JP2006291396A - エアバッグ用基布およびエアバッグおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、エアバッグ展開時に縫製部の目開きを抑えることにより内圧保持性能に優れたエアバッグを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維織物からなるエアバッグ用基布であって、該織物がリップストップ組織の織物であり、かつ、リップストップ組織の織物の少なくとも片面に合成樹脂が付着しており、該基布の通気度が実質的にゼロであり、かつ、滑脱抵抗力が200〜500Nであることを特徴とするものである。また、かかるエアバッグ用基布の製造方法は、リップストップ組織の合成繊維織物に合成樹脂をナイフコーティングにより付与することを特徴とするものである。
【選択図】 なし
本発明は、エアバッグ展開時に縫製部の目開きを抑えることにより内圧保持性能に優れたエアバッグを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維織物からなるエアバッグ用基布であって、該織物がリップストップ組織の織物であり、かつ、リップストップ組織の織物の少なくとも片面に合成樹脂が付着しており、該基布の通気度が実質的にゼロであり、かつ、滑脱抵抗力が200〜500Nであることを特徴とするものである。また、かかるエアバッグ用基布の製造方法は、リップストップ組織の合成繊維織物に合成樹脂をナイフコーティングにより付与することを特徴とするものである。
【選択図】 なし
Description
本発明は、エアバッグ展開時の乗員へのダメージを軽減するため、エアバッグ縫製部の目開きを抑え、基布の通気度を実質的にゼロにすることよりエアバッグの内圧保持性能に優れ、基布の柔軟性、かつ、織物と樹脂との接着性に優れたエアバッグ用基布およびそれからなるエアバッグおよびその製造方法に関するものである。
近年、各種交通機関、特に自動車の事故が発生した際に、乗員の安全を確保するために、種々のエアバッグが開発され、その有効性が認識され、実用化が進んでおり、特に、前面衝突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグ、即ち前席用エアバッグ(運転席用、助手席用)は、通常の乗用車には標準装備されるほど普及している。一方、車の側面への衝突、即ち側突事故用として、シート内蔵型のサイドバッグ、車内のルーフサイドから側部窓上に降りてくるカーテン式サイドバッグ(以下、カーテンバッグ)が開発され、搭載する車も多くなってきている。これらのサイドバッグ、特にカーテンバッグは、高い気密性が必要とされ、車が横転した時も乗員が車外に放出されないように設計されたものもあり、長時間(数秒間)に亘ってエアバッグの内圧を保持するようにされる。
そのような目的に供されるエアバッグにおいては、エアバッグを構成する基布の気密性を高くすることが求められ、耐熱性、摩耗性、難燃性などに優れる被覆剤、例えば、シリコ−ン、ポリウレタン、クロロプレンなどのゴムや樹脂が用いられている。また、衝突時に乗員がエアバッグに保護される際、エアバッグの気密性が下がらないように、基布の抗目ずれ性を、特に応力が集中する縫製部での抗目ずれ性を上げる構造が求められている。この内、最も多用されている構造は、バッグの機械的特性、柔軟性、価格の低減などのために、平織りによる低密度基布に対し、シリコーン樹脂を可能な限り薄くコーティングをしたコーティング基布である。平織り構造にすると、エアバッグに要求される機械的特性、特に強力に富んだ構造となる。低密度基布は、柔軟性および価格面において有効である。さらに、シリコーン樹脂の低塗工化はエアバッグの気密性、耐熱性などに優れた構造となる。
例えば、そのような構造としては、特許文献1に記載の発明は、織物の少なくとも片面に抗目ズレ性を向上させる特定な機能性化合物を付着させる点に特徴があり、特定な化合物として、無機系ケイ素化合物を好適であるとしている。バインダーとして各種樹脂を挙げて説明している。このように、織布に異種材料を付着させて、基布の特定の性能を改善せんとの試みがなされている。この提案では、異種材料を織布に付着させることで、抗目ズレ性は向上するが、本特許記載の粒子径が大きい無機ケイ素化合物を含んだ樹脂発泡液をロータリースクリーン装置で基布に浸透させる方法ではバッグの柔軟性が損なわれることや基布に通気性が生じるなどの問題がある。
また、特許文献2に記載の発明は、リップストップ組織の織物の少なくとも片面に合成樹脂が付着した裁断・縫製時にほつれがない、柔軟性に優れたエアバッグ基布を提案している。この提案では、柔軟性に富んだリップストップ組織の織布を適用することで、エアバッグ基布としての柔軟性は良好であるが、実施例等で記載されているように水性ウレタン樹脂発泡希釈液をロータリースクリーン装置でコーティングし、基布に通気性があるため、エアバッグの気密性が劣り、上記記載のカーテンバッグのような側突事故用のエアバッグに対応することができない。
特開2002−220780号公報
特開平11−293541号公報
そこで本発明の目的は、かかる従来のエアバッグ用基布の背景に鑑み、エアバッグを構成するエアバッグ用基布において、リップストップ組織の織物を使用し、合成樹脂を付着させることにより優れた柔軟性、通気度が実質的にゼロとなる優れた内圧保持性を有し、樹脂との接着性に優れたエアバッグ用基布とその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記エアバッグ用基布を用いてなる、エアバッグ展開時に縫製部の目開きを抑えることにより内圧保持性能に優れたエアバッグを提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維織物からなるエアバッグ用基布であって、該織物がリップストップ組織の織物であり、かつ、リップストップ組織の織物の少なくとも片面に合成樹脂が付着しており、該基布の通気度が実質的にゼロであり、かつ、滑脱抵抗力が200〜500Nであることを特徴とするものである。
本発明のエアバッグ用基布の好ましい態様のひとつは、前記のエアバッグ用基布のリップストップ組織の織物を構成する地糸の繊度がリップストップ糸の繊度に対し、小さいことである。
本発明のエアバッグ用基布の好ましい態様のひとつは、前記のエアバッグ用基布の合成樹脂が、織物表面に被膜形成しており、基布の剥離強力が20〜100N/cmである。
本発明のエアバッグ用基布は、それを縫製等によってエアバッグに仕立てることができる。
本発明のエアバッグ用基布の製造方法は、リップストップ組織の合成繊維織物に合成樹脂をナイフコーティングにより付与することを特徴とするものである。
本発明によれば、エアバッグ展開時の乗員へのダメージを軽減するため、エアバッグ縫製部の目開きを抑え、基布の通気度を実質的にゼロにすることができるので、エアバッグの内圧保持性能に優れ、基布の柔軟性、かつ、織物と樹脂との接着性に優れたエアバッグ用基布を提供することができる。つまり、本発明によればエアバッグによる乗員保護システムをより一層普及促進させることができる。
本発明は、前記課題、つまりエアバッグ展開時の乗員へのダメージを軽減するため、エアバッグ縫製部の目開きを抑え、基布の通気度を実質的にゼロにすることよりエアバッグの内圧保持性能に優れ、基布の柔軟性、かつ、織物と樹脂との接着性に優れたエアバッグに供するためのエアバッグ用基布について鋭意検討した結果、合成繊維織物がリップストップ組織の織物であり、かつ、リップストップ組織の織物の少なくとも片面に合成樹脂が付着しており、該基布の通気度が実質的にゼロであり、かつ、滑脱抵抗力が200〜500Nであることを特徴とするエアバッグ用基布が、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
すなわち、その条件として、製織工程においてリップストップ組織の織物を構成する地糸の繊度がリップストップ糸の繊度に対し、小さい織物を製織し、そしてその織物の少なくとも片面に仕上工程においてフローティングナイフまたはロールオンナイフコーティングを実施してみたところ、かかる要件を満足するエアバッグ用基布が得られ、上記課題を解決できることに成功したものである。
本発明で用いられる織物としては、合成繊維固有の収縮率から、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン4・6およびナイロン6とナイロン6・6の共重合ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミンなどを共重合したポリアミド繊維等から構成される合成繊維織物が好適に用いられる。これらの中でも、繊維素材として、ナイロン6・6とナイロン6が耐衝撃性の面から特に好ましく用いられ、また、ナイロン6・6が耐熱性の面から特に好ましく用いられる。
かかる繊維は、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料および難燃剤などを繊維に含有させることができる。
本発明で用いられる織物を構成する繊維はマルチフィラメントであり、マルチフィラメントとしては、基布の機械的特性面と柔軟性面から、その総繊度が150〜700dtexの範囲内にあることが好ましく、さらに、柔軟性の面から、総繊度が200〜500dtexの範囲内あることが好ましい。また、本発明で用いられるマルチフィラメントは、糸の剛性を低下させることによる柔軟性面から、本数は好ましくは36〜192本の範囲内であり、単繊維繊度は3〜8dtexの範囲であることが好ましい。
本発明で用いられる織物を構成するマルチフィラメントは、エアバッグ用基布の薄地化、柔軟性面から、単繊維の断面形状が、扁平断面、特に断面の長軸と短軸との比、即ちアスペクト比が好ましくは2〜4の範囲内の扁平断面形状にすることが好ましい。すなわち、単繊維がこのような扁平断面形状であるマルチフィラメントを用いると、エアバッグ用基布の厚みを薄くすることができる上に、収納性を向上させることができる。かかる扁平断面形状の単繊維は、その断面が通常は楕円形であるが、アスペクト比2〜4を満足するならば楕円形以外の扁平断面形状であってもよい。例えば、長方形、菱形および繭型のような左右対称型は勿論、左右非対称型でもよく、あるいは、それらの組み合わせ型の形状のものでもよい。更に、上記を基本型として、突起や凹みあるいは部分的に中空部があるものであってもよい。
エアバッグ用基布を構成する織物を構成する経糸と緯糸が、単繊維が扁平断面糸からなるマルチフィラメントであれば、扁平断面糸は丸断面糸に比べ、エアバッグ用基布を構成する織り糸が特定の範囲内の張力下により、長手方向に拡がりやすく、その拡がり方により、織物同士の摩擦抵抗値を特定の範囲内に満たすような特殊な構造となりうるので好ましい。
エアバッグ用基布を構成する織物を構成する経糸と緯糸が、単繊維が扁平断面糸からなるマルチフィラメントであれば、扁平断面糸は丸断面糸に比べ、エアバッグ用基布を構成する織り糸が特定の範囲内の張力下により、長手方向に拡がりやすく、その拡がり方により、織物同士の摩擦抵抗値を特定の範囲内に満たすような特殊な構造となりうるので好ましい。
本発明で用いられるマルチフィラメントは、本発明の効果を妨げない範囲で、他種のマルチフィラメントを混繊したものであってもよい。また、本発明で用いられる織物は、経糸と緯糸の両方に当該マルチフィラメントを用いてもよく、また、本発明の効果を妨げない範囲で、他種の糸条を交織してもよい。
かかる織物の組織としては、柔軟性、機械的特性の面からリップストップ組織であることが必須である。リップストップ組織の織物は平組織の織物に比べ織組織の自由度が増すために、基布の引裂強力が高くなり、かつ基布の柔軟性が向上する。従って、基布の柔軟性が向上することで、バッグ収納性面でパッケージボリュームが小さくなることと、バッグをパッケージに折り畳んで収納する際に折り畳み易くなる。
リップストップ組織の織物を構成する糸の繊度は、地糸がリップストップ糸に対し、小さいことが、リップストップ組織の柔軟性と織物と樹脂との接着性を両立させるのに好ましい。つまり、ナイフコーティングで基布表面を塗工する場合、基布表面にナイフが押し付けられ、樹脂を一定量繊維間の空隙に浸透させることにより、織物と樹脂との接着性を上げる効果がある。本発明のように地糸の繊度がリップストップ糸の繊度に対し小さくすることにより、リップストップ糸が地糸に比べ、ナイフにより押し付けられる為、樹脂の浸透度が大きくなり接着性に優れる基布となる。また、リップストップ組織の織物は、経糸および緯糸がリップストップ糸に、または経糸あるいは緯糸の一方がリップストップ糸であってもよい。またリップストップ部交点の緯糸打ち込みは、同口2本入れ、また同口1本入れであってもよい。通常、リップストップ組織の織物は、経糸および緯糸がそれぞれ2本引き揃えられて構成されるが、経方向および緯方向に470dtex換算で2〜20mm間隔で織り込んだ織物が好ましい。
リップストップ組織の織物を構成する糸の繊度は、地糸がリップストップ糸に対し、小さいことが、リップストップ組織の柔軟性と織物と樹脂との接着性を両立させるのに好ましい。つまり、ナイフコーティングで基布表面を塗工する場合、基布表面にナイフが押し付けられ、樹脂を一定量繊維間の空隙に浸透させることにより、織物と樹脂との接着性を上げる効果がある。本発明のように地糸の繊度がリップストップ糸の繊度に対し小さくすることにより、リップストップ糸が地糸に比べ、ナイフにより押し付けられる為、樹脂の浸透度が大きくなり接着性に優れる基布となる。また、リップストップ組織の織物は、経糸および緯糸がリップストップ糸に、または経糸あるいは緯糸の一方がリップストップ糸であってもよい。またリップストップ部交点の緯糸打ち込みは、同口2本入れ、また同口1本入れであってもよい。通常、リップストップ組織の織物は、経糸および緯糸がそれぞれ2本引き揃えられて構成されるが、経方向および緯方向に470dtex換算で2〜20mm間隔で織り込んだ織物が好ましい。
本発明のエアバッグ用基布は、織物の少なくとも片面が樹脂で被覆されていることが必要である。織物に樹脂を被覆させることで空気遮断性を持たせ、車輌衝突時にエアバッグが展開したとき、バッグが一定時間膨張し乗員の衝撃をより緩和させることができる。さらには、インフレーターから発生する高温の窒素ガスからエアバッグ用基布を構成する織物を守ることができる。
本発明で用いられる樹脂としては、耐熱性、耐寒性および難燃性を有する樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂およびフッ素樹脂などが挙げられる。中でもシリコーン樹脂が特に好ましく用いられる。シリコーン樹脂としては、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニル系シリコーンおよびフロロ系シリコーンが好ましく用いられる。また、本発明で用いられる樹脂の粘度は5000〜40000cpsの範囲内にあることが樹脂の浸透状態を保持し、織物と樹脂との接着性および基布の柔軟性の点から好ましい。ナイフコーティングにより基布の幅方向に安定的に塗工する上では10000〜20000cpsの範囲内であることがさらに好ましい。樹脂粘度が5000cps未満であると、織物内部に大量の樹脂が浸透することにより、基布の通気度を実質的にゼロにするためには多くの樹脂が必要となり基布重量が大きくなり、バッグの高速展開性に悪影響を及ぼす恐れがある。一方、樹脂粘度が40000cpsより大きくなると、織物内部に樹脂が浸透しにくく、かつ塗工量が多くなり織物と樹脂との接着性に劣るものとなる。
また、樹脂としては、難燃化合物を含有している樹脂が好ましい。難燃化合物としては、臭素や塩素などのハロゲン化合物、特にハロゲン化シクロアルカン、白金化合物、酸化アンチモン、酸化銅、酸化チタン、燐化合物、チオ尿素系化合物、カーボンおよびセリウムなどを使用することができ、これらの中でもハロゲン化合物、白金化合物、酸化銅、酸化チタンおよびカーボンがより好ましく用いられる。
本発明のエアバッグ用基布において、樹脂の付着量は、乗員拘束性および柔軟性の面から、5〜40g/m2の範囲内であることが好ましい。付着量が5g/m2未満であれば、織物表面を覆う樹脂が均一に塗布できず、基布の通気度が大きくなり、衝突時に乗員を拘束するだけの内圧が保持できなくなる恐れがある。一方、付着量が40g/m2より大きくなると、エアバッグ用基布を折り畳んだバッグ容積が大きくなり、エアバッグカバーに内蔵するだけの限られたスペースに収納することができないことがある。乗員拘束性および収納性のバランスから、付着量は特に好ましくは10〜30g/m2の範囲内である。本発明ではナイフコーティングにより樹脂を織物に付着させることが重要である。つまり、ナイフコーティングが織物に対し5〜20N/cmの加圧下で行うことが好ましい。5N/cm未満の加圧下であれば、リップストップ組織の織物の内部に樹脂を浸透させることができなくなり、接着性が劣る結果となる。また、20N/cmより大きい加圧下でコーティングする織物表面がナイフにて擦化され、基布強力が低下するばかりか、樹脂が織物内部に必要以上に浸透するため基布通気度を実質的にゼロとするためには、樹脂量が多くなり基布重量が増し、エアバッグの高速展開に悪影響を及びス恐れがある。したがって、上記記載のように本発明のリップストップ組織の織物に対し、特定の粘度を有する樹脂を使用することは織物と樹脂との接着性および基布の柔軟性について非常に大きな効果を有する。
本発明のエアバッグ用基布は、基布の滑脱抵抗力が200〜500Nの範囲内であることが衝突時のバッグ展開における縫製部の目開きを抑え、内圧保持性能を向上させるのに好ましい。かかる滑脱抵抗力が200N未満であると、昨今の導入が著しい高熱量タイプのインフレーターに耐えうることができない。具体的には例えば運転席用の190kPaインフレーターに耐えうることができても、230kPaのような高熱量タイプのインフレーターでは、エアバッグを構成する外周縫製部の穴あきが顕著になり、バッグ内圧が低下する要因となるばかりか、縫製部の穴から熱風が漏れ、乗員損傷の恐れがある。また、500Nよりも大きいと、基布を剛直にする必要があり、柔軟性の面で問題が生じる。ここで、滑脱抵抗力はASTMD6479により測定した。
本発明のエアバッグ用基布は、厚みが0.2〜0.4mmの範囲内であることが好ましく、基布の厚みがこのような範囲にあると、基布強力と収納性のバランスがとれる。基布の厚みは、より好ましくは0.2〜0.3mmの範囲内である。
本発明のエアバッグ用基布は、基布の剥離強力が40〜100Nの範囲内であることが好ましい。剥離強力を上記範囲内にするためには、付着させる樹脂を織物内部まで浸透させる必要があり、糸の自由度が高いリップストップ組織の織物に対し、フローティングナイフまたはロールオンナイフコーティングを施すことが好ましい。また、地糸とリップ糸の繊度を上記記載のような構成にすることでより織物内部に樹脂が入りこみ易くなりさらに好ましい。
本発明のエアバッグ用基布は、衝突時の乗員を拘束する上で、通気度が0.1未満であることが好ましい。さらに、側面衝突等による車の横転に対し、ある一定時間の間基布を膨張させるという点では、実質的に通気度はゼロであることが好ましい。
本発明のエアバッグ用基布の製造方法は、リップストップ組織の合成繊維織物に合成樹脂をフローティングナイフまたはロールオンナイフコーティングにより付与することが必要である。このような製造方法を適用することにより、リップストップ組織の織物の柔軟性を損なわず、合成樹脂を織物内部に浸透させることができるため、柔軟性に富み、かつ織物と樹脂との接着性に優れたエアバッグ用基布が製造可能となる。また、熱処理としては、合成樹脂を付与した後、50〜200℃の条件で熱処理するのが基布の劣化を防ぐためにも好ましく、100〜180℃の温度条件で熱処理するのがさらに好ましい。また必要に応じ、二段処理を施してもよい。なお、合成樹脂の織物への付与は、生機、精練後、乾燥後、あるいは熱セット後にいずれにも、施すことができる。
製織工程で用いられる織機としては、ウォータージェットルーム、エアージェットルームおよびレピアルームなどが用いられる。特に、生産性を高めるためには高速製織が比較的容易なウォータージェットルームが好ましく用いられる。
また、本発明のエアバッグ用基布は、運転席用、助手席用および後部座席用、側面用エアバッグなどに使用することができる。特に、内圧保持性能がより強く要求される側面衝突用のシート内蔵型のサイドバッグ、車内のルーフサイドから側部窓上に降りてくるカーテン式サイドバッグとして使用することが好ましい。
本発明のエアバッグ用基布およびエアバッグの特徴は、エアバッグ展開時の乗員へのダメージを軽減するため、エアバッグ縫製部の目開きを抑え、基布の通気度を実質的にゼロにすることよりエアバッグの内圧保持性能に優れ、基布の柔軟性、かつ、織物と樹脂との接着性に優れているという点にある。
次に、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中における各種評価は、下記の方法に従って行った。
厚み:JIS K6328−00に基づき、厚みを測定した。
目付:JIS K6328−00に基づき、目付を測定した。
引張強力:JIS K6328−00(5.3.5)に基づき、織物幅は3cm、引張つかみ間隔15cm、引張速度200mm/minで引っ張ったときの破断強力を測定した。
引張強力:JIS K6328−00(5.3.5)に基づき、織物幅は3cm、引張つかみ間隔15cm、引張速度200mm/minで引っ張ったときの破断強力を測定した。
破断伸度 :JIS K6328−00(5.3.5)に基づき、破断伸度を測定した。
引裂強力 :JIS K6328−00(5.3.6)に基づき、引裂強力を測定した。
滑脱抵抗力:ASTM D6479−2002に基づき、50mm×300mmの織物サンプルを引っ張りつかみ間隔200mm、引張速度200mm/minで引っ張った時の最高強力を測定した。
剥離強力:JIS K6328−00(5.3.7)に準じ、総厚みが2mmになるように接着剤(東レ・ダウコーニングシリコーン製 SE960)で張り合わせた後、20℃×65%で3日間放置し、2cm巾のサンプルを速度50mm/minにて引っ張った時の剥離強度を測定した。
燃焼性:FMVSS302により燃焼速度を測定した。
基布の通気度:流体(空気)を19.6kPaの圧力に調整して流し、そのとき通過する空気流量を測定した。
剛軟度:JIS L1096−00(6.19.1)に基づき、剛軟度を測定した。
(実施例1)
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を地糸に、総繊度470dtex、72フィラメント、強度8.6cN/dtex、伸度24.0%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸をリップストップ糸に使用し、ウォータージェットルームにて、リップストップ部の緯糸打ち込みが同口1本入れで、経糸と緯糸の織密度がともに59本/2.54cmでリップストップ間隔が1.5cmのリップストップ組織の織物を得た。次いでこの織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、コーティングを行った後、190℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が30g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は、抗目ずれ性(滑脱抵抗力)および接着性(剥離強力)に優れ、かつ柔軟性、通気度ゼロによる気密性に優れていた。
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を地糸に、総繊度470dtex、72フィラメント、強度8.6cN/dtex、伸度24.0%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸をリップストップ糸に使用し、ウォータージェットルームにて、リップストップ部の緯糸打ち込みが同口1本入れで、経糸と緯糸の織密度がともに59本/2.54cmでリップストップ間隔が1.5cmのリップストップ組織の織物を得た。次いでこの織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、コーティングを行った後、190℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が30g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は、抗目ずれ性(滑脱抵抗力)および接着性(剥離強力)に優れ、かつ柔軟性、通気度ゼロによる気密性に優れていた。
(比較例1)
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を地糸およびリップストップ糸に使用し、ウォータージェットルームにて、リップストップ部の緯糸打ち込みが同口2本入れで、経糸と緯糸の織密度がともに59本/2.54cmでリップストップ間隔が1.5cmのリップストップ組織の織物を得た。次いでこの織物に、水系シリコーン樹脂液を、ロータリースクリーン装置により、コーティングを行った後、160℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が30g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、気密性については問題なかったが、抗目ずれ性、接着性が劣っていた。
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を地糸およびリップストップ糸に使用し、ウォータージェットルームにて、リップストップ部の緯糸打ち込みが同口2本入れで、経糸と緯糸の織密度がともに59本/2.54cmでリップストップ間隔が1.5cmのリップストップ組織の織物を得た。次いでこの織物に、水系シリコーン樹脂液を、ロータリースクリーン装置により、コーティングを行った後、160℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が30g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、気密性については問題なかったが、抗目ずれ性、接着性が劣っていた。
(比較例2)
実施例1で得られた織物に、精練セット処理を行いノンコート基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、抗目ずれ性については問題なかったが、気密性、接着性が劣っていた。
実施例1で得られた織物に、精練セット処理を行いノンコート基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、抗目ずれ性については問題なかったが、気密性、接着性が劣っていた。
(実施例2)
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を地糸に、総繊度470dtex、72フィラメント、強度8.6cN/dtex、伸度24.0%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸をリップストップ糸に使用し、ウォータージェットルームにて、リップストップ部の緯糸打ち込みが同口1本入れで、経糸と緯糸の織密度がともに53本/2.54cmでリップストップ間隔が2cmのリップストップ組織の織物を得た。次いでこの織物に、粘度11Pa・s(11,000cP)の無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、コーティングを行った後、190℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が25g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は、抗目ずれ性(滑脱抵抗力)および接着性(剥離強力)に優れ、かつ柔軟性、通気度ゼロによる気密性に優れていた。
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を地糸に、総繊度470dtex、72フィラメント、強度8.6cN/dtex、伸度24.0%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸をリップストップ糸に使用し、ウォータージェットルームにて、リップストップ部の緯糸打ち込みが同口1本入れで、経糸と緯糸の織密度がともに53本/2.54cmでリップストップ間隔が2cmのリップストップ組織の織物を得た。次いでこの織物に、粘度11Pa・s(11,000cP)の無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、コーティングを行った後、190℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が25g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は、抗目ずれ性(滑脱抵抗力)および接着性(剥離強力)に優れ、かつ柔軟性、通気度ゼロによる気密性に優れていた。
(比較例3)
実施例2で得られた織物に、水性のポリエステル系ウレタン樹脂を固形分で25重量%、アニオン系起泡剤1.5重量%に調整し、発泡倍率を10倍とした樹脂発泡希釈液でロータリースクリーンコーターにより、コーティングを行った後、130℃の温度で2分間加熱処理を行い、樹脂の付着量が18g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、接着性、抗目ずれ性については問題なかったが、気密性が劣っていた。
実施例2で得られた織物に、水性のポリエステル系ウレタン樹脂を固形分で25重量%、アニオン系起泡剤1.5重量%に調整し、発泡倍率を10倍とした樹脂発泡希釈液でロータリースクリーンコーターにより、コーティングを行った後、130℃の温度で2分間加熱処理を行い、樹脂の付着量が18g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、接着性、抗目ずれ性については問題なかったが、気密性が劣っていた。
(比較例4)
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を使用し、ウォータージェットルームにて、経糸と緯糸の織密度がともに53本/2.54cmの平組織の織物を得た。次いでこの織物に、水系シリコーン樹脂液を、ロータリースクリーン装置によりコーティングを行った後、190℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が29g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は、抗目ずれ性(滑脱抵抗力)および接着性(剥離強力)に優れ、かつ柔軟性、通気度ゼロによる気密性に優れていた。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、接着性、気密性については問題なかったが、抗目ずれ性が劣っていた。
総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%、無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を使用し、ウォータージェットルームにて、経糸と緯糸の織密度がともに53本/2.54cmの平組織の織物を得た。次いでこの織物に、水系シリコーン樹脂液を、ロータリースクリーン装置によりコーティングを行った後、190℃の温度で2分間加硫処理を行い、樹脂の付着量が29g/m2となるエアバッグ用基布を得た。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は、抗目ずれ性(滑脱抵抗力)および接着性(剥離強力)に優れ、かつ柔軟性、通気度ゼロによる気密性に優れていた。このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1に示した。このエアバッグ用基布は柔軟性、接着性、気密性については問題なかったが、抗目ずれ性が劣っていた。
本発明のエアバッグ用基布およびエアバッグの特徴は、エアバッグ展開時の乗員へのダメージを軽減するため、エアバッグ縫製部の目開きを抑え、基布の通気度を実質的にゼロにすることよりエアバッグの内圧保持性能に優れ、基布の柔軟性、かつ、織物と樹脂との接着性に優れている。そのため、本発明のエアバッグ用基布は、運転席用、助手席用および後部座席用、側面用エアバッグなどにも好適に使用することができる。
Claims (5)
- 合成繊維織物からなるエアバッグ用基布であって、該織物がリップストップ組織の織物であり、かつ、リップストップ組織の織物の少なくとも片面に合成樹脂が付着しており、該基布の通気度が実質的にゼロであり、かつ、滑脱抵抗力が200〜500Nであることを特徴とするエアバッグ用基布。
- リップストップ組織の織物を構成する地糸の繊度がリップストップ糸の繊度に対し、小さいことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用基布。
- 合成樹脂が、織物表面に被膜形成しており、基布の剥離強力が40〜100N/cmである請求項1または2記載のエアバッグ用基布。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いたエアバッグ。
- リップストップ組織の合成繊維織物に合成樹脂をナイフコーティングにより付与することを特徴とするエアバッグ用基布の製造方法。
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JP2005114314A JP2006291396A (ja) | 2005-04-12 | 2005-04-12 | エアバッグ用基布およびエアバッグおよびその製造方法 |
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---|---|---|---|---|
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WO2007142214A1 (ja) * | 2006-06-09 | 2007-12-13 | Toyo Boseki Kabushiki Kaisha | エアバッグ用織物 |
WO2007148791A1 (ja) * | 2006-06-23 | 2007-12-27 | Toray Industries, Inc. | エアバッグ用織物、エアバッグおよびエアバッグ用織物の製造方法 |
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2005
- 2005-04-12 JP JP2005114314A patent/JP2006291396A/ja active Pending
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