以下、添付図面を参照して、本発明の器具の種々の実施形態を説明する。
導電性シーリング表面に隣接して熱伝導性/非導電性材料を設けることにより、外科医は、一貫した高クオリティのシールを容易に形成できかつ隣接組織を横切るまたは隣接組織への熱拡散を有効に低減できる。本明細書では、用語「熱拡散(thermal spread)」は、広く、導電性すなわち電気的なアクティブ表面の周囲に沿って隣接組織に放散する熱伝達(熱伝導、熱対流または電流放散)をいう。これは、隣接組織への「二次的損傷」と名付けることもでき、本件出願人の所有する係属中の上記特許文献18(この全開示は本願に援用する)において更に詳細に説明されている。
導電性表面の周囲を包囲する熱伝導性材料の形状は、電気外科器具の付勢中に熱を有効に吸収(または熱を放散)するか、対向する導電性表面間の領域への熱移動を制限する形状にすることを考えることができる。換言すれば、材料は、いわゆる「ヒートシンク」のように作用する。前述のように、熱伝導性材料はまた非導電性であり、このことはまた、2つの対向表面間の電流濃度を制限する。
重要なことは、シーリング部位に対して垂直な点での組織の「漂白」を防止すべく器具の外面を誘電的にコーティングすることとは異なることに留意することである。これらのコーティングは、隣接組織(組織シーリング平面に沿う組織)の二次的損傷または隣接組織への熱拡散を低減すべく設計したものでも、これを意図したものでもない。
導電性表面に隣接して熱伝導性材料を設けることにより熱伝導性経路が変更され、これにより、隣接組織構造への熱拡散/二次的損傷に影響を与えると考えられる。また、熱伝導性/非導電性材料も、電気的に対向する2つの極(すなわち電極)を互いに隔絶し、これにより、組織または組織流体が、隣接組織への電流移動のための意図しないブリッジすなわち経路を形成する可能性を低減させる。熱伝導性材料および導電性シーリング表面は、以下により詳細に説明するように、電流が、対向する導電性表面間の意図したシーリング部位に集中する寸法に定めることができる。
ペルチェ効果に基いた熱電冷却器(thermoelectric cooler:TEC)を介してソリッドステート冷却により双極鉗子の電気外科ジョー部材の付加冷却を行うことにより、隣接組織構造への熱拡散/二次的損傷が更に低減されることが考えられる。また、付加冷却は、ジョー部材の内部を通る冷却ダクトを介して電気外科ジョー部材に行うことも考えられる。
ここで図1Aおよび図1Bを参照すると、2つの双極鉗子10、10′が示されている。第一鉗子10は内視鏡手術に使用するためのものであり、第二鉗子10′は切開手術に使用するためのものである。本発明の目的から、本発明による電極シーリング組立体を支持するのに、内視鏡器具または切開手術器具を使用することができる。種々の電気的機械的連結および考察を、各特定形式の器具に適用できることは明白であるが、電極シーリング組立体およびその作動特性に関する新規な特徴は、一般に、図1Aおよび図1Bの切開手術用設計および内視鏡用設計の両方に一貫して該当するものである。鉗子10、10′は例示であり、本発明の電極シーリング組立体を支持する他の電気外科鉗子を考えることもできる。添付図面および以下の説明において、用語「近位端」とは、伝統的に使用されているように、使用者に近い方の鉗子10、10′の端部をいい、これに対し、用語「遠位端」とは、使用者から遠い側の端部をいうものとする。
図1Aは、電極シーリング組立体100を支持するように構成された内視鏡用血管シーリング器具10の一例を示すものである。より詳しくは、鉗子10は、一般に、ハウジング20と、ハンドル組立体30と、回転組立体80と、トリガ組立体70と、エンド・エフェクタ組立体100とを有し、これらは相互に協働して、組織を掴み、シールし、かつ保証される場合には分割する。鉗子10はシャフト12を有し、該シャフト12は、エンド・エフェクタ組立体100と機械的に係合する寸法を有する遠位端14と、回転組立体80に近接してハウジング20と機械的に係合する近位端16とを有している。
鉗子10はまた、プラグ300を有し、該プラグ300を、電気ケーブル310を介して電気外科エネルギ源、例えば電気外科ジェネレータ(図示せず)に連結する。ハンドル組立体30は、固定ハンドル50と、可動ハンドル40とを有している。可動ハンドル40は固定ハンドル50に対して移動し、エンド・エフェクタ組立体100を付勢して、使用者が組織400(図6参照)を把持しかつ操作できるようにする。より詳しくは、エンド・エフェクタ組立体100は1対の対向ジョー部材110、120を有し、該ジョー部材110、120は、ハンドル40の移動に応答して、両ジョー部材110、120が互いに間隔を隔てた関係に配置される開位置から、両ジョー部材110、120が協働してこれらの間に組織を把持するクランピング位置すなわち閉位置へと移動する。
ハウジング20は駆動組立体(図示せず)を包囲している。該駆動組立体は、可動ハンドル40と協働して、両ジョー部材110、120の運動を、開位置からクランピング位置すなわち閉位置へと伝達する。ハンドル組立体30は、広くは、両ジョー部材110、120の間に組織をシールするときにユニークな機械的長所が得られる4バー機械的リンク機構として特徴付けることができる。例えば、ひとたび、シーリング部位の所望位置が決定されかつ両ジョー部材110、120が適正に位置決めされたならば、ハンドル40を完全に圧縮して、ジョー部材110、120を組織に対して閉位置にロックすることができる。鉗子10の内部作動部品の協働関係に関する詳細は、本件出願人が所有する上記特許文献19および20に開示されている(これらの特許文献19、20は、その全体を本願に援用する)。両ジョー部材110、120が組織の回りで完全に圧縮されたときは、鉗子10は、電気外科エネルギの選択的付与の準備が整った状態にある。
実験結果は、それぞれジョー部材110、120の導電性シーリング表面112、122により組織に加えられる圧力の大きさは、適正な外科的シールを確保する上で重要であることを示唆している。種々の組織のシーリングにとって、約3〜16kg/cm2、好ましくは約6〜13kg/cm2が有効であることが証明されている。最適シーリングにとって最も好ましい圧力範囲は、約4.5〜8.5kg/cm2である。
図1Bの例には、伝統的な切開手術に関連して使用する切開手術用鉗子10′が示されている。切開手術用鉗子10′は1対の細長いシャフト部分12a′、12b′を有し、各シャフト部分は、それぞれ、近位端16a′、16b′および遠位端14a′、14b′を備えている。鉗子10′は、それぞれシャフト12a′、12b′の遠位端14a′、14b′に取付けられるジョー組立体100′を有している。ジョー組立体100′は上方ジョー部材110′および下方ジョー部材120′を有し、両ジョー部材は、これらの間に組織を把持すべく相対移動できる。
各シャフト12a′、12b′の近位端16a′、16b′にはハンドル17a′、17b′が設けられ、各ハンドルには、使用者の指を受入れるための指孔18a′、18b′が形成されている。理解されようが、指孔18a′、18b′はシャフト12a′、12b′の相対移動を容易にし、両ジョー部材110′、120′を、組織を操作すべく両ジョー部材が互いに間隔を隔てて配置される開位置から、両ジョー部材110′、120′の間に組織を把持すべく協働するクランピング位置すなわち閉位置へと枢動させる。
枢動時に、両ジョー部材110′、120′を互いに種々の位置に選択的にロックするためのラチェット30′が設けられている。好ましくは、協働するラチェット界面30′に関連する各位置が、シャフト部材12a′、12b′内に特定のすなわち一定の歪みエネルギを貯え、この歪みエネルギが、特定の閉じ力を両ジョー部材110′、120′に伝達する。ラチェット30′には、使用者が、両ジョー部材110′、120′間に望まれる閉じ力の大きさを容易かつ迅速に確認しかつ制御することを可能にする目盛または他の視覚マーキングを付すことができる。一方のシャフト(例えばシャフト12b′)は、鉗子10′を、電気外科ケーブル310およびプラグ300を介してRFエネルギ源(図示せず)に連結するように設計された近位側シャフトコネクタ/フランジ(図示せず)を有している。鉗子10′の内部作動電気コネクタおよび種々の構成部品は、本件出願人の所有する上記特許文献21(該特許文献21の全体は本願に援用する)に開示されている。
前述のように、2つの機械的ファクタは、得られるシール組織の厚さおよびシールの有効性、すなわちシーリング手術中に対向ジョー部材110′、120′間に加えられる圧力および両ジョー部材間のギャップの決定において重要な役割を演じる。正しい力を加えることは、他の理由、すなわち組織のインピーダンスを、組織を通って充分な電流が流れることを可能にする充分に小さい値に低下させること、および良いシールにとって必要なシール厚さを形成することに寄与することに加え、組織の加熱中の膨脹力に打勝つことからも重要である。
本発明の目的から、電極組立体100、100′は同じ全体的形状を有しかつ隣接組織への熱拡散を低減させるように設計される。しかしながら、電極シーリング組立体100(または100′)を、切開手術用器具または内視鏡用器具用の特定支持構造に適合させるには、各電極シーリング組立体100(または100′)に或る変更を施す必要がある。組織に加えられるRFエネルギの強度、周波数および付与時間を制御することにより、使用者は、特定目的の要求に応じて組織を選択的にシールすることができる。理解されようが、組織の種類および各種類に関連する物理的特徴は、異なる電気的シーリングパラメータを必要とする。
図2Aおよび図2Bは、本発明による電極シーリング組立体(100または100′)の下方ジョー120を示す拡大図である。理解されようが、下記と同様な構成部品を有する第二ジョー110が、ジョー部材120に対向して配置される。ここには下方ジョー部材120の部品のみを説明するが、上方ジョー部材110も同一または同様な部品を有し、これらの部品は、双極電気外科エネルギが、シールを形成すべく両ジョー部材110、120間に保持される組織を通って流れることができるように、同様な目的を達成すべく設計されている。
より詳しくは、下方ジョー部材120は絶縁された外側ハウジング114を有し、該外側ハウジング114は、熱伝導性および非導電性の材料128および導電性シーリング表面すなわちシーリングプレート122を支持している。図2Bに最も良く示すように、絶縁ハウジング114は支持表面115を有し、該支持表面115は電極支持ステップ127を収容する。支持ステップ127は一連の電気機械的界面125a、125b、125cを有し、該界面は、シーリングプレート122から垂下している1組の対応界面123a、123b、123cと対になって係合する。支持ステップ127の外周部も、以下に詳述するように、熱伝導性材料128と対になって係合する寸法を有するのが好ましい。
拡大図である電気機械的界面(例えば電気機械的界面125a)は、ジェネレータ(図示せず)まで延びているワイヤ160を介して電源に接続される。これは一例として示すものであり、当業界で知られた他の電気的構成にすることができる。シーリングプレート122に電流を供給するのに、例えば、導電性チューブまたはプレートをジョー部材110、120内に使用できる。
支持表面115はまた、絶縁ハウジング114を電極シーリング組立体100に固定する一連のノッチ137、121a、121bおよびねじ孔138を有している。例えば図2Aに最も良く示すように、支持表面115は一対のフランジ139a、139bを有する。該フランジ139a、139bは支持表面115の遠位端から横方向に突出しかつ各々がそれぞれねじ135a、135bのヘッドを受入れる寸法を有している。次に、ねじ135a、135bは、支持表面を電極シーリング組立体100に固定する。近位側ノッチ137は他のねじ(図示せず)と係合し、支持表面115の端部を電極シーリング組立体100上で位置決めする。他の孔(例えば孔138)も、製造工程中に、支持表面115を電極シーリング組立体100上に整合させおよび/または固定するのに使用できる。
図2Aに最も良く示すように、熱伝導性材料128は横方向に対向する2つのセグメント128a、128bから作ることができ、これらのセグメントは、組み合わされてシーリングプレート122および支持ステップ127を包囲する。一連の止めねじまたはペグ142が、組立てられたシーリングプレート122および支持ステップ127の回りで2つの熱伝導性セグメント128a、128bを固定する。前述のように、熱伝導性材料128は、電気外科付勢中に熱を有効に吸収しまたは放熱して、全体として、対向するシーリングプレート122間の領域への熱移動を制限する。換言すれば、熱伝導性材料128は「ヒートシンク」のように作用して、周囲組織に与える熱的損傷を制限する。
前述のように、熱伝導性材料128は非導電性材料でもあり、このため、2つの対向シーリングプレート122間の電流濃度も制限する。熱伝導性材料128は、高い熱伝導値すなわち「k」値および最小導電性を有する材料(例えばアルマイト)から作ることができる。或いは、圧縮中に組織に機械的損傷を与えないように、熱伝導性材料128は、半弾性材料またはエラストマー材料から作るか、これらと組合せて作ることもできる。機械的損傷は、熱伝導性材料128の全体的組織接触領域を最小化することによっても減少することができる(例えば図3参照)。或いは、圧縮力を受けたときの組織の機械的損傷を低下させるため、限界組織圧力限度以下の圧力を加えるように設計されたばね付勢システム(図示せず)を使用することができる。
シーリングプレート122に隣接する組織および対向する熱伝導性材料128の間の組織の過大圧縮を避けるため、他の圧縮低下システム、例えばゴム状インサート、発泡体等を考えることもできる。周囲組織に与える熱的損傷を最小にするのに使用できる熱伝導性および非導電性材料の他の例として、好ましい等温プロファイルに沿って熱を周囲環境に放散して、最高温度を低くしかつホットスポットの形成を減少する熱伝導性プラスチック材料があるが、これに限定するものではない。このような材料の例として、Cool Polymers, Inc.(Rhode Island)からCoolPoly(R)の商標で一般に販売されているものおよびALO2のような複合材料がある。
前述のように、熱伝導性材料128は、シーリングプレート122および支持ステップ127の周囲で組み合わされる2つのセグメント128a、128bからなる。より詳しくは、各セグメント128a、128bは組織接触表面143a、143bを有する。該表面143a、143bは、それぞれ、これらの内周縁部に沿う凹部129a、129bを備え、ひとたび両セグメント128a、128bが組立てられるとスロット141が形成され、該スロット141内にシーリングプレート122が座合する。シーリングプレート122は、一般に、熱伝導性セグメント128a、128bの組織接触表面143a、143bとほぼ同一面またはこれらの表面より低くなるようにして座合される。また、凹部129a、129bに近接する熱伝導性材料128の厚さ(すなわち、絶縁ハウジング114に対する高さ)は、ステップ127の高さプラスシーリングプレート122の厚さにほぼ等しく、このため、ひとたび組立てられると、シーリングプレート122と熱伝導性材料128とは、シーリング平面と実質的に同一面内にあるか、シーリング平面内に低く位置する。
熱伝導性セグメント128a、128bには、これらからそれぞれ横方向に延びている一連のフィン状延長部145a、145b、145cおよび146a、146b、146cを設けることができる。フィン状延長部145a、145b、145cおよび146a、146b、146cは、付勢中または付勢後に、シーリングプレート122から出る熱を更に吸収または放散させる。フィン145a、145b、145cおよび146a、146b、146cはまた、製造および組立てを容易にする形状および寸法にすることができる。すなわち、フィン145a、145b、145cおよび146a、146b、146cには、スロット132を含める形状にすることができる。これらのスロット132は、絶縁ハウジング114をこの下に横たわる電極シーリング組立体100に取付ける1つ以上のねじ135a、135bを通すことができる。
前述のように、シーリングプレート122は、これから外方に突出した一連の電気機械的界面123a、123b、123cを介して、下に横たわる絶縁ハウジング114に電気機械的に連結され、対応する一連の電気機械的界面125a、125b、125cと組み合わされる。電気機械的界面要素123a、123b、123cおよび125a、125b、125cは、絶縁ハウジング114からシーリングプレート122への電気的連続性を維持することは理解されよう。前述のように、ひとたび組立てられかつ絶縁ハウジング114と界面接続されたならば、熱伝導性材料128は、絶縁ハウジング114上でシーリングプレート122を包囲しかつ更に固定する。
導電性シーリングプレート122(および/またはジョー部材110の対向シーリングプレート112(図1A参照))の組織接触表面すなわち内向き表面には、シーリング手術中に組織の把持および操作を容易にしかつ対向ジョー部材110、120(または110′、120′)間にギャップ距離を形成させるための一連のストップ部材150a、150b、150cを設けることができる。それぞれのジョー部材110、120の導電性プレート112、122間に所望の間隔(すなわちギャップ距離)を達成しかつ組織を適正にシールするのに要する力を加えるためには、両ジョー部材110、120の相対運動を制限すべく、少なくとも一方のジョー部材110または120に少なくとも1つのストップ部材(例えば150a、150b、150c)を設けることができる。ストップ部材(例えば150a)は、シーリングプレートすなわち組織接触表面122から、ストップ部材150aの特定材料特性(例えば、圧縮強度、熱膨脹等)に従って予め定められた距離だけ延びており、シーリング中に一貫した正確なギャップ距離が得られるように構成される。シーリング中の両対向シーリング表面112、122間のギャップ距離は、約0.001〜0.006インチ、好ましくは約0.002〜0.003インチの範囲内にする。腸、肺、腸管等の大きい組織構造の場合には、約0.001〜0.012インチ、好ましくは約0.005〜0.007インチの範囲内にする。
ストップ部材150a〜150cは、一般に、例えばパリレン、ナイロンおよび/またはセラミック等の絶縁材料から作られる。ストップ部材150a〜150cは、ジョー部材110、120の一方または両方に設けることができ、かつ例えば長方体、円筒体、***体等の種々の形状およびサイズにすることができる。
非導電性ストップ部材150a〜150cは、シーリングプレート112、122上に成形(例えばオーバーモールディング、射出成形等)、スタンピング加工、蒸着(例えばプラズマ蒸着)および/またはシーリングプレート112、122の表面上への溶射(例えばセラミック材料の溶射)により形成できる。本件出願人の所有する上記特許文献22(該特許文献22の全体を本願に援用する)には、ストップ部材150a〜150cについての多くの異なる形状が詳細に開示されている。
また、熱伝導性材料128は、該熱伝導性材料自体が付勢中にシーリングプレート112、122間にギャップ距離を維持するストップ部材として作用するように、ステップ127の高さおよびシーリングプレート112、122の厚さより大きい寸法にすることができる。
また、圧力を一定作動範囲内(すなわち、約3〜16kg/cm2)に維持し、かつギャップ距離を特定範囲内(すなわち、大きい組織構造については約0.001〜0.012インチ)に維持するためには、電力は約1〜350W、約1〜400Vrmおよび約0〜5.5A(アンペア)内に維持すべきである。
組織の治癒を促進するには、シーリングプレート122の各側面での熱拡散は、理想的には約2mm以下、好ましくは約0.5mm以下に維持される。しかしながら、大きい組織構造または血管が多く分布した組織構造をシールするときは、約5mmまで許容できる。シーリング部位または融合組織領域を包囲しまたはこれらに隣接する組織の成育能力を維持して、治癒を促進することを考えることができる。
図3および図4は、付勢中に隣接組織への熱拡散を低減させるのに使用できる、電極シーリング組立体100の下方ジョー部材220、320の他の実施形態を示すものである。より詳しくは、図3は、図2Aおよび図2Bと同じ絶縁ハウジング114およびシーリングプレート122を有する下方ジョー部材220を示すものである。熱伝導性材料228は、前述のように、熱伝導性材料128の全体的組織接触表面を減少させるべく、小さい幅をもつように改変したものである。熱伝導性材料128の全体的組織接触領域を減少させることにより、機械的損傷は低減されるか、少なくとも限界組織圧力限度以下に維持されるであろう。図2Aおよび図2Bに関連して上述したのと同じ態様で、熱伝導性材料228は、セグメント228a、228bの孔240、241内に螺合される一連のねじ242によりシーリングプレート122およびステップ127の回りで固定される。理解されようが、熱伝導性材料228の全体的所要幅は、シーリングすべき組織の種類および厚さに基いて定められる。ステップ127には、組立て時にシーリングプレート122が座合しまたは整合するレリーフ部分126を設けることができる。
図4には、隣接組織への熱拡散を低減させるように設計された、電極シーリング組立体100(または100′)の下方ジョー部材320の更に別の可能な構成が示されている。この実施形態では、吸熱材料すなわちヒートシンクとして熱伝導性材料は使用されず、その代わりにアクティブ冷却システム340がシーリングプレート122を包囲して、周囲組織への熱消散を低減させる。より詳しくは、絶縁ハウジング314は、該絶縁ハウジングを通して配置された一連のダクトまたはチューブ355、355a、355bを有している。クーラントダクト355a、355bは、クーラント370を絶縁ハウジング314に搬送して、熱を、シーリングプレート122に隣接する周囲組織から消散させ、付勢中に組織をアクティブに冷却することにより熱拡散を低減させる。
クーラントダクト355、355a、355bは、絶縁ハウジング314の上表面330に設けられた一連のノズルまたはポート350a、350bのうちの少なくとも1つを通してアクティブ冷却液(好ましくは、非導電性冷却液)を供給する。ノズルまたはポート350a、350bは、シーリングプレート122に直接隣接して配置され、かつシーリングプレートの両側で長手方向に延びている。すなわち、ポート350aはシーリングプレート122の一方の側に沿って延び、ポート350bはシーリングプレート122の反対側に沿って延びている。ノズルまたはポート350a、350bは、クーラント370を、電極シーリング組立体100(100′)に近接した環境に放出するように構成されている。
理解されようが、シーリングシステム340は、クーラント(液体またはガス(例えば空気))をシーリングプレート122に隣接する組織領域に供給して、付勢中に組織をアクティブに冷却し、これにより熱拡散が低減される。この特定実施形態に関連して図2A、図2Bおよび図3の実施形態と比較して説明すると、絶縁ハウジング314は、機械的連結または例えばスタンプモールディングまたは射出成形等の製造方法によりシーリングプレート122を包囲する。
図5Aおよび図5Bは、従来技術の血管シーリング器具を用いて得られる組織シール420(図5A)と、隣接組織400への熱拡散を低減させるように設計された本発明による血管シーリング器具を用いて得られる組織シール420″(図5B)とを並べて比較する図面である。図5Aを参照してより詳しく説明すると、組織シール420に近い隣接組織400には幾分目立つ熱的損傷430が存在する。図5Bは、本発明の種々の電極組立体100(または100′)の1つを用いて得られたシール420″を示すものである。より均一で幅狭のシール420′は、隣接組織400への熱的損傷430′が大幅に低減されていることは明白である。隣接組織400への熱的損傷を低減させることにより、特に、敏感な組織領域(例えば、小腸および大腸)の治療を向上できる。前述のように、熱拡散は、敏感な大きい組織では約2mm、敏感でない組織および血管では約5mmに維持するのが好ましい。
図6は、隣接組織への熱拡散を低減させるように設計された他の電極シーリング組立体500を示す。より詳しくは、電極シーリング組立体500はそれぞれ上下のジョー510、520を有し、各ジョーは、それぞれの組織シーリングプレート512、522上(またはこれらの中)に配置された熱伝導性絶縁材料(例えばいわゆる「クールポリマー」材料)530a、530bを有している。クールポリマー530a、530bは、それぞれ各シーリングプレート512、522内の中央に配置できる。クールポリマー530a、530bは、付勢中に隣接組織400への熱拡散を制限するヒートシンク(すなわち吸熱材)として機能する。クールポリマーの例として、Cool Polymers,Inc.(Rhode Island)からCoolPoly(R)の商標で一般的に販売されている、より等温プロファイルで、周囲環境に熱を消散させる熱伝導性プラスチック材料がある。或いは、組織効果を低下させるため、或る既知のセラミック材料を使用することもできる。
図7は、隣接組織400への熱拡散を低減させるように設計された更に別の電極シーリング組立体600を示す。より詳しくは、電極シーリング組立体600は、上下のジョー部材610、620を有し、該ジョー部材は、これらの間に組織400を係合するように設計されている。各ジョー部材610、620は、それぞれ凹部630、640を有し、これらの凹部は、組織400が圧縮されたときに、組織400の膨脹部分450a、450bがそれぞれのジョー部材610、620内に膨脹できる寸法を有している。圧縮度が小さい組織膨脹部分450a、450b内の水分が本質的にヒートシンクとして機能し、付勢中に熱を吸収しかつ周囲組織への熱拡散を低減すると考えられる。
ジョー部材110、120は、特殊な解剖学的構造に到達できかつ或る手術のためのより一貫したシールを促進できるように、湾曲させることも考えられる。例えば、背静脈複合体および側茎(lateral pedicles)等の前立腺切除術および膀胱切除術に関する特殊な解剖学的構造にアクセスしかつシーリングするには、ジョー部材110、120の寸法を約45〜70°の角度にすることも考えられる。種々の外科手術を行うには、他の角度が好ましいこともある。
例えば図8Aおよび図8Bに最も良く示すように、腸組織の端−端吻合(end-to-end anastomosis)には、湾曲ジョー部材(図示せず)を使用するのが好ましい。図8Aは、真直な対をなすのジョー部材を用いて2つの腸セグメント400a、400bの端−端吻合することにより得られるシール420を示すものである。図8Bは、湾曲した対をなすジョー部材を用いて2つの腸セグメント400a′、400b′の端−端吻合することにより得られるシール420′を示すものである。理解されようが、湾曲対をなすジョー部材から得られるシール420′は、2つの組織セグメント400a′、400b′の全体的輪郭に一層ぴったり一致する傾向を有し、これは、吻合部位の周囲での組織治癒を促進すると考えられる。
また、次の2つの理由、すなわち1)テーパは、一定の組織厚に対して一定の圧力を平行に加えることができること、2)各ジョー部材110、120の厚い近位側部分は組織400の反力による曲げに耐えることから、両ジョー部材110、120はテーパ状にすることも考えられる。
上記鉗子10(10′)は、事前手術状態またはシーリング中の物理的または電気的条件の変化に基いてシーリングを最適化する閉ループRF制御システムと組合せて使用することも考えられる。本件出願人が所有する上記特許文献23および24には、閉ループ制御システムの一例が開示されている(これらの両特許文献の全体は、本願に援用する)。概略的には、閉ループ制御システムは、使用者が、ジェネレータに作動的に連結される手術器具の種類、組織の種類および/または所望の手術効果等の少なくとも1つの事前手術パラメータを選択することを可能にするユーザインターフェースを有している。また、手術部位に近接する少なくとも1つの電気的および物理的特性を連続的に検出しかつこれらに関する少なくとも1つの信号を発生するセンサモジュールも含まれる。
閉ループ制御システムにはまた、外科的パラメータおよびセンサモジュールからの各信号を連続的に受けかつモニタリングし、マイクロプロセッサ、コンピュータアルゴリズムおよび/またはルックアップテーブルを用いて、所望の外科的効果に従って各信号を処理する制御モジュールを有している。制御モジュールは、センサモジュール(単一または複数)からの各信号に関する少なくとも1つの対応制御信号を発生し、かつジェネレータを制御すべく電気外科ジェネレータに制御信号をリレーする。閉ループシステムは、フィードバック回路または外科的シールを最適化する手術方法の一部に使用できる。この方法は、手術部位に一連の電気的パルスを加える段階と、手術部位に近接する電気的および物理的特性を連続的に検出する段階と、連続的に検出した特性に従って一連の個々のパルスのパルスパラメータを変化させる段階とを有している。
また、ジョー部材110、120のシーリング表面122は、非付着性で作るか、非付着性材料をコーティングして、組織への付着を低減させることができる。或いは、ジョー部材110、120は、組織への付着を低減させるため、例えばビードブラスト、スタンピング等により表面処理すなわち粗面化することができる。これらの材料は、シーリング表面122に使用するとき、一部は表面組織および電気的効果および生物学的組織の存在による腐食による表面破壊を受け易いことから、付着を無くすための最適表面エネルギを与える。これらの材料は、ステンレス鋼に対して優れた非付着性を呈し、圧力およびRFエネルギへの露出が組織付着を受け易い局部的「ホットスポット」を形成する領域内で、鉗子10(10′)に使用すべきである。理解されようが、シーリング中に組織が「付着」する量を低減させることが、器具の全体的効率を向上させる。また、組織の冷却を制御することは、電極上への組織の付着または形成を低減させ、かつ組織シールの形成中に、例えばコラーゲンの再形成または再生(renaturation)中の架橋または他の化学的結合を補助する。
非付着性材料は、次の「非付着性」材料すなわち、ニッケル/クロム、窒化クロム、MedCoat(R) 2000、Inconel(R) 600、錫/ニッケル、またはTiN、ZrN、TiAlNおよびCrNを含む種々の窒化物コーティング(但し、これらに限定されない)のうちの1つ(または1つ以上の組合せ)から製造できる。例えば、高ニッケルクロム合金、Ni200、Ni201(〜100%Ni)は、金属射出成形、スタンピングまたは任意の同様な方法により電極またはシーリング表面の製造に使用できる。また、前述のように、シーリング表面122を、1つ以上の上記材料で「コーティング」して、同じ結果すなわち「非付着性表面」を達成できる。
更に、絶縁ハウジング114の物理的寸法を変えることにより熱拡散を低減させることも考えられる。例えば、或る場合には、種々の材料(材料単独またはその組合せ)から絶縁ハウジング114を製造するのが好ましく、これらの材料として、例えば、DOWケミカル社により製造されるナイロンおよびQUESTRA(R)のようなシンジオタクチックポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド−イミド(PAI)、アクリル(PMMA)、ポリスチレン(PSおよびHIPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、アリファティックポリケトン、アセタール、(POM)コポリマー、ポリウレタン(PUおよびTPU)、ポリフェニレンオキシド分散液、およびアクリロニトリルスチレンアクリレートがある。
2つのジョー部材110、120の一方のみに、熱拡散を低減させる上記機構または構成の1つを設けることも考えられる。例えば、図2A、図2Bおよび図3を参照することにより、絶縁ハウジング114とシーリングプレート122との間に配置される熱伝導性材料128、228は、下方ジョー部材120、220のみに設けることを考えることができる。図4に示すように、下方ジョー部材320のみにアクティブ冷却システム340を設けることができる。図6に示すように、上方ジョー部材510のみに、隣接組織400への熱拡散を低減させるクールポリマー530aを設けることができる。同様に、図7に示すように、上方ジョー部材610のみに、膨脹組織450aを受入れる凹状領域630を設けることができる。また、上記構成は組合せて使用し、隣接組織への熱拡散を低減させることも考えられる。例えば、クールポリマー530aは、特定目的に応じて、図2Aの熱伝導性材料128と組合せて使用するか、図2Aの熱伝導性材料128に代えて使用することができる。
鉗子10または10′は、特定目的に応じてまたは特定結果を達成するため、全部または一部を使い捨て可能に構成できる。例えば、電極シーリング組立体100はシャフト12の遠位端14と選択的にかつ解放可能に係合するか、シャフト12の近位端16はハウジング20およびハンドル組立体30と選択的にかつ解放可能に係合するように構成できる。これらの2つの場合のいずれにおいても、鉗子10は、「部分的使い捨て」または「交換可能(reposable)」にすること、すなわち、新しいまたは異なる電極シーリング組立体100(または電極シーリング組立体100およびシャフト12)を、必要に応じて古いジョー組立体110と選択的に置換することを考えることができる。
図9Aには、本発明による電極組立体700の電極冷却システムの他の実施形態が示されている。図9Aは、双極鉗子10として使用できる電極組立体700の下方電極ジョー部材720の遠位端と、上方電極ジョー部材710の遠位端とを示す端面図である。上方電極ジョー部材710は上方の電気的絶縁部分711a、711bを有し、該絶縁部分は、これらの縁部713a、713bが、導電性シールプレート712a、712bに接触するように接合されている。下方電極ジョー部材720は下方の電気的絶縁部分721a、721bを有し、該絶縁部分は、これらの縁部723a、723bが、導電性シールプレート722a、722bに接触するように接合されている。ジョー部材710、720は、導電性シールプレート712a、712b、および722a、722bのそれぞれ全体として平らな中央部分710a、710b、720a、720bを備えた全体としてU型断面を有している。
組織シーリング手術中、導電性シールプレート712a、712bの全体として平らな中央部分710a、710bの内表面727a、727b上に熱Qが発生される。同様に、導電性シールプレート722a、722bの全体として平らな中央部分720a、720bの内表面729a、729b上に熱Q′が発生される。
少なくとも1つのジョー部材710、720は、熱電プレートを有し、これにより、少なくとも1つのジョー部材により発生された熱が、熱電プレートを介して組織から除去されるようになっている。より詳しくは、上方の熱電(TEC)プレート718の第一表面730および全体として平らな中央部分710a、710bの上方の導電性シールプレート712a、712bの外表面714a、714bは、これらの間に配置された熱伝導性の絶縁材料780を有している。同様に、下方の熱電(TEC)プレート728の第一表面730および全体として平らな中央部分720a、720bの下方の導電性シールプレート722a、722bの外表面724a、724bは、これらの間に配置された熱伝導性の絶縁材料782を有している。
上方ジョー部材710の内表面727a、727b上に発生された熱Qは、上方の導電性シールプレート712a、712bおよび熱伝導性の絶縁材料780を介して、上方TECプレート718の第一表面730に伝達され、これにより、熱QがTECプレート718に伝達される。
同様に、上方ジョー部材710の内表面729a、729b上に発生された熱Qは、下方の導電性シールプレート722a、722bおよび熱伝導性の絶縁材料782を介して、下方TECプレート728の第一表面740に伝達され、これにより、熱QがTECプレート728に伝達される。
殆どの電気外科手術において、冷却目的で、両ジョー部材710、720に、それぞれのTECプレート718、728を設けることができる。また、当業者ならば、TECプレート718、728は、ソリッドステートヒートポンプまたはペルチェ効果冷却器と呼ぶこともできることは理解されよう。
図9Bに示すように、電気リード線734aは上方TECプレート718の近位端749に接続され、一方、電気リード線734bは上方TECプレート718の遠位端750に接続されている。同様に、電気リード線736aは下方TECプレート728の近位端751に接続され、一方、電気リード線736bは下方TECプレート728の遠位端に接続されている。リード線734a、734b、736a、736bは、導管すなわちケーブル754を介して直流(DC)電源756に導かれている。前述のように、組織シーリング手術中に、熱Qが、上方シールプレート712a、712bの全体として平らな中央部分710a、710bの内表面727a、727b上に発生される。同様に、熱Q′が、下方シールプレート722a、722bの全体として平らな中央部分720a、720bの内表面729a、729b上に発生される。
TECプレート718、728は、電気リード線を通って流れる電流の方向に基いて、熱Qを、内表面727a、727bおよび729a、729bから遠ざけることができる。殆どの電気外科手術において、TECプレートは加熱ではなく冷却するのに使用される。冷却を達成するため、電流の方向が電源756により制御され、シールプレート712A、712b、722a、722bからの熱Qが組織から離れてTECプレート718、728の反対側の端部に向かうように、電流が、TECプレート718、728を通って導かれる。理解されようが、組織シーリング中に電極710、720により発生される熱Qは、組織から搬出され、周囲の組織には伝達されない。かくして、組織への二次的損傷が低減される。熱伝導性絶縁材料780、782は、DC電源756と、前述の電気外科エネルギ源、例えばプラグ300および電気ケーブル310(図1Aおよび図1B参照)を介しての電気外科ジェネレータ(図示せず)との間の電気的連続性を防止する前述のようなクールポリマーで作ることができる。
図9Cおよび図9Dは、本発明による特に有効な1つの実施形態を示し、この実施形態では、組織治療中にジョー部材710、720から熱を放散させるのにTECプレート718が使用される。特にジョー部材710を参照より詳しく説明すると、ジョー部材710は上方の電気的絶縁部分711a、711bを有し、該絶縁部分はこれらの縁部713a、713bが導電性シールプレート712に接触するように接合されている。TECプレート718は、ジョー部材710内で、導電性シーリングプレート712の組織係合表面714の反対側表面714′上に配置される。TECシーリングプレート718と、シーリングプレート712の外表面714a、714bとの間には、熱伝導性の絶縁材料784が配置されている。プレート718は第一および第二側面760、760′を有している。側面760は、シーリングプレート712の対向端部714′に当接する。一連の電気リード線765a、765b、765cは第二側面760′に接続され、一方、一連の電気リード線766a、766b、766cは、第一側面760に接続されている。
第一電位758はリード線765a、765b、765cを介して選択的に伝達でき、第二電位759は、プレート718の反対側の側面に異なる電位が発生するように、リード線766a、766b、766cを介して選択的に伝達できる。理解されようが、この場合の熱Qは近位側に導かれ、第二ヒートシンク(例えばクールポリマー、およびTECプレート718または他のTECプレートと接触するように配置された1つ以上のダクト854を通る流体)により吸収される。
ジョー部材720も非常に良く似た態様で構成されており、熱Qを近位側に導く同様な要素を有している。特にジョー部材720を参照してより詳しく説明すると、ジョー部材720は下方の電気的絶縁部分721a、721bを有し、該絶縁部分は、これらの縁部が導電性シールプレート722に接触するように結合されている。TECプレート728は、ジョー部材720内で、導電性シーリングプレート722の組織係合表面724の反対側の側面724′上に配置される。シーリングプレート722とTECプレート728との間で、シーリングプレート722の外側表面724a、724b上には熱伝導性の電気的絶縁材料786が配置されている。プレート728は第一および第二側面762、762′を有している。側面762は、シーリングプレート722の反対側端部724′に当接している。一連の電気リード線767a、767b、767cが第一側面762に接続され、一方、一連の電気リード線769a、769b、769cが第二側面762′に接続されている。
熱伝導性の電気的絶縁材料784、786は、前述の電気外科エネルギ源から、DC電源756とAC電源との間の電気的連続性を防止する前述のクールポリマーで作ることができる。
プレート728の両側面に異なる電位を発生させるため、第一電位758をリード線767a、767b、767cを介して選択的に伝達しかつ第二電位759をリード線769a、769b、769cを介して選択的に伝達することを考えることができる。理解されようが、この場合の熱Qは近位側に導かれ、第二ヒートシンク(例えばクールポリマー、およびTECプレート728または他のTECプレートと接触するように配置された1つ以上のダクト856を通る流体)により吸収される。理解されようが、両ジョー部材710、720は協働して組織から過剰熱を除去し、シーリング中の二次的組織損傷効果を低減させる。
図10Aは、上方電極ジョー部材710および下方電極ジョー部材120の強制対流冷却を行う特に有効な一実施形態に構成された電極組立体700の近位端を示すものである。図10Aは、電極組立体700が上方シールプレート712a、712bおよび下方シールプレート722a、722bの強制対流冷却を行うように構成されている点を除き、図9Aとあらゆる点で同一である。より詳しくは、ヒートシンク818は、熱電冷却プレート718の第二表面732と直接接触して配置されている。クーラントすなわち冷却ライン850はヒートシンク818を通って、すなわちヒートシンク内に配置されている。クーラントライン850は、ヒートシンク818の近位端から突出しているクーラント供給端部850aおよびクーラント戻り端部850bを有している。
同様に、ヒートシンク828は熱電冷却プレート728の第二表面742と直接接触して配置されている。クーラントすなわち冷却ライン852はヒートシンク828を通って、すなわちヒートシンク内に配置されている。クーラントライン852は、ヒートシンク828の近位端から突出しているクーラント供給端部852aおよびクーラント戻り端部852bを有している。
図10Bは、上方シールプレート712a、712bおよび下方シールプレート722a、722bの強制対流冷却を行うように構成された図10Aの電極組立体700を前方から見た斜視図である。より詳しくは、ヒートシンク818は、熱電冷却プレート718の第二表面732と直接接触して配置されている。クーラントライン850はヒートシンク818を通って、すなわちヒートシンク内に配置されている。クーラントライン850は、ヒートシンク818の近位端838から突出しているクーラント供給端部850aおよびクーラント戻り端部850bを有している。クーラントライン850は、ヒートシンク818の遠位端842に近接したU型ベンド850cを形成している。
同様に、ヒートシンク828は熱電冷却プレート728の第二表面742と直接接触して配置されている。クーラントライン852はヒートシンク828を通って、すなわちヒートシンク内に配置されている。クーラントライン852は、ヒートシンク828の近位端840から突出しているクーラント供給端部(図示せず)およびクーラント戻り端部(図示せず)を有している。クーラントライン850は、ヒートシンク818のクーラントライン850のU型ベンド850cに関連して示したのと同様な態様で、ヒートシンク828の遠位端844に近接したU型ベンド852cを形成している。
上記実施形態では、クーラントライン850、852がアクティブ冷却流体(例えば、熱伝導性の非導電性冷却液またはガス(例えば空気))を収容することが特に適している。より詳しくは、冷却液には、水のような液体クーラントまたは医療用すなわち生体適合性のある流体等の非導電性流体が含まれる。しかしながら、強制流れ条件下で、空気、窒素または二酸化炭素(大気圧条件または大気圧より高い条件下が好ましい)等のガス(但し、これらのガスに限定されるものではない)を適用できる。或いは、クーラントライン850、852は、大気温度以下のガスのような停滞物質(stagnant substance)(空気、窒素または二酸化炭素を含む)、ウォータアイスまたはドライアイス等の液体または固体または冷凍物質を充填することもできる。
クーラント供給ライン850、852に供給されるクーラントは、組織シーリング手術中に発生される熱Qを除去する。図14Aおよび図14Bに関連して以下に詳述するように、ヒートシンク818、828は、ジョー部材710、720からの熱を搬出するための最終ヒートシンクに連結されるように構成できる。より詳しくは、クーラントラインすなわち冷却ライン850、852は、クーラント供給端部850a、852aを介してクーラントを受入れ、それぞれの熱電冷却プレート718、728から熱を搬出する。また、クーラントラインすなわち冷却ライン850、852は、クーラント戻り端部850b、852bを介して、鉗子10を通る最終ヒートシンクに連結されるように構成できる。
図11は、本発明による電極組立体900の電極冷却システムの更に別の実施形態を示す。より詳しくは、図11は、双極鉗子10に適合する電極組立体900の上方電極ジョー部材910の近位端938および下方電極ジョー部材920の近位端940を示すものである。ナイフブレード902が示されており、該ナイフブレード902は、上方ジョー部材910の内方側縁部906a、906bと、下方ジョー部材920の内方側縁部908a、908bとにより形成されたナイフスロット904内に配置されている。両ジョー部材910、920は、全体としてU型の断面を有している。
少なくとも一方のジョー部材910、920は、これを貫通するまたはこれらに埋入された冷却ラインを有している。より詳しくは、クーラントラインすなわち冷却ライン950は、上方電極ジョー部材910内に配置すなわち埋入できる。クーラントライン950は、上方ジョー部材910の近位端938から突出するクーラント供給端部950aおよびクーラント戻り端部950bを有している。クーラントライン950は、上方ジョー部材910の遠位端942に近接したU型ベンド850cを形成している。
同様に、クーラントラインすなわち冷却ライン952は、下方電極ジョー部材920内に配置すなわち埋入できる。クーラントライン952は、下方ジョー部材920の近位端940から突出するクーラント供給端部952aおよびクーラント戻り端部952bを有している。クーラントライン952は、下方ジョー部材920の遠位端944に近接したU型ベンド952cを形成している。
クーラントライン950、952は、ジョー部材910および/または920から熱を搬出すべく、クーラントを受入れるように構成されている。上記実施形態と同様に、クーラントライン950、952により受入れられるクーラントとして特に適したものは、アクティブ冷却流体(好ましくは、非導電性冷却液またはガス(例えば空気))である。
クーラント供給ライン950、952に供給されるクーラントは、組織シーリング手術中に発生される熱Qを除去する。図14Aおよび図14Bに関連してより詳細に後述するように、クーラント供給端部950a、952aおよびクーラント戻り端部950b、952bは、鉗子10を通る最終ヒートシンクに連結される。
図12は、図4の電極シーリング組立体の更に別の実施形態を示す拡大斜視図である。より詳しくは、図12は、隣接組織への熱拡散を低減させるように設計された電極シーリング組立体100(または100′)の下方ジョー部材320の更に別の可能な形態を示すものである。この実施形態は、次の点を除く全ての点で図4に示した実施形態と同じである。すなわち、異なる点は、絶縁ハウジング314の上表面330上に配置された一連のノズルまたはポート350a、350bを通してクーラント370を供給すべくクーラントライン355a、355bに分岐する共通供給ライン355を備えた図4の開放アクティブ冷却システム340が、クーラント供給端部1180aおよびクーラント戻り端部1180bを備えたU型連続クーラントループ1180を備えた閉鎖アクティブクーラントシステム1140により置換されていることにある。クーラント供給ループ1180は、シーリングプレート122を包囲する絶縁ハウジング内を通って配置すなわち該ハウジング内に埋入されている。クーラントループ1180は、前述のような一般に非導電性冷却液またはガス(例えば空気)であるクーラント370を受入れるように構成されている。アクティブクーラント370は、一般に組織シーリング手術中にシーリングプレート122に発生される熱の周囲組織への放散を低減させるべく、クーラントループ1180を通して流される。図4の場合におけるように、吸熱材料すなわちヒートシンクとして熱伝導性材料は使用されず、シーリングプレート122を包囲するアクティブ冷却システムが使用される。図14Aおよび図14Bに関連してより詳細に説明するように、クーラントループ1180は、最終ヒートシンクにクーラントを搬送して、周囲組織から熱を放散させる。
この特定実施形態と、図2A,図2B、図3および図4の実施形態とを比較すると、絶縁ハウジング314は、機械的連結または例えばスタンプモールディングまたは射出成形等の製造方法によりシーリングプレート122を包囲する。
図13Aは、図12の電極冷却組立体の冷却ループ1180の一実施形態を端面方向から見た断面図である。より詳しくは、冷却ループ1180の両端部1180a、1180bは、共通冷却ライン1150内に一体にまとめられている。共通冷却ライン1150は、一般に、供給ライン1180aまたは戻りライン1180bとして機能する内側管状導管と、それぞれ戻りライン1180bまたは供給ライン1180aとして逆に機能する外側管状導管とが同心状に配置されている。
図13Bは、図12の電極組立体の冷却ラインの他の実施形態を端面方向から見た断面図である。より詳しくは、図13Aの実施形態と同様に、冷却ループ1180の両端部1180a、1180bは、参照番号1190で示す共通冷却ラインとして一体にまとめられている。しかしながら、共通冷却ライン1190は、隔壁1194により2つの内部フローチャネル1192a、1192bとして分割されたほぼ管状の構造を有している。内部フローチャネル1192aは供給ライン1180aまたは戻りライン1180bとして機能でき、内部フローチャネル1192bは、それぞれ、戻りライン1180bまたは供給ライン1180aとして機能する。
当業者ならば、クーラントループ850、852および950、952(図10A、図10Bおよび図11参照)は、冷却ライン1150、1190と同様に構成できることは理解されよう。
図14Aは、共通冷却ライン1150、1190(図12、図13Aおよび図13B)を支持するように構成された図1Aの内視鏡双極鉗子を示す斜視図である。より詳しくは、鉗子10はシャフト12を有し、該シャフト12は、エンド・エフェクタ組立体100と機械的に係合する寸法を有する遠位端14と、回転組立体80に近接するハウジング20と機械的に係合する近位端16とを備えている。冷却ライン1150または1190は、上下のジョー、例えばジョー部材710、720、910、920から、シャフト12を通り、更にシャフト12に近接したポート1210でハウジング20を通って延び、ここから、冷却ライン1150または1190は、電気外科ケーブル310に近接したハウジング20のポート1220から出る。或いは、冷却ライン1150または1190はハウジング20をバイパスして、ポート1210でシャフト12からのみ出るように構成することもできる。一般に、いずれの実施形態でも、冷却ライン1150または1190は、最終ヒートシンク1250に導かれる便利な位置まで、電気外科ケーブル310の回りでコイル状に形成される。前述のようにDC電力をTECプレート718、728に供給するケーブル754は、TECプレート718、728からシャフト12およびハウジング20を通って延び、更にハウジング20のポート1220(または別のポート)から出て、DC電源756に接続される。図14Aに関連して説明した鉗子10および次の図14Bで説明する鉗子には、本明細書で説明した任意の上記エンド・エフェクタ組立体およびジョー部材を使用できる。
より詳しくは、図14Bは、図10、図11Bおよび図11Cの冷却ラインを支持するように構成された図1Bの切開手術用双極鉗子10′を示す斜視図である。図1Bに関連して上述したように、切開手術用鉗子10′は1対の細長シャフト部分12a′、12b′を有し、各シャフト部分は、それぞれ、近位端16a′、16b′および遠位端14a′、14b′を備えている。鉗子10′はジョー組立体100′を有し、該ジョー組立体は、それぞれ、シャフト12a′、12b′の遠位端14a′、14b′に取付けられる。ジョー組立体100′は、間に組織を掴むべく相対移動可能な上方ジョー部材710′または910′および下方ジョー部材720′、920′を有している。当業者ならば、上方ジョー部材710′、910′は、切開手術用鉗子に適用できるように構成されている点を除き、それぞれ上方ジョー部材710、910と実質的に同じであることは理解されよう。同様に当業者ならば、下方ジョー部材720′、920′は、切開手術用鉗子に適用できるように構成されている点を除き、それぞれ上方ジョー部材720、920と実質的に同じであることは理解されよう。
各シャフト12a′、12b′は、該シャフトの近位端16a′、16b′に配置されたハンドル17a′、17b′を有し、各ハンドルには、使用者の指を受入れる指孔18a′、18b′がそれぞれ形成されている。理解されようが、指孔18a′、18b′はシャフト12a′、12b′の相対移動を容易にし、この相対移動により両ジョー部材110′、120′は、両ジョー部材が、組織を操作すべく互いに間隔を隔てた関係に配置される開位置から、両ジョー部材がこれらの間に組織を掴むべく協働するクランピング位置すなわち閉位置へと枢動される。
一方のシャフト(例えばシャフト12b′)は近位側シャフトコネクタ/フランジ19′を有し、該シャフトコネクタ/フランジは、鉗子10′を、電気外科ケーブル310およびプラグ300を介してRFエネルギ源(図示せず)に接続するように設計されている。鉗子10′の内部作動電気接続および種々の部品に関する詳細は本件出願人の所有する上記特許文献25(該特許文献はその全体を本願に援用する)に開示されているが、冷却ライン1150または1190および電気ケーブル754は上下のジョー部材110′、120′からシャフト12b′を通って通って電気外科ケーブル310とインターフェースする近位側シャフト/コネクタまで延びていることをここに開示しておく。冷却ライン1150または1190は、電源コード310に近接したポート1230を通ってフランジ19′から出る。一般に、冷却ライン1150または1190は、最終ヒートシンク1250に導かれる便利な位置まで、電気外科ケーブル310の回りでコイル状に形成される。ケーブル754は、ポート1230から出て、DC電源756に接続される。
種々の図面を参照して述べた上記説明から、当業者ならば、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の開示に或る変更を行い得ることは理解されよう。例えば、両ジョー部材110、120は平行位置(従って同一平面)で出合うのが好ましいが、或る場合には、互いに遠位端で出合うように両ジョー部材を僅かにバイアスさせておき、電極を同一平面内で撓ませるにはハンドルに付加閉鎖力を加えることを必要とするのが好ましいこともある。これにより、シールのクオリティおよび/または一貫性が改善されることが考えられる。或いは、両ジョー部材110、120は、ヒールベース態様すなわち互いに平行な独立浮動態様で閉じるように構成することもできる。
ジョー部材710、710′、910、910′、および720、720′、920、920′は電気外科RF電力により発生された熱を消散させるように構成されているが、本明細書に開示された冷却部材(すなわち、熱電プレート718、728、対応するヒートシンク818、828および冷却ライン850、852、950、952;および絶縁ハウジング314を冷却するための冷却ループ340、1150、1190)は、互いにの加熱形態にも首尾良く適合できる。このような他の加熱形態として、超音波、容量性または熱電加熱源があるがこれらに限定されるものではない。
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、開示は広い範囲を有するものとしてしてなされたものであり、そのように読むべきである。従って、上記説明は制限的なものではなく、好ましい実施形態の単なる例示であると解釈すべきである。当業者ならば、特許請求の範囲に記載の範囲および精神内で他の変更を考え得るであろう。