JP2007023297A - 刺激応答性ポリマーを含むインク組成物、並びに該インク組成物を用いた画像形成方法 - Google Patents

刺激応答性ポリマーを含むインク組成物、並びに該インク組成物を用いた画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、刺激応答性を有する、ポリマー、溶媒および所定の機能を奏する物質とを含む組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリマー、溶媒および所定の機能を奏する物質とを含む刺激応答性を有する組成物に関する。本発明の一態様は、ブロックポリマー、溶媒および所定の機能を奏する物質とを含む組成物である。本発明では、溶媒が水であることが好ましく、本発明では前記組成物のポリマーがポリビニルエーテル構造を含むポリマーであることが好ましく、特に分散安定性に優れた組成物を提供する。本発明は前記組成物を含有するインク組成物、該組成物を使用する画像形成方法、画像形成装置並びに前記組成物を含む被記録媒体に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物およびそれを用いた画像形成方法に関する。特に本発明のインク組成物は、刺激応答性ポリマーと、水性溶媒と、顔料および染料の少なくとも一つを含むインク組成物であり、該刺激応答性ポリマーがインク組成物中でミセル状態で存在するものに関する。
従来から、粒状固体として着色剤を有するインク等の色材が良く知られている。近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術には、インクジェット技術と言われるものが含まれるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
インクジェット技術はデジタル印刷技術の中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡し、インクを吐き出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐き出させる方法である。これらの方法に使用されるインクは通常染料水溶液が用いられるため、色の重ね合わせ時ににじみが生じたり、記録媒体上の記録箇所に紙の繊維方向にフェザリングと言われる現象が現れたりする場合があった。これらを改善する目的で顔料分散インクを使用することが検討されている(例えば米国特許第5085698号明細書(特許文献1))。
米国特許第5085698号明細書 特開平11−080221号公報 特開平11−322942号公報 特開平11−322866号公報 特公昭61−7948号公報 特開平3−237426号公報 特開平8−82809号公報 特開昭64−63185号公報 特開平8−216392号公報 米国特許第4723129号明細書 米国特許第4740796号明細書 米国特許第4463359号明細書 米国特許第4345262号明細書 米国特許第4313124号明細書 米国特許第4558333号明細書 米国特許第4459600号明細書 特開昭59−123670号公報 特開昭59−138461号公報 H. J. Schneider,米国特許第3062892号明細書(1962)
インク組成物に関しては、種々の改良がなされているが、未だなお多くの改善が望まれている状況である。上述のにじみやフェザリングの改善に加え、インク組成物は、インク組成物中のポリマー量を高めて定着性を確保し、且つ、低粘度であることが望ましい。特にインクジェット用途では、インクの時に低粘度であることが望まれる。
したがって、本発明は、上記のようなインク組成物を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の本発明により解決される。
本発明のインク組成物は、親水性部分と疎水性部分とを有するブロックポリマーと、水性溶媒と、顔料および染料の少なくとも一つと、を含み、該ブロックポリマーが前記溶媒中でミセル状に分散しているインク組成物であって、前記ブロックポリマーは、分散時に親水性を示すブロックセグメントが刺激に対して応答し、該ブロックセグメントが親水性から疎水性に変化することで、前記ブロックポリマーを相転移せしめる刺激応答ブロックを有する。
本発明では、前記ブロックポリマーは、前記顔料を分散させる機能を有することが好ましい。
前記インク組成物中のブロックポリマーは、親水性部分と疎水成分とを有する両親媒性であり、溶媒は水性溶媒が用いられる。このときブロックポリマーによりミセルが形成され、顔料をよく分散する。また、このように該ブロックポリマーのほとんどが分子溶解せず、ミセル状態で分散しているため本発明のインク組成物は比較的低い粘性を実現できる。
また、前記ブロックポリマーは、前記親水性部分及び疎水性部分にポリビニルエーテル構造を有することが好ましい。このブロックポリマーは、少なくとも一部の側鎖にオキシアルキレン構造を有することが好ましい。
本発明では、前記ポリビニルエーテル構造は、以下の式(1)の繰り返し単位構造を有する。
−(CH−CH(OR))− (1)
[ただしRは炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、または−(CH(R)−CH(R)−O)−Rもしくは−(CH−(O)−Rから選ばれる。l、mはそれぞれ独立に1から12の整数から選ばれ、nは0または1である。またR、Rはそれぞれ独立にH、もしくはCHである。RはH、炭素数1から6までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、CHCOORからなり、Rが水素以外である場合、炭素原子上の水素は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。RはH、または炭素数1から5のアルキル基である。]
前記刺激応答ブロックは、ある温度以下で疎水性から親水性へ変化するものである。
本発明のインク組成物は、界面活性剤をさらに含有することができる。
本発明は、上述のインク組成物を被記録媒体上に付与することで画像を形成することを特徴とする画像形成方法を包含する。
この画像形成方法では、前記被記録媒体が、前記ブロックポリマーに対して刺激を与える物質を備えていることが好ましい。
また、本発明の画像形成方法では、前記インク組成物に刺激を与える物質が、前記インク組成物中に含まれる前記ブロックポリマーと架橋する架橋剤を含有する物質であってもよい。
本発明によれば、にじみやフェザリングの改善に加え、インク組成物中のポリマー量を高めて定着性を確保し、且つ、低粘度であるインク組成物が提供できる。特に、両親媒性ブロックポリマー(刺激応答性ブロックポリマー)の親水性セグメントに刺激応答ブロックを設けることにより、紙面上などの被記録媒体では刺激応答セグメントが豊富となり、高い定着性を示すことができる。また、本発明のインク組成物では、刺激応答性ブロックポリマーがミセル状態を形成するため、高いポリマー量でも粘度を低く抑えることができ、インクジェット用途では、良好な吐出性能を有しうる。
本発明者らは、前記背景技術、課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、親水性部分と疎水性部分とを有するブロックポリマーと、水性溶媒と、顔料および染料の少なくとも一つと、を含み、該ブロックポリマーが前記溶媒中でミセル状に分散しているインク組成物であって、前記ブロックポリマーは、分散時に親水性を示すブロックセグメントが刺激に対して応答し、該ブロックセグメントが親水性から疎水性に変化することで、前記ブロックポリマーを相転移せしめる刺激応答ブロックを有するインク組成物である。特に、本発明は、該組成物に含有されるブロックポリマーがポリビニルエーテル構造を含むポリマーであることが好ましい。
本発明のインク組成物は、顔料のような粒状固体、染料などを含有する。また、本発明の組成物は溶媒を含有する。本発明の組成物に含まれる溶媒は、特に限定されないが、組成物に含まれる成分を溶解、懸濁、分散できる媒体を意味する。本発明の組成物では水および水性溶媒を好適に使用することができる。水性溶媒の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を挙げることができる。また、紙での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
本発明のインク組成物は、種々の刺激に応答し、特性が変化する特徴を有する。本発明の組成物を顔料分散インク材料として使用する場合、この組成物は顔料の分散安定性が高く、被記録媒体に付着させたときのにじみやフェザリングが改善され、さらには定着性の優れた顔料分散インク材料として使用することができる。このため、本発明の顔料分散インク材料としての組成物は、高画質、低消費エネルギー、高速の画像形成材料として利用することができる。本発明では、このときの色素は染料であってもよい。
本発明の組成物は、種々の刺激に対してその状態(特性)を変化させる。例えば、状態の変化としてはゾル状態からゲル状態への相変化、溶液状態から固体状態への相変化、化学構造の変化などを挙げることができる。また、本発明では、刺激は温度の変化、電場の印加、紫外線、可視光線、赤外線のような光(電磁波)への暴露、組成物のpHの変化、化学物質の添加、組成物の濃度変化などを挙げることができる。本明細書で刺激応答性とは、上記のような刺激に対して本発明の組成物がその性質を変化することを意味する。すなわち、刺激応答性とは、電磁波への暴露、電場印加、温度変化、pH変化、化学物質の添加、組成物の濃度変化など、組成物へ刺激を付与することにより、この刺激(環境変化)に応じて組成物の形状や物性が著しく変化することを意味する。本発明では、刺激応答性の機能は、本組成物に含まれるブロックポリマーによって実現される。本発明のインク組成物では、性質の変化として刺激により組成物が相変化(例えばゾルからゲルへの変化)を起こし、被記録媒体への定着性を向上させることが挙げられる。本発明において、好ましい刺激応答性は以下に示す応答性が含まれる。その第一は、温度変化に対するものであり、温度変化の範囲が、組成物の相転移温度の前後に渡る範囲である。さらに、本発明の組成物では、刺激応答性が電磁波への暴露に対するものであり、電磁波の波長範囲が100から800nmであることが好ましい。また、本発明の組成物では、刺激応答性が組成物のpH変化に対するものであり、pH変化の範囲がpH3からpH12の範囲であることが好ましい。さらに本発明の刺激応答性には組成物の濃度の変化に対するものが含まれる。この刺激の例としては、組成物の溶媒が蒸発または吸収されることにより、または組成物中の溶解されたポリマーの濃度を変化することにより組成物の濃度が変化するような場合を挙げることができる。このような刺激では、前記濃度の変化は、前記組成物が相転移を起こす濃度の前後に渡る範囲であることが好ましい。本発明ではこれら刺激が少なくとも2種以上組合わさってもよい。
本発明の組成物は、顔料または染料を含有し、溶媒として水または溶剤を用いたインク材料としての用途が好適である。本発明の組成物を用いれば、インク材料の定着性を始めとする種々の特性を改善することが可能である。
本発明の組成物がインクとして好ましく用いられる理由は、用いられるポリマーが溶媒に対して、顔料および染料を良好に分散することができるからである。このときポリマーは使用する溶媒に親和性をもったものが用いられる。特に本発明ではこのポリマーが共重合体、特にブロックポリマーであることが好ましい。
また、本発明の組成物に含まれるブロックポリマーは、各ブロックまたはユニットの繰り返し単位構造の特性をほぼ保持し、共存する形で特性を発揮することが可能である。とりわけ刺激応答性を有するブロックまたはユニット部分が有効に機能し、ランダムポリマーと比べ、その機能性を効率よく発揮することができる。本発明で用いられるブロックポリマーは、アクリル、メタクリル系ブロックポリマー、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロックポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロックポリマー等、従来から知られているブロックポリマーを用いることもできる。本発明の好ましい態様では、以下に説明するポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーが好ましく用いられる。
また、本発明で用いられるブロックポリマーは、異なった2種以上の親水性ブロックを有していてもよい。ここで、「異なった」とは異なる化学構造を意味し、モノマー構造またはポリマー鎖の分岐構造等が異なっていることを意味し、ポリマー鎖中の単一の繰り返し単位の分子鎖長のみが異なっている状態を意味しない。それら異なった2種以上のブロックのうち少なくとも一つの親水性ブロックが刺激に対して応答すること、例えば親水性から疎水性に変化することにより、組成物が変性する。逆にある条件下で疎水性を示していたブロックが刺激に対して応答し、親水性のブロックに変化することにより組成物が変性する場合もある。このようなブロックポリマーの刺激応答の好ましい例は、本発明の組成物に含まれるポリマーが複数のブロックを有するブロックポリマーであり、該複数のブロックのうち2種以上が親水性ブロック(本発明では、刺激により親水性のままであるか、または親水性になりうるブロックを意味する。)であり、その少なくとも一種は刺激応答性を有し、他のうちの少なくとも一種は使用条件下で、常に親水性である場合である。このような組成物では、この刺激応答性を有するブロックがある条件下で疎水性であり低粘性のミセル状に分散している状態から刺激が与えられると、該刺激応答性ブロックが親水性に変性し、ポリマーが会合するなどして、低粘性の分散状態から高粘性のポリマー溶液状態へ変性する。このようにして、ある刺激により本発明の組成物の特性が変化する。
他の例は、本発明の組成物が水性組成物であり、そしてポリマーが上記のようなブロックポリマーであり、さらにそのブロックポリマーのうちの刺激応答性のブロックがある条件下で親水性である、組成物である。このような水性組成物では、水溶液にポリマーが溶解している状態から刺激が与えられ該刺激応答性ブロックが疎水性に変性し、組成物がミセル状態を形成しつつゲル化してドラスティックに高粘度化する。
さらなる例として、疎水性のブロックAと刺激応答性のブロックB、親水性のブロックCの3種のブロックからなるブロックポリマーを用いるものもある。この例は、刺激応答性のブロックBが疎水性として振舞う水分散条件下でABをコアとするミセル分散状態から、刺激が与えられてBが親水化し、Aをコアとするミセルに変化し、ミセル間相互作用が変化してゲル化し、ドラスティックに高粘度化するというものである。
以上のように、本発明において異なった2種以上の親水性ブロックを有する場合には、特に溶剤として水を使用した場合に非常に好ましい刺激応答性を発現させることが可能である。
また、上述のような分子設計の考え方から、ブロックポリマーのブロックの形態については、AB型、ABA型、ABC型、ABCD型(ここでDは、A,B,Cとは異なる構造のブロックであり、親水性でも疎水性でもよい。)、ABCA型が好ましく用いられる。
本発明のインク組成物の好ましい態様は、刺激応答性を有する、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー、水および粒状固体(顔料)および染料の少なくとも一つを含有する水性分散物(インク組成物)である。好ましくは、本発明のインク組成物は刺激により特性が変化する色材として利用されるインク組成物である。本態様のインク組成物では、粒状固体(例えば顔料)の分散安定性が高くなり、にじみやフェザリングが改善され、さらには定着性の優れた顔料分散インク材料を提供できる。したがって、本発明のインク組成物は、高画質、低消費エネルギー、高速の画像形成材料として利用することができる。
本明細書において、粒状固体とは固体状態の化合物を意味し、好ましい態様では、顔料等の粒状固体物質を意味する。
本発明のインク組成物は、特にブロックポリマーとして、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー、水および粒状固体を含有することで、粒状固体(例えば顔料)の分散安定性に優れ、かつ外的刺激に応答して、その特性を変化させ、色のにじみやフェザリングを改善することができる。したがって、本発明のインク組成物は優れた画像定着性を示す。そのため、インクジェットプリンタ用のインクとしても好適に用いられる。
以下では、本発明のインク組成物を詳細に説明する。また、粒状固体として顔料を例にとり説明する。しかし、本発明はこれに限定されないことはもちろんである。
まず、本発明に特徴的に用いられるポリビニルエーテルについて説明する。本発明のインク組成物の特徴である、顔料分散安定性が高く、にじみやフェザリングを改善し、さらには定着性に優れる点については、分散物中に用いられるポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー材料によるところが大きい。上述のように、本発明における刺激応答性とは、電磁波への暴露、電場印加、温度変化、pH変化、化学物質の添加、組成物の濃度変化など、分散物へ刺激を付与することにより、この刺激(環境変化)に応じて水性分散物の形状や物性が著しく変化することを意味する。ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーによって刺激応答性を与えることができる。本発明のインク組成物では、このブロックポリマーは顔料などの分散安定性の面での機能も発揮することが好ましい。したがって、ポリビニルエーテルは親水性部分と疎水性部分の両方をもつ、いわゆる両親媒性構造を有していることが好ましい。具体的には親水性のモノマーと疎水性のモノマーが共重合されたポリマーを好ましい例として挙げることができる。ポリビニルエーテル構造を有するこのようなポリマーは、ポリビニルエーテル構造が一般にガラス転移点の低い柔らかい特性を有するため、通常はその疎水部が粒状固体と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため、より好ましい分散特性を有している。
ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報(特許文献2)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(特開平11−322942号公報(特許文献3)、特開平11−322866号公報(特許文献4))が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ブロックポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、ポリビニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2系、HCl/SnCl4系等で行うこともできる。
本発明に用いられるポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーは、これを添加することにより、例えば顔料のような粒状固体の分散性を組成物に付与することができる。
このポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー、水および粒状固体を含有するインク組成物に付与される刺激としては特に限定はないが、好ましくは、上述のような電磁波への暴露、電場印加、温度変化、pH変化、化学物質の添加、インク組成物の濃度変化、電子線照射が挙げられる。さらにより好ましくは、電磁波への暴露、温度変化、pH変化、インク組成物の濃度変化が挙げられる。本明細書で、電磁波への暴露とは、紫外線、可視光線、赤外線などの光にインク組成物をさらすことをいう。
以下に、上述の刺激のうち代表的なものについて説明し、このような刺激に応答するポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーを例示する。
温度変化による刺激の応答に関しては、例えば溶解性、熱重合や極性変化、相転移(ゾル−ゲル転移、液晶)等によるインク組成物の変化が挙げられる。温度変化の範囲は、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーと、水、顔料のような粒状固体を含有するインク組成物の相転移温度の前後にわたる範囲が好ましく、さらには臨界ゲル化温度前後にわたる温度範囲がより好ましい。温度変化による刺激に応答するポリビニルエーテル構造として、例えばポリ(2−メトキシエチルビニルエーテル)、ポリ(2−エトキシエチルビニルエーテル)等のアルコキシビニルエーテル誘導体等又はこれらのポリマー化合物を主成分とする共重合体を挙げることができる。特にポリ((2−メトキシエチルビニルエーテル)−b−(2−エトキシエチルビニルエーテル))からなるブロック共重合体では、ブロックポリマーにすることで、20℃において急激な粘度変化が生じる。ここで、ポリ((2−メトキシエチルビニルエーテル)−b−(2−エトキシエチルビニルエーテル))のbは、ブロックポリマーを意味する略号である。
次の刺激応答性としては、電磁波への暴露がある。この電磁波の波長範囲は100〜800nmであることがより好ましい。電磁波への暴露による刺激の応答は、例えば溶解性、光重合やフォトクロミズム、さらには光異性化、光二量化、相転移(ゾル−ゲル転移、液晶)等を挙げることができる。この刺激に応答するポリビニルエーテル構造としては、例えば、ポリ(2−ビニロキシエチルメタクリレート)等の重合官能基を有するビニルエーテル誘導体等又はこれらのポリマー化合物を主成分とする共重合体を挙げることができる。
pH変化による刺激の応答に関しては、インク組成物はpHの範囲が3〜12で応答をすることがより好ましい。pH変化による刺激の応答は、例えば溶解性、水素結合や配位結合、極性変化、相転移(ゾル−ゲル転移、液晶)等を挙げることができる。このような刺激に応答する分散物に含まれるポリビニルエーテル構造を含むポリマーの構造は、例えば、ポリ(2−メトキシエチルビニルエーテル)、ポリ(2−エトキシエチルビニルエーテル)等のアルコキシビニルエーテル誘導体とポリメタクリル酸等のポリカルボン酸との共重合体やポリマーブレンドを挙げることができる。
さらなる例としては、インク組成物の濃度の変化による刺激を挙げることができる。この刺激としては、例えばインク組成物の水が蒸発または吸収されることにより、またはインク組成物中に溶解されたポリマーの濃度を変化することによりインク組成物の濃度が変化するような場合である。この刺激に関しては、インク組成物の相転移濃度前後にわたる範囲の濃度変化が好ましく、さらには臨界ゲル化濃度前後の濃度変化がより好ましい。溶液濃度の変化による刺激では、例えば水素結合や疎水性相互作用、相転移(ゾル−ゲル転移、液晶)等の応答性が挙げられる。一例としてポリ(2−メトキシエチルビニルエーテル)、ポリ(2−エトキシエチルビニルエーテル)等のアルコキシビニルエーテル誘導体等やポリ(2−フェノキシエチルビニルエーテル)等のアリールオキシビニルエーテル誘導体等又はこれらのポリマー化合物を主成分とする共重合体が挙げられる。
さらにこれらの刺激のうち、二種類以上の刺激を組み合わせることも可能である。
刺激応答性を有する、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー、水および粒状固体を含有するインク組成物中のポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーは、ポリマーの物性を最適化すべく2成分以上のビニルエーテルからなる共重合体が好ましい。ポリマーを構成する各モノマー成分の刺激応答性を最大限に高性能化させるべく、共重合体はブロックポリマーである。
刺激応答性という機能は、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーそれ自身でも達成できるが、本発明ではよりその機能を高めるために、その他のポリマーと併用することも可能である。一例としては、刺激応答性を、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー以外のポリマーに持たせ、他の機能(例えば分散安定性)を、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーに付与することが挙げられる。
刺激応答性を有する他のポリマーの例としては、以下のものが挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
第一の例として、熱の付与によって加熱すると分散物の組成が変化し、相転移を起こさせるポリマーを挙げることができる。このポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のポリN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ポリN−ビニルイソブチルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸或いはその金属塩、ポリ−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ−N−(メタ)アクリルピペリジン、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリビニルアルコール或いはその部分ケン化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(エチレングリコールモノメタアクリレート)、ポリ(エチレングリコールモノアクリレート)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の置換セルロース誘導体等又はこれらのポリマー化合物を主成分とする共重合体やポリマーブレンドが挙げられる。
第二の例として、電磁波への暴露によって、光反応によりポリマーの構造が変化し、インク組成物の組成が変化して相転移を起こさせるものがある。このポリマーの具体例として、フォトクロミック性基等の基を有するポリマー化合物等がある。具体的には、光によってイオン解裂するトリフェニルメタン誘導体、スピロピラン誘導体やスピロオキサジン誘導体等の基を有するポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリ−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のポリN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド系、N−ビニルイソブチルアミド系等の各種のものが挙げられる。
第三の例として、pH値の変化によってインク組成物の組成が変化し、相転移を起こすポリマーがある。このポリマーの具体例として、ポリ(メタ)アクリル酸或いはその金属塩、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸、ポリマレイン酸或いはその金属塩、又はこれらのポリマー化合物を構成する単量体成分を主成分として得られた共重合体、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸複合体或いはその金属塩、ポリ(エチレングリコールモノメタアクリレート)、カルボキシメチルセルロースの金属塩、カルボキシエチルセルロースの金属塩等又はこれらのポリマー化合物を主成分とする共重合体やポリマーブレンドが挙げられる。
第四の例として、インク組成物中の溶解されたポリマーの濃度を変化させ、相転移を起こさせるポリマーがある。このポリマーの具体例として、下限の臨界溶解温度(LCST)を持つポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN―アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリメタクリル酸等のポリマー化合物の水溶液(特公昭61−7948号公報(特許文献5)、特開平3−237426号公報(特許文献6)、特開平8−82809号公報(特許文献7))や、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸複合体或いはその金属塩ポリ(エチレングリコールモノメタアクリレート)、アルコキシシロキサンなどの無機ポリマー類、又はこれらのポリマー化合物を主成分とする共重合体やポリマーブレンドが挙げられる。
刺激応答性を有する、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー、水および粒状固体を含有するインク組成物中のポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーの構造は、ビニルエーテルと他のポリマーからなる共重合体であってもよい。ポリマーを構成する各モノマー成分の刺激応答性を最大限に高性能化させるべく、共重合体はブロックポリマーである。
本発明のインク組成物では、ブロックポリマーが好ましく用いられる。ブロックポリマーは各ブロックあるいはユニットの繰り返し単位構造に基づくそれぞれの特性をほぼ保持し、共存する形で特性を発揮することが可能である。ブロックポリマーは、とりわけ刺激応答性を有するブロックあるいはユニット部分が有効に機能し、ランダムポリマーと比べ、その機能性をよりよく発揮できると考えられる。さらに、本発明では、用いられるブロックポリマーが水性溶媒に対して、粒状固体を良好に分散することができると考えられる。このとき該ポリマーの一部は使用する水性溶媒に親和性をもったものが用いられる。さらにポリビニルエーテル構造を有するブロックポリマーの場合も、前記したようにAB、ABA、ABCあるいはABCD(ここでDは、A,B,Cとは異なる構造のブロックであり、親水性でも疎水性でもよい。)等様々なブロック形態が可能であり、また異なった2種以上の親水性ブロックを有することが好ましい。
また刺激応答性を有する、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー、水および粒状固体を含有するインク組成物中に、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー以外のポリマー(例えば、上記の刺激応答性を有するポリマー)を添加することで、刺激応答性を付与又は向上させることも可能である。
上述の刺激応答性を有するインク組成物中のポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーの繰り返し単位の分子構造としては、特に限定はしないが、下記一般式(1)で示されるポリマーが好ましい。
−(CH2−CH(OR1))− (1)
ただしR1は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、フェニル(Ph)、ピリジル(Pyr)、Ph−Ph、Ph−Pyr、または−(CH(R2)−CH(R3)−O)l−R4もしくは−(CH2m−(O)n−R4から選ばれ、芳香環中の水素は炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基と、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。lは1から18の整数から選ばれ、mは1から36の整数から選ばれ、nは0または1である。またR2、R3はそれぞれ独立にH、もしくはCH3である。R4はH、炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、CH2COOR5からなり、R4が水素以外である場合、炭素原子上の水素は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。R5はH、または炭素数1から5のアルキル基である。
好ましくは、R1は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、または−(CH(R2)−CH(R3)−O)l−R4もしくは−(CH2m−(O)n−R4から選ばれる。l、mはそれぞれ独立に1から12の整数から選ばれ、nは0または1である。またR2、R3はそれぞれ独立にH、もしくはCH3である。R4はH、炭素数1から6までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、CH2COOR5からなり、R4が水素以外である場合、炭素原子上の水素は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。R5はH、または炭素数1から5のアルキル基である。
本発明において、直鎖または分岐アルキル基とは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル等である。また環状アルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等である。炭素原子上の水素が置換される場合、置換は1カ所であっても複数箇所であってもよい。
好ましくは、前記記載の刺激応答性を有するインク組成物中のポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーの繰り返し単位分子構造として、下記一般式(2)で表されるポリマーが好ましい。
−(CH2−CH(OR6))− (2)
ただしR6は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、または−(CH2−CH2−O)l−R7もしくは−(CH2m−(O)n−R7から選ばれ、芳香環中の水素は炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基と、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。lは1から18の整数から選ばれ、mは1から36の整数から選ばれ、nは0または1である。またR7はH、炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、CH2COOR8からなり、R7が水素以外である場合、炭素原子上の水素は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。R8はH、または炭素数1から5のアルキル基である。
好ましくは、R6は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、または−(CH2−CH2−O)l−R7もしくは−(CH2m−(O)n−R7から選ばれ、芳香環中の水素は炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基と、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。lは1から18の整数から選ばれ、mは1から36の整数から選ばれ、は0または1である。R7はH、炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2からなり、R7が水素以外である場合、炭素原子上の水素は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。
さらに好ましくは、上述の刺激応答性を有するインク組成物中のポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーの繰り返し単位分子構造として、下記にそのビニルエーテルモノマーの構造を明記するが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されない。
Figure 2007023297
これらのビニルエーテルモノマーからなる、刺激応答性を有するポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーを本発明では好適に使用できる。本発明で使用できるポリマーは、上記のビニルエーテルモノマーからなる刺激応答性を有するポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーに限定されない。ブロックポリマーであることが好ましいの例として、以下に明記するものを挙げることができるが、本発明に用いられるポリマーは、これらに限定されない。
Figure 2007023297
さらには、ポリビニルエーテルの繰り返し単位数(上記(II−a)から(II−e)において、x、y、z)がそれぞれ独立に、1以上10,000以下であることが好ましく、またその合計が(上記(II−a)から(II−e)において(x+y+z))、10以上40,000以下であることがより好ましい。
また、本発明では、ポリマーは少なくとも一部の側鎖にオキシアルキレン構造を有することが好ましい。
次に、本発明のインク組成物の他の成分について説明する。
[水]
本発明のインク組成物に含まれる水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、純水、超純水が好ましい。
[水性溶媒]
水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒、等を用いることができる。また、インク組成物の記録媒体上での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
本発明のインク組成物における上記水および水性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、20〜95重量%の範囲で用いるのが好ましい。さらに好ましくは30〜90重量%の範囲である。
[粒状固体]
本発明における有用な粒状固体は、顔料を用いることができる。本発明のインク組成物に用いられる粒状固体は、インク組成物の重量に対して、0.1〜50重量%が好ましい。
本発明のインク組成物の好ましい実施形態であるインクの場合は、通常粒状固体としては顔料を用いる。以下に本発明のインクの顔料および染料の具体例を示す。
顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インクに用いられる顔料は、好ましく黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いる。なお、上記に記した以外の色顔料や、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示した。
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRAII、Raven1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Black Pearls L、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
黄色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.PigmentYellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、 C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のインク組成物では、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがあり、市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)等が挙げられる。
本発明のインク組成物に用いられる顔料は、インク組成物の重量に対して、0.1〜50重量%が好ましい。顔料の量が、0.1重量%未満となると、十分な画像濃度が得られなくなり、50重量%を超えると画像の定着性が悪化する場合がある。さらに好ましい範囲としては0.5wt%から30wt%の範囲である。
また、本発明のインク組成物で使用しうる染料は、公知のものでよく、以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、又は、分散染料の不溶性色素を用いることができる。
例えば、水溶性染料としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;
C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;
C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;
C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;
C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;
C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;
C.I.ダイレクトブラウン,−109;
C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;
C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;
C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;
C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;
C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;
C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;
C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;
C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;
C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;
C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;
C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;
C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;
C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;
C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;
C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;
C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;
C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
なお、これら上記の色材の例は、本発明のインク組成物に対して特に好ましいものであるが、本発明のインク組成物に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。
本発明のインク組成物に用いられる染料は、インク組成物の重量に対して、0.1〜50重量%が好ましい。染料の量が、0.1重量%未満となると、十分な画像濃度が得られなくなり、50重量%を超えると画像の定着性が悪化する場合がある。さらに好ましい範囲としては0.5wt%から30wt%の範囲である。
本発明では、顔料および染料を併用して用いてもよい。
[添加剤]
本発明のインク組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。
インク組成物の添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤がある。本発明のインク組成物は、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーにより、顔料のような粒状固体を分散させる機能を有しているが、分散が不十分である場合には、他の分散安定剤を添加してもよい。
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することが可能である。
親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等、疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等が挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、およびグラフト共重合体等の様々な構成のものが使用できる。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。
アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。
カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。なお、界面活性剤についても同様、前記に限定されるものではない。
更に、本発明のインク組成物は、ブロックポリマーを含有するインク組成物中のブロックポリマーとの間で架橋する機能を有する添加剤(架橋剤)を含有する組成物を含んでいてもよい。このような組成物は、本発明のインク組成物として好ましく使用される。
前記の架橋剤を含有する組成物は、例えば、本発明のインク組成物とは別個の組成物として提供され、必要なときに接触させて使用する形態をとることが可能である。具体的には、例えばインクジェット用インクの場合、本発明のインク組成物を含むインクタンクと、架橋剤を含有する組成物を含むインクタンクとをそれぞれ用意し、別個に各組成物を同じ被記録媒体に吐出して接触させることが挙げられる。また、この他には、架橋剤を含有する組成物を予め被記録媒体に提供しておき、これに本発明のインク組成物を吐出して接触させることが挙げられる。
さらに、本発明のインク組成物には、必要に応じて水性溶剤を添加することができる。特にインクジェット用インクに用いる場合、水性溶剤は、インクのノズル部分での乾燥、インクの固化を防止するために用いられ、単独または混合して用いることができる。水性溶剤は、上述のものがそのまま当てはまる。その含有量としては、インクの場合、インクの全重量の0.1〜60重量%、好ましくは1〜25重量%の範囲である。
その他の添加剤としては、例えば、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るためのpH調整剤、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする浸透剤、インク内での黴の発生を防止する防黴剤、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止するキレート化剤、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する消泡剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、および、水溶性染料、分散染料、油溶性染料等を挙げることができる。
以下に本発明のインクの好ましい実施形態であるインクジェット用インク(水性分散インク)の具体的内容について記載する。
[インクジェット用インクの作成方法]
本発明のインクジェット用インクの作成方法としては、水および水溶性溶剤に、顔料、分散安定剤を添加し、分散機を用いて分散させた後、遠心分離等により粗大粒子を除去し、次いで水または溶剤および添加剤等を添加し、攪拌、混合、濾過を行うものを例としてあげることができる。
分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザー、ラボラトリーホモジナイザー、コロイドミル、ジェットミル、ボールミル等があり、これらを単独もしくは組み合せて用いてもよい。
また、自己分散顔料を用いた場合においても、上記の方法と同様の操作により作成することができる。
[画像形成方法および画像形成装置]
本発明における水性分散インクは、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。
水性分散インクをインクジェット用インクとして用いる場合、本発明では、例えば、以下のような態様で使用することができる。以下の(a)から(d)の刺激によりインクを凝集することができる。
(a) 温度刺激に応答するインクとして用いる場合
インクタンク内のインクの温度と、吐出により付着した記録媒体上でのインクの温度、との差による温度刺激により、本発明のインクジェット用インクが相変化を起こし急激に増粘あるいは不溶成分が凝集する。
(b) 電磁波刺激に応答するインクとして用いる場合
暗室であるインクタンク内のインクと、吐出により可視光にさらされるか、またはインクジェット記録装置内に設けた電磁波照射部により電磁波照射されたインクとの差により、本発明のインクジェット用インクに含まれるポリマーの重合官能基の重合が起こり、これが迅速な増粘あるいは不溶成分の凝集に繋がる。
(c) pH変化による刺激に応答するインクとして用いる場合
記録媒体の影響を受けてpHが変化することによりインクタンク内のインクのpHが、記録媒体に付着したインクのpHと異なることになる。これにより、本発明のインクジェット用インクが相変化を起こし、増粘あるいは不溶成分が凝集する。
(d) 濃度変化による刺激に応答するインクジェット用インクを用いた場合
インクタンク内のインクの濃度と、吐出されたインクに含まれる水および水性溶剤が蒸発するか、または被記録媒体に吸収された後のインクの濃度との間に差が生じ、この差によって本発明のインクジェット用インクが相変化を起こし増粘あるいは不溶成分が凝集する。
これらのインクの特性の変性により、色にじみやフェザリングを改善することが可能であったり、優れた定着性を発現させることが可能である。なおインクの変性は上述した増粘あるいは不溶成分の凝集に限定されるものではない。
また、刺激を与える方法については、様々な方法が適用し得る。好ましい一つの方法としては、刺激となる組成物を前述してきた刺激応答性のインクと混合または接触する方法がある。例えば前記(b)のpH応答性インクに対して、相当するpHの組成物を混合する方法として、インクジェット法を適用することが可能である。特開昭64−63185号公報(特許文献8)に記載されているように、インクジェットヘッドにより画像を形成する領域全面に渡って刺激となる組成物を打ち込むようにすることもできるし、特開平8−216392号公報(特許文献9)に記載の方のように刺激となる組成物の量を制御して、より優れた画像を形成することもできる。
また、刺激となる組成物を染料あるいは顔料を含有するインクと兼用することも可能である。例えば、カラーインクジェット法において用いられるシアン−マゼンタ−イエロー−ブラック(CMYK)インクのいずれかに刺激を与えるインクを用い、CMYKインクの他のいずれかに刺激に応答するインクを使用することで色にじみを改善することが可能である。CMYKのいずれに刺激応答性インクを用い、他のいずれに刺激を与えるインクを用いるかについては、様々な組合せが可能であるが、本発明ではそのいずれの組合せを用いてもよく、組み合わせの選択を限定するものではない。また、刺激を与える組成物と刺激応答インクの種類としては前述した刺激応答のパターン全てで行なうことが可能であり、特に限定されるものではない。
本発明の一態様として、刺激を与える組成物には、ブロックポリマーを含有するインク組成物中のブロックポリマーとの間で架橋する機能を有する添加剤を含有する組成物が含まれる。すなわち、本発明の画像形成方法の好ましい一態様では、刺激応答性を有するブロックポリマー、溶媒および所定の機能を奏する物質とを含むインク組成物と、該組成物に刺激を与える組成物として該ブロックポリマーと架橋する添加剤(架橋剤)を含有する組成物とを接触させることにより被記録媒体上で該インク組成物が定着されて優れた画像が形成される。所定の機能を奏する物質としては顔料が好ましく用いられ、具体的には前述の顔料群を挙げることができる。
前記インク組成物中のブロックポリマーは、親水性部分と疎水性部分とを有する両親媒性であり、水または水性溶媒が溶媒として用いられる。このような組成物ではブロックポリマーによりミセルが形成され、顔料をよく分散する。また、このように該ブロックポリマーのほとんどが分子溶解せずに、ミセル状態で分散することにより、比較的低い粘性を実現できる。ブロックポリマーとしては前述した本発明のポリマー群が使用できるが、前述中のポリビニルエーテル構造を有するブロックポリマーを用いることが好ましい。本発明では、このような組成物に対して、このブロックポリマーの部分と反応若しくは錯体を形成しうる架橋剤を含有する組成物を接触することにより、ミセル同士が網目構造をとり、インクが増粘し、優れた定着性を示す。したがって、本発明のこのような組成物を用いた画像形成方法は、優れた定着性を有する画像形成方法となる。
本発明のインクジェット用インク組成物と、前記の架橋剤を含有する組成物とを接触させる場合、これらの組成物は、例えば、別個の組成物として提供することができる。例えば、インクジェット用インク組成物と架橋剤を含有する組成物とを別々のパッケージに入れ、必要なときに接触させて使用する形態をとることが可能である。具体的な描画方法としては、例えばインクジェット用インクの場合、本発明のインク組成物を含むインクタンクと、架橋剤を含有する組成物を含むインクタンクとをそれぞれ用意し、別個に各組成物を同じ被記録媒体に吐出して接触させることにより描画する方法が挙げられる。また、この他には、架橋剤を含有する組成物を、塗布またはスプレーなどの手段で予め被記録媒体に提供しておき、これに本発明のインク組成物を吐出して接触させることにより描画する方法が挙げられる。
本発明のインク組成物とこのような架橋剤を含む組成物とを接触させる場合、架橋剤を高濃度化するか、またはより多官能性の架橋剤を使用することにより、本発明のインク組成物をゲル状態へ変性することが可能である。架橋剤を用いる本発明の画像形成方法においてはポリビニルエーテル構造を有するブロックポリマーを用いることが好ましい。ポリビニルエーテル構造を有するブロックポリマーを合成するに好ましいモノマーとしては上記(I−a)から(I−o)をあげることができる。また、本発明の組成物と架橋剤を含む組成物とを接触させる、本発明の好ましい一態様では、ポリビニルエーテル構造のブロックポリマーが使用されることが好ましく、このようなポリマーは上記(II−a)から(II−e)に示したポリマーである。
本発明において好ましく用いられるポリビニルエーテル構造を有するブロックポリマーを含有するインク組成物に対しては、架橋剤としてカルボキシル基を官能基として有する化合物を用いることが好ましい。これはカルボキシル基と、上記のポリマーの構造例で示したようなオキシエチレンオキシの構造ユニットをもつ側鎖が錯体を形成しやすいためである。カルボキシル基を含有する化合物は架橋剤として機能するので複数のカルボキシル基を有することが好ましい。したがって、カルボキシル基を含有する化合物には、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸のような化合物を挙げることができる。具体的な例としては、HOOC−(CH2p−COOH、HOOC−(CH2pCH(COOH)(CH2q−COOH、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルアクリレートアクリル酸共重合体、ポリメチルメタクリレートメタクリル酸共重合体等の低分子および高分子の多官能性カルボン酸化合物を用いることができる。ここで、先の式中pは、1〜40の整数であり、qは1〜40の整数である。
また、あらかじめ被記録媒体の方に刺激を与える仕組みを施しておくことも好ましい。例えば、pH応答性インクのうち酸性応答性インクを用いて、酸性紙に記録を行なう方法などを挙げることができる。この場合、被記録媒体が本発明の刺激応答性インクに刺激を与える機能を有する。このような被記録媒体は、本発明に含まれる。すなわち、本発明は、このような刺激を与える機能を有する被記録媒体に関する。本発明では、記録媒体はいずれの公知の形態であってもよい。例えば、普通紙、感熱紙、酸性紙等を挙げることができる。
本発明のインクジェット用インクを用いるインクジェットプリンタとしては、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させてインクを発泡し、記録を行う熱インクジェット方式等、様々なインクジェット記録装置がある。
インクジェット用インクの場合、吐出ヘッドの吐出口から吐出されるインクの量は、0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲であることが好ましい。
特に、インクジェット記録装置の場合、その一態様として、記録装置は、ブロックポリマー、溶媒および顔料および染料の少なくとも一つとを含む刺激応答性を有するインク組成物と、該組成物に刺激を与える組成物として該ブロックポリマーと架橋する添加剤(架橋剤)を含有する組成物とを接触させる手段を有する。この態様では、この接触により被記録媒体上で該インク組成物が定着されて優れた画像が形成される。所定の機能を奏する物質としては顔料が好ましく用いられ、具体的には前述の顔料群および染料群を挙げることができる。
また、本発明で用いられるインク組成物では、20℃以下、好ましくは10℃以下で高分子の構造中の少なくとも一部が疎水性から親水性へと変化する成分を含む組成物を使用することが好ましい。
また、本発明の水性分散物インク(本発明のインク組成物)は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置にも用いることができる。また、直接記録方式による中間転写体を利用した装置にも適用することができる。
特に、本発明のインク組成物は、電子写真記録方式の画像形成方法および画像形成装置に使用することができる。例えば、この画像形成装置としては、潜像を形成する感光体ドラムを有し、これに潜像を形成させるための(露光器など)手段、インク付与手段、転写機構、並びに被記録媒体を備えるものを挙げることができる。この装置による画像の形成は、まず感光体ドラム上に潜像を形成し、本発明のインク組成物を潜像または潜像以外の部分に付与し、得られた像を転写機構により被記録媒体上へ転写させ、定着させる。
以下にインクジェット記録装置について図1を参照して概略を説明する。但し、図1はあくまでも構成の一例であり、本願発明を限定するものではない。
図1は、インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
図1は、ヘッドを移動させて被記録媒体に記録をする場合を示した。図1において、製造装置の全体動作を制御するCPU50には、ヘッド70をXY方向に駆動するためのX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58がXモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を介して接続されている。CPUの指示に従い、Xモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を経て、このX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58が駆動され、ヘッド70の被記録媒体に対する位置が決定される。
図1に示されるように、ヘッド70には、X方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58にヘッド70に加え、ヘッド駆動回路60が接続されており、CPU50がヘッド駆動回路60を制御し、ヘッド70の駆動、即ちインクジェット用インクの吐出等を行う。さらに、CPU50には、ヘッドの位置を検出するためのXエンコーダ62およびYエンコーダ64が接続されており、ヘッド70の位置情報が入力される。また、プログラムメモリ66内に制御プログラムも入力される。CPU50は、この制御プログラムとXエンコーダ62およびYエンコーダ64の位置情報に基づいて、ヘッド70を移動させ、被記録媒体上の所望の位置にヘッドを配置してインクジェット用インクを吐出する。このようにして被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。また、複数のインクジェット用インクを装填可能な画像記録装置の場合、各インクジェット用インクに対して上記のような操作を所定回数行うことにより、被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。
また、インクジェット用インクを吐出した後、必要に応じて、ヘッド70を、ヘッドに付着した余剰のインクを除去するための除去手段(図示せず)の配置された位置に移動し、ヘッド70をワイピング等して清浄化することも可能である。清浄化の具体的方法は、従来の方法をそのまま使用することができる。
描画が終了したら、図示しない被記録媒体の搬送機構により、描画済みの被記録媒体を新たな被記録媒体に置き換える。
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態を修正または変形することが可能である。例えば、上記説明ではヘッド70をXY軸方向に移動させる例を示したが、ヘッド70は、X軸方向(またはY軸方向)のみに移動するようにし、被記録媒体をY軸方向(またはX軸方向)に移動させ、これらを連動させながら描画を行うものであってもよい。
本発明は、インクジェット用インクの吐出を行わせるために利用されるエネルギー源として熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、上記熱エネルギーによりインクジェット用インクを吐出させるヘッドが優れた効果をもたらす。かかる方式によれば描画の高精細化が達成できる。本発明のインクジェット用インクを使用することにより、更に優れた描画を行うことができる。
上記の熱エネルギーを発生する手段を備えた装置の代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書(特許文献10)、同第4740796号明細書(特許文献11)に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体が保持され、流路に対応して配置されている電気熱変換体に、吐出情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長および収縮により吐出用開口を介して液体を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書(特許文献12)、同第4345262号明細書(特許文献13)に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書(特許文献14)に記載されている条件を採用すると、さらに優れた吐出を行うことができる。
ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書(特許文献15)、米国特許第4459600号明細書(特許文献16)を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報(特許文献17)や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報(特許文献18)に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によればインクジェット用インクの吐出を確実に効率よく行うことができる。
さらに、本発明の画像形成装置で被記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプのヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのようなヘッドとしては、複数のヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個のヘッドとしての構成のいずれでもよい。
加えて、シリアルタイプのものでも、装置本体に固定されたヘッド、または、装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプのヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
さらに、本発明の装置は、液滴除去手段を更に有していてもよい。このような手段を付与した場合、更に優れた吐出効果を実現できる。
また、本発明の装置の構成として、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定化できるので、好ましい。これらを具体的に挙げれば、ヘッドに対してのキャッピング手段、加圧または吸引手段、電気熱変換体またはこれとは別の加熱素子、または、これらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、インクの吐出とは別の、吐出を行なうための予備吐出手段などを挙げることができる。
本発明に対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の実施例では、本発明のポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー等を合成する方法、インク組成物の例として顔料分散インクを取り上げて説明する。なお、これらポリマー合成および顔料分散インクでの実施例では、実施したうちのいくつかの具体例を記すのみであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ポリマーの合成>
モノマーの調製:2‐メトキシエチルビニルエーテル(以下MOVEと略す)および2−エトキシエチルビニルエーテル(以下EOVEと略す)は、2−クロロエチルビニルエーテルと、それぞれナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドとを、テトラブチルアンモニウムアイオダイド触媒を用い還流して合成した(H. J. Schneider,米国特許第3062892号明細書(1962)(特許文献19))。2−ビニロキシエチルメタクリレート(以下VEMと略す)はウィリアムソン反応により合成した。
1) MOVEとEOVEからなるABジブロックポリマーの合成。(外部刺激:温度)
モノマーの調製:実施例1と同様に調製した。
ABジブロックポリマーの合成:三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、MOVE12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11mlを加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキノクロライドを0.2ミリモル加え重合を開始し、ABブロックポリマーのA成分を合成した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、次いでB成分であるEOVE12ミリモルを添加することで合成を行った。重合反応の停止は、系内に0.3wt%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行った。反応を終えた混合溶液中にジクロロメタンを加え希釈し、0.6Nの塩酸溶液で3回、次いで蒸留水で3回洗浄し、エバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させて目的物であるMOVE−EOVEジブロックポリマーを得た。化合物の同定には、NMRおよびGPCを用いて行い、いずれも満足のいくスペクトルを得ることができた(Mn=2.5×104、Mn/Mw=1.3)。
2) MOVEとVEMからなるABジブロックポリマーの合成。(外部刺激:光、熱)
ABジブロックポリマーの合成:三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、MOVE12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11mlを加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキノクロライドを0.2ミリモル加え重合を開始し、ABブロックポリマーのA成分を合成した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、B成分であるVEM12ミリモルを添加することで重合を行った。重合反応の停止は、系内に0.3wt%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行った。反応を終えた混合溶液中にジクロロメタンを加え希釈し、0.6Nの塩酸溶液で3回、次いで蒸留水で3回洗浄し、エバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させて目的物であるMOVE−VEMジブロックポリマーを得た。化合物の同定には、NMRおよびGPCを用いて行い、いずれも満足のいくスペクトルを得ることができた(Mn=2.6×104、Mn/Mw=1.3)。
同様にして他のブロックポリマーの合成も行った。
<顔料分散インクの調製>
実施例1
[本発明のインクジェット用インクの調製方法]
本実施例では、黒インクの調製方法についてのみ記した。他の色のインクの調製については、下記と同様の操作手順(顔料の組成をそれぞれの色の顔料に替える。)により、作成することができる。
顔料、ポリビニルエーテル構造を含むポリマー、およびジエチレングリコールをイオン交換水中に加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散した。分散液を遠心分離機で処理し(20,000rpm×20分)、粗大粒子を除去して、顔料分散液を得た。
上記顔料分散液に、水性溶剤、イオン交換水、および添加剤を適量加え、1μmのフィルターを通して加圧濾過し、インクジェット用インクを調製した。(総量100部)
上記のようにして得られた顔料分散液を用いて各種の刺激応答性インクを調製した。
(a) 濃度変化による刺激に応答するインクジェット用インク
上記のインクジェット用インク作成方法に従い、下記の組成を用いて調製した。
Figure 2007023297
(b) pH変化による刺激に応答するインクジェット用インク
上記のインクジェット用インクの作成方法に従い、上記(a)の濃度変化による刺激に応答するインクジェット用インクと同様の組成を用いて調製した。
(c) 温度刺激に応答するインクジェット用インク
上記のインクジェット用インク作成方法に従い、上記(a)の濃度変化による刺激に応答するインクジェット用インクと同様の組成を用いて調製した。
比較例1
[自己分散顔料を用いたインクジェット用インクの調製方法]
実施例1と同様の操作方法(ポリビニルエーテル構造を含むポリマーは使用しない)に従い、下記の組成を用いてインクジェット用インクを調製した。
Figure 2007023297
<インクのバルク特性>
上記(a)、(b)および(c)のインクのバルク特性を以下に説明する。
(a)のインク100重量部にブロックポリマーMOVE−b−EOVE15重量部を、10℃に降温してから加え、溶解した。これを45℃に昇温したところ急激に増粘し、ゲル化した。これは低い温度の下では、EOVEブロックが親水性であり、ブロックポリマー全体で溶媒に溶解していたものが45℃に昇温したことによりEOVEブロックが疎水化し、ゲル化したためと考えられる。このことはまた、45℃においてブロックポリマーMOVE−b−EOVEは低濃度で良好な分散状態を示す一方、高濃度化したときにゲル化を起こすということも意味している。
(b)のインクに5wt%ポリアクリル酸のpH2の水溶液を加え、pH3に調整したところ、この場合も黒色の沈殿を形成し、一部ゲルも生成した。これはポリアクリル酸のカルボン酸とブロックポリマーが錯体を形成したためと考えられる。
(c)のインクは室温ではカーボンブラックがよく分散し、黒色インクを形成していたが、85℃に加熱すると、黒色の沈殿が形成された。これはMOVEのブロックが疎水性へ変性したため分散性が悪化したためと考えられる。
<印刷試験>
実施例2
先の実施例1および比較例1で調製したインクジェット用インクを用いて、定着強度の評価を行った。前記実施例1、および比較例1のインクジェット用インクをEPSON Stylus COLOR 900(EPSON社製)の印刷ヘッドに充填し、前記インクジェットプリンタを用いて普通紙に記録した。
評価は、記録1分後に印刷部に別の白紙の普通紙を4.9×104N/m2の荷重で押し付け、白紙の普通紙にインクが付着するか否かにより行った。
(a)濃度変化による刺激に応答するインクジェット用インクの評価
本インクジェット用インクを用いた記録においては、前記インクジェットプリンタにおける吐出インクの着弾部をヒーターで約40℃に加熱して記録を行った。
定着強度の評価
白紙の普通紙へのインクの付着は見られなかった。
水性溶媒が蒸発または被記録媒体に吸収され、MOVE−b−EOVE濃度が臨界相転移濃度を超えたために相転移したと考えられる。
(b)pH変化による刺激に応答するインクジェット用インクの評価
本インクジェット用インクを用いた記録においては、まず、被記録媒体である普通紙にpH4のポリアクリル酸の5重量%水溶液を噴霧し、刺激を与えることができる被記録媒体を作成した。これに前記と同様にインクジェット記録を行った。
定着強度の評価
白紙の普通紙へのインクの付着は見られなかった。MOVE−b−EOVEとポリアクリル酸とが錯化を起こしたと考えられる。
(c)温度刺激に応答するインクジェット用インクの評価
本インクジェット用インクを用いた記録においては、前記インクジェットプリンタにおける吐出インクの着弾部を約80℃に加熱して記録を行った。
定着強度の評価
白紙の普通紙へのインクの付着は見られなかった。
80℃に加熱したことにより、MOVE−b−EOVEが相転移したと考えられる。
比較例2
自己分散顔料を用いたインクジェット用インクの評価
上記比較例1で調製したインクジェット用インクを用いて記録を行った。
上記実施例1の本発明のインクジェット用インクの結果と比較すると、乾燥に時間がかかっていた。
定着強度の評価
白紙の普通紙へのインクの付着が見られた。
実施例3
実施例1で使用したカーボンブラックを、水溶性染料C.I.Food Black2に変えて、同じ組成でインクを作成し、前記のpH刺激に応答させて評価したところ、同様に良好な結果をえた。
実施例4
シアン染料C.I.ベーシックブルー75を用いた、下記の組成を用いてpH3以上のシアンインクを作成した。
Figure 2007023297
このインクをシアンインクに用い、実施例1の(a)のブラックインクを用いて、キャノン社製BJC―600Jでシアンとブラックの縦じま模様を普通紙に印刷した。さらに、BJC−600J付属のインクで同様の出力を行った。これらについて目視で官能評価をおこなったところ、本発明のインクを用いた前者の方が色にじみが少なかった。
実施例5
上記2)で合成したMOVE−b−VEMのブロックポリマーを使用して、表1の組成を用いて同様にインクジェットインクを作成した。これを用いて、実施例2のpH刺激に対する応答する印刷試験を行なった。すなわち、被記録媒体である普通紙にpH4のポリアクリル酸の5重量%水溶液を噴霧し、刺激を与えることができる被記録媒体を作成し、これに前記と同様にインクジェット記録を行ったところ、前記実施例同様に良好な定着性が実現できた。
以下の実施例により本発明の組成物と刺激を与える組成物とを接触させることにより描画を行う場合の例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例6
顔料(キャボット社モーグルL)5重量部、MOVE−b−VEM(Mn=2.6×104、Mn/Mw=1.3)のABブロックポリマー4重量部、およびジエチレングリコール4重量部をイオン交換水87重量部中に加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散した。分散液を遠心分離機で処理し(20,000rpm×20分)、粗大粒子を除去して、顔料分散液を得た。
上記顔料分散液を、1μmのフィルターを通して加圧濾過し、インクジェット用インクを調製した。
刺激を与える組成物は以下のように調製した。
(i)アジピン酸6重量部とジエチレングリコール5重量部とイオン交換水89重量部を混合して刺激を与える組成物を調製した。
(ii)ポリメタクリル酸3重量部とジエチレングリコール5重量部とイオン交換水92重量部を混合して刺激を与える組成物を調製した。
<印刷試験>
実施例7
先の実施例6で調製したインクジェット用インクと刺激を与える組成物(i)および(ii)を用いて、定着強度の評価を行った。
キヤノン社製BJF800の印刷ヘッドに充填し、普通紙に記録した。インクジェットインクと組成物(i)および(ii)のそれぞれを1cm2の広さの範囲の同じ箇所に記録し、評価した。
評価は、記録1分後に印刷部に別の白紙の普通紙を4.9×104N/m2の荷重で押し付け、白紙の普通紙にインクが付着するか否かにより行った。
定着強度の評価
白紙の普通紙へのインクの付着は見られなかった。
<上記刺激応答性インクと架橋剤組成物のバルク特性>
実施例6のインク1mlと組成物(i)および(ii)をそれぞれ1mlづつを混合したところ、両者ともに著しい増粘が観察された。特に実施例7のインクと、組成物(ii)を混合した場合には、ゲルが生成した。
<分散安定性の評価>
実施例8
作成されたインク組成物の分散安定性を評価した。評価には表1に記載された組成を有するインクを用い、20℃及び10℃の恒温層内で静置し、40日後の分散状態を目視により観察した。その結果本発明で記したインク組成物には沈殿物が見られず、特に低温側で良好な分散安定性を示した。
インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
符号の説明
20 インクジェット記録装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

Claims (11)

  1. 親水性部分と疎水性部分とを有するブロックポリマーと、水性溶媒と、顔料および染料の少なくとも一つと、を含み、該ブロックポリマーが前記溶媒中でミセル状に分散しているインク組成物であって、前記ブロックポリマーは、分散時に親水性を示すブロックセグメントが刺激に対して応答し、該ブロックセグメントが親水性から疎水性に変化することで、前記ブロックポリマーを相転移せしめる刺激応答ブロックを有していることを特徴とするインク組成物。
  2. 前記ブロックポリマーは、前記顔料を分散させる機能を有することを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記ブロックポリマーが、前記親水性部分及び疎水性部分にポリビニルエーテル構造を有することを特徴とする請求項2に記載のインク組成物。
  4. 前記ブロックポリマーが、少なくとも一部の側鎖にオキシアルキレン構造を有することを特徴とする請求項3に記載のインク組成物。
  5. 前記ポリビニルエーテル構造は、以下の式(1)の繰り返し単位構造を有する請求項3に記載のインク組成物。
    −(CH−CH(OR))− (1)
    [ただしRは炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、または−(CH(R)−CH(R)−O)−Rもしくは−(CH−(O)−Rから選ばれる。l、mはそれぞれ独立に1から12の整数から選ばれ、nは0または1である。またR、Rはそれぞれ独立にH、もしくはCHである。RはH、炭素数1から6までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、CHCOORからなり、Rが水素以外である場合、炭素原子上の水素は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素は窒素とそれぞれ置換することができる。RはH、または炭素数1から5のアルキル基である。]
  6. 前記刺激応答ブロックは、ある温度以下で疎水性から親水性へ変化するものであることを特徴とする請求項1記載のインク組成物。
  7. 界面活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインク組成物を被記録媒体上に付与することで画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
  9. 前記被記録媒体が、前記ブロックポリマーに対して刺激を与える物質を備えていることを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
  10. 前記インク組成物は、熱エネルギーの作用により被記録媒体上に吐出、付与される請求項8に記載の画像形成方法。
  11. 前記インク組成物に刺激を与える物質が、前記インク組成物中に含まれる前記ブロックポリマーと架橋する架橋剤を含有する物質であることを特徴とする請求項8記載の画像形成方法。
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