JP2006196828A - 酸化物薄膜素子 - Google Patents

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Abstract

【目的】鉛を含有しない酸化物薄膜材料であって、高比誘電率と強磁性を共に備える誘電体薄膜素子の提供。
【構成】化学式A’A”B’B”O(ただし、A’A”はそれぞれアルカリ土類元素または希土類元素の同族元素であってA’=A”を含み、B’およびB”はそれぞれ異なる遷移金属元素を表す)で表される導電性の複合ペロブスカイト酸化物薄膜結晶が支持基板上に電極膜を介してエピタキシャル成長により積層された酸化物薄膜素子において、前記ペロブスカイト酸化物結晶薄膜a軸およびb軸に対し拡張方向に歪を与えて前記B”のt2g軌道のうちd(xy)軌道のみを低い電子準位に***させ、電場または磁場を与えた際に前記B’から電子が前記B”へ移動することにより分極させる性質を備えた結晶材料を前記支持基板材料として用いる酸化物薄膜素子とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複合ペロブスカイト酸化物薄膜を、より改良された電子デバイスとして適用し実用化することを可能にした酸化物薄膜素子に関する。
一般に、酸化物薄膜は、誘電性、磁性、超伝導といった多彩な物性を有し、さまざまな機能を有する電子デバイスを提供している。このような酸化物薄膜からなる誘電体素子では、キャパシタ応用、圧電体応用等の機能デバイスとして、特にジルコニウムチタン酸鉛(以降、PZTと略す)等の鉛系酸化物がよく知られ、また広く用いられている。特に、コンデンサを大容量化するためには、前述のPZTを含む複合ペロブスカイト酸化物を用いた薄膜コンデンサが誘電特性において優れるので、注目されている。しかし、昨今の欧州の環境規制により材料の無鉛化が強く求められるようになり、鉛を含む前記PZTの代替材料が切望されている。
従来から、鉛を含まない酸化物材料を用いた誘電体としては、BaTiOなどのイオン性結晶やビスマス系の強誘電体であるBiTiNbO、BaBiTiNb、(Sr,Ca)BiTa、などを用いた誘電体が知られている。しかしながら、前記鉛を含まない誘電体の比誘電率は要求される高い比誘電率を必ずしも満足していない。
また、次世代の半導体メモリや電源駆動素子の実現には、微小面積で大容量を持つ薄膜コンデンサが不可欠である。従来、半導体メモリの分野では二酸化珪素(SiO)を誘電体層として利用してきた。最近ではさらなる高密度化に対応するために、比誘電率の高い五酸化タンタル(Ta)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO以下STOと記す)、チタン酸バリウム(BaTiO以下BTOと記す)、チタン酸バリウムストロンチウム((Ba,Sr)TiO以下BSTOと記す)等の薄膜が利用されてきている。
しかしこれらの材料の比誘電率は、数10〜500程度であり、さらなる高比誘電率材料が求められている。
一方、磁性と誘電性を共に備えた材料を用いたデバイスの新機能探索が関心を集めている。このような磁性と誘電性を共に備えた材料として、既に鉛系ではPbFe4/32/3など多くの材料が報告されている。
また一方、材料として前記BSTO系を用いながらも、その薄膜の形成時に基板からエピタキシャル応力(格子定数の差に起因する応力)を及ぼし、歪み誘電体にすることによる比誘電率の向上を目指す研究が報告されている。その一つに、原子層分子線エピタキシー(MBE)法による[(BaTiO(SrTiO]の強誘電体超格子薄膜を、STO基板上に作製して高比誘電率が得られたという報告(非特許文献1)がある。
また、白金(Pt)/酸化マグネシウム(MgO)基板上に種々の組成のBSTO薄膜を作製し、バルクでは通常常誘電性を示す組成領域(BaSr1−xTiOのx≧0.44)で強誘電性が誘起されることを示した文献がある(非特許文献2)
これらの研究から、BSTO系材料に対して薄膜面内方向に圧縮応力を加え、薄膜の格子定数を面に垂直な方向に伸ばすと、高比誘電性や強誘電性を得ることが可能であるということが明らかになった。その機構として、格子歪みによるBサイト(ペロブスカイト化合物ABOのB原子の位置)のポテンシャルエネルギーの変化に関係することが考えられている。
また、誘電体薄膜と基板との間に介在する下部電極膜と、誘電体薄膜との格子定数の違いによる格子歪みを利用した不揮発性メモリ用薄膜キャパシタが知られている。さらに、このキャパシタでは、下部電極として基板と完全エピタキシャル関係となる材料を用いると、誘電体薄膜の歪みが、誘電体薄膜と基板との間に介在する下部電極膜の格子定数より、むしろその下の基板の格子定数に依存するとしている。(特許文献1)。
また、エピタキシャル応力を制御して、高い比誘電率を得る効果が得られる絶縁性ペロブスカイト型酸化物材料の好ましい例としては、一般式ATiO(Aはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、ジルコニウムの内の一つまたは複数の元素)で表される単純ペロブスカイト型チタン酸塩または層状ペロブスカイト型チタン酸塩などがあり、その基板としてストロンチウム酸化チタン、ガリウム酸ランタンストロンチウム、ガリウム酸ネオジウム、アルミニウム酸ランタン、アルミニウム酸ネオジウム、アルミニウム酸イットリウム、アルミニウム酸タンタル酸ストロンチウムのいずれか、またはそれらの混合物の単結晶を用いることが好ましいとされている(特許文献2―請求項2)。
またさらに、半導体素子との集積化のためには半導体基板上に強誘電体薄膜を作製することが必要である。Si基板上における強誘電体薄膜のエピタキシャル成長は、高成長温度、Siと強誘電体との間の相互拡散、Siの酸化などのために難しい。これらの理由のため低温で半導体基板上にエピタキシャル成長し、強誘電体薄膜のエピタキシャル成長を助け、かつ拡散バリアとしても働くキャッピング層をバッファ層として、半導体基板上に形成することが必要である。さらに、強誘電体と半導体との間に絶縁体を形成したFET素子においては、そのようなバッファ層が存在すれば、強誘電体の分極時に半導体からの電荷の注入を防ぐことができ、強誘電体の分極状態を維持することが容易となる。
これに対し、Si(100)単結晶上にMgAl(100)またはMgO(100)をエピタキシャル成長させた基板上に強誘電体化合物をエピタキシャル成長させるとよいことが、特許文献3(下記)に示されているが、Si(100)単結晶とMgO(100)との結晶学的関係は明らかにはされていない。その後の研究において(100)配向性のMgOがSi(100)単結晶に形成された際にも、MgOは(100)面がSi(100)面に平行であるだけで、面内方位はランダムな配向性多結晶MgOであることが明らかにされている(非特許文献3)。さらにその後、格子定数と熱安定性とにより強誘電体や高温超電導体の基板としてよく用いられるMgOは、Si上へエピタキシャル成長させることができることが初めて明らかにされている(非特許文献4)。
この他に、下地層上に下部電極、強誘電性の誘電体薄膜、上部電極等がこの順に形成されたキャパシタであって、前記誘電体薄膜が前記下部電極から導入される歪により歪められたペブロブスカイト型構造を呈するように構成した強誘電性薄膜キャパシタの発明が知られている(特許文献4)。
また、線膨張係数が誘電体薄膜のそれに近い材料からなる基板上に、白金電極に挟まれる比誘電率の大きい複合ペブロブスカイト酸化物薄膜を用いた構成のコンデンサとすることにより、高耐圧で、クラックを防止できる薄膜コンデンサにかかる発明も知られている(特許文献5)。
アプライドフィジックスレターズ、65巻、15号、1970〜1972頁、1995年参照 ジャーナルオブアプライドフィジックス、77巻、(12号)6461〜6465頁、1995年、ジャパニーズジャーナルオブアプライドフィジックス、37巻、5105頁、1998年参照 P.Tiwari et al.,J.Appl.Phys.69,8358(1991)) D.K.Fork et al.,Appl.Phys.Lett.58,2294(1991)) 特開平9−74169号公報 特開2001−250923号公報 特開昭61−185808号公報 特開平11−265836号公報 特開2000−323350号公報
本発明は前述したように、高比誘電率であって、鉛を有さない誘電体薄膜素子を見つけようとする過程において見つけ出されたものであり、鉛を含有しない酸化物薄膜材料であって、高比誘電率と強磁性を共に備える誘電体薄膜素子を提供することを目的とする。
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、化学式A’A”B’B”O(ただし、A’A”はアルカリ土類元素または希土類元素の同族元素であってA’=A”を含み、B’およびB”はそれぞれ異なる遷移金属元素を表す)で表される導電性の複合ペロブスカイト酸化物結晶薄膜が支持基板上に電極膜を介してエピタキシャル成長により積層された酸化物薄膜素子において、前記ペロブスカイト酸化物結晶薄膜の膜方向のa軸およびb軸に対し拡張方向に歪を与えて前記B”のt2g軌道のうちd(xy)軌道のみを低い電子準位に***させ、電場または磁場を与えた際に前記B’から電子が前記B”へ移動することにより分極させる性質を備えた結晶材料を前記支持基板材料として用いる酸化物薄膜素子とすることにより、達成される。
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、前記目的は、化学式A’A”B’B”O(ただし、A’A”はそれぞれアルカリ土類元素または希土類元素の同族元素であってA’=A”を含み、B’およびB”はそれぞれ異なる遷移金属元素を表す)で表される導電性の複合ペロブスカイト酸化物薄膜結晶が支持基板上に電極膜を介してエピタキシャル成長により積層された酸化物薄膜素子において、前記複合ペロブスカイト酸化物結晶薄膜の膜方向のa軸およびb軸に対し拡張方向に歪を与えてB’のt2g軌道のうちd(xy)軌道のみを低い電子準位に***させることにより、前記結晶薄膜が絶縁性を示すようになる性質を備える結晶材料を前記支持基板材料として用いる酸化物薄膜素子とすることにより、達成される。
特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、A’A”はそれぞれアルカリ土類元素であり、B’が鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)のいずれかの元素、B”がクロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)のいずれかの元素である特許請求の範囲の請求項1または2記載の酸化物薄膜素子とすることが好ましい。
特許請求の範囲の請求項4記載の発明によれば、A’とA”が同一のアルカリ土類元素である請求項3記載の酸化物薄膜素子とすることがより好ましい。
特許請求の範囲の請求項5記載の発明によれば、A’A”はそれぞれ希土類元素であり、B’が鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)のいずれかの元素、B”がチタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、タングステン元素(W)、ハフニウム元素(Hf)のいずれかの元素である特許請求の範囲の請求項1または2記載の酸化物薄膜素子とすることが好適である。
特許請求の範囲の請求項6記載の発明によれば、A’とA”が同一の希土類元素である請求項5記載の酸化物薄膜素子とすることがより好適である。
特許請求の範囲の請求項7記載の発明によれば、支持基板が前記導電性の複合ペロブスカイト酸化物薄膜結晶より格子定数の値が大きい結晶材料であって、前記支持基板の表面が(100)面である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の酸化物薄膜素子とすることが望ましい。
前述の本発明によれば、鉛を含有しない酸化物薄膜材料であって、高比誘電率と強磁性を共に備える誘電体薄膜素子を提供することができる。
本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下説明する実施例の記載に限定されるものではない。図1と図2は本発明にかかる酸化物薄膜誘電体素子の断面図である。本発明にかかる誘電体酸化物薄膜である複合ペブロブスカイト酸化物について、SrFeMoOを例に挙げて詳細に説明する。図1に示すように、表面をMgO単結晶の(100)面とした支持基板1上に、下部電極層として白金(Pt)を厚さ100nmにエピタキシャル成長させ、SrFeMoOの結晶薄膜をPLD(Pulsed Laser Deposition)法で厚さ100nmに形成した。その上部電極として、スパッタ法による白金を100nmとの厚さに形成し、フォトエッチングして必要な形状に整えることにより複合ペロブスカイト酸化膜キャパシタを形成する。このようにして形成した本発明にかかる誘電体薄膜素子が高比誘電率と強磁性を共に備えることについて、以下説明する。
図3は遷移金属元素の各結晶体における3d電子軌道のエネルギー準位を示す図である。遷移金属元素の3d軌道は、よく知られているように、d(xy)、d(yz)、d(zx)、d(x-y)、d(3z-r)の5つの軌道があって、球対称な場(単独の元素の状態)では5重に縮退(縮重)している(図3(a))。前記SrFeMoOで表される複合ペロブスカイト酸化物ではBサイト(前記酸化物においてFeやMoのような遷移金属元素が位置するサイト)イオンが酸素の6配位をとっており、その6つの酸素までの距離がすべて等しい立方対称となる立方晶である。立方対称の場ではd軌道は、これも公知のとおり、図3(b)に示すように、エネルギー準位の低いd(xy)、d(yz)、d(zx)軌道(これらをまとめてt2g軌道という)と、より高いd(x-y)、d(3z-r)軌道(これらをまとめてe軌道という)に***する。
この立方晶からなる酸化物結晶体を正方対称(正方晶)に(すなわち、a軸とb軸とをc軸の間隔より広げるように)歪ませると、図3(c)のように、前記t2g軌道を***させることができる。すなわち、SrFeMoOの結晶薄膜は格子定数が変化するような影響を受けない場においては、a=7.89Å(オングストローム)の立方晶であるが、a=b>cの格子定数を持つように歪ませる(すなわち、外的影響を受けて正方晶に歪ませられた場合)と図4の(a)に示す電子配置となる。この結晶薄膜における化学結合では鉄元素(Fe)は(1s2s2p3s3p3d4s)で示される全電子配置について、4s軌道の2電子を放出した2価で、モリブデン元素(Mo)は(1s2s2p3s3p3d104s4s4d5s)で示される全電子配置について、5s軌道の1電子と4d軌道の5電子との合わせて6電子を放出した6価であるので、鉄元素(Fe)の3d軌道の電子は6個、モリブデン元素(Mo)の4d軌道の電子は0個となる。t2g軌道が***していない場合(自然状態のSrFeMoOの立方晶体)、鉄元素(Fe)に1個だけあるダウンスピンを持ったt2g軌道の電子が伝導帯に位置し(図示せず)、モリブデン元素(Mo)のt2g軌道も伝導帯に位置しているので、鉄元素(Fe)の電子はモリブデン元素(Mo)のt2g軌道に移動できる(すなわち、導電性を有する)が、図4(a)に示すように、結晶歪みの影響により正方晶になったSrFeMoOの結晶薄膜は、鉄元素(Fe)のt2g軌道のd(xy)軌道が低い電子準位に***し、バンドギャップが開き、モリブデン元素(Mo)のt2g軌道がフェルミ準位より上になるために鉄元素(Fe)のt2g軌道の電子はモリブデン元素(Mo)のt2g軌道に移動できずに絶縁体となる。その状態のSrFeMoO結晶薄膜が電場や磁場のような外場の影響を受けると、図4(b)に示すように、鉄元素(Fe)とモリブデン元素(Mo)の電子状態にずれ(V)が生じ、鉄元素(Fe)のd(xy)軌道がフェルミ準位より上に位置し、モリブデン元素(Mo)のd(xy)軌道がフェルミ準位の下に位置するようになると、鉄元素(Fe)からモリブデン元素(Mo)に電子が一つ移ったままの状態になり、鉄元素(Fe)は3価に、モリブデン元素(Mo)は5価に変化する。この場合、電子スピンについて着目すると、鉄元素(Fe)が図4(a)においてS=2(upスピン電子=1/2×5個−downスピン電子1/2×1個)、モリブデン元素(Mo)がS=0の状態から、図4(b)に示す鉄元素(Fe)がS=5/2(upスピン電子=1/2×5個)、モリブデン元素(Mo)がS=1/2に移り、反交換相互作用により鉄元素(Fe)とモリブデン元素(Mo)が反対向きのスピン磁気モーメントも持つ、すなわちフェリ強磁性をも示すようになる。以上、まとめると自然状態では導電性を示すSrFeMoO結晶薄膜を正方晶に歪ませてなるSrFeMoO結晶薄膜は誘電性と磁性の複合物性を持つようになる。
以上の説明では、B’としてFe、B”としてMoを用いたが、B’としてルテニウム元素、オスミウム元素のいずれかの元素を、B”としてクロム元素、タングステン元素のいずれかの元素を用いても、前述の説明と同様にt2g軌道の***が起こり、図4に示したような電子準位が実現でき、誘電性と磁性を共に備える酸化物薄膜素子とすることができる。また、A’とA”としてSr以外のアルカリ土類元素を用いても前述と同様の誘電性と磁性を共に備える酸化物薄膜素子とすることができる。
以上説明したように、この誘電体と磁性体の複合物性を利用することにより、新たな、機能性デバイスが実現可能になる。たとえば、電圧印加による磁化反転機能を利用することにより、(In,Mn)Asなどの強磁性半導体をチャネル層とする電界効果トランジスタを形成し、電界によって強磁性半導体のスピン制御を行って、スピン編局されたキャリア電流のスイッチング制御を行うことのできるデバイスとして不揮発性磁気メモリ(Magnetic Random Access Memory)がある。
また、通常の強誘電体を利用した不揮発性メモリでは、電場の印加により電荷の反転を行うが、そのような電荷の反転や、あるいは誘電率、分極量などを磁場印加により制御できる磁場制御不揮発性メモリ(Ferroelectric Random Access Memory)デバイスが可能になる。
さらに、磁場制御による誘電率変化、すなわち、光透過結晶材料の屈折率変化などの磁気光学非線形現象を用いたレーザーの波長変換、周波数変換、光ニューラルコンピュータや、並列デジタル光演算などの並列光情報処理に応用される磁気光学変換デバイスが可能になる。
次に、本発明にかかる複合ペブロブスカイト酸化物であって、前述のSrFeMoOとは異なる例として、LaFeTiOの場合について、詳細に説明する。
単純ペロブスカイト酸化物であるLaFeO結晶は格子定数a=3.92Å、b=5.565Å、c=7.862Å(すなわち、a≠b≠c)を持つ斜方晶であり、同様に、LaTiO結晶は格子定数a=3.92Åの立方晶(a=b=c)である。これらLaFeO結晶とLaTiO結晶を交互に組み合わせると複合ペロブスカイト酸化物のLaFeTiOの立方晶が得られる。この立方晶体を前述と同様にして、a=b>cの格子定数となるように歪ませると、図5(a)に示す電子配置をとる。この状態で、FeとTiはそれぞれ2価と4価であり、Feのd電子は6個、Tiのd電子は0個である。歪ストレスが無い場合、Feの一個だけであるダウンスピンを持ったt2g電子はTiのt2g軌道に移動できるが、前述と同様に、LaFeTiO結晶がa=b>cの格子定数となるように歪むと、Feのt2g軌道のd(xy)軌道が低い電子準位に***し、バンドギャップが開き、Tiのt2g軌道がフェルミ準位より下になるためにTiのt2g軌道に移動できずに絶縁体となる。そこで、電場または磁場によりFeとTiの電子状態にズレが生じ、図5の(b)のように、FeからTiに電子が一つ移ったままの状態になると、電気的な分極が発生する。この場合、電子スピンについて注目すると、FeがS=2、TiがS=0の状態からFeがS=5/2、TiがS=1/2に移り、反交換相互作用によりFeとTiが反対向きのスピン磁気モーメントを持つことになり、フェリ強磁性となる。すなわち、前述のa=b>cの格子定数となるような結晶歪を持つLaFeTiOの酸化物結晶体は誘電体−磁性体の複合物性を持つので、それを利用した酸化膜薄膜素子を形成することができる。
前述では、B’としてFe、B”としてTiを用いたが、B’としてルテニウム元素、オスミウム元素のいずれかの元素を、B”としてジルコニウム元素、タングステン元素およびハフニウム元素から選ばれるいずれかの元素を用いても、前述の説明と同様にt2g軌道の***が起こり、図5に示したような電子準位が実現でき、誘電性と磁性を共に備える酸化物薄膜素子とすることができる。また、A’とA”としてLa以外の希土類元素を用いても前述と同様の誘電性と磁性を共に備える酸化物薄膜素子とすることができる。
以上、立方晶の複合ペロブスカイト酸化物について説明したが、本発明においてはB”のt2g軌道のd(xy)軌道が歪により相対的に低い電子準位として***することが重要であり、立方晶構造の結晶薄膜に限られるものではない。また、以上の説明では、前述した歪を与えることにより、B’のt2g軌道のd(xy)軌道が低い電子準位に***し絶縁体になるものについて説明したが、絶縁体になるものに限られるものではない。その理由は、絶縁体とならない場合でも、電場や磁場を与えることにより、B’とB”の電子状態にズレが生じ、B’の電子がB”に移動し分極することで、誘電体と磁性体の複合特性を備える場合があるからである。以上説明したSrFeMoOとLaFeTiOは共に電荷移動型誘電体と言われる。電荷移動型誘電体となる複合ペロブスカイト酸化物の要件をまとめると、下記のようになる。
移動した電子の入る軌道が***しているためには、薄膜結晶a軸とb軸とが拡張方向に歪んでいること、たとえば、立方晶の場合、aおよびb>cの格子定数を持っていること。
電荷移動する前後のd電子軌道における電子の移動は、たとえば、(d,d)⇔(d,d)のように、絶縁的であること。
電場等の外場の影響下で電子のエネルギー準位が変化し、化学式A’A”B’B”Oで表される複合ペロブスカイト酸化物の2つのBサイト間でエネルギー準位が重ならないことである。
以下、前述の複合ペロブスカイト酸化物薄膜素子について、薄膜コンデンサ素子の場合について、図1を参照して具体的に説明する。
酸化マグネシウムMgOの単結晶基板1を有機溶剤により洗浄し、(100)面を上にして成膜室に入れ、真空に引いた。基板温度600℃にて白金からなる下部電極膜2をスパッタ法にて約100nmの厚さにエピタキシャル成長させる。引き続き基板温度600℃にて電荷移動型誘電体のSrFeMoO膜(SMFO膜)4を約100nmの膜厚にPLD(Pulsed Laser Deposition)法で成膜した。室温に戻した後、再度スパッタ法で白金からなる上部電極膜3を約100nmの膜厚に成膜した。形成された積層体を成膜室から取り出し、下部電極膜2の周辺が露出するようにSrFeMoO膜4と上部電極膜3の周辺部をエッチングにより除去することにより、図1に示す薄膜コンデンサ素子とする。
酸化マグネシウムMgOの単結晶基板はa=b=cで、格子定数4.21Åの立方晶である。白金は格子定数3.92Åの立方晶であるが、MgO結晶基板の影響により、面内の格子定数が4.1Å程度に大きく広げられる。SrFeMoOは自然な状態(外的エネルギー場の影響がない状態)であれば、a=7.89Åの格子定数を持つ立方晶であり、単純ペロブスカイト酸化物と比較するために、前記格子定数a=7.89Åを2で割れば、A=3.95Åとなるが、白金からなる下部電極膜が酸化マグネシウムMgO単結晶基板1の影響により、a=4.1Å程度に大きく広げられる。このためにSrFeMoO膜の電子状態は図4に示すとおり、誘電体と磁性体との複合物性を有することになる。
以下、他の複合ペロブスカイト酸化物薄膜素子について、薄膜コンデンサ素子の場合について、図2を参照して具体的に説明する。
酸化マグネシウムMgOの単結晶基板1を有機溶剤により洗浄し、(100)面を上にして成膜室に入れ、真空に引いた。基板温度600℃にて白金からなる下部電極膜2をスパッタ法にて約100nmの厚さにエピタキシャル成長させる。引き続き基板温度600℃にて電荷移動型誘電体のLaFeTiO膜5を約100nmの膜厚にPLD(Pulsed Laser Deposition)法で成膜した。室温に戻した後、再度スパッタ法で白金からなる上部電極膜3を約100nmの膜厚に成膜した。形成された積層体を成膜室から取り出し、下部電極膜2の周辺が露出するようにLaFeTiO膜5と上部電極膜3の周辺部をエッチングにより除去してコンデンサ素子とする。
酸化マグネシウムMgOの単結晶基板はa=b=cで、格子定数4.21Åの立方晶である。白金は格子定数3.92Åの立方晶であるが、MgO単結晶基板の影響により、面内の格子定数が4.1Å程度に大きく広げられる。LaFeOとLaTiOの格子定数の平均が3.93Åになることから、LaFeTiOの格子定数もその程度と考えられる。白金からなる下部電極膜が酸化マグネシウムMgO単結晶基板1の影響により、a=4.1Å程度に大きく広げられる影響により、LaFeTiO膜の電子状態は図5に示すとおり、誘電体と磁性体との複合物性を有することになる。
実施例1と実施例2では支持基板としてMgOの単結晶基板を用いた際の上下部電極膜として、白金の単結晶膜を用いたが、他にSrRuOの単結晶膜を用いることもできる。
前述のコンデンサ素子だけでなく、前述の磁場制御不揮発性メモリデバイスや磁気光学変換デバイスにも応用できることは言うまでもない。
本発明の実施例にかかる酸化膜薄膜素子の模式的断面図、 本発明に異なる実施例にかかる酸化膜薄膜素子の模式的断面図、 各結晶場中でのd電子軌道のエネルギー準位を示す図、 SrFeMoO結晶体の外場による電子配置変化を示す図、 LaFeTiO結晶体の外場による電子配置変化を示す図、
符号の説明
1 MgO単結晶基板
2 白金下部電極膜
3 白金上部電極膜
4 SrFeMoO
5 LaFeTiO膜。

Claims (7)

  1. 化学式A’A”B’B”O(ただし、A’A”はアルカリ土類元素または希土類元素の同族元素であってA’=A”を含み、B’およびB”はそれぞれ異なる遷移金属元素を表す)で表される導電性の複合ペロブスカイト酸化物結晶薄膜が支持基板上に電極膜を介してエピタキシャル成長により積層された酸化物薄膜素子において、前記ペロブスカイト酸化物結晶薄膜の膜方向のa軸およびb軸に対し拡張方向に歪を与えて前記B”のt2g軌道のうちd(xy)軌道のみを低い電子準位に***させ、電場または磁場を与えた際に電子が前記B’から前記B”へ移動することにより分極させる性質を備えた結晶材料を前記支持基板材料として用いることを特徴とする酸化物薄膜素子。
  2. 化学式A’A”B’B”O(ただし、A’A”はアルカリ土類元素または希土類元素の同族元素であってA’=A”を含み、B’およびB”はそれぞれ異なる遷移金属元素を表す)で表される導電性の複合ペロブスカイト酸化物結晶薄膜が支持基板上に電極膜を介してエピタキシャル成長により積層された酸化物薄膜素子において、前記複合ペロブスカイト酸化物結晶薄膜の膜方向のa軸およびb軸に対し拡張方向に歪を与えて前記B’のt2g軌道のうちd(xy)軌道のみを低い電子準位に***させることにより、前記結晶薄膜が絶縁性を示すようになる性質を備える結晶材料を前記支持基板材料として用いることを特徴とする酸化物薄膜素子。
  3. A’A”はそれぞれアルカリ土類元素であり、B’が鉄元素、ルテニウム元素、オスミウム元素のいずれかの元素、B”がクロム元素、モリブデン元素、タングステン元素のいずれかの元素であることを特徴とする請求項1または2記載の酸化物薄膜素子。
  4. A’とA”が同一のアルカリ土類元素であることを特徴とする請求項3記載の酸化物薄膜素子。
  5. A’A”はそれぞれ希土類元素であり、B’が鉄元素、ルテニウム元素、オスミウム元素のいずれかの元素、B”がチタン元素、ジルコニウム元素、タングステン元素、ハフニウム元素のいずれかの元素であることを特徴とする請求項1または2記載の酸化物薄膜素子。
  6. A’とA”が同一の希土類元素であることを特徴とする請求項5記載の酸化物薄膜素子。
  7. 支持基板が前記導電性の複合ペロブスカイト酸化物結晶薄膜の膜方向の格子定数aおよび格子定数bより格子定数の値がそれぞれ大きい結晶材料であって、前記支持基板の表面が(100)面であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の酸化物薄膜素子。
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CN112088441A (zh) * 2018-05-08 2020-12-15 赛尔科技有限公司 包括多层薄膜陶瓷构件的电气元件、包括该电气元件的电气部件、及其用途

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