近年、パーソナルコンピュータや映像機器、携帯情報機器等のモニタ、ディスプレイとして多用されている液晶表示装置(LCD)に続く次世代の表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)や発光ダイオード(LED)等のような自発光素子を2次元配列した発光素子型の表示パネルを備えたディスプレイ(表示装置)の研究開発が盛んに行われている。
特に、アクティブマトリックス駆動方式を適用した発光素子型ディスプレイにおいては、液晶表示装置に比較して、表示応答速度が速く、視野角依存性もなく、また、高輝度・高コントラスト化、表示画質の高精細化等が可能であるとともに、液晶表示装置のようにバックライトを必要としないので、一層の薄型軽量化が可能であるという極めて優位な特徴を有している。
ここで、発光素子型ディスプレイに適用される自発光素子の一例として、有機EL素子について簡単に説明する。
図9は、有機EL素子の一構成例を示す概略断面図である。
図9に示すように、有機EL素子は、概略、ガラス基板等の絶縁性基板111の一面側(図面上方側)に、アノード(陽極)電極112、有機化合物等(有機材料)からなる有機EL層113、及び、カソード(陰極)電極114を順次積層した構成を有している。
有機EL層113は、例えば、正孔輸送材料(正孔注入層形成材料)からなる正孔輸送層(正孔注入層)113aと、電子輸送性発光材料からなる電子輸送性発光層(発光層)113bとを積層して構成されている。なお、有機EL層113(正孔輸送層113a及び電子輸送性発光層113b)に適用される正孔輸送材料や電子輸送性発光材料としては、低分子系や高分子系の種々の有機材料が知られている。
ここで、一般に、低分子系の有機材料の場合、有機EL層における発光効率は比較的高いものの、製造プロセスにおいて蒸着法が適用されているため、画素形成領域のアノード電極上にのみ選択的に薄膜形成する際に、上記アノード電極以外の領域への低分子材料の蒸着を防止するためのマスク表面にも低分子材料が付着することになるため、製造時の材料ロスが大きいうえ、製造プロセスが非効率的であるという問題を有している。
一方、高分子系の有機材料を適用した場合には、湿式成膜法として液滴吐出法(いわゆる、インクジェット法)等を適用することができるので、画素形成領域のアノード電極上にのみ選択的に液滴を塗布して、良好に有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)の薄膜を形成することができる。
ここで、高分子系の有機材料を適用した有機EL素子の製造プロセスについて、簡単に説明する。
図10及び図11は、従来技術における表示パネル(有機EL素子)の製造プロセスの一例を示す工程断面図である。ここでは、説明の都合上、絶縁性基板上に有機EL素子のみを形成する場合を示す。また、上述した有機EL素子(図9)の素子構造と同等の構成については、同一の符号を付して説明する。
有機EL素子の製造プロセスの一例は、まず、図10(a)に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板111の一面側(図面上方側)の、各表示画素が形成される領域(画素形成領域)Apxごとにアノード電極(陽極)112を形成した後、図10(b)に示すように、隣接する表示画素との境界領域に絶縁性の樹脂材料等からなる隔壁(バンク)121を形成する。ここで、隔壁121に囲まれた画素形成領域Apxには、上記アノード電極112が露出している。
次いで、図10(c)に示すように、酸素ガス雰囲気中で上記絶縁性基板111表面に紫外線UVを照射することにより、活性酸素ラジカルが発生して、アノード電極112表面の有機物を分解除去して親水化するとともに、隔壁121表面においてもラジカルを発生して親液化する。
次いで、上述した親液化処理を施した絶縁性基板111に対して、フッ化物ガス雰囲気中で紫外線UVを照射することにより、隔壁121表面においてはフッ素が結合して撥液化(又は、撥水化)し、一方、アノード電極(ITO)112表面は親液性を保持する。
次いで、図10(d)に示すように、インクジェット装置を用いて、インクヘッドIHHから高分子系の有機材料からなる正孔輸送材料を溶媒に分散、又は、溶解させた液状材料(第1の溶液)HMCを液滴状にして吐出させ、上記親液性を有するアノード電極112上に塗布した後、乾燥処理を行うことにより、図10(e)に示すように、アノード電極112上に正孔輸送材料を定着させて正孔輸送層113aを形成する。
次いで、同様に、図10(f)に示すように、インクヘッドIHEから高分子系の有機材料からなる電子輸送性発光材料を溶媒に分散、又は、溶解させた液状材料(第2の溶液)EMCを液滴状にして吐出させ、上記正孔輸送層113a上に塗布した後、乾燥処理を行うことにより、図11(g)に示すように、電子輸送性発光材料を定着させて電子輸送性発光層113bを形成する。なお、上記正孔輸送材料を含む液状材料HMC、及び、電子輸送性材料を含む液状材料EMCの塗布処理においては、隔壁121表面が撥水性を有しているので、仮に液状材料HMC、EMCの液滴が隔壁121上に着滴してもはじかれて、各画素形成領域Apxのアノード電極112上の親液性領域(すなわち、有機EL素子形成領域Ael)にのみ塗布されることになる。
次いで、図11(h)に示すように、各画素形成領域Apxの有機EL層113(正孔輸送層113a及び電子輸送性発光層113b)を介してアノード電極112に対向するように、共通電極からなるカソード電極(陰極)114を形成した後、図11(i)に示すように、当該カソード電極114を含む絶縁性基板111上に、保護絶縁膜や封止樹脂層115を形成し、さらに封止基板116を接合することにより、有機EL素子(有機EL表示パネル)が完成する。
このような有機EL素子の製造方法については、例えば、特許文献1等に詳しく説明されている。
このような素子構造を有する有機EL素子においては、図9に示すように、直流電圧源115からアノード電極112に正電圧、カソード電極114に負電圧を印加することにより、正孔輸送層113aに注入されたホールと電子輸送性発光層113bに注入された電子が有機EL層113内で再結合する際に生じるエネルギーに基づいて光(励起光)hνが放射される。
ここで、この光hνは、アノード電極112及びカソード電極114を、各々、光透過性又は遮光性(及び反射特性)を有する電極材料を用いて形成することにより、絶縁性基板111の一面側(図面上方)もしくは他面側(図面下方)の任意の方向に放射させることができる。このとき、光hνの発光強度は、アノード電極112とカソード電極114間に流れる電流量に応じて決まる。
なお、図9においては、アノード電極112として錫ドープ酸化インジウム(ITO;Indium Thin Oxide)等の透明電極材料を用い、カソード電極114として金属材料等の遮光性及び反射特性を有する電極材料を用いることにより、有機EL層113において発光した光hνを、直接又はカソード電極114で反射させて、透明な絶縁性基板111の他面側に放射させるボトムエミッション構造について示した。
特開2003−257656号公報 (第4頁〜第6頁、図2〜図5、図8)
以下、本発明に係る表示装置及びその製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。
(表示パネル)
まず、本発明に係る表示装置(表示パネル)の概略構成について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置(表示パネル)の一実施形態を示す要部概略平面図であり、図2は、本発明に係る表示装置(表示パネル)の一実施形態を示す要部概略断面図である。なお、図1に示す平面図においては、図示の都合上、視野側から見た各画素形成領域とアノードラインLa及びカソードラインLcの配設構造のみを示し、図2に示す他の構成(アモルファスシリコン薄膜トランジスタ等のトランジスタ)を省略した。ここで、図1においては、隣接する赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる色画素PXr、PXg、PXbを一組として一の表示画素PIXを構成する場合を示し、図2においては、赤色画素PXrの形成領域Rpxを中心とした断面構造を示す。
本発明の一実施形態に係る表示装置(有機EL素子を備えた表示パネル)は、図1、図2に示すように、ガラス基板等の絶縁性の基板(絶縁性基板)11上に、有機EL素子を発光駆動するための発光駆動回路(発光駆動手段;具体例については、後述する)を構成する1乃至複数のトランジスタ(図2中では、便宜的に2個のトランジスタT1、T2を示す)、及び、トランジスタT1、T2に直接または間接的に接続されたアノードラインLa、カソードラインLc、データライン、走査ラインを含む各種配線層LNが設けられ、当該トランジスタT1,T2及び配線層LNの一部を被覆するように、窒化シリコン等からなる保護絶縁膜13及び感光性樹脂等からなる平坦化膜14が積層形成された構成を有している。
各トランジスタT1,T2は、例えば、絶縁性基板11上に形成されたゲート電極Egと、ゲート絶縁膜12を介して各ゲート電極Egに対応する領域に形成された半導体層SMCと、該半導体層SMCの両端部にそれぞれ形成された不純物層OHMと、不純物層OHMにそれぞれ形成されたソース電極Es及びドレイン電極Edと、を有して構成されている。また、トランジスタT1,T2及び配線層LN上に積層形成された保護絶縁膜13及び平坦化膜14には、適宜コンタクトホールHLが形成され、上記トランジスタと平坦化膜14上の導電層(例えば、後述する画素電極15)とが電気的に接続されるように、金属材料(コンタクトメタルMTL)が埋め込まれている。
そして、上記平坦化膜14上の、各色画素の形成領域(図2に示す赤色画素PXrの形成領域Rpx参照)には、少なくとも光反射特性を有し、例えばアノード電極となる画素電極15、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bからなる有機EL層(電荷輸送層、発光層)16、及び、光透過性を有し、例えばカソード電極となる対向電極17を順次積層した有機EL素子が設けられている。
また、相互に隣接する各色画素の形成領域間(厳密には、有機EL素子の形成領域相互の境界領域)には、平坦化膜14(絶縁性基板11)から突出するようにバンク(隔壁)18(図1におけるカソードラインLcの列方向部分)が設けられている。さらに、上記有機EL素子及びバンク18を含む絶縁性基板11上には、透明な封止樹脂層19を介して、絶縁性基板11に対向するようにガラス基板等からなる封止基板(対向基板)20が接合されている。
特に、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)においては、上記バンク18により各色画素PXr、PXg、PXbの形成領域Rpx、Gpx、・・・が画定されるとともに、当該バンク18として金属材料等の導電性材料を適用することにより、図1に示すように、表示パネル(絶縁性基板11)上に2次元配列された各表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)間に格子状に金属導電層(カソードラインLc)を配設することができ、例えば、図2に示すように、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL素子の対向電極17を当該バンク18上に延在させるとともに、対向電極17及びバンク18が相互に電気的に接続することにより、バンク18を、対向電極17に所定の共通電圧(接地電位等)を供給するためのカソードラインLcとして適用した構成を有している。
そして、このような構成を有する表示装置においては、例えば、表示パネルの下層(有機EL素子の絶縁性基板11側の層)に設けられたトランジスタT1,T2や配線層LN等からなる発光駆動回路において、図示を省略したデータラインを介して供給された階調信号(表示データ)に基づいて、所定の電流値を有する発光駆動電流がトランジスタT2のドレイン−ソース間に流れ、例えば、トランジスタT2からコンタクトホールHLに埋め込まれたコンタクトメタルMTLを介して、有機EL素子の画素電極15に供給されることにより、有機EL素子が表示データに応じた所定の輝度階調で発光動作する。
このとき、有機EL素子がトップエミッション型である場合、つまり、画素電極15が光反射性電極(図2に示すように、アルミニウム等の反射金属層15aと、有機EL層16に接触する、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのうちの少なくとも一つを含む化合物または混合物等の透明電極材料(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や、亜鉛ドープ酸化インジウム等)等の酸化金属層15bの積層構造でもよい。)であり、カソード電極17が例えばITOや亜鉛ドープ酸化インジウム等の透明導電膜である場合、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光は、光透過性を有する対向電極17を介して直接、あるいは、光反射特性を有する画素電極15で反射して、封止樹脂層19を介して封止基板20方向(視野側;図2の図面上方)に出射される。
また、有機EL素子がボトムエミッション型である場合、つまり、画素電極15が酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのうちの少なくとも一つを含む化合物または混合物等の透明電極材料(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や、亜鉛ドープ酸化インジウム等)膜であり、カソード電極17が例えば、Ca、Mg、Ba、Li、等の比較的仕事関数の低い電子注入膜と、電子注入膜が酸化されるのを防止するとともにシート抵抗を下げるためのAl等の保護導電膜との積層構造でもよい。各表示画素の有機EL層16において発光した光は、基板11を介して出射される。ボトムエミッション型の場合、平坦化膜14は必ずしも必要がない。また、画素電極15が形成される領域には保護絶縁膜13が形成されていなくてもよい。
(表示装置の製造方法)
次に、上述した構成を有する表示装置(表示パネル)の製造方法について説明する。
図3乃至図6は、本実施形態に係るトップエミッション型の表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図である。また、図7は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法に適用される被膜材料の分子構造を示す化学記号である。なお、ボトムエミッション型についてもトップエミッション型の製法を踏襲して製造することができる。
本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法は、まず、図3(a)に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側(図面上面側)に、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)に対応する所定の領域ごとに、表示データに応じた電流値を有する発光駆動電流を生成して有機EL素子に供給する発光駆動回路を構成する複数のトランジスタT1,T2や配線層LN等を形成する。
具体的には、絶縁性基板11の一面側に、例えば、金属材料からなるゲート電極Eg及び当該ゲート電極Egに接続される配線層を形成し、その後、絶縁性基板11の全域に絶縁膜を被覆してゲート絶縁膜12を形成する。次いで、ゲート絶縁膜12上の上記ゲート電極Egに対応する領域に、例えば、アモルファスシリコンやポリシリコン等からなる半導体層SMCを形成し、当該半導体層SMCの両端部にそれぞれ半導体層SMCとソース電極Es及びドレイン電極Edとのオーミック接続を実現するための不純物層OHMを形成し、不純物層OHM上にソース電極Es及びドレイン電極Ed並びにこれらの電極の元となる導電膜をパターニングして一括して形成され、適宜トランジスタT1,T2に接続される走査ライン、データライン、アノードラインLaを形成する。
ここで、半導体層SMC上には、上記ソース電極Es及びドレイン電極Ed並びに配線層LNをパターニング形成する際の半導体層SMCへのエッチングダメージを防止するためのブロック層BLが設けられていてもよい。また、ソース電極Es及びドレイン電極Ed並びに走査ライン、データライン、アノードラインLaは、配線抵抗を低減し、かつ、マイグレーションを低減する目的で、例えば、アルミニウム合金と遷移金属からなる積層配線構造を有している。
次いで、図3(b)に示すように、上記トランジスタT1,T2及び走査ライン、データライン、アノードラインLaを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように保護絶縁膜(パッシベーション膜)13及び平坦化膜14を順次形成した後、当該平坦化膜14及び保護絶縁膜13を貫通して、例えば、上記発光駆動回路を構成する特定のトランジスタ(発光駆動用トランジスタ)T2のソース電極(又は、ドレイン電極)の上面が露出するコンタクトホールHLを形成する。
次いで、図3(c)、図4(d)に示すように、上記コンタクトホールHLにコンタクトメタルMTLを埋め込んだ後、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に当該コンタクトメタルMTLに電気的に接続された画素電極15を形成する。ここで、画素電極15は、具体的には、アルミニウム(Al)等の光反射特性を有する反射金属層15aを薄膜形成してパターニングした後、当該反射金属層15aを被覆するようにITOや亜鉛ドープ酸化インジウム等の酸化金属層15bを薄膜形成してパターニングする。上層の酸化金属層15bのパターニングの際に反射金属層15aとの間で電池反応を引き起こさないように、反射金属層15aをパターニング後に酸化金属層15bとなる膜を被膜して反射金属層15aが露出しないようにこの膜をパターニングすることが好ましい。
このように、画素電極15が、下層の反射金属層15aと上層の酸化金属層15bを積層した電極構造を有していることにより、反射金属層15aの上面及び端面が酸化金属層15bにより被覆されるので、反射金属層15aと酸化金属層15bのエッチング条件が異なる場合であっても、酸化金属層15bをパターニング形成する際に下層の反射金属層15aがオーバーエッチングされたり、エッチングダメージを受けたりすることを防止することができる。
このように、画素電極15の上層を構成する酸化金属層15bは、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのうちの少なくとも一つを含む化合物又は混合物等の透明電極材料(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や、亜鉛ドープ酸化インジウム等)を、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いて成膜した後、有機EL素子の平面形状(発光領域)に対応させてパターニングすることにより形成される。
次いで、上記各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に対応して形成された画素電極15間の領域(すなわち、相互に隣接する色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・間の境界領域)に、図4(e)に示すように、例えば、シリコン窒化膜等の無機の絶縁性材料からなるバンク下地層21を形成する。
さらに、図4(f)に示すように、当該バンク下地層21上に、例えば、少なくとも表面が、銅や銀、アルミニウム、又は、これらを主成分とする金属単体又は合金等の非酸化物であり、低抵抗の金属材料からなるバンクメタル部18b(金属導電層;図1に示したカソードラインLcに相当する)を形成する。これにより、バンクメタル部18b(カソードラインLc)及びバンク下地層21からなるバンク(隔壁)18に囲まれた領域が、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・(すなわち、有機EL素子における発光領域)として画定される。なお、上記バンク18に形成されるバンクメタル部18bは、酸化を防止するために表面に金メッキを施してもよい。バンクメタル部18bの代わりに同一形状の非導電材料(例えばポリイミド)で形成し、表面に金属メッキを施して導電性を付与してもよい。
次いで、図5(g)に示すように、上記バンクメタル部18bの表面に、トリアジントリチオール、またはフッ素系トリアジンジチオール誘導体等のトリアジンチオール化合物の被膜18cからなる撥液性の薄膜(撥液性膜)を選択的に形成する。具体的には、上記バンク18まで形成された絶縁性基板11を、UVオゾン洗浄して清浄化した後、トリアジンチオール化合物の水溶液で満たした槽内に挿入して水溶液に浸漬する。この工程における水溶液の温度は概ね20〜30℃程度とし、浸漬時間は概ね1〜10分程度とする。このとき、トリアジンチオール化合物は金属と選択的に結合することになる。ただし、金属酸化物、有機絶縁膜、無機絶縁膜には撥液性を発現する程度には被膜されない。次いで、上記水溶液から取り出した絶縁性基板11をアルコールで濯ぐことにより、絶縁性基板11上の余分なトリアジンチオール化合物を洗い流し、水で2次洗浄した後、窒素ガス(N2)のブローにより乾燥させる。
ここで、トリアジンチオール化合物の一例として、上述したようなフッ素系トリアジンジチオール誘導体は、図7(a)に示すように、トリアジン(3個の窒素を含む六員環構造)の窒素(−N)にチオール基(−SH)が結合した分子構造に加え、特定のチオール基(−SH)のS原子にアルキル基(−CH2−CH2−)及びフッ化アルキル基(−CF2−CF2−CF2−CF3)が順次結合した分子構造を有し、他のトリアジンチオール化合物と同様に、図7(b)に示すように、バンクメタル部18bの表面に選択的に結合してバンクメタル部18bの表面を撥液性にする被膜18cを被膜するが、金属酸化物、有機絶縁膜、無機絶縁膜に対して、はっきりと撥液性を示す程度には結合しない。このフッ素系トリアジンジチオール誘導体は、それ自体が撥液性を示すトリアジントリチオールに加えてさらに撥液性を示すフッ素原子を含んでいるので、被膜18cは、トリアジントリチオールよりも強い撥液性を示す。なお、上述した工程において使用する水溶液の濃度は、概ね1×10−4〜1×10−2mol/Lの範囲が好ましい。
なお、上記フッ素系トリアジンジチオール誘導体は、チオール基のS原子がアルキル基(−CH2−CH2−)と結合していたが、直接フッ化アルキル基と結合してもよく、また著しい立体障害にならない限りアルキル基、フッ化アルキル基の炭素数に特別な制限はない。また、上記フッ素系トリアジンジチオール誘導体は、残る二つのチオール基の一つのS原子において、水素基に代わって直接又は間接的にフッ化アルキル基が置換形成されていてもよく、或いはフッ素原子を含む基の炭素間がオレフィン二重結合を有していてもよい。また、その他のトリアジンチオール誘導体として、例えば、6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール−ナトリウム塩或いは6−ジドデシルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール−ナトリウム塩を用い、水に溶解して被膜18cを被膜してもよい。
これにより、絶縁性基板11の一面側に形成された各構成のうち、金属材料からなるバンクメタル部18bの表面にのみ、トリアジンチオール化合物の被膜18cが形成され、一方、酸化金属層(ITO等)15bにより被覆された画素電極15の表面、バンク下地層21の表面、画素電極15間から露出された平坦化膜14(或いは保護絶縁膜13)には付着しにくく、被膜が形成されない。したがって、同一の絶縁性基板11上において、バンクメタル部18bの表面のみが撥液化処理され、当該バンク18により画定された各色画素の形成領域Rpx、Gpx、・・に露出する画素電極15表面は撥液化処理されていない状態が実現される。
なお、本実施形態において使用する「撥液性」とは、後述する正孔輸送層となる正孔輸送材料を含有する有機化合物含有液や電子輸送性発光層となる電子輸送性発光材料を含有する有機化合物含有液、もしくは、これらの溶液に用いる有機溶媒を、絶縁性基板上等に滴下して、接触角の測定を行った場合に、当該接触角が50°以上になる状態と規定する。また、「撥液性」に対する「親液性」とは、本実施形態においては、上記接触角が40°以下になる状態と規定する。
次いで、表面がトリアジンチオール化合物の被膜18cにより撥液化されたバンクメタル部18b(バンク18)により画定された各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に、正孔輸送層16aを形成する。具体的には、まず、上述した撥液化処理が施された絶縁性基板11を、比較的親油性のポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を有機溶剤に溶解又は分散させた溶液または分散液(以下、「下地用非酸性液」と呼称する)に浸漬する。有機溶剤としてはエタノール(沸点78.3℃)、アセトニトリル(沸点81.6℃)、ニトロセタン(沸点101℃)が好ましい。特に100℃以下の沸点の有機溶剤は局所的にPEDOTが凝集する前に上記下地用非酸性液を速やかに乾燥できるので、PEDOT膜は比較的均一な膜厚にすることができる。乾燥時の温度は、有機溶剤の沸点〜150℃が好ましい。
これにより、図5(h)に示すように、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に露出する画素電極15(酸化金属層15b)表面に、親液性を有するポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTからなる薄膜(親液性膜)が下地膜16xとして選択的に形成される。ここで、ポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTを分散又は溶解した液は、中性(非酸性)である(非酸化特性を有している)ので、この下地用非酸性液がバンクメタル部18bの表面に設けられた被膜18cに接触するような製造方法を適用しても、トリアジンチオール化合物の被膜18cを劣化(エッチング、剥離等による除去)させず撥液性を良好に維持することができ、さらに被膜18cの内部のバンク18(バンクメタル部18b)を構成する金属材料を劣化(酸化やエッチング、剥離等による除去)させることがない。したがって、ディップコート法やスピンコート法にて基板11全体を下地用非酸性液で浸して一括して簡易に下地膜16xを成膜することができる。
このように、同一の絶縁性基板11上において、バンク18(バンクメタル部18b)の表面は、下地用非酸性液によって劣化せずに被膜された状態を維持しているトリアジンチオール化合物の被膜18cにより撥液性を有し、当該バンク18により画定された各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に露出する画素電極15の表面は、ポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTからなる下地膜16xにより、後述する正孔輸送材料に対して馴染みやすい(親液性を有する)状態が実現される。
次いで、図6(i)に示すように、上記バンク18に囲まれた各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に、インクヘッドから個々に分離した液滴を吐出するインクジェット法や分離せずに連続した液状にして排出するノズルコート法を適用して正孔輸送材料の水溶液を液滴状にして塗布し、その後、当該水溶液を乾燥させて正孔輸送層16aを形成する。具体的には、有機高分子系の正孔輸送材料を含む酸性の有機化合物含有液(電荷輸送材料含有酸性液)として、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT/PSS;導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSSを水系溶媒に分散させた分散液)を適用する。PSSは、水への溶解性を向上するドーパントとして利用され、PSSが添加されることでポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液は酸性を示す。この水溶液を、図示を省略したインクヘッドから液滴状にして吐出させ、上記下地膜16xが形成された画素電極15(酸化金属膜15b)上、つまり、下地膜16x上に塗布した後、窒素雰囲気中で乾燥処理を行って溶媒を除去することにより、当該画素電極15上に有機高分子系の正孔輸送材料を定着させて、電荷輸送層である正孔輸送層16aを形成する。
このとき、画素電極15上(下地膜16x表面)に滴下された電荷輸送材料含有酸性液(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液PEDOT/PSS)は、画素電極15(酸化金属膜15b)表面に形成されたポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTからなる下地膜16xに対して当該液滴が濡れやすく、馴染みやすい性質を有しているので、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・の全域に良好に行き渡り、均一な膜質及び膜厚を有する正孔輸送層16aを形成することができる。一方、トリアジンチオール化合物の被膜18cにより撥液化処理されたバンク18(バンクメタル部18b)表面に着滴した上記電荷輸送材料含有酸性液は、被膜18cの撥液性を劣化する前に速やかになじみやすい下地膜16xに移動する。また、下地膜16xが正孔輸送層の一部となるので、下地膜16x上に塗布される電荷輸送材料含有酸性液の量を減らしても十分な厚さの正孔輸送層16aを形成できる。このため、塗布する電荷輸送材料含有酸性液の量が少ないので、被膜18cの撥液性を劣化する前に速やかに乾燥してしまうので均一な膜厚にすることができる。
このように、本実施形態においては、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・の画素電極15上に、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液PEDOT/PSSを用いて正孔輸送層16aを形成する際に、予め下地膜16xとして、少なくとも当該ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液PEDOT/PSSに対して馴染みやすい(例えば、当該電荷輸送材料含有酸性液を構成する成分を含む材料からなり、当該液滴が均一に行き渡る)性質を有する材料からなる薄膜を形成しておく。これにより、正孔輸送材料の凝集を抑制して均一な膜質及び膜厚を有する正孔輸送層16aを形成することができる。
特に、正孔輸送層16aを形成するためのポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液PEDOT/PSSは、不溶性のポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTを水系溶媒に分散させるために、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸PSSを用いるが、このポリスチレンスルホン酸PSSにより、水溶液が酸性を示すことになるため、このような酸性溶液が電荷輸送層材料として十分な量で直接バンク18(バンクメタル部18b)に着滴すると、乾燥するまでに時間がかかり、バンクメタル部18bを構成する金属材料、及び、当該表面に形成されたトリアジンチオール化合物の被膜18cが劣化(酸化やエッチング、剥離等による除去)してバンク18表面の撥液性が維持されなくなるとともに、導電性が劣化する。撥液性が維持されないために、電荷輸送層材料が、画素電極15の周縁とバンクメタル部18bとの間で凝集を起こしてしまい、膜厚が不均一になってしまう。
そこで、本実施形態においては、バンクメタル部18bを構成する金属材料や撥液性を有するトリアジンチオール化合物の被膜18cに対して非酸化特性を有する電荷輸送材料(PEDOT)を適用することにより、上記下地膜16xを形成する浸漬処理(ディップコート)の際に、バンク18(バンクメタル部18b)表面の劣化を抑制しつつ、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・の画素電極15上に選択的に下地膜16xを形成することができる。この下地膜16xは、電荷輸送層の一部となるので電荷輸送材料含有酸性液の量を減らせるため、被膜18cが電荷輸送材料含有酸性液に浸かる時間が短くなるので、バンクメタル部18bの表面での撥水性を維持したまま電荷輸送材料含有酸性液を乾燥し、膜厚を均一にすることができる。
ここで、上述したような下地膜16xの材料液としては、非酸性液であり電荷輸送材料を含んでいればよく、具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTとポリエチレングリコールPEGの共重合体や、メタクリル基でエンドキャップされたポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTオリゴマー等の、非酸性(非酸化特性)の有機分散液を良好に適用することができる。
また、上記下地膜16xの材料の溶媒としては、低沸点の有機溶剤を良好に適用することができ、これによれば、絶縁性基板11を上記有機分散液に浸漬した後、取り出して乾燥させる工程において、上記溶媒の蒸発が比較的速く進行するので、画素電極15上に直接、沸点が比較的高く、溶媒の蒸発速度が遅いポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液PEDOT/PSSを滴下して、乾燥、定着させる場合に比較して、当該下地膜16xの材料の凝集を抑制して膜質及び膜厚のバラツキを低減することができる。
さらに、上記画素電極15上に形成される下地膜16xの膜厚は、具体的には、当該画素電極15(酸化金属膜15b)表面の平均粗さ(Ra)以上であって、当該平均粗さの2倍(2×Ra)以下に設定されていることが望ましい。
次いで、上記正孔輸送層16aの場合と同様に、図6(i)に示すように、上記バンク18に囲まれた各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に、インクジェット法を適用して電子輸送性発光材料の水溶液を液滴状にして塗布し、その後、当該水溶液を乾燥させて電子輸送性発光層16bを形成する。具体的には、有機高分子系の電子輸送性発光材料を含む電荷輸送材料含有酸性液(化合物含有液)として、例えば、ポリフルオレン系やポリパラフェニレンビニレン系等の発光材料を、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒に溶解した溶液を、図示を省略したノズルベッドから液滴状にして吐出させ、上記正孔輸送層16a上に塗布した後、窒素雰囲気中でホットプレート等により乾燥処理、あるいは、真空雰囲気中でシーズヒータ等により乾燥処理を行って溶媒を除去することにより、正孔輸送層16a上に有機高分子系の電子輸送性発光材料を定着させて、電荷輸送層である電子輸送性発光層16bを形成する。ここで、上記発光材料は、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に対応させて、赤、緑、青の各色を有するものを適用する。
このとき、電荷輸送材料含有酸性液(電子輸送性発光材料)は、乾燥した正孔輸送層16aに対して濡れやすいので、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・の全域に良好に行き渡り、均一な膜質及び膜厚を有する電子輸送性発光層16bを形成することができる。一方、トリアジンチオール化合物の被膜18cにより撥液化されたバンク18(バンクメタル部18b)表面に着滴した電荷輸送材料含有酸性液は、はじかれて当該膜上には定着しない。これにより、画素電極15上に均一な膜質及び膜厚を有する有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を形成することができる。
次いで、図6(j)に示すように、上記各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・を含む絶縁性基板11上に透明電極層を形成し、少なくとも、上述した有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を介して画素電極15に対向する対向電極17を形成する。ここで、対向電極17は、例えば、少なくとも各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・に形成された有機EL層16上から、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・を画定するバンク18上にまで延在する単一の共通電極として形成される。具体的には、対向電極17は、例えば、真空蒸着法やスパッタ法等により、カルシウム(Ca)やバリウム(Ba)、インジウム(In)等の仕事関数の比較的低い金属材料を、可視光線の波長以下(概ね400nm以下)の膜厚(例えば、10nm〜20nm程度)に薄膜形成し、さらに、その上層に、例えば、ITO等の透明電極膜を積層形成した構造を有している。
これにより、下層のインジウム等の仕事関数の低い金属材料が、有機EL層16(電子輸送性発光層16b)を構成する有機材料に対して、電気的に良好な状態で密着するとともに、可視光の波長以下の膜厚を有しているので、有機EL層16で発光した光を良好に透過させることができる。また、上層のITO等の透明電極膜は、上記下層の金属膜を400nm以下に極めて薄く形成することにより高抵抗化するため、対向電極17を低抵抗化させる目的で積層形成される。さらに、バンク18上にまで対向電極17が延在して形成された構成を有することにより、バンクメタル部18bの表面に極めて薄く形成されたトリアジンチオール化合物の被膜18cを介して、対向電極17とバンクメタル部18b(カソードラインLc)とを電気的に良好に接続することができる。
次いで、図2に示したように、各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・及びバンク18を含む絶縁性基板11の一面側に、透明な封止樹脂層19を形成した後、当該絶縁性基板11に対向するように、封止基板20を接合することにより、複数の表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXbの組み合わせ)が2次元配列された表示パネルが完成する。ここで、絶縁性基板11への封止基板20の接合方法としては、封止基板20の接合面側に、UV硬化接着剤や熱硬化接着剤を塗布して、絶縁性基板11に貼り合わせた後、UV照射や加熱処理により上記接着剤を硬化させて接合する方法を良好に適用することができる。
このように、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法は、絶縁性基板11上の画素形成領域(各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・)を画定するバンク18(バンクメタル部18b)表面に、トリアジンチオール化合物の被膜18cからなる撥液性膜を選択的に形成した後、画素電極15表面に、正孔輸送材料に対して馴染みやすく、かつ、非酸性(非酸化特性)を有する材料からなる下地膜16xを選択的に形成することにより、当該下地膜16xの形成時にバンク18表面が酸化、エッチングされる現象を抑制して、バンク18表面の撥液性を良好に維持しつつ、正孔輸送層16aの形成工程において、画素電極15上に正孔輸送材料を含む電荷輸送材料含有酸性液(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液PEDOT/PSS)を均一に塗布することができる。
したがって、絶縁性基板11上の画素形成領域(各色画素PXr、PXg、・・の形成領域Rpx、Gpx、・・)に露出する画素電極15上に、凝集を生じることなく、略全域にわたり均一な膜質及び膜厚を有する有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を形成することができるので、各表示画素(画素形成領域)のサイズを大型化した場合であっても、各画素形成領域内の略全域で有機EL素子を均一に発光動作させることができ、開口率が高く発光特性に優れた表示パネルを実現することができる。
なお、上記実施形態では、下地用非酸性液に含まれる電荷輸送層材料及び電荷輸送材料含有酸性液に含まれる電荷輸送層材料は、ともに正孔輸送層材料であったが、これに限らず、電子輸送層材料であってもよい。
また、上記実施形態では、トリアジンチオール化合物のような酸性に弱い材料で撥液性の被膜18cを形成したが、これに限らず、アルカリ性に弱い撥液性の被膜18cであり、画素電極15上に形成される電荷輸送層となる材料をアルカリ性の溶媒、分散媒に溶解又は分散する場合、下地用非酸性液の代わりに中性又は酸性の下地用非アルカリ性液を用い、電荷輸送材料含有酸性液の代わりにアルカリ性の電荷輸送材料含有アルカリ性液を用いてもよい。
また、上述した実施形態においては、有機EL層16として、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bを順次成膜した構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、有機EL層として、発光層単層、あるいは、正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる多層構造を有するものでもよく、また、正孔輸送性発光層、電子輸送層からなるものでもよく、さらに、その他の電荷輸送層を適宜追加するものや、正孔輸送層と電子輸送性発光層との間に、正孔輸送層の正孔輸送を制御して電子輸送性発光層の所定の位置で電子と正孔対の再結合を引き起こすための電荷輸送性制御層を介在させた多層構造を有するものであってもよい。
また、上述した実施形態においては、トップエミッション構造を有する表示パネルに本発明に係る表示装置及びその製造方法を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発光駆動回路を構成するトランジスタや配線層等の配置を適宜考慮して設計レイアウトを行うことにより、絶縁性基板側に光を放射するボトムエミッション型の発光構造を有する表示パネルにも良好に適用することができる。ボトムエミッション型であれば、必ずしも平坦化膜14は必要がなく、保護絶縁膜13上または基板11上に画素電極15を形成してもよい。
具体的には、例えば、バンク18(バンクメタル部18b)の形成領域に対して平面的に重なる領域(すなわち、バンク18の略下層領域)にトランジスタT1,T2や配線層LN等を配置するように設計レイアウトを行うことにより、絶縁性基板11方向に光を放射させた場合であっても、表示画素PIX(表示パネル)の開口率をそれほど低下させることなく、かつ、本発明に係る製造方法を適用して画素形成領域(有機EL素子形成領域)の比較的広い領域(略全域)で均一に発光動作させて、発光特性に優れた表示パネルを実現することができる。
上記実施形態では、画素電極15をアノードとし、対向電極17をカソードとしたが、画素電極15をカソードとし、対向電極17をアノードとしてもよい。
また上記実施形態では、バンクメタル部18bをアノードラインLaの一部として利用したが、代わりにカソードラインLcの一部に適用してもよい。
(画素駆動回路の構成例)
図8は、本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される表示画素(発光駆動回路)の一例を示す等価回路図である。
本発明に適用可能な表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)は、例えば図8に示すように、絶縁性基板11上に設けられたトランジスタT1、T2を含んで構成される発光駆動回路DCと、有機EL素子OELと、を備えて構成されている。トランジスタT1、T2に直接または間接的に接続されたアノードラインLa、カソードラインLc、データラインLd、走査ラインLsを含む各種配線層LNが設けられ、当該トランジスタT1、T2及び配線層LNの一部を被覆するように、窒化シリコン等からなる保護絶縁膜13及び感光性樹脂等からなる平坦化膜14が積層形成された構成を有している。トランジスタT2のゲート−ソース間には、キャパシタCsが設けられている。
なお、本構成例においては、表示パネルを構成する表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)に設けられる発光駆動回路DCとして、nチャネル型のトランジスタ(すなわち、単一のチャネル極性を有するトランジスタ)T1、T2を適用した回路構成を示した。このような回路構成によれば、nチャネル型のトランジスタのみを適用することができるので、既に製造技術が確立されたアモルファスシリコン半導体製造技術を用いて、動作特性が安定したトランジスタを簡易に製造することができる。ここで、発光駆動回路のトランジスタは、アモルファスシリコンTFT以外にポリシリコンTFTでもよい。つまり、nチャネルトランジスタのみでもpチャネルトランジスタのみでも、nチャネルトランジスタ及びpチャネルトランジスタをともに備えていてもよい。また、2つに限らず3つ以上のトランジスタで構成してもよい。また、発光駆動回路は、有機EL素子の輝度階調を制御する電圧階調制御を行ってもよく、発光駆動回路に所望の電流値の電流を流して有機EL素子の輝度階調を制御する電流階調制御であってもよい。