JP2006206929A - 軸受用薄肉軌道部材およびスラスト軸受 - Google Patents

軸受用薄肉軌道部材およびスラスト軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】 長寿命かつ靭性に優れ、同時に低コストな軸受を構成可能な軸受用薄肉軌道部材およびその軸受用薄肉軌道部材を備えた軸受を提供する。
【解決手段】 焼入硬化して使用され、スラストころ軸受1の転動体12が接触する表面である転走面11Aを構成する部分の厚さが3mm以下である軌道盤11において、軌道盤11の水素含有量は0.3ppm以下であり、かつ転走面11Aの転動体12が接触する部分の表面の硬さは700HV以上である。
【選択図】 図1

Description

本発明は軸受用薄肉軌道部材およびスラスト軸受に関し、より特定的には焼入硬化して使用され、軸受の転動体が接触する表面である転走面を構成する部分の厚さが3mm以下である軸受用薄肉軌道部材およびその軸受用薄肉軌道部材を備えたスラスト軸受に関する。
軸受が使用される自動車などの製品はますます高性能化、高機能化している。このような状況の下、軸受に対しても高性能化、たとえば長寿命化が求められている。また、軸受は衝撃荷重が負荷され得る部位に使用される場合もあり、靭性の向上も求められている。さらに、価格競争力向上の観点から、軸受にも低価格化が求められている。
一方、軸受に使用される軸受用薄肉軌道部材はその製造工程における焼入の際、変形を生じやすい。軌道部材の変形が大きい場合、その軌道部材を備えた軸受は寿命が低下する。
鋼材を焼入れる際の鋼材の変形を抑制する方法として、鋼板をプレス焼入する際の鋼板表面のスケール厚を10μm以下とする方法が提案されている。これにより、形状精度のよい成形部品を製造することができる(たとえば特許文献1参照)。また、鋼材のプレス焼入法において、鋼材を金型を用いて拘束した状態で冷却液の中に浸漬する方法が提案されている(たとえば特許文献2参照)。これにより、焼入の際に発生する変形や曲がりを高硬度の鋼材においても低減することができる。また、薄肉リングの外径と幅方向の端面とをコレット(拘束用部材)により拘束して焼入を行う方法が提案されている。これにより、焼入の際に発生する変形が抑制される(たとえば特許文献3参照)。
特開2003−231915号公報 特開平7−157822号公報 特開平5−33060号公報
しかし、上述の焼入の際に発生する変形を抑制する方法を軸受用薄肉軌道部材に適用して軸受を作製した場合でも、近年の高い要求特性を考慮すれば軸受の寿命は十分とはいえない。また、前述のように衝撃荷重に対する対策も必要である。さらに、これらの対策によりコストが上昇すれば、前述の低価格化の要求に反するものとなる。
そこで、本発明の目的は長寿命かつ靭性に優れ、同時に低コストな軸受を構成可能な軸受用薄肉軌道部材およびその軸受用薄肉軌道部材を備えたスラスト軸受を提供することである。
本発明に従った軸受用薄肉軌道部材は、焼入硬化して使用され、軸受の転動体が接触する表面である転走面を構成する部分の厚さが3mm以下である軸受用薄肉軌道部材である。軸受用薄肉軌道部材の水素含有量は0.3ppm以下であり、かつ転走面の転動体が接触する部分の表面の硬さは700HV以上である。
本発明者は以下のように軸受用薄肉軌道部材の水素含有量と軸受の寿命および靭性との関係について鋭意検討し、本発明に想到した。
一般に、軸受用薄肉軌道部材は低炭素鋼、たとえばSPCC、SCM415などを素材とし、これを軌道部材の形状に成形した後、浸炭焼入により焼入硬化して使用されている。また、高炭素鋼、たとえばSUJ2、SAE1070などを素材とし、これを軌道部材の形状に成形した後、雰囲気炉において加熱し、急冷することにより焼入硬化して使用されているものもある。ここで、上記焼入硬化で使用されるキャリアガスやエンリッチガスの原料であるプロパン(C)やブタン(C10)には水素が含まれている。そのため、上記の軌道部材には水素が侵入する。特に浸炭焼入が行われる場合、鋼中に炭素を浸入させる浸炭工程や浸入させた炭素を拡散させる拡散工程において、軌道部材は長時間高温ガス中に置かれるため、水素の浸入が多くなる。これに対し、本発明者は軌道盤の水素含有量を0.3ppm以下とすることで軸受の寿命および軌道盤の靭性が著しく向上することを見出した。さらに、軸受の寿命を考慮すると軌道部材の転走面において転動体が接触する部分の表面の硬さは700HV以上とすることが好ましい。したがって、本発明の軸受用薄肉軌道部材によれば、長寿命かつ靭性の高い軸受用薄肉軌道部材を提供することができる。
上記軸受用薄肉軌道部材において好ましくは、軸受用薄肉軌道部材の材質は0.4質量%以上1.2質量%以下の炭素を含有する鋼である。焼入硬化を行う際の加熱は誘導加熱により行われている。
鋼を焼入硬化した場合の硬さの上限は鋼の炭素含有量に依存する。軌道部材を焼入および焼戻した後に前述の700HV以上の硬さを確保するためには炭素量は少なくとも0.4質量%以上必要である。一方、炭素量が多くなると素材の硬さが上昇し、炭素量が1.2質量%を超えると素材の加工性が悪くなる。また、炭素量が多くなると焼入後にマルテンサイト化せずに残留するオーステナイト(残留オーステナイト)が多くなる。残留オーステナイトは経年変化によりマルテンサイト化するため寸法変化を生ずるおそれがあり、炭素量が1.2質量%を超えると寸法精度が不十分となる可能性がある。さらに、炭素量が1.2質量%以上になると、軌道部材の靭性が劣化するおそれがある。したがって、炭素量を0.4質量%以上1.2質量%以下とすることで、軌道盤に必要な硬さ、靭性および素材の加工性を確保することができる。
また、焼入硬化を行う際の加熱が誘導加熱により行われる場合、軌道部材が高温ガス中に置かれる時間は一般的焼入硬化処理である浸炭熱処理、光輝熱処理等と比較して極めて短い。そのため、軌道部材への水素の浸入が少なくなる。その結果、軌道部材の靭性が高くなる。さらにこの軌道部材を軸受に用いることにより、長寿命な軸受を得ることができる。また、水素の浸入が少ないため、焼入硬化後に高温で焼戻を行って水素を除去する必要がなく、焼入焼戻後の軌道部材の硬さを確保することが容易となる。そのため、焼戻軟化抵抗の向上を目的とした合金元素の添加の必要性が小さく、安価な素材が使用できるため、軌道部材の低コスト化が可能となる。
上記軸受用薄肉軌道部材において好ましくは、軸受用薄肉軌道部材の材質は、0.15質量%以上0.6質量%以下のSi(ケイ素)と、0.6質量%以上1.3質量%以下のMn(マンガン)と、0.15質量%以上2質量%以下のCr(クロム)とを含有する鋼である。
Siは転動疲労寿命を確保する観点から、0.15質量%以上必要である。一方、Si量が多くなると素材の硬さが上昇し、Siが0.6質量%を超えると素材の加工性が悪くなる。したがって、軸受用薄肉軌道部材の材質は、0.15質量%以上0.6質量%以下のSiを含有する鋼であることが好ましい。また、Mnは転動疲労寿命および焼入性を確保する観点から、0.6質量%以上必要である。一方、Mn量が多くなると素材の硬さが上昇し、Mn量が1.3質量%を超えると素材の加工性が悪くなる。また、Mn量が多くなると焼入焼戻後の残留オーステナイトが多くなり、Mn量が1.3質量%を超えると残留オーステナイト過多となる。したがって、軸受用薄肉軌道部材の材質は、0.6質量%以上1.3質量%以下のMnを含有する鋼であることが好ましい。また、Crは転動疲労寿命および焼入性を確保する観点から、0.15質量%以上必要である。一方、Cr量が多くなると素材の硬さが上昇し、Cr量が2質量%を超えると素材の加工性が悪くなる。また、Cr量が多くなると素材のコストが上昇し、軸受に対する低コスト化の要求に応えることができない。したがって、軸受用薄肉軌道部材の材質は、0.15質量%以上2質量%以下のCrを含有する鋼であることが好ましい。
上記軸受用薄肉軌道部材において好ましくは、焼入硬化における冷却は、金型を用いて軸受用薄肉軌道部材を拘束しながら実施されている。冷却は軸受用薄肉軌道部材から熱を除去するための冷却部材として金型を用いることにより、軸受用薄肉軌道部材をAc1点以上の温度からM点以下の温度に冷却することにより実施されている。
軌道部材を拘束しながら焼入硬化における冷却を実施することで、焼入硬化処理において発生する軌道部材の反りなどの変形を抑制することができる。これにより、焼入硬化後に反りの矯正などの工程が不要となる。その結果、製造工程が簡略化でき、軌道部材を低コスト化できる。また、冷却部材として金型を用いることで水、油などの冷却媒体に軌道部材を浸漬等して冷却する必要がない。そのため、焼入硬化後に軌道部材の表面に反応生成膜や油が存在しないので軌道部材の表面を洗浄する工程などを設ける必要がない。その結果、製造工程が簡略化でき、軌道部材を低コスト化することができる。 さらに、水、油などの冷却媒体を用いる必要がないため、たとえば水や油が高温の軌道部材と接触することによる水素の発生がなく、軌道部材への水素の浸入が抑制される。
なお、Ac1点とは鋼を連続的に加熱する際に、鋼がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
上記軸受用薄肉軌道部材において好ましくは、上記軸受用薄肉軌道部材はスラスト軸受の軌道盤として用いられる。
これにより、長寿命かつ靭性に優れ、同時に低コストなスラスト軸受を構成可能なスラスト軸受用薄肉軌道盤を提供することができる。
本発明に従ったスラスト軸受は、上述の軸受用薄肉軌道部材と、軸受用薄肉軌道部材の転走面上に配置されている転動体とを備えている。
本発明のスラスト軸受によれば、長寿命かつ靭性に優れ、同時に低コストなスラスト軸受を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、長寿命かつ靭性に優れ、同時に低コストな軸受を構成可能な軸受用薄肉軌道部材およびその軸受用薄肉軌道部材を備えたスラスト軸受を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施の形態であるスラストころ軸受を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態のスラストころ軸受の構成を説明する。
図1を参照して、スラストころ軸受1は、たとえば一対の軌道盤(軌道部材)11、11と、複数の転動体12と、環状の保持器13とを備えている。転動体12は一対の軌道盤11、11の間において、軌道盤11、11の転走面11A、11Aに接触して配置されている。さらに、転動体12は保持器13により周方向に所定のピッチで配置され、かつ転動自在に保持されている。これにより、軌道盤11、11の各々は互いに相対的に回転することができる。
軌道盤11は後述するように焼入硬化して使用されるものであり、軌道盤11において転動体12が接触する表面である転走面11Aを構成する部分の厚さは3mm以下である。また、スラストころ軸受1の軌道盤11の水素含有量は0.3ppm以下であり、かつ転走面11Aの転動体12が接触する部分の表面の硬さは700HV以上である。
ここで軌道盤11の水素含有量はたとえば軌道盤11を測定装置内で加熱し、熱伝導度法を用いることにより測定することができる。また、転走面11Aの転動体12が接触する部分の表面の硬さはたとえばビッカース硬度計により、測定することができる。
また、軌道盤11の材質には0.4質量%以上1.2質量%以下のC(炭素)と、0.15質量%以上0.6質量%以下のSiと、0.6質量%以上1.3質量%以下のMnと、0.15質量%以上2質量%以下のCrとを含有する鋼の一例として、たとえばS70C(SAE1070)を選択することができる。
次に、スラストころ軸受1の製造方法について図に基づいて説明する。図2は本実施の形態のスラストころ軸受1の製造工程の概略を示した図である。図3は本実施の形態のスラストころ軸受1の製造工程のうち、誘導加熱工程を示す概略断面図である。また、図4は本実施の形態のスラストころ軸受1の製造工程のうち、金型拘束冷却(焼入)工程を示す概略断面図である。図2〜4を参照して、スラストころ軸受1の製造方法について説明する。
図2〜4を参照して、たとえば材質がS70C(SAE1070)である鋼板をプレス加工により打ち抜き、軌道盤11を成形する。次に成形された軌道盤11を誘導加熱装置2にセットし、誘導加熱によりAc1点以上の温度に加熱して所定時間保持する。その後直ちに、たとえば金型拘束冷却装置3(図4参照)によりM点以下の温度まで急冷して焼入硬化する。その後さらに、たとえば雰囲気炉において150℃程度の低温に加熱して焼戻を行う。
次に上述の製造工程のうち、焼入硬化処理工程について図3および図4を参照して詳細に説明する。図3に示した誘導加熱装置2はたとえば回転テーブル21と、誘導コイル22を備えている。また、回転テーブル21は軌道盤11をセットするための突出部21Aを有している。図4に示した金型拘束冷却装置3は下部金型31Aと上部金型31Bを備えており、上部金型の上方にはプレス用錘32を載せることが可能な構成となっている。
図3に示すように、成形された軌道盤11は回転テーブル21の突出部21Aの上方に接触するようにセットされる。次に、誘導コイル22には高周波電流が通電され、軌道盤11は誘導加熱される。この際、軌道盤11は回転テーブル21により回転される。軌道盤11は誘導加熱によりAc1点以上の温度に加熱され、所定時間保持される。
その後、直ちに隣接する金型拘束冷却装置3の下部金型31Aと上部金型31Bとの間に挟まれ、さらに上部金型31Bにはプレス用錘32が載せられる。これにより、軌道盤11は金型31A、31Bにより拘束されながら、冷却部材としての金型31A、31Bにより熱を除去されることによりM点以下の温度まで急冷される。
ここで、軌道盤11の転動体12が接触する表面である転走面11Aを構成する部分の厚さは3mm以下であり、熱容量が小さいため、油および水などの冷却媒体を使用することなく、金型31A、31Bに接触させることにより十分に急冷することが可能である。
また、上記の焼入れを行う場合、加熱温度は900℃〜1050℃、加熱時間は0.5秒〜5秒、拘束(プレス)圧力は11.7kPa以上、拘束時間は2秒以上とすることが好ましい。また、金型31A、31Bの材質は金型31A、31Bの表面の損傷を防止する観点から、焼入硬化された軌道盤11と同等以上の硬さを有するものであることが好ましく、たとえば焼入硬化された軸受鋼、炭素鋼、ステンレス鋼とすることが好ましい。また、金型31A、31Bの材質は熱伝導度および耐食性の高いものが好ましい。また、軌道盤11を拘束するための応力を負荷するために使用される手段は上記プレス用錘32に限られず、たとえばプレス用錘32に代えて油圧、空気圧などの上部金型31Bに応力を負荷しうる他の手段を用いてもよい。
さらに、金型31A、31Bの大きさについては、焼入硬化される軌道盤11との熱容量差が大きいことが必要であり、金型31A、31Bのそれぞれの体積は軌道盤11の体積の50倍以上であることが好ましい。なお、金型内に水などの冷却媒体を流すことで金型31A、31Bと焼入硬化される軌道盤11との必要な体積比を小さくすることが可能であり、これにより金型拘束冷却装置3をコンパクト化することができる。また、金型31A、31Bに空気などの気体を吹き付けて冷却することで、同様の効果を得ることができる。この場合、気体を吹き付けることで、金型31A、31Bに付着したごみ等を除去することもできる。
また、金型31A、31Bの精度は焼入硬化される軌道盤11の精度に影響するため高いことが好ましい。すなわち反りおよびうねりが小さく、かつ表面粗さが小さい(研磨仕上げレベル)ことが好ましい。
また、焼入硬化処理における誘導加熱工程および金型拘束冷却工程は空気雰囲気中で行うことができるが、好ましくは酸化を抑制する雰囲気中、たとえば窒素などの反応性に乏しい気体雰囲気中で行う。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明の軸受用薄肉軌道部材(軌道盤)およびスラスト軸受(スラストころ軸受)を作製し、従来の軸受用薄肉軌道部材およびスラスト軸受と比較する実験を行った。
以下、実験の手順を説明する。まず、本発明の実施例の素材としてはSAE1070(実施例A)、SAE1070の成分をベースとして炭素量を変えたもの(実施例Bおよび実施例C)、SK5(実施例D)およびSUJ2(実施例E)を選択した。一方、比較例の素材としてはSAE1070(比較例AおよびD)、SCM415(比較例B)およびSUJ2(比較例C)を選択した。上記素材の鋼板を打ち抜き、外径80mm、内径65mm、厚さ1mmの軌道盤を成形した。
次に、成形された実施例A〜Eの軌道盤を実施の形態において図3および図4に基づいて説明した方法で焼入硬化した。加熱温度は950℃、加熱時間は1.5秒、拘束(プレス)圧力は15kPa、拘束(プレス)時間は4秒とした。なお、焼入硬化後の実施例A〜Eの軌道盤の反り量はいずれも30μm以下となっていた。その後、焼入硬化された軌道盤に対して雰囲気炉において加熱温度150℃、加熱時間30分の条件で焼戻を実施した。
一方、比較例A、C、Dについてはガス雰囲気加熱炉(RXガスおよびエンリッチガス雰囲気)において加熱温度850℃、加熱時間30分の条件で加熱した後、衝風冷却することにより焼入硬化した。比較例Bについてはガス雰囲気浸炭炉(RXガスおよびエンリッチガス雰囲気)において浸炭し、衝風冷却することにより焼入硬化した。焼入硬化後、比較例A〜Dの軌道盤は100μm以上の反りを有するものが多数あったことから、230℃に加熱してプレスすることにより矯正した。ただし、比較例Dについては加熱温度は150℃とした。
上記実施例および比較例について、軌道盤の表面の硬さおよび軌道盤の水素含有量を測定した。軌道盤の表面の硬さは転走面の、転動体が接触する部分の表面をビッカース硬度計により測定した。また、水素含有量は表1に示す条件で測定した。なお表1の条件では主に非拡散性水素が測定されている。
Figure 2006206929
次に、上記軌道盤を用いて、直径φ3mm、長さ7.8mmのころを24本備えたスラストころ軸受を作製し、寿命を調査した。寿命試験は、回転数5000rpm、軸受荷重9.8kN、潤滑油VG2、油膜パラメータ0.101、計算寿命11.3時間の条件の下で行った。また、試験個数は各実施例および比較例についてそれぞれ6個とした。試験に供した各6個の軸受の寿命の平均値を算出し、さらに比較例Aの寿命に対する比を算出することで寿命を評価した。
次に、上記軌道盤から縦8mm、横25mm、厚さ1mmの平板の試験片を切り出し、3点曲げ試験を行った。図5は本実施例の3点曲げ試験の試験方法を示した図である。3点曲げ試験装置5は中央部に凹部を有する支持台51と、支点用ころ52、52と、負荷用ころ53と、負荷用部材54とを備えている。ころ52、53は直径3mmのころである。
水平面上に設置された支持台51の上方には支点用ころ52が支持台51に接触して配置される。支点用ころ52の上方には試験片40が支点用ころ52に接触して配置される。このとき支点間の距離は20mmである。試験片40の上方であって、2つの支点用ころからの距離が等しくなる位置には負荷用ころ53が試験片40に接触して配置される。さらに、負荷用ころ53の上方には負荷用部材54が負荷用ころ53に接触して配置される。
負荷用部材54には鉛直下向きの荷重が負荷され、試験片40に割れが発生するまでの荷重が測定された。測定された荷重は比較例Aに対する比で評価した。
表2は上記実験の結果を示した表である。表2を参照して、実験結果について説明する。
Figure 2006206929
表2を参照して、実施例A〜Eの軌道盤の表面の硬さはいずれも715HV以上となっており、軸受の寿命を確保するために必要な硬さである700HV以上となっている。また、軌道盤の水素含有量はいずれも0.22ppm以下となっており、軸受の寿命および靭性が著しく向上する0.3ppm以下となっている。
一方、比較例A〜Dのうち比較例Bの軌道盤は表面の硬さが700HV以下となっている。また、比較例AおよびCの軌道盤の表面の硬さは700HV以上となっているものの、それぞれ同じ材質である実施例AおよびEと比較して低くなっている。これは、比較例A〜Cは実施例AおよびEの焼戻温度である150℃より高い230℃で加熱矯正されているためである。
表2を参照して、実施例A〜Eの寿命は比較例Aの2.4〜4.2倍と非常に長寿命となっている。このことから、水素含有量が0.3ppm以下となっている実施例A〜Eはいずれも長寿命となることが確認される。一方、比較例Cは実施例BおよびCと同等の寿命を有している。しかし、比較例Cが高価な軸受鋼であるのに対し、実施例BおよびCは安価な炭素鋼であることを考慮すれば、コスト面から実施例BおよびCのほうが有利である。すなわち、軌道盤の水素含有量を0.3ppm以下とすることで、安価な炭素鋼の軌道盤に高価な軸受鋼の軌道盤と同等の寿命を付与することができる。
さらに表2を参照して、実施例および比較例において同一素材である実施例Aと比較例A、実施例Eと比較例Cとを比較すると、実施例は比較例に対して23〜30%曲げ強度が高くなっている。これは硬さの影響であるとも考えられる。しかし、比較例Aと比較例Dとを比較すると、比較例Dは比較例Aと同一の素材であり、かつ硬さは比較例Aよりも高いにもかかわらず、曲げ強度はむしろ低くなっている。一方で、比較例Dは比較例Aに比べて水素含有量が多いことを考慮すれば、曲げ強度は水素含有量の影響を大きく受けていると考えられる。以上より、実施例A〜Dは水素含有量が0.3ppm以下であるため、高い曲げ強度を有していると考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の軸受用薄肉軌道部材およびスラスト軸受は、焼入硬化して使用され、軸受の転動体が接触する表面である転走面を構成する部分の厚さが3mm以下である軸受用薄肉軌道部材、およびこれを備えたスラスト軸受に特に有利に適用される。
本発明の一実施の形態であるスラストころ軸受を示す概略断面図である。 本実施の形態のスラストころ軸受1の製造工程の概略を示した図である。 本実施の形態のスラストころ軸受1の製造工程のうち、誘導加熱工程を示す概略断面図である。 本実施の形態のスラストころ軸受1の製造工程のうち、金型拘束冷却(焼入)工程を示す概略断面図である。 本実施例の3点曲げ試験の試験方法を示した図である。
符号の説明
1 スラストころ軸受、2 誘導加熱装置、3 金型拘束冷却装置、5 3点曲げ試験装置、11 軌道盤、11A 転走面、12 転動体、13 保持器、21 回転テーブル、21A 突出部、22 誘導コイル、31A 下部金型、31B 上部金型、32 プレス用錘、40 試験片、51 支持台、52 支点用ころ、53 負荷用ころ、54 負荷用部材。

Claims (6)

  1. 焼入硬化して使用され、軸受の転動体が接触する表面である転走面を構成する部分の厚さが3mm以下である軸受用薄肉軌道部材において、
    前記軸受用薄肉軌道部材の水素含有量は0.3ppm以下であり、
    前記転走面の、前記転動体が接触する部分の表面の硬さは700HV以上である、軸受用薄肉軌道部材。
  2. 前記軸受用薄肉軌道部材の材質は0.4質量%以上1.2質量%以下の炭素を含有する鋼であり、
    前記焼入硬化を行う際の加熱は誘導加熱により行われている、請求項1に記載の軸受用薄肉軌道部材。
  3. 前記軸受用薄肉軌道部材の材質は、
    0.15質量%以上0.6質量%以下のSiと、
    0.6質量%以上1.3質量%以下のMnと、
    0.15質量%以上2質量%以下のCrとを含有する鋼である、請求項2に記載の軸受用薄肉軌道部材。
  4. 前記焼入硬化における冷却は、金型を用いて前記軸受用薄肉軌道部材を拘束しながら実施されており、
    前記冷却は前記軸受用薄肉軌道部材から熱を除去するための冷却部材として前記金型を用いることにより、前記軸受用薄肉軌道部材をAc1点以上の温度からM点以下の温度に冷却することにより実施されている、請求項1〜3のいずれかに記載の軸受用薄肉軌道部材。
  5. 薄肉スラスト軸受の軌道盤として用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の軸受用薄肉軌道部材。
  6. 請求項5に記載の軸受用薄肉軌道部材と、
    前記軸受用薄肉軌道部材の転走面上に配置されている転動体とを備える、スラスト軸受。
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