JP2006233017A - 熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化グラファイトが熱可塑性樹脂中に微分散した熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂組成物中の酸化グラファイトの層間距離が40オングストローム以上であるか、あるいは層構造が消失している熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂組成物中の酸化グラファイトの層間距離が40オングストローム以上であるか、あるいは層構造が消失している熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、酸化グラファイトを疎水化して、熱可塑性樹脂との親和性を改良することにより、酸化グラファイトを微分散させた熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
近年、モンモリロナイトや合成雲母に代表される層状珪酸塩に、イオン交換反応によって有機物を導入して熱可塑性樹脂との親和性を改良し、熱可塑性樹脂中に均一に分散させたナノコンポジットに関する研究が活発となっている。特許文献1には、ナイロン6に、モンモリロナイトの層を劈開して微分散させることにより、ナイロン6の剛性や耐熱性が飛躍的に向上することが報告されている。このようなナイロン6ナノコンポジットにおいて、飛躍的に特性が向上する理由として、非特許文献1に示されるように、モンモリロナイトの層表面に存在するシロキサン結合の酸素原子に、ナイロン6分子のアミド基が配位して結晶化し、モンモリロナイトがナイロン6の結晶を補強すること、かつ、モンモリロナイトがナノメートルオーダーで分散しているため、ナイロン6分子を分子オーダーで構造制御することが可能になるためと考えられている。このように、熱可塑性樹脂中に異素材を微分散させることは、熱可塑性樹脂の特性を飛躍的に向上できる可能性があるため、熱可塑性樹脂の高性能化技術として注目されている。
一方、黒鉛はグラファイト層が3.4オングストローム間隔で積層した層状化合物である。黒鉛は、高い電気伝導性(104S/m)を有するため、熱可塑性樹脂に導電性を付与するためなどに使用されているが、熱可塑性樹脂との親和性が低く、粗大分散するため、熱可塑性樹脂中に導電パスを形成させるには、黒鉛を大量に添加することが必要であった。黒鉛はグラファイト層と垂直方向の電気伝導率は小さいが、層方向の電気伝導率が大きいため、熱可塑性樹脂中にグラファイトの層を劈開して分散させることができれば、少量添加するだけで導電パスが形成される可能性がある。非特許文献2には、ナイロン6に膨張黒鉛を分散させたナイロン6が開示されているが、この組成物においても、黒鉛は組成物中で層構造を保持したままであった。また、非特許文献3には、黒鉛を酸化することによって得られる酸化グラファイトの層間に、ポリビニルアセテートをインターカレートした組成物が示されている。この文献では、酸化グラファイト単体の層間距離は7.6オングストロームであり、ポリビニルアセテートがインターカレートすることにより層間距離は11.5オングストロームに拡大しているが、やはり酸化グラファイトは組成物中で層構造を保持したままであった。また、この組成物は、ヒドラジン水和物で還元することにより、0.14S/cmの電気伝導率を示し、ポリビニルアセテート単体よりも電気伝導率が向上することが示されている。
非特許文献4には、酸化グラファイトの層が劈開して微分散したポリ(アリーレンジスルフィド)が示されている。この組成物は、酸化グラファイトとモノマーを直接混合した後、重合することによって得られるが、このような方法を用いて組成物を得るためにはマトリックスであるポリマーの種類が限定されていた。
特開昭62−74957号公報(第1〜8頁)
Pralay Maiti et al著,"マクロモレキュラー マテリアルズアンド エンジニアリング(Macromol. Mater.Eng.)"(独国),2003年,p.288、p440-445
Wengui Weng et al著,"ジャーナル オブ ポリマー サイエンス:パートビー:ポリマー フィジクス (J. Polym. Sci. Part B Polym. Phys.)" (米国), Vol. 42, 2004年、p.2844-2856
Pinggui Liu et al著,"ジャーナル オブ マテリアルズ ケミストリー (J. Mater. Chem.)" (英国), Vol. 10, 2000年、p.933-935
X. S. Du et al著,"カーボン (Carbon)" (米国), Vol. 43, 2005年、p.195-197
上記を鑑み、本発明は、様々なポリマーに対して展開可能な溶融混練によって、黒鉛やこれを酸化して得られる酸化グラファイトを微分散させた熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、酸化グラファイトの層間にポリマーが侵入しやすい仕掛けをすることが必要であり、そのために酸化グラファイトを疎水化して、熱可塑性樹脂との親和性を改良すれば、酸化グラファイトを微分散させ得ると考え、酸化グラファイトの有するイオン交換能を利用して、有機オニウムイオンをインターカレートして層間距離を拡大、かつ疎水化した酸化グラファイトを利用することが有効であり、このようにして得られる酸化グラファイトをポリマーと溶融混練することにより、酸化グラファイト層間に存在する有機オニウムイオンと親和性の大きいポリマー分子が、酸化グラファイト層間に侵入し、酸化グラファイトの層が劈開してポリマー中に分散することを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(i)熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂組成物中の酸化グラファイトの層間距離が40オングストローム以上であるか、あるいは層構造が消失している熱可塑性樹脂組成物、
(ii)溶融混練に供する、有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)の層間距離が10オングストローム以上である(i)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(iii)有機オニウムイオンが、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ベンザルコニウムイオンから選ばれる一種以上である(i)の熱可塑性樹脂組成物、
(iv)熱可塑性樹脂(A)がポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレンから選ばれる一種以上である(i)〜(iii)いずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(v)熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
(i)熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂組成物中の酸化グラファイトの層間距離が40オングストローム以上であるか、あるいは層構造が消失している熱可塑性樹脂組成物、
(ii)溶融混練に供する、有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)の層間距離が10オングストローム以上である(i)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(iii)有機オニウムイオンが、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ベンザルコニウムイオンから選ばれる一種以上である(i)の熱可塑性樹脂組成物、
(iv)熱可塑性樹脂(A)がポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレンから選ばれる一種以上である(i)〜(iii)いずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(v)熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
本発明によれば、溶融混練により熱可塑性樹脂中に酸化グラファイトを微分散させることができるようになった。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する熱可塑性樹脂とは、加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる合成樹脂のことである。具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリオキシメチレン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマー、あるいはこれら熱可塑性樹脂の2種以上の混合物が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂のうち、ポリアミドとしては、例えば、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、二塩基酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン56、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシレンアジパミド)(以下MXD・6と略す)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)(以下6Tと略す)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)(以下6Iと略す)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(以下9Tと略す)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)(以下4Iと略す)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。特に本発明に好適なポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン66/6T、ナイロン6T/12共重合体、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/6I/12、ナイロン6T/610、ナイロン6T/6I/6を挙げることができる。
このようなポリアミドの分子量は特に制限はなく、例えば98%硫酸中、濃度1%、25℃で測定される相対粘度が1.70〜4.50のものを使用することができるが、好ましくは2.00〜4.00、特に好ましくは2.00〜3.50の相対粘度のものが使用される。
上記熱可塑性樹脂のうち、ポリエステルとしては、実質的に、ジカルボン酸とグリコールの重縮合物、環状ラクトンの開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物、二塩基酸とグリコールの重縮合物などが挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4’−ジカルボキシレートなどの半芳香族ポリエステルのほか、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート共重合体およびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などの半芳香族ポリエステルやそれらの混合物を挙げることができる。その他、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、芳香族アミノオキシ単位、エチレンオキシド単位などから選ばれた構造単位からなるサーモトロピック液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂を使用することもできる。
ここでいう芳香族オキシカルボニル単位としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4´−ヒドロキシジフェニル−4−カルボン酸などの1種以上から生成した構造単位を、芳香族ジオキシ単位としては、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンなどの1種以上から生成した構造単位を、芳香族ジカルボニル単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位を、芳香族アミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどの1種以上から生成した構造単位を例示することができる。
また、ポリエステルとしては、ほかにも乳酸および/またはラクチドを主原料として得られるポリ乳酸、およびその共重合体などの脂肪族ポリエステルを使用することも可能である。
特に本発明に好適なポリエステルとしては半芳香族ポリエステルが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびそれらの共重合体や混合物を挙げることができ、より好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである。
このようなポリエステルの分子量には特に制限はなく、通常フェノール/テトラクロロエタン1:1の混合溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.10〜3.00のものを使用することができるが、好ましくは0.25〜2.50、特に好ましくは0.40〜2.25の固有粘度のものが使用される。
上記熱可塑性樹脂のうち、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、ゴム変性スチレン系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテルとのポリマーブレンド体などが挙げられる。
ここでゴム変性スチレン系樹脂とは、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が微粒子状に分散してなるグラフト重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体および必要に応じ、これと共重合可能なビニル単量体を加え、単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、または乳化重合することにより得られる。
このようなゴム変性スチレン系樹脂としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂のうち、ポリフェニレンスルフィドとしては、実質的に下記構造式で表される繰り返し単位を含有するポリマーが挙げられ、
該構造式で表される繰り返し単位を、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体が耐熱性の点から好ましい。
また、ポリフェニレンスルフィドは、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記構造式を有する繰り返し単位で構成することが可能である。
このようなポリフェニレンスルフィドの溶融粘度は、溶融混練が可能であれば、特に制限はないが、通常5〜2000Pa・s(320℃、剪断速度10sec−1)のものが使用される。
上記熱可塑性樹脂のうち、ポリオキシメチレンとは、オキシメチレン単独重合体および主としてオキシメチレン単位からなり、ポリマー分子中に少なくとも1種の炭素数2〜8のオキシアルキレン単位を含有するオキシメチレン共重合体を意味する。
このようなポリオキシメチレンの分子量は特に制限はないが、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、標準ポリメタクリル酸メチルで換算した数平均分子量が、1万〜50万、好ましくは1万5千〜10万、特に好ましくは2万〜5万のものが使用される。
本発明で使用する酸化グラファイトは、黒鉛の硝酸溶液に過塩素酸ナトリウムを添加する、あるいは黒鉛の濃硫酸と硝酸の混合溶液に過塩素酸カリウムを添加する、あるいは黒鉛の濃硫酸溶液に過マンガン酸カリウムを添加する方法などによって得ることができる。このようにして得られる酸化グラファイトの層間距離は、通常6〜10オングストロームであり、層間距離は広角X線回折測定によって求めることができる。ここで層間距離とは、広角X線回折測定によって得られるピークの中で、層状化合物の層と垂直方向の最小繰り返し単位に対応するピーク位置から求められる格子面間隔の値と定義する。例えば、黒鉛の層間距離は(002)面に対するピーク位置から、また、酸化グラファイトの層間距離は(001)面に対応するピーク位置から求めることができる。
酸化グラファイトにインターカレートする有機オニウムイオンとしては、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。
アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウムイオン、2級アンモニウムイオン、3級アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオンなどいずれでも良い。
1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどのイオンが挙げられる。
2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム、アリルシクロヘキシルアンモニウム、ジアリルアンモニウムなどのイオンが挙げられる。
3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、トリアリルアンモニウムなどのイオンが挙げられる。
4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム(ベンザルコニウム)、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウム類のイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウム類のイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウム類のイオン、ジアリルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテル、2−(ジエチルアミノ)エタノールビニルエーテル、エタノールアミン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などから誘導されるアンモニウムイオン類、それらのエチレンオキシド付加体なども挙げられる。
これらの中で好ましいアンモニウムイオンとしては、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどが挙げられる。
これらのオニウムイオンは単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。
これら有機オニウムイオンを酸化グラファイトにインターカレートするには、酸化グラファイトのアルカリ水溶液に、有機オニウムイオンを添加することにより行うことができる。
酸化グラファイトに対する有機オニウムイオンの量は、酸化グラファイトの分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、酸化グラファイト1gに対し、有機オニウムイオンを0.0005〜0.002モルの範囲で使用することが好ましい。
酸化グラファイトに対する有機オニウムイオンの量は、酸化グラファイトの分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、酸化グラファイト1gに対し、有機オニウムイオンを0.0005〜0.002モルの範囲で使用することが好ましい。
本発明における有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して0.1〜30重量%の範囲であることが好ましく、0.2〜10重量%の範囲がより望ましい。
本発明においては、酸化グラファイトを熱可塑性樹脂中に微分散させようとするものであるので、熱可塑性樹脂組成物中の酸化グラファイトの層間距離が40オングストローム以上に拡大しているか、あるいは酸化グラファイトの層構造が消失していることが必要である。熱可塑性樹脂中の酸化グラファイトの層構造が40オングストローム以上に拡大しているか否かは、広角X線回折において、酸化グラファイトの(001)面のピークに対応する格子面間隔が40オングストローム以上であるか調べることにより判断することができる。また、層構造が消失しているとは、上記測定において(001)面のピークが観察されない、すなわち層が劈開しているかどうかを調べることにより判断することができる。
本発明においては、前記有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を使用して熱可塑性樹脂(A)と溶融混練することにより、熱可塑性樹脂中に酸化グラファイトを微分散させることができる。なかでも熱可塑性樹脂との溶融混練時に使用する、有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)の層間距離が10Å以上であることが好ましい。層間距離が10オングストローム以上である場合には、溶融混練時に、酸化グラファイトの層間に、熱可塑性樹脂が侵入しやすいため好ましい。酸化グラファイトの層間距離を上記範囲とするには、炭素数が6以上の置換基から構成される有機オニウムイオンを用いるのが有効である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、酸化グラファイトが微分散しているので、これを還元して、酸化グラファイトを導電性のグラファイトに変換することにより、グラファイト成分が少量でも導電パスが形成され、熱可塑性樹脂に導電性を付与することも可能である。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジンなどが好適に用いられる。
熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、本発明では、様々な熱可塑性樹脂に対して適用できる手法を提供するものであるので、熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練する方法が用いられる。その混練方法には特に制限はなく、例えば単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機を用いることができるが、二軸押出機を用いることが好ましい。また、溶融混練時に発生する水分や低分子量の揮発成分を除去する目的で、ベント口を設けることも好んで用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で、他の充填材、他種ポリマーなどを添加することができる。これらを添加する場合には、(A)と(B)を溶融混練している任意の時期に添加して混練すればよい。充填材としては一般に樹脂用フィラーとして用いられる公知のものが用いられ、本発明の熱可塑性樹脂組成物の強度、剛性、耐熱性、寸法安定性などを改良できる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミノシリケート、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどが挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上用いることも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。また、モンモリロナイトについては、層間イオンを有機オニウムイオンで交換した有機化モンモリロナイトを用いてもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物を補強するには、前記充填材の中でも、特にガラス繊維、炭素繊維が好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物とするには、熱可塑性樹脂として、オレフィン系化合物および/または共役ジエン系化合物を重合して得られる(共)重合体などを用いるか、これを耐衝撃性改良剤として他の樹脂と併用することが好ましい。
上記(共)重合体としては、エチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられる。
ここで、エチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさし、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエンおよびその誘導体などの中から選択することができる。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとしては5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルブルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。
また、共役ジエン系重合体とは少なくとも1種以上の共役ジエンを構成成分とする重合体であり、例えば1,3−ブタジエンの如き単独重合体や1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンから選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素からなるブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体の芳香環以外の二重結合以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を任意の時点で添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形のみならず、溶融紡糸、フィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を還元することにより、酸化グラファイトが導電性グラファイトに変換され、導電性を付与することができるため、静電塗装が必要な自動車部品や、帯電を嫌う自動車部品、パソコン筐体などに使用することができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[分散状態の確認]
リガクX線回折装置RINT2100、Cu線源(λ=1.5406オングストローム)を用いて、層状化合物の層と垂直方向の最小繰り返し単位に対応するピーク位置から、層間距離を求めた。前記回折ピークが観察されない場合には、層が劈開して分散していると判断した。
リガクX線回折装置RINT2100、Cu線源(λ=1.5406オングストローム)を用いて、層状化合物の層と垂直方向の最小繰り返し単位に対応するピーク位置から、層間距離を求めた。前記回折ピークが観察されない場合には、層が劈開して分散していると判断した。
参考例1
Journal of Materials Chemistry,2000,10,933-935記載の方法に従って、酸化グラファイトを合成した。膨張黒鉛(BSP−60AS、中越黒鉛工業所、層間距離3.4オングストローム)15gに濃硫酸345mlを添加し、2〜3℃の氷水バス中に浸漬した。攪拌しながら、過マンガン酸カリウム45gを粉末のまま、90分かけて添加した。この際、液温が5℃以上に上昇しないように注意した。過マンガン酸カリウム添加終了後、30分攪拌を続けた。この後、氷水バスをオイルバスに交換し、35℃に保持した(この段階で内容物は固化した)。ここに、イオン交換水690mlをゆっくり添加し、内容物が溶解して攪拌できる状態となった後、オイルバスの温度を98℃まで上昇させた。98℃で1時間保持した後、イオン交換水2100ml、35%過酸化水素水150mlを添加してしばらく攪拌した。ろ過して得られた固形分を、5%塩酸水溶液864gに入れてしばらく攪拌し、再度ろ過した。pHが約5以上になるまで、固形分をメタノールで洗浄し、50℃で60時間真空乾燥することにより、酸化グラファイトを得た。このようにして得られた酸化グラファイトのX線回折チャートを、原料として用いた膨張黒鉛のX線回折チャート(図1中「黒鉛」と表示)とともに図1に示した。酸化グラファイトの層間距離は、7.4オングストロームであった。
Journal of Materials Chemistry,2000,10,933-935記載の方法に従って、酸化グラファイトを合成した。膨張黒鉛(BSP−60AS、中越黒鉛工業所、層間距離3.4オングストローム)15gに濃硫酸345mlを添加し、2〜3℃の氷水バス中に浸漬した。攪拌しながら、過マンガン酸カリウム45gを粉末のまま、90分かけて添加した。この際、液温が5℃以上に上昇しないように注意した。過マンガン酸カリウム添加終了後、30分攪拌を続けた。この後、氷水バスをオイルバスに交換し、35℃に保持した(この段階で内容物は固化した)。ここに、イオン交換水690mlをゆっくり添加し、内容物が溶解して攪拌できる状態となった後、オイルバスの温度を98℃まで上昇させた。98℃で1時間保持した後、イオン交換水2100ml、35%過酸化水素水150mlを添加してしばらく攪拌した。ろ過して得られた固形分を、5%塩酸水溶液864gに入れてしばらく攪拌し、再度ろ過した。pHが約5以上になるまで、固形分をメタノールで洗浄し、50℃で60時間真空乾燥することにより、酸化グラファイトを得た。このようにして得られた酸化グラファイトのX線回折チャートを、原料として用いた膨張黒鉛のX線回折チャート(図1中「黒鉛」と表示)とともに図1に示した。酸化グラファイトの層間距離は、7.4オングストロームであった。
参考例2
参考例1で合成した酸化グラファイト10gを0.05N−水酸化ナトリウム水溶液1000mlに分散させた。この分散液に、ベンザルコニウムクロリド50%水溶液(東京化成)12g(0.017mol)を1000mlのイオン交換水に添加して調製した水溶液を添加し、2時間攪拌した。ろ過して得られた固形分をイオン交換水で洗浄し、50℃で真空乾燥して、ベンザルコニウムイオン化された酸化グラファイトを得た。このようにして得られたベンザルコニウムイオン化酸化グラファイトを、空気中、200℃で、3時間焼成すると、53.7%が残存した。これをベンザルコニウムイオン化酸化グラファイト中に含まれる酸化グラファイト成分とした。また、このようにして得られたベンザルコニウムイオン化酸化グラファイトのX線回折チャートを図1に示した。このベンザルコニウムイオン化酸化グラファイトの層間距離は21オングストロームであった。
参考例1で合成した酸化グラファイト10gを0.05N−水酸化ナトリウム水溶液1000mlに分散させた。この分散液に、ベンザルコニウムクロリド50%水溶液(東京化成)12g(0.017mol)を1000mlのイオン交換水に添加して調製した水溶液を添加し、2時間攪拌した。ろ過して得られた固形分をイオン交換水で洗浄し、50℃で真空乾燥して、ベンザルコニウムイオン化された酸化グラファイトを得た。このようにして得られたベンザルコニウムイオン化酸化グラファイトを、空気中、200℃で、3時間焼成すると、53.7%が残存した。これをベンザルコニウムイオン化酸化グラファイト中に含まれる酸化グラファイト成分とした。また、このようにして得られたベンザルコニウムイオン化酸化グラファイトのX線回折チャートを図1に示した。このベンザルコニウムイオン化酸化グラファイトの層間距離は21オングストロームであった。
参考例3
ベンザルコニウムクロリド50%水溶液の代わりに、トリオクチルメチルアンモニオウムクロリド(東京化成)6.2g(0.015mol)を用いる以外は、参考例2と全く同様の方法で、トリオクチルメチルアンモニウムイオン化酸化グラファイトを得た。この中に含まれる酸化グラファイトは52.4%であった。また、このようにして得られたトリオクチルメチルアンモニウムイオン化酸化グラファイトのX線回折チャートを図1に示した。トリオクチルメチルアンモニウムイオン化酸化グラファイトの層間距離は、20オングストロームであった。
ベンザルコニウムクロリド50%水溶液の代わりに、トリオクチルメチルアンモニオウムクロリド(東京化成)6.2g(0.015mol)を用いる以外は、参考例2と全く同様の方法で、トリオクチルメチルアンモニウムイオン化酸化グラファイトを得た。この中に含まれる酸化グラファイトは52.4%であった。また、このようにして得られたトリオクチルメチルアンモニウムイオン化酸化グラファイトのX線回折チャートを図1に示した。トリオクチルメチルアンモニウムイオン化酸化グラファイトの層間距離は、20オングストロームであった。
実施例1
相対粘度が2.74のナイロン6を94.4重量部、参考例2で得られた層状化合物5.6重量部を配合し、ドライブレンドした後、シリンダ温度を250℃に設定したPCM30型二軸押出機(池貝鉄鋼)で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた材料をペレタイズした後、80℃で12時間真空乾燥して、熱プレスして厚み約150μmのフィルムを得た。このフィルムのX線回折チャートを図2に示した。
相対粘度が2.74のナイロン6を94.4重量部、参考例2で得られた層状化合物5.6重量部を配合し、ドライブレンドした後、シリンダ温度を250℃に設定したPCM30型二軸押出機(池貝鉄鋼)で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた材料をペレタイズした後、80℃で12時間真空乾燥して、熱プレスして厚み約150μmのフィルムを得た。このフィルムのX線回折チャートを図2に示した。
実施例2
参考例2で得られた層状化合物の代わりに、参考例3で得られた層状化合物を用い、ナイロン6と参考例3で得られた層状化合物の配合比をそれぞれ94.3重量部、5.7重量部とする以外は、実施例1と全く同様の方法で熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様の操作を行い得られたフィルムのX線回折チャートについても図2に示した。
参考例2で得られた層状化合物の代わりに、参考例3で得られた層状化合物を用い、ナイロン6と参考例3で得られた層状化合物の配合比をそれぞれ94.3重量部、5.7重量部とする以外は、実施例1と全く同様の方法で熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様の操作を行い得られたフィルムのX線回折チャートについても図2に示した。
比較例1
参考例2で得られた層状化合物の代わりに、膨張黒鉛を用い、ナイロン6と膨張黒鉛の配合比を97重量部、3重量部とする以外は、実施例1と全く同様の方法で熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様の操作を行い得られたフィルムのX線回折チャートについても図2に示した。
参考例2で得られた層状化合物の代わりに、膨張黒鉛を用い、ナイロン6と膨張黒鉛の配合比を97重量部、3重量部とする以外は、実施例1と全く同様の方法で熱可塑性樹脂組成物を得た。実施例1と同様の操作を行い得られたフィルムのX線回折チャートについても図2に示した。
図2から、実施例1と実施例2のアンモニウムイオンで処理された酸化グラファイトをナイロン6と溶融混練した熱可塑性樹脂組成物では、図1で検出されたアンモニウムイオン化酸化グラファイトの(001)面のピークが消失しており、層が劈開して微分散したと推定される。一方、比較例1の膨張黒鉛をナイロン6と溶融混練した熱可塑性樹脂組成物では、黒鉛のグラファイト層の構造を示す(002)面のピークが検出されたことから、グラファイト層間に熱可塑性樹脂は侵入することができず、粗大分散したと推定される。
以上の結果から、有機オニウムイオンがインターカレートした酸化グラファイトを用いることにより、熱可塑性樹脂中に酸化グラファイトを微分散させることが可能である。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂組成物中の酸化グラファイトの層間距離が40オングストローム以上であるか、あるいは層構造が消失している熱可塑性樹脂組成物。
- 溶融混練に供する、有機オニウムイオンをインターカレートした酸化グラファイト(B)の層間距離が10オングストローム以上である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 有機オニウムイオンが、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ベンザルコニウムイオンから選ばれる1種以上である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)がポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレンから選択される一種以上である請求項1〜3いずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)と有機オニウムイオンがインターカレートされた酸化グラファイト(B)を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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