JP2006250873A - 超音波探傷方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本願発明は、円柱或いは円筒状の被検材mの外周面を取り囲むように、何れも同一半径の弧を呈する複数のフェーズドアレープローブ1…1を設けて、当該被検材mを探傷するものであり、フェーズドアレープローブ1…1の夫々は、複数の振動子10…10を弧状に配列したものである超音波探傷方法に係るものである。そして、個々のフェーズドアレープローブ1…1を、被検材mの軸方向と交差する平面上(仮想面)にて、フェーズドアレープローブ1が呈する弧の中心角を等分する二等分線(仮想線)と、被検材mの中心との間に偏心距離dを持たせるように、被検材mに対しオフセットする。
【選択図】 図1
Description
尚、このように環状にエレメントが配列されたアレー探触子では、メンテナンス時、一部のエレメントの不具合により、その全体を交換する必要が生じる。このため、本願の発明者は、複数のエレメントを弧状に配列した弧状のフェーズドアレー探触子を、複数用いて、被検材の外周を取り囲むように配列したものを考えた。即ち、複数の弧状のアレー探触子を用いて、円周をブロック分けして、探傷を行うのである。
また、他においても、円周をブロック分けして探傷を行うものが提案されている(特許文献2及び特許文献3)。
この点について、図9(概念図)を用いて、詳しく述べる。
上記従来の探傷装置では、図9(A)に示す通り、パイプ又はピレットといった円形の断面を有する被検材と弧状の断面を有する(複数の振動子10が弧状に配列された)フェーズドアレープローブ1とプローブ収納ブロックJを同心円(Mは被検材mの中心を示す。)上に配置し、当該被検材mとフェーズドアレープローブ1と含むプローブ収納ブロックJの間をカップリング用の探傷水wで満たす(図9において、図面の煩雑を避けるため、被検材mについて付すべきハッチングを省略してある)。
具体的には、この超音波探傷装置は、被検材mに対して、フェーズドアレープローブ1が呈する弧の中心角φを二等分する二等分線t1上に、被検材mの中心Mが位置するよう、物理的な配置を採る。
発信から受信に到る一連の動作が完了した後、発信用受信用アレーエレメントを適当なエレメント数分シフトさせ、上記と同様な発信受信シーケンスが繰り返される。この繰り返し周期を超音波繰り返し周期といい、この逆数を超音波繰り返し周波数という。この超音波繰り返し周期は、主に残響超音波信号(ゴーストエコーとも呼ばれる)の残存時間で決定される。
残響超音波信号の主要な成分は、カップリング用の探傷水内の、フェーズドアレープローブ表面と被検材m表面との間の多重反射、及び、プローブ収納ブロック表面と被検材m表面との間の多重反射である。
このため、一つの弧状のアレー探触子による超音波の多重反射が、問題となる欠陥エコーを弁別することができるまで減衰するのを待って、次の超音波の発射を行わねばならず、上記の残響時間の長さが探傷の迅速性を阻害していた(次のパルスを早く出せないでいた)。
ここで、プローブ収納ブロック表面と被検材表面との間の多重反射については、プローブ収納ブロックの表面を超音波吸収効果の高い材料で構成したり、乱反射を行わせる楔加工を施したりした対処することができるが、フェーズドアレープローブ表面と被検材表面との間の多重反射については、これまで有効な対策がなかった。
図10へ示す実験機材を用いて多重反射による残響超音波のデータを採取した。この実験機材は、長方形のステンレスの板kの表面k1に、フェーズドアレープローブ1のプローブユニット2と、パイプ状のテスト用被検材m0とを固定したものである。上記の図9(A)に示すように、フェーズドアレープローブ1(の呈する弧)が、被検材m0と間隔を隔てて、被検材m0と同心となるよう、夫々板k表面に配置・固定した。
そして、探傷水(水)の中に被検材mと共に上記板kを浸けて、実験を行った。
尚、このフェーズドアレープローブ1は、弧の半径が52.5mm、弧の中心角が60度であり、その中央部分に0.35mmピッチ間隔で配設された128個の振動子にて構成され、そのうち同時に振動する振動子を32個とした。一連の32個の振動子群が振動して超音波を発し探傷を行った後、数個シフトして次の32個の振動子群が振動し探傷を行う。最も反射エコーが強い振動子群から得た結果を図11(A)、図12(A)及び図13(A)へ示す。
各図に示すグラフにおいて、縦軸は反射エコーの強さを、横軸は被検材中の横波伝播距離(mm)を示している。横波音速を3230m/secとした。音波の到達距離は、到達時間から換算されることから、横軸が示す距離は、時間と考えることができる。
図11(A)が示すデータは、被検材m0を直径34.0mm、肉厚7.0mmのパイプとし、超音波の被検材m0への入射点における屈折角24.6度、フェーズドアレープローブ1の感度を48.8dBとして得た。
図12(A)が示すデータは、被検材m0を直径34.0mm、肉厚7.0mmのパイプとし、超音波の被検材m0への入射点における屈折角45.0度、フェーズドアレープローブ1の感度を50.4dBとして得た。
図13(A)が示すデータは、被検材m0を直径48.6mm、肉厚3.7mmのパイプとし、超音波の被検材m0への入射点における屈折角36.8度、フェーズドアレープローブ1の感度を51.2dBとして得た。尚、上記各感度は、図11(A)及び図13(A)では内面の0.1mmノッチきずのエコー高さ、図12(A)では外面の0.1mmノッチきずのエコー高さが画面縦軸の4/5(80%)になる感度とした。
図11〜図13に示すグラフの波形のピークは、フェーズドアレープローブ表面と被検材表面との間の多重反射、即ち、フェーズドアレープローブ表面と被検材表面との間における反射エコーを示している。
従って、この実験結果が示す通り、実際の探傷において、超音波の多重反射について、欠陥エコーを弁別することができるまで減衰するのを待って、次のパルスを出させねばならず、前述の通り、上記の残響時間の長さが探傷の迅速性を阻害していたのである。
そこで、本願発明者は、被検材の中心に対し、弧状のアレー探触子の中心を一致させない、即ち偏心させることによって、少なくとも上記のフェーズドアレープローブ表面と被検材表面との間の多重反射(振幅)を軽減し、その残響時間を大幅に低減できることを見出した。
即ち、個々のフェーズドアレープローブ1…1を、被検材mの軸方向と交差する平面上(仮想面)にて、フェーズドアレープローブ1が呈する弧の中心角を等分する二等分線(仮想線)と、被検材mの中心との間に偏心距離dを持たせるように、被検材mに対しオフセットする。
ここで偏心とは、フェーズドアレープローブ1が呈する弧の中心角を等分する二等分線(仮想線)と、被検材mの中心との間の、ずれをいう。従って、偏心距離とは、当該二等分線(仮想線)に被検材mの中心から降ろした垂線(仮想線)の長さであり、また、オフセットするとは、当該二等分線上が被検材mの中心を通らないように被検材に対しフェーズドアレープローブをずらして配置するということである。
尚、上記の二等分線は、フェーズドアレープローブ1が呈する弧の両端を結ぶ線分を垂直に等分する線でもある。
即ち、全フェーズドアレープローブ1…1から距離を等しくする中心軸(仮想線)に対し、フェーズドアレープローブ1の夫々は、当該中心軸の周方向に沿って配列され、個々のフェーズドアレープローブ1が呈する弧の中心角を等分する二等分線(仮想線)と上記中心軸との間に偏心距離dを備えるよう、各フェーズドアレープローブ1は、上記の中心軸に対しオフセットされたことを特徴とする。
本願発明において、被検材内の探傷条件(例えば、縦波探傷、横波探傷の選択、屈折角、焦点深度等)が同一であっても、各発信信号シーケンスでのフェーズドアレーの緒言データ(例えばエレメント毎の送信パルスデレー量、受信信号デレー量、プローブと被検材の超音波入射点までの超音波伝播距離等)は異なる。しかし、一般のフェーズドアレープローブ表面と被検材表面との間の曲面的平行度(プローブ表面と被検材表面の各部における物理的な距離の一定性)は低減され、多重反射は軽減された(早期に減衰するものとした)。
例えば、従来の方法(フェーズドアレープローブの配置を被検材と同心とする方法と)では、超音波繰り返し周波数は4kHz(材料変形、変心を考慮すると2kHz程度が実用的)程度が限界であるが、この発明の実施によって超音波繰り返し周波数を8kHz程度まで上げることが可能となった。
説明の便宜上、図面において、適宜、Uは上方を、Sは下方を、Fは前方(被検材mの進行方向)を、Bは後方を示す。
この探傷装置は、被検材mとなる鋼管(パイプ)又はビレットの、欠陥を探傷するものであり、このような鋼管の製造工程或いは加工工程において、鋼管の移動中に探傷を行う。即ち、鋼管の製造・加工装置が備える送り装置によって移送されて来る鋼管の移送経路の途中に、この探傷装置を配置して、鋼管の探傷を行う。上記の送り装置は、被検材mを軸方向に沿って移送し、被検材mに回転は与えない。即ち、被検材mを、直線的に移動させるのみで、その周方向については変位させない。図1へ示す通り、後方B側から前方Fに向けて、被検材mは、直線的に送られる。
上記の軸方向に対する移送は、探傷装置に対する相対的な移動であり、探傷装置(プローブ)を被検材mの軸方向に沿って直線的に移動させるものとしても実施可能である。
探傷部100a,100bの夫々は、複数のプローブユニット2…2(図6(A)(B))と、複数のリング3…3(図7)と、端部リング4…4(図1、図2及び図4)と、複数のブッシュ5…5と、リング支持体6と、ブッシュ保持体50(図1〜図5)と、係止具7とを備える。
この第1探傷部100a(図2及び図3)と第2探傷部100b(図4及び図5)とは、リング3の数が異なり(図4へ示す通り第2探傷部100bは第1探傷部100aよりも1枚リング3の数が多い。)、また被検材mに対するリング3…3の向きが異なるのみで、他の構成は同一である。従って、以下、第1探傷部100aを両探傷部の代表として説明する。
この実施の形態において、個々のプローブ1は、1回の探傷に、128個のうち32個の振動子を振動させる。そして、振動させる振動子を数個づつシフトして、次の32個を振動させる。このシーケンスが繰り返される。
ユニット2は、図6へ示す通り、板状体(立方体)であり、先端にプローブ1が設けられている。即ち、ユニット2の先端は、弧を呈する。
リング3…3同士は、同心となるよう重ねられ、係止具7にて止められる(図1、図2及び図4)。これにて、リング3…3は、1本の筒状体(特許請求の範囲の請求項5の筒状体に対応)を形成する。この実施の形態において、係止具7は、ナットを備えたボルトである(以下ボルト7と呼ぶ)。
受容部21は、リング3の端面に形成された凹部である。受容部21は、ユニット2の形状・寸法に対応する内部形状・寸法を備えた凹部であり、受容するユニット2にぴたりと沿うものである。
受容部21に上記のユニット2を嵌め込み、ネジ或いはボルトといった固定具にて、リング3にユニット2を固定する。但し、リング3に対してこのような固定具を用いて固定するのではなく、上記のボルト7によるリング3…3の固定によって、個々のリング3へユニット2を固定するものとしても実施可能である。受容部21は、リング3の中空部分30に連絡しており、取り付けられたユニット2のプローブ1は、リング3の中空部分30を臨む。
1つのリング3に一つの受容部21が形成されることによって、1つのリング3につき、1つのユニット2を設けることができる。但し、1つのリング3に複数の受容部21を設けて、複数のユニット2を設けるものとしても実施可能である。例えば、円盤状のリング3の両面に受容部21を形成するものとしても実施可能である。
この実施の形態では、次の支持体6の支持板62を除き、1つのリング3に一つのユニット2が設けられている。
上記において、支持板62の貫通部63がリング3…3の中空部分30と対応するように、支持板62は、リング3…3に重ねられて、ボルト止めされる。具体的には、ボルト7…7は、全リング3…3、支持板62、端部リング4,4及びブッシュ保持体50,50を貫くものであり、上記のリング3…3、支持板62、端部リング4,4及びブッシュ保持体50,50を一体に固定する。
これにて、リング3…3(及び端部リング4,4とブッシュ保持体50,50)は、その軸方向を水平にして、リング支持体6に保持される。
この実施の形態において、上記支持板62には、貫通部63の内部を臨むように、プローブ1(ユニット2)が(2つ)取り付けられている。即ち、この支持体62にも、(2つの)ユニット2の受容部21が設けられて、この受容部21にユニット2が取り付けられている。以下、支持板61の貫通部62も、中空部分30の一つとして、他のリング3と同様に説明する。
図1及び図2(図4)へ示すように、リング3…3及び支持板62の中空部分30、端部リング4,4及び各ブッシュ5…5の中央(中空部分40,50)へ、被検材mが通される。
リング3の内周面からプローブ1がリング3の中空部分30を臨むように、尚且つ、プローブ1が呈する弧が被検材mの軸方向と直交する平面(仮想面)に属するように、ユニット2は、リング3に取り付けられる。
上記の受容部21は、このようなユニット2の外径に合わせて、リング3の端面に設けられた凹部である。
上記の端部リング4の中空部分40及びブッシュ5の内周面(中空部分50)の断面形状は、円である。上記において、当該中空部分40,50が、被検材mと同心になるように、端部リング4,4及びブッシュ5,5が、配置され、固定される。即ち、端部リング4,4は、中空部分40を被検材mと同心とするように、リング3,3に対して取り付けられ、ブッシュ保持体50,50は、中空部分50とリング3…3とが同心となるように、ブッシュ5…5を保持する。
各ブッシュ5…5は、送られてくる被検材mを案内(ガイド)する。この実施の形態では、少なくとも一部のブッシュ5a,5aの内径(中空部分50の径)を、他のブッシュ5…5の内径(中空部分50の径)より小さなものとして、ブッシュ5…5の内周面が被検材mの外周に対応する(沿う)ものとし、当該ブッシュ5,5aにより、(移送中撓んで芯ぶれを起そうとする)被検材mに対して芯出し(軸の位置決め)を行う。
特許請求の範囲の請求項5に記載の支持部材は、上記の、リング3…3と、端部リング4…4と、ブッシュ5…5と、ブッシュ保持体50…50と、リング支持体6と、係止具7…7とにて構成されている。
先ず第1に、全てのユニット2…2間において、次の関係を有する。即ち、被検材mの軸方向において隣接するユニット2,2同士にあって、弧を呈する互いのプローブ1を、被検材mの中心線(仮想線)と直交する平面(仮想平面)において、被検材mの中心に対し、順次、同一の向き(例えば前方側から正面視した状態において時計回り)に所定角度ずらした状態とする(これは、実際にこのように配置してから次の第2の状態に配置し直すという意味ではなく、最終的にプローブ1…1間の配置はこのような基準を満たすものであるという意味である)。即ち、図8へ示す通り、被検材mの軸方向と交差する(仮想)平面において、個々のプローブ1は、被検材mの中心Mを中心として、夫々互いの向きを異にする(図8において被検材mは省略して描いている)。この実施の形態において、プローブ1の呈する弧の中心角は60度である。そして、隣接するプローブ1間において、被検材mの中心Mを中心とし、25.7度のずれ(ずれ角)を有する。
上記のずれ角については、被検材mの軸方向と交差する(仮想)平面において、個々のプローブ1が呈する弧の中心角φを二等分(角度θ)する二等分線同士がなす角度と考えればよい。
このように、所定角度(この実施の形態において25.7度)ずれた状態となるよう、プローブ1…1の向きを決める。
このように各プローブ1…1を所定角度づつずらすことによって、被検材の外周を360度カバーする。
各プローブ1について、上記の向き・配置を満たすものであれば、特に上記のリング3…3を採用することに限定するものではないが、上記構成を採るリング3…3へ、ユニット2…2を取り付けることによって、容易に上記の向き及び配置を実現することができる。
この実施の形態において、リング3…3の受容部21…21を、リング3の端面において、受容するユニット2が次の配置(及び向き)を採る位置・向きに設けておく。
プローブ1の(呈する)上記弧が被検材mの中心と同心に配置されているとした場合、当該弧の中心角を二等する二等分線(仮想線)は、被検材mの中心を通る(以下被検材mの中心を通る上記二等分線を中心包含線t2と呼ぶ。)。プローブ1が呈する上記の弧の二等分線が、この中心包含線t2に対し平行であって、中心包含線t2に対し所定間隔(偏心距離d)離れた平行線(仮想線/以下必要に応じてオフセット線t1と呼ぶ。)となるよう、ユニット2を配置する。ユニット2を嵌めれば、上記の配置を採るように、受容部21を、リング3に形成すればよい。
受容部21の位置は、偏心距離dを採らないプローブ1の位置(プローブ1が被検材mの中心Mと同心の配置)を基準として、即ち、特許請求の範囲の請求項4に記載の全フェーズドアレープローブから距離を等しくする中心軸を基準として、当該位置にあるプローブ1の呈する弧の端p1,p2を結ぶ直線(以下弧端線t3と呼ぶ。)に沿って(当該弧端線t3の延長線上にて)、プローブ1を一方の弧端側へ(偏心距離d分)寄せた位置に来るようユニット2を配置するものであるのが好ましい(偏心距離d設定後も両弧端が上記弧端線t3の延長線上に位置するようにユニット2配置するのが好ましい)。但し、中心包含線t2上に被検材mの中心Mを位置させないものであればよく、このような配置に限定するものではない。即ち、二等分線が偏心距離を有するものであれはよく、弧端線上にプローブの弧端が位置するように移動するものに限定しない。
この探傷装置において、被検材の中心M(中心軸)と、上記の全フェーズドアレープローブから距離を等しくする中心軸とは、一致する。
被検材mの先端(前面)を正面視した状態において、上記の中心包含線t2を上下に伸びる(鉛直方向に伸びる)ものとした場合、偏心距離dは、中心包含線t2の右側に設定しても、左側に設定しても、何れでもよい。
上記の通り、一つの探傷装置において、検査の対象とする被検材の寸法は、このような一つの寸法に限らない。即ち、探傷装置に通すことが可能であり、必要な水距離(プローブ1表面と被検材m表面間の距離、即ち介される探傷水の幅)を確保できるものであれば、一つの探傷装置の検査対象となる被検材mの寸法は一義的なものではない。
この実施の形態において、被検材mは、直径(外径)50mmの寸法のものを例示する。尚、偏心距離dを設定することによって、プローブ1の各位置(各振動子10…10)において、水距離は一定とならない(これが多重反射の早期減衰を実現する)。
このため、プローブ1とリング3の内周面の他の部位との間に段差ができないように、リング3の内周面の各部を曲線的に形成する。
例えば、リング3の内周面の断面形状は、図8に示す形状を採るのが好ましい(図8において被検材mは省略してある)。この場合、プローブ1の呈する弧の中心は、前述のオフセット線t1上にある。ここで、説明の便宜上、プローブ1の弧端p1,p2を結ぶ弧端線t3と平行であり且つ被検材のmの中心Mを通る線t4(以下平行中心線t4と呼ぶ。)が、被検材mの中心Mを中心とする円(上記の通り、この実施の形態では、必要な水距離を確保するために、直径50mmの被検材に対して半径52.5mmの円)と交差する点を、交点p3,p4とする。
リング3の内周面の上記弧と反対側において、弧端p1と交点p4との間、及び弧端p2と交点p3との間は、段差のない凹曲線(被検材m側を凹とする)とするのである。この凹曲線については、段差なく湾曲するものであれば、どのような曲線であっても実施可能である。また、正円となる範囲も上記に限定するものではない。また、正円となる部分を持たないものであってもよい。
また、上記の偏心距離dの設定によって、隣接するリング3,3間にて内周面に段差ができるが、プローブ1の厚みx方向(図6(B))については、超音波は広がらない(実際には若干広がるが、当該被検材mの軸方向の段差が問題となる程広がらない) ので無視することができる。
より現実的には、上記の弧端線t3は、被検材mに交わらないのが好ましい。通常、このような対象とする被検材mの直径と水距離(プローブと被検材表面との間の距離)とを考慮すると、上記の中心角φは120度以下とするのが好ましい。
使用可能なプローブ1の振動子10の大きさや数を考慮すると、上記の中心角は、8度以上100度以下とするのが好ましい。
但し、プローブ1の中心角φは、上記の数値範囲に限定するものではない。
また、図2及び図4へ示す通り、リング3…3夫々の端面に、位置決め部31として凹凸を設け、隣り合うリング3,3同士の当該位置決め部31を嵌め合うことによって、上記のずれを正確に決めることができる。この実施の形態では、上記凹凸の凸部として、ピンをリングへ装着している。
このようにリング3…3をずらして取り付けることにより、個々のリングに設けられたプローブ1(ユニット2)同士が所定の角度をずらされた状態に配置される。
尚、図1、図2及び図4において、図面の煩雑を避けるため、このようなリング3…3間の周方向についての位置関係を考慮して描いていない(支持板62に支持されているユニット2の一部を除き、全て同一の方向に配置されているように描かれているが、実際には、リング3…3において、夫々上記の角度ずらして配置しており、これらの図に描くものと、この点について異なっている。
通常、1つのプローブ1を構成する振動子の全てを、同時に振動させるのではなく、一部の振動子を順次所定個数シフトさせて振動させる。この実施の形態において、128個の振動子中、同時に振動させるのは、32個である。一連の32個の振動子が振動して超音波を発し探傷を行った後、数個シフトして32個の振動子が振動し探傷を行う。これを繰り返す。
上記のシフト数を5個として、具体的に説明する。
一つのユニット2(プローブ1)の弧状に配列された振動子10…10を、端から1番、2番、…、127番、128番と名前付けすると、最初の送信電圧を受けて1〜32番の振動子10…10が超音波を発し、次に5個シフトした6〜37番の振動子10…10が超音波を発し、そして更に5個シフトした11〜42番の振動子10…10が超音波を発生する。このようなシフトを順次行って、被検材mの各部を探傷する。
偏心距離の設定により、超音波の残響時間を短縮すること(エコーの減衰を早めること)によって、上記のシフトによる次の振動子群の動作開始を早めることができるのである。
即ち、32個の振動子の振動から、次の32個の振動子の振動までの時間が、本願発明の実施によって短縮されたのである。
ユニット2…2間において、第1プローブから順に(後ろから前に)探傷を行う。但し、上記において、振動子のシフトにより第1プローブ1の128番の振動子の動作が済んでから、第2プローブの1〜32番の振動子を動作させるのではなく、第1プローブが動作開始後、第1プローブの最後の振動子が動作する前に第2プローブの振動子を動作させる。他のプローブについても、先行するプローブの動作開始後、当該先行するプローブの最後の振動子が動作する前に、後続のプローブの振動子を動作させる。
但し、プローブ1…1(ユニット2…2)の各々については、軸方向に相当距離離れており、同時に探傷が可能である。従って、上記と異なり、例えば、第1プローブの1〜32番の振動子が超音波を発信するタイミングで、他のプローブの1〜32番の振動子は同時に超音波を発信することが可能である。このとき、第1プローブの発信振動子番号組と、他のプローブの発信振動子番号組とは必ずしも同一である必要は無い。
また、上記において、1つのプローブ1が備える振動子10…10の数は、128個としたが、このような数に限定するものではなく、他の個数にて実施することが可能である。また同時に振動する振動子10…10の数も上記の32個に限定するものではなく、変更可能である。また、振動後、次の振動へシフトする振動子の数も、上記5個に限定するものではなく、変更可能である。
上記において、探傷装置のプローブ1…1は、被検材の外周360度全てをカバーする。しかし、このようなものではなく、例えば当該探傷装置のプローブ1…1は、360度より小さい範囲をカバーするものとし、カバーしない範囲については、別途の手段で探傷を行うものとしても実施可能である。
また、上記の360度を超えて(重複して)、プローブ1…1が配置されるものであっても実施可能である。
また、上記の実施の形態において、探傷水は、外部から供給し排出するものとした(流水)としたが、浸水式、即ち装置を水中に浸水させるものとしても実施可能である。
上記の実施の形態において、鋼管(被検材m)の製造・加工装置が備える送り装置によって移送されて来る鋼管(被検材m)の移送経路の途中に、当該探傷装置を配置して、鋼管(被検材m)の探傷を行うものとした。この他、当該探傷装置が送り装置を備えるものとしても実施可能である。その場合、製造・加工の工程とは別に、鋼管(被検材m)の探傷を行うことができる。
何れも、偏心距離を設定した被検材以外は、前述の図11(A)、図12(A)及び図13(A)に示すものと同じ条件で行った。
即ち、図11(B)(C)が示すデータは、被検材m0を直径34.0mm、肉厚7.0mmのパイプとし、超音波の被検材m0への入射点における屈折角24.6度、フェーズドアレープローブ1の感度を48.8dBとして得られたものである。図12(B)(C)が示すデータは、被検材m0を直径34.0mm、肉厚7.0mmのパイプとし、超音波の被検材m0への入射点における屈折角45.0度、フェーズドアレープローブ1の感度を50.4dBとして得られたものである。図13(B)(C)が示すデータは、被検材m0を直径48.6mm、肉厚3.7mmのパイプとし、超音波の被検材m0への入射点における屈折角36.8度、フェーズドアレープローブ1の感度を51.2dBとして得られたものである。
上記において、前述の(上下に伸びるものとした)中心包含線t2に対して左右何れか一方へのオフセットを+(正)、左右何れか他方へのオフセットを−(負)とした(データを採取した位置特定の便宜上このように正負を設定した)。図11(B)及び図12(B)においては、偏心距離dは、+5mmとした。図11(C)及び図12(C)において、偏心距離dは、−5mmとした。図13(B)において、偏心距離dは、+4mmとした。図13(C)において、偏心距離dは、−4mmとした。
同様に 図12(B)(C)を見ると、何れも横軸について150mm以内で、縦軸(5つの升目)の1/5以下(1升以内)にエコーのピークが減衰している(図12(C)では100mm以内で1/5以下に収束している)。多重反射エコーのピークが、縦軸の1/5以下へ減衰するまでに要する時間(距離)について、偏心距離を設けない場合(図12(A))に要した250mmに比して著しい低下が見られる。
また、同様に 図13(B)(C)を見ると、何れも横軸について200mm以内で、縦軸(5つの升目)の1/5以下(1升以内)にエコーのピークが減衰している(図13(C)では100mm以内で1/5以下に収束している)。多重反射エコーのピークが、縦軸の1/5以下へ減衰するまでに要する時間(距離)について、偏心距離を設けない場合(図13(A))に要した300mmに比して著しい低下が見られる。
縦軸1/5以下にエコーのピークが減衰するまでに要する時間の最も大きな数値である200mm(Lとする)の場合、時間に換算すれば124μsec(Tとする)となり(音速V=3230m/secとすれば、T=2*L/Vで示される。)、これが超音波繰り返し周期の上限となる。超音波繰り返し周波数で言えば約8KHzとなる。
このような実験結果から、偏心距離の設定が、多重反射エコーの軽減に極めて有効であることが分かる。
10 振動子
d 偏心距離
m 被検材
Claims (5)
- 円柱或いは円筒状の被検材の外周面を取り囲むように、何れも同一半径の弧を呈する複数のフェーズドアレープローブを設けて、当該被検材を探傷するものであり、フェーズドアレープローブの夫々は、複数の振動子を弧状に配列したものである超音波探傷方法において、
個々のフェーズドアレープローブを、被検材の軸方向と交差する平面上にて、フェーズドアレープローブが呈する弧の中心角を等分する二等分線と被検材の中心との間に偏心距離を持たせるように、被検材に対しオフセットすることを特徴とする超音波探傷方法。 - 上記の偏心距離は、被検材の半径より小さく、フェーズドアレープローブの呈する弧の半径の1/20〜1/5であることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷方法。
- 各フェーズドアレープローブの上記偏心距離は、何れも同一の大きさであることを特徴とする請求項1又は2記載の超音波探傷方法。
- 同一半径の弧を呈する複数のフェーズドアレープローブを備え、フェーズドアレープローブの夫々は、複数の振動子が弧状に配列されたものである超音波探傷装置において、
全フェーズドアレープローブから距離を等しくする中心軸に対し、フェーズドアレープローブの夫々は、当該中心軸の周方向に沿って配列され、
個々のフェーズドアレープローブが呈する弧の中心角を等分する二等分線と上記中心軸との間に偏心距離を備えるよう、各フェーズドアレープローブは、上記中心軸に対しオフセットされたことを特徴とする超音波探傷装置。 - 内部に円柱或いは円筒状の被検材を通過させることが可能な筒状体と、通過させる被検材に対して同心となるよう筒状体を支持する支持部材とを備え、
上記の各フェーズドアレープローブの夫々は、筒状体の内周面にて、筒状体の軸方向の異なる位置に、配設されたものであることを特徴とする請求項4記載の超音波探傷装置。
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