JP2007012247A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板の主表面の全面に亘って十分に化学強化処理が行われるようにし、磁気ヘッドの低フライングハイト化を図り高密度情報記録が可能であって、特に、携帯情報機器用の小型のハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスク用ガラス基板を提供する。
【解決手段】 化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程において、化学強化処理液をガラス基板に対して流動させ、または、ガラス基板を化学強化処理液に対して移動させる。
【選択図】 図1
【解決手段】 化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程において、化学強化処理液をガラス基板に対して流動させ、または、ガラス基板を化学強化処理液に対して移動させる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ(HDD)等に用いられる磁気ディスクを構成する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及びこの磁気ディスク用ガラス基板を用いる磁気ディスクの製造方法に関する。
今日、情報記録技術、特に、磁気記録技術は、いわゆるIT産業の発達に伴って飛躍的な技術革新が要請されている。そして、コンピュータ用ストレージ等として用いられる磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ(HDD)に搭載される磁気ディスクにおいては、磁気テープやフレキシブルディスクなどの他の磁気記録媒体と異なり、急速な情報記録密度の増大化が続けられている。そして、パーソナルコンピュータ装置に収納することのできるハードディスクドライブの情報記録容量は、このような磁気ディスクの情報記録密度の増大に支えられて、飛躍的に増加している。
このような磁気ディスクは、ガラス基板やアルミニウム系合金基板などの基板上に、磁性記録層等が成膜されて構成されている。そして、ハードディスクドライブにおいては、高速回転される磁気ディスク上に磁気ヘッドを浮上飛行させながら、この磁気ヘッドにより、情報信号を磁化パターンとして磁性記録層に記録し、また、再生を行なう。
近年、このような磁気ディスクにおいては、情報記録密度が1平方インチ当り40ギガビットを超えるまでに到っており、さらに、1平方インチ当り100ギガビットを超えるような超高記録密度をも実現されようとしている。このように高い情報記録密度が実現できるようになった近年の磁気ディスクは、従来のフレキシブルディスクなどの磁気ディスクに比較して、ずっと小さなディスク面積であっても、実用上十分な情報量を収納できるという特徴を有している。
また、このような磁気ディスクは、他の情報記録媒体に比較して、情報の記録速度や再生速度(応答速度)が極めて敏速であり、情報の随時書き込み及び読み出しが可能であるという特徴も有している。
このような磁気ディスクの種々の特徴が注目された結果、近年においては、いわゆる携帯電話、デジタルカメラ、携帯情報機器(例えば、PDA(personal digital assistant):パーソナルデジタルアシスタント)、あるいは、カーナビゲーションシステムなどのように、パーソナルコンピュータ装置よりも筐体がずっと小さく、かつ、高い応答速度が求められる携帯用機器に搭載できる小型のハードディスクドライブが求められるようになってきている。
ハードディスクドライブを携帯用機器に搭載すること(いわゆる「モバイル用途」)に対する要求が高まったことに伴い、磁気ディスク用の基板としては、硬質材料であるガラスからなるガラス基板が主流となっている。ガラス基板は、軟質材料である金属からなる基板に比較して、高強度、かつ、高剛性であるからである。また、ガラス基板においては、平滑な表面が得られるので、磁気ディスク上を浮上飛行しながら記録再生を行う磁気ヘッドの浮上量を狭隘化(低フライングハイト化)することが可能であり、高い情報記録密度の磁気ディスクを得ることができる。
しかしながら、ガラス基板は、脆性材料であるという側面も有している。そのため、従来より、様々なガラス基板の強化方法が提案されている。例えば、ガラス基板を、化学強化槽において300°C程度に加熱した硝酸ナトリウム(NaNO3)や硝酸カリウム(KNO3)等の化学強化液(硝酸塩溶液)中に所定時間浸漬することによって、ガラス基板中の表層部のリチウムイオン(Li+)をナトリウムイオン(Na+)やカリウムイオン(K+)に置換し、あるいは、ガラス基板中の表層部のナトリウムイオン(Na+)をカリウムイオン(K+)に置換し、両面の表層部に圧縮応力層を形成し、これら圧縮応力層の間を引張応力層とする化学強化処理が提案されている。
そして、特許文献1及び特許文献2には、このような化学強化処理工程において、化学強化槽中でガラス基板を保持するためのホルダが記載されている。これら特許文献に記載されたホルダは、ガラス基板の周縁部分(端面)においてガラス基板に接触する複数の支持部材を備えており、これら支持部材によってガラス基板の周縁部分(端面)の複数箇所を支持して、化学強化槽中においてガラス基板を保持しようとするものである。
さらに、特許文献3には、前述のような化学強化処理工程において、化学強化槽及びガラス基板を保持するホルダをステンレス合金によって形成することにより、これら化学強化槽やホルダからの発塵を防止する技術が記載されている。
ところで、近年においては、磁気ディスクの小径化、薄型化が求められており、前述したようなガラス基板の小径化、薄型化が進められている。例えば、「1インチ型HDD」に搭載する磁気ディスクを製造するためのガラス基板の直径は、約27.4mm、ディスク厚は、0.381mmである。また、「0.85インチ型HDD」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の直径は、約21.6mmである。
このような薄型のガラス基板は、前述したような化学強化工程の前において、反りを生じ易く、ウェイビネス(うねり)(Wa)が悪化する虞れがある。なお、ウェイビネス(Wa)は、ガラス基板の表面内における中心から所定距離だけ離間した点からなる2つの同心円で囲まれた領域を非接触レーザ干渉法によって測定した波長300μm乃至5mmのうねりの平均高さWaとして表現することができる。うねりの平均高さWaは、以下の式によって求めることができる。
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
ここで、xiは、測定ポイントにおける測定ポイント値(測定ポイントにおいてある基準線から測定曲線までの高さ)であり、xaは、測定ポイント値の平均値であり、Nは、測定ポイント数である。
また、化学強化工程においては、ガラス基板を所定時間に亘って化学強化液中に浸漬させるのであるが、この間、ガラス基板の周縁部分(端面)等には、このガラス基板を保持するためのホルダが接触している。そのため、この化学強化処理工程においては、ガラス基板に対するホルダの接触箇所の近傍において、化学強化処理が十分に行われない虞れがある。また、特に、ガラス基板の小径化により、ホルダが相対的に大きくなったが、このホルダを細く小さくすることは、ホルダの剛性を保つ観点からある程度で限界がある。そのため、ガラス基板に対してホルダが相対的に大きくなったことになり、このような現象が顕著となった。
ガラス基板において化学強化処理が十分に行われない箇所があると、このガラス基板の表層部において、圧縮応力の分布が一様でなくなり、ウェイビネス(Wa)がさらに劣化する虞れがある。
ガラス基板の表面部のウェイビネス(Wa)が1nmを超える程度に劣化してしまうと、このガラス基板を用いて構成した磁気ディスクにおいて、磁気ヘッドのフライングハイトに影響が生じる。これまでは、この程度のウェイビネス(Wa)の劣化は問題とならなかったが、低フライングハイト化により、この程度のウェイビネス(Wa)の劣化が問題となるようになっている。
なお、ここで、化学強化処理槽内におけるガラス基板間の間隔を広くすることによる改善が考えられる。しかし、このような解決手段においては、一つの化学強化処理槽により処理できるガラス基板の枚数が減少し、量産性が損なわれる虞れがあり、低コスト化が要求される小径のガラス基板においては、好適な手段とはいえない。
そこで、本発明は、前述のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス基板に含まれるイオンのイオン半径よりもイオン半径が大きいイオンを含有する化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせ、ガラス基板の両主表面側の表層部分に圧縮応力層を形成するとともにこれら圧縮応力層の間に引張応カ層を形成する化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板の主表面の全面に亘って十分に化学強化処理が行われるようにして、ガラス基板の表層部における圧縮応力の分布が一様となるようにし、これによりウェイビネス(Wa)をある数値以下に保ち、グライドハイトを所望の数値以下とすることで磁気ヘッドの低フライングハイト化を図り、高密度情報記録が可能であって、特に、携帯情報機器用の小型のハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスクを構成することができる磁気ディスク用ガラス基板及びこのような磁気ディスク用ガラス基板を製造できる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することにある。
また、本発明は、このような磁気ディスク用ガラス基板を用いることによって、磁気ヘッドの低フライングハイト化を図り、高密度情報記録が可能であって、特に、携帯情報機器用の小型のハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスクを製造できる磁気ディスクの製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、化学強化工程において、ガラス基板と化学強化処理液との相対的移動を適切に制御することにより、前記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成のいずれか一を有するものである。
〔構成1〕
化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、化学強化工程において、化学強化処理液をガラス基板に対して流動させることを特徴とするものである。
化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、化学強化工程において、化学強化処理液をガラス基板に対して流動させることを特徴とするものである。
〔構成2〕
化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、化学強化工程において、ガラス基板を化学強化処理液に対して移動させることを特徴とするものである。
化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、化学強化工程において、ガラス基板を化学強化処理液に対して移動させることを特徴とするものである。
〔構成3〕
構成2を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板の化学強化処理液に対する移動は、化学強化処理液中においてガラス基板を保持しているホルダを所定の周期で揺動させることによって行うことを特徴とするものである。
構成2を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板の化学強化処理液に対する移動は、化学強化処理液中においてガラス基板を保持しているホルダを所定の周期で揺動させることによって行うことを特徴とするものである。
〔構成4〕
本発明に係る磁気ディスクの製造方法は、構成1乃至構成3のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性記録層を形成することを特徴とするものである。
本発明に係る磁気ディスクの製造方法は、構成1乃至構成3のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性記録層を形成することを特徴とするものである。
本発明による磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、化学強化工程において化学強化処理液をガラス基板に対して流動させるので、ガラス基板の主表面部に対して常に新しい化学強化処理液が供給され、ガラス基板に接触したホルダ等により化学強化処理が阻害されることが防止され、化学強化処理前後でのウェイビネス(Wa)の数値の増大をある程度以下に抑止することで、磁気ヘッドの安定した浮上状態を実現できるガラス基板を提供することができる。
また、本発明による磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、化学強化工程においてガラス基板を化学強化処理液に対して移動させるので、ガラス基板の主表面部に対して常に新しい化学強化処理液が供給され、ガラス基板に接触したホルダ等により化学強化処理が阻害されることが防止され、化学強化処理前後でのウェイビネス(Wa)の数値の増大をある程度以下に抑止することで、磁気ヘッドの安定した浮上状態を実現できるガラス基板を提供することができる。
したがって、本発明によれば、化学強化工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、化学強化処理前後でのウェイビネス(Wa)の数値の増大をある程度以下に抑止することで、磁気ヘッドの低フライングハイト化を図り、高密度情報記録が可能であって、特に、携帯情報機器用の小型のハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスクを構成することができる磁気ディスク用ガラス基板を製造できる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することができるものである。
また、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造されるので、磁気ヘッドの低フライングハイト化を図り、高密度情報記録が可能であって、特に、携帯情報機器用の小型のハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスクを構成することができるものである。
そして、本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板を用いるので、磁気ヘッドの低フライングハイト化を図り高密度情報記録が可能であって、特に、携帯情報機器用の小型のハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスクを製造することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の工程を示すフローチャートである。
〔第1ラッピング工程〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、まず、図1に示すように、板状ガラス1の主表面をラッピング(研削)処理してガラス母材2とし、このガラス母材2を切断してガラス基板3を切り出し、このガラス基板3の主表面に対し、少なくともポリッシング(研磨)処理を行う。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、まず、図1に示すように、板状ガラス1の主表面をラッピング(研削)処理してガラス母材2とし、このガラス母材2を切断してガラス基板3を切り出し、このガラス基板3の主表面に対し、少なくともポリッシング(研磨)処理を行う。
ラッピング処理に供する板状ガラス1としては、様々な形状の板状ガラス1を用いることができる。この板状ガラス1の形状は、矩形状であっても、ディスク状(円盤状)であってもよい。ディスク状の板状ガラス1は、従来の磁気ディスク用ガラス基板の製造において用いられているラッピング装置を用いてラッピング処理を行うことができ、信頼性の高い加工を安価にて行うことができる。
この板状ガラス1のサイズは、製造しようとする磁気ディスク用ガラス基板より大きいサイズである必要がある。例えば、「1インチ型ハードディスクドライブ」(以下、「1インチ型HDD」という。)、あるいは、それ以下のサイズの小型ハードディスクドライブ(以下、「小型HDD」という。)に搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板を製造する場合にあっては、この磁気ディスク用ガラス基板の直径は略々20mm乃至30mm程度であるので、ディスク状の板状ガラス1の直径としては、30mm以上、好ましくは、48mm以上であることが好ましい。直径が65mm以上のディスク状の板状ガラス1を用いれば、1枚の板状ガラス1から、複数の「1インチ型HDD」に搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板を採取することができ、大量生産に好適である。
この板状ガラス1は、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、または、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらのうち、プレス法を用いれば、板状ガラス1を廉価に製造することができる。
板状ガラス1の材料としては、化学強化されるガラスであれば、特に限定されないが、アルミノシリケートガラスであることが好ましい。特に、リチウムを含有するアルミノシリケートガラスが好ましい。すなわち、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、ガラス基板のガラス材料がアルミノシリケートガラスであることを特徴とすることができる。このようなアルミノシリケートガラスは、イオン交換型化学強化処理、特に、低温イオン交換型化学強化処理により、好ましい圧縮応力を有する圧縮応力層及び引張応力を有する引張応力層を精密に得ることができるので、磁気ディスク用化学強化ガラス基板3の材料として好ましい。
ラッピング処理(第1ラッピング工程)は、板状ガラス1の主表面の形状精度(例えば、平坦度)や寸法精度(例えば、板厚の精度)を向上させることを目的とする加工である。このラッピング処理は、板状ガラス1の主表面に、砥石、あるいは、定盤を押圧させ、これら板状ガラス1及び砥石または定盤を相対的に移動させることにより、板状ガラス1の主表面を研削することにより行われる。このようなラッピング処理は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置を用いて行うことができる。
ラッピング処理において用いる砥石としては、ダイヤモンド砥石を用いることができる。また、遊離砥粒としては、アルミナ砥粒やジルコニア砥粒、または、炭化珪素砥粒などの硬質砥粒を用いるとよい。
このラッピング処理により、板状ガラス1の形状精度が向上し、主表面の形状が平坦化されるとともに板厚が所定の値となるまで削減されたガラス母材2が形成される。ガラス母材2の主表面がラッピング処理により平坦となされ、また、板厚が削減されていることにより、このガラス母材2を切断して、このガラス母材2からガラス基板3を切り出すことができる。すなわち、ガラス母材2からガラス基板3を切り出すときに、欠け、ひび、割れといった欠陥が発生することを防止することができる。
〔端面ポリッシング工程〕
次に、ガラス基板3の端面の鏡面研磨(端面ポリッシング工程)をしておくことが好ましい。ガラス基板3の端面は切断形状となっているので、この端面を鏡面にポリッシングしておくことにより、端面からのパーティクルの発生を抑制することができ、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて製造された磁気ディスクにおいて、いわゆるサーマルアスペリティ障害を良好に防止することができるからである。また、端面が鏡面であれば、微小クラックによる遅れ破壊を防止できる。端面の鏡面状態としては、算術平均粗さ(Ra)で100nm以下の鏡面が好ましい。
次に、ガラス基板3の端面の鏡面研磨(端面ポリッシング工程)をしておくことが好ましい。ガラス基板3の端面は切断形状となっているので、この端面を鏡面にポリッシングしておくことにより、端面からのパーティクルの発生を抑制することができ、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて製造された磁気ディスクにおいて、いわゆるサーマルアスペリティ障害を良好に防止することができるからである。また、端面が鏡面であれば、微小クラックによる遅れ破壊を防止できる。端面の鏡面状態としては、算術平均粗さ(Ra)で100nm以下の鏡面が好ましい。
〔第2ラッピング工程〕
後述するガラス基板3のポリッシング工程の前に、ラッピング処理(第2ラッピング工程)をしておくことが好ましい。このときのラッピング処理は、前述した板状ガラス1に対するラッピング処理と同様の手段により行うことができる。ガラス基板3をラッピング処理してからポリッシング処理を行うことにより、より短時間で、鏡面化された主表面を得ることができる。
後述するガラス基板3のポリッシング工程の前に、ラッピング処理(第2ラッピング工程)をしておくことが好ましい。このときのラッピング処理は、前述した板状ガラス1に対するラッピング処理と同様の手段により行うことができる。ガラス基板3をラッピング処理してからポリッシング処理を行うことにより、より短時間で、鏡面化された主表面を得ることができる。
〔ポリッシング工程〕
ガラス母材2から切り出されたガラス基板3に対してポリッシング処理を施し、ガラス基板3の主表面を鏡面化する。
ガラス母材2から切り出されたガラス基板3に対してポリッシング処理を施し、ガラス基板3の主表面を鏡面化する。
このポリッシング処理を施すことにより、ガラス基板3の主表面のクラックが除去され、主表面のマイクロウェイビネス(微小うねり)は、例えば、最大値で5nm以下となされる。このマイクロウェイビネス(Ra′、wa)は、フェイズシフトテクノロジー(PHASE SHIFT TECHNOLOGY)社製「MicroXAM」を用いて、非接触レーザ干渉法により、波長4μm乃至1mmのうねりを測定したもので規定する。測定範囲は、各辺が800μm及び980μmの矩形(800μm×980μm)の範囲内である。
また、ウェイビネス(うねり)(Wa)は、フェイズシフトテクノロジー(PHASE SHIFT TECHNOLOGY)社製の多機能ディスク用干渉計「OPTIFLAT」を用いて、非接触レーザ干渉法により、波長300μm乃至5mmのうねりを測定したもので規定する。
これらいずれの測定器とも、従来の触針式とは異なり、「OPTIFLAT」では白色光(波長:680nm)、「MicroXAM」ではレーザ光(波長:552.8nm)を用いてガラス基板3の表面の所定領域を走査し、ガラス基板3の表面からの反射光と基準面からの反射光とを合成し、合成点に生じた干渉縞より、ウェイビネス(Wa)、マイクロウェイビネス(Ra′、wa)を計算するものである。
ガラス基板3の主表面がこのような鏡面となっていれば、このガラス基板3を用いて製造される磁気ディスクにおいて、磁気ヘッドの浮上量を、例えば、10nm程度とすることができる。また、ガラス基板3の主表面がこのような鏡面となっていれば、後述する化学強化処理において、ガラス基板3の微細領域において均一に化学強化処理を施すことができ、また、微小クラックによる遅れ破壊を防ぐことができる。
このポリッシング処理は、例えば、ガラス基板3の主表面に、研磨布(例えば、研磨パッド)が貼り付けられた定盤を押圧させ、ガラス基板3の主表面に研磨液を供給しながら、これらガラス基板3及び定盤を相対的に移動させ、ガラス基板3の主表面を研磨することにより行われる。このとき、研磨液には、研磨砥粒を含有させておくとよい。研磨砥粒としては、コロイダルシリカ研磨砥粒を用いることができる。研磨砥粒としては、平均砥粒が10nm乃至200nmの砥粒を用いるとよい。
〔化学強化工程〕
図2は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法における化学強化工程を示す斜視図である。
図2は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法における化学強化工程を示す斜視図である。
ガラス基板3のポリッシング工程及び洗浄工程の後、化学強化処理を施す。化学強化処理を行うことにより、磁気ディスク用ガラス基板の表層部に高い圧縮応力を生じさせることができ、耐衝撃性を向上させることができる。特に、ガラス基板3の材料としてアルミノシリケートガラスを用いている場合には、好適に化学強化処理を行うことができる。
本発明における化学強化処理は、化学強化処理液とガラス基板3とを接触させることによって行う。この化学強化処理工程においては、ガラス基板3に含まれるイオンのイオン半径よりもイオン半径が大きい第1のイオンを含有する化学強化処理液とガラス基板3とを接触させて、イオン交換をさせる。この化学強化工程は、図2に示すように、化学強化槽を用いて行われ、ガラス基板3は、このガラス基板3に含まれるイオンのイオン半径よりもイオン半径が大きいイオンを含有する化学強化処理液中に、ホルダ4によって保持された状態で浸漬される。
化学強化工程を行うための化学強化槽及びホルダ4の材料としては、耐食性に優れるとともに、低発塵性の材料であれば、特に限定されない。化学強化塩や化学強化溶融塩は酸化性があり、かつ、処理温度が高温なので、耐食性に優れた材料を選定することにより、損傷や発塵を抑制する必要がある。この観点からは、化学強化槽の材料としては、石英材が特に好ましいが、ステンレス材や、特に耐食性に優れるマルテンサイト系、または、オーステナイト系ステンレス材も用いることができる。なお、石英材は、耐食性に優れるが、高価なので、採算性を考慮して、適宜選択することができる。ホルダ4の形状は、従来より使用されているものと同様であり、複数のガラス基板3を、それらの周縁部分(端面)の複数箇所を支持して保持するように構成されたものである。
化学強化処理液としては、加熱した化学強化溶融塩を用いることができる。すなわち、化学強化処理液としては、アルカリ金属元素を含有する硝酸塩、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸リチウムなどを含有する硝酸塩を用いることが好適である。なお、硝酸塩に含有されるリチウム元素は、0ppm〜2000ppmとすることが好適である。このような化学強化塩は、ガラス、特に、リチウム元素を含むアルミノシリケートガラスを化学強化処理したときに、磁気ディスク用ガラス基板としての所定の剛性及び耐衝撃性を実現することができるからである。第1工程での化学強化溶融塩中に含有されるリチウムイオンが多すぎると、イオン交換が阻害されてしまう結果、本発明で得ようとする引張応カや圧縮応カを得ることが困難になる場合がある。
イオン交換法としては、低温型イオン交換法、高温型イオン交換法、表面結晶化法、ガラス表面の脱アルカリ法などが知られているが、ガラスの徐冷点を超えない温度領域でイオン交換を行う低温型イオン交換法を用いることが好ましい。
なお、ここでいう低温型イオン交換法は、ガラスの徐冷点以下の温度領域において、ガラス中のアルカリ金属イオンをこのアルカリ金属イオンよりもイオン半径の大きいアルカリ金属イオンと置換し、イオン交換部の容積増加によってガラス表層に圧縮応力を発生させ、ガラス表層を強化する方法のことをさす。
化学強化処理を行なうときの化学強化処理液の加熱温度は、イオン交換が良好に行われるという観点等から、280°C乃至660°C、特に、300°C乃至400°Cであることが好ましい。ガラス基板3を化学強化処理液に接触(浸漬)させる時間は、数時間乃至数十時間とすることが好ましい。
なお、ガラス基板3を化学強化処理液に接触させる前に、予備加熱として、ガラス基板3を100°C乃至300°Cに加熱しておくことが好ましい。
そして、本発明における化学強化処理工程においては、ガラス基板3と化学強化処理液との相対的移動を適切に制御する。例えば、この化学強化処理工程においては、化学強化処理液をガラス基板3に対して流動させて、ガラス基板3の主表面部に対して常に新しい化学強化処理液を供給する。化学強化処理液を流動させる手段としては、ポンプを用いて、化学強化槽内において化学強化処理液を循環させ撹拌することの他に、超音波加振器や泡(バブル)発生器を用いて、化学強化処理液を振動、揺動させて流動させ、ガラス基板3の主表面部に対して常に新しい化学強化処理液が供給されるようにすることなどが考えられる。また、化学強化槽内における化学強化処理液の温度分布を利用して、この化学強化処理液を対流によって循環させて、ガラス基板3の主表面部に対して常に新しい化学強化処理液を供給するようにしてもよい。
また、この化学強化工程においては、ガラス基板3を化学強化処理液に対して移動させるようにしてもよい。すなわち、図2に示すように、ホルダ4によって保持したガラス基板3を、このホルダ4ごと、化学強化処理液中において、所定時間間隔で所定時間に亘り、一定方向に移動させ、あるいは、往復移動(揺動)させることにより、ガラス基板3の主表面部に対して常に新しい化学強化処理液が供給されるようにすることが考えられる。
このような、化学強化処理液のガラス基板3に対する流動、あるいは、ガラス基板3の化学強化処理液に対する移動により、ガラス基板3の主表面部に対しては、常に新しい化学強化処理液が供給されるので、このガラス基板3に対する化学強化処理が良好に行われ、ガラス基板3の表面のウェイビネス(Wa)の増大が抑えられる。
ウェイビネス(Wa)は、前述したように、例えば、多機能ディスク用干渉計「OPTIFLAT」などによって測定され、うねりの波長(山と山、または、谷と谷との距離)が、300μm乃至5mm程度のもので、以下の式により得られる。
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
ここで、xiは、測定ポイントにおける測定ポイント値(測定ポイントにおいてある基準線から測定曲線までの高さ)であり、xaは、測定ポイント値の平均値であり、Nは、測定ポイント数である。
すなわち、ウェイビネス(Wa)は、中心線から測定曲線までの偏差の絶対値の平均を指す。ここで中心線とは、測定曲線の平均線と平行な直線を引いたとき、この直線と測定曲線で囲まれる面積が、この直線の両側で等しくなる直線をいう。このウェイビネス(Wa)は、ガラス基板3の表面内における中心から所定距離だけ離間した点からなる2つの同心円で囲まれた領域を非接触レーザ干渉法によって測定した波長300μm乃至5mmのうねりの平均高さとして表現することができる。なお、詳細な測定方法は、例えば、米国特許(USP 5,737,081、USP 5,471,307)に記載されている。
この化学強化工程を完了した後のガラス基板3は、図1に示すように、冷却され、洗浄工程を経て、製品(磁気ディスク用ガラス基板)となされる。
また、本発明においては、HDDにおけるグライドハイトと、化学強化処理後のガラス基板3の表面のウェイビネス(Wa)との関係を予め求めておき、ウェイビネス(Wa)の値を、HDDにおけるグライドハイトが所望の数値以下となるような値以下とするために、化学強化処理液のガラス基板3に対する流動の条件を決定することができる。
あるいは、本発明においては、HDDにおけるグライドハイトと、化学強化処理後のガラス基板3の表面のウェイビネス(Wa)との関係を予め求めておき、ウェイビネス(Wa)の値を、HDDにおけるグライドハイトが所望の数値以下となるような値以下とするために、ガラス基板3の化学強化処理液に対する移動の条件を決定することができる。
ここで、HDDにおけるグライドハイトは、例えば、10nm以下とすることが好ましい。
なお、HDDにおけるグライドハイトと化学強化処理後のガラス基板3の表面のウェイビネス(Wa)との関係については、例えば、特開2000−348332公報には、グライドハイトとガラス基板表面のマイクロウェイビネス(Ra′、wa)との間に相関があることが記載されている。そして、HDDにおけるグライドハイトは、本発明におけるガラス基板3の表面のウェイビネス(Wa)(波長300μm乃至5mmのうねりを測定した場合の算術平均値)とも相関があると考えられる。
前述のようにして製造される本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、ディスク厚が0.5mm未満、特に、ディスク厚が0.1mm乃至0.4mmの薄型磁気ディスク用ガラス基板として特に好適である。また、この磁気ディスク用ガラス基板は、ディスクの直径(外径)が30mm以下の小型磁気ディスク用ガラス基板として特に好適である。このような薄型、小型磁気ディスクは、「1インチ型HDD」、または、「1インチ型HDD」よりも小型の「0.85インチ型HDD」に搭戴されるからである。すなわち、この磁気ディスク用ガラス基板は、「1インチ型HDD」、または、「0.85インチ型HDD」に搭戴される磁気ディスク用ガラス基板として好適である。
なお、「1インチ型HDD」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の直径は、約27.4mm、ディスク厚は、0.381mmである。また、「0.85インチ型HDD」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の直径は、約21.6mmである。
なお、本発明においては、磁気ディスク用ガラス基板の直径(サイズ)については、特に限定されるものではない。しかし、本発明は、特に、小径の磁気ディスク用ガラス基板を製造する場合に優れた有用性を発揮する。ここでいう小径とは、例えば、直径が30mm以下、もしくは、ディスク厚が0.5mm以下の磁気ディスク用ガラス基板である。すなわち、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、ガラス基板の直径が30mm以下、もしくは、ディスク厚が0.5mm以下であることを特徴とすることができる。
例えば、直径が30mm以下の小径の磁気ディスクは、いわゆるカーナビゲーションシステムなどの車載用機器や、いわゆるPDAや携帯電話端末装置などの携帯用機器における記憶装置において用いられ、固定されて使用される機器における通常の磁気ディスクに比較して、高い耐久性や耐衝撃性が要求されるからである。
〔磁性記録層の成膜〕
本発明に係る磁気ディスクの製造方法において、上述のようにして製造された磁気ディスク用ガラス基板上に形成される磁性記録層としては、例えば、コバルト(Co)系強磁性材料からなるものを用いることができる。特に、高い保磁力が得られるコバルト−プラチナ(Co−Pt)系強磁性材料や、コバルト−クロム(Co−Cr)系強磁性材料からなる磁性記録層として形成することが好ましい。なお、磁性記録層の形成方法としては、DCマグネトロンスパッタリング法を用いることができる。
本発明に係る磁気ディスクの製造方法において、上述のようにして製造された磁気ディスク用ガラス基板上に形成される磁性記録層としては、例えば、コバルト(Co)系強磁性材料からなるものを用いることができる。特に、高い保磁力が得られるコバルト−プラチナ(Co−Pt)系強磁性材料や、コバルト−クロム(Co−Cr)系強磁性材料からなる磁性記録層として形成することが好ましい。なお、磁性記録層の形成方法としては、DCマグネトロンスパッタリング法を用いることができる。
また、ガラス基板と磁性記録層との間に、適宜、下地層等を介挿させることが好ましい。これら下地層の材料としてはAl−Ru系合金や、Cr系合金などを用いることができる。
また、磁性記録層上には、磁気ヘッドの衝撃から磁気ディスクを防護するための保護層を設けることができる。この保護層としては、硬質な水素化炭素保護層を好ましく用いることができる。
さらに、この保護層上に、PFPE(パーフルオロポリエーテル)化合物からなる潤滑層を形成することにより、磁気ヘッドと磁気ディスクとの干渉を緩和することができる。この潤滑層は、例えば、ディップ法により、塗布成膜することにより形成することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例の構成に限定されるものではない。
〔実施例1(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の実施例)〕
以下に述べる本実施例における磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、以下の(1)乃至(8)の工程からなる。
(1)粗ラッピング工程(粗研削工程)
(2)形状加工工程
(3)精ラッピング工程(精研削工程)
(4)端面鏡面加工(ポリッシング)工程
(5)第1研磨(ポリッシング)工程
(6)第2研磨(ポリッシング)工程
(7)化学強化工程
(8)洗浄工程
以下に述べる本実施例における磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、以下の(1)乃至(8)の工程からなる。
(1)粗ラッピング工程(粗研削工程)
(2)形状加工工程
(3)精ラッピング工程(精研削工程)
(4)端面鏡面加工(ポリッシング)工程
(5)第1研磨(ポリッシング)工程
(6)第2研磨(ポリッシング)工程
(7)化学強化工程
(8)洗浄工程
まず、アモルファスのアルミノシリケートガラスからなるディスク状のガラス母材を用意した。このアルミノシリケートガラスは、リチウムを含有している。このアルミノシリケートガラスの組成は、SiO2を、63.6重量%、Al2O3を、14.2重量%、Na2Oを、10.4重量%、Li2Oを、5.4重量%、ZnO2を、6.0重量%、Sb2O3を、0.4重量%含むものである。
(1)粗ラッピング工程
溶融させたアルミノシリケートガラスから形成した厚さ0.6mmのシートガラスをガラス母材として用いて、このシートガラスから、研削砥石により、直径22.9mm、厚さ0.6mmの円盤状のガラス基板を得る。
溶融させたアルミノシリケートガラスから形成した厚さ0.6mmのシートガラスをガラス母材として用いて、このシートガラスから、研削砥石により、直径22.9mm、厚さ0.6mmの円盤状のガラス基板を得る。
このシートガラスの材料であるアルミノシリケートガラスとしては、SiO2を、58乃至75重量%、Al2O3を、5乃至23重量%、Na2Oを、4乃至13重量%、Li2Oを、3乃至10重量%、含有するものであればよい。
次に、ガラス基板に対し、寸法精度及び形状精度の向上のために、ラッピング工程を施す。このラッピング工程は、両面ラッピング装置を用いて、粒度#400の砥粒を用いて行う。
(2)形状加工工程
次に、円筒状の砥石を用いて、ガラス基板の中央部分に直径6.1mmの孔を形成するとともに、外周端面の研削をして、直径を21.63mmとした後、外周端面及び内周端面に所定の面取り加工を施す。このときのガラス基板の端面の表面粗さは、Rmaxで4μm程度にする。
次に、円筒状の砥石を用いて、ガラス基板の中央部分に直径6.1mmの孔を形成するとともに、外周端面の研削をして、直径を21.63mmとした後、外周端面及び内周端面に所定の面取り加工を施す。このときのガラス基板の端面の表面粗さは、Rmaxで4μm程度にする。
(3)精ラッピング工程
次に、砥粒の粒度を#1000に替え、ガラス基板の主表面をラッピングすることにより、主表面の表面粗さを、Rmaxで2μm程度、算術平均粗さ(Ra)で0.2μm程度とする。
次に、砥粒の粒度を#1000に替え、ガラス基板の主表面をラッピングすることにより、主表面の表面粗さを、Rmaxで2μm程度、算術平均粗さ(Ra)で0.2μm程度とする。
この精ラッピング工程を行うことにより、前工程である粗ラッピング工程や形状加工工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を低減させる。
(4)端面鏡面加工(ポリッシング)工程
次いで、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながら、ガラス基板の端面(内周端面及び外周端面)の表面の粗さを、算術平均粗さ(Ra)で40nm程度に研磨する。
次いで、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながら、ガラス基板の端面(内周端面及び外周端面)の表面の粗さを、算術平均粗さ(Ra)で40nm程度に研磨する。
なお、この端面鏡面加工(ポリッシング)工程においては、ガラス基板を重ね合わせて端面をポリッシングするが、この際に、ガラス基板の主表面にキズ等が付くことを避けるため、後述する第1研磨(ポリッシング)工程よりも前、あるいは、第2研磨(ポリッシング)工程の前後に行うことが好ましい。
この端面鏡面加工(ポリッシング)工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できるような鏡面状態に加工する。
(5)第1研磨(ポリッシング)工程
次に、前述した精ラッピング工程において残留した傷や歪みを除去するため、両面研磨装置を用いて、第1研磨(ポリッシング)工程を行う。
次に、前述した精ラッピング工程において残留した傷や歪みを除去するため、両面研磨装置を用いて、第1研磨(ポリッシング)工程を行う。
研磨パッドとして発泡ポリウレタンを用いて、第1研磨(ポリッシング)工程を実施する。研磨条件は、酸化セリウム及びRO水からなる研磨液を用いる。この第1研磨(ポリッシング)工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水(1)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬させて、超音波洗浄し、乾燥させる。
(6)第2研磨(ポリッシング)工程
次に、第1研磨工程で使用した両面研磨装置と同様の両面研磨装置を用いて、ポリッシャを軟質研磨パッド(発泡ポリウレタン)に替えて、主表面の鏡面研磨工程として、第2研磨(ポリッシング)工程を実施する。
次に、第1研磨工程で使用した両面研磨装置と同様の両面研磨装置を用いて、ポリッシャを軟質研磨パッド(発泡ポリウレタン)に替えて、主表面の鏡面研磨工程として、第2研磨(ポリッシング)工程を実施する。
第2研磨(ポリッシング)工程は、前述した第1研磨(ポリッシング)工程により得られた平坦な主表面を維持しつつ、クラックを確実に除去し、この主表面の表面粗さ算術平均粗さ(Ra)を、例えば、0.4乃至0.1nm程度まで低減させた鏡面とすることを目的とするものである。
研磨液は、コロイダルシリカ研磨砥粒(平均粒径80nm)及びRO水からなる研磨液を用い、荷重を100g/cm2、研磨時間を5分とする。
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水(1)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬させて、超音波洗浄し、乾燥させる。
(7)化学強化工程
次に、洗浄を終えたガラス基板に対し、化学強化処理を施す。この化学強化処理は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムと硝酸リチウムとを混合させた化学強化塩を溶融させた化学強化溶融塩を化学強化処理液として用いて行う。
次に、洗浄を終えたガラス基板に対し、化学強化処理を施す。この化学強化処理は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムと硝酸リチウムとを混合させた化学強化塩を溶融させた化学強化溶融塩を化学強化処理液として用いて行う。
この化学強化処理液を340°C乃至380°Cに加熱し、洗浄及び乾燥を終えたガラス基板を、約2時間乃至4時間、化学強化槽において化学強化処理液中に浸漬して、化学強化処理を行う。この浸漬の際には、磁気ディスク用ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、図2に示すように、複数のガラス基板3が周縁部分(端面)で保持されるように、ホルダ4に収納した状態で行う。このホルダ4において、各ガラス基板3は、主表面を略々垂直とした状態で保持される。
そして、この化学強化処理工程中においては、30分間隔で、各3分間に亘り、ホルダ4に保持されたガラス基板を、図2中矢印Aで示すように、上下方向に揺動(往復移動)させる。揺動させる距離(振幅)は、50mm乃至100mm程度、すなわち、ガラス基板3の直径(21.6mm)の2.5倍乃至5倍程度とする。
(8)洗浄工程
化学強化工程を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、20°Cの水槽に浸漬して急冷し、約10分間維持する。
化学強化工程を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、20°Cの水槽に浸漬して急冷し、約10分間維持する。
急冷を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、約40°Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行う。さらに、硫酸洗浄を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、純水(1)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬させて、超音波洗浄し、乾燥させる。
次に、洗浄を終えた磁気ディスク用ガラス基板の主表面について、目視検査を行い、さらに、光の反射、散乱及び透過を利用した精密検査を実施する。また、得られた磁気ディスク用ガラス基板の主表画を精密に電子顕微鏡を用いて分析したが、クラックや凸部(微小うねり)などは存在しない良好な鏡面であることが確認された。
すなわち、上述のような工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板の主表面のマイクロウェイビネス(Ra′、wa)は、2.5nmとなされ、超平滑な鏡面となっていることが確認された。このマイクロウェイビネス(Ra′、wa)の最大値は、フェイズシフトテクノロジー(PHASE SHIFT TECHNOLOGY)社製「MicroXAM」を用いて、非接触レーザ干渉法により、波長4μm乃至1mmのうねりを測定した場合の最大値である。測定範囲は、各辺が800μm及び980μmの矩形(800μm×980μm)の範囲内である。
また、磁気ディスク用ガラス基板の表面内における中心から所定距離だけ離間した点からなる2つの同心円で囲まれた領域について、フェイズシフトテクノロジー(PHASE SHIFT TECHNOLOGY)社製の多機能ディスク用干渉計「OPTIFLAT」を用いて、非接触レーザ干渉法によって測定した波長300μm乃至5mmのうねりの平均高さ(ウェイビネス(Wa))は、0.7nm乃至1.1nmとなされ、超平滑な基板となっていることが確認された。うねりの平均高さWaは、以下の式によって求めた。
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
ここで、xiは、測定ポイントにおける測定ポイント値(測定ポイントにおいてある基準線から測定曲線までの高さ)であり、xaは、測定ポイント値の平均値であり、Nは、測定ポイント数である。
また、コロイダルシリカ研磨砥粒(平均粒径80nm)を用いた主表面の鏡面研磨により、Raで0.30nmの平滑な鏡面に仕上げられていることが確認できた。なお、主表面がRaで0.1nm乃至0.4nm程度であるクラックが除去された鏡面となされることにより、化学強化ガラスの遅れ破壊を、より確実に防止できる。
また、磁気ディスク用ガラス基板の表面に異物やサーマルアスペリティの原因となるパーティクルは認められず、円孔の内周側端面にも異物やクラックは認められなかった。
〔実施例2(磁気ディスクの製造方法の実施例)〕
次に、以下の工程を経て、磁気ディスクを製造した。
次に、以下の工程を経て、磁気ディスクを製造した。
前述の工程により得られる磁気ディスク用ガラス基板の両主表面に、静止対向型のDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、Al−Ru合金のシード層、Cr−W合金の下地層、Co−Cr−Pt−Ta合金の磁性記録層、水素化炭素保護層を順次成膜する。シード層は、磁性記録層の磁性グレインを微細化させる作用を奏し、下地層は、磁性記録層の磁化容易軸を面内方向に配向きせる作用を奏する。
この磁気ディスクは、非磁性基板である磁気ディスク用ガラス基板と、この磁気ディスク用ガラス基板上に形成された磁性記録層と、この磁性記録層上に形成された保護層と、この保護層上に形成された潤滑層とを少なくとも備えて構成される。
磁気ディスク用ガラス基板と磁性記録層との間には、シード層及び下地層からなる非磁性金属層(非磁性下地層)が形成されている。この磁気ディスクにおいて、磁性記録層以外は、全て非磁性体からなる層である。この実施例においては、磁性記録層及び保護層、保護層及び潤滑層は、それぞれ接した状態で形成されている。
すなわち、まず、スパッタリングターゲットとして、Al−Ru(アルミニウム−ルテニウム)合金(Al:50at%、Ru:50at%)を用いて、磁気ディスク用ガラス基板上に、膜厚30nmのAl−Ru合金からなるシード層をスパッタリングにより成膜する。次に、スパッタリングターゲットとして、Cr−W(クロム−タングステン)合金(Cr:80at%、W:20at%)を用いて、シード層5上に、膜厚20nmのCr−W合金からなる下地層をスパッタリングにより成膜した。次いで、スパッタリングターゲットとして、Co−Cr−Pt−Ta(コバルト−クロム−プラチナ−タンタル)合金(Cr:20at%、Pt:12at%、Ta:5at%、残部Co)からなるスパッタリングターゲットを用いて、下地層上に、膜厚15nmのCo−Cr−Pt−Ta合金からなる磁性記録層をスパッタリングにより形成する。
次に、磁性記録層上に水素化炭素からなる保護層を形成し、さらに、PFPE(パーフルオロポリエーテル)からなる潤滑層をディップ法で成膜する。保護層は、磁気ヘッドの衝撃から磁性記録層を保護する作用を奏する。
このようにして得られた磁気ディスクを用い、浮上量が10nmのグライドヘッドによりグライド検査を行ったところ、衝突する異物等は検出されず、安定した浮上状態を維持することができた。また、この磁気ディスクを用いて、700kFCIで記録再生試験を行ったところ、十分な信号強度比(S/N比)を得ることができた。また、信号のエラーは確認されなかった。
さらに、1平方インチ当り60ギガビット以上の情報記録密度を必要とする「0.85インチ型HDD」に搭載して駆動させたところ、特に問題なく記録再生を行うことができた。
1 板状ガラス
2 ガラス母材
3 ガラス基板
2 ガラス母材
3 ガラス基板
Claims (5)
- 化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、
前記化学強化工程において、前記化学強化処理液を前記ガラス基板に対して流動させる
ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 化学強化処理液とガラス基板とを接触させてイオン交換をさせる化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、
前記化学強化工程において、前記ガラス基板を前記化学強化処理液に対して移動させる
ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 前記ガラス基板の前記化学強化処理液に対する移動は、前記化学強化処理液中において前記ガラス基板を保持しているホルダを所定の周期で揺動させることによって行う
ことを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性記録層を形成する
ことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された直径が1インチ以下の円盤状の形状をした磁気ディスク用ガラス基板であって、
主表面における記録再生領域において中心から所定距離だけ離間した点からなる2つの同心円で囲まれた領域を非接触レーザ干渉法によって測定したうねりの波長が300μm乃至5mmであって、以下の関係式から求められる前記うねりの平均高さWaが、1.0nm以下である
ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板。
Wa=(1/N)Σi=1 N|xi−xa|
(ただし、xiは、測定ポイントにおける測定ポイント値(測定ポイントにおいてある基準線から測定曲線までの高さ)であり、xaは、測定ポイント値の平均値であり、Nは、測定ポイント数である。)
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