JP2006275280A - 摺動部材及び流体機械 - Google Patents

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Takeyoshi Okawa
剛義 大川
Nobuaki Takeda
信明 武田
Shunji Kasai
俊二 笠井
Takuya Kinoshita
琢哉 木下
Manabu Asai
学 浅井
Norihiko Miki
規彦 三木
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Abstract

【課題】
基材の表面に対するフッ素樹脂を含む摺動性被膜の密着性を向上させた摺動部材及び圧縮機を提供する。
【解決手段】
スクロール型圧縮機(10)におけるスライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)との摺動部分に軸受メタルの潤滑部(70)を設ける。潤滑部(70)の内周面は、鉄製の基材の表面粗さRaを3.7μmとし、その表面にFEP及びPTFEを含む樹脂層を設けて形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材及び流体機械圧縮機に関し、特に、金属製の基材の表面にフッ素を含有する樹脂層を備えた摺動部材及びそれを用いた流体機械に係るものである。
現在使用されているほとんどの機械には軸受けや互いに係合する歯車などの摺動部材が用いられている。このような摺動部材は所要の機械的強度を必要とされるのと同時に、表面においては摺動性あるいは耐摩耗性を必要とされる。摺動部分に潤滑剤を供給することによって摺動性や耐摩耗性を満たす方法もあるが、摺動部材が用いられる場所によっては潤滑剤を供給することが好ましくない場合もある。また、潤滑剤を供給することがコスト増となる場合も多い。従って、潤滑剤を用いないで摺動性あるいは耐摩耗性を表面に具備させる技術も非常にたくさん開発されており、例えば摺動部材の表面に摺動性皮膜を形成する技術を挙げることができる。
ここで、摺動部材は機械的強度を要求されるため、摺動部材の基材は金属である場合が多い。一方、摺動性皮膜にはMoS2やグラファイトのような固体潤滑剤あるいはフッ素樹脂のような高分子化合物が、摺動性能が良好なため多く用いられている。しかし、このような固体潤滑剤や高分子化合物(樹脂)は基材の金属との密着性に劣るため、この密着性を向上させるために様々な検討が行われている。
密着性の向上手段として、基材表面を荒らしてその粗面に固体潤滑剤や樹脂を塗布する方法が多く検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。この方法は、基材表面の微細な凹部に固体潤滑剤や樹脂を食い込ませて密着性を向上させるものである。
特開平5−180231号公報 特開2000−145804号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、金属基体の表面層を硬質化することが必須であり、このような硬質化を行わない摺動性部材には適用できない。
また、特許文献2に開示されているバーフィールド型等速ジョイントは、ショットブラスト処理によって基材表面を中心線平均粗さRaで10〜30μmの表面粗さにしたものである。このため、表面には単純な形状の大きな凹凸があるだけであり、固体潤滑剤や樹脂の食い込み効果が小さい。従って、密着性が向上せず、特に、樹脂を塗布した場合は運転の途中で樹脂が剥離して摩擦係数が大幅に上がってしまうという問題があった。この問題は、ショットブラスト処理によって基材表面を中心線平均粗さRaで10〜30μmの表面粗さにした後に化成処理を行っても解決しない。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、基材の表面に対するフッ素樹脂を含む摺動性被膜の密着性を向上させた摺動部材及び流体機械を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本願発明は、摺動部材が金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を備えるようにしたものである。
具体的に、第1の発明は、金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を備えた摺動部材を対象としている。そして、上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第1の発明では、基材の表面と樹脂層とが強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第2の発明では、基材の表面と樹脂層とが非常に強固に密着し、基材からの樹脂層の欠落を確実に防止できる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記粗面化処理が化成処理である。
この第3の発明では、粗面化処理を精度良くかつ再現性良く行うことができる。
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1の発明において、上記樹脂層がポリアミドイミド樹脂を含有している。
この第4の発明では、樹脂層を割れにくくでき、より強固に金属基材に密着させることができる。
第5の発明は、上記第1〜第4の発明の何れか1の発明において、上記基材の表面層には硬質化処理がなされていない。
この請求項5の発明では、硬質化処理をわざわざしなくてもよく、コストダウンとなる。
第6の発明は、摺動部材を備えた流体機械を対象としている。そして、上記摺動部材は、金属製の基材の表面の少なくとも一部にフッ素樹脂を含む樹脂層を備え、上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第6の発明では、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層とが強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第7の発明は、上記第6の発明において、上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第7の発明では、基材の表面と樹脂層とが非常に強固に密着し、基材からの樹脂層の欠落を確実に防止できる。
第8の発明は、上記第6又は第7の発明において、上記粗面化処理が化成処理である。
この第8の発明では、粗面化処理を精度良くかつ再現性良く行うことができる。
第9の発明は、上記第6〜第8の発明の何れか1の発明において、上記樹脂層がポリアイドイミド樹脂を含有している。
この第9の発明では、樹脂層を割れにくくでき、より強固に金属基材に密着させることができる。
第10の発明は、上記第6〜第9の発明の何れか1の発明において、上記摺動部材が冷媒に晒される。
この第10の発明では、冷媒中において特に潤滑性が向上する。
第11の発明は、上記第10の発明において、上記冷媒がフッ素含有物質を含んでいる。
この第11の発明では、冷却効率と潤滑性とが優れた圧縮機となる。
第12の発明は、上記第10又は第11の発明において、上記冷媒に対する潤滑剤の混合率が5%以下である。
この第12の発明では、冷媒に対する潤滑剤の混合率が小さいので、冷却効率が向上する。
第13の発明は、上記第10又は第11の発明において、上記冷媒に潤滑剤が実質的に混合されていない。
この第13の発明では、冷却効率が大きく向上する。
第14の発明は、上記第6〜第13の発明の何れか1の発明において、互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備えている。そして、一対のスクロール(50,60)のうち少なくとも一方が摺動部材を構成している。加えて、該摺動部材であるスクロール(50,60)は、金属製の基材の表面の少なくとも一部に上記樹脂層を備えている。
この第14の発明では、少なくともスクロール(50,60)の一方に形成された樹脂層が強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第15の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の軸受部(53)に直接形成されている。
この第15の発明では、可動スクロール(50)の軸受部(53)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の軸受部(53)と樹脂層が強固に密着すると共に、加工の簡素化が図られる。
第16の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の全体に直接形成されている。
この第16の発明では、可動スクロール(50)全体に樹脂層を形成しているので、加工の容易化が図られる。
第17の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に直接形成されている。
この第17の発明では、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層が強固に密着すると共に、固定スクロール(60)との間の隙間が低減される。
第18の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層は、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に直接形成されている。
この第18の発明では、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に樹脂層を直接形成しているので、固定スクロール(60)と樹脂層が強固に密着すると共に、可動スクロール(50)との間の隙間が低減される。
第19の発明は、上記第6の発明において、互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備えている。そして、該一対のスクロール(50,60)のうちの可動スクロール(50)のスラスト軸受(80)が摺動部材を構成している。加えて、該摺動部材であるスラスト軸受(80)は、可動スクロール(50)との摺接面(81)に上記樹脂層が直接形成されている。
この第19の発明では、スラスト軸受(80)における可動スクロール(50)との摺接面(81)に樹脂層を直接形成しているので、スラスト軸受(80)と樹脂層が強固に密着する。
第1の発明によれば、金属製の基材と樹脂層との密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第2の発明によれば、金属製の基材と樹脂層との密着性が確実に高くなり、非常に優れた摺動性を示す。
第3の発明によれば、金属製の基材の表面粗面化を精度良くかつ再現性よく行うことができる。
第4の発明によれば、樹脂層を硬くし、且つこの層の金属製基材への密着性をより向上させることができる。
第5の発明によれば、コストダウンができる。
第6の発明によれば、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層との密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第7の発明によれば、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層との密着性が確実に高くなり、非常に優れた摺動性を示す。
第8の発明によれば、流体機内の摺動部材において、金属製の基材の表面粗面化を精度良くかつ再現性よく行うことができる。
第9の発明によれば、流体機内の摺動部材において、樹脂層を硬くし、且つこの層の金属製基材への密着性をより向上させることができる。
第10の発明によれば、冷却効率と潤滑性とをともに向上させる。
第11の発明によれば、潤滑性及び冷媒との相性を向上させる。
第12の発明によれば、潤滑性を保ったまま冷却効率が向上する。
第13の発明によれば、潤滑性を保ったまま冷却効率が向上する。
第14の発明によれば、少なくともスクロール(50,60)の一方に形成された樹脂層の密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第15の発明によれば、可動スクロール(50)の軸受部と樹脂層との密着性が高くなり、さらに加工の簡素化が図られる。
第16の発明によれば、可動スクロール(50)の特定部分にのみ樹脂層形成の処理をする必要がなくなり、加工の容易化が図られる。
第17の発明によれば、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層との密着性が高くなると共に、固定スクロール(60)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保できる。
第18の発明によれば、固定スクロール(60)と樹脂層との密着性が高くなると共に、可動スクロール(50)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保できる。
第19の発明によれば、スラスト軸受(80)における可動スクロールとの摺接面(81)と樹脂層との密着性が高くなり、可動スクロール(50)とスラスト軸受(80)との摺接面において摺動性が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる流体機械である。
《スクロール型圧縮機の全体構成》
図1に示すように、上記スクロール型圧縮機(10)は、いわゆる全密閉形に構成されている。このスクロール型圧縮機(10)は、縦長で円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。上記ケーシング(11)の内部には、下から上へ向かって順に、下部軸受部材(30)と、電動機(35)と、スクロール機構である圧縮機構(40)とが配置されている。また、ケーシング(11)の内部には、上下に延びる駆動軸(20)が設けられている。
上記ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(40)の固定スクロール(60)によって上下に仕切られている。このケーシング(11)の内部は、固定スクロール(60)の上方の空間が第1室(12)に構成され、その下方の空間が第2室(13)に構成されている。
上記ケーシング(11)の胴部には、吸入管(14)が取り付けられている。この吸入管(14)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に開口している。上記ケーシング(11)の上端部には、吐出管(15)が取り付けられている。この吐出管(15)は、ケーシング(11)内の第1室(12)に開口している。
上記駆動軸(20)は、主軸部(21)と鍔部(22)と偏心部(23)とを備えている。上記鍔部(22)は、主軸部(21)の上端に形成され、主軸部(21)よりも大径の円板状となっている。上記偏心部(23)は、鍔部(22)の上面に突設されている。この偏心部(23)は、主軸部(21)よりも小径の円柱状となっており、その軸心が主軸部(21)の軸心に対して偏心している。
上記駆動軸(20)の主軸部(21)は、圧縮機構(40)のフレーム部材(41)を貫通している。この主軸部(21)は、ころ軸受(42)を介してフレーム部材(41)に支持されている。また、駆動軸(20)の鍔部(22)及び偏心部(23)は、フレーム部材(41)よりも上方の第2室(13)に位置している。
上記駆動軸(20)には、スライドブッシュ(25)が取り付けられている。該スライドブッシュ(25)は、円筒部(26)とバランスウェイト部(27)とを備え、鍔部(22)の上に設けられている。上記スライドブッシュ(25)の円筒部(26)には、駆動軸(20)の偏心部(23)が挿入されている。
上記下部軸受部材(30)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に位置している。この下部軸受部材(30)は、ボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。そして、下部軸受部材(30)は、玉軸受(31)を介して駆動軸(20)の主軸部(21)を支持している。
上記下部軸受部材(30)には、給油ポンプ(33)が取り付けられている。この給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)の下端に係合している。上記給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)によって駆動され、ケーシング(11)の底に溜まった冷凍機油を吸入する。給油ポンプ(33)に吸い上げられた冷凍機油は、駆動軸(20)内に形成された通路を通って圧縮機構(40)等へ供給される。
上記電動機(35)は、固定子(36)と回転子(37)とを備えている。上記固定子(36)は、下部軸受部材(30)と共にボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。上記回転子(37)は、駆動軸(20)の主軸部(21)に固定されている。
上記ケーシング(11)の胴部には、給電用のターミナル(16)が取り付けられている。このターミナル(16)は、端子箱(17)によって覆われている。電動機(35)は、ターミナル(16)を通じて電力が供給される。
《圧縮機構の構成》
上記圧縮機構(40)は、固定スクロール(60)及び可動スクロール(50)を備えると共に、フレーム部材(41)及びオルダムリング(43)を備えている。この圧縮機構(40)は、例えば、いわゆる非対称スクロール構造を採用している。
上記可動スクロール(50)は、可動側平板部(51)、可動側ラップ(52)及び突出部(53)を備えている。上記可動側平板部(51)は、やや肉厚の円板状に形成されている。上記突出部(53)は、可動側平板部(51)の下面(背面)から突出するように、可動側平板部(51)と一体に形成されている。上記突出部(53)は、可動側平板部(51)のほぼ中央に位置している。この突出部(53)は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)が挿入されて軸受部を構成している。つまり、上記可動スクロール(50)には、スライドブッシュ(25)を介して駆動軸(20)の偏心部(23)が挿入されている。
上記可動側ラップ(52)は、可動側平板部(51)の上面側(前面側)に立設され、可動側平板部(51)と一体に形成されている。上記可動側ラップ(52)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。
上記可動スクロール(50)は、オルダムリング(43)とスラスト軸受(80)を介してフレーム部材(41)の上に設けられている。上記オルダムリング(43)には、二対のキーが形成されている。このオルダムリング(43)は、一対のキーが可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に係合し、残りの一対のキーがフレーム部材(41)に係合している。このオルダムリング(43)により可動スクロール(50)は自転運動が規制されている。つまり、上記オルダムリング(43)は、可動スクロール(50)とフレーム部材(41)とに摺接移動する。
上記スラスト軸受(80)は、フレーム部材(41)の凹部に設けられている。そして、上記スラスト軸受(80)の上面(81)は、可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面が摺接する摺接面となっている。つまり、上記可動スクロール(50)は、該可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面をスラスト軸受(80)の上面(81)と摺動させながら公転運動を行う。
図1に示すように、上記固定スクロール(60)は、固定側平板部(61)と、固定側ラップ(63)と、縁部(62)とを備えている。上記固定側平板部(61)は、やや肉厚の円板状に形成されている。この固定側平板部(61)の直径は、ケーシング(11)の内径と概ね等しくなっている。上記縁部(62)は、固定側平板部(61)の周縁部分から下方へ向かって延びる壁状に形成されている。上記固定スクロール(60)は、縁部(62)の下端がフレーム部材(41)に当接する状態で、ボルト(44)によってフレーム部材(41)に固定されている。上記固定スクロール(60)は、その縁部(62)がケーシング(11)と密着し、ケーシング(11)内を第1室(12)と第2室(13)に仕切っている。
上記固定側ラップ(63)は、固定側平板部(61)の下面側(前面側)に立設され、固定側平板部(61)と一体に形成されている。上記固定側ラップ(63)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されており、約3巻き分の長さとなっている。
上記固定側ラップ(63)の両側面である内側ラップ面(64)と外側ラップ面(65)は、可動側ラップ(52)の両側面である外側ラップ面(54)と内側ラップ面(55)に摺接移動する。上記固定側平板部(61)の下面(前面)、つまり、固定側ラップ(63)以外の歯底面(66)は、可動側ラップ(52)の先端面が摺接移動し、可動側平板部(51)の上面(前面)、つまり、可動側ラップ(52)以外の歯底面(56)は、固定側ラップ(63)の先端面が摺接移動する。また、固定側平板部(61)における固定側ラップ(63)の巻き始め近傍には、吐出口(67)が形成されている。この吐出口(67)は、固定側平板部(61)を貫通しており、第1室(12)に開口している。
上述のように、本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍機の冷媒回路に設けられている。この冷媒回路では、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。その際、スクロール型圧縮機(10)は、蒸発器から低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、圧縮後の高圧のガス冷媒を凝縮器へ送り出す。
尚、上記冷媒は、フッ素含有物質を含み、上記冷媒に対する潤滑剤の混合率が5%以下であるか、又は上記冷媒には潤滑剤が実質的に混合されていない。
上記スクロール型圧縮機(10)を運転すると、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)とが摺動する。本実施形態では、この摺動部分に軸受メタルである潤滑部(70)を設けている。この潤滑部(70)は円筒形であって、鉄を基材としてその表面(内面側)に潤滑剤層(樹脂層)が設けられた摺動部材を構成している。潤滑剤層が設けられた潤滑部(70)の内面は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外面と摺動する。
この潤滑部(70)の基材表面は、化成処理によってその表面粗さRaが3.7μmになっている。そして、基材表面の上にポリアミドイミド樹脂(以下、PAIという)とポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)とテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(以下、FEPという)を混合させた潤滑剤を塗布して約100μmの厚みの樹脂層である潤滑剤層を形成している。ここで、表面粗さRaとは、JIS B 0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことである。以下の説明においても、表面粗さRaと表示されているときは、JISにより規定された算術平均高さRaを表している。
このような構成の潤滑部(70)を配置することにより、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と潤滑部(70)とが冷媒に晒されながら摺動しても低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
《摺動部分の評価》
次に、潤滑部(70)に関して行った検討について説明する。
含フッ素樹脂は、金属との摩擦係数が低く摺動性が優れている。しかし、発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、含フッ素樹脂は、金属製の基材との密着力が劣っており、金属製基材からすぐに剥がれてしまう。そこで、本願発明者らは、基材の表面粗さをどのようにしたら含フッ素樹脂の基材への密着性が向上するかを鋭意研究した。
検討の方法は、図2に示すようなリング/ディスク試験片を用いた限界面圧試験によって行った。限界面圧試験は潤滑剤の基材への密着性を評価する試験であって、SUJ2(JIS G4805−1990による)からなるリングを一定速度で回転させ、評価試験片(ディスク)をその回転軸に沿ってリングに押し付けて評価を行う。試験ではリングに掛かるトルクを測定しながら、押し付ける荷重を一定時間毎に段階的に増加させる。
そして、トルクが急上昇した荷重を面圧に換算し、この面圧と回転速度との積を限界PV(限界面圧速度積)として密着性の評価指数とする。つまり、試験片の潤滑剤が基材から剥離するとリング/ディスク間の摩擦係数が急激に大きくなってトルクが急上昇するので、限界PVにより密着性が評価できる。限界PVは大きい方が密着性に優れている。尚、今回の試験は大気中で、かつリング/ディスク間には潤滑油を介在させることなく行った。
試験片は、鉄基材の表面に化成処理により粗面化処理を施し、さらにその表面にフッ素樹脂を含む潤滑剤層を形成して作成した。基材の表面粗さRaは、化成処理の処理条件を変えることで調節した。化成処理には、ここではリン酸マンガンを用いた。潤滑剤層は、PAI/FEP/PTFE=70/24/6の組成比の樹脂混合物から形成した。潤滑剤層の厚みは約100μmとした。尚、潤滑剤層は樹脂混合物を塗布した後に焼成をし、その後に表面を研磨して形成した。
図3は基材の表面粗さRaと限界PVとの関係のグラフである。尚、ここで図3に示す基材Raとは、基材表面におけるJIS B0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことである。
このグラフから判るように、Raが0.5μmよりも小さいと限界PVが0.4MPa・m/s未満であるが、Raが0.5μmを越えると限界PVが0.4MPa・m/sよりも大きくなり、一般的な摺動部材用途としては十分な密着性を有している。限界PVが1MPa・m/s以上(Ra0.75μm以上)であると環境の変化があっても十分な密着性を保つことができるので好ましい。尚、より密着性を必要とされる用途では、限界PVが1.0MPa・m/s以上(Ra0.75μm以上)であるほうがよく、好ましくは1.5MPa・m/s以上(Ra0.85μm以上)である。
一方、表面粗さRaが大きくなりすぎると、表面の粗さのうち最大高さRzも大きくなるため、潤滑剤層の表面から基材の一部が突き出してしまう。また、表面粗さRaを大きくするためには、化成処理を長時間行う必要があり、コストが増大してしまうとともに、化成処理により形成された基材表面の凹凸が崩壊し易くなる。これらの理由で、表面粗さRaは10μm未満であることが好ましく、5μm以下であると低コストで作成できるためより好ましい。
次に、鉄基材の表面粗さRaを化成処理によって3.7μmとし、上記の組成比の潤滑剤層を基材表面に塗布し、さらに焼成/研磨した本実施形態のサンプルBと、比較のために形成したサンプルAとを摺動性能の評価テストを行った。このサンプルAは、鉄板の上にポーラスなブロンズ焼結体(表面粗さRa30μm以上)を形成し、フッ素樹脂を含浸させたものである。尚、比較サンプルAは、空調用スクロール圧縮機に用いられている従来の摺動部材である。
図5は、空気中における潤滑油無しでの限界面圧試験の結果である。比較サンプルAは、面圧が約5.5MPaになると焼き付いてしまったが、サンプルBは面圧が試験機の上限の7MPaに達しても焼き付きは起こさなかった。
図6は、空気中における潤滑油無しでの摩耗量テストの結果である。テスト条件は、面圧2.8MPa、摺動速度1m/sで1時間の摺動という条件である。比較サンプルAは、約45μmの摩耗量となったが、サンプルBは摩耗量が10μmと非常に少なく、優れていることがわかる。
さらに、冷媒中における摺動テストの結果を図4に示す。一般に空調用圧縮機内では、摺動部分の摩耗を抑えるために、冷媒(HFC冷媒)と潤滑油とを65:35の割合で混合させて用いているが、このテストでは潤滑油の混合比率(濃度)を変更してデータを採取した。HFC冷媒はフッ素含有物質を含んでいる。図4に示した摺動テストは、面圧3MPa、摺動速度2m/sで2時間摺動させたときの摩耗量を縦軸に取っている。横軸は冷媒中に混合させた潤滑油の割合を示している。
比較サンプルAは、摺動部分に用いられている従来の部材であるが、通常の潤滑油濃度35%において摩耗量が13μmで、潤滑油濃度を10%にすると摩耗量は24μmに増加した。一方、サンプルBは、潤滑油濃度10%で摩耗量が2μmであり、潤滑油濃度0%、即ち冷媒100%であっても摩耗量が4μmと非常に少なく、本実施形態のサンプルBの冷媒100%時の摩耗量は比較サンプルAの通常潤滑油濃度(35%)時の摩耗量よりも少ない。
上記結果から明らかなように、本実施形態のサンプルBは潤滑油濃度0%であってもほとんど摩耗しないので、冷媒中に潤滑油を混合させる必要が無く、冷却効率を大幅に向上させることができる。含フッ素樹脂が摺動部材の表面に存しているので、フッ素含有物質を含む冷媒に対してなじみが良く、摺動性能が向上している。また、圧縮機の始動時や過渡時などには、摺動部において冷媒が存在しない完全ドライな状態になることが考えられるが、このような場合でも本実施形態のサンプルBは優れた摺動性能を発揮する。このような優れた摺動性能は、基材と含フッ素樹脂層(潤滑剤層)との密着性が高い状態ではじめて発揮されるものである。つまり、サンプルBでは基材表面の表面粗さRaを適切な範囲にしているので、基材と含フッ素樹脂層との密着性が非常に優れており、従って優れた摺動性能を発揮できるのである。
次に、フッ素樹脂を含む樹脂層の組成について説明する。
フッ素樹脂を含む樹脂層の主成分は、15質量%以上35質量%以下のフッ素樹脂と、65質量%以上85質量%以下のポリアミドイミド樹脂とによって構成されていることが好ましい。また、上記主成分中のフッ素樹脂は、FEPとPTFEとによって構成されていることが好ましい。このフッ素樹脂では、PTFEよりもFEPの割合の方が多くなっていることが好ましい。具体的には、このフッ素樹脂におけるFEPとPTFEの質量比は、FEP:PTFE=7:3〜99:1が好ましく、FEPが「9」に対してPTFEが「1」であるのが望ましい。
上記のようにポリアミドイミド樹脂を混合させていると、耐衝撃性に優れるというポリアミドイミド樹脂の特性を利用することができ、構成部材の摺動面上に耐衝撃性が高くて剥がれにくい樹脂被膜を形成できる。また、ポリアミドイミド樹脂は硬度が高いという特性も有することから、この樹脂被膜は、比較的硬くて摩耗しにくいものとなる。
また、フッ素樹脂を含む樹脂層には、フッ素樹脂とポリアミドイミド樹脂とで構成された主成分の他に、着色料としてのカーボン等の顔料、その他の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の添加量は、フッ素樹脂を含む樹脂層の性能や基材に対する密着性に悪影響が出ない程度に設定される。例えば、添加剤としてのカーボンは、フッ素樹脂の3質量%以下に設定する必要があり、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下に設定するのが望ましい。
また、フッ素樹脂を含む樹脂層の厚みは、35μm以上120μm以下が好ましい。35μmよりも薄いと摺動性能が劣ってしまう虞があり、120μmよりも厚いと、製造コストが大きくなってしまう。この層の厚みは、50μm以上105μm以下が摺動性能の面とコスト面とでより好ましい。尚、ここでいう層の厚みは平均の厚みであって、局所的にはこの範囲外の厚みであっても構わない。
本実施形態では、摺動部材である潤滑部(70)において、基材の表面粗さRaを所定の大きさにしてその表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を形成して潤滑層としているので、基材と含フッ素樹脂を含む樹脂層とが強固に密着しており、優れた摺動性能を示す。特に、フッ素含有物質を含む冷媒中で用いられる場合には、潤滑油が無くてもほとんど摩耗せず、低摩擦係数での摺動を長時間維持できる。また、本実施形態の摺動部材は、基材の表面を化成処理により所定の表面粗さRaにすることで優れた摺動性能を示すので、簡単且つ低コストでこの摺動部材を製造することができる。また、本実施形態の摺動部材はこのように簡単な方法で製造できるので、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)との摺動部分に限らず、様々な種類及び用途の摺動部材をこの方法で製造することができる。
−実施形態1の変形例1−
本変形例は、上記実施形態1が潤滑部(70)を別物で構成したのに代わり、可動スクロール(50)の突出部(53)に潤滑剤として樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面は、化成処理により、基材表面粗さRaが1μmの粗面化処理が施され、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層が形成されている。
本変形例では、摺動部材である可動スクロール(50)において、該可動スクロール(50)の突出部(53)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例2−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の摺動部分に樹脂層を設けたのに代わり、可動側平板部(51)の下面に樹脂層を形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)における可動側平板部(51)の下面は、スラスト軸受(80)の上面(81)及びオルダムリング(43)の上面と摺動する。そこで、本変形例は、可動側平板部(51)の下面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、摺動部材である可動スクロール(50)において、該可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例3−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、摺動部材である可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)の側面と固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)の側面とが摺動する一方、可動側ラップ(52)の先端面と固定スクロール(60)の固定側平板(61)の歯底面(66)とが摺動する。そこで、本変形例は、可動側ラップ(52)の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層とが強固に密着すると共に、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)及び固定側平板(61)の歯底面(66)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保される。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例4−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、摺動部材である可動スクロール(50)の全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)において、上記実施形態1の変形例1〜2に記載した突出部(53)の内周面やや可動側平板部(51)の下面における相手材との摺動性を向上させ、上記変形例3に記載した固定スクロール(60)との対向面における摺動性及びシール性を向上させるため、可動スクロール(50)全体に樹脂層を直接形成した。
具体的には、上記可動スクロール(50)の全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層が形成されている。
本変形例では、可動スクロール(50)を部分的に樹脂層形成の処理をする必要がなく、可動スクロール(50)全体に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例5−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、固定スクロール(60)の可動スクロール(50)の対向面全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の固定スクロール(60)と可動スクロール(50)の対向面、即ち固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)と固定平板部(61)の歯底面(66)は、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)と可動側平板部(51)上面と摺動する。そこで、本変形例は、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)の両側面及び先端面と固定側平板部(61)の歯底面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)との対向面全体に樹脂層を形成しているので、固定スクロール(60)と樹脂層とが強固に密着するとともに、可動スクロール(50)との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例6−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面に樹脂層を設けたものである。
つまり、上記スクロール圧縮機(10)のスライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面と可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面が摺動する。そこで、本変形例は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、摺動部材であるスライドライドブッシュ(25)において、円筒部(26)の外周面に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、実施形態1の変形例1と同様に潤滑部(70)を設ける必要がなくなり、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例7−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、スラスト軸受(80)の上面(81)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)のスラスト軸受(80)の上面(81)は可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動する。そこで、本変形例は、スラスト軸受(80)の上面(81)の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、スラスト軸受(80)の上面(81)に直接樹脂層を形成しているので、スラスト軸受(80)の上面(81)と樹脂層とが強固に密着すると共に、スラスト軸受(80)の上面(81)と可動スクロール(50)の可動側平板部(51)下面との摺動部分において、摺動性を向上させることがきる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例8−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、オルダムリング(43)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)のオルダムリング(43)の一方のキーは可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動し、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーはフレーム部材(41)と摺動する。そこで、本変形例は、オルダムリング(43)の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、オルダムリング(43)の表面に直接樹脂層を形成しているので、オルダムリング(43)と樹脂層とが強固に密着すると共に、オルダムリング(43)の一方のキーと可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面との摺動部分、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーとフレーム部材(41)との摺動部分において、摺動性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2を図7に基づいて詳細に説明する。
本実施形態のスクロール圧縮機(100)は、上記実施形態1の駆動軸(20)が、ころ軸受(42)及び玉軸受(31)を介してフレーム部材(41)及び下部軸受部材(30)に支持されていたのに代わり、駆動軸(20)の主軸部(21)が、軸受メタルである潤滑部(111,121)を介してフレーム部材(41)の主軸受部(110)と下部軸受部材(119)の下部主軸受部(120)とに支持されている。
上記潤滑部(111,121)は、円筒形に形成され摺動部材を構成している。上記潤滑部(111,121)は、鉄を基材としたその内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が設けられている。
そして、スクロール圧縮機(100)を運転すると、駆動軸(20)の主軸部(21)は、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)において、上記潤滑部(111,121)を介して摺動する。
このような構成の潤滑部(111,121)を配置することにより、主軸部(21)と潤滑部(111,121)が低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態2の変形例−
本変形例は、上記実施形態2が主軸部(21)と主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)との間に潤滑部(111,121)を設けたのに代わり、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)に樹脂層を直接形成するか、または、主軸部(21)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)の内周面、または、主軸部(21)の主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)との摺接面にあたる外周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が形成されている。
したがって、上記主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)が、鉄製の基材の表面に樹脂層を備えた摺動部材を構成するか、または、主軸部(21)が、鉄製の基材の表面に樹脂層を備えた摺動部材を構成している。
本変形例では、上記実施形態2で示した潤滑部(111,121)を設けることなく、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)の内周面、または、主軸部(21)の外周面に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態2と同じである。
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態2を図8及び図9に基づいて詳細に説明する。
本実施形態は、いわゆる揺動ピストン型のスイング圧縮機(200)である。本実施形態のスイング圧縮機(200)は、上記実施形態1及び2と同様に、冷凍装置の冷媒回路に設けられ、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。このスイング圧縮機(200)は、ドーム型のケーシング(210)内に、圧縮機構(230)と電動機(220)とが収納され、全密閉型に構成されている。
上記ケーシング(210)は、円筒状の胴部(211)と、該胴部(211)の上下にそれぞれ設けられた鏡板(212,213)とを備えている。上記胴部(211)の下部には、吸入管(241)が設けられ、上部の鏡板(212)には、吐出管(215)と、電動機(220)に電力を供給するターミナル(216)とが設けられている。
上記圧縮機構(230)は、ケーシング(210)内の下部に配置され、シリンダ(219)と該シリンダ(219)のシリンダ室(225)に収納された揺動ピストン(228)とを備えている。上記シリンダ(219)は、円筒状のシリンダ部(221)と、このシリンダ部(221)の上下を閉塞するフロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)とで構成されている。そして、上記シリンダ室(225)は、シリンダ部(221)とフロントヘッド(222)とリヤヘッド(223)とによって形成されている。
上記電動機(220)は、固定子(231)と回転子(232)とを備えている。該固定子(231)は、圧縮機構(230)の上方でケーシング(210)の胴部(211)に固定され、回転子(232)は駆動軸(233)が連結されている。
上記駆動軸(233)は、シリンダ室(225)を上下方向に貫通し、フロントヘッド(222)とリヤヘッド(223)には、駆動軸(233)を支持するための主軸受部(222a)と副軸受部(223a)がそれぞれ形成されている。また、上記駆動軸(233)の下端部には、油ポンプ(236)が設けられている。そして、上記ケーシング(210)内の底部に貯留されている油は、油ポンプ(236)によっ給油路(図示省略)を流通し、圧縮機構(230)のシリンダ室(225)などに供給される。
上記駆動軸(233)には、シリンダ室(225)の中央部分に偏心部(233a)が形成されている。この偏心部(233a)は、駆動軸(233)よりも大径に形成されている。
上記揺動ピストン(228)は、図9に示すように、ピストン本体(228a)と該ピストン本体(228a)に一体に形成され且つピストン本体(228a)から突出する仕切り部材であるブレード(228c)とを備えている。上記ピストン本体(228a)の内周面には、上記偏心部(233a)が挿入されている。
上記シリンダ部(221)には、ブッシュ孔(221b)が形成されている。該ブッシュ孔(221b)には、断面が略半円形状の一対のブッシュ(251,252)が挿入されている。一対のブッシュ(251,252)は、平面状の対向面がブレード溝(229)を形成し、該ブレード溝(229)に、上記ブレード(228c)が挿入されている。一対のブッシュ(251,252)は、ブレード(228c)を挟んだ状態で、ブレード(228c)がブレード溝(229)を進退自在となるように構成されている。同時に、ブッシュ(251,252)は、ブレード(228c)と一体的にブッシュ孔(221b)の中で揺動するように構成されている。
また、上記シリンダ部(221)には、ブレード(228c)の先端を収容するためのブッシュ背部室(250)が、ブッシュ孔(221b)の外側に形成されている。
以上の構成により、駆動軸(233)が回転すると、揺動ピストン(228)は、ブレード溝(229)内を進退するブレード(228c)の一点を中心として揺動する。この揺動により、ピストン本体(228a)が自転することなく、シリンダ室(225)の内周面に沿って公転する。尚、上記ピストン本体(228a)の公転時において、ピストン本体(228a)とシリンダ室(225)の内周面との接点位置(260)には、薄い油膜が形成される程のわずかな隙間が形成されている。
また、上記ブレード(228c)は、シリンダ室(225)を吸入側空間(225a)と圧縮側空間(225b)とに区画している。上記シリンダ部(221)には、上記吸入側空間(225a)と連通する吸入口(214)が形成されている。該吸入口(214)には、吸入管(241)が接続されている。また、上記フロントヘッド(222)には吐出口(242)が形成されている。さらに、シリンダ部(221)の内周面には、吐出路(243)が、吐出口(242)に連通して形成されている。尚、上記フロントヘッド(222)の上面には、凹部(245)が形成されている。該凹部(245)には、吐出口(215)を開閉する吐出弁(246)が設けられている。
上述したスイング圧縮機(200)を運転すると駆動軸(233)は主軸受部(222a)と副軸受部(223a)と摺動し、駆動軸(233)の偏心部(233a)はピストン本体(228a)と摺動する。本実施形態では、この摺動部分にそれぞれ軸受メタルである潤滑部(222b,223b,228b)を設けている。該潤滑部(222b,223b,228b)は、実施形態1と同様に構成され、円筒形に形成されている。そして、上記潤滑部(222b,223b,228b)は、鉄を基材とし、その内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が設けられた摺動部材である。
このような構成の潤滑部(222b,223b,228b)を配置することにより、駆動軸(233)と潤滑部(222b,223b)、駆動軸(233)の偏心部(233a)と潤滑部(228b)とが低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
−実施形態3の変形例1−
本変形例は、上記実施形態3が主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)と、駆動軸(233)の偏心部(233a)とに別物の潤滑部(222b,223b,228b)を設けたのに代わり、主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)に摺接する駆動軸(233)の外周面と偏心部(233a)の外周面とに潤滑剤として樹脂層を直接形成するか、または、主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)の内周面とピストン本体(228a)の内周面に潤滑剤として樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記駆動軸(233)の外周面であって主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)との摺接面及び偏心部(233a)の外周面、または、主軸受部(222a)と副軸受部(223a)とピストン本体(228a)の内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、上記実施形態3で示した潤滑部(222b,223b,228b)を設けることなく、駆動軸(233)と偏心部(233a)、または、主軸受部(222a)と副軸受部(223a)とピストン本体(228a)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減と部品点数の削減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例2−
本変形例は、上記実施形態3が主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)と、駆動軸(233)の偏心部(233a)とに別物の潤滑部(222b,223b,228b)を設けたのに代わり、ブッシュ(251,252)全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記ブッシュ(251,252)は、ブレード溝(229)を形成する互いの対向面がブレード(228c)と摺動し、ブッシュ(251,252)の半円周面がブッシュ孔(221b)の表面と摺動する。そこで、本変形例は、ブッシュ(251,252)全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後に、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、ブッシュ(251,252)に樹脂層を直接形成しているので、ブッシュ(251,252)と樹脂層が強固に密着すると共に、ブレード溝(229)とブレード(228c)との摺動性と、ブッシュ(251,252)の半円周面とブッシュ孔(221b)との摺動性が向上する。これにより、ブレード(228c)のブレード溝(229)における進退運動が円滑になるので、ピストン(228)の公転運動の信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例3−
本変形例は、上記実施形態3の変形例1が、スイング圧縮機(200)の駆動軸(233)の偏心部(233a)の外周面に樹脂層を設けたことに代わり、上記偏心部(233a)の上面及び下面に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記偏心部(233a)の上面はフロントヘッド(222)の下面と摺動し、偏心部(233a)の下面はリヤヘッド(223)の上面と摺動する。そこで、本変形例は、偏心部(233a)の上面及び下面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、偏心部(233a)に樹脂層を直接形成しているので、偏心部(233a)と樹脂層が強固に密着すると共に、シリンダ室(225)において、偏心部(233a)とフロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)との隙間が低減されるので、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3の変形例1と同じである。
尚、上記偏心部(233a)全体に樹脂層を直接形成すれば、上記の効果が得られると共に、実施形態3の変形例1のように、偏心部(233a)とピストン本体(228a)との摺動性が向上する。そして、偏心部(233a)の部位別に樹脂層を設ける処理を行う必要が無くなるので、加工の簡素化が図れる。
−実施形態3の変形例4−
本変形例は、上記実施形態3の変形例1が、ピストン本体(228a)の内周面に潤滑層である樹脂層を設けたことに代わり、揺動ピストン(228)全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記揺動ピストン(228)の上面はフロントヘッド(222)の下面と摺動し、ピストン(228)の下面はリヤヘッド(223)上面と摺動し、ピストン本体(228a)の外周面はシリンダ部(221)の内周面と摺動し、ピストン本体(228a)の内周面は偏心部(233a)と摺動し、ブレード(228c)の側面はブッシュ(251,252)の対向面と摺動する。そこで、本変形例は、ピストン(228)全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、揺動ピストン(228)全体に樹脂層を直接形成しているので、各部位別に処理を施す必要がなく、加工の簡素化を図ることができる。また、ブレード(228c)とブッシュ(251,252)との摺動性が向上し、ブレード(228c)の進退が円滑になるので、ピストン本体(228a)の公転運動が正確となる。さらに、上記揺動ピストン(228)とシリンダ室(225)の内面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例5−
本変形例は、上記実施形態3の変形例3及びが、偏心部(233a)とピストン(228a)とに潤滑剤として樹脂層を形成したのに代わり、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記フロントヘッド(222)の下面は、偏心部(233a)の上面及びピストン本体(228a)の上面と摺動し、リヤヘッド(223)の上面は、偏心部(233a)の下面及びピストン本体(228a)の下面と摺動し、シリンダ部(221)の内周面はピストン本体(228a)の外周面と摺動する。そこで、本変形例は、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成した。
本変形例では、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層を直接形成しているので、フロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)及びシリンダ部(221)に樹脂層が強固に密着する。また、シリンダ室(225)の内面を形成するフロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層が形成されているので、シリンダ室(225)の内面が摺接する、偏心部(233a)の上面及び下面と、ピストン本体(228a)の上面及び下面と内周面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
(実施形態4)
本発明の実施形態4は、図10に示すスイング圧縮機(300)である。上記実施形態3の圧縮機構(230)は、一つのシリンダ(219)を備えていたことに代わり、本実施形態の圧縮機構(301)は、複数のシリンダ本体(325,326)を備えている。そして、その他の構成、作用については、実施形態3のスイング圧縮機(200)と同じである。
本実施形態のスイング圧縮機(300)は、上記実施形態3と同様、冷凍装置の冷媒回路に設けられ、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。尚、ここでは、複数のシリンダ本体(325,326)を有する圧縮機構(301)についてのみ説明する。
上記圧縮機構(301)には、2つのシリンダ本体(325,326)が設けられ、これら2つのシリンダ本体(325,326)は、駆動軸(314)の延びる方向、つまり、上下方向に並設されている。
フロントヘッド(307)は、上側に配置される第1シリンダ本体(325)の上面に、またリアヘッド(308)は、下側に配置される第2シリンダ本体(326)の下面にそれぞれ配置されている。上記第1シリンダ本体(325)及び第2シリンダ本体(326)間には、仕切プレートとしてのミドルプレート(327)が配置されている。上記ミドルプレート(327)の中央部には、駆動軸(314)の貫通孔(327a)が形成されている。
上記フロントヘッド(307)と第1シリンダ本体(325)とミドルプレート(327)と第2シリンダ本体(326)とリアヘッド(308)とは、この順に配置されてボルトによって締結されている。そして、上記駆動軸(314)は、両ヘッド(307,308)、両シリンダ本体(325,326)及びミドルプレート(327)を貫通している。
上記第1シリンダ本体(325)には第1揺動ピストン(333)が、また第2シリンダ本体(326)には第2揺動ピストン(334)がそれぞれ配置されている。そして、本実施形態では、フロントヘッド(307)、第1シリンダ本体(325)、第1ピストン(333)及びミドルプレート(327)によって区画形成される第1圧縮室(335)と、リアヘッド(308)、第2シリンダ本体(326)、第2ピストン(334)及びミドルプレート(327)によって区画形成される第2圧縮室(336)との2つの圧縮室が形成されている。
上記スイング圧縮機(300)を運転すると、ミドルプレート(327)の上面は第1揺動ピストン(333)の下面と摺動し、ミドルプレート(327)の下面は第2揺動ピストン(334)の上面と摺動する。そこで、本実施形態では、ミドルプレート(327)の上面と下面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
本実施形態により、ミドルプレート(327)に樹脂層を直接形成しているので、ミドルプレート(327)と樹脂層とが強固に密着する。また、ミドルプレート(327)の上面と第1揺動ピストン(333)の下面との摺接面における隙間と、ミドルプレート(327)の下面と第2揺動ピストン(334)の上面との摺接面における隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性も向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態4の変形例−
本変形例は、上記実施形態4がミドルプレート(327)の上面と下面とに潤滑剤として樹脂層を形成したのに代わり、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)の全体に直接樹脂層を形成したものである。
つまり、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(324)の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
本変形例では、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)に樹脂層を直接形成しているので、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)に樹脂層が強固に密着する。そして、上記実施形態4と同様に、第1揺動ピストン(333)の下面とミドルプレート(327)の上面との隙間と第2揺動ピストン(334)の上面とミドルプレート(327)の下面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性も向上する。その他の構成、作用及び効果は実施形態4と同じである。
(実施形態5)
本実施形態は、図11及び図12に示すように、回転ピストン型のロータリー圧縮機(400)である。
該ロータリー圧縮機(400)は、上記実施形態3のスイング圧縮機(200)とほぼ同様の構造で、全密閉型のケーシング(410)の内部に圧縮機構(420)と電動機(430)とが収納され、吐出管(415)及び吸入管(414)を備えている。上記ロータリー圧縮機(400)は、図12に示すように、圧縮機構(420)の回転ピストン(424)とブレード(426)が別個に構成され、回転ピストン(424)が自転しながら、シリンダ室(425)の内周面に沿って公転する。
また、上記ロータリー圧縮機(400)は、上記実施形態1と同様、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。尚、ここでは、本実施形態のロータリー圧縮機(400)が、実施形態3のスイング圧縮機(200)と異なる構造、つまり、圧縮機構(420)についてのみ説明する。
上記圧縮機構(420)は、シリンダ部(421)とフロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)とを備え、上記シリンダ部(421)とフロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)とによってシリンダ室(425)が形成されている。
上記フロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)には、駆動軸(433)を支持するための主軸受部(422a)と副軸受部(423a)がそれぞれ形成されている。駆動軸(433)のシリンダ室(425)に位置する偏心部(433a)は、本体部(433b)よりも大径に形成されている。そして、上記偏心部(433a)は、圧縮機構(420)の回転ピストン(424)に挿入されている。上記回転ピストン(424)は、円環状に形成され、その外周面がシリンダ(421)の内周面と実質的に一点で接触するように形成されている。
上記シリンダ(421)には、該シリンダ(421)の径方向に沿ってブレード溝(421a)が形成されている。該ブレード溝(421a)には、ブレード(426)がシリンダ(421)と摺接して装着されている。上記ブレード(426)は、ブレード溝(421a)内に設けられたスプリング(427)によって径方向内方へ付勢され、先端が常に回転ピストン(424)の外周面に接触している。
上記ブレード(426)は、シリンダ(421)の内周面と回転ピストン(424)の外周面との間のシリンダ室(425)を吸入室(425a)と圧縮室(425b)とに区画している。上記シリンダ(421)には、吸入管(414)と吸入室(425a)とを連通する吸入口(428)が形成されている。また、上記フロントヘッド(422)には、圧縮室(425b)とケーシング(410)内の空間とを連通する吐出口(429)が形成されている。
尚、上記フロントヘッド(422)の上面には、凹部(440)が形成されている。該凹部(441)には、吐出口(429)を開閉する吐出弁(441)が設けられている。
上記ロータリー圧縮機(400)を運転すると、回転ピストン(424)の外周面はシリンダ(421)の内周面と摺動し、回転ピストン(424)の上面はフロントヘッド(422)の下面と摺接し、回転ピストン(424)の下面はリヤヘッド(423)の上面と摺接する。そこで、本実施形態は、回転ピストン(424)の全体の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
このように、上記回転ピストン(424)の全体に樹脂層を直接形成することにより、回転ピストン(424)と樹脂層とが強固に密着する。さらに、上記回転ピストン(424)とフロントヘッド(422)及びリヤヘッド(423)との摺動性が向上すると共に、この摺接面における隙間が低減されるので、シリンダ室(425)の良好なシール性が確保される。
尚、本実施形態においても、上記実施形態3及び該実施形態3の変形例1〜5と同様の摺動部分に潤滑層である樹脂層を設けてもよい。
具体的には、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)とが摺動し、偏心部(433a)とピストン(424)とが摺動するので、この摺動部分に、軸受メタルの潤滑部(422b,423b,433b)を設けてもよい。上記潤滑部(422b,423b,433b)は円筒形であって、鉄を基材としてその円周面を化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けた摺動部材である。上記潤滑部(422b,423b,433b)を設けることにより、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)との摺動部分、偏心部(433a)とピストン(424)との摺動部分における摺動性が向上する。
また、潤滑部(422b,423b,433b)を設けずに、主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)に摺接する駆動軸(433)の外周面と偏心部(433a)の外周面、または、主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)の内周面とピストン(424)の内周面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、潤滑部(422b,423b,433b)を設けることなく、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)との摺動部分、偏心部(433a)とピストン(424)との摺動部分における摺動性が向上する。
また、ブレード(426)とブレード溝(421a)が摺動するので、ブレード(426)またはブレード溝(421a)の表面を、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、ブレード(426)のブレード溝(421a)内での進退運動が円滑になるので、ピストン(424)の自転を伴う公転運動も円滑になり、圧縮機としての信頼性も向上する。
また、上記偏心部(433a)の上面がフロントヘッド(422)の下面と摺動し、偏心部(433a)の下面がリヤヘッド(423)の上面と摺動するので、偏心部(433a)の上面及び下面を、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、偏心部(433a)とフロントヘッド(422)及びリヤヘッド(423)との摺接面において、摺動性が向上すると共に、この摺動部分の隙間が低減され、良好なシール性が確保される。
また、上記シリンダ室(425)を形成するシリンダ部(421)の内周面と、フロントヘッド(422)の下端面と、上記リヤヘッド(423)の上端面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、シリンダ室(425)の内面と、該シリンダ室(425)の内面と摺動する偏心部(423a)の上面及び下面と、ピストン(424)の上面及び下面及び外周面と、ブレード(426)の上面及び下面との摺動性が向上する。さらに、この摺動部分の隙間が低減され、良好なシール性が確保されるので、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は実施形態3と同じである。
(その他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態1〜5では、軸受部やスクロール、シリンダとピストン等の摺動部分について潤滑剤として樹脂層を形成したが、この他にも摺動する部分であれば、同じように基材表面を所定の表面粗さRaとして、その表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成した潤滑部を形成してよい。
また、実施形態1〜5では、スクロール型圧縮機(10,100)、スイング圧縮機(200,300)、ロータリー圧縮機(400)の摺動部材において、基材表面粗さRaを所定の粗さとして、その表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成しているが、圧縮機は、流体を圧縮するどのような形式の圧縮機であってもよい。また流体も冷媒に限定されない。さらには、本発明の摺動部材は圧縮機に使用される摺動部材に限定されない。圧縮機以外の流体機械の摺動部材、車両や製造装置等の駆動部、回転部分など、摺動する部分であればどのような部分であってもよい。
また、上述した摺動部分は、互いに摺動する2つの部材の一方の部材においてのみ基材表面粗さRaを所定の粗さとしてその表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成してもよいし、両方の部材において基材表面粗さRaを所定の粗さとしてその表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成してもよい。
また、上記摺動部材の基材は鉄に限定されず、アルミなど鉄以外の金属であっても構わない。
また、上記基材を粗面化するのは化成処理に限定されず、サンドブラスト処理など種々の公知の方法を用いることができる。また、化成処理に用いる薬剤もリン酸マンガンに限定されず、他のリン酸塩や公知の薬液を用いることができる。
以上説明したように、本発明に係る摺動部材及び圧縮機は、優れた摺動性能を有し、空調機や車両、製造装置、工作機械等として有用である。
実施形態1に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 限界面圧試験を説明する概略図である。 基材の表面粗さRaと限界PVとの関係を表す図である。 冷媒中における摺動テストの結果を示す図である。 空気中での限界面圧試験の結果を示す図である。 空気中での摩耗量テストの結果を示す図である。 実施形態2に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 実施形態3に係るスイング圧縮機の断面図である。 実施形態3に係るスイング圧縮機のシリンダ内の構造を示す横断面図である。 実施形態4に係るスイング圧縮機の断面図である。 実施形態5に係るロータリー圧縮機の断面図である。 実施形態5に係るロータリー圧縮機のシリンダ内の構造を示す横断面図である。
符号の説明
50 可動スクロール
52 可動側ラップ
53 突出部
60 固定スクロール
80 スラスト軸受
81 スラスト軸受上面
本発明は、摺動部材及び流体機械圧縮機に関し、特に、金属製の基材の表面にフッ素を含有する樹脂層を備えた摺動部材及びそれを用いた流体機械に係るものである。
現在使用されているほとんどの機械には軸受けや互いに係合する歯車などの摺動部材が用いられている。このような摺動部材は所要の機械的強度を必要とされるのと同時に、表面においては摺動性あるいは耐摩耗性を必要とされる。摺動部分に潤滑剤を供給することによって摺動性や耐摩耗性を満たす方法もあるが、摺動部材が用いられる場所によっては潤滑剤を供給することが好ましくない場合もある。また、潤滑剤を供給することがコスト増となる場合も多い。従って、潤滑剤を用いないで摺動性あるいは耐摩耗性を表面に具備させる技術も非常にたくさん開発されており、例えば摺動部材の表面に摺動性皮膜を形成する技術を挙げることができる。
ここで、摺動部材は機械的強度を要求されるため、摺動部材の基材は金属である場合が多い。一方、摺動性皮膜にはMoS2やグラファイトのような固体潤滑剤あるいはフッ素樹脂のような高分子化合物が、摺動性能が良好なため多く用いられている。しかし、このような固体潤滑剤や高分子化合物(樹脂)は基材の金属との密着性に劣るため、この密着性を向上させるために様々な検討が行われている。
密着性の向上手段として、基材表面を荒らしてその粗面に固体潤滑剤や樹脂を塗布する方法が多く検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。この方法は、基材表面の微細な凹部に固体潤滑剤や樹脂を食い込ませて密着性を向上させるものである。
特開平5−180231号公報 特開2000−145804号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、金属基体の表面層を硬質化することが必須であり、このような硬質化を行わない摺動性部材には適用できない。
また、特許文献2に開示されているバーフィールド型等速ジョイントは、ショットブラスト処理によって基材表面を中心線平均粗さRaで10〜30μmの表面粗さにしたものである。このため、表面には単純な形状の大きな凹凸があるだけであり、固体潤滑剤や樹脂の食い込み効果が小さい。従って、密着性が向上せず、特に、樹脂を塗布した場合は運転の途中で樹脂が剥離して摩擦係数が大幅に上がってしまうという問題があった。この問題は、ショットブラスト処理によって基材表面を中心線平均粗さRaで10〜30μmの表面粗さにした後に化成処理を行っても解決しない。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、基材の表面に対するフッ素樹脂を含む摺動性被膜の密着性を向上させた摺動部材及び流体機械を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本願発明は、摺動部材が金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を備えるようにしたものである。
具体的に、第1の発明は、金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂混合物を塗布し焼成して樹脂層が該基材の表面に形成されている摺動部材を対象としている。そして、上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さであり、上記樹脂層の厚みは、50μm以上で且つ105μm以下である。
この第1の発明では、基材の表面と樹脂層とが強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第2の発明では、基材の表面と樹脂層とが非常に強固に密着し、基材からの樹脂層の欠落を確実に防止できる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記粗面化処理が化成処理である。
この第3の発明では、粗面化処理を精度良くかつ再現性良く行うことができる。
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1の発明において、上記樹脂層がポリアミドイミド樹脂を含有している。
この第4の発明では、樹脂層を割れにくくでき、より強固に金属基材に密着させることができる。
第5の発明は、上記第1〜第4の発明の何れか1の発明において、上記基材の表面層には硬質化処理がなされていない。
この請求項5の発明では、硬質化処理をわざわざしなくてもよく、コストダウンとなる。
第6の発明は、摺動部材を備えた流体機械を対象としている。そして、上記摺動部材は、金属製の基材の表面の少なくとも一部にフッ素樹脂を含む樹脂混合物を塗布し焼成して樹脂層が該基材の表面の少なくとも一部に形成され、上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さであり、上記樹脂層の厚みは、50μm以上で且つ105μm以下である。
この第6の発明では、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層とが強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第7の発明は、上記第6の発明において、上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第7の発明では、基材の表面と樹脂層とが非常に強固に密着し、基材からの樹脂層の欠落を確実に防止できる。
第8の発明は、上記第6又は第7の発明において、上記粗面化処理が化成処理である。
この第8の発明では、粗面化処理を精度良くかつ再現性良く行うことができる。
第9の発明は、上記第6〜第8の発明の何れか1の発明において、上記樹脂層がポリアイドイミド樹脂を含有している。
この第9の発明では、樹脂層を割れにくくでき、より強固に金属基材に密着させることができる。
第10の発明は、上記第6〜第9の発明の何れか1の発明において、上記摺動部材が冷媒に晒される。
この第10の発明では、冷媒中において特に潤滑性が向上する。
第11の発明は、上記第10の発明において、上記冷媒がフッ素含有物質を含んでいる。
この第11の発明では、冷却効率と潤滑性とが優れた圧縮機となる。
第12の発明は、上記第10又は第11の発明において、上記冷媒に対する潤滑剤の混合率が5%以下である。
この第12の発明では、冷媒に対する潤滑剤の混合率が小さいので、冷却効率が向上する。
第13の発明は、上記第10又は第11の発明において、上記冷媒に潤滑剤が実質的に混合されていない。
この第13の発明では、冷却効率が大きく向上する。
第14の発明は、上記第6〜第13の発明の何れか1の発明において、互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備えている。そして、一対のスクロール(50,60)のうち少なくとも一方が摺動部材を構成している。加えて、該摺動部材であるスクロール(50,60)は、金属製の基材の表面の少なくとも一部に上記樹脂層を備えている。
この第14の発明では、少なくともスクロール(50,60)の一方に形成された樹脂層が強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第15の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の軸受部(53)に直接形成されている。
この第15の発明では、可動スクロール(50)の軸受部(53)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の軸受部(53)と樹脂層が強固に密着すると共に、加工の簡素化が図られる。
第16の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の全体に直接形成されている。
この第16の発明では、可動スクロール(50)全体に樹脂層を形成しているので、加工の容易化が図られる。
第17の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に直接形成されている。
この第17の発明では、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層が強固に密着すると共に、固定スクロール(60)との間の隙間が低減される。
第18の発明は、上記第14の発明において、上記樹脂層は、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に直接形成されている。
この第18の発明では、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に樹脂層を直接形成しているので、固定スクロール(60)と樹脂層が強固に密着すると共に、可動スクロール(50)との間の隙間が低減される。
第19の発明は、上記第6の発明において、互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備えている。そして、該一対のスクロール(50,60)のうちの可動スクロール(50)のスラスト軸受(80)が摺動部材を構成している。加えて、該摺動部材であるスラスト軸受(80)は、可動スクロール(50)との摺接面(81)に上記樹脂層が直接形成されている。
この第19の発明では、スラスト軸受(80)における可動スクロール(50)との摺接面(81)に樹脂層を直接形成しているので、スラスト軸受(80)と樹脂層が強固に密着する。
第1の発明によれば、金属製の基材と樹脂層との密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第2の発明によれば、金属製の基材と樹脂層との密着性が確実に高くなり、非常に優れた摺動性を示す。
第3の発明によれば、金属製の基材の表面粗面化を精度良くかつ再現性よく行うことができる。
第4の発明によれば、樹脂層を硬くし、且つこの層の金属製基材への密着性をより向上させることができる。
第5の発明によれば、コストダウンができる。
第6の発明によれば、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層との密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第7の発明によれば、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層との密着性が確実に高くなり、非常に優れた摺動性を示す。
第8の発明によれば、流体機内の摺動部材において、金属製の基材の表面粗面化を精度良くかつ再現性よく行うことができる。
第9の発明によれば、流体機内の摺動部材において、樹脂層を硬くし、且つこの層の金属製基材への密着性をより向上させることができる。
第10の発明によれば、冷却効率と潤滑性とをともに向上させる。
第11の発明によれば、潤滑性及び冷媒との相性を向上させる。
第12の発明によれば、潤滑性を保ったまま冷却効率が向上する。
第13の発明によれば、潤滑性を保ったまま冷却効率が向上する。
第14の発明によれば、少なくともスクロール(50,60)の一方に形成された樹脂層の密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第15の発明によれば、可動スクロール(50)の軸受部と樹脂層との密着性が高くなり、さらに加工の簡素化が図られる。
第16の発明によれば、可動スクロール(50)の特定部分にのみ樹脂層形成の処理をする必要がなくなり、加工の容易化が図られる。
第17の発明によれば、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層との密着性が高くなると共に、固定スクロール(60)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保できる。
第18の発明によれば、固定スクロール(60)と樹脂層との密着性が高くなると共に、可動スクロール(50)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保できる。
第19の発明によれば、スラスト軸受(80)における可動スクロールとの摺接面(81)と樹脂層との密着性が高くなり、可動スクロール(50)とスラスト軸受(80)との摺接面において摺動性が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる流体機械である。
《スクロール型圧縮機の全体構成》
図1に示すように、上記スクロール型圧縮機(10)は、いわゆる全密閉形に構成されている。このスクロール型圧縮機(10)は、縦長で円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。上記ケーシング(11)の内部には、下から上へ向かって順に、下部軸受部材(30)と、電動機(35)と、スクロール機構である圧縮機構(40)とが配置されている。また、ケーシング(11)の内部には、上下に延びる駆動軸(20)が設けられている。
上記ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(40)の固定スクロール(60)によって上下に仕切られている。このケーシング(11)の内部は、固定スクロール(60)の上方の空間が第1室(12)に構成され、その下方の空間が第2室(13)に構成されている。
上記ケーシング(11)の胴部には、吸入管(14)が取り付けられている。この吸入管(14)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に開口している。上記ケーシング(11)の上端部には、吐出管(15)が取り付けられている。この吐出管(15)は、ケーシング(11)内の第1室(12)に開口している。
上記駆動軸(20)は、主軸部(21)と鍔部(22)と偏心部(23)とを備えている。上記鍔部(22)は、主軸部(21)の上端に形成され、主軸部(21)よりも大径の円板状となっている。上記偏心部(23)は、鍔部(22)の上面に突設されている。この偏心部(23)は、主軸部(21)よりも小径の円柱状となっており、その軸心が主軸部(21)の軸心に対して偏心している。
上記駆動軸(20)の主軸部(21)は、圧縮機構(40)のフレーム部材(41)を貫通している。この主軸部(21)は、ころ軸受(42)を介してフレーム部材(41)に支持されている。また、駆動軸(20)の鍔部(22)及び偏心部(23)は、フレーム部材(41)よりも上方の第2室(13)に位置している。
上記駆動軸(20)には、スライドブッシュ(25)が取り付けられている。該スライドブッシュ(25)は、円筒部(26)とバランスウェイト部(27)とを備え、鍔部(22)の上に設けられている。上記スライドブッシュ(25)の円筒部(26)には、駆動軸(20)の偏心部(23)が挿入されている。
上記下部軸受部材(30)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に位置している。この下部軸受部材(30)は、ボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。そして、下部軸受部材(30)は、玉軸受(31)を介して駆動軸(20)の主軸部(21)を支持している。
上記下部軸受部材(30)には、給油ポンプ(33)が取り付けられている。この給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)の下端に係合している。上記給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)によって駆動され、ケーシング(11)の底に溜まった冷凍機油を吸入する。給油ポンプ(33)に吸い上げられた冷凍機油は、駆動軸(20)内に形成された通路を通って圧縮機構(40)等へ供給される。
上記電動機(35)は、固定子(36)と回転子(37)とを備えている。上記固定子(36)は、下部軸受部材(30)と共にボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。上記回転子(37)は、駆動軸(20)の主軸部(21)に固定されている。
上記ケーシング(11)の胴部には、給電用のターミナル(16)が取り付けられている。このターミナル(16)は、端子箱(17)によって覆われている。電動機(35)は、ターミナル(16)を通じて電力が供給される。
《圧縮機構の構成》
上記圧縮機構(40)は、固定スクロール(60)及び可動スクロール(50)を備えると共に、フレーム部材(41)及びオルダムリング(43)を備えている。この圧縮機構(40)は、例えば、いわゆる非対称スクロール構造を採用している。
上記可動スクロール(50)は、可動側平板部(51)、可動側ラップ(52)及び突出部(53)を備えている。上記可動側平板部(51)は、やや肉厚の円板状に形成されている。上記突出部(53)は、可動側平板部(51)の下面(背面)から突出するように、可動側平板部(51)と一体に形成されている。上記突出部(53)は、可動側平板部(51)のほぼ中央に位置している。この突出部(53)は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)が挿入されて軸受部を構成している。つまり、上記可動スクロール(50)には、スライドブッシュ(25)を介して駆動軸(20)の偏心部(23)が挿入されている。
上記可動側ラップ(52)は、可動側平板部(51)の上面側(前面側)に立設され、可動側平板部(51)と一体に形成されている。上記可動側ラップ(52)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。
上記可動スクロール(50)は、オルダムリング(43)とスラスト軸受(80)を介してフレーム部材(41)の上に設けられている。上記オルダムリング(43)には、二対のキーが形成されている。このオルダムリング(43)は、一対のキーが可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に係合し、残りの一対のキーがフレーム部材(41)に係合している。このオルダムリング(43)により可動スクロール(50)は自転運動が規制されている。つまり、上記オルダムリング(43)は、可動スクロール(50)とフレーム部材(41)とに摺接移動する。
上記スラスト軸受(80)は、フレーム部材(41)の凹部に設けられている。そして、上記スラスト軸受(80)の上面(81)は、可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面が摺接する摺接面となっている。つまり、上記可動スクロール(50)は、該可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面をスラスト軸受(80)の上面(81)と摺動させながら公転運動を行う。
図1に示すように、上記固定スクロール(60)は、固定側平板部(61)と、固定側ラップ(63)と、縁部(62)とを備えている。上記固定側平板部(61)は、やや肉厚の円板状に形成されている。この固定側平板部(61)の直径は、ケーシング(11)の内径と概ね等しくなっている。上記縁部(62)は、固定側平板部(61)の周縁部分から下方へ向かって延びる壁状に形成されている。上記固定スクロール(60)は、縁部(62)の下端がフレーム部材(41)に当接する状態で、ボルト(44)によってフレーム部材(41)に固定されている。上記固定スクロール(60)は、その縁部(62)がケーシング(11)と密着し、ケーシング(11)内を第1室(12)と第2室(13)に仕切っている。
上記固定側ラップ(63)は、固定側平板部(61)の下面側(前面側)に立設され、固定側平板部(61)と一体に形成されている。上記固定側ラップ(63)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されており、約3巻き分の長さとなっている。
上記固定側ラップ(63)の両側面である内側ラップ面(64)と外側ラップ面(65)は、可動側ラップ(52)の両側面である外側ラップ面(54)と内側ラップ面(55)に摺接移動する。上記固定側平板部(61)の下面(前面)、つまり、固定側ラップ(63)以外の歯底面(66)は、可動側ラップ(52)の先端面が摺接移動し、可動側平板部(51)の上面(前面)、つまり、可動側ラップ(52)以外の歯底面(56)は、固定側ラップ(63)の先端面が摺接移動する。また、固定側平板部(61)における固定側ラップ(63)の巻き始め近傍には、吐出口(67)が形成されている。この吐出口(67)は、固定側平板部(61)を貫通しており、第1室(12)に開口している。
上述のように、本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍機の冷媒回路に設けられている。この冷媒回路では、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。その際、スクロール型圧縮機(10)は、蒸発器から低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、圧縮後の高圧のガス冷媒を凝縮器へ送り出す。
尚、上記冷媒は、フッ素含有物質を含み、上記冷媒に対する潤滑剤の混合率が5%以下であるか、又は上記冷媒には潤滑剤が実質的に混合されていない。
上記スクロール型圧縮機(10)を運転すると、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)とが摺動する。本実施形態では、この摺動部分に軸受メタルである潤滑部(70)を設けている。この潤滑部(70)は円筒形であって、鉄を基材としてその表面(内面側)に潤滑剤層(樹脂層)が設けられた摺動部材を構成している。潤滑剤層が設けられた潤滑部(70)の内面は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外面と摺動する。
この潤滑部(70)の基材表面は、化成処理によってその表面粗さRaが3.7μmになっている。そして、基材表面の上にポリアミドイミド樹脂(以下、PAIという)とポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)とテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(以下、FEPという)を混合させた潤滑剤を塗布して約100μmの厚みの樹脂層である潤滑剤層を形成している。ここで、表面粗さRaとは、JIS B 0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことである。以下の説明においても、表面粗さRaと表示されているときは、JISにより規定された算術平均高さRaを表している。
このような構成の潤滑部(70)を配置することにより、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と潤滑部(70)とが冷媒に晒されながら摺動しても低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
《摺動部分の評価》
次に、潤滑部(70)に関して行った検討について説明する。
含フッ素樹脂は、金属との摩擦係数が低く摺動性が優れている。しかし、発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、含フッ素樹脂は、金属製の基材との密着力が劣っており、金属製基材からすぐに剥がれてしまう。そこで、本願発明者らは、基材の表面粗さをどのようにしたら含フッ素樹脂の基材への密着性が向上するかを鋭意研究した。
検討の方法は、図2に示すようなリング/ディスク試験片を用いた限界面圧試験によって行った。限界面圧試験は潤滑剤の基材への密着性を評価する試験であって、SUJ2(JIS G4805−1990による)からなるリングを一定速度で回転させ、評価試験片(ディスク)をその回転軸に沿ってリングに押し付けて評価を行う。試験ではリングに掛かるトルクを測定しながら、押し付ける荷重を一定時間毎に段階的に増加させる。
そして、トルクが急上昇した荷重を面圧に換算し、この面圧と回転速度との積を限界PV(限界面圧速度積)として密着性の評価指数とする。つまり、試験片の潤滑剤が基材から剥離するとリング/ディスク間の摩擦係数が急激に大きくなってトルクが急上昇するので、限界PVにより密着性が評価できる。限界PVは大きい方が密着性に優れている。尚、今回の試験は大気中で、かつリング/ディスク間には潤滑油を介在させることなく行った。
試験片は、鉄基材の表面に化成処理により粗面化処理を施し、さらにその表面にフッ素樹脂を含む潤滑剤層を形成して作成した。基材の表面粗さRaは、化成処理の処理条件を変えることで調節した。化成処理には、ここではリン酸マンガンを用いた。潤滑剤層は、PAI/FEP/PTFE=70/24/6の組成比の樹脂混合物から形成した。潤滑剤層の厚みは約100μmとした。尚、潤滑剤層は樹脂混合物を塗布した後に焼成をし、その後に表面を研磨して形成した。
図3は基材の表面粗さRaと限界PVとの関係のグラフである。尚、ここで図3に示す基材Raとは、基材表面におけるJIS B0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことである。
このグラフから判るように、Raが0.5μmよりも小さいと限界PVが0.4MPa・m/s未満であるが、Raが0.5μmを越えると限界PVが0.4MPa・m/sよりも大きくなり、一般的な摺動部材用途としては十分な密着性を有している。限界PVが1MPa・m/s以上(Ra0.75μm以上)であると環境の変化があっても十分な密着性を保つことができるので好ましい。尚、より密着性を必要とされる用途では、限界PVが1.0MPa・m/s以上(Ra0.75μm以上)であるほうがよく、好ましくは1.5MPa・m/s以上(Ra0.85μm以上)である。
一方、表面粗さRaが大きくなりすぎると、表面の粗さのうち最大高さRzも大きくなるため、潤滑剤層の表面から基材の一部が突き出してしまう。また、表面粗さRaを大きくするためには、化成処理を長時間行う必要があり、コストが増大してしまうとともに、化成処理により形成された基材表面の凹凸が崩壊し易くなる。これらの理由で、表面粗さRaは10μm未満であることが好ましく、5μm以下であると低コストで作成できるためより好ましい。
次に、鉄基材の表面粗さRaを化成処理によって3.7μmとし、上記の組成比の潤滑剤層を基材表面に塗布し、さらに焼成/研磨した本実施形態のサンプルBと、比較のために形成したサンプルAとを摺動性能の評価テストを行った。このサンプルAは、鉄板の上にポーラスなブロンズ焼結体(表面粗さRa30μm以上)を形成し、フッ素樹脂を含浸させたものである。尚、比較サンプルAは、空調用スクロール圧縮機に用いられている従来の摺動部材である。
図5は、空気中における潤滑油無しでの限界面圧試験の結果である。比較サンプルAは、面圧が約5.5MPaになると焼き付いてしまったが、サンプルBは面圧が試験機の上限の7MPaに達しても焼き付きは起こさなかった。
図6は、空気中における潤滑油無しでの摩耗量テストの結果である。テスト条件は、面圧2.8MPa、摺動速度1m/sで1時間の摺動という条件である。比較サンプルAは、約45μmの摩耗量となったが、サンプルBは摩耗量が10μmと非常に少なく、優れていることがわかる。
さらに、冷媒中における摺動テストの結果を図4に示す。一般に空調用圧縮機内では、摺動部分の摩耗を抑えるために、冷媒(HFC冷媒)と潤滑油とを65:35の割合で混合させて用いているが、このテストでは潤滑油の混合比率(濃度)を変更してデータを採取した。HFC冷媒はフッ素含有物質を含んでいる。図4に示した摺動テストは、面圧3MPa、摺動速度2m/sで2時間摺動させたときの摩耗量を縦軸に取っている。横軸は冷媒中に混合させた潤滑油の割合を示している。
比較サンプルAは、摺動部分に用いられている従来の部材であるが、通常の潤滑油濃度35%において摩耗量が13μmで、潤滑油濃度を10%にすると摩耗量は24μmに増加した。一方、サンプルBは、潤滑油濃度10%で摩耗量が2μmであり、潤滑油濃度0%、即ち冷媒100%であっても摩耗量が4μmと非常に少なく、本実施形態のサンプルBの冷媒100%時の摩耗量は比較サンプルAの通常潤滑油濃度(35%)時の摩耗量よりも少ない。
上記結果から明らかなように、本実施形態のサンプルBは潤滑油濃度0%であってもほとんど摩耗しないので、冷媒中に潤滑油を混合させる必要が無く、冷却効率を大幅に向上させることができる。含フッ素樹脂が摺動部材の表面に存しているので、フッ素含有物質を含む冷媒に対してなじみが良く、摺動性能が向上している。また、圧縮機の始動時や過渡時などには、摺動部において冷媒が存在しない完全ドライな状態になることが考えられるが、このような場合でも本実施形態のサンプルBは優れた摺動性能を発揮する。このような優れた摺動性能は、基材と含フッ素樹脂層(潤滑剤層)との密着性が高い状態ではじめて発揮されるものである。つまり、サンプルBでは基材表面の表面粗さRaを適切な範囲にしているので、基材と含フッ素樹脂層との密着性が非常に優れており、従って優れた摺動性能を発揮できるのである。
次に、フッ素樹脂を含む樹脂層の組成について説明する。
フッ素樹脂を含む樹脂層の主成分は、15質量%以上35質量%以下のフッ素樹脂と、65質量%以上85質量%以下のポリアミドイミド樹脂とによって構成されていることが好ましい。また、上記主成分中のフッ素樹脂は、FEPとPTFEとによって構成されていることが好ましい。このフッ素樹脂では、PTFEよりもFEPの割合の方が多くなっていることが好ましい。具体的には、このフッ素樹脂におけるFEPとPTFEの質量比は、FEP:PTFE=7:3〜99:1が好ましく、FEPが「9」に対してPTFEが「1」であるのが望ましい。
上記のようにポリアミドイミド樹脂を混合させていると、耐衝撃性に優れるというポリアミドイミド樹脂の特性を利用することができ、構成部材の摺動面上に耐衝撃性が高くて剥がれにくい樹脂被膜を形成できる。また、ポリアミドイミド樹脂は硬度が高いという特性も有することから、この樹脂被膜は、比較的硬くて摩耗しにくいものとなる。
また、フッ素樹脂を含む樹脂層には、フッ素樹脂とポリアミドイミド樹脂とで構成された主成分の他に、着色料としてのカーボン等の顔料、その他の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の添加量は、フッ素樹脂を含む樹脂層の性能や基材に対する密着性に悪影響が出ない程度に設定される。例えば、添加剤としてのカーボンは、フッ素樹脂の3質量%以下に設定する必要があり、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下に設定するのが望ましい。
また、フッ素樹脂を含む樹脂層の厚みは、35μm以上120μm以下が好ましい。35μmよりも薄いと摺動性能が劣ってしまう虞があり、120μmよりも厚いと、製造コストが大きくなってしまう。この層の厚みは、50μm以上105μm以下が摺動性能の面とコスト面とでより好ましい。尚、ここでいう層の厚みは平均の厚みであって、局所的にはこの範囲外の厚みであっても構わない。
本実施形態では、摺動部材である潤滑部(70)において、基材の表面粗さRaを所定の大きさにしてその表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を形成して潤滑層としているので、基材と含フッ素樹脂を含む樹脂層とが強固に密着しており、優れた摺動性能を示す。特に、フッ素含有物質を含む冷媒中で用いられる場合には、潤滑油が無くてもほとんど摩耗せず、低摩擦係数での摺動を長時間維持できる。また、本実施形態の摺動部材は、基材の表面を化成処理により所定の表面粗さRaにすることで優れた摺動性能を示すので、簡単且つ低コストでこの摺動部材を製造することができる。また、本実施形態の摺動部材はこのように簡単な方法で製造できるので、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)との摺動部分に限らず、様々な種類及び用途の摺動部材をこの方法で製造することができる。
−実施形態1の変形例1−
本変形例は、上記実施形態1が潤滑部(70)を別物で構成したのに代わり、可動スクロール(50)の突出部(53)に潤滑剤として樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面は、化成処理により、基材表面粗さRaが1μmの粗面化処理が施され、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層が形成されている。
本変形例では、摺動部材である可動スクロール(50)において、該可動スクロール(50)の突出部(53)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例2−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の摺動部分に樹脂層を設けたのに代わり、可動側平板部(51)の下面に樹脂層を形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)における可動側平板部(51)の下面は、スラスト軸受(80)の上面(81)及びオルダムリング(43)の上面と摺動する。そこで、本変形例は、可動側平板部(51)の下面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、摺動部材である可動スクロール(50)において、該可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例3−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、摺動部材である可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)の側面と固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)の側面とが摺動する一方、可動側ラップ(52)の先端面と固定スクロール(60)の固定側平板(61)の歯底面(66)とが摺動する。そこで、本変形例は、可動側ラップ(52)の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層とが強固に密着すると共に、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)及び固定側平板(61)の歯底面(66)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保される。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例4−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、摺動部材である可動スクロール(50)の全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)において、上記実施形態1の変形例1〜2に記載した突出部(53)の内周面やや可動側平板部(51)の下面における相手材との摺動性を向上させ、上記変形例3に記載した固定スクロール(60)との対向面における摺動性及びシール性を向上させるため、可動スクロール(50)全体に樹脂層を直接形成した。
具体的には、上記可動スクロール(50)の全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層が形成されている。
本変形例では、可動スクロール(50)を部分的に樹脂層形成の処理をする必要がなく、可動スクロール(50)全体に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例5−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、固定スクロール(60)の可動スクロール(50)の対向面全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の固定スクロール(60)と可動スクロール(50)の対向面、即ち固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)と固定平板部(61)の歯底面(66)は、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)と可動側平板部(51)上面と摺動する。そこで、本変形例は、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)の両側面及び先端面と固定側平板部(61)の歯底面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)との対向面全体に樹脂層を形成しているので、固定スクロール(60)と樹脂層とが強固に密着するとともに、可動スクロール(50)との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例6−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面に樹脂層を設けたものである。
つまり、上記スクロール圧縮機(10)のスライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面と可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面が摺動する。そこで、本変形例は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、摺動部材であるスライドライドブッシュ(25)において、円筒部(26)の外周面に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、実施形態1の変形例1と同様に潤滑部(70)を設ける必要がなくなり、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例7−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、スラスト軸受(80)の上面(81)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)のスラスト軸受(80)の上面(81)は可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動する。そこで、本変形例は、スラスト軸受(80)の上面(81)の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、スラスト軸受(80)の上面(81)に直接樹脂層を形成しているので、スラスト軸受(80)の上面(81)と樹脂層とが強固に密着すると共に、スラスト軸受(80)の上面(81)と可動スクロール(50)の可動側平板部(51)下面との摺動部分において、摺動性を向上させることがきる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例8−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、オルダムリング(43)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)のオルダムリング(43)の一方のキーは可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動し、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーはフレーム部材(41)と摺動する。そこで、本変形例は、オルダムリング(43)の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、オルダムリング(43)の表面に直接樹脂層を形成しているので、オルダムリング(43)と樹脂層とが強固に密着すると共に、オルダムリング(43)の一方のキーと可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面との摺動部分、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーとフレーム部材(41)との摺動部分において、摺動性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2を図7に基づいて詳細に説明する。
本実施形態のスクロール圧縮機(100)は、上記実施形態1の駆動軸(20)が、ころ軸受(42)及び玉軸受(31)を介してフレーム部材(41)及び下部軸受部材(30)に支持されていたのに代わり、駆動軸(20)の主軸部(21)が、軸受メタルである潤滑部(111,121)を介してフレーム部材(41)の主軸受部(110)と下部軸受部材(119)の下部主軸受部(120)とに支持されている。
上記潤滑部(111,121)は、円筒形に形成され摺動部材を構成している。上記潤滑部(111,121)は、鉄を基材としたその内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が設けられている。
そして、スクロール圧縮機(100)を運転すると、駆動軸(20)の主軸部(21)は、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)において、上記潤滑部(111,121)を介して摺動する。
このような構成の潤滑部(111,121)を配置することにより、主軸部(21)と潤滑部(111,121)が低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態2の変形例−
本変形例は、上記実施形態2が主軸部(21)と主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)との間に潤滑部(111,121)を設けたのに代わり、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)に樹脂層を直接形成するか、または、主軸部(21)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)の内周面、または、主軸部(21)の主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)との摺接面にあたる外周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が形成されている。
したがって、上記主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)が、鉄製の基材の表面に樹脂層を備えた摺動部材を構成するか、または、主軸部(21)が、鉄製の基材の表面に樹脂層を備えた摺動部材を構成している。
本変形例では、上記実施形態2で示した潤滑部(111,121)を設けることなく、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)の内周面、または、主軸部(21)の外周面に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態2と同じである。
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態2を図8及び図9に基づいて詳細に説明する。
本実施形態は、いわゆる揺動ピストン型のスイング圧縮機(200)である。本実施形態のスイング圧縮機(200)は、上記実施形態1及び2と同様に、冷凍装置の冷媒回路に設けられ、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。このスイング圧縮機(200)は、ドーム型のケーシング(210)内に、圧縮機構(230)と電動機(220)とが収納され、全密閉型に構成されている。
上記ケーシング(210)は、円筒状の胴部(211)と、該胴部(211)の上下にそれぞれ設けられた鏡板(212,213)とを備えている。上記胴部(211)の下部には、吸入管(241)が設けられ、上部の鏡板(212)には、吐出管(215)と、電動機(220)に電力を供給するターミナル(216)とが設けられている。
上記圧縮機構(230)は、ケーシング(210)内の下部に配置され、シリンダ(219)と該シリンダ(219)のシリンダ室(225)に収納された揺動ピストン(228)とを備えている。上記シリンダ(219)は、円筒状のシリンダ部(221)と、このシリンダ部(221)の上下を閉塞するフロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)とで構成されている。そして、上記シリンダ室(225)は、シリンダ部(221)とフロントヘッド(222)とリヤヘッド(223)とによって形成されている。
上記電動機(220)は、固定子(231)と回転子(232)とを備えている。該固定子(231)は、圧縮機構(230)の上方でケーシング(210)の胴部(211)に固定され、回転子(232)は駆動軸(233)が連結されている。
上記駆動軸(233)は、シリンダ室(225)を上下方向に貫通し、フロントヘッド(222)とリヤヘッド(223)には、駆動軸(233)を支持するための主軸受部(222a)と副軸受部(223a)がそれぞれ形成されている。また、上記駆動軸(233)の下端部には、油ポンプ(236)が設けられている。そして、上記ケーシング(210)内の底部に貯留されている油は、油ポンプ(236)によっ給油路(図示省略)を流通し、圧縮機構(230)のシリンダ室(225)などに供給される。
上記駆動軸(233)には、シリンダ室(225)の中央部分に偏心部(233a)が形成されている。この偏心部(233a)は、駆動軸(233)よりも大径に形成されている。
上記揺動ピストン(228)は、図9に示すように、ピストン本体(228a)と該ピストン本体(228a)に一体に形成され且つピストン本体(228a)から突出する仕切り部材であるブレード(228c)とを備えている。上記ピストン本体(228a)の内周面には、上記偏心部(233a)が挿入されている。
上記シリンダ部(221)には、ブッシュ孔(221b)が形成されている。該ブッシュ孔(221b)には、断面が略半円形状の一対のブッシュ(251,252)が挿入されている。一対のブッシュ(251,252)は、平面状の対向面がブレード溝(229)を形成し、該ブレード溝(229)に、上記ブレード(228c)が挿入されている。一対のブッシュ(251,252)は、ブレード(228c)を挟んだ状態で、ブレード(228c)がブレード溝(229)を進退自在となるように構成されている。同時に、ブッシュ(251,252)は、ブレード(228c)と一体的にブッシュ孔(221b)の中で揺動するように構成されている。
また、上記シリンダ部(221)には、ブレード(228c)の先端を収容するためのブッシュ背部室(250)が、ブッシュ孔(221b)の外側に形成されている。
以上の構成により、駆動軸(233)が回転すると、揺動ピストン(228)は、ブレード溝(229)内を進退するブレード(228c)の一点を中心として揺動する。この揺動により、ピストン本体(228a)が自転することなく、シリンダ室(225)の内周面に沿って公転する。尚、上記ピストン本体(228a)の公転時において、ピストン本体(228a)とシリンダ室(225)の内周面との接点位置(260)には、薄い油膜が形成される程のわずかな隙間が形成されている。
また、上記ブレード(228c)は、シリンダ室(225)を吸入側空間(225a)と圧縮側空間(225b)とに区画している。上記シリンダ部(221)には、上記吸入側空間(225a)と連通する吸入口(214)が形成されている。該吸入口(214)には、吸入管(241)が接続されている。また、上記フロントヘッド(222)には吐出口(242)が形成されている。さらに、シリンダ部(221)の内周面には、吐出路(243)が、吐出口(242)に連通して形成されている。尚、上記フロントヘッド(222)の上面には、凹部(245)が形成されている。該凹部(245)には、吐出口(215)を開閉する吐出弁(246)が設けられている。
上述したスイング圧縮機(200)を運転すると駆動軸(233)は主軸受部(222a)と副軸受部(223a)と摺動し、駆動軸(233)の偏心部(233a)はピストン本体(228a)と摺動する。本実施形態では、この摺動部分にそれぞれ軸受メタルである潤滑部(222b,223b,228b)を設けている。該潤滑部(222b,223b,228b)は、実施形態1と同様に構成され、円筒形に形成されている。そして、上記潤滑部(222b,223b,228b)は、鉄を基材とし、その内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が設けられた摺動部材である。
このような構成の潤滑部(222b,223b,228b)を配置することにより、駆動軸(233)と潤滑部(222b,223b)、駆動軸(233)の偏心部(233a)と潤滑部(228b)とが低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
−実施形態3の変形例1−
本変形例は、上記実施形態3が主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)と、駆動軸(233)の偏心部(233a)とに別物の潤滑部(222b,223b,228b)を設けたのに代わり、主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)に摺接する駆動軸(233)の外周面と偏心部(233a)の外周面とに潤滑剤として樹脂層を直接形成するか、または、主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)の内周面とピストン本体(228a)の内周面に潤滑剤として樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記駆動軸(233)の外周面であって主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)との摺接面及び偏心部(233a)の外周面、または、主軸受部(222a)と副軸受部(223a)とピストン本体(228a)の内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、上記実施形態3で示した潤滑部(222b,223b,228b)を設けることなく、駆動軸(233)と偏心部(233a)、または、主軸受部(222a)と副軸受部(223a)とピストン本体(228a)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減と部品点数の削減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例2−
本変形例は、上記実施形態3が主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)と、駆動軸(233)の偏心部(233a)とに別物の潤滑部(222b,223b,228b)を設けたのに代わり、ブッシュ(251,252)全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記ブッシュ(251,252)は、ブレード溝(229)を形成する互いの対向面がブレード(228c)と摺動し、ブッシュ(251,252)の半円周面がブッシュ孔(221b)の表面と摺動する。そこで、本変形例は、ブッシュ(251,252)全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後に、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、ブッシュ(251,252)に樹脂層を直接形成しているので、ブッシュ(251,252)と樹脂層が強固に密着すると共に、ブレード溝(229)とブレード(228c)との摺動性と、ブッシュ(251,252)の半円周面とブッシュ孔(221b)との摺動性が向上する。これにより、ブレード(228c)のブレード溝(229)における進退運動が円滑になるので、ピストン(228)の公転運動の信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例3−
本変形例は、上記実施形態3の変形例1が、スイング圧縮機(200)の駆動軸(233)の偏心部(233a)の外周面に樹脂層を設けたことに代わり、上記偏心部(233a)の上面及び下面に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記偏心部(233a)の上面はフロントヘッド(222)の下面と摺動し、偏心部(233a)の下面はリヤヘッド(223)の上面と摺動する。そこで、本変形例は、偏心部(233a)の上面及び下面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、偏心部(233a)に樹脂層を直接形成しているので、偏心部(233a)と樹脂層が強固に密着すると共に、シリンダ室(225)において、偏心部(233a)とフロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)との隙間が低減されるので、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3の変形例1と同じである。
尚、上記偏心部(233a)全体に樹脂層を直接形成すれば、上記の効果が得られると共に、実施形態3の変形例1のように、偏心部(233a)とピストン本体(228a)との摺動性が向上する。そして、偏心部(233a)の部位別に樹脂層を設ける処理を行う必要が無くなるので、加工の簡素化が図れる。
−実施形態3の変形例4−
本変形例は、上記実施形態3の変形例1が、ピストン本体(228a)の内周面に潤滑層である樹脂層を設けたことに代わり、揺動ピストン(228)全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記揺動ピストン(228)の上面はフロントヘッド(222)の下面と摺動し、ピストン(228)の下面はリヤヘッド(223)上面と摺動し、ピストン本体(228a)の外周面はシリンダ部(221)の内周面と摺動し、ピストン本体(228a)の内周面は偏心部(233a)と摺動し、ブレード(228c)の側面はブッシュ(251,252)の対向面と摺動する。そこで、本変形例は、ピストン(228)全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、揺動ピストン(228)全体に樹脂層を直接形成しているので、各部位別に処理を施す必要がなく、加工の簡素化を図ることができる。また、ブレード(228c)とブッシュ(251,252)との摺動性が向上し、ブレード(228c)の進退が円滑になるので、ピストン本体(228a)の公転運動が正確となる。さらに、上記揺動ピストン(228)とシリンダ室(225)の内面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例5−
本変形例は、上記実施形態3の変形例3及びが、偏心部(233a)とピストン(228a)とに潤滑剤として樹脂層を形成したのに代わり、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記フロントヘッド(222)の下面は、偏心部(233a)の上面及びピストン本体(228a)の上面と摺動し、リヤヘッド(223)の上面は、偏心部(233a)の下面及びピストン本体(228a)の下面と摺動し、シリンダ部(221)の内周面はピストン本体(228a)の外周面と摺動する。そこで、本変形例は、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成した。
本変形例では、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層を直接形成しているので、フロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)及びシリンダ部(221)に樹脂層が強固に密着する。また、シリンダ室(225)の内面を形成するフロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層が形成されているので、シリンダ室(225)の内面が摺接する、偏心部(233a)の上面及び下面と、ピストン本体(228a)の上面及び下面と内周面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
(実施形態4)
本発明の実施形態4は、図10に示すスイング圧縮機(300)である。上記実施形態3の圧縮機構(230)は、一つのシリンダ(219)を備えていたことに代わり、本実施形態の圧縮機構(301)は、複数のシリンダ本体(325,326)を備えている。そして、その他の構成、作用については、実施形態3のスイング圧縮機(200)と同じである。
本実施形態のスイング圧縮機(300)は、上記実施形態3と同様、冷凍装置の冷媒回路に設けられ、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。尚、ここでは、複数のシリンダ本体(325,326)を有する圧縮機構(301)についてのみ説明する。
上記圧縮機構(301)には、2つのシリンダ本体(325,326)が設けられ、これら2つのシリンダ本体(325,326)は、駆動軸(314)の延びる方向、つまり、上下方向に並設されている。
フロントヘッド(307)は、上側に配置される第1シリンダ本体(325)の上面に、またリアヘッド(308)は、下側に配置される第2シリンダ本体(326)の下面にそれぞれ配置されている。上記第1シリンダ本体(325)及び第2シリンダ本体(326)間には、仕切プレートとしてのミドルプレート(327)が配置されている。上記ミドルプレート(327)の中央部には、駆動軸(314)の貫通孔(327a)が形成されている。
上記フロントヘッド(307)と第1シリンダ本体(325)とミドルプレート(327)と第2シリンダ本体(326)とリアヘッド(308)とは、この順に配置されてボルトによって締結されている。そして、上記駆動軸(314)は、両ヘッド(307,308)、両シリンダ本体(325,326)及びミドルプレート(327)を貫通している。
上記第1シリンダ本体(325)には第1揺動ピストン(333)が、また第2シリンダ本体(326)には第2揺動ピストン(334)がそれぞれ配置されている。そして、本実施形態では、フロントヘッド(307)、第1シリンダ本体(325)、第1ピストン(333)及びミドルプレート(327)によって区画形成される第1圧縮室(335)と、リアヘッド(308)、第2シリンダ本体(326)、第2ピストン(334)及びミドルプレート(327)によって区画形成される第2圧縮室(336)との2つの圧縮室が形成されている。
上記スイング圧縮機(300)を運転すると、ミドルプレート(327)の上面は第1揺動ピストン(333)の下面と摺動し、ミドルプレート(327)の下面は第2揺動ピストン(334)の上面と摺動する。そこで、本実施形態では、ミドルプレート(327)の上面と下面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
本実施形態により、ミドルプレート(327)に樹脂層を直接形成しているので、ミドルプレート(327)と樹脂層とが強固に密着する。また、ミドルプレート(327)の上面と第1揺動ピストン(333)の下面との摺接面における隙間と、ミドルプレート(327)の下面と第2揺動ピストン(334)の上面との摺接面における隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性も向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態4の変形例−
本変形例は、上記実施形態4がミドルプレート(327)の上面と下面とに潤滑剤として樹脂層を形成したのに代わり、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)の全体に直接樹脂層を形成したものである。
つまり、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(324)の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
本変形例では、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)に樹脂層を直接形成しているので、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)に樹脂層が強固に密着する。そして、上記実施形態4と同様に、第1揺動ピストン(333)の下面とミドルプレート(327)の上面との隙間と第2揺動ピストン(334)の上面とミドルプレート(327)の下面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性も向上する。その他の構成、作用及び効果は実施形態4と同じである。
(実施形態5)
本実施形態は、図11及び図12に示すように、回転ピストン型のロータリー圧縮機(400)である。
該ロータリー圧縮機(400)は、上記実施形態3のスイング圧縮機(200)とほぼ同様の構造で、全密閉型のケーシング(410)の内部に圧縮機構(420)と電動機(430)とが収納され、吐出管(415)及び吸入管(414)を備えている。上記ロータリー圧縮機(400)は、図12に示すように、圧縮機構(420)の回転ピストン(424)とブレード(426)が別個に構成され、回転ピストン(424)が自転しながら、シリンダ室(425)の内周面に沿って公転する。
また、上記ロータリー圧縮機(400)は、上記実施形態1と同様、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。尚、ここでは、本実施形態のロータリー圧縮機(400)が、実施形態3のスイング圧縮機(200)と異なる構造、つまり、圧縮機構(420)についてのみ説明する。
上記圧縮機構(420)は、シリンダ部(421)とフロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)とを備え、上記シリンダ部(421)とフロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)とによってシリンダ室(425)が形成されている。
上記フロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)には、駆動軸(433)を支持するための主軸受部(422a)と副軸受部(423a)がそれぞれ形成されている。駆動軸(433)のシリンダ室(425)に位置する偏心部(433a)は、本体部(433b)よりも大径に形成されている。そして、上記偏心部(433a)は、圧縮機構(420)の回転ピストン(424)に挿入されている。上記回転ピストン(424)は、円環状に形成され、その外周面がシリンダ(421)の内周面と実質的に一点で接触するように形成されている。
上記シリンダ(421)には、該シリンダ(421)の径方向に沿ってブレード溝(421a)が形成されている。該ブレード溝(421a)には、ブレード(426)がシリンダ(421)と摺接して装着されている。上記ブレード(426)は、ブレード溝(421a)内に設けられたスプリング(427)によって径方向内方へ付勢され、先端が常に回転ピストン(424)の外周面に接触している。
上記ブレード(426)は、シリンダ(421)の内周面と回転ピストン(424)の外周面との間のシリンダ室(425)を吸入室(425a)と圧縮室(425b)とに区画している。上記シリンダ(421)には、吸入管(414)と吸入室(425a)とを連通する吸入口(428)が形成されている。また、上記フロントヘッド(422)には、圧縮室(425b)とケーシング(410)内の空間とを連通する吐出口(429)が形成されている。
尚、上記フロントヘッド(422)の上面には、凹部(440)が形成されている。該凹部(441)には、吐出口(429)を開閉する吐出弁(441)が設けられている。
上記ロータリー圧縮機(400)を運転すると、回転ピストン(424)の外周面はシリンダ(421)の内周面と摺動し、回転ピストン(424)の上面はフロントヘッド(422)の下面と摺接し、回転ピストン(424)の下面はリヤヘッド(423)の上面と摺接する。そこで、本実施形態は、回転ピストン(424)の全体の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
このように、上記回転ピストン(424)の全体に樹脂層を直接形成することにより、回転ピストン(424)と樹脂層とが強固に密着する。さらに、上記回転ピストン(424)とフロントヘッド(422)及びリヤヘッド(423)との摺動性が向上すると共に、この摺接面における隙間が低減されるので、シリンダ室(425)の良好なシール性が確保される。
尚、本実施形態においても、上記実施形態3及び該実施形態3の変形例1〜5と同様の摺動部分に潤滑層である樹脂層を設けてもよい。
具体的には、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)とが摺動し、偏心部(433a)とピストン(424)とが摺動するので、この摺動部分に、軸受メタルの潤滑部(422b,423b,433b)を設けてもよい。上記潤滑部(422b,423b,433b)は円筒形であって、鉄を基材としてその円周面を化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けた摺動部材である。上記潤滑部(422b,423b,433b)を設けることにより、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)との摺動部分、偏心部(433a)とピストン(424)との摺動部分における摺動性が向上する。
また、潤滑部(422b,423b,433b)を設けずに、主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)に摺接する駆動軸(433)の外周面と偏心部(433a)の外周面、または、主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)の内周面とピストン(424)の内周面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、潤滑部(422b,423b,433b)を設けることなく、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)との摺動部分、偏心部(433a)とピストン(424)との摺動部分における摺動性が向上する。
また、ブレード(426)とブレード溝(421a)が摺動するので、ブレード(426)またはブレード溝(421a)の表面を、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、ブレード(426)のブレード溝(421a)内での進退運動が円滑になるので、ピストン(424)の自転を伴う公転運動も円滑になり、圧縮機としての信頼性も向上する。
また、上記偏心部(433a)の上面がフロントヘッド(422)の下面と摺動し、偏心部(433a)の下面がリヤヘッド(423)の上面と摺動するので、偏心部(433a)の上面及び下面を、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、偏心部(433a)とフロントヘッド(422)及びリヤヘッド(423)との摺接面において、摺動性が向上すると共に、この摺動部分の隙間が低減され、良好なシール性が確保される。
また、上記シリンダ室(425)を形成するシリンダ部(421)の内周面と、フロントヘッド(422)の下端面と、上記リヤヘッド(423)の上端面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、シリンダ室(425)の内面と、該シリンダ室(425)の内面と摺動する偏心部(423a)の上面及び下面と、ピストン(424)の上面及び下面及び外周面と、ブレード(426)の上面及び下面との摺動性が向上する。さらに、この摺動部分の隙間が低減され、良好なシール性が確保されるので、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は実施形態3と同じである。
(その他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態1〜5では、軸受部やスクロール、シリンダとピストン等の摺動部分について潤滑剤として樹脂層を形成したが、この他にも摺動する部分であれば、同じように基材表面を所定の表面粗さRaとして、その表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成した潤滑部を形成してよい。
また、実施形態1〜5では、スクロール型圧縮機(10,100)、スイング圧縮機(200,300)、ロータリー圧縮機(400)の摺動部材において、基材表面粗さRaを所定の粗さとして、その表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成しているが、圧縮機は、流体を圧縮するどのような形式の圧縮機であってもよい。また流体も冷媒に限定されない。さらには、本発明の摺動部材は圧縮機に使用される摺動部材に限定されない。圧縮機以外の流体機械の摺動部材、車両や製造装置等の駆動部、回転部分など、摺動する部分であればどのような部分であってもよい。
また、上述した摺動部分は、互いに摺動する2つの部材の一方の部材においてのみ基材表面粗さRaを所定の粗さとしてその表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成してもよいし、両方の部材において基材表面粗さRaを所定の粗さとしてその表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成してもよい。
また、上記摺動部材の基材は鉄に限定されず、アルミなど鉄以外の金属であっても構わない。
また、上記基材を粗面化するのは化成処理に限定されず、サンドブラスト処理など種々の公知の方法を用いることができる。また、化成処理に用いる薬剤もリン酸マンガンに限定されず、他のリン酸塩や公知の薬液を用いることができる。
以上説明したように、本発明に係る摺動部材及び圧縮機は、優れた摺動性能を有し、空調機や車両、製造装置、工作機械等として有用である。
実施形態1に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 限界面圧試験を説明する概略図である。 基材の表面粗さRaと限界PVとの関係を表す図である。 冷媒中における摺動テストの結果を示す図である。 空気中での限界面圧試験の結果を示す図である。 空気中での摩耗量テストの結果を示す図である。 実施形態2に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 実施形態3に係るスイング圧縮機の断面図である。 実施形態3に係るスイング圧縮機のシリンダ内の構造を示す横断面図である。 実施形態4に係るスイング圧縮機の断面図である。 実施形態5に係るロータリー圧縮機の断面図である。 実施形態5に係るロータリー圧縮機のシリンダ内の構造を示す横断面図である。
符号の説明
50 可動スクロール
52 可動側ラップ
53 突出部
60 固定スクロール
80 スラスト軸受
81 スラスト軸受上面
本発明は、摺動部材及び流体機械圧縮機に関し、特に、金属製の基材の表面にフッ素を含有する樹脂層を備えた摺動部材及びそれを用いた流体機械に係るものである。
現在使用されているほとんどの機械には軸受けや互いに係合する歯車などの摺動部材が用いられている。このような摺動部材は所要の機械的強度を必要とされるのと同時に、表面においては摺動性あるいは耐摩耗性を必要とされる。摺動部分に潤滑剤を供給することによって摺動性や耐摩耗性を満たす方法もあるが、摺動部材が用いられる場所によっては潤滑剤を供給することが好ましくない場合もある。また、潤滑剤を供給することがコスト増となる場合も多い。従って、潤滑剤を用いないで摺動性あるいは耐摩耗性を表面に具備させる技術も非常にたくさん開発されており、例えば摺動部材の表面に摺動性皮膜を形成する技術を挙げることができる。
ここで、摺動部材は機械的強度を要求されるため、摺動部材の基材は金属である場合が多い。一方、摺動性皮膜にはMoS2やグラファイトのような固体潤滑剤あるいはフッ素樹脂のような高分子化合物が、摺動性能が良好なため多く用いられている。しかし、このような固体潤滑剤や高分子化合物(樹脂)は基材の金属との密着性に劣るため、この密着性を向上させるために様々な検討が行われている。
密着性の向上手段として、基材表面を荒らしてその粗面に固体潤滑剤や樹脂を塗布する方法が多く検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。この方法は、基材表面の微細な凹部に固体潤滑剤や樹脂を食い込ませて密着性を向上させるものである。
特開平5−180231号公報 特開2000−145804号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、金属基体の表面層を硬質化することが必須であり、このような硬質化を行わない摺動性部材には適用できない。
また、特許文献2に開示されているバーフィールド型等速ジョイントは、ショットブラスト処理によって基材表面を中心線平均粗さRaで10〜30μmの表面粗さにしたものである。このため、表面には単純な形状の大きな凹凸があるだけであり、固体潤滑剤や樹脂の食い込み効果が小さい。従って、密着性が向上せず、特に、樹脂を塗布した場合は運転の途中で樹脂が剥離して摩擦係数が大幅に上がってしまうという問題があった。この問題は、ショットブラスト処理によって基材表面を中心線平均粗さRaで10〜30μmの表面粗さにした後に化成処理を行っても解決しない。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、基材の表面に対するフッ素樹脂を含む摺動性被膜の密着性を向上させた摺動部材及び流体機械を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本願発明は、摺動部材が金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を備えるようにしたものである。
具体的に、第1の発明は、金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂混合物を塗布し焼成して樹脂層が該基材の表面に形成されている摺動部材を対象としている。そして、上記基材の表面は、化成処理の粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さであり、上記樹脂層の厚みは、50μm以上で且つ105μm以下である。
この第1の発明では、基材の表面と樹脂層とが強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
また、粗面化処理を精度良くかつ再現性良く行うことができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第2の発明では、基材の表面と樹脂層とが非常に強固に密着し、基材からの樹脂層の欠落を確実に防止できる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記樹脂層がポリアミドイミド樹脂を含有している。
この第3の発明では、樹脂層を割れにくくでき、より強固に金属基材に密着させることができる。
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1の発明において、上記基材の表面層には硬質化処理がなされていない。
この第4の発明では、硬質化処理をわざわざしなくてもよく、コストダウンとなる。
第5の発明は、摺動部材を備えた流体機械を対象としている。そして、上記摺動部材は、金属製の基材の表面の少なくとも一部にフッ素樹脂を含む樹脂混合物を塗布し焼成して樹脂層が該基材の表面の少なくとも一部に形成され、上記樹脂層の基材の表面は、化成処理の粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さであり、上記樹脂層の厚みは、50μm以上で且つ105μm以下である。
この第5の発明では、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層とが強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
また、粗面化処理を精度良くかつ再現性良く行うことができる。
第6の発明は、上記第5の発明において、上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである。
この第6の発明では、基材の表面と樹脂層とが非常に強固に密着し、基材からの樹脂層の欠落を確実に防止できる。
第7の発明は、上記第5〜第7の発明の何れか1の発明において、上記樹脂層がポリアイドイミド樹脂を含有している。
この第7の発明では、樹脂層を割れにくくでき、より強固に金属基材に密着させることができる。
第8の発明は、上記第5〜第7の発明の何れか1の発明において、上記摺動部材が冷媒に晒される。
この第8の発明では、冷媒中において特に潤滑性が向上する。
第9の発明は、上記第8の発明において、上記冷媒がフッ素含有物質を含んでいる。
この第9の発明では、冷却効率と潤滑性とが優れた圧縮機となる。
第10の発明は、上記第8又は第9の発明において、上記冷媒に対する潤滑剤の混合率が5%以下である。
この第10の発明では、冷媒に対する潤滑剤の混合率が小さいので、冷却効率が向上する。
第11の発明は、上記第8又は第9の発明において、上記冷媒に潤滑剤が実質的に混合されていない。
この第11の発明では、冷却効率が大きく向上する。
第12の発明は、上記第5〜第11の発明の何れか1の発明において、互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備えている。そして、一対のスクロール(50,60)のうち少なくとも一方が摺動部材を構成している。加えて、該摺動部材であるスクロール(50,60)は、金属製の基材の表面の少なくとも一部に上記樹脂層を備えている。
この第12の発明では、少なくともスクロール(50,60)の一方に形成された樹脂層が強固に密着し、樹脂層が基材から欠落するおそれがほとんどない。
第13の発明は、上記第12の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の軸受部(53)に直接形成されている。
この第13の発明では、可動スクロール(50)の軸受部(53)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の軸受部(53)と樹脂層が強固に密着すると共に、加工の簡素化が図られる。
第14の発明は、上記第12の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の全体に直接形成されている。
この第14の発明では、可動スクロール(50)全体に樹脂層を形成しているので、加工の容易化が図られる。
第15の発明は、上記第12の発明において、上記樹脂層が可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に直接形成されている。
この第15の発明では、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層が強固に密着すると共に、固定スクロール(60)との間の隙間が低減される。
第16の発明は、上記第12の発明において、上記樹脂層は、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に直接形成されている。
この第16の発明では、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に樹脂層を直接形成しているので、固定スクロール(60)と樹脂層が強固に密着すると共に、可動スクロール(50)との間の隙間が低減される。
第17の発明は、上記第5の発明において、互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備えている。そして、該一対のスクロール(50,60)のうちの可動スクロール(50)のスラスト軸受(80)が摺動部材を構成している。加えて、該摺動部材であるスラスト軸受(80)は、可動スクロール(50)との摺接面(81)に上記樹脂層が直接形成されている。
この第17の発明では、スラスト軸受(80)における可動スクロール(50)との摺接面(81)に樹脂層を直接形成しているので、スラスト軸受(80)と樹脂層が強固に密着する。
第1の発明によれば、金属製の基材と樹脂層との密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
また、金属製の基材の表面粗面化を精度良くかつ再現性よく行うことができる。
第2の発明によれば、金属製の基材と樹脂層との密着性が確実に高くなり、非常に優れた摺動性を示す。
第3の発明によれば、樹脂層を硬くし、且つこの層の金属製基材への密着性をより向上させることができる。
第4の発明によれば、コストダウンができる。
第5の発明によれば、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層との密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
また、流体機内の摺動部材において、金属製の基材の表面粗面化を精度良くかつ再現性よく行うことができる。
第6の発明によれば、流体機内の摺動部材において、基材の表面と樹脂層との密着性が確実に高くなり、非常に優れた摺動性を示す。
第7の発明によれば、流体機内の摺動部材において、樹脂層を硬くし、且つこの層の金属製基材への密着性をより向上させることができる。
第8の発明によれば、冷却効率と潤滑性とをともに向上させる。
第9の発明によれば、潤滑性及び冷媒との相性を向上させる。
第10の発明によれば、潤滑性を保ったまま冷却効率が向上する。
第11の発明によれば、潤滑性を保ったまま冷却効率が向上する。
第12の発明によれば、少なくともスクロール(50,60)の一方に形成された樹脂層の密着性が高くなり、優れた摺動性を示す。
第13の発明によれば、可動スクロール(50)の軸受部と樹脂層との密着性が高くなり、さらに加工の簡素化が図られる。
第14の発明によれば、可動スクロール(50)の特定部分にのみ樹脂層形成の処理をする必要がなくなり、加工の容易化が図られる。
第15の発明によれば、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層との密着性が高くなると共に、固定スクロール(60)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保できる。
第16の発明によれば、固定スクロール(60)と樹脂層との密着性が高くなると共に、可動スクロール(50)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保できる。
第17の発明によれば、スラスト軸受(80)における可動スクロールとの摺接面(81)と樹脂層との密着性が高くなり、可動スクロール(50)とスラスト軸受(80)との摺接面において摺動性が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる流体機械である。
《スクロール型圧縮機の全体構成》
図1に示すように、上記スクロール型圧縮機(10)は、いわゆる全密閉形に構成されている。このスクロール型圧縮機(10)は、縦長で円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。上記ケーシング(11)の内部には、下から上へ向かって順に、下部軸受部材(30)と、電動機(35)と、スクロール機構である圧縮機構(40)とが配置されている。また、ケーシング(11)の内部には、上下に延びる駆動軸(20)が設けられている。
上記ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(40)の固定スクロール(60)によって上下に仕切られている。このケーシング(11)の内部は、固定スクロール(60)の上方の空間が第1室(12)に構成され、その下方の空間が第2室(13)に構成されている。
上記ケーシング(11)の胴部には、吸入管(14)が取り付けられている。この吸入管(14)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に開口している。上記ケーシング(11)の上端部には、吐出管(15)が取り付けられている。この吐出管(15)は、ケーシング(11)内の第1室(12)に開口している。
上記駆動軸(20)は、主軸部(21)と鍔部(22)と偏心部(23)とを備えている。上記鍔部(22)は、主軸部(21)の上端に形成され、主軸部(21)よりも大径の円板状となっている。上記偏心部(23)は、鍔部(22)の上面に突設されている。この偏心部(23)は、主軸部(21)よりも小径の円柱状となっており、その軸心が主軸部(21)の軸心に対して偏心している。
上記駆動軸(20)の主軸部(21)は、圧縮機構(40)のフレーム部材(41)を貫通している。この主軸部(21)は、ころ軸受(42)を介してフレーム部材(41)に支持されている。また、駆動軸(20)の鍔部(22)及び偏心部(23)は、フレーム部材(41)よりも上方の第2室(13)に位置している。
上記駆動軸(20)には、スライドブッシュ(25)が取り付けられている。該スライドブッシュ(25)は、円筒部(26)とバランスウェイト部(27)とを備え、鍔部(22)の上に設けられている。上記スライドブッシュ(25)の円筒部(26)には、駆動軸(20)の偏心部(23)が挿入されている。
上記下部軸受部材(30)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に位置している。この下部軸受部材(30)は、ボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。そして、下部軸受部材(30)は、玉軸受(31)を介して駆動軸(20)の主軸部(21)を支持している。
上記下部軸受部材(30)には、給油ポンプ(33)が取り付けられている。この給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)の下端に係合している。上記給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)によって駆動され、ケーシング(11)の底に溜まった冷凍機油を吸入する。給油ポンプ(33)に吸い上げられた冷凍機油は、駆動軸(20)内に形成された通路を通って圧縮機構(40)等へ供給される。
上記電動機(35)は、固定子(36)と回転子(37)とを備えている。上記固定子(36)は、下部軸受部材(30)と共にボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。上記回転子(37)は、駆動軸(20)の主軸部(21)に固定されている。
上記ケーシング(11)の胴部には、給電用のターミナル(16)が取り付けられている。このターミナル(16)は、端子箱(17)によって覆われている。電動機(35)は、ターミナル(16)を通じて電力が供給される。
《圧縮機構の構成》
上記圧縮機構(40)は、固定スクロール(60)及び可動スクロール(50)を備えると共に、フレーム部材(41)及びオルダムリング(43)を備えている。この圧縮機構(40)は、例えば、いわゆる非対称スクロール構造を採用している。
上記可動スクロール(50)は、可動側平板部(51)、可動側ラップ(52)及び突出部(53)を備えている。上記可動側平板部(51)は、やや肉厚の円板状に形成されている。上記突出部(53)は、可動側平板部(51)の下面(背面)から突出するように、可動側平板部(51)と一体に形成されている。上記突出部(53)は、可動側平板部(51)のほぼ中央に位置している。この突出部(53)は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)が挿入されて軸受部を構成している。つまり、上記可動スクロール(50)には、スライドブッシュ(25)を介して駆動軸(20)の偏心部(23)が挿入されている。
上記可動側ラップ(52)は、可動側平板部(51)の上面側(前面側)に立設され、可動側平板部(51)と一体に形成されている。上記可動側ラップ(52)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。
上記可動スクロール(50)は、オルダムリング(43)とスラスト軸受(80)を介してフレーム部材(41)の上に設けられている。上記オルダムリング(43)には、二対のキーが形成されている。このオルダムリング(43)は、一対のキーが可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に係合し、残りの一対のキーがフレーム部材(41)に係合している。このオルダムリング(43)により可動スクロール(50)は自転運動が規制されている。つまり、上記オルダムリング(43)は、可動スクロール(50)とフレーム部材(41)とに摺接移動する。
上記スラスト軸受(80)は、フレーム部材(41)の凹部に設けられている。そして、上記スラスト軸受(80)の上面(81)は、可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面が摺接する摺接面となっている。つまり、上記可動スクロール(50)は、該可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面をスラスト軸受(80)の上面(81)と摺動させながら公転運動を行う。
図1に示すように、上記固定スクロール(60)は、固定側平板部(61)と、固定側ラップ(63)と、縁部(62)とを備えている。上記固定側平板部(61)は、やや肉厚の円板状に形成されている。この固定側平板部(61)の直径は、ケーシング(11)の内径と概ね等しくなっている。上記縁部(62)は、固定側平板部(61)の周縁部分から下方へ向かって延びる壁状に形成されている。上記固定スクロール(60)は、縁部(62)の下端がフレーム部材(41)に当接する状態で、ボルト(44)によってフレーム部材(41)に固定されている。上記固定スクロール(60)は、その縁部(62)がケーシング(11)と密着し、ケーシング(11)内を第1室(12)と第2室(13)に仕切っている。
上記固定側ラップ(63)は、固定側平板部(61)の下面側(前面側)に立設され、固定側平板部(61)と一体に形成されている。上記固定側ラップ(63)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されており、約3巻き分の長さとなっている。
上記固定側ラップ(63)の両側面である内側ラップ面(64)と外側ラップ面(65)は、可動側ラップ(52)の両側面である外側ラップ面(54)と内側ラップ面(55)に摺接移動する。上記固定側平板部(61)の下面(前面)、つまり、固定側ラップ(63)以外の歯底面(66)は、可動側ラップ(52)の先端面が摺接移動し、可動側平板部(51)の上面(前面)、つまり、可動側ラップ(52)以外の歯底面(56)は、固定側ラップ(63)の先端面が摺接移動する。また、固定側平板部(61)における固定側ラップ(63)の巻き始め近傍には、吐出口(67)が形成されている。この吐出口(67)は、固定側平板部(61)を貫通しており、第1室(12)に開口している。
上述のように、本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍機の冷媒回路に設けられている。この冷媒回路では、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。その際、スクロール型圧縮機(10)は、蒸発器から低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、圧縮後の高圧のガス冷媒を凝縮器へ送り出す。
尚、上記冷媒は、フッ素含有物質を含み、上記冷媒に対する潤滑剤の混合率が5%以下であるか、又は上記冷媒には潤滑剤が実質的に混合されていない。
上記スクロール型圧縮機(10)を運転すると、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)とが摺動する。本実施形態では、この摺動部分に軸受メタルである潤滑部(70)を設けている。この潤滑部(70)は円筒形であって、鉄を基材としてその表面(内面側)に潤滑剤層(樹脂層)が設けられた摺動部材を構成している。潤滑剤層が設けられた潤滑部(70)の内面は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外面と摺動する。
この潤滑部(70)の基材表面は、化成処理によってその表面粗さRaが3.7μmになっている。そして、基材表面の上にポリアミドイミド樹脂(以下、PAIという)とポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)とテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(以下、FEPという)を混合させた潤滑剤を塗布して約100μmの厚みの樹脂層である潤滑剤層を形成している。ここで、表面粗さRaとは、JIS B 0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことである。以下の説明においても、表面粗さRaと表示されているときは、JISにより規定された算術平均高さRaを表している。
このような構成の潤滑部(70)を配置することにより、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と潤滑部(70)とが冷媒に晒されながら摺動しても低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
《摺動部分の評価》
次に、潤滑部(70)に関して行った検討について説明する。
含フッ素樹脂は、金属との摩擦係数が低く摺動性が優れている。しかし、発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、含フッ素樹脂は、金属製の基材との密着力が劣っており、金属製基材からすぐに剥がれてしまう。そこで、本願発明者らは、基材の表面粗さをどのようにしたら含フッ素樹脂の基材への密着性が向上するかを鋭意研究した。
検討の方法は、図2に示すようなリング/ディスク試験片を用いた限界面圧試験によって行った。限界面圧試験は潤滑剤の基材への密着性を評価する試験であって、SUJ2(JIS G4805−1990による)からなるリングを一定速度で回転させ、評価試験片(ディスク)をその回転軸に沿ってリングに押し付けて評価を行う。試験ではリングに掛かるトルクを測定しながら、押し付ける荷重を一定時間毎に段階的に増加させる。
そして、トルクが急上昇した荷重を面圧に換算し、この面圧と回転速度との積を限界PV(限界面圧速度積)として密着性の評価指数とする。つまり、試験片の潤滑剤が基材から剥離するとリング/ディスク間の摩擦係数が急激に大きくなってトルクが急上昇するので、限界PVにより密着性が評価できる。限界PVは大きい方が密着性に優れている。尚、今回の試験は大気中で、かつリング/ディスク間には潤滑油を介在させることなく行った。
試験片は、鉄基材の表面に化成処理により粗面化処理を施し、さらにその表面にフッ素樹脂を含む潤滑剤層を形成して作成した。基材の表面粗さRaは、化成処理の処理条件を変えることで調節した。化成処理には、ここではリン酸マンガンを用いた。潤滑剤層は、PAI/FEP/PTFE=70/24/6の組成比の樹脂混合物から形成した。潤滑剤層の厚みは約100μmとした。尚、潤滑剤層は樹脂混合物を塗布した後に焼成をし、その後に表面を研磨して形成した。
図3は基材の表面粗さRaと限界PVとの関係のグラフである。尚、ここで図3に示す基材Raとは、基材表面におけるJIS B0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことである。
このグラフから判るように、Raが0.5μmよりも小さいと限界PVが0.4MPa・m/s未満であるが、Raが0.5μmを越えると限界PVが0.4MPa・m/sよりも大きくなり、一般的な摺動部材用途としては十分な密着性を有している。限界PVが1MPa・m/s以上(Ra0.75μm以上)であると環境の変化があっても十分な密着性を保つことができるので好ましい。尚、より密着性を必要とされる用途では、限界PVが1.0MPa・m/s以上(Ra0.75μm以上)であるほうがよく、好ましくは1.5MPa・m/s以上(Ra0.85μm以上)である。
一方、表面粗さRaが大きくなりすぎると、表面の粗さのうち最大高さRzも大きくなるため、潤滑剤層の表面から基材の一部が突き出してしまう。また、表面粗さRaを大きくするためには、化成処理を長時間行う必要があり、コストが増大してしまうとともに、化成処理により形成された基材表面の凹凸が崩壊し易くなる。これらの理由で、表面粗さRaは10μm未満であることが好ましく、5μm以下であると低コストで作成できるためより好ましい。
次に、鉄基材の表面粗さRaを化成処理によって3.7μmとし、上記の組成比の潤滑剤層を基材表面に塗布し、さらに焼成/研磨した本実施形態のサンプルBと、比較のために形成したサンプルAとを摺動性能の評価テストを行った。このサンプルAは、鉄板の上にポーラスなブロンズ焼結体(表面粗さRa30μm以上)を形成し、フッ素樹脂を含浸させたものである。尚、比較サンプルAは、空調用スクロール圧縮機に用いられている従来の摺動部材である。
図5は、空気中における潤滑油無しでの限界面圧試験の結果である。比較サンプルAは、面圧が約5.5MPaになると焼き付いてしまったが、サンプルBは面圧が試験機の上限の7MPaに達しても焼き付きは起こさなかった。
図6は、空気中における潤滑油無しでの摩耗量テストの結果である。テスト条件は、面圧2.8MPa、摺動速度1m/sで1時間の摺動という条件である。比較サンプルAは、約45μmの摩耗量となったが、サンプルBは摩耗量が10μmと非常に少なく、優れていることがわかる。
さらに、冷媒中における摺動テストの結果を図4に示す。一般に空調用圧縮機内では、摺動部分の摩耗を抑えるために、冷媒(HFC冷媒)と潤滑油とを65:35の割合で混合させて用いているが、このテストでは潤滑油の混合比率(濃度)を変更してデータを採取した。HFC冷媒はフッ素含有物質を含んでいる。図4に示した摺動テストは、面圧3MPa、摺動速度2m/sで2時間摺動させたときの摩耗量を縦軸に取っている。横軸は冷媒中に混合させた潤滑油の割合を示している。
比較サンプルAは、摺動部分に用いられている従来の部材であるが、通常の潤滑油濃度35%において摩耗量が13μmで、潤滑油濃度を10%にすると摩耗量は24μmに増加した。一方、サンプルBは、潤滑油濃度10%で摩耗量が2μmであり、潤滑油濃度0%、即ち冷媒100%であっても摩耗量が4μmと非常に少なく、本実施形態のサンプルBの冷媒100%時の摩耗量は比較サンプルAの通常潤滑油濃度(35%)時の摩耗量よりも少ない。
上記結果から明らかなように、本実施形態のサンプルBは潤滑油濃度0%であってもほとんど摩耗しないので、冷媒中に潤滑油を混合させる必要が無く、冷却効率を大幅に向上させることができる。含フッ素樹脂が摺動部材の表面に存しているので、フッ素含有物質を含む冷媒に対してなじみが良く、摺動性能が向上している。また、圧縮機の始動時や過渡時などには、摺動部において冷媒が存在しない完全ドライな状態になることが考えられるが、このような場合でも本実施形態のサンプルBは優れた摺動性能を発揮する。このような優れた摺動性能は、基材と含フッ素樹脂層(潤滑剤層)との密着性が高い状態ではじめて発揮されるものである。つまり、サンプルBでは基材表面の表面粗さRaを適切な範囲にしているので、基材と含フッ素樹脂層との密着性が非常に優れており、従って優れた摺動性能を発揮できるのである。
次に、フッ素樹脂を含む樹脂層の組成について説明する。
フッ素樹脂を含む樹脂層の主成分は、15質量%以上35質量%以下のフッ素樹脂と、65質量%以上85質量%以下のポリアミドイミド樹脂とによって構成されていることが好ましい。また、上記主成分中のフッ素樹脂は、FEPとPTFEとによって構成されていることが好ましい。このフッ素樹脂では、PTFEよりもFEPの割合の方が多くなっていることが好ましい。具体的には、このフッ素樹脂におけるFEPとPTFEの質量比は、FEP:PTFE=7:3〜99:1が好ましく、FEPが「9」に対してPTFEが「1」であるのが望ましい。
上記のようにポリアミドイミド樹脂を混合させていると、耐衝撃性に優れるというポリアミドイミド樹脂の特性を利用することができ、構成部材の摺動面上に耐衝撃性が高くて剥がれにくい樹脂被膜を形成できる。また、ポリアミドイミド樹脂は硬度が高いという特性も有することから、この樹脂被膜は、比較的硬くて摩耗しにくいものとなる。
また、フッ素樹脂を含む樹脂層には、フッ素樹脂とポリアミドイミド樹脂とで構成された主成分の他に、着色料としてのカーボン等の顔料、その他の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の添加量は、フッ素樹脂を含む樹脂層の性能や基材に対する密着性に悪影響が出ない程度に設定される。例えば、添加剤としてのカーボンは、フッ素樹脂の3質量%以下に設定する必要があり、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下に設定するのが望ましい。
また、フッ素樹脂を含む樹脂層の厚みは、35μm以上120μm以下が好ましい。35μmよりも薄いと摺動性能が劣ってしまう虞があり、120μmよりも厚いと、製造コストが大きくなってしまう。この層の厚みは、50μm以上105μm以下が摺動性能の面とコスト面とでより好ましい。尚、ここでいう層の厚みは平均の厚みであって、局所的にはこの範囲外の厚みであっても構わない。
本実施形態では、摺動部材である潤滑部(70)において、基材の表面粗さRaを所定の大きさにしてその表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を形成して潤滑層としているので、基材と含フッ素樹脂を含む樹脂層とが強固に密着しており、優れた摺動性能を示す。特に、フッ素含有物質を含む冷媒中で用いられる場合には、潤滑油が無くてもほとんど摩耗せず、低摩擦係数での摺動を長時間維持できる。また、本実施形態の摺動部材は、基材の表面を化成処理により所定の表面粗さRaにすることで優れた摺動性能を示すので、簡単且つ低コストでこの摺動部材を製造することができる。また、本実施形態の摺動部材はこのように簡単な方法で製造できるので、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)との摺動部分に限らず、様々な種類及び用途の摺動部材をこの方法で製造することができる。
−実施形態1の変形例1−
本変形例は、上記実施形態1が潤滑部(70)を別物で構成したのに代わり、可動スクロール(50)の突出部(53)に潤滑剤として樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面は、化成処理により、基材表面粗さRaが1μmの粗面化処理が施され、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層が形成されている。
本変形例では、摺動部材である可動スクロール(50)において、該可動スクロール(50)の突出部(53)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例2−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の摺動部分に樹脂層を設けたのに代わり、可動側平板部(51)の下面に樹脂層を形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)における可動側平板部(51)の下面は、スラスト軸受(80)の上面(81)及びオルダムリング(43)の上面と摺動する。そこで、本変形例は、可動側平板部(51)の下面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、摺動部材である可動スクロール(50)において、該可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例3−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、摺動部材である可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)の側面と固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)の側面とが摺動する一方、可動側ラップ(52)の先端面と固定スクロール(60)の固定側平板(61)の歯底面(66)とが摺動する。そこで、本変形例は、可動側ラップ(52)の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に樹脂層を直接形成しているので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)表面と樹脂層とが強固に密着すると共に、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)及び固定側平板(61)の歯底面(66)との間の隙間が低減され、良好なシール性が確保される。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例4−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、摺動部材である可動スクロール(50)の全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の可動スクロール(50)において、上記実施形態1の変形例1〜2に記載した突出部(53)の内周面やや可動側平板部(51)の下面における相手材との摺動性を向上させ、上記変形例3に記載した固定スクロール(60)との対向面における摺動性及びシール性を向上させるため、可動スクロール(50)全体に樹脂層を直接形成した。
具体的には、上記可動スクロール(50)の全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層が形成されている。
本変形例では、可動スクロール(50)を部分的に樹脂層形成の処理をする必要がなく、可動スクロール(50)全体に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例5−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、固定スクロール(60)の可動スクロール(50)の対向面全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)の固定スクロール(60)と可動スクロール(50)の対向面、即ち固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)と固定平板部(61)の歯底面(66)は、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)と可動側平板部(51)上面と摺動する。そこで、本変形例は、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)の両側面及び先端面と固定側平板部(61)の歯底面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)との対向面全体に樹脂層を形成しているので、固定スクロール(60)と樹脂層とが強固に密着するとともに、可動スクロール(50)との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例6−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面に樹脂層を設けたものである。
つまり、上記スクロール圧縮機(10)のスライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面と可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面が摺動する。そこで、本変形例は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、摺動部材であるスライドライドブッシュ(25)において、円筒部(26)の外周面に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、実施形態1の変形例1と同様に潤滑部(70)を設ける必要がなくなり、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例7−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、スラスト軸受(80)の上面(81)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)のスラスト軸受(80)の上面(81)は可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動する。そこで、本変形例は、スラスト軸受(80)の上面(81)の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、スラスト軸受(80)の上面(81)に直接樹脂層を形成しているので、スラスト軸受(80)の上面(81)と樹脂層とが強固に密着すると共に、スラスト軸受(80)の上面(81)と可動スクロール(50)の可動側平板部(51)下面との摺動部分において、摺動性を向上させることがきる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態1の変形例8−
本変形例は、上記変形例1が可動スクロール(50)の突出部(53)の内周面に樹脂層を設けたのに代わり、オルダムリング(43)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記スクロール型圧縮機(10)のオルダムリング(43)の一方のキーは可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動し、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーはフレーム部材(41)と摺動する。そこで、本変形例は、オルダムリング(43)の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、さらにPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を基材表面に形成した。
本変形例では、オルダムリング(43)の表面に直接樹脂層を形成しているので、オルダムリング(43)と樹脂層とが強固に密着すると共に、オルダムリング(43)の一方のキーと可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面との摺動部分、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーとフレーム部材(41)との摺動部分において、摺動性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2を図7に基づいて詳細に説明する。
本実施形態のスクロール圧縮機(100)は、上記実施形態1の駆動軸(20)が、ころ軸受(42)及び玉軸受(31)を介してフレーム部材(41)及び下部軸受部材(30)に支持されていたのに代わり、駆動軸(20)の主軸部(21)が、軸受メタルである潤滑部(111,121)を介してフレーム部材(41)の主軸受部(110)と下部軸受部材(119)の下部主軸受部(120)とに支持されている。
上記潤滑部(111,121)は、円筒形に形成され摺動部材を構成している。上記潤滑部(111,121)は、鉄を基材としたその内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が設けられている。
そして、スクロール圧縮機(100)を運転すると、駆動軸(20)の主軸部(21)は、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)において、上記潤滑部(111,121)を介して摺動する。
このような構成の潤滑部(111,121)を配置することにより、主軸部(21)と潤滑部(111,121)が低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
−実施形態2の変形例−
本変形例は、上記実施形態2が主軸部(21)と主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)との間に潤滑部(111,121)を設けたのに代わり、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)に樹脂層を直接形成するか、または、主軸部(21)に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)の内周面、または、主軸部(21)の主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)との摺接面にあたる外周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が形成されている。
したがって、上記主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)が、鉄製の基材の表面に樹脂層を備えた摺動部材を構成するか、または、主軸部(21)が、鉄製の基材の表面に樹脂層を備えた摺動部材を構成している。
本変形例では、上記実施形態2で示した潤滑部(111,121)を設けることなく、主軸受部(110)及び下部主軸受部(120)の内周面、または、主軸部(21)の外周面に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減を図ることができると共に、部品点数の削減も図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態2と同じである。
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態2を図8及び図9に基づいて詳細に説明する。
本実施形態は、いわゆる揺動ピストン型のスイング圧縮機(200)である。本実施形態のスイング圧縮機(200)は、上記実施形態1及び2と同様に、冷凍装置の冷媒回路に設けられ、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。このスイング圧縮機(200)は、ドーム型のケーシング(210)内に、圧縮機構(230)と電動機(220)とが収納され、全密閉型に構成されている。
上記ケーシング(210)は、円筒状の胴部(211)と、該胴部(211)の上下にそれぞれ設けられた鏡板(212,213)とを備えている。上記胴部(211)の下部には、吸入管(241)が設けられ、上部の鏡板(212)には、吐出管(215)と、電動機(220)に電力を供給するターミナル(216)とが設けられている。
上記圧縮機構(230)は、ケーシング(210)内の下部に配置され、シリンダ(219)と該シリンダ(219)のシリンダ室(225)に収納された揺動ピストン(228)とを備えている。上記シリンダ(219)は、円筒状のシリンダ部(221)と、このシリンダ部(221)の上下を閉塞するフロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)とで構成されている。そして、上記シリンダ室(225)は、シリンダ部(221)とフロントヘッド(222)とリヤヘッド(223)とによって形成されている。
上記電動機(220)は、固定子(231)と回転子(232)とを備えている。該固定子(231)は、圧縮機構(230)の上方でケーシング(210)の胴部(211)に固定され、回転子(232)は駆動軸(233)が連結されている。
上記駆動軸(233)は、シリンダ室(225)を上下方向に貫通し、フロントヘッド(222)とリヤヘッド(223)には、駆動軸(233)を支持するための主軸受部(222a)と副軸受部(223a)がそれぞれ形成されている。また、上記駆動軸(233)の下端部には、油ポンプ(236)が設けられている。そして、上記ケーシング(210)内の底部に貯留されている油は、油ポンプ(236)によっ給油路(図示省略)を流通し、圧縮機構(230)のシリンダ室(225)などに供給される。
上記駆動軸(233)には、シリンダ室(225)の中央部分に偏心部(233a)が形成されている。この偏心部(233a)は、駆動軸(233)よりも大径に形成されている。
上記揺動ピストン(228)は、図9に示すように、ピストン本体(228a)と該ピストン本体(228a)に一体に形成され且つピストン本体(228a)から突出する仕切り部材であるブレード(228c)とを備えている。上記ピストン本体(228a)の内周面には、上記偏心部(233a)が挿入されている。
上記シリンダ部(221)には、ブッシュ孔(221b)が形成されている。該ブッシュ孔(221b)には、断面が略半円形状の一対のブッシュ(251,252)が挿入されている。一対のブッシュ(251,252)は、平面状の対向面がブレード溝(229)を形成し、該ブレード溝(229)に、上記ブレード(228c)が挿入されている。一対のブッシュ(251,252)は、ブレード(228c)を挟んだ状態で、ブレード(228c)がブレード溝(229)を進退自在となるように構成されている。同時に、ブッシュ(251,252)は、ブレード(228c)と一体的にブッシュ孔(221b)の中で揺動するように構成されている。
また、上記シリンダ部(221)には、ブレード(228c)の先端を収容するためのブッシュ背部室(250)が、ブッシュ孔(221b)の外側に形成されている。
以上の構成により、駆動軸(233)が回転すると、揺動ピストン(228)は、ブレード溝(229)内を進退するブレード(228c)の一点を中心として揺動する。この揺動により、ピストン本体(228a)が自転することなく、シリンダ室(225)の内周面に沿って公転する。尚、上記ピストン本体(228a)の公転時において、ピストン本体(228a)とシリンダ室(225)の内周面との接点位置(260)には、薄い油膜が形成される程のわずかな隙間が形成されている。
また、上記ブレード(228c)は、シリンダ室(225)を吸入側空間(225a)と圧縮側空間(225b)とに区画している。上記シリンダ部(221)には、上記吸入側空間(225a)と連通する吸入口(214)が形成されている。該吸入口(214)には、吸入管(241)が接続されている。また、上記フロントヘッド(222)には吐出口(242)が形成されている。さらに、シリンダ部(221)の内周面には、吐出路(243)が、吐出口(242)に連通して形成されている。尚、上記フロントヘッド(222)の上面には、凹部(245)が形成されている。該凹部(245)には、吐出口(215)を開閉する吐出弁(246)が設けられている。
上述したスイング圧縮機(200)を運転すると駆動軸(233)は主軸受部(222a)と副軸受部(223a)と摺動し、駆動軸(233)の偏心部(233a)はピストン本体(228a)と摺動する。本実施形態では、この摺動部分にそれぞれ軸受メタルである潤滑部(222b,223b,228b)を設けている。該潤滑部(222b,223b,228b)は、実施形態1と同様に構成され、円筒形に形成されている。そして、上記潤滑部(222b,223b,228b)は、鉄を基材とし、その内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層が設けられた摺動部材である。
このような構成の潤滑部(222b,223b,228b)を配置することにより、駆動軸(233)と潤滑部(222b,223b)、駆動軸(233)の偏心部(233a)と潤滑部(228b)とが低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
−実施形態3の変形例1−
本変形例は、上記実施形態3が主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)と、駆動軸(233)の偏心部(233a)とに別物の潤滑部(222b,223b,228b)を設けたのに代わり、主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)に摺接する駆動軸(233)の外周面と偏心部(233a)の外周面とに潤滑剤として樹脂層を直接形成するか、または、主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)の内周面とピストン本体(228a)の内周面に潤滑剤として樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記駆動軸(233)の外周面であって主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)との摺接面及び偏心部(233a)の外周面、または、主軸受部(222a)と副軸受部(223a)とピストン本体(228a)の内周面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、上記実施形態3で示した潤滑部(222b,223b,228b)を設けることなく、駆動軸(233)と偏心部(233a)、または、主軸受部(222a)と副軸受部(223a)とピストン本体(228a)に直接樹脂層を形成しているので、加工工数の低減と部品点数の削減を図ることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例2−
本変形例は、上記実施形態3が主軸受部(222a)及び副軸受部(223a)と、駆動軸(233)の偏心部(233a)とに別物の潤滑部(222b,223b,228b)を設けたのに代わり、ブッシュ(251,252)全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記ブッシュ(251,252)は、ブレード溝(229)を形成する互いの対向面がブレード(228c)と摺動し、ブッシュ(251,252)の半円周面がブッシュ孔(221b)の表面と摺動する。そこで、本変形例は、ブッシュ(251,252)全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後に、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、ブッシュ(251,252)に樹脂層を直接形成しているので、ブッシュ(251,252)と樹脂層が強固に密着すると共に、ブレード溝(229)とブレード(228c)との摺動性と、ブッシュ(251,252)の半円周面とブッシュ孔(221b)との摺動性が向上する。これにより、ブレード(228c)のブレード溝(229)における進退運動が円滑になるので、ピストン(228)の公転運動の信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例3−
本変形例は、上記実施形態3の変形例1が、スイング圧縮機(200)の駆動軸(233)の偏心部(233a)の外周面に樹脂層を設けたことに代わり、上記偏心部(233a)の上面及び下面に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記偏心部(233a)の上面はフロントヘッド(222)の下面と摺動し、偏心部(233a)の下面はリヤヘッド(223)の上面と摺動する。そこで、本変形例は、偏心部(233a)の上面及び下面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、偏心部(233a)に樹脂層を直接形成しているので、偏心部(233a)と樹脂層が強固に密着すると共に、シリンダ室(225)において、偏心部(233a)とフロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)との隙間が低減されるので、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3の変形例1と同じである。
尚、上記偏心部(233a)全体に樹脂層を直接形成すれば、上記の効果が得られると共に、実施形態3の変形例1のように、偏心部(233a)とピストン本体(228a)との摺動性が向上する。そして、偏心部(233a)の部位別に樹脂層を設ける処理を行う必要が無くなるので、加工の簡素化が図れる。
−実施形態3の変形例4−
本変形例は、上記実施形態3の変形例1が、ピストン本体(228a)の内周面に潤滑層である樹脂層を設けたことに代わり、揺動ピストン(228)全体に樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記揺動ピストン(228)の上面はフロントヘッド(222)の下面と摺動し、ピストン(228)の下面はリヤヘッド(223)上面と摺動し、ピストン本体(228a)の外周面はシリンダ部(221)の内周面と摺動し、ピストン本体(228a)の内周面は偏心部(233a)と摺動し、ブレード(228c)の側面はブッシュ(251,252)の対向面と摺動する。そこで、本変形例は、ピストン(228)全体の表面の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとした後、その上にPAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成している。
本変形例では、揺動ピストン(228)全体に樹脂層を直接形成しているので、各部位別に処理を施す必要がなく、加工の簡素化を図ることができる。また、ブレード(228c)とブッシュ(251,252)との摺動性が向上し、ブレード(228c)の進退が円滑になるので、ピストン本体(228a)の公転運動が正確となる。さらに、上記揺動ピストン(228)とシリンダ室(225)の内面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態3の変形例5−
本変形例は、上記実施形態3の変形例3及びが、偏心部(233a)とピストン(228a)とに潤滑剤として樹脂層を形成したのに代わり、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層を直接形成したものである。
つまり、上記フロントヘッド(222)の下面は、偏心部(233a)の上面及びピストン本体(228a)の上面と摺動し、リヤヘッド(223)の上面は、偏心部(233a)の下面及びピストン本体(228a)の下面と摺動し、シリンダ部(221)の内周面はピストン本体(228a)の外周面と摺動する。そこで、本変形例は、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層からなる潤滑層を形成した。
本変形例では、フロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層を直接形成しているので、フロントヘッド(222)及びリヤヘッド(223)及びシリンダ部(221)に樹脂層が強固に密着する。また、シリンダ室(225)の内面を形成するフロントヘッド(222)の下面と、リヤヘッド(223)の上面と、シリンダ部(221)の内周面とに樹脂層が形成されているので、シリンダ室(225)の内面が摺接する、偏心部(233a)の上面及び下面と、ピストン本体(228a)の上面及び下面と内周面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
(実施形態4)
本発明の実施形態4は、図10に示すスイング圧縮機(300)である。上記実施形態3の圧縮機構(230)は、一つのシリンダ(219)を備えていたことに代わり、本実施形態の圧縮機構(301)は、複数のシリンダ本体(325,326)を備えている。そして、その他の構成、作用については、実施形態3のスイング圧縮機(200)と同じである。
本実施形態のスイング圧縮機(300)は、上記実施形態3と同様、冷凍装置の冷媒回路に設けられ、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。尚、ここでは、複数のシリンダ本体(325,326)を有する圧縮機構(301)についてのみ説明する。
上記圧縮機構(301)には、2つのシリンダ本体(325,326)が設けられ、これら2つのシリンダ本体(325,326)は、駆動軸(314)の延びる方向、つまり、上下方向に並設されている。
フロントヘッド(307)は、上側に配置される第1シリンダ本体(325)の上面に、またリアヘッド(308)は、下側に配置される第2シリンダ本体(326)の下面にそれぞれ配置されている。上記第1シリンダ本体(325)及び第2シリンダ本体(326)間には、仕切プレートとしてのミドルプレート(327)が配置されている。上記ミドルプレート(327)の中央部には、駆動軸(314)の貫通孔(327a)が形成されている。
上記フロントヘッド(307)と第1シリンダ本体(325)とミドルプレート(327)と第2シリンダ本体(326)とリアヘッド(308)とは、この順に配置されてボルトによって締結されている。そして、上記駆動軸(314)は、両ヘッド(307,308)、両シリンダ本体(325,326)及びミドルプレート(327)を貫通している。
上記第1シリンダ本体(325)には第1揺動ピストン(333)が、また第2シリンダ本体(326)には第2揺動ピストン(334)がそれぞれ配置されている。そして、本実施形態では、フロントヘッド(307)、第1シリンダ本体(325)、第1ピストン(333)及びミドルプレート(327)によって区画形成される第1圧縮室(335)と、リアヘッド(308)、第2シリンダ本体(326)、第2ピストン(334)及びミドルプレート(327)によって区画形成される第2圧縮室(336)との2つの圧縮室が形成されている。
上記スイング圧縮機(300)を運転すると、ミドルプレート(327)の上面は第1揺動ピストン(333)の下面と摺動し、ミドルプレート(327)の下面は第2揺動ピストン(334)の上面と摺動する。そこで、本実施形態では、ミドルプレート(327)の上面と下面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
本実施形態により、ミドルプレート(327)に樹脂層を直接形成しているので、ミドルプレート(327)と樹脂層とが強固に密着する。また、ミドルプレート(327)の上面と第1揺動ピストン(333)の下面との摺接面における隙間と、ミドルプレート(327)の下面と第2揺動ピストン(334)の上面との摺接面における隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性も向上する。その他の構成、作用及び効果は、実施形態3と同じである。
−実施形態4の変形例−
本変形例は、上記実施形態4がミドルプレート(327)の上面と下面とに潤滑剤として樹脂層を形成したのに代わり、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)の全体に直接樹脂層を形成したものである。
つまり、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(324)の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
本変形例では、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)に樹脂層を直接形成しているので、第1揺動ピストン(333)と第2揺動ピストン(334)に樹脂層が強固に密着する。そして、上記実施形態4と同様に、第1揺動ピストン(333)の下面とミドルプレート(327)の上面との隙間と第2揺動ピストン(334)の上面とミドルプレート(327)の下面との隙間が低減され、良好なシール性が確保される。これにより、圧縮機としての信頼性も向上する。その他の構成、作用及び効果は実施形態4と同じである。
(実施形態5)
本実施形態は、図11及び図12に示すように、回転ピストン型のロータリー圧縮機(400)である。
該ロータリー圧縮機(400)は、上記実施形態3のスイング圧縮機(200)とほぼ同様の構造で、全密閉型のケーシング(410)の内部に圧縮機構(420)と電動機(430)とが収納され、吐出管(415)及び吸入管(414)を備えている。上記ロータリー圧縮機(400)は、図12に示すように、圧縮機構(420)の回転ピストン(424)とブレード(426)が別個に構成され、回転ピストン(424)が自転しながら、シリンダ室(425)の内周面に沿って公転する。
また、上記ロータリー圧縮機(400)は、上記実施形態1と同様、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。尚、ここでは、本実施形態のロータリー圧縮機(400)が、実施形態3のスイング圧縮機(200)と異なる構造、つまり、圧縮機構(420)についてのみ説明する。
上記圧縮機構(420)は、シリンダ部(421)とフロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)とを備え、上記シリンダ部(421)とフロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)とによってシリンダ室(425)が形成されている。
上記フロントヘッド(422)とリヤヘッド(423)には、駆動軸(433)を支持するための主軸受部(422a)と副軸受部(423a)がそれぞれ形成されている。駆動軸(433)のシリンダ室(425)に位置する偏心部(433a)は、本体部(433b)よりも大径に形成されている。そして、上記偏心部(433a)は、圧縮機構(420)の回転ピストン(424)に挿入されている。上記回転ピストン(424)は、円環状に形成され、その外周面がシリンダ(421)の内周面と実質的に一点で接触するように形成されている。
上記シリンダ(421)には、該シリンダ(421)の径方向に沿ってブレード溝(421a)が形成されている。該ブレード溝(421a)には、ブレード(426)がシリンダ(421)と摺接して装着されている。上記ブレード(426)は、ブレード溝(421a)内に設けられたスプリング(427)によって径方向内方へ付勢され、先端が常に回転ピストン(424)の外周面に接触している。
上記ブレード(426)は、シリンダ(421)の内周面と回転ピストン(424)の外周面との間のシリンダ室(425)を吸入室(425a)と圧縮室(425b)とに区画している。上記シリンダ(421)には、吸入管(414)と吸入室(425a)とを連通する吸入口(428)が形成されている。また、上記フロントヘッド(422)には、圧縮室(425b)とケーシング(410)内の空間とを連通する吐出口(429)が形成されている。
尚、上記フロントヘッド(422)の上面には、凹部(440)が形成されている。該凹部(441)には、吐出口(429)を開閉する吐出弁(441)が設けられている。
上記ロータリー圧縮機(400)を運転すると、回転ピストン(424)の外周面はシリンダ(421)の内周面と摺動し、回転ピストン(424)の上面はフロントヘッド(422)の下面と摺接し、回転ピストン(424)の下面はリヤヘッド(423)の上面と摺接する。そこで、本実施形態は、回転ピストン(424)の全体の基材表面粗さRaを化成処理により1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層を直接形成している。
このように、上記回転ピストン(424)の全体に樹脂層を直接形成することにより、回転ピストン(424)と樹脂層とが強固に密着する。さらに、上記回転ピストン(424)とフロントヘッド(422)及びリヤヘッド(423)との摺動性が向上すると共に、この摺接面における隙間が低減されるので、シリンダ室(425)の良好なシール性が確保される。
尚、本実施形態においても、上記実施形態3及び該実施形態3の変形例1〜5と同様の摺動部分に潤滑層である樹脂層を設けてもよい。
具体的には、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)とが摺動し、偏心部(433a)とピストン(424)とが摺動するので、この摺動部分に、軸受メタルの潤滑部(422b,423b,433b)を設けてもよい。上記潤滑部(422b,423b,433b)は円筒形であって、鉄を基材としてその円周面を化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けた摺動部材である。上記潤滑部(422b,423b,433b)を設けることにより、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)との摺動部分、偏心部(433a)とピストン(424)との摺動部分における摺動性が向上する。
また、潤滑部(422b,423b,433b)を設けずに、主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)に摺接する駆動軸(433)の外周面と偏心部(433a)の外周面、または、主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)の内周面とピストン(424)の内周面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、潤滑部(422b,423b,433b)を設けることなく、駆動軸(433)と主軸受部(422a)及び副軸受部(423a)との摺動部分、偏心部(433a)とピストン(424)との摺動部分における摺動性が向上する。
また、ブレード(426)とブレード溝(421a)が摺動するので、ブレード(426)またはブレード溝(421a)の表面を、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、ブレード(426)のブレード溝(421a)内での進退運動が円滑になるので、ピストン(424)の自転を伴う公転運動も円滑になり、圧縮機としての信頼性も向上する。
また、上記偏心部(433a)の上面がフロントヘッド(422)の下面と摺動し、偏心部(433a)の下面がリヤヘッド(423)の上面と摺動するので、偏心部(433a)の上面及び下面を、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、偏心部(433a)とフロントヘッド(422)及びリヤヘッド(423)との摺接面において、摺動性が向上すると共に、この摺動部分の隙間が低減され、良好なシール性が確保される。
また、上記シリンダ室(425)を形成するシリンダ部(421)の内周面と、フロントヘッド(422)の下端面と、上記リヤヘッド(423)の上端面とを、化成処理により基材表面粗さRaを1μmとし、その上に、PAI/FEP/PTFE=70/25/5の組成比の樹脂層の潤滑層を設けてもよい。これにより、シリンダ室(425)の内面と、該シリンダ室(425)の内面と摺動する偏心部(423a)の上面及び下面と、ピストン(424)の上面及び下面及び外周面と、ブレード(426)の上面及び下面との摺動性が向上する。さらに、この摺動部分の隙間が低減され、良好なシール性が確保されるので、圧縮機としての信頼性が向上する。その他の構成、作用及び効果は実施形態3と同じである。
(その他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態1〜5では、軸受部やスクロール、シリンダとピストン等の摺動部分について潤滑剤として樹脂層を形成したが、この他にも摺動する部分であれば、同じように基材表面を所定の表面粗さRaとして、その表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成した潤滑部を形成してよい。
また、実施形態1〜5では、スクロール型圧縮機(10,100)、スイング圧縮機(200,300)、ロータリー圧縮機(400)の摺動部材において、基材表面粗さRaを所定の粗さとして、その表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成しているが、圧縮機は、流体を圧縮するどのような形式の圧縮機であってもよい。また流体も冷媒に限定されない。さらには、本発明の摺動部材は圧縮機に使用される摺動部材に限定されない。圧縮機以外の流体機械の摺動部材、車両や製造装置等の駆動部、回転部分など、摺動する部分であればどのような部分であってもよい。
また、上述した摺動部分は、互いに摺動する2つの部材の一方の部材においてのみ基材表面粗さRaを所定の粗さとしてその表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成してもよいし、両方の部材において基材表面粗さRaを所定の粗さとしてその表面に含フッ素樹脂を含む樹脂層を形成してもよい。
また、上記摺動部材の基材は鉄に限定されず、アルミなど鉄以外の金属であっても構わない。
また、上記基材を粗面化するのは化成処理に用いる薬剤リン酸マンガンに限定されず、他のリン酸塩や公知の薬液を用いることができる。
以上説明したように、本発明に係る摺動部材及び圧縮機は、優れた摺動性能を有し、空調機や車両、製造装置、工作機械等として有用である。
実施形態1に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 限界面圧試験を説明する概略図である。 基材の表面粗さRaと限界PVとの関係を表す図である。 冷媒中における摺動テストの結果を示す図である。 空気中での限界面圧試験の結果を示す図である。 空気中での摩耗量テストの結果を示す図である。 実施形態2に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 実施形態3に係るスイング圧縮機の断面図である。 実施形態3に係るスイング圧縮機のシリンダ内の構造を示す横断面図である。 実施形態4に係るスイング圧縮機の断面図である。 実施形態5に係るロータリー圧縮機の断面図である。 実施形態5に係るロータリー圧縮機のシリンダ内の構造を示す横断面図である。
符号の説明
50 可動スクロール
52 可動側ラップ
53 突出部
60 固定スクロール
80 スラスト軸受
81 スラスト軸受上面

Claims (19)

  1. 金属製の基材の表面にフッ素樹脂を含む樹脂層を備えた摺動部材であって、
    上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである
    ことを特徴とする摺動部材。
  2. 請求項1において、
    上記基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである
    ことを特徴とする摺動部材。
  3. 請求項1において、
    上記粗面化処理は化成処理である
    ことを特徴とする摺動部材。
  4. 請求項1において、
    上記樹脂層はポリアミドイミド樹脂を含有している
    ことを特徴とする摺動部材。
  5. 請求項1において、
    上記基材の表面層には硬質化処理がなされていない
    ことを特徴とする摺動部材。
  6. 摺動部材を備えた流体機械であって、
    上記摺動部材は、金属製の基材の表面の少なくとも一部にフッ素樹脂を含む樹脂層を備え、
    上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.5μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである
    ことを特徴とする流体機械。
  7. 請求項6において、
    上記樹脂層の基材の表面は、粗面化処理によって輪郭曲線の算術平均高さRaが0.75μmよりも大きく10μm未満の表面粗さである
    ことを特徴とする流体機械。
  8. 請求項6において、
    上記粗面化処理は化成処理である
    ことを特徴する流体機械。
  9. 請求項6において、
    上記樹脂層はポリアイドイミド樹脂を含有している
    ことを特徴とする流体機械。
  10. 請求項6において、
    上記摺動部材は、冷媒に晒される
    ことを特徴とする流体機械。
  11. 請求項10において、
    上記冷媒は、フッ素含有物質を含んでいる
    ことを特徴とする流体機械。
  12. 請求項10において、
    上記冷媒に対する潤滑剤の混合率は、5%以下である
    ことを特徴とする流体機械。
  13. 請求項10において、
    上記冷媒には潤滑剤が実質的に混合されていない
    ことを特徴とする流体機械。
  14. 請求項6において、
    互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備え、
    一対のスクロール(50,60)のうち少なくとも一方が摺動部材を構成し、
    該摺動部材であるスクロール(50,60)は、金属製の基材の表面の少なくとも一部に上記樹脂層を備えている
    ことを特徴とする流体機械。
  15. 請求項14において、
    上記樹脂層は、可動スクロール(50)の軸受部(53)に直接形成されている
    ことを特徴する流体機械。
  16. 請求項14において、
    上記樹脂層は、可動スクロール(50)の全体に直接形成されている
    ことを特徴とする流体機械。
  17. 請求項14において、
    上記樹脂層は、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)に直接形成されている
    ことを特徴とする流体機械。
  18. 請求項14において、
    上記樹脂層は、固定スクロール(60)における可動スクロール(50)の対向面全体に直接形成されている
    ことを特徴とする流体機械。
  19. 請求項6において、
    互いに噛み合う一対のスクロール(50,60)を有するスクロール機構(40)を備え、
    該一対のスクロール(50,60)のうちの可動スクロール(50)のスラスト軸受(80)が摺動部材を構成し、
    該摺動部材であるスラスト軸受(80)は、可動スクロール(50)との摺接面(81)に上記樹脂層が直接形成されている
    ことを特徴とする流体機械。
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