JP2006182933A - ムコ多糖類粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 医薬品、化粧品原料等として有用な平均粒径が0.5〜10μmの範囲にある高純度のムコ多糖類(例えば、コンドロイチン硫酸)を簡便かつ低コストに製造できる方法を提供する。
【解決手段】 ムコ多糖類と、有機カルボン酸塩(特に好適には酢酸ナトリウム)とを含み、かつ該有機カルボン酸塩の濃度が0.3〜2質量%(好適には0.5〜1質量%)である水溶液を調製する。ムコ多糖類濃度は、水100質量部に対し0.1〜20質量部とするとよい。ついで該水溶液と水溶性有機溶媒(特に好適にはエタノール)とを、せん断速度が1m/秒以上での攪拌下に混合してムコ多糖類を析出させる。この際、水溶性有機溶媒+水の量を100質量%として、水溶性有機溶媒を20〜80質量%相当用いるのが一般的である。析出物を乾燥させることにより、平均粒径が0.5〜10μmの範囲にあるムコ多糖類粉末を得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】 ムコ多糖類と、有機カルボン酸塩(特に好適には酢酸ナトリウム)とを含み、かつ該有機カルボン酸塩の濃度が0.3〜2質量%(好適には0.5〜1質量%)である水溶液を調製する。ムコ多糖類濃度は、水100質量部に対し0.1〜20質量部とするとよい。ついで該水溶液と水溶性有機溶媒(特に好適にはエタノール)とを、せん断速度が1m/秒以上での攪拌下に混合してムコ多糖類を析出させる。この際、水溶性有機溶媒+水の量を100質量%として、水溶性有機溶媒を20〜80質量%相当用いるのが一般的である。析出物を乾燥させることにより、平均粒径が0.5〜10μmの範囲にあるムコ多糖類粉末を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、医薬品、化粧品、健康食品、食品添加物、飼料等の分野において種々の用途が期待されるムコ多糖の製造方法に関する。
ムコ多糖とは、広義には動物から得られた多糖類であり、その原料としては、鮫、鮭等の魚類、鯨、エイ、ナマコ等のその他の水生動物、および牛、豚、鶏、馬等の陸上動物から取り出した骨、軟骨、皮、魚の鱗等が知られている。
ムコ多糖の代表的な物質としては、グリコサミノグルカンを挙げることが出来る。グリコサミノグルカンは、一般にコアタンパク質に共有結合したプロテオグルカンとして存在する。グリコサミノグルカンは、繰り返し二糖で構成され、二糖の内のひとつはD−グルコサミンまたはD−ガラクトサミンのいずれかである。グルコサミノグルカンの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、ケタラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸及びデルマタン硫酸等が知られている。
これらのなかでコンドロイチン硫酸は、動物の粘質性分泌液、軟骨等から得られるムコ多糖の一種であり、その生理作用として、細胞外液の容量調節と水分代謝、細胞外液のイオン移動と調節、関節組織の円滑化、脂血清澄作用と血液凝固阻止作用、抗炎症作用、抗ガン作用、角膜透明度維持、感染防止等が知られている。
これらの生理作用を生かし、コンドロイチン硫酸は、医薬品、化粧品、健康食品として広く用いられている。例えば、医薬品、健康食品としては経口用粉末、化粧品としては、外用クリーム、ローション剤が上げられる。従来、このようなコンドロイチン硫酸は様々な方法で得られてきた(例えば、特許文献1〜5参照)。
コンドロイチン硫酸は通常、取り扱いの容易さや、腐敗、雑菌の繁殖防止等のために、乾燥させた粉末の状態とされ、使用時に水等に溶解して用いる場合が多い。取り扱い性を良好なものとするためには、飛散や流動性等の観点から、粉末の粒径がある程度大きい方が好ましいが、一方で溶解性や分散性は、ある程度粒子径が小さい方が良好である。また、化粧品や軟膏などのクリームに配合する場合には、ざらつき感などが無いように、やはり粒径が小さいことが望まれる。即ち、コンドロイチン硫酸の粉末としては、その平均粒径が大きすぎも小さすぎもしない、具体的には平均粒径が0.5〜10μm程度の粉末の有用性が高い。
従来、コンドロイチン硫酸の粉末は、上記したような原料となる骨や軟骨等から様々な処理を経て、タンパク質等の不純物を除去した水溶液の状態で得、この水溶液を濃縮乾固や、凍結乾燥、アルコール沈殿、スプレードライ(噴霧乾燥)等により製造されてきた。しかしながら濃縮乾固や凍結乾燥では、バルク状で固体が析出しやすく、粉砕が必要であるという問題があった。また、従来行われてきているような条件でのアルコール沈殿では、100μmを超えるような非常に粒径の大きな粒子しか得ることができず、やはり粉砕が必要であった。粉砕工程では、精製したコンドロイチン硫酸への不純物の再混入の危険性があり、該工程で得られる粉末を医療用途に用いるためには、充分な注意が必要となる。また大きな粒子を粉砕して小さくする方法では、もとの粒子の大きさや粉砕されやすさ等に依存して、同じ粉砕条件でおこなっても必ずしも同じ平均粒径の粉末が得られるとは限らない。
噴霧乾燥では平均粒径が数μmの粉末を直接製造することができる。しかし、該方法では、乾燥前の状態で溶液(又はスラリー)に含まれる不揮発性成分がほぼ全て乾燥体中にも存在することになる。従って、乾燥前に充分に不純物を取り除いておく必要があった。また噴霧乾燥の装置は構造が複雑で、該装置からの不純物の混入を防ぐための洗浄等の手間もかかる。
本発明は、種々の用途に対して有用な、平均粒径が0.5〜1μmのムコ多糖類を、粉砕等の新たに不純物が混入する可能性の高い工程に拠らず、また原料の極めて高純度の精製を必要とせず、さらに、簡単な装置で低コストに、再現性よく製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、ムコ多糖類を一旦溶液とし、特定の条件で該溶液から析出させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、(1)ムコ多糖類と、有機カルボン酸塩とを含み、かつ該有機カルボン酸塩の濃度が0.3〜2質量%である水溶液を調製する工程、ついで(2)該水溶液と水溶性有機溶媒とを、せん断速度が1m/秒以上での攪拌下に混合してムコ多糖類を析出させる工程、を含むことを特徴とする平均粒径が0.5〜10μmの範囲にあるムコ多糖類粉末の製造方法である。
本発明の製造方法では、ムコ多糖類を一旦水溶液とするため、得られる粉末の粒子径が、溶液とする前の形状に依存せず、よって粉砕する方法と比べて極めて再現性よく平均粒径が0.5〜10μmの粉末を製造することが可能であり、粉砕工程における新たな不純物の混入も避けられる。また本発明の製造方法では、不純物を除去する効果もあるため、必ずしも高純度の原料を用いる必要がない。さらに、必要な装置も構造が簡単である。従って、有用性の高い、高純度で平均粒径が0.5〜10μmのムコ多糖類を低コストで製造することが可能となる。
本発明は、特定の平均粒径を有するムコ多糖類の粉末を製造する方法に関する。当該ムコ多糖類としては特に限定されるものではないが、代表的には、グリコサミノグルカンを挙げることが出来る。グリコサミノグルカンは、一般にコアタンパク質に共有結合したプロテオグルカンとして存在する。グリコサミノグルカンは、繰り返し二糖で構成され、二糖の内のひとつはD−グルコサミンまたはD−ガラクトサミンのいずれかで構成される。グルコサミノグルカンの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、ケタラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸及びデルマタン硫酸等が挙げられる。これらの中で、精製の効率が高いことから、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケタラン硫酸、デルマタン硫酸が好ましく、特にコンドロイチン硫酸が好ましい。ムコ多糖類が、硫酸エステルを有している場合には、酸(−OSO3H)または、Na塩(−OSO3Na)、K塩(−OSO3K)、Ca塩(−OSO3Ca)等のイオン性構造またはこれらの混合物であっても良い。またムコ多糖類が、カルボシキル基構造を有している場合には、酸(−CO2H)または、Na塩(−CO2Na)、K塩(−CO2K)、Ca塩(−CO2Ca)等のイオン性構造またはこれらの混合物であっても良い。
前記の通り、ムコ多等類は、鮫、鮭等の魚類、鯨、ナマコ等のその他の水生動物、および牛、豚、鶏、馬等の陸上動物等の骨、軟骨、皮、鱗等(以下、ムコ多糖類含有組織)をアルカリ処理、酵素処理等することにより、多量のタンパク質等を含む状態で得られる。本発明の製造方法を適用する対象としては、ムコ多等類であればその起源は問わない。一般に、魚類、特に鮭は、得られる処理品の純度が特に高く、臭気も少なく、また多量かつ安定的に供給されやすい。なかでも鮭の鼻軟骨等の軟骨はムコ多等類の含有量が多く、食用にあまり適さず、取り扱いも容易であるという利点を有する。
上記ムコ多糖類含有組織から、本発明の製造方法を適用するムコ多糖類を得る方法は特に限定されるものではないが、代表的な方法を具体的に述べると以下の通りである。
骨、軟骨、皮等のムコ多糖類含有組織においては、ムコ多糖類はコアタンパク質と共有結合した状態で存在している。この共有結合を切断し、後述する限外ろ過によりムコ多糖類とコアタンパク質とを分離可能な状態にするためには、ムコ多糖類含有組織をアルカリ液で分解・抽出するアルカリ処理法、中性塩液で抽出する中性塩処理法、プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素を加えて処理する酵素法等、またはこれらの方法を組み合わせた処理法など公知の方法を適用すればよい。これらの方法の中で、アルカリ処理法及び酵素法による処理が好ましく、特に酵素処理が好ましい。また酵素処理においては、特にアルカリ性プロテアーゼを用いることが好ましい。なお、用いる骨、軟骨、皮等のムコ多糖類含有組織は、あらかじめ水洗、有機溶媒洗浄等により肉、脂肪等の夾雑物を除去することが好ましい。これらムコ多糖類含有組織を、処理前に切断、粉砕、水を添加し加圧する等の処置をしてアルカリ処理法や酵素処理の効率を高めることが通常行われる。
上記処理方法及び用いたムコ多糖類含有組織の種類に応じ、上記処理により得られる被処理液には、ムコ多糖類に加えて、タンパク質やその分解物、脂肪、筋組織、その他の種々の夾雑物を含んだ水溶液として得られるのが一般的である。できるだけ高純度のムコ多糖類粉末を得るためには、本発明の製造方法を適用する前に、このような夾雑物を事前にできるだけ取り除いておくことが好ましい。不溶性の夾雑物を除去するためには、遠心分離、ろ紙、ろ布、ろ砂等を用いたろ過等を行うことができる。さらに、上記遠心分離やろ過等によっても除去できない濁り成分の除去、脱臭、脱色、脱脂等を行うために、ケイソウ土等のろ過助剤を用いたろ過、活性炭処理等を行うことが出来る。なお活性炭処理に際しては、多量の活性炭を用いるとムコ多糖類の収量が低下する場合があるため、該活性炭処理を適用する水溶液から水を除去して得られる成分を100質量%とした場合、活性炭の量を2.5質量%以下とすることが好ましい。
このようにして夾雑物を除いた水溶液(粗ムコ多糖類溶液)には、ムコ多糖類、タンパク質やその分解物が含まれており、この状態のまま本発明の製造方法を適用してもよいが、より高い純度のムコ多糖類粉末を得るためには、タンパク質やその分解物をできるだけ除去しておくことが好ましい。なお、該タンパク質等の除去処理を行うに際しては、粗ムコ多糖類溶液をそのまま処理にかけてもよいが、一旦、粗ムコ多糖類溶液から溶媒を除去して固形化してから行うことも好適である。固形化しておくことにより、粗ムコ多糖類溶液を得てから、これら処理を行うまでに長期間保存しておいても腐敗や細菌の繁殖などの可能性が低くなる。また以下に詳述する処理においては、各々、高い除去効率を得られる濃度が存在するが、一旦、固形化することにより、このような濃度に調節することも容易となる。固形化の方法は特に限定されるものではなく、スプレードライ(噴霧乾燥)、蒸発乾燥、凍結乾燥等、公知のムコ多糖類の固形化方法を適用すればよい。
粗ムコ多糖類溶液からタンパク質やその分解物を除去する方法は特に限定されるものではないが、代表的には、(A−1)アルコール沈殿処理、(A−2)限外ろ過処理、(A−3)イオン交換樹脂処理、(A−4)活性炭処理等が挙げられる。これら処理は単独で行ってもよいし、一種の処理を複数回繰り返してもよいし、あるいは二種類以上組み合わせて行ってもよい。以下、これらの処理方法について説明する。
(A−1)アルコール沈澱処理
前記粗ムコ多糖類溶液等のムコ多糖類を含む水溶液に、アルコールを添加することにより、ムコ多糖類が沈殿してくる。
前記粗ムコ多糖類溶液等のムコ多糖類を含む水溶液に、アルコールを添加することにより、ムコ多糖類が沈殿してくる。
該処理にあたっては、ムコ多糖類を含む水溶液にさらに有機カルボン酸塩や食塩を添加することも処理効率を高いものとできる点で好適である。有機カルボン酸塩や食塩を添加することにより、ムコ多糖類とタンパク質やその分解物との物理的な相互作用を解きほどくことが出来るため、ムコ多糖類が選択的に析出されると推測される。
有機カルボン酸塩の種類としては、特に制限はないが、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩等の1価または2価以上の有機カルボン酸を用いることが出来るが、特に酢酸塩が好ましい。塩の対イオン(カチオン種)としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等を用いることが出来るが、精製効率の点で特にナトリウムイオンが好ましい。特に好適な有機カルボン酸塩として、酢酸ナトリウムを挙げることが出来る。また、酢酸ナトリウムは酢酸と水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどと水溶液中で反応させて、用時調達してもよい。
食塩の種類としては、特に制限されず、入手可能な工業塩、並塩、岩塩、塩田塩、各種塩化ナトリウムを使用することができる。また、特に、水溶液中で水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムを塩酸あるいは塩化水素と反応させて用時調達してもよい。
アルコール沈澱処理を行う際の各成分の濃度は特に限定されるものではないが、高純度のムコ多糖類を得るためには、好ましくは、ムコ多糖類が0.1〜60質量%(より好ましくは0.2〜40質量%、特に好ましくは0.5〜30質量%)、有機カルボン酸塩が8〜60質量%(より好ましくは9〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%)、食塩が8〜60質量%(より好ましくは9〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%)の水溶液を調製すればよい。
上記水溶液の調製方法は特に限定されず、例えば、まずムコ多糖類、食塩および水を攪拌混合して均一にし、そこへ所定量の有機カルボン酸塩を固体状態で、又は水に溶かして添加して均一溶液とすればよい。なお溶液調製にあたっては、ムコ多糖類が変性することを防止するために、あまりに高い温度で行うことは避けた方が好ましく、通常は、0℃〜100℃、好ましくは10〜90℃、特に好ましくは15〜70℃である。
上記のようにして調製された水溶液にアルコールを添加することにより、ムコ多糖類が沈殿してくる。当該アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等を例示することが出来る。これら溶媒の中で精製するムコ多糖類に応じて適宜選択すればよいが、一般に精製効率の点から、メタノール、エタノールが好ましく、エタノールが特に好ましい。また、使用するアルコールは無水、またはあらかじめ水を含んでいても良い。
アルコールの添加量も特に限定されないが、通常は上記ムコ多糖類を含む水溶液に対して、0.5〜5質量倍、好ましくは1〜4質量倍添加すればよい。
アルコールを加えることによって析出してきたムコ多糖類の沈殿は、遠心分離ろ過、過圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレス等の通常の分離方法によって、液成分と分離し、単離することが出来る。なお該ムコ多糖類の沈殿を乾燥して得られる粉末は、通常、平均粒径が100μm〜数mmである。
(A−2)限外ろ過処理
前記粗ムコ多糖類溶液のようなムコ多糖類とタンパク質やその分解物を含む溶液を限外ろ過にかけることにより、タンパク質やその分解物を透過液として除去することができる。該限外ろ過に供する被処理液(以下、限外ろ過原液と呼ぶ)としては、ムコ多糖類を0.1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%含む溶液を用いることが好ましい。また、必要に応じて、処理中の腐敗を防止する目的で、防腐剤、酸、アルカリを限外ろ過原液に加えても良い。防腐剤としては、限外ろ過膜の分画分子量より低分子量であり、ムコ多糖類を分解・変性しない防腐剤を用いることが出来る。例えば、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類、ポリヘキサメチレン等のグアニジン類、塩化ベンザルコニウム等の逆性石鹸、アルキルポリアミノエチルグリシン等の表面活性剤、次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系殺菌剤、過酸化水素、過酢酸等の過酸化物等を用いることが出来る。これら防腐剤の使用量は、用いるムコ多糖類の種類、処理温度等によって適宜調整すればよい。
前記粗ムコ多糖類溶液のようなムコ多糖類とタンパク質やその分解物を含む溶液を限外ろ過にかけることにより、タンパク質やその分解物を透過液として除去することができる。該限外ろ過に供する被処理液(以下、限外ろ過原液と呼ぶ)としては、ムコ多糖類を0.1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%含む溶液を用いることが好ましい。また、必要に応じて、処理中の腐敗を防止する目的で、防腐剤、酸、アルカリを限外ろ過原液に加えても良い。防腐剤としては、限外ろ過膜の分画分子量より低分子量であり、ムコ多糖類を分解・変性しない防腐剤を用いることが出来る。例えば、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類、ポリヘキサメチレン等のグアニジン類、塩化ベンザルコニウム等の逆性石鹸、アルキルポリアミノエチルグリシン等の表面活性剤、次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系殺菌剤、過酸化水素、過酢酸等の過酸化物等を用いることが出来る。これら防腐剤の使用量は、用いるムコ多糖類の種類、処理温度等によって適宜調整すればよい。
酸としては、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸または、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸2水素カリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩を用いることが出来る。
さらに、限外ろ過原液に有機カルボン酸塩や食塩等を加えることにより、前記アルコール沈澱処理におけるのと同様、タンパク質等の除去効率を向上させることができる。
限外ろ過原液のpHは、特に制限はないが、腐敗防止の観点からpH8〜14又はpH1〜5であることが好ましい。また限外ろ過処理中のムコ多糖類の分解を防止し、かつタンパク質等の除去効果を高いものとする観点から、pH12〜14のものとすることが特に好ましい。このようなpHにするためには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を用いることが好適である。
限外ろ過に用いる限外ろ過膜は、ムコ多糖類の分子量に応じて適宜選択すればよい。ムコ多糖がコンドロイチン硫酸の場合には、分画分子量が6000以上の膜であれば有効であるが、特に鮭由来のコンドロイチン硫酸の場合には、分画分子量が3万〜10万の膜が好ましく、5万程度の膜を用いることが精製効率の点で特に好適である。
限外ろ過操作の処理条件は特に限定されるものではないが、通常、1MPa以下、好ましくは0.01〜0.5MPa程度の加圧下で行われる。限外ろ過時の温度は高いとムコ多糖水溶液の腐敗やムコ多糖の分解を促進してしまい、低いとムコ多糖水溶液の粘性が上昇し限外ろ過の透過液量が著しく低下することから0〜100℃が好ましく、10〜60℃程度がより好ましい。
限外ろ過を行う際の運転様式としては、通常の限外ろ過処理に用いられる運転様式を制限なく用いることが出来る。例示すると、回分式システム、連続式システム、カスケード方式などが挙げられる。回分式システムとしては、通常の回分式運転フローの他にフェッドバッチ式フロー、供給ポンプ付フェッドバッチ式フローも用いられる。
回分式システムでは、限外ろ過原液は原液タンクに一度導入され、一定時間内に濃縮処理される。本システムの場合には、限外ろ過により濃縮された原液に、必要に応じて溶媒を添加し、繰り返し濃縮処理を行うことにより、ムコ多糖類を精製することが出来る。添加する溶媒としては、水や、前記限外ろ過原液に配合したような、防腐剤、酸、アルカリ、有機カルボン酸塩あるいは食塩等を配合した水溶液等を用いることができる。
連続式システムを用いることにより、限外ろ過原液を連続的に処理し、連続して処理液を得ることが出来る。この場合にも、透過液として失われた分に相当する量の水や、各種水溶液を追加しつつ行うことができる。
いずれの方式による限外ろ過においても、添加された防腐剤、酸、アルカリ、有機カルボン酸塩、食塩等は透過液として除去されるため、タンパク質やその分解物が検出限界以下に除去された後、水を加えてさらに限外ろ過を続けることにより上記成分を含まないムコ多糖類の溶液を得ることができる。
(A−3)活性炭処理
前記したような方法で得られるムコ多糖類とタンパク質やその分解物とを含む溶液を被処理溶液として、活性炭処理を行うことにより、タンパク質やその分解物を吸着除去することができる。
前記したような方法で得られるムコ多糖類とタンパク質やその分解物とを含む溶液を被処理溶液として、活性炭処理を行うことにより、タンパク質やその分解物を吸着除去することができる。
該活性炭処理には活性炭は入手可能なものが何ら制限なく使用できる。例えば日本ノーリット社のPK、PKDA MESY/MRX、ELORIT、AZ0、DARCO、HYDRODARCO 3000/4000、DARCO 12X20LI、DARCO12X20DC、PETRODARCO、DARCO MRX、GAC、GAC PLUS、DARCO VAPURE、GCN、C−GRANULAR等の破砕活性炭類、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS等の粉末活性炭類、ROW、RO、ROX、RB、R、R.EXTRA、SORBONORIT、GF 40/50、CNR、ROZ、RBAA、RBHG、RZN、RGM等の成型活性炭・添着活性炭類、PICA社の粒状活性炭類、球状活性炭類、粉末活性炭類、日本エンバイロケミカル社のモルシーボン、WHA、粒状白鷺(X2M、GM2X、GH2X、GHXUG、GS1X、GS3X、GTX、GTSX、G2X、GS2X、GAAX、MAC−W、GOC、GOX、GOHX、APRC、TAC、MAC、XRC、NCC、SRCX)等の機能性活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3、等の粒状活性炭類、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11等の粉末活性炭類、ハニカムカーボ白鷺、モールドカーボン、カーボンペーパー、白鷺C−DC、カルボラフィンDC、粒状白鷺DC、アルデナイト、アルデナイトSP等の活性炭加工品類二村化学工業社のSG、SGP等の顆粒活性炭類、TA、TS、TG、TM等の造粒活性炭類、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、CG48B、CG48BR、CW130B、CW130A、CW130BR、CW130AR、CW480SZ、CW6100SZ、GL130A、GL240A、GM130A、GM240A、GMC等の破砕活性炭類があげられる。使用する活性炭はムコ多糖原料組成物の種類によっても異なるため、適宜選択すればよい。また、二種類以上組み合わせて使用してもよい。
これらの活性炭の中で、より高純度のムコ多糖類を得やすいことから、特に粉末活性炭類が好ましく、市販品としては精製白鷺、精製白鷺2、SX ULTRA等を挙げることが出来る。
活性炭の使用量はあまり少ないと効果が激減し、多すぎるとムコ多糖類が吸着され収率が低下すること、および、経済性の観点から、被処理物となる溶液中に含まれるムコ多糖類の純分を100質量%として、0.001〜500重量%、好ましくは0.01〜400重量%、さらに好ましくは0.1〜100重量%の中から適宜選択すればよい。
活性炭処理に際しては、溶媒として水を用いればよいが、必要に応じて水と水溶性有機溶媒との混合溶液として処理してもよい。該水溶性有機溶媒を具体的に示すと、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
水溶性有機溶媒を用いる場合、該水溶性有機溶媒と水との混合比は、あまり水溶性有機溶媒が多いとムコ多糖類が析出するため、通常、水溶性有機溶媒を50重量%以下で使用する。
活性炭処理を行う場合、被処理溶液の濃度は特に制限はないが、通常は、ムコ多糖類とタンパク質やその分解物の合計濃度が、0.1〜30質量%の範囲で行うことが好ましい。また活性炭処理を行う場合の被処理溶液のpHは、3〜11、特に4〜10に調整して、活性炭と接触させることが好ましい。
活性炭と被処理溶液との接触は通常バッチ式で行われ、添加順序は特に制限されない。活性炭と被処理溶液を含有する水溶液と接触させる温度は、あまり低いと水溶液が凝固し、高いとムコ多糖類が変性するため、通常−20〜100℃、好ましくは−10〜90℃、さらに好ましくは−5〜80℃の範囲の中から適宜選択する。活性炭と被処理溶液との接触時間はあまり短すぎると効果が発現せず、あまり長いとムコ多糖類の変性を伴うため、通常、24時間以内で処理する。
活性炭処理後の被処理溶液からの活性炭の除去は、通常の分離方法が制限なく使用される。例えば、遠心分離ろ過、過圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレス等が挙げられる。一般的にはろ過助剤としてケイソウ土等のろ過助剤を使用し、加圧ろ過、減圧濾過、フィルタープレスでろ過する。該ろ過助剤は水溶液中に添加してもよく、ろ過器に添加してもよく、両方組み合わせてもよい。さらに、ろ過後の水溶液を0.1〜1.0μmの精密ろ過(メンブランフィルター、ポールフィルター)をすることがより好ましい。
(A−4)イオン交換樹脂処理
前記したような方法で得られるムコ多糖類とタンパク質やその分解物とを含む溶液を被処理溶液として、イオン交換樹脂で処理を行うことにより、タンパク質やその分解物を吸着除去することができる。
前記したような方法で得られるムコ多糖類とタンパク質やその分解物とを含む溶液を被処理溶液として、イオン交換樹脂で処理を行うことにより、タンパク質やその分解物を吸着除去することができる。
カチオン交換樹脂での処理により、タンパク質及び/又はその分解物の除去、塩、必要であるならば重金属の除去を行うことが出来る。金属イオンおよびタンパク質及び/又はその分解物は、プロトン型の交換体樹脂に結合し、遊離のムコ多糖類はろ液又は溶離液中に存在する。処理温度は、一般に0〜50℃で行われるが、精製効率、樹脂再生、腐敗防止等の観点から、10〜25℃が好ましい。処理方式としては、イオン交換樹脂中での攪拌によるバッチ方式、あるいは連続式又は不連続式カラム法で行うことが出来る。カチオン交換樹脂としては、強酸性樹脂が好ましく、例えばダウエックスX50,アンバーライトIR120、PK216等が挙げられる。
カラム法は、ムコ多糖類とタンパク質やその分解物の合計濃度が、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%の水溶液を用いて行えばよい。イオン交換樹脂の使用量は、タンパク質やその分解物の含有量にもよるが、一般的にはムコ多糖類とタンパク質やその分解物の合計1質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部である。バッチ法も同様の条件下で行うことが出来る。
(A−5)ろ過処理
上記(A−1)〜(A−4)の処理に際しては、該処理を行う前の被処理溶液に不溶分が存在する場合がある。このような場合、処理効率を上げるために、これら処理に先立って、ろ過処理を行うことが好ましい。また、(A−2)限外ろ過処理や、(A−4)イオン交換樹脂処理を行って得られる被処理溶液が濁っている場合には、ろ過処理を行って該濁り成分を除去することが好ましい。
上記(A−1)〜(A−4)の処理に際しては、該処理を行う前の被処理溶液に不溶分が存在する場合がある。このような場合、処理効率を上げるために、これら処理に先立って、ろ過処理を行うことが好ましい。また、(A−2)限外ろ過処理や、(A−4)イオン交換樹脂処理を行って得られる被処理溶液が濁っている場合には、ろ過処理を行って該濁り成分を除去することが好ましい。
該ろ過処理として通常の処理方法が何ら制限なく使用され、具体的には、上記(A−3)活性炭処理における後処理であるろ過処理と同様である。
上記したような各種処理によりタンパク質やその分解物が大部分除去されたムコ多糖類を得ることができ、通常は、タンパク質やその分解物の含有率が5質量%以下のものとすることができる。
上記した各種処理によって、(A−1)アルコール沈澱処理では比較的粒径の大きなムコ多糖類の固形物が、他の処理では、ムコ多糖類の溶液(通常、水溶液)が得られる。なお、前記したように、タンパク質やその分解物を除去する場合には、複数種の異なる種類の処理を行ってもよく、この場合には、得られるムコ多糖類が固形物であるか溶液であるかは、最後の処理がどの処理であるかに依存する。
溶液で得られた場合に、該溶液が水溶液である場合には、そのまま本発明の製造方法を適用してもよいが、アルコールなどが混ざった混合溶液の場合には、一旦溶媒を除去した後に、水溶液とすることが好ましい。また、保管時の腐敗を防止したり、輸送等の際の取り扱い性を向上させたりするために、溶媒を除去して固形物として保管や輸送することも好ましい。
上記タンパク質等を除いたムコ多糖類の溶液から溶媒を除去して固形物を得る方法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等、公知の乾燥処理が特に制限なく適用できる。なかでも、操作が簡単で、高温をかける必要もないためムコ多糖類の変性がおき難い点で、減圧乾燥又は凍結乾燥が好ましく、凍結乾燥が特に好ましい。このような方法では、通常、一塊のバルク体や、平均粒径が100μm〜10mm程度の大き目の粉末状の乾燥体が回収される。
また、ムコ多糖類の溶液から溶媒を除去して固形物を得る方法としては、前記アルコール沈殿も好ましい方法である。即ち、アルコール沈殿以外の処理方法によりタンパク質等が充分に除去されたムコ多糖類の溶液を用いて、前記アルコール沈殿と同様の条件にて処理を行うことにより、ムコ多糖類の沈殿を得ることができる。この方法によって得られたムコ多糖類は用いたアルコールや水といった溶媒を含んだ湿った状態であるため、保管等に際しては、該溶媒を除去して乾燥させておくことが好ましい。乾燥の方法は粉末状の固形物の乾燥方法として公知の如何なる方法を適用してもよく、例えば、減圧乾燥、温風乾燥、調湿乾燥、風乾、棚段乾燥が挙げられ、棚式で乾燥してもよく、コニカルドライヤーのように回転させて乾燥させてもよく、得られるムコ多糖類の種類によって適宜選択すればよい。該乾燥操作の温度は、あまり低いと乾燥時間が長期化し、高すぎるとムコ多糖類が変性するため、通常−10〜120℃、好ましくは0〜110℃、さらに好ましくは10〜100℃の範囲から適宜選択する。また前記したような条件でアルコール沈殿を行うと、比較的粒径の大きな粉末が得られるため、保管の際の取り扱いが容易である。
本発明の製造方法は、上記したような粗ムコ多糖類溶液からタンパク質やその分解物を除去して得られるムコ多糖類の水溶液、あるいは該水溶液を一旦乾燥し得た固形物や、前記アルコール沈殿処理により粗ムコ多糖類溶液から直接得られた固形物を再度溶解した水溶液等を特定の条件で処理することにより、平均粒径が0.5〜10μmのムコ多糖類の粉末を得る方法である。また、本発明の製造方法においては、副次的にタンパク質やその分解物も除去される。したがって、原料となるムコ多糖類に少量(5質量%以下程度)のタンパク質やその分解物が含まれていても、本発明の製造方法を適用することにより、実質的にそれらを含まない高純度のムコ多糖類とすることができる。むろん、タンパク質やその分解物が実質的に含まれていないムコ多糖類に本発明の製造方法を適用してもなんら問題はない。
本発明の製造方法においては、第一工程として、上記のようなムコ多糖類と有機カルボン酸塩とを含む水溶液を調製する。ここで調製する溶液は、有機カルボン酸塩の濃度が、0.3〜2質量%でなくてはならない。これより濃度が高いと、後述する第二工程で、ムコ多糖類が急激に析出し、得られるムコ多糖類の粉末の平均粒径が大きくなりすぎたり、再現性が悪化したりする。一方、有機カルボン酸塩の濃度が低い場合には、ムコ多糖類が析出してこない。好ましくは、有機カルボン酸塩の濃度が、0.5〜1質量%の水溶液を調製する。
本発明の製造方法においては、ついで、第2工程として、上記ムコ多糖類と有機カルボン酸塩とを含む水溶液と、水溶液有機溶媒とを混合して、ムコ多糖類を析出させる。この工程においては、双方の混合を、せん断速度が1m/秒以上での攪拌下に行う必要がある。これよりもせん断速度が小さいと、添加した水溶性有機溶媒が十分に混合されないため、水溶性有機溶媒の濃度が高い部分のみから析出が起こるため、粒径の制御をすることができない。せん断速度の上限は特に限定されるものではないが、せん断速度が100m/秒より大きくても、攪拌動力に対する負荷が大きくなり、経済性等の観点から効果が低い。せん断速度が1〜50m/秒の範囲での攪拌下に行うことが好ましい。以下、これら第一工程、第二工程について詳しく説明する。
(第一工程)
第一工程においては、ムコ多糖類と有機カルボン酸を含む水溶液を調製する。該水溶液としては、前述したようなムコ多糖類含有組織から調製した粗ムコ多糖類溶液、該粗ムコ多糖類からタンパク質やその分解物を除去するために限外ろ過処理、活性炭処理、イオン交換処理等を行って得られた溶液、該溶液から溶媒を除去して固形物を得、これを再度、溶解して得られた水溶液、あるいは粗ムコ多糖類溶液からタンパク質等を除去するためにアルコール沈澱処理して得られた固形物を再度溶解して得られた水溶液等に、所定の濃度になるように有機カルボン酸塩を配合した水溶液を用いることができる。むろん、ムコ多糖類が固形物として得られている場合などには、有機カルボン酸塩の水溶液に、ムコ多糖類を添加、溶解させる方法でもよく、該水溶液を調製する方法は特に限定されるものではない。また、上記以外の方法で得られたムコ多糖類に、本発明の製造方法を適用してもなんら問題はない。
第一工程においては、ムコ多糖類と有機カルボン酸を含む水溶液を調製する。該水溶液としては、前述したようなムコ多糖類含有組織から調製した粗ムコ多糖類溶液、該粗ムコ多糖類からタンパク質やその分解物を除去するために限外ろ過処理、活性炭処理、イオン交換処理等を行って得られた溶液、該溶液から溶媒を除去して固形物を得、これを再度、溶解して得られた水溶液、あるいは粗ムコ多糖類溶液からタンパク質等を除去するためにアルコール沈澱処理して得られた固形物を再度溶解して得られた水溶液等に、所定の濃度になるように有機カルボン酸塩を配合した水溶液を用いることができる。むろん、ムコ多糖類が固形物として得られている場合などには、有機カルボン酸塩の水溶液に、ムコ多糖類を添加、溶解させる方法でもよく、該水溶液を調製する方法は特に限定されるものではない。また、上記以外の方法で得られたムコ多糖類に、本発明の製造方法を適用してもなんら問題はない。
上記ムコ多糖類と有機カルボン酸塩を含む水溶液における、ムコ多糖類の濃度は特に限定されるものではないが、第二工程での析出の割合(回収率)を良好なものとし、また、より再現性よく、平均粒径が0.5〜10μmのムコ多糖類の粉末を得やすい点で、水100質量部に対して、ムコ多糖類が0.1〜20質量部である水溶液として調製することが好ましく、同0.5〜10質量部である水溶液として調製することがより好ましい。
有機カルボン酸塩としては、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸、マロン酸等の1価または2価以上の有機カルボン酸塩を制限なく用いることが出来るが、第二工程でのムコ多糖類の析出性、及び最終製品に混入した場合の毒性の観点から、特に酢酸塩を用いるのが好ましい。塩の対イオン(カチオン種)としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等を用いることが出来るが、精製効率の点で特にナトリウムイオンが好ましい。特に好適な有機カルボン酸塩として、酢酸ナトリウムを挙げることが出来る。
前述したように、有機カルボン酸塩は、その濃度が0.3〜2質量%とする必要があり、好ましくは0.5〜1質量%の範囲となるように配合する。なお、該有機カルボン酸塩の濃度は、調製する水溶液に配合される全成分の合計を100質量%としたときの値である。
該有機カルボン酸塩は塩の形で水溶液に添加してもよく、有機カルボン酸と塩基を添加して水溶液内で調製してもよい。例えば酢酸ナトリウムは酢酸と水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等とを水溶液に添加することにより調製できる。
また、前記粗ムコ多糖類溶液からタンパク質等を除去する処理などにおいて、有機カルボン酸塩を用いた場合には、該処理後に得られるムコ多糖類水溶液(又は固形物)に、それら有機カルボン酸塩が混入している場合がある。このような場合には、当該混入による有機カルボン酸塩の含めた濃度を上記範囲にする必要がある。同様に、pHを調製するために、有機カルボン酸やアルカリを用いた場合にも、本発明の製造方法における第一工程で調製する水溶液における有機カルボン酸塩の濃度に影響を与える場合があり、水溶液内で有機カルボン酸塩を調製する場合には、その濃度を考慮して水溶液を調製する必要がある。
またこの第一工程で調製する水溶液には、必要に応じて、酸、アルカリ、有機カルボン酸塩以外の中性の塩類、防腐剤を加えることにより、pH調整、精製効率の向上、菌・カビ等の発生(腐敗)防止を図ることも出来る。酸又はアルカリ条件により腐敗を防止する場合、酸性にする場合にはpH1〜5の範囲、アルカリ性にする場合にはpH8〜14の範囲とすることが好ましい。酸、アルカリ、防腐剤としては、前記(A−1)アルコール沈殿処理で述べたものと同様の化合物を使用できる。また中性の塩類としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩、塩化カリウム、塩化バリウム等の塩化物塩等を挙げることが出来る。これら他の塩類の添加により、容易に水溶液のイオン強度を調整することが出来る。このような他の塩類を添加する場合の添加量は特に制限されないが、好ましくは5質量%以下である。
またムコ多糖類が析出しない程度であれば水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。ムコ多糖類の濃度や種類、水溶性有機溶媒の種類にもよるが、通常、水溶液に含まれる水100質量部に対して、20質量部以下であればよく、好ましくは10質量部以下である。
上記のようなムコ多糖類と有機カルボン酸塩を含む水溶液を調製する方法は特に限定されるものではない。例えば、ムコ多糖類の固形物の固形物を用いる場合には、該ムコ多糖類の固形物と水、有機カルボン酸とを所定の比率で容器内へ導入し、均一になるまで攪拌すればよい。該混合に際しては、ムコ多糖類が変性しない温度範囲で行うことが好ましく、一般的には、0℃〜100℃程度で行うことができ、好ましくは15〜90℃で行うとよい。
上記のようにして得られたムコ多糖類、有機カルボン酸塩及び必要に応じて配合される他の成分(pH調整剤、防腐剤等)を溶解した水溶液には、場合によっては、完全に溶解しない不溶分、濁り分が存在する場合がある。このような場合には、より高純度のムコ多糖類粉末を得るという観点から、ろ過や遠心分離により、該不溶分、濁り分を除去することが好ましい。
このようにして調製したムコ多糖類と有機カルボン酸塩を含む水溶液を、以下に述べる第二工程に供する。
(第二工程)
第二工程では、上記第一工程で調製した水溶液と、水溶性有機溶媒とを混合して、ムコ多糖類を固形物として析出させる。本発明においては、析出するムコ多糖類の平均粒径を0.5〜10μmの範囲にあるものとするために、この混合の際には、1m/秒以上のせん断速度での攪拌下に行わなければならない。
第二工程では、上記第一工程で調製した水溶液と、水溶性有機溶媒とを混合して、ムコ多糖類を固形物として析出させる。本発明においては、析出するムコ多糖類の平均粒径を0.5〜10μmの範囲にあるものとするために、この混合の際には、1m/秒以上のせん断速度での攪拌下に行わなければならない。
第二工程で用いる水溶性有機溶媒は特に限定されるものではないが、水に対する溶解度の高い方がより効率的であり、好ましくは25℃で水100g当たり50g以上が混和する水溶性有機溶媒であり、より好ましくは任意の量比で混和可能な水溶性有機溶媒である。このような水溶性有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのなかでも、ムコ多糖類を粉末とする場合の乾燥のし易さから、低級アルコール類が好ましく、メタノール及びエタノールが特に好ましい。最も好ましい水溶性有機溶媒はエタノールである。
該水溶性有機溶媒の使用量は特に限定されるものではなく、ムコ多糖類の析出状況により適宜設定すればよい。ムコ多糖類を効率よく析出させるためには、該水溶性有機溶媒を全量加えた時点での、溶液中の水の量と水溶性有機溶媒の量との合計を100質量%としたとき、水:水溶性有機溶媒が20〜80質量%:80〜20質量%であることが好ましく、25〜75質量%:75〜25質量%であることがより好ましく、30〜70質量%:70〜30質量%であることが特に好ましい。
なお、前記水溶性有機溶媒は、必ずしも純粋な水溶性有機溶媒である必要はなく、少量の水を含んでいてもよい。多くの水溶性有機溶媒はその製造、保管時に吸水する傾向があり、また水と共沸混合物を作るものも多いため、少量の水を含んだ水溶性有機溶媒を用いる方が工業的には有利である。例えば、水溶性有機溶媒としてエタノールを採用すると、工業的な純度は95〜99質量%程度であり、これを乾燥剤等で乾燥することなく、そのまま用いることができる。さらに、本発明の製造方法でのムコ多糖類粉末の製造に用いた水溶性有機溶媒を回収して用いる場合にも、例えば、エタノールであれば、85〜99質量%程度のものを蒸留等により回収することができ、これを再度、第二工程における水溶性有機溶媒としてそのまま用いることができる。水溶性有機溶媒として水を含んだものを用いる場合、その水の含有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
このように水溶性有機溶媒として水を含んだものを用いる場合には、上記水溶性有機溶媒の使用量は、このような水溶性有機溶媒中の水も、水の量として計算される。同様に、第一工程で調製した水溶液中に水溶性有機溶媒が少量混ざっている場合には、前記水溶性有機溶媒の量は、該水溶液中に最初から存在する量と、この第二工程で加える量との合計となる。
本発明の製造方法における第二工程では、上記水溶性有機溶媒と、前記第一工程で調整したムコ多糖類を含む水溶液とを、1m/秒以上のせん断速度での攪拌下に混合する。混合の方法は特に限定されず、ムコ多糖類を含む水溶液を攪拌槽中で上記条件下で攪拌しつつ、そこへ水溶性有機溶媒を加えていってもよいし、逆に、水溶性有機溶媒へムコ多糖類を含む水溶液を加えていってもよい。さらに、上記条件となるように攪拌装置を動かしつつ、ムコ多糖類を含む水溶液と水溶性有機溶媒との双方を導入する方法でもよい。また、該混合はバッチ式処理でも、フロー式処理でもよい。
第一工程で調製した水溶液にタンパク質やその分解物が混ざっている場合、該タンパク質やその分解物の除去も効率的にできる点で、第一工程で調製したムコ多糖類を含む水溶液を攪拌槽中で攪拌しつつ、そこへ水溶性有機溶媒を加える方法が特に好ましい。この方法で混合を行う場合、水溶性有機溶媒の添加速度は、0.00001〜500L/分であることが好ましく、0.0001〜400L/分であることが特に好ましい。また温度としては、−10℃〜50℃、好ましくは0〜5℃に調整するとよい。
第二工程においては、上記水溶性有機溶媒の全量を加え終わった後もムコ多糖類が析出してくる傾向があるため、さらにしばらく攪拌を続けることが好ましい。該攪拌時間が長いと、腐敗や細菌の繁殖が進行する場合があるため、24時間以内とすることが好ましく、通常は30分〜12時間程度である。
このようにして析出させたムコ多糖類は、遠心分離ろ過、過圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレス等の通常の分離方法によって、液成分と分離することが出来る。
さらに、ムコ多糖類粉末を得るためには、通常、上記のようにして液成分から分離したムコ多糖類を乾燥させる必要がある。該乾燥処理としては、乾燥粉末を得るために行われる通常の処理が何ら制限なく使用できる。例えば、減圧乾燥、温風乾燥、調湿乾燥、風乾、棚段乾燥が挙げられ、棚式で乾燥してもよく、コニカルドライヤーのように回転させて乾燥させても良い。得られるムコ多糖類の種類によって適宜選択すればよい。乾燥温度は、あまり低いと乾燥時間が長期化し、高すぎるとムコ多糖類が変性するため、通常−10〜120℃、好ましくは0〜110℃、さらに好ましくは10〜100℃の範囲から適宜選択すればよい。
このようにして得られたムコ多糖類粉末は、平均粒径が0.5〜10μmの範囲にあり、また純度も概して高く、様々な用途に好適に使用することができる。なお、本発明における上記平均粒径は、粒子径の測定走査型電子顕微鏡(日本電子社製、T−330A)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数および粒子径から計算される粉体粒子の平均体積径をいう。
また本発明の製造方法において、原料や中間生成物、最終取得物等における各種成分の純度等の分析は以下の方法によって行うことが出来る。
(1)ムコ多糖類
対象となるムコ多糖類の構造に応じた方法により分析する。例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸等のグルコサミノグルカンの場合には、構成ユニットのひとつであるウロン酸分析により分析できる。ウロン酸分析法としては、一般にカルバゾール法を用いることが出来る。またコンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸等の硫酸基を有するムコ多糖の場合には、硫酸バリウム比濁法、ロジゾン酸法等の硫酸基定量法を用いることが出来る。
対象となるムコ多糖類の構造に応じた方法により分析する。例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸等のグルコサミノグルカンの場合には、構成ユニットのひとつであるウロン酸分析により分析できる。ウロン酸分析法としては、一般にカルバゾール法を用いることが出来る。またコンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸等の硫酸基を有するムコ多糖の場合には、硫酸バリウム比濁法、ロジゾン酸法等の硫酸基定量法を用いることが出来る。
混在する不純物の特性ピークが明確であり、目的のムコ多糖のシグナルと分離可能な場合には、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)においても純度分析をすることが可能である。またゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、純度分析が可能である。
(2)タンパク質やその分解物
タンパク質を水中で分解し、生成したアミノ酸をニンヒドリン反応により呈色することを利用するニンヒドリン法を用いることが出来る。
タンパク質を水中で分解し、生成したアミノ酸をニンヒドリン反応により呈色することを利用するニンヒドリン法を用いることが出来る。
また、硫酸と強熱して窒素をすべてアンモニウムイオンとして定量する方法であるケルダール法、2つ以上のペプチド結合が近接して存在する場合に、強アルカリ性側で2価の銅と錯塩を形成する反応を利用するビュレット法、フェノール試薬とタンパク質中の芳香族アミノ酸に由来する呈色反応であるローリー法、芳香族アミノ酸含量を指標とするUV法、過剰の酸(又は塩基性)色素を添加して、タンパク質との間に不溶性の塩を形成させ、沈殿させて、未反応の色素量を分光光度計で測定し、算出した結合色素量からタンパク量を求める色素結合法等、一般にタンパク質を分析する方法を用いることが出来る。
これらのなかから、製造するムコ多糖類に応じた分析方法を採用すればよいが、一般に妨害物質の影響を受けにくいこと、検出感度が高いことから好適にはニンヒドリン法を用いることが出来る。
またタンパク質やその分解物の特性ピークが明確であり、目的のムコ多糖のシグナルと分離可能な場合には、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)においても混在量を分析することが可能である。
(3)有機カルボン酸塩
イオン交換クロマトグラフィー法にて分析することが出来る。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)によっても有機カルボン酸塩由来の特性シグナルに基づいて、定量することも可能である。
イオン交換クロマトグラフィー法にて分析することが出来る。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)によっても有機カルボン酸塩由来の特性シグナルに基づいて、定量することも可能である。
(4)硫黄含量
日本薬局方一般試験法に基づき、酸素フラスコ燃焼法により分析することが出来る。
日本薬局方一般試験法に基づき、酸素フラスコ燃焼法により分析することが出来る。
(5)微生物分析法
公知方法によって可能であるが、例えば日本薬局方一般試験法に基づく、微生物限度試験法生菌数試験(メンブランフィルター法)を用いることができる。
公知方法によって可能であるが、例えば日本薬局方一般試験法に基づく、微生物限度試験法生菌数試験(メンブランフィルター法)を用いることができる。
(6)水溶性有機溶媒含量
ガスクロマトグラフィー法(GC)で測定することが可能である。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)によっても水溶性有機溶媒由来の特性シグナルに基づいて、定量することも可能である。
ガスクロマトグラフィー法(GC)で測定することが可能である。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)によっても水溶性有機溶媒由来の特性シグナルに基づいて、定量することも可能である。
(7)ムコ多糖の平均粒径
粒子径の測定走査型電子顕微鏡(日本電子社製、T−330A)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数および粒子径を求め、下記式により粉体粒子の平均体積径を求め平均粒径とした。
粒子径の測定走査型電子顕微鏡(日本電子社製、T−330A)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数および粒子径を求め、下記式により粉体粒子の平均体積径を求め平均粒径とした。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1
ムコ多糖類の精製
(粗ムコ多糖類の製造)
鮭頭部より鼻軟骨を採取し、粉砕した。次いで固形分に対して、2倍量のイオン交換水を加えpHを中性付近に調製し、0.2質量%のタンパク質分解酵素(アルカリ性プロテアーゼ)を加えて、50℃前後で1〜2時間処理した後、90℃に加熱し酵素を失活させた。冷却後、遠心分離して、活性炭を0.2質量%添加し、攪拌した。次いでろ過助剤(ケイソウ土、ラヂオライト300)を入れてろ過した後、ろ液をスプレードライヤを用いて乾燥させ、微黄色粉末を得た。得られたムコ多糖類を含む組成物(以下、粗ムコ多糖類)を分析したところ、コンドロイチン硫酸のNMR純度が約43質量%、タンパク質やその分解物は、ケルダール分析法にて約55質量%、塩化ナトリウム約2質量%であることが判った。
ムコ多糖類の精製
(粗ムコ多糖類の製造)
鮭頭部より鼻軟骨を採取し、粉砕した。次いで固形分に対して、2倍量のイオン交換水を加えpHを中性付近に調製し、0.2質量%のタンパク質分解酵素(アルカリ性プロテアーゼ)を加えて、50℃前後で1〜2時間処理した後、90℃に加熱し酵素を失活させた。冷却後、遠心分離して、活性炭を0.2質量%添加し、攪拌した。次いでろ過助剤(ケイソウ土、ラヂオライト300)を入れてろ過した後、ろ液をスプレードライヤを用いて乾燥させ、微黄色粉末を得た。得られたムコ多糖類を含む組成物(以下、粗ムコ多糖類)を分析したところ、コンドロイチン硫酸のNMR純度が約43質量%、タンパク質やその分解物は、ケルダール分析法にて約55質量%、塩化ナトリウム約2質量%であることが判った。
(アルコール沈殿によるタンパク質の除去)
次に、1000ml四つ口フラスコに、スリーワンモーター(35W)を連結した半月板攪拌翼(半径5cm)、温度計、コンデンサーを装着した。これに、イオン交換水200ml、製造例1で得た粗ムコ多糖類12.5gを加え、40℃で攪拌(せん断速度2m/秒)しながら溶解させた。さらにこれに、酢酸ナトリウム32.8gを加え、50℃で溶解させた(この時点での酢酸ナトリウムの濃度は11.6質量%)。その後、4質量%水酸化ナトリウム水溶液22.0g(水酸化ナトリウム0.08g、イオン交換水21.92g)を加え、50℃で2時間攪拌した。次に、22℃まで冷却し、酢酸1.32gを加え、さらに酢酸ナトリウム40.0gを加え、22℃で溶解させた(この時点での酢酸ナトリウムの濃度は21.0質量%、溶液のpHは9.8)。
次に、1000ml四つ口フラスコに、スリーワンモーター(35W)を連結した半月板攪拌翼(半径5cm)、温度計、コンデンサーを装着した。これに、イオン交換水200ml、製造例1で得た粗ムコ多糖類12.5gを加え、40℃で攪拌(せん断速度2m/秒)しながら溶解させた。さらにこれに、酢酸ナトリウム32.8gを加え、50℃で溶解させた(この時点での酢酸ナトリウムの濃度は11.6質量%)。その後、4質量%水酸化ナトリウム水溶液22.0g(水酸化ナトリウム0.08g、イオン交換水21.92g)を加え、50℃で2時間攪拌した。次に、22℃まで冷却し、酢酸1.32gを加え、さらに酢酸ナトリウム40.0gを加え、22℃で溶解させた(この時点での酢酸ナトリウムの濃度は21.0質量%、溶液のpHは9.8)。
溶解後、95質量%エタノール513.5g(エタノール487.8g、イオン交換水25.7g)を2時間かけ、30℃以下で激しく攪拌(せん断速度2m/秒)しながら滴下した。滴下後、1時間さらに攪拌して、減圧ろ過により、沈殿を分離した。得られた湿体は10.5gであり、50℃で棚段式減圧乾燥を行ったところ、乾燥体6.5gを得た。GPC、IEC、アミノ酸自動分析(ニンヒドリン法)の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム5.4g、タンパク質/タンパク質分解物0.1g、酢酸ナトリウム1.0gであった。SEM観察の結果、得られたコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均粒径は380μmであった。
なお、アルコール沈殿によるタンパク質の除去は同じ条件で2回行ったが、2回とも得られた乾燥体の分析結果は同じであった。
実施例1
(第一工程)
1000mlの四つ口フラスコに、スリーワンモーター(35W)を連結した半月板攪拌翼(半径5cm)、温度計、コンデンサーを装着した。これに、イオン交換水135ml、製造例1で得られた乾燥体6.5g(コンドロイチン硫酸ナトリウム5.4g、タンパク質/タンパク質分解物0.1g、酢酸ナトリウム1.0g)を加え、20℃で攪拌(せん断速度2m/秒)しながら溶解させた(酢酸ナトリウム濃度0.7重量%)。
(第一工程)
1000mlの四つ口フラスコに、スリーワンモーター(35W)を連結した半月板攪拌翼(半径5cm)、温度計、コンデンサーを装着した。これに、イオン交換水135ml、製造例1で得られた乾燥体6.5g(コンドロイチン硫酸ナトリウム5.4g、タンパク質/タンパク質分解物0.1g、酢酸ナトリウム1.0g)を加え、20℃で攪拌(せん断速度2m/秒)しながら溶解させた(酢酸ナトリウム濃度0.7重量%)。
(第二工程)
上記第一工程で得られた水溶液を4℃まで冷却し、95質量%エタノール256g(エタノール243g、イオン交換水13g)を2時間かけ、5℃以下で激しく攪拌(せん断速度2m/秒)しながら滴下した。滴下後、1時間さらに攪拌して、減圧ろ過により、沈殿を分離した。得られた湿体は9.4gであり、50℃で棚段式減圧乾燥を行ったところ、乾燥体5.4gを得た。得られたコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均粒径は、1μmであった。
上記第一工程で得られた水溶液を4℃まで冷却し、95質量%エタノール256g(エタノール243g、イオン交換水13g)を2時間かけ、5℃以下で激しく攪拌(せん断速度2m/秒)しながら滴下した。滴下後、1時間さらに攪拌して、減圧ろ過により、沈殿を分離した。得られた湿体は9.4gであり、50℃で棚段式減圧乾燥を行ったところ、乾燥体5.4gを得た。得られたコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均粒径は、1μmであった。
比較例1
第一工程における水溶液の調製の際に、酢酸ナトリウム25gをさらに加えた(水溶液中の酢酸ナトリウム濃度は17質量%となる)以外は、実施例1と同様にしてコンドロイチン硫酸ナトリウム粉末を得た。得られた湿体は10.4g、乾燥体は5.4gであり、乾燥体の粉末の平均粒径は150μmであった。
第一工程における水溶液の調製の際に、酢酸ナトリウム25gをさらに加えた(水溶液中の酢酸ナトリウム濃度は17質量%となる)以外は、実施例1と同様にしてコンドロイチン硫酸ナトリウム粉末を得た。得られた湿体は10.4g、乾燥体は5.4gであり、乾燥体の粉末の平均粒径は150μmであった。
Claims (2)
- (1)ムコ多糖類と、有機カルボン酸塩とを含み、かつ該有機カルボン酸塩の濃度が0.3〜2質量%である水溶液を調製する工程、ついで(2)該水溶液と水溶性有機溶媒とを、せん断速度が1m/秒以上での攪拌下に混合してムコ多糖類を析出させる工程、を含むことを特徴とする平均粒径が0.5〜10μmの範囲にあるムコ多糖類粉末の製造方法。
- さらに(3)析出させたムコ多糖類を乾燥させる工程、を含む請求項1記載のムコ多糖類粉末の製造方法。
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