発明の概要
一つの局面のなかで、本発明により、IL-21の機能活性を有するポリペプチドの治療有効量をその必要性がある対象に投与する段階を含む、非ホジキンリンパ腫の治療方法が提供される。特定の態様として、ポリペプチドは、対象への投与前に、単離したガン細胞の増殖を引き起こさないことが示されている。
別の局面として、本発明により、IL-21の機能活性を有するポリペプチドの治療有効量を対象に投与する段階を含む、腎細胞ガン、上皮細胞ガン、乳ガン、前立腺ガン、卵巣ガンおよび結腸ガンからなる群より選択されるガンの治療方法が提供される。一つの態様として、腫瘍反応が存在する。別の態様として、腫瘍反応は、完全反応、部分反応または進行までの時間の減少として測定される。
別の局面として、本発明により、IL-21の機能活性を有する第一のポリペプチドと、第二のポリペプチドとを含む融合タンパク質の治療有効量をその必要性がある対象に投与する段階を含む、非ホジキンリンパ腫の治療方法が提供される。その他の態様として、この方法により、ガンが、腎細胞ガン、上皮細胞ガン、乳ガン、前立腺ガン、卵巣ガンおよび結腸ガンからなる群より選択可能とされる。一つの態様として、腫瘍反応が存在する。別の態様として、腫瘍反応は、完全反応、部分反応または進行までの時間の減少として測定される。
別の局面として、本発明の方法により、IL-21の機能活性を有するポリペプチドの治療有効量を投与する段階を含む、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、ヒト免疫不全ウイルス感染症、コロナウイルス(coronovirus)により引き起こされる突発性急性呼吸器症候群、単純ヘルペスウイルス感染症、Epstein-Barrウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症; ポックスウイルス感染症; パピローマウイルス感染症; アデノウイルス感染症、ポリオウイルス感染症; オルトミクソウイルス感染症、パラミクソウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症; カリシウイルス感染症; 狂犬病ウイルス感染症; および牛疫ウイルス感染症からなる群より選択される感染症の治療方法が提供される。
別の局面として、本発明により、IL-21の機能活性を有するポリペプチドの治療有効量を投与する段階を含む、後天性免疫不全症; 肝炎; 胃腸炎; 出血性疾患; 腸炎; 心臓炎; 脳炎; 麻痺; 細気管支炎(Brochiolitis); 上部または下部呼吸器疾患; 呼吸器の乳頭腫症; 関節炎; 播腫性疾患、髄膜炎、および単核球症からなる群より選択される疾患を引き起こす、哺乳動物のウイルス感染症の治療方法が提供される。
一つの局面として、本発明により、IL-21の機能活性を有する第一ポリペプチドと、第二ポリペプチドとを含む融合タンパク質の治療有効量を投与する段階を含む、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、ヒト免疫不全ウイルス感染症、コロナウイルス(coronovirus)により引き起こされる突発性急性呼吸器症候群、単純ヘルペスウイルス感染症、Epstein-Barrウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症; ポックスウイルス感染症; パピローマウイルス感染症; アデノウイルス感染症、ポリオウイルス感染症; オルトミクソウイルス感染症、パラミクソウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症; カリシウイルス感染症; 狂犬病ウイルス感染症; および牛疫ウイルス感染症からなる群より選択される感染症の治療方法が提供される。
特定の態様として、IL-21の機能活性を有するポリペプチドおよび融合タンパク質を用いたウイルス感染症の治療方法により、ウイルス感染レベルが軽減される。その他の態様として、ウイルス感染レベルの軽減は、ウイルス量の減少、ウイルス特異抗体の増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの減少、または免疫組織化学により測定されるような標的組織の組織学的改善として測定される。
本発明によりまた、IL-21の機能活性を有するポリペプチドの治療有効量を投与する段階を含む、哺乳動物の細菌感染の治療方法であって、その際に細菌感染がクラミディア菌(chlamydiae)、リステリア菌(listeriae)、ヘリコバクターピロリ菌(helicobacter pylori)、マイコバクテリウム菌(mycobacterium)、マイコプラズマ菌(mycoplasma)、サルモネラ菌(salmonella)、および赤痢菌(shigella)からなる群より選択される細菌による感染である方法が提供される。
その他の局面として、本発明により、IL-21の機能活性を有する第一ポリペプチドと、第二ポリペプチドとを含む融合タンパク質の治療有効量を投与する段階を含む、哺乳動物の細菌感染の治療方法であって、その際に細菌感染が、クラミディア菌(chlamydiae)、リステリア菌(listeriae)、ヘリコバクターピロリ菌(helicobacter pylori)、マイコバクテリウム菌(mycobacterium)、マイコプラズマ菌(mycoplasma)、サルモネラ菌(salmonella)、および赤痢菌(shigella)からなる群より選択される細菌による感染である方法が提供される。
本発明の全ての局面および態様に対して、ポリペプチドおよび融合タンパク質中の第一ポリペプチドは、配列番号:2の残基41(Gln)〜148(Ile)または配列番号:2の残基32(Gln)〜162(Ser)を含むIL-21ポリペプチドに対して少なくとも80%の、90%の、95%のまたは完全な同一性を有するポリペプチドを含み得る。
本発明の説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明の理解を助けるため、次の用語を定義する:
用語「親和性タグ」とは、第2ポリペプチドの精製または検出を提供し、または基質への第2ポリペプチドの結合のための部位を供給するために、第2ポリペプチドに結合され得るポリペプチド断片を示すために本明細書において使用される。主に、抗体もしくは他の特異的結合剤が利用できるいずれかのペプチドまたはタンパク質が、親和性タグとして使用され得る。親和性タグには、ポリヒスチジン領域、プロテインA (Nilssonら、EMBO J. 4: 1075, 1985; Nilssonら、Methods Enzymol. 198: 3, 1991)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(SmithおよびJohnson, Gene 67; 31, 1988)、Glu-Glu親和性タグ(Grussenmeyerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 7952〜4, 1985)、サブスタンスP、Flag(商標)ペプチド(Hoppら、Biotechnology 6: 1204〜1210, 1988)、ストレプトアビジン結合ペプチド、またはその他の抗原性エピトープもしくは結合ドメインが含まれる。全般的には、Fordら、Protein Expression and Purification 2: 95〜107, 1991を参照されたい。親和性タグをコードするDNAは、商業的供給元(例えばPharmacia Biotech, Piscataway, NJ)から入手できる。
用語「対立遺伝子変異体」とは、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の二つまたはそれ以上の別の形態(alternative form)のいずれかを示すために、本明細書において使用される。対立遺伝子変異は、突然変異を通して天然では生じ、そして集団内の表現型多型現象をもたらしうる。遺伝子突然変異は、サイレント(コードされたポリペプチドにおいて変化がない)であることもあり、あるいは改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることもある。対立遺伝子変異体という用語はまた、遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードされるタンパク質を示すために本明細書において使用される。
用語「アミノ末端」および「カルボキシル末端」とは、ポリペプチド内の位置を示すために本明細書において使用される。その情況が可能である場合、これらの用語は、接近性又は相対的位置を示すためにポリペプチドの特定の配列または一部に関して使用される。例えば、ポリペプチド内の対象配列のカルボキシル末端側に位置する一定の配列は、その対象配列のカルボキシル末端に隣接して位置するが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端であるわけではない。
用語「ガン」または「ガン細胞」とは、正常な組織または組織細胞とは異なる特徴を有する新生物のなかに見られる組織または細胞を示すために本明細書において使用される。そのような特徴のなかには、以下に限定されることはないが、退形成の程度、形状の不規則性、細胞の輪郭の不明瞭さ、核のサイズ、核または細胞質の構造の変化、その他の表現型の変化、ガン状態または前ガン状態を示す細胞内タンパク質の存在、細胞***数の増加、および転移能が含まれる。「ガン」に関する単語には、ガン腫、肉腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、および硬性ガン(scirrus)、悪性転換、新生物などが含まれる。
用語「相補体/抗相補体対」とは、適切な条件下で、非共有的に会合して安定した対を形成する非同一性成分を示す。例えば、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)は、相補体/抗相補体対の基本型メンバーである。他の典型的な相補体/抗相補体対には、受容体/リガンド対、抗体/抗原(またはハプテンもしくはエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対、および同様のものが含まれる。相補体/抗相補体対の続く解離が所望される場合、その相補体/抗相補体対は109 M-1未満(<109 M-1)の結合親和性を有することが好ましい。
用語「ポリヌクレオチド分子の相補体」とは、相補的塩基配列、および対照配列に比較して逆の配向を有するポリヌクレオチド分子を示す。
用語「縮重ヌクレオチド配列」とは、一つまたは複数の縮重コドンを含むヌクレオチドの配列(ポリペプチドをコードする対照ポリヌクレオチド分子に比較して)を示す。縮重コドンは、ヌクレオチドの異なったトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAUおよびGACトリプレットはそれぞれAspをコードする)。
用語「発現ベクター」とは、その転写を与える追加断片に操作可能に連結された関心あるポリペプチドをコードする部分を含む、線状又は環状DNA分子を示すために使用される。そのような追加断片には、プロモーターおよびターミネーター配列が含まれ、そして同様に、一つまたは複数の複製起点、一つまたは複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含めることができる。発現ベクターは一般に、プラスミドもしくはウイルスDNAから誘導され、または両者の要素を含むことができる。
用語「単離された」とは、ポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドがその天然の遺伝的環境から除去され、そして従って、他の無関係なまたは所望しないコード配列を有さず、そして遺伝子組み換えタンパク質の産生系内での使用に適切な形で存在することを示す。そのような単離された分子は、それらの天然の環境から分離され、そしてcDNAおよびゲノムクローンを含む分子である。本発明の単離されたDNA分子は、通常は関係している他の遺伝子を含まないが、しかし天然に存在する5'および3'非翻訳領域、例えばプロモーターおよびターミネーターを含むことができる。関連する領域の同定は、当業者に明らかであろう(例えば、DynanおよびTijan, Nature 316: 774〜78, 1985を参照をされたい)。
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その生来の環境以外の条件、例えば血液および動物組織とは別の条件下で見出されるポリペプチドまたはタンパク質である。好ましい形態として、単離されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物起源の他のポリペプチドを実質的に含まない。高精製された形態、すなわち95%を超える純度、より好ましくは99%を超える純度でポリペプチドを供給することが好ましい。この情況下で使用される場合、用語「単離された」とは、用語「単離された」とは、他の物理的な形、例えばダイマー形または他のグリコシル化されたもしくは誘導体化された形での同じポリペプチドの存在を排除しない。
用語「レベル」とは、免疫細胞、例えばNK細胞、T細胞、特に細胞傷害性T細胞、B細胞および同様のものを言及する場合、増加したレベルは、細胞数の増加または細胞機能の活性亢進のどちらかである。
用語「レベル」とは、ウイルス感染を言及する場合、ウイルス感染レベルの変化を示し、以下に限定されることはないが、CTLもしくはNK細胞(前述)のレベルの変化、ウイルス量の減少、抗ウイルス抗体価の増加、アラニンアミノトランスフェラーゼの血清学的レベルの減少、または標的組織もしくは臓器の組織学的検査により決定されるような改善が含まれる。これらのレベル変化が有意な相違であるかまたは変化であるかの決定は、十分に当業者の技術範囲内である。
用語「新生物(の)」とは、細胞を言及する場合、新しい異常な増殖を経験する細胞、特に増殖において、制御できない進行性の、結果的に新生物をもたらす組織におけるものを示す。新生物細胞は、悪性、すなわち侵襲性で且つ転移性であるか、または良性であり得る。
用語「操作可能に連結された」とは、DNA断片を言及する場合、断片が、その意図された目的、例えば転写がプロモーターにおいて開始し、コード部分を経由してターミネーターまで進行するよう、協働するように配列されることを示す。
「ポリヌクレオチド」は、5'末端から3'末端に読み取られるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドは、RNAおよびDNAを包含し、そして天然源から単離され、インビトロで合成され、または天然および合成分子の組み合わせから調製され得る。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(略語「bp」)、ヌクレオチド(「nt」)、またはキロ塩基(「kb」)として表される。その情況が可能である場合、後者の二つの用語は、一本鎖または二本鎖であるポリヌクレオチドを記述しうる。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全体の長さを示すために使用され、そして用語「塩基対」に等しいことが理解されるであろう。二本鎖ポリヌクレオチドの二本の鎖は長さがわずかに異なり得、その末端は酵素切断の結果として互い違いとなり得ることは、当業者により理解される;従って、二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドは対になっていないこともある。
「ポリペプチド」は、天然において生成されてもまたは合成的に生成されてもいずれにせよ、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基のポリマーである。約10個未満のアミノ酸残基のポリペプチドは通常、「ペプチド」と呼ばれる。
用語「プロモーター」とは、当該技術分野において認識されている意味で本明細書において使用され、RNAポリメラーゼの結合および転写の開始を与えるDNA配列を含む遺伝子の部分を示す。プロモーター配列は通常、遺伝子の5'非コード領域に見出されるが、しかし必ずしもそうではない。
「タンパク質」は、一つまたは複数のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質はまた、非ペプチド成分、例えば糖鎖基を含むことができる。糖鎖および他の非ペプチド置換基は、タンパク質を産生する細胞によってタンパク質に付加され、そして細胞型により変化するであろう。タンパク質は、それらのアミノ酸主鎖により本明細書において定義され;置換基、例えば糖鎖基は一般に、特定されないが、しかしそれにもかかわらず、存在することができる。
用語「受容体」は、生物活性分子(すなわち、リガンド)に結合し、細胞上でリガンドの効果を仲介する細胞関連タンパク質を示す。膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメインと、典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインとを含む、多ペプチド構造を特徴とする。受容体へのリガンドの結合は、細胞中のエフェクタードメインと他の分子との間の相互作用を引き起こす受容体の立体構造変化をもたらす。この相互作用は次に、細胞の代謝に変化を引き起こす。受容体-リガンド相互作用に関連した代謝事象には、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、サイクリックAMP産生の増加、細胞内カルシウムの移行、膜脂質の移行、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解およびリン脂質の加水分解が含まれる。一般に、受容体は、膜結合受容体、細胞質受容体または核受容体; 単量体(例えば、チロイド刺激性ホルモン受容体、β-アドレナリン受容体)または多量体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL-3受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、エリトロポエチン受容体およびIL-6受容体)であり得る。
用語「分泌シグナル配列」とは、その配列よりも大きなポリペプチドの構成要素として、より大きなポリペプチドを、そのポリペプチドを合成する細胞の分泌経路を介して方向づけるポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を示す。分泌経路を介した移動の間に、前記のより大きなポリペプチドは通常切断されて、分泌ペプチドが除かれる。
不正確な分析方法(例えば、ゲル電気泳動法)により決定されるポリマーの分子量および長さは、おおよその値であることが理解されるであろう。そのような値が「約」Xまたは「おおよそ」Xとして表される場合、その言及されたXの値は、正確には±10%であることが理解されるであろう。
本明細書に引用される全ての文献は、その全体が参照として組み入れられる。
本発明は、IL-21の治療有効量を投与することで、直接的にまたは間接的に、ある種の新生物細胞またはガン細胞の増殖の阻害が生じ、その結果、ガンにより引き起こされる病的影響が抑制されたという発見に一部、基づいている。新生物細胞には、固形腫瘍を起源とするある種のリンパ球細胞および転移細胞が含まれるが、これらに限定されることはない。本発明はまた、特定のリンパ腫および特定の固形腫瘍にIL-21の治療有効量を投与することで、腫瘍反応が引き起こされたという発見にも基づいている。続く実施例のなかで、動物モデルおよびインビトロ試験により、生物試料、特に固形腫瘍、新生物のBリンパ球およびTリンパ球に対するIL-21の活性が実証される。
本発明はまた、IL-21が、インフルエンザのような特定の急性感染症および肝炎のような特定の慢性感染症に対して抗ウイルス活性を有するという発見にも基づいている。これらの抗ウイルス作用は、免疫系細胞、例えば細胞傷害性T細胞およびNK細胞を介し得る。続く説明および実施例のなかで、動物モデルおよびインビトロ試験により、IL-21の抗ウイルス活性が実証される。
A. IL-21およびその受容体の説明
ヒトIL-21(配列番号:1および配列番号:2)はIL-21と名付けられた。ヒトIL-21は、共通して所有される米国特許第6,307,024号(これは参照として本明細書に組み入れられる)に報告されている。現在IL-21Rと呼ばれる(以前はzalpha11と呼ばれた)IL-21受容体(配列番号:5および配列番号:6)、およびヘテロ二量体性受容体IL-21R/IL-21Rγは、共通して所有される国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/77171号(これらは参照として本明細書に組み入れられる)に報告されている。これらの公報に報告されているように、IL-21は、CD3に対して選択を行った、活性化ヒト末梢血液細胞(hPBC)から作製したcDNAライブラリーより単離された。CD3は、リンパ系起源の細胞、特にT細胞に固有の細胞表面マーカーである。
IL-21Rに対するアミノ酸配列から、コードされる受容体は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、EPO、TPO、GM-CSFおよびG-CSFに対する受容体を含むがこれらに限定されることはない、クラスIサイトカイン受容体サブファミリー(概説については、Cosman、「The Hematopoietin Receptor Superfamily」 Cytokine 5(2): 95〜106, 1993を参照されたい)に属することが示された。その受容体の組織分布から、IL-21に対する標的は、造血系細胞、特にリンパ系前駆細胞およびリンパ系細胞であることが示唆される。リンパ系細胞に作用する、その他周知の4-ヘリックス・バンドル型のサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-7、およびIL-15が含まれる。4-ヘリックス・バンドル型のサイトカインの概説については、Nicolaら、Advances in Protein Chemistry 52: 1〜65, 1999およびKelso, A., Immunol. Cell Biol. 76: 300〜317,1998を参照されたい。
IL-21の場合、分泌シグナル配列はアミノ酸残基1(Met)〜31(Gly)から成り、成熟型ポリペプチドはアミノ酸残基32(Gln)〜162(Ser)から成る(配列番号:2に示される)。一般に、サイトカインは、4-αヘリックス構造を有すると予想され、ヘリックスA、CおよびDがリガンド-受容体相互作用に最も重要であり、そのファミリーのメンバー間でいっそう高度に保存されている。配列番号:2に示されるヒトIL-21のアミノ酸配列を参照して、ヒトIL-21、ヒトIL-15、ヒトIL-4、およびヒトGM-CSFのアミノ酸配列の整列から、IL-21のヘリックスAは、配列番号:2に示されるアミノ酸残基41〜56により定義され; ヘリックスBはアミノ酸残基69〜84により定義され; ヘリックスCはアミノ酸残基92〜105により定義され; そしてヘリックスDはアミノ酸残基135〜148により定義されることが予想された。構造解析から、A/Bループは長く、B/Cループは短く、そしてC/Dループは平行して長いことが示される。このループ構造は、アップ-アップ-ダウン-ダウンヘリカル構成をもたらす。システイン残基は、IL-21とIL-15との間で絶対的に保存されている。IL-15とIL-21との間で保存されるシステイン残基は、配列番号:2のアミノ酸残基71、78、122および125に対応する。システイン残基のいくつかの保存がまた、配列番号:2のアミノ酸残基78および125に対応する、IL-2、IL-4、GM-CSFおよびIL-21に見出される。システイン配置の一致は、4-ヘリックス・バンドル構造のさらなる確認となる。同様に、IL-15、IL-2、IL-4、GM-CSFおよびIL-21を含むファミリーにおいて高度に保存されるのは、配列番号:2のなかの残基136〜138に示されるGlu-Phe-Leu配列である。多重整列に基づくIL-21のさらなる解析により、アミノ酸残基44、47および135(配列番号:2に示される)は、IL-21がその同族受容体と結合する際に重要な役割を果たすと予想される。さらに、マウスIL-21(配列番号:4)の予測されるアミノ酸配列は、予測されるヒトタンパク質に対して57%の同一性を示す。ヒトおよびマウスIL-21の配列間の比較に基づいて、良く保存された残基が、αヘリックスAおよびDをコードすることが予測される領域に見出された。
本明細書に記載されるIL-21のポリペプチド領域、ドメイン、モチーフ、残基および配列をコードするその対応ポリヌクレオチドは、配列番号:1に示される通りである。IL-21、IL-2、IL-4、IL-15およびGM-CSFに対するヘリックスA、B、C、およびD、ならびにループA/B、B/CおよびC/Dを含むアミノ酸残基は、表1に示される。
当業者は、配列番号:1に開示される配列がヒトIL-21の単一の対立遺伝子を表しており、対立遺伝子のばらつきおよび選択的スプライシングが起こると予測されることを認識するであろう。この配列の対立遺伝子変異体は、標準的な方法に従い、異なる個体由来のcDNAまたはゲノムライブラリーを探索することによりクローニングすることができる。サイレント突然変異を含む対立遺伝子変異体および変異によりアミノ酸配列を変化させる対立遺伝子変異体を含む、配列番号:1に示されるDNA配列の対立遺伝子変異体は、配列番号:2の対立遺伝子変異体であるタンパク質と同様に、本発明の範囲内である。IL-21ポリペプチドの特性を保持する、選択的スプライスを受けたmRNAから生成されるcDNAは、そのようなcDNAおよびmRNAによりコードされるポリペプチドと同様に、本発明の範囲内に含まれる。これらの配列の対立遺伝子変異体およびスプライス変異体は、当技術分野において周知の標準的な方法に従い、異なる個体または組織由来のcDNAまたはゲノムライブラリーを探索することによりクローニングすることができる。
本発明によりまた、配列番号:2のポリペプチドまたはその相同分子種に対して実質的に類似する配列同一性を有する単離されたIL-21ポリペプチドが提供される。用語「実質的に類似する配列同一性」とは、配列番号:2に示される配列またはその相同分子種に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の、または95%を超える配列同一性を含むポリペプチドを示すために本明細書において使用される。本発明には同様に、配列番号:2のアミノ酸残基1〜162または33〜162の配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または95%を超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドも含まれる。本発明には、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子もさらに含まれる。同一性の割合を決定するための方法を、以下に記載する。
同一性の割合は、従来の方法により決定される。例えば、Altschulら、
Bull. Math. Bio. 48:603 (1986)や、HenikoffおよびHenikoff,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1992)を参照されたい。簡単に言えば、二つのアミノ酸配列が、ギャップ開始ペナルティー10、ギャップ拡張ペナルティー1、および表2(アミノ酸は標準的な1文字表記により示される)に示されるようなHenikoffおよびHenikoff(前掲)の「BLOSUM62」スコアリングマトリックスを用いて、整列スコアを最適化するように整列される。
当業者は、二つのアミノ酸配列を整列するために利用できる多くの確立されたアルゴリズムが存在することを理解している。PearsonおよびLipmanの「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書に開示されるアミノ酸配列と推定上のIL-21変異体のアミノ酸配列により共有される同一性のレベルを試験するための適当なタンパク質整列法である。FASTAアルゴリズムは、PearsonおよびLipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)、およびPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)に記述されている。
IL-21変異体のポリペプチドまたは実質的に類似する配列同一性を有するポリペプチドは、一つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有するものとして特徴付けられる。これらの変化は好ましくは主要でない性質のものであり、即ち、保存性アミノ酸置換(表3を参照されたい)およびポリペプチドの折りたたみまたは活性に顕著な影響を及ぼさない他の置換; 小さな欠失、典型的には1個〜約30個のアミノ酸の欠失;およびアミノ末端またはカルボキシル末端の伸長、例えばアミノ末端メチオニン残基による伸長、約20〜25残基までの小さなリンカーペプチドによる伸長、または親和性タグによる伸長である。従って、本発明には、配列番号:2の対応領域に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性の配列を含む、約108〜216個のアミノ酸残基のポリペプチドが含まれる。親和性タグを含むポリペプチドは、IL-21ポリペプチドと親和性タグとの間にタンパク質分解的切断部位をさらに含むことができる。好ましいそのような部位には、トロンビン切断部位および第Xa因子切断部位が含まれる。
(表3)
保存性アミノ酸置換
塩基性: アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性: グルタミン酸
アスパラギン酸
極性: グルタミン
アスパラギン
疎水性: ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族: フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小さな: グリシン
アラニン
セリン
トレオニン
メチオニン
構造の完全性を維持するのに重要な領域またはドメインを含む、アミノ酸残基の決定を行うことができる。これらの領域のなかで、程度の差こそあるものの、変化に寛容であって、分子の全体的な三次構造を維持すると思われる特定の残基を決定することができる。配列の構造を分析するための方法には、アミノ酸またはヌクレオチドの同一性が高い複数配列の整列、二次構造的性質、二元パターン、相補的パッキングおよび埋没した極性相互作用が含まれるが、これらに限定されることはない(Barton, Current Opin. Struct. Biol. 5:372〜376, 1995およびCordesら、Current Opin. Struct. Biol. 6:3〜10, 1996)。一般に、分子に対する改変を設計するかまたは特定の断片を同定する場合、構造の決定には、改変した分子の活性の評価が伴うものと思われる。
生物活性に対して必須な高次構造の破壊を最小限度に抑えるため、IL-21ポリペプチドのアミノ酸配列を変更する。例えば、IL-21ポリペプチドが一つまたは複数のヘリックスを含む場合、アミノ酸残基の変更は、分子のヘリックス構造を破壊しないよう、ならびに立体構造の変化が、ある重要な機能、例えば、分子の、その結合相手、例えばAおよびDヘリックス、配列番号:2の残基44、47および135との結合を弱めてしまう、分子の他の構成要素を、破壊しないように行われるであろう。アミノ酸配列の変更による効果は、例えば、上記に開示されるようなコンピュータモデリングにより予測することができ、または結晶構造の解析により決定することができる(例えば、Lapthornら、Nat. Struct. Biol. 2:266-268, 1995を参照のこと)。当技術分野においてよく知られている他の技法では、変異タンパク質の折りたたみを標準分子(例えば、野生型タンパク質)の折りたたみと比較する。例えば、変異体および標準分子のシステインパターンの比較を行うことができる。質量分析ならびに還元およびアルキル化を利用した化学修飾により、ジスルフィド結合と関連性のあるまたはそのような関連性のないシステイン残基を決定するための方法が提供される(Beanら、Anal. Biochem. 201:216〜226, 1992; Gray, Protein Sci. 2:1732〜1748, 1993; およびPattersonら、Anal. Chem. 66:3727〜3732, 1994)。一般に、修飾された分子が標準分子と同じシステインパターンを有さない場合、折りたたみに影響が及ぶと考えられる。折りたたみを測定するためのもう一つの周知で認められている方法は、円二色性(CD)である。修飾分子および標準分子により生成されるCDスペクトルの測定および比較は、日常業務である(Johnson, Proteins 7:205〜214, 1990)。結晶構造解析は、折りたたみおよび構造を解析するためのもう一つのよく知られた方法である。核磁気共鳴(NMR)、消化ペプチドマッピングおよびエピトープマッピングはまた、タンパク質とポリペプチドとの間の折りたたみおよび構造的類似性を解析するための周知の方法である(Schaananら、Science 257:961〜964, 1992)。
配列番号:2に示されるようなIL-21タンパク質の配列のHopp/Woods親水性プロファイルを作成することができる(Hoppら、Proc. Natl. Acad. Sci. 78:3824〜3828, 1981; Hopp, J. Immun. Meth. 88:1〜18, 1986およびTriquierら、Protein Engineering 11:153〜169, 1998)。このプロファイルは、スライドする6-残基窓(sliding six-residue window)に基づく。埋没したG、S、およびT残基ならびに露出したH、Y、およびW残基は無視した。例えば、IL-21では、親水性領域には、配列番号:2のアミノ酸残基114〜119、配列番号:2のアミノ酸残基101〜105、配列番号:2のアミノ酸残基126〜131、配列番号:2のアミノ酸残基113〜118および配列番号:2のアミノ酸残基158〜162が含まれる。
当業者は、IL-21ポリペプチドのアミノ酸配列の変更を設計する際、親水性または疎水性が、全体的な構造および生物学的プロファイルを破壊しないように、考慮されることを認識するであろう。置換に対し特に関心があるのは、Val、LeuおよびIleからなる群またはMet、Gly、Ser、Ala、TyrおよびTrpからなる群より選択される疎水性残基である。例えば、置換に寛容な残基のなかには、配列番号:2に示される残基100および103を含めることができると思われる。配列番号:2の71、78、122および125位のシステイン残基は、相対的に置換に寛容ではないと思われる。
必須アミノ酸の同一性はまた、IL-21とのIL-15、IL-2、IL-4およびGM-CSFの間の配列類似性の解析から推定することができる。前述の「FASTA」解析のような方法を用いて、類似性の高い領域を、タンパク質ファミリーのなかで同定し、保存領域に対するアミノ酸配列を解析するために使用する。構造に基づき、IL-21変異体のポリヌクレオチドを同定するための別のアプローチは、IL-21変異体と考えられる遺伝子をコードする核酸分子が、上述の、配列番号:1のヌクレオチド配列を有する核酸分子にハイブリダイズできるかどうかを決定することである。
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸を同定する他の方法は、部位特異的突然変異誘発法またはアラニンスキャニング突然変異誘発法のような、当技術分野において周知の方法である(CunninghamおよびWells, Science 244:1081 (1989), Bassら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4498 (1991), CoombsおよびCorey、「Site-Directed Mutagenesis and Protein Engineering」、Proteins: Analysis and Design, Angeletti (編)中、259〜311頁(Academic Press社、1998))。後者の方法では、単一のアラニン突然変異を分子中のすべての残基に導入し、得られた変異体分子について、その分子の活性に重要なアミノ酸残基を同定するため、以下に開示されるように、生物活性または生化学活性を試験する。また、Hiltonら、J. Biol. Chem. 271:4699 (1996)を参照されたい。
本発明にはまた、IL-21の機能活性を有する分子の投与が含まれる。従って、IL-21ポリペプチドの機能的な断片および機能的な改変型ポリペプチド、ならびにそのような機能的な断片および改変型ポリペプチドをコードする核酸分子の投与が含まれる。本明細書に定義される「機能的な」IL-21またはその断片は、その増殖活性もしくは分化活性によるか、特に、NK細胞、T細胞、B細胞および樹状細胞のような、免疫エフェクター細胞に対し、特殊化した細胞機能を誘導するもしくは阻害する能力によるか、または抗IL-21抗体もしくはIL-21受容体(可溶性であるかまたは固定化された)に特異的に結合するその能力により特徴付けられる。機能的なIL-21にはまた、インビトロでまたはインビボで抗ガン作用および抗ウイルス作用を示す能力が含まれる。本明細書で前述したとおり、IL-21は、配列番号:2に示される、ヘリックスA(アミノ酸残基41〜56)、ヘリックスB(アミノ酸残基69〜84)、ヘリックスC(アミノ酸92〜105)およびヘリックスD(アミノ酸残基135〜148)を含む4-ヘリックス・バンドル構造により特徴付けられる。従って、本発明により、(a) 上記のヘリックスの一つまたは複数を含むポリペプチド分子; および(b) これらのヘリックスの一つまたは複数を含む機能的な断片を包含する融合タンパク質がさらに提供される。融合タンパク質の他のポリペプチド部分には、IL-15、IL-2、IL-4およびGM-CSFのような、もう一つの4-ヘリックス・バンドル型サイトカインを、または融合タンパク質の分泌を促進する、外来のおよび/もしくは無関連の分泌シグナルペプチドを与えることができる。
核酸分子の日常的な欠失解析を行い、IL-21ポリペプチドをコードする核酸分子の機能的な断片を得ることができる。例として、配列番号:1のヌクレオチド配列またはその断片を有するDNA分子をBal31ヌクレアーゼで消化して、一連のネスト型欠失を得ることができる。次に、これらのDNA断片を発現ベクター中へ、正しい読み枠で挿入し、発現したそのポリペプチドを単離し、IL-21活性について、または抗IL-21抗体もしくはzalpha11受容体を結合する能力について試験する。エキソヌクレアーゼ消化に対する一つの別の方法は、所望のIL-21断片の産生を特定するため、欠失または停止コドンを導入するオリゴヌクレオチド指定変異導入法を利用することである。または、IL-21遺伝子の特定断片をポリメラーゼ鎖反応により合成することができる。
機能的ドメインを同定するための標準的な方法は、当業者によく知られている。例えば、インターフェロンの片端または両端でのトランケーションに関する研究が、HorisbergerおよびDi Marco, Pharmac. Ther. 66:507 (1995)により、まとめられている。さらに、タンパク質の機能解析のための標準的な方法は、例えば、Treuterら、Molec. Gen. Genet. 240:113 (1993); Contentら、「Expression and preliminary deletion analysis of the 42 kDa 2-5A synthetase induced by human interferon」、Biological Interferon Systems, Proceedings of ISIR-TNO Meeting on Interferon Systems, Cantell (編)中、65〜72頁 (Nijhoff 1987); Herschman、「The EGF Receptor」、Control of Animal Cell Proliferation 1, Boyntonら(編)中、169〜199頁 (Academic Press 1985); Coumailleauら、J. Biol. Chem. 270:29270 (1995); Fukunagaら、J. Biol. Chem. 270:25291 (1995); Yamaguchiら、Biochem. Pharmacol. 50:1295 (1995); およびMeiselら、Plant Molec. Biol. 30:1 (1996)に記述されている。
複数のアミノ酸置換は、突然変異誘発およびスクリーニングの周知の方法、例えばReidhaar−OlsonおよびSauer (Science 241:53 (1988))またはBowieおよびSauer (Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 86:2152 (1989))に開示される方法を用いて行い、試験することができる。簡単に言えば、これらの著者により、ポリペプチド中の二つまたはそれ以上の位置を同時に任意抽出し、機能的なポリペプチドを選択し、それから各位置で許容される置換の範囲を決定するため、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定するための方法が開示される。使用できる他の方法には、ファージ・ディスプレイ法(例えば、Lowmanら、Biochem. 30 :10832 (1991); Ladnerら、米国特許第5,223,409号、Huse, 国際公開公報第92/06204号)、および領域指定変異導入法(Derbyshireら、Gene 46:145 (1986); およびNerら、DNA 7:127, (1988))が含まれる。
開示したIL-21のヌクレオチドおよびポリペプチド配列の変異体はまた、Stemmer, Nature 370:389 (1994), Stemmer, Proc. Natl Acad. Sci. USA 91:10747 (1994)、および国際公開公報第97/20078に開示されるようなDNAシャフリング法により作製することができる。簡単に言えば、変異体DNA分子は、親DNAの無作為な断片化に続くPCRを用いた再構築によるインビトロ相同組換えにより作製され、結果として無作為に導入された点突然変異体が得られる。この方法は、その工程中にさらなるばらつきを導入するため、異なる種由来の対立遺伝子変異体またはDNA分子のような、親DNAのファミリーを利用することにより、改良することができる。所望の活性の選択またはスクリーニング、その後、さらに変異導入および測定を繰り返し行うことで、有害な変化を同時に選択しながら所望の突然変異を選択することによる、配列の迅速な「進化」を実現する。
本明細書に開示される突然変異導入法は、高速大量処理の自動化スクリーニング法と組み合わせて、宿主細胞中で、クローニングされ変異導入されたポリペプチドの活性を検出することができる。生物学的に活性なポリペプチドを、または抗IL-21抗体もしくは可溶性zalpha11受容体と結合するポリペプチドをコードする変異導入DNA分子は、最新機器を用いて、宿主細胞から回収し、迅速に配列決定することができる。これらの方法は、関心のあるポリペプチド中の個々のアミノ酸残基の重要性を迅速に決定することを可能とし、構造未知のポリペプチドに適用することができる。
さらに、本発明のタンパク質(またはそのポリペプチド断片)を他の生物活性分子、特に他のサイトカインに連結して、多機能分子を得ることできる。例えば、IL-21由来の一つまたは複数のヘリックスを他のサイトカインに連結して、その生物学的特性または産生効率を高めることができる。
従って、本発明により、IL-21のヘリックスの一つまたは複数を含む断片が別のポリペプチドに融合されている、一連の新規ハイブリッド分子が提供される。融合は、組み換え産生系でキメラ分子の発現を可能とするため、DNAレベルでのスプライシングにより行われることが好ましい。次いで、得られた分子を、溶解性の向上、安定性の向上、長時間のクリアランス半減期、発現および分泌レベルの向上、ならびに薬物力学のような特性について測定する。そのようなハイブリッド分子は、その構成要素のタンパク質またはポリペプチドの間に付加的なアミノ酸残基(例えば、ポリペプチドリンカー)をさらに含んでもよい。
天然に存在しないアミノ酸には、以下に限定されることはないが、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン(2,4-methanoproline)、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-および4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、ならびに4-フルオロフェニルアラニンが含まれる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質中に導入するためのいくつかの方法が当技術分野において知られている。例えば、ナンセンス突然変異が化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを用いて抑制されるインビトロ系を使用することができる。アミノ酸を合成するための方法およびtRNAをアミノアシル化するための方法は、当技術分野において周知である。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写および翻訳は、通常、大腸菌(E. coli) S30の抽出物ならびに市販の酵素および他の試薬を含む無細胞系で行われる。タンパク質はクロマトグラフィーにより精製される。例えば、Robertsonら、J. Am. Chem. Soc. 113:2722 (1991)、Ellmanら、Methods Enzymol. 202:301 (1991)、Chungら、Science 259:806 (1993)、およびChungら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 90:10145 (1993)を参照されたい。
第二の方法では、翻訳が、突然変異したmRNAおよび化学的にアミノアミル化したサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションにより、アフリカツメガエル卵母細胞中で行われる(Turcattiら、J. Biol. Chem. 271:19991 (1996))。第三の方法のなかでは、大腸菌(E. coli)細胞が、置換されることになる天然型アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下でおよび所望の非天然型アミノ酸 (例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、または4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。非天然型アミノ酸は、その天然型アミノ酸の代わりにタンパク質中に導入される。Koideら、Biochem. 33:7470 (1994)を参照されたい。天然に存在するアミノ酸残基は、インビトロでの化学修飾法により天然に存在しない種に変換することができる。化学修飾法を部位特異的突然変異誘発法と組み合わせて、置換の範囲をさらに拡げることができる(WynnおよびRichards, Protein Sci. 2:395 (1993))。IL-21を安定化させることは、その分子の半減期を延ばすのに、特に活性状態での代謝持続性を延ばすのに、有利となる可能性がある。半減期の延長を達成するため、本明細書に記載の方法を用いて、IL-21分子を化学的に修飾することができる。PEG化は、血漿半減期を増加させること、可溶性の増大、ならびに抗原性および免疫原性の低下が実証された、一般に利用される方法の一つである(Nucciら、Advanced Drug Delivery Reviews 6:133〜155, 1991およびLuら、Int. J. Peptide Protein Res. 43:127〜138, 1994)。
限定数の、非保存性アミノ酸、遺伝コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、および異常アミノ酸を、IL-21のアミノ酸残基と置換することができる。
本発明により同様に、本明細書に記載のIL-21ポリペプチドのエピトープを持つ部分を含むポリペプチド断片またはペプチドが提供される。そのような断片またはペプチドには、タンパク質全体を免疫原として使用する場合、抗体応答を誘発するタンパク質の一部である、「免疫原性エピトープ」が含まれ得る。免疫原性エピトープを持つペプチドは、標準的な方法を用いて同定することができる(例えば、Geysenら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 81:3998 (1983)を参照されたい)。
対照的に、ポリペプチド断片またはペプチドには、抗体が特異的に結合できるタンパク質分子の領域である、「抗原性エピトープ」が含まれ得る。ある種のエピトープは、直線的なまたは連続的なアミノ酸ストレッチから成り、そのようなエピトープの抗原性は、変性剤によって破壊されることはない。タンパク質のエピトープを模倣し得る比較的短い合成ペプチドを使用して、そのタンパク質に対する抗体の産生を刺激できることが当技術分野において知られている(例えば、Sutcliffeら、Science 219:660 (1983)を参照されたい)。従って、本発明の抗原性エピトープを持つペプチドおよびポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドと結合する抗体を産生させるのに有用である。Hopp/Woods親水性プロファイルを使用して、最も抗原性が高い可能性がある領域を決定することができる(Hoppら、1981(前掲)およびHopp、1986(前掲))。IL-21の場合、これらの領域には、配列番号:2のアミノ酸残基114〜119、101〜105、126〜131、113〜118、および158〜162が含まれる。
抗原性エピトープを持つペプチドおよびポリペプチドには、配列番号:2または配列番号:4の少なくとも4〜10個のアミノ酸、少なくとも10〜14個のアミノ酸、または約14〜約30個のアミノ酸が含まれることが好ましい。そのようなエピトープを持つペプチドおよびポリペプチドは、本明細書に記載されるように、IL-21ポリペプチドを断片化することにより、または化学的ペプチド合成により産生することができる。さらに、エピトープは、ランダムペプチドライブラリーのファージ・ディスプレイ法により選択することができる(例えば、LaneおよびStephen, Curr. Opin. Immunol. 5:268 (1993);およびCorteseら、Curr. Opin. Biotechnol. 7:616 (1996)を参照されたい)。エピトープを同定するための標準的な方法およびエピトープを含む小さなペプチドから抗体を産生するための標準的な方法は、例えば、Mole,「Epitope Mapping」、Methods in Molecular Biology, Vol. 10, Manson (編)中, 105〜116頁(The Humana Press社 1992); Price,「Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies」、Monoclonal Antibodies: Production, Engineering, and Clinical Application, RitterおよびLadyman(編)中、60〜84頁 (Cambridge University Press 1995),ならびにColiganら(編), Current Protocols in Immunology, 9.3.1〜9.3.5頁および9.4.1〜9.4.11 (John Wiley & Sons 1997)に記述されている。
IL-21変異体のポリヌクレオチドの特定のヌクレオチド配列に関係なく、そのポリヌクレオチドは、その増殖活性もしくは分化活性、特殊化した細胞機能を誘導するもしくは阻害する能力により、または抗IL-21抗体もしくはzalpha11受容体に特異的に結合する能力により特徴付けられるポリペプチドをコードする。より具体的には、IL-21変異体のポリヌクレオチドは、配列番号:2に示されるポリペプチドの活性の、少なくとも50%、および好ましくは、70%、80%または90%を超える活性を示すポリペプチドをコードすると思われる。
変異体および融合タンパク質を含む、いずれかのIL-21ポリペプチドに対し、当業者は、当技術分野において周知の遺伝コードおよび方法を用いて、その変異体をコードする、完全に縮重したポリヌクレオチド配列を容易に創出することができる。
本発明により、種々の他のポリペプチド融合体(および一つまたは複数のポリペプチド融合体を含む、関連する多量体タンパク質)がさらに提供される。例えば、IL-21ポリペプチドは、米国特許第5,155,027号および米国特許第5,567,584号に開示されるような二量体化タンパク質との融合体として調製することができる。この関連で好ましい二量体化タンパク質には、免疫グロブリン定常領域ドメインが含まれる。免疫グロブリン-IL-21ポリペプチド融合体は、(さまざまな多量体のIL-21類似体を産生させるため)遺伝子組み換え細胞中で発現させることができる。補助ドメインをIL-21ポリペプチドに融合して、それらを特定の細胞、組織、または高分子へ標的化することができる。例えば、IL-21のポリペプチドまたはタンパク質は、所定の細胞型に向けて、その標的細胞の表面上の受容体に特異的に結合するリガンドにIL-21ポリペプチドを融合させることにより標的化することができる。このような方法で、ポリペプチドおよびタンパク質を、治療または診断を目的に標的化することができる。IL-21ポリペプチドは、精製のための親和性タグおよび標的化ドメインのような、二つまたはそれ以上の成分に融合することができる。ポリペプチド融合はまた、特にドメイン間に、一つまたは複数の切断部位を含むこともできる。Tuanら、Connective Tissue Research 34:1〜9, 1996を参照されたい。
本明細書に記述される方法を用いて、当業者は、配列番号:2の残基1〜162もしくは33〜162に対して実質的に類似する配列同一性を有する種々のポリペプチド、またはその機能断片および融合体を同定および/または調製することができ、その際に、そのようなポリペプチドまたは断片もしくは融合体は、増殖、分化を刺激する能力、特殊化した細胞機能を誘導する能力またはIL-21受容体もしくはIL-21抗体を結合する能力のような野生型タンパク質の特性を保持している。
本発明のなかで使用されるIL-21ポリペプチドは、従来の方法に従って、遺伝子組み換え宿主細胞中で産生させることができる。適当な宿主細胞は、外来DNAで形質転換または形質導入させることができ且つ培養で増殖させることができる細胞型であり、これらのなかには、細菌細胞、真菌細胞、および培養高等真核細胞が含まれる。真核細胞、特に多細胞生物の培養細胞が好ましい。クローニングしたDNA分子を操作するための技術および種々の宿主細胞中に外来DNAを導入するための技術は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989、およびAusubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons社、NY, 1987により開示されている。
一般に、IL-21ポリペプチドをコードするDNA配列は、発現ベクター内での、その発現に必要とされる他の遺伝因子(転写プロモーターおよびターミネーターを通常含む)に操作可能に連結される。ベクターには同様に、一つまたは複数の選択マーカーおよび一つまたは複数の複製起点が含まれることが多いと思われるが、当業者であれば、ある系内で、選択マーカーは他のベクター上に与えられてもよく、外来DNAの複製は宿主細胞のゲノム中への組み込みにより実現されてもよいことを認識するものと思われる。プロモーター、ターミネーター、選択マーカー、ベクターおよび他の因子の選択は、当技術分野における通常の技術の程度内の日常設計である。そのような多くの因子は、文献に記述されており、商業的供給者を通して入手可能である。
IL-21ポリペプチドまたはその断片を宿主細胞の分泌経路中へ向けるため、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても知られる)が発現ベクターに供与される。分泌シグナル配列は、IL-21のものとしてもよく、または別の分泌タンパク質(例えば、t-PA)由来とされても新たに合成されてもよい。分泌シグナル配列は、IL-21のDNA配列に操作可能に連結される、すなわち、その二つの配列は、正しい読み枠で連結され、新たに合成されたポリヌクレオチドを宿主細胞の分泌経路中へ向けるように配置される。分泌シグナル配列は、関心のあるポリペプチドをコードするDNA配列の5'側に位置付けられることが多いが、ある種の分泌シグナル配列は、関心のあるDNA配列の他の場所に位置付けられる可能性がある(例えば、Welchら、米国特許第5,037,743号; Hollandら、米国特許第5,143,830号を参照されたい)。
哺乳類培養細胞は、本発明のなかで適当な宿主である。外来DNAを哺乳類宿主細胞中へ導入するための方法には、リン酸カルシウムによるトランスフェクション(形質導入)法 (Wiglerら、Cell 14:725,1978; CorsaroおよびPearson, Somatic Cell Genetics 7:603, 1981 : GrahamおよびVan der Eb, Virology 52:456, 1973)、エレクトロポレーション法(Neumannら、EMBO J. 1: 841〜5, 1982)、DEAE-デキストランによるトランスフェクション法(Ausubelら、前掲)、およびリポソームによるトランスフェクション法(Hawley-Nelsonら、Focus 15:73, 1993; Ciccaroneら、Focus 15:80, 1993)、ならびにウイルスベクター(MillerおよびRosman, BioTechniques 7:980〜90, 1989; WangおよびFiner, Nature Med. 2:714〜6, 1996)が含まれる。
多岐にわたる適した組み換え宿主細胞のなかには、グラム陰性の宿主原核生物が含まれるが、これに限定されることはない。大腸菌(E. coli)の適当な菌株には、W3110株、K12株由来の菌株MM294株、TG-1株、JM-107株、BL21株、およびUT5600株が含まれる。その他の適当な菌株には: BL21(DE3)株、BL21(DE3)pLysS株、BL21(DE3)pLysE株、DH1株、DH4I株、DH5株、DH5I株、DH5IF'株、DH5IMCR株、DH10B株、DH10B/p3株、DH11S株、C600株、HB101株、JM101株、JM105株、JM109株、JM110株、K38株、RR1株、Y1088株、Y1089株、CSH18株、ER1451株、ER1647株、大腸菌(E. coli) K12株、大腸菌(E. coli) K12株RV308、大腸菌(E. coli) K12株C600、大腸菌(E. coli) HB101株、大腸菌(E. coli) K12株C600 Rk -Mk -、大腸菌(E. coli) K12株RR1(例えば、Brown(編)、Molecular Biology Labfax (Academic Press 1991)を参照されたい)が含まれる。その他のグラム陰性の宿主原核生物のなかには、セラチア属(Serratia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、カウロバクター属(Caulobacter)を含めることができる。宿主原核生物のなかには、バチルス属(Bacillus)、例えば、枯草菌(B. subtilis)およびバチルス・チューリンゲンシス菌(B. thuringienesis)、ならびにバチルス・チューリンゲンシス変種イスラエレンシス株(B. thuringienesis var. israelensis)のほか、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、例えば、ストレプトマイセス・リビダンス(S.lividans)、ストレプトマイセス・アンボファシエンス菌(S. ambofaciens)、ストレプトマイセス・フラジアエ菌(S. fradiae)、およびストレプトマイセス・グリセオフスカス菌(S. griseofuscus)のようなグラム陽性生物を含めることができる。枯草菌(Bacillus subtilus)の適当な菌株には、BR151株、YB886株、MI119株、MI120株、およびB170株が含まれる(例えば、Hardy、「Bacillus Cloning Methods」、DNA Cloning: A Practical Approach, Glover(編)中、(IRL Press 1985)を参照されたい)。宿主原核生物中でベクターを増殖させるための標準的な方法は、当業者によく知られている(例えば、Ausubelら(編)、 Short Protocols in Molecular Biology、第3版 (John Wiley & Sons 1995); Wuら、Methods in Gene Biotechnology (CRC Press社 1997)を参照されたい)。一つの態様として、本発明の方法では、American Type Culture Collection (ATCC)にATCC#27325として寄託された、W3110株で発現させたIL-21を使用する。
本発明の発現系を用いたIL-21の大量産生が必要とされる場合、バッチ発酵を使用することができる。一般に、バッチ発酵には、600 nmでの吸光度(OD)5〜20まで増殖可能とする振盪フラスコ培養にてIL-21を発現する大腸菌(E. coli)株を適当な培地中で増殖させることにより、初期種培養フラスコを調製することが含まれる。適当な培地には、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酵母抽出物、加水分解された動物タンパク質、加水分解された植物タンパク質または加水分解されたカゼインのような供給源由来の窒素が含まれるものと思われる。リン酸塩は、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸またはリン酸ナトリウムから供給されるものと思われる。その他の成分は、塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウム、硫酸鉄または塩化第一鉄、および他の微量元素であろう。増殖培地には、増殖を高めるため、糖質、例えば、フルクトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、およびグリセロールを添加することができる。または、給餌バッチ培養を使用して、大量のIL-21タンパク質を産生する。IL-21を産生する大腸菌(E. coli)株は、バッチ発酵に植菌するため使用した初期容器に対して記述されている条件に類似の条件下で増殖させる。
発酵後、細胞を遠心により集菌し、ホモジナイゼーション用緩衝液に再懸濁し、例えば、APV-Gaulinホモジナイザー(Invensys APV, Tonawanda, New York)またはその他の種類の細胞破壊装置、例えば、ビーズミルもしくは超音波処理器でホモジナイズする。または、細胞を発酵槽から直接採取し、APV-Gaulinホモジナイザーでホモジナイズする。洗浄した封入体の沈殿物は、βメルカプトエタノール(10〜100 mM)またはジチオスレイトール(5〜50 mM)のような還元剤を含有する塩酸グアニジン溶液(5〜8 M)または尿素溶液(7〜8 M)を用いて可溶化することができる。この溶液は、Tris緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、HEPES緩衝溶液または他の適用な緩衝溶液として調製することができる。封入体は、ラウリル硫酸ナトリウム(0.1〜2%)を含有する尿素溶液(2〜4 M)で可溶化することもできる。溶解しにくい(refractile)封入体としてIL-21が蓄積される、形質転換済みの宿主大腸菌(E. coli)から精製IL-21を回収する工程では、細胞を破壊して、封入体を遠心により回収する。次いで、封入体を、還元剤を含有する6 M塩酸グアニジン溶液中で可溶化および変性させる。次いで、還元されたIL-21を制御された復元工程で酸化する。再び折りたたまれたIL-21は、清浄化および不溶性タンパク質の除去を目的としてろ過器を通過させることができる。次いで、その溶液を清浄化および不溶性タンパク質の除去を目的としてろ過器を通過させる。IL-21タンパク質を再び折りたたみ、濃縮した後、その再び折りたたまれたタンパク質を希釈緩衝溶液に入れて陽イオン交換カラム上に捕捉させ、疎水性相互作用クロマトグラフィーを利用して精製する。
本発明のポリペプチドを純度80%以上まで、より好ましくは純度90%以上まで、さらにより好ましくは純度95%以上まで精製することが好ましく、とりわけ好ましいのは、薬剤的に精製された状態であり、その状態は、コンタミしている高分子、特に他のタンパク質および核酸に関して純度が99.9%を超え、感染物質および発熱物質がない状態である。精製ポリペプチドには実質的に、他のポリペプチド、特に他の動物起源ポリペプチドがないことが好ましい。
当業者に周知のさまざまな測定法を利用して、IL-21タンパク質またはポリペプチドに結合する抗体を検出することができる。典型的な測定法は、Antibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLane (編), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988に詳述されている。そのような測定法の代表例には、同時並行的(concurrent)な免疫電気泳動法、放射免疫測定法、放射免疫沈降法、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法、ドットブロットまたはウエスタンブロット法、阻害または競合測定法、およびサンドイッチ測定法が含まれる。さらに、抗体は、変異型IL-21タンパク質またはポリペプチドと対比して、野生型IL-21タンパク質またはポリペプチドとの結合についてスクリーニングすることができる。
本発明の方法はまた、IL-21ポリペプチドをポリマーと結合させた、化学修飾型IL-21組成物の使用をも意図する。実例となるIL-21ポリペプチドは、成熟型IL-21ポリペプチドのような、機能的な膜貫通ドメインがない可溶性ポリペプチドである。通常、ポリマーは、IL-21複合体が生理的環境のような水性環境中で沈殿しないように、水溶性である。適当なポリマーの一例は、アシル化のための活性エステル、またはアルキル化のためのアルデヒドのような、単一の反応基を有するように改変されたものである。この方法では、重合度を制御することができる。反応性アルデヒドの一例は、ポリエチレングリコール・プロピオンアルデヒド、またはモノ-(C1-C10)アルコキシ、もしくはそのアリールオキシ誘導体である(例えば、Harrisら、米国特許第5,252,714号を参照されたい)。ポリマーは、分枝していても分枝していなくてもよい。さらに、ポリマー混合物を使用して、IL-21複合体を生成することができる。
治療に使用するIL-21複合体には、薬学的に許容される水溶性ポリマー成分を含めることができる。適当な水溶性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシPEG、モノ-(C1-C10)アルコキシ-PEG、アリロキシ-PEG、ポリ-(N-ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス-スクシンイミジルカーボネートPEG、プロピレングリコール・ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマーが含まれる。適当なPEGは、分子量約600〜約60,000(例えば、5,000、12,000、20,000および25,000)を有することができる。IL-21複合体にはまた、そのような水溶性ポリマーの混合物が含まれてもよい。
B. ガン治療のためのIL-21の使用
分化は、多能性幹細胞から始まり、最終的には分化細胞で終わる、漸進的かつ動的な過程である。ある系譜に入ることなく再生できる多能性幹細胞は、ある細胞系譜に入る際に失われる一連の分化マーカーを発現する。前駆細胞は、細胞が成熟方向へ細胞系譜を進行する際に発現され続けるのかそうでないのか分からない一連の分化マーカーを発現する。成熟細胞だけが発現する分化マーカーは、細胞産物、細胞産物を産生する酵素、および受容体のような機能特性であることが多い。細胞集団の分化段階は、細胞集団に存在するマーカーの同定により監視される。
特定の細胞型を最終分化または脱分化に向かう経路へと刺激する因子が、共通の前駆体または幹細胞に由来する細胞集団全体に影響を及ぼすことを示唆する証拠が存在する。従って、本発明には、リンパ球、造血細胞および上皮細胞の増殖を刺激することまたは阻害することが含まれる。
IL-21は、重要な免疫学的機能を有することが知られる組織や免疫系に関与する細胞を含む組織から単離された。IL-21は、CD3+選択の、活性化末梢血液細胞で発現され、IL-21の発現は、T細胞活性化後に増加することが示されている。さらに、本明細書の実施例の項に記述した実験結果から、本発明のポリペプチドが、NK細胞またはNK前駆体の成長(growth)/拡張(expansion)および/または分化状態に影響を及ぼすことが実証される。造血前駆体の増殖刺激と成熟細胞の活性化の両方を行う因子が一般に知られている。NK細胞は、IL-2単独でも応答するが、一般的に、増殖および活性化にはさらに増殖因子が必要となる。例えば、NK前駆体のコロニー形成には、IL-7およびSteel因子(c-kitリガンド)が必要とされたことが示されている。IL-15 + IL-2をIL-7およびSteel因子と組み合わせると、さらに効果的となった(Mrozekら、Blood 87:2632-2640, 1996)。しかしながら、未知のサイトカインが、特定のサブセットのNK細胞および/またはNK前駆体の増殖には必要になるかもしれない(Robertsonら、Blood 76: 2451〜2438, 1990)。IL-21とIL-15とを含む組成物は、この組成物が以前に記述された因子や因子の組み合わせよりもいっそう強力であるという証拠から、NK前駆体およびNK細胞を刺激している。さらに、IL-21はNK細胞の増殖を刺激し、IL-21はNK細胞の増殖に対するIL-4の阻害効果をほとんど克服することが可能であり、IL-21はIL-2と協調して、NK細胞の増殖を促進し、IL-21は選択的に、IFN-γの発現を促進させてIL-13の発現を抑制する。これらのデータから、IL-21は、抗リンパ腫活性をもたらす免疫エフェクター細胞を刺激することにより、固形腫瘍、転移性腫瘍およびリンパ腫の治療に間接的に有効であることが示唆される。さらに、IL-21受容体が発現しているある種のガン細胞の場合には、IL-21の抗ガン作用は直接的となり得る。
さらなる証拠から、IL-21がインビボでT細胞およびB細胞の増殖および/または分化に影響を及ぼすことが示される。IL-21は、正常B細胞の増殖を、その細胞に供与される共刺激因子の性質に応じて阻害または促進できることが示される。IL-21は、いくつかのB細胞系の増殖を阻害する、ところが大部分の無応答細胞系は、特異的なIL-21結合によって測定されるIL-21Rを発現するにもかかわらず、それ以外のものを阻害することはない。多くのヒトB細胞系は、SCIDマウスで増殖し、SCIDマウスを殺傷すると思われる(Bonnefoixら、Leukemia and Lymphoma 25:169〜178, 1997)。本明細書の実施例には、IL-21により阻害される三つのB細胞系およびIL-21に応答しなかった三つのB細胞系について記述する。細胞系は全てIL-21R陽性であった、そしてSCIDマウス中に投入して、IL-21がリンパ腫を持つ動物の生存を引き延ばすことができるか決定した。IL-21は、増殖がインビトロで阻害された三つの細胞系に対して顕著な効果を示した。別の実験で、SCIDマウスのNK細胞の枯渇によっては、IM-9モデルでのIL-21の効果を抑制できなかったことから、NK細胞が、このモデルにおけるIL-21の効果に必要とされないことが示唆される。
分化を測定する測定法には、例えば、組織の発生段階依存的な発現と関連した細胞マーカー、酵素活性、機能活性または形態変化の測定が含まれる(Watt, FASEB, 5:281〜284, 1991; Francis, Differentiation 57:63〜75, 1994; Raes, Adv. Anim. Cell Biol. Technol. Bioprocesses, 161〜171, 1989; 全て参照として本明細書に組み入れられる)。または、IL-21ポリペプチド自体が、組織の発生段階依存的な発現と関連した、さらなる細胞表面マーカーまたは分泌マーカーとなり得る。従って、ガン細胞で発現されるIL-21ポリペプチドもしくはその受容体の直接測定、または組織の分化にともなう、組織でのその発現消失は、組織の分化に対するマーカーとして役立つ可能性がある。
最も広く利用されているリンパ腫の分類は、REALの分類体系である(Ottensmeier, Chemico-Biological Interactions 135〜136:653〜664, 2001.)。特定の免疫学的マーカーが、リンパ腫の分類を目的に同定されている。例えば、濾胞性リンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-、CD10+、CD5-が含まれる; 小リンパ球性リンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-、CD10-、CD5+、CD23+が含まれる; 辺縁帯B細胞リンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-、CD10-、CD23-が含まれる; びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-が含まれる; マントル細胞リンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-、CD10-、CD5+、CD23+が含まれる; 末梢T細胞リンパ腫のマーカーには、CD20-、CD3+が含まれる; 縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-が含まれる; リンパ芽球性リンパ腫のマーカーには、CD20-、CD3+、Tdt+が含まれる; およびバーキットリンパ腫のマーカーには、CD20+、CD3-、CD10+、CD5-が含まれる(Decision Resourses, Non-Hodgkins Lymphoma, Waltham, MA., Feb. 2002)。
原発性リンパ腫の標本は、リンパ腫を診断する際の結節性腫瘍または結節外腫瘍の生検により日常的に得られる。いくつかのリンパ系新生物、特に慢性リンパ性白血病(CLL)の場合、悪性細胞は、患者の血液から得ることができる。特定のリンパ腫または患者にIL-21を用いた治療を施せるかどうかを試験する一つの方法は、リンパ腫細胞を培養することである。生検標本または血液標本は、当業者に周知の方法を組み合わせることで、組織培養のために調製することができる。例えば、試料は、細分化、細かく切り裂くこと、酵素消化または密度勾配遠心(フィコール)により調製することができる(Jacobら、Blood 75(5):1154〜1162, 1990)。次いで、腫瘍細胞をカルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシンイミジルエステル(CFSE; Molecular Probes, Eugene, OR)のような蛍光性DNA染色液で標識し、IL-21中で培養する。一回または複数回の細胞***を起こした腫瘍細胞の分布は、細胞が複製のたびにそのCFSE強度の1/2を失うので、フローサイトメトリーにより定量することができる。IL-21の効果に対し、7-AADおよびアネキシン-V染色を利用して、生存不能細胞の割合およびアポトーシス細胞の数も解析する。IL-21が所定の悪性標本の増殖および生存を促進させるか阻害するかを決定するのに、生存細胞の数、CFSE染色の分布およびアポトーシスとなった細胞の割合を全て利用することができる。そのような解析において、リンパ腫細胞は、B細胞系特異マーカー、免疫グロブリン軽鎖λおよびκ特異抗体ならびに光散乱特性の組み合わせにより、標本にコンタミしている正常細胞と区別される。CLL標本の場合、悪性細胞を定義する際の補助としてCD5染色を利用することもできる。インビトロで増殖する細胞の割合は非常に低くなる可能性が高いということで、腫瘍細胞が正常細胞と区別されることは重要である。個々の細胞に対して複数のパラメータを測定できるフローサイトメトリーのようなデータ解析法が好ましい。
IL-21に対する特定リンパ腫の感受性を決定するための一つの典型的な方法では、無血清培地中または血清もしくは血漿、好ましくはウシ胎児血清もしくはヒト血清を含有する培地中、陰性対照を含め、さまざまなIL-21用量(一般的には0.1〜10 nMの範囲)で培養した生検細胞または血液細胞を使用する。さまざまな時点で、例えば1、2、4および7日で、細胞を集めて、フローサイトメトリー法にかけ、一回または複数回***した細胞の分布(CFSE強度)、生存不能細胞の割合(7-AAD染色; Hausnerら、J. Immunol. Methods 247 (1-2):175〜186, 2001)およびアポトーシス細胞の数(アネキシン-V染色; Lagneauxら、Br. J. Hematol. 112 (2):344〜352, 2001)を決定する。IL-21が所定の悪性標本の増殖および生存を促進させるか阻害するかを決定するのに、生存細胞の数、CFSE染色の分布およびアポトーシスとなった細胞の割合を全て利用することができる。そのような解析において、リンパ腫細胞は、B細胞系特異マーカー、免疫グロブリン軽鎖λおよびκ特異抗体ならびに光散乱特性の組み合わせにより、標本にコンタミしている正常細胞と区別される。CLL標本の場合、悪性細胞を定義する際の補助としてCD5染色を利用することもできる。インビトロで増殖する細胞の割合は非常に低くなる可能性があるということで、データ解析において、腫瘍細胞が正常細胞と区別されることは重要であり、これが、個々の細胞に対して複数のパラメータを測定できるフローサイトメトリーのような方法が有用な理由である。
個々の腫瘍標本のそのような試験により、どの患者がIL-21に都合よく応答する可能性が高いかや、どの患者に対してIL-21が禁忌となり得るのかを決めるための根拠が得られると思われる。悪性リンパ球がIL-21に応答して、対照培養においてよりもゆっくり増殖するかまたは対照培養よりも急速に死滅する患者は、IL-21治療の候補者と見なされると思われる。同様に、悪性細胞の増殖速度または生存がインビトロでIL-21により促進される患者は、一般に、IL-21治療の候補者ではないと思われる(下記の場合を除き)。いったん、特定の種類のリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫またはCLL)とインビトロでのIL-21に対する感受性との間の強い相関関係を実証するデータが蓄積されれば、そのような部分集団のなかの患者全てをIL-21に対するその応答性について試験する必要性は、その集団のなかにインビトロでIL-21に応答して増殖の増加を示すことが認められる患者がいないならば、未然に防がれる可能性がある。
同様に、IL-21ポリペプチドの直接測定が、または組織でのその発現消失が、組織においてまたは細胞において、それらが腫瘍進行を起こすにつれて確定する可能性がある。細胞の侵襲性および運動性の増加、または正常組織と比較した、前ガン状態もしくはガン状態でのIL-21の発現の増加もしくは消失は、腫瘍進行における悪性転換、浸潤および転移に対する診断指標として役立つ可能性がある。このように、腫瘍の進行または転移の段階に関する知識は、所定の個別ガン患者に対して、医師が最も適した治療法、または治療の攻撃性(aggressiveness)を選択するうえで補助になると思われる。発現(mRNAまたはタンパク質の)の増加および消失の測定方法は、当技術分野においてよく知られており、そして本明細書に記述されており、IL-21発現に適用することができる。例えば、細胞の運動性を調節するポリペプチドの出現または消失を利用して、前立腺ガンの診断および予後診断を補助することができる(Banyard, J.およびZetter, B.R., Cancer and Metast. Rev. 17:449〜458, 1999)。細胞の運動性のエフェクターとして、IL-21発現の増加または消失が、リンパ腫に対する診断指標として役立つ可能性がある。
上述のように、ガンのIM-9マウスモデルにより、抗腫瘍活性はNK細胞依存的ではないことが実証された。腫瘍進行に対するポリペプチド、化合物または他の処置の影響を研究するために開発された同系マウスモデルがいくつか存在する。これらのモデルでは、培養で継代された腫瘍細胞を、腫瘍供与体と同じ系統のマウスに移植している。この細胞は、受容体マウス中で類似の特徴を有する腫瘍に進展すると思われ、転移もこのモデルのいくつかに生じると思われる。本発明者らの研究に適当な腫瘍モデルのなかには、特に、Lewis肺ガン細胞(ATCC番号CRL-1642)およびB16黒色腫細胞(ATCC番号CRL-6323)が含まれる。これらはどちらもインビトロで容易に培養され且つ操作される、C57BL6/Jマウスと同系の、一般的に使用される腫瘍(細胞)系である。これらの細胞系のいずれかの移植から生ずる腫瘍は、C57BL6/Jマウスの肺への転移能がある。Lewis肺ガンモデルが最近、血管形成阻害因子を同定するためにマウスで使用されている(O'Reilly MS,ら、Cell 79:315〜328, 1994)。C57BL6/Jマウスは、組み換えタンパク質、アゴニストもしくはアンタゴニストを毎日注射してまたは組み換えウイルスを一回注射して、実験薬剤により処置される。この処置から三日後に、細胞105〜106個を背面皮膚下に移植する。または、移植前に、細胞自体に組み換えアデノウイルス、例えばIL-21を発現するアデノウイルスを感染させることができ、その結果、そのタンパク質が全身的にではなく、腫瘍部位にまたは細胞内に合成される。マウスは通常、5日以内に目に見える腫瘍を発現する。この腫瘍は最大で三週間までの期間、増殖させることができ、その間に、対照処置群ではその腫瘍は1500〜1800 mm3の大きさに達する可能性がある。実験の間中、腫瘍の大きさおよび体重を注意深く監視する。屠殺時に、腫瘍を肺および肝臓とともに切除し、その重さを量る。肺の重量は、転移性腫瘍組織量とよく相関することが示されている。さらなる尺度として、肺表面の転移を計測する。切除した腫瘍、肺および肝臓は、当技術分野において周知のおよび本明細書に記述の方法を用いて、組織病理学検査、免疫組織化学、およびインサイチュー・ハイブリダイゼーションに向けて調製する。腫瘍が脈管構造を強化するおよび転移を起こす能力に対する、問題としている発現ポリペプチド、例えば、IL-21の影響をこのように評価することができる。さらに、アデノウイルスを利用するほかに、移植細胞をIL-21で一過性にトランスフェクトすることができる。安定的なIL-21形質転換体の利用ならびにインビボでIL-21発現を活性化する誘導可能なプロモーターの利用は、当技術分野において周知であり、この系で利用して、IL-21の転移誘導を評価することができる。さらに、精製IL-21またはIL-21条件培地をこのマウスモデルに直接注射することができ、それ故、この系で使用することができる。一般的な文献については、O'Reilly MS,ら、Cell 79:315〜328, 1994; およびRusciano D,ら、Murine Models of Liver Metastasis. Invasion Metastasis 14:349〜361, 1995を参照されたい。
ヒト血液悪性腫瘍由来の腫瘍細胞の増殖および播種に対するIL-21およびその誘導体(複合体)の活性をインビボで測定することができる。ヒト腫瘍細胞を免疫不全マウスに移植する、いくつかのマウスモデル(まとめて異種移植片モデルと呼ばれる)が開発されている; 例えば、Cattan AR, Douglas E, Leuk. Res. 18:513〜22, 1994およびFlavell, DJ, Hematological Oncology 14:67〜82, 1996を参照されたい。この疾患モデルの特徴は、マウスに与えられる細胞の種類および質により異なり、いくつかの疾患モデルが当技術分野において知られている。このモデルの一例として、腫瘍細胞(例えば、Raji細胞(ATCC番号CCL-86))が培養で継代され、この細胞およそ1×106個が重症複合型免疫不全(SCID)マウスに静脈注射されるものと思われる。そのような腫瘍細胞は、動物内で急速に増殖して、血液中を循環していることや多数の臓器系に生息していることが見出される可能性がある。IL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を用いて、腫瘍細胞を死滅させるかまたはその増殖を低下させるために計画された治療法は、腫瘍細胞を持つマウスへのIL-21化合物の投与により試験することができる。治療の効果は、処置群内での長期にわたる生存の亢進として測定され且つ統計学的に評価される。末梢血試料中に存在する腫瘍細胞の数を定量するフローサイトメトリー法(またはPCR法)のような周知の方法を用いて、腫瘍組織量を長期にわたって監視することもできる。例えば、そのようなモデルで試験するのに適した治療戦略には、IL-21のその受容体との相互作用に基づく、IL-21もしくは関連する複合体を用いた直接治療または抗体による毒性、または細胞に基づく治療の場合には、IL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体の利用が含まれる。養子免疫療法と一般に呼ばれる、後者の方法には、動物をヒト免疫系の構成成分(すなわち、リンパ球、NK細胞、骨髄)で処置することが含まれると思われ、そして細胞をIL-21と、本明細書に記載のまたは当技術分野において周知の他の免疫調節薬を加えてまたは加えずに、エクスビボでインキュベーションすることが含まれるかもしれない。
免疫(エフェクター)細胞による腫瘍細胞の破壊に対するIL-21の活性は、マウス型IL-21タンパク質(配列番号:2)を同系マウス腫瘍モデルで用いて、インビボで測定することができる。そのようなモデルがいくつか、腫瘍細胞の増殖およびその自然宿主との相互作用に対するポリペプチド、化合物または他の処置の影響を研究するために開発されており、ヒト疾患の治療に対するモデルとして役立つ可能性がある。これらのモデルでは、培養でまたはマウスで継代した腫瘍細胞を、腫瘍供与体と同じ系統のマウスに移植する。この細胞は、受容体マウスにおいて、類似の特徴を有する腫瘍を発現すると思われる。文献としては、例えば、van Elsasら、J. Exp. Med. 190:355〜66, 1999; Shrikantら、Immunity 11:483〜93, 1999; およびShrikantら、J. Immunol. 162:2858〜66, 1999を参照されたい。免疫(エフェクター)細胞による腫瘍細胞の破壊に対するIL-21の活性を研究するための適当な腫瘍モデルには、特に、本明細書に記載の、B16-F10黒色腫(ATCC番号CRL-6457)、およびEG.7胸腺腫(ATCC番号CRL-2113)が含まれる。これらはどちらもインビトロで容易に培養され且つ操作される、C57BL6マウスと同系の、一般的に使用される腫瘍細胞系である。
インビボモデルの一例として、腫瘍細胞(例えば、B16-F10黒色腫(ATCC番号CRL-6475))が培養で継代され、この細胞およそ100,000個がC57BL6マウスに静脈注射される。この投与方法では、B16-F10細胞は、選択的に肺にコロニーを形成するものと思われる。小さな腫瘍病巣が定着し、宿主マウスの肺のなかで増殖するものと思われる。IL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を用いて、腫瘍細胞を死滅させるかまたはその増殖を低下させるために計画された治療法は、腫瘍細胞を持つマウスへのIL-21化合物の投与により試験することができる。治療の効果は、腫瘍細胞の注射から2〜3週後の、個別の時点での処置群における腫瘍組織量の定量により測定され且つ統計学的に評価される。そのようなモデルで試験するのに適した治療戦略には、IL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を用いた直接治療、またはIL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を利用した細胞に基づく治療が含まれる。養子免疫療法と一般に呼ばれる、後者の方法には、動物をヒト免疫系の構成成分(すなわち、リンパ球、NK細胞、樹状細胞または骨髄、および同様のもの)で処置することが含まれると思われ、そして細胞をIL-21と、本明細書に記載のまたは当技術分野において周知の他の免疫調節薬を加えてまたは加えずに、エクスビボでインキュベーションすることが含まれうる。
別の同系マウス腫瘍細胞系を使用して、IL-21の抗ガン効果を試験することおよびこの効果の調整に関与している免疫(エフェクター)細胞集団を同定することができる。EG.7ovaは、この宿主にとっては外来抗原の、オバアルブミンを発現するように改変(形質導入)されている胸腺腫細胞系である。EG.7ovaに特異的な遺伝子組み換えT細胞受容体を持つマウスを利用できる(OT-I遺伝子導入マウス, Jackson Laboratory)。これらの動物から単離されたCD8 T細胞(OT-I T細胞)は、インビトロでEG.7細胞を死滅させることやインビボでその腫瘍の拒絶を促進させることが証明されている。EG.7ova細胞を培養で継代して、この細胞およそ1,000,000個をC57BL6マウスに腹腔内注射することができる。多数の腫瘍部位が定着し、腹腔のなかで増殖する。IL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を用いて、腫瘍細胞を死滅させるかまたはその増殖を低下させるために計画された治療法は、腫瘍細胞を持つマウスへの化合物の投与により試験することができる。OT-I T細胞は、その活性がIL-21の存在下で促進されるかを決定するため、マウスに投与することができる。治療の効果は、処置群における生存の時間により測定され且つ統計学的に評価される。そのようなモデルで試験するのに適した治療戦略には、IL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を用いた直接治療、またはIL-21もしくはその誘導体、アゴニスト、複合体または変異体を利用した細胞に基づく治療が含まれる。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエクスビボ治療を使用し、細胞に基づく戦略でIL-21を試験することもできるものと思われる。
ある特定の種類のガンを治療するためのIL-21効果の分析は、他の哺乳類の疾患、特にヒトの疾患と相関することが示されている動物を使用して行われることが好ましい。IL-21をこれらのモデルに投与後、そのガン細胞または腫瘍に対する効果を評価する。異種移植片は、免疫不全マウスを用いた、ほとんどの臨床前研究に使用される。例えば、卵巣ガンに対する同系マウスモデルでは、VEGF16のアイソタイプと強化緑色蛍光タンパク質とを安定的に過剰発現しているC57BL6マウス卵巣ガン細胞系が利用される(Zhangら、Am. J. Pathol. 161:2295〜2309, 2002)。Renca細胞を利用した腎細胞ガンのマウスモデルは、IL-12およびIL-2のような免疫療法を用いた治療に応答する転移性腎細胞腫瘍を定着させることが示されている(Wiggintonら、J. of Nat. Cancer Inst. 88:38〜43, 1996)。大腸ガンのマウスモデルは、マウス結腸腫瘍MC-26細胞をBALB/cマウスの脾臓被膜下に移植することで樹立された(Yaoら、Cancer Res. 63 (3):586〜592, 2003)。乳ガンの免疫療法応答性マウスモデルは、自発的に腫瘍を乳ガンに発現し、MUC1に対して末梢性および中枢性免疫寛容を示すマウスを用いて開発された(Mukherjeeら、J. Immunotherapy 26:47〜42, 2003)。前立腺ガンにおけるIL-21の効果を試験するため、ヒト疾患を厳密に模倣する動物モデルが開発された。遺伝子導入マウス前立腺ガンモデル(TRAMP)は、最も一般に使用される同系モデルである(Kaplan-Lefkoら、Prostate 55 (3):219〜237, 2003 ; Kwonら、PNAS 96:15074〜15079, 1999; Arapら、PNAS 99:1527〜1531, 2002)。
IL-21は、腫瘍形成の治療、CTLおよびNK活性の促進に有用であると思われ、従って、ガンの治療に有用である。CTLおよびNK細胞に対する直接的または間接的効果のほかに、本明細書に記載のいくつかの腫瘍モデルで示されるように、IL-21は、抗IgM抗体刺激による正常B細胞のIL-4刺激による増殖を阻害し、そして同様の効果がB細胞腫瘍系で観察されることから、B細胞の腫瘍細胞を低い増殖状態へ誘導するのに、IL-21で患者を治療することには治療上の有益性が存在し得ることが示唆される。
このリガンドは、従来の化学療法薬ならびにインターフェロンαのような免疫調節剤の両方を含む、既に使用されている他の薬剤と組み合わせて投与することができるものと思われる。α/βインターフェロンは、一部の白血病および動物疾患モデルの治療に有効であることが示されており、INF-αおよびIL-21の増殖阻害効果は、少なくとも一つのB細胞腫瘍由来の細胞系に対し相加的である。IL-21に対する最適投与量および日程計画の確立は、IL-21の薬物動態学および薬力学、インビトロでのIL-21に対するヒトB細胞系および原発性リンパ腫の試料の感受性、動物モデルにおける有効量ならびにIL-21の毒性を含む、いくつかの手段を組み合わせて行われる。好ましく、直接的な抗腫瘍効果を有するには、血漿中のIL-21濃度は、インビトロでB細胞リンパ腫細胞および原発性リンパ腫に対して最大活性となる濃度に達している必要がある。さらに、増殖阻害またはアポトーシス反応を誘発するIL-21への暴露の最適および最小回数は、細胞系および原発腫瘍細胞を用いて原型を作ることができる。霊長類および臨床試験で行った直接的な薬物動態の測定結果を次に使用して、患者で生物学的反応を実現するのに十分な程度および持続期間の血漿IL-21濃度を実現する、患者における理論的用量を予測することができる。さらに、Il-21は正常リンパ球の各種の反応を刺激するので、代理マーカーを使用して、患者のエフェクター細胞に対するIL-21の生物活性を測定することができる。
リンパ腫患者は、種々の化学療法薬および薬剤の組み合わせを用いて治療されるので、既存の標準的な治療計画のなかにIL-21を組み入れるプロトコルの開発により、結果的に治療成果の改善につながる可能性がある。化学療法薬とIL-21との組み合わせによる効果は主に、IL-21感受性のインビトロ・ヒトB細胞系でモデル化され、細胞増殖、細胞生存率、およびアポトーシスを測定する。化学療法薬(例えば、クロラムブシル、エトポシド、またはフルダリビン(fludaribine))に対する時間および用量依存的な応答曲線が、個々の細胞系に対して確立されている。次に、IL-21を各化学療法薬の最適下限の条件下にある広範な濃度に対して試験する。IL-21と各化学療法薬とを細胞に曝露する順序は、試験する細胞系との相互作用の結果に著しく影響を及ぼす可能性がある。従って、IL-21をいくつかの方法で培養物に導入して、最適な治療形態を見出すべきである。このなかには、例えば、IL-21による数時間〜数日間(0、4、24、48および72時間)の前治療、その後、IL-21の洗浄および化学療法薬の最適下限の用量/曝露時間の付加が含まれるべきである。1〜3日後、細胞生存率、増殖およびアポトーシスについて培養物の解析を行う。上記の実験の変形として、化学療法薬の付加前に、IL-21を洗浄しない。試験する条件の完全なセットのなかには同様に、IL-21の洗浄の時間を変化させるほか、化学療法薬への曝露後までのIL-21の付加の遅延(数時間〜数日間)による、IL-21および化学療法薬を用いた細胞の同時処理も含まれるものと思われる。標的細胞の増殖/生存の最大減少またはアポトーシス応答の最大増加をもたらす、IL-21曝露のタイミングおよび濃度が次に、動物モデルでのさらなる試験にまたは臨床プロトコルの計画に最適と考えられるであろう。IL-21により増殖刺激される細胞系、例えばRPMI-1788を用い、インビトロでIL-21を化学療法薬と組み合わせて、一部の患者が直面する可能性がある、IL-21の潜在的な悪影響を取り除く薬剤を同定することができるものと思われる。そのような薬剤は、リンパ腫に対して活性を持つことが知られているものから同定される、ならびにRPMI 1788もしくは同様にIL-21応答性の細胞系の増殖および/または生存の促進を抑制するインビトロでのその能力に基づいて選択されるものと思われる。このようにIL-21療法を、選択の化学療法薬による計画と組み合わせる場合、患者の悪性腫瘍がIL-21による増殖抑制に感受性である患者に有益となる一方で、IL-21単剤療法に別の方法で好ましくない応答をする可能性がある任意の患者の保護に有益となるものと思われる。
リンパ腫患者は同様に、RITUXAN(商標)、IL-2およびインターフェロンのような、生物製剤(生物学的作用物質)でも治療される。腫瘍に対して直接的な阻害効果を持ち、そしてその活性がエフェクター細胞にほとんど依存していないそれらの生物学的作用物質は、IL-21とのその相互作用に対する上記のインビトロ実験に類似の方法でモデル化することができる。例えば、RITUXAN(商標)は、インビトロでリンパ腫細胞に結合して、アポトーシスを直接誘導することができるが、補体依存性細胞傷害および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)のような種々のエフェクター機構を誘導することもできる。従って、IL-21およびRITUXAN(商標)が協調的に相互作用して、リンパ腫増殖を阻害するまたはアポトーシスを刺激するインビトロの条件を定義することが可能である。SCIDマウスの異種ヒトリンパ腫モデルを利用することで、RITUXAN(商標) (または他の生物学的作用物質)とIL-21との間の宿主のエフェクター機構を含む、より広範な潜在的相互作用が測定される可能性がある。異種リンパ腫SCIDマウスモデルでIL-21と他の抗腫瘍性の生物学的作用物質との間に有意な相乗作用があるかどうかを決定するため、いずれの作用物質についても単独の状態で限界的な治療結果が得られる条件下で、IL-21および他の生物学的作用物質を試験する。
IL-21およびIL-2は、IFN-γの産生および増殖に関して、インビトロでNK細胞に対するその効果の相乗作用を示す。さらに、高用量のIL-2療法は、毒性が高く、長い入院が必要とされる。IL-2に関する多くの低用量療法が試験され、耐用性良好であることが認められているが、抗腫瘍効果の証拠がほとんどない(Atkins, Semin. Oncol. 29 (3 Suppl. 7):12, 2002)。それ故、IL-21との低用量IL-2の組み合わせにより、低用量IL-2による免疫系の刺激が増強されるのと同時に直接的な抗リンパ腫効果が供与されることで、臨床的に有用となる可能性がある。IL-2とIL-21との組み合わせによる効果は、本明細書に記載されるような、マウス同系リンパ腫モデルでまたはSCIDマウスの異種ヒトリンパ腫モデルで試験する。IL-2およびIL-21を異なる用量で組み合わせたことによる、エフェクター細胞の活性化に対する相対効果および毒性を正常な霊長類で決定して、投薬の量およびスケジュールを最適化し、患者を入院させる必要性を回避することができる。
悪性リンパ球がIL-21に応答してインビトロで増殖刺激される患者の場合、IL-21による治療は、悪性細胞がCLLのように、インビボで非常に低い代謝回転速度を持たなければ、使用禁止(上述の他の薬剤との組み合わせがない場合には)とされる可能性がある。CLL細胞が比較的休止状態にあることを、化学療法に対するこの疾患の抵抗性と結び付けることができる。そのような場合には、化学療法薬を投与する直前に、患者にIL-21をパルスすることにより、患者を治療することができるものと思われる。IL-21および化学療法の投薬の最適なタイミングをインビトロでモデル化して、IL-21への曝露後に悪性細胞が特定の化学療法薬に最も強く感受性になる期間がどれくらいかを予測することができるものと思われる。
本発明により、BまたはT細胞リンパ腫を有する哺乳類に、BまたはT細胞リンパ腫の増殖を低下させるのに十分な量のIL-21組成物を投与する段階を含む、新生物のBまたはT細胞の増殖を低下させる方法が提供される。その他の態様として、その組成物は、IL-2、IL-15、IL-4、IL-18、GM-CSF、Flt3リガンド、インターフェロン、または幹細胞因子からなる群より選択される少なくとも一つの他のサイトカインを含むことができる。
別の局面として、本発明により、BまたはT細胞の新生物を有する哺乳類に、新生物のBまたはT細胞の増殖を低下させるのに十分な量のIL-21アンタゴニストの組成物を投与する段階を含む、新生物のBまたはT細胞の増殖を低下させる方法が提供される。その他の態様として、その組成物は、IL-2、IL-15、IL-4、IL-18、GM-CSF、Flt3リガンド、インターフェロン、または幹細胞因子からなる群より選択される少なくとも一つの他のサイトカインを含むことができる。さらに、IL-21アンタゴニストは、リガンド/毒素融合タンパク質とすることができる。
IL-21-サポリン融合毒素、または他のIL-21-毒素融合体は、類似する一連の白血病およびリンパ種に対して使用することができ、その結果、IL-21で治療できる白血病の範囲が拡がる。さらに、そのようなIL-21-毒素融合体は、IL-21がその受容体に結合する他のガンに対して使用することができる。融合毒素によるIL-21受容体の活性化により、標的細胞の増殖を阻害する二つの独立した手段が提供され、第一手段はリガンド単独で見られる効果と同一であり、第二手段は受容体の内部移行を介した毒素の輸送によるものである。IL-21受容体のリンパ系に限定的な発現様式から、リガンド-サポリン複合体が患者に寛容され得ることが示唆される。
悪性腫瘍に対する治療のなかに同種骨髄移植または同種幹細胞移植が含まれる場合、IL-21は、移植片-対-腫瘍効果の増強に役立ち得る。IL-21は、骨髄前駆細胞からの細胞溶解性NK細胞の産生を刺激し、抗原受容体の活性化に続いてT細胞の増殖を刺激する。従って、患者が同種骨髄移植を受ける場合、IL-21により、供与体のリンパ球の投入を伴ってまたは伴うことなく、抗ガン反応の発生が高められると思われる。
ガン免疫療法に対する近代的方法は、免疫系が自然発生ガンを検出してこれを防ぐことができるという原則に基づいている。「免疫学的監視」説(Burnet FM Lancet 1:1171〜4, 1967を参照されたい)を支持する証拠は、部分的には、ガンの発生率が、感染のような疾患により免疫系が損なわれた患者で増加する(Klein G. Harvey Lect. 69:71〜102, 1975; およびKuperら、J. Intern. Med. 248:171〜83, 2000を参照されたい)、または骨髄切除のような医学的介入の後の患者で増加する(Birkelandら、Lancet 355:1886〜7, 2000; およびPennI, Cancer Detect Prev. 18:241〜52, 1994を参照されたい)ことを示唆する疫学的研究から来ている。遺伝子標的マウスで行った実験からまた、免疫系が老化マウス(Smyth, M.ら、J. Exp. Med. 192:755〜760, 2000; およびDavidson, W.ら、J. Exp. Med. 187: 1825〜1838, 1998を参照されたい)で、または発ガン性化学物質に暴露後(Peng, Sら、J. Exp. Med. 184: 1149〜1154, 1996 ; Kaplan, D.ら、Proc. Nat. Acad Sci. USA 95:7556〜7561, 1998; およびShankaran V.ら、Nature 410:1107〜1111, 2001を参照されたい)に自然発生ガンに対する感受性を調節することが示される。免疫による腫瘍の認識が、腫瘍を持つ宿主で頻繁に起こるという証拠は、分化抗原、変異抗原、組織特異的抗原、ガン精巣抗原、腫瘍で過剰発現される自己抗原、およびウイルス抗原を含む、さまざまな腫瘍関連抗原に反応するT細胞の同定から来ている(Boon T.ら、Immunol. Today 18:267〜8, 1997)。さらに、B細胞は、これらの同じクラスの腫瘍抗原を認識する、高力価の循環IgG抗体を産生することが知られており(Stockert E.ら、J. Exp. Med. 187:1349〜54, 1998;. Sahin Uら、Curr. Opin. Immunol. 9:709〜16, 1997; およびJager, E.ら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 97:12198〜12203, 2000)、また種々のストレス関連遺伝子を発現する腫瘍細胞を認識および殺傷することができるNK細胞が単離された(Bauer, Sら、Science 285:727〜729, 1999)。
免疫療法はガンを治療するための効果的な方法となり得るという概念が、実験動物モデルで確証されているが、しかし一方で、その方法論はヒト対象に対してそれほど進んでいないことから、免疫系を刺激して、既存の疾患に拒絶反応を示すようにできることが強く示唆される。ガン免疫療法のまさしく最初の試みは、1893年に、発熱バクテリアの抽出物を用い、全身性炎症反応および細胞性免疫反応の誘導を介して最も適した抗ガン反応を実現した、William Coleyにより報告された(Coley WB. The treatment of malignant tumors by repeated inoculations of erysipelas. With a report of ten original cases. 1893, Clin Orthop. 262:3〜11, 1991)。さらに現代では、一般化した5つの戦略: サイトカイン療法、細胞移入療法、モノクローナル抗体療法、ガンワクチン療法、および遺伝子療法が、エフェクター細胞の数を増加させるおよび/またはその抗ガン活性を調節するために採用されている(Rosenberg, SA. (編), Principles and practice of the biologic therapy of cancer., 第三版, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2000に概説されている)。今日まで、それぞれの方法が抗ガン反応の調整に有効であることが示されているが、これらの反応の持続性は、若干の例外を除いて、ほとんどが一時的である。この事実は、腫瘍免疫学に関する我々の理解が限定的であることを反映しており、そして方法の改良には、過去に認識されていない抗ガン反応の要素の利用が待望されることを主張している。本発明により、腫瘍免疫学に関する我々の理解を向上させるような要素が提供されるのに加えて、ヒトのガンの治療および予防に治療上有用なポリペプチドが提供される。
持続性免疫および持続的な臨床反応を実現するための必要条件の一つは、レベルの増幅、すなわち、腫瘍殺傷を媒介する細胞の数および活性の増幅である。従って、細胞傷害性T細胞(CTL)、NK細胞、およびB細胞を含むリンパ球、同様に好中球および単球細胞のような骨髄性細胞に対するその効果を媒介する新たな因子により、抗ガン活性が改善されるものと思われる。IL-21は、活性化CD4+「ヘルパー」T細胞(この細胞は、体液性免疫および細胞媒介性免疫の両方に必要とされ、抗原再攻撃(antigenic re-challenge)に対する長期記憶の維持に必要とされる)の産物である(米国特許第6,307,024号; Parrish-Novak Jら、Nature 408:57〜63, 2000)。IL-21に対する受容体は、抗ガン反応を媒介する細胞に発現しており、そして以前の実験から、IL-21がインビトロでこれらの細胞型の増殖を刺激できることが示された(共通して所有する国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/77171号)。さらなる実験から、これらのIL-21活性がインビボで確認されている。
本発明の方法のためのIL-21ポリペプチドは、動物モデルにおいてインビボで腫瘍に対抗してCTLおよびNK細胞を刺激して、結果的に腫瘍組織量および腫瘍細胞の減少、ならびに生存(率)の増加をもたらすことが示されている。故に、IL-21はヒトにおいて抗ガン治療への応用に利用可能である。このように、IL-21の抗ガン活性は、ヒトのガンの治療および予防に有用である。その適応には以下に限定されることはないが: ガン腫(上皮組織)、軟組織および骨の肉腫(中胚葉性組織)、腺腫(腺組織)、肝臓(肝臓ガン)および腎臓(腎細胞ガン)、CNS(神経膠腫、神経芽細胞腫)のような全ての臓器系のガン、および血液ガン、ウイルスと関連した(例えば、レトロウイルス感染、HPV、B型肝炎およびC型肝炎、ならびに同様のものと関連した)ガン、肺ガン、内分泌腫瘍、消化管ガン(例えば、胆管ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、胃ガンおよび結腸直腸ガン)、泌尿生殖器ガン(例えば、前立腺ガン、膀胱ガン、腎細胞ガン)、婦人科ガン(例えば、子宮ガン、子宮頚ガン、卵巣ガン)、乳ガン、および生殖系の他のガン、頭頚部ガン、ならびにその他のものが含まれる。特に関心があるのは、以下に限定されることはないが、リンパ性白血病、骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、ならびにその他の白血病およびリンパ腫を含む、造血系のガンである。さらに、IL-21は、「段階1」限局(がんが原発した臓器に限局);「段階2」領域;「段階3」広域;および「段階4」広範囲に播種したガンのような、さまざまな非転移ならびに転移段階のガンの治療に使用することができる。さらに、IL-21は、ガンに対するさまざまな用途、すなわち免疫療法に、ならびに化学療法および同様のものとともに使用することができる。
本発明の方法を用いたIL-21の投与により、腫瘍反応が引き起こされるものと思われる。各プロトコルが腫瘍反応の評価を違った形で定義しているかもしれないが、典型的な指針は、Clinical Research Associates Manual, Southwest Oncology Group, CRAB, Seattle, WA, October 6, 1998(1999年8月に更新)に見出すことができる。CRAマニュアル(第7章「Response Accessment」を参照されたい)によれば、腫瘍反応とは、全ての測定可能な病変または転移の減少または消失を意味する。疾患は一般に、これが、医療用画像もしくはX線画像、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、または触診法により明確に規定される辺縁を有する、二次元的に測定可能な病変部を含む場合に、測定可能と見なされる。評価可能な疾患とは、その疾患が、表面的に測定可能な病変部、辺縁が明確に規定されない塊、両方の直径が0.5 cm未満の病変部、走査にて一方の直径が傷口の間の距離よりも小さい病変部、直径が2 cm未満の触診可能な病変部、または骨疾患を含むことを意味する。評価不能な疾患には、胸水、腹水、および間接的な証拠により証明される疾患が含まれる。以前に放射線療法を受けた病変部であって、進行していない病変部も一般に、評価不能と見なされる。
固形腫瘍の反応を評価するプロトコルには、目的物の状態に対する基準が必要とされる。代表的な基準には、以下が含まれる: (1) 全ての測定可能なおよび評価可能な疾患の完全消失と定義される完全反応(CR)。新たな病変がない。疾患と関連した症状がない。評価不能な疾患の証拠がない; (2) 全ての測定可能な病変の垂直直径の積の合計によるベースラインからの、50%を超えるかそれに等しい減少と定義される部分反応(PR)。評価不能な疾患の進行がない。新たな病変がない。少なくとも一つの測定可能な病変を有する患者に適用; (3) ベースラインと同じ方法を用いて観測された最も小さい合計に対する測定可能な病変部の積の合計の、50%もしくは10cm2の増加、または評価可能な疾患の明白な悪化、または消失していた病変の再出現、または新たな病変の出現、または死亡により評価に戻ることができないことまたは病状の悪化(このガンと無関係でない場合)と定義される進行; (4) CR、PR、または進行と認定されない場合と定義される安定または無反応 (Clinical Research Associates Manual、前掲を参照されたい)。
ガンの治療におけるIL-21の使用方法の例には、以下が含まれるが、これらに限定されることはない:
1) IL-21は、IL-21受容体を発現する腫瘍に対する直接的阻害活性を目的に単剤として使用することができる(米国特許第6,307,024号; 国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/77171号)。そのような活性が本明細書で示される。治療用の薬学的媒体中での投与は、当技術分野において周知のおよび本明細書に記載の方法を用いて行うことができる。
2) IL-21を毒性化合物と結合させることができ、これが、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫およびNK細胞リンパ腫のような、IL-21受容体を発現する腫瘍細胞に結合して殺傷する。毒性化合物は、急性骨髄性白血病を治療するために使用される、抗CD33抗体 + 薬剤複合体の、MYLOTARG(商標)に類似の方法で使用されるcalichaemicinのような小分子薬剤(例えば、Sievers ELら、J Clin Oncol. 19:3244〜54, 2001; およびBernstein ID Clin. Lymphoma Suppl 1:S9〜S11, 2002を参照されたい); または125I(Kaminski MS,ら、J. Clin. Oncol. 19:3918〜28, 2001)もしくは非ホジキンリンパ腫の治療のために使用された、抗CD20抗体に付着された90Y(Gordon LIら、Semin. Oncol. (1 Suppl 2):87〜92, 2002に概説されている)のような放射性同位体; またはリシンA(Lynch TJ Jr,ら、J. Clin. Oncol. 15:723〜34, 1997)もしくは皮膚T細胞リンパ腫の治療のためにIL-2との融合タンパク質として作製されたジフテリアB毒素(Talpur Rら、Leuk. Lymphoma 43:121〜6, 2002)のような天然に存在するタンパク質毒素とすることができる。IL-21へのこれらの毒性化合物の付着は、化学的結合(Rapley R. Mol. Biotechnol. 3:139〜54, 1995)または遺伝子組み換え(Foss FM. Clin. Lymphoma Suppl 1 :S27〜31, 2000)を介して起こすことができる。そのようなIL-21との毒性複合体、例えば、IL-21-サポリン複合体は、さまざまな腫瘍をインビボおよびインビトロで殺傷することが示されている(米国特許第6,307,024号; および本明細書に記載されている)。
3) IL-21は、ガンの単剤療法を目的に免疫刺激剤として使用することができる。IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-15、およびインターフェロンのような種々のサイトカインは、動物モデルにおいて、免疫系の刺激を介して抗ガン反応を刺激することが知られている(Rosenberg, SA 前記に概説されている)。さらに、IL-21は同様に免疫系を刺激することが示される(米国特許第6,307,024号; および本明細書に記載されている)。サイトカインによる単剤療法は、ヒトのガン患者に対して一般に認められた診療方法である。例えば、IL-2およびIFN-αは、転移性悪性黒色腫および腎細胞ガンの治療のために使用される(例えば、Atkins MBら、J. Clin. Oncol. 17:2105〜16, 1999; Fyfe Gら、J. Clin. Oncol. 13:688〜96, 1995; ならびにJonasch E,およびHaluska FG, Oncologist 6:34〜55, 2001を参照されたい)。これらのサイトカインの作用機序には、以下に限定されることはないが、CD8+ T細胞およびNK細胞による直接的な腫瘍細胞の殺傷を含む、Th1細胞媒介性反応の増強が含まれる。IL-21は、本明細書に記載されるようにインビボおよびインビトロで、CTL、例えば、CD8+ T細胞、およびNK細胞による直接的な腫瘍細胞の殺傷を含む、Th1細胞媒介性反応を同様に増強することが示される。このように、本発明のIL-21は、ヒトの疾患で腫瘍細胞を積極的に殺傷させるために、およびこれらの活性を調節するために、ならびに付加的な抗ガン反応のなかで治療的にまたは臨床的に使用することができる。
4) IL-21は、化学療法、放射線療法、および骨髄除去治療と組み合わせて免疫刺激剤として使用することができる。患者の抗ガン免疫を促進させるために単独で作用するほか、IL-21は、標準的なタイプの化学療法または放射線療法と相乗的に作用することができる。例えば、リンパ腫および腎細胞ガンの前臨床モデルで、ドキソルビシン(Ehrke MJら、Cancer Immunol. Immunother. 42:221〜30, 1996)とのIL-2の組み合わせ、または放射線療法とのIL-2(Younes Eら、Cell Immunol. 165:243〜51, 1995)もしくはIFN-α(Nishisaka Nら、Cytokines Cell Mol Ther. 6:199〜206, 2000)の組み合わせにより、単剤の使用に比べて優位な結果が得られた。この併用療法では、IL-21は、腫瘍組織量をさらに減少させ、化学療法薬によるいっそう効果的な殺傷を可能とすることができる。さらに、致死量の化学療法剤または放射線に続く骨髄移植または幹細胞の再構築により、腫瘍組織量をIL-21による抗ガン効果をさらに可能とするのに十分に小さいレベル(すなわち、微小残存病変)にまで減少させることができるものと思われる。このタイプの治療計画例のなかには、骨髄除去および(骨髄)移植後の抗ガン反応を加減するためのIL-2およびIFN-αの使用が含まれる(Porrata LFら、Bone Marrow Transplant. 28:673〜80, 2001; Slavin S,およびNagler A. Cancer J. Sci. Am. Suppl 1:S59〜67, 1997; ならびにFefer Aら、Cancer J. Sci. Am. Suppl 1:S48〜53, 1997)。リンパ腫および他のガンの場合には、IL-21を化学療法薬に対していつ使用するかに応じて、IL-21を、腫瘍細胞に対する化学療法薬の効果と相乗的に直接作用させるために使用することができるし、または化学療法後に免疫系を刺激するために使用することができる。当業者であれば、両方の可能性を活用するプロトコルを計画することができるものと思われる。
5) IL-21は、骨髄を除去する標準型の化学療法または方法と組み合わせて、組織保護薬として使用することができる。IL-21は、細胞の増殖と分化を調節する。結果として、IL-21は、一般に使用される化学療法および放射線療法と関連した毒性からさまざまな組織および臓器を保護することができる。一例として、腸上皮組織はIL-15受容体を発現しており、動物モデルでの実験からIL-15が、化学療法による毒性から腸上皮組織を保護することや病的状態を防ぐことが示される(Shinohara Hら、Clin. Cancer Res. 5:2148〜56, 1999; Cao Sら、Cancer Res. 58:3270〜4, 1998; およびCao Sら、Cancer Res. 58: 1695〜9, 1998)。損傷を防御するほかに、IL-21の増殖効果によって、薬剤による毒性を受けた組織の再生を促進させることができる。このタイプの活性の該当例には、骨髄移植後、IL-7により刺激された免疫系の再構築促進(Alpdogan Oら、Blood 98:2256〜65, 2001; およびMackall CLら、Blood 97: 1491〜7, 2001)および化学療法後の好中球減少症を治療するためのG-CSFの使用(Lord, BIら、Clin. Cancer Res. 7:2085〜90, 2001; およびHolmes FAら、J. Clin. Oncol. 20:727〜31, 2002)が含まれる。IL-21は、造血性細胞およびリンパ球様細胞の増殖および分化を促進させることが示されるので、本発明のIL-21は、ヒト疾患における化学療法薬の投与に際して化学療法薬の用量計画を強化するだけでなく回復を補助するため、治療的にまたは臨床的に使用することができる。
6) IL-21は、種々のサイトカインおよび同時-刺激/阻害分子を含む、他の免疫調節性化合物と組み合わせて使用することができる。抗ガン反応を媒介する際のIL-21の免疫刺激活性は、IL-21を他のクラスの免疫調節性分子とともに使用する場合に、患者で増強することができる。これらのなかには、さらなるサイトカインの使用が含まれるが、これに限定されることはない。例えば、IL-2とIL-12とを組み合わせて使用することで、T細胞リンパ腫、扁平上皮細胞癌、および肺ガンで有益な効果が示される(Zaki MHら、J. Invest. Dermatol. 118:366〜71, 2002; Li Dら、Arch. Otolaryngol. Head Neck Surg. 127:1319〜24, 2001; およびHiraki Aら、Lung Cancer 35:329〜33, 2002)。さらに、IL-21は、CD137の活性化(Wilcox RAら、J. Clin. Invest. 109:651〜9, 2002)またはCTLA4の阻害(Chambers CAら、Ann. Rev. Immunol. 19:565〜94, 2001)のような、免疫に基づくエフェクター細胞に見られるさまざまな細胞表面分子を同時刺激する試薬と組み合わせることができるものと思われる。または、IL-21は、TRAIL関連受容体と相互作用することで腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する試薬とともに使用することができるものと思われる(Takeda Kら、J. Exp. Med. 195:161〜9, 2002; およびSrivastava RK, Neoplasia 3:535〜46, 2001)。そのような試薬には、TRAILリガンド、TRAILリガンド-Ig融合体、抗TRAIL抗体、および同様のものが含まれる。
7) IL-21は、モノクローナル抗体療法と組み合わせて使用することができる。モノクローナルを用いたガンの治療は、非ホジキンリンパ腫(RITUXAN(商標))、白血病の形態(MYLOTARG(商標))、***細胞ガン(HERCEPTIN(商標))、および結腸ガン(ERBITUX(商標))を含む、多くの腫瘍に対する標準的技法となりつつある。抗体が抗ガン効果を媒介する機構の一つは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と呼ばれ、NK細胞、マクロファージおよび好中球を含む免疫に基づく細胞により、抗体複合体が結合した細胞を死滅させる過程を介するものである。その免疫調節活性により、IL-21を使用して、抗体療法の有効性を高めることができる。このタイプの治療概念の例には、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の治療を目的としたRITUXAN(商標)とIL-2、IL-12、またはIFN-αのいずれかとの併用が含まれる(Keilholz Uら、Leuk. Lymphoma 35:641〜2,. 1999; Ansell SMら、Blood 99:67〜74, 2002; Carson WEら、Eur. J. Immunol. 31:3016〜25, 2001 ; およびSacchi Sら、Haematologica 86:951〜8., 2001)。同様に、IL-21は、造血性細胞およびリンパ球様細胞、ならびにNK細胞の増殖および分化を促進させることが示されるので、本発明のIL-21は、ヒト疾患における抗体療法の活性および有効性を高めるため、治療的にまたは臨床的に使用することができる。
8) IL-21は、細胞の養子療法と組み合わせて使用することができる。ガンを治療するために使用される方法の一つは、患者から抗ガンエフェクター細胞を直接単離し、これらの細胞を培養でかなり多くの数にまで増やし、それからこれらの細胞を再導入して患者に戻すことである。NK細胞、LAK細胞、および腫瘍特異的T細胞を含む、これらのエフェクター細胞の増殖には、IL-2のようなサイトカインが必要とされる(Dudley MEら、J. Immunother. 24:363〜73, 2001)。リンパ球に対するその増殖刺激特性を考えれば、IL-21を使用してこれらの細胞を培養で増殖させ、続けてそのような細胞を必要とする患者へ再導入することもできるものと思われる。細胞を患者へ移し戻した後、IL-2のようなサイトカインで患者を治療することにより、その細胞の生存を維持する方法が用いられる(Bear HDら、Cancer Immunol. Immunother. 50:269〜74, 2001; およびSchultze JLら、Br. J. Haematol. 113:455〜60, 2001)。この場合も同様に、IL-21を養子療法後に使用して、エフェクター細胞の機能および生存率を高めることができる。
9) IL-21は、腫瘍ワクチンと組み合わせて使用することができる。腫瘍ワクチンの主な目的は、腫瘍により発現される抗原に対する活性な免疫応答を誘発させることである。患者をカン抗原で免疫するためにこれまで多くの方法が使用されており、また抗原輸送後の免疫応答の強さを増幅させるために種々の技術が使用されている(Rosenberg, SA 前記に概説されている)。IL-21を腫瘍ワクチンと組み合わせて使用できる方法には、以下に限定されることはないが、IL-21遺伝子を発現するまたは細胞内にIL-21が補助タンパク質との関連で輸送されている、自己腫瘍細胞および同種系腫瘍細胞の輸送が含まれる。同様に、IL-21は、精製した腫瘍抗原タンパク質の注入、注入したDNAから発現される腫瘍抗原、または樹状細胞に基づく治療法を利用してエフェクター細胞に提示する腫瘍抗原ペプチドと組み合わせて輸送することができる。これらのタイプの治療法の例には、改変した腫瘍細胞(Antonia SJら、J. Urol. 167:1995〜2000, 2002; およびSchrayer DPら、Clin. Exp. Metastasis 19:43〜53, 2002)、DNA(Niethammer AGら、Cancer Res. 61:6178〜84, 2001)、および樹状細胞(Shimizu Kら、Proc. Nat. Acad. Sci U S A 96:2268〜73, 1999)を用いたワクチンと関連させたIL-2のようなサイトカインの使用が含まれる。同様に、IL-21は、抗ガンワクチンのアジュバント(抗原免疫増強剤)として使用することができる。
10) IL-21は、遺伝子治療との関連で使用することができる。遺伝子治療は、広くは、一時的にまたは永続的に細胞表現型を変化させるための細胞への遺伝物質の移入と定義することができる。腫瘍患者内の特定部位に遺伝子治療を介してサイトカイン、腫瘍抗原、および付加的な同時刺激分子を輸送するため、多くの方法が開発されている(Rosenberg, SA 前記に概説されている)。これらの方法論をIL-21のDNAもしくはRNAの使用と適合させることができるものと思われる、またはIL-21をタンパク質アジュバントとして使用して、本明細書に記載の遺伝子治療のアプローチとの組み合わせで免疫を増強させることができるものと思われる。
所定のサイトカインに対する受容体の組織分布は、そのサイトカインの潜在的な作用部位を強く示唆する。IL-21受容体のノザン解析により、ヒトの脾臓、胸腺、リンパ節、骨髄、および末梢血白血球で転写産物が示された。特定の細胞型がIL-21受容体を発現しているとして同定され、そして強いシグナルが混合リンパ球反応(MLR)でおよびバーキットリンパ腫(細胞系)Rajiで認められた。二種類の単球細胞系THP-1(Tsuchiyaら、Int. J. Cancer 26: 171〜176, 1980)およびU937(Sundstromら、Int. J. Cancer 17:565〜577, 1976)は、陰性であった。
IL-21受容体は、2個体由来の末梢血単核球細胞(PBMNC)が混合されており、従って相互活性化がもたらされる、MLRで相対的に高いレベルで発現される。MLRで高いレベルの転写産物が検出されるものの休止しているT細胞またはB細胞集団においてはそうでないことから、IL-21受容体の発現は、活性化中の一つまたは複数の細胞型で誘導される可能性が示唆される。単離されたT細胞およびB細胞集団の活性化は、細胞をPMAおよびイオノマイシンで刺激することにより人為的に行うことができる。ソートした細胞をこれらの活性化条件にさらすと、IL-21受容体の転写レベルが両方の細胞型で増加したことから、免疫応答、特に活性化中の自己分泌および傍分泌でのT細胞およびB細胞の増殖におけるこの受容体およびIL-21に対する役割が示唆される。IL-21はまた、リンパ球産生に関与するいっそう原始的な前駆体の増殖に影響を及ぼす可能性がある。
IL-21受容体は、休止しているT細胞およびB細胞において低レベルで存在することが認められ、両方の細胞型において活性化の間に上方制御された。興味深いことに、B細胞はまた、その伝達暗号をT細胞がするよりも迅速に下方制御することから、シグナルの振幅およびシグナルの消失のタイミングがB細胞応答の適切な調節には重要であることが示唆される。
IL-21は、IL-15と協調して骨髄前駆体からNK細胞を増殖させ且つNK細胞のエフェクター機能を増大させる。IL-21はまた、抗CD40抗体で刺激した成熟B細胞を同時刺激するが、IgMを介したシグナルに対するB細胞の増殖を阻害する。IL-21は、T細胞受容体を介したシグナルと協調してT細胞の増殖を促進させ、そして遺伝子導入マウスにおける過剰発現により、本明細書に記載されるように、リンパ球減少ならびに単球および顆粒球の増殖を引き起こす。
IL-21ポリペプチドおよびタンパク質はまた、エクスビボで、例えば自己骨髄培養でも使用することができる。簡単に言えば、骨髄を化学療法または臓器移植前に患者から取り出し、IL-21を用いて、選択的に一つまたは複数の他のサイトカインと組み合わせて処理する。その後、処理した骨髄は、骨髄の回復を速めるために化学療法後にまたは移植片対宿主病を抑制するために移植後に患者に戻す。さらに、本発明のタンパク質は同様に、骨髄または末梢血前駆細胞(PBPC)のエクスビボ増殖のために使用することもできる。処理の前、骨髄を幹細胞因子(SCF)で刺激して、初期前駆細胞を末梢循環系へ放出させることができる。これらの前駆細胞を末梢血から回収および濃縮することができ、次いで、培養中にIL-21を用いて、選択的に一つまたは複数の他のサイトカイン(SCF、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、IL-18、またはインターフェロンを含むが、これらに限定されることはない)と組み合わせて処理し、高密度のリンパ球培養物に分化および増殖させ、これを化学療法または移植術後に患者に戻すことができる。
本発明により、IL-21の非存在下で培養された骨髄細胞または末梢血液細胞と比べて、骨髄細胞または末梢血液細胞中のリンパ球様細胞数の増加をもたらすのに十分な量のIL-21を含む組成物とともに骨髄細胞または末梢血液細胞を培養する段階を含む、造血性細胞および造血性前駆細胞の増殖のための方法が提供される。その他の態様として、造血性細胞および造血性前駆細胞は、リンパ球様細胞である。別の態様として、リンパ球様細胞は、NK細胞または細胞傷害性T細胞である。さらに、組成物にはまた、IL-2、IL-15、IL-4、GM-CSF、Flt3リガンドおよび幹細胞因子からなる群より選択される他のサイトカインを少なくとも一つ含むこともできる。
C. 感染症に対するIL-21の使用
持続性免疫および持続的な臨床反応を実現するための必要条件の一つは、ウイルス複製を抑制する、再感染を阻止する、および感染細胞を殺傷する細胞の数および活性の増幅である。従って、細胞傷害性T細胞(CTL)、NK細胞、およびB細胞を含むリンパ球、同様に好中球および単球細胞のような骨髄性細胞に対する効果を媒介する新たな因子により、免疫系による抗ウイルス活性が改善されるものと思われる。IL-21は、活性化CD4+「ヘルパー」T細胞(この細胞は、体液性免疫および細胞媒介性免疫の両方に必要とされ、抗原再攻撃に対する長期記憶の維持に必要とされる)の産物である(米国特許第6,307,024号; Parrish-Novak Jら、Nature 408:57〜63, 2000)。IL-21に対する受容体は、抗ウイルス反応を媒介する細胞に発現しており、そして以前の実験から、IL-21がインビトロでこれらの細胞型の増殖を刺激できることが示された(国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/77171号)。さらなる実験から、これらのIL-21活性がインビボで確認されている。
免疫系の中心的役割は、微生物感染を防御することである(Paul, WE (編), Fundamental Immunology. Lippincott-Raven, New York, NY, 1999により概説されている)。免疫系は、細胞間相互作用の調和的な統合およびサイトカインを含む可溶性因子の合成を介して、広範囲の細菌、寄生虫およびウイルスに対する迅速かつ極めて特異的な反応を生み出す。二つの部類の活性すなわち、先天性免疫および適応性免疫により、この防御反応が説明される。先天性免疫反応は、急性反応であり、病原体の複製を制限する働きをする。マクロファージ、樹状細胞、NK細胞および好中球は、この活性に関与する細胞型の一部を構成する。先天性免疫には、いっそう持続的な反応である、適応性免疫反応が付随し、これによって樹状細胞、T細胞およびB細胞により調節された抗原特異的な効果系(反応)が、感染症の回復および長期記憶を媒介する。
サイトカインは、感染に対する免疫反応の調節で重要な役割を果たす。例えば、IFN-αおよびIFN-γは、ウイルス複製を阻害するのにおよびウイルスを持つ細胞の複製を阻止するのに重要である(Vilcek J,およびSen GC, BN, Knipe DM, Howley PM (編), Interferons and other cytokines. Fields Fundamental Virology., 第三版、Lippincott-Raven Publishers Philadelphia, PA, 1996, 341〜365頁)。IFNはまた、先天性免疫を調節する細胞を刺激し、そして後天性免疫反応の開始に必要とされる。ウイルス感染の間の初期に産生されるさらなるサイトカインには、NK細胞により産生されるIFN-γ、腫瘍壊死因子-αおよびIL-15が含まれる。これらの分子は、感染に対する炎症反応を形成するほかに、適応性免疫に重要なリンパ球の増殖および分化を刺激するのに役立つ。ウイルス感染に関して、ウイルス抗原に反応して活性化したCD4+ T細胞により、TヘルパーI型(TH1)反応および細胞媒介性免疫に必要な引き続くカスケードが開始される。すなわち、サイトカインIL-2のような特定の増殖因子によるCD4+ T細胞の増殖後に、これらのT細胞が、抗原特異的CD8+ T細胞、マクロファージ、およびNK細胞を刺激して、ウイルスに感染した宿主細胞を死滅させる。同様に、サイトカインは、これらのタイプの反応の調節に重要な役割を果たす。例えば、IFN-γは、Th1 T細胞の分化を調節するのにおよび細胞媒介性免疫を刺激するのに重要である(Paul, WE 前掲に概説されている)。
感染症を治療するための戦略では、免疫を増強するための方法に重点が置かれることが多い。例えば、ウイルス感染症を治療するための最も一般的な方法には、免疫に基づく記憶応答を誘発する予防ワクチンが含まれる。積極的なワクチン接種計画のおかげで、嚢虫、水疱瘡、およびおたふく風邪のような多くの地域流行性の小児病は、現在、米国では極めて珍しい(Dowdle WR,およびOrenstein WA, Proc Nat. Acad. Sci. USA. 91:2464〜8, 1994)。ウイルス感染症を治療するための別の方法には、危険性の高い患者へ、呼吸器多核体ウイルス(RSV)に対する抗体を注入するような免疫グロブリン療法を介した受動免疫法が含まれる(Meissner HC, J. Pediatr. 124:S17〜21, 1994)。IFN-αは、陰部疣贅(Reichman RCら、Ann. Intern. Med. 108:675〜9, 1988)のようなウイルス感染症ならびにHCV(Davis GLら、New Engl. J. Med. 339:1493〜9, 1998)およびHBVのような慢性疾患を治療するための別の方法である。これらの方法は、有効である場合が多いが、臨床的な使用には制限がある。例えば、多くのウイルス感染症は、ワクチン開発が行えず、そしてまたそれらは抗体単独で治療することができない。さらに、IFNは、極めて効果的であるわけではなく、これらは著しい毒性を引き起こす可能性がある; 従って、治療法の改良が必要とされる。
ウイルス感染症のような疾患を治療するための方法の改良は、先天性免疫および後天性免疫を特異的に促進させる試薬、すなわち抗ウイルス反応のエフェクター細胞を刺激する化合物の単離によって決まる。本発明者らは以前、IL-21の発見について報告している(Parrish-Novak Jら、前掲; 米国特許第6,307,024号)。このサイトカインは、活性化CD4+ T細胞により産生される。IL-21受容体は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞、B細胞、NK細胞、および樹状細胞のような免疫系のなかのさまざまな細胞により発現される。IL-2と同様、IL-21は、抗ウイルス反応を増幅するのに重要な必要条件である、T細胞の増殖を促進する自己分泌因子として作用する。さらに、IL-21は、CD8 T細胞とNK細胞の両方の増殖および殺傷活性を促進させ、このことから、細胞媒介性免疫における重要な役割が示される(Parrish-Novak, J.ら、前掲; 米国特許第6,307,024号; およびKasaian MTら、Immunity 16:559〜69, 2002)。最後に、IL-21は、T細胞の助けがある場合にB細胞の増殖を促進させ、このことから、抗体媒介性プロセスの刺激における重要な役割が示唆される(Parrish-Novak, J.ら、前掲; 米国特許第6,307,024号)。さらに、本明細書に記載のデータから、CTLに関わる免疫系に対するIL-21の免疫刺激効果だけでなく、IL-21は免疫賦活性であって、ウイルス疾患に対する新たな治療法になることも示された。
本発明のIL-21ポリペプチドは、CTL細胞およびNK細胞を刺激することが示される。IL-21は、それ故、ヒトで抗ウイルス治療への応用に使用することができる。このように、IL-21の抗ウイルス活性は、ヒトのウイルス感染症の治療および予防に有用である。IL-21の使用を目的としたウイルス感染症のタイプの例には、以下に限定されることはないが: DNAウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス、Epstein-Barrウイルス、サイトメガロウイルスのようなヘルペスウイルス; 天然痘(スモールポックス)ウイルスのようなポックスウイルス; ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス); パピローマウイルス; アデノウイルス); RNAウイルス(例えば、HIV I、II; HTLV I、II; ポリオウイルス; A型肝炎ウイルス; コロナウイルス(coronovirus)、例えば突発性急性呼吸器症候群(SARS); オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス); パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルス); 狂犬病ウイルス; C型肝炎ウイルス)、フラビウイルス、インフルエンザウイルス; カリシウイルス; 狂犬病ウイルス、牛疫ウイルス、アレナウイルス、および同様のものにより引き起こされる感染症が含まれる。さらに、IL-21を使用できると思われるウイルス関連疾患のタイプの例には、以下に限定されることはないが: 後天性免疫不全症; 肝炎; 胃腸炎; 出血性疾患; 腸炎; 心臓炎; 脳炎; 麻痺; 細気管支炎(Brochiolitis); 上部または下部呼吸器疾患; 呼吸器の乳頭腫症; 関節炎; 播腫性疾患、髄膜炎、単核球症が含まれる。さらに、IL-21は、抗ウイルス免疫療法を目的とした種々の用途で、ならびに他のサイトカイン、他のタンパク質または抗ウイルス小分子、および同様のものと組み合わせて使用することができる。
さらに、IL-21は、その他の微生物感染症の有用な治療になると思われる。これらのタイプの微生物には、細菌および真菌が含まれる。IL-21で治療できる特定の細菌感染症には、以下に限定されることはないが、クラミディア菌(chlamydiae)、リステリア菌(listeriae)、ヘリコバクターピロリ菌(helicobacter pylori)、マイコバクテリウム菌(mycobacterium)、マイコプラズマ菌(mycoplasma)、炭疽菌(bacillus anthracis)、サルモネラ菌(salmonella)、および赤痢菌(shigella)が含まれる。真菌感染症の例には、以下に限定されることはないが、カンジダ症(candidiasis)が含まれる。
例えば:
(1) IL-21は、急性および慢性ウイルス感染症に対する単剤療法や免疫不全患者に対する単剤療法として使用することができる。免疫を高める方法により、未回復の感染症を抱える患者の回復時間が早まる可能性がある。感染症のタイプを部分的に羅列したものを提供する(上記を参照されたい)。免疫療法は、一部の免疫不全患者、例えば、その幼年患者または高齢患者に対しならびに感染により起こった、または化学療法もしくは骨髄除去のような医学的介入後に起こった免疫不全に苦しむ患者に対しいっそう大きな影響を与える可能性がある。免疫調節を介して治療されている適応タイプの例には; 慢性肝炎に対するIFN-αの使用(Perry CM,およびJarvis B, Drugs 61:2263〜88, 2001)、HIV感染後のIL-2の使用(Mitsuyasu R., J Infect Dis. 185 Suppl 2:S115-22, 2002; およびRoss RWら、Expert Opin Biol Ther. 1:413〜24, 2001)、および移植後のEpstein Barrウイルス感染症を治療するためのいずれかのインターフェロンの使用(Faro A, Springer Semin Immunopathol.20:425〜36, 1998)が含まれる。動物モデルで行った実験から、IL-2およびGM-CSFはまた、EBV関連疾患を治療するのにも有効であり得ることが示唆される(Baiocchi RAら、J Clin. Invest. 108:887〜94, 2001)。
(2) IL-21は、抗ウイルス薬と組み合わせて使用することができる。ウイルス感染症に対する、より一般的な治療のいくつかには、ウイルス複製を阻害する薬剤、例えばACYCLOVIR(商標)が含まれる。さらに、これらの薬剤のいくつかの併用は、HIVの治療に用いられる高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の基礎を成す。免疫療法(すなわち、サイトカイン)と抗ウイルス薬との組み合わせによって、有効性の向上が示される例には、慢性HCV感染症の治療を目的にインターフェロンに加えてRIBAVIRIN(商標)の使用(Maddrey WC, Semin. Liver. Dis. 19 Suppl 1:67〜75, 1999)およびIL-2とHAART法との併用(Ross, RWら、前記)が含まれる。従って、IL-21は疾患に対し免疫系を刺激することができるので、これを同様にHAART法および他の抗ウイルス薬と組み合わせて使用することができる。
特に、IL-21は、IFN療法によく反応しない患者において単剤療法でまたはIFN-α(RIBAVIRIN(商標)有りまたは無しで)との併用療法で有用となる可能性がある。これらの患者は、その細胞表面にI型インターフェロン受容体が少ないことに起因して、IFN療法に反応しない可能性がある(Yatsuhashiら、J Hepatol Jun.30(6):995〜1003, 1999; Mathaiら、J. Interferon Cytokine Res Sep.19(9):1011〜8, 1999; Fukudaら、J Med Virol Mar. 63(3):220〜7, 2001)。IL-21はまた、I型インターフェロンによる治療後のI型インターフェロン受容体の下方制御が原因でその細胞表面にI型インターフェロン受容体が少ない患者において、単剤療法でまたはIFN-α(RIBAVIRIN(商標)有りまたは無しで)との併用療法で有用となる可能性がある(Dupont SA,ら、J. Interferon Cytokine Res. Apr;22(4):491〜501, 2002)。
(3) IL-21は、サイトカイン、免疫グロブリン移入、および種々の同時刺激分子を含む他の免疫療法と組み合わせて使用することができる。抗ウイルス薬に加えて、IL-21を、免疫系を刺激することを目的としている他の免疫療法と組み合わせて使用することができるものと思われる。従って、IL-21は、インターフェロンまたはIL-2のような他のサイトカインとともに使用することができるものと思われる。IL-21はまた、免疫グロブリン移入を含む、一例として、RSV感染症を危険性の高い患者で治療するために抗体の利用をもたらす、受動免疫法に加えることができるものと思われる(Meissner HC, 前記)。さらに、IL-21は、CD137のような種々の細胞表面分子を認識するさらなる同時刺激分子、例えば4-1BBリガンドとともに使用することができるものと思われる(Tan, JTら、J Immunol. 163:4859〜68, 1999)。
(4) IL-21は、抗ウイルスワクチンに対するアジュバントとして使用することができる。ウイルス性疾患の予防を目的とした予防ワクチンの使用は、よく知られている。IL-21は、ワクチンの効果を軽減させる適応を目的として、これらのワクチン(一例は、B型肝炎ワクチンである)とともにアジュバントとして使用することができるものと思われる(Hasan MSら、J Infect Dis. 180:2023〜6, 1999; およびEvans TGら、Clin Nephrol. 54:138〜42, 2000)。予防ワクチンに加えて、進行中の感染症を抑止することを目的としている治療ワクチンが開発されているところである。これらのワクチンに対する方法論は、かなり多様であり、以下に限定されることはないが、DNAを介して輸送されるウイルス抗原、ウイルスペプチド、ウイルスタンパク質、ウイルス粒子の一部、および樹状細胞のような細胞に基づく治療に取り込まれたウイルス抗原を含む。IL-2のようなサイトカインとのガン治療ワクチンの併用治療(Shimizu Kら、Proc. Nat. Acad. Sci. U S A. 96:2268〜73, 1999)と同様、IL-21は、抗ウイルス治療ワクチンと組み合わせて使用することができるものと思われる。
所定のサイトカインに対する受容体の組織分布は、そのサイトカインの潜在的な作用部位を強く示唆する。IL-21受容体のノザン解析により、ヒトの脾臓、胸腺、リンパ節、骨髄、および末梢血白血球で転写産物が示された。特定の細胞型がIL-21受容体を発現しているとして同定され、そして強いシグナルが混合リンパ球反応(MLR)でおよびバーキットリンパ腫(細胞系)Rajiで認められた。二種類の単球細胞系THP-1(Tsuchiyaら、Int. J. Cancer 26: 171〜176, 1980)およびU937(Sundstromら、Int. J. Cancer 17:565〜577, 1976)は、陰性であった。
本明細書に論じるように、IL-21は、感染症に対する免疫の促進に、HIV+患者のような免疫不全患者の治療に、またはワクチンの改良に重要な免疫系を活性化することができる。特に、IL-21による、NK細胞、またはその前駆細胞の刺激または増殖により、ウイルス感染症の治療における、および抗新生物(ガン)因子としての治療上の価値が得られると思われる。NK細胞は、転移性腫瘍細胞の排除で重要な役割を果たすと考えられ、転移も固形腫瘍もある患者では、NK細胞の活性レベルが低下している(Whitesideら、Curr. Top. Microbiol. Immunol. 230:221〜244, 1998)。同様に、ウイルスおよび非ウイルス病原因子(細菌、原虫、および真菌を含む)に対する免疫応答のIL-21刺激によって、そのような感染性因子の増殖を阻害することで、そのような感染症の治療における治療上の価値が得られると思われる。体内に存在する、腫瘍細胞のような、病原体または抗原レベルの直接的または間接的な決定は、当技術分野において周知のおよび本明細書に記載の種々の方法により達成することができる。一般に、IL-21の治療有効量には、ウイルスに感染した哺乳動物の臨床的に有意な変化をもたらすのに十分な量が含まれ; そのような変化には、以下に限定されることはないが、CTLまたはNK細胞のレベルの臨床的に有意な変化をもたらすのに十分なIL-21の量; ウイルス量の、および抗ウイルス抗体価の臨床的に有意な変化をもたらすのに十分なIL-21の量が含まれ得る。そのような臨床的に有意な相違または変化の決定は、十分に当業者の範囲内である。抗ウイルス性のCTL、NK細胞、ウイルス量および抗ウイルス抗体価の測定が、マウスにおけるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)感染症の急性および慢性両モデルへのサイトカイン投与後に研究されている(Blattmanら、前掲)。計数、細胞溶解活性、サイトカイン産生および増殖を含むCTL測定が、HCV慢性感染患者のウイルス量の変化に従って測定されている(Wedermeyerら、J. Immunol. 169:3447〜3458, 2002)。
臨床的には、HCVに対する診断学的検査には、抗体の血清検査法およびウイルス粒子の分子検査が含まれる。酵素免疫測定法は、利用可能である(Vrielinkら、Transfusion 37:845〜849, 1997)が、イムノブロット法のようなさらなる検査による確認が必要とされる可能性がある(Pawlotskyら、Hepatology 27:1700〜1702, 1998)。定性および定量分析法は、一般に、ポリメラーゼ連鎖反応技術を利用しており、ウイルス血症および治療反応を評価するのに好ましい(Poynardら、Lancet 352:1426〜1432, 1998; McHutchinsonら、N. Engl. J. Med. 339:1485〜1492, 1998)。いくつかの商用検査、例えば、定量的RT-PCR法(Amplicor HCV Monitor(商標)、Roche Molecular Systems, Branchburg, NJ)および分枝DNA(デオキシリボ核酸)信号増幅検定法(Quantiplex(商標) HCV RNA Assay [bDNA], Chiron社、Emeryville, CA)が利用可能である。HCV感染症の非特異的な臨床検査は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)量を測定するもので、安価かつ容易に利用できる(National Institutes of Health Consensus Development Conference Panel, Hepatology 26(Suppl. 1):2S〜10S, 1997)。肝生検の組織学的評価は一般に、HCV進行を決定する最も正確な手段であると考えられる(Yanoら、Hepatology 23:1334〜1340, 1996)。HCVの臨床検査の概説については、Lauerら、N. Engl. J. Med. 345:41〜52, 2001を参照されたい。
当業者に知られている、HBVおよびHCVを試験するためのいくつかのインビボモデルがある。例えば、HBVに感染した哺乳類に対するIL-21の効果は、ウッドチャックのモデルを用いて評価することができる。簡単に言えば、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)に慢性的に感染したウッドチャックは、HBVに慢性的に感染したヒトでの疾患に類似の肝炎および肝細胞ガンを発現する。このモデルは、抗ウイルス活性の前臨床評価に利用されている。慢性的に感染したWHV系統が樹立されており、新生児に血清を接種して、このモデルを用いてある種の化合物の効果を研究するための動物を得る(概説としては、Tannantら、ILAR J. 42 (2):89〜102, 2001を参照されたい)。チンパンジーを使用して、HBV感染哺乳類に対するIL-21の効果を評価することもできる。チンパンジーを利用して、HBVの性質決定が行われた、そしてこれらの研究によりチンパンジーの疾患がヒトでの疾患と著しく類似することが証明された(Barkerら、J. Infect. Dis. 132:451〜458, 1975およびTaborら、J. Infect. Dis. 147:531〜534, 1983)。チンパンジーモデルは、ワクチンの評価に使用されてきた(Princeら、In: Vaccines 97, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1997)。HIVの治療法は、サル免疫不全ウイルスに感染したヒト以外の霊長類を用いて日常的に試験される(概説としては、Hirschら、Adv. Pharmcol. 49:437〜477, 2000およびNathansonら、AIDS 13 (suppl.A):S113〜S120, 1999を参照されたい)。HIV、肝炎、マラリア、呼吸器多核体ウイルス、および他の疾患におけるヒト以外の霊長類の利用の概説としては、Sibalら、ILAR J. 42 (2):74〜84, 2001を参照されたい。
薬学的使用の場合、本発明のタンパク質は、従来の方法による非経口輸送、特に静脈内輸送または皮下輸送を目的に製剤化される。本明細書に記載の生物活性ポリペプチドまたは抗体複合体は、経静脈的に、経動脈的にもしくは経管的に輸送することができる、または作用を意図する部位に局所的に導入することができる。静脈内投与は、1時間から数時間の典型的な期間にわたり大量注射または塊状注入によるものとされるであろう。一般に、薬学的製剤には、IL-21タンパク質が薬学的に許容される媒体、例えば生理食塩水、緩衝生理食塩水、5%デキストロース水溶液または同様のものとの併用で含まれるものと思われる。製剤には、一つまたは複数の賦形剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質の損失を防ぐためのアルブミンなどがさらに含まれてもよい。製剤設計の方法は、当技術分野においてよく知られており、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Gennaro(編)、Mack Publishing社、Easton, PA,第19版、1995に開示されている。薬用量は一般に、1日につき患者の体重1 kgあたり0.1〜100μg、好ましくは1日につき1 kgあたり0.5〜20μgの範囲であって、正確な用量は、許容されている規格に準じ、治療される病状の性質および重症度、患者の体質などを考慮に入れつつ、臨床医が決定するものと思われる。用量の決定は、当業者のレベルの範囲内である。タンパク質は、急性期治療の場合には、1週間もしくはそれ以下にわたり、多くは1日から3日の期間にわたり投与することができ、または慢性期治療では、数ヶ月もしくは数年にわたり使用することができる。
本発明はまた、IL-21ポリペプチドをポリマーと結合させた、化学修飾型IL-21組成物も意図する。実例となるIL-21ポリペプチドは、成熟型IL-21ポリペプチドのような、機能的な膜貫通ドメインがない可溶性ポリペプチドである。通常、ポリマーは、IL-21複合体が生理的環境のような水性環境中で沈殿しないように、水溶性である。適当なポリマーの一例は、アシル化のための活性エステル、またはアルキル化のためのアルデヒドのような、単一の反応基を有するように改変されたものである。この方法では、重合度を制御することができる。反応性アルデヒドの一例は、ポリエチレングリコール・プロピオンアルデヒド、またはモノ-(C1-C10)アルコキシ、もしくはそのアリールオキシ誘導体である(例えば、Harrisら、米国特許第5,252,714号を参照されたい)。ポリマーは、分枝していても分枝していなくてもよい。さらに、ポリマー混合物を使用して、IL-21複合体を生成することができる。
治療に使用するIL-21複合体には、薬学的に許容される水溶性ポリマー成分を含めることができる。適当な水溶性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシPEG、モノ-(C1-C10)アルコキシ-PEG、アリロキシ-PEG、ポリ-(N-ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス-スクシンイミジルカーボネートPEG、プロピレングリコール・ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマーが含まれる。適当なPEGは、分子量約600〜約60,000(例えば、5,000、12,000、20,000および25,000)を有することができる。IL-21複合体にはまた、そのような水溶性ポリマーの混合物が含まれてもよい。
IL-21のPEG化は、当技術分野において周知のPEG化反応のいずれかにより行うことができる(例えば、欧州特許第0 154 316号、Delgadoら、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9:249 (1992), DuncanおよびSpreafico, Clin. Pharmacokinet. 27:290 (1994)、ならびにFrancisら、Int J Hematol 68:1 (1998)を参照されたい)。
本発明は、IL-21ポリペプチドまたは本明細書に記載のポリペプチドを含む組成物を用いてガンを治療するための方法を意図する。そのような組成物は、担体をさらに含むことができる。担体は、従来の有機担体または無機担体とすることができる。担体の例には、水、緩衝液、 アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、および同様のものが含まれる。
本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
実施例
実施例1 マウスIL-21はマウス骨髄検定法で活性である
A. 非接着性の低密度骨髄細胞の単離:
新鮮マウス大腿骨の吸引液(骨髄)を6〜10週齢の雄Balb/CまたはC57BL/6マウスから得た。次いで、骨髄をRPMI+10% FBS (JRH, Lenexa KS; Hyclone, Logan UT)で洗浄し、全骨髄細胞懸濁液としてRPMI+10% FBSに懸濁した。次いで、全骨髄細胞懸濁液を次の通り、密度勾配(Nycoprep, 1.077, Animal; Gibco BRL)にかけて、低密度の、大部分は単核の、細胞を濃縮した: 全骨髄細胞懸濁液(約 8 ml)を15 mlコニカルチューブ(円錐管)に入れたおよそ5 mlのNycoprep(密度)勾配溶液の上に注意深くピペットで移し、それから600×gで20分間遠心した。次いで、低密度の単核細胞を含有する界面層を取り出して、過剰のRPMI+10% FBSで洗浄し、400×gで5〜10分間の遠心により沈殿させた。この沈殿物をRPMI+10% FBSに再懸濁して、およそ細胞106個/mlとしてT-75フラスコに蒔き、37℃、5% CO2で、およそ2時間インキュベートした。得られた懸濁細胞を非接着性の低密度(NA LD)骨髄細胞とした。
B. 96ウェル検定法
96ウェル組織培養プレートに入れた、RPMI+10% FBS + 1 ng/mLマウス幹細胞因子(mSCF) (R & D Systems, Minneapolis, MN)に加えて、以下: (1) マウスIL-21を発現するBHK 570細胞(米国特許第6,307,024号)、(2) ヒトIL-21を発現するBHK 570細胞(米国特許第6,307,024号)、または(3) ベクターを含むがどちらのリガンドも発現していない対照用BHK 570細胞、のうちの一つから得た5%条件培地の中に、NA LDマウス骨髄細胞を細胞25,000〜45,000個/ウェルとして蒔いた。次いで、これらの細胞をさまざまなサイトカイン処理にさらして、骨髄細胞からの造血性細胞の増殖および分化について調べた。試験のため、プレートに蒔いたNA LDマウス骨髄細胞をヒトインターロイキン-15 (hIL-15) (R & D Systems)、または他のサイトカインのパネル(R & D Systems)のうちの一つにさらした。hIl-15、またはパネルの他のサイトカインの連続希釈は、濃度約50 ng/ml〜約6025 ng/mlまで2倍で連続希釈して、試験した。8〜12日後、96ウェル検定を、米国特許第6,307,024号に記述されているようにAlamar blue法により、細胞増殖についてスコア化した。
C. 96ウェルでのNA LDマウス骨髄検定法の結果
マウスIL-21を発現するBHK細胞から得た条件培地でもヒトIL-21を発現するBHK細胞から得た条件培地でもhIL-15と相乗的に作用して、NA LDマウス骨髄中の造血性細胞集団の増殖を促進した。この造血性細胞の増殖は、対照用BHK条件培地に加えてIL-15では示されなかった。hIL-15とともにマウスIL-21により増殖した造血性細胞集団、およびhIL-15とともにヒトIL-21により増殖した造血性細胞集団は、細胞培養でさらに増殖させた。これらの造血性細胞をフィコエリトリン標識抗Pan NK抗体(Pharmingen)で染色し、フローサイトメトリー解析にかけたところ、増殖した細胞がこのナチュラルキラー(NK)細胞のマーカーに対して陽性に染まることが証明された。
Poietic Technologies, Gaithersburg, MDから購入した新鮮なヒト骨髄細胞を用いて、同じ96ウェル検定法を行った。この場合も先と同様に、IL-15とともに、マウスおよびヒトIL-21により、造血性細胞集団が増殖し、その集団は上記の抗体によりNK細胞のマーカーが陽性に染まった。
実施例2 IL-21形質導入マウス
A. ヒトおよびマウスIL-21を発現する形質導入マウスの作製
各プロモーター(MT-1肝臓特異的プロモーター(マウスIL-21(米国特許第6,307,024号))またはリンパ球特異的LCKプロモーター(マウスおよびヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)))の5'および3'隣接配列、ラットインスリンIIイントロン、IL-21 cDNAおよびヒト成長ホルモン・ポリA配列を含有する形質転換ベクター(米国特許第6,307,024号)由来のDNA断片を調製し、標準的な微量注入手順を用いて、受精したB6C3f1(Taconic, Germantown, NY)マウス卵母細胞中へ微量注入するのに使用した。Hogan, B.ら、Manipulating the Mouse Embryo. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1994を参照されたい。
胎仔44匹の中で、リンパ球特異的EμLCKプロモーターからヒトIL-21を発現している形質導入マウス8匹が同定された。これらのうち4匹は死亡していた胎仔であり、そして4匹は成体まで成長した。発現量はこれらの動物ではかなり低かった。胎仔77匹の中で、リンパ球特異的EμLCKプロモーターからマウスIL-21を発現している形質導入マウス20匹が同定された。20匹全てが成体まで成長した。発現量はこれらの動物ではかなり低かった。胎仔60匹の中で、肝臓特異的MT-1プロモーターからマウスIL-21を発現している形質導入マウス3匹が同定された。これらの胎仔のうち2匹は死亡し、そして1匹は成体まで成長した。発現量はこれらの動物ではかなり低かった。組織は、下記のように調製し、組織学的に検査した。
B. 形質導入マウス由来組織の顕微鏡評価
ヒトおよびマウスIL-21を発現している形質導入動物(実施例2A)から、脾臓、胸腺、および腸間膜リンパ節を採取して、組織学的検査のために調製した。いつものように採取したその他の組織には、以下が含まれていた: 肝臓、心臓、肺、腎臓、皮膚、乳腺、膵臓、胃、小腸および大腸、脳、唾液腺、気管、食道(espohogus)、副腎、下垂体、生殖器官、男性付属性腺、末梢神経を含む骨格筋、ならびに骨髄を伴った大腿骨。組織は、下記のように、思いがけなく死亡した新生胎仔、および数匹の形質導入成体マウスから採取した。試料を10%緩衝ホルマリン液中で固定し、通常の手順で処理し、パラフィン包埋し、5ミクロンの切片に切り、そしてヘマトキシリンとエオシンで染色した。スライドは、処置に対して盲目的とされた、有資格の獣医病理学者により検査され、組織変化の重症度(0=なし、1=軽度、2=中程度、3=重度)に応じてスコア化された。
ヒトIL-21を発現している胎仔および雌成体マウス2匹、ならびにマウスIL-21を発現している雄成体マウス6匹のうち3匹では、検査した組織の多くで炎症性浸潤が示された。影響を受けた臓器は、マウスからマウスへと少しずつ変化していた。炎症性浸潤は、いろいろな数と割合で、好中球とマクロファージから主に構成され、一般に、重症度の程度は軽度から中等度であった。さらに、これらの動物では、脾臓および胸腺における中等度から重度のリンパ球減少症(ヒトおよびマウスIL-21遺伝子導入動物); およびリンパ節における、重度のリンパ球減少症(ヒトIL-21遺伝子導入動物)、または化膿性が軽度から重度の化膿性肉芽腫性リンパ節炎(マウスIL-21遺伝子導入動物)を含む、リンパ器官の変化が示された。さらに、髄外造血の増加が脾臓で明らかであった。これらの変化は、年齢対応対照マウスでは観察されなかった。
C. IL-21を過剰発現している遺伝子導入マウス由来組織のフローサイトメトリー解析
ヒトまたはマウスzalpha11リガンドを過剰発現している遺伝子導入動物(実施例2A)を、末梢血、胸腺、リンパ節、骨髄、および脾臓のフローサイトメトリー解析のために屠殺した。
細胞懸濁液は、脾臓、胸腺およびリンパ節から、その臓器を氷冷培地(RPMI 1640培地 (JRH Biosciences. Lenexa, KS) 500 ml); 100×L-グルタミン(Gibco BRL. Grand Island, NY) 5 ml; 100×ピルビン酸ナトリウム(Gibco BRL) 5 ml; 5 mlの100×ペニシリン、ストレプトマイシン、ネオマイシン(PSN) (Gibco BRL)の中でピンセットを用いて細かく裂いてばらばらにし、それからこの細胞を穏やかに加圧して細胞ろ過器(Falcon, VWR Seattle, WA)に通して調製した。末梢血(200 ml)は、ヘパリン添加管に採取して、10 Uヘパリン/mlを含有するHBSSで10 mlに希釈した。赤血球を低張性溶解により脾臓および末梢血調製物から除去した。骨髄細胞懸濁液は、氷冷培地で大腿骨を洗い流して調製した。細胞の数を数え、トリパンブルー(Trypan Blue) (GIBCO BRL, Gaithersburg, MD)を用いて生死について調べた。細胞は、濃度1×107個/mlとして氷冷の染色培地(HBSS、1%ウシ胎児血清、0.1%アジ化ナトリウム)に再懸濁した。Fc受容体および細胞への抗体の非特異結合のブロッキングは、10%正常ヤギ血清およびFc Block (Pharmingen, La Jolla, CA)を細胞懸濁液に添加することにより行った。
細胞懸濁液を等量の蛍光色素標識モノクローナル抗体(PharMingen)と混合し、氷上で60分間インキュベートし、それから一部の試料では生存マーカーとして1 mg/ml 7-AAD (Molecular Probes, Eugene, OR)を含有する洗浄用緩衝液400 mlに再懸濁させる前に、氷冷の洗浄用緩衝液(PBS、1%ウシ胎児血清、0.1%アジ化ナトリウム)で2回洗浄した。フローサイトメトリーのデータは、FACSCaliburフローサイトメーター(BD Immunocytometry Systems, San Jose, CA)にて得た。データの取得も解析もCellQuestソフトウェア(BD Immunocytometry Systems)を用いて行った。
ヒトまたはマウスIL-21を最も高いレベルで発現していた遺伝子導入動物では、分析したリンパ器官の全てで細胞集団が劇的に変化していた。認められた変化のなかには、胸腺の細胞性の完全な喪失、CD45R陽性B細胞の完全な欠如ならびに脾臓の大きさおよび細胞性の増大があった。脾臓でも骨髄でも骨髄様の大きさの細胞数が増加しており、これは単球と好中球の両方の増加により説明された。pan NK細胞マーカー(DX5)は、多くの集団で増加していた。中程度に発現している初代動物(founder)では、劇的な変化は少なかったが依然として高発現マウスに見られる表現型と一致する顕著な変化があった。発現レベルが最も低いマウスでは、骨髄様細胞の顕著な増加もB細胞数の減少もなかった。それらのマウスでは実に、CD4+CD8+ダブルポジティブな細胞の減少ならびにCD4およびCD8の両シングルポジティブ細胞の増加を伴う胸腺細胞集団の顕著な変化が示された。
実施例3 正常マウスにおける精製した組み換えヒトタンパク質IL-21の用量反応試験
A. 概要
正常6週齢雌C57Bl/6 (Harlan Sprague Dawley, Indianapolis, IN)マウスを、0.1、0.5、5もしくは50μg/マウス/日として、精製した組み換えヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)を4通りの投与量のうちの1つでまたは対照として媒体で、4日間または8日間、1日1回、腹腔内投与により処置した。体重と体温を毎日監視した。第4日目または第9日目に、各タンパク質処置群由来のマウス8匹のうちの4匹および媒体処置群のマウス10匹のうちの5匹を屠殺した。血液、骨髄および組織を収集して、解析した。一般の生理的および毒物学的パラメータと同様に、リンパ球組織の潜在的な撹乱について検査した。
試験した何れの用量でもヒトIL-21タンパク質の毒性の証拠はなかった。体重および体温は変化しなかった。臨床化学パラメータに明らかな変化はなかった。しかしながら、対照媒体と比べて、最高用量のIL-21で処置したマウスの骨髄、脾臓および末梢血中の骨髄細胞系列の細胞の比率増加と関連する一致した所見があった。高用量群の脾臓ホモジネートのフローサイトメトリー解析により同定された、骨髄細胞系列の大きさの細胞の統計学的に有意な増加があった。最高用量の2群の脾臓は、その他の群よりも統計学的に有意に大きかった。しかしながら、組織病理学検査では、最高用量群には、髄外造血のわずかな増加しか認められなかった。最高用量群ではその他の群と比べて、骨髄の骨髄系 対 赤血球系の比率の統計学的に有意な増加があった。最後に、その同一群において、白血球総数と単球比率の両方の増加が末梢血に見られた。
B. 投薬溶液の調製
精製した組み換えヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)を無菌のリン酸緩衝生理食塩水(GibcoBRL, Grand Island, NY)に希釈して、PBS媒体0.1 ml中でタンパク質を50、5、0.5または0.1μg輸送する濃度とした。最初の4日分の用量は、第0日目に調製し、使用の前には霜でおおわれた-20℃の冷凍庫中で凍結させておいた。第5日目から第8日目のための用量は、第5日目に調製し、上記のように凍結させておいた。同様に、媒体で処置する対照群用に、同一PBSの一定分量を凍結させておいた。投与日に、適当な一定分量を融解し、溶液0.1 mlをマウスに4日間または8日間、毎日、腹腔内注射した。
C. 試験計画
マウスは試験の開始時、6週齢であった。各処置群は、マウス10匹が含まれた媒体対照群を除いて、マウス8匹で構成された。各処置群のマウスの半分は、処置の4日後に屠殺し、残りの半分は、8日後に屠殺した。
毎日、処理前に、各マウスの体重を測定し、マウスを、皮下に埋め込んだトランスポンダ(IPTT-100, BMDS, Maywood, NJ)から識別番号と体温をスキャンすることで、その体温をPortable Programmable Notebook System(BMDS社、Maywood, NJ)を用いて記録した。
屠殺時に、フローサイトメトリー解析により白血球集団を評価するために採取した組織には、骨髄、胸腺および脾臓が含まれた。リンパ器官および骨髄のFACS解析は、FACSCalibur(Becton Dickinson, Mansfield, MA)で行った。タンパク質の毒性の兆候を目的として組織学的検査のために採取した組織には: 脾臓、胸腺、肝臓、腎臓、副腎、心臓および肺が含まれた。組織像を目的に固定した組織は全て、10% Normal Buffered Saline (NBF) (Surgipath, Richmond, IL)に入れて、4℃で一晩保持した。その翌日、NBFを70%エタノールと置換し、そして組織像を目的に処理を行うまで、その組織を4℃に戻しておいた。
組織は自家で、処理してヘマトキシリンとエオシンに対して染色し、それから組織病理学的解析を目的として契約病理学者に送った。血液を全血球計算(CBC)および血液生化学的プロファイルのために採血した。CBCはCell Dyn 3500血球計数装置(Hematology Analyzer) (Abbott Diagnostics Division, Abbott Park, IL)を用いて自家で解析し、手動分別による白血球計算はPhoenix Central Laboratory(Everett, WA)で解析した。血清は、完全な血液生化学的パネルを得るためにPhoenix Central Laboratoryに寄託するまでは、-20℃で凍結させておいた。骨髄系:赤血球系の比率を評価するため、一方の大腿骨から得た骨髄をサイトスピン(CytoSpin)スライド(CYTOSPIN 3 CYTOCENTRIFUGE and CYTO SLIDES, Shandon, Pittsburgh, PA)に塗布し、解析のため、Phoenix Central Laboratoriesに送った。
D. 試験結果
50μg/日またはそれ以下の用量でヒトIL-21の生理学的効果または毒性に関する明白な臨床的兆候はなかった。体重および体温は、処置の間、正常のままであった。血液生化学的パラメータは正常範囲にあった。赤血球および血小板の数は、正常と思われた。8日間、50μg/日を投与されていたマウスでは、手動分別による白血球計算により、単球の割合が末梢血中で上昇していること、および全白血球数の明らかな増加が示された。大腿骨から洗い流した骨髄において、骨髄系 対 赤血球系の比率は、50μgの用量群で増加し、またそこまではいかないにしろ、投与設定が8日間の5μgの用量群で増加していた。InStat (InStat MAC; GraphPad Software社、San Diego, CA)を用いたノンパラメトリックによる多重列比較で、この相違は統計学的に有意(p=.0049)であった。最高用量群と媒体との間の相違も同じく有意(p=.0286)であった。末梢血中の白血球の増加および骨髄中の骨髄系前駆細胞の顕著な増加はこのように、関連している可能性がある。
以下の組織の組織学的評価により、細胞学的もしくは構造的変化、***事象または壊死に関する明らかな証拠は示されなかった: 胸腺、肝臓、腎臓、副腎、十二指腸、膵臓、空腸、盲腸、結腸、腸間膜リンパ節、子宮、卵巣、唾液腺、心臓、気管、肺、および脳。胸腺、腎臓、肝臓または脳の重量には、治療群の間に明らかな相違はなかった。検査した全組織のうち、脾臓重量だけが著しく影響を受けていた。
各マウスの脾臓重量をその脳重量に対して標準化した。50μg/日の処置群は、媒体、0.1μgおよび0.5μgの処置群に比べて、脾臓重量の平均値が、他の3群の脾臓重量の平均値よりも、処置の4日後ではほぼ50%高く、8日後ではほぼ100%高かった。4日の設定では、5μg/日の群も同様に、対照および低用量群よりも大きな脾臓を持つ傾向があった。4日の設定のデータと8日の設定のデータとを処置群で組み合わせた脾臓/脳重量の相違は、Kruskall-WallaceノンパラメトリックANOVA、InStatプログラム(GraphPadソフトウェア)を用いた多重列比較検定により統計学的に有意(p = .0072)であった。
髄外造血の、とりわけ赤色髄のわずかな増加が、最高用量群由来のマウスの脾臓において、4日間処置したマウスにおいても認められた。脾臓のフローサイトメトリー解析により、最高用量群で骨髄様サイズの細胞の割合の統計学的に有意(p=0.01、スチューデントのt検定)な増加が示され、単球および好中球の増加を表していた。この効果は、上述のように、末梢血単核細胞の割合の増加、ならびに骨髄中の骨髄系前駆細胞の顕著な増加と関連している可能性がある。さらに、ヒトzalpha11遺伝子の組み込みから得られた遺伝子導入マウスでは、非遺伝子導入の同腹子と比べて、その脾臓における髄外造血が増加していた。
IL-21を骨髄細胞系列の産生または発生に関連付けるいくつかの変化が、対照群に比べて50μg/日の用量群で観察された。総合すれば、観察された変化から、zalpha11は、本明細書に記載されるガンおよび免疫不全のような医療分野における治療タンパク質として有用である可能性が示唆される。
実施例4 精製した組み換えヒトIL-21タンパク質の排出および組織分布の予備試験
A. 概要
精製rhIL-21の組織分布および排出パターンを明らかにするため、予備的な薬物動態試験を行った。9週齢雄C57Bl/6マウスに、3経路のうちの1つにより、111インジウム(111In) (NEN, Boston, MA)で標識した精製組み換えヒトIL-21タンパク質を投与した。単回の大量注射を静脈内(IV)、腹腔内(IP)、または皮下(SC)経路により各マウスに行った。皮下または腹腔内経路で注射したマウスは、注射から1時間または3時間後に屠殺した。静脈内注射したマウスは、注射から、10分または1時間後に屠殺した。血液、血漿および選択の組織を各時点で採取し、ガンマ線計測器によりカウントして、外来性標識タンパク質の近似の半減期および組織分布を推定した。カウントのために採取した組織ならびに屠殺の間隔は、放射性核種で標識されたその他のサイトカインの分布に関する報告に基づいて選択した。
屠殺時に、放射活性のカウントのために採取した組織には、胸腺、脾臓、腎臓、肝臓の葉、肺葉、および膀胱が含まれた。注射を腹腔内に受けた群では、腸を同様にカウントして、腸への注射の頻度を評価した。皮下に投与したマウスでは、注射領域の中で基底構造がある皮膚をカウントした。肝臓および肺全体のcpmを、カウントした切片と臓器全重量のうちその切片に相当する割合から計算した。
試験の終了後、採取した組織、全血および血漿をCOBRA II AUTO-GAMMA(登録商標)ガンマ線計測器(Packard Instrument Company, Meriden, CT)にてカウントした。一定分量のもともとの標識投薬溶液を同様に、組織を用いた試験の終了時にカウントした。これにより、各マウスに対し注射した全放射活性の割合の計算および放射性崩壊に対する全カウント数の同時補正が可能となった。残る血液量および臓器重量の概算から、投与したカウント数の大部分がカウントされたこと、および従って、組織あたりのカウント数の割合が、各経路による標識IL-21投与後のカウント数の分布を適正に示していることが示唆された。
B. IL-21の 111 インジウム標識
精製した組み換えヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)を10倍モル過剰のDTPA(Peirce, Rockford, Il)と、PBS中で室温にて30分間インキュベートすることにより結合させた。未反応のDTPAおよび加水分解物は、Biomax-5k NMWL (Ultrafree-15, Millipore, Bedford, MA)にてバッファ交換により除去した。空隙容量のタンパク質のピークを5 mg/mlまで濃縮し、生物検定(マウスB細胞の抗CD40刺激(実施例10))で試験するために一定分量を採取した。DTPA-複合体が依然として十分な生物活性を持っていることが確認されたので、この複合体を1M酢酸ナトリウム(pH 6.0)で0.5 mg/mlまで希釈した。111インジウム2 mCiを1M酢酸ナトリウム(pH 6.0) 0.5 mlの中に取り、DTPA-ヒトIL-21と室温で30分間混合した。取り込まれなかった111インジウムは、PD-10カラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)にてPBSへのバッファ交換の間に除去した。放射性標識化物質を未標識ヒトIL-21で希釈して比放射能100 mCi/mgとし、無菌ろ過して、4℃で一晩保存した。100%の標識タンパク質は、Biomax-5k NMWL膜(Millipore)に保持された。標識した111In-ヒトIL-21を排出試験および薬物動態試験でマウスに投与した。PBS媒体0.1 mlに入れた5μCiの標識ヒトIL-21で標識したヒトIL-21タンパク質50μgを各動物に投与した。
C. 分布の予備試験の結果
3経路全てによる投与から1時間および3時間後、組織に最も高いcpmがあったことからはっきり示されたように、最も高い濃度の111In-ヒトIL-21は、腎臓に認められ、2番目に高い濃度は尿および膀胱に認められた。腎臓から回収された平均カウント数は、注射経路および屠殺時点にもよるが、肝臓全体のカウント数よりも3〜8倍高かった。例えば、IV注射から60分後の腎臓の平均cpmは、同一群から得た肝臓全体に対して計算した平均カウント数よりも4.5倍大きかった。静脈内投与から10分後に屠殺した群では、最も高いcpmはこの場合も先と同様に腎臓であり、2番目に高い蓄積は、肝臓、膀胱および尿で等価であった。
D. 薬物動態の予備試験
血液および血漿の採取は、3経路全てによる注射後10、30および60分で行った。IV経路による注射後、別組のマウスでは、2、5および10分で血液および血漿試料が採取された。IPまたはSC経路による注射を受けた別組のマウスでは、1、2および3時間で血液試料を採取した。処置群については、表4を参照されたい。この短い採取時間は、報告されている、静脈注射後のIL-2の半減期をひとくくりにしている。報告されている半減期(T1/2)は、2.5〜5.1分の範囲であった。IL-2のインビボ投与に対する文献としては、Donohue JHおよびRosenberg SA J Immunol, 130:2203, 1983を参照されたい。長い時点は、予想された排出相の概要を明らかにするために選択した。
未標識IL-2は、IV注射後のマウスにおいておよそ3分間の半減期で血清から排出されることが示されている。文献としては、Donahue, JHおよびRosenburg 前掲を参照されたい。類似量のIL-2をIPおよびSC注射後、血清中のIL-2活性の持続時間は、IV注射後30分未満の間2 units/mlからIP注射後2時間およびSC注射後6時間の間2 units/mlを超えるまで長期に及んだ。IL-2排出の主な経路は、腎臓であると思われる。IL-21は、本明細書に記述されるように、IL-2に構造的に類似していることが示されている。IL-21の排出に関する予備評価は、本試験でcpmの蓄積が腎臓において優位であり、次に膀胱および尿と続くことから、IL-2が腎臓により明らかに排出されていることと一致するように思われる。
PK解析プログラムWinNonLin, Version 1.1, (Scientific Consulting社、Cary, NC)を用い、血漿から得られたcpmデータの非コンパートメント解析に基づき薬物動態パラメータを推定した。IL-21の血漿半減期は、50μg用量の静脈内、皮下および腹腔内投与に対し予測される終端排出速度定数を用いて推定した。薬物動態学的結果は、血漿濃度 対 時間プロファイルの終端排出領域のデータ点が限られていたため推定とした。さらに、SCおよびIP投薬に対する終端排出相の適合には、111InヒトIL-21の吸収が依然として明らかに起こっていた時点からのデータの活用が必要とされた。しかしながら、静脈内、皮下、および腹腔内投薬後の排出半減期はそれぞれ、13.6分、18.8分、および34.3分であった。投薬範囲が評価されなかったため、飽和性排出または活性排出(ミカエリス・メンテン動力学)が起こっていたかどうか明らかではなかった。従って、これらの半減期の計算は推定である。
標識タンパク質の生物学的利用能の推定は、皮下または腹腔内投薬後の曲線下面積(AUC)の、静脈内投薬のそれとの比較に基づいて行われた。皮下および腹腔内注射後の推定生物学的利用能は、それぞれ35.8%および63.9%であった。一種類のタンパク質の用量しか試験されなかったので、生物学的利用能は用量の関数として評価されなかった。推定されるクリアランスおよび分布容積(静脈内注射からのデータに基づいた)は、それぞれ0.48 ml/分および6.1 mlであった。
データは予備的であるが、IV投与したIL-21の末路は、その他の4-ヘリックス・バンドル型のサイトカインであるIL-2に対して報告(Donahue, JHおよびRosenburg, SA 前掲)されているものに類似していた。IL-2と同様、IV投与されたIL-21は、腎臓で主にクリアランスされて、血漿半減期がわずか数分であった。注射後3時間で、腎臓から排出された標識物質の大部分は、依然としてBiomax 5K NMLW膜 (Millipore)に保持された。インジウムはリソソーム分解の間でさえタンパク質と結合したままであることが以前に報告(Staud, F.ら、J. Pharm. Sciences 88:577〜585, 1999)されていることから、IL-21は腎臓に蓄積していて、そして分解される可能性がある。本試験から同様に、IL-2 (Donahue, JHおよびRosenburg, SA, 前掲)を含む、他の多くのタンパク質で観測されたように、IPおよびSC投与によりIL-21の血漿濃度が有意に引き延ばされることが示された。
実施例5 NK活性の評価のためのIL-21を用いた新鮮ヒト骨髄MNC CD34+分画の単離および増殖
A. ヒト骨髄からのCD34+細胞の選択および単離
NK細胞活性を有する細胞を濃縮するため、新鮮ヒト骨髄単核細胞(MNC)を用意した。新鮮ヒトMNC細胞は、Poeitic Technologies (Gaithersburg, MD)から入手した。10% HIA FBS (Hyclone, Logan, UT)および抗生物質1% PSN (Gibco, BRL, Grand Island, NY)を含有するαMEM (JRH, Lenexa, KS) 10 mlを細胞懸濁液に添加し、この細胞を100μm径のふるいに通した。次いで、細胞を計測し、沈殿させ、2% FBSを含有するPBS 10 mlで洗浄し、それから再度沈殿させて、2% FBSを含有するPBS 1 mlに再懸濁させた。製造元の使用説明書に従って、Dynabeads M-450 CD34入りのDetachabeadキット(Dynal, Oslo, Norway)を用い、CD34細胞表面マーカーを有する細胞(CD34+細胞)を磁気的に分離した。CD34+細胞とCD34-細胞の両分画を以下でさらに解析した。
B. IL-21を用いたCD34+分画の増殖
CD34+細胞分画を24ウェルプレートの4ウェル中に蒔いた。10% HIA FBS (Hyclone)および1% PSN(Gibco/BRL)を含有するαMEM(JRH) 1 mlに懸濁させた50,000個の陽性選択細胞に、下記の各種のサイトカインを加えて、4ウェル(1〜4)のそれぞれに蒔いた。選択したCD34+骨髄MNCのIL-21による増殖について調べるため、各種の試薬を使用した: 試薬には、ヒトflt3(R & D, Minneapolis, MN); 精製ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号); ヒトIL-15(R & D)が含まれた。試薬は第0日に下記のように組み合わせた: ウェル番号1には、2 ng/mlヒトflt3を添加した。ウェル番号2には、2 ng/mlヒトflt3および15 ng/ml精製ヒトIL-21を添加した。ウェル番号3には、2 ng/mlヒトflt3および20 ng/mlヒトIL-15を添加した。ウェル番号4には、2 ng/mlヒトflt3、15 ng/ml精製ヒトIL-21、および20 ng/mlヒトIL-15を添加した。18日間インキュベートした後、各ウェル由来の懸濁細胞を沈殿させ、それから10% HIA FBS (Hyclone)および1% PSN(Gibco/BRL)を含有するαMEM(JRH) 0.5 mlに再懸濁させて、細胞の数を数え、CD34+細胞分画の増殖を評価した。低レベルの増殖がflt3のみ存在する場合(対照ウェル番号1)に認められたが、flt3に加えてIL-15またはIL-21の存在(ウェル番号2および番号3)によっては、増殖に対する有意な効果は与えられなかった。しかしながら、flt3対照を超える増殖が、flt3に加えてIL-15およびIL-21が含まれていた、ウェル番号4で明らかであった。この結果から、IL-21およびIL-15は相乗的に作用して、ヒトCD34+細胞集団を増殖させることが示唆された。さらに、この実験結果は、マウスBM検定法(実施例1)においてマウスIL-21で認められた結果を支持するものであった。
次に、全ての細胞集団を以下(実施例7)に示されるように、NK活性について調べ、フローサイトメトリー解析にかけた。
C. IL-15を遅れて添加する、IL-21を用いたCD34+またはCD34-細胞の増殖
CD34陽性および陰性(CD34-)分画の両方を12ウェルプレートの6ウェル(1〜6)中に別々に蒔いた。6ウェルのそれぞれには、上記の、10% HIA FBSおよびPSNを含有するαMEM 2 mlの中に100,000個の陽性または陰性選択細胞が含まれた。使用した試薬は上記のとおりであった。ウェル番号1には、2 ng/mlヒトflt3を第0日に添加した。ウェル番号2には、2 ng/mlヒトflt3を第0日に添加し、5日間インキュベーション後に20 ng/mlヒトIL-15を添加した。ウェル番号3には、2 ng/mlヒトflt3および15 ng/mlヒトIL-21を第0日に添加した。ウェル番号4には、2 ng/mlヒトflt3および15 ng/mlヒトIL-21を第0日に添加し、5日間インキュベーション後に20 ng/mlヒトIL-15を添加した。ウェル番号5には、2 ng/mlヒトflt3および20 ng/mlヒトIL-15を第0日に添加した。ウェル番号6には、2 ng/mlヒトflt3、15 ng/mlヒトIL-21、および20 ng/mlヒトIL-15を第0日に添加した。実験の開始から計15日間インキュベートした後、各ウェルから細胞を集めて、細胞の数を数えた。
CD34+集団では、低レベルの増殖がflt3のみ存在する場合(対照ウェル番号1)に認められたが、flt3に加えて第0日に添加したIL-15またはIL-21の存在(ウェル番号3および番号5)によっては、増殖に対する有意な効果は与えられなかった。5日後にIL-15を添加することで、flt3対照と比べて(ウェル番号1と比べてウェル番号2で)多少の増殖効果が与えられ、zalpha11が存在する場合(ウェル番号3と比べてウェル番号4)では増殖効果が与えられた。しかしながら、最大の増殖は、第0日にflt3に加えてIL-15およびIL-21が含まれていた、ウェル番号6で明らかであった。
CD34-集団では、増殖が、flt3のみ存在する場合(対照ウェル番号1)に認められず、実際に細胞集団の減少が明らかであった。flt3に加えて第0日に添加したzalpha11の存在(ウェル番号3)によっても、flt3対照と同様であった。第5日に添加したIL-15の存在により、IL-21が存在する場合(ウェル番号4)でも存在しない場合(ウェル番号2)でも細胞の増殖効果が増した。この場合も先と同様に、最大の増殖は、第0日にflt3に加えてIL-15およびIL-21が含まれていた、ウェル番号6で明らかであった。
次に、全ての細胞集団を以下(実施例7)に示されるように、NK活性について調べ、FACS解析にかけた。
実施例6 NK活性およびNK細胞マーカーの評価のためのヒトおよびマウスIL-21を用いた新鮮マウス細胞の単離および増殖
A. ヒトおよびマウスIL-21を用いた新鮮マウス低密度骨髄細胞の単離および増殖
新鮮マウス骨髄細胞は、マウス大腿骨の両端を切り取り、増殖培地(下記を参照されたい) 2〜3 mlで骨の内側を収集管に向けて洗い流すことにより単離した。増殖培地は、RPMI 1640培地 (JRH Biosciences. Lenexa, KS) 500 ml; 100×L-グルタミン (Gibco BRL. Grand Island, NY) 5 ml; 100×ピルビン酸ナトリウム(Gibco BRL) 5 ml; 5 mlの100×ペニシリン、ストレプトマイシン、ネオマイシン(PSN) (Gibco BRL); および熱不活化ウシ胎児血清(FBS) (Hyclone Laboratories. Logan, UT) 50 mlとした。次いで、骨髄細胞を何度もピペットで吸ったり吐いたりすることでバラバラにした。次いで、細胞を沈殿させ、増殖培地で1回洗浄し、70-ミクロン(μm)径のふるいに通した。次いで、骨髄細胞を密度勾配にかけて、低密度の単核細胞を単離した。増殖培地5〜8 ml中の骨髄細胞を、遠心管に入れた5〜8 mlのNycoPrep 1.077 Animal液 (Nycomed. Oslo, Norway)の上に注意深くピペットで移した。次に、この勾配液を600×gで20分間遠心した。低密度の単核細胞をNycoPrepと培地との間の界面層から収集した。次いで、これらの細胞を増殖培地に入れておよそ20 mlまで希釈し、沈殿させて、洗浄した。次いで、細胞を、標準的な組織培養フラスコに増殖培地1 ml中につきおよそ細胞0.5〜1.5×106個として蒔き、37℃、5% C02で2時間インキュベートした。
次いで、非接着性の低密度(NA LD)骨髄細胞を収集し、2.5 ng/ml マウスflt3(R and D Systems. Minneapolis, MN)を加え25〜50 ng/mlヒトインターロイキン15(IL-15) (R and D Systems)を加え、50〜150 ng/mlヒトIL-21を有りもしくは無しとして; または0.12〜10 ng/mlマウスIL-21を有りもしくは無しとして、増殖培地1 ml中につき、細胞0.5〜2.0×105個として蒔いた。
ヒトまたはマウスIL-21の添加なしでは有意な増加はなかった。非接着性細胞は、マウスIL-21を0.12 ng/mlしか含んでいない培地でおよびヒトIL-21を22 ng/mlしか含んでいない培地で増殖した。ヒトおよびマウスIL-21の両方を含有する培養では、非接着細胞の増殖は、マウスリガンドでは約5〜10 ng/mlの飽和反応に達するまで、ヒトでは最高用量の200 ng/mlでも飽和反応に達することなく、IL-21の用量が増すとともに増加した。ヒトIL-21は、マウス細胞に対する影響がマウスIL-21と比べておよそ20〜100倍低いように思われた。およそ5〜10日後、IL-21により増殖したマウス細胞を収集し、フローサイトメトリー(FACSCalibur; Becton Dickinson, Mansfield, MA)により解析して、細胞の何%がNK細胞抗原に対して陽性であるか決定したところ、この場合には、46%がPanNK細胞マーカーDX5(Pharmingen)に対して陽性であった。
B. 新鮮な細胞系列枯渇マウス骨髄細胞の単離および増殖
新鮮な細胞系列枯渇(lin-)マウス骨髄細胞を新鮮マウス骨髄細胞から、最初に細胞を以下の抗体とインキュベートすることにより単離した: TER119、Gr-1、B220、MAC-1、CD3eおよびI-Ab (Pharmingen. San Diego, CA)。次に、lin+細胞を、製造元の使用説明書に従いDynabeads M-450ヒツジ抗ラットIgG(Dynal, Lake Success, NY)を用いて除去した。
ネガティブ選択したlin-骨髄細胞を次いで、2.5 ng/ml flt3(R&D Systems)および25 ng/ml IL-15 (R&D Systems); またはflt3、IL-15およびマウスIL-21、すなわち2〜5% BHKマウスIL-21条件培地のどちらかを加えた上記の増殖培地に蒔いた。6日増殖させた後、培養物を収集し、細胞の数を数えて、NK細胞活性測定(実施例7)にかけた。マウスIL-21とともに増殖させた細胞は、IL-21なしで増殖させた細胞と比べてNK細胞の標的細胞(YAC-1細胞)を溶解させるのにおよそ2〜3倍効果的であった。
C. CD4-CD8-(ダブルネガティブまたはDN)胸腺細胞の単離および増殖
新鮮マウス胸腺細胞は、3〜8週齢マウスから得た胸腺を切り刻んで、ふるいにかけることにより単離した。次に、CD4-CD8- (DN)細胞は、胸腺細胞を抗CD4抗体および抗CD8抗体(PharMingen)とインキュベートし、次いで製造元の使用説明書に従いDynabeads M-450ヒツジ抗ラットIgG (Dynal)を用いてCD4+ CD8+細胞を除去することによりネガティブ選択した。
DNマウス胸腺細胞を次いで、上記のように2.5 ng/mL flt3(R&D Systems)、25 ng/mL IL-15 (R&D Systems)および10 ng/mL IL-7 (R & D Systems)を加え、マウスIL-21を有りまたは無しとした増殖培地中で増殖させた。6日後、細胞を収集し、細胞の数を数え、上記のようにフローサイトメトリーにより解析し、同様にNK細胞活性測定(実施例7)にかけた。
マウスIL-21とともに増殖させた培養物では、およそ細胞480,000個が得られた一方、IL-21無しの培養物では、およそ細胞160,000個しか得られなかった。マウスIL-21とともに増殖させた培養物は、NK細胞抗原のPan NK、DX5 (PharMingen)に対しておよそ16.2%陽性であることが分かった。IL-21無しで増殖させた培養物は、DX5に対して14.6%陽性であった。IL-21とともに増殖させた細胞は、NK細胞の標的細胞YAC-1を、IL-21無しで増殖させた細胞よりもおよそ2倍よく溶解させた。増殖した細胞は、陰性対照の標的細胞系EL4を有意に溶解させなかった。これらの結果から、IL-21は細胞溶解性NK細胞を選択的に増殖させることが示唆された。
実施例7 ヒトおよびマウスIL-21の活性により、NK細胞の細胞傷害性試験で細胞および成熟マウスNK細胞が増加した
A. NK細胞測定
NK細胞媒介性の標的細胞溶解を標準的な51Cr放出測定により調べた。標的細胞(ヒトアッセイ系でのK562細胞(ATCC番号CCL-243)、およびマウスアッセイ系でのYAC-1細胞(ATCC番号TIB-160))は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の発現がないため、NK細胞媒介性の溶解を受けやすい。マウスアッセイ系での陰性対照の標的細胞系は、MHC+胸腺腫EL4(ATCC番号TIB-39)である。本発明者らは、K562、EL4、およびYAC-1細胞をRP10培地 (10% FBS (Hyclone, Logan, UT)のほかに、4 mM グルタミン (Gibco/BRL)、100 I.U./ml ペニシリン+100 MCG/ml ストレプトマイシン (Gibco/BRL)、50μM β-メルカプトエタノール(Gibco/BRL)および10 mM HEPES緩衝液 (Gibco/BRL)を添加した標準的なRPMI 1640 (Gibco/BRL, Grand Island, NY))中で増殖させた。アッセイ(測定)日に、標的細胞1〜2×106個を収集し、RP10培地中に細胞2.5〜5×106個/mlとして懸濁させた。本発明者らは、5 mCi/ml 51Cr-クロム酸ナトリウム(NEN, Boston, MA) 50〜100μlを細胞に直接添加し、これらを37℃で1時間インキュベートし、次いでこれらをPBS 12 mlで2回洗浄し、これらをRP10培地 2 ml中に再懸濁させた。細胞を血球計にて計測した後、この標的細胞を細胞0.5〜1×105個/mlまで希釈し、100μl (細胞0.5〜1×104個)を下記のエフェクター細胞と混合した。
ヒトアッセイ系では、エフェクター細胞を、選択しかつ増殖させたヒトCD34+ BM細胞(実施例5B)から調製し、これを収集し、洗浄し、細胞の数を数えて、96ウェル丸底プレートの中で51Cr標識標的細胞とさまざまな濃度で混合し、37℃で4時間インキュベートした。エフェクター細胞と標識標的細胞とを共にインキュベートした後、各ウェルから上清の半分を集めて、ガンマ線計測器のなかで1分間/試料としてカウントした。51Crの特異的放出の割合は、式 100×(X-Y)/(Z-Y)から計算した。式中、Xはエフェクター細胞の存在下での51Cr放出量であり、Yはエフェクター細胞の非存在下での自発的放出量であり、Zは0.5% Triton X-100とインキュベートした標的細胞からの51Cr全放出量である。データは、各ウェルにおける特異的溶解% 対 エフェクター細胞-対-標的細胞比率としてプロットした。
B. ヒトIL-21により増殖した細胞の活性
単離したCD34+ヒトHPC細胞をflt3 +/- IL-21およびflt3 + IL-15 +/- IL-21とともに培養(実施例5)し、第15日目にこの細胞を収集して、上記の標準的な51Cr放出測定でMHC- K562細胞を溶解するその能力を評価し、フローサイトメトリーによりその表面表現型を解析した。以前の報告(Mrozek, Eら、Blood 87:2632〜2640, 1996 ; およびYu, Hら、Blood 92:3647〜3657, 1998)から予測されたように、IL-15とflt3Lとを同時添加すると、実にCD56+細胞の小集団の過剰増殖が引き起こされた。興味深いことに、IL-21とflt3Lとを同時に用いて培養したBM細胞は顕著には増殖しなかったが、flt3L、IL-21およびIL-15の組み合わせを含有する培養では全細胞数が顕著に増加していた(実施例5を参照されたい)。
これらのヒトBM培養物の表面表現型を評価するため、本発明者らは、少量分割した細胞を3色フローサイトメトリー解析のため、FITC-抗CD3 mAb、PE-抗CD56 mAbおよびCyChrome-抗CD16 mAb(全てPharMingen, San Diego, CAより入手)で染色し、これをCellQuestソフトウェア (Becton Dickinson, Mountain View, CA)を用いたFACSCaliburにて解析した。このフローサイトメトリー解析により、これらの培養物から増殖した細胞が、大きくかつ顆粒性であって、CD56とCD16の両方を発現し、CD3-であること(Lanier, LL Annu. Rev. Immunol. 16:359〜393, 1998)から、分化したNK細胞であることが確認された。さらに、これらの細胞は、IL-15およびflt3を用いて増殖させた細胞よりも、有意に高いエフェクター機能を示した。より具体的には、3つ全てのサイトカインの中で増殖した細胞は、エフェクター細胞-対-標的細胞比率(E:T) 1.5で40%を超えるK562標的細胞を溶解させたが、IL-15+flt3Lの中で増殖させた細胞は、E:T 2で標的細胞を5%未満しか溶解させなかった。これらのデータから、IL-15との組み合わせにより、IL-21はCD34+BM細胞からのNK細胞の分化を刺激することが示される。
C. マウスIL-21により増殖した細胞の活性
マウス造血前駆細胞に対するIL-21の効果を調べるため、C57Bl/6マウスから精製した細胞系列陰性(Lin-)骨髄細胞を、実施例6Bに記述したように、flt3 + IL-15 +/- IL-21の中で増殖させた。培養の第6日目に、細胞(「エフェクター」)を収集し、細胞の数を数えて、次いでRP10培地(実施例7A) 0.4 ml中に再懸濁させた。IL-21有りまたは無しで増殖させた各試料(実施例7A)の分割2分量(各0.15 ml)を96ウェル丸底プレートの中で2重として連続的に3倍希釈して、各100μlからなる計6ウェルを得た。残る100μlの細胞液は、NK細胞の表面マーカーを目的にFITC-抗2B4 mAbおよびPE-抗DX5 mAb(PharMingen)で染色し、フローサイトメトリーにより解析した。IL-21を存在させてまたは存在させずflt3 + IL-15にさらした各細胞群は、類似した2B4+DX5+細胞画分を有し、NKマーカーのどちらも陽性なのが65〜75%の範囲に及んだ。
NKによる細胞溶解試験の場合、標的細胞(YAC-1およびEL4)を上記のように51Crで標識した。標的細胞を血球計にて計測した後、この標的細胞を細胞0.5〜1×105個/mlまで希釈し、YAC-1またはEL4 100μl (細胞0.5〜1×104個)をエフェクター細胞100μlと混合し、37℃で4時間インキュベートした。各ウェルに対し特異的な細胞溶解を上記のように決定した。
本発明者らは、flt3 + IL-15 + IL-21の存在下で増殖させた細胞が、YAC-1標的細胞に対する細胞溶解活性の増強(およそ2倍)を示す(しかしMHC+対照細胞系EL4は死滅させない)ことを見出した。エフェクター細胞-対-標的細胞比率(E:T) 5では、3つ全てのサイトカイン(IL-21 + flt3 + IL-15)の存在下で産生されたNK細胞は、12%のYAC-1細胞を溶解させたのに対し、flt3 + IL-15を用いて増殖させたNK細胞は、6%のYAC-1標的細胞を溶解させた。続く実験によって、この傾向が確認された。
マウスNK細胞に対するIL-21の生物活性を決定するための第二のアプローチとして、本発明者らは、実施例6Cに記載の未成熟CD4-CD8-(「ダブルネガティブ」、DN)マウス胸腺細胞を単離し、これらの細胞をIL-21有りでまたは無しで、IL-15 + flt3 + IL-7またはIL-15 + flt3 + IL-2とともに培養した。培養の第6日目に、細胞を収集し、上述のようにYAC-1およびEL4に対するNKによる細胞溶解活性について測定した。本発明者らは、IL-21の存在下で培養した細胞は、その他のサイトカインの存在下で培養したその細胞に比べて細胞溶解活性が増大し、この測定系で最も高い細胞溶解活性を有することを見出した。特に、IL-15 + flt3 + IL-7を用いて増殖させたDN胸腺細胞は、E:T 24でYAC-1細胞を18%死滅させた一方で、IL-15 + flt3 + IL-7に加えてIL-21の存在下で増殖させた細胞は、同じE:Tで標的細胞を48%死滅させた。IL-15 + flt3 + IL-2の中で増殖させたDN胸腺細胞は、E:T 6でYAC-1標的細胞を15%死滅させた一方で、これらの3つのサイトカインおよびIL-21とともに増殖させた細胞は、E:T 9でYAC-1細胞を35%死滅させた。フローサイトメトリーは、NKによる細胞溶解試験の1日前に培養細胞に対して行った。骨髄培養物についても当てはまったように、IL-21の増殖効果(IL-21を添加すると細胞数がおよそ2倍に増加する)にもかからず、IL-21はDX5+細胞の画分(IL-7を用いた培養では全細胞の17〜20%、およびIL-2を用いた培養では全細胞の35〜46%)を顕著に増加させることはなかった。これらのデータから、IL-21は、IL-15およびflt3との組み合わせにより、マウス骨髄または胸腺から産生されるNK細胞の細胞溶解活性を増強させることが示唆される。
D. 成熟マウスNK細胞に対するマウスIL-21の活性
成熟NK細胞に対するマウスIL-21の効果を試験するため、本発明者らは、5週齢C57Bl/6マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME) 4匹から脾臓を単離し、これらを端部がすりガラスのスライドですり潰して、細胞懸濁液を作成した。赤血球は、次のような低張溶解により除去した: 細胞を沈殿させて、上清を吸引により除去した。本発明者らは、穏やかにボルテックスしながらこの沈殿物をばらばらにし、次いで振盪させつつ滅菌水900μlを添加し、続いて素早く(その後5秒以内に) 10×HBSS (Gibco/BRL) 100μlを添加した。次いで、細胞を1×HBSS 10 mlに再懸濁させ、この細胞をナイロン・メッシュ裏地付きの細胞ろ過器(Falcon)に通すことで残渣を除去した。次に、RBCをなくしたこれらの脾細胞を沈殿させ、MACS緩衝液(PBS + 1% BSA + 2 mM EDTA)に再懸濁させて、細胞の数を数えた。本発明者らは、製造元の使用説明書に従って、この細胞300×106個を抗DX5抗体がコートされた磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で染色し、DX5+ NK細胞をMACS VS+分離カラムに対して陽性選択した結果、DX5+細胞8.4×106個およびDX5-細胞251×106個が回収されるに至った。24ウェルプレートに入れた、RP10培地(実施例7A)単独の中で、または1) 30 ng/mlマウスIL-21、2) 30 ng/ml組み換えマウスIL-2 (R & D Systems社、Minneapolis, MN)、3) 30 ng/ml組み換えヒトIL-15 (R & D)、4) 各30 ng/mlのマウスIL-21およびhIL-15、もしくは5) 各30 ng/mlのmIL-2およびhIL-15を加えたRP10培地の中で、これらの細胞群のそれぞれを培養した(細胞0.67×106個/ウェル、処理条件につき2ウェル使用)。細胞を21時間後に収集し、洗浄し、RP10培地に再懸濁させて、細胞の数を数えた。その後、この細胞が、実施例7Aに記述されているように、51Cr標識YAC-1またはEL4標的細胞を溶解させるその能力についてアッセイ(試験)した。
一般に、DX5-(非NK細胞)群によるNK活性はほとんどなかったが、IL-21およびhIL-15とともに培養したDX5-細胞は実に、E:T 82でYAC-1標的細胞を25%溶解させた。ちなみに、hIL-15のみとともに培養したDX5-細胞は、E:T 110でYAC-1標的細胞を14%溶解させた。このことから、IL-21およびIL-15は、この細胞調製物中に残存するNK1.1+ NK細胞にともに作用することが示唆される。DX5+細胞調製物に関しては、マウスIL-21のみによる処理では、DX5+細胞のエフェクター機能を顕著に増加させることはなかった(DX5+細胞によるYAC-1細胞の細胞溶解は、未処理群と同様であった)。予想されたように、IL-2およびIL-15の両方では、NK活性が顕著に向上した。しかしながら、最も高いレベルの細胞溶解は、IL-21およびhIL-15で処理した群で検出された(E:T 3.3でYAC-1細胞を65%溶解、これに対しhIL-15処理群の場合にはE:T 4で45%溶解)。総合すれば、これらの結果から、IL-21単独ではNK細胞による細胞溶解活性を増加させることができないものの、IL-15とともに投与される場合には、成熟NK細胞のNKによる細胞溶解活性を促進させることが示唆される。
実施例8 T細胞増殖試験におけるヒトおよびマウスT細胞のIL-21による増殖
A. マウスT細胞のマウスIL-21による増殖
C57Bl/6マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)由来のT細胞は、プールした脾細胞ならびに腋窩リンパ節、上腕リンパ節、鼠径リンパ節、頚部リンパ節、および腸間膜リンパ節(LN)から得たリンパ球より単離した。脾臓を端部がすりガラスのスライドですり潰して、細胞懸濁液を作成した。LNはピンセットを用いて細かく裂いてばらばらにし、細胞ろ過器に通して残渣を除去した。プールした脾細胞およびLN細胞は、製造元の使用説明書(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)に従って、MACS磁気分離カラムを2回連続して用い、CD8+およびCD4+サブセットに分離した。胸腺細胞全体を同じマウスから採取した。
細胞は、各濃度の抗CD3 mAb 2C11 (PharMingen)を4℃で一晩予めコーティングしておいた96ウェル平底プレートの中で、精製マウスIL-21(米国特許第6,307,024号)の濃度を増やしながら(0〜30 ng/ml)、細胞3×105個/ウェル(胸腺細胞)または細胞105個/ウェル(成熟T細胞)として37℃で3日間培養した。抗CD3抗体は、T細胞受容体を介してマウスT細胞を活性化する働きをした。第2日目に、各ウェルを1μCi 3H-チミジンでパルスし、16時間後にプレートをハーベストし、カウントして、増殖を評価した。
本発明者らがIL-21をT細胞増殖試験で試験した際に、本発明者らは、IL-21が抗CD3抗体により活性化したマウス胸腺細胞を同時刺激し、結果的にCD8+CD4-細胞の過剰増殖の促進に至ることを見出した(抗CD3抗体 + IL-21とともに培養した胸腺細胞の大部分が、培養の3日目までにCD8+CD4-であったのに対し、抗CD3抗体だけで培養した細胞は、5日目まではこの表現型を著しくゆがめることはなかった)。本発明者らにより、抗CD3抗体の非存在下では、IL-21に対する胸腺細胞の顕著なレベルの増加は観察されなかった。
興味深いことに、本発明者らがマウス末梢成熟T細胞をIL-21 + 抗CD3抗体に対する応答能について試験した際に、本発明者らは、CD8+サブセットのみIL-21に対して用量依存的に応答するが、CD4+サブセットではそうでないことを見出した。本発明者らにより同様に、IL-21単独に対して反応したCD8+細胞の弱いがしかし再現性のある増殖(しかしCD4+細胞ではそうでないこと)が観察された。興味深いことに、これはヒトT細胞については観察されなかった(下記、実施例8Bを参照されたい)。
B. ヒトT細胞のヒトIL-21による増殖
ヒトCD4+およびCD8+ T細胞は、実施例9(以下)に記述されるようにPBMCから単離した。細胞は、各濃度の抗ヒトCD3 mAb UCHT1 (PharMingen)を4℃で一晩予めコーティングしておいた96ウェル平底プレートの中で、精製ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)の濃度を増やしながら(0〜50 ng/ml)、細胞約105個/ウェルとして37℃で3日間培養した。第2日目に、各ウェルを1μCi 3H-チミジンでパルスし、16時間後にプレートをハーベストし、カウントした。マウスT細胞を用いた本発明者らの結果と異なり、本発明者らの予備データから、ヒトIL-21は用量依存的にCD4+ヒトT細胞を同時刺激するが、CD8+ヒトT細胞を刺激しないことが示唆される。
その他の実験では、マウス成熟CD4+およびCD8+ T細胞を、プールしたC57Bl/6の脾臓およびLN細胞から、磁気ビーズカラムを用いたCD19+ B細胞の枯渇により濃縮した。得られた細胞集団を、下記に示したように、プレートに結合させた抗マウスCD3ε mAbに対する増殖についてマウスIL-21なしでまたはその濃度を増加させながら試験した。示したデータは、4回の実験から得られた代表的な結果である。
C57Bl/6マウス由来のT細胞は、プールした脾細胞ならびに腋窩リンパ節、上腕リンパ節、鼠径リンパ節、頚部リンパ節、および腸間膜リンパ節から得たリンパ球より単離した。脾臓を端部がすりガラスのスライドですり潰して、細胞懸濁液を作成した。LNはピンセットを用いて細かく裂いてばらばらにし、細胞ろ過器に通して残渣を除去した。プールした脾細胞およびLN細胞は、製造元の使用説明書(Miltenyi Biotec, Sunnyvale, CA)に従って、MACS磁気分離カラムを2回連続して用い、CD8+およびCD4+サブセットに分離した。細胞は、各濃度の抗CD3ε mAb 2C11 (PharMingen)を4℃で一晩予めコーティングしておいた96ウェル平底プレートの中で、マウスIL-21の濃度を増やしながら(0〜30 ng/ml)、細胞105個/ウェルとして37℃で3日間培養した。第2日目に、各ウェルを1μCi 3H-チミジンでパルスし、16時間後にプレートをハーベストし、カウントした。
表5は、mIL-21がマウスCD8+ T細胞の増殖を同時刺激することを示している。値は、3H-チミジンの取り込みによるCPM(3重ウェルの平均+/-標準偏差)を示す。
実施例9 リアルタイムPCRによりヒトCD4+細胞におけるIL-21発現が示される
A. ヒトIL-21発現を評価するために使用した一次試料としての精製ヒトT細胞
全血(150 ml)を健常ヒト供血者から採血し、50 mlコニカルチューブ(円錐管)の中でPBSと1:1で混合した。次いで、希釈血液30 mlをFicoll Paque Plus(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden) 15 mlに置いた。これらの勾配液を500×gで30分間遠心し、制動なしで停止させた。界面のRBCのない細胞(PBMC)を収集し、PBSで3回洗浄した。単離したヒトPBMCの収量は、下記の選択前には、200×106個であった。
PBMCをMACS緩衝液(PBS、0.5% EDTA、2 mM EDTA) 1.5 mlに懸濁させ、細胞3×106個を対照RNA用におよびフローサイトメトリー解析用に取っておいた。次に、本発明者らは、抗ヒトCD8マイクロビーズ(Miltenyi Biotec) 0.25 mlを添加し、この混合物を4℃で15分間インキュベートした。CD8ビーズで標識したこれらの細胞をMACS緩衝液30 mlで洗浄し、それからMACS緩衝液2 mlに再懸濁させた。
VS+カラム (Miltenyi)を製造元の使用説明書に従って調製した。次いで、VS+カラムをVarioMACS(Miltenyi)の磁界の中にセットした。カラムをMACS緩衝液5 mlで平衡化した。次いで、単離した初代マウス細胞をカラムに添加した。CD8陰性細胞を素通りさせた。カラムをMACS緩衝液9 ml(3×3 ml)で洗浄した。次いで、カラムを磁石から取り外して、15 mlファルコンチューブ上に置いた。カラムにMACS緩衝液5 mlを添加してCD8+細胞を溶出させ、結合した細胞は、製造業者により提供されたプランジャを用いて流し出した。CD8+選択ヒト末梢T細胞の収量は、総細胞数およそ51×106個であった。CD8-陰性素通り細胞を収集し、細胞の数を数え、抗ヒトCD4抗体がコーティングされたビーズで染色し、次いでインキュベートし、上記と同じ濃度で新しいVS+カラムに通した。CD4+選択ヒト末梢T細胞の収量は、総細胞数およそ42×106個であった。
CD8+およびCD4+選択ヒトT細胞の各試料を蛍光活性化細胞分離(FACS)での染色および選別を目的として取り出し、その純度を評価した。CD8+およびCD4+選択細胞を染色するため、PE-結合抗ヒトCD4抗体、FITC-抗ヒトCD8 Ab、およびCyChrome-抗ヒトCD19 Ab(全てPharMingenより入手)を使用した。この第一の実験でCD8選択細胞は80%がCD8+であり、CD4選択細胞は85%がCD4+であった。続く2回の実験(実施例9B)で、それぞれ、CD8+精製細胞は純度84%および81%であり、CD4+細胞は純度85%および97%であった。一つの実験として、本発明者らは、非結合(素通り)細胞を抗ヒトCD19抗体でコーティングされたビーズ(Miltenyi)で染色し、これらを3つ目の磁気ビーズカラムに通して、CD19+ B細胞(これらは純度92%であった)を単離した。
ヒトCD8+、CD4+およびCD19+選択細胞は、細胞0.5×106個/mlを、5%ヒトultraserum (Gemini Bioproducts, Calabasas, CA)と10 ng/ml PMAと0.5μg/mlイオノマイシン (Calbiochem)とを加えたRPMI中、37℃で約4時間、16時間、または24時間インキュベートすることにより活性化した。または、可溶性抗CD28 mAb(PharMingen)を5μg/mlとして加えまたは加えず、プレート結合用の0.5μg/ml抗CD3 mAb UCHT1(PharMingen)で一晩予めコーティングしておいた24ウェルプレートの中で、T細胞(2.5×106個/ウェル)を刺激した。各時点で、細胞を収集し、沈殿させ、PBSで1回洗浄して、再沈殿させた。上清を除去し、沈殿をドライアイス/エタノール槽のなかで急速凍結し、後日にRNAを調製するため-80℃に保存しておいた。
これらのヒトCD8+、CD4+および CD19+選択細胞について、ヒトIL-21および受容体の発現を評価するため、以下の実施例9Bおよび実施例9Cに記載されているようにリアルタイムPCRを行った。
B. ヒトIL-21発現に対する定量RT-PCRのためのプライマーおよびプローブ
ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (PE Applied Biosystems社、Foster City, CA)を利用したリアルタイム定量RT-PCRが以前に報告されている(Heid, CAら、Genome Research 6:986〜994, 1996 ; Gibson, UEMら、Genome Research 6: 995〜1001, 1996; およびSundaresan, Sら、Endocrinology 139:4756〜4764, 1998を参照されたい)。この方法には、レポーター色素とクエンチャー色素の両方を含む遺伝子特異的プローブの利用が取り入れられている。プローブが完全である場合、レポーター色素の(蛍光)放出は、近接するクエンチャー色素により打ち消されている。さらなる遺伝子特異的なフォワード・プライマーおよびリバース・プライマーによるPCR伸長の間に、Taqポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性によりプローブが切断されることでレポーター色素が放出され、結果的に蛍光放出が増加する。
リアルタイム定量RT-PCR解析に使用するプライマーおよびプローブは、プライマー設計ソフトウェアPrimer ExpressTM (PE Applied Biosystems)を用いて設計した。ヒトIL-21に対するプライマーは、イントロン-エクソン連結部をまたぐように設計し、ゲノムDNAの増幅をなくした。フォワード・プライマーZC22,281 (配列番号:11)およびリバース・プライマーZC22,279 (配列番号:12)はどちらも濃度300 nMで使用し、80 bpの産物を合成した。対応するIL-21のTaqManプローブZG32 (配列番号:13)は、PE Applied Biosystemsにより合成された。プローブは、5'末端がレポーター蛍光色素(6-カルボキシ-フルオレセイン) (FAM) (PE Applied Biosystems)および3'末端がクエンチャー蛍光色素(6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン) (TAMRA) (PE Applied Biosystems)で標識されていた。RNA全試料の完全性または品質を試験するため、PE Applied Biosystems (カタログ番号4304483)に発注したプライマーおよびプローブセットを用い、これらをrRNAに対して検査した。このプローブのレポーター蛍光色素はVIC (PE Applied Biosystems)である。rRNAの結果により、IL-21の結果の標準化が可能になると思われる。
RNAは、RNeasy Miniprep(商標)キット (Qiagen, Valencia, CA)を製造元の使用説明書に従って用い、実施例9Aで得られた沈殿物から調製した。対照RNAは、ヒトIL-21を発現しているBHK細胞およそ1×107個から調製した。
C. ヒトzalpha11受容体発現に対する定量RT-PCRのためのプライマーおよびプローブ
43Aに詳述の条件下で調製した細胞、およびIL-21受容体に特異的なプローブを用い、実施例9Bおよび実施例9Dに従ってリアルタイムPCRを行い、IL-21受容体の発現を評価した。フォワード・プライマーZC22,277 (配列番号:14)およびリバース・プライマーZC22,276 (配列番号:15)を濃度およそ300 nMとしてPCR反応(上記)のなかで使用し、143 bpの産物を合成した。対応するIL-21のTaqMan(登録商標)プローブ(ZG31(配列番号:16)とした)は、PE Applied Biosystemsにより合成され、標識された。ヒトIL-21受容体を発現しているBaF3細胞由来のRNAを使用して、以下の実施例9Dに記載したリアルタイムPCRの標準曲線のための適当な対照を作成した。
D. リアルタイム定量RT-PCR
IL-21 RNAの相対量は、ワンステップRT-PCR法(PE Applied Biosystems)を用いた総RNA試料の解析により決定した。ヒトIL-21を発現しているBHK細胞由来のRNAを使用して、標準曲線を作成した。この曲線は、rRNA検査の場合2.5〜2.5×10-4 ngに及ぶ連続希釈およびIL-21検査の場合25〜0.0025 ngに及ぶ連続希釈により、各点を3重として構成された。総RNA試料を同様に、ヒトIL-21の転写量についておよび内部対照としてrRNA量について3重で解析した。各ワンステップRT-PCR反応液は、総量25μl中、緩衝液A(50 mM KCL、10 mM Tris-HCL、および内部標準色素ROX (PE Applied Biosystems))に入れた総RNA 25 ng、適当なプライマー(rRNA試料の場合50 nM、IL-21試料の場合300 nM)およびプローブ(rRNAの場合50 nM、IL-21の場合100 nM)、5.5 mM MgCl2、各300μMのd-CTP、d-ATP、およびd-GTPならびに600μMのd-UTP、逆転写酵素(0.25 U/μl)、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(0.025 U/μl)ならびにRNase阻害剤(0.4 U/μl)で構成された。サーマルサイクリングの条件は、48℃で30分間の初回RTステップ、95℃で10分間のAmpliTaq Gold活性化ステップ、続いて95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクルの増幅で構成された。IL-21 RNAの相対量は、IL-21の量を標準化するためにrRNA測定を利用し、User Bulletin No.2 (PE Biosystems; User Bulletin #2: ABI Prism 7700 Sequence Detection System, Relative Quantitation of Gene Expression, December 11, 1997)に記載の標準曲線法(Standard Curve Method)により決定した。試料を各実験に入れた標準物質に対して比較した。標準物質は、良質なRNAであることや他の試料をはっきりと比較できる発現量であることを基に任意選択した。刺激した細胞および刺激していない細胞(実施例9A)におけるIL-21およびIL-21受容体の発現を解析する実験の結果は、以下の実施例9Eに記載されている通りである。
E. CD4+、CD8+および CD19+細胞におけるヒトIL-21受容体およびリガンドの発現
第一の実験では、上記のRT-PCRを利用して、刺激していないおよび抗CD3抗体で刺激したCD4+およびCD8+試料におけるzalpha11受容体の発現を0h (刺激していない(「休止している」細胞))の時点で、ならびに刺激後、4h、15.5hおよび24hで評価した。休止しているCD4+細胞を標準物質として任意選択し、値1.00とした。刺激していないCD4+細胞における受容体の発現は培養の4h〜24hでおよそ4倍増加し、抗CD3抗体で刺激したCD4+細胞においては同じ期間にわたり約8倍増加していた。CD8+細胞では、IL-21受容体の発現が7倍増加していることが示され、その発現は4時間で頂点に達し、時間とともに減少していった。抗CD3抗体刺激により、CD8+細胞は、受容体の発現が持続的に8倍増加していた。
この第一の実験では同様に、RT-PCRを利用して、同じく抗CD3抗体で刺激したおよび刺激していないCD4+およびCD8+試料におけるIL-21の発現についても評価した。4時間、抗CD3抗体で刺激したCD8+試料を標準物質として任意選択し、値1.00とした。この結果から、刺激していないCD4+およびCD8+細胞はIL-21を発現していないことが示された。本発明者らは、抗CD3抗体で刺激したCD4+細胞において4hで著しい発現上昇を観測し、15.5hで観測されたシグナルの増加は約300倍であった。CD8+細胞は、抗CD3抗体の刺激により、少量のリガンドを発現したが、しかしこれは、わずかにCD4+細胞を有するCD8+集団のコンタミによる可能性が高い。
第二の実験では、RT-PCRを利用して、抗CD3抗体で刺激した、PMA + イオノマイシンで刺激したおよび刺激していないCD4+およびCD8+試料におけるIL-21受容体の発現を0hの時点で、ならびに活性化後、3.5h、16hおよび24hで評価した。休止しているCD8+試料を標準物質として任意選択し、値1.00とした。休止しているCD4+およびCD8+細胞には、有意な量の受容体発現がなかった。PMA + イオノマイシンで刺激したCD4+試料では活性化後、3.5h、16hおよび24hで、発現が約3倍高くなった。抗CD3抗体で活性化したCD4+細胞の発現は、刺激後3.5hでバックグラウンドレベルを超えて最高で10倍に達し、それから刺激後16hでバックグラウンドを超えた4倍のレベルに戻った。CD8+細胞は、PMA + イオノマイシンの刺激後3.5hで4倍の発現増加を示し、その後の時点では発現が減少していった。第一の実験と同様に、抗CD3抗体で刺激したCD8+細胞はこの場合もやはり、受容体発現の誘導がバックグラウンドの8倍増を示した。
第二の実験から得たこれらの試料を同様に使用して、IL-21の発現についても評価した。24時間、PMA + イオノマイシンで刺激したCD4+試料を標準物質として任意選択し、値1.00とした。この結果から先と同様に、刺激していない細胞はどれもIL-21を発現していないことが示された。抗CD3抗体で刺激したCD4+細胞では3.5hでリガンドの発現が、前の実験(4h)で見られたように約30倍誘導されていた。しかしながら、PMA + イオノマイシン刺激では3.5hで約5倍誘導されていただけで、その後の時点で発現が減少した。この場合も先と同様に、ごく少量のIL-21を発現していたCD8+細胞は、おそらく、コンタミしているCD4+細胞によるものであると思われた。
最後の実験では、RT-PCRを利用して、抗CD3抗体で刺激したおよび抗CD3抗体/抗CD28抗体で刺激したならびに刺激していないCD4+およびCD8+試料におけるIL-21受容体の発現を0hの時点で、ならびに刺激後、2h、4h、および16hで評価した。PMA + イオノマイシンで活性化したCD19+細胞を同様に、同じ時間間隔で受容体の発現について検査した。休止しているCD4+試料を標準物質として任意選択し、値1.00とした。2時間、抗CD3抗体で刺激したCD4+細胞は、前の実験において3.5hで見られた10倍の誘導に比べて、受容体の誘導が4倍しかなかった。抗CD3抗体と抗CD28抗体との組み合わせでは、IL-21受容体の発現がバックグラウンドの8倍まで増加した。16時間、抗CD3抗体/抗CD28抗体で刺激したCD8+細胞は、前の実験(上記)においてCD8+細胞で見られたように、IL-21受容体の発現レベルが非常に低かった。PMA + イオノマイシンで刺激したCD19+細胞は、IL-21受容体の発現が2hで19倍増加して最高となったが、その発現レベルは16hまでに、減少して休止細胞のレベルまで戻った。
最後の実験から得たこれらの試料を同様に使用して、RT-PCRによりIL-21についても評価した。16時間、抗CD3抗体/抗CD28抗体で刺激したCD8+試料を標準物質として任意選択し、値1.00とした。この結果から、2時間で、CD4+細胞は、抗CD3抗体の刺激によりIL-21の発現が約2倍誘導され、抗CD3抗体に加えて抗CD28抗体の刺激により5倍誘導されることが示された。これらの刺激条件により、リガンドの発現が時間とともに誘導されて、16h刺激したCD4+細胞ではバックグラウンドを超える70倍のリガンド発現レベルが示された。CD8+およびCD19+細胞では、IL-21の発現が示されなかった。
採血間(すなわち、同一患者から得た異なる時点の複数試料および複数患者間)である程度のばらつきが予測された。従って、データの傾向を各試験の範囲内で、または単一の血液試料から解析し、総合的な結論を目的として上記の3つの実験を比較した。上記のリアルタイムPCR実験の傾向は、試験した全ての細胞型のうち、PMA + イオノマイシンで活性化したCD19+ B細胞が最も高いレベルのIL-21受容体のRNAを発現していたことである。CD4+およびCD8+細胞を同様に刺激して、受容体を発現させることができるが、B細胞におけるよりもずっと低いレベルである。IL-21はもっぱら、刺激を受けたCD4+ T細胞で発現していた(そしてCD8+ T細胞またはCD19+ B細胞により発現されていなかった)。この試験では、PMA + イオノマイシンを用いた刺激によって十分なIL-21シグナルが誘発されたが、著しく高いシグナルは、抗CD3 mAbで刺激した、またはインビボにおける抗原との遭遇をより良く模倣した条件である抗CD3 mAbと抗CD28 mAbとの組み合わせで刺激したCD4+ T細胞から得られた。
実施例10 抗CD40抗体または抗IgM抗体で刺激したB細胞のIL-21依存的な増殖
A. ヒトB細胞の精製
凍結した血漿交換ヒト末梢血単核球(PBMC) 1×108個を含むバイアルを37℃の湯浴に入れて素早く溶解させ、50 mlチューブ(Falcon VWR, Seattle, WA)に入れたB細胞培地(RPMI 1640培地 (JRH Biosciences. Lenexa, KS)、10% 熱不活化ウシ胎児血清、5% L-グルタミン、5% ペニシリン/ストレプトマイシン) (Gibco BRL)) 25 mlに再懸濁させた。細胞は、トリパンブルー(Trypan Blue) (GIBCO BRL)を用いて生死について調べた。この細胞懸濁液をFicoll/Hypaque Plus (Pharmacia LKB Biotechnology社、Piscataway, NJ) 10 mlの上に重層し、これを1800 rpmで30分間回転させ、制動オフにして停止させた。次に、界面を取り出して、新しい50 mlファルコンチューブに移し、PBSで最終容量を40 mlとし、制動オンにして1200 rpmで10分間回転させた。単離した細胞の生死について同様に、トリパンブルー(Trypan Blue)を用いて試験した。または、新たに採血したヒト血液をPBS(Gibco BRL)で1:1希釈し、これを上記のようにFicoll/Hypaque Plus (Pharmacia)の上に重層し、回転させそして洗浄した。新鮮なまたは凍結した供給源から単離した細胞では、同等の結果が得られた。
B細胞は、Ficollに浮遊させた、健常ヒト供血者の末梢血液細胞(上記)から、抗CD19磁気ビーズ(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を製造元の使用説明書に従って用いて精製した。得られた調製物の純度は、FITC-抗CD22 Ab(Pharmingen, SanDiego, CA)を用いたフローサイトメトリー解析により監視した。B細胞調製物は主として、90%を超える(> 90%)純度であった。
B. マウスB細胞の精製
マウス脾細胞の懸濁液は、B細胞培地の中で成体C57Bl/6マウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)の脾臓をベントニードルにより細かく裂いてばらばらにすることで調製した。RBCは低張性溶解により除去した。CD43陽性細胞は、CD43磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を製造元の使用説明書に従って用い取り出した。得られた調製物の純度は、FITC-抗CD45R Ab(Pharmingen)を用いたフローサイトメトリー解析により監視した。B細胞調製物は主として、90%を超える(> 90%)純度であった。
C. ヒトまたはマウスIL-21の存在下における抗CD40抗体刺激B細胞の増殖
供給源をヒトまたはマウスとして得たB細胞を、細胞1×106個/mlの最終濃度でB細胞培地に再懸濁させて、各種の刺激条件を含む96ウェルU底プレート(Falcon, VWR)の中に100μl/ウェルで蒔いて、最終容量を200μl/ウェルとした。抗CD40抗体で刺激するため、ヒト培養物に1μg/ml抗ヒトCD40抗体(Genzyme, Cambridge, MA)を添加し、マウス培養物に1μg/ml抗マウスCD40抗体(Serotec, UK)を添加した。ヒトまたはマウスIL-21を1 pg/ml〜100 ng/mlに及ぶ希釈度で添加した。IL-21の効果の特異性は、25 mg/ml可溶性ヒトzalpha11CEE (実施例10A)を用いたIL-21の阻害により確認された。処理は全て3重で行った。次いで、細胞を湿潤インキュベータ中、37℃で120時間(ヒト)または72時間(マウス)インキュベートした。収集の16時間前に、1μCi 3H-チミジン(Amersham, Piscataway, NJ)を全ウェルに添加して、B細胞が増殖したかどうかについて評価した。細胞は、細胞採取器(Packard)を用いて96ウェルろ過プレート(UniFilter GF/C, Packard, Meriden, CT)中へ採取し、製造元の使用説明書に従って捕集した。プレートを55℃で20〜30分間乾燥させて、ウェルの底を不伝導性プレートシーラー(opaque plate sealer)でシールした。各ウェルにシンチレーション液(Microscint-O, Packard) 0.25 mlを添加し、プレートをTopCount Microplate Scintillation Counter (Packard)により読みとった。
3 ng/mlまたはそれ以上の濃度のIL-21とともにインキュベートすることにより、マウスおよびヒトB細胞の両方で、可溶性抗CD40抗体により引き起こされた増殖が用量依存的に30倍にも促進された。マウスおよびヒトB細胞は、マウスおよびヒトそれぞれのIL-21に対して同様に、等しく反応した。どちらの種でも、培養液に可溶性IL-21受容体を存在させることにより明らかであったように、刺激はIL-21に特異的であった。
D. ヒトまたはマウスIL-21の存在下における抗IgM抗体刺激B細胞の増殖
上述(実施例10Aおよび実施例10B)のように供給源をヒトまたはマウスとして得たB細胞を上述(実施例10C)のようにプレートに蒔いた。ヒト細胞の抗IgM抗体刺激の場合、プレートを10 mg/ml F(ab')2抗ヒトIgM Ab (Southern Biotech Associates, Birmingham, Alabama)で一晩予めコーティングし、使用する直前に無菌培地で洗浄した。培養液には、0〜10 ng/ml hu rIL-4 (R & D Systems, Minneapolis, MN)を添加した。マウス細胞の抗IgM抗体刺激の場合、可溶性抗IgM抗体(Biosource, Camarillo, CA)を10 mg/mlとして培養液に添加した。前の抗IgM抗体/IL-4条件のそれぞれに、上述のようにヒトまたはマウスIL-21を1 pg/ml〜100 ng/mlに及ぶ希釈度で添加した。IL-21の効果の特異性は、上述の可溶性ヒトzalpha11受容体(実施例10C)を用いた阻害により確認された。処理は全て3重で行った。細胞をインキュベートし、3H-チミジンで標識し、収集し、そして実施例10Cに記載れているように解析した。
0.3 ng/mlまたはそれ以上の濃度のIL-21とともにインキュベートすることにより、不溶性抗IgM抗体(マウス)または抗IgM抗体およびIL-4(ヒト)により引き起こされた増殖が用量依存的に阻害された。培養液に可溶性IL-21受容体を存在させることにより明らかであったように、この阻害はIL-21に特異的であった。
実施例11 B細胞に対するヒトIL-21の効果およびIL-21サポリン毒素融合体
ヒトIL-21の効果は、以下のヒトB細胞系で試験した: ヒトバーキットリンパ腫細胞系Raji (ATCC番号CCL-86)、およびRamos (ATCC番号CRL-1596); ヒトEBV B細胞リンパ腫細胞系RPMI 1788 (ATCC番号CRL-156); ヒト骨髄腫/形質細胞腫細胞系IM-9 (ATCC番号CRL159); およびヒトEBV形質転換B細胞系DAKIKI (ATCC番号TIB-206)、ならびにHS Sultan細胞(ATCC番号CRL-1484)。IL-21による約2〜5日間の処理後、表面マーカーの発現の変化がIM-9、Raji、Ramos、およびRPMI1788細胞系で認められたことから、これらの細胞がIL-21に応答し得ることが示された。IL-21で処理したヒトB細胞系は、細胞培養皿に蒔き直した際に、未処理細胞よりも増殖がずっと遅かった。これらの細胞はまた、フローサイトメトリーにより評価されたように(実施例11Dおよび実施例11E)、FASリガンドの発現が増加し、活性化FAS抗体に対する感度が適度に増加していた(実施例11A)。この結果から、IL-21は、いくつかの種類のB細胞腫瘍を増殖性が低い状態におよび/またはFASリガンド感受性が高い状態に分化誘導することにより、これらの細胞を制御できたことが示唆される。さらに、zalpha11受容体は、これらの細胞系のうちいくつかの表面に発現している(米国特許第6,307,024号)。従って、IL-21およびヒトIL-21-サポリン免疫毒素複合体(下記、実施例11B)または他のIL-21-毒素融合体は、B細胞性白血病およびリンパ腫の治療に使用することができるものと思われる。
A. B細胞系に対するヒトIL-21の効果
IM-9細胞を培地(50μg/ml精製ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)あり/なしで) 1mlあたり細胞約50,000個として蒔いた。3日間の増殖後、細胞を収集し、洗浄し、細胞の数を数え、次いで96ウェルプレートに細胞約2500個/mlとして蒔き直し、そのウェルの中に0、0.033、0.1または0.33μg/ml抗FAS抗体 (R & D Systems, Minneapolis)を加えた。2日後、Alamar blue蛍光測定法(米国特許第6,307,024号)を行い、細胞の増殖を評価した。
IL-21で処理したIM-9細胞は、抗FAS抗体の非存在下で、未処理細胞の密度のわずか27%まで増殖したにすぎなかった。0.33μg/ml 抗FAS抗体の存在下では、IL-21処理細胞はさらに52%阻害されたのに対し、未処理細胞はわずか30%しか阻害されなかった。IL-21と0.33μg/ml 抗FAS抗体の両処理による細胞増殖の全体的な阻害率は、86%であった。
IM-9細胞をIL-21有りまたは無しで3日間前処理し、それから1ウェルあたり細胞100個として蒔き直し、抗FAS抗体有りまたは無しで6日間増殖させた場合、Alamar blue測定法(米国特許第6,307,024号)により評価した未処理細胞の増殖は、抗FAS抗体によりわずか25%しか阻害されなかった一方で、IL-21処理細胞の増殖は、抗FAS抗体無しの未処理細胞の増殖に対して95%阻害された。
B. B細胞系に対するヒトIL-21-サポリン免疫毒素の効果
ヒトIL-21-サポリン免疫毒素複合体(zalpha11L-sap)の構築および精製は、実施例12に記述されている。ヒトzalpha11L-sapは、細胞増殖を阻害する際にサポリン単独よりもはるかに強力であった。処理細胞を3日間または4日間の処理後に蒔き直した場合、ヒトzalpha11L-sapで処理した細胞は、あまり増殖しなかった。
IM-9、RamosおよびK562(ATCC番号CCL-243)細胞を96ウェルプレートの中に細胞約2500個/ウェルとして蒔き、0〜250 ng/mlヒトzalpha11L-sap複合体または対照として0〜250 ng/mlサポリン(Stirpeら、Biotechnology 10,:405〜412, 1992)のみを加えた。プレートを4日間インキュベートし、それからAlamar Blue増殖試験を行った(米国特許第6,307,024号)。最大濃度のヒトzalpha11-sap複合体で、IM-9細胞およびRAMOS細胞の増殖は、それぞれ79%および65%まで阻害された。フローサイトメトリーでIL-21受容体の発現が低い/陰性のK562細胞が、zalpha11-sapによって影響を受けなかったことから、従って、複合体が持つ効果の特異性が示される。
IM-9細胞を6ウェルプレートの中に細胞50,000個/mlとして蒔き、ヒトzalpha11L-sap複合体を0および50 ng/mlとした。3日後、細胞を収集し、細胞の数を数えそれからヒトIL-21-サポリン免疫毒素無しとして、2倍連続希釈、および12ウェル/細胞希釈で、細胞100〜0.8個/ウェルに蒔き直した。6日後、各細胞希釈度で増殖を伴うウェルの数をAlamar blue増殖試験(米国特許第6,307,024号)の結果によりスコア化した。
Alamar blue試験(米国特許第6,307,024号)により、細胞数を評価した場合、1ウェル当たり細胞約12.5および6.25個として蒔いた対照細胞の6日後の増殖は、それぞれ1ウェル当たり細胞約100個および50個として蒔いたzalpha11-sap処理細胞の増殖と同等であった。このように、生き残った処理IM-9細胞の増殖は、蒔き直しによる、zalpha11-sap免疫毒素の除去後でさえも著しく低下した。
ヒトIL-21受容体の組織分布が限定されていること(米国特許第6,307,024号ならびに国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/7717号)や、受容体を発現している細胞に対するzalpha11-sapの作用の特異性から、この複合体がインビボでは寛容され得ることが示唆される。
C. B細胞系の生存性に対するヒトIL-21-サポリン免疫毒素の効果
HS Sultan細胞(ATCC番号CRL-1484)を12ウェルプレートの中に1 ml当たり細胞約40,000個として蒔き、サイトカインを加えずにもしくは40 ng/ml精製ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)もしくは25 ng/mlヒトzalpha11L-sap複合体(下記、実施例12)を加えてまたは20 ng/ml IFN-α(RDI)もしくはIL-21およびIFN-αを加えて5日間増殖させた。IL-21はHS Sultan細胞の増殖を63%まで阻害した。IFN-αは増殖を38%まで阻害した。IL-21に加えてIFN-αにより、増殖が78%阻害されたことから、ヒトIL-21およびIFN-αの増殖阻害効果は相加的である可能性が示唆される。ヒトzalpha11L-sapは、HS Sultan細胞の増殖を92%まで阻害した。
上記の結果により、悪性腫瘍またはzalpha11受容体を発現するその他の疾患、特にB細胞起源の疾患を治療するうえでIL-21またはヒトzalpha11L-sapを利用できる可能性が示唆される。IFN-αとのIL-21の組み合わせが、HS Sultan細胞の阻害におけるその相加効果により特に提案される。その他いくつかの種類のリンパ性悪性腫瘍および疾患も同様に、活性化T細胞が同じくIL-21受容体のmRNAを発現する(米国特許第6,307,024号ならびに国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/7717号)ように、その受容体を発現する可能性があり、これらの疾患のうちのいくつかも同様にIL-21-毒素融合体治療のIL-21に反応する可能性がある。
D. ヒトB細胞系のFAS(CD95)発現はヒトIL-21刺激により増加する
ヒトB細胞系HS Sultan (ATCC番号CRL-1484)、IM-9 (ATCC番号CRL159)、RPMI 8226 (ATCC番号CCL-155)、RAMOS (ATCC番号CRL-1596)、DAKIKI (ATCC番号TIB-206)、およびRPMI 1788 (ATCC番号CRL-156)を全て、10〜50 ng/ml精製ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)を加えてまたは加えず2〜8日間処理した。次いで、製造元の手順書に従って、細胞をPE結合抗CD95抗体(PharMingen, San Diego, CA)で染色し、FACScalibur (Becton Dickinson, San Jose, CA)にて解析した。全ての細胞系で、ヒトIL-21による処理後、抗CD95(FASまたはAPO-1)抗体の染色が、一部の例では2倍を超えて増加していた。
E. 原発性マウス脾臓B細胞のFAS(CD95)発現はヒトIL-21刺激により増加する
原発性マウス脾細胞は、8〜12週齢のC57/BL6マウスから得た脾臓を細かく切って得た。この調製物を水で5秒間処理することで赤血球を溶解させ、次いで70ミクロン径のふるいに通した。残った脾細胞を洗浄し、前述のように、ヒトIL-21を有りまたは無しとし、10% HIA-FBS (Hyclone, Logan, UT)、IL-2 (R & D Systems)を加えたRPMI (JRH Bioscience)の中に蒔いた。次いで、これらを5% CO2中、37℃で5日間インキュベートした。脾細胞を収集し、製造元の手順書に従って、PE結合抗CD95抗体(PharMingen)およびFITC結合抗CD19抗体(PharMingen)で染色した。細胞をFACScalibur (Becton Dickinson)にてフローサイトメトリーにより解析した。CD19+マウスB細胞にゲートをかけると、抗CD95抗体による染色が、IL-2単独で処理したものに比べ、IL-2に加えてヒトIL-21で処理したB細胞にて増加していることが認められた。抗CD95抗体による染色は、IL-2単独で培養したB細胞では相対蛍光単位(RFU) 37となり、IL-2およびヒトIL-21で培養したB細胞ではRFU 55となった。
実施例12 IL-21毒素融合体の構築および精製
供給契約のもと、植物毒素サポリン(Stirpeら、Biotechnology 10,:405〜412, 1992)に結合させる目的で、ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号) 10 mgをAdvanced Targeting Systems (ATS, SanDiego, CA)に送った。ZymoGeneticsがATSより、1分子のヒトIL-21当たり1.1分子のサポリンから成るタンパク質複合体1.3 mgを受け取って、20 nMリン酸ナトリウム、300 nM塩化ナトリウム、pH 7.2中で濃度1.14 mg/mlとして製剤化した。
実施例13 インビボにおけるIL-21毒素融合体
A. マウスにおけるIL-21-サポリン複合体の試験
IL-21-サポリン複合体(実施例11)を、異なる2用量、すなわち0.5および0.05 mg/kgとして、C57BL6マウス(雌、12週齢、Taconicから購入)に投与した。0.1% BSA (ICN, Costa Mesa, CA)からなる媒体に入れて、注射を静脈内に行った。1週間にわたり3回の注射を行った(第0、2および7日目)。血液試料をマウスから第0日目(注射前)にならびに第2日目および第8日目(注射後)に採血した。血液はヘパリン添加管(Bectin Dickenson, Franklin Lakes, NJ)に採取し、細胞数は自動血球分析装置(Abbot Cell-Dynモデル番号CD-3500CS, Abbot Park, IL)を用いて決定した。動物は第8日目の採血の後に、安楽死させて剖検した。組織病理検査のため、脾臓、胸腺、肝臓、腎臓および骨髄を採取した。脾臓および胸腺の重さを量り、さらに血液試料を血清分離管に採取した。標準的な血液生化学的パネルの試験を行うため、血清をPheonix Central Labs, Everett, WAに送った。試料をまた、本明細書に記載のフローサイトメトリー解析のために収集した。
循環血液細胞の数および血液生化学検査の測定結果は、IL-21複合体で処置したマウスおよび同等の用量の非複合毒素(サポリン)で処置したマウスの間で有意には異なっていなかった。IL-21-サポリンで処置したマウスの組織に関する組織学的解析により、同等の用量の非複合毒素(サポリン)で処置したマウスと比べて有意な変化が示されなかった。これらの結果から、サポリン複合体はインビボで有毒ではないことが示唆された。
B. B細胞由来腫瘍に対するIL-21サポリン毒素融合体のインビボ試験
ヒト腫瘍細胞に対するヒトIL-21およびヒトIL-21サポリン毒素融合体(実施例12)の効果を、本明細書に記載のマウスの異種移植腫瘍モデルを用いてインビボで試験した。異種移植片モデルは、実施例11に記述した細胞系のような、インビトロ実験に基づいて選択した細胞系を用いて最初に試験した。これらの細胞系には: ヒトバーキットリンパ腫細胞系Raji (ATCC番号CCL-86)、およびRamos (ATCC番号CRL-1596); ヒト細胞系RPMI 1788 (ATCC番号CRL-156); ヒト骨髄腫/形質細胞腫細胞系IM-9 (ATCC番号CRL159); ヒト細胞系DAKIKI (ATCC番号TIB-206)、ならびにHS Sultan細胞(ATCC番号CRL-1484)が含まれるが、これらに限定されることはない。ヒト腫瘍から直接得た細胞も同様にこのタイプのモデルで使用することができる。この方法では、IL-21による処理またはIL-21サポリン毒素融合体による処理に対する感度を目的に患者試料のスクリーニングを利用して、抗ガン治療でzalpha11を利用するのに最適な適応を選択することができる。
上記の、インビボモデルにおける適当な異種移植片を選択後、IL-21により誘発されるナチュラルキラー細胞の活性および/またはB細胞由来の腫瘍に対するIL-21の効果をインビボで評価する。本明細書に記載のマウスの異種移植腫瘍モデルを用いて、ヒトIL-21を、B細胞由来の腫瘍に対する活性を持つ細胞傷害性エフェクター細胞(例えば、NK細胞)を産生させるその能力について試験する。さらに、腫瘍に対するヒトIL-21の直接的な影響を評価することができる。実施される異種移植片モデルは上記のように選択する。細胞系または原発腫瘍を接種したマウスで腫瘍細胞を枯渇させる効果およびそのマウスの生存率を促進させる効果を目的に、IL-21で刺激したヒト細胞を用いたプロトコルを開発して試験する。
実施例14 ヒトIL-21の水中安定性の予備評価
バイオプロセッシング、製剤化、およびインビボ投与の裏付けとして、ヒトIL-21の水中安定特性を評価するために予備試験を行った。この目的は、1) Alzet Minipumpからの安定性および回収性ならびに一般的な保存性および操作性を検証すること、2) 陽イオン交換HPLC(CX-HPLC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、サイズ排除HPLC(SEC-HPLC)、および生物学的検定法(BaF3/zalpha11R増殖(例えば、米国特許第6,307,024号))を含むいくつかの分析方法の安定性指示特性(stability-indicating nature)を決定すること、ならびに3) 安定性を制限する分解経路およびその動態学的依存性を決定することであった。
一定分量の精製ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)を、PBS(pH 7.4)で2 mg/mLまで希釈して調製し、低密度ポリエチレン(LDPE)クリオバイアル(Nalgene, 1.8 mL)に入れて、-80℃(対照)、5℃、30℃、および37℃で保存した。試料をCX-HPLC、RP-HPLC、SEC-HPLC、および生物学的検定法により29日間にわたって断続的に試験した。一定分量を同様に-80℃に保存し、凍結融解(f/t)の繰り返し(-80℃/RT; 5×f/t、10×f/t)にかけた。全ての試験で、ヒトIL-21の回収率を-80℃の対照(1 f/t)と比べて決定した。
-80℃対照試料の残りのヒトIL-21溶液は、分析後に再凍結(-80℃)した。この一定分量(2 f/t)を使用して、円偏光二色性(CD)によりpHの関数としてヒトIL-21の熱的および立体構造的な安定性を評価した。2 mg/mLの溶液をpH 3.3〜8.8に及ぶPBS緩衝液で100μg/mLに希釈した。遠紫外CDスペクトルを温度範囲5〜90℃にわたって5℃間隔(n=3/pH)で監視した。使用するCD分光偏光計は、Jasco 715 (Jasco, Easton, MD)とした。熱によるアンフォールディングは、222 nmでの楕円偏光の変化により、温度の関数として監視した。Tmの推定は、二状態転移によるアンフォールディングモデルを考えて推定した。データはSlideWrite Plus for Windows v4.1 (Advanced Graphics Software; Encinitas, CA)を用いて適合させた(S字形)。
Alzet Minipump (モデル番号1007D; ALZA社、Mountain View, CA)からの回収性および安定性は、ポンプに2 mg/mLヒトIL-21溶液100μLを満たし、PBS (pH 7.4) 1 mLを含有する1.8 mL LDPEの中にこのポンプを入れて、これらを37℃に保存することにより評価した。ミニポンプからのヒトIL-21の放出/回収は、第2、4、および7日目にCX-HPLC、RP-HPLC、およびSEC-HPLCにより評価した。活性は、第7日目に生物学的検定法により評価した。試験は、サンプリング時間につき3ポンプからの放出を評価するように計画した。
クロマトグラフィーデータから、CX-HPLCおよびSEC-HPLC法は安定性指示的であるが、RP-HPLC法ではそうではないことが示唆された。明らかな分解産物を示す少なくとも3つの付加的ピークがCX-HPLC法により観測された。SEC-HPLC法では、ヒトIL-21の前に溶出する、明らかなヒトIL-21の会合体が分離された。しかしながら、ヒトIL-21のピーク後には、有意な付加的ピークの溶出は観測されなかった。このことから、CX-HPLC法により観測された分解産物は、短縮型の変異形をもたらす加水分解/タンパク質分解過程ではなく、脱アミド化のようなアミノ酸修飾から生じる可能性が最も高いことが示唆される。有意な分解を受けていたことがSEC-HPLCおよびCX-HPLC法により示されていた試料において、わずかなフロンティング/テーリングがRP-HPLC法により(対照と比べて)観測された。しかしながら、RP-HPLC法では明らかな分解産物が分離されなかった。CX-HPLC法により観測された分解は、時間-温度の関数として増加し、明らかに一次速度式に従っていた。CX-HPLC法により回収された、37℃、30℃、および5℃とした29日後のヒトIL-21の割合(%)は、それぞれ39%、63%、および98%であった。会合体も同様に時間-温度依存的に増加していた。37℃、30℃、および5℃で29日間保存した調製物に認められた会合体の割合(%)は、それぞれ7.4、3.4、および検出限界以下(BDL)であった。いずれの試料でも生物学的検定法によって有意な相違が認められなかったことから、分解産物が完全なヒトIL-21と同等の活性を有することが示唆された。最高で10回までf/tサイクル(繰り返し)にかけた試料において、いずれの検定法でも分解が認められなかった。
Alzet MinipumpからのヒトIL-21の放出は、理論的に予測された放出容量と一致していた。このことから、著しい表面吸着によって、充填濃度2 mg/mLでのAlzet Minipumpを用いたヒトIL-21の輸送が損なわれないことが示唆される。前述のものと一致した分解が観測された。CX-HPLC法により決定した、2、4、および7日後までに放出されたヒトIL-21の純度(%)は、それぞれ96%、90%、および79%であった。当然ながら、ヒトIL-21が放出用培地の中に放出されたまたは放出用培地で希釈された後にも分解が起こるはずである。従って、ミニポンプ内の純度(%)は、放出用培地で決定された純度とは若干異なる可能性がある。各試料の生物活性は、ミニポンプから放出されたヒトIL-21の予測量と一致していた。
ヒトIL-21の遠紫外CDスペクトルは、予測されたように、IL-3 (J. Biochem., 23:352〜360, 1991)、IL-4 (Biochemistry, 30:1259〜1264, 1991)、およびIL-6変異体 (Biochemistry, 35:11503〜11511, 1996)のようなサイトカインと一致していた。pHの関数としての遠紫外CDスペクトルの総変化は、観測されなかった。結果から、最大の熱的/立体構造的な安定性のpHは、約pH 7.4であることが示された。アンフォールディング曲線の解析は、pH/組成の関数として熱的/立体構造的な安定性の比較を可能とする二状態のアンフォールディング機構に基づいた。しかしながら、一つまたは複数の中間体がアンフォールディング過程の間に存在する可能性がある。これはアンフォールディング曲線の浅さに基づき、協同性が比較的低かったためである。ヒトIL-21が90℃までの熱によるアンフォールディング後にリフォールディングするかどうか決定する試験は特に計画しなかったが、予備的なデータから、少なくとも部分的なリフォールディングは、試料の温度が、冷却されて20℃まで戻った後に起こることが示唆される。
これらの試験から、ヒトIL-21の純度を評価するおよび安定性を検証するための分析実例の同定が可能とされる。例えば、SEC-HPLC法を利用して、水溶液中での凝集の度合いや速度を特徴付けることができる。同様に、CX-HPLC法を利用して、凝集以外の機構によるヒトIL-21の分解の度合いや速度を特徴付けることができる。生物検定を利用して、ヒトIL-21およびその水溶性分解産物の活性を検証することができる。例えば、水溶液中で生成されかつCX-HPLC法により分離されたヒトIL-21変異体はそれ自体が、等価な生物活性を有するため、治療薬として有用となる可能性がある。同様に、ヒトIL-21がいくつかの異なる過程(凝集、アミノ酸修飾)により分解するという事実から、各分解過程の速度を最小化する、好ましいまたは独自の剤形が、溶液中の産物の長期安定性に必要とされるかもしれないことが示唆される。
水中分解産物の性質の同定およびその動態学的依存性(pH、濃度、賦形剤)の決定は、進行中である。血清/血漿中のヒトIL-21の安定性は、インビボ試験の計画および解釈を裏付けるために決定される。
実施例15 インビボにおけるB細胞由来腫瘍に対するIL-21の効果
A. 小型浸透圧ポンプを用いたIL-21の注入
小型浸透圧ポンプを介した持続注入によるIL-21の投与により、結果としてポンプに含まれるIL-21の濃度に比例した定常状態の血清濃度が得られる。リン酸緩衝生理食塩水(pH 6.0)中に濃度2 mg/mlまたは0.2 mg/mlとして含まれたヒトIL-21(米国特許第6,307,024号) 0.22 mlを無菌条件下でAlzet小型浸透圧ポンプ(モデル2004; Alza社 Palo Alto, CA)の中に添加した。ポンプは、背面皮膚の1 cmの切開部を通してマウスに皮下移植し、皮膚を無菌創縫合で閉鎖した。これらのポンプは、28日の期間にわたり速度0.25μl/時間でその内容物を輸送するように設計されている。この投与方法により、腫瘍細胞を注射したマウスの生存率の著しい増加がもたらされた(下記)。
B. インビボにおけるB細胞由来腫瘍に対するIL-21の効果
ヒトIL-21(米国特許第6,307,024号)の効果を、本明細書に記載のマウスの異種移植腫瘍モデルを用いてインビボで試験した。試験した異種移植片モデルは、ヒトリンパ芽球様細胞系IM-9(ATCC番号CRL159)とした。C.B-17 SCIDマウス(雌 C.B-17/IcrHsd-scid; Harlan, Indianapolis, Indiana)を4群に分けた。第0日目に、IM-9細胞(ATCC番号CRL159)を培養から収集し、尾静脈を介して、全てのマウス(細胞約1,000,000個/マウス)に静脈注射した。第1日目に、試験物質または対照物質を含む小型浸透圧ポンプをマウスに皮下移植した。群1〜3(n=9/群)のマウスは、IL-21の濃度を増やしながら処置した: 群1には、2.0 mg/mL ヒトIL-21が含まれ、1日当たり12μgが輸送された; 群2には、0.20 mg/mL ヒトIL-21が含まれ、1日当たり1.2μgが輸送された; 群3には、0.02 mg/mL ヒトIL-21が含まれ、1日当たり0.12μgが輸送された。群4(n=9)のマウスは、対照とし、媒体(PBS pH 6.0)で処置した。
12μg/日または1.2μg/日のIL-21注入により処置したマウスは、媒体処置マウスと比べて生存率が増加していた(生存関数のlog rank検定により、12μg/日または1.2μg/日 対 媒体、それぞれp <.0001およびp <.005)。用量0.12μg/日の群のマウスは、生存率が媒体処置群のマウスと違わなかった。これらの結果から、IL-21はインビボでB細胞の腫瘍細胞の影響を著しく低下させ、結果的に著しく生存率を増加させることが示された。
実施例16 B16-F10黒色腫およびEG.7胸腺腫モデルにおけるIL-21のインビボ抗腫瘍効果
A. インビボにおけるB16-F10黒色腫の転移性増殖に対するマウスIL-21の効果
マウス(雌、C57Bl6、9週齢; Charles River Labs, Kingston, NY)を3群に分けた。第0日目に、B16-F10黒色腫細胞(ATCC番号CRL-6475)を培養から収集し、尾静脈を介して、全てのマウス(細胞約100,000個/マウス)に静脈注射した。次いで、マウスを試験物質または関連する媒体で、適応する溶液0.1 mlを腹腔内注射することにより処置した。第一群(n = 24)のマウスは、媒体(PBS pH 6.0)で処置し、この媒体を第0、2、4、6、および8日目に注射した。第二群(n = 24)のマウスは、マウスIL-21(米国特許第6,307,024号)で処置し、これを第0、2、4、6、および8日目に用量75μgとして注射した。第三群のマウス(n = 12)は、マウスIL-21で処置し、これを第0日目〜第9日目まで毎日、用量75μgとして注射した。マウスは全て、第18日目に屠殺し、腫瘍を定量するため肺を採取した。各肺葉の全表面にある、直径が0.5 mmより大きな腫瘍増殖巣を計測した。マウスIL-21で処置したマウスの両群では、肺に存在する腫瘍巣の平均数が、媒体で処置したマウスに比べて、著しく減少していた。より頻繁に(すなわち、毎日)処置したマウスは、1日おきに処置したマウスよりも腫瘍巣がいっそう少なかったが、これは、これら2群の間で統計学的に有意な所見ではなかった。
これらの結果から、マウスIL-21による処置が、B16メラノーマ(黒色腫)腫瘍の増殖を減速させるかまたは腫瘍細胞を破壊する免疫系の能力を促進させることが示唆された。腫瘍細胞に対する処置の効果は、例えば、IL-21受容体およびzalpha11/IL-2Rγ(国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/7717号)のような、IL-21に対する受容体を実際に持ち、抗腫瘍活性と関連性があることが知られている、免疫系の細胞(すなわち、リンパ球、NK細胞)により媒介された可能性が高かった。
B. インビボにおけるEG.7胸腺腫増殖に対するマウスIL-21の効果
マウス(雌、C57Bl6、9週齢; Charles River Labs, Kingston, NY)を3群に分けた。第0日目に、EG.7細胞(ATCC番号CRL-2113)を培養から収集し、細胞1,000,000個を全てのマウスに腹腔内注射した。次いで、マウスを試験物質または関連する媒体で、適応する溶液0.1 mLを腹腔内注射することにより処置した。第一群(n = 6)のマウスは、媒体(PBS pH 6.0)で処置し、この媒体を第0、2、4、および6日目に注射した。第二群(n = 6)のマウスは、マウスIL-21(米国特許第6,307,024号)で処置し、これを第0、2、4、および6日目に用量10μgとして注射した。第三群のマウス(n = 6)は、マウスIL-21で処置し、これを第0、2、4、および6日目に用量75μgとして注射した。マウスIL-21で処置したマウスの両群では、生存時間が、媒体で処置したマウスに比べて著しく増加していた。75μg用量のIL-21で処置した群は、10μg用量で処置した群よりも著しく生存率が高く、この群の33%(マウス2/6)が70日よりも長く生存した。この試験の補足部分として、第12日目まで行った同一用量の効果を試験した。この結果は、どちらの用量でも媒体処置と比べて生存率が著しく増加しており、短い投薬スケジュールと非常に類似していた、そして最高用量により最良の応答(70日後の生存率50%)が得られた。
ある実験では、約4,000,000個のOT-I T細胞を第0日の前日に、マウスに腹腔内注射した。次いで、マウスをIL-21または媒体で上記のように処置した。OT-I T細胞の存在が、媒体処置マウスの生存時間に影響を及ぼすことはなかった。IL-21で処置したマウスの場合、OT-I T細胞の存在により、IL-21単独で処置したマウスに比べて生存時間が亢進された。
これらの結果から、マウスIL-21による処置が、EG.7腫瘍の増殖を減速させるかまたは腫瘍細胞を破壊する免疫系の能力を促進させることが示唆された。IL-21処置のある場合にOT-I T細胞により与えられる生存率の増加から、IL-21が免疫系のエフェクター細胞を活性化していることが示唆される。
実施例17 血清サイトカインおよび血管漏出に対するIL-21の効果
A. 血清サイトカインに対するIL-21の解析
IL-2療法は、ある種のガンの治療に効果的である。しかしながら、治療薬としてのIL-2の使用は、その毒性作用、すなわち血管漏出症候群(VLS)により限定されている。IL-2誘発性VLSは、最終的には血管漏出に至る、肺の内皮損傷を引き起こすリンパ球、単球および好中球の肺への浸潤により特徴付けられる(Lentsch ABら、Cancer Immunol. Immunother., 47:243, 1999に概説されている)。VLSをマウスに、繰り返し高用量のIL-2を投与することと肺により取り込まれたエバンスブルーによる血管漏出を測定することにより誘発させることができる。マウスVLSの特徴であることが示されている他のパラメータには、TNFαおよびIFNγの血中濃度の増加(Anderson JAら、J. Clin. Invest. 97:1952, 1996)ならびに種々の臓器における活性化したT細胞、NK細胞および単球の数の増加が含まれる。可溶性TNFR-Fc分子でTNFαをブロックすることで、リンパ球による肺の浸潤および従って肺の損傷が阻害された(Dubinett SMら、Cell. Immunol. 157:170, 1994)。マウスでVLSを誘発するIL-2およびIL-21の能力を比較することとVLSを示す種々のパラメータ(エバンスブルーの取り込み、血清サイトカイン解析、脾臓細胞の表現型)を測定することを目的とした。
マウス(雌、C57Bl6、11週齢; Charles River Labs, Kingston, NY)を5群に分けた。全群には、マウス10匹/群が含まれた。群は、次の通りとした: 群Iまたは媒体群には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が投与された; 群IIおよびIIIには、それぞれIL-2 0.6または1.8×106IU/注射が投与された; 群IVおよびVには、それぞれマウスIL-21(米国特許第6,307,024号) または100μg/注射が投与された。試験は4日で構成され、体重を毎日測定し、動物は4日間にわたって試験物質の腹腔内注射を7回受けた。動物は、第1〜3日目には毎日2回注射を受け、第4日目には午前に1回注射を受けた。最後の注射から2時間後、動物は1%エバンスブルー(0.2 ml)の尾静脈注射を受けた。エバンスブルー注射から2時間後、マウスをイソフルレンで麻酔し、採血し、血清サイトカイン解析用とした。採血後、動物にヘパリン添加生理食塩水(25 U ヘパリン/ml生理食塩水)を経心腔的に潅流させた。潅流後、脾臓を取り出して重さを量り、肝臓および肺を取り出し、ホルムアミド10 mlの中に入れて、室温で24時間インキュベートした。24時間のインキュベーション後、血管漏出を、分光光度計を用いて650 nmでの上清の吸光度を測定することによる、エバンスブルーの漏出から定量化した。
マウスから採血し、標準的な血清分離管を用いて血清を分離した。各動物から得た血清25μlをBecton Dickenson (BD) Cytokine Bead Array (マウスTh1/Th2 CBAキット)測定で使用した。測定は製造元の手順書に従って行った。簡単に言えば、血清25μlをビーズミックス(IL-2、IL-4、IL-5、TNFαおよびIFNγ) 25μlおよびPE-検出試薬25μlと暗所中、室温で2時間インキュベートした。0〜5000 pg/mlに及ぶ希釈率の一連のサイトカイン標準液も同様に、製造元の使用説明書に従ってビーズと反応させた。インキュベートしたビーズを洗浄用緩衝液で1回洗浄し、データを、キットに概説されている指示に従ってBD FACScanにより得た。このデータをBD Cytometric Bead Arrayソフトウェア(BD Biosciences, San Diego, CA)を用いて解析した。
CBAサイトカインキット(Becton Dickenson, San Diego, CA)を用いた血清サイトカイン解析から、PBS対照による処置群ではIL-2、IL-4、IL-5、IFNγまたはTNFαの濃度の増加は示されなかった。IL-2処置マウスから得た血清では、IL-5、IFNγおよびTNFαの濃度が用量依存的に増加していた。IL-21で処理したマウスの血清では、測定した5種類のサイトカインの濃度は増加していなかった。最高用量のIL-21でのサイトカイン濃度は、PBS処置マウスのものに酷似していた。このことから、炎症性サイトカインIL-5、TNFαおよびIFNγの血清濃度の増加をもたらすIL-2処置とは異なり、IL-21による処置では、これらの炎症性サイトカインに全く影響を与えないことが示される。
代表的な実験の結果を表6に示す。濃度は全てpg/mlで表されており、動物4匹/群の平均値とした。
上の表5に示されるように、IL-2を用いたマウスの処置により、血清における炎症性サイトカイン、すなわちIL-5、IFNγおよびTNFαの劇的な増加が引き起こされた。IL-21を用いたマウスの処置では、PBS処置マウスを超えるサイトカイン濃度の増加は示されなかった。これらの結果から、最高用量でさえ、IL-21により炎症性サイトカインが亢進されないこと、およびインビボの細胞に対するその効果がIL-2とは異なることが示される。
繰り返し高用量のIL-2でマウスを処置することにより、IL-5、IFNγおよびTNFαの血清濃度の増加が引き起こされた。これらの炎症性サイトカインは、IL-2の毒性と関連したVLSに関与することが示されている。TNFαをブロックすることで、肺へのリンパ球浸潤の減少およびIL-2の毒性と関連した肺損傷の減少が引き起こされた(Dubinett SMら、1994, Cell. Immunol. 157:170)。IL-21による処置では、IL-5、TNFαまたはIFNγの血清濃度に全く影響を与えなかった。このことから、IL-21はインビボでIL-2とは異なって作用することやIL-21処置マウスの血清中の炎症性サイトカインがないのは、IL-2と比べてIL-21の毒性がいっそう低いことを示している可能性があることが示唆される。
B. 血管漏出に対するIL-21の解析-脾細胞の免疫表現型検査
IL-2誘発性の血管漏出症候群(VLS)には、後毛細血管内皮細胞のレベルで起こる臓器損傷が含まれる。しかしながら、この損傷は、二つの異なる病理学的過程、すなわちVLSの発生と、リンパ球の経内皮移動のために二次的に生じる。急性の臓器損傷は、好中球浸潤により媒介される一方で、慢性の臓器損傷は、単球およびリンパ球の浸潤により媒介される(Lentsch ABら、前掲に概説されている)。マウスでは、LAKまたはNK細胞の(細胞)表面表現型の特徴を有する細胞を枯渇させることで、臓器損傷が改善される(Anderson TDら、Lab. Invest. 59:598, 1988; Gately, MKら、J. Immunol., 141:189, 1988)。従って、NK細胞および単球の数の増加は、VLSのIL-2媒介性細胞作用に対する指標となる。さらに、IL-2は、リンパ球および単球に対して接着分子(すなわち、LFA-1、VLA-4およびICAM-1)の発現を直接亢進させる(Anderson JAら、前掲)。この増加により、活性化された内皮細胞に細胞が結合可能となることや組織への細胞の移動が補助されることが考えられる。これらの分子の発現増加は、VLSの間、IL-2により誘発される細胞活性化の別の指標であると考えられる。この試験の目的は、IL-2およびIL-21処置マウスから得た脾細胞をVLSプロトコルに基づいて試験することと、二つのサイトカインがVLSと関連した細胞効果を媒介するその効果を比較することであった。
年齢および性別をマッチングしたC57BL/6マウスの群を処置し、上記(実施例17A)のように解析した。第4日目に、マウスを屠殺し、脾細胞集団の表現型を標準的なフローサイトメトリー法により試験した。脾臓の重量および細胞性は、PBS処置マウスと比べてIL-2処置マウスで劇的に増加した。IL-21処置マウスでは、脾臓の重量がわずかに増加した(最高用量で)が、PBS処置群と比べて脾臓の細胞性は有意に増加していなかった。細胞集団の解析により、IL-2処置マウスではNK、NKTおよび単球の割合および数の著しい増加が示されたが、IL-21処置マウスでは示されなかった。さらに、PBS対照と比べてIL-2処置群では、LFA-1を発現している細胞が用量依存的に劇的に増加していた。IL-21処置では、脾細胞のLFA-1発現に影響はなかった。
脾臓を各種の群のマウスから単離した。細胞をACK細胞溶解緩衝液(0.15 M NH4Cl、1 mM KHCO3、O.1 mM EDTA)の中で4分間インキュベートすることにより赤血球を溶解させ、続けてRPMI-10培地(10% FBSを添加したRPMI)に入れて中和した。細胞表面マーカーの発現は、標準的な3色フローサイトメトリーにより解析した。抗体は全てBD Pharmingen (San Diego, CA)から入手した。フルオレセイン-イソチオシアネート(FTTC)結合CD11a (LFA-1)、CD49d (VLA-4、a鎖)、Gr-I FITC、フィコエリスリン(PE)結合CD4、NK1.1、CD11bならびにCyC-結合CD8、CD3およびB220を使用して、細胞を染色した。細胞1〜3×106個をそれぞれの染色に使用した。非特異結合は、細胞をブロッキング緩衝液(PBS、10% FBS、20μg/ml 2.4G2)の中でインキュベートすることによりブロックした。ブロッキング後、細胞を一次抗体と20分間インキュベートした。特別の定めのない限り、モノクローナル抗体(mAb)は全て、容量100μlで1μg/染色として使用した。細胞を1×PBSで1回洗浄し、FACScanまたはFACSCalibur装置 (BD Biosciences, San Diego, CA)を用いて捕捉される前にPBSに再懸濁させた。データは、Cellquestソフトウェア (BD Biosciences)を用いて解析した。
IL-2処置マウスは、PBS処置群と比べて脾臓の重量が著しく増加していた(下記、表7)。IL-21処置マウスは、対照と比べて脾臓の重量が著しく増加していた。しかしながら、IL-21処置群における増加は、IL-2処置群におけるよりも有意に低かった(p=0.0002)。両群における脾臓重量の増加は、用量依存的であった。下記の表7は処置群を示す; 平均脾臓重量をmgで示し、n=4である。
脾臓の細胞性の平均データは、下記の表8(n=4)に示されている。より高用量のIL-2処置では、対照のPBS処置群と比べて脾臓の細胞性が著しく増加した。IL-21処置群では、PBS群と比べて脾臓の細胞性の有意な増加は示されなかった。
IL-2誘発性VLSは、NK細胞、単球および接着マーカーLFA-1(Lentsch ABら、前掲に概説されている)を発現している細胞の数の増加により特徴付けられる。IL-2による上記データは、NK細胞、単球およびLFA-1+細胞の増加に関する公開報告を再現している。IL-2処置マウスは、対照と比べてVLSの全兆候を示している。対照的に、IL-21処置マウスは、エバンスブルーの取り込みは増加していたが、血清の炎症性サイトカインの増加、またはLFA-1+細胞もしくはNK細胞の増加を示していない。さらに、IL-21処置マウスは、単球数の増加を実際に示すが、その増加はIL-2処置マウスで見られるものよりも低いことから、IL-2媒介性の作用は、IL-21媒介性の作用よりも激しいことが示唆される。脾臓の細胞性データおよび血清サイトカインデータを合わせて考えると、IL-21により、IL-2と同程度の炎症応答が引き起こされることはない。解析したパラメータは全て、IL-21は、IL-2と同様の用量(重量/重量)としてVLSプロトコルで投与した場合、たとえあったとしても軽微な炎症応答を引き起こすにすぎないことを示唆しているものと思われる。
さらに、下記の表9および表10に示されるように、マウスから得た脾細胞のフローサイトメトリー解析により、IL-2処置マウスでは、脾臓のNK/T細胞 (NK1.1+CD3+)、NK細胞 (NK1.1+CD3-)、マクロファージ(CD11b+)およびLFA-1+細胞(表IIIおよびIV)の割合(%)および数が用量依存的に増加していることが明らかとなった。IL-21処置マウスでは、NK/T細胞、NK細胞またはLFA-1+細胞は増加していなかった。IL-21処置群では、対照のPBS処置群と比べてマクロファージおよび顆粒球の割合(%)および数が増加していた(データは示していない)。この増加は、IL-2処置マウスにおける増加と類似であるかまたはそれよりも低かった。
(表9) 脾臓における系列細胞の平均割合(%) (n=4)
さらに、追加として終点を群間で測定した。ここでは以下の終点を比較した: 体重、脾臓重量、肺および肝臓における血管漏出、ならびに血清サイトカイン。体重の有意な相違は、群間で観測されなかった。上述のように、群IIおよびIIIの、両用量のIL-2で処置した動物では、IL-21および対照で処置した動物と比べて有意(p<.0001)に脾臓重量がさらに重くなっていた。群IVおよびVの、両用量のIL-21で処置した動物では、PBS対照動物と比べて有意(p<.007(群IV)およびp<.0001(群V))に脾臓重量がさらに重くなっていた。
血管漏出を同様に、肺および肝臓の両方で測定した。肺の場合、IL-2処置動物の両群、すなわち群IIおよびIIIでは、PBS対照動物と比べて血管漏出が有意(p<.0001)に増加していた。高用量のIL-2の、群IIIだけが、低用量および高用量のIL-21の両方と比べて血管漏出が有意(それぞれp<.0001およびp<.0065)に増加していた。最高用量のIL-21の、群Vだけが、PBS処置動物と比べて血管漏出が有意(p<.0001)に増加していた。しかしながら、血管漏出の量は、全てのIL-2処置動物よりも有意に低かった。肝臓の場合、低用量および高用量のIL-2処置動物の両方がPBS処置動物と比べて血管漏出が有意(それぞれp<.0016およびp<.0001)に増加していた。高用量のIL-2で処置した動物は、低用量および高用量のIL-21で処置した動物の両方と比べて血管漏出が有意(それぞれp<.0002およびp<.0001)に増加していた。低用量のIL-21で処置した動物だけが、PBS処置動物と比べて血管漏出が有意(p<.0397)に増加していた。
実施例18 IL-21受容体の発現のフローサイトメトリー解析
非ホジキンリンパ腫(NHL)の標本から得た新生物(腫瘍性)B細胞のIL-21受容体の発現を評価した。新生物(腫瘍性)B細胞を同定するためおよびIL-21受容体を共局在させるため、複数のモノクローナル抗体(MAb)を使用した(国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/77171号)。抗IL-21R MAbによるまたはビオチン-IL-21による免疫蛍光染色を平均ピーク蛍光として記録した。アイソタイプを適合させた対照MAbに対する平均ピーク蛍光のシフトを基に、定性的スコアを評価した。
抗IL-21受容体MAbまたはビオチン-IL-21(米国特許第6,307,024号)のどちらかを用いて、本発明者らは、リンパ節由来の濾胞性リンパ腫(FL)の標本にIL-21受容体を一貫して検出した。しかしながら、慢性リンパ性白血病(CLL)患者由来の標本ではほとんど全て、IL-21受容体に対して有意な染色が示されなかったか、または陰性対照のMAbと比べて非常に低い強度の染色が示されただけであった。抗IL-21受容体MAbおよびビオチン-IL-21による染色は、よく相関しており、適度な染色の濾胞性リンパ腫を検出した。これらのデータから、IL-21受容体が、濾胞性リンパ腫の治療標的となることが示唆された。
実施例19 マウスIL-21処置による同種反応性マウスCTLの活性(細胞傷害性試験)
A. CTL試験
CTL(細胞傷害性Tリンパ球)媒介性の標的細胞溶解を標準的な51Cr放出測定により調べた。同種反応性(抗H-2dのH-2b)CTLは、3000 radを照射したBalb/c脾細胞(H-2d)とC57Bl/6脾細胞(H-2b)との混合リンパ球培養で創出した。7日後、照射したBalb/c脾細胞(および追加サイトカインなし)でCTLを再刺激した。さらに7日後、CTLをConA活性化ラット脾細胞(CTLの増殖を補助することが知られているサイトカインの供給源)から集めた上清、10 ng/ml組み換えマウスIL-2(R & D Systems社、Minneapolis, MN)、組み換えヒトIL-15(R & D Systems)、IL-21、またはIL-15とIL-21 (各5 ng/ml)との組み合わせの存在下で5日間、再刺激した。5日後、CTLを、51Cr標識標的細胞(陰性対照としてH-2d P815肥満細胞腫細胞(ATCC番号TIB-64)およびH-2b胸腺腫EL4 (ATCC番号TIB-39))を溶解するその能力について試験した。
本発明者らは、RP10培地(標準的なRPMI 1640 (Gibco/BRL, Grand Island, NY)に10% FBS (Hyclone)を添加した)ならびに4 mMグルタミン (Gibco/BRL)、100 I.U./mlペニシリン+100 MCG/mlストレプトマイシン (Gibco/BRL)、50μM β-メルカプトエタノール (Gibco/BRL)および10 mM HEPES緩衝液 (Gibco/BRL)の中で、P815およびEL4細胞を増殖させた。試験日に、標的細胞1〜2×106個を収集し、RP10培地に細胞2.5〜5×106個/mlで再懸濁させた。 本発明者らは、5 mCi/ml 51Cr-クロム酸ナトリウム(NEN, Boston, MA) 50〜100μlを細胞に直接添加し、これらを37℃で1時間インキュベートし、次いでPBS 12 mlで2回洗浄し、これらをRP10培地2 mlに再懸濁させた。細胞を血球計にて計数した後、標的細胞を細胞0.5〜1×105個/mlまで希釈し、100μl (細胞0.5〜1×104個)をエフェクター細胞と、エフェクター細胞:標的細胞をさまざまな比率として混合した。37℃で4時間、エフェクター細胞と標識標的細胞とを共にインキュベーション後、各ウェルから上清の半分を集めて、ガンマ線計測器のなかで1分間/試料としてカウントした。51Crの特異的放出の割合は、式 100×(X-Y)/(Z-Y)から計算した。式中、Xはエフェクター細胞の存在下での51Cr放出量であり、Yはエフェクター細胞の非存在下での自発的放出量であり、Zは0.5% Triton X-100とインキュベートした標的細胞からの51Cr全放出量である。データは、各ウェルにおける特異的溶解% 対 エフェクター細胞-対-標的細胞比率としてプロットした。
rmIL-2の存在下で再刺激したCTLは、P815標的細胞に対して最も高い細胞溶解活性を示し、エフェクター細胞-対-標的細胞比率が33:1で70%を超える(>70%)特異的な細胞溶解を達成した。次に最も活性なCTLは、IL-21+rhIL-15の存在下で再刺激したもの(特異的な細胞溶解62%)であり、続いてrhIL-15と培養したCTL(細胞溶解およそ50%)、IL-21単独と培養したCTL(細胞溶解30%)、およびラットconA上清で再刺激したCTL(細胞溶解およそ10%)であった。どのCTLもH-2b EL4細胞を溶解させなかった(CTLは全て、最も高いエフェクター細胞-対-標的細胞比率33:1でさえも、EL4標的を2%未満しか溶解させなかった)。サイトカインによる細胞溶解のこの促進パターン(IL-2>IL-21+IL-15>IL-15>IL-21>conA SN)は、2回の反復実験でも当てはまった。これらのデータから、IL-21は、特にIL-15との組み合わせで、CTLのエフェクター機能を促進できることが実証される。
実施例20 IL-21ノックアウト(KO)マウスにおける遅延型過敏症
IL-21は、T細胞により産生されるサイトカインであり、T細胞の増殖および機能に関与することが示されている。遅延型過敏症(DTH)は、特異抗原に対するCD4ヘルパーT細胞の尺度となる。この場合、マウスを特定のタンパク質(例えば、ニワトリ・オボアルブミン、OVA)で免疫し、その後、マウスの耳を同一抗原で攻撃する。攻撃後の耳の肥厚増加は、主にCD4 T細胞により媒介される、抗原に対する特異的免疫応答の尺度となる。IL-21のインビボ機能を理解するため、IL-21タンパク質の欠損マウス(IL-21 KOマウス)を遺伝子工学で作製した。IL-21がT細胞応答にとって重要であるならば、IL-21 KOマウスは、T細胞応答に欠陥があると予測されるはずである。これを調べる一つの方法は、IL-21 KOマウスにDTH反応を誘発させることである。IL-21 KOマウスおよび対照の同腹子を、アジュバントCFA(フロイント完全アジュバント)と混合したOVAで免疫した。次いで、各群のマウスの耳にPBS(対照)またはOVAを再攻撃した。対照マウスは、OVAを注入した場合、攻撃から24時間後の耳の肥厚増加から明らかなように十分なDTHを発現した。対照的に、IL-21 KOマウスは、対照と比べて耳の肥厚の程度が低かった。この相違は統計学的に有意であった(p=0.0164)。しかしながら、攻撃から48時間後、野生型マウスまたはIL-21 KOマウスの応答に相違は認められなかった。予測されたように、対照マウスもIL-21 KOマウスもPBSに応答しなかった(耳の肥厚の変化がなかった)。
IL-21 KOマウス(n=8)および対照の野生型同腹子(n=8)の背中に、CFAに乳化させたニワトリ・オボアルブミン(OVA) 100μgを総容量200μlとして免疫した。免疫から7日後、各群の半分のマウス(n=4/群)の耳にPBS 10μlを注入し、残りの半分には、容量10μlとしてPBSに溶解させたOVA 10μgを注入した。マウスの耳に注入する前に、全てのマウスの耳の肥厚を測定した(0時間の測定値)。耳の肥厚を攻撃から24時間および48時間後に測定した。0時間の測定値と24時間または48時間の測定値との間の耳の肥厚の相違を計算した。
攻撃から24時間後、PBSで再攻撃した対照マウスまたはIL-21 KOマウスでは、耳の肥厚のわずかな変化がまたは変化のないことが示された。OVA再攻撃に応答して、対照マウスの耳には、著しい炎症が示された(7.3±1.1×10-3インチ(in))。対照的に、IL-21 KOマウスでは、対照と比べて耳の肥厚の減少が示された(5±0.42×10-3インチ(in))。この相違は統計学的に有意であった(p=0.0164)。このことから、IL-21は実際に、CD4 T細胞の応答に重要な役割を果たしていることが示唆される。しかしながら、攻撃から48時間後には、IL-21 KOマウスの応答は対照と異ならなかったことから、IL-21はこの段階での応答には影響を与えないことが示唆される。DTH反応におけるおよびT細胞応答におけるIL-21の役割を評価するため、さらなる実験が進行中である。
この結果から、IL-21はCD4 T細胞の応答に重要な役割を果たしていることが示唆される。CD4 T細胞の応答は、微生物および腫瘍に対する免疫を促進させるようなプラスのかたちで、自己免疫および炎症の場合にはマイナスのかたちで、免疫に大きく貢献している。上記の結果に基づくと、IL-21の使用により、CD4 T細胞の応答が促進されると考えられる。
実施例21 IL-21はマウス樹状細胞により提示されるようなOVAペプチドに対するOT-I T細胞の応答を変化させる
A. OT-I T細胞の単離および標識
H-2KbのOVA257-264に特異的な遺伝子組み換えT細胞受容体を持つマウスを利用することができる(OT-I形質転換動物、Jackson Laboratories)。これらの動物から得たリンパ節の細胞は、接着性が失われていた。CD8 T細胞(OT-I T細胞)は、CD8 Cellectカラム (Cedarlane Laboratories, Hornby, Ontario, Canada)を用いたネガティブ選択により濃縮した。CD8 T細胞の純度は、フローサイトメトリー法により評価した。その純度はCD4 T細胞が1%未満(<1%)になり、大体90〜95%であった。
OT-I T細胞のカルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシニミジルエステル(CFSE; Molecular Probes, Eugene, OR)による標識は、5μM CFSEを含有する増殖培地 (10% FCS (JRH, Lenexa KS; Hyclone, Logan UT)、2 mM グルタミン (Gibco BRL)、50 U/ml ペニシリン (Gibco BRL)、50μg/mlストレプトマイシン (Gibco BRL, Grand Island, NY)および50μM 2-メルカプトエタノール (Sigma, St Louis, MO)を添加したRPMI-1640培地を含む)の中に、室温で5分間、この細胞を入れることで行った。次いで、細胞を3回、各回5% FBSを含有するPBSに再懸濁させ、300' gにて、20℃で5分間遠心し、上清を除去することにより、洗浄した。使用する前に、細胞を増殖培地に再懸濁させた。
B. マウス樹状細胞の調製
マウス骨髄から得た骨髄由来樹状細胞(DC)は、周知の方法(例えば、Inaba, K.ら、J. Exp. Med. 176:1693〜1702, 1992)を利用して、GM-CSFの存在下、増殖培地の中で培養した。培養の6日後、これらの細胞を1μg/ml LPS (Sigma, St Louis, MO)で一晩刺激し、その後、使用する前に増殖培地で洗浄した。
C. T細胞のインビトロ刺激
上記のように調製したDCに、10 nm OVA257-264ペプチド (配列番号:17)を2時間パルスした。パルスしたDCを増殖培地で洗浄して、すべての未結合ペプチドを除去した後、上記のように調製した精製OT-I T細胞とともに、培地のみまたは20 ng/mlマウス rIL-2 (R & D Systems, Minneapolis, MN)もしくは50 ng/mlマウスIL-21 (米国特許第6,307,024号)の存在下で培養した。インキュベーションから48時間または72時間後、細胞を収集し、製造元の使用説明書に従ってCFSEの蛍光とアネキシンV (Pharmingen, San Diego, CA)の結合のレベルを目的としてフローサイトメトリー法により解析した。
その結果、特異抗原をDC細胞上でOT-I T細胞に提示すると、CFSE標識化から明らかなように、OT-I T細胞は、第2日目までに3〜5周期の細胞***を起こし、第3日目までに5〜7周期の細胞***を起こすことが示された。IL-2が存在する場合、その増殖は、第2日目までにOT-I T細胞が5〜6周期進み、第3日目までに、7〜9周期進むように増加する。T細胞をIL-2で処理すると、アネキシンVの結合により明らかなように、細胞は第3日目にアポトーシスを起こしていた。IL-2とは対照的に、IL-21により、T細胞の増殖が増加し、第3日目までアネキシンVの標識化が阻止される。IL-21は、IL-2を添加した場合でさえ、増殖を促進させ、アポトーシスを阻止し続ける。
IL-21は、マウスCTL細胞の増殖の促進もアポトーシスの減少もさせる。この活性から、CTLが関与する可能性のある、ガンまたはウイルス疾患のような病態において免疫をプラスに活性化するIL-21の役割が示唆される。
実施例22 EG.7胸腺腫の増殖に対するマウスIL-21のインビボ効果: IL-21はCTLによる抗腫瘍活性のEF7モデルにおいてOT-I T細胞の応答を変化させる
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、ウイルス抗原および腫瘍抗原が細胞表面に提示されることで感染細胞および悪性転換細胞を認識する。効果的な抗腫瘍反応には、抗原特異的なCTLクローンの刺激および増殖が必要とされる。この過程には、CTLに加えていくつかの細胞型の相互作用が必要とされ、結果的に免疫記憶の樹立にいたることが多い。EG-7腫瘍細胞系にニワトリ・オボアルブミンを形質導入し、これにより、十分に特徴付けられているT細胞抗原、すなわちH-2Kbに提示されるovaペプチド(配列番号:17)を発現させる。OT-I T細胞(実施例21)が、インビトロでおよびインビボでEG7腫瘍細胞を死滅させる(Shrikant, PおよびMescher, M,. J. Immunology 162:2858〜2866, 1999)。
マウス(雌、C57Bl6、9週齢; Charles River Labs, Kingston, NY)を3群に分けた。第0日目に、EG.7細胞(ATCC番号CRL-2113)を培養から収集し、細胞1,000,000個を全てのマウスに腹腔内注射した。次いで、マウスを試験物質または関連する媒体で、適応する溶液0.1 mlを腹腔内注射することにより処置した。第一群(n = 6)のマウスは、媒体(PBS pH 6.0)で処置し、この媒体を第0、2、4、および6日目に注射した。第二群(n = 6)のマウスは、マウスIL-21で処置し、これを第0、2、4、および6日目に用量10μgとして注射した。第三群のマウス(n = 6)は、マウスIL-21で処置し、これを第0、2、4、および6日目に用量75μgとして注射した。マウスIL-21で処置したマウスの両群では、生存時間が、媒体で処置したマウスに比べて、著しく増加していた。75μg用量のIL-21で処置した群は、10μg用量で処置した群よりも著しく生存率が高く、この群の33%(マウス2/6)が70日よりも長く生存した。この試験の補足部分として、第12日目まで行った同一用量の効果を試験した。この結果は、どちらの用量でも媒体処置と比べて生存率が著しく増加しており、短い投薬スケジュールと非常に類似していた、そして最高用量により最良の応答(70日後の生存率50%)が得られた。
ある実験では、4,000,000個のOT-I T細胞を第0日の前日に、マウスに腹腔内注射した。次いで、マウスをIL-21または媒体で上記のように処置した。処置後のさまざまな時間で、OT-I T細胞を腹腔から回収し、数を数えた。OT-I T細胞の存在が、媒体処置マウスの生存時間に影響を及ぼすことはなかった。IL-21処置により、腹腔から回収できたOT-I T細胞の数が結果的に10倍増加した。IL-21で処置したマウスの場合、OT-I T細胞の存在により、IL-21単独で処置したマウスに比べて生存時間が亢進された。
外来的に加える腫瘍特異的T細胞が有るまたは無いIL-21処置により与えられる生存率の増加から、IL-21が免疫系の外来性エフェクター細胞を活性化していることが示唆される。腹腔からのOT-I T細胞の回収の増加から、IL-21が腫瘍特異的T細胞の数を腫瘍部位で増加させていることが示される。
インビトロでT細胞の生存率を高めるIL-21の能力により予測されたように、これらの結果から、IL-21による処置により、インビボで腫瘍細胞を破壊する免疫系の能力が促進されたことが示唆される。インビボにおけるこれらの結果から、疾患に対抗するうえでCTLが関与する可能性のある、ガンまたはウイルス疾患のような、関連する病態において免疫をプラスに活性化するIL-21の役割が示される。
実施例23 IL-21はNKによる抗腫瘍活性のRMA-RAE1モデルにおいて腫瘍組織量を減少させる
ナチュラルキラー細胞は、ある種のウイルス感染および腫瘍に対する防御の最前線としての機能を果たす。効果的なNK細胞の活性には、標的に対する事前暴露は必要とされず、その細胞が標的の免疫記憶を維持するとも考えられない。従って、NK細胞は、標的細胞の表面にある一連の分子により、細胞が悪性転換していないか、感染していないか、または別の方法で「ストレスを加えられて」いないかを「感知する」。RAE-1は、「ストレスを加えられた」細胞の表面に発現するタンパク質であり、このタンパク質がNK細胞の表面にある受容体の活性化と特異的に連動して、結果的に「ストレスを加えられた」細胞の溶解が引き起こされる。RMA腫瘍細胞系にRAE-1を形質導入することで、その細胞がインビトロでもインビボでもNK細胞による溶解を受けやすくなる。
RMAリンパ腫細胞系 (Dr. L. LanierおよびDr. Jay Ryan, UCSF, San Francisco, CAより提供していただいた)は、10% FCS (JRH, Lenexa KS; Hyclone, Logan UT)、2 mM グルタミン (Gibco BRL)、50 U/ml ペニシリン (Gibco BRL)、50μg/mlストレプトマイシン (Gibco BRL, Grand Island, NY)および50μM 2-メルカプトエタノール (Sigma, St Louis, MO)を添加したRPMI-1640培地の中で増殖させた。RMA-RAE-1δの安定的な形質転換体または擬似的に形質導入したRMA細胞をエレクトロポレーションにより樹立した: プラスミドRAE-1δ-pCDEF3 (RAE-1δ形質転換体)、またはプラスミドpCDEF3 (擬似的な形質転換体) 30μgを、それぞれ4 mm径キュベット(BioRad, Richmond, CA)に入れたRPMI-1640培地中の細胞約1×107個に加えた。pCDEF3ベクターは、Dr. Art Weiss (UCSF, San Francisco California)により親切にも提供していただいた。エレクトロポレーションは、BioRad gene pulser (250 V, 960μF)を用いて行った。エレクトロポレーションから48時間後、RMA-RAE-1δおよび擬似による形質導入細胞を、1 mg/ml G418 (GIBCO BRL)を添加したRPMI-1640完全培地の中で培養した。
1実験当たり6匹またはそれ以上の動物からなる群に、擬似的に形質導入した細胞またはRMA-RAE-1δで形質導入した細胞を腹腔内に注入した。注入された腫瘍細胞の数を滴定する予備実験から、RMA細胞1×104個およびRMA-RAE-1δ細胞1×105個により、動物の100%で腫瘍形成およびその後、発病につながることが示唆された。RMA親細胞の致死用量(約1×104個)に相当する数のRMA-RAE1δ細胞をマウスの腹腔内に接種(IP)すると、T細胞の関与または免疫記憶の樹立なしに腫瘍が完全に拒絶される結果となる。10倍過剰のRMA-RAE1δ細胞をマウスにIP接種すると、おそらくNK細胞が腫瘍を拒絶する受容能力を「圧倒する」ことで、結果的にマウスの死亡に至る(Cerwenkaら、Proc. Nat. Acad. Sci. 98:11521〜11526, 2001)。サイトカインの効果を実験するため、マウスIL-21または対照媒体 10μgのIP注射を6回、マウスに一日おきに第-4、-2、0、2、4および6日目に行った。マウスは全て、腹部の腫れにより示される、腫瘍腹水の発生を毎日監視し、腫瘍組織量が痛み(pain)および苦痛(suffering)を回避する限界を超えるほど過剰になった時点で屠殺した。動物は、8週よりも長く生存していた場合に、腫瘍なしと見なされた。再攻撃実験の場合、生存していた動物に8週後、RMA擬処置細胞1×104個を接種した。
少量のマウスIL-21を投与することで、10倍過剰数のRAE1を持つ腫瘍細胞を投与されたマウスの生存率が促進されるに至った。IL-21処置マウスの一部は、完全に腫瘍なしとなった。IL-21処置により、RMA親細胞系を投与したマウスの生存率には影響が及ばなかったことから、その効果はNK細胞により特異的に媒介されていることが示唆された。RAE1、および従ってNK細胞が、IL-21の効果に必要とされると思われた。さらに、IL-21処置により、致死的なRMA-RAE1腫瘍攻撃を切り抜けて生存したマウスは、RMA親細胞系を用いたその後の攻撃を拒むことができた。このことから、IL-21は同様に、これらのマウスに免疫記憶をもたらしたことが示された。NK細胞の活性を促進させるIL-21のこの能力から、IL-21は、腫瘍またはウイルス疾患を患う患者を治療するうえで治療上の効用を持ち得ることが示される。
実施例24 種々のヒト組織および細胞系におけるIL-21の免疫組織化学
本実験の目的は、免疫組織化学法により選択の組織でIL-21を検出できるかどうかを決定することであった。組織は、Techmate 500 (BioTek Solutions, Tucson, AZ)を用い、標準的な免疫組織化学法により処理した。簡単に言えば、パラフィン包埋組織の脱パラフィン切片を5%正常ヤギ血清のPBS溶液およびブロッキン剤 (Zymed Laboratories社、South San Francisco, CA, 試薬AおよびB (そのまま使用可能))で処理し、非特異的なバックグラウンドの染色を最小限にした。二種類の抗IL-21一次抗体 (E3149 (マウス>ヒトIL-21-CHO, HH4.9.1C2.1A6.1C8, PAS)またはE2865 (マウス>ヒトIL-21-CHO, HH4.3.1.2D1.1C12, PAS)、どちらも自家調製)のうちの一つを添加し、その後、ビオチン化ヤギ抗マウス抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を添加した。発色反応生成物は、ペルオキシダーゼ-3'3'-ジアミノベンジジン反応 (メチルグリーンによる対比染色を含むChemMateペルオキシダーゼ/DAB染色キット; CMS/Fisher, Houston, TX)により生み出した。スライドにカバースリップをのせ、それから光学顕微鏡(Nikon Eclipse E600, Nikon社, Tokyo, Japan)下で検鏡した。
以下の細胞および組織について調べた: ヒトIL-21を形質導入したBHK細胞(陽性対照)、BHK-570細胞、野生型(陰性対照)、ならびにヒト正常肺、慢性血管周囲炎を伴うヒト肺、ヒト正常リンパ節、B細胞リンパ腫を伴うヒトリンパ節、骨髄線維症を伴うヒト脾臓、およびヒト十二指腸。これらの組織は、契約に基づき、CHTN (Nashville, TN)またはNDRI (Philadelphia, PA)から入手した。マルチティッシュスライド上の正常ヒト組織(Biomeda, Hayward, CA)およびマルチティッシュスライド上のヒト異常/腫瘍組織(Biomeda, Hayward, CA)についても同様に調べた。
E3149抗体では、形質導入したBHK細胞でのみ陽性染色が得られた。E2865抗体では、極めて強い染色が、陽性対照細胞のほかに正常マルチティッシュブロック中の小腸の上皮組織にまばらに存在する正体未知の単核球で観察された。この試料が得られた小腸のなかの位置は不明である。この陽性の細胞型は、別個のヒト十二指腸の切片では稀(3切片中で1細胞)であった。
さらに、単核細胞の陽性集団が、骨髄線維症患者から得たヒト脾臓の全体にわたり散在的に分布していた。同様の染色パターンは、正常マルチヒトティッシュブロックの脾臓では認められなかった。マルチティッシュブロックの脾臓には多少の染色が認められたものの、その染色は、明らかに細胞と関連していなかった。さらに、炎症を起こした肺の切片には、胸膜下の空間のように見える部分に、染色された紡錘状細胞および単核細胞が含まれた(切片の大きさおよび品質から、位置の決定は困難とされた)。マルチティッシュブロックの下垂体中の散在性下垂体細胞に、陽性染色が観察された。アイソタイプ抗体により染色した下垂体は、陰性であった。マルチティッシュブロックの甲状腺の切片におよびマルチティッシュブロックの甲状腺腺ガンの切片に、膠質の染色が観察された。この意義は不明である-同基準標本の切片がたまに、染色されていた(しかし、抗IL-21抗体により染色された類似組織におけるよりも強度はずっと低かった)。甲状腺濾胞上皮に弱い染色が見られたが、その強度は、ほとんどバックグラウンドレベルであった。
マルチ腫瘍ブロックの未分化ガン腫における染色は、炎症細胞が混ざった壊死物質の中央部と関連付けられる-この染色の特異性は疑わしい。同様に、膵臓腺ガンにおける染色は、壊死物質または関連する炎症細胞と関連付けられる可能性がある。
上記の組織における染色位置から、IL-21が、腸粘膜免疫(腸上皮組織にまばらに存在する細胞)、炎症(肺、未分化ガン腫、膵臓腺ガンの炎症細胞と関連する)および骨髄線維症; 脾臓における髄外造血を引き起こす骨髄の線維化(これには同様に、IL-21にこの過程を調節させる試みとして、IL-21を産生する細胞系列を増殖させることが含まれる可能性があると思われる)に関与する可能性がある。これらの結果にともなう注意は、本発明者らが異なる抗体により異なる染色パターンを得ていることである。これは、二種類の抗体が異なるエピトープを認識することが原因である可能性がある。
実施例25 IL-21はPBMNC培養物においてIL-2で刺激したNK細胞の増殖をIL-4の存在下で促進させる
IL-4は、IL-2で刺激したNK細胞の増殖を阻害する。二つの実験で、ヒト末梢血単核球(PBMNC)を、0.5 ng/ml IL-4 (R & D Systems, Minneapolis, MN)有りまたは無し、および10 ng/ml IL-21 (米国特許第6,307,024号)有りまたは無しとし、10 ng/ml IL-2 (R & D Systems, Minneapolis, MN)を加えたα-MEM+10%自家血清の中に、細胞200,000個/ウェルで蒔いて、8日間増殖させた。生存細胞数/ウェルを標準的な方法により決定し、CD3、CD16、およびCD56の発現を目的として、この細胞をフローサイトメトリー法により解析した。NK細胞は、CD56陽性CD3陰性の集団と定義された。
IL-2のみ用いて培養した、二人の供血者からの培養物には、第8日目にそれぞれNK細胞が約151,000個および326,000個含まれた。IL-2およびIL-21を用いて培養した、二人の供血者からの培養物には、それぞれNK細胞が約446,000個および588,000個含まれた。IL-2およびIL-4を用いて培養した、二人の供血者からの培養物には、第8日目にそれぞれNK細胞が約26,000個および29,000個含まれた。しかしながら、IL-2、IL-4およびIL-21を用いて培養した、二人の供血者からの培養物には、NK細胞が約229,000個および361,000個含まれ、IL-2およびIL-4のみを用いた培養物に対してNK細胞の収率が8.8倍および12.5倍増加したことになる。
これらの結果から、IL-21はNK細胞の増殖を促進させること、およびIL-21はNK細胞の増殖に対するIL-4の阻害効果をおおむね克服できることが実証される。一部の疾患では、IL-4の発現が病変に関与する可能性がある。例えば、B16F10黒色腫を持つマウスは、宿主の抗腫瘍反応を制限すると思われる、多数のIL-4産生CD4+ T細胞を発生させる。さらに、STAT 6 (IL-4シグナル伝達に必要とされる)遺伝子欠損マウスでは、腫瘍拒絶能の促進が示される。インビボ抗腫瘍活性および本明細書に記載のデータに加えて、IL-4の作用に拮抗する、およびIFN-γの発現を誘発するIL-21の能力(本明細書に記載)から、IL-21は、疾患を制御する宿主の能力を制限するTh2応答が存在する、悪性腫瘍、感染症または自己免疫疾患を治療するうえで有用となる可能性が示唆される。
実施例26 IL-21はIL-2と協調して末梢血からのNK細胞の増殖を促進させる
健常ヒト供血者からの末梢血リンパ球は、標準的なFicoll遠心法により調製した。リンパ球は、Stem Cell TechnologiesのヒトNK細胞ネガティブ濃縮システムを利用して、本明細書に記載されているように磁気的にネガティブ濃縮した。NK細胞は、10%供血者血清、50μM BME、2 ng/ml flt3L、および0、0.5、10、または50 ng/ml IL-2を加え、0、5、または50 ng/ml IL-21有りもしくは無しとしたαMEM 2 ml/ウェルの中に、細胞約75,000個/mlの開始濃度として培養した。培養から15日後、細胞を収集し、数を数えて、フローサイトメトリー法によりCD3、CD56、およびCD161について解析した。培養から15日後に解析した細胞は全て、NK細胞と定義されるCD3-/CD56+であった。第0日に、細胞をフローサイトメトリー法により解析したところ、CD3-/CD56+が98%を超える(>98%)ことが分かった。
細胞数の「倍増加」は、最終の細胞数を開始の細胞数で割ったものと定義される。従って、1未満の任意数の「倍増加」は、細胞数の減少になる。おおむね、10 ng/ml IL-2での結果は、50 ng/ml IL-2で得られた結果と同様であり、5 ng/ml IL-21での結果は、50 ng/ml IL-21で得られた結果と同様であった。IL-2が存在しない場合、細胞総数の倍増加は、0.064であった。培養液に5 ng/ml IL-21が含まれた場合、倍増加は0.11であった。このことから、IL-21それ自体は、NK細胞に対し非常に弱い増殖活性しか持たないことが示唆される。0.5 ng/ml IL-2の低濃度では、本発明者らにより0.25の倍増加が認められた。5 ng/ml IL-21が含まれた場合、本発明者らにより2.9の倍増加が認められた。より高濃度のIL-2では、倍増加は全体的に高くなったが、IL-21の効果は、依然としてプラスであったものの、おおむね減少した。10 ng/ml IL-2では、本発明者らにより2.9の倍増加が認められた。5 ng/ml IL-21が含まれた場合、本発明者らにより7の倍増加が認められた。
これらの培養物におけるIL-21の効果は、少なくとも低用量のIL-2の存在に依存していた。IL-2がない場合、IL-21の効果はごくわずかであった。IL-2が、特にいっそう低い、おそらく生理的な、濃度で存在する場合、IL-21の効果は最も著明である。低濃度の他のサイトカインと協調するその能力に加えて、IL-21単独では効果がないことから、全身毒性を引き起こすことなく、IL-21を感染症または悪性腫瘍の部位で治療的に作用させることが可能である。
実施例27 IL-21はIL-2またはIL-15を含む末梢血リンパ球の培養物からのNKおよびNKTの増殖を刺激する
健常ヒト供血者3人からの末梢血リンパ球は、標準的なFicoll遠心法により調製した。次いで、リンパ球は、10%供血者血清、50μM BME (Sigma)、2 ng/ml flt3L (R & D Systems)、および0、0.5、10、または50 ng/ml IL-2 (R & D Systems)またはIL-15 (R & D Systems)を加え、0、5、または50 ng/ml IL-21 (米国特許第6,307,024号)有りまたは無しとしたαMEMの中に、細胞200,000個/mlの開始濃度として培養した。培養から12日後、細胞を収集し、数を数えて、フローサイトメトリー法によりCD3、CD56、およびCD8について解析した。NK細胞はCD56+/CD3-と定義され、NKT細胞はCD56+/CD3+と定義された。
細胞数の「倍増加」(最終の細胞数/開始の細胞数と定義される)は、供血者3人の間で大きく変化していたが、その傾向はかなり一致していた。おおむね、10 ng/ml IL-2またはIL-15での結果は、50 ng/ml IL-2またはIL-15で得られた結果と同様であり、5 ng/ml IL-21での結果は、50 ng/ml IL-21で得られた結果と同様であった。IL-2またはIL-15が存在しない場合、細胞総数の倍増加は、供血者3人の間で0.33、0.23、および0.19であった。培養液に5 ng/ml IL-21が含まれた場合、倍増加は0.47、0.31、および0.35であった。0.5 ng/ml IL-2の低濃度では、本発明者らにより供血者3人の間で2.2、1.1、および1.0の細胞総数の倍増加が認められた。5 ng/ml IL-21が含まれた場合、本発明者らにより5.5、2.3、3.1までの細胞総数の増加が認められた。IL-21がない場合、本発明者らにより16、4.2、および3.5のNK細胞数の倍増加が認められた。IL-21が存在 (5 ng/mlで)した場合、これらの増加はそれぞれ24、15、および21であった。NKT細胞も同様に、これらの条件の下でプラスに誘起された。NKT細胞の倍増加は、IL-21がない場合、4.4、5.7、および1.8、ならびに5 ng/ml IL-21がある場合、10、9、および15であった。
これらの結果は、IL-15と酷似している。0.5 ng/ml IL-15で、0.98、0.43、および0.88の細胞総数の倍増加が供血者3人の間で認められた。5 ng/ml IL-21が含まれた場合、本発明者らにより1.4、0.9、1.7倍までの細胞総数の増加が認められた。IL-21がない場合、8.0、0.85、および3.7のNK細胞数の倍増加が認められた。5 ng/ml IL-21が存在した場合、これらの倍増加は13、5.5、および11であった。0.5 ng/ml IL-15でのNKT細胞の倍増加は、供血者3人に対して3.3、2.3、および1.6であったが、5 ng/ml IL-21が含まれた場合、これらは3.9、5.2、および4.7であった。
より高濃度のIL-2では、倍増加は全体的に高くなったが、IL-21の効果は、依然としてプラスであったものの、おおむね減少した。10 ng/ml IL-2では、本発明者らにより供血者3人の間で18、2.5、および2.8の細胞総数の倍増加が認められた。5 ng/ml IL-21が含まれた場合、本発明者らにより21、3.6、9.8倍までの細胞総数の増加が認められた。IL-21がない場合、本発明者らにより114、13、および13のNK細胞数の倍増加が認められた。IL-21が存在 (5 ng/mlで)した場合も、これらの増加はそれぞれ100、19、および56であった。NKT細胞も同様に、これらの条件の下でプラスに誘起された。NKT細胞の倍増加は、IL-21がない場合、33、15、および12、ならびに5 ng/ml IL-21がある場合、52、20、および38であった。
10 ng/ml IL-15で、本発明者らにより18、0.8、および1.7の細胞総数の倍増加が供血者3人の間で認められた。5 ng/ml IL-21が含まれた場合、本発明者らにより23、1.4、6.9倍までの細胞総数の増加が認められた。IL-21がない場合、本発明者らにより128、0.58、および2.0のNK細胞数の倍増加が認められた。5 ng/ml IL-21が存在した場合、これらの倍増加は107、1.1、および9.4であった。10 ng/ml IL-15でのNKT細胞の倍増加は、供血者3人に対して60、6.5、および5.7であったが、5 ng/ml IL-21が含まれた場合、これらは66、12、および33であった。
これらの培養物におけるIL-21の効果は、少なくとも低用量のIL-2またはIL-15の存在に依存していた。これらのサイトカインがない場合、IL-21の効果はごくわずかであった。IL-2またはIL-15が、特にいっそう低い、おそらく生理的な、濃度で存在する場合、IL-21の効果は最も著明である。低濃度の他のサイトカインと協調するその能力に加えて、IL-21単独では効果がないことから、全身毒性を引き起こすことなく、IL-21を感染症または悪性腫瘍の部位で治療的に作用させることが可能である。
実施例28 IL-21はNK細胞培養物においてIL-13の産生を阻害する
IL-13はIL-4の受容体サブユニットおよび生物活性の多くを共有するが、IL-4と異なり、IL-13はNK細胞により産生される。NK細胞は同様にIFN-γも産生し、これらの二つのサイトカインは主に反対の活性を有するので、PBMNCおよびNK細胞の培養物におけるIL-13およびIFN-γの発現に対するIL-21の効果を調べるために実験を行った。
ネガティブ選択したヒト末梢血NK細胞を細胞約3.75×105個/mlで蒔き、α-MEM+10%自家血清の中で、10 ng/ml IL-2、IL-4 (R & D Systems)もしくはIL-21 (米国特許第6,307,024号)を加えてまたはどのサイトカインも加えずに2日間刺激した。培養の2日後、IL-2を全てのウェルに10 ng/mlまで添加し、細胞をさらに3日間培養し、その後、上清を集めて、ELISA法によりIL-13およびIFN-γについて解析した。どのサイトカインも加えずに2日間増殖させたNK細胞は、約2130 pg/ml IFN-γおよび175 pg/ml IL-13を産生した。IL-21で刺激した細胞は、約10,300 pg/ml IFN-γおよび90 pg/ml IL-13を産生した。IL-2で刺激した細胞は、12,700 pg/ml IFN-γおよび1000 pg/ml IL-13を産生した。IL-4で刺激した細胞は、検出可能なIFN-γもIL-13も産生しなかった。
注目すべきは、最初の2日間IL-21で刺激した細胞は、非刺激細胞の5倍多くのIFN-γを産生したが、非刺激細胞の半分のIL-13を産生しただけであった。培養の最初の2日間IL-2で刺激した細胞と比べて、IL-21で刺激した細胞では、80%程度のIFN-γを産生したが、わずか9%程度のIL-13を産生しただけであった。このように、IL-21は選択的に、IFN-γの発現を促進させかつIL-13の発現を低下させる。
実施例29 IL-21はIL-2と協調してマウス脾臓NK細胞のIFN-γ産生を促進させる
C57BL/6マウス脾臓NK細胞は、脾臓由来の細胞懸濁液を水で溶解させ、次いでStem Cell TechnologiesのマウスNK細胞ネガティブ濃縮の磁気細胞分離手順を利用して調製した。この方法を利用して調製した細胞は、PharMingenのDX5 Pan NK抗体を用いたフローサイトメトリー解析に基づき、65%がPan NK陽性であった。
ネガティブ濃縮したマウスNK細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清および2 mM L-グルタミン、50μM BME、ならびに抗生物質PSNを加えたRPMI 1640の中に、20 ng/ml mIL-2 (R & D Systems)もしくは10 ng/ml mIL-21(米国特許第6,307,024号)またはその両方を加え、細胞500,000個/mlとして8日間培養した。培養期間の終了時点で、細胞上清を集め、細胞の数を数えた。PharMingenから市販されているELISAキットを用いて、細胞上清をmIFN-γについて調べた。
8日間の期間の終了時点での細胞数は、IL-2を含有する培養の場合には約1,300,000個、IL-2/IL-21培養の場合には220,000個、およびIL-21培養の場合には10,000個であった。mIFN-γ濃度は、それぞれ2.2 ng/ml、30 ng/ml、および0.28 ng/mlであった。pg/細胞500,000個として発現させた場合、その結果は238、14,000、および12,000個であった。IL-21によりこれらの培養でIFN-γの発現が促進されるが、これをIL-2の細胞生存/増殖効果と組み合わせた場合、結果的に高濃度のIFN-γが培地に分泌されるようになる。IFN-γは免疫応答の重要な発動因子であり、TH1偏向的なサイトカインと考えられる。このデータから、IL-21は免疫系の抗ガン活性、抗ウイルス活性に影響を及ぼすことが示唆され、それ故、これを抗ガン、抗ウイルスおよびその他の用途において治療法として利用することができる。
実施例30 T細胞およびヒトT細胞系に対するIL-21-サポリン毒素複合体の効果
正常マウスT細胞に結合するマウスIL-21-サポリン毒素複合体の能力を、FACS競合試験により決定し、マウスIL-21による同一細胞への結合と比較した。マウスIL-21-サポリン毒素複合体は、IL-21と同じ親和性でこれらの細胞に結合することが示された(実施例30A)。
以下のT細胞系に対するヒトIL-21受容体(国際公開公報第0/17235号および国際公開公報第01/77171号)の存在をFACS解析により決定した: ヒトT細胞白血病MOLT-13 (DSMZ番号ACC_436)、ヒト皮膚T細胞リンパ腫HUT-78 (ATCC番号TIB_161)、ヒト皮膚T細胞リンパ腫HUT-102 (ATCC番号TIB_162); ヒトALCL系DEL (DSMZ番号ACC_338)、およびヒトT/NK細胞白血病YT (DSMZ番号ACC_434; 実施例30B)。
本明細書に記載のヒトIL-21-サポリン毒素複合体の効果は、正常ヒトT細胞(実施例30C)およびヒトIL-21受容体を発現することが示されたヒトT細胞系(すなわち、MOLT-13、HUT-78、HUT-102、DELおよびYT; 実施例30D)の両方について調べた。この結果、IL-21-サポリン毒素複合体で処置した正常ヒトT細胞およびT細胞系は、未処置のままとした細胞または非複合IL-21ともしくはサポリン単独と培養した細胞に比べて、増殖がはるかに弱いかまたは全く増殖しないことが示された。
この結果から、IL-21-毒素(サポリンまたはその他)複合体は、30 pMまたはそれ以下の濃度でインビトロにおいて正常ヒトT細胞の増殖にほとんど影響を及ぼすことなくまたは同様に全く影響を及ぼすことなく、一部の種類のT細胞新生物を制御できることが示唆される。インビトロで観測された細胞系の増殖阻害に関して提唱される機構は、次の通りである: ヒトIL-21-毒素複合体が高い親和性で、これらの細胞の表面上に発現されるIL-21受容体に結合する。その後、ヒトIL-21-毒素複合体が細胞に取り込まれ、サポリン-毒素複合体の場合には、タンパク質を産生する細胞の能力やその増殖が続けて遮断される。従って、IL-21-サポリン免疫毒素複合体、またはその他のIL-21-毒素融合体を、T細胞白血病およびリンパ腫、ならびにIL-21受容体が発現されるようなその他のガンの予防および処置において、治療上、利用することができるものと思われる。
A. フローサイトメトリー解析による正常マウスT細胞に対するマウスIL-21-サポリン毒素複合体の結合
マウス全脾細胞は、正常4ヶ月齢C57/BL6雌マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)から単離した。脾臓を収集し、すりガラスのスライドの間で穏やかにすり潰して、細胞懸濁液を作成した。赤血球は、次のような低張溶解により除去した: 細胞を沈殿させて、上清を吸引により除去した。本発明者らは、穏やかにボルテックスしながらこの沈殿物をばらばらにし、次いで振盪させつつ滅菌水900μlを添加し、続いて素早く(その後5秒未満で) 10×HBSS (Gibco/BRL; Rockville Maryland) 100μlを添加した。次いで、細胞を1×HBSS 10 mlに再懸濁させ、この細胞をナイロン・メッシュ裏地付きの細胞ろ過器(Falcon/BD; Franklin NJ)に通すことで残渣を除去した。次に、RBCをなくしたこれらの脾細胞を沈殿させ、FACS染色用緩衝液: 3%ヒト血清、1% BSA、および10 mM HEPESを含有するHBSS (GibcoBRL; Rockville Maryland)に再懸濁させた。
脾臓由来の白血球約1×106個を含有する一定分量を、3色フローサイトメトリー解析のため、FITC-抗マウスCD3 mAb、CyChrome-抗マウスB220 mAb (PharMingen, San Diego, CA)およびビオチン化マウスIL-21 (2μg/ml)、引き続いてストレプトアビジン-PE (Caltag; Burlingame CA)で染色した。ビオチン化マウスIL-21の染色は、等力価のモル量(0.0175 nM〜3.5 nM)の非ビオチン化IL-21とIL-21-サポリン複合体の両方により競合させた。細胞をCellQuestソフトウェア (Becton Dickinson, Mountain View, CA)を用いたFACSScanにて解析した。この結果から、マウスIL-21-サポリン毒素複合体は、IL-21と同じ親和性でこれらの細胞に結合することが示された。
B. フローサイトメトリー解析によるヒトT細胞系に対するビオチン化マウスIL-21の結合
0.4×106〜1×106個の、MOLT-13細胞、HuT-78細胞、HuT-102細胞、DEL細胞またはYT細胞を含有する一定分量を、1色フローサイトメトリー解析のため、力価検定した(titered)ビオチン化マウスIL-21 (40 ng/ml〜1000 ng/ml)、引き続いてストレプトアビジン-PE (Caltag; Burlingame CA)で染色した。細胞をCellQuestソフトウェア (Becton Dickinson, Mountain View, CA)を用いたFACSScanにて解析した。この結果から、ビオチン化マウスIL-21は、強い親和性でこれらの細胞系に結合することが示された。この結果から同様に、マウスIL-21は、ヒトT細胞系の表面上のヒトIL-21受容体分子を認識して結合するため、異種間反応性であることが示された。
C. 正常ヒトT細胞の増殖に対するヒトIL-21-サポリン免疫毒素複合体の効果
全血を健常ヒト供血者から採血し、50 mlチューブに分注し、Ficoll密度勾配を行った。界面のRBCのない細胞(PBMC)を収集し、PBSと、続けて10% ヒトultraserumおよび2 mM Lグルタミンを添加したRPMI 1640とで頻繁に洗浄した。PBMCを懸濁させて、細胞111×106個/ml MACS緩衝液(PBS、1% BSA、0.8 mg/L EDTA)とした。細胞を製造元の仕様書に従って、抗ヒトCD14マイクロビーズ、抗ヒトCD19マイクロビーズ、および抗ヒトCD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotech; Auburn CA)と結合させた。この混合物を4℃で20分間インキュベートした。CD14、CD19およびCD56ビーズで標識したこれらの細胞を5倍容量のMACS緩衝液で洗浄し、それからMACS緩衝液 1.5 mlに再懸濁させた。
VS+カラム (Miltenyi Biotech; Auburn CA)を製造元の使用説明書に従って調製した。次いで、VS+カラムをVarioMACS(商標) (Miltenyi Biotech; Auburn CA)の磁界の中にセットした。カラムをMACS緩衝液3 mlで平衡化した。次いで、CD14/CD19/CD56ビーズでコーティングされたPBMCをカラムに添加した。CD14-CD19-CD56-PBMC画分を含むヒトT細胞は、カラムを素通りさせて、15 mlのチューブに収集した。カラムをMACS緩衝液10 ml(2×5 ml)で洗浄して、残存するヒトT細胞を洗い流した。CD14+CD19+CD56+細胞が結合したカラムは廃棄した。ヒトT細胞および洗浄溶出液を一緒にプールし、細胞の数を数えた。
ネガティブ選択したヒトT細胞の試料を染色のために取り出し、この画分の純度を評価した。選択の細胞を染色するため、cychrome結合マウス抗ヒトCD3抗体(PharMingen)を使用した。ネガティブ選択したT細胞は、67%がCD3+であることが示された。
単離した初代T細胞は、ヒトT細胞に対する補助活性化因子として、力価検定した(0〜2μg/ml)抗ヒトCD3抗体(クローンUCHT-1; Southern Biotech; Birmingham Alabama)でコーティングしたプレートに、等力価のモル量(0.03 pM〜30 pM)のIL-21とIL-21-サポリン複合体の両方を加え、細胞0.5×106個/mlとして培養した。増殖から3日後、細胞を3H-チミジン(5μCi/ml; Amersham Biosciences, Piscataway NJ)で18時間パルスした。細胞を溶解させて、DNAをガラスフィルターマット(Packard, Meriden CT)上に捕捉し、3H-チミジンの取り込みをカウントして、細胞の増殖を評価した。
その結果、0.3 pMおよびそれより高い濃度のIL-21は、2μg/mlでコーティングした抗CD3抗体との組み合わせで刺激効果を有することが示された。IL-21-サポリン複合体には、そのような刺激効果がなかった。これには同様に、2μg/ml抗CD3抗体のコーティングによる刺激のみと比較して、阻害効果もなかった。つまり、これらのデータは、IL-21による刺激がIL-21-サポリン複合体を含有するウェルに存在しているものの、その分子のIL-21の部分によるものと予測される増殖の増加は、その複合体分子のサポリン部分の存在により取り除かれることを意味すると解釈することができる。しかしながら、その分子のサポリン部分により、コーティングした抗CD3抗体による刺激効果が取り除かれることはなかった。
D. ヒトT細胞系に対するヒトIL-21-サポリン免疫毒素複合体の効果
細胞は、等力価のモル量(0.2 pM〜400 pM)のIL-21とIL-21-サポリン複合体の両方を加え、細胞5,000個/ml〜細胞50,000個/mlとして蒔いた。増殖から2日後、細胞を5μCi/ml 3H-チミジン(Amersham Biosciences, Piscataway NJ)で18時間パルスした。細胞はどちらも溶解させて、DNAをガラスフィルターマット(Packard, Meriden CT)上に捕捉し、3H-チミジンの取り込みをカウントして、細胞の増殖を評価した。
IL-21-サポリンで処理したMOLT-13細胞は、IL-21で処理したMOLT-13細胞により取り込まれた3H-チミジンのわずか70%しか3H-チミジンが取り込まれなかった。IL-21-サポリンで処理したHuT-78細胞は、未処理HuT-78細胞の密度のわずか33%しか増殖しなかった。IL-21-サポリンで処理したHuT-102細胞は、未処理Hut-102細胞の密度のわずか20%しか増殖しなかった。IL-21-サポリンで処理したDEL細胞は、未処理DEL細胞の密度のわずか25%しか増殖しなかった。IL-21-サポリンで処理したYT細胞は、未処理YT細胞の密度のわずか33%しか増殖しなかった。この結果から、IL-21-毒素(サポリンまたはその他)複合体は、一部の種類のT細胞新生物を制御するうえで効果的となり得ることが示唆される。さらに、IL-21-サポリン免疫毒素複合体、またはその他のIL-21-毒素融合体を、T細胞白血病およびリンパ腫、ならびにIL-21受容体が発現されるようなその他のガンの予防および処置において、治療上、利用することができるものと思われる。
実施例31 B細胞リンパ腫に対するIL-21のインビボ効果
ヒトBリンパ腫細胞系をインビトロで継代して増殖培地中で維持する。細胞をPBSで徹底的に洗浄して、培養液の成分を除去する。
SCIDマウスに尾静脈を介して、(典型的には)ヒトリンパ腫細胞1×106個を容量100μlとして注射する(注射する細胞の最適数を予備実験において実験的に決定し、所望の動態と一致する腫瘍の取り込みをもたらす)。その翌日、IL-21処置を、ALZET(登録商標)小型浸透圧ポンプ(ALZET, Cupertino, CA)の皮下移植によりまたはIL-21もしくは媒体の毎日の腹腔内注射により開始する。マウスを生存率および有意な病的状態について監視する。後肢麻痺のような実質的な病的状態を示すマウスのほか、その最初の体重の20%を超える体重が減少しているマウスを屠殺する。使用するリンパ腫細胞系にもよるが、未処置のマウスは通常、3〜6週間で死亡する。IgGまたはIgMを分泌するB細胞リンパ腫の場合、疾患の進行はまた、週1回、採血を行って、ELISA法によりヒト免疫グロブリンの血清濃度を測定することで監視することもできる。
A. IL-21による用量反応/IM-9モデル
マウスにIM-9細胞1×106個を注射し、その翌日、28日用の小型浸透圧ポンプを移植した。ポンプに以下の濃度のIL-21を添加して、輸送を行った: 用量群につきマウス8匹として1日当たり0、0.12、1.2または12μg。IL-21により、腫瘍細胞系からのマウスの保護において明らかに用量依存的な効果が示された。IL-21の効果は、用量依存的であった。実験の終了時点で生存していたマウスには、疾患の兆候がなく、その血清中に検出可能なヒトIgGがなかった。
B. IL-21によるNK枯渇/IM-9モデル
マウスは、腫瘍細胞を注射する15日前から始めて3日おきに5用量の抗アシアロGM-1抗体を投与することによりNK細胞を枯渇させるか、または対照として非枯渇のままとした。枯渇および非枯渇マウスの半分は12μg/日 IL-21で処置し、残りの半分は媒体のみで処置した。NK細胞の枯渇により、IL-21の活性が著しく低下することはなかった。これらのデータから、NK細胞は、SCIDマウスのIM-9モデルにおけるIL-21の効果には必要とされないことが実証された。
C. 試験したその他の細胞系
IM-9細胞について示したモデルを用い、以下のさらなる細胞系について調べた。小型ポンプにより12μg/日で輸送したIL-21は、SCIDマウスにおいてCESS細胞に対し効果的である。RAJI細胞の移植による腫瘍があるマウスにIL-21を投与しても効果がなかった。RAMOS細胞の移植による腫瘍があるマウスにIL-21を投与しても効果がなかった。HS SULTAN細胞の移植による腫瘍があるマウスにIL-21を投与すると有意な効果があったが、ほとんどのマウスで、疾患の発症を遅らせるだけで、疾患は抑制されなかった。DoHH2にはIL-21は、効果がなかった。
これらのデータから、SCIDマウスリンパ腫モデルにおけるIL-21の効果は、インビボでリンパ腫細胞系の増殖を阻害する能力と相関していることが実証される。さらに、T細胞およびB細胞の両方に対するSCIDマウスのNK細胞の枯渇により、IM-9モデルにおけるIL-21の有効性が損なわれることはない。インビトロでIL-21により阻害されなかった、このモデルで試験した3細胞系列の3つで効果が見られなかったことや、NKの枯渇が、IM-9モデルにおいてIL-21の効果に影響を与えることがなかったことから、SCIDマウスリンパ腫モデルにおけるIL-21の効果は、腫瘍細胞に対するその直接効果に依存する可能性が高い。完全な免疫系を持つ患者では、免疫応答性マウスを用いた同系腫瘍モデルの実験から、IL-21依存的なエフェクター細胞による抗腫瘍効果が予測される。SCIDマウスにおける直接的な抗腫瘍効果の実証から、IL-21療法により、ヒトにおいて選択のB細胞悪性腫瘍で直接的な抗腫瘍効果とエフェクター細胞による抗腫瘍効果とが組み合わされる可能性があることが示唆される。
実施例32 同系マウス卵巣ガンモデルにおけるIL-21の効果
IL-21の効果は、Zhangら、Am. J. of Pathol. 161:2295〜2309, 2002に記述の同系マウスモデルを用い、卵巣ガンにおける有効性について試験される。簡単に言えば、レトロウイルス形質導入法および蛍光活性化細胞分離法を利用して、マウスVEGF164アイソフォームおよび強化緑色蛍光タンパク質(GFP)を安定的に過剰発現する、C57BL6マウスID8卵巣ガン細胞系を作製する。VEGF164およびGFP cDNAを含有するレトロウイルス・コンストラクト(構築物)をBOSC23細胞に形質導入した。細胞をFACSによる細胞分離により解析し、GFP高陽性細胞を同定する。
ID8 VEGF164/GFPが形質導入された細胞をサブコンフルエントまで培養し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)および冷MATRIGEL (BD Biosciences, Bedford, MA)中に単細胞性の懸濁液として調製する。6〜8週齢の雌C57BL6マウスの脇腹に、細胞または非形質導入の対照細胞5×106個を皮下注入する。あるいは、マウスに細胞または対照細胞7×106個を腹腔内注入することができる。動物は生存を追跡するか、または接種から8週後に屠殺して、腫瘍増殖を評価する。腫瘍移植後、3〜14日から開始して、または腫瘍の生着および増殖率が確定された時点で、マウスを組み換えマウスIL-21で処置する。処置量0.5〜5 mg/kgが5〜14日間、毎日投与されるものと思われるが、その後、中和抗体の形成の痕跡が見られない場合には、継続して行うことができる。
実施例33 マウスRENCAモデルにおけるIL-21の効果
腎細胞ガンモデルにおけるIL-21の効果は、本質的にはWiggintonら、J. Nat. Cancer Instit. 88:38〜43, 1996に記述されているように、自然発生マウス腎ガンのRENCA細胞が注入されたBALB/cマウスを用いて評価される。
簡単に言えば、8〜10週のBALB/cマウスにRENCA細胞R 1×105個を、マウスの腎臓被膜の中へ注入する。腫瘍細胞の移植から12日後、マウスに腎摘出を施して、原発性腫瘍を取り出す。IL-21の投与前に、マウスを外科手術から回復させる。腫瘍移植後、3〜14日から開始して、または腫瘍の生着および増殖率が確定された時点で、マウスを組み換えマウスIL-21で処置する。処置量0.5〜5 mg/kgが5〜14日間、毎日投与されるものと思われるが、その後、中和抗体の形成の痕跡が見られない場合には、継続して行うことができる。または、RENCA細胞は、皮下(細胞5×105個)または静脈内(細胞1×105個)投与により導入することができる。
マウスを未処置マウスと比べ腫瘍反応について評価する。腫瘍容積を評価するほかに、生存率をKaplan-Meier法により比較する。
実施例34 マウス結腸直腸腫瘍モデルにおけるIL-21の効果
結腸直腸マウスモデルにおけるIL-21の効果は、Yaoら、Cancer Res. 63:586〜592, 2003に記述されているように試験する。このモデルでは、MC-26マウス結腸腫瘍細胞をBALB/cマウスの脾臓被膜下に接種する。14日後、処置マウスにIL-21を投与する。腫瘍移植後、3〜14日から開始して、または腫瘍の生着および増殖率が確定された時点で、マウスを組み換えマウスIL-21で処置する。処置量0.5〜5 mg/kgが5〜14日間、毎日投与されるものと思われるが、その後、中和抗体の形成の痕跡が見られない場合には、継続して行うことができる。
本明細書に記載の標準的な方法を利用して、生存率を引き延ばすまたは腫瘍反応を促進させるIL-21の効果を評価する。
実施例35 マウス膵臓ガンモデルにおけるIL-21の効果
マウス膵臓ガンモデルにおけるIL-21の効果は、Mukherjeeら、J. Immunol. 165:3451〜3460, 2000により開発された手順を用いて評価する。簡単に言えば、MUC1形質導入(MUC1. Tg)マウスを、膵臓腫瘍を自発的に発現するガン遺伝子発現マウス(ETマウス)と交配させる(MET.MUC1.Tgマウスと表す)。ETマウスは、ラットエラスターゼ・プロモーターの制御下でSV40ラージT抗原の最初の127アミノ酸を発現する。動物の50%が、約21週齢までに致命的な膵臓腫瘍を発現する。細胞は、MUC1の存在を目的にフローサイトメトリー法により日常的に試験する。マウスは全て、C57BL/6のバックグラウンドにある。3〜24週まで3週の間隔で、動物を屠殺して、特徴付ける。マウスを、昏睡状態、腹部膨張、飲食ができないこと、著しい体重減少、蒼白便、および猫背の姿勢を含む病身の兆候について注意深く観察する。
膵臓全体を脂肪およびリンパ節がないように切り裂いて、重さを量り、写真撮影のために吸収紙の上に拡げる。小結節の数を数え、膵臓をメタカーン中で固定し、従来法、すなわち5μmの薄片(およそ切片10枚/マウス脾臓)に切り、ヘマトキシリンとエオシンで染色し、光学顕微鏡により検鏡するステップによる顕微鏡検査のために処理する。腫瘍をMETマウスから、腫瘍進行の間のさまざまな時点で採取し、免疫組織化学法のため、メタカーン(60%メタノール、30%クロロホルム、10%氷酢酸)中で固定し、パラフィン包埋して、薄片に切る。使用するMUC1抗体は、マウスおよびヒトのMUC1の細胞質側の末端領域を認識するウサギポリクローナル抗体のCT1、HMFG-2、BC2、およびSM-3(これは、MUC1のTRドメインのなかにエピトープを有する)である。
CTL活性の決定は、付加的なサイトカインを添加せずに、6日間のインビトロでのペプチド刺激後、標準的な51Cr放出法を用いて行われる。個々のMETマウスからの脾細胞は、ナイロン・メッシュに通して収集し、その後、RBCの溶解を行う。
METマウスの脾臓から得た単細胞は、リンパ球部分母集団: CD3、CD4、CD8、Fas、FasL、CD11c、ならびにMHCクラスIおよびIIの変化を目的に、2色免疫蛍光検査法により解析する。細胞内サイトカイン濃度は、細胞をMUC1ペプチド(10μg/ml、6日間)で刺激し、brefeldin-A (Golgi-Stopとも呼ばれる; PharMingen)で、製造元からの推奨事項(染色の前、37℃で3時間、4μl/1.2×107細胞/6 ml)により指示される通りに処理した後に決定された。細胞をPharMingen透過化キットにより透過化し、PharMingenにより報告されるように、細胞内IFN-γ、IL-2、IL-4、およびIL-5に対して染色する。蛍光標識抗体は全て、PharMingenから購入した。フローサイトメトリー解析は、CellQuestプログラム (Becton Dickinson, Mountain View, CA)を用いたBecton Dickinson FACscanにて行った。
腫瘍移植後、3〜14日から開始して、または腫瘍の生着および増殖率が確定された時点で、マウスを組み換えマウスIL-21で処置する。処置量0.5〜5 mg/kgが5〜14日間、毎日投与されるものと思われるが、その後、中和抗体の形成の痕跡が見られない場合には、継続して行うことができる。
実施例36 マウス乳ガンモデルにおけるIL-21の効果
乳ガンのマウスモデルにおけるIL-21の効果は、Colomboら、Cancer Research 62:941〜946, 2002に記述されるような同系モデルを用いて行われる。簡単に言えば、TS/A細胞、これはBALB/Cマウスに対する自然発生乳ガンである。この細胞を約1週間培養して、クローンを選択する。選択したTS/A細胞を増殖させ、マウスの脇腹へのTS/A細胞2×102個の皮下注入により、CD-1 nu/nu BRマウス (Charles River Laboratories)を攻撃するのに使用する。
腫瘍移植後、3〜14日から開始して、または腫瘍の生着および増殖率が確定された時点で、マウスを組み換えマウスIL-21で処置する。処置量0.5〜5 mg/kgが5〜14日間、毎日投与されるものと思われるが、その後、中和抗体の形成の痕跡が見られない場合には、継続して行うことができる。腫瘍を動物の屠殺後に切除して、容積ならびに組織化学検査および免疫組織化学検査の利用について分析する。
実施例37 マウス前立腺ガンモデルにおけるIL-21の効果
Kwonら、PNAS 96:15074〜15079, 1999に記述されているものに類似のモデルを用いて、腫瘍反応に対するIL-21の効果をマウス前立腺ガンモデルで評価する。このモデルには、トランスジェニックマウス前立腺ガン(TRAMP)由来の前立腺ガン細胞系TRAMP-C2(これをC57BL/6マウスに接種する)の転移増殖がある。原発性腫瘍のすぐ近くの排膿性リンパ節に主に起こる、転移再発は、信頼性がある。
簡単に言えば、使用するC2細胞系は、前立腺に限定されるSV40抗原の発現に起因する自家腫瘍を自然に発病する、TRAMPマウス由来の継代早期の細胞系である。細胞を培養し、細胞2.5〜5×106個/0.1 ml培地としてC57BL/6マウスに皮下注射する。腫瘍移植後、3〜14日から開始して、または腫瘍の生着および増殖率が確定された時点で、マウスを組み換えマウスIL-21で処置する。処置量0.5〜5 mg/kgが5〜14日間、毎日投与されるものと思われるが、その後、中和抗体の形成の痕跡が見られない場合には、継続して行うことができる。腫瘍を動物の屠殺後に切除して、容積ならびに組織化学検査および免疫組織化学検査の利用について分析する。
実施例38 インビトロにおけるヒトB細胞系の増殖に対するIL-21および化学療法薬の効果
インビトロにおけるIM-9およびHS SultanヒトB細胞系の増殖に対するIL-21およびゼオシン単独の効果ならびに併用での効果を調べて、IL-21および化学療法薬の増殖阻害/細胞傷害効果がIL-21感受性の細胞系に対して相加的または相乗的となるかどうか確認した。ゼオシン (Invitrogen, Carlsbad, CA)は、使用した、関連する化学療法薬ブレオマイシンに類似の作用機序を持つ抗生物質である。
IM-9およびHS Sultan細胞系は、IL-21 (20 ng/mlで)および/またはゼオシン (IM-9細胞の場合には15.6μg/mlでおよびHS Sultan細胞の場合には31μg/mlで)有りまたは無しで、2 mM L-グルタミンおよび10%熱不活化FBSを添加したRPMI1640培地の中に細胞50,000個/mlとして2日間蒔おいておき、その後、細胞を収集し、1回洗浄してゼオシンを除去し、96ウェル丸底プレートに、6ウェル/希釈で、連続細胞希釈系列としてIL-21有りまたは無しで移し変えて、その相対的な増殖能を決定する。プレートは、生存細胞/ウェル、ならびに前処理からのその生存および増殖の反映の尺度として、Alamar blueを用いて6日でスコア化した。ゼオシンで処理した細胞集団は、未処理細胞の10分の1未満の増殖能となり、ゼオシンとのIL-21の併用により、増殖能がおよそ一桁までさらに低下した。これらのデータから、IL-21を化学療法とうまく調和させて、リンパ腫の治療において応答率を高められ得ることが示唆される。
実施例39 LCMVモデル
LCMVモデルは、多くのフラビウイルス(Flaviviridae)科(HCVはその一員である)に感染した細胞に対する化合物の効果を試験するためのインビトロモデルである。これらのモデルを利用して、IL-21がCTLに対して持つ効果およびIL-21がウイルス量に対して持つ効果を評価する。利用されるモデルが2つある: LCMV Armstrong (急性)感染およびLCMV Clone 13 (慢性)感染 (例えば、Wherryら、J. Virol. 77:4911〜4927, 2003; Blattmanら、Nature Med. 9(5): 540〜547, 2003; Hoffmanら、J. Immunol. 170:1339〜1353, 2003を参照されたい)。ウイルスに反応したCD8 T細胞の発達段階は3つある: 1) 増殖、2) 収縮、および3) 記憶 (急性モデル)。IL-21を急性および慢性モデルの両方に対して各段階の間に注入する。慢性モデルでは、IL-21を感染から60日後に注入して、IL-21の効果を評価する。急性および慢性モデルの両方に対して、IL-21を注入し、以下のパラメータについて調べる: LCMV特異的CD8+ T細胞の数をカウントするためのフローサイトメトリー法によるテトラマー染色; テトラマー+細胞がその同系LCMV抗原で刺激された際にサイトカインを産生する能力; およびLCMV特異的CD8+ T細胞がその同系LCMV抗原に反応して増殖する能力。LCMV特異的T細胞をフローサイトメトリー法により表現型について検査し、細胞の活性化および分化段階を評価する。同様に、LCMV特異的CTLがその同系LCMV抗原を持つ標的細胞を溶解する能力について調べる。LCMV特異的CD4+ T細胞の数および機能を、細胞溶解試験以外の方法で、評価する。
IL-21投与後のLCMV特異的CD8+ T細胞の質および量の向上を決定する。具体的には、サイトカイン産生増加の結果、特にテトラマー+細胞の増殖によるIFN-γの割合増加および細胞溶解活性の増加が示される。IL-21処置マウスから得たCD8+ T細胞の表現型から、エフェクター細胞への分化、すなわちCD27発現の消失およびCCR7発現の消失ならびにパーフォリンおよびグランザイムB発現の増加が示される。同様に、IL-21で処置後のウイルス量の減少が示される。IL-21処置マウスの場合、増殖し、サイトカインを産生し、または未処置マウスと比べて成熟した表現型を示すテトラマー陽性T細胞の割合の20%増加が有意であると見なされる。細胞溶解活性の20%増加が有意であると見なされる。
IL-21注入がもたらすウイルス量の減少は、特に慢性モデル(未処置の場合には、ウイルス力価が長期間、上昇したままである)では、ウイルス感染のいっそう効果的な制御によるものである。未処置マウスに比べてウイルス力価の5倍低下が有意であると見なされる。
実施例40 HCV患者から得たヒトCTLのエクスビボ試験
慢性的なHCV感染患者から得た血液およびHCV特異的CTLは、IL-21との培養後にインビトロで試験した。HCV特異的T細胞は、HCVペプチドおよび可溶性HLAクラスIタンパク質を含むテトラマーを用いて染色することにより数え上げる。フローサイトメトリー法を利用して、CD8+ HCV特異的T細胞がIL21の存在下でまたは非存在下でインキュベートしたHCV抗原に反応して増殖するおよびサイトカイン(特に、IFN-γおよびIL-2)を産生する能力について評価する。HCV特異的CTLを活性化状態およびエフェクター機能(特に、CD27およびCCR7発現に対する)に関して表現型を検査する。HCVペプチドを持つHLA適合標的細胞に対する細胞溶解活性についても評価する(例えば、Wedemeyerら、J. Immol. 169:3447〜58, 2002; Gruenerら、J. Virol. 75:5550〜58, 2001; Crampら、Gastroenterology 118:346〜55, 2000を参照されたい)。
HCV特異的T細胞のその同系抗原とのIL-21有りとしたインビトロ培養について測定し、培地のみで培養したものと比較して、生存率、増殖、およびCTLによるサイトカイン産生の増加を実証する。HCV特異的CTLの細胞溶解活性を測定して、培地で培養した同一のCTLと比べて、IL-21で培養後の有意な増加を実証する。
実施例41 急性ウイルス感染のインフルエンザ(Influenza)モデル
A. 抗ウイルス活性を試験するための予備実験
インフルエンザ(Influenza)ウイルスに対するIL-21の抗ウイルス活性の決定および細胞媒介性および体液性免疫に焦点を合わせた、各種の免疫パラメータの測定のため、インフルエンザ(influenza)感染c57Bl/6マウスを使ったインビボ試験を以下の手順により行った:
動物: 148匹の6週齢雌BALB/cマウス (Charles River)、30匹/群
群:
(1) 抗体力価および組織変化に対し並行して行う絶対的な対照 (非感染) (動物2匹/群)
(2) 媒体 (腹腔内)生理食塩水
(3) アマンタジン (陽性対照) 10 mg/日、感染の2時間前から開始して5日間(経口から)
(4) IL-21処置 (5μg、腹腔内、感染後2時間から開始)
(5) IL-21 (25μg、腹腔内、感染後2時間から開始)
(6) IL-21 (125μg、腹腔内、感染後2時間から開始)
第0日- 絶対的な対照を除き、動物全てにインフルエンザ(influenza)ウイルスを感染させる
ウイルス量の場合 (LD50で10)
免疫試験の場合 (LD 30)
第0〜9日- IL-21を毎日注射 (腹腔内)
体重および全体的な様子を記録 (3回/週)
第3日- 動物8匹/群を屠殺
右肺中のウイルス量 (TCID50)
左肺の組織変化
抗体の力価判定のための血液試料
第10日- 生存している全動物を屠殺。抗体滴定のための血液試料の採取、直接的なCTL測定(5群の全てで)のための肺リンパ球(4プール(動物3匹/プール))の単離、および以下のマーカーに対する定量的な免疫表現型検査: CD3/CD4、CD3/CD8、CD3/CD8/CD11b、CD8/CD44/CD62L、CD3/DX5、GR-1/F480、およびCD19。
IL-21処置により、肺の単核細胞によるウイルス特異的な細胞溶解活性が促進されることが結果から実証された。この促進されたCTL活性がヒトのウイルス疾患の解決に重要であると仮定される。この処置により、第4日目のウイルス量、第10日目の抗体産生または体重減少には有意な効果がなかった。第4日目のウイルス量を変化させることができないことから、IL-21処置により、NK活性が有意に促進されなかったことが示唆される。第10日目の抗体産生は、意義がはっきりとはしていない初期の時点である。体重減少を変化させることができないことから、IL-21によるCTLの増強では、感染の経過を変化させるのに不十分であったことが示唆される。これは、ただ単に、感染があまりに攻撃的であったためかもしれない。
B. 抗ウイルス活性を試験するための二次実験
試験番号1:
1. マウス適合インフルエンザ(influenza)ウイルスの新しいストックのLD50決定およびC57Bl/6感染マウスにおける免疫応答の誘導能の解析。第一に、ヒトインフルエンザ(influenza)ウイルスの新しいストックを2つ作製して、力価を判定する。第二に、マウス適合ウイルスの最終継代を発育鶏卵のなかで行う。同様に、非適合ウイルスストック(ATCC凍結ストック)を発育鶏卵のなかで継代する。第三に、尿膜腔液の対照ストックを、PBSを接種した発育鶏卵にて調製する。両ストックをHAU(0.5%雄鶏赤血球を使用)およびTCID50(MDCK細胞を使用)により力価判定する。ウイルスストックおよび対照の尿膜腔液は、-80℃で凍結させる。
2. C57Bl/6マウスにおけるマウス適合ウイルスストックのLD50の決定は、C57Bl/6雌マウス(8週齢) (Charles River) 6匹を用いて行う。動物を麻酔(ケタミン/キシラジン、腹腔内)し、それから6用量の各ウイルスストック(10倍希釈) + 対照PBSの投与を、マイクロピペットを使ってマウスに鼻腔内接種(20μl)する。8動物/用量とする。動物の数を毎日記録し、体重を一日おきに記録する。
感染後、14日目に、ウイルス攻撃を切り抜けて生存した動物の数およびその体重を記録し、C57Bl/6マウスに対する両ウイルスストックのLD30を算出する。
3. C57BL/6マウスにおけるマウス適合インフルエンザ(influenza)ウイルスにより誘導される免疫応答について解析する。
CTLによる細胞傷害は、ウイルスストックのLD30 1を投与したマウスにおいて感染から10日後、エフェクター細胞(肺由来の単核細胞)を用いて測定する。標的細胞は、インフルエンザ(influenza)感染EL-4(H-2b)腫瘍細胞系ATCC#TIB39 (Brit. J. Cancer 4: 372, 1950)とする。測定は、50:1から始めて異なるE:T比率として4重で行う。非適合およびマウス適合A/PR/8/34インフルエンザ(influenza)ウイルスに感染した標的細胞の反応性を比較するのに加えて、非感染標的細胞およびB-Lee/40インフルエンザ(influenza)ウイルスに感染したEL-4細胞を特異的な対照に使用する。3回実験を行い、ウイルスストックに感染したマウスにおけるCTL応答を比較する。
免疫表現型検査: 免疫表現型検査の予備実験は、マウス適合ウイルスLD30 1に感染したマウス3匹から、感染後、10日目に収集した肺由来の単核細胞の3プールにて行う。関心のある肺細胞集団を同様に、各測定のためにマウス8匹からプールした細胞を用いて、正常C57BL/6マウスで決定する。これらの試験では、動物44匹が使用される。
試験番号2:
病気の臨床的兆候(体重減少)が重すぎないのと同時に検出可能であるがしかし最適下限の肺のCTL反応を依然として誘発する感染用量を決定するため、マウス適合ウイルスのLD30をはじめとした用量応答試験について調べる。この実験では40匹の雌C57Bl/6マウス (8週齢) (Charles River)を使用し、動物を麻酔する。LD30 1の場合には2動物の4群とし、より低い用量の場合には動物4匹/用量の4群とする。用量は、ウイルスのLD30 1、10倍希釈、100倍希釈である。
動物の数を毎日記録し、体重を一日おきに記録する。感染後、第10日: ウイルス攻撃を切り抜けて生存した動物の数とその体重を記録する。第10日目に、動物を屠殺する。標的として非感染、A/PR/8/34およびB/Lee/40感染EL-4を用い、7種類の異なるE:T比率 (50/1、25/1、12/1、6/1; 3/1、1.5/1; および0.75/1)で、4プール/用量 (動物2または4匹/プール)として、これらをCTL誘導について評価する。
試験番号3
8週齢雌C57Bl/6マウス (Charles River)を用いて、マウス適合ウイルスに感染したC57Bl/6マウスにおけるIL-21の有効性試験を行う。群は、動物36匹/群とする。
群1: 媒体 (腹腔内)
群2: 陽性対照: 抗インフルエンザ(influenza)中和抗体 (ヤギ抗インフルエンザA/USSR (H1N1)抗体 (Chemicon International, Temecula, CA)); 感染後、2時間および4時間で40μg/マウス (10μl経鼻投与)
群3: ZG-01 (5μg、腹腔内)
群4: ZG-01 (25μg、腹腔内)
群5: ZG-01 (125μg、腹腔内)
以下の生物観察および免疫検査について準備する:
第0日- 動物全てにインフルエンザ(Influenza)ウイルス(試験2で決定した用量)を感染させる
第0〜9日- IL-21を毎日注射 (腹腔内)
体重および全体的な様子を一日おきに記録
第10日- 生存している動物を屠殺 (動物24匹を完全な免疫の評価に使用する; 4匹をDNA単離およびH & E染色に使用する)
標的としてEL-4を用い、異なるE:T比率 (試験1および2の最良の結果に基づく)での、肺における直接的なCTL測定(5群の全てで)のための肺リンパ球(4プール(動物6匹/プール))の単離。
テトラマー染色: インフルエンザ(influenza) A核タンパク質(NP)のエピトープを含むMHCクラスIテトラマーに結合するCD8+ T細胞の数を、ウイルスペプチドとのMHCクラスIの複合体: FLU-NP366-374/Db (ASNENMETM)、(LMCVペプチド/Db)を用いて評価する。
以下の定量的な免疫表現型検査: CD8、テトラマー、細胞内IFNγ、NK1.1、CD8、テトラマー、CD62L、CD44、CD3 (+/-)、NK1.1 (+)、細胞内IFNγ、CD4、CD8、NK1.1、DX5、CD3 (+/-)、NK1.1、DX5、テトラマー、サイトメーター調整のための単色試料。
第30日: マウスを異なる用量のIL-21でまたは陽性対照の抗インフルエンザ(influenza)抗体で9日間処置する生存試験(動物12匹/群)。体重および個々の血清試料中の抗体産生量(総量、IgG1、IgG2a、IgG2b)を測定する。
再攻撃試験:
2群(動物32匹/群)を本試験で使用する。
第0日: 両群にA/PRウイルス(LD30 1)を感染させる。
群6は処置しない。
群7はIL-21 125μgで9日間処置する。
第30日: 生存試験
体重および個々の血清試料中の抗体産生量(総量、IgG1、IgG2a、IgG2b)を測定する。
第60日: 再攻撃試験
各群の生存動物を2つの下位群に分ける
群6Aおよび7AをA/PRウイルス(LD30 1)で再攻撃する
群6Bおよび7BをA/PRウイルス(LD30 1)で再攻撃する。
両群を追跡して、屠殺日を決定する。体重および個々の血清試料中の抗体産生量(総量、IgG1、IgG2a、IgG2b)を測定する。
本発明の特定の態様について説明を目的として本明細書に記述してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更が可能であることは、前述から明らかであろう。従って、本発明は、添付される特許請求の範囲による場合以外には、限定されることはない。