JP2007039367A - 細胞の分化を促進する組成物およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、糖尿病の治療等、糖代謝の改善に利用可能な、脂肪細胞の分化を促進する新たな技術を提供するものである。
【解決手段】 本発明者らは、ロイシンが脂肪細胞の分化を促進することを新たに見出した。さらにロイシンによる固体レベルでの糖代謝改善効果も確認しており、本発明は、糖尿病の治療、改善、または予防に非常に有効な技術を提供するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、医薬品として利用可能な脂肪細胞の分化を促進する組成物、インスリン抵抗性改善組成物、および糖尿病治療用組成物、並びにこれら組成物を含む飲食品等に関するものである。
糖尿病は、遺伝的要因と環境要因が複雑に絡む疾患である。糖尿病は、インスリンの絶対量不足に起因する1型糖尿病と、インスリンの作用不足に起因する2型糖尿病とに大別することができる。また、糖尿病の発生頻度としては、2型が圧倒的に多い。
近年、糖尿病、特に2型糖尿病の患者数は急速に増えつつある。糖尿病は、動脈硬化、神経障害、および感染症等の合併症を引き起こすことが知られており、健康上の問題は非常に大きい。また、糖尿病は、医療費の増大等の社会的な問題ともなりつつある。
2型糖尿病の原因であるインスリンの作用不足は、末梢組織、特に脂肪組織のインスリンへの反応の低下(インスリン抵抗性の悪化)によるところが大きいと考えられている。
これまでに、インスリン抵抗性の改善に有効であることが知られているのが、チアゾリジン誘導体等のチアゾリジン系薬物である。チアゾリジン系薬物は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ:Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ)のアゴニストであり、PPARγを介し、前駆脂肪細胞を脂肪細胞へ分化させる。脂肪細胞は、インスリン受容体、および糖輸送担体(GLUT4)が豊富に発現しているので、チアゾリジン系薬物によってインスリン抵抗性が改善するものと考えられている。
S. Nishitani et al., Am. J. Physiol Gastrointest Liver Physiol. 288: G1292-G1300, 2005 Luc J.C. Van Loon et al., Diabetes Care, 26: 625-630, 2003
しかしながら、チアゾリジン系薬物には、肝炎、浮腫、および食欲亢進による過剰肥満等の副作用が存在し、問題となっている。
本発明は、上記従来の問題に鑑みたものであり、その目的は、脂肪細胞の分化を促進する新たな技術を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ロイシンによって脂肪細胞の分化を促進することが可能であり、それゆえ、ロイシンを含む組成物がインスリン抵抗性改善および糖尿病治療に利用可能であることを独自に見出し、本発明を完成するに至った。本発明は上記新規な知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
(1)ロイシンを含み、細胞の脂肪細胞への分化を促進する組成物。
(2)脂肪細胞における中性脂肪の蓄積量の増加を伴うことなく、細胞の脂肪細胞への分化を促進する上記(1)に記載の組成物。
(3)上記(1)に記載の組成物を含むインスリン抵抗性改善用組成物。
(4)上記(1)に記載の組成物を含む糖尿病治療用組成物。
(5)ロイシンを含み、脂肪細胞への中性脂肪の蓄積を阻害する組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物を含む飲食品。
(7)ロイシンによって細胞の脂肪細胞への分化を促進する方法。
上述のように、本発明は、ロイシンを含み、細胞の脂肪細胞への分化を促進する組成物を含む。この組成物は、インスリン抵抗性改善用および糖尿病治療用医薬品として利用可能である。また、この組成物を含む飲食品も、糖尿病の治療等に利用することができる。
なお、本発明者らは、ロイシンに脂肪細胞への中性脂肪の蓄積を阻害する作用があることも新たに見出しており、それゆえ本発明には、ロイシンを含む脂肪細胞への中性脂肪の蓄積阻害用組成物も含まれる。
ロイシンは食品として摂取可能であるため、本発明は医療の分野のみならず、食品製造の分野でも利用可能であり、糖尿病の予防や改善に非常に好適に利用可能である。
本発明は、ロイシンを含み細胞から脂肪細胞への分化を促進する組成物、さらに、その代表的な利用方法であるインスリン抵抗性改善用組成物および糖尿病治療用組成物等の技術を提供するものである。以下に、より詳細に述べる。
<1.分化促進組成物>
本発明に係る脂肪細胞の分化を促進する組成物(以下、単に分化促進用組成物と称する場合がある)は、ロイシンを含み、かつ細胞の脂肪細胞への分化を促進する作用を示すものであればよく、ロイシンの含有量、製造方法、他に含まれる組成、その作用機構、対象となる細胞等は特に限定されるものではない。
なお、細胞の脂肪細胞への分化を促進するとは、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を促進することであることが好ましい。
本発明に係る分化促進用の組成物の利用方法は特に限定されるものではない。ただし、前駆脂肪細胞は、脂肪細胞への分化を促進することによって、糖および脂質を処理する能力が高くなる。しかも、インスリン等のホルモンに対する感受性も獲得する。従って、代表的なものとして、インスリン抵抗性改善用組成物、糖尿病治療用組成物等に好適に利用できる。なお、本発明に係る分化促進組成物、インスリン抵抗性改善用組成物、および糖尿病治療用組成物は、医薬品として、糖尿病の治療は勿論、予防、改善等に利用することができる。
また、本発明者らは、ロイシンが、脂肪細胞への中性脂肪(TG:triglyceride)の蓄積量を増加することなく、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を促進することが可能であることを見出した。
通常、細胞が脂肪細胞へと分化すると、その細胞中のTG蓄積量は増加する。しかしながら、本発明の分化促進用組成物は、脂肪細胞におけるTG蓄積量の増加を伴わない分化促進用組成物として利用することもできる。そのため、本発明の分化促進用組成物は、チアゾリジン系薬物等、脂肪細胞分化を促進する従来の薬物の副作用の1つである体重増加を引き起こすことなく、インスリン抵抗性を改善したり、糖代謝を改善したりすることもできる。なお、TGの蓄積量の増加を伴わない、とは、単に細胞中のTG蓄積量を増加させないことであってもよく、脂肪細胞中のTG蓄積量を減少させることであってもよい。
<2.TG蓄積阻害用組成物>
本発明には、ロイシンを含み脂肪細胞へのTGの蓄積を阻害する組成物(以下、TG蓄積阻害用組成物)も含まれる。ロイシンによって脂肪細胞中のTG蓄積量を減少するという作用を利用することによって、本発明のTG蓄積阻害用組成物は、抗高脂血症医薬等に利用可能である。
また、TG蓄積阻害用組成物は、従来の糖尿病治療薬の副作用である過剰肥満を予防または改善することも可能である。従って、本発明に係るTG蓄積阻害用組成物は、従来の糖尿病治療薬と併せて利用することもできる。
<3.ロイシン含有組成物の利用>
既に述べたように、上記<1>欄に記載の組成物、すなわち分化促進組成物、並びに当該分化促進組成物を含む、例えばインスリン抵抗性改善用組成物および糖尿病治療用組成物等の組成物、さらに上記<2>欄に記載のTG蓄積阻害用組成物(以下、これらロイシンを含む組成物をまとめてロイシン含有組成物と称する)は、医薬品として利用可能である。
上述のロイシン含有組成物を利用した医薬品の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口剤のほか、注射剤、坐剤、ペレット、点滴剤などの非経口剤が挙げられる。
また、本発明には、上述のロイシン含有組成物の少なくとも1つを含む飲食品も含まれる。なお、飲食品とは、食品および飲料品を指し、その形態、他に含まれる組成等は特に限定されない。さらに、飲食品には、食品および飲料の素材も含まれる。
本発明にかかる飲食品は、上記組成物を含有していればよいため、その種類は特に限定されるものではない。具体的には、パン、和洋菓子(冷菓等も含む)、惣菜食品、乳製品、シリアル食品、豆腐・油揚げ類、麺類、弁当類、調味料、小麦粉や食肉等の農産加工品、長期保存食品(缶詰、冷凍食品、レトルト食品等)、清涼飲料水、乳飲料、豆乳、ポタージュスープ等のスープ類等の一般食品を挙げることができるが特に限定されるものではない。これら一般食品への油脂組成物の添加方法は特に限定されるものではなく、一般食品の種類に応じて公知の適切な方法を採用することができる。
また、本発明にかかる食品には、健康食品や栄養食品等のように、一般食品でない特定用途に用いられる機能性食品を挙げることができる。具体的には、各種サプリメント等の栄養補助食品、特定保健用食品等を挙げることができる。サプリメント等の場合には、上述のロイシン含有組成物を適当な形状に加工するだけでそのまま用いることができるし、必要に応じて第3の成分を添加して用いることもできる。
上述の医薬品および飲食品の使用対象となる生物は特に限定されるものではなく、どのような生物であってもよいが、代表的にはヒトであり、それ以外には、愛玩動物、家畜動物、および実験動物等を挙げることができる。
ロイシンはアミノ酸であり、広く生物体内に含まれる物質であるため、本発明の組成物および飲食品は副作用も小さく、安全性も高いと考えられる。また、糖尿病を改善するには、運動療法と食事療法を行うことが一般的とされているが、現代人の生活パターンでは運動療法を続けることは非常に難しい。このため、日常摂取する食品を通じて糖尿病を予防・改善することが望まれる。上述の分化促進組成物、インスリン抵抗性改善用組成物、および糖尿病治療用組成物は、飲食品に添加することによって、日常的に摂取しやすい。なお、本発明に係る飲食品は、脂肪細胞分化促進、インスリン抵抗性改善、および糖尿病改善のうち少なくとも1つの効果を奏するものであることが好ましい。
<4.脂肪細胞への分化促進方法>
なお、本発明には、細胞の脂肪細胞への分化を促進する方法(以下、単に分化促進方法と称する場合がある)も含まれる。この方法は、ロイシンによって脂肪細胞の分化を促進する方法であれば、作用経路、用いる試薬等は特に限定されるものではない。分化促進方法は、上記<1>欄で述べた分化促進用組成物を用いることが好ましい。ロイシンの細胞への投与方法等も限定されるものではなく、目的に合わせて適宜変更すればよい。
なお、これまでに、ロイシンが糖代謝を改善させる可能性があるという報告があるが、筋肉においてロイシンがインスリン経路を介し、GLUT4のトランスロケーションを増加させること(非特許文献1)、または膵β細胞からのインスリン放出量を高めること(非特許文献2)によるものである。つまり、本発明は、ロイシンが脂肪細胞の分化を促進するという全く新規の知見に基づくものである。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に言及しない操作は、当業者が一般的に行う技術を利用して行った。また、各機器および試薬は、特に言及しない場合は、添付の取扱説明書通りに使用した。
(実施例1)脂肪細胞の分化促進
(A)分化処理(分化誘導処理および分化促進処理)
マウス由来の前駆脂肪細胞3T3−L1を用いて、以下の操作を行った。
細胞の培養温度は37℃とし、10%牛胎児血清(FBS)を含むDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)を通常培地として用いた。なお、DMEMにはロイシンが、0.8mM含まれている。以降、培地への添加物の濃度は全て終濃度で表記する。
通常培地で培養し、コンフルエントに達した細胞に、分化誘導処理を行った。すなわち、通常培地に0.25mMデキサメタゾン、0.5mMイソブチルメチルキサンチン、および10μg/mlインスリンを添加した分化誘導培地で2日間培養した。なお、分化誘導開始日を0日目とする。
分化誘導開始から2日目に分化促進培地に交換し分化促進処理を行った。さらに2日毎に2回培地を交換し、4日間(分化誘導開始から6日目まで)培養した。分化促進培地は、通常培地に5μg/mlインスリンを添加したものである。
なお、ロイシンが細胞の分化に与える影響を調べるために、分化誘導培地および分化促進培地にロイシン濃度が通常のDMEMより1mM増加するようにロイシンを添加して0〜6日目まで培養した細胞を、下記(B)の操作に用いた。また、対照としてロイシン非添加の培地で0〜6日目まで培養した細胞を用いて下記(B)の操作を行った。
(B)分化促進効果の評価
ロイシンによる分化促進効果を評価した。
分化誘導から6日目の細胞を回収し、Sepasol-RNAI(登録商標、ナカライテスク(株)製)によって細胞からmRNAを抽出した後、oligo dTプライマーを用い逆転写することで、cDNAサンプルを得た。このcDNAサンプル中の目的遺伝子(aP2またはレプチン)をLightCycler(商標、Roche社製)にて定量した。aP2およびレプチン(Leptin)は、脂肪細胞の分化マーカーとして一般的に利用される遺伝子である。
(ロイシンによる分化促進効果)
このようにして測定したaP2およびレプチンのmRNA量を、分化に関わらず定常的に転写される36B4のmRNA量に対する比率として、分化促進効果の評価を行った。結果を図1(a)、(b)に示す。なお、図中の+Leuはロイシン添加を、−Leuはロイシン非添加を表す。
図1(a)、(b)は、それぞれ、36B4のmRNA量に対するaP2、およびレプチンのmRNA量を示すグラフである。図1(a)、(b)に示すように、ロイシンを添加することによって、分化マーカー量が増加した。すなわち、ロイシンが前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を促進した。
(C)PPARγリガンドの影響
さらに、PPARγリガンドであるピオグリタゾン(pioglitazone)存在下でのロイシンの分化促進効果を調べた。ピオグリタゾンを、終濃度10μMとなるように分化誘導培地に加えて0〜2日目まで培養した以外は、上記(A)と同様に分化処理を行った。これらの細胞について上記(B)と同様に分化マーカー量を測定し、結果を図1(c)に示す。
図1(c)に示すように、ピオグリタゾン存在下でも、ロイシンを添加することによって分化が促進された。
(D)インスリンの影響
さらに、インスリンの非存在下でのロイシンの分化促進効果について調べた。分化誘導培地にインスリンを添加しない以外は、上記(A)と同様に分化処理を行った。これらの細胞について、上記(B)と同様に分化マーカー量を測定し、結果を図1(d)に示す。
図1(d)に示すように、インスリン非存在下でも、ロイシンを添加することによって分化が促進された。
すなわち、図1(a)〜(d)に示すように、インスリンまたはピオグリタゾンの存在・非存在に関わらず、ロイシンによって前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化が促進された。
(E)ロイシンが影響を及ぼす分化ステージ
次に、ロイシンが影響を及ぼす分化ステージを明らかにするため、上記(A)欄で述べた分化処理で、0〜2、2〜4、4〜6、0〜6日目にロイシンを添加したときの分化マーカーに与える影響を検討した。
なお、図1(c)に示すように、ピオグリタゾン存在下でロイシンの分化促進効果が強く現れていたため、今回も分化誘導培地にピオグリタゾンを添加した。分化マーカーの測定結果を図2に示す。なお、図2中の+pioはピオグリタゾン添加を、−pioはピオグリタゾン非添加を表す。図2に示すように、ロイシンは、特に分化初期および後期に作用すると考えられた。
(F)ロイシンの分化促進作用におけるP13KおよびPKCの関与
全長PPARγを用いたルシフェラーゼアッセイを行ったところ、ロイシンはPPARγの転写活性能に影響を与えなかった(データ不図示)。このことからロイシンはPPARγに依らない経路を介し、細胞の分化に影響を与えるものと考えられた。
ロイシンの作用経路として、本発明者らは、図3に示すインスリン経路に注目した。本実施例ではインスリンによるインスリン経路のシグナル伝達を防ぐため、上記(D)と同じく、インスリン非添加培地にて分化処理を行った。なお、上記(D)とは異なり、0〜6日目まで、分化誘導培地および分化促進培地に、LY294002および/またはGF109203Xを加えるか、これら阻害剤を加えない条件下で分化処理を行った。
なお、図3に示すように、LY294002はP13Kの、GF109203XはPKCの特異的阻害剤である。
図4に示すように、阻害剤非存在下ではaP2のmRNA量が増加した(上記(D)と同様)。また、LY294002を添加しても、ロイシンによる分化促進効果がみられた。しかし、GF109203X存在下では、ロイシンの分化促進効果は消失した。以上のことから、ロイシンは、P13Kとは異なる経路によってPKCを活性化し、3T3−L1の分化に影響を与えると考えられる。
(実施例2)
(G)細胞中のTG量の測定
通常、脂肪細胞の分化が進むと、脂肪細胞中のTG蓄積量が増加することが知られている。そこで、ロイシンによって分化が促進された細胞中のTG蓄積量を測定した。
細胞は、上記(A)または(D)の分化処理を行った細胞を用いた。1%TritonX100により細胞を溶解してTG試料を得た。TG試料16μlに対してTG E test(和光純薬(株)社製)を250μl加えることで測定した。通常は試料2μlに対しTG E testを300μl加えて測定するが、TG試料のTG濃度が薄いこと、および容量の問題のため、本実施例においては修正法で測定を行った。
TG蓄積量の測定結果を図5に示す。図5(a)には上記(D)の分化処理を行った細胞、すなわちインスリン非存在下で分化処理を行った細胞のTG含有量を示し、(b)には、上記(A)の分化処理を行った細胞、すなわちインスリン存在下で分化処理を行った細胞のTG含有量を示す。
図5(a)、(b)に示すように、インスリン存在、非存在に関わらず、ロイシンによってTG蓄積量は増加しなかった。特にインスリン非存在下では、ロイシンによってTG蓄積量が減少する傾向が顕著に見られた。
以上より、ロイシンは脂肪細胞の分化に伴い発現する遺伝子のmRNA量を増加させ、一方でTGの蓄積を増加させないことが分かった。つまり、チアゾリシン系薬物の副作用の1つである体重増加を引き起こすことなく、糖代謝を改善することができると考えられる。
(実施例3)ロイシンによる糖尿病モデルマウスの糖代謝改善
ロイシンが糖尿病モデルマウスの糖代謝に与える影響を検討した。
糖尿病モデルマウスであるKKAyマウス(6週齢、メス)を1週間の予備飼育の後、平均体重が等しくなるように群分けを行った(6群、各n=3)。低脂肪食(脂肪含量10%)、高脂肪食(脂肪含量60%)、高脂肪食+チアゾリジン誘導体の各食(エネルギー比20%のプロテインを各食とも含む)に、ロイシンまたはカゼインを2%となるように添加し、摂取させた。
摂取開始前(0日)、開始20日目(20日)に4時間絶食の後血糖値を測定し、糖尿病に罹っていることを確認した。摂取開始21日目(10週齢)に経口グルコース付加試験(OGTT)を行い、35日目(12週齢)に屠殺、解剖を行った。
4時間絶食における血糖値はいずれの食餌においてもロイシン摂取群がカゼイン群に対し低い値を示した。この傾向は低脂肪食摂取群において最も顕著に現れた。低脂肪食群の結果のみを表1、図6(a)に示す。
Figure 2007039367
また、16時間絶食後、20%グルコース溶液を100μl/10g体重(20mg glucose/10g体重)となるようにマウスに経口投与したところ、いずれの食餌群においてもロイシン摂取群がカゼイン群に対し速やかに血糖値を降下させた。この傾向もまた低脂肪食摂取群において最も顕著に現れた。低脂肪食群の結果のみを図6(b)に示す。なお図6(b)の横軸はグルコース経口投与後の時間(分)を表す。
このように、ロイシンは長期投与の後16時間絶食した時点で、糖代謝が改善している。このとき、絶食によって血中のロイシン濃度は基底値にまで下がっていると考えられる(Can J Physiol Pharmacol. 1999 Nov; 77 (11):827-34)。すなわち、ロイシンは、糖尿病の症状を一時的に改善するだけでなく、糖尿病自体を治療することが可能であると考えられる。このようにロイシンを長期投与し、血中ロイシン濃度が低い状態で糖代謝が改善されることは本発明者らが始めて見出した知見である。
なお、本発明の主旨は、脂肪細胞への分化を促進することにあるのであって、ロイシンの作用機構については限定されるものではない。すなわち、上述の実施例で述べたロイシンの作用機構は、本発明者等が見出したロイシンの効果を説明するために示す仮説であり、本発明はこの作用経路に何ら限定されるものではない。従って、上述した経路以外の作用経路であっても、ロイシンが脂肪細胞の分化を促進するという本発明の主旨に含まれるものは、組成物および方法に限らず、本発明に含まれることはいうまでもない。
本発明に係るロイシンを含み、細胞の脂肪細胞への分化を促進する組成物は、糖代謝を改善することができ、インスリン抵抗性改善用、および糖尿病治療用の医薬品、または飲食品に利用することができる。
本発明の実施例におけるロイシンの脂肪細胞分化促進効果を示グラフであり、分化マーカーであるmRNA量を示す。(a)および(b)はインスリン存在下におけるaP2およびレプチン(Leptin)のmRNA量、(c)はピオグリタゾン(pioglitazone)存在下、(d)はインスリン非存在下におけるaP2のmRNA量を示す。 本発明の実施例におけるロイシンの分化ステージに与える影響を示すグラフである。 インスリンのシグナル伝達経路を示す図面である。 本発明の実施例におけるロイシンの脂肪細胞分化促進効果に対するインスリン経路阻害剤の影響を示す図面である。 本発明の実施例における脂肪細胞中のTG蓄積量を示すグラフであり、(a)はインスリン非存在下、(b)はインスリン存在下でそれぞれ分化処理を行った細胞のTG蓄積量を示す。 本発明の実施例において、ロイシンによるマウスの糖代謝改善効果を示すグラフであり、(a)はロイシンまたはカゼイン摂取前(0日)後(20日)における4時間絶食後の血糖値を、(b)はロイシンまたはカゼイン摂取21日目におけるOGTT試験の結果を表す。

Claims (7)

  1. ロイシンを含み、細胞の脂肪細胞への分化を促進する組成物。
  2. 脂肪細胞における中性脂肪の蓄積量の増加を伴うことなく、細胞の脂肪細胞への分化を促進する請求項1に記載の組成物。
  3. 請求項1に記載の組成物を含むインスリン抵抗性改善用組成物。
  4. 請求項1に記載の組成物を含む糖尿病治療用組成物。
  5. ロイシンを含み、脂肪細胞への中性脂肪の蓄積を阻害する組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を含む飲食品。
  7. ロイシンによって細胞の脂肪細胞への分化を促進する方法。
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