JP2007119396A - 核酸化合物封入ナノ粒子を含む経肺投与用医薬製剤 - Google Patents

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Hiroyuki Tsujimoto
広行 辻本
Takesuke Tsukada
雄亮 塚田
Kaori Hara
香織 原
Kazuyoshi Kuwano
和善 桑野
Kensuke Egashira
健輔 江頭
Koichi Takayama
浩一 高山
Hiromasa Inoue
博雅 井上
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HOSOKAWA FUNTAI GIJUTSU KENKYU
Hosokawa Powder Technology Research Institute
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HOSOKAWA FUNTAI GIJUTSU KENKYU
Hosokawa Powder Technology Research Institute
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Abstract

【課題】 肺癌や肺線維症等の難治療性の肺疾患に対し、ナノ粒子を用いて核酸や遺伝子等の核酸化合物を直接疾患部位へ効率良く送達し、作用を効果的且つ持続的に発現させる安全性の高い経肺投与用医薬製剤を提供する。
【解決手段】 肺損傷・肺線維症、肺癌、気管支喘息等の難治療性の肺疾患における標的分子に作用するプラスミドやsiRNA等の核酸化合物を生体適合性高分子内に封入し、ナノ粒子としたものを用いて経肺投与用医薬製剤とする。これにより、核酸化合物を臓器特異的、疾患部位特異的に効率良く導入でき、ナノ粒子内部からの核酸化合物の徐放により作用を持続的に発現させることができる。また、全身への影響も最小限となるため、臨床応用への可能性も高くなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生体適合性の高分子にプラスミドやsiRNA等の核酸化合物を封入した生体適合性ナノ粒子を含む経肺投与用医薬製剤に関するものである。
呼吸器疾患は、結核を中心とした感染症主体の疾患構成から、生活習慣、環境、高齢化、医学の進歩等によって、肺癌、肺線維症、気管支喘息、慢性閉塞症肺疾患(COPD)等の難治療性の肺疾患へと変化してきた。
肺癌は悪性腫瘍の中で年間死亡者数が最も多く、さらに増加の一途を辿っている。そのため、抗癌剤を用いた化学療法や放射線療法等、次々に新たな治療法が開発されているが、まだ外科治療には及んでいない。気管支喘息においては吸入ステロイドによりある程度の効果が得られているが、ステロイド抵抗性の難治療性気管支喘息も存在するため、依然として十分な治療法とはいえない。
また、急性肺損傷、肺線維症については、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、過敏性肺臓炎、間質性肺炎等、多くの肺疾患が胞隔炎を伴い、急性、慢性を問わず炎症の遷延化、高度の肺損傷に伴う肺線維化が予後悪化の重要な因子であり、肺上皮細胞損傷を標的とする治療法が重要視され、様々な分子標的薬が候補とされているが、未だ実用化には至っていない。
近年、ヒトゲノムの全塩基配列が解読され、種々の病気が遺伝子疾患を原因として発症することが明らかにされてきており、今後もより多くの病気と遺伝子との関係が解明されると思われる。そして、これらの情報を元に、遺伝子疾患により発症する病気を遺伝子レベルで根本的に治療する、いわゆる遺伝子治療が、難治療性疾患に対する新たな治療戦略として注目されている。
遺伝子治療としては、細胞に二本鎖RNA(siRNA)を導入することにより、それと同じ配列を持つ欠陥遺伝子の発現(タンパク質合成)を抑制する方法(RNA干渉)や、染色体DNAとは独立して存在する環状DNA(プラスミドDNA)を患者の体内に導入する方法等が知られている。
このような遺伝子治療を、難治療性の肺疾患に適用する研究が盛んに行われている。例えば特許文献1には、肺線維症、腎線維症、腫瘍形成及び増殖、並びに緑内障等の細胞増殖性疾患を軽減するために、Transforming growth factor beta(以下、TGF−betaという)応答要素であるCTGF反応性薬剤を含む医薬組成物が開示されている。また、特許文献2には、ストレス蛋白質(熱ショック蛋白質)HSP47遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることにより、組織線維化の発現を直接に、安全且つ効果的に抑制する方法が開示されている。
さらに特許文献3には、遺伝子工学技術を用いて作製したヒト抗体産生トランスジェニックマウスに可溶性ヒトTGF−betaII型受容体を免疫することにより、ヒトTGF−betaII型受容体に結合し、ヒトTGF−betaのシグナルの細胞内への伝達を阻害する種々のヒトモノクローナル抗体が、ヒトTGF−betaの作用により惹起される種々の臓器での組織線維症などの疾患の予防及び治療に有効である旨が開示されている。
ここで、遺伝子治療による治療効果は、疾患部位に如何に効率良く且つ安全に遺伝子を導入し、作用させるかによって決まる。
現在用いられている遺伝子導入法としては、ウイルスのDNAに導入遺伝子を組み込んで組み換えウイルスを作成し、ウイルスの感染機構を利用して遺伝子を導入するウイルスベクター法が挙げられる。しかしながら、ウイルスベクター法では遺伝子の導入効率は高い反面、ウイルスに起因する副作用の問題があり、安全性の面で十分ではなかった。
また、病変部位によって遺伝子治療が困難となる場合も多く、例えば、肺癌、気管支喘息、急性肺損傷、肺線維症等の難治療性肺疾患は、肺組織の中で最も末梢である細気管支、肺胞領域に病変の首座を有するため、依然として効果的な遺伝子導入法が確立されておらず、他の治療法に依存しているのが現状である。
このような背景のもと、薬物が患部に到達するまで吸収・分解されないようにして、過剰な薬物投与を抑える技術、いわゆるDrug Delivery System(以下、DDSという)を利用して遺伝子を導入する技術が盛んに研究されている。DDSは、膜で包む、ないし、膜剤にマトリックスを形成することにより、薬物を途中で吸収・分解させることなく、目標とする患部に効果的かつ集中的に送り込み、患部で薬物を放出させる技術であり、薬物の治療効果を高めるだけでなく、副作用の軽減も期待できるというメリットがある。中でも、肺胞を経由して送達する経肺ルートは、肺内に直接薬剤を投与できるため、難治療性肺疾患の治療法として有利な条件が揃っている。
DDSを利用した遺伝子導入法としては、リポソームを導入遺伝子のキャリアー(ベクター)として用いるリポソーム法が考案され実用化されている。しかし、リポソーム法では、リポソームがリン脂質であるため人体に対する安全性は高い反面、遺伝子の導入効率及び効果の持続性の面で十分ではなかった。
キャリアーの素材となる生体適合性高分子は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する薬物を持続して徐々に放出する粒子であることが好ましい。このような素材として、例えば特許文献4〜7に開示されているように、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体(以下、PLGAという)が好適に用いられている。PLGAは薬物を内包可能であり、当該薬物の効力を保持したまま長期間保存できることが知られている。さらに、生体内の分解酵素の作用によりPLGAが加水分解され、数時間から数十時間単位の徐放ができると考えられる。
このようなナノ粒子は、一般に、良溶媒に溶解させた薬物溶液を、撹拌下、薬物を溶解し難い貧溶媒中に滴下することで、薬物の結晶を析出させる球形晶析法を用いて製造される。球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要なく、容易に形成することができる。
しかしながら、特許文献4〜7においては、対象としている粒子はマイクロサイズであり、またそれらへの遺伝子の封入法は確立されていなかった。マイクロサイズの粒子では、粒子自体の細胞への取り込みは不可能であるため、細気管支や肺胞領域等の難治療性肺疾患病変部への適用では核酸や遺伝子の標的指向性はきわめて低いものとなり、実用化は困難であった。さらに、上述したような難治療性肺疾患を治療する経肺投与用薬剤への具体的な適用例は記載されておらず、単に経口、吸入投与への適用を示唆するものに過ぎなかった。
一方、非特許文献1には、PLGAナノ粒子の表面をキトサンで修飾し、さらに内部に封入するpDNAを、N-[1-(2,3-Dioleoyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium salts(DOTAP)と複合体を形成させることにより、細胞内取り込み量及び遺伝子発現効率を向上させるとともに、pDNAの封入率を高める方法が開示されている。
しかし、非特許文献1においても、上述したような難治療性肺疾患を治療する経肺投与用薬剤への適用については何ら示唆されていなかった。また、DOTAPのようなカチオン性脂質は、一般的に遺伝子の細胞内導入及び発現を向上させる反面、細胞毒性を示すことが知られており、経肺投与用薬剤の原料として用いるには安全性の面で更なる改良が必要であった。
特開2004−132974号公報 特開2003−159087号公報 特開2001−206899号公報 特表2001−526634号公報 特表2002−544175号公報 特表2003−509035号公報 特表2005−500304号公報 坂井剛志、山本浩光、竹内洋文、川島嘉明「第20回製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集」(2004年11月11日)
本発明は、上記問題点に鑑み、肺癌や肺線維症等の難治療性の肺疾患に対し、ナノ粒子を用いて核酸や遺伝子等の核酸化合物を直接疾患部位へ効率良く送達し、作用を効果的且つ持続的に発現させる、安全性の高い経肺投与用医薬製剤を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、核酸化合物を生体適合性ナノ粒子の内部に封入して成る核酸化合物封入ナノ粒子を含む経肺投与用医薬製剤である。
また本発明の第2の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記生体適合性ナノ粒子の表面に核酸化合物をさらに付着したことを特徴としている。
また本発明の第3の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記生体適合性ナノ粒子を形成する生体適合性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、若しくは乳酸・アスパラギン酸共重合体のいずれかであることを特徴としている。
また本発明の第4の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、TGF−betaを標的分子とする可溶性typeIITGF受容体プラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬である。
また本発明の第5の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、MCP−1を標的分子とする変異型MCP−1プラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬である。
また本発明の第6の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、CCR2に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬である。
また本発明の第7の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、MCP−1に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬である。
また本発明の第8の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、Egr−1に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬である。
また本発明の第9の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、p53蛋白を標的分子とするp53プラスミドを用いた肺癌治療薬である。
また本発明の第10の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、VEGFを標的分子とする可溶性VEGF受容体プラスミドを用いた肺癌治療薬である。
また本発明の第11の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、IL−13に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた気管支喘息治療薬である。
また本発明の第12の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、SOCS3を標的分子とするドミナントネガティブSOCS3プラスミドを用いた気管支喘息治療薬である。
また本発明の第13の構成は、上記構成の医薬製剤において、前記核酸化合物として、SOCS3に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた気管支喘息治療薬である。
本発明の第1の構成によれば、生体適合性ナノ粒子が肺内の粘膜や血管を経て細胞内に浸透することにより、ナノ粒子内部に封入された核酸化合物を患部に効率良く到達させるとともに、ナノ粒子から核酸化合物を徐放させて作用を持続させることができるため、経肺ルートに用いられるDDS製剤として好適な医薬製剤が提供される。
また、本発明の第2の構成によれば、核酸化合物を上記ナノ粒子の表面にも担持させることで、内部及び表面を含めたトータルの封入量を増加させることができ、剤形の小型化による実用的な経肺投与量を実現する。また、ナノ粒子内部から徐放的に放出される核酸化合物とは別に、投与直後にナノ粒子の表面から溶け出す核酸化合物を作用させることで医薬製剤に即効性と持続性の両方を付与することができる。
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の医薬製剤において、生体適合性高分子として、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、若しくは乳酸・アスパラギン酸共重合体のいずれかを用いることにより、生体への刺激・毒性が低く核酸化合物を内包可能であり、且つ核酸化合物の効力を保持したまま長期間保存できるとともに、生体適合性高分子の分解により核酸化合物の徐放が可能な医薬製剤を提供できる。
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にTGF−betaを標的分子とする可溶性typeIITGF受容体プラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である肺損傷・肺線維症に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にMCP−1を標的分子とする変異型MCP−1プラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である肺損傷・肺線維症に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にCCR2に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である肺損傷・肺線維症に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にMCP−1に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である肺損傷・肺線維症に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第8の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にEgr−1に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である肺損傷・肺線維症に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第9の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にp53蛋白を標的分子とするp53プラスミドを封入することにより、特に原発性肺胞上皮癌に対し優れた治療効果を有する肺癌治療用の経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第10の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にVEGFを標的分子とする可溶性VEGF受容体プラスミドを封入することにより、特に転移性肺癌に対し優れた治療効果を有する肺癌治療用の経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第11の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にIL−13に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である気管支喘息に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第12の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にSOCS3を標的分子とするドミナントネガティブSOCS3プラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である気管支喘息に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
また、本発明の第13の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の医薬製剤において、核酸化合物として、ナノ粒子内にSOCS3に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを封入することにより、難治療性の肺疾患である気管支喘息に対し優れた治療効果を有する経肺投与用医薬製剤となる。
本発明の経肺投与用医薬製剤に用いられる核酸化合物封入ナノ粒子は、プラスミドDNAやsiRNA等の核酸化合物を生体適合性高分子内に封入して、ナノ単位の大きさの粒子(ナノスフェア)としたものである。このナノ粒子をドライパウダーインハレーション(DPI)により肺内の粘膜や血管を経て細胞内に浸透させることにより、核酸化合物を臓器特異的に直接患部にまで到達させるとともに、長期間に亘ってナノ粒子から徐々に核酸化合物を放出させることができるため、経肺ルートに用いられるDDS製剤の材料として好適に用いることができる。
本発明に用いられるナノ粒子の製造方法としては、核酸化合物および生体適合性高分子を1,000nm未満の平均粒径を有する粒子に加工することができる方法であれば特に限定されるものではないが、核酸は種々の外部応力が加わると分解するため、従来の高剪断力を要するナノ粒子の調製法は適用できない。そのため、非高剪断力粒子調製法である球形晶析法を好適に用いることができる。
球形晶析法は、化合物合成の最終プロセスにおける結晶の生成・成長プロセスを制御することで、球状の結晶粒子を設計し、その物性を直接制御して加工することができる方法である。この球形晶析法の一つに、エマルジョン溶媒拡散法(ESD法)がある。
ESD法は、次に示すような原理によって、ナノスフェアを製造する技術である。本法には、薬物を封入する基剤ポリマーとなるPLGA等を溶解できる良溶媒と、これとは逆にPLGAを溶解しない貧溶媒の二種類の溶媒が用いられる。この良溶媒には、PLGAを溶解し、且つ貧溶媒へ混和するアセトン等の有機溶媒を用いる。そして、貧溶媒には、通常、ポリビニルアルコール水溶液等を用いる。
操作手順としては、まず、良溶媒中にPLGAを溶解後、このPLGAが析出しないように、薬物溶解液を良溶媒中へ添加混合する。このPLGAと薬物を含む混合液を、貧溶媒中に攪拌下、滴下すると、混合液中の良溶媒(有機溶媒)が貧溶媒中へ急速に拡散移行する。その結果、貧溶媒中で良溶媒の自己乳化が起き、サブミクロンサイズの良溶媒のエマルジョン滴が形成される。さらに、良溶媒と貧溶媒の相互拡散により、エマルジョン内から有機溶媒が貧溶媒へと継続的に拡散していくので、エマルジョン滴内のPLGA並びに薬物の溶解度が低下し、最終的に、薬物を包含した球形結晶粒子のPLGAナノスフェアが生成する。
上記球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要がなく、容易に形成することができる。その後、良溶媒である有機溶媒を減圧留去し(溶媒留去工程)、薬物含有ナノ粒子粉末を得る。そして、得られた粉末をそのまま、或いは必要に応じて凍結乾燥等により再分散可能な凝集粒子に複合化し(複合化工程)、複合粒子とした後、容器内に充填して薬物含有ナノ粒子とする。
良溶媒および貧溶媒の種類は、封入される核酸化合物の種類等に応じて決定されるものであり特に限定されるものではないが、生体適合性ナノ粒子は、人体へ作用させる医薬製剤の原料として用いられるため、人体に対して安全性が高く、且つ環境負荷の少ないものを用いる必要がある。
このような貧溶媒としては、水、或いは界面活性剤を添加した水が挙げられるが、例えば界面活性剤としてポリビニルアルコールを添加したポリビニルアルコール水溶液が好適に用いられる。ポリビニルアルコール以外の界面活性剤としては、レシチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。なお、余剰のポリビニルアルコールが残存している場合は、溶媒留去工程の後に、遠心分離等によりポリビニルアルコールを除去する工程(除去工程)を設けても良い。
良溶媒としては、低沸点且つ難水溶性の有機溶媒であるハロゲン化アルカン類、アセトン、メタノール、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられるが、例えば環境や人体に対する悪影響が少ないアセトンのみ、若しくはアセトンとエタノールの混合液が好適に用いられる。
なお、従来の球形晶析法を用いて核酸化合物を封入したナノ粒子を製造しようとすると、良溶媒中に分散混合した水溶性の核酸化合物が貧溶媒中に漏出、溶解してしまい、ナノ粒子を形成する高分子だけが沈積するため、核酸化合物がほとんど封入されなかった。そこで、ナノ粒子内部への核酸化合物の封入率を高めるため、貧溶媒にカチオン性高分子を添加することが好ましい。カチオン性高分子を貧溶媒中に添加した場合は、ナノ粒子表面に吸着したカチオン性高分子がエマルション滴表面に存在する核酸化合物と相互作用し、貧溶媒中への核酸化合物の漏出を抑制することができるものと考えられる。
また、貧溶媒中にカチオン性高分子を添加した場合、ナノ粒子の表面がカチオン性高分子により修飾されてプラス帯電されるため、凍結乾燥時に核酸化合物を追加することで粒子表面にアニオン性の核酸化合物を静電気的に担持させることができる。このようにナノ粒子の表面にも担持させることでトータルの封入量を増加させることができる。また、ナノ粒子内部から徐放的に放出される核酸化合物とは別に、投与直後にナノ粒子の表面から溶け出す核酸化合物を作用させることで医薬製剤に即効性と持続性の両方を付与することができる。
カチオン性高分子としては、キトサン及びキトサン誘導体、セルロースに複数のカチオン基を結合させたカチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミノ化合物、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジニウムクロリド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物(DAM)、アルキルアミノメタクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(DAA)等が挙げられるが、特にキトサン或いはその誘導体が好適に用いられる。
キトサンは、エビやカニ、昆虫の外殻に含まれる、アミノ基を有する糖の1種であるグルコサミンが多数結合した天然高分子であり、乳化安定性、保形性、生分解性、生体適合性、抗菌性等の特徴を有するため、化粧品や食品、衣料品、医薬品等の原料として広く用いられている。このキトサンを貧溶媒中に添加することにより、生体への悪影響がなく、安全性の高い核酸化合物封入ナノ粒子を製造することができる。
なお、元来カチオン性であるキトサンの一部を第四級化することで、さらにカチオン性を高めた塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]キトサン等のキトサン誘導体(カチオニックキトサン)を用いることにより、粒子表面により多くのアニオン性薬物を担持可能になるとともに、粒子間の反発力が強くなって粒子の安定性も高くなるため好ましい。
また、良溶媒中での核酸化合物の親和性及び分散安定性を向上させるため、良溶媒中にDOTAP等のカチオン性脂質を添加し、核酸化合物と複合体を形成させても良い。但し、細胞内において放出されたカチオン性脂質により細胞障害性を示すおそれがあるため、添加量には注意が必要である。
以上のようにして得られたナノ粒子は、凍結乾燥等により粉末化させる際に再分散可能な凝集粒子(ナノコンポジット)に複合化できる。このとき、有機または無機の物質を再分散可能に複合化させ、ナノ粒子と共に乾燥させることが好ましい。例えば、糖アルコールやショ糖を適用することにより、封入率のばらつきを効果的に防止するとともに、糖アルコール等が賦形剤となりナノ粒子の取り扱い性を高めることができる。糖アルコールとしては、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、マルチトース、キシリトースなどが挙げられ、この中でも特にトレハロースが好ましい。
この複合化により、使用前まではナノ粒子が集まった、取り扱いやすい凝集粒子となっており、使用時に水分に触れることでナノ粒子に戻って高反応性等の特性を復元する複合粒子となる。なお、凍結乾燥法に代えて、流動層乾燥造粒法(例えば、ホソカワミクロン(株)製アグロマスタAGMを使用)により複合化して、再度分離可能な状態で一体化することもできる。
本発明に用いられる生体適合性高分子は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する薬剤を持続して徐々に放出する粒子であることが好ましい。このような素材としては、特にPLGAを好適に用いることができる。PLGAナノ粒子は薬物を内包可能であり、当該薬物の効力を保持したまま長期間保存できることが知られている。
また、DDSのキャリアーとしての評価は、細胞への到達率、細胞内への取り込み性、及び細胞内での効果の発現性によって決まる。PLGAナノ粒子は最も安定で吸入に耐え、且つ肺胞に沈着後の粘膜層の通過及び細胞への到達率が高い。また、細胞内への取り込み率は膜融合リポソームが最も高いが、PLGAナノ粒子の表面を修飾することにより取り込み率をリポソームと同等のレベルまで引き上げることが可能である。さらに、PLGAの加水分解・長期半減期の特徴から、数日から1ヶ月単位の徐放ができると考えられる。これらの特徴から、PLGAナノ粒子は細気管支や肺胞に病変部位を有する難治療性の肺疾患に対し優れたキャリアーとなる。
PLGAの分子量は、5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。乳酸とグリコール酸との組成比は1:99〜99:1であればよいが、乳酸1に対しグリコール酸0.333であることが好ましい。また、乳酸およびグリコール酸の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内であるPLGAは、非晶質であり、かつアセトン等の有機溶媒に可溶であるから、好適に使用される。
また、PLGAの表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾しておくと、水溶性の核酸化合物とPLGAとの親和性が向上し、封入が容易になるため好ましい。生体内分解性の生体適合性高分子としては、ほかに、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。また、これらのコポリマーであるアスパラギン酸・乳酸共重合体(PAL)やアスパラギン酸・乳酸・グリコール酸共重合体(PALG)を用いても良く、アミノ酸のような荷電基あるいは官能基化し得る基を有していてもよい。
上記以外の生体適合性高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリアルキレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルエステルのようなポリビニル化合物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、アクリル酸とメタクリル酸とのポリマー、セルロースおよび他の多糖類、ならびにペプチドまたはタンパク質、あるいはそれらのコポリマーまたは混合物が挙げられる。
本発明の生体適合性ナノ粒子に内包される核酸化合物としては、プラスミドDNA、遺伝子、siRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプセターなどが挙げられる。
オリゴヌクレオチドは、プリン又はピリミジンが糖にβ−n−グリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステル(ヌクレオチドATP、GTP、UTP、又はdATP、dGTP、dCTP、dTTP)が複数個(2〜99個)結合した分子であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドにアンチセンス鎖を導入したものである。
アンチセンスとは、タンパク質を合成するメッセンジャーRNA(以下、mRNAという)の塩基配列(センス配列)に対して相補的な塩基配列を表すものであり、通常、細胞内ではDNAからmRNAへ、さらにmRNAからタンパク質へと遺伝子情報が伝達される。この遺伝子情報の伝達を人工的に合成したDNAを用いて遮断する方法をアンチセンス法という。
即ち、標的遺伝子のmRNAの塩基配列が明らかであれば、mRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与し、標的遺伝子の発現のみを特異的に阻害することができる。このアンチセンス法は、アンチセンスの遺伝子阻害効果を調べることにより、生合成プロセスにおける遺伝子の作用を特定する遺伝子解析ツールとして用いられる他、遺伝子の異常による疾患を抑制する遺伝子治療法としても用いられる。
リボザイムは、例えばRNA鎖を部位特異的に切断するRNA分子を指す。標的遺伝子がリボザイムの基質になるためには、NUX配列(N:任意の塩基、U:ウラシル、X:グアニン以外の塩基)が存在すれば良く、その両端は塩基対を組んでいれば配列は任意である。従って、ウイルス遺伝子や癌原遺伝子のNUX配列の前後の配列と塩基対を組むようなリボザイムを設計することにより、標的遺伝子の発現のみを特異的に抑制可能となるため、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に遺伝子治療に用いられる。また、機能を調べたい遺伝子を標的にすれば、遺伝子解析ツールにもなる。
アプタマーは、標的分子に特異的に結合し、抗体としての機能を有する核酸のことである。アプタマーは、容易に大量合成できるとともに、標的分子のアミノ酸配列の保存度に依存せず、改良が容易であるという利点を持ち、癌原遺伝子の機能阻害(癌抑制)や定量測定(癌診断)、或いは生理活性タンパク質を擬態する遺伝子薬剤への利用が期待されている。
なお、上記核酸化合物のうち何れか1種のみを封入しても良いが、効能や作用機序の異なる成分を複数種封入しておけば、各成分の相乗効果により薬効の促進が期待できる。さらに、核酸化合物と共に他の成分を封入することもできる。
本発明に用いられる核酸化合物封入ナノ粒子は、1,000nm未満の平均粒子径を有するものであれば特に制限はないが、患部への到達効率を高めるためには平均粒子径を500nm以下とすることが好ましく、特に標的部位に送達されたナノ粒子が細胞膜のエンドサイトーシスを受けて細胞内に取り込まれることにより、高い遺伝子発現率を実現するためには100nm以下がより好ましい。
このようにして製造された核酸化合物封入ナノ粒子を経肺投与用薬剤の原料として使用した場合、ナノ粒子の細胞内への取り込み性が向上して遺伝子の発現効率が高くなり、標的分子に対する指向性の高い優れた経肺投与用製剤を提供できる。また、高濃度の核酸化合物を含有可能となるため剤形の小型化が可能となり、実用的な経肺投与量を満足できる製剤となる。以下、肺損傷・肺線維症、肺癌、気管支喘息の各症例における標的分子と、標的分子に作用する核酸化合物封入ナノ粒子を用いた本発明の経肺投与用医薬製剤の具体例について説明する。
[TGF−betaを標的とする肺損傷・肺線維症の治療]
マウス或いはラットを用いたブレオマイシン肺臓炎・肺線維症モデルは、ブレオマイシンを経静脈、腹腔内、経気管支投与することにより作成される。このモデルでは、経気管支投与であれば2〜3週間、経静脈、腹腔内投与であれば4〜6週間で肺損傷・肺線維化を形成する。本モデルを用いて肺損傷・肺線維化に関連する様々な因子に対する分子標的治療の実験が行われてきたが、TGF−betaはその中でも主要な標的分子である。また、TGF−betaによる線維化には上皮細胞のアポトーシスが必須であり、そのアポトーシスにはEgr−1という転写因子が必須である。
従来、可溶性のTGF−beta受容体II蛋白、抗TGF−beta抗体を経静脈、腹腔内より全身投与、或いは可溶性TGF−beta受容体II発現プラスミド(以下、可溶性typeIITGF受容体プラスミドという)を、in vivo electroporation によって大腿筋に遺伝子導入し、発現させる方法等でTGF−betaによる強力な肺損傷・肺線維化を抑制する試みがなされている。また、肺の炎症所見として気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞数、肺組織所見、肺上皮損傷としてのアポトーシスに陥った細胞数、線維化の指標として肺組織中のヒドロキシプロリン、コラーゲン、フィブリネクチン測定等により、その有効性が明らかとなっている。但し、臨床応用にはTGF−betaの多機能性が問題となっている。
そこで、Egr−1に対するsiRNAまたはsiRNAを発現するプラスミドを封入したナノ粒子を作製し、マウスブレオマイシン肺臓炎モデルに経肺投与し、気管支肺胞洗浄液(BALF)、肺組織を調査して有効性を確認することにより、肺損傷・肺線維化に対する有効性が期待される。また、可溶性typeIITGF受容体プラスミドをナノ粒子内に封入して同様の実験を行った場合でも肺損傷・肺線維化を抑制できるものと考えられる。
[MCP−1を標的とする肺損傷・肺線維症の治療]
一方、Monocyte chemoattractant protein−1(以下、MCP−1という)は、ヒト肺線維症において、気管支肺胞洗浄液中や肺組織内に増加しており、動物モデルにおいてもMCP−1のレセプターであるCCケモカインレセプター2(以下、CCR2という)のノックアウトマウス、MCP−1の中和抗体、或いは上記in vivo electroporationを用いた変異型MCP−1の肺線維化に対する効果が認められ、肺線維化における重要なケモカインである。
上記TGF−betaを標的とする場合と同様に、CCR2に対するsiRNAをナノ粒子内に封入してマウスブレオマイシン肺臓炎モデルに経肺投与し、気管支肺胞洗浄液(BALF)、肺組織を調査したところ、肺臓炎は有意に抑制された(実施例参照)。さらに、CCR2に対するsiRNAを発現するプラスミドや、MCP−1のN末端欠失体でMCP−1に対するドミナントネガティブインヒビターとして作用する変異型MCP−1プラスミドを封入したナノ粒子を作製し、同様の実験を行った場合でも、同様に肺臓炎に対する有効性が期待される。
[野生型p53遺伝子導入による原発性肺胞上皮癌の治療]
原発性肺胞上皮癌(BAC)は、原発性肺腺癌の亜型であるが、その肺内進展様式と抗癌剤感受性の点で他の肺腺癌とは異なる。進展形式においては肺胞構造に沿って肺胞上皮を置換する形で増殖し、腫瘍内に含気が保たれている。また、抗癌剤に対して感受性が低く、ゲフィニチブ(商品名イレッサ)以外の薬剤は効果が乏しい。ゲフィニチブが奏功した場合でも、その奏功期間は約12ヶ月であり、一部の腫瘍は遺伝子変異を起こすことで耐性を獲得する。ゲフィニチブについては副作用として約6%に急性肺障害を惹起し、そのうち約40%の症例が死亡していることから社会的な拒否感が強い。
米国ではBACを対象とした遺伝子治療が進行しており、第I相試験が終了している。
この試験では野生型p53遺伝子を組み替えたアデノウイルスベクター(INGN201:商品名Advexin)を経気道的に投与し、ある程度の有効性が得られている。しかしながら、アデノウイルスの持つ強い免疫原性のために炎症反応を介する肺傷害を起こすおそれがあり、また反復投与ではウイルス抗体が産生されるため、結果として効果が現弱する可能性も否定できない。
発現するp53蛋白そのものの殺細胞効果と安全性については肺癌を対象とした臨床試験で証明されているが、p53遺伝子をドライブするプロモーターとしてSecretary leukopeptidase inhibitor(SLPI)のような、比較的肺腺癌に特異的なプロモーターを使用することで、さらに高い安全性が担保される。以下に野生型p53遺伝子の導入による肺癌に対する抑制効果の実験方法及び期待される効果について説明する。
(in vitro実験系)
(肺癌細胞株)
本実験では野生型p53蛋白に対する感受性が異なる3種の細胞株(p53遺伝子点変異株:NCI−H157株、p53遺伝子欠失株:NCI−H1299株、野生型p53遺伝子株:NCI−H460株)を使用する。
(野生型p53遺伝子発現プラスミド)
野生型p53遺伝子cDNAを、CMVまたはhTERT(human teromelase reverse transcriptase)やSLPI(Secretory leukoprotease inhibitor)プロモーターで駆動する発現カセットを作成し、哺乳動物発現用プラスミドに組み替えて作成する。また陰性コントロールとしてGFP(Green Fluorescent Protein:蛍光蛋白質)及びLuciferase遺伝子を発現するプラスミドを同様の方法により作成する。
(アポトーシスの誘導)
上記の野生型p53発現プラスミドおよび陰性コントロールプラスミドとナノスフェア担体(以下、担体)の複合体を形成し、同複合体を細胞培養液中に混入することで肺癌細胞株への遺伝子導入を行う。遺伝子導入効率は蛍光顕微鏡下にGFP陽性細胞の比率を測定することで定量化する。アポトーシスが誘導された細胞は抗Anexin−V抗体を用いたフローサイトメトリーを行うことで定量化する。
(細胞増殖の抑制)
遺伝子導入後の生存肺癌細胞をMTSアッセイにより定量化することで、導入前の値との比較により増殖抑制効果を評価する。
(期待される効果)
これまでの野生型p53遺伝子発現アデノウイルスを用いた実験結果から、NCI−H157株およびNCI−H1299株は野生型p53遺伝子導入に対して高い感受性を示し、少量の遺伝子導入により死滅することが確認されている。一方、NCI−H460株は同遺伝子導入に対して前2株と比べて強い耐性を示す。感受性の高い株では遺伝子導入後3時間より細胞のアポトーシスが確認され、48時間後にはほぼ90%以上の細胞が死滅する。
野生型p53蛋白の細胞内蓄積量は、遺伝子導入効率、導入後遺伝子が発現するまでの時間、細胞***による導入遺伝子の希釈、細胞内代謝による導入遺伝子の排除などの複雑な動態の結果により変動すると考えられる。上記の実験では、***細胞を用いた場合は導入後48時間、非***細胞を用いた場合は導入後7日目に発現量がピークに達する。担体を用いた遺伝子導入でも基本的には同様の結果が得られるものと考えられ、導入後早期からアポトーシスの誘導による殺細胞効果が期待される。
(in vivo実験系)
(担癌動物モデル)
肺胞上皮癌マウスモデルはヌードマウス肺に上記の3種の肺癌細胞株を経気道的に肺内へ移植することで作成する。
(治療実験)
野生型p53cDNA発現プラスミドと担体の複合体を形成し、同複合体を超音波ネブライザーで吸入させる、もしくは経気道的に直接注入する。移植した肺癌細胞の生着と増殖については移植マウスを経時的に屠殺し、切除肺および他臓器の組織学的観察を行って原発巣(肺)の状態と他臓器転移について評価する。また同一マウスにおける経時的な抗腫瘍効果を定量化するために定期的にFDG−PET検査を実施する。さらに全身性の影響については体重、動脈血酸素飽和度および生存期間により評価する。
また、正常免疫を有するマウス(C57BL6)を使用し、野生型p53cDNA発現プラスミド(CMV、hTERT、SLPI各プロモーターを使用)と担体の複合体、野生型p53発現アデノウイルスを経気道的に肺内へ注入し、正常肺組織に対する傷害を組織学的に検討する。
(期待される効果)
野生型p53遺伝子発現アデノウイルスをヌードマウス皮下に形成した腫瘍内に直接注入する方法では明らかな腫瘍の増殖抑制効果を認めたが、腫瘍内部の間質構造がウイルスの感染を阻害するためにin vitroの実験で観察されたほどの効果は得られなかった。しかしながら、本動物モデルで作成される肺内腫瘍は皮下腫瘍モデルに比較して腫瘍量が相対的に少ないため吸入もしくは経気道的に注入したプラスミド担体複合体が肺胞レベルにまで達することができれば十分な抗腫瘍効果が期待できる。
また、野生型p53蛋白は過剰に発現した場合、正常細胞に対しても傷害性を発揮する場合があるため、遺伝子発現プロモーターはできるだけ腫瘍特異的なものが望ましい。その候補としてhTERTおよびSLPIの各プロモーターを使用することとした。これらのプロモーターは肺癌を含む多くの癌種で高発現がみられ、一方正常細胞における発現は低いことから一般的な遺伝子治療用ツールとしても期待されている。
このp53プラスミドをナノ粒子内に封入し、作成した肺癌モデルマウスに対し経気管的に投与することにより、ウイルスベクターを用いる場合に比べて免疫原性に対する問題を回避できるとともに、肺胞領域にまで到達できるベクターとなるため、肺胞上皮様の広がりを示すBACへのDDSとして非常に有効であると考えられる。
[可溶性VEGF受容体遺伝子導入による転移性肺癌の治療]
原発性肺癌の転移臓器として最も頻度が高いのは肺である。多発性肺転移を有する肺癌症例に対しては抗癌剤による化学療法が第一選択となるが、一般に進行期肺癌では最も効果の高い抗癌剤併用療法(プラチナ製剤+新規抗癌剤)でも、その奏功率は約35%、生存期間中央値は12〜15ヶ月と予後不良である。本年の米国臨床腫瘍学会で抗VEGF抗体(Bevasizumab:商品名Avastin)を用いた臨床第III相試験の結果が公表され、カルボプラチン及びパクリタキセルの併用療法にAvastinを併用することで生存期間が延長されることが明らかになった。
Avastinは既に大腸癌でも生存期間の延長に有用であることが示されており、VEGFは進行肺癌における治療標的の一つであると考えられる。しかしながら、抗VEGF抗体は繰り返し投与が必要であり、ヒト化抗体とはいっても抗体に産生する抗体の問題や、まだ少数例ではあるが喀血だけでなく致命的な消化管出血の報告もある。
一方、可溶性VEGF受容体は、もともと内因性蛋白であるため抗VEGF抗体に比べて免疫原性が低く、抗体と異なり導入遺伝子によって発現するので発現期間や発現レベルを調整できる可能性があり、さらに遺伝子導入部位によって局所的な高発現状態を作り出すことができる等の利点を有している。以下に野生型p53遺伝子の導入による肺癌に対する抑制効果の実験方法及び期待される効果について説明する。
(in vitro実験系)
(肺癌細胞株)
本実験ではVEGF産生能が異なる2種の肺癌細胞株(VEGF高産生株:NCI−H157株、VEGF低産生株:NCI−H460株)および正常気道細胞BEAS−2B株を使用する。
(可溶性VEGF受容体遺伝子発現プラスミド)
野生型VEGF受容体遺伝子cDNAより細胞外領域を単離した後にC末端にヒトIgGFcをタグとして付加し、CMVプロモーターもしくはTRE(テトラサイクリン誘導)プロモーターで駆動する発現カセットを作成する。同カセットを哺乳動物発現用プラスミドおよび長期発現用エピソーマルベクター(検討中)に組み替えて可溶性VEGF受容体遺伝子を発現するプラスミド(以下、可溶性VEGF受容体プラスミドという)を作成する。また陰性コントロールとしてGFPおよびLuciferase遺伝子を発現するプラスミドを同様の方法により作成する。
(可溶性VEGF受容体の発現確認)
上記の可溶性VEGF受容体プラスミドおよび陰性コントロールプラスミドと担体の複合体を形成し、同複合体を細胞培養液中に混入することで正常気道細胞株への遺伝子導入を行う。遺伝子導入効率は蛍光顕微鏡下にGFP陽性細胞の比率を測定することで定量化する。遺伝子導入後72時間の培養液を回収し、抗ヒトIgGFc抗体を用いたELISA法により可溶性VEGF受容体の発現を確認する。
(可溶性VEGF受容体の発現調節)
可溶性VEGF受容体の発現レベルを人為的に調整するためにTREプロモーター依存性の可溶性VEGF受容体プラスミドおよびテトラサイクリンプロモーター結合蛋白発現プラスミドを同時に細胞へ導入し、いわゆるTet−onシステムを構築する。培養液中にテトラサイクリンを添加・除去することで培養液中の可溶性VEGF受容体濃度の変化をELISA法で定量化する。なお、本発現カセットより産生される可溶性VEGF受容体によるVEGFの中和活性については既に複数の報告がなされているため、ここでは記載を省略する。
(期待される効果)
これまでの可溶性VEGF受容体発現アデノウイルスを用いた実験結果では、遺伝子を導入された細胞は培養液中に可溶性VEGF受容体を分泌し、同受容体は野生型VEGF分子の血管新生活性を阻害することが確認されているため、本発明の医薬製剤を用いた遺伝子導入でも同様の結果が期待できる。また、テトラサイクリン誘導プロモーターを用いた人為的発現調節については、同一担体と複合体を形成する2種の発現プラスミドが1:1になるようにデザインできれば、培養液中にテトラサイクリンを添加或いは除去することで発現調節が可能であると推定される。
また、2種のプラスミドを一定の比率で細胞内へ導入することが可能であればその応用範囲は大きく広がる可能性を有している。従来の方法では複数のベクターの比率を投与時に一定にすることはできても、実際に個々の細胞内に投与時と同じ比率で導入されるとは限らないため、細胞1個単位では蛋白の発現レベルは様々である。しかし、ナノスフェア担体とDNAとの複合体形成時に2種のプラスミドの配合比率を一定にできれば、複合体がそのまま細胞内にとりこまれるため、個々の細胞レベルで複数の遺伝子の導入比率を一定に保つことが可能と思われる。これにより、複数の蛋白発現によってのみ得られる細胞内事象、特に蛋白の発現調節における有用性が期待される。
(in vivo実験系)
(担癌動物モデル)
進行肺癌マウスモデルはヌードマウス肺に上記の2種の肺癌細胞株を経気道的に肺内へ移植することで作成する。
(治療実験)
可溶性VEGF受容体プラスミドと担体の複合体を形成し、同複合体を超音波ネブライザーで吸入させる、もしくは経気道的に直接注入する。血中および肺胞洗浄液中の可溶性VEGF受容体濃度をELISA法にて経時的に測定する。
移植した肺癌細胞の生着と増殖については移植マウスを経時的に屠殺し、切除肺および他臓器の組織学的観察を行って原発巣(肺)の状態と他臓器転移について評価する。また同一マウスにおける経時的な抗腫瘍効果を定量化するために定期的にFDG−PET検査を実施する。腫瘍血管新生の阻害効果については腫瘍血管を免疫染色によって同定した後に血管密度を計測して定量化することで評価する。さらに全身性の影響については体重、動脈血酸素飽和度および生存期間により評価する。
正常免疫を有するマウス(C57BL6)を使用し、可溶性VEGF受容体プラスミドと担体の複合体、可溶性VEGF受容体発現アデノウイルスを経気道的に肺内へ注入し、正常肺組織に対する傷害を組織学的に検討する。
(期待される効果)
可溶性VEGF受容体発現アデノウイルスをヌードマウス大腿筋もしくは腹腔に投与すると、7日目に血中の可溶性受容体濃度はピークとなり、以後漸減するものの4週後まで血中濃度の測定が可能であった。本実験における経気道的な投与においても血中濃度は同様の経過をたどることが予想されるが、肺胞における受容体産生はより早期から生じる可能性がある。抗腫瘍効果については、NCI−H157株はVEGF依存性に腫瘍を形成することが既に明らかであるため、可溶性VEGF受容体が有効濃度に達していれば担体を用いた遺伝子導入でも十分な抗腫瘍効果が得られるものと期待される。
一方、正常肺においてVEGF機能を阻害することによる副作用についてはまだ十分に理解されているとは言えず、実際に抗VEGF抗体を用いた臨床試験では複数の喀血死が報告されており、マウスを用いた実験でも肺気腫の合併等が報告されている。特に、本発明の遺伝子導入による場合は長期間発現が持続する可能性があり、より慎重な観察が必要である。また、将来的には副作用が発現した場合に可溶性受容体の濃度調整が行えるようなシステムの構築が必要で、テトラサイクリン誘導プロモーターを用いるシステムがinvitroで機能する場合はin vivoでも検証を行う必要がある。
[IL−13を標的とする気管支喘息の治療]
インターロイキン−13(以下、IL−13という)は、気管支喘息における細胞性免疫のTh1からTh2へのシフト、気道過敏性、杯細胞過形成(goblet cell hyperplasia)、気道壁の線維化等、気管支喘息における病態を形成する重要なサイトカインである。また、気管支喘息だけでなく、肺線維症においても重要な働きをもつことが知られている。これまでIL−13遺伝子組み換えマウス、ノックアウトマウス、IL−13の中和抗体を用いた実験によりその重要性は明らかとなり、治療への応用が待たれている。
気管支喘息モデルは、マウスをオバルブミン(卵白アルブミン、以下OVAと略す)によって感作したのちオバルブミンを吸入させることにより作成される。また、気管支喘息の抑制効果は、気道過敏性、気道への好酸球浸潤、杯細胞過形成、気道壁の肥厚の調査により行うことができる。IL−13に対するsiRNAまたはsiRNAを発現するプラスミドをナノ粒子内に封入し、作成した気管支喘息モデルマウスに対し経気管的に投与することにより、有意な抑制効果が期待される。
[SOCS3を標的とする気管支喘息の治療]
気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患の病態には、IL−4、IL−5、IL−13等のTh2型サイトカインが関与している。ナイーブT細胞が機能型CD4Th2細胞優位に分化誘導されることにより、喘息をはじめとするアレルギー疾患が発症すると考えられる。Suppressor Of Cytokine Signaling(以下、SOCSという)は、サイトカインシグナルを抑制的に制御する分子であり、その構造の類似性からファミリーを形成している。T細胞においてこれらファミリー分子に属するSOCS3はTh2で特異的に発現が認められることがマウスやヒトの系で明らかにされている。
末梢血よりT細胞を分離し各SOCSの発現を解析したところ、健常者対照群に比しアトピー性喘息患者やアトピー性皮膚炎患者でSOCS3発現が有意に高値であり、重症度が増すにつれSOCS3発現が亢進していた。さらに、SOCS3発現は、アトピーやTh2型反応のマーカーでもある血中IgEレベルと相関していた。
また、in vitroでT細胞を分化させると、SOCS発現はT細胞分化過程において非常に特徴的で、SOCS3はTh2細胞選択的に発現していた。T細胞特異的にSOCS3を恒常的に過剰発現しているマウス(SOCS3−Tgマウス)のT細胞を用いてT細胞分化を解析したところ、野生型コントロールマウス由来のT細胞に比べてTh2分化が減弱していた。さらに、OVA感作・曝露によるアレルギー性喘息モデルを用いたin vivo実験を行ったところ、SOCS3−Tgマウスでは、気道好酸球が著しく増加し気道過敏性も著明に亢進した。
治療への応用を検討するため、ドミナントネガティブ(dn)変異SOCS3分子(以下、dnSOCS3という)をレトロウイルスでT細胞に導入すると、Th2分化が抑制された。従って、dnSOCS3蛋白をナノスフェアに封入しT細胞に導入することにより、Th2分化の抑制が期待され、さらに、OVA喘息モデルマウスを用いたin vivoの実験でも、dnSOCS3封入ナノスフェアを吸入投与することにより、気道好酸球増加と気道過敏性亢進の抑制が期待される。これらのことから、dnSOCS3蛋白封入ナノスフェア、dnSOCS3発現プラスミド封入ナノスフェア、SOCS3−siRNA封入ナノスフェア、及びSOCS3−siRNA発現プラスミド封入ナノスフェアは、気管支喘息およびアレルギー疾患の新規治療法として有用であると考えられる。
以上述べたような方法により、従来の方法では核酸化合物を十分に到達させることが困難であった肺胞上皮細胞における標的分子の制御が可能となる。また、PLGA等の生体適合性高分子で形成されたナノ粒子をベクターとして用いるため、ウイルスやリポソームを用いる場合に比べて細胞傷害性がなく、且つ遺伝子の導入効率及び効果の持続性を向上できる。
従って、肺線維症や肺癌のような難治療性肺疾患に対し、効果が不十分でありながら副作用が必至の薬剤を使用せざるを得ない現状の治療戦略に画期的な変化をもたらすなど、その寄与するところは非常に大きい。さらに、ナノ粒子内に封入する核酸化合物の種類及び投与経路を変更することにより、他臓器の悪性腫瘍や動脈硬化、肝硬変、腎硬化症等、他の臓器における重大な線維化疾患の治療にも適用可能であると考えられる。
その他、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、発明が解決しようとする手段に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。なお、本実施例では一例として、MCP−1に対するsiRNA封入ナノ粒子を経肺投与用医薬製剤として用いた場合の肺損傷・肺線維化の抑制効果について調査した。
[ブレオマイシン肺臓炎モデルマウスの作製及びMCP−1キネティクスの測定]
本実験は、九州大学医学部の動物取り扱い規約、及びアメリカ生理学会のガイドラインに基づいて行った。C57BL/6のマウス(雄7〜8週令、体重20〜25g、KBTオリエンタル社製)をペントバルビタール(Schering-Plough社製)腹腔内投与により麻酔し、1.5U/kgのブレオマイシンを含む50μL生理食塩水溶液を経気管的に投与した。マウスは、ブレオマイシン投与後1, 3, 5, 7, 10, 14日目にと殺し、右肺は10%ホルマリン溶液にて固定し、左肺は液体窒素にてスナップ凍結後、実験に用いるまで−80℃にて保存した。
凍結した左肺は低浸透圧緩衝液(25mmolHEPES, pH=7.5、5mmolMgCl2、1mmolEGTA、1mmolPMSF、1mg/mL leupeptin、及び1mg/mL aprotinin)でポリトロンホモジェナイザー(Kinematica社製)にてホモジュネートし、15,000Gにて30分間、4℃にて遠心分離し、上清をELISA法にてMCP−1蛋白の解析を行った。
上清の蛋白濃度はBio-Rad protein assayにて測定した。各上清はサンプル緩衝液(133mmol Tris−HCl,pH=6.8、0.1% SDS、5% glycerol、0.67% 2−ME、1μg/mL aprotinin)にて希釈、沸騰させた。SDS−PAGEの各レーンには30μgの蛋白にて電気泳動し、蛋白はポリヴィニリデンフルリド疎水性メンブレイン(Millipore社製)に転写した。そのメンブレインは5%無脂肪のスキムミルクTBS−T溶液でブロッキングし、抗フィブロネクチン抗体、タイプ1コラーゲン、タイプ3コラーゲン、抗α−tubulin抗体 (以上、Santa Cruz Biotechnology社製)にて、4℃で一晩反応させた。洗浄後、室温で30分間ビオチニル化二次抗体にて30分反応させた。ブロットはECL発光キット(Amersham Biosciences社製)にて発光させた。そのブロットは画像スキャナー(GT−8700、Epson社製)で取り込み、NIH Image 1.61ソフトウェアを用いて定量した。
3μmのパラフィン切片をpoly−L−lysineでコートされたスライドグラスに癒着させ、脱パラフィンした後、下記に記すstreptavidin-biotinylated peroxidase改良型手法にて、Histofine SAB−POキット(Nichirei社製)を用い免疫組織染色を施行した。非特異的蛋白はラビットもしくはゴートの血清にて30分、室温にてインキュベートすることによりブロッキングした。切片は、抗MCP−1抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)にて4℃で一晩反応させた。なお、特異的抗体を非免疫反応血清と置き換えたものをコントロールとした。切片は0.3%活性酸素メタノール溶液にて内因性ペルオキシダーゼを阻害した後、ビオチニル化二次抗体で30分反応させ、streptavidin-biotinylated peroxidaseコンプレックスにて30分反応後マウントした。
試験の結果、肺組織中、BALF中のMCP−1濃度はブレオマイシン投与後3日〜14日で有意に上昇していた。MCP−1は正常マウスでは肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮細胞、細気管支上皮細胞に認められた。MCP−1の発現はブレオマイシン投与後3〜14日後においてこれらの細胞と炎症部位の間質に強く認められた。
[MCP−1に対するsiRNA封入PLGAナノスフェアの調製]
マウスMCP−1に対する3種類のannealed siRNAオリゴヌクレオチド(Ambion社製)及び培養マウス肺上皮細胞株LA4 ceII line、腹腔マクロファージceIII line RAW (ATCC社製)を用意した。siRNAはAmbion社のトランスフェクションキットを用いて培養細胞に投与し、MCP−1に対する発現抑制を実施例1の免疫細胞染色、ウエスタンブロット法にて確認した。その結果を用いて3種類のうち最も抑制効率の高いsiRNAを選定し、siRNA封入ナノスフェアを調製した。調製法を下記に記す。
0.5重量%ポリビニルアルコール(クラレ社製;PVA403)水溶液を調製し、貧溶媒とした。また、PLGA(和光純薬;PLGA7520、乳酸/グリコール酸=75/25、分子量20,000)1gをアセトン100mLに溶解させ、これにMCP−1に対するsiRNA(以下、MP−1 siRNAという)5mgを溶解したリン酸緩衝液(PBS)15mLを添加混合し、ポリマー溶液とした。この溶液を先の貧溶媒中に40℃、400rpmで攪拌下、4mL/分で滴下し、siRNA封入PLGAナノスフェア懸濁液を得た。アセトン溶媒を減圧下にて3時間留去した後、凍結乾燥してsiRNA封入PLGAナノスフェア粉末を得た。
得られた粉末の水への再分散性は良好であり、ナノスフェア粉末を精製水中に再分散させた際の平均粒子径を動的光散乱法により測定したところ、190nmであった。また、分光光度計を用いてナノスフェア粉末中のMCP−1 siRNA封入率を測定したところ、0.42重量%であった。
比較例1
[非特異的siRNA封入PLGAナノスフェアの調製]
MCP−1 siRNA封入PLGAナノスフェアの比較対照例として、非特異的なsiRNA(以下、control siRNAという)を封入したPLGAナノスフェアの調製を行った。調製法は実施例1と同一条件にて同様の操作で行った。
得られた粉末の水への再分散性は良好であり、ナノスフェア粉末を精製水中に再分散させた際の平均粒子径を動的光散乱法により測定したところ、205nmであった。また、分光光度計を用いてナノスフェア粉末中のcontrol siRNA封入率を測定したところ、0.40重量%であった。
[クマリン封入PLGAナノスフェアを用いたナノスフェア投与法の評価]
ナノスフェアの体内挙動を確認するため、蛍光標識であるクマリン封入PLGAナノスフェアの調製を行った。調製法を下記に記す。
2重量%のポリビニルアルコール(クラレ社製;PVA403)水溶液を調製し貧溶媒とした。PLGA(和光純薬;PLGA7520、乳酸/グリコール酸=75/25、分子量20,000)2gとクマリン(クマリン6;ICN Biomedical社製)1mgをアセトン40mLとエタノール20mLの混液に溶解しポリマー溶液とした。この溶液を先の貧溶媒中に40℃、400rpmで攪拌下、4mL/分で滴下し、クマリン封入PLGAナノスフェア懸濁液を得た。アセトン・エタノール溶媒を減圧下にて2時間留去した後、遠心分離(41,000G、−20℃、20分)し、得られた沈殿に精製水を添加し、超音波にてPLGAナノスフェアを懸濁させた。この操作を2回繰り返し、過剰なPVAを除去した。最終的に得られた懸濁液を凍結乾燥しクマリン封入PLGAナノスフェア粉末を得た。得られた粉末の水への再分散性は良好であり、動的光散乱法にて粒度分布を測定したところ、平均粒子径は240nmであった。
前述したクマリン封入PLGAナノスフェア15.7mgをPBS10mLに懸濁し投与液とした。これを、C57BL/6マウスの両方の鼻穴から50μLずつ合計100μLを経鼻的に10日間吸入させ、その肺細胞内への取り込みと発現を蛍光顕微鏡にて確認した。なお、ナノスフェア懸濁液投与前には、ペントバルビタール(Schering-Plough社製)の腹腔内投与にて麻酔を行った。ブレオマイシン投与後14日目にマウスを解剖したところ、クマリンの蛍光が主に細気管支上皮に認められ、さらに散在性に肺胞マクロファージ、肺胞上皮細胞に取り込みが認められた。そこで、本投与法をMCP−1 siRNA封入PLGAナノスフェアのマウスへの投与方法として採用した。
[MCP−1 siRNA封入PLGAナノスフェアを用いた肺臓炎の抑制効果]
実施例2において調製したMCP−1 siRNA封入PLGAナノスフェアを用い、ブレオマイシン肺臓炎に対する抑制効果を調査した。試験方法を以下に説明する。
実施例2で得られたMCP−1 siRNA封入PLGAナノスフェア15.7mg(siRNA:66μg、5nmol)をPBS10mLに懸濁し投与液とした。比較対照として、比較例1で得られたcontrol siRNA封入PLGAナノスフェア16.5mg(siRNA:66μg、5nmol)をPBS10mLに懸濁し投与液とした。ブレオマイシン投与後4日目から13日目まで、連日C57BL/6マウスの両方の鼻穴から50μLずつ合計100μLを経鼻的に吸入させた。なお、ナノスフェア懸濁液投与前には、ペントバルビタール(Schering-Plough社製)の腹腔内投与にて麻酔を行った。ブレオマイシン投与後14日目に、マウスの気管支肺胞洗浄液、肺組織を採取した。
(統計処理)
統計学的解析は、BALF中の細胞数および蛋白濃度、TUNEL陽性細胞数、ハイドロキシプロリン量、ELISAの結果に関して、ANOVA、Sceffe's F testを用いた。また、組織学的グレードの比較として、Kruskal-Wallis、Mann-Whitney's U testを用いた。P<0.05が有意差と考えられた。解析ソフトウェアにはStatView J−4.5(Abacus Concepts社製)を用いた。
(組織学的試験)
胸腔内切除後、肺循環は生理的食塩水でフラッシュした。肺のサンプルは10%ホルマリンにて一晩固定後、パラフィンに埋め込んだ。パラフィン切片(厚さ3μm)はスライドグラスに乗せてHE染色した。炎症と線維化の病理学的グレードは正中矢状面全領域を40倍倍率で下記の通りグレーディングすることにて行った。
0;病変なし、1;炎症と線維化の範囲が肺の25%未満、2; 同25%から50%、3; 同部位が50%以上。
さらに、スライドはシリウスレッド染色にて、コラーゲンの沈着を評価した。
(ハイドロキシプロリンアッセイ)
液体窒素にてスナップ凍結した肺組織は、フリーズドライシステム (Labconco社製)を用いて凍結乾燥させ、重量を量り、微塵切りにした後、6N HClに16時間、120℃にて融解させた。それぞれのサンプルのハイドロキシプロリン量はWoessnerのプロトコールによって測定した。
肺胞壁はブレオマイシン投与後7日後より好中球とリンパ球の浸潤を伴って厚くなり始めた。ブレオマイシン投与後14日目には多数のリンパ球が肺の間質へ浸潤し、肺胞隔壁の肥厚、肺胞スペースの虚脱、線維芽細胞の増生を認めた。MCP−1 siRNA封入ナノスフェア投与群(以下、siRNA投与群という)においては、ブレオマイシン肺臓炎はcontrol siRNA投与群(以下、コントロール群という)と比較して14日後において、病理組織学的グレードは有意に抑制された(グレード3,グレード2,グレード1,及びグレード0のマウス数は、siRNA投与群ではそれぞれ0,2,13,4匹、コントロール群ではそれぞれ7,12,0,0匹と有意な差(p<0.01)を認めた。なお、MCP−1 siRNA、control siRNAのみの投与では、1、3、7、14、21、28日後にマウス肺の組織を調べても異常は認めなかった。
また、siRNA投与群では、肺組織のシリウスレッド染色においてコラーゲン沈着、ハイドロキシプロリン量(MCP−1 siRNA vs control siRNA;143±6vs310±25mg/左肺、p<0.01)、タイプ1コラーゲン、タイプ3コラーゲン、フィブロネクチン発現が、コントロール群と比較して有意に抑制されていた。
(肺組織のDNAダメージとアポトーシス)
DNAダメージとアポトーシスは、DeadEnd colorimetric apoptosis detection system(Promega社製)を用い、TUNEL法にて評価した。TUNEL陽性細胞を200倍倍率下にてランダムに選択した20視野において数え、評価した。
TUNEL陽性細胞はこのモデルにおける肺障害と線維化に相関する。細胞のタイプは明らかには同定できないが、細気管支と肺胞上皮細胞や炎症細胞のいくつかにおいては、炎症部位におけるDNAダメージとアポトーシスを、ブレオマイシン投与14日目に表していた。siRNA投与群では、コントロール群と比較してブレオマイシン投与14日目にはTUNEL陽性シグナルの明らかな減少(MCP−1 siRNA vs control siRNA;1.2±0.3vs6.3±0.5/field under x200 magnification、p<0.01)を認めた。
(BALF中の蛋白濃度、MCP−1、TNF−α、MIP−2測定)
と殺したマウスに気管切開を施し、気管チューブを挿入して1mLの無菌生理食塩水にて2回洗浄回収した。回収液は単層のガーゼで粘液を濾して、血球計算計を用いて細胞数をカウントし、Diff−Quick (Baxter Diagnostics社製)染色にて200細胞の分画をカウントした。蛋白濃度はBio-Rad protein assayにて測定した。
BALF中のMCP−1、MIP−2はELISAキット(R&Dsystems社製)にて測定し、TNF−αはELISAキット(BioSouce International社製)にて測定した。この測定のためにBALFは遠心分離し、上清を使用するまで−80℃にて保存していた。最小測定限界濃度はMIP−2が1.5pg/mL、MCP−1、TNF−αが5pg/mLであった。
siRNA投与群においては、BALF中のMCP−1濃度、蛋白濃度、総細胞数はコントロール群と比較して有意に減少していた。また、細胞分画においては、siRNA投与群ではブレオマイシン投与後14日目のマクロファージのパーセンテージがコントロール群と比較して有意に増加しており、一方リンパ球は有意に減少していた。また好中球は14日目に有意に低下していた。
また、BALF中のサイトカインの濃度はTNF−αとMIP−2がブレオマイシン投与後14日目において、生理食塩水投与群と比較して有意に上昇していた。さらに、siRNA投与群では、コントロール群と比較してこれらのサイトカインのレベルは有意に抑制された。
以上の結果より、マウスブレオマイシン肺臓炎モデルにおいて、MCP−1に対するsiRNA封入ナノスフェアを経鼻吸入投与することにより、肺線維化に対する有効性が認められた。この方法は、臓器特異的、損傷部位特異的な治療法であり、全身への影響も最小限と考えられ、臨床応用への可能性が高いと考えられた。
これまで述べてきたように、本発明の医薬製剤は、細胞内へのナノ粒子の取り込み性を向上させた、遺伝子の発現効率及び標的分子に対する指向性の高い優れた経肺投与用製剤である。従って、ここでは示さなかったが、肺癌、気管支喘息に対する薬効の認められている核酸化合物をナノ粒子内に封入した経肺投与用製剤の投与による、肺癌、気管支喘息に対する抑制効果も容易に推認することができる。
本発明の経肺投与用医薬製剤は、生体適合性ナノ粒子が肺内の粘膜や血管を経て細胞内に浸透することにより、核酸化合物を細気管支や肺胞領域等の病変部へ効果的且つ集中的に到達させるとともに、ナノ粒子から徐々に核酸化合物を放出させることができるので、難治療性肺疾患の治療効果を高めるだけでなく、人体に対する副作用の軽減も期待できる、優れた経肺投与用製剤となる。
また、核酸化合物をナノ粒子表面にも担持させることで、ナノ内部及び表面を含めた核酸化合物のトータルの封入量を増加させることができ、効率的な核酸化合物の送達と共に実用的な経肺投与量を実現する。また、ナノ粒子内部から徐放的に放出される核酸化合物と、ナノ粒子の表面から溶け出す核酸化合物とを作用させることで、即効性と持続性とを兼ね備えた経肺投与用医薬製剤となる。
また、ナノ粒子を形成する材料として、生体への刺激・毒性が低く、投与後分解して代謝される生体適合性高分子を用いるので、人体への安全性を確保するとともに、核酸化合物の効力を保持したまま長期間保存でき、さらに生体適合性高分子の分解により核酸化合物の徐放が可能となる。特に、生体適合性高分子としてPGA、PLA、PLGA、若しくはPALを用いた場合に好適である。
また、核酸化合物として、TGF−betaを標的分子とする可溶性typeIITGF受容体プラスミド、MCP−1を標的分子とする変異型MCP−1プラスミド、或いはCCR2、MCP−1、Egr−1に対するsiRNAまたはこれらを発現するプラスミドを封入すれば、難治療性の肺疾患である肺損傷、肺線維症に対し優れた効果を示す治療薬となる。
また、核酸化合物として、p53蛋白を標的分子とするp53プラスミド、或いはVEGFを標的分子とする可溶性VEGF受容体プラスミドを封入すれば、難治療性の肺疾患である肺癌に対し優れた効果を示す治療薬となる。p53プラスミドを用いた場合、特に原発性肺胞上皮癌の治療に効果的であり、可溶性VEGF受容体プラスミドを用いた場合、特に転移性肺癌の治療に効果的である。
また、核酸化合物として、IL−13、SOCS3に対するsiRNAまたはこれらを発現するプラスミド、或いはSOCS3を標的分子とするドミナントネガティブSOCS3プラスミドを封入すれば、難治療性の肺疾患である気管支喘息に対し優れた効果を示す治療薬となる。

Claims (13)

  1. 核酸化合物を生体適合性ナノ粒子の内部に封入して成る核酸化合物封入ナノ粒子を含む経肺投与用医薬製剤。
  2. 前記生体適合性ナノ粒子の表面に核酸化合物をさらに付着したことを特徴とする請求項1に記載の経肺投与用医薬製剤。
  3. 前記生体適合性ナノ粒子を形成する生体適合性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、若しくは乳酸・アスパラギン酸共重合体のいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経肺投与用医薬製剤。
  4. 前記核酸化合物として、TGF−betaを標的分子とする可溶性typeIITGF受容体プラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  5. 前記核酸化合物として、MCP−1を標的分子とする変異型MCP−1プラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  6. 前記核酸化合物として、CCR2に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  7. 前記核酸化合物として、MCP−1に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  8. 前記核酸化合物として、Egr−1に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた肺損傷・肺線維症治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  9. 前記核酸化合物として、p53蛋白を標的分子とするp53プラスミドを用いた肺癌治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  10. 前記核酸化合物として、VEGFを標的分子とする可溶性VEGF受容体プラスミドを用いた肺癌治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  11. 前記核酸化合物として、IL−13に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた気管支喘息治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  12. 前記核酸化合物として、SOCS3を標的分子とするドミナントネガティブSOCS3プラスミドを用いた気管支喘息治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
  13. 前記核酸化合物として、SOCS3に対するsiRNAまたは当該siRNAを発現するプラスミドを用いた気管支喘息治療薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の経肺投与用医薬製剤。
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