JP2007134339A - 面発光体 - Google Patents

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Hiroshi Yokogawa
弘 横川
Takeyuki Yamaki
健之 山木
Hikari Tsujimoto
光 辻本
孝一 ▲高▼濱
Koichi Takahama
Masaru Yokoyama
勝 横山
Yasuhisa Kishigami
泰久 岸上
Nobuhiro Ide
伸弘 井出
Kenji Kono
謙司 河野
Nobuhiro Ito
宜弘 伊藤
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Abstract

【課題】光を外部に取り出す効率が高い複合薄膜保持基板を提供する。
【解決手段】基材1およびその表面に配置された複合薄膜4を有して成る複合薄膜保持基板の複合薄膜4の上に直接または10〜100nmの厚みの平滑化下地層を介して、紫外線又は電子線によって励起されて発光する有機もしくは無機の蛍光体の薄膜を有して成る面発光体に関する。上記複合薄膜4は粒径が5nm〜2μmの微粒子よりなる充填剤2および充填剤2を分散状態で拘束して保持するバインダー4より成るものであり、充填剤2の屈折率(Nf)およびバインダー4の屈折率(Nb)の双方が基材の屈折率(Ns)より大きいことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種ディスプレイ、表示素子、液晶用バックライト等に用いられる面発光体に関する。
近年、情報化社会の進展に伴って、各種のディスプレイが開発されている。このようなディスプレイに用いられる薄膜型の発光素子の代表的なもの一つとして、例えば有機エレクトロルミネッセンス(EL)発光体がある。
図7は透光性の基材1の上に発光素子15を設けて形成される有機エレクトロルミネッセンス発光体の構造を断面図にて概略的に示す。発光素子15から発光される光は基材1を通して基材1の露出表面から出射されることによって、外部に取り出されるようになっている。図7にて矢印で示すように、基材1の表面と空気との界面に小さい入射角で入射する一部の光は基材1の露出表面から外部に出射されるが、多くの光は基材1の露出表面と空気との界面で反射して、基材1内において基板の縁部に向かう方向に導波されてしまい、実際、発光した光の20%程度しか基材1の露出表面から外に出て来ない。この現象は、薄膜型発光素子の取出効率を低く留めている大きな原因の一つである。
そこで、そのような現象を回避して基材1の露出表面からの光の取り出し効率を高めるための工夫が種々なされている。例えば、図8に断面図にて概略的に示すように、基材1の露出表面に微細な加工を施して拡散層16を形成し、基材1の拡散層16で光を拡散させることによって、基材1内における導波を低減させ、基材1の露出表面から外部に光を取り出す効率を高めるようにしている。この微細加工には、マイクロレンズ加工や拡散処理加工等がある。
しかしながら、図8の場合、基材1の厚みが一般的にミリメートルのオーダーであるので、導波中の光が拡散層16に当たる回数が少なく、導波を抑制して取出効率を高める効果は十分であるとはいえない。また、拡散層16で光を拡散させるようにしているために、ディスプレイ等のように発光を画像として認識させる必要のある場合には、光が混合されてコントラストを鮮明に得ることが難しくなる等の問題もある。
別の態様では、図9に断面図にて概略的に示すように、基材1と発光素子15との間に基材1より屈折率が小さい低屈折率層17(例えば屈折率が1.3以下)を設ける。このようにすると、低屈折率層17と基材1との界面で光を屈折させて、基材1の露出表面と空気との界面に入射する光の入射角が小さくなり、その結果、基材1の露出表面と空気との界面で反射される光の量が少なくなって基材1内における導波が抑制され、基材1の表面から外部に光を取り出す効率が高まる。
図9の場合、低屈折率層17の挿入によって基材1内での導波を実質的に消滅させることが可能で、その結果、光の取出効率を高めることができる。しかしながら、低屈折率層17の屈折率より高い屈折率を有する発光素子15の厚みが大きい場合には、発光素子15と低屈折率層17との界面における光の反射が多くなり、発光素子15内での導波が増加するおそれがあり、発光素子15の厚み設計に工夫が必要になるという問題がある。
このように、薄膜型の発光素子においては発光した光を外部(大気中)に取り出す場合の取出効率を向上させることが難しく、取出効率の向上が課題となっている。
一般的に、面発光素子を有して成る発光体の内部で発生した光が発光体の外部へ取り出される取出率ηは、古典光学の法則に基づいて、屈折率nの媒体中から屈折率1.0の空気中に出射される際の全反射の臨界角θcで決まる。
屈折の法則からこの臨界角θcは次の式(1)で与えられる。
sinθc=1/n (1)
そして、取出率ηは、屈折率nの媒体から空気中へ通過する光量と発生した全光量(媒体と空気の界面で全反射される光量と空気中へ通過する光量の和)の比から次の式(2)で求められる。
η=1−(n−1)1/2/n (2)
尚、媒体の屈折率nが1.5より大きい場合には、次の近似式(3)を用いることができるが、媒体の屈折率nが1.00に極めて近い場合は上記の式(2)を用いる必要がある。
η=1/(2n) (3)
ここで、エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の薄膜型発光体においては、面発光素子部分の厚みは光の波長より小さいので、基材の屈折率が主として取出率ηを律することになる。通常、基材として用いられるガラス、プラスチックフィルム等の屈折率nは一般に1.5〜1.6程度である。従って、式(3)から、取出率ηは約0.2(約20%)となる。即ち、残りの約80%は基材と空気との間の界面の全反射によって導波光として失われているものである。
薄膜の発光体としては有機EL素子が代表的であるが、発光体としてPL(フォトルミネッセンス)発光層を用いたPL発光素子の場合も同様である。PL発光素子では、PL発光層が基材上に積層された構造に形成されている。この素子では、PL発光層に紫外線等の光が照射されると、PL発光層が発光し、光は基材から出射する。この素子においても、先と同様に、発光体は通常基材の上に形成されているため、取出率ηが低く、多くの光は導波光として失われている。
上記のことに鑑みて、特許文献1には、屈折率の低い表面層を有した基材上に発光体を形成して、基材での導光ロスを低減させることが開示されている。そこでは、薄膜発光体を屈折率の低い薄膜の上に形成することで、その光取出効率を向上させている。厚みが光の波長よりも小さいような発光体においては、その発光層内での導波は制限されるため、発光層の表面に放射され得る光の量は増加する。具体的には、発光層(有機ELの場合、透明導電性膜の厚みも含む)の厚みが200nm程度以下になると導波の制限の現象が顕著であることが、AppliedPhysics Letters,Volume 78,No.13,p.1927等にも記載されている。
以上の内容を考えると、ある発光層を基材表面に形成して発光体を形成する場合には、屈折率の低い表面層を持った基材の上に形成する方が、光取出効率が高くなることは明らかであり、次式(4):
n2<n1 (4)
(式中、n1は基材の屈折率であり、n2は発光層形成側の基材表面に予め形成された低屈折率の表面層の屈折率である。)
の関係を満たす薄膜の表面層を基材に形成することが発光体の形成には有利である。一般的に、基材にはガラスまたはプラスチックフィルムが用いられ、その屈折率は約1.5〜1.6である。
式(4)の関係を満たすような基材の種類とその表面に設ける薄膜の種類との組み合わせは実質的に無限に存在すると言ってもよいほどである。実際には、発光層自体の屈折率、発光層の形成条件(例えば温度、プロセス)等を適宜選定することで、基材表面に薄膜を設けないものに比べて、発光体の光取出効率を向上させることができる。特許文献1では一般的な基板を使用することを前提とし、その表面に屈折率が1.003〜1.300の薄膜を設けることを提案し、具体的には、シリカエアロゲルに代表されるような多孔質薄膜が形成されている。しかし、ここで形成される低屈折率の薄膜は、多孔質であるため強度が必ずしも十分ではない。
特開2001−202827号公報
従って、基材の種類にかかわらず、その表面に薄膜を形成することによって、上述のような既知の技術と比較して、発光効率を向上させる効果を期待でき、そして、好ましくは、発光体を形成するために十分な強度、取扱性を有する薄層が望まれている。
そこで、本発明は、薄層を有する従来の基板と比較して、光を外部に取り出す効率がより大きい基板を用いて構成される面発光体を提供することを目的とする。
上記のような目的は、基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板であって、複合薄膜は充填剤およびバインダーを含んで成り、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の一方は、基材の屈折率(Ns)より小さいことを特徴とする複合薄膜保持基板を用いることによって達成されることが見出された。充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の他方は該一方より小さい。
従って、本発明の複合薄膜保持基板において、屈折率の関係は以下の2つの場合AおよびBがある:
場合A: Nf<NsかつNf<Nb
場合B: Nb<NsかつNb<Nf
更に、発明者らが検討を重ねた結果、基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板であって、複合薄膜は充填剤およびバインダーを含んで成り、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の双方が基材の屈折率(Ns)より大きいことを特徴とする複合薄膜保持基板を用いることによっても達成されることが見出された。
従って、本発明のこの複合薄膜保持基板において、屈折率の関係は以下の場合Cを満足する:
場合C: Ns<NbかつNs<Nf
本発明において、複合薄膜は、充填剤およびバインダー形成材料を含んで成る液状コーティング材組成物を基材に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することによって基材上に残る被膜である。乾燥とは、塗膜から液体成分(または揮発性成分)を除去して固体の被膜を残すことを意味し、乾燥に際しては必要に応じて加熱してもよい。尚、乾燥して被膜を得た後で被膜を加熱して熱処理してもよく、乾燥時の加熱を継続することによって、被膜の熱処理を実施してよい。
複合薄膜において、バインダー形成材料から生成するバインダー中に充填剤が分散しており、これらが相互に異なる相を形成しており、この意味で「複合」なる用語を使用している。バインダーは、その中で充填剤を分散状態で拘束して保持している。バインダーは、被膜形態のコーティング材組成物が乾燥することによってバインダー形成材料から形成されるが、この乾燥に際して、バインダー形成材料は化学的に変化しても、あるいは変化しなくてもよいが、コーティング材組成物中に溶解および/または分散している状態から全体として層形態の固体に転換する。尚、コーティング材組成物は、それを基材に塗布できる液体状態とするために、通常、液体溶媒および/または分散媒(例えば水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、トルエン、キシレンメチルエチルケトン等の有機溶剤等)を含み、必要に応じて他の成分を含んでよい。そのような他の成分としては、アクリル系ポリマーに代表されるような平滑塗膜形成のためのレべリング剤、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体等に代表される膜厚コントロールのための増粘剤、高沸点溶剤、および基材との密着性を付与する為のシランカップリング剤等を例示できる。
本発明の複合薄膜保持基板において、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の双方が基材の屈折率(Ns)より小さいのが好ましいが、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の少なくとも一方が基材の屈折率(Ns)と同じであるか、それより大きくてもよい。
従って、本発明は、第1の要旨において、場合Aの複合薄膜保持基板を用いた面発光体を提供する、即ち、基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板であって、複合薄膜は充填剤およびバインダーを含んで成り、充填剤の屈折率(Nf)は、バインダーの屈折率(Nb)より小さく、かつ、基材の屈折率(Ns)より小さい、複合薄膜保持基板を用いた面発光体を提供する。
第1の要旨において、充填剤は、例えばエアロゲル微粒子、中空シリカ微粒子およびポリマー製中空微粒子から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、バインダーは、有機ポリマーおよび金属酸化物から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
従って、本発明は、第2の要旨において、場合Bの複合薄膜保持基板を用いた面発光体を提供する、即ち、基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板であって、複合薄膜は充填剤およびバインダーを含んで成り、バインダーの屈折率(Nb)は、充填剤の屈折率(Nf)より小さく、かつ、基材の屈折率(Ns)より小さい、複合薄膜保持基板を用いた面発光体を提供する。
第2の要旨において、バインダーがシリカ多孔質体であるのが好ましく、例えば後述のシリコーンレジン−M(それが縮重合性である場合は、その縮重合物であってもよい)、エアロゲル等であり、充填剤が有機ポリマー微粒子、金属化合物微粒子および中空シリカ微粒子から選ばれる少なくとも1種の微粒子であるのが好ましい。
従って、本発明は、第3の要旨において、場合Cの複合薄膜保持基板を用いた面発光体を提供する、即ち、基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板であって、複合薄膜は充填剤およびバインダーを含んで成り、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の双方が基材の屈折率(Ns)より大きい、複合薄膜保持基板を用いた面発光体を提供する。
第3の要旨において、バインダーは有機ポリマーまたは金属酸化物のうち屈折率が1.8以下であるのが好ましく、例えば後述のアクリルポリマーやシリカ/チタニア複合酸化物等であり、充填剤も同じく有機ポリマー微粒子、金属化合物から選ばれる少なくとも1種の微粒子であるのが好ましい。また、この第3の要旨においては、コーティング組成物中におけるバインダーと充填剤の混合比率を適宜必要な比に調整される必要があり、得られる複合薄膜においては、その複合膜中における固形分容積比率が75%以下になるように調整される。
第1の要旨において、基材の屈折率より低い屈折率を有する充填剤の屈折率は、一般的に1.35以下、好ましくは1.30以下であるのが望ましく、また、第2の要旨において、基材の屈折率より低い屈折率を有するバインダーの屈折率は、一般的に1.45以下であり、好ましくは1.30以下であるのが望ましい。更に、第3の要旨において、基材の屈折率より大きい屈折率を有するバインダーの屈折率は、一般的に1.8以下であり、好ましくは1.6以下であるのが望ましい。いずれの要旨においても、複合薄膜の屈折率は、通常1.4以下であり、好ましくは1.35以下である。
本発明において透明導電性膜保持基板は、上述の複合薄膜保持基板の複合薄膜の上に透明導電性膜が形成されている。この透明導電性膜保持基板において、複合薄膜の上に非常に薄い(例えば10〜100nm程度の厚みの)平滑化下地層が形成され、平滑化下地層の上に透明導電性膜が形成されていてよい。
本発明において面発光体は、上述の複合薄膜保持基板の複合薄膜の上に、紫外線又は電子線によって励起されて発光する有機又は無機の蛍光体の薄膜が形成されている。
本発明において別の面発光体は、上述の透明導電性膜保持基板の透明導電性膜の上に、発光層と金属電極とがこの順に積層され、それによってエレクトロルミネッセンス素子が形成されている。
本発明の第1の要旨の複合薄膜保持基板において、基材の表面に、基材の屈折率よりも屈折率の小さい充填剤を有することで、基板内での光の導波成分を低減させることができ、光の取り出し効率を大きくすることができる。また、基材の屈折率より低い屈折率の充填剤と、充填剤の屈折率より屈折率の高いバインダーとからなる複合薄膜が形成されている場合、屈折率が異なる充填剤とバインダーからなる複合薄膜を通過する際に光は一部散乱される。その相乗効果により、この基板の複合薄膜上に発光素子を設ける場合、発光素子内を導波する光が少なくなり、複合薄膜を通過する光は基材から外部(大気)への取出効率が高くなる。
本発明の第2の要旨の複合薄膜保持基板において、基材の表面に、基材の屈折率より低い屈折率のバインダーと、バインダーの屈折率より屈折率の高い充填剤とからなる複合薄膜が形成されている場合についても同様である。
本発明の第3の要旨の複合薄膜保持基板において、基材の表面に、基材の屈折率より屈折率の高いバインダーと、基材の屈折率より屈折率の高い充填剤とからなる複合薄膜が形成されている場合についても同様である。
第1の要旨の複合薄膜保持基板において、基材より屈折率の低い充填剤が、エアロゲル微粒子、中空シリカ微粒子およびポリマー製中空微粒子から選ばれるものであり、この充填剤より屈折率の高いバインダーが、有機ポリマーおよび金属酸化物から選ばれるものである場合、充填剤とバインダーからなる複合薄膜による外部への光の取出効率を高める効果を向上させることができる。
第2の要旨の複合薄膜保持基板において、基材より屈折率の低いバインダーがエアロゲルであり、このバインダーより屈折率の高い充填剤が有機ポリマーおよび金属化合物から選ばれる微粒子である場合、バインダーと充填剤からなる複合薄膜による外部への光の取出効率を高める効果を向上させることができる。
上述の複合薄膜保持基板のいずれかにおいて、基材より屈折率の低いものの屈折率が1.35以下である場合、複合薄膜の平均屈折率を低く形成することができ、外部への光の取出効率をより一層高めることができる。
上述のいずれかに記載の複合薄膜保持基板の複合薄膜の上に透明導電性膜を形成した本発明の透明導電性膜保持基板は、外部への光の取出効率が高い透明導電性膜保持基板を得ることができる。
本発明の透明導電性膜保持基板において、複合薄膜の上に平滑化下地層を形成し、その上に透明導電性膜を形成する場合、表面が平滑で厚みの均一性が高い薄膜として透明導電性膜を形成することができ、また、外部への光の取出効率が高い透明導電性膜保持基板を得ることができる。
本発明の面発光体は、複合薄膜保持基板の複合薄膜の上に、紫外線又は電子線によって励起されて発光する有機又は無機の蛍光体の薄膜が形成されており、外部への光の取出効率が高い面発光体を得ることができる。
本発明のもう1つの面発光体は、透明導電性膜保持基板の透明導電性膜の上に発光層と金属電極がこの順に積層されてエレクトロルミネッセンス素子が形成されており、外部への光の取出効率が高い面発光体を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の複合薄膜保持基板において、基材は、透光性のものであれば特に制限されることなく使用することができ、通常はシート状またはプレート状形態である。基材は、例えば透明ガラス板、透明プラスチック板等であってよく、一般に透光性板として用いられるものであれば特に制限されない。この基材1の屈折率は、多くの場合、1.46〜1.6の範囲である。
本発明の複合薄膜保持基板において、充填剤に使用できる材料としては、エアロゲル微粒子、中空シリカ微粒子、ポリマー製中空微粒子、有機ポリマー微粒子、金属酸化物微粒子等を例示できる。また、バインダーに使用できる材料としては、有機ポリマー、金属酸化物、シリカ多孔質体(特に後述のシリコーンレジン−M、シリカエアロゲル等)等を例示できる。これらの使用できる材料から、上述の屈折率の関係を満足するように充填剤とバインダーとの組み合わせを選択すればよい。次に、充填剤およびバインダーについて説明する。
尚、特別に言及しない限り、本明細書において、屈折率とは次のようにして求められる屈折率を意味する:
(充填剤の屈折率)
充填剤の屈折率については、充填剤としての微粒子が中実体であっても、多孔質体であっても、あるいは中空体であっても(外殻が多孔質である場合を含む)次のようにして求めることができる。
水またはアルコールなどに代表される溶媒に充填剤が分散した状態のゾルの屈折率および比重を計測し、そのゾルを構成する溶媒の屈折率および比重、ならびに充填剤を形成する物質の真比重および屈折率を用いて下式により算出する:
充填剤の屈折率−1をnとして、
n=n0(PN0−P0N)/{n0(P−P0)+p0(N0−N)}
の式が成り立ち、充填剤の屈折率はn+1となる。
尚、上記式中、記号は下に示すとおりであり、上記式は下記の式(a)、(b)および(c)から導かれるものである。
ここで、式(a)及び(b)は2つの物質が均一に混合して得られる混合物に関する屈折率および比重の関係を示す式であり、これらは当業者には自明のことである。一方で、寸法(一般的には直径)がサブミクロンレベル以下の微細な空隙を有する多孔質体としての充填剤については、その多孔質体の屈折率は多孔質体内の固体部分と空隙部分の容積比率により決まり、その多孔質体の屈折率と多孔質体内の固体充填率(即ち、1−多孔質体の空隙率)との間で、〔多孔質体の屈折率−1〕が固体充填率に比例することが一般的に知られている。このことに基づいて、多孔質体を構成する物質の真比重(p)およびその物質の本来の屈折率−1(多孔質体を構成する固体の純物質の屈折率−1:n)と、多孔質体のかさ比重(p)とから、〔多孔質体の屈折率−1〕、即ち、nを算出する式が(c)であり、これも当業者には周知の式である。尚、式(c)は、本来多孔質体の充填剤に当て嵌まる式であるが、中空体の微粒子(外殻が多孔質である場合を含む)にも同様に当て嵌めることができ、更に、真比重とかさ比重を同じとし、充填剤の屈折率が充填剤を構成する物質の屈折率と等しいとすることによって、充填剤が中実体であっても式(c)が当て嵌まり、従って、上記式によって、充填剤の屈折率が得られることは言うまでもない。
ゾルの屈折率(測定値)=N+1
溶媒の屈折率=N+1
充填剤を構成する物質の屈折率=n+1
ゾルの比重(測定値)=P
溶媒の比重=P
充填剤を構成する物質の真比重=p
充填剤のかさ比重=p
ゾル中の充填剤の占有容積割合=V
V=(N−N)/(n−N) (a)
V=(P−P)/(p−P) (b)
n=pn/p (c)
(バインダーの屈折率)
次のようにして得られる被膜について、エリプソメトリによって測定される屈折率である;バインダー形成材料を適当な溶媒(例えばメタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール等)に溶解および/または分散させて液状混合物を得、それを基材に塗布して塗膜を得、この塗膜から液体(または揮発分)を除去して乾燥させることによって基材上に残る被膜。尚、この被膜は、本発明の複合被膜においてバインダーの部分を構成する。
(1−1)充填剤としてのエアロゲル微粒子について
エアロゲル微粒子としては、例えばシリカエアロゲル微粒子、シリカ/アルミナエアロゲル等の複合エアロゲル微粒子、メラミンエアロゲル等の有機エアロゲル微粒子、等を用いることができる。シリカエアロゲルは、例えば米国特許明細書第4402827号、同第4432956号公報および同第4610863号公報に記載されているように、アルコキシシラン(シリコンアルコキシドまたはアルキルシリケートとも称される)の加水分解および縮重合反応によって得られたシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、アルコールまたは二酸化炭素等の溶媒(分散媒)中に分散させて、この溶媒の臨界点以上の超臨界状態で乾燥することによって製造することができる。超臨界乾燥は、例えばゲル状化合物を液化二酸化炭素中に浸漬し、ゲル状化合物が予め含んでいた溶媒の全部又は一部を、その溶媒よりも臨界点が低い液化二酸化炭素に置換し、この後、二酸化炭素の単独系、あるいは二酸化炭素と溶媒との混合系の超臨界条件下で乾燥することによって、行なうことができる。
別法では、シリカエアロゲルは、米国特許明細書第5137279号公報および同第5124364号公報に記載されているように、ケイ酸ナトリウムを原料として、先と同様にして製造することができる。
シリカエアロゲルを製造するに際して、特開平5−279011号公報および特開平7−138375号公報に開示されているように、アルコキシシランの加水分解および縮重合反応によって上述のようにして得られたゲル状化合物を疎水化処理することによって、シリカエアロゲルに疎水性を付与することが好ましい。このように疎水性を付与した疎水性シリカエアロゲルは、湿気や水等が浸入し難くなり、シリカエアロゲルの屈折率、光透過性等の性能が劣化することを防ぐことができる。この疎水化処理の工程は、ゲル状化合物を超臨界乾燥する前、あるいは超臨界乾燥中に行なうことができる。
疎水化処理は、ゲル状化合物の表面に存在するシラノール基の水酸基を疎水化処理剤の官能基と反応させ、シラノール基を疎水化処理剤の疎水基に置換させることによって行なう。疎水化処理を行なう方法としては、例えば、疎水化処理剤を溶媒に溶解させた疎水化処理液中にゲルを浸漬し、混合等によってゲル内に疎水化処理剤を浸透させた後、必要に応じて加熱して、疎水化反応を行なわせる方法がある。疎水化処理に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることができる。溶媒は、疎水化処理剤が容易に溶解し、かつ、疎水化処理前のゲルが含有する溶媒と置換可能なものであればよく、これらに限定されるものではない。
疎水化処理の後の工程で超臨界乾燥を行なう場合、疎水化処理に使用する溶媒は、超臨界乾燥の容易な媒体(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、液体二酸化炭素等)であるか、あるいはそれと置換可能なものが好ましい。疎水化処理剤としては、例えばヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
本発明において、充填剤として用いるエアロゲル微粒子は、例えば、上記のように予め調製したシリカエアロゲルを粉砕することによって得ることができる。あるいは、乾燥前の湿潤ゲルを微粉砕した後に乾燥したりすることによって得ることができる。また、ケイ酸ナトリウムを原料として製造する場合には、懸濁重合する際に微粒子化することによってエアロゲル微粒子を得ることができる。尚、上述のようにして得られるシリカエアロゲルの屈折率は、シリカエアロゲルの製造に用いる原料の種類および配合比等を種々選択することによって所望の値にすることができる。
(1−2)充填剤としての中空シリカ微粒子について
充填剤として使用できる中空シリカ微粒子としては、特開平2001−233611号公報に記載された方法で製造される中空シリカゾル、一般的に市販されている他の中空シリカ粉末を用いることができる。尚、本明細書を通じて、中空微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有する微粒子であり、いずれの適当な既知の中空シリカ微粒子を使用してもよい。中空シリカ微粒子では、外殻がシリカ系無機酸化物によって構成されている。使用するのが特に好ましい中空シリカ微粒子は、例えば次のようなものである:
シリカ系無機酸化物からなる外殻(シェル)とは、(A)シリカ単一層、(B)シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物の単一層、及び(C)上記(A)層と(B)層との二重層を包含する。外殻は細孔を有する多孔質なものであってもよく、あるいは細孔が閉塞されて空洞が外殻の外側に対して密封されているものであってもよい。外殻は、内側の第1シリカ被覆層及び外側の第2シリカ被覆層からなる複数のシリカ系被覆層であることが好ましい。外側に第2シリカ被覆層を設けることにより、外殻の微細孔を閉塞させて外殻を緻密化したり、さらには、内部の空洞を密封した中空シリカ微粒子を得ることができる。
外殻の厚みは1〜50nm、特に5〜20nmの範囲であるのが好ましい。外殻の厚みが1nm未満であると、中空微粒子が所定の粒子形状を保持していない場合がある。逆に、外殻の厚みが50nmを超えると、中空シリカ微粒子中の空洞が小さく、その結果、空洞の割合が減少して屈折率の低下が不十分であるおそれがある。更に、外殻の厚みは、中空微粒子の平均粒子径の1/50〜1/5の範囲にあることが好ましい。上述のように第1シリカ被覆層および第2シリカ被覆層を外殻として設ける場合、これらの層の厚みの合計が、上記1〜50nmの範囲となるようにすればよく、特に、緻密化された外殻には、第2シリカ被覆層の厚みは20〜40nmの範囲が好適である。
尚、空洞部には中空シリカ微粒子を調製するときに使用した溶媒及び/又は乾燥時に浸入する気体が存在してもよい。また、後述する空洞を形成するための前駆体物質が空洞には残存していてもよい。前駆体物質は、外殻に付着してわずかに残存していることもあるし、空洞内の大部分を占めることもある。ここで、前駆体物質とは、外殻によって包囲された核粒子から、核粒子の構成成分の一部を除去した後に残存する多孔質物質である。核粒子には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる多孔質の複合酸化物粒子を用いる。無機酸化物としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、Ce、P、Sb、MoO、ZnO、WO等の1種又は2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO−Al、TiO−ZrO等を例示することができる。なお、この多孔質物質の細孔内にも上記溶媒あるいは気体が存在してよい。このときの核粒子の構成成分の除去量が多くなると空洞の容積が増大し、屈折率の低い中空シリカ微粒子が得られ、この中空シリカ微粒子を配合して得られる透明被膜は低屈折率で反射防止性能に優れる。
本発明において中空シリカ微粒子の平均粒子径は5nm〜2μmの範囲にあるのが好ましい。5nmよりも平均粒子径が小さいと、中空によって低屈折率になる効果が小さく、逆に2μmよりも平均粒子径が大きいと、透明性が極端に悪くなり、拡散反射(Anti-Glare)による寄与が大きくなってしまう。本発明において複合薄膜が高い透明性を有することが要求される用途として、例えばディスプレイの最表面等の反射防止用途がある。そのためには、使用する中空シリカ微粒子の粒子径は5〜100nmの範囲内にあるのが好ましい。尚、本明細書にて使用する粒子径は、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒子径である。
上述のような中空シリカ微粒子の製造方法は、特開2001−233611号公報に詳細に記載されているように公知であり、この方法で製造された市販品が提供されており、この市販品を入手して使用することができる。
中空シリカ微粒子の屈折率は、その外殻の厚さと粒子径を中空微粒子の製造段階で種々調整することによって所望の値にすることができる。
中空シリカ微粒子については、外殻は、緻密層であっても、あるいは多孔質層であっても構わないが、粒子径および外殻厚の分布は揃っていることが好ましい。これらの粒子径および複合薄膜中での中空微粒子が占める体積割合が複合薄膜の屈折率を決定するからである。
(1−3)充填剤としてのポリマー製中空微粒子について
本発明の複合薄膜保持基板の複合薄膜の充填剤として、ポリマー製中空微粒子を使用できる。この微粒子の外殻は、例えばフッ素系ポリマーのようなポリマー材料により構成されている。そのような微粒子は、例えば特許開平第10−142402号公報に種々開示されており、この引用によって、この特許公報の内容は本明細書の一部分を構成する。使用するのが特に好ましいポリマー製中空微粒子は、フッ素系ポリマーであり、これを用いると、複合薄膜の屈折率を容易に小さくできる。
ポリマー製中空微粒子の屈折率は、その粒子径とポリマー材料を種々選択することによって所望の値にすることができる。
(1−4)充填剤としての有機ポリマー微粒子について
本発明の複合薄膜保持基板の複合薄膜の充填剤として、有機ポリマーの微粒子を使用できる。この有機ポリマーとしては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等を例示できる。このような有機ポリマーは、懸濁重合、超臨界重合等によって微粒子形態の充填剤として得ることができるが、微粒子が得られる限り、別の方法で製造される微粒子であってもよい。有機ポリマー微粒子の屈折率は、ポリマー材料を種々選択することによって所望の値にすることができる。
(1−5)充填剤としての金属酸化物微粒子について
本発明の複合薄膜保持基板の複合薄膜の充填剤として、金属酸化物の微粒子を使用できる。この金属酸化物としては、チタニア微粒子、酸化インジウム錫微粒子、シリカ微粒子、アルミナ微粒子等を例示できる。これらは、予め分散ゾルとして市販されたゾルを用いてコーティング材組成物に混合する。 使用するのが特に好ましい金属酸化物微粒子としては、その屈折率が大きなものを選定する場合、チタニア微粒子、酸化インジウム錫微粒子を例示でき、その屈折率が小さなものを選定する場合、シリカを例示できる。金属酸化物微粒子の屈折率は、その材料自体を種々選択することによって所望の値にすることができる。
(2−1)バインダーとしての有機ポリマーについて
本発明の複合薄膜保持基板の複合薄膜のバインダーとして、有機ポリマーを使用できる。この有機ポリマーは、上述の有機ポリマー微粒子を構成するポリマーと同じであってよい。従って、そのようなポリマーは、液状のコーティング材組成物中において、溶解および/または分散した状態にあり、これを塗布して乾燥することによって充填剤を分散状態で含む固体の被膜となる。即ち、この場合では、有機ポリマー自体がバインダー形成材料であり、また、バインダーである。そのようなポリマーの他の例としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂等の透明性に優れたものが好ましいが、光学薄膜コーティングとして一般的に用いられるものであってもよい。
別の態様では、コーティング材組成物を塗布して得られる塗膜を乾燥するに際して、バインダー形成材料がバインダーに化学的に変化するものであってよい。例えば、バインダー形成材料は、反応性(例えば架橋性、縮重合性等)の有機モノマー、有機オリゴマーまたは有機プレポリマーであって、これらが反応してバインダーとしての有機ポリマーとなるものであってもよい。従って、そのような有機モノマー、有機オリゴマーまたは有機プレポリマーは、液状のコーティング材組成物において、反応性のバインダー形成材料として溶解および/または分散している。使用するのが好ましいそのような有機モノマー、有機オリゴマーまたは有機プレポリマーとしては、エポキシ系のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等を例示できる。
有機ポリマーの屈折率は、有機ポリマー、それをもたらす有機モノマー、有機オリゴマーおよび有機プレポリマーを種々選択することによって所望の値にすることができる。
(2−2)バインダーとしてのシリカ多孔質体について
本発明の複合薄膜保持基板の複合薄膜のバインダーとして、シリカ多孔質体を使用できる。ここで、シリカ多孔質体とは、充填剤を分散状態で保持するバインダーとしてのシリカが微細な空隙を多数含む状態にある材料を意味する。このようなシリカ多孔質体は、充填剤としてシリカ系のものを用いる場合に、使用するのが好ましい。
特に好ましいシリカ多孔質体を形成するために使用できるバインダー形成材料は、一般式(1):
Figure 2007134339
(式中、置換基X、X、XおよびXは水素、ハロゲン(例えば塩素、フッ素等)、1価の炭化水素基、OR(Rは1価の炭化水素基である)で表されるアルコキシ基およびOHで表される水酸基から選択される基であり、これらは相互に異なっても、部分的に異なっても、あるいは全部同じであってもよく、これらの少なくとも2つは、それぞれアルコキシ基および水酸基から選択される基である。)
で表されるシラン化合物である。このシラン化合物は、少なくとも2つ、好ましくは3つ、より好ましくは4つの同じまたは異なるアルコキシル基および/もしくは水酸基を有する。バインダー形成材料は、シラン化合物の少なくとも1つのアルコキシル基が加水分解されているものであってもよい。
別の態様では、バインダー形成材料は、上記シラン化合物の1種またはそれ以上が、加水分解可能な場合には加水分解した後、縮合することによって生成するシロキサン化合物またはポリシロキサン化合物である。尚、ポリシロキサン化合物とは2以上のシロキサン結合を有する化合物を意味する。この(ポリ)シロキサン化合物は、少なくとも2つのアルコキシ基および/または水酸基を置換基として有するのが好ましい。
尚、上述のシラン化合物および(ポリ)シロキサン化合物は、アルコキシル基を有する場合、アルコキシル基が加水分解して生成する水酸基を有することができる。その結果、これらのシラン化合物および(ポリ)シロキサン化合物も、コーティング材組成物を塗布して乾燥するに際して、少なくとも部分的に縮合して架橋し、バインダーとしての多孔質シリカを形成できる。(ポリ)シロキサン化合物が、アルコキシ基および/または水酸基を置換基として有さない場合であっても、コーティング材組成物を塗布して乾燥するに際して、多孔質のバインダーを形成できる。
特に好ましいシリカ多孔質体は、SiX(Xは例えば炭素数1〜4の加水分解可能置換基、例えば炭素数1〜5のアルコキシル基である)で表される、珪素元素に4個の加水分解可能置換基を有する4官能加水分解性オルガノシロキサンの部分加水分解物あるいは完全加水分解物が縮重合して得られる、ポリシロキサン化合物(本明細書において、このポリシロキサン化合物を「シリコーンレジン−M」と呼ぶ)をバインダー形成材料として使用するコーティング材組成物を塗布して塗膜を乾燥することによって得られる。尚、一般的に「シリコーン樹脂」として知られているものと区別するために、このバインダー形成材料としてのポリシロキサン化合物を、本明細書ではこのように「シリコーンレジン−M」(SILICONE RESIN-M)と特に呼ぶことにしている。そのような「シリコーンレジン−M」は、一般的にシリコーン樹脂として知られているものと同じである必要はない。
このシリコーンレジン−Mは、それ自体が加水分解可能置換基を有してもよく、その場合は、シリコーンレジン−Mがバインダーを形成するに際して、加水分解して縮合することによってより大きい分子量のシリコーンレジン−Mとしてバインダーを形成する。シリコーンレジン−Mがそのような置換基を有さない場合は、シリコーンレジン−Mがそのままバインダーを形成する。
従って、コーティング材組成物に上述のようなバインダー形成材料を充填剤と一緒に含ませ、基材に塗布して塗膜を乾燥することによってバインダー中に充填剤が分散した複合薄膜を得ることができる。バインダーとしてのこのようなシリカ多孔質体の屈折率は、充填剤とバインダー形成材料の重量比率を種々変えることによって所望の値にすることができる。
シリカ多孔質体を形成するこのようなシリコーンレジン−Mは、複合被膜の機械的強度が要求される場合は、その重量平均分子量が約200〜2000であるのが好ましく、600〜1200であるのがより好ましい。この範囲の分子量は、複合被膜の強度の向上およびバインダーの多孔率(即ち、バインダー中の空隙の割合)の増加を達成しやすい傾向にある。また、シリコーンレジン−Mは、複合被膜に大きな機械的強度が要求されない場合は、その重量平均分子量が約2000以上であるのが好ましく、3000以上であるのがより好ましく、例えば、3000〜5000である。
尚、シリコーンレジン−Mを用いて形成された複合被膜は、必要に応じて、好ましくは100〜300℃、より好ましくは50〜150℃で5〜30分熱処理してよく、複合被膜の機械的強度を向上させることができる。
別の態様では、シリカ多孔質体はシリカエアロゲルである。このバインダーとしてのエアロゲルは、先に説明したようなアルコキシシラン(シリコンアルコキシド、特に上述の4官能アルコキシシラン)の加水分解・重合反応、珪酸ナトリウム水溶液のゲル化反応等によって得られるゲル状化合物をコーティング材組成物に含まれるバインダー形成材料として用い、コーティング材組成物を塗布して塗膜を得、これを乾燥することによって充填剤を保持する状態で形成できる。従って、この場合では、バインダー形成材料は、アルコキシシラン、その加水分解物(必ずしも全部のアルコキシル基が加水分解している必要はなく、一部分のアルコキシル基だけが加水分解している部分加水分解物も含む)および加水分解物の縮合物の少なくとも1種である。一般的に、バインダー形成材料は、加水分解物の縮合物であるのが好ましい。そのようなシリカエアロゲルについては先に説明したようにして得ることができる。湿潤状態のゲル状化合物に充填剤を混入してこれを乾燥すれば、シリカエアロゲル中に充填剤が分散した状態の複合薄膜を得ることができる。従って、コーティング剤組成物は、湿潤状態のゲル状化合物および充填剤を含んで成る。
バインダーとしてのこのようなエアロゲルの屈折率は、原料溶液の調合比、乾燥方法等を選択することによって所望の値にすることができる。
(2−3)バインダーとしての金属酸化物について
本発明の複合薄膜保持基板の複合薄膜のバインダーとして、金属酸化物を使用できる。この場合、コーティング材組成物中にバインダー形成材料として含まれている金属酸化物前駆体が、コーティング材組成物を塗布して得られる塗膜を乾燥するに際してバインダーとしての金属酸化物に変化する。使用するのが好ましいそのような金属酸化物前駆体の例としては、シリカ、シリカ/チタニア複合酸化物等を例示できる。バインダーとしての金属酸化物の屈折率は、金属酸化物をもたらすその物質の構成元素種を種々選択することによって所望の値にすることができる。
本発明の複合被膜保持基板では、上述の屈折率の関係を満足するように先に説明した充填剤とバインダーとの組み合わせを選択すればよい。尚、このような充填剤とバインダーとの組み合わせから形成される複合薄膜の屈折率(即ち、複合膜の全体としての屈折率)は、充填剤の屈折率、バインダーの屈折率、および形成される薄膜における充填剤/バインダーの割合から理論的に算出される屈折率より通常、小さい。それは、形成される複合薄膜のバインダーには、バインダーの材料自体に固有に存在し得る空隙(例えばバインダーの多孔性故の空隙部)に加えて、充填剤を構成する微粒子同士の間に空隙が存在し得、また、充填剤の微粒子とバインダーとの間に空隙が存在し得るからであり、実際、充填剤とバインダー形成材料を混合して複合被膜を形成する場合には、そのような他の空隙も複合薄膜に含まれ、そのような空隙は、複合薄膜の屈折率を下げる効果を有する。本明細書において、複合薄膜の屈折率とは、そのような他の空隙の効果をも含む総括的な屈折率を意味する。
本発明のコーティング材組成物を用いて形成された複合被膜において、充填剤の周囲に存在してマトリクスとして作用するバインダーはその中に微細な空隙を多数含む状態を意味する。従って、バインダーの見かけ比重がバインダーを構成する材料自体(即ち、空隙が実質的に存在しない場合の材料)の真比重より小さい。バインダーの真比重に対するバインダーの見かけ比重の割合は、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.75以下であり、例えば0.50〜0.75である。尚、この割合は、複合被膜が上述の「他の空隙」を含む場合、そのような空隙の体積をも含んで算出される値である。尚、バインダー内の空隙は、通常、被膜の周辺気体を含む。
1つの例では、屈折率1.45のバインダーとしての4官能シリコーンレジン(即ち、シリコーンレジン−M)および屈折率1.32の充填剤としてのシリカ中空微粒子を、バインダー/充填剤の体積比0.1〜0.3で含む複合薄膜の平均屈折率は1.26〜1.35となり得る。
他の例では、屈折率1.20のバインダーとしてのシリカエアロゲルおよび屈折率1.59の充填剤としてのアクリルポリマー微粒子を、バインダー/充填剤の体積比0.5〜0.75で含む複合薄膜の平均屈折率は1.30〜1.40となり得る。
更にもう1つの他の例では、屈折率1.59のバインダーとしてのアクリルポリマーおよび屈折率1.6の充填剤としてのシリカ/チタニア複合酸化物微粒子を、バインダー/充填剤の体積比0.05〜0.15で含む複合薄膜の平均屈折率は1.35〜1.40となり得る。この複合薄膜の場合は、複合被膜の見掛け体積とバインダーおよび充填剤の重量に基づいて計算すると、複合薄膜の体積の約40%が空隙によって占められていることになり、それ故に、複合薄膜の平均屈折率は、充填剤の屈折率より小さく、また、バインダーの屈折率より小さくなっている。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)は、第1の要旨の複合薄膜保持基板Aの1つの形態を断面図にて模式的に示す。図示した形態では、基材1の表面に、充填剤2とバインダー3によって構成された複合薄膜4が形成されている。この複合薄膜4は、充填材とバインダー形成材料との混合物である液状コーティング材組成物を基材1上に塗布して乾燥することによって得られたものである。図示した態様において、この充填剤2の屈折率は、基材1の屈折率より低く、形成されたバインダー3の屈折率は、充填剤2の屈折率より高い。尚、基材1については、先に説明した通りである。
また、充填剤2の屈折率は、基材1の屈折率よりも低ければよく、特に限定されるものではないが、通常1.35よりも低い、好ましくは1.3よりも低い屈折率であることが、複合薄膜4の平均屈折率を低くするうえで望ましい。充填剤2の屈折率は低い程望ましいので、下限は理想的には1.0であるが、実用的には1.003であり、一般的には下限は、1.1であってよい。バインダーの屈折率は、充填剤の屈折率より高ければよく、特に限定されるものではないが、通常1.5よりも低く、好ましくは1.46よりも低い屈折率であることが、複合薄膜4の平均屈折率を低くするうえで望ましい。
基材1の屈折率より低い屈折率を有する充填剤2としては、例えば上述のエアロゲル微粒子、中空シリカ微粒子、ポリマー製中空微粒子等を挙げることができる。
充填剤2のエアロゲル微粒子としてシリカエアロゲル微粒子を用いる場合、その屈折率は、シリカエアロゲルの透明性等の性能を確保するためには、好ましくは1.008〜1.18の範囲に、より好ましくは1.1〜1.3の範囲内となるように調整するのが好ましい。
充填剤2として中空シリカ微粒子を使用する場合、その屈折率が、好ましくは1.2〜1.35、より好ましくは1.2〜1.3の範囲内となるように調整するのが好ましい。
充填剤2としてポリマー製中空微粒子を使用する場合、その屈折率が、好ましくは1.2〜1.4、より好ましくは1.2〜1.3の範囲内となるように調整するのが好ましい。
上述の低屈折率の充填剤2としては、粒径が5nm〜2μmの範囲のものが好ましく、特に20nm〜500nmのものがより好ましい。充填剤2が中空微粒子の場合、その外殻の厚さは、5nm〜20nmであるのが好ましい。充填剤2は粒径が小さいほど、複合薄膜4の平均屈折率(即ち、複合薄膜の全体としての屈折率)を低くする効果が高く、また透明性に優れた複合薄膜4が得られ、その結果、光の取出効率を大きくすることができる。逆に、粒径が大きいほど、複合薄膜4内での散乱効果が大きくなって光の導波を抑制する効果が大きいので、光の取出効率を大きくすることができる。この両者の効果を併せ持たせるために、充填剤2の粒径は上述の範囲が好ましく、充填剤2の粒径は複合薄膜4を構成するバインダー3の屈折率、発光素子の種類および厚み等に応じて、上記の範囲で適宜適切なものを選択できる。尚、本明細書において記載する粒子径は一次粒子径のことを指し、粒子径は、透過型電子顕微鏡観察等の目視観察により計測される。
一方、充填剤2より屈折率が高いバインダー3は、透明性のコーティング材組成物中に含まれるバインダー形成材料から生成する有機ポリマーあるいは金属酸化物であるのが好ましい。バインダー3の屈折率が充填剤2より高いものであれば、バインダーは、上述の有機ポリマー、金属酸化物等のバインダーであって、その屈折率が充填剤の屈折率より大きければ、その種類は特に限定されない。バインダー形成材料として使用するのが好ましい材料としては、バインダーとしての有機ポリマーの場合、メチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、スチレン系ポリマー等を例示でき、これらを用いて形成されるバインダーの屈折率は、通常、1.4〜1.65であり、好ましくは1.45〜1.6である。また、バインダー形成材料として使用するのが好ましい材料としては、バインダーとしての金属酸化物の場合、シリカ、酸化インジウム錫、チタニア、シリカ/チタニア複合酸化物、ジルコニア等を例示でき、これらを用いて形成されるバインダーの屈折率は、通常、1.45〜3.0であり、好ましくは1.45〜2.5である。
特に、コーティング材組成物において一緒に使用する充填剤2の分散性が良好なバインダー形成材料を選定するのが望ましい。中でも、充填剤2としてシリカ系のものを用いる場合には、先に説明したSiX4(Xは例えば炭素数1〜4のアルコキシル基)で表される4官能加水分解性オルガノシロキサンの部分加水分解物あるいは完全加水分解物が縮重合して得られるシリコーンレジン−Mをバインダー3として用いるのが最も好ましい。上述のように、このシリコーンレジン−Mは、それ自体が加水分解可能置換基を有してもよく、あるいはシリコーンレジン−Mがそのような置換基を有さなくてもよい。このようにシリコーンレジン−Mによって形成されるバインダー3の屈折率は、通常、1.3〜1.50であり、好ましくは1.3〜1.45である。
複合薄膜4において、充填剤2とバインダー3の存在比率は、それぞれの屈折率の比や密度の比によって変動するが、充填剤2の質量比率が40〜95質量%であることが好ましく、その場合、複合薄膜4の平均屈折率は通常1.2〜1.4好ましくは1.20〜1.35である。低屈折率の充填剤2の比率が40質量%よりも低いと、複合薄膜4の平均屈折率が大きくなってしまい、また95質量%よりも高いと、複合薄膜4の強度や基材1への密着性が低くなる等の実用性が不十分なものになるおそれがあり、いずれも好ましくない。尚、本明細書を通じて、複合被膜の平均屈折率は、後述の実施例にて説明するようにして測定される屈折率を意味する。
基材1の表面に複合薄膜4を形成するにあたっては、充填剤2とバインダー3を溶媒に混合して溶解および/または分散させて液体のコーティング材組成物を調製し、このコーティング材組成物を基材1の表面に塗布した後、乾燥することによって液体を除去して複合薄膜4として被膜を残す。このような乾燥に際して、必要に応じて加熱してよい。更に、必要に応じて得られた被膜を更に熱処理することによって焼成してもよい。塗布方法としてはスピンコート、ディップコート、フローコート、ロールコート、バーコート等のいずれの適当な方法を採用してもよい。複合薄膜4の厚み、基材1の大きさ、種類等に応じて適当な塗布方法を選定できる。
本発明の第1の要旨において、上述のようにして形成される複合薄膜の平均屈折率は、一般的に基材の屈折率より小さく、例えば0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.3小さいのが望ましい。複合薄膜の平均屈折率自体は、通常1.2〜1.4であり、好ましくは1.20〜1.35であり、より好ましくは1.25〜1.3である。しかしながら、充填剤2が複合薄膜4を通過する光を拡散できるので、複合薄膜の平均屈折率より少し大きくてもよく、例えば1.35〜1.45程度に大きくてもよい。
図1(b)は、図1(a)の複合薄膜保持基板Aを用い、基材1が位置する側とは反対側の複合薄膜4の側に薄膜の発光素子15を設けた面発光体Aを断面図にて概念的に示す。図示した形態では、発光素子15で発光した光は、矢印で示すように、複合薄膜4及び基材1を通過して基材1の表面から取り出される。複合薄膜4は、屈折率のより低い充填剤2と屈折率のより高いバインダー3の複合層であり、複合薄膜4の平均屈折率は基材1の屈折率より好ましくは小さい。光は発光素子15と複合薄膜4の界面及び複合薄膜4内で拡散され、拡散光として基材1を通過する。この際に、複合薄膜4から基材1に入射する光の入射角度は小さくなり、その結果、基材1の表面と空気との界面で反射される光の量を少なくして基材1内での導波を減少させることができ、好ましい場合には、殆ど存在しないようにすることができる。
また、発光素子15内を導波し得る光成分も存在するが、発光素子15と複合薄膜4の界面は充填剤の影響によって、模式的に図示するように平坦性が減少しているので、界面での散乱によってこの導波が減少し得る。更に、発光素子15の厚みはせいぜいサブミクロンオーダー(例えば0.05〜1μm)であるので、導波光が発光素子15と複合薄膜4との界面に当たる回数は著しく多く、導波光のほぼ全量が最終的には複合薄膜4の側へ透過できる。このように基材1に複合薄膜4を設けることによって光の導波を低減することができ、基材1の表面からの光の取出効率を向上させることができる。
この複合薄膜4において、充填剤2とバインダー3の屈折率の差が大きいほど、光の取出効率を高めることができ、具体的には、この差は、好ましくは少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.05である。また、発光素子15を配置する複合薄膜4の表面は、発光素子15が形成できる限り、粗度が大きいほうが好ましい。
尚、上記の複合薄膜4中の充填剤の粒子2同士の間は、バインダー3によって完全に埋められている必要は必ずしもなく、その間に空隙部(これを、気泡と呼ぶこともできる)が存在してよい。空隙部には、通常周辺気体(一般的には空気)が含まれており、従って、空隙部は、充填剤2と同様に低屈折率であるか、あるいはそれより低い屈折率である。そのため、充填剤2の間に空隙部が残ると、空隙部は充填剤2とほぼ同様に作用し、その結果、光の取出効率が向上する。尚、複合薄膜4全体の平均屈折率は、基材1の屈折率より低いことが望ましいが、基材1より多少高くてもよい。
図2(a)は、第2の要旨の複合薄膜保持基板Aの1つの形態を断面図にて模式的に示す。図示した形態では、基材1の表面に、充填剤2とバインダー3によって構成された複合薄膜4が形成されている。この複合薄膜4は、充填材2とバインダー形成材料との混合物であるコーティング材組成物を塗布して乾燥することによって得られたものである。図示した態様において、形成されたバインダー3の屈折率は基材1の屈折率より低く、充填剤2の屈折率はバインダー3の屈折率より高い。
基材1の屈折率より低い屈折率のバインダー3としては、基材1より屈折率が低い透光性のものであれば特に限定されないが、中でも上述のシリカ多孔質体、エアロゲル(例えばシリカエアロゲル)等であるのが好ましい。複合薄膜4の平均屈折率を低くするには、一般的にバインダー3の屈折率が1.3より低い、好ましくは1.25より低い屈折率であることが望ましい。
バインダー3としてシリカ多孔質体を用いる場合、その屈折率が、好ましくは 1.2〜1.45の範囲に、より好ましくは1.2〜1.35の範囲内となるようにバインダー形成材料を選択するのが好ましい。
バインダー3としてエアロゲルを用いる場合、その屈折率が、好ましくは1.005〜1.3の範囲に、より好ましくは1.1〜1.3の範囲内となるようにバインダー形成材料を選択するのが好ましい。
バインダー3の屈折率より高い屈折率の充填剤2としては、上述のシリカ、チタニア等の金属酸化物の微粒子、シリコーンに代表される有機ポリマーの微粒子等の中空シリカ微粒子を用いることができる。この充填剤2の屈折率は、バインダー3の屈折率より高ければ特に限定されないものであるが、一般的に、1.4以上、好ましくは1.46以上、より好ましくは1.5以上のものが用いられる。
充填剤2として金属酸化物の微粒子を用いる場合、その屈折率が、好ましくは1.46〜3.0の範囲に、より好ましくは1.5〜2.5の範囲内となるように金属酸化物の微粒子を選択するのが好ましい。
充填剤2として有機ポリマーの微粒子を用いる場合、その屈折率が、好ましくは1.49〜1.7の範囲に、より好ましくは1.5〜1.67の範囲内となるように有機ポリマーの微粒子を選択するのが好ましい。
充填剤2として中空シリカ微粒子を用いる場合、その屈折率が、好ましくは1.3〜1.4の範囲に、より好ましくは1.32〜1.37の範囲内となるように中空シリカ微粒子を選択するのが好ましい。
上述の充填剤2としては、粒径が5nm〜2μmの範囲のものが好ましく、特に20nm〜500nmのものがより好ましい。充填剤が中空微粒子の場合、その外殻の厚さは、5nm〜20nmであるのが好ましい。充填剤2はそのかさ比重が小さいほど、すなわち中空粒子においては粒子内の空隙率が大きいほど複合薄膜4の平均屈折率(即ち、複合薄膜の全体としての屈折率)を低くする効果が高く、またその粒子径は小さいほど透明性に優れた複合薄膜4が得られ、その結果、光の取出効率を大きくすることができる。逆に、粒径が大きいほど、複合薄膜4内での散乱効果が大きくなって光の導波を抑制する効果が大きいので、光の取出効率を大きくすることができる。この両者の効果を併せ持たせるために、充填剤2の粒径は上述の範囲が好ましく、充填剤2の粒径は複合薄膜4を構成するバインダー3の屈折率、発光素子の種類および厚み等に応じて、上記の範囲で適宜適切なものを選択できる。
形成される複合薄膜において、バインダー3と充填剤2の存在比率は、これらの材料の屈折率、密度、意図する複合薄膜の平均屈折率等に応じて変えてよいが、一般的にはバインダー3の質量比率が40〜95質量%であり、充填剤の質量比率が5〜60質量%であることが好ましい。低屈折率のバインダー3の比率が40質量%よりも低いと、複合薄膜4の平均屈折率が大きくなってしまい、また95質量%よりも高いと、複合薄膜4の膜としての強度が不十分になるなど、場合によって目的を達成できないおそれがあり、いずれも好ましくない場合がある。
そして、基材1の表面に複合薄膜4を形成するにあたっては、充填剤2とバインダー形成材料を溶媒に混合・分散させた液状のコーティング材組成物を既述のように基材1の表面に塗布して塗膜を得た後、これを乾燥し、必要に応じて熱処理して焼成する。また、バインダー3としてエアロゲルを用いる場合には、必要に応じて超臨界乾燥法で乾燥を行なってもよい。
本発明の第2の要旨において、上述のようにして形成される複合薄膜の平均屈折率は、一般的に基材の屈折率より小さく、例えば0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.3小さいのが望ましい。複合薄膜の平均屈折率自体は、通常1.1〜 1.4であり、好ましくは1.1〜1.35であり、より好ましくは1.2〜1.3である。
図2(b)は、図2(a)の複合薄膜保持基板Aを用い、基材1が位置する側とは反対側の複合薄膜4の側に薄膜の発光素子15を設けた面発光体Aを断面図にて概念的に示す。図示した形態では、発光素子15で発光した光は、矢印で示すように、複合薄膜4及び基材1を通過して基材1の表面から取り出される。複合薄膜4は、屈折率のより低いバインダー3と屈折率のより高い充填剤2の複合層であり、複合薄膜4の平均屈折率は基材1の屈折率より小さい。光は発光素子15と複合薄膜4の界面及び複合薄膜4内を通過し、さらに基材1を通過する。この際に、複合薄膜は基材1よりも屈折率が小さいため、複合薄膜4から基材1に入射する光の入射角度は小さくなり、その結果、基材1の表面と空気との界面で反射される光の量を少なくして基材1内での導波を減少させことができ、好ましい場合には、殆ど存在しないようにすることができる。
また、発光素子15内を導波し得る光成分も存在するが、発光素子15と複合薄膜4の界面は充填剤の影響によって、模式的に図示するように平坦性が減少しているので、界面での散乱によってこの導波が減少する場合もある。更に、発光素子15の厚みはせいぜいミクロンオーダー(例えば0.05〜1μm)であるので、導波光が発光素子15と複合薄膜4との界面に当たる回数は著しく多く、導波光のほぼ全量が最終的には複合薄膜4の側へ透過できる。このように基材1に複合薄膜4を設けることによって光の導波を低減することができ、基材1の表面からの光の取出効率を向上させることができる。
この複合薄膜4において、充填剤2とバインダー3の屈折率の差は適宜設計され、具体的には、この差は、好ましくは少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.1である。また、発光素子15を配置する複合薄膜4の表面は、本来高い平坦性を有することが好ましいが、その粗度は充填剤の粒径と充填量により設計される。しかし一方で、粗度が大きくなる場合にはその界面での拡散による導波成分の減少が期待でき、その粗度は発光素子15が連続的な膜として形成できる範囲である必要性がある。
尚、上記の複合薄膜4中の充填剤の粒子2同士の間は、バインダー3によって完全に埋められている必要は必ずしもなく、その間に空隙部(これを、気泡と呼ぶこともできる)が存在してよい。空隙部には、通常周辺気体(一般的には空気)が含まれており、従って、空隙部は、バインダー3と同様に低屈折率であるか、あるいはそれより低い屈折率である。そのため、充填剤2の間に空隙部が残ると、空隙部はバインダー3とほぼ同様に作用し、その結果、光の取出効率がより高くなる。尚、複合薄膜4全体の屈折率は、基材1の屈折率より低いことが望ましいが、基材1より多少高くてもよい。
別法では、本発明の第3の要旨の複合薄膜保持基板の場合のように、基材1の屈折率より高い屈折率のバインダー3と基材1の屈折率より高い屈折率の充填剤の組合せにより、平均屈折率が基材1よりも低い複合薄膜4を形成することも可能である。尚、この第3の要旨の基板を図示しないが、図示したとするならば、先に引用した図2(a)に示す基板と類似する図面となるので、便宜的に図2(a)を引用して説明する。
第3の要旨の基板の場合、基材1の屈折率より高い屈折率のバインダー3としては、基材1より屈折率が高い透光性のものであれば特に限定されないが、上述の有機ポリマー、金属酸化物等のバインダーであるのが好ましい。そのようなバインダーの屈折率は1.5〜1.8が好ましく、1.5〜1.6の範囲がより好ましい。基材1の屈折率よりも屈折率が高い充填剤との組合せによって屈折率が基材1の屈折率よりも低い複合薄膜4を形成するためには、バインダーの混合割合が小さく、バインダーが複合薄膜中において充填剤の微粒子間の空隙を埋めることを抑制し、充填剤の微粒子同士を結合することを促進するように複合薄膜を構成する必要がある。
例えば、バインダー3として有機ポリマーを用いる場合、その屈折率が、例えば1.5〜1.7の範囲となるようにバインダー形成材料を選択するのが好ましい。また、バインダー3として金属酸化物を用いる場合は、その屈折率が、例えば1.5〜1.8の範囲内となるようにバインダー形成材料を選択するのが好ましい。
基材1の屈折率より高い屈折率のバインダー3と基材1の屈折率より高い屈折率の充填剤との組合せを用いるにもかかわらず、基材1よりも低い屈折率を有する複合薄膜4を形成する場合、基材1の屈折率より高い屈折率の充填剤2としては、上述のシリカ、チタニア等の金属酸化物の微粒子、有機ポリマーの微粒子等を用いることができる。この充填剤2の屈折率は、基材1の屈折率より高ければよいが、一般的に1.46以上である。
充填剤2として金属酸化物の微粒子を用いる場合、その屈折率は、好ましくは 1.46〜1.6の範囲に、より好ましくは1.46〜1.55の範囲内となるように金属酸化物の微粒子を選択するのが好ましい。充填剤2として有機ポリマーの微粒子を用いる場合、その屈折率が、好ましくは1.49〜1.65の範囲に、より好ましくは1.49〜1.6の範囲内となるように有機ポリマーの微粒子を選択するのが好ましい。
上述の充填剤2としては、粒径が5nm〜2μmの範囲のものが好ましく、特に20nm〜500nmのものがより好ましい。充填剤2が中空微粒子の場合、その外殻の厚さは、5nm〜20nmであるのが好ましい。充填剤2はコーティング材中の固形分率中のバインダー/充填剤比率が小さければ小さいほど、すなわち、バインダーが充填剤間の空隙を埋める占有率が小さければ小さいほど複合薄膜4の平均屈折率(即ち、複合薄膜の全体としての屈折率)を低くすることができる。また、その粒子径は小さいほど透明性に優れた複合薄膜4が得られ、その結果、光の取出効率を大きくすることができる。逆に、粒子径が大きいほど、複合薄膜4内での散乱効果が大きくなって光の導波を抑制する効果が大きいので、光の取出効率を大きくすることができる。この両者の効果を併せ持たせるために、充填剤2の粒子径は上述の範囲が好ましく、充填剤2の粒径は複合薄膜4を構成するバインダー3の屈折率、発光素子の種類および厚み等に応じて、上記の範囲で適宜適切なものを選択できる。
いずれもが基材の屈折率よりも高い屈折率を有するバインダーと充填剤とで構成される複合薄膜4においては、バインダー3と充填剤2の構成割合は、これらの材料の屈折率、密度、意図する複合薄膜の平均屈折率等に応じて変えてよいが、一般的にはバインダー3の質量割合が5〜20質量%であり、充填剤の質量割合が80〜95質量%であることが好ましい。
いずれもが基材の屈折率よりも高い屈折率を有するバインダーと充填剤とで複合薄膜を形成する場合、上述のように、バインダーが充填剤を結着することのみのために存在しており、充填剤間の空間はその大部分はバインダーによって占められずに空間のまま存在していることが必要である。このような構成の複合薄膜においては、充填剤の複合薄膜中における容積充填率が50%〜75%を占め、複合薄膜中の空隙割合が25%以上である必要がある。
高屈折率のバインダー3の質量比率が20質量%よりも高いと、バインダーが充填剤の微粒子間の空隙を埋めてしまい易く、その結果、複合薄膜4の平均屈折率が大きくなってしまい、また、95質量%よりも高いと、複合薄膜4の膜としての強度が不十分になるなど、場合によって目的を達成できないおそれがあり、いずれも好ましくない場合がある。
図2(b)に示す形態と同様に、第3の要旨の複合薄膜保持基板を用い、基材1が位置する側とは反対側の複合薄膜4の側に薄膜の発光素子15を設けると、面発光体が得られるのは当然である。
図1(a)および図2(a)の複合薄膜保持基板Aにあって、基材1に設けた複合薄膜4の表面(即ち、基材1の側と反対の側の表面)の粗度が大き過ぎる場合には、複合薄膜4の基材1と反対側の表面に平滑化下地層を設け、複合薄膜4の表面の凹凸を埋めて平滑にするのが好ましい。このような平滑化下地層6を、図1(a)の複合薄膜保持基板Aに、また、図2(a)の複合薄膜保持基板Aに設けた形態を、それぞれ図3(a)および図3(b)に模式的に断面図にて示す。このように平滑化下地層6を設けることによって、有機エレクトロルミネッセンス素子等のように薄膜間の平滑性、厚みの高度な均一性等が必要とされるものを複合薄膜4の上に形成することが容易になる。
この平滑化下地層6を構成する材料は特に限定されるものではないが、平滑化下地層6の上に形成される薄膜等の層の屈折率に近い屈折率を有するものが好ましい。具体的には、シリカ、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、チタニア等の金属酸化物および金属窒化物、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等のフッ素化物、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、パリレン等を用いることができる。平滑化下地層6を形成する方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の気相成長法、複合薄膜4上に塗膜として形成した後に揮発分を乾燥除去するコーティング法等を挙げることができる。
上述のように形成した複合薄膜保持基板Aの表面上であって、基板が位置する側と反対側に透明導電性膜を形成してよい。この際、複合薄膜の露出表面が平坦でない場合、上述のように、複合薄膜の上に平滑化下地層6を形成し、その上に透明導電性膜を形成してよい。
このように透明導電性膜を形成した形態を図4に断面図にて模式的に示す。図4に示す形態は、上述のようにして形成される複合薄膜保持基板Aの複合薄膜4の上に透明導電性膜5を設けて形成される透明導電性膜保持基板Bを示すものである。尚、図4の形態では、複合薄膜4の基材1と反対側の表面に平滑化下地層6を設け、この平滑化下地層6の上に透明導電性膜5を形成している。図4(a)は、図3(a)の複合薄膜保持基板Aに透明導電性膜5を設けたものを、図4(b)は図3(b)の複合薄膜保持基板Aに透明導電性膜5を設けたものをそれぞれ示す。このように平滑化下地層6の上に透明導電性膜5を形成することによって、表面が平滑で厚みの均一性が高い薄膜に透明導電性膜5を形成することが容易になる。
この透明導電性膜5は、後述のようにエレクトロルミネッセンス素子を形成する場合に陽極として使用できるものであってよい。その場合、透明導電性膜5の材料としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム亜鉛(IZO)、導電性ポリマー等を例示できるが、特に限定されるものではない。透明導電性膜5を形成する方法としても、平滑化下地層6の場合と同様に、気相成長法、コーティング法等を適宜選択することができる。
尚、透明導電性膜5の種類およびその形成方法によっては、下地の平滑性が低くても表面が平滑な透明導電性膜5を形成することが可能である。その場合には、平滑化下地層6を設ける必要なく、複合薄膜4の上に透明導電性膜5を直接形成することができる。例えば、IZOに代表されるアモルファス系の金属酸化物を気相成長法で製膜して透明導電性膜5を形成する場合、導電性ポリマー、ITO微粒子をコーティング法で製膜して透明導電性膜5を形成する場合等がこれに該当する。
図5の実施の形態は、上述のようにして製造した複合薄膜保持基板Aにおいて、複合薄膜4の上に蛍光体の薄膜7を設けた面発光体Cを模式的に断面図にて示す。図5の形態では、複合薄膜4の基材1と反対側の表面に直接、蛍光体の薄膜7を設けている。この薄膜7は、紫外線の照射や電子線の照射によって励起されて発光する有機又は無機の蛍光体を含んで成り、フォトルミネッセンス素子として面発光体Cを形成する。この面発光体CはCRT、FED、PDP等の自発光型ディスプレイにおいて特に有用である。図5(a)は図1(a)の複合薄膜保持基板Aに蛍光体の薄膜7を設けたものを、図5(b)は図2(a)の複合薄膜保持基板Aに蛍光体の薄膜7を設けたものをそれぞれ示す。蛍光体の薄膜7がこのように複合薄膜4の表面に接していることによって、充填剤2の存在による複合薄膜4の表面の凹凸で光取出効率が向上する。
蛍光体の材料としては特に限定されるものではなく、フォトルミネッセンス素子において従来から使用されている有機あるいは無機の任意の材料を用いることができる。蛍光体の薄膜7の形成方法としては、無機蛍光体の場合にはスパッタリング法、MOCVD法(有機金属気相成長法)等の気相成長法を、低分子有機蛍光体の場合には真空蒸着法を、高分子有機蛍光体の場合にはスピンコーティング、インクジェットコーティング等のコーティング法を挙げることができる。
図6の実施の形態は、上述の透明導電性膜保持基板Bにおいて、透明導電性膜5の上に発光層8および金属電極9を積層してエレクトロルミネッセンス素子10を形成するようにした面発光体Dを断面図にて模式的に示す。即ち、複合薄膜保持基板A上に素子10が形成されている。エレクトロルミネッセンス素子10は、陽極としての透明導電性膜5および陰極としての金属薄膜の金属電極9を有して成り、この陽極と陰極の間に発光層8を積層して形成されている。図6の形態は、有機エレクトルミネッセンス素子10を示し、陽極となる透明導電性膜5と発光層8との間にホール輸送層19が、そして、発光層8と陰極となる金属電極9との間に電子輸送層20が必要に応じて積層されている。無機エレクトロルミネッセンス10の場合には、発光層8の片面あるいは両面に誘電層が積層される。これらの発光層8、金属電極9、ホール輸送層19、電子輸送層20の材料としては、エレクトロルミネッセンスの製造に従来から使用されているものをそのまま用いることができる。
尚、図6(a)は図4(a)の透明導電性膜保持基板Bに有機エレクトロルミネッセンス素子10を設けたものを、図6(b)は図4(b)の透明導電性膜保持基板Bに有機エレクトロルミネッセンス素子10を設けたものをそれぞれ示す。有機エレクトロルミネッセンス素子10は、陽極となる透明導電性膜5に正電圧を、陰極となる金属電極9に負電圧を印加すると、電子輸送層20を介して発光層8に注入された電子と、ホール輸送層19を介して発光層8に注入されたホールとが、発光層8内にて再結合して発光が起こる。
次に、本発明を実施例によってより具体的に説明する。重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、測定機として東ソー(株)のHLC8020を用いて、標準ポリスチレンで検量線を作成し、その換算値として測定した。
(実施例1)
テトラエトキシシラン208質量部にメタノール356質量部を加え、さらに水18質量部及び0.01Nの塩酸18質量部を加え、ディスパーを用いてよく混合することによって溶液を得た。得られた溶液を25℃恒温槽中で2時間攪拌し、重量平均分子量が850のバインダー形成材料としてのシリコーンレジン−M(テトラエトキシシランが加水分解して縮重合したもの)を得た。次に、このシリコーンレジン−Mに、中空シリカ微粒子としての中空シリカIPA分散ゾル(固形分:20質量%、分散媒:イソプロピルアルコール、平均一次粒子径:約35nm、外殻厚み:約8nm、触媒化成工業株式会社製)を、中空シリカ微粒子/シリコーンレジン−M(縮合化合物換算)の固形分質量基準で80/20となるように添加し、全固形分が10質量%になるようにメタノールで希釈して、中空シリカ微粒子を含有するコーティング材組成物を得た。尚、「縮合化合物換算」とは、例えばテトラアルコキシシラン(この場合テトラエトキシシラン)の場合は存在するSiがSiOであるとしての重量、トリアルコキシシランの場合は、SiO1.5であるとしての重量である。
次に、基材としてガラス板を用い、ガラス板の表面にこの得られたコーティング材組成物をスピンコータによって1000rpmの条件で塗布して乾燥して被膜を得、これを200℃で10分間焼成することによって熱処理し、図1(a)のような構造を有する複合薄膜保持基板を製造した。尚、ガラス板の屈折率は1.52、中空シリカ微粒子の屈折率は1.25、シリコーンレジン−Mのみを塗布して乾燥させて熱処理したものの屈折率、即ち、バインダーの屈折率は1.45であった。
(実施例2)
テトラメトキシシラン152質量部にメタノール64質量を加え、ディスパーを用いてよく混合することによって、シリカエアロゲルバインダーを形成するバインダー形成材料の溶液を得た。この溶液216質量部に対してメタノール64質量部、水36質量部、28質量%濃度のアンモニア水0.6質量部、及びポリスチレン微粒子分散ゾル(固形分:1質量%、平均一次粒子径:約100nm、Duke Scientific社製)を50倍濃縮したものを添加して混合し、混合物中におけるポリスチレン微粒子の割合を10質量%に調製したポリスチレン微粒子を含有するコーティング材組成物を得た。
次に、基材としてガラス板を用い、ガラス板の表面にこのコーティング材組成物をスピンコータにより1000rpmの条件で塗布して塗膜を形成し、塗膜のゲル化後、80℃、160kg/cmの条件で超臨界乾燥することによって、図2(a)のような構成の複合薄膜保持基板を作製した。ここで、ガラス板の屈折率は1.52、ポリスチレン微粒子の屈折率は1.59、超臨界乾燥後のバインダーの屈折率は1.18である。
(比較例1)
実施例1および2で用いたガラス板を未処理のまま用いて、これを比較例1とした。
(比較例2)
実施例1および2で用いたガラス板に、実施例1で得たシリコーンレジン−Mのみ(従って、中空シリカ微粒子含有せず)を、実施例1と同様にコーティングし、これを比較例2とした。
実施例1および2、ならびに比較例1および2で得た基板について、全光線透過率および複合薄膜の平均屈折率を測定した。ここで、全光線透過率の測定は、分光光度計(日立製作所製「U−3400」)を用い、波長550nmの全光線透過率を計測して行なった。また、複合薄膜の平均屈折率の測定は、走査型電子顕微鏡で基板の破断面を観察して複合薄膜の膜厚を測定した後、エリプソメーター(ULVAC社製「EMS−1」)で屈折率を計測して行なった。これらの結果を表1に示す。
尚、実施例1および2で得た基板の複合薄膜の鉛筆硬度を測定したところ、実施例1の場合には鉛筆硬度が2H、実施例2の場合には、鉛筆硬度が5Hを示し、これらは、実質的には十分に取り扱える強度であった。尚、シリカエアロゲルのみからなる、屈折率1.2の低屈折率薄膜の場合は、鉛筆硬度はBより柔らかい硬度であり、非常に傷つき易く取扱いの困難さを伴うものであった。
Figure 2007134339
(実施例3)
実施例1で得た複合薄膜保持基板を用い、複合薄膜の上にテトラエトキシシランをソースとしたプラズマCVDを300℃の条件で行ない、100nmの膜厚のSiO2膜からなる平滑化下地層を複合薄膜の表面に形成した。次に、この平滑化下地層の上に200℃の条件でRFスパッタリングすることにより、100nmの膜厚のITO薄膜からなる透明導電性膜を形成し、図4(a)のような透明導電性膜保持基板を作製した。
(実施例4)
実施例2で得た複合薄膜保持基板を用い、複合薄膜の上にSiHガス及びNガスをソースとしたプラズマCVDを300℃の条件で行ない、100nmの膜厚のSiN膜からなる平滑化下地層を複合薄膜の表面に形成した。次にこの平滑化下地層の上に200℃の条件でRFスパッタリングすることにより、100nmの膜厚のIZO薄膜からなる透明導電性膜を形成し、図4(b)のような透明導電性膜保持基板を作製した。
(比較例3)
実施例1および2で用いたガラス板の表面に直接、実施例3と同様にしてITO薄膜からなる透明導電性膜を形成し、これを比較例3とした。
(比較例4)
実施例1および2で用いたガラス板の表面に直接、実施例4と同様にしてIZO薄膜からなる透明導電性膜を形成し、これを比較例4とした。
実施例3および4ならびに比較例3および4で得た透明導電性膜保持基板について、全光線透過率と、透明導電性膜のシート抵抗値を測定した。ここで、シート抵抗値の測定は、ホール効果測定装置(アクセントオプティカルテクノロジー社製「HL5500」)を用いて行なった。結果を表2に示す。
Figure 2007134339
(実施例5)
実施例1で得た複合薄膜保持基板を用い、複合薄膜の上に蛍光体の薄膜として、トリス(8−ヒドロキノリン)アルミニウム(同仁化学研究所製「Alq3」)を100nmの厚みで製膜し、フォトルミネッセンス素子として図5(a)のような面発光体を作製した。
(実施例6)
実施例2で得た複合薄膜保持基板を用い、複合薄膜の上に実施例5と同様にして蛍光体の薄膜を製膜し、フォトルミネッセンス素子として図5(b)のような面発光体を作製した。
(比較例5)
実施例1および2で用いたガラス板の表面に直接、実施例5と同様にして蛍光体の薄膜を製膜し、フォトルミネッセンス素子として面発光体を作製した。
実施例5および6ならびに比較例5で得た面発光体について、蛍光体薄膜に20Wの紫外線蛍光灯を照射し、ガラス基板の表面の輝度を輝度計(ミノルタ社製「LS−110」)を用いて測定した。結果を表3に示す。
Figure 2007134339
(実施例7)
実施例3で得た透明導電性膜保持基板を用い、透明導電性膜の上に、真空蒸着法によって、N,N−ジフェニル−N,N−ビス−3−メチルフェニル−1,1−ジフェニル−4,4−ジアミン(α−NPD)を50nm厚みで、トリス(8−ヒドロキノリン)アルミニウム(Alq3)を50nmの厚みで、Alを100nmの厚みで製膜して、ホール輸送層、発光層、金属電極を積層し、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成して図6(a)のような面発光体を作製した。
(実施例8)
実施例4で得た透明導電性膜保持基板を用い、実施例7と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成して図6(b)のような面発光体を作製した。
(比較例6)
比較例3で得た透明導電性膜保持基板を用い、実施例7と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成して面発光体を作製した。
(比較例7)
比較例4で得た透明導電性膜保持基板を用い、実施例7と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成して面発光体を作製した。
実施例7および8ならびに比較例6および7で得た面発光体について、透明導電性膜とAl膜の金属電極の間に10Vの直流電源を接続して発光させ、ガラス基板の表面の輝度を輝度計(ミノルタ社製「LS−110」)を用いて測定した。結果を表4に示す。
Figure 2007134339
(a)および(b)は、本発明の複合薄膜保持基板の形態の一例を模式的に示す断面図であり、(b)では発光素子が設けられている。 (a)および(b)は、本発明の複合薄膜保持基板の形態のもう一つの例を模式的に示す断面図であり、(b)では発光素子が設けられている。 (a)および(b)は、図1(a)および図2(a)の複合薄膜保持基板上に平滑化下地層を設けた形態を模式的に示す断面図である。 (a)および(b)は、図3(a)および図3(b)の複合薄膜保持基板上に透明導電性膜を設けた形態を模式的に示す断面図である。 (a)および(b)は、図1(a)および図2(a)の複合薄膜保持基板上に蛍光体薄膜を設けた形態を模式的に示す断面図である。 (a)および(b)は、図3(a)および図3(b)の複合薄膜保持基板上にエレクトロルミネッセンス素子を設けた形態を模式的に示す断面図である。 従来の発光体の一例を示す断面図である。 従来の発光体の別の一例を示す断面図である。 従来の発光体の更に別の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 基材
2 充填剤
3 バインダー
4 複合薄膜
5 透明導電性膜
6 平滑化下地層
7 蛍光体薄膜
8 発光層
9 金属電極
10 エレクトロルミネッセンス素子

Claims (4)

  1. 基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板の複合薄膜の上に直接または10〜100nmの厚みの平滑化下地層を介して、紫外線又は電子線によって励起されて発光する有機もしくは無機の蛍光体の薄膜を有して成る面発光体であって、上記複合薄膜は粒径が5nm〜2μmの微粒子よりなる充填剤および充填剤を分散状態で拘束して保持するバインダーより成り、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の双方が基材の屈折率(Ns)より大きい、面発光体。
  2. 基材およびその表面に配置された複合薄膜を有して成る複合薄膜保持基板の複合薄膜の上に直接または10〜100nmの厚みの平滑化下地層を介して透明導電性膜が形成されていると共に、透明導電性膜の上に発光層と金属電極とがこの順に積層され、透明導電性膜、発光層および金属電極がエレクトロルミネッセンス素子を構成する面発光体であって、上記複合薄膜は粒径が5nm〜2μmの微粒子よりなる充填剤および充填剤を分散状態で拘束して保持するバインダーより成り、充填剤の屈折率(Nf)およびバインダーの屈折率(Nb)の双方が基材の屈折率(Ns)より大きい、面発光体。
  3. 充填剤が、有機ポリマー微粒子および金属酸化物微粒子から選択され、バインダーが、有機ポリマーおよび金属酸化物から選択される、請求項1または2に記載の面発光体。
  4. 複合薄膜の屈折率が、1.4以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の面発光体。
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