JP2006322056A - 電解用電極及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 耐食性金属基材、及び当該耐食性金属基材上に被覆された、酸化スズ及び当該酸化スズに対して0.5から15モル%の白金族金属酸化物を含む電極物質被膜とを含んで成る電解用電極であり、前記電極物質被膜は酸化アンチモンを含んでいても良い。添加する白金族金属酸化物が、酸化スズの陽極酸化作用をほとんど変化させずに、電解電圧を大幅に低下させかつ大電流での処理を可能にする。
Description
ただしこの様な簡単な方法を活用した例としては、被処理水に0.1から1%程度の食塩を加え実質的に食塩水としてそれを電解して次亜塩素酸ソーダを発生させ、前記被処理水中に含有する有機物などを分解する手法があった。これは染料排水など着色排水の処理には有効であるが、前述のように有機塩素化物生成の可能性をなおかつ有しているという問題点がある。尚最近では海水電解を行うが塩素発生を伴わないようにし、水電解で直接過酸化水素を生成させて塩素を発生させない方法が提案されている(特許文献1等)。
尚二酸化鉛電極は水電解によるオゾン生成に使用される事から、極めて酸化性が大きいことで知られる。実用上は全く問題ないが酸化物とはいえ鉛を使用していることから、やはり二次的な公害発生の可能性から問題視されていることも確かであり、代替電極の要望が強い。
一方有機物を選択的に分解する電極として酸化スズ電極が知られている。非特許文献1には染料処理についての開示がある。これによると、酸化スズ電極は酸素過電圧が極めて高く、電位が高いため有機物を選択的に分解することができる。
さらに酸化スズ自体の導電性が良くなく、特に水溶液電解の範囲である100℃以下では導電材としてアンチモンを加えた電極であっても十分でなく、バルクタイプの電極では構造体自体から大きな電流を取りにくかった。
また電極物質そのものについても、例えば酸化スズは有機物を分解する上では好ましいが、電流を大きく取れない等の問題があり、これらの点で改良を必要とした。またバルクで使う場合にはその大きな電気抵抗の為に、構造体での電圧損が大きく、そのために発熱並びに電力消費が大きくなるという問題点を有していた。
既述の通り、酸化スズは通常の酸素発生電極より、有機廃水などの水処理やオゾンや過酸化水素の電解生成の電位に近い陽極電位を有し、本来水処理やオゾン発生に適し、しかも二次公害を発生させることのない電極物質である。有機排水処理に適している理由の1つとして、酸化スズの陽極酸化能が有機物特にベンゼン環を有する化合物の分解に適当であることが挙げられる。このように酸化スズは陽極酸化能が高いが、スズは周期律表上では鉛に近く、酸化スズの現実の電位は、必要とされる以上に高いことが知られている。
つまり酸化鉛は硫酸中ではその過電圧を含めて、約2VvsNHEで運転されるのに対して、酸化スズは3VvsNHE程度の電位で運転されている。しかしながら、酸化作用そのものは一部を除いては酸化鉛より劣ることが知られている。
本発明者は、酸化スズのこのような高い電位をやや低くし、大きな通電抵抗を低くして大電流下での使用を可能にすることに関し鋭意検討を行った。
その結果、水電解による水素や酸素生成に適し、電気抵抗は極めて低いが有機物分解には不向きとされる白金族金属の酸化物、特に酸化イリジウムを酸化スズに添加することによって、酸化スズの陽極酸化作用がほとんど変わらず、しかも電解電圧が大幅に低下し更に大電流での処理を可能にすることを見出して本発明に至った。
即ち白金族金属酸化物が15モル%以下の場合、より好ましくは10モル%以下の場合は、
本発明の電解用電極の陽極としての電位は酸化鉛より若干高い程度に収まり、しかも有機物を選択的に分解する様になる。またこれによって電流密度も白金族金属酸化物を含まない場合に比較して10倍程度になり、10A/dm2の電流での電解が可能となる。
酸化イリジウム等の白金族金属酸化物はそれ自体は電極物質として極めて活性であるので、水溶液中で陽極として使用すると酸素発生が主体となり、被処理水中に含まれるCOD成分や有機物の分解には必ずしも有効には働かない。一方酸化スズは、酸素や水素発生用電極としての活性は極めて小さいが、電極の安定化と電極物質の選択反応性に有効に働き、いわば助触媒的作用を有する。
このような機能を有する白金族金属酸化物と酸化スズとを組み合わせることにより、次の理由で水処理やオゾン発生が効率良く行えると考えられる。つまり白金族金属酸化物は酸化スズの安定化作用によって電解による消耗が少なくなると共に、白金属族金属酸化物に掛かる過電圧が大きくなり、その電位が酸素又は水素発生過電圧より、有機物分解やオゾン発生の電位に近づく事により有効に有機物を分解し、あるいはオゾンを発生させることが出来るようになる。
通常行われる塩化物水溶液又は塩化物でないスズ化合物溶液に、塩化イリジウム酸などの塩化物を加えた溶液を使用する場合も、中間的に塩化スズが生成するためかスズ成分の部分揮散が問題となる。
これを避ける為には、スズ化合物としてアルコキシスズ化合物などの有機スズ化合物を水和して部分的にコロイダルな水酸化物とし、これを塩化イリジウム及びアルコキシスズ化合物などを溶解した希酸溶液と混合して塗布液とすればよい。勿論、有機スズ化合物に直接塩化イリジウムないし塩化イリジウム酸を溶解したものでも、わずかなスズの揮散を考慮に入れた組成とすれば問題無い。
また酸化スズの代わりに酸化スズ+酸化アンチモンの複合酸化物を使用することも出来る。この場合はスズ原料の代わりにスズ化合物とアンチモン酸また化合物を加えて溶液とし、それを塗布した後熱分解を行うこと、或いは酸化スズと酸化アンチモン粉末を懸濁した溶液を塗布し、乾燥後熱分解を行うことによって酸化イリジウム等の白金族金属酸化物を含む酸化アンチモン含有酸化スズ被膜を得ることが出来る。
前記添加は例えば上記塗布液に塩化アンチモンを攪拌しながら注入すれば良いが、多量の塩素根(塩化アンチモン)が導入されるとスズの揮散が増加すること、また塩素根をアルコキシド化することにより、安定化はするが、アンチモンが沈殿しやすくなるため、スズに対するアンチモンの最大量は前述の通り30モル%以下であることが望ましくそれ以上では塗布液が不安定化する。なおアンチモンの下限は0モル%である。
白金族金属酸化物添加により上記したように安定化すると共に酸化スズ部分の導電性が良くなるためか電流密度10A/dm2以上までの電流が流せるようになると共に、被覆層自体が安定化し、たとえ有機物含有電解浴でも長期間安定して使えるようになる。
製造方法は上記した様なゾルゲル的な方法のほかに通常の熱分解により十分に目的の達成が可能となる。
本発明の電解用電極は、排水中の有機物やいわゆる有機、無機CODを分解する排水処理、冷却海水中の微生物を分解することによって冷却回路への微生物付着を防止して冷却効率の低下を防ぐ海水処理、あるいはオゾンや過酸化水素を発生させる電解などに使用できる。
耐食性金属基材として、表面をあらかじめ脱脂し、90℃の25%硫酸で1時間酸洗して前処理を行った厚さ1mmのチタン板9枚を使用した。このチタン板表面に、酸化スズと酸化イリジウムの複合酸化物被膜を次のように形成して陽極を作製した。
まず塩化第一スズ(SnCl2)をノーマルプロピルアルコールに溶解し、コンデンサーを取り付けた丸底フラスコに注ぎ、このフラスコを下方から加熱し、蒸留を行った。ノーマルプロピルアルコールを足しながら12時間蒸留を行うことによって、塩化スズの塩素根のほとんどがプロポキシ基に置き換わり、テトラブトキシスズ((C4H9O)4Sn)のプロピルアルコール溶液が得られた。
各塗布液を前記各チタン板表面に刷毛にて塗布し、120℃で10分間乾燥させた後に、空気を流通させ、490℃に保持したマッフル炉中に入れ、10分間熱分解を行った。塗布、熱分解の操作を12回繰り返して表面に見かけ厚み2から3ミクロンの電極物質被膜を形成して試料電極とした。スズは部分的に揮散する可能性があるので生成した被膜中のスズとイリジウムの組成分析(イリジウムのモル%)を蛍光エックス線法によって行った後に、3N硫酸中で陽極電位を計測した。計9枚の試料電極の被膜中のイリジウムのモル%と陽極電位を表1に示した。
更に各試料電極ごとに10Vを印加しその電解電圧で大電流(5A/dm2)が流れるか否かを観察し、流れた場合は表1に「可」を、流れなかった場合は表1に「不可」を付した。
表1に示すように、被膜中のイリジウムの含有量が0.9(実施例1)から15.0モル%(実施例5)の間では、陽極電位が1.85〜2.8Vに維持され、典型的な酸素発生電位の1.70Vよりかなり高く、酸化イリジウムの添加効果が観察された。イリジウムの含有量が15.0モル%より多くなると陽極電位が典型的な酸素発生電位の1.70Vまで又はその近傍まで下降し、酸化イリジウムの添加効果が見られなくなった。
テトラブトキシスズ((C4H9O)4Sn)のブタノール溶液にスズに対して五塩化アンチモンを加え((Sb/Sn)モル%が、実施例6では5モル%、実施例7では10モル%、実施例8では15モル%、実施例9では20モル%及び実施例10では25モル%)、それぞれに(Sn+Sb)に対して5モル%となる量の三塩化イリジウム(IrCl3/nH2O)を加えて加熱しながら溶解して塗布液とした。
これら4種類の塗布液を使用し、実施例1と同じ4枚のチタン板に実施例1と同じ条件で被膜を形成して試料電極とした。スズは部分的に揮散する可能性があるので生成した被膜中のアンチモンとスズの組成分析を蛍光エックス線法によって行った後に、3N硫酸中で陽極電位を計測した。計4枚の試料電極の被膜中のアンチモンのモル%と陽極電位を表2に示した。
更に各試料電極ごとに10Vを印加しその電解電圧で大電流(5A/dm2)が流れるか否かを観察し、流れた場合は表2に「可」を、流れなかった場合は表2に「不可」を付した。
アンチモン量を30モル%とすると酸化アンチモンと思われる白色の沈殿が出てくることが認められた。これは40℃以上まで温度を上げるとほぼ消えるが、室温では沈殿物が生成することがわかった。この沈殿物は塩酸濃度を上げることで溶解したが、塩素根が増加するとスズが揮散しやすくなることから、塩素や塩酸の添加は避けることが望ましいと判断した。
Claims (11)
- 耐食性金属基材、及び当該耐食性金属基材上に被覆された、酸化スズ及び当該酸化スズに対して0.5から15モル%の白金族金属酸化物を含む電極物質被膜とを含んで成ることを特徴とする電解用電極。
- 耐食性金属基材、及び当該耐食性金属基材上に被覆された、酸化スズと酸化アンチモン及び当該酸化スズ及び酸化アンチモンに対して0.5から15モル%の白金族金属酸化物を含む電極物質被膜とを含んで成ることを特徴とする電解用電極。
- 白金族金属酸化物の含有率が1から10モル%であることを特徴とする請求項1又は2記載の電解用電極。
- 白金族金属酸化物が酸化イリジウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の電解用電極。
- 酸化アンチモンの含有率が酸化スズに対し30モル%以下であることを特徴とする請求項2記載の電解用電極。
- 耐食性金属基材がチタン製であり、該金属基材と電極物質被膜との間に導電性の酸化チタン含有被膜を介在させることを特徴とする請求項1又は2記載の電解用電極。
- 導電性酸化チタン含有被膜が酸化チタンと酸化タンタルからなる熱分解生成膜であることを特徴とする請求項6記載の電解用電極。
- 有機排水を含む水処理用、又はオゾン又は過酸化水素製造用である請求項1又は2記載の電解用電極。
- 酸化スズと酸化アンチモンを、スズ、並びに白金族金属を含有する溶液中に分散し、得られた分散液を耐食性金属基材上に塗布し、熱分解によって酸化スズと酸化アンチモン及び当該酸化スズ及び酸化アンチモンに対して0.5から15モル%の白金族金属酸化物を含む電極物質被膜を前記耐食性金属基材上に形成することを特徴とする電解用電極の製造方法。
- 酸化スズと酸化アンチモンが共沈物であり、その製造をゾルゲル法で行うことを特徴とする請求項9記載の電解用電極の製造方法。
- スズ、アンチモンの有機化合物の混合物を水和することにより酸化スズと酸化アンチモンの共沈物を生成し、当該共沈物を乾燥粉砕後、スズ、イリジウム化合物溶液中に分散して塗布液とし、耐食性金属基材上に塗布し、熱分解によって表面に酸化スズを含む電極物質被膜を形成することを特徴とする請求項9記載の電解用電極の製造方法。
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