JP2007033272A - 薄膜特性評価方法、薄膜特性評価装置、及び薄膜太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 複数の結晶を含む薄膜の表面において、前記複数の結晶の各々の頂点及び隣りの結晶との境界の位置を示す情報に基いて、前記各結晶の前記境界を前記薄膜の表面と平行であり且つ前記結晶の底面を含む平面である基準平面、に投影させて得られる図形の重心を求める重心計算部と、前記重心と前記頂点とを結ぶ重心−頂点直線が、前記重心を含み前記基準平面に垂直な直線である垂直線と成す角度である結晶傾斜角を算出する結晶傾斜角計算部と、を具備する。
【選択図】 図1
Description
基板上に複数の結晶から構成されて表面に凹凸構造を有する薄膜の所定の領域(21)において、その複数の結晶のうちの一の頂点(13)の位置を示す頂点データ及びその一の結晶における頂点(13)の周囲(22)の表面形状を示す表面形状データに基いて、その凹凸構造の底面(23)に形成されるその一の結晶の縁(24)の重心(11)を求める重心計算部(2)と、
重心(11)と頂点(13)とを結ぶ直線である重心−頂点直線(14)が、底面(23)の法線(15)と成す角度である結晶傾斜角(16)を算出する結晶傾斜角計算部(3)と、
を備える。
上述の構成により得られる結晶傾斜角は、算出の元となるデータに、結晶間の境界(22)における膜厚のデータを用いていない。複数の結晶からなる薄膜において、結晶間の境界(22)部分の膜厚を正確に測定することは、測定機器の性能上困難である。本発明に係る薄膜特性評価装置(1)は、測定機器により容易に測定することのできる頂点(13)の位置、及び境界の位置に基いて、薄膜表面の形状を示す指標となる結晶傾斜角(16)を算出することができる。よって、ユーザは薄膜表面の形状を正確に把握することができる。その結晶傾斜角(16)を指標として薄膜の製膜条件に反映することで、発電効率向上に適した凹凸を持つ表面を安定的に製膜することができる。
更に、
その各結晶について、結晶傾斜角計算部(3)によって計算されたその結晶傾斜角が、予め定められた所定の範囲内に収まっているか否かを判断する結晶傾斜角判断部(4)、
を備える。
更に、
その複数の結晶のうちで結晶傾斜角判断部(4)によってその結晶傾斜角が所定の範囲内に収まっていると判断された結晶の数が、その複数の結晶の数に対して占める割合である傾斜結晶占有率を算出する占有率算出部(5)、
を備える。
占有率算出部(5)を備えていることにより、その薄膜の所定の領域(12)における表面状態が、主としてどのような結晶傾斜角をもつ結晶により構成されているかを把握することができる。
その所定の範囲が、20°〜50°であることが好ましい。
本発明の発明者らは、従来考えられていたように透明導電膜の表面構造はピラミッド型が発電効率の向上に最適であるのではなく、その結晶傾斜角が20°〜50°であるときに良好な発電効率を示すことを見出した。その結晶傾斜角が20°より小さいか、または50°より大きい場合には、発電効率が減少する傾向にある。よって、薄膜の表面状態が、発電効率に有利な状態であるか否かを判断することができる。
更に、
占有率算出部により算出されたその傾斜結晶占有率が60%以上であるか否かを判断する占有率判断部(6)
を備える。
薄膜太陽電池は、ガラス基板上に形成された透明導電膜の表面状態が、結晶傾斜角が20°〜50°の範囲に収まる結晶の数が全体の60%以上を占める状態である場合に、更に良好な発電効率を示す。よって、占有率判断部(6)の判断により、薄膜の表面状態が発電効率に有利な状態であるか否かを、より正確に判断することができる。
更に、
結晶傾斜角計算部(3)により算出された結晶傾斜角(16)及び占有率算出部(5)により算出されたその占有率とに基いて、結晶傾斜角をX軸とし、占有率をY軸としたスペクトルが、単一のピークを示しているかどうかを判断する度数分布判断部(7)、
を備える。
度数分布判断部(7)の判断により、その薄膜の表面における結晶傾斜角の頻度分布が2つ以上のピークを有しているがために、表面状態が全体としてが望む状態であると誤判断する可能性を排除することができる。
度数分布判断部(7)は、そのスペクトルが、自由度4〜20のχ2分布に従っているか否かを判断する。
度数分布判断部(7)により、自由度が4〜20のχ2分布に従うと判断されたスペクトルは、所定の領域(21)における複数の結晶の各々の結晶傾斜角が、単一のピークを持つ頻度分布に従っていることより確実に示す。よって、度数分布判断部(7)の判断により、その薄膜の表面における結晶傾斜角の頻度分布が2つ以上のピークを有しているがために、表面状態が全体としてが望む状態であると誤判断する可能性をより排除することができる。
その基板は、ガラス基板であり、その結晶は透明導電膜であることが好ましい。
TCO(Transparent Conductive Oxide:透明導電性酸化物)結晶を含む透明導電膜を有する薄膜太陽電池であって、
そのTCO結晶が、本発明に係る薄膜特性評価装置(1)によって、その傾斜結晶占有率が60%以上であると判断された薄膜太陽電池である。この判断により、薄膜太陽電池を選別することで、発電効率の低い薄膜太陽電池を排除することが容易となる。
基板上に複数の結晶から構成されて表面に凹凸構造を有する薄膜の所定の領域(21)において、その複数の結晶のうちの一の頂点(13)の位置を示す頂点データ及びその一の結晶における頂点(13)の周囲(22)の表面形状を示す表面形状データに基いて、その凹凸構造の底面(23)に形成されるその一の結晶の縁(24)の重心(11)を求めるステップ(ステップS10)と、
重心(11)と頂点(13)とを結ぶ重心−頂点直線(14)が、底面(23)の法線(15)と成す角度である結晶傾斜角(16)を算出するステップ(ステップS20)と、
を備える。
更に、
結晶傾斜角(16)が、予め定められた所定の範囲内に収まっているか否かを判断する結晶傾斜角判断ステップ(ステップS30)、
を備える。
更に、
所定の領域(21)において、その所定の範囲に収まっていると判断された結晶の数が、所定の領域(21)に含まれる結晶の数に対して占める割合である傾斜結晶占有率を算出するステップ占有率算出ステップ(ステップS40)、
を備える。
その所定の範囲は、20°〜50°であることが好ましい。
更に、
占有率算出ステップ(S40)において算出されたその傾斜結晶占有率が60%以上であるか否かを判断する占有率判断ステップ(ステップS50)、
を備える。
更に、
結晶傾斜角計算部(3)により算出された結晶傾斜角(16)と占有率算出部により算出されたその占有率とに基いて、結晶傾斜角(16)をX軸とし、占有率をY軸としたスペクトルが、単一のピークを示しているかどうかを判断する度数分布判断ステップ(ステップS60)
を備える。
その度数分布判断ステップ(S60)は、そのスペクトルが、自由度4〜20のχ2分布に従っているか否かを判断するステップを備える。
ガラス基板と、
そのガラス基板上に形成された透明導電膜と、
その透明導電膜上に形成された半導体膜と、
その半導体膜上に形成された裏面電極膜と、
を備え、
その透明導電膜のその半導体膜側の表面は、本発明に係る薄膜特性評価装置(1)によって傾斜結晶占有率が60%以上であると判断されるものである。
その透明導電膜のその半導体膜側の表面が、本発明に係る薄膜特性評価装置(1)によって、そのスペクトルが単一のピークを示していると判断される。
その透明導電膜のその半導体膜側の表面が、本発明に係る薄膜特性評価装置(1)によって、そのスペクトルが自由度4〜20のχ2分布に従っていると判断される。
本発明に係る薄膜特性評価方法を、コンピュータによって実現させる為のプログラムである。
以下に図面を参照して実施の形態について説明する。本実施の形態に係る薄膜特性評価装置1は、パーソナルコンピュータなどに例示される情報処理装置である。図1は本実施の形態に係る薄膜特性評価装置1の構成を概略的に示す図である。薄膜特性評価装置1は、演算処理装置8、ハードディスクに例示される記憶部20、RAMに例示されるメモリ17、ディスプレイに例示される表示部19、マウスやキーボード、通信回線と接続した通信ポートに例示される入力部18を備える。
続いて、本実施の形態に係る薄膜特性評価方法について説明する。
画像データ変換ステップ及び空間フィルタ処理ステップにより、所定の領域21内での境界25が定義され、結晶の位置が定義された後に、ステップS10にて、重心計算部2が記憶部20に格納された表面形状データ及び頂点データを参照して、所定の領域21における複数の結晶のうちの一の結晶について、頂点13の周囲22の表面形状を底面23まで外挿し、底面23上で結晶の縁24が形成する図形の重心11の位置情報を計算する。重心計算部2は、計算した重心11の位置情報を結晶傾斜角算出部3へ通知して、ステップS20へ進む。
続いて、結晶傾斜角算出部3が、記憶部20に格納された頂点データと結晶傾斜角算出部3より通知された重心11の位置情報とに基いて、重心11と頂点13を結ぶ直線が、底面23の法線15と成す角度である結晶傾斜角16を算出する。結晶傾斜角算出部3は、算出した結晶傾斜角16を結晶傾斜角判断部4及び度数分布判断部7に通知して次のステップS30へ進む。
次に、結晶傾斜角判断部4が、結晶傾斜角算出部3より通知された結晶傾斜角が所定の範囲内であるか否かを判断する。更に、結晶傾斜角判断部4は、その判断結果を結晶を特定する情報と関連付けて記憶部20に格納する。尚、その所定の範囲内は、その結晶が有する光閉じ込め効果の観点から、20°〜50°に設定しておくことが好ましい。即ち、結晶傾斜角が20°〜50°の結晶が多数を占める透明導電膜においては良好な発電効率を得られる傾向にある。一方、結晶傾斜角が20°より小さいか、又は、50°よりも大きい結晶が多数を占める透明導電膜では、十分な発電効率が得られない傾向にある。よって、ステップS30による判断により、薄膜の表面状態が発電効率に有利な状態であるか否かを判別することができる。
続いて、占有率算出部5が、ステップS30にて結晶傾斜角が所定の範囲内であると判断された結晶の数が、所定の領域内の結晶の数に対して占める割合である占有率を算出する。占有率算出部5は、算出した占有率を表示部19に表示するとともに占有率判断部6に通知してステップS50へ進む。
ステップS40にて、占有率判断部6に傾斜結晶占有率が通知されると、ステップS50にて占有率判断部6が、通知された傾斜結晶占有率が60%以上であるか否かを判断する。占有率判断部6は、ステップS40における判断結果を、その領域を特定する情報と対応付けて表示部19に表示するとともに、記憶部20へ格納した後、ステップS60へ進む。図7は薄膜太陽電池の初期のセル効率を示すグラフであり、結晶傾斜角が20°〜50°である結晶の割合をX軸とし、サンプルの発電効率を標準品の発電効率で除算して百分率で表示した数字をY軸とした場合のグラフを示している。図7に示されるように、結晶傾斜角が20°〜50°である結晶の割合が60%をこえる透明導電膜を含む薄膜太陽電池は、標準品よりも良好な発電効率を示している。また、図示していないが、薄膜太陽電池の安定化後のグラフも、初期におけるグラフと同様の傾向である。よって、ステップS40による判断により、薄膜の表面状態が発電効率に有利な状態であるか否かを更に詳細に判別することができる。
図6は、結晶傾斜角をX軸とし、占有率をY軸とたときのスペクトルの例である。度数分布判断部7は、ステップS20において結晶傾斜角算出部3より通知された結晶傾斜角と、記憶部20に格納された結晶数データに基いて、図6に例示されるようなスペクトルを作成する。更に、度数分布判断部7は、スペクトルが単一のピークを形成しているか否かを判断する。図9は、図6に例示されるスペクトルに自由度8のχ2分布のスペクトルを重ねたときの図である。度数分布判断部7は、図9に示されるように、結晶傾斜角をX軸とし、占有率をY軸としたときのスペクトルが、自由度4〜20のχ2分布に近似できるか否かを判断する。
最後に、度数分布判断部7は、ステップS60における判断結果をその領域を特定する情報と対応付けて表示部19に表示するとともに、記憶部20へと格納する。
本実施の形態に依れば、所定の領域における各結晶の頂点データ(Tx,Ty,Tz)と、頂点の周辺の表面形状を示す表面形状データ(Sx,Sy,Sz)のみに基いて、透明導電膜の表面形状を示す指標となる結晶傾斜角を算出することができる。傾斜結晶角算出の元となるデータは、隣りの結晶との境界部分の高さの位置情報を含んでいない。図3Bにて線で囲まれた部分のように、透明導電膜の膜厚が急激に谷に落ち込むようにして境界が形成されている部分においては、膜厚(高さ)を既存の測定機器においては正確に測定することは困難である。よって、本実施の形態に依れば、境界部分の高さの位置情報を結晶角算出の元としていないことにより、透明導電膜の表面形状をより的確に把握することができる。
2 重心計算部
3 結晶傾斜角計算部
4 結晶傾斜角判断部
5 占有率算出部
6 占有率判断部
7 度数分布判断部
8 演算処理装置
9 薄膜特性評価プログラム
10 薄膜太陽電池
11 重心
13 頂点
14 重心−頂点直線
15 法線
16 結晶傾斜角
17 メモリ
18 入力部
19 表示部
20 記憶部
21 所定の領域
22 周囲
23 底面
24 縁
25 境界
Claims (17)
- 基板上に複数の結晶から構成されて表面に凹凸構造を有する薄膜の所定の領域において、前記複数の結晶のうちの一の頂点の位置を示す頂点データ及び前記一の結晶における前記頂点の周囲の表面形状を示す表面形状データに基いて、前記凹凸構造の底面に形成される前記一の結晶の縁の重心を求める重心計算部と、
前記重心と前記頂点とを結ぶ直線である重心−頂点直線が、前記底面の法線と成す角度である結晶傾斜角を算出する結晶傾斜角計算部と、
を具備した
薄膜特性評価装置。 - 請求項1に記載された薄膜特性評価装置であって、
更に、
前記結晶傾斜角が、予め定められた所定の範囲内に収まっているか否かを判断する結晶傾斜角判断部、
を具備した
薄膜特性評価装置。 - 請求項2に記載された薄膜特性評価装置であって、
更に、
前記所定の領域において、前記所定の範囲内に収まっていると判断された前記結晶の数が、前記所定の領域に含まれる前記結晶の数に対して占める割合である傾斜結晶占有率を算出する占有率算出部、
を具備した
薄膜特性評価装置。 - 請求項3に記載された薄膜特性評価装置であって、
更に、
前記結晶傾斜角計算部により算出された前記結晶傾斜角及び前記占有率算出部により算出された前記占有率とに基いて、前記結晶傾斜角をX軸とし、前記占有率をY軸としたスペクトルが、単一のピークを示しているかどうかを判断する度数分布判断部
を具備した
薄膜特性評価装置。 - 請求項4に記載された薄膜特性評価装置であって、
前記度数分布判断部は、前記スペクトルが、自由度4〜20のχ2分布に従っているか否かを判断する
薄膜特性評価装置。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載された薄膜特性評価装置であって、
前記基板は、ガラス基板であり、前記結晶は透明導電膜である
薄膜特性評価装置。 - 基板上に複数の結晶から構成されて表面に凹凸構造を有する薄膜の所定の領域において、前記複数の結晶のうちの一の頂点の位置を示す頂点データ及び前記一の結晶における前記頂点の周囲の表面形状を示す表面形状データに基いて、前記凹凸構造の底面に形成される前記一の結晶の縁の重心を求めるステップと、
前記重心と前記頂点とを結ぶ直線である重心−頂点直線が、前記底面の法線と成す角度である結晶傾斜角を算出するステップと、
を具備した
薄膜特性評価方法。 - 請求項7に記載された薄膜特性評価方法であって、
更に、
前記結晶傾斜角が、予め定められた所定の範囲内に収まっているか否かを判断する結晶傾斜角判断ステップ、
を具備した
薄膜特性評価方法。 - 請求項8に記載された薄膜特性評価方法であって、
更に、
前記所定の領域において、前記所定の範囲内に収まっていると判断された結晶の数が、前記所定の領域に含まれる結晶の数に対して占める割合である傾斜結晶占有率を算出するステップ
を具備した
薄膜特性評価方法。 - 請求項9に記載された薄膜特性評価方法であって、
前記所定の範囲が、20°〜50°である
薄膜特性評価方法。 - 請求項10に記載された薄膜特性評価方法であって、
更に、
前記占有率算出ステップにおいて算出された前記傾斜結晶占有率が60%以上であるか否かを判断する占有率判断ステップ、
を具備した
薄膜特性評価方法。 - 請求項9乃至11に記載された薄膜特性評価方法であって、
更に、
前記結晶傾斜角計算部により算出された前記結晶傾斜角と前記占有率算出部により算出された前記占有率とに基いて、前記結晶傾斜角をX軸とし、前記占有率をY軸としたスペクトルが、単一のピークを示しているかどうかを判断する度数分布判断ステップ
を具備した
薄膜特性評価方法。 - 請求項12に記載された薄膜特性評価方法であって、
前記度数分布判断ステップは、前記スペクトルが自由度4〜20のχ2分布に従っているか否かを判断するステップを備える
薄膜特性評価方法。 - ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成された透明導電膜と、
前記透明導電膜上に形成された半導体膜と、
前記半導体膜上に形成された裏面電極膜と、
を具備し、
前記透明導電膜の前記半導体膜側の表面は、請求項3乃至5に記載された薄膜特性評価装置によって前記傾斜結晶占有率が60%以上であると判断される
薄膜太陽電池。 - 請求項14に記載された薄膜太陽電池であって、
前記透明導電膜の前記半導体膜側の表面は、請求項4に記載された薄膜特性評価装置によって、前記スペクトルが単一のピークを示していると判断される
薄膜太陽電池。 - 請求項15に記載された薄膜太陽電池であって、
前記透明導電膜の前記半導体膜側の表面は、請求項5に記載された薄膜特性評価装置によって、前記スペクトルが自由度4〜20のχ2分布に従っていると判断される
薄膜太陽電池。 - 請求項7乃至13のいずれかに記載された薄膜特性評価方法を、コンピュータによって実現させる為の
薄膜特性評価プログラム。
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