JP2006270465A - 圧電振動子の周波数特性調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特別なパッケージや実装基板を必要とせずに圧電振動板面における周波数調整を正確かつ効率的に行い、特性の良好な圧電振動子を提供する。
【解決手段】 圧電振動板1は矩形平板状のATカット水晶振動板からなり、その表裏面の中央領域に平面視矩形状の励振電極膜2,3が形成され、、また電極厚肉部2a,3aが形成されている。この電極厚肉部2a,3aは圧電振動板の厚さに最大バラツキが生じた場合でも、必ず当該電極厚肉部が周波数特性調整対象となるような厚さに設定され、調整領域となっている。当該領域に対しイオンミリング法により周波数特性調整を行う。
【選択図】 図5
【解決手段】 圧電振動板1は矩形平板状のATカット水晶振動板からなり、その表裏面の中央領域に平面視矩形状の励振電極膜2,3が形成され、、また電極厚肉部2a,3aが形成されている。この電極厚肉部2a,3aは圧電振動板の厚さに最大バラツキが生じた場合でも、必ず当該電極厚肉部が周波数特性調整対象となるような厚さに設定され、調整領域となっている。当該領域に対しイオンミリング法により周波数特性調整を行う。
【選択図】 図5
Description
本発明は、例えば電圧制御型圧電発振器(VCXO)に用いる圧電振動子に関するものである。
ATカット水晶板等の厚み振動系圧電振動板を用いた圧電振動子は、一般に圧電振動板の表裏面に一対の励振電極を正対向して形成し、当該励振電極に交流電圧を印加する構成である。このような圧電振動子の諸特性は励振電極の構成に依存する。例えば大きなサイズの電極を用いることにより励振領域を広くし、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。
また圧電振動子の諸特性は圧電振動板の特性にも大きく依存する。例えば圧電振動板は加工条件あるいは加工バラツキにより、板面の平面平行度が均一でない場合があり、このような場合スプリアス振動を強く励振させ、圧電振動子としての特性を悪化させることがあった。このような問題は外部電圧を変化させることにより主振動周波数を可変する電圧制御型圧電発振器においては、周波数を大きく可変させる場合に顕著に現れることがある。すなわち、主振動周波数の可変は前述のスプリアス振動とのカップリングを起こす可能性が高くなり、周波数のジャンプ現象が生じたり、発振が不安定になるという不具合が発生することがあった。
図13および図14は板厚の平面平行度によってスプリアス振動を励振させる状態を示す図である。図13(a)は圧電振動板7に励振電極71,72が形成された状態を示す模式的断面図であり、板厚t1=t2の場合すなわち板面の平面平行度がとれている状態を示している。このような圧電振動板においては図13(b)に示すように主振動近傍にスプリアス振動の現れない周波数特性を示す。なお、図13(b)、図14(b)において縦軸は減衰量(ATTENUATION)であり、横軸は周波数(FREQUENCY)である。
図14(a)も圧電振動板7に励振電極71,72が形成された状態を示す模式的断面図であるが、板厚t1<t2の場合すなわち板面の平面平行度がとれていない状態を示している。このような圧電振動板においては図14(b)に示すように主振動近傍にスプリアス振動Spが現れた共振特性となっている。このようなスプリアス振動Spの発生は、板面の平面平行度が均一でないために生じると考えられる。すなわち、厚みすべり振動においては、対称モード(fsモード)と斜対称モード(faモード)が励振されることが知られており、斜対称モードは振動エネルギーが全体として相殺されるために通常は共振ピークとして顕在化しない。ところが圧電振動板の不均衡のために振動のバランスが崩れた場合、当該モードがスプリアス振動として顕在化すると考えられる。
このように圧電振動板の平面平行度のバラツキにより特性が悪化することについては、例えば特開2001−196890号(特許文献1)に開示されている。当該特許文献においては、対向電極(励振電極)の一方は2つの分割電極からなる構成とし、当該分割電極はそれぞれ他方の対向電極との間の共振周波数をほぼ一致させることにより特性を改善するものであり、分割電極は導通手段によって互いに電気的に導通している構成が開示されている。各分割電極についてそれぞれ共振周波数をほぼ一致させるには、例えばいずれかの電極に対して蒸着等により周波数調整を行う方法等がある。
しかしながら共振周波数の調整においては、分割電極のいずれか一方に対して調整を行うことが一般的であるが、振動バランスを調整するにあたっては調整対象の分割電極を決定する工程が必要となる。
またこのような分割電極を形成する構成は、当該圧電振動板の各電極に対して独立して電気的機械的接続する電極パッドを持ったパッケージを用意することが必要であり、さらに周波数調整後にこの独立した電極パッドを共通接続する配線パターンを実装基板側に形成する必要がある等、取り扱いが面倒であるという問題点を有していた。
さらにこの平面平行度の問題は高周波になるにつれて顕在化する。厚み系振動、例えば厚みすべり振動で駆動するATカット水晶振動板は、周知のとおり圧電振動板の厚さによってその周波数が決定され、その厚さと周波数は反比例する。そして高周波になるに従い、単位厚さあたりの周波数変化量が大きくなり、このような圧電振動板面における周波数調整は重要になっていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特別なパッケージや実装基板を必要とせずに圧電振動板面における周波数調整を正確かつ効率的に行い、特性の良好な圧電振動子を提供することを目的としたものである。
上記の目的を達成するために、本発明は、圧電振動板の板面における周波数バランスを意図的に崩した一部領域を設け、当該一部領域に対し周波数特性調整を行うためのものであり、次のような構成および調整方法により実現することができる。
すなわち、請求項1に示すように、厚みすべり振動にて動作する圧電振動板の表裏に対向して励振電極膜を形成し、励振電極膜に対して膜厚を加減してなる圧電振動子の周波数特性調整方法であって、少なくとも一方の励振電極膜が形成された一部領域の周波数を他の領域より異ならせ、当該一部領域に対して周波数特性調整を行ったことを特徴とする圧電振動子の周波数特性調整方法である。
また各領域の周波数を異ならせる構成としては、例えば請求項2に示すように、厚みすべり振動にて動作する圧電振動板の表裏に対向して励振電極膜を形成し、励振電極膜に対して膜厚を加減してなる圧電振動子の周波数特性調整方法であって、少なくとも一方の励振電極膜の一部領域の厚さまたは/および形状を他の領域より異ならせ、当該一部領域に対して周波数特性調整を行ったことを特徴とする方法をあげることができる。
一部領域の厚さを異ならせる構成例としては、他の領域より厚さを極端に厚くするか、あるいは極端に薄くする構成をあげることができる。前述のとおり圧電振動板の加工条件によっては厚さがばらつくことがあるが、バラツキが最大になった場合でも必ず一部領域側が調整対象となる程度に極端に厚くするか、薄くしておけばよい。
図1乃至図4各図は圧電振動板の厚さにバラツキがある場合において、励振電極膜の一部領域の厚さを異ならせ、当該領域に対して調整を行う周波数特性調整動作について説明している。図1は圧電振動板の一端と他端の厚さt1,t2がt1<t2の関係にあり、かつ励振電極膜の一端側と他端側の厚さE1,E2がE1<E2の関係にある場合において、励振電極膜の厚さを減じる調整例について示している。図1(a)において、E1とE2の関係は、仮に圧電振動板の厚さがt1>t2であったとしても必ずE2側(他端側)の励振電極膜を減じることによる調整が可能な程度の厚さに形成している。図1においては、t1<t2であるので、図1(b)に示すようにE2側はE1側よりその厚さが減じられた状態まで調整が行われる。
図2は圧電振動板の一端と他端の厚さt1,t2がt1<t2の関係にあり、かつ励振電極膜の一端側と他端側の厚さE1,E2がE1>E2の関係にある場合において、励振電極膜の厚さを増加させる調整例について示している。図2(a)において、E1とE2の関係は、仮に圧電振動板の厚さがt1>t2であったとしても必ずE2側の励振電極膜を増加させることによる調整が可能な程度の厚さに形成している。図2においては、t1<t2であるので、図2(b)に示すようにE2側には励振電極膜厚を増加させるが、最終的にはE1側よりその厚さが小さな状態で調整が完了する。
図3は圧電振動板の一端と他端の厚さt1,t2がt1>t2の関係にあり、かつ励振電極膜の一端側と他端側の厚さE1,E2がE1<E2の関係にある場合において、励振電極膜の厚さを減じる調整例について示している。図3(a)において、E1とE2の関係は、仮に圧電振動板の厚さがt1<t2であったとしても必ずE2側の励振電極膜を減じることによる調整が可能な程度の厚さに形成している。図3においては、t1>t2であるので、図3(b)に示すようにE2側はE1側よりその厚さが大となる状態で調整が完了する。
図4は圧電振動板の一端と他端の厚さt1,t2がt1>t2の関係にあり、かつ励振電極膜の一端側と他端側の厚さE1,E2がE1>E2の関係にある場合において、励振電極膜の厚さを増加させる調整例について示している。図4(a)において、E1とE2の関係は、仮に圧電振動板の厚さがt1<t2であったとしても必ずE2側の励振電極膜を増加させることによる調整が可能な程度の厚さに形成している。図4においては、t1>t2であるので、図4(b)に示すようにE2側はE1側よりその厚さが大となる状態で調整が完了する。
上記各調整方法においては、圧電振動板の平面平行度に起因するスプリアス調整を行うにあたり、調整手段(電極膜厚増あるいは電極膜厚減)に応じて、圧電振動板のバラツキがあった場合でも、予め決定された調整領域に対して調整を行うように、最大バラツキを考慮して、事前に励振電極膜厚を設定する。これにより調整領域と調整手段を事前に決定することができるので、従来要していた調整領域の決定や調整方法の決定に係る工程をなくすことができる。なお、少なくとも一方の励振電極膜の一部領域の周波数を他の領域より異ならせる構成としては、上述の電極膜厚による方法以外に電極形状を異ならせたり、あるいは電極膜厚と電極形状を組みあわせる構成であってもよい。
なお、本発明は予め調整領域を決定しておくという点が特徴点の一つであり、圧電振動板の厚さにバラツキがない場合でも適用することができる。
このような周波数調整は、請求項3に示すように、真空蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンエッチング法により行うことができる。真空蒸着法やスパッタリング法は励振電極膜を増加させる場合に用い、イオンミリング等のイオンエッチング法は励振電極膜を減少させる場合に用いる。
さらには請求項4に示すように、上記周波数調整を行った後、前記励振電極膜の表面をウェットエッチングしたことを特徴とする圧電振動子の周波数調整方法であってもよい。
上記調整手段や調整量によっては、励振電極膜の表面に微少段差が生じることがある。このような段差はその端部が鋭利な状態になっている場合があり、無用な反射波を生むことがある。上記ウェットエッチングを後で行うことにより、当該鋭利な状態の段差端部の影響を減じ、無用な反射波による新たなスプリアスの抑制を抑制することができる。
以上のように、本発明では、圧電振動板の板面における周波数バランスを意図的に崩した一部領域を設け、当該一部領域に対し周波数特性調整を行うことにより、調整領域と調整手段を事前に決定することができるので、従来要していた調整領域の決定や調整方法の決定に係る工程をなくすことができる。また特別なパッケージや実装基板を必要とせずに圧電振動板面における周波数特性調整を正確かつ効率的に行い、特性の良好な圧電振動子を得ることができる。
以下、本発明による実施形態について図面に基づいて説明する。本形態では、厚みすべり振動にて動作するATカット水晶振動板に本発明による周波数特性調整を適用した場合について説明する。
図5は表裏に励振電極膜が形成された圧電振動板に対し、イオンミリング法により周波数特性調整を行う方法を示す側面図であり、図5(a)はバランスが崩された状態の励振電極膜が形成された圧電振動板の側面図であり、図5(b)はイオンミリング法により周波数特性調整を行う方法を示す側面図を示している。また図6は調整前後の周波数特性を示すグラフであり、図6(a)は周波数特性調整前、図6(b)は周波数特性調整後を示している。
圧電振動板1は矩形平板状のATカット水晶振動板からなり、その表裏面の中央領域に平面視矩形状の励振電極膜2,3が形成されている。また図示していないが、各励振電極膜2,3から圧電振動板の外周に引出電極膜が引き出されている。これら励振電極膜および引出電極膜はクロム−金の積層構成であるが、当該金属材料に限定されるものではない。
この実施の形態においては図5(a)で示すように、励振電極膜2,3において、図面右側の電極膜厚が大となるように、電極厚肉部2a,3aが形成されている。この電極厚肉部2a,3aは圧電振動板の厚さに最大バラツキが生じた場合でも、必ず当該電極厚肉部が周波数特性調整対象となるような厚さに設定され、調整領域となっている。すなわち、前述の図1で示したように圧電振動板の一端と他端の厚さt1,t2がt1<t2の場合であっても、図3で示したようにt1>t2の場合であっても、必ず当該電極厚肉部が調整対象となるような極厚の厚さに設定されている。
このような電極厚肉部2a,3aの形成は、通常の励振電極膜2,3の形成後、電極厚肉部2a,3a部分のみに対して選択的に真空蒸着を行うか、あるいは通常の励振電極膜2,3の形成後、2a,3a部分以外に対して、選択的にイオンミリング等による電極膜厚を減じることにより形成する。選択的に励振電極膜を厚くしたり薄くしたりするには、例えば金属マスクに設けられた開口を選択位置に配置することにより、所望の電極形成を行うことができる。
本実施の形態においては、電極厚肉部2a,3aを設け、当該領域に対し必ず調整を行うことを予定している。図5(b)はこの電極厚肉部2aに対してイオンミリング法により周波数特性調整を行う方法を示しており、電極厚肉部2aに対応する位置に開口部M1を有する金属マスクMを近接させ、イオンミリングによる周波数特性の調整を実行する。調整状況は圧電振動板を励振させながらリアルタイムにモニタリングしてもよいし、調整対象の圧電振動板に対して予め決定された調整量のイオンミリングを実行し、その後特性確認を行い、必要に応じてこれを繰り返す方法を採用してもよい。
図6は調整前後の周波数特性を示すグラフであり、図6(a)は調整前の周波数特性(スプリアス有)を示し、図6(b)は調整後の周波数特性を示している。調整前は前記電極厚肉部の存在により、主振動周波数近傍にスプリアスSpが存在していたが、調整を行うことにより図6(b)に示すように、スプリアスが消滅し良好な特性の圧電振動板を有ることができる。
なお、当該周波数特性調整方法は上記実施の形態に開示したイオンミリングに限定されるものではなく、質量減による調整方法の他の例として、反応性のガスを用いたエッチングを用いてもよいし、レーザービーム、イオンビームによる調整をあげることができる。また質量付加による調整方法の例として、パーシャル蒸着方法やスパッタリングをあげることができる。質量付加による調整を行う場合も、前記解決手段の項で図2、図4を参照して説明したように、圧電振動板の最大バラツキと調整方法を考慮して、事前に励振電極膜厚を設定する。これにより調整領域と調整手段を事前に決定することができるので、従来要していた調整領域の決定や調整方法の決定に係る工程をなくすことができる。
また周波数特性調整後に前記励振電極膜の表面をウェットエッチングを行ってもよい。上述の周波数特性調整を行った場合、調整手段や調整量によっては励振電極膜の表面に微少段差が生じることがある。このような段差はその端部が鋭利な状態になっている場合があり、無用な反射波を生ぜしめスプリアス振動の生じることがある。上記ウェットエッチングを後で行うことにより、当該鋭利な状態の段差端部による影響を減じ、無用な反射波による新たなスプリアスの抑制を抑制することができる。
なお、図示していないが、以上の特性調整後、セラミックパッケージ等のパッケージに圧電振動板を収納するとともに、圧電振動板をパッケージに電気的機械的接合し、その後リッドにて気密封止することにより、圧電振動子の完成となる。
本発明による他の実施形態について図面に基づいて説明する。図7は圧電振動板1に形成される励振電極2、3(3は図示せず)について、大電極領域2bと小電極領域2cを有する構成としている。大電極領域2bは負荷質量効果により小電極領域2cに較べて周波数を低く設定することができ、これにより励振電極膜の一部領域の周波数を他の領域より異ならせることができる。周波数特性調整においては、前記大電極領域2bに対して電極形状を小さくすることにより、あるいは電極膜厚を薄くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を高い方向に調整をすることができる。
また逆に小電極領域2cは相対的に周波数が高いことにより、当該小電極領域2cに対して電極形状を大きくすることにより、あるいは電極膜厚を厚くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を低い方向に調整をすることができる。
図8、図9は励振電極膜2の長辺に傾斜部を設けた略台形形状であり、図8は電極形状が図面右側に向かって漸次大きくなる傾斜部2dを有する構成である。本実施形態においては励振電極膜の形状により、励振電極膜の一部領域の周波数を他の領域より異ならせるものである。周波数特性調整は、右側の電極領域に対して電極形状を小さくすることにより、あるいは電極膜厚を薄くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を高い方向に調整をすることができる。また逆に左側の電極領域に対して電極形状を大きくすることにより、あるいは電極膜厚を厚くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を低い方向に調整をすることができる。
図9は電極形状が図面右側に向かって漸次小さくなる傾斜部2eを有する構成である。本実施形態においては励振電極膜の形状により、励振電極膜の一部領域の周波数を他の領域より異ならせるものである。周波数特性調整は、左側の電極領域に対して電極形状を小さくすることにより、あるいは電極膜厚を薄くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を高い方向に調整をすることができる。また逆に右側の電極領域に対して電極形状を大きくすることにより、あるいは電極膜厚を厚くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を低い方向に調整をすることができる。
本発明は励振電極膜の一部を削除することにより励振電極膜が形成されたの一部領域の周波数を他の領域より異ならせてもよい。例えば図10は励振電極膜2に無電極部2fを複数設けることにより、励振電極膜の一部領域の周波数を異ならせるものであり、図10においては無電極部2fの形成領域を電極の左側に偏在させることにより、当該領域の周波数を高めている。周波数特性調整は、右側の電極領域に対して電極形状を小さくすることにより、あるいは電極膜厚を薄くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を高い方向に調整をすることができる。また逆に左側の電極領域に対して電極形状を大きくすることにより、あるいは電極膜厚を厚くすることにより、あるいは両者を組み合わせることにより、周波数を低い方向に調整をすることができる。
本発明は圧電振動板に形成された表裏の励振電極膜形状を異ならせることにより励振電極膜の一部領域の周波数を他の領域より異ならせてもよい。図11は圧電振動板の表裏面に形状の異なる励振電極膜2,3を形成した例を示している。表面の励振電極膜2は矩形形状であるが、裏面の励振電極膜3は図7で示した電極構成に類似した大電極領域3aと小電極領域3bを有する構成である。大電極領域3aは負荷質量効果により周波数が低く設定されている。周波数調整は上述と同様、周波数の低い領域の励振電極膜の質量を減じるか、周波数の高い領域の励振電極膜の質量を増すことにより実行する。
ところで、圧電振動板に形成される励振電極膜の調整領域に対し膜厚を減じることにより周波数特性調整を行う場合、当該膜厚減少量を調整領域内で異ならせて、周波数特性調整を最適化してもよい。図12は膜厚減少量を調整領域内で異ならせて調整を実行する例を示しており、図12(a)は調整前の励振電極形成された圧電振動板の断面図、図12(b)はイオンミリングによる調整方法を示す図である。図12(b)に示すように、励振電極膜の一部領域の周波数を他の領域より異ならせた調整領域2g(電極厚肉部)に対してイオンミリングを実行するにあたり、イオンミリングEの一部のみが調整領域2gに対し照射される構成としている。一般的にイオンミリングはエッチングレートがその中心部分に対して周囲が小さいことが知られている。図12(b)においてイオンミリングEの矢印の大きさはエッチングレートを示し、長い方がエッチングレートが高いことを示している。このような特性を利用して、イオンミリングの中心部分から周囲部分のみが前記調整領域に対し照射されるよう、金属マスクMの開口部M1を形成し、周波数特性の調整を実行する。その結果、図12(b)で示すように調整領域2gの上面が傾斜を持った形状となり、励振電極の外周近傍に向かうにつれて重みが増加する構成となっている。このように漸次厚さが変化するような構成とすることにより、無用なスプリアス振動の励振を抑制することができ、特性の良好な圧電振動子を得ることができる。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
水晶振動子等の圧電振動デバイスの量産に適用できる。
1、7 水晶振動板(圧電振動板)
2、3、71,72 励振電極膜
2a,3b 電極厚肉層
2、3、71,72 励振電極膜
2a,3b 電極厚肉層
Claims (4)
- 厚みすべり振動にて動作する圧電振動板の表裏に対向して励振電極膜を形成し、励振電極膜に対して膜厚を加減してなる圧電振動子の周波数特性調整方法であって、
少なくとも一方の励振電極膜が形成された一部領域の周波数を他の領域より異ならせ、当該一部領域に対して周波数特性調整を行ったことを特徴とする圧電振動子の周波数特性調整方法。 - 厚みすべり振動にて動作する圧電振動板の表裏に対向して励振電極膜を形成し、励振電極膜に対して膜厚を加減してなる圧電振動子の周波数特性調整方法であって、
少なくとも一方の励振電極膜の一部領域の厚さまたは/および形状を他の領域より異ならせ、当該一部領域に対して周波数特性調整を行ったことを特徴とする圧電振動子の周波数特性調整方法。 - 周波数特性調整は、真空蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンエッチング法により行ったことを特徴とする請求項1または2記載の圧電振動子の周波数特性調整方法。
- 請求項1乃至3の周波数特性調整を行った後、前記励振電極膜の表面をウェットエッチングしたことを特徴とする圧電振動子の周波数特性調整方法。
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