JP2007169148A - 炭素構造体の製造方法及び炭素構造体、並びに炭素構造体の集合体及び分散体 - Google Patents
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Abstract
【課題】様々な形状のナノ構造を有する炭素構造体を安価且つ効率的に作製することが可能な炭素構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】含炭素材料をパターンに成形した後、得られたパターンを原形型で被覆し、焼成して炭素化させる。
【選択図】なし
【解決手段】含炭素材料をパターンに成形した後、得られたパターンを原形型で被覆し、焼成して炭素化させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、炭素構造体の製造方法及び炭素構造体、並びに炭素構造体の集合体及び分散体に関する。
ナノメーターサイズの炭素、例えば、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ等の材料が開発されている。これらの材料が有する高機能を利用して、多種の用途に展開するには、粒子やチューブを規則的に配列させる等、組織化して使用することが望まれる。しかしながら、ナノサイズの材料であるため配列させることは難しく、実用上効率が悪かった。
カーボンナノチューブではなく、規則的なナノ構造を有する高機能性の炭素材料としては、シリカメソ多孔体を利用したカーボン材料やハニカム構造を有した炭素材料が開発されている。
具体的に、テンプレートを用いてナノ構造を有する炭素構造体を製造する技術の例として、特許文献1には、メソ多孔性シリカ鋳型を合成し、鋳型内で高分子を重合し、高分子−シリカ複合体を製造した後、これを焼成することで、メソ細孔サイズ(2〜50nm)のナノ多孔性炭素構造体を作製することが開示されている。しかしながら、この方法では、最初にMCM−48、SBA−15などのメソ多孔性シリカ鋳型を合成する必要があるが、界面活性剤の自己組織化を利用するため、作製できる構造は限定されており、任意の構造体を作製できるわけではない。また、メソ多孔性鋳型の合成にはコストがかかり、工業的に利用するには不適である。
一方、テンプレートを用いずにナノ構造を有する炭素構造体を作製する方法の例として、特許文献2には、ポリイミドにエキシマレーザーで孔を空け、それを炭素化することで、微細な貫通孔を有した炭素構造体を作製することが開示されている。しかしながら、この方法では、使用できるポリマーはポリイミドの様に固相炭化過程を経て炭素化されるポリマーに限定されてしまう。また、エキシマレーザーで孔を空けるので、生産効率が悪かった。
また、特許文献2には、液体有機ポリマーを2000Kで蒸発する金属材料で構成した柱状の周期構造を有する型に流し込んで、高温処理によりこの柱状型を蒸発させると同時に、炭素化、黒鉛化する旨の記載もある。しかしながら、この方法では、型の製造に手間とコストがかかり、実用の面でも課題があった。
また、非特許文献1には、ニトロセルロースを用い自己組織化によりハニカム構造を作製した後、それを炭素化することでハニカム炭素構造体を作製することが開示されている。しかしながら、この方法でも、使用できるポリマーはセルロースの様に固相炭化する材料に限定されてしまう。また、ニトロセルロースの自己組織化を利用するため、作製できる構造にも制限がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、様々な形状のナノ構造を有する炭素構造体を安価且つ効率的に作製することが可能な、炭素構造体の製造方法を提供するとともに、それによって得られる新規な炭素構造体、並びにその炭素構造体の集合体及び分散体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、含炭素材料をパターンに成形した後、得られたパターンを原形型で被覆し、焼成して炭素化させることによって、種々のポリマーからなる任意の形状の炭素構造体を効率的に作製することが可能となることを見出した。また、これによって、規則的構造を有する新規な炭素構造体を作製することに成功し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、含炭素材料をパターンに成形した後、得られたパターンを原形型で被覆し、焼成して炭素化させることを特徴とする、炭素構造体の製造方法に存する(請求項1)。
ここで、含炭素材料をパターンに成形する方法が、ナノインプリント法、ソフトリソグラフィ法、及び、自己組織化法からなる群より選ばれる少なくとも1つの方法であることが好ましい(請求項2)。
また、本発明の別の要旨は、上述の炭素構造体の製造方法により得られることを特徴とする、炭素構造体に存する(請求項3)。
ここで、中空部を有することが好ましい(請求項4)。
また、表面に規則的な細孔を有することが好ましい(請求項5)。
また、表面に微細突起が規則的に配列していることが好ましい(請求項6)。
また、本発明の別の要旨は、炭素壁で包囲された中空部を有し、表面に規則的な細孔を有することを特徴とする、炭素構造体に存する(請求項7)。
ここで、該細孔が貫通孔であることが好ましい(請求項8)。
また、本発明の別の要旨は、炭素壁で包囲された中空部を有し、表面に微細突起が規則的に配列していることを特徴とする、炭素構造体に存する(請求項9)。
また、本発明の別の要旨は、炭素壁で包囲された中空部を有する粒子が複数結合していることを特徴とする、炭素構造体に存する(請求項10)。
また、本発明の別の要旨は、上述の炭素構造体が集合してなることを特徴とする、炭素構造体の集合体に存する(請求項11)。
また、本発明の別の要旨は、上述の炭素構造体の集合体が分散媒中に分散されてなることを特徴とする、炭素構造体の分散体に存する(請求項12)。
本発明の炭素構造体の製造方法によれば、含炭素材料をパターンに成形した後、得られたパターンを維持する様に原形型で被覆し、焼成して炭素化させることによって、種々のポリマーからなる任意の形状の炭素構造体を効率的に作製することが可能となる。また、これによって、規則的構造を有する新規な炭素構造体を作製することが可能になる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
[I.炭素構造体の製造方法]
先ず、説明の便宜上、本発明の炭素構造体の製造方法(以下適宜「本発明の製造方法」と略称する。)について説明する。
先ず、説明の便宜上、本発明の炭素構造体の製造方法(以下適宜「本発明の製造方法」と略称する。)について説明する。
本発明の製造方法は、まず、含炭素材料を所望のパターンに成形する(含炭素材料をパターンに成形したものを、以下「前駆体」という場合がある。)。次いで、得られた前駆体のパターンを原形型で被覆する。続いて、この原形型で被覆された前駆体を焼成して炭素化させることにより、任意の形のナノ構造や規則的な構造を有する炭素構造体を作製するものである。この場合、得られた炭素構造体は、前駆体のパターンが維持される態様であることが好ましい。ここで「維持される」とは、厳密な同一性を意味することに限定されず、実質的に維持されている態様も包含する。
[I−1.含炭素材料]
含炭素材料としては、炭素化可能な材料であれば、その種類は特に制限されない。例としては、高分子化合物、ピッチ等が挙げられる。中でも、高分子化合物が好ましく、具体的には、液相炭化が可能な材料又は易熱分解ポリマー含有物質が好ましい。
含炭素材料としては、炭素化可能な材料であれば、その種類は特に制限されない。例としては、高分子化合物、ピッチ等が挙げられる。中でも、高分子化合物が好ましく、具体的には、液相炭化が可能な材料又は易熱分解ポリマー含有物質が好ましい。
液相炭化とは、固体がガラス転移温度(Tg)における流動状態よりも高い流動状態を経て、熱化学反応が液相中で進行し、分子の移動や配向が比較的起こり易い炭素化過程をいう。従って、本発明において「液相炭化が可能な材料」とは、後述する本発明の炭素化条件下の加熱過程を経た場合に塑性変形が可能な材料を指し、一般的な不活性ガス下での炭素化条件での加熱過程での炭素化とは必ずしも一致するものではない。
また、本発明では後述のように、原形型によって被覆した状態で含炭素材料の炭素化を行なうため、熱分解ガスが閉じ込められて含炭素材料の溶融粘度が低下し、通常は固相炭化する熱硬化性高分子等の含炭素材料であっても液相炭化過程を経る場合があるものと考えられる。このため、本発明において「液相炭化が可能な材料」とは、原形型によって包埋された状態で溶融し、液相炭化過程を経る材料を広く指すものであり、いわゆる熱硬化性高分子も本発明では「液相炭化が可能な材料」として使用可能な場合がある。
液相炭化が可能な材料の具体例としては、ピッチ、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライト、フェノール樹脂、レーヨン等が挙げられる。中でも、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマーが好ましい。
一方、易熱分解性ポリマーとは、通常、不活性な雰囲気下で、常圧で、500℃以上に加熱した際に分解するポリマーのことをいう。具体例としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチルポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。これらのポリマーは通常、炭素構造体の製造原料として使用されていないが、本発明の製造方法では、後述する耐熱性材料等の原形型で被覆して炭素化するため、予想に反して炭素化できるものと考えられる。
なお、含炭素材料は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、上述の液相炭化が可能な材料及び/又は易熱分解ポリマーを一種又は二種以上用いることが好ましく、液相炭化が可能な材料を一種又は二種以上用いることが特に好ましい。
但し、以上の説明は飽くまでも一般的なものであり、好ましい含炭素材料の具体的な種類は、後述するように、製造する炭素構造体のパターン(即ち、前駆体のパターン)によっても異なる。従って、使用する含炭素材料の種類は、目的とする炭素構造体のパターンを考慮して適宜選択することが好ましい。
含炭素材料について、以下、より具体的に説明する。
含炭素材料は、後述する炭素化の工程において液相炭化過程を経るものであれば、その種類は特に限定されない。例としては、ピッチ、合成高分子化合物などが挙げられ、合成高分子化合物としては、ポリアクリロニトリルとその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンとその共重合体などが挙げられる。中でも、各種の合成高分子化合物が好ましい。
含炭素材料は、後述する炭素化の工程において液相炭化過程を経るものであれば、その種類は特に限定されない。例としては、ピッチ、合成高分子化合物などが挙げられ、合成高分子化合物としては、ポリアクリロニトリルとその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンとその共重合体などが挙げられる。中でも、各種の合成高分子化合物が好ましい。
合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、ラジカル重合において用いられるモノマーとしては、スチレン、クロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸等の重合性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−(メタ)アクリロイロキシスクシンイミド、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、2−(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、等の重合性カルボン酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸、N−アクリロイル−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類;重合性不飽和ニトリル類;ハロゲン化ビニル類;共役ジエン類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマー類などが挙げられる。
また、付加重合で用いられるようなモノマーも使用できる。この付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ジシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の脂肪族又は芳香族イソシアナート類、ケテン類、エポキシ基含有化合物類、ビニル基含有化合物類などが挙げられる。
更に、合成高分子化合物には、上述したモノマーの他、架橋剤となりうる多官能性化合物を共存させても良い。多官能性化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、ビニル芳香族酸のN−アルキロールアミド(例えばN−メチロール−p−ビニルベンズアミド等)、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。
更に、親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸、スルホン酸、スルホン酸ソーダ、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−アセトアミド、ポリエチレングリコールモノ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
ところで、モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させるが、その際に用いるラジカル重合開始剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。使用できるラジカル系重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt−ブチルペルオクテート、α−クミルペルオキシピバレート及びt−ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤などが挙げられる。
更に、レドックス系開始剤を混合することにより、重合を開始させてもよい。レドックス系開始剤も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、その例としては、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸が挙げられる。なお、個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとの混合物であってもよい。
また、合成高分子化合物として、開環重合等で合成される高分子を使用してもよい。その具体例としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
更に、合成高分子化合物として、加水分解等により合成される高分子を使用しても良い。その具体例としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解等することにより合成されるポリビニルアルコールなどが挙げられる。
[I−2.含炭素材料の成形(前駆体の作製)]
本発明の製造方法では、まず、上述の含炭素材料を所望のパターンに成形し、前駆体を作製する。ここで「パターン」とは、規則性を有する形状のことをいう。形状の全体に規則性が認められるものでも、形状の一部のみに規則性が認められるものでもよい。また、二次元的(平面的)な規則性でも、三次元的(立体的)な規則性でもよい。本発明では、含炭素材料を成形した前駆体のパターンがほぼそのまま、最終的に得られる炭素構造体のパターンとなる。また、含炭素材料をパターンに成形する主な手法としては、ナノインプリント法、ソフトリソグラフィ法、自己組織化法等が挙げられる。これらの手法は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて実施してもよい。規則性とは、ある形状が一定の周期で繰り返し存在すること、又は、ある一定の形状が一定の間隔で配列し、若しくは繰り返し存在することをさす。
本発明の製造方法では、まず、上述の含炭素材料を所望のパターンに成形し、前駆体を作製する。ここで「パターン」とは、規則性を有する形状のことをいう。形状の全体に規則性が認められるものでも、形状の一部のみに規則性が認められるものでもよい。また、二次元的(平面的)な規則性でも、三次元的(立体的)な規則性でもよい。本発明では、含炭素材料を成形した前駆体のパターンがほぼそのまま、最終的に得られる炭素構造体のパターンとなる。また、含炭素材料をパターンに成形する主な手法としては、ナノインプリント法、ソフトリソグラフィ法、自己組織化法等が挙げられる。これらの手法は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて実施してもよい。規則性とは、ある形状が一定の周期で繰り返し存在すること、又は、ある一定の形状が一定の間隔で配列し、若しくは繰り返し存在することをさす。
前駆体の具体的なパターン(即ち、それによって得られる炭素構造体のパターン)は特に制限されず、成形可能なものであれば任意のパターンとすることが可能であるが、代表的な例としては、以下の(i)〜(iii)のパターンが挙げられる。
(i)炭素壁で包囲された中空部を有し、その表面に複数の細孔が規則的に配列している形状。細孔の形状は特に制限されず、様々な形状がありうるが、貫通孔の場合(これを以下「ハニカム状」という場合がある。)と非貫通孔の場合とに分けられ、非貫通孔の場合は、半球状の場合(これを以下「ディンプル状」という場合がある。)とそれ以外の場合(これを以下「凹凸状」という場合がある。)とに分けられる。
なお、本発明において「細孔」とは、例えば正方形であれば一辺が長さ10nmからミクロンのオーダーからなるものであり、特に限定はされない。また、「貫通孔」とは、炭素構造体の少なくとも一部を実質的に貫通している細孔、「非貫通孔」とは、炭素構造体の少なくとも一部を実質的に貫通していない細孔を指す。また、本明細書で「孔」という場合は、ハニカム状パターンにおける「貫通孔」に限らず、後述のディンプル状パターンにおける「半球孔」や多孔質パターンにおける各種の非貫通孔をも含めた細孔を広く指すものとする。「孔径」とは、円形状の細孔の場合、孔の開口形状に対する最大内接円の直径を指し、例えば、孔の開孔形状が実質的に円形状である場合はその円の直径を指し、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径を指す。
(ii)炭素壁で包囲された中空部を有し、その表面に微細突起が規則的に配列している形状(これを以下「微細突起状」という場合がある。)。
(iii)炭素壁で包囲された中空部を有する粒子が複数結合している形状(これを以下「コロイドクリスタル状」という場合がある。)。
上に列記した(i)〜(iii)のパターンは、飽くまでも前駆体や炭素構造体の形状を模式的に捉えたものであって、これらのパターンの中間に位置するものや、これらのうち複数のパターンに該当するものも存在する。更には、これらのパターンはあくまでも代表的なものであり、本発明において含炭素材料を成形するパターン(即ち、前駆体や炭素構造体のパターン)は、これらに制限されるものではない。
上に列記した代表的なパターンを有する前駆体を作製する手法の具体例を、以下に詳しく説明する。但し、以下の説明は飽くまでも例示であって、上述のパターンを得るための手法は以下の手法に限られるものではない。
<a.自己組織化(ハニカム状前駆体の作製)>
ハニカム状のパターンを有する前駆体(以下適宜「ハニカム状前駆体」という。)は、例えば、自己組織化により作製することができる。
ハニカム状のパターンを有する前駆体(以下適宜「ハニカム状前駆体」という。)は、例えば、自己組織化により作製することができる。
具体的には、含炭素材料として両親媒性のポリマーを使用し、これを疎水性有機溶媒に溶解させる。得られた溶液を基板上にキャストし、有機溶媒を蒸散させると同時にキャスト膜の表面で結露させ、結露により生じた微小水滴を蒸発させる。これによって、結露した水滴が鋳型となって、ハニカム状前駆体を得ることができる。
含炭素材料としては、ポリマーを使用する。ポリマーとしては、上述のように、少なくとも両親媒性ポリマーを使用する。両親媒性ポリマーのみを単独で用いてもよいが、両親媒性ポリマーと他の(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーとを併用してもよい。
両親媒性ポリマーの好ましい例としては、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリε−カプロラクトン−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリリンゴ酸−ポリリンゴ酸アルキルエステルブロック共重合体などが挙げられる。また、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸、核酸(DNAやRNA)などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性ポリマーなども、両親媒性ポリマーの好ましい例として挙げられる。なお、これらの両親媒性ポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
両親媒性ポリマーに加えて、他の(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーを併用する場合、その例としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの脂肪族ポリエステル、並びにポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が、有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。なお、これらの(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
この手法でハニカム状前駆体を作製するに当たっては、上述のようにポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させる必要があることから、使用する有機溶媒は非水溶性(疎水性)であることが必要である。疎水性有機溶媒の例としては、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭素化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトンなどの非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。これらの有機溶媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組成及び組み合わせで混合して使用してもよい。
疎水性有機溶媒に溶解させるポリマーの濃度は、通常0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上、また、通常10重量%以下、中でも5重量%以下の範囲が好ましい。ポリマー濃度が低過ぎると得られるフィルムの力学強度が不足する場合がある。一方、ポリマー濃度が高過ぎると十分なハニカム構造が得られない場合がある。なお、二種以上のポリマーを併用する場合は、それらポリマーの合計濃度が上記範囲を満たすようにする。
また、両親媒性ポリマーと他の(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーとを併用する場合、その組成比は特に限定されないが、{両親媒性ポリマーの重量}:{他の(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーの重量}の比が、通常0.1:99.9以上、好ましくは1:99以上、また、通常50:50以下、好ましくは10:90以下の範囲内であることが好ましい。両親媒性ポリマーの比率が低過ぎる場合には、均一なハニカム構造が得るのが困難となる場合があり、また、両親媒性ポリマー比の比率が高過ぎる場合には、得られる前駆体や炭素構造体の安定性、特に力学的な安定性が低下する場合がある。
上に説明した条件でポリマーを疎水性有機溶媒に溶解させ、得られた溶液(以下適宜「ポリマー溶液」と略する。)を基板上にキャストする。基板の材料は特に制限されないが、好ましい例としては、ガラス、金属、シリコンウェハー等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン等の耐有機溶剤性に優れた高分子などを使用できる。基板の形状も特に制限されないが、ポリマー溶液を塗布する面の形状が、前駆体の形状、ひいては炭素構造体の形状を規定することになるので、目的とする炭素構造体の形状に合わせて選択すればよい。通常は、ポリマー溶液の塗布面が平面又は略平面である基板を用いることが好ましい。
ハニカム状のパターンが形成される機構は次の様に考えられる。疎水性有機溶媒が蒸発するとき、潜熱を奪う為に、キャスト膜の表面温度が下がり、微小な水の液滴がポリマー溶液の表面に凝集、付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、このため、水微粒子が凝集して1つの塊になろうとするに際し、安定化される。疎水性有機溶媒が蒸発するに伴い、ヘキサゴナル形状の液滴が最密充填した形で並んでいき、最後に水が蒸発することで、ポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形状が残ることになる。
従って、ハニカム状前駆体を調製する環境としては、
(1)ポリマー溶液を基板上にキャストし、高湿度空気を吹き付けることで疎水性有機溶媒を徐々に蒸散させると同時にキャスト液表面で結露させ、結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;
(2)ポリマー溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、疎水性有機溶媒を蒸散させると同時にキャスト液表面で結露させ、結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;
等が好ましい。
(1)ポリマー溶液を基板上にキャストし、高湿度空気を吹き付けることで疎水性有機溶媒を徐々に蒸散させると同時にキャスト液表面で結露させ、結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;
(2)ポリマー溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、疎水性有機溶媒を蒸散させると同時にキャスト液表面で結露させ、結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;
等が好ましい。
以上の手順によって得られるハニカム状前駆体は、その表面に貫通孔が規則的に配列した形状となる。貫通孔の数は特に制限されず、種々の条件によって異なるが、通常は複数個開いていればよい。貫通孔の密度も特に制限されないが、空孔率の値で、通常1%以上、中でも10%以上、また、通常99%以下、中でも90%以下の範囲が好適である。空孔率の値が高過ぎると、前駆体の強度を保つことが困難となる場合がある。一方、空孔率の値が低過ぎると、実質的に孔を有しない平膜の性能と変わりなくなってしまう場合がある。貫通孔の配列の態様も特に制限されないが、通常は貫通孔がほぼ等間隔を持って1列又は複数列に整列してなる。但し、貫通孔が必ずしも厳密に規則的に配列している必要はなく、目的とする炭素構造体の用途に応じて必要な程度の規則性を備えていればよい。
貫通孔の配列の規則性は、6箇所以上の貫通孔について、隣接する貫通孔の開孔形状の中心又は重心の間の距離(以下「貫通孔間距離」という。)の最大値と最小値との差を、貫通孔間距離の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、好ましくは20%以下の構造を、貫通孔が規則的に配列した構造ということができる。なお、貫通孔間距離は、2000倍以上の走査電子顕微鏡の観察像を基に解析可能である。
ハニカム状前駆体が有する個々の貫通孔の開口形状に特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。ここで、「孔径」とは、孔の開口形状に対する最大内接円の直径を指し、例えば、孔の開孔形状が実質的に円形状である場合はその円の直径を指し、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径を指し、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さを指し、実質的に長方形状である場合はその長方形の短辺の長さを指す(なお、本明細書で「孔」という場合は、ハニカム状パターンにおける「貫通孔」に限らず、後述のディンプル状パターンにおける「半球孔」や多孔質パターンにおける各種の非貫通孔をも含めた細孔を広く指すものとする。)。
また、貫通孔の配列の規則性を高める観点から、貫通孔の孔径は均一であることが好ましい。貫通孔の孔径の規則性は、6箇所以上の貫通孔の孔径の最大値と最小値との差を、これらの孔径の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、中でも20%以下であることが好ましい。
また、ハニカム状前駆体の形状は特に制限されないが、通常はキャスト膜の形状に応じて膜状又は平板状となる。また、その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。また、その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
<b.剥離(微細突起状前駆体の作製)>
微細突起状のパターンを有する前駆体(以下適宜「微細突起状前駆体」という。)は、例えば、上述の自己組織化の手法で得られたハニカム状前駆体を剥離することにより作製することができる。
微細突起状のパターンを有する前駆体(以下適宜「微細突起状前駆体」という。)は、例えば、上述の自己組織化の手法で得られたハニカム状前駆体を剥離することにより作製することができる。
具体的には、上記の手法で得られたハニカム状前駆体に粘着テープを貼り付け、これを引っ張る等の剥離手段によって、ハニカム状前駆体を二分する。これによって、ハニカム構造の破断によって形成された微細な突起が、二分された剥離面に規則的に配列したハニカム状前駆体を得ることができる。
上述の手法で得られる微細突起状前駆体の微細突起の形状や大きさは特に制限されないが、例えば、長さが通常0.1μm以上、50μm以下程度で、先端部分の太さが通常0.01μm以上、20μm以下程度の微細突起が、通常0.1μm以上、100μm以下程度の間隔密度で配列してなる。
突起の配列の規則性は、6箇所以上の突起について、隣接する突起の先端部中心又は根元部中心の間の距離(以下「突起間距離」という。)の最大値と最小値との差を、突起間距離の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、好ましくは20%以下の構造を、突起が規則的に配列した構造ということができる。なお、突起間距離は、2000倍以上の走査電子顕微鏡の観察像を基に解析可能である。
また、構造の規則性を高める観点から、突起の長さは均一であることが好ましい。突起の長さの規則性は、6箇所以上の突起の長さの最大値と最小値との差を、これらの突起の長さの平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、中でも20%以下であることが好ましい。
微細突起状前駆体の厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
<c.転写(ディンプル状前駆体、凹凸状前駆体等の作製>
ディンプル状のパターンを有する前駆体(以下適宜「ディンプル状前駆体」という。)や、凹凸状のパターンを有する前駆体(以下適宜「凹凸状前駆体」という。)は、例えば、上述の自己組織化の手法で得られたハニカム状前駆体等を鋳型とし、又は、後述するナノインプリント法等の手法でパターンを形成した鋳型を作製し、この鋳型を用いて転写を行なうことによって、作製することが可能である。また、転写の条件を調整したり、転写した構造を鋳型として再び転写を行なってもよく、これによって、上述のハニカム状前駆体や微細突起状前駆体を作製することも可能となる。
以下、まずは転写の手法について説明した上で、転写によりディンプル状前駆体、凹凸状前駆体を作製するための手法について、続けて説明する。
ディンプル状のパターンを有する前駆体(以下適宜「ディンプル状前駆体」という。)や、凹凸状のパターンを有する前駆体(以下適宜「凹凸状前駆体」という。)は、例えば、上述の自己組織化の手法で得られたハニカム状前駆体等を鋳型とし、又は、後述するナノインプリント法等の手法でパターンを形成した鋳型を作製し、この鋳型を用いて転写を行なうことによって、作製することが可能である。また、転写の条件を調整したり、転写した構造を鋳型として再び転写を行なってもよく、これによって、上述のハニカム状前駆体や微細突起状前駆体を作製することも可能となる。
以下、まずは転写の手法について説明した上で、転写によりディンプル状前駆体、凹凸状前駆体を作製するための手法について、続けて説明する。
(c−1.転写の手法)
転写の手法は特に限定されず、鋳型となるパターン(これを以下適宜「鋳型パターン」という。)を、転写の対象となる材料(これを以下適宜「転写用材料」という。)に転写できる限り、任意の手法を採用することができる。転写の具体的な手法としては以下の手法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
転写の手法は特に限定されず、鋳型となるパターン(これを以下適宜「鋳型パターン」という。)を、転写の対象となる材料(これを以下適宜「転写用材料」という。)に転写できる限り、任意の手法を採用することができる。転写の具体的な手法としては以下の手法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
・パターンの直接転写:
鋳型パターンに、転写用材料の溶液又は材料自体を塗布し、乾固、光硬化又は熱硬化させた後に、鋳型パターンを剥離又は溶出することによって、転写用材料にパターンを転写することができる。ここで、鋳型パターンの表面処理の有無やその種類等を制御することによって、凹部に対して凸部、凸部に対して凹部のように、鋳型パターンの形状と相補的な形状を形成することも可能であり、また、異なる形状を転写することも可能である。例えば、後述するようにハニカム状前駆体を鋳型としてディンプル状前駆体を作製する場合、ハニカム状前駆体に対して何ら表面処理を行なわずに転写を行なえば、ハニカム状パターンの孔の中に残っている空気のために、パターン転写用材料が孔の内部まで進入せず、ハニカム状パターンの孔の形がそのまま転写されずに、半球状の孔が形成されることになる。一方、ハニカム状前駆体に対して適切な表面処理を行なえば、ハニカム状パターンの孔の形をそのまま鋳型として、それに相補的な突起状のパターンを転写形成することも可能である。
鋳型パターンに、転写用材料の溶液又は材料自体を塗布し、乾固、光硬化又は熱硬化させた後に、鋳型パターンを剥離又は溶出することによって、転写用材料にパターンを転写することができる。ここで、鋳型パターンの表面処理の有無やその種類等を制御することによって、凹部に対して凸部、凸部に対して凹部のように、鋳型パターンの形状と相補的な形状を形成することも可能であり、また、異なる形状を転写することも可能である。例えば、後述するようにハニカム状前駆体を鋳型としてディンプル状前駆体を作製する場合、ハニカム状前駆体に対して何ら表面処理を行なわずに転写を行なえば、ハニカム状パターンの孔の中に残っている空気のために、パターン転写用材料が孔の内部まで進入せず、ハニカム状パターンの孔の形がそのまま転写されずに、半球状の孔が形成されることになる。一方、ハニカム状前駆体に対して適切な表面処理を行なえば、ハニカム状パターンの孔の形をそのまま鋳型として、それに相補的な突起状のパターンを転写形成することも可能である。
パターンの直接転写では、材料間の界面エネルギーを制御し、鋳型パターンの材料が溶出・変形しない条件を選択すれば、基本的に任意の転写用材料を使用することができる。具体例として、直接転写後に転写用材料を炭化して炭素構造体とする場合には、炭化可能な材料である、汎用高分子、エンジニアリングプラスチック、有機微粒子、生分解性・生体適合性材料、熱硬化性材料、撥水性(フッ素樹脂等)材料、ゲルなどの高分子材料や露光又は加熱処理により高分子化又は結晶化するものを使用することができる。一方、後述するように、直接転写後の転写用材料を鋳型として更に転写を行なう場合には、上述した炭化可能な材料の他にも、無機微粒子や、ゾルゲル法を用いた無機酸化物等を用いることも可能である。
・パターン誘導結晶化:
転写用材料を結晶化させながらパターンを転写する手法である。結晶化させたい転写用材料の溶液を鋳型パターンに塗布し、或いは、鋳型パターンとの間に僅かな隙間を持って基板が配置された状態で、鋳型パターンと基板との間のわずかな隙間から、結晶化させたい転写用材料の溶液を注入し、溶媒を蒸発させることによって、転写用材料の微結晶を成長させる。これによって、鋳型パターンが転写された転写用材料の結晶のアレイが形成できる。パターン誘導結晶化では、転写用材料として、主に低分子化合物で結晶性が良好な物質を用いることが好ましい。例えば、有機又は無機の色素又は塩類などが挙げられる。また、鋳型パターンやそのサイズを制御することによって、得られる結晶のサイズや形状を制御することが可能である。
転写用材料を結晶化させながらパターンを転写する手法である。結晶化させたい転写用材料の溶液を鋳型パターンに塗布し、或いは、鋳型パターンとの間に僅かな隙間を持って基板が配置された状態で、鋳型パターンと基板との間のわずかな隙間から、結晶化させたい転写用材料の溶液を注入し、溶媒を蒸発させることによって、転写用材料の微結晶を成長させる。これによって、鋳型パターンが転写された転写用材料の結晶のアレイが形成できる。パターン誘導結晶化では、転写用材料として、主に低分子化合物で結晶性が良好な物質を用いることが好ましい。例えば、有機又は無機の色素又は塩類などが挙げられる。また、鋳型パターンやそのサイズを制御することによって、得られる結晶のサイズや形状を制御することが可能である。
・リソグラフィーによる転写
鋳型パターンをリソグラフィーによって転写用材料に転写する。多段階プロセスが必要になるが、確立されたリソグラフィー技術を応用できる。リソグラフィーによる転写における転写用材料の例としては、レジスト剤が挙げられる。レジスト剤にパターンを転写した後にエッチングなどを行ない、半導体や無機材料のパターン化を行なうことができる。
鋳型パターンをリソグラフィーによって転写用材料に転写する。多段階プロセスが必要になるが、確立されたリソグラフィー技術を応用できる。リソグラフィーによる転写における転写用材料の例としては、レジスト剤が挙げられる。レジスト剤にパターンを転写した後にエッチングなどを行ない、半導体や無機材料のパターン化を行なうことができる。
・多段階プロセス:
本発明では、転写したパターンを更に鋳型として、繰り返し多段階で転写を行なうことによって、最初の鋳型と同様の構造、又はそれに相補的な構造を、様々な材料を用いて作製することができる。この場合も、鋳型パターンの表面処理の有無やその種類、転写の回数等を制御することによって、鋳型パターンの形状をそのまま転写用材料に転写することも可能であり、凹部に対して凸部、凸部に対して凹部のように、鋳型パターンの形状と相補的な形状を形成することも可能であり、更には、異なる形状を転写することも可能である。多段階で転写を行なう場合、転写する中間材料としては、強度が高く、他の材料と混ざりにくい架橋性樹脂などを使用する好ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明では、転写したパターンを更に鋳型として、繰り返し多段階で転写を行なうことによって、最初の鋳型と同様の構造、又はそれに相補的な構造を、様々な材料を用いて作製することができる。この場合も、鋳型パターンの表面処理の有無やその種類、転写の回数等を制御することによって、鋳型パターンの形状をそのまま転写用材料に転写することも可能であり、凹部に対して凸部、凸部に対して凹部のように、鋳型パターンの形状と相補的な形状を形成することも可能であり、更には、異なる形状を転写することも可能である。多段階で転写を行なう場合、転写する中間材料としては、強度が高く、他の材料と混ざりにくい架橋性樹脂などを使用する好ましいが、これらに限定されるものではない。
(c−2.ディンプル状前駆体の作製)
ディンプル状のパターンを有する前駆体(以下適宜「ディンプル状前駆体」という。)は、例えば、上述の自己組織化の手法で得られたハニカム状前駆体を鋳型として、これをパターン転写用材料に転写することにより製造することができる。具体的には、ハニカム状パターンの孔の中に空気が残っている為、パターン転写用材料が孔の内部まで進入せず、ハニカム状パターンの孔の形がそのまま転写されずに、半球状の孔が形成されることになる。
ディンプル状のパターンを有する前駆体(以下適宜「ディンプル状前駆体」という。)は、例えば、上述の自己組織化の手法で得られたハニカム状前駆体を鋳型として、これをパターン転写用材料に転写することにより製造することができる。具体的には、ハニカム状パターンの孔の中に空気が残っている為、パターン転写用材料が孔の内部まで進入せず、ハニカム状パターンの孔の形がそのまま転写されずに、半球状の孔が形成されることになる。
パターン転写用材料(ここではこれがディンプル状前駆体の材料となる。)の種類は、含炭素材料であれば特に制限されない。ハニカム状前駆体の材料と相溶しない材料が好ましいが、相溶する材料間でも、界面制御を行なうことで、転写を行なうことが出来る。また、転写の手法も特に制限されず、上に例示した任意の手法を選択して用いることが可能である。
作製されるディンプル状前駆体の形状は特に制限されない。個々の孔は概ね半球形状を有していればよい。その開口形状にも特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。これらの孔径や孔の形状等の物性は、鋳型パターンの形状や転写条件を調整することによって、適宜制御することが可能である。
孔の配列の規則性は、6箇所以上の孔について、隣接する孔の開孔形状の中心又は重心の間の距離(以下「孔間距離」という。)の最大値と最小値との差を、孔間距離の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、好ましくは20%以下の構造を、孔が規則的に配列した構造ということができる。なお、孔間距離は、2000倍以上の走査電子顕微鏡の観察像を基に解析可能である。
また、孔の配列の規則性を高める観点から、孔の孔径は均一であることが好ましい。孔の孔径の規則性は、6箇所以上の孔の孔径の最大値と最小値との差を、これらの孔径の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、中でも20%以下であることが好ましい。
また、ディンプル状前駆体の全体形状も特に制限されないが、通常は転写の手法に応じた膜状又は平板状となる。また、その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。また、その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
(c−3.凹凸状前駆体の作製)
凹凸状パターンを有する前駆体(以下適宜「凹凸状前駆体」という。)は、非貫通孔を有する前駆体であって、その非貫通孔が半球状でないもの、即ち、上述の「ディンプル状前駆体」に該当しないものを指す。
凹凸状パターンを有する前駆体(以下適宜「凹凸状前駆体」という。)は、非貫通孔を有する前駆体であって、その非貫通孔が半球状でないもの、即ち、上述の「ディンプル状前駆体」に該当しないものを指す。
製造方法は特に限定されるものではないが、例えばナノインプリント技術を利用することができる。例えば、凸凹のパターンを形成したSiでできたモールドを、基板上の液状ポリマー等へ押し付け、パターンを転写する方法を用いることが可能である。
また、マイクロコンタクトプリント技術と呼ばれるソフトリソグラフィの手法を用いることも可能である。この手法は、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)スタンプの凸凹にレジスト等のポリマーをモールドし、基板に押し付けることにより、モールドされたポリマーを基板上に転写し、加熱することでパターン化する。
作製される凹凸状前駆体の形状は特に制限されない。個々の開口形状にも特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。これらの孔径や孔の形状等の物性は、鋳型パターンの形状や転写条件を調整することによって、適宜制御することが可能である。
また、凹凸状前駆体の全体形状も特に制限されないが、通常は転写の手法に応じた膜状又は平板状となる。また、その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。また、その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
<d.コロイドクリスタル法(コロイドクリスタル状前駆体の作製)>
コロイドクリスタル状パターンを有する前駆体(以下適宜「コロイドクリスタル状前駆体」という。)は、含炭素材料からなる、ある程度粒径のそろったコロイド粒子(以下適宜「コロイド前駆体粒子」という。)が、周期的に結合してなる前駆体である。
コロイドクリスタル状パターンを有する前駆体(以下適宜「コロイドクリスタル状前駆体」という。)は、含炭素材料からなる、ある程度粒径のそろったコロイド粒子(以下適宜「コロイド前駆体粒子」という。)が、周期的に結合してなる前駆体である。
コロイド前駆体粒子は、例えば、好ましい含炭素材料として上述した合成高分子化合物を用い、以下の方法で製造することができる。即ち、アクリロニトリル等の液相可能材料のポリマー群の中のモノマーを原料とし、必要に応じて共重合可能なモノマーを併用した乳化重合、ミニエマルション重合、ソープフリー重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合等で、均一な粒径をもつポリアクリロニトリル及びその共重合ポリマー等の粒子をエマルジョンとして得る方法が挙げられる。ここでの共重合可能なモノマーは、易熱分解性ポリマー群の中から選ばれるモノマーであってもよい。また、粒径が極めて均一なコロイド前駆体粒子の別の作製方法としては、ソープフリー重合で得た易熱分解性ポリマー粒子に更にアクリロニトリル等の液相可能材料のポリマー群の中のモノマーを加え、2段階のソープフリー重合を行うことにより、コアシェル構造の均一な粒子をエマルジョンとして得る方法が挙げられる。
これらの重合方法により得られるエマルジョン中のコロイド前駆体粒子は、一般的には粒径5nmから100μmの範囲で、きわめて粒径分布の小さい粒子の集合体として得られる。
コロイドクリスタル状前駆体は、上述のコロイド前駆体粒子が、通常は30個以上凝集し、結合することにより形成される。コロイドクリスタル状前駆体を形成させるには、まず上述のコロイド前駆体粒子を乾燥し、コロイド前駆体粒子のコロイドクリスタルを形成させる。次に、このコロイドクリスタルの状態を安定化するために加熱を行なう。例えばコロイド前駆体粒子を構成する含炭素材料が高分子である場合には、そのガラス転移点以上にコロイドクリスタルを加熱して、コロイド前駆体粒子同士を融着させる。
[I−3.原形型による被覆]
続いて、上述の前駆体(含炭素材料を所望のパターンに成形したもの)を、そのパターンを維持する様に原形型で被覆する。原形型の材料としては、後述の炭素化の際に前駆体のパターンが維持されるように、通常は耐熱性材料を用いる。
続いて、上述の前駆体(含炭素材料を所望のパターンに成形したもの)を、そのパターンを維持する様に原形型で被覆する。原形型の材料としては、後述の炭素化の際に前駆体のパターンが維持されるように、通常は耐熱性材料を用いる。
上記の耐熱性材料は、前駆体が炭素化する温度域以下の温度において、自身の熱変形などにより前駆体の形状に影響を与えないことが望まれる。耐熱性材料としては、50〜500℃の温度域における線熱収縮率が30%以下である材料が好ましく、また、100〜500℃の範囲で明確なガラス転移点(Tg)を持たない材料が好ましい。また、加熱による炭素化後に簡便な方法で除去できる材料が好ましい。
上記の特性を満たす耐熱性材料としては、一般的に無機酸化物が好ましい。具体的には、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、In2O、ZnO、PbO、Y2O3、BaO、これらの混合物などが挙げられる。これらの中では、得られる炭素構造体の純度及び金属不純物の制御の観点から、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2が好ましく、前駆体の炭素化反応と結晶化を安定に進行させる観点から、SiO2が更に好ましい。
前駆体を原形型で被覆する方法としては、上記の無機酸化物の金属アルコキシド等を原料としたゾルゲル法による被覆方法、硝酸塩又はオキシ塩化物塩などの溶媒可溶性の無機化合物の溶液による被覆方法、シリカゾルを前駆体とともにアルコールなどの溶媒中で混合した後に乾燥させ、前駆体表面に付着させる方法などが挙げられる。
また、同様のゾルゲル法による被覆方法で、金属アルコキシド以外で上記の特性を満たす材料として、珪酸ソーダ(水ガラス)が挙げられる。
特に、金属アルコキシドの加水分解により得たゾル溶液を前駆体に塗布する方法、又は、当該加水分解液中に前駆体を分散させた後に乾燥させて前駆体の周囲をゲル化もしくは固化する方法が、ゲルの均一化工程を安定に制御する上で好ましい。
例えば、前駆体をSiO2で被覆する場合の具体的な方法としては、次の方法が例示できる。すなわち、先ず、メタノール、エタノール等のアルコール類の溶液にアルコキシシラン類を加えた後、水を加え、室温で数時間撹拌することにより加水分解させ、シリケートゾル溶液を調製する。このゾル溶液の調製の際に、ゾルの安定性と反応性を制御する上で適当なpHに調節するのが一般的であり、ここで、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、アンモニア等をpH調節剤として加えてもよい。
珪酸ソーダを用いる場合は、上述の金属アルコキシドからゾルを作製する方法の他に、珪酸ソーダのアルコール液に水を加え、イオン交換樹脂と攪拌することでナトリウムと水素の交換反応を行ない、ゾル溶液を調製する方法がある。
次いで、ゾル溶液に前駆体を混合し、室温から40℃で、数時間から数日静置してゲル化に至らせ、前駆体を分散させたシリカゲルを得る方法が挙げられる。
また、斯かる方法の他、前駆体にシリケートゾル溶液をスプレー塗布する方法なども挙げられる。
上述のアルコキシシラン類の具体例としては、テトラアルコキシシラン類であるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、これらそれぞれのオリゴマーの他、アルキルトリアルコキシシラン類であるメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が例示できる。ゲル化のプロセス条件及び被覆時の前駆体粒子の分散性などに応じ、2種類以上のアルコキシシラン類を併用してもよい。
上記のSiO2被覆において、SiO2被覆された前駆体を真空乾燥、又は、熱変形しない範囲で加熱することにより、SiO2中のシロキサン結合の密度を高めることは、被覆成分の耐熱性を高める上で有効である。
[I−4.炭素化]
次に、原形型で被覆された前駆体の炭素化を行なう。前駆体の炭素化は、上述の原形型で表面が被覆された前駆体を、窒素、アルゴン等の加熱時に当該前駆体と反応する物質が存在しない雰囲気下で、加熱して行なう。
次に、原形型で被覆された前駆体の炭素化を行なう。前駆体の炭素化は、上述の原形型で表面が被覆された前駆体を、窒素、アルゴン等の加熱時に当該前駆体と反応する物質が存在しない雰囲気下で、加熱して行なう。
加熱時の雰囲気は、フロー系でも、密閉系でも構わないが、フロー系の方が好ましい。加熱時の圧力は、加圧下でも減圧下でも構わないが、通常は常圧下で行なう。加熱温度は圧力等の条件によっても異なるが、常圧下の場合における加熱温度は、通常500℃以上、好ましくは800℃以上、また、通常1500℃以下、好ましくは1400℃以下の範囲である。加熱は、継続的に所定温度まで上げていっても、段階的に所定温度にまで上げていっても構わない。加熱時間は、加熱温度等の条件によっても異なるが、上述の加熱温度において保持する時間が、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常5時間以下、好ましくは3時間以下の範囲である。この保持時間は必ずしも連続的である必要はない。即ち、上述の加熱温度を一時的に下回ることがあっても、上述の加熱温度に断続的に保持されており、且つ、その時間の合計が前述の保持時間を満たしていればよい。
前駆体は、炭素化させる加熱過程での高温域では熱分解してガスを発生し、その圧力によって前駆体の溶融粘度を低下させる。ここで、含炭素材料として使用するポリマー種を選択したり、酸化反応をかけたり、後述する無機物でのコーティング層の多孔度をコントロールすることで、発生するガス量と溶融粘度をコントロールすることが可能である。ガス量が多い場合は、発生するガスは溶融した含炭素材料の粘度を下げ、溶融した含炭素材料を内部から拡張し、空隙の形成を促進すると推定される。そのガス圧により含炭素材料は、その外表面に塗布された前述の原形型の壁に押しつけられ、その場で炭素化が進行すると考えられる。この条件をコントロールすることで、電子顕微鏡観察で観察できる大きさの中空構造を形成させることも可能である。
[I−5.後処理]
炭素化の後、通常は原形型を除去する等の後処理を行なうことにより、目的とする炭素構造体を得ることができる。
炭素化の後、通常は原形型を除去する等の後処理を行なうことにより、目的とする炭素構造体を得ることができる。
原形型を除去する方法は、原形型の材料に応じて適宜選択すればよいが、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液やフッ酸で原形型を溶解する方法などが挙げられる。このうち、工業的に安全なことから、原形型をアルカリ水溶液で溶解する方法が好ましい。この場合の具体的な手順は、例えば以下の通りである。即ち、炭素化により得られた、原形型で被覆された炭素構造体100質量%に対し、濃度4〜20g/L程度のアルカリ水溶液を通常200質量%以上、好ましくは1000質量%以上使用し、これらを耐圧密閉容器内に入れて密閉した上で、通常80℃以上、好ましくは100℃以上に加熱して、原形型を溶解する(なお、100℃以上に加熱する場合には、耐熱性の密閉容器を用いて反応を行なう)。その後、残った炭素構造体を固液分離して溶液から分離し、回収する。
その他、得られた炭素構造体に対する後処理として、表面改質処理等が挙げられる。
[I−6.炭素構造体の空間部を制御する手法]
なお、得られる炭素構造体における、炭素結晶壁で包囲された空間部の体積の制御を目的として、含炭素材料の種類を選択したり、前駆体を原形型で被覆した後、炭素化過程の前に酸化反応を施したり、前駆体を被覆している原形型の緻密度を制御したりしてもよい。例えば、炭素結晶壁で包囲された空間部の体積を増加させるためには、後述する炭素化の処理において炭素化収率が低くなる含炭素材料を選択したり、酸化反応による架橋が生じやすい含炭素材料を選択し、酸化反応の条件を厳しくしたり、前駆体を被覆している原形型の緻密性を低くして、分解時に発生する揮発分を系外に逃がしながら炭素化を行なう等、様々な手法を用いることができる。また、これらの手法を様々に組み合わせることで、目的とする空間部を有する炭素構造体を作製することが可能である。
なお、得られる炭素構造体における、炭素結晶壁で包囲された空間部の体積の制御を目的として、含炭素材料の種類を選択したり、前駆体を原形型で被覆した後、炭素化過程の前に酸化反応を施したり、前駆体を被覆している原形型の緻密度を制御したりしてもよい。例えば、炭素結晶壁で包囲された空間部の体積を増加させるためには、後述する炭素化の処理において炭素化収率が低くなる含炭素材料を選択したり、酸化反応による架橋が生じやすい含炭素材料を選択し、酸化反応の条件を厳しくしたり、前駆体を被覆している原形型の緻密性を低くして、分解時に発生する揮発分を系外に逃がしながら炭素化を行なう等、様々な手法を用いることができる。また、これらの手法を様々に組み合わせることで、目的とする空間部を有する炭素構造体を作製することが可能である。
炭素化収率が低くなる含炭素材料の種類としては、アクリル樹脂、ポリスチレンなどが挙げられるが、一般に酸化反応による架橋反応が生じにくいと言われているものであれば、特に限定されない。
一方、酸化反応が生じやすい含炭素材料の種類としては、ポリアクリロニトリルとその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ピッチ等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
酸化処理の一般的な条件としては、空気又は酸素雰囲気下、常圧で、通常150℃以上、好ましくは180℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは240℃以下の範囲で、通常1時間以上、また、通常72時間以内、好ましくは24時間以内に亘って加熱する条件が例示できる。酸化処理をすることで、前駆体の液相炭化時の流動粘度が高まり、含炭素材料が分解することで発生するガスを含炭素材料の内部に閉じ込めながらその炭素化を進めることができ、結果として空間部の体積を増加させると考えられる。
前駆体の周囲を包囲している原形型の緻密度を制御する方法としては、原形型の材料として例えばシリケートを用いる場合は、その加水分解や加熱乾燥の条件を制御する方法が挙げられる。具体的には、加水分解をpH=2等の低pH条件下で行ない、加熱乾燥速度を上げた場合には、緻密度の高いシリカゲルが得られる一方で、加水分解をより中性に近いpHで行ない、加熱乾燥速度を下げた場合には、緻密度の低いシリカゲルが得られる。
[I−7.その他]
以上説明した本発明の製造方法によれば、含炭素材料を成形したパターン(即ち、前駆体のパターン)とほぼ同一のパターン、言い換えれば、実質的に同一のパターン(例えば、上述のハニカム状パターン、ディンプル状パターン、凹凸状パターン、微細突起状パターン、コロイドクリスタル状パターン等)を有する炭素構造体が得られる。これによって、様々な形状、特に、規則的なパターンを有するナノ炭素構造体を、安価且つ効率的に作製することが可能となる。
以下、特に上述の従来技術との比較に基づいて、本発明の製造方法の利点を詳述する。
以上説明した本発明の製造方法によれば、含炭素材料を成形したパターン(即ち、前駆体のパターン)とほぼ同一のパターン、言い換えれば、実質的に同一のパターン(例えば、上述のハニカム状パターン、ディンプル状パターン、凹凸状パターン、微細突起状パターン、コロイドクリスタル状パターン等)を有する炭素構造体が得られる。これによって、様々な形状、特に、規則的なパターンを有するナノ炭素構造体を、安価且つ効率的に作製することが可能となる。
以下、特に上述の従来技術との比較に基づいて、本発明の製造方法の利点を詳述する。
上述のように、特許文献1等のテンプレート法では、最初にMCM−48、SBA−15等のメソ多孔性シリカ鋳型を合成する必要があるが、界面活性剤の自己組織化を利用するため、作製できる構造は限定されており、任意の構造体を作製できるわけではない。また、メソ多孔性鋳型の合成にはコストがかかり、工業的に利用するには不適である。
また、特許文献2や非特許文献1等の固相炭化法は、一般的に、加熱によって液相を生じない熱硬化性高分子によって実現され、炭素化中は熱分解の進行にもかかわらず固相を維持し続けるので、出発時の固相の形状がほぼ炭素構造体の形状となる。この様に、固相炭化は、最初のポリマーの形状を保つことには適しているが、原料として熱硬化性高分子を用いる必要があるため、最初の高分子の形状を熱により任意に作製することはできない。このため、例えば、近年発達してきた新しい技術である、熱サイクルナノインプリントの技術を用いることができない。なお、熱サイクルナノインプリントとは、熱可塑性高分子を基盤に塗布し、そのガラス転移温度以上に昇温し、ポリマーを液状とする。その後、Si基板のようなモールドをプレスし、ガラス転移温度以下に冷却後、モールドと基板との引き離しを行なうことで、ナノサイズのパターンを作製する方法である(表面科学、2004年、第25巻、第10号、第18頁)。
更に、熱硬化性高分子を用いて固相炭化法により得られた炭素構造体には、液相炭化で見られるようなマクロ細孔(気孔跡)は形成されない。このため、例えば50nm以上のマクロ細孔を用いて中空構造をコントロールし、炭素構造体を軽量化することは難しかった。
これに対して、本発明の製造方法によれば、含炭素材料をパターンに成形した後にこれを原形型で被覆するので、高価なテンプレートを作製する必要がない。また、含炭素材料として熱可塑性高分子を用いることができるため、熱をかけることで任意のパターンに容易に成形することができ、その結果、任意の形状を有するナノ炭素構造体を容易に作製することができる。更に、使用する含炭素材料を選択したり、作製条件を検討したりすることで、中空の炭素構造体を作製することもできるため、炭素構造体を軽量化することも可能である。
[II.炭素構造体]
次に、本発明の炭素構造体について説明する。
次に、本発明の炭素構造体について説明する。
[II−1.炭素構造体の構造]
本発明の炭素構造体は、上述した本発明の製造方法によって得られたもの、又は、以下の(i)〜(iii)の何れかに挙げる構造を有するものである。
本発明の炭素構造体は、上述した本発明の製造方法によって得られたもの、又は、以下の(i)〜(iii)の何れかに挙げる構造を有するものである。
(i)炭素壁で包囲された中空部を有し、その表面に複数の細孔が規則的に配列している炭素構造体(即ち、上述のハニカム状パターン、ディンプル状パターン、凹凸状パターン等を有する構造体)。
(ii)炭素壁で包囲された中空部を有し、その表面に微細突起が規則的に配列している形状(即ち、上述の微細突起状パターン等を有する構造体)。
(iii)炭素壁で包囲された中空部を有する粒子が複数結合している形状(即ち、上述のコロイドクリスタル状パターン等を有する構造体)。
なお、上述の(i)〜(iii)に挙げる構造を有する炭素構造体は、通常は上述したように本発明の製造方法によって製造されるものであるが、それに制限されるものではない。また、本発明の製造方法によって得られる炭素構造体は、上述の(i)〜(iii)に挙げる構造を有するものが代表的であるが、それら制限されるものではない。以下の説明では、特に断らない限り、これらを総称して「本発明の炭素構造体」と呼ぶものとする。
[II−2.炭素構造体の形状]
本発明の炭素構造体の形状は、その構造によって異なるが、通常は製造に使用した前駆体の形状と概ね同一、言い換えれば、実質的に同一になる。以下、炭素構造体の構造毎に具体的に説明する。
本発明の炭素構造体の形状は、その構造によって異なるが、通常は製造に使用した前駆体の形状と概ね同一、言い換えれば、実質的に同一になる。以下、炭素構造体の構造毎に具体的に説明する。
・ハニカム状炭素構造体:
ハニカム状炭素構造体は、その表面に貫通孔が規則的に配列した形状となる。
ハニカム状炭素構造体が有する貫通孔の数は特に制限されず、種々の条件によって異なるが、通常は複数個開いていればよい。貫通孔の密度も特に制限されないが、空孔率の値で、通常1%以上、中でも10%以上、また、通常99%以下、中でも90%以下の範囲が好適である。空孔率の値が高過ぎると、炭素構造体の強度を保つことが困難となる。一方、空孔率の値が低過ぎると、実質的に孔を有しない平膜の性能と変わりなくなってしまう。貫通孔の配列の態様も特に制限されないが、通常は貫通孔がほぼ等間隔を持って1列又は複数列に整列してなる。但し、貫通孔が必ずしも厳密に規則的に配列している必要はなく、その用途に応じて必要な程度の規則性を備えていればよい。
ハニカム状炭素構造体は、その表面に貫通孔が規則的に配列した形状となる。
ハニカム状炭素構造体が有する貫通孔の数は特に制限されず、種々の条件によって異なるが、通常は複数個開いていればよい。貫通孔の密度も特に制限されないが、空孔率の値で、通常1%以上、中でも10%以上、また、通常99%以下、中でも90%以下の範囲が好適である。空孔率の値が高過ぎると、炭素構造体の強度を保つことが困難となる。一方、空孔率の値が低過ぎると、実質的に孔を有しない平膜の性能と変わりなくなってしまう。貫通孔の配列の態様も特に制限されないが、通常は貫通孔がほぼ等間隔を持って1列又は複数列に整列してなる。但し、貫通孔が必ずしも厳密に規則的に配列している必要はなく、その用途に応じて必要な程度の規則性を備えていればよい。
貫通孔の配列の規則性は、6箇所以上の孔について、隣接する貫通孔の開孔形状の中心又は重心の間の距離(以下「貫通孔間距離」という。)の最大値と最小値との差を、貫通孔間距離の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、好ましくは20%以下の構造を、貫通孔が規則的に配列した構造ということができる。このような規則性を有する炭素構造は、物性発現、例えば任意の特定波長の光線の制御及び熱線制御等の物性の安定性の観点から好ましい。なお、貫通孔間距離は、2000倍以上の走査電子顕微鏡の観察像を基に解析可能である。
また、個々の貫通孔の開口形状にも特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。
また、貫通孔の配列の規則性を高める観点から、貫通孔の孔径は均一であることが好ましい。貫通孔の孔径の規則性は、6箇所以上の貫通孔の孔径の最大値と最小値との差を、これらの孔径の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的にはこの値が通常30%以下、中でも20%以下、更には12%以下であることが好ましい。
また、ハニカム状炭素構造体自体の形状も特に制限されないが、通常はキャスト膜の形状に応じて膜状又は平板状となる。また、その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。また、その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
・微細突起状炭素構造体:
微細突起状炭素構造体の場合、その微細突起の形状や大きさは特に制限されないが、例えば、長さが通常0.1μm以上、50μm以下程度で、先端部分の太さが通常0.01μm以上、20μm以下程度の微細突起が、通常0.1μm以上、100μm以下程度の間隔密度で配列してなる。
微細突起状炭素構造体の場合、その微細突起の形状や大きさは特に制限されないが、例えば、長さが通常0.1μm以上、50μm以下程度で、先端部分の太さが通常0.01μm以上、20μm以下程度の微細突起が、通常0.1μm以上、100μm以下程度の間隔密度で配列してなる。
突起の間隔の規則性は、6箇所以上の突起について、隣接する突起の先端部中心又は根元部中心の間の距離(突起間距離)の最大値と最小値との差を、突起間距離の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、好ましくは20%以下の構造を、突起が規則的に配列した構造ということができる。このような規則性を有する構造は、電解放出等の電気的物性発現の面から好ましい。なお、突起間距離は、2000倍以上の走査電子顕微鏡の観察像を基に解析可能である。
また、構造の規則性を高める観点から、突起の長さは均一であることが好ましい。突起の長さの規則性は、6箇所以上の突起の長さの最大値と最小値との差を、これらの突起の長さの平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、中でも20%以下、更には12%以下であることが好ましい。
微細突起状炭素構造体の厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
・ディンプル状炭素構造体:
ディンプル状炭素構造体の場合、その個々の孔は概ね半球形状を有していればよい。その開口形状にも特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。これらの孔径や孔の形状等の物性は、鋳型パターンの形状や転写条件を調整することによって、適宜制御することが可能である。
ディンプル状炭素構造体の場合、その個々の孔は概ね半球形状を有していればよい。その開口形状にも特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。これらの孔径や孔の形状等の物性は、鋳型パターンの形状や転写条件を調整することによって、適宜制御することが可能である。
孔の配列の規則性は、6箇所以上の孔について、隣接する孔の開孔形状の中心又は重心の間の距離(以下「孔間距離」という。)の最大値と最小値との差を、孔間距離の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、好ましくは20%以下の構造を、孔が規則的に配列した構造ということができる。このような規則性を有する炭素構造は、物性発現、例えば任意の特定波長の光線の制御及び熱線制御等の物性の安定性の観点から好ましい。なお、孔間距離は、2000倍以上の走査電子顕微鏡の観察像を基に解析可能である。
また、孔の配列の規則性を高める観点から、孔の孔径は均一であることが好ましい。孔の孔径の規則性は、6箇所以上の孔の孔径の最大値と最小値との差を、これらの孔径の平均値で除した値(%)を用いて表現することが可能である。一般的には、この値が通常30%以下、中でも20%以下であることが好ましい。
また、ディンプル状炭素構造体の全体形状も特に制限されないが、通常は転写の手法に応じた膜状又は平板状となる。また、その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。また、その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
・凹凸状炭素構造体:
凹凸状炭素構造体の場合、個々の開口形状に特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。これらの孔径や孔の形状等の物性は、鋳型パターンの形状や転写条件を調整することによって、適宜制御することが可能である。
また、凹凸状炭素構造体の全体形状も特に制限されないが、通常は転写の手法に応じた膜状又は平板状となる。その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
凹凸状炭素構造体の場合、個々の開口形状に特に限定はなく、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状等のいかなる形状であってもよい。また、その平均孔径も特に制限されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常20μm以下、中でも10μm以下の範囲が好適である。これらの孔径や孔の形状等の物性は、鋳型パターンの形状や転写条件を調整することによって、適宜制御することが可能である。
また、凹凸状炭素構造体の全体形状も特に制限されないが、通常は転写の手法に応じた膜状又は平板状となる。その大きさも特に限定されないが、平面形状の長径の大きさが、通常1μm以上、中でも5μm以上、また、通常1mm以下、中でも100μm以下の範囲であることが好ましい。その厚さも特に限定されないが、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常100μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
・コロイドクリスタル状炭素構造体:
コロイドクリスタル状炭素構造体の場合、通常はコロイド状の炭素粒子が30個以上凝集し、結合した構造となる。個々の炭素粒子の形状も特に制限されないが、一般的には粒径5nmから100μmの範囲で、極めて粒径分布の小さい粒子の集合体となる。
コロイドクリスタル状炭素構造体の場合、通常はコロイド状の炭素粒子が30個以上凝集し、結合した構造となる。個々の炭素粒子の形状も特に制限されないが、一般的には粒径5nmから100μmの範囲で、極めて粒径分布の小さい粒子の集合体となる。
[II−3.その他]
本発明の炭素構造体は、結晶性であっても、非晶質であっても構わない。上述の様に、使用する前駆体ポリマー、無機物のコーティング層の緻密度をコントロールすることで、結晶性をコントロールすることが可能である。
本発明の炭素構造体は、結晶性であっても、非晶質であっても構わない。上述の様に、使用する前駆体ポリマー、無機物のコーティング層の緻密度をコントロールすることで、結晶性をコントロールすることが可能である。
中でも、本発明の炭素構造体は、結晶性を有することが好ましい。本発明の炭素構造体が結晶性を有する場合、その結晶構造は結晶の方向に応じて大きく3種類に分けられる。
まず、結晶が長手方向に対して垂直に積層した結晶構造が挙げられる。本発明の炭素構造体がこの結晶構造を有する場合、結果として、炭素構造体外周の少なくとも一部が、炭素結晶端が露出した構造、又は、炭素網面のループ状構造を有するようになる。
図6は、本発明の炭素構造体の外周における、炭素結晶端が露出した構造、及び、炭素網面のループ状構造の一例を説明するための図である。具体的に、図6は炭素構造体の外周表面の部分断面を拡大して模式的に示している。また、図6中、左側が炭素構造体の内側、右側が炭素構造体の外側に当たる。さらに、図6においては、炭素結晶の方向を曲線によって模式的に示している。
図6中符号aで表わされる、炭素網面の炭素構造体の表面側末端が閉じていない構造が、炭素構造体の表面に炭素結晶端が露出した構造(以下、適宜「結晶端露出構造」と略す。)に相当する。また、図中符号bで表わされる、炭素網面の炭素構造体の表面側の末端同士が結合している構造が、炭素構造体の表面における炭素網面のループ状構造(以下、適宜「ループ状構造」と略す。)に相当する。なお、ループ状構造は通常、炭素網面20層まで形成される。さらに、炭素構造体の表面形状(結晶端露出構造、ループ状構造)は、80万倍の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)写真によって確認できる。
本発明の炭素構造体において、これらの結晶端露出構造及びループ状構造は、通常は、炭素構造体の外周の少なくとも一部に存在する。なお、炭素繊維業界では、一般に、結晶端露出構造を加熱すると、結晶端に付着している原子などがとれてループ状になるといわれている。
もう一つの結晶構造は、炭素網面が長軸方向に対して略水平に積層しているものである。
さらにもう一つの結晶構造は、炭素網面が炭素壁で包囲された空間部に添うように積層しているものである。ここで、炭素網面は必ずしも長距離(例えば100nm以上)にわたって連続である必要は無く、小さい炭素網面が中空部外周に沿うように略配向して並んでいる場合もある。
なお、炭素壁が結晶である場合には、その結晶の積層方向は、10〜80万倍のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。
また、本発明の炭素構造体は、炭素結晶壁で包囲された中空部を有することを特徴とする。ここで、「中空部を有する」とは、粒子内に完全な中空部を有する場合、及び、中空部が完全には孤立せず、その空間部が外部とつながって開口部を有する場合を含む概念である。また、「炭素壁で包囲されている」とは、広義には、外部と導通していない完全な形態の内部空間部(中空部)を有する場合のみならず、炭素壁の一部が欠落し、形態に関して炭素構造体の内部の空間部が炭素構造体の外部と導通している場合を含む概念である。したがって、本明細書において「中空部」は「空間部」の下位概念である。
本発明の炭素構造体における「中空部」は、1つでも、複数でもよい。なお、中空部は炭素構造体を形成している炭素の体積の通常5%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上の範囲である。また、中空部分の体積は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡により決定できる。炭素壁が厚い場合には、切片等を作製して顕微鏡観察を行なう。なお、本発明の炭素構造体における「中空」とは、空気が存在する場合のみならず、内部まで炭素が充填されていなければよく、当該中空部に液体や他の固体が充填されていてもよい。
本発明の炭素構造体は、パターン構造を有している。このため、例えばハニカム構造炭素については細胞培養基材、フィルター、フォトニック結晶等に利用でき、ピラー構造を有する炭素構造体であれば、電界放出ディスプレイに応用することが可能である。ディンプル状炭素は、光散乱、光拡散防止、細胞培養基材等に利用が可能である。凸凹構造を有する炭素は、親水・疎水性をコントロールする材料、マイクロレオロジー特性を制御した材料として使用可能である。
本発明の炭素構造体の表面特性は、製造時の原形型の表面特性又は製造後の後処理などにより、制御可能である。特に、原形型としてSiO2を使用する場合には、親水性溶媒への濡れ性が向上すると期待される。その原因としては、炭素構造体の表面に水酸基やカルボニル基などが存在していることによるものと推定される。
[III.炭素構造体の集合体]
本発明の炭素構造体の集合体(以下適宜「本発明の集合体」と略する。)は、上述の本発明の炭素構造体からなる集合体である。
本発明の炭素構造体の集合体(以下適宜「本発明の集合体」と略する。)は、上述の本発明の炭素構造体からなる集合体である。
[IV.炭素構造体の分散体]
次に、本発明の炭素構造体の分散体(以下適宜「本発明の分散体」という。)について説明する。本発明の分散体は、上述の本発明の炭素構造体又は本発明の集合体を分散媒中に分散して成ることを特徴とする。
次に、本発明の炭素構造体の分散体(以下適宜「本発明の分散体」という。)について説明する。本発明の分散体は、上述の本発明の炭素構造体又は本発明の集合体を分散媒中に分散して成ることを特徴とする。
分散媒としては、特に限定されず、極性溶媒又は非極性溶媒の何れでもよい。極性溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等カーボネート類などが挙げられ、非極性溶媒としては、各種のアルカン類、芳香族類及びこれらの混合物などが挙げられる。これらの中では、親和性が高く、分散性が良好であるとの観点から、極性溶媒が好ましく、水及びアルコール類が更に好ましい。
なお、炭素構造体に加えて、分散媒に高分散可能な物質、例えば、水溶性樹脂、有機溶可溶樹脂、セメント、シリケート、セラミックス等を更に加えた後、分散媒を除去することにより、高分散複合体を得ることも出来る。
分散媒中の炭素構造体の割合は、通常0.1重量%以上、10重量%以下の範囲である。分散媒中への炭素構造体の分散には、機械的な撹拌の他、ペイントシェイカー等の機械的な振盪方法、超音波照射などの手段を採用することができる。また、必要に応じ界面活性剤を使用してもよい。
なお、表面修飾や、界面活性剤・高分子修飾剤等により、分散性が向上された炭素構造体については、これらの改善手法が施されたままのサンプルを使用して上記粒径分布指標を測定することになる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1:ハニカム状炭素構造体]
先ず、次の要領でハニカム状前駆体を合成した。
先ず、次の要領でハニカム状前駆体を合成した。
ポリマー(含炭素材料)として、平均分子量2.8万のポリカーボネートと、両親媒性ポリアクリルアミドであるCap(正式名称:ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とを、重量比で10:1の割合となるように用いた。これらのポリマーをその合計濃度が5mg/lとなるようにクロロホルムに溶解させ、ポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、直径10cmのガラスシャーレ上に、5mlの厚さとなるようにキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分2lの流量で吹き付け、溶媒であるクロロホルムを蒸発させることによって、ハニカム状パターン構造を有する前駆体を作製した。このハニカム状前駆体は、直径約3.7μmの非貫通孔を有しており、厚みは約5μmであった。
一方、水3.64gとエタノール4.65gとの混合液に、メチルシリケートオリゴマー(三菱化学製「MS51」)5.26gを加えて分散させた後、1mol/Lの塩酸を加えて更に混合し、pH2に調整した。室温で1時間撹拌し、メチルシリケートオリゴマーを加水分解することにより、均一な溶液としてシリカゾルを調製した。
上記のハニカム状前駆体に、上記のシリカゾル1.85gを加え、40℃のホットプレート上で5時間加熱して乾燥し、ハニカム状前駆体を乾燥シリカゲルで被覆した。
次いで、上記の乾燥シリカゲルで被覆されたハニカム状前駆体を、常圧下、窒素雰囲気下のフロー系で、電気炉にて室温から昇温速度5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してハニカム状前駆体を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温まで冷却された12時間後に試料を取り出した。これを1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液60mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解し、分散液の状態とした。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に沈殿を同様の方法で3回水洗することにより、ハニカム状炭素構造体を得た。
上記の炭素構造体をTEM(倍率1万倍)で観察したところ、長径約4μm、短径約3.5μmの貫通孔を有し、約20μm×30μmの平面形状を有する、中空のハニカム状炭素構造体が観察された。得られたハニカム状炭素構造体のTEM観察写真を図1に示す。
図1のTEM観察像において観察された貫通孔のうち隣接する8つについて、各貫通孔の長径及び短径と、貫通孔の重心間の距離とを測定した。なお、各貫通孔の重心は、その貫通孔の長径と短径との交点とした。貫通孔間の最大距離と最小距離との差を平均距離で除した値(%)は5.89であった。また、貫通孔の最大長径と最小長径との差を平均長径で除した値(%)は1.31、貫通孔の最大短径と最小短径との差を平均短径で除した値(%)は2.91であった。
[比較例1]
実施例1と同様の手順で得られたハニカム状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例1と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEM(走査電子顕微鏡)及びTEMで確認したところ、ハニカム状パターンは観察されなかった。
実施例1と同様の手順で得られたハニカム状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例1と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEM(走査電子顕微鏡)及びTEMで確認したところ、ハニカム状パターンは観察されなかった。
[実施例2:微細突起状炭素構造体]
実施例1と同様の手順により、ハニカム状パターンを有するポリマー膜(ハニカム状前駆体)を作製した。次いで、粘着テープをこのポリマー膜の表面に貼り付けた後、厚み方向に剥離することで、微細突起状パターンを有する前駆体(微細突起状前駆体)を作製した。電子顕微鏡による斜め観察の結果、テープ側、ガラスシャーレ側共に規則性の極めて高い微細突起が形成されていることが分かった。また、SEMで確認したところ、この突起の太さは約300nm、長さは約2μmであり、約2.5μmの間隔で並んでいた。
実施例1と同様の手順により、ハニカム状パターンを有するポリマー膜(ハニカム状前駆体)を作製した。次いで、粘着テープをこのポリマー膜の表面に貼り付けた後、厚み方向に剥離することで、微細突起状パターンを有する前駆体(微細突起状前駆体)を作製した。電子顕微鏡による斜め観察の結果、テープ側、ガラスシャーレ側共に規則性の極めて高い微細突起が形成されていることが分かった。また、SEMで確認したところ、この突起の太さは約300nm、長さは約2μmであり、約2.5μmの間隔で並んでいた。
一方、実施例1と同様の手法により、シリカゾルを調製した。
上記の微細突起状前駆体をガラスシャーレから剥がし、上記のシリカゾル1.85gを加え、40℃のホットプレート上で5時間加熱して、微細突起状前駆体を乾燥シリカゲルで被覆した。
上記の微細突起状前駆体をガラスシャーレから剥がし、上記のシリカゾル1.85gを加え、40℃のホットプレート上で5時間加熱して、微細突起状前駆体を乾燥シリカゲルで被覆した。
次いで、この乾燥シリカゲルで被覆された微細突起状前駆体を、実施例1と同様の手順で炭素化した。更に、実施例1と同様の手順でシリカゲルの溶解及び水洗を行なうことにより、微細突起状炭素構造体を得た。
上記の微細突起状炭素構造体をTEM(倍率1万倍)で観察したところ、微細突起の太さは約250nm、長さは約2μmであり、約2.5μmの間隔で並んでいた。得られた微細突起状炭素構造体のTEM観察写真を図2に示す。
図2のTEM観察において、隣接する微細突起9点を選択し、それらの微細突起間の間隔を、各突起の根元部中心間の距離として測定した。得られた突起間距離の最大値と最小値との差を、突起間距離の平均値で除した値(%)は、7.21であった。
[比較例2]
実施例2と同様の手順で得られた微細突起状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例2と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEM及びTEMで確認したところ、微細突起状パターンは観察されなかった。
実施例2と同様の手順で得られた微細突起状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例2と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEM及びTEMで確認したところ、微細突起状パターンは観察されなかった。
[実施例3:ディンプル状炭素構造体]
鋳型として、ハニカム状パターンを有するポリマー膜を、以下の手順により作製した。ハニカム状ポリマー膜としては、実施例1記載のCap単独からなるもの(以下「Cap単独膜」という。)、並びに、Capと下記式に示す構造のPCL(ポリ−ε−カプロラクトン。Mw(重量平均分子量)〜200000、Aldrich社製)とが重量比率1/10で混合されてなるもの(以下「Cap/PCL混合膜」という。)を作製した。Cap単独膜及びCap/PCL混合膜の何れの作製にも、有機溶媒としてはクロロホルムを用いた。
鋳型として、ハニカム状パターンを有するポリマー膜を、以下の手順により作製した。ハニカム状ポリマー膜としては、実施例1記載のCap単独からなるもの(以下「Cap単独膜」という。)、並びに、Capと下記式に示す構造のPCL(ポリ−ε−カプロラクトン。Mw(重量平均分子量)〜200000、Aldrich社製)とが重量比率1/10で混合されてなるもの(以下「Cap/PCL混合膜」という。)を作製した。Cap単独膜及びCap/PCL混合膜の何れの作製にも、有機溶媒としてはクロロホルムを用いた。
Capを0.454g、PCLを4.54g量り取り、1Lのクロロホルムに溶解させて、Cap/PCL溶液を調製した。このCap/PCL溶液を、固体基板(主にガラス)上に5ml滴下し、高湿度(80%)の空気を吹き付けた。滴下後の溶液は次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発し、フィルムが作製された。その後、光学顕微鏡及びSEMで構造を観察すると、ハニカム状パターンを有するポリマー膜が形成されているのが観察された。ポリマー膜が有する孔は、膜内でお互いが連結しており、膜の中心を通る平面に関して上下がほぼ対象となっており、三次元的に結合した構造を持っていた。SEMで観察したところ、その孔径は約5μmであった。
得られたハニカム状ポリマー膜を転写する材料として、熱硬化性樹脂であるPDMS(Dow−corning社製「Sylgard184」)を用いた。硬化前の液状のPDMSをスライドグラス上のハニカム状ポリマー膜上に注ぎ、70℃、2時間で加熱硬化させた。その後、硬化したPDMSをスライドグラスから剥離し、鋳型であるハニカム状ポリマー膜の残滓を除去するためベンゼンで洗浄し、乾燥した。これにより、マイクロレンズアレイ状パターンを有するPDMS膜を作製した。SEMで観察したところ、個々のマイクロレンズ状細孔の直径は約5μmであった。
このマイクロレンズアレイ状パターンを有するPDMS膜を鋳型として、以下の手順により更に転写を行なうことにより、ディンプル状パターンを有する前駆体を作製した。なお、転写する材料(ディンプル状前駆体の材料)としては、乳化重合で作製したアクリロニトリル/メチルアクリレート/メタクリル酸の3元共重合体を用いた。この高分子は以下の様にして作製した。先ず、次の要領でアクリロニトリルとアクリル酸メチルの共重合ポリマー微粒子を合成した。即ち、ドデシル硫酸ナトリウム0.32gを水145gに溶解させ、得られた溶液に、アクリロニトリル12.71g、アクリル酸メチル1.83g、メタアクリル酸0.46g、n−ブチルメルカプタン0.3gの混合物を加え、窒素ガスのフロー下で300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合した。反応停止後、水を除去し、平均粒径130nm(前述の動的光散乱式の粒度分布測定器での測定値)のアクリル樹脂粒子12.5gを含む懸濁液を調製した。この樹脂粒子の元素分析(C、H、N)による窒素量から換算されるアクリロニトリル単位の割合は79.5重量%であり、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるポリスチレン(PSt)換算での重量平均分子量は4.1×104であった。この微粒子を透析し、残留モノマー、開始剤残基等を取り除いた後、80℃で乾燥することにより、アクリロニトリル/メチルアクリレート/メタクリル酸の3元共重合体(以下「3元系ポリマー」と略す場合がある。)を得た。
得られた3元系ポリマーを、DMF(ジメチルホルムアミド)中に濃度10g/L程度となるように溶解させた。得られた3元系ポリマー溶液10mLをガラスシャーレに滴下し、その上からマイクロレンズアレイ状PDMS膜を置いた。4時間真空乾燥した後、PDMS膜を剥離することで、3元系ポリマーからなるディンプル状前駆体が得られた。このディンプル状前駆体の直径をSEMで確認したところ、約5μmであった。
一方、実施例1と同様の手順により、シリカゾルを調製した。
上記のディンプル状前駆体をガラスシャーレから剥がし、上記のシリカゾル1.85gを加え、40℃のホットプレート上で5時間加熱して乾燥させることにより、ディンプル状前駆体を乾燥シリカゲルで被覆した。
上記のディンプル状前駆体をガラスシャーレから剥がし、上記のシリカゾル1.85gを加え、40℃のホットプレート上で5時間加熱して乾燥させることにより、ディンプル状前駆体を乾燥シリカゲルで被覆した。
次いで、上記で得られた乾燥シリカゲルで被覆されたディンプル状前駆体を、実施例1と同様の手順で炭素化した。更に、実施例1と同様の手順でシリカゲルの溶解及び水洗を行なうことにより、ディンプル状炭素構造体を得た。
上記のディンプル状炭素構造体をSEM(倍率5千倍)で観察したところ、直径約5μmの半球状細孔が規則的に配列されたディンプル状パターンが確認された。得られたディンプル状炭素構造体のSEM観察写真を図3に示す。
図3のSEM観察像において観察されたディンプル構造の開口部(孔)のうち8点を選択して、各孔の長径及び短径、並びに隣接する孔の重心間の距離を測定した。なお、各孔の重心は、孔の最大長径又は最大対角線と最小短径又は最小対角線との交点とした。得られた孔間距離の最大値と最小値との差を孔間距離の平均距離で除した値(%)は3.22であった。また、孔の最大長径と最小長径との差を孔の平均長径で除した値(%)は4.12、孔の最大短径と最小短径との差を孔の平均短径で除した値(%)は3.52であった。
[比較例3]
実施例3と同様の手順で得られたディンプル状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例3と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEM及びTEMで確認したところ、ディンプル状パターンは観察されなかった。
実施例3と同様の手順で得られたディンプル状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例3と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEM及びTEMで確認したところ、ディンプル状パターンは観察されなかった。
[実施例4:凸凹状炭素構造体]
熱ナノインプリント法により、表面に幅約0.2μm、長さ約0.25〜1μmの溝を形成した、約1cm角の方形のポリカーボネート板を、凸凹状炭素構造体を作製するための前駆体(凸凹状前駆体)として用いた。
熱ナノインプリント法により、表面に幅約0.2μm、長さ約0.25〜1μmの溝を形成した、約1cm角の方形のポリカーボネート板を、凸凹状炭素構造体を作製するための前駆体(凸凹状前駆体)として用いた。
上述の凸凹状前駆体を、実施例1と同様の手順により、乾燥シリカゲルでの被覆、炭素化、シリカゲルの溶解及び水洗を行なうことにより、凸凹状炭素構造体を得た。
上記の凸凹状炭素構造体をSEM(倍率1万倍)で確認したところ、幅約0.2μm、長さ約0.25〜1μmの溝からなる凹凸状パターンが形成されていることが確認された。得られた凸凹状炭素構造体のSEM観察写真を図4(a)〜(c)に示す。
[比較例4]
実施例4と同様の凸凹状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例4と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEMで確認したところ、凸凹状パターンは観察されなかった。
実施例4と同様の凸凹状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例4と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEMで確認したところ、凸凹状パターンは観察されなかった。
[実施例5:コロイドクリスタル状炭素構造体]
先ず、以下の手順により、アクリロニトリル及びアクリル酸メチルの共重合ポリマーからなる微粒子(以下「アクリル樹脂微粒子」という場合がある。)を合成した。まず、アクリロニトリル12.71g、アクリル酸メチル1.83g、及びメタアクリル酸0.46gの混合物を、水145gに加え、窒素ガスのフロー下で300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合反応を行なった。反応停止後、水を除去することにより、平均粒径330nm(SEM観察)のアクリル樹脂微粒子12.5gを含む懸濁液を調製した。
先ず、以下の手順により、アクリロニトリル及びアクリル酸メチルの共重合ポリマーからなる微粒子(以下「アクリル樹脂微粒子」という場合がある。)を合成した。まず、アクリロニトリル12.71g、アクリル酸メチル1.83g、及びメタアクリル酸0.46gの混合物を、水145gに加え、窒素ガスのフロー下で300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合反応を行なった。反応停止後、水を除去することにより、平均粒径330nm(SEM観察)のアクリル樹脂微粒子12.5gを含む懸濁液を調製した。
得られたアクリル樹脂微粒子の懸濁液から、乾燥状態のアクリル樹脂微粒子相当で0.5gとなるように採取し、90℃で乾燥してアクリル樹脂微粒子を凝集させることにより、コロイドクリスタル状パターンを有する前駆体を作製した。
上述のコロイドクリスタル状前駆体を、実施例1と同様の手順により、乾燥シリカゲルで被覆、炭素化、シリカゲルの溶解及び水洗を行なうことにより、コロイドクリスタル状炭素構造体を得た。
上記のコロイドクリスタル状炭素構造体をSEM(倍率3万倍)で観察したところ、直径約300nmの中空の炭素微粒子が結合したコロイドクリスタル状パターンが形成されていることが確認された。得られたコロイドクリスタル状炭素構造体のSEM観察写真を図5に示す。
[比較例5]
実施例5と同様のコロイドクリスタル状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例5と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEMで確認したところ、微粒子の形状は残っていなかった。
実施例5と同様のコロイドクリスタル状前駆体を、シリカゲルで被覆することなく、実施例5と同様の手順で炭素化反応、水洗を行ない、炭素構造体を得た。得られた炭素構造体をSEMで確認したところ、微粒子の形状は残っていなかった。
本発明において得られる炭素構造体やその集合体、分散体は、各種の技術分野において好適に使用することが出来る。その例としては、細胞培養基材、フィルター、フォトニック結晶、電界放出ディスプレイ、光散乱剤、光拡散防止剤、細胞培養基材、親水・疎水性をコントロールする材料、マイクロレオロジー特性を制御した材料等が挙げられる。
Claims (12)
- 含炭素材料をパターンに成形した後、得られたパターンを原形型で被覆し、焼成して炭素化させる
ことを特徴とする、炭素構造体の製造方法。 - 含炭素材料をパターンに成形する方法が、ナノインプリント法、ソフトリソグラフィ法、及び、自己組織化法からなる群より選ばれる少なくとも1つの方法である
ことを特徴とする、請求項1記載の炭素構造体の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の炭素構造体の製造方法により得られる
ことを特徴とする、炭素構造体。 - 中空部を有する
ことを特徴とする、請求項3記載の炭素構造体。 - 表面に規則的な細孔を有する
ことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の炭素構造体。 - 表面に微細突起が規則的に配列している
ことを特徴とする、請求項3〜5の何れか一項に記載の炭素構造体。 - 炭素壁で包囲された中空部を有し、表面に規則的な細孔を有する
ことを特徴とする、炭素構造体。 - 該細孔が貫通孔である
ことを特徴とする、請求項7記載の炭素構造体。 - 炭素壁で包囲された中空部を有し、表面に微細突起が規則的に配列している
ことを特徴とする、炭素構造体。 - 炭素壁で包囲された中空部を有する粒子が複数結合している
ことを特徴とする、炭素構造体。 - 請求項3〜10の何れか一項に記載の炭素構造体が集合してなる
ことを特徴とする、炭素構造体の集合体。 - 請求項11記載の炭素構造体の集合体が分散媒中に分散されてなる
ことを特徴とする、炭素構造体の分散体。
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