JP2007159533A - ウエルシュ菌検出用プライマーおよび方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境や食品検査、臨床検査などにおいてウエルシュ菌またはエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌を迅速にかつ特異的に検出する方法を提供する。
【解決手段】LAMP法によりウエルシュ菌またはエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌を検出するためのプライマーセットであって、ウエルシュ菌のcpa遺伝子の特定領域にアニーリング可能な少なくとも4種のLAMPプライマーのセット、および、ウエルシュ菌のcpe遺伝子の特定領域にアニーリング可能な少なくとも4種のLAMPプライマーセット、ならびに、これらのLAMPプライマーセットを用いてウエルシュ菌またはエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌を検出するための方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)を迅速かつ正確に検出するためのプライマーセットおよび方法に関する。
より具体的には、本発明は、LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法によりウエルシュ菌のcpa遺伝子またはcpe遺伝子の増幅を検出することを含む、エンテロトキシン遺伝子を保有するまたは保有しないウエルシュ菌の検出のための方法およびプライマーセットに関する。
ウエルシュ菌は食中毒の主要な原因菌であることから病原性の面で非常に重要な菌種であると考えられている。この細菌は、哺乳動物、鳥類をはじめ食肉、乳および乳製品、飼料さらに土壌や水などの各種環境に広く分布している。食品の汚染源としては、環境中に広く分布している(非特許文献1)。
ウエルシュ菌による食中毒症状を惹起する主原因は、芽胞形成時に発現される分子量35kDaのタンパク毒素であるエンテロトキシンである。エンテロトキシンは芽胞形成時に生成され菌体からの成熟芽胞の遊離に伴って放出されると考えられている(非特許文献2)。
ウエルシュ菌は、グラム陽性の偏性嫌気性菌で芽胞を偏在性に形成する大桿菌である。従来、ウエルシュ菌を生化学性状で判定する場合、運動性、レシチナーゼ、レシチナーゼ制御試験、硝酸塩還元、ゼラチン液化、ラクトース醗酵、糖分解性試験などを行い判定していた(非特許文献3)。
ウエルシュ菌の検出には増菌や分離培養などを経て各種生化学試験などを行うが、これらの手法は結果を得るまでに時間を要することから、遺伝子を用いた試験法が注目されている。例えば、ウエルシュ菌に特異的な遺伝子領域を増幅し、確認するPCR (Polymerase Chain Reaction) 法が広く用いられている(非特許文献4)。
しかし、PCR法を用いた細菌の検出法は反応を行うために特別な機器を必要とし、最終判定方法のひとつであるアガロースゲル電気泳動法などに多大な時間と労力を要する。
また、ウエルシュ菌は少なくとも14種類の毒素を産生するが、このうちエンテロトキシンは食中毒の原因となる毒素であることから、検出されたウエルシュ菌株についてはエンテロトキシン産生試験が必要となる。種々のウエルシュ菌分離株に関する調査の結果、cpe遺伝子の保有あるいはエンテロトキシンの産生能は、調査された菌株のうち6%以下と比較的少数の菌株でしか認められないことが報告されている(非特許文献5および非特許文献6)。
エンテロトキシンは、アミノ酸残基数319からなる分子量35,317のタンパク質であり、60℃、10分間の加熱、またはpH4.0以下、で失活する易熱性の毒素である(非特許文献3)。ウエルシュ菌A型菌由来のエンテロトキシン遺伝子(cpe遺伝子)の全塩基配列は既に報告されている(非特許文献7および非特許文献8)。
ウエルシュ菌のエンテロトキシン検査には、分離された菌株が産生したエンテロトキシンタンパク質を免疫学的な手法で検出する方法と、ウエルシュ菌DNA上にコードされているエンテロトキシン構造遺伝子の有無を遺伝子学的な手法で検出する方法が主に用いられている。
免疫学的検出法としては逆受身ラテックス凝集反応法(RPLA法)が知られており、培地中に産生されたエンテロトキシン(抗原)を、抗エンテロトキシン抗体で感作したラテックス粒子との免疫凝集反応によって検出する方法であるが、結果を得るまでに最短でも2日間を要する(非特許文献3)。
一方、遺伝子学的検出法としては、本菌のエンテロトキシンに特異的な遺伝子領域を増幅し、確認するPCR法が広く用いられている(特許文献1および非特許文献5)。しかし、PCR法には、上述のように、多大な時間と労力を要するという欠点がある。
近年、新しい遺伝子増幅法の一つとしてLAMP反応を利用する方法が栄研化学社(栃木、日本)によって開発された。この方法は、等温核酸増幅法であり、高い特異性および増幅効率を有し、反応から検出まで1時間程度で行うことができる(特許文献2および非特許文献9)。
特開平11-239484号公報 特開2002-330796号公報 食品汚染病原微生物, 2003, 312-326 日食微, 1997, Vol.14, No1, 35-42 防菌防黴, 2001, Vol.29, No10, 675-685 Let. Appl. Microbiol., 1997,25,339-344 J. Clin. Microbiol., 1994,32,2533-2539 Am. J. Vet. Res., 1996,57,496-501 Infect Immun., 1993,61,3429-3439 J. Gen. Microbiol., 1989,135,903-909 T. Notomiら, Nucleic Acids research, 2000, 28(12), e63
本発明の目的は、LAMP法によってウエルシュ菌(Clostridium perfringens)、特にエンテロトキシン遺伝子を保有するまたは保有しないウエルシュ菌、を特異的に検出可能であるプライマーセットを提供することである。
本発明の別の目的は、上記プライマーセットを用いて上記ウエルシュ菌を特異的に検出する方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するため検討を行った結果、ウエルシュ菌のcpa遺伝子に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、このオリゴヌクレオチドをプライマーとしてLAMP法により増幅することにより、ウエルシュ菌を検体中から特異的、簡便、迅速かつ高感度に検出することを見出し、本発明を完成した。
また同時に、本発明者は、ウエルシュ菌のcpe遺伝子に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、このオリゴヌクレオチドをプライマーとしてLAMP法により増幅することにより、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子を検体中から特異的、簡便、迅速かつ高感度に検出することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
本発明は、第1の態様において、ウエルシュ菌検出用LAMPプライマーセットであって、ウエルシュ菌のcpa遺伝子の特定領域にアニーリング可能な配列番号1〜4に示されるそれぞれ塩基配列FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーを含むセットを提供する。
その実施形態において、上記プライマーセットは、配列番号1〜4の4種のプライマーに加えて、配列番号5および6に示されるそれぞれ塩基配列Loop-FおよびLoop-Bからなる2種のプライマーをさらに含むことができる。
本発明は、第2の態様において、エンテロトキシン遺伝子を保有するウエルシュ菌を検出するためのLAMPプライマーセットであって、ウエルシュ菌のcpe遺伝子の特定領域にアニーリング可能な配列番号7〜10に示されるそれぞれ塩基配列FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーを含むセットを提供する。
その実施形態において、上記プライマーセットは、配列番号7〜10の4種のプライマーに加えて、配列番号11および12に示されるそれぞれ塩基配列Loop-FおよびLoop-Bからなる2種のプライマーをさらに含むことができる。
本発明は、第3の態様において、エンテロトキシン遺伝子を保有するまたは保有しないウエルシュ菌を検出する方法であって、ウエルシュ菌のcpa遺伝子またはcpe遺伝子の増幅をLAMP法によって検出することを含む方法。
その実施形態において、LAMP法が、(i)上記の配列番号1〜4の4種のプライマーを含むLAMPプライマーセット、または(ii)配列番号1〜4の4種のプライマーに加えて、配列番号5および6の2種のプライマーをさらに含むLAMPプライマーセット、を用いて行われる。
その別の実施形態において、LAMP法が、(i)上記の配列番号7〜10の4種のプライマーを含むLAMPプライマーセット、または(ii)配列番号7〜10の4種のプライマーに加えて、配列番号11および12の2種のプライマーをさらに含むLAMPプライマーセット、を用いて行われる。
本発明のウエルシュ菌cpa遺伝子増幅用プライマーセットはいずれも、LAMP法によりウエルシュ菌を特異的に検出可能である(後述の表1)。種々の細菌株について試験した結果、本発明のプライマーセットによってそのすべてのウエルシュ菌株が陽性に検出された。一方、他のクロストリジウム属細菌種に対してはいずれも陰性の結果が得られた。
また、本発明のウエルシュ菌cpe遺伝子増幅用プライマーセットはいずれも、LAMP法によりエンテロトキシン遺伝子を保有するウエルシュ菌を特異的に検出可能である(後述の表2)。種々の細菌株について試験した結果、本発明のプライマーセットによってウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子保有株についてのみ陽性に検出された。
本発明により、エンテロトキシン遺伝子を保有するまたは保有しないウエルシュ菌を特異的、簡便、迅速かつ高感度に検出することができる。
ウエルシュ菌は多種類の毒素を産生するが、このうち主要毒素であるα、β、εおよびι毒素の産生性によってA〜E型の5つの毒素型に分類される(防菌防黴, 2001, 29(10), 675〜685)。このうちα毒素はA〜E型において共通して産生される毒素である。ウエルシュ菌のcpa遺伝子産物はα毒素であり、このタンパク質は溶血、皮膚壊死、好中球活性化、血小板凝集などを示す(細菌毒素ハンドブック, 2002,131-138)。
また、ウエルシュ菌cpe遺伝子産物はエンテロトキシンであり、細胞膜への小孔形成、小孔形成による膜透過性の変化と細胞の形態変化、細胞死などの生物活性を示す。
ウエルシュ菌のcpa遺伝子、cpe遺伝子の塩基配列を他の細菌と比較し、ウエルシュ菌に特異的な配列を特定し、本発明のLAMPプライマーを設計した。この細菌のcpa遺伝子、cpe遺伝子の塩基配列は、例えばGenBankなどのデータベース(NCBI)などから入手可能であり、それぞれL43546、Y16009(またはX81849、M31795など)の登録番号を有している。
特に、cpe遺伝子検出用プライマーは、以下のようにして決定された。
ウエルシュ菌エンテロトキシン分子は、その319アミノ酸中、186番目の位置にシステイン残基を1つ有しており、このシステイン残基を挟んでN末端側とC末端側の機能ドメインに分割することができる。そのN末端ドメイン中、アミノ酸45〜116番目の領域は膜孔形成による細胞の形態変化などを引起すのに必要なドメインである。一方、C末端ドメイン中、アミノ酸290〜319番目の領域はエンテロトキシン受容体との結合に必須である。本発明者は、cpe遺伝子の塩基配列に基づいて、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子をコードする領域(381〜1341番目の塩基配列;登録番号Y16009)を標的としてプライマーの設計を行った。プライマーの設計にあたっては上記塩基配列を標的に、各領域のTm値が約58〜65℃になる部分を選択し、またF2〜B2領域間が120bp程度になるように設計した。LAMPプライマーの設計の上でポイントとなるこれら幾つかの条件を満たす領域を絞り込みcpe遺伝子検出用プライマーを設定した。種々の検討の結果、GenBank登録番号Y16009において880〜1150番目の塩基配列内において至適なLAMPプライマーの構築が可能であることを見出した。
本発明により、cpa遺伝子増幅用LAMPプライマーおよびcpe遺伝子増幅用LAMPプライマーにて増幅される領域は、GenBankなどで入手可能な他の細菌種の塩基配列と比較し相同性を示さない部分であることが確認された。
上記のようにして、ウエルシュ菌のcpa遺伝子、cpe遺伝子の特定領域にアニーリング可能な領域として決定された塩基配列はそれぞれ、好ましくは、(i)配列番号1〜4、5〜6に示される塩基配列、(ii)配列番号7〜10、11〜12に示される塩基配列である。
これらの配列のプライマーセットを用いてLAMP法を実施するときには、ウエルシュ菌を他のクロストリジウム属細菌種または他の属の細菌から区別して(すなわち特異的に)検出することができる。また、ウエルシュ菌においてエンテロトキシン遺伝子の保有の有無も検出することができる。
したがって、本発明のウエルシュ菌検出用LAMPプライマーセットは、ウエルシュ菌のcpa遺伝子上の他の細菌とは異なる塩基配列が存在している領域を利用し、これを標的としたプライマー少なくとも4種類(FIP、BIP、F3およびB3)を用いるプライマーセットである。また、核酸の増幅反応を加速するために2種類(Loop-F、Loop-B)のプライマーを追加した、合計少なくとも6種類のプライマーで1セットとしてもよい。
本発明のウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子検出用LAMPプライマーセットは、ウエルシュ菌のcpe遺伝子上の他の細菌とは異なる塩基配列が存在している領域を利用し、これを標的としたプライマー少なくとも4種類(FIP、BIP、F3およびB3)を用いるプライマーセットである。また、核酸の増幅反応を加速するための2種類(Loop-F、Loop-B)のプライマーを追加した、合計少なくとも6種類のプライマーで1セットとしてもよい。
本発明により、エンテロトキシン遺伝子を保有するまたは保有しないウエルシュ菌を検出するための方法には、LAMP法が使用される。
LAMP法は、標的遺伝子の6つの領域に対して4つのプライマー(一般にFIP、BIP、F3およびB3と称する)を設定し、鎖置換反応を利用して等温で核酸を増幅させることが可能な手法である(特開2002-330796号公報;T. Notomiら, Nucleic Acids research, 2000, 28(12), e63)。この手法について、以下に説明する。
まず、標的遺伝子について、3'末端側からF3c、F2c、F1cという3つの領域を、標的遺伝子の5'末端側に向かってB1、B2、B3という領域をそれぞれ規定し、この6領域に対し、4種類のプライマー、すなわちFIP、F3、BIPおよびB3を設計する。ここで、F3c、F2c、F1cの各領域に相補的な領域はそれぞれF3、F2、F1であり、またB1、B2、B3の各領域に相補的な領域はそれぞれB1c、B2c、B3cである。
FIPは、標的遺伝子のF2c領域と相補的なF2領域を3'末端側にもち、5'末端側に標的遺伝子のF1c領域と同じ配列をもつように設計されたプライマーである。必要ならば、FIPプライマーのF1cとF2の間に制限酵素部位を導入することもできる。
F3は、標的遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域をもつように設計されたプライマーである。
BIPは、標的遺伝子のB2c領域と相補的なB2領域を3'末端側にもち、5'末端側に標的遺伝子のB1c領域と同じ配列をもつように設計されたプライマーである。必要ならば、BIPプライマーのB1cとB2の間に制限酵素部位を導入することもできる。
B3は、標的遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域をもつように設計されたプライマーである。
FIPおよびBIPプライマーに制限酵素部位が含まれる場合、反応後に増幅産物を制限酵素で処理することによって、電気泳動後に1つのバンドとして観察することができる。この場合、もし標的DNAに制限酵素部位があれば、プライマーに人為的に制限酵素部位を導入しなくてもよい。
また、Loop-FおよびLoop-Bプライマーを使用するときには、これらのプライマーが核酸増幅過程で利用されていないループ部分に結合することにより全てのループ部分を起点として核酸反応が進み、核酸の増幅反応が加速される(特開2002-345499号公報)。
LAMP反応は、サンプル遺伝子、プライマー、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を一緒に一定温度(約60〜65℃)で保温することにより、検出まで1ステップの工程で行うことができる。
この反応では鎖置換型DNA合成酵素が使用されるが、この酵素は、PCR法における耐熱性DNAポリメラーゼと異なり安価であるうえに、鋳型DNAの二本鎖をほどきながらDNA合成を行うことができる。このため、LAMP法では、PCR法のようにあらかじめ二本鎖DNAを一本鎖に熱変性する必要がない。
LAMP反応試薬は、栄研化学社(栃木、日本)から市販のLoopamp DNA増幅試薬キット(但し、プライマーセットを除く)を利用すると便利である。具体的には、反応液の例は次のとおりである。すなわち、2倍濃度反応用緩衝液:40mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM KCl、20mM(NH4)2SO4、16mM MgSO4、0.2% Tween20、1.6M Betain;各終濃度2.8mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP;DNAポリメラーゼ:Bst DNA Polymerase 8units/μl;本発明の各プライマー(終濃度):FIPおよびBIP各40μM、F3およびB各3 5μM、Loop-FおよびLoop-B各20μM。
LAMP反応液としては、例えば、滅菌蒸留水を3.5μl、2倍濃度反応用緩衝液を12.5μl、FIP、BIP、F3、 B3、Loop-FおよびLoop-Bの各プライマーを1μl加え、DNAポリメラーゼ1μl、検体液(鋳型DNA)2μlを加え、全量25μlの反応液を調製する。
反応は、次のような工程を経て行われる。
(i) 鎖置換型DNAポリメラーゼの働きにより、FIPのF2領域の3'末端を起点として鋳型DNAと相補的なDNA鎖が合成される。
(ii) FIPの外側に、F3プライマーがアニールし、その3'末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されているFIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(iii)F3プライマーから合成されたDNA鎖と鋳型DNAが二本鎖となる。
(iv) FIPから先に合成されたDNA鎖は、F3プライマーからのDNA鎖によって剥がされて一本鎖DNAとなるが、このDNA鎖は、5'末端側に相補的な領域F1c、F1をもち、自己アニールを起こし、ループを形成する。
(v) 上記(iv)の過程でループを形成したDNA鎖に対し、BIPがアニールし、このBIPの3'末端を起点として相補的なDNA合成が行われる。さらに、BIPの外側にB3プライマーがアニールし、その3'末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されたBIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(vi) 上記(v)の過程で二本鎖DNAが形成される。
(vii)上記(v)の過程で剥がされたBIPから合成されたDNA鎖は両端に相補的な配列をもつため、自己アニールし、ループを形成してダンベル様の構造となる。
(viii)上記ダンベル構造のDNA鎖を起点として、FIP次いでBIPのアニーリングを介して所望DNAの増幅サイクルが行われる。
本発明の各プライマーセットは、約60〜65℃(例えば65℃)においてアニ−リングと同時にDNA鎖の合成も起こす。アニ−リング反応およびDNA鎖合成により約1時間反応を行うことにより109〜1010倍に核酸を増幅させることが可能である。
ウエルシュ菌の特定のDNA領域が増幅されると、副産物として形成されるピロリン酸マグネシウムの影響で反応液が白濁するため、この濁度に基づき増幅の有無が目視により判定できる、あるいは濁度測定装置を用いて濁度を光学的に測定することもできる。また、必要に応じて、アガロースゲル電気泳動法などを利用してDNA断片の有無を確認し検出することもできる。
核酸増幅によるウエルシュ菌およびエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌の検出のための検体としては、食品検体、たとえば乳製品、食肉製品、野菜類、魚介類など、また環境検体、たとえば土壌、水など、また臨床検体、たとえば糞便などでもよい。
これら検体をLAMP法の試料として用いる場合には、検体中に存在する菌の濃縮、分離、菌体からの核酸分離や、核酸の濃縮などの操作を前処理として行うこともできる。菌の濃縮、分離の方法としては、ろ過、遠心分離などが、知られており、適宜選択できる。食品検体や環境検体などに存在する菌体からの核酸の遊離には、例えばLysozymeやProteinase Kなどによって菌体を処理し、100℃での加熱により菌体から核酸を遊離させる方法もある。また、特に食品検体によってはさらなる精製の必要があれば、フェノール/クロロホルム処理、エタノール沈殿や遠心等により核酸の精製を行い、最終的にTE緩衝液などに再溶解させ鋳型DNAとして試験に供してもよい(Let. Appl. Bacteriol, 1998, 26, 382-386)。
たとえば食品中に存在すると考えられるウエルシュ菌を適切な培地で増菌培養し、寒天培地上に形成されたコロニーからDNAを分離し、このDNAに対して上記プライマーを用いたLAMP反応を行い、ウエルシュ菌の特定遺伝子領域を増幅する。
増幅反応により副産物として形成されるピロリン酸マグネシウムの影響により反応液は、上述のとおり、白濁するので、反応液の濁度を目視または濁度測定装置などを用いた光学的手法により核酸増幅の有無を簡単に確認できる。もしcpa遺伝子またはcpe遺伝子の特定領域の核酸増幅が観察されるならば、標的遺伝子が存在することを意味し、cpa遺伝子の増幅によりウエルシュ菌が、さらにcpe遺伝子の増幅によりエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌が、それぞれ検出されたことを示し、すなわち陽性(+)を表す。逆に、核酸増幅が観察されない場合には、標的遺伝子が不存在であることを意味し、結果としてウエルシュ菌またはエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌陰性(−)を表す。
上で説明したように、本発明により、cpa遺伝子に由来する特定遺伝子領域を増幅する配列番号1〜4、および適宜追加して実施可能な配列番号5〜6、に示される塩基配列からなるプライマーセットをLAMPプライマーセットとして用いることによって、ウエルシュ菌を特異的に検出することができる。ここで、「特異的に」とは、検出反応が他のクロストリジウム属細菌種および他の属の細菌に対して陰性であることを意味する。
また、cpe遺伝子に由来する特定遺伝子領域を増幅する配列番号7〜10、および適宜追加して実施可能な配列番号11〜12、に示される塩基配列からなるプライマーセットをLAMPプライマーセットとして用いることによって、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子を特異的に検出することができる。ここで、「特異的に」とは、検出反応がウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子を保有していないウエルシュ菌種または他の属の細菌に対して陰性であることを意味する。
本発明のLAMP法によるウエルシュ菌の検出法は、食品、環境検体、臨床検体などの検査対象物に存在するウエルシュ菌の有無を迅速に判別することができる検査法として用いることができ、乳製品、食肉製品、野菜類や魚介類などでのウエルシュ菌の汚染などの検出のために使用することができる。また、本発明は、検出されたウエルシュ菌がエンテロトキシン遺伝子を保有しているか否かを迅速に判別することができる検査法として用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.LAMP反応
LAMP反応に用いる各試薬の濃度の内容は次のとおりであるが、LAMP反応試薬は栄研化学社製のLoopamp DNA増幅試薬キットを用いた。2倍濃度反応用緩衝液:40mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM KCl、20mM(NH4)2SO4、16mM MgSO4、0.2% Tween20、1.6M Betain。各終濃度2.8mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP。DNAポリメラーゼ:Bst DNA Polymerase 8units/μl。本発明の各プライマー(終濃度):FIP、BIP 各40μM、F3、B3 各5μM、Loop-F、Loop-B 各20μM。(栄研化学社のDNA増幅試薬キットLMP201の添付説明書参照)
LAMP反応液は、滅菌蒸留水を3.5μl、2倍濃度反応用緩衝液を12.5μl、FIP、BIP、F3、B3、Loop-FおよびLoop-Bの各プライマーを1μl加え、DNAポリメラーゼ1μl、上記より得られた検体液(鋳型DNA)2μlを加え、全量25μlの反応液を調製した。
LAMP反応は、テラメックス社製の濁度測定装置LA-200Fを用い、65℃の等温反応を60分間行い、その後80℃、2分間の酵素失活処理行った。濁度測定装置は、LAMP反応の副産物であるピロリン酸マグネシウムによる白濁を経時的に観察することが可能で、濁度が上昇するものをウエルシュ菌もしくはウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子について陽性、濁度の上昇が認められないものを陰性とした。
2.プライマーの設計
ウエルシュ菌のcpa遺伝子と他のクロストリジウム属菌の塩基配列とを比較し、ウエルシュ菌に特異的なLAMPプライマーを設計した。また、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子の検出にはcpe遺伝子を標的とし、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子に特異的なLAMPプライマーを設計した。
3.結果
配列番号1〜4(それぞれFIP、BIP、F3およびB3)および追加可能な配列番号5〜6(それぞれLoop-F、Loop-B)によるプライマーセットは、cpa遺伝子の特定領域を増幅するように設計してある。実際に表1に示したウエルシュ菌を7株、およびその他のクロストリジウム属菌を16株、他の属の菌18株を用いてLAMP反応を行った結果、ウエルシュ菌のみに、増幅反応の副産物であるピロリン酸マグネシウムの白濁が観察された。また、その他細菌でも交差性は見られなかった。結果を表1に示した。
Figure 2007159533
配列番号7〜10(それぞれFIP、BIP、F3およびB3)および追加可能な配列番号11〜12(それぞれLoop-F、Loop-B)によるプライマーセットは、cpe遺伝子の特定領域を増幅するように設計してある。実際に表2に示したウエルシュ菌7株についてLAMP反応を行った結果、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子を保有する株(ATCC 12915)のみに増幅反応の副産物であるピロリン酸マグネシウムの白濁が観察された。また、その他細菌でも交差性は見られなかった。結果を表2に示した。
Figure 2007159533
比較例としてウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子検出法の一つであるPCR法(J. Clin. Microbiol., 1994, 32, 2533-2539)による検出を行った結果、LAMP法と同様の結果が得られた。このことは、本発明による検査が正しい結果を与えることを示している。
また、免疫学的手法の一つである逆受身ラテックス凝集反応によるウエルシュ菌エンテロトキシン検出用キットPET-RPLA「生研」(デンカ生研株式会社)を用いてエンテロトキシンタンパク質の検出を行った結果、ATCC 12915株のみがエンテロトキシンタンパク質の産生が認められた(表2)。
表1および表2に示されるように、本発明においてcpa遺伝子増幅用プライマーセットを使用してLAMP法を実施することにより、ウエルシュ菌を特異的に検出することが可能であり、また1時間以内に増幅反応を確認することができた。さらにまた、cpe遺伝子増幅用プライマーセットを使用してLAMP法を実施することにより、ウエルシュ菌エンテロトキシン遺伝子を特異的に検出することが可能であり、また1時間以内に増幅反応を確認することができた。
このように、cpa遺伝子増幅用プライマーセットは、ウエルシュ菌を特異的に検出するためのプライマーとして有効であると判断された。また、cpe遺伝子増幅用プライマーセットは、エンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌を特異的に検出するためのプライマーとして有効であると判断された。
本発明のLAMP法によるウエルシュ菌またはエンテロトキシン遺伝子保有ウエルシュ菌の検出法は、食品、環境検体、臨床検体などの検査対象物に存在するウエルシュ菌の有無を迅速にかつ特異的に判別することができる検査法として用いることができるため、乳製品、食肉製品、野菜類、魚介類などでのウエルシュ菌の汚染の検出に有用である。また、検出されたウエルシュ菌がエンテロトキシン遺伝子を保有しているか否かを迅速にかつ特異的に判別することができるため、病原性の有無について遺伝子的に迅速に判別することが可能であり、すなわちウエルシュ菌のエンテロトキシン遺伝子の検出に有用である。

Claims (7)

  1. ウエルシュ菌検出用LAMPプライマーセットであって、ウエルシュ菌のcpa遺伝子の特定領域にアニーリング可能な配列番号1〜4に示されるそれぞれ塩基配列FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーを含むセット。
  2. 配列番号5および6に示されるそれぞれ塩基配列Loop-FおよびLoop-Bからなる2種のプライマーをさらに含む、請求項1に記載のLAMPプライマーセット。
  3. エンテロトキシン遺伝子を保有するウエルシュ菌を検出するためのLAMPプライマーセットであって、ウエルシュ菌のcpe遺伝子の特定領域にアニーリング可能な配列番号7〜10に示されるそれぞれ塩基配列FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーを含むセット。
  4. 配列番号11および12に示されるそれぞれ塩基配列Loop-FおよびLoop-Bからなる2種のプライマーをさらに含む、請求項3に記載のLAMPプライマーセット。
  5. エンテロトキシン遺伝子を保有するまたは保有しないウエルシュ菌を検出する方法であって、ウエルシュ菌のcpa遺伝子またはcpe遺伝子の増幅をLAMP法によって検出することを含む方法。
  6. LAMP法が請求項1または2に記載のLAMPプライマーセットを用いて行われる、請求項5に記載の方法。
  7. LAMP法が請求項3または4に記載のLAMPプライマーセットを用いて行われる、請求項5に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015146786A (ja) * 2014-02-07 2015-08-20 山梨県 マルチプレックスシャトルpcrによる食中毒原因菌の一括検出法
CN111004855A (zh) * 2020-01-03 2020-04-14 上海海关动植物与食品检验检疫技术中心 一种用于检测金黄色葡萄球菌的引物组合和试剂盒
CN113667766A (zh) * 2021-07-23 2021-11-19 华南理工大学 产肠毒素b金黄色葡萄球菌的cpa检测引物及其检测试剂盒和方法

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