓みにより振動が生じやすい排気マニホルド50のような長尺部材であっても、所望の加工精度の得られる工具寿命を向上できる。
また、本実施の形態の加工方法によれば、切削の開始から終了まで、即ち正面フライス21のチップ22が排気マニホルド50に喰いついた後、離れるまで、アップカットのみで切削するので、ダウンカットで懸念される横型マシニングセンタの送りネジのバックラッシュや、切削速度を低くした場合に生成しやすい構成刃先の影響などに起因する加工時の衝撃や振動、表面粗さなど加工精度の悪化、工具の欠損や寿命の低下等の不具合もなく加工できる。
しかも、本実施の形態の加工方法によれば、排気マニホルド50はパレット11に固着され一体化された支持部14に当接して固定されているので、支持部14自体の撓みや歪が防止されるとともに、下向きの主切削力Pが、支持部14、パレット11を介して、横型マシニングセンタと横型マシニングセンタを据付けた床に伝達作用して、構造物全体で主切削力Pを受けつつ加工できるので、一層ビビリ振動の発生を抑制して切削加工でき、所望の加工精度の得られる工具寿命を一層向上できる。
さらに、本実施の形態の加工治具12と該加工治具12への取り付けによれば、排気マニホルド50が加工治具12に対して強固に、かつ密着して安定的に取り付け固定されているので、排気マニホルド50の取付け剛性が確保されて、より一層、加工時のビビリ振動の発生を抑制した切削加工を実現でき、所望の加工精度の得られる工具寿命をより一層向上できる。
図5に示す排気マニホルド50を、化学組成が重量比で、C:0.47%、Si:1.15%、Mn:0.92%、Cr:25.3%、Ni:20.5%、W:3.1%、Nb:1.35%、残部:Feからなる難削材のオーステナイト系耐熱鋳鋼の組成で鋳造後、湯口・湯道・押湯の除去、清浄、鋳仕上げを施して鋳造素材品とした。
(実施例)
前述の実施の形態で述べた本発明の長尺部材の加工方法及び加工治具によって、排気マニホルド50の取付面51の加工代sを、横型マシニングセンタの主軸20に取り付けた正面フライス21を用いて、表1に示す切削条件でフライス切削した。
Figure 2007175823
その結果、排気マニホルド50の加工数が63個まで切削加工中のビビリ振動は発生せずに良好に切削でき、所望の表面粗さや寸法精度など加工精度を維持できた。
(比較例)
一方、比較のため、図6に示す従来の加工方法により、表1と同一の切削条件で排気マニホルド50の取付面51を切削した。その結果、加工数38個と、前記実施例に比較して約6割少ない加工数でビビリ振動が発生し、取付面51に波状の紋様が発生して表面粗さが悪化した。
実施例と比較例の結果から、本発明の長尺部材の加工方法及びその加工治具を用いれば、加工時のビビリ振動の発生が抑えられ、所望の加工精度の得られる工具寿命を延長できることが分かった。特に自動車用エンジンの排気マニホルド等の撓みやすく振動を発生しやすい傾向があり、しかも難削材からなる長尺部材を切削加工する際に、本発明の加工方法とその加工治具を適用すれば、表面粗さや寸法精度を確保するための切削工具の交換頻度を減らして、加工コストの低減と加工能率の向上に有効であることが確認された。
以上、実施の形態及び実施例をもとに説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、切削加工としては、フライス切削のみに限定されず、回転工具としてエンドミルを用いた転削加工のひとつであるエンドミル加工にも適用することができる。また、長尺部材としては、排気系部品だけでなく、シリンダブロック、シリンダヘッド、シリンダヘッドカバー、ベアリングビームなどの長尺部材の加工にも適用可能である。また、本発明の加工治具の支持部、ロケート、締め付け手段のクランプ、ナチュラルクランプの個数は設計事項であって、取付け剛性を確保できれば、被加工物の形状やサイズによって、適宜その個数を増減してもよい。また、切削条件としては、実施例で例示した切削条件に限らず、被加工物の材質とサイズ、要求される加工精度、切削工具の耐久性等を考慮して、切削工具の仕様、切削速度、切り込み量、送り速度等を適宜選択すればよいことは言うまでもない。
実施の形態の加工方法である排気マニホルドの加工治具への取り付けと切削方式を示す模式図である。 実施の形態の加工治具の要部正面図である。 図2でのE−E断面図である。 実施の形態の加工方法の概要を示す模式図であり、(a)は取付工程で排気マニホルドの長尺方向を略水平にした状態、(b)は加工工程で排気マニホルドの長尺方向を略垂直にした状態を示す。 鋳造製の排気マニホルドの一例を示す模式図であり、(a)は取付面を正面にした平面図、(b)は側面図を示す。 従来の排気マニホルドの切削加工における加工方法とその加工治具を示す模式図である。 正面フライスで切削加工する際のアップカットとダウンカットを説明する図である。
符号の説明
1−1、1−2、1−3:ロケート
2、3−1、3−2、5−1、5−2、5−3:クランプ
4−1、4−2、4−3、6−1、6−2、6−3:ナチュラルクランプ
4−2a:スプリング
4−2b、6−2b:プランジャ
11、61:パレット
12、62:加工治具
12a、62a:治具ベース
14:支持部
15、16、65、66:ロケート
20、70:主軸
21、71、81:切削工具(正面フライス)
22、72、82:チップ
50:排気マニホルド
51:取付面
52:取付孔
53:連結部
54a〜54d:取付フランジ
55a〜55d:枝管
56:集合管
57、58:側面
63:突き当て
80:被加工物
B:全幅
H:全高さ
L:全長さ
f:切削工具の送り方向
n:切削工具の回転方向
F:切削工具と被加工物の相対運動方向
C、P:主切削力
s:加工代
t:肉厚
p:回転中心
x:オフセット

Claims (7)

  1. 被加工物の長尺方向を略垂直に工作機械に固定し、切削工具を被加工物の上方から下方に移動しつつ加工することを特徴とする長尺部材の加工方法。
  2. 請求項1に記載の長尺部材の加工方法において、被加工物の前記固定に際して、被加工物は、長尺方向に、工作機械のパレットまたは治具ベースに一体成形または固着した支持部に当接して固定されていることを含むことを特徴とする長尺部材の加工方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の長尺部材の加工方法において、前記加工は、切削工具が被加工物に喰いつく際に、アップカットで切削を開始することを特徴とする長尺部材の加工方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れかに記載の長尺部材の加工方法において、前記工作機械は横型マシニングセンタまたは横中ぐりフライス盤であり、前記切削工具は回転工具であることを特徴とする長尺部材の加工方法。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の長尺部材の加工方法において、被加工物の加工治具への取り付けは、被加工物を、
    (1)加工面を上向きにしてロケートに載置し、
    (2)長尺方向に支持部に当接し、支持部に向けて締め付け手段で締め付け固定し、
    (3)長尺方向と略直交して設けたロケートに当接し、該ロケートに向けて締め付け手段で締め付け固定し、
    (4)長尺方向と略直交し、かつ加工面の近傍に設けたナチュラルクランプに当接し、
    (5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプに向けて締め付け手段で締め付け固定する
    ことを含むことを特徴とする長尺部材の加工方法。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れかに記載の長尺部材の加工方法において、長尺部材が排気マニホルド、タービンハウジング一体排気マニホルド、または触媒ケース一体排気マニホルドであることを特徴とする長尺部材の加工方法。
  7. 長尺部材の加工治具であって、被加工物を、
    (1)加工面を上向きにして載置するロケートと、
    (2)長尺方向に支持部に向け当接固定する締め付け手段と、
    (3a)長尺方向と略直交方向に当接するロケートと、
    (3b)長尺方向と略直交方向に、前記(3a)のロケートに向け当接固定する締め付け手段と、
    (4)長尺方向と略直交し、かつ加工面の近傍で当接するナチュラルクランプと、
    (5)長尺方向と略直交方向に、前記(4)のナチュラルクランプに向け当接固定する締め付け手段と、
    を有することを特徴とする長尺部材の加工治具。
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