JP2006187729A - 割れ目模様の被膜の作製方法 - Google Patents
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Abstract
製品の競争力向上のため、意匠的効果の高い模様を有する塗膜の作製方法を提供する。
【解決手段】
被塗物表面に、二液性塗料を除いた下地塗料であってシンナーで希釈したものを塗布して下地塗膜を形成し、所定の時間常温で放置し、次いで、前記下地塗膜上に前記下地塗料よりも乾燥時に収縮率が高い材質の中塗り塗料であってシンナーで希釈したものを塗布して中塗り塗膜を形成し、所定の時間常温で放置し、又は乾燥機で加温保持することにより生じる亀裂によって割れ目模様を有する被膜を作製する。
【選択図】図1
Description
(1)被塗物表面に、二液性塗料を除いた下地塗料であってシンナーで希釈したものを塗布して下地塗膜を形成させ(下地塗膜形成工程)、
(2)前記下地塗膜を形成した被塗物を所定の時間、常温で放置することにより乾燥させ(下地塗膜乾燥工程)、
(3)次いで、前記下地塗膜上に、前記下地塗料よりも乾燥時に収縮率が高い材質の中塗り塗料であってシンナーで希釈したものを塗布して中塗り塗膜を形成させ(中塗り塗膜形成工程)、
(4)前記中塗り塗膜を形成した被塗物を所定の時間、常温で放置し又は乾燥機で加温保持することにより乾燥させることで(中塗り塗膜乾燥工程)、
該中塗り塗膜に亀裂が生じ、該亀裂によって割れ目模様が形成されることを特徴とする割れ目模様の被膜の作製方法が提供される。
割れ目模様が形成されるのは、下地塗料と中塗り塗料の乾燥後の収縮率の相違により、亀裂が生じるためである。
塗料塗布後の時間を限定することにより、意匠的模様が形成される確度を一段と向上させることができる。
また、研磨工程を挟みながら、クリア塗料の塗装を複数回行うことにより、塗装膜表面が段差なく、より滑らかな仕上がり状態となる。又、形成された模様に艶が生じ、高級感を醸成できる。
下塗り塗料は、シンナーで20%希釈したラッカーを使用した。なお、下塗り塗料はラッカーに限らないが、二液性でない塗料(硬化剤の含まれていない塗料)に限定される。ラッカーの色彩は金色とした。他の色でも構わないことは勿論であり、2色のラッカーを塗り重ねても良い。
中塗り塗料は、有限会社シマモト製の塗料(商品名「模様塗料」)をシンナーで20%希釈して使用した。色彩は黒色とした。他の色でも構わないことは勿論であり、2色を塗り重ねても良い。
クリア塗料は、デュポン社製の塗料「ウルトラプロダクティブクリア676S」を使用した。なお、クリア塗料は、仕上がりの美麗性、耐久性の観点から二液性のものが好ましい。
先ず、下地塗膜形成工程について説明する。下地塗膜形成工程とは、下塗り塗料としてシンナーで希釈したラッカーを、被塗物に塗装する工程である。具体的には、被塗物であるひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり回転させながら、スプレーガンを用いて、均一に吹き付ける。ここで、回転数は3乃至6回転が好ましい。形成する下地塗膜の膜厚は約40μmである。
下地塗膜形成後、常温で少なくとも30分以上放置し乾燥させる。
次に、中塗り塗料としてシンナーで希釈した模様塗料を、スプレーガンを用いてひょうたんに塗装する。ひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり2回転させてスプレーガンの操作により塗膜厚さに変化をもたせつつ吹き付ける。塗膜の膜厚は薄いところ(図2のA領域)で約20μm、厚いところ(図2のB領域)で約40μmにする。ここで、中塗りの塗料は1色に限られるものではなく、複数色を塗り重ねることも可能である。
中塗り塗膜形成後、常温で約5時間放置する。なお、常温で放置する代わりに乾燥機で約60℃の条件下で1時間程度加温乾燥してもいい。常温で放置後1時間程度経過すると中塗り塗料に亀裂が生じると共に下地塗料が表出しだし、放置後3時間程度経過すると亀裂模様の形成が完了する。中塗り塗料の塗膜厚が小さい部分(図2のA領域)は亀裂による割れ目模様の開裂幅が小さくなり、塗膜厚が大きい部分(図2のB領域点)は亀裂による割れ目模様の開裂幅が大きくなって、全体としては割れ目模様の幅が小さな部分と大きい部分が自然に配され、模様のバランスと色彩のコントラストが巧みに組み合わされた意匠性の高い模様が形成される。
スプレーガンのエアー噴出量を変えてみたり、トリガーの引き具合を変えてみたりすることでさらに多彩な模様を形成することも可能である。
中塗り塗膜乾燥後、光沢と滑らかな表面を有した被膜を形成するために、スプレーガンを用いてクリア塗装を行う。ここで、クリア塗膜の厚みは約20μmである。
クリア塗装の後、320番手以上のペーパーで研磨する。
その後、再度クリア塗装を行う。クリア塗膜の厚みは約20μmである。
再度320番手以上のペーパーで研磨する。
その後、更にクリア塗装を行う。クリア塗膜の厚みは約20μmである。3度目のクリア塗装後の被膜全体の膜厚は合計で少なくとも60μm以上となっている。
その後一日以上常温で放置するか、又は乾燥機内で約60℃の条件下で30分間程度乾燥させて完成である。
図4に、本実施例2の割れ目模様を有するひょうたんの外観写真を示す。なお、実施例2で使用した下塗り塗料、中塗り塗料、クリア塗料の材質、商品名等は実施例1と同じである。本実施例2の手順も、図1に示した実施例1の手順フローと同様であるが、一部の工程(下地塗膜形成工程と中塗り塗膜形成工程)が異なり、以下に説明する。
下塗り塗料としてラッカー(金色)を、スプレーガンを用いて塗装する。ひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり回転させながら均一に吹き付ける。ここで、回転数は3乃至6回転が好ましい。吹き付けるラッカーの膜厚は実施例1より厚めの約50μmである。
下地塗膜形成後、常温で少なくとも30分以上放置する。
次に、中塗り塗料として模様塗料(黒色)を、スプレーガンを用いて塗装する。ひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり2回転させてスプレーガンの操作により塗膜厚さに変化をもたせつつ吹き付ける。塗膜厚さは薄いところ(図4のC領域)で20μm、厚いところ(図4のD領域)で50μmと、全体に薄厚の差を実施例1よりも大きくした。なお、中塗りの塗料は1色に限られるものではなく、複数色を塗り重ねることも可能である。
中塗り塗膜形成後、常温で5時間程度放置する。なお、常温で放置する代わりに乾燥機内で、約60℃で1時間程度加温乾燥してもいい。
常温で放置後、図4の外観写真に示されるような、亀裂によって形成された割れ目模様の幅が大きな部分と小さな部分が対照的な、実施例1とは異なった印象の意匠性の高い割れ目模様が形成されるのである。
先ず、金色のラッカーを、スプレーガンを用いて均一にひょうたんに吹き付け塗装する。具体的には、ひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり回転させながら、金色のラッカーをスプレーガンを用いて均一に吹き付ける。ここで、回転数は3乃至6回転が好ましい。形成するラッカー(金色)の膜厚は30μm程度である。
次に、赤色のラッカーを、金色のラッカーの塗膜上に、スプレーガンを用いて均一にひょうたんに吹き付け塗装する。ここで、回転数は2乃至3回転が好ましい。形成するラッカー(赤色)の膜厚は10μm程度である。
下地塗膜形成後、常温で約30分放置する。
次に、中塗り塗料として模様塗料(例えば、緑色)を、スプレーガンを用いて塗装する。ひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり2回転させてスプレーガンの操作により塗膜厚さに変化をもたせつつ吹き付ける。塗膜厚さは薄いところで20μm、厚いところで40μm程度である。なお、中塗りの塗料は1色に限られるものではなく、複数色を塗り重ねることも可能である。
中塗り塗膜形成後、常温で5時間程度放置する。なお、常温で放置する代わりに乾燥機で、約60℃で1時間程度加温乾燥してもいい。常温で放置後、金色と赤色の2色の割れ目模様が形成される。この金色と赤色の2色の割れ目模様は、観る者により色鮮やかな意匠性の高い模様を感じさせることができる。
実施例1と同様に、被塗物であるひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり回転させながら、ラッカーをスプレーガンを用いて均一に塗装する。先ず、金色のラッカーを均一に約20μmの厚さで吹き付ける。回転数は2回転程度が好ましい。次に、中央部を環状にマスキングし、同色の金色のラッカーを約30μmの厚さで均一に吹き付ける。回転数は2回転程度が好ましい。この結果、マスキングで被覆した部分(図7のG領域)の塗膜厚は約20μm、それ以外の部分(図7のH領域)の塗膜厚は約50μmとなる。
下地塗膜形成後、常温で約30分放置する。
次に、中塗り塗料として模様塗料(黒色)を、スプレーガンを用いて塗装する。ひょうたんを回転テーブルに載せ、ゆっくり2回転させてスプレーガンの操作により塗膜厚さに変化をもたせつつ吹き付ける。塗膜厚さはほぼ均一に約40μmとする。ここで、中塗りの塗料は1色に限られるものではなく、複数色を塗り重ねることも可能である。
中塗り塗膜形成後、常温で5時間程度放置する。なお、常温で放置する代わりに乾燥機内で、約60℃で1時間程度加温乾燥してもいい。
常温で放置後、図7に外観写真に示すような、中央部にアクセントを有した意匠性の高い模様が形成される。
B 実施例1における中塗り塗料の塗膜厚40μmの領域
C 実施例2における中塗り塗料の塗膜厚20μmの領域
D 実施例2における中塗り塗料の塗膜厚50μmの領域
G 実施例4における下塗り塗料の塗膜厚20μmの領域
H 実施例4における下塗り塗料の塗膜厚50μmの領域
a 実施例1における割れ目模様の割れ目の細い部分
b 実施例1における割れ目模様の割れ目の太い部分
c 実施例2における割れ目模様の割れ目の細い部分
d 実施例2における割れ目模様の割れ目の太い部分
e 実施例3における割れ目模様の割れ目の細い部分
f 実施例3における割れ目模様の割れ目の太い部分
Claims (12)
- 下記の(1)から(4)の工程を少なくとも有し、中塗り塗膜に亀裂が生じ、該亀裂によって割れ目模様が形成されることを特徴とする割れ目模様の被膜の作製方法。
(1)被塗物表面に、二液性塗料を除いた下地塗料であってシンナーで希釈したものを塗布して下地塗膜を形成させる下地塗膜形成工程
(2)前記下地塗膜を形成した被塗物を所定の時間、常温で放置することにより乾燥させる下地塗膜乾燥工程
(3)次いで、前記下地塗膜上に、前記下地塗料よりも乾燥時に収縮率が高い材質の中塗り塗料であってシンナーで希釈したものを塗布して中塗り塗膜を形成させる中塗り塗膜形成工程
(4)前記中塗り塗膜を形成した被塗物を所定の時間、常温で放置し又は乾燥機で加温保持することにより乾燥させる中塗り塗膜乾燥工程 - 前記請求項1に記載の割れ目模様の被膜の作製方法において、前記中塗り塗膜乾燥工程後、さらに、該中塗り塗膜上に、クリア塗料を少なくとも1回塗布する工程(クリア塗装工程)を有すること。
- 前記請求項2に記載の割れ目模様の被膜の作製方法において、クリア塗装工程後少なくとも1時間以上常温放置し、又は少なくとも10分間以上乾燥機内で加温保持し、その後研磨加工工程を少なくとも1回以上を有し、さらに、最後にクリア塗装工程を有すること。
- 前記請求項1乃至3に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法において、中塗り塗料の色彩を下地塗料と異なる色彩とすること。
- 前記請求項1乃至3に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法において、下地塗料及び/又は中塗り塗料の色彩を少なくとも2色以上塗り重ねること。
- 前記請求項1乃至3に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法において、下地塗膜形成工程中、被塗物表面の一部をマスキングすることにより、形成する下地塗膜の膜厚を制御すること。
- 前記請求項1乃至6に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法において、下地塗料の膜厚を20μm乃至50μmとし、かつ、中塗り塗料の膜厚を20μm乃至50μmに塗布すること。
- 前記請求項1乃至6に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法において、下地塗膜乾燥工程が、少なくとも20分間常温放置し、かつ、中塗り塗膜乾燥工程が、少なくとも3時間常温放置又は少なくとも30分乾燥機内で加温保持すること。
- 前記請求項1乃至8に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法で形成された割れ目模様の被膜を有する花器。
- 前記請求項1乃至8に記載のいずれかの割れ目模様の被膜の作製方法で形成された割れ目模様の被膜を有する置物。
- 前記請求項1乃至8に記載のいずれかの割れ目模様の作製方法で形成された割れ目模様の被膜を有する宝飾品。
- 前記請求項1乃至8に記載のいずれかの割れ目模様の作製方法で形成された割れ目模様の被膜を有するフィルムシート。
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