以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の骨子は、同時に送信する変調信号の数を変化させることのできる無線送信装置において、同時に変調信号を送信するアンテナ数(つまり変調信号数)に応じて、各アンテナから送信する変調信号の送信電力を変更することである。つまり、図1の基本構成図に示すように、無線送信装置10は、複数のアンテナT1〜Tnと、複数のアンテナT1〜Tnを用いて送信する変調信号(変調信号1〜変調信号n)の数を設定する変調信号数設定手段11と、送信変調信号数に応じて、変調信号(変調信号1〜変調信号n)の送信電力を変更する送信電力変更手段12とを有する。
(実施の形態1)
本実施の形態の特徴は、同時に変調信号を送信するアンテナ数(つまり変調信号数)に応じて、変調信号に含まれるパイロットシンボルの送信電力を変更することである。これにより、受信装置におけるパイロットシンボルの量子化誤差を低減することができる。
具体的には、同時送信する変調信号の数を変えると、受信側において、各変調信号に含まれるデータシンボルの合成電力(つまりダイナミックレンジ)が変化することになるので、この合成データシンボルのダイナミックレンジに合うようにパイロットシンボルの送信電力を変更する。実際には、送信変調信号数に応じて、データシンボルの送信電力とパイロットシンボルの送信電力の比が変化するように、パイロットシンボルを形成する際の信号点配置を変更する。
(1)原理
先ず、本実施の形態の原理について説明する。
図2に示すように、2つのアンテナT1、T2からそれぞれ変調信号A、変調信号Bを同時に送信し、2つのアンテナR1、R2によって変調信号A、Bが合成された信号を受信し、それらの信号を分離し復調する場合について説明する。
この場合、受信側では4つのチャネル変動h11(t)、h12(t)、h21(t)、h22(t)[ここでtは時間を示す]を推定して各変調信号を復調する必要がある。そのため変調信号A、B中に、信号検出のためのシンボル、周波数オフセット推定、時間同期のための制御シンボル、送信方法情報シンボル、電波伝搬環境推定シンボル等のパイロットシンボルを設ける必要がある。
因みに、信号検出のためのシンボル、制御シンボル、電波伝搬環境シンボルなど、復調するのに必要とするシンボルを総称して、パイロットシンボル、ユニークワード、プリアンブルなどと呼ぶことができるが、実施の形態では、これらを全てパイロットシンボルと呼ぶ。なおチャネル変動h11(t)、h12(t)、h21(t)、h22(t)の推定は、電波伝搬環境シンボルを用いて行われる。
図3に、変調信号A、変調信号Bのフレーム構成例を示す。図3では、一例として変調信号A、BをOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号としたときの時間−周波数軸におけるフレーム構成を示している。図3の中で、101は信号検出のためのシンボル、102は周波数オフセット推定、時間同期のための制御シンボル、103は送信方法情報シンボル、104は電波伝搬環境推定シンボル、105はデータシンボルである。
図4に、図3の各シンボルの同相I−直交Q平面における信号点配置を示す。図中、201は信号検出用シンボル101の信号点を示しており、(I,Q)=(2.0,0)または(−2.0,0)とする。202は、制御シンボル102、電波伝搬環境推定シンボル104の信号点を示しており、(I,Q)=(1.0,1.0)または(−1.0,−1.0)とする。203はデータシンボルがQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の場合の信号点を示しており、(I,Q)=(0.707,0.707)または(0.707,−0.707)または(−0.707,0.707)または(−0.707,−0.707)とする。
図5(a)、図5(b)は、図3のフレーム構成でなる変調信号A、変調信号BのI−Q平面における信号点位置を表に表したものである。ここで、図5の時間i+1(図3の制御シンボル102に相当)において、(a)、(b)で異なる系列を用いた理由を説明する。各送信アンテナで同一の系列を用いると、受信側で同相合成されたときにPAPR(Peak-to-Average Power Ratio:最大電力と平均電力の比)が大きくなり、受信装置に入力される信号のダイナミックレンジが不安定となる。よって、PAPRを小さくするように異なる系列を用いる。ここで、異なる系列の作り方は、図5に示した作り方に限ったものではなく、要はPAPRを小さくできればよい。時間i+3(図3の電波伝搬環境推定シンボル104に相当)についても同様の理由により、異なる系列を用いている。
次に、図6に示すように、4つのアンテナT1、T2、T3、T4からそれぞれ変調信号A、変調信号B、変調信号C、変調信号Dを同時に送信し、4つのアンテナR1、R2、R3、R4によって変調信号A、B、C、Dが合成された信号を受信し、これらの信号を分離し復調する場合について説明する。
この場合、受信側では4×4=16個のチャネル変動h11(t)、h21(t)、h31(t)、h41(t)、………、h44(t)を推定して復調する必要がある。そのため上述した2本のアンテナの場合と同様に、変調信号A、B、C、Dに、信号検出のためのシンボル、周波数オフセット推定、時間同期のための制御シンボル、送信方法情報シンボル、電波伝搬環境推定シンボル等のパイロットシンボルを設ける必要がある。
図3との対応部分に同一符号を付して示す図7に、変調信号A、変調信号B、変調信号C、変調信号Dのフレーム構成を示す。
図8に、図7の各シンボルの同相I−直交Q平面における信号点配置を示す。図中、401は信号検出のためのシンボル101の信号点を示しており、(I,Q)=(4.0,0)または(−4.0,0)とする。402は、制御シンボル102、電波伝搬環境推定シンボル104の信号点を示しており、(I,Q)=(2.0,2.0)または(−2.0,−2.0)とする。203はデータシンボルがQPSKの場合の信号点を示しており、(I,Q)=(0.707,0.707)または(0.707,−0.707)または(−0.707,0.707)または(−0.707,−0.707)とする。
図9(a)、図9(b)、図9(c)、図9(d)は、図7のフレーム構成でなる変調信号A、変調信号B、変調信号C、変調信号DのそれぞれのI−Q平面における信号点位置を表に表したものである。ここで、図9の時間i+1(図7の制御シンボル102に相当)において、(a)、(b)で異なる系列を用いた理由を説明する。各送信アンテナで同一の系列を用いると、受信側で同相合成されたときにPAPRが大きくなり、受信装置に入力される信号のダイナミックレンジが不安定となる。よって、PAPRを小さくするように異なる系列を用いる。ここで、異なる系列の作り方は、図9に示した作り方に限ったものではなく、要はPAPRを小さくできればよい。時間i+3(図7の電波伝搬環境推定シンボル104に相当)についても同様の理由により、異なる系列を用いている。
図10に、図2〜図5に示したように、2つのアンテナT1、T2からそれぞれ変調信号A、Bを送信したときの変調信号の時間軸における波形の一例を示す。図10(a)は変調信号A、Bのデータシンボルの波形を示している。図10(b)は変調信号Aと変調信号Bの合成信号の波形である。図10(c)と図10(d)は、図10(b)の合成信号にパイロットシンボルの変調信号が挿入されたときの波形である。
図11に、図6〜図9に示したように、4つのアンテナT1〜T4からそれぞれ変調信号A〜Dを送信したときの変調信号の時間軸における波形の一例を示す。図11(a)は変調信号A、B、C、Dのデータシンボルの波形を示している。図11(b)は変調信号A、B、C、Dの合成信号の波形である。図11(c)と図11(d)は、図11(b)の合成信号にパイロットシンボルの変調信号が挿入されたときの波形である。
次に本実施の形態の無線送信方法の特徴と効果について順次説明する。
先ず第1の特徴は、図4及び図8からも明らかなように、各パイロットシンボルの最大信号点振幅(信号点と原点との距離が最大となる振幅)をデータシンボルの変調信号の最大信号点振幅よりも大きくしたことである。これにより、データ復調の際に非常に重要となるパイロットシンボルを精度良く検出できるようになる。またこれにより受信装置におけるパイロットシンボルの受信レベルをデータシンボルの受信レベルに近づけることができるようになる。つまり、一般にデータシンボルは伝送データ量を稼ぐために、全てのアンテナから同時送信する場合がほとんどだが、パイロットシンボルは受信装置での検出精度を重要視するため、例えば送信するアンテナを切り換えながら1本のアンテナずつ送信する場合も多い。これを考慮すると、この実施の形態のようにパイロットシンボルの最大信号点振幅をデータシンボルの最大信号点振幅よりも大きくした方が、データシンボルとパイロットシンボルの受信レベルが近くなり、受信装置での量子化誤差を低減することができる。
第2の特徴は、変調信号Aのみ送信されている(この実施の形態の場合には、信号検出用シンボル101のみ送信されている)時間iでの最大信号点振幅を、他の時間のパイロットシンボルの最大信号点振幅より大きくしたことである。これにより、変調信号Aのパイロットシンボルのみの受信レベルを、変調信号Aと変調信号Bが多重されているときのパイロットシンボルの受信レベルと同等にすることができる。つまり、本実施の形態では、パイロットシンボルの最大信号点振幅を、パイロットシンボルの多重数が少ないほど大きくするようにした。これにより、パイロットシンボルの受信レベルをほぼ同じにすることができるようになるので、受信装置でのパイロットシンボルの量子化誤差を低減することができる。つまり、上記第1の特徴はデータシンボルとパイロットシンボルとの受信レベルを同等とすることで量子化誤差を低減するのに対して、この第2の特徴はパイロットシンボルの受信レベルを同等とすることで量子化誤差を低減する。
そして第3の特徴は、2つの送信アンテナT1、T2を用いて2つの変調信号A、Bを送信する場合のパイロットシンボルの最大信号点振幅よりも、4つの送信アンテナT1〜T4を用いて4つの変調信号A〜Dを送信する場合のパイロットシンボルの最大信号点振幅を大きくしたことである。これにより、データシンボルとパイロットシンボルの受信レベルを近づけることができるので、受信装置での量子化誤差を低減することができる。
例えば、図4及び図8に示したように、信号検出用シンボル101(図3、図7)の最大信号点振幅は、送信アンテナ数が2で変調信号を2系統送信するときは(図4の信号点201)、2であるのに対し、送信アンテナ数4、変調信号を4系統送信するときは(図8の信号点401)、4である。同様に、周波数オフセット、同期のための制御シンボル102、電波伝搬環境推定シンボル104の信号点振幅は、送信アンテナ数2、変調信号を2系統送信するときは(図4の信号点202)、1.414であるのに対し、送信アンテナ数4、変調信号を4系統送信するときは(図8の信号点402)、2.828である。
ここで、2つのアンテナから変調信号を送信する場合にはデータシンボルの合成数は2であるが、4つのアンテナから変調信号を送信する場合にはデータシンボルの合成数は4である。これに対して、上述したように、パイロットシンボルは全てのアンテナから送信さるわけではないことを考慮すると(例えば1つのアンテナのみから送信されるとすると)、データシンボルの受信レベルとパイロットシンボルの受信レベルを同等とするためには、使用アンテナ数が多いほどパイロットシンボルの送信電力を大きくする必要がある。この点に着目して、本実施の形態では、使用アンテナ数(つまり送信する変調信号数)が多いほどパイロットシンボルの送信電力を大きくすることにより、データシンボルとパイロットシンボルの受信レベルを合わせて量子化誤差を低減するようになされている。
次に、上述した本実施の形態の特徴から得られる作用及び効果について説明する。
先ず、2つの送信アンテナ数で変調信号を2系統送信する場合について説明する。図10(a)に示すように、各変調信号A、Bのデータシンボルの動作範囲を、例えば、−128から128とする。すると、2つの変調信号A、Bのデータシンボルを合成した合成信号(受信アンテナでは変調信号Aと変調信号Bの合成信号を受信する)の波形は、図10(b)に示すように、動作範囲が−256から256になる。但しこの値は正確ではない。しかし動作範囲は−128から128よりは大きくなる。
図10(c)、図10(d)は、図10(b)のデータシンボルの合成信号に信号検出用シンボル101、周波数オフセット、同期のための制御シンボル102、送信方法情報シンボル103、電波伝搬環境推定シンボル104などのパイロットシンボルの変調信号(パイロット信号)が付加されたときの変調信号を示すものである。このとき、図10(c)のように、データシンボルの合成信号の動作範囲が−256から256であるに対し、パイロット信号の動作範囲が−128から128のようになってしまうと受信装置のアナログ・ディジタル変換部での量子化誤差が増大してしまうため、変調信号Aのデータシンボルと変調信号Bのデータシンボルの分離精度が低下し、また、変調信号Aのデータシンボルと変調信号Bのデータシンボルの復調精度が低下してしまう。
この点に着目して、本実施の形態では、上記特徴点の動作を行うことで、図10(d)のように、データシンボルの合成信号の動作範囲と、パイロット信号の動作範囲が同レベルとなるように、パイロットシンボルの送信電力(最大信号点振幅)を変調信号数等に応じて適宜選定するようになされている。例えば、図10(d)に示すように、データシンボルの合成信号の動作範囲が−256から256のとき、パイロット信号の動作範囲もこれに合うように−256から256になるようにすればよい。
次に、4つの送信アンテナ数で変調信号を4系統送信する場合について説明する。図11(a)に示すように、各変調信号A〜Dのデータシンボルの動作範囲を、例えば、−64から64とする。すると、4つの変調信号A〜Dのデータシンボルを合成した合成信号(受信アンテナでは変調信号A〜Dの合成信号を受信する)の波形は、図11(b)に示すように、動作範囲が−256から256になる。但しこの値は正確ではない。しかし動作範囲は−64から64よりは大きくなる。さらに合成信号の動作範囲と各変調信号の動作範囲の比は、2つの送信アンテナで変調信号を2系統送信するときと比較し、大きい。ここでは、2つの送信アンテナ数で変調信号を2系統送信するときの合成信号の動作範囲と各変調信号の動作範囲の比を2とし、4つの送信アンテナ数で変調信号を4系統送信するときの合成信号の動作範囲と各変調信号の動作範囲の比を4としている。本実施の形態においては、この動作範囲の比の違いに着目して、上記第3の特徴の動作を行うようにした。
図11(c)、図11(d)は、図11(b)のデータシンボルの合成信号に信号検出用シンボル101、周波数オフセット、同期のための制御シンボル102、送信方法情報シンボル103、電波伝搬環境推定シンボル104などのパイロットシンボルの変調信号(パイロット信号)が付加されたときの変調信号を示すものである。このとき、図11(c)のように、データシンボルの合成信号の動作範囲が−256から256であるに対し、パイロット信号の動作範囲が−64から64のようになってしまうと受信装置のアナログ・ディジタル変換部での量子化誤差が増大してしまうため、変調信号A〜Dのデータシンボルの分離精度が低下し、また、変調信号A〜Dのデータシンボルの復調精度が低下してしまう。
この点に着目して、本実施の形態では、上記特徴点の動作を行うことで、図11(d)のように、データシンボルの合成信号と、パイロット信号の動作範囲が同レベルとなるように、パイロットシンボルの送信電力(最大信号点振幅)を変調信号数等に応じて適宜選定するようになされている。例えば、図11(d)に示すように、データシンボルの合成信号の動作範囲が−256から256のとき、パイロット信号の動作範囲もこれに合うように−256から256になるようにすればよい。
つまり、本実施の形態では、上記第1〜第3の特徴点の動作を行うことで、図10(d)、図11(d)のような波形を得ることができ、これにより受信装置のアナログ・ディジタル変換部での量子化誤差を低減することができる。この結果、各変調信号A、B又は変調信号A〜Dのデータシンボルの分離精度が向上し、さらには各変調信号の受信品質が向上する。
このように本実施の形態においては、送信する変調信号数に変化に合わせてパイロットの信号点配置を変化させることにより、受信装置でのデータの受信品質を向上させるようになっている。このとき、送信する変調信号の数が多いほど、パイロットシンボルの信号点振幅を大きくしたことにより、一段とその効果を高めることができる。
なおここでは、変調信号Aにのみの存在するパイロットシンボル(つまり多重化しないパイロットシンボル)として、信号検出用シンボル101を例に説明したが、当然、制御シンボル102や電波伝搬環境推定シンボル104を多重化しないパイロットシンボルとしてもよい。すなわち、多重化の方法は、図3や図7に示すものに限定されず、要はデータシンボルと比較してパイロットシンボルの多重数が少ない場合に広く有効である。この具体例については、実施の形態3で詳しく述べる。
(2)構成
図12に、本実施の形態における無線送信装置500の構成を示す。
データ系列生成部501は、送信ディジタル信号S1、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に基づいて、変調信号Aの送信ディジタル信号S3A、変調信号Bの送信ディジタル信号S3B、変調信号Cの送信ディジタル信号S3C、変調信号Dの送信ディジタル信号S3Dを出力する。
各変調部502A〜502Dは、それぞれ変調信号A〜Dの送信ディジタル信号S3A〜S3D、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2にしたがって、送信ベースバンド信号S4A〜S4Dを出力する。
各シリアルパラレル変換部503A〜503Dは、それぞれ送信ベースバンド信号S4A〜S4Dを入力とし、パラレル信号S5A〜S5Dを出力する。逆フーリエ変換部(idft)504A〜504Dは、それぞれパラレル信号S5A〜S5Dを入力とし、逆フーリエ変換後のパラレル信号S6A〜S6Dを出力する。無線部505A〜505Dは、それぞれ逆フーリエ変換後のパラレル信号S6A〜S6Dを入力とし、送信信号S7A〜S7Dを出力する。
電力増幅部506A〜506Dは、それぞれ送信信号S7A〜S7Dを入力とし、増幅された送信信号S8A〜S8Dを出力する。この増幅された送信信号S8A〜S8Dは、それぞれアンテナT1〜T4から電波として出力される。
フレーム構成信号生成部507は、送信方法要求情報S10、変調方式要求情報S11を入力とし、送信方法、変調方式を決定し、その情報を含んだフレーム構成に関する情報をフレーム構成信号S2として出力する。
図13に、各変調部502A〜502Dの構成を示す。なお各変調部502A〜502Dは同様の構成であるため、図13では代表して変調部502Aの構成を示す。
データシンボルマッピング部510は、送信ディジタル信号S3A、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に含まれる変調方式情報の変調方式に基づくマッピングをし、データシンボルの送信ベースバンド信号S20を出力する。
送信方法情報シンボルマッピング部511は、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に含まれる送信方法、変調方式の情報を示すシンボルとして送信方法情報シンボルの送信ベースバンド信号S21を出力する。
パイロットシンボルマッピング部512は、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に含まれる送信方法の情報に基づき、送信方法に対応したパイロット信号を生成するためのマッピングを行い、パイロットシンボルの送信ベースバンド信号S22を出力する。
信号選択部513は、データシンボルの送信ベースバンド信号S20、送信方法情報シンボルの送信ベースバンド信号S21、パイロットシンボルの送信ベースバンド信号S22、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に含まれるタイミング情報に従い、データシンボルの送信ベースバンド信号S20、送信方法情報シンボルの送信ベースバンド信号S21、パイロットシンボルの送信ベースバンド信号S22のいずれかを選択し、選択した信号を送信ベースバンド信号S4Aとして出力する。
図14に、パイロットシンボルマッピング部512の構成を示す。パイロットシンボルマッピング部512は、送信アンテナ数2用パイロットシンボル生成部520と送信アンテナ数4用パイロットシンボル生成部521を有し、各パイロットシンボル生成部520、521にフレーム構成信号S2を入力する。送信アンテナ数2用パイロットシンボル生成部520は、フレーム構成信号S2に従って、例えば図4の信号点201、202のような信号点配置でなるパイロットシンボルを生成し、これをパイロットシンボルのベースバンド信号S30として出力する。これに対して、送信アンテナ数4用パイロットシンボル生成部521は、フレーム構成信号S2に従って、例えば図8の信号点401、402のような信号点配置でなるパイロットシンボルを生成し、これをパイロットシンボルのベースバンド信号S31として出力する。信号選択部522は、フレーム構成信号S2に含まれる送信変調信号数情報に従って、パイロットシンボルのベースバンド信号S30、S31のいずれかを選択して送信ベースバンド信号S22として出力する。これにより、送信変調信号数に応じてパイロットシンボルの送信電力を変化させることができる。
図15に、本実施の形態における無線受信装置600の構成を示す。
各無線部601A〜601Dは、それぞれ各アンテナR1〜R4で受信した受信信号K1A〜K1D、周波数オフセット推定信号K10を入力とし、周波数オフセット推定信号K10に基づく周波数制御やアナログ・ディジタル変換処理を行い、受信ベースバンド信号K2A〜K2Dを出力する。
各フーリエ変換部(dft)602A〜602Dは、それぞれ受信ベースバンド信号K2A〜K2D、タイミング信号K11を入力とし、フーリエ変換後の受信ベースバンド信号K3A〜K3Dを出力する。
変調信号A、B、C、Dについての各伝送路推定部603A〜603Dは、フーリエ変換後の受信ベースバンド信号K3A〜K3D、タイミング信号K11を入力とし、伝送路推定信号K4A〜K4Dを出力する。
復調、周波数オフセット推定、および、送信方法検出部604は、フーリエ変換後の受信ベースバンド信号K3A〜K3D、伝送路推定信号K4A〜K4Dを入力とし、周波数オフセットを推定し、周波数オフセット推定信号K10を出力するとともに、送信方法を識別し、データを復調することにより、変調信号A〜Dそれぞれに対応する受信ディジタル信号K5A〜K5Dを出力する。
送信方法、変調方式決定部605は、変調信号A〜Dに対応する各受信ディジタル信号K5A〜K5Dを入力とし、フレームエラー率、パケット損失率、ビットエラー率などを計算し、計算結果に基づいて通信相手に要求する、送信方法、変調方式を決定し、要求情報K12として出力する。つまり要求情報K12は、図12で上述した送信方法要求情報S10、変調方式要求情報S11からなり、送信方法要求情報S10は2つのアンテナT1、T2から変調信号A、Bを送信するのか、4つのアンテナT1〜T4から変調信号A〜Dを送信するのかを指示する情報である。また変調方式要求情報S11は、データシンボルをQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式で変調するのか16値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式で変調するのかを指示する情報である。
信号検出、同期部606は、受信ベースバンド信号K2Aを入力とし、受信ベースバンド信号K2Aに含まれる信号検出用シンボル101(図3、図7)に基づき信号検出を行うとともに、時間同期を行い、タイミング信号K11を出力する。
図16に、各無線部601A〜601Dの構成を示す。なお各無線部601A〜601Dは同様の構成であるため、図16では代表して無線部601Aの構成を示す。
ゲインコントロール部610は、受信信号K1Aを入力とし、ゲインコントロール後の受信信号K20を出力する。直交復調部611は、ゲインコントロール後の受信信号K20を入力とし、受信直交ベースバンド信号の同相成分K21および直交成分K22を出力する。
アナログ・ディジタル変換部612は、受信直交ベースバンド信号の同相成分K21を入力とし、受信直交ベースバンド信号の同相成分ディジタル信号K23を出力する。アナログ・ディジタル変換部613は、受信直交ベースバンド信号の直交成分K22を入力とし、受信直交ベースバンド信号の直交成分ディジタル信号K24を出力する。
(3)動作
次に図12〜図14の構成でなる無線送信装置500と、図15、図16の構成でなる無線受信装置600の動作について説明する。
無線送信装置500は、無線受信装置600から要求された送信方法要求情報S10に応じて(因みに無線送信装置500は図示しない受信部より送信方法要求情報S10、変調方式要求情報S11を受信する)、2つのアンテナT1、T2を用いて2つの変調信号A、Bを送信するか、または4つのアンテナT1〜T4を用いて4つの変調信号A〜Dを送信するかを切り換える。具体的には、無線受信装置600の送信方法、変調方式決定部605でのフレームエラー率、パケット損失率、ビットエラー率などが悪い場合には送信方法要求情報S10によって2つのアンテナT1、T2を用いて2つの変調信号A、Bを送信することが要求され、良い場合には4つのアンテナT1〜T4を用いて4つの変調信号A〜Dを送信することが要求される。
そして変調信号数設定手段11(図1)としての、フレーム構成信号生成部507及び変調部502A〜502Dによって送信方法要求情報S10に応じた数の送信変調信号数が設定される。具体的には、フレーム構成信号生成部507によって生成されたフレーム構成信号S2に基づいて、2つのアンテナT1、T2を用いて2つの変調信号A、Bを送信する場合には、変調部502A、502Bが動作し、変調部502C、502Dは動作停止する。これに対して、4つのアンテナT1〜T4を用いて4つの変調信号A〜Dを送信する場合には、全ての変調部502A〜502Dが動作する。
また2つのアンテナT1、T2を用いて2つの変調信号A、Bを送信する場合には、送信電力変更手段12(図1)としてのパイロットシンボルマッピング部512が、送信アンテナ数2用パイロットシンボル生成部520により得られたパイロットシンボルベースバンド信号S30を選択する。これに対して、4つのアンテナT1〜T4を用いて4つの変調信号A〜Dを送信する場合には、パイロットシンボルマッピング部512が、送信アンテナ数4用パイロットシンボル生成部521により得られたパイロットシンボルベースバンド信号S31を選択する。このようにして、無線送信装置500においては、送信変調信号数に応じてパイロットシンボルの送信電力を変化させる。
この結果、無線受信装置600では、図10(d)や図11(d)に示すように、データシンボルの合成信号の動作範囲と、パイロット信号の動作範囲がほぼ同じである受信信号を受信することができる。この結果、アナログ・ディジタル変換部612、613(図16)で量子化を行う際の、量子化誤差を少なくすることができるようになる。
ここで無線部601A〜601Dの動作について詳述する。図16に示すように、各無線部601A(601B〜601D)は、ゲインコントロール部610によって受信信号K1A(K1B〜K1D)の利得を調整する。しかし、このとき1シンボルや1フレーム(例えば100シンボルで1フレームとする)単位でのゲインコントロールを行うことは困難である。
例えば、図10(b)のように、変調信号Aと変調信号Bの合成信号の動作範囲が−256から256となるようにゲインコントロールしたとする。そして、図10(c)のように、動作範囲が−128から128であるパイロット信号が入力されたとき、このパイロット信号の動作範囲を瞬時に図10(d)のように−256から256となるようにゲインコントロールすることは困難である。
しかしながら、本実施の形態では上述のように、合成信号の動作範囲が−256から256のとき、パイロット信号の動作範囲がこれと同レベルとなるように、パイロット信号の信号点配置を行って送信しているので、動作範囲がデータシンボルの動作範囲とほぼ同じパイロットシンボルを受信することができる。4つの送信アンテナで4つの変調信号A〜Dを送信する場合も同様である。
因みに、アナログ・ディジタル変換部612、613に入力される信号のレベルが小さいと、一般に、量子化誤差が大きくなる。例えば、図10(c)や図11(c)のようにパイロット信号の動作範囲が小さいと、パイロット信号の量子化誤差が大きくなる。すると、各伝送路推定部603A〜603D(図15)では、パイロット信号を用いて伝送路推定を行い、伝送路推定信号K4A〜K4Dを出力するので、その推定精度は量子化誤差により劣化することになる。同様に、復調、周波数オフセット推定、および、送信方法検出部604(図15)は、パイロット信号を用いて周波数オフセットを推定し、周波数オフセット推定信号K10を出力するので、その推定精度は量子化誤差により劣化することになる。以上の推定精度の劣化により、データ復調の精度が劣化する結果、受信品質が劣化する。
本実施の形態の無線送信装置500においては、この劣化を抑えるために、各パイロットシンボルの最大信号点振幅をデータシンボルの最大信号点振幅より大きくしている。加えて、変調信号Aのみ送信されている時間iでの最大信号点振幅を、他の時間のパイロットシンボルの最大信号点振幅より大きくしている。さらに、4つの送信アンテナから4系統の変調信号を送信するときのパイロットの信号点配置と、2つの送信アンテナから2系統の変調信号を送信するときのパイロットの信号点配置を変えるようにしている。
ここでパイロットシンボルの信号点配置を変更するとは、例えば、データシンボルの変調方式がQPSKとすると、パイロットシンボルの信号点振幅とQPSKの信号点振幅の比を変更すること、あるいは、パイロットシンボルの信号点振幅と変調方式の最大信号点振幅の比を変更することに相当する。これにより、送信変調信号数に応じて、データシンボルの送信電力とパイロットシンボルの送信電力の比を変化させることができるようになる。
因みに、信号点振幅とは、同相I−直交Q平面における原点と信号点の距離を意味する。またパイロットシンボルの信号点振幅を大きくするとは、パイロットシンボルの信号点振幅と変調方式の最大信号点振幅の比を大きくすることを意味する。
(4)効果
かくして本実施の形態によれば、同時に送信する変調信号の数を変化させる方式において、送信する変調信号の数に応じて、データシンボルの合成信号レベルに合うようにパイロットシンボルの信号レベルを合わせるようにしたことにより、受信側でのパイロットシンボルの量子化誤差を低減することができる。この結果、パイロットシンボルを用いた電波伝搬環境推定の推定精度、時間同期の精度、周波数オフセット推定精度が向上するので、データの受信品質が向上する。
(実施の形態2)
本実施の形態の特徴は、変調信号を送信するアンテナ数(つまり変調信号数)が変化したときに、各変調信号の平均送信電力を変更することである。これにより、特に送信アンテナ数を切り換えた直後の各変調信号の量子化誤差を低減することができる。
(1)原理
先ず、本実施の形態の原理について説明する。
図17及び図18に、複数アンテナから送信する変調信号数を切り換えた際の一般的な受信波形の変化を示す。図17は送信する変調信号数(つまり送信アンテナ数)を2から4に切り換えた場合を示し、図18は送信する変調信号数(送信アンテナ数)を4から2に切り換えた場合を示す。図17からも明らかなように、変調信号数が多くなるように切り換えた場合、合成される変調信号数も多くなるので、アンテナ数切り換え後に受信信号の動作範囲が大きくなる。これとは逆に、図18からも明らかなように、変調信号数が少なくなるように切り換えた場合、合成される変調信号数も少なくなるので、アンテナ数切り換え後に受信信号の動作範囲が小さくなる。
本実施の形態では、この点に着目して、アンテナ数切り換え直後の変調信号の合成信号レベルを、アンテナ数切り換え前の変調信号の合成信号レベルにほぼ等しくなるように送信電力制御を行うようにする。ここで一般に、無線送信装置は、相手局から送られてくるTPC(Transmit Power Control)ビットを用いて送信電力を制御するクローズドループ送信電力制御等が行われているため、送信アンテナ数が切り換わって変調信号の合成信号レベルが変化すると、その合成信号レベルが所望の動作範囲を変動するように変調信号の送信電力が制御される。また受信側のゲインコントロール部で合成信号レベルが所望の動作範囲を変動するように利得調整される。しかし、上記送信電力制御や受信信号のゲインコントロールは、受信信号レベルを所望の動作範囲に収束させるまでに、ある程度の応答時間が必要となる。
そこで、本実施の形態では、アンテナ数切り換え直後の変調信号の合成信号レベルを、アンテナ数切り換え前の変調信号の合成信号レベルにほぼ等しくなるように、アンテナ数切り換え直後に強制的に変更する。
図19に、2つの送信アンテナT1、T2を用いて2系統の変調信号A、Bを送信している状態から、4つの送信アンテナT1〜T4を用いて4系統の変調信号A〜Dを送信する状態へと切り換えたときの、本実施の形態における、各変調信号A〜Dの送信電力制御の概略を示す。先ず、図19(a)に示すように、アンテナT1からは平均送信電力1.0Wの変調信号Aが送信され、アンテナT2からは平均送信電力1.0Wの変調信号Bが送信されていたとする。そして、2つの送信アンテナT1、T2で2系統の変調信号A、Bを送信する送信方法から、4つの送信アンテナT1〜T4を用いて4系統の変調信号A〜Dを送信する送信方法へ切り換えたとする。このとき、アンテナT1〜T4からそれぞれ平均送信電力0.5Wの変調信号A〜Dを送信する。これにより、図20に示すように、アンテナ数切り換え直後の変調信号A〜Dの合成信号レベルを、アンテナ数切り換え前の変調信号A、Bの合成信号レベルと等しくすることができる。
図21に、4つの送信アンテナT1〜T4を用いて4系統の変調信号A〜Dを送信している状態から、2つの送信アンテナT1、T2を用いて2系統の変調信号A、Bを送信する状態へと切り換えたときの、本実施の形態における、各変調信号A〜Dの送信電力制御の概略を示す。先ず、図21(a)に示すように、アンテナT1〜T4からそれぞれ平均送信電力0.5Wの変調信号A〜Dが送信されていたとする。そして、4つの送信アンテナT1〜T4で4系統の変調信号A〜Dを送信する送信方法から、2つの送信アンテナT1、T2を用いて2系統の変調信号A、Bを送信する送信方法へ切り換えたとする。このとき、アンテナT1、T2からそれぞれ平均送信電力1.0Wの変調信号A、Bを送信する。これにより、図22に示すように、アンテナ数切り換え直後の変調信号A、Bの合成信号レベルを、アンテナ数切り換え前の変調信号A〜Dの合成信号レベルと等しくすることができる。
さらに本実施の形態では、アンテナ数切り換え直後には、送信する変調信号の合成信号レベルを、アンテナ数切り換え前に送信していた変調信号の合成信号レベルと同等となるように変調信号の送信電力を制御するのに加えて、アンテナ数切り換え後に徐々に各変調信号の送信レベルをアンテナ数切り換え前の各変調信号の送信レベルに戻すようになっている。これにより、変調信号の復調精度を一段と向上させることができる。
この送信電力制御について、図23及び図24を用いて説明する。図23に、2つの送信アンテナT1、T2を用いて2系統の変調信号A、Bを送信している状態から、4つの送信アンテナT1〜T4を用いて4系統の変調信号A〜Dを送信する状態へと切り換えたときの、各変調信号A〜Dの送信電力制御の一例を示す。図23に示したように、アンテナ数を切り換えた直後は、各アンテナT1〜T4から送信する変調信号の平均送信電力を0.5Wへと変更する。そして、時間の経過とともに、平均送信電力を0.75W、1.0Wと変更する。
因みに、各変調信号A〜Dの平均送信電力を増幅する電力増幅器として、各変調信号A〜Dの平均送信電力を1Wにしても図25(a)に示すように周波数スペクトラムに歪みが生じないような送信電力増幅器を使用しているとする。すると、送信する変調信号の数が2系統、4系統のいずれの場合でも、平均送信電力を1Wとしても、図25(b)に示すような歪みの生じている周波数スペクトルとなることはなく、図25(a)に示すような歪みの生じていない周波数スペクトルを得ることができる。
図24に、4つの送信アンテナT1〜T4を用いて4系統の変調信号A〜Dを送信している状態から、2つの送信アンテナT1、T2を用いて2系統の変調信号A、Bを送信する状態へと切り換えたときの、各変調信号A〜Dの送信電力制御の一例を示す。図24に示したように、アンテナ数を切り換えた直後は、各アンテナT1、T2から送信する変調信号の平均送信電力を1.0Wへと変更する。そして、時間の経過とともに、平均送信電力を0.75W、0.5Wと変更する。
ここで図23のように、送信アンテナ数が増加した直後に各変調信号の平均送信電力を急激に下げ、その後時間の経過とともに各変調信号の平均送信電力を切り換え前に戻すのは、切り換え前の平均送信電力は受信装置で良好なSIR(Signal to Interference Ratio)が得られるように送信電力制御されており、元の平均送信電力に戻した方が各変調信号の受信品質が向上するためである。また電力増幅器の消費電力や歪みのことを考慮すると、適した平均電力に設定する方が良い。したがって、平均送信電力は元の平均送信電力に戻した方が良いことになる。図24のように、送信アンテナ数が減少した直後に各変調信号の平均送信電力を急激に上げ、その後時間の経過とともに各変調信号の平均送信電力を切り換え前に戻すのも同様の理由からである。
またこのように急激に下げた各変調信号の平均送信電力を元に戻す際に、ある程度の時間をかけて徐々に戻すことにより、受信装置のゲインコントロール部がこれに追従してゲインコントロール後の信号をアナログ・ディジタル変換部の動作範囲内に収めることができるようになる。また急激に上げた各変調信号の平均送信電力を元に戻す際に、ある程度の時間をかけて徐々に戻すことにより、受信装置のゲインコントロール部がこれに追従してゲインコントロール後の信号をアナログ・ディジタル変換部で量子化誤差が生じない程度まで引き上げることができる。つまり、アナログ数切り換えと同時に急激に下げた、または急激に上げた各変調信号の平均送信電力を元の平均送信電力に戻す速度は、ゲインコントロール部の動作速度に応じて選定すればよい。
(2)構成
図12との対応部分に同一符号を付して示す図26に、本実施の形態における無線送信装置700の構成を示す。ここでは、図12との対応する部分の説明は省略する。
各ゲインコントロール部701A〜701Dは、それぞれ送信信号S7A〜S7D、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に含まれる送信方法の情報から送信方法が切り替わるという情報を検出し、送信方法が切り替わる際、ゲインコントロールをし、ゲインコントロール後の送信信号S10A〜S10Dを出力する。
つまり、本実施の形態では、ゲインコントロール部701A〜701Dが、図1の送信電力変更手段12として機能し、送信変調信号数に応じて各変調信号の平均送信電力を変更するようになっている。実際には、上述したように、送信変調信号数が増えると同時に各変調信号の平均送信電力を急激に下げる一方、送信変調信号数が減少すると同時に各変調信号の平均送信電力を急激に上げるようになっている。
(3)動作
次に図26の構成でなる無線送信装置700の動作について説明する。
図15に示した無線受信装置600が図26の無線送信装置700に対し送信方法の変更の要求をし、図26の無線送信装置700が送信方法を切り換える手順とその動作は、実施の形態1の説明と同様である。
ゲインコントロール部701A〜701Dは、それぞれ送信信号S7A〜S7D、フレーム構成信号S2を入力とし、フレーム構成信号S2に含まれる送信方法の情報から送信方法が切り替わるという情報を検出し、送信方法が切り替わる際、ゲインコントロールをし、ゲインコントロール後の送信信号S10A〜S10Dを出力する。
このとき、増幅するゲインは、図19、図20のような平均送信電力となるような係数である。また図23、図24に示すように送信方法切り換え後に徐々に平均送信電力を元に戻すようなゲイン制御を行ってもよい。
ここで図15の無線受信装置600における無線部601A〜601D、より具体的には図16のアナログ・ディジタル変換部612、613での動作範囲は、例えば14ビットのアナログ・ディジタル変換器をアナログ・ディジタル変換部612、613で使用しているとすると、−8192から8192となる。ゲインコントロール部610は、ゲインコントロール後の受信信号K20のレベルがこの動作範囲に収まるように受信信号をゲインコントロールする。図17及び図18に示す、送信アンテナ数切り換え前の変調信号の合成信号の動作範囲が−8192から8192の範囲に丁度収まっているのはこのためである。
しかし、送信アンテナ数を切り換えた直後には、ゲインコントロール部610が変調信号の合成信号のレベル変動に追従できず、合成信号の動作範囲が−8192から8192の範囲に丁度収まるようにゲインコントロールすることはできない。例えば送信アンテナ数切り換え前と切り換え後で各変調信号を同じ平均送信電力で送信していたとすると、送信アンテナ数(つまり送信変調信号数)を2から4に増やした場合には、図17に示すように、送信アンテナ切り換え後の4つの変調信号の合成信号の動作範囲は−32768から32768となり、アナログ・ディジタル変換部612、613の動作範囲である−8192から8192を超えてしまい、量子化誤差が発生する。同様に、送信アンテナ数(送信変調信号数)を4から2に減らした場合には、図18に示すように、送信アンテナ切り換え後の2つの変調信号の合成信号の動作範囲は―256から256となり、アナログ・ディジタル変換部612、613の動作範囲である−8192から8192よりもかなり動作範囲が小さくなってしまい、量子化誤差が発生する。
しかし、上述した本実施の形態の構成では、送信変調信号数が増えると同時に各変調信号の平均送信電力を急激に下げる一方、送信変調信号数が減少すると同時に各変調信号の平均送信電力を急激に上げるようにしているので、図20及び図22に示すように、ゲインコントロール部610に依存せずに、アンテナ数切り換え直後の変調信号の合成信号レベルをアナログ・ディジタル変換部612、613の動作範囲である−8192から8192に合わせることができる。
この結果、送信変調信号数の切り換えを行った直後におけるアナログ・ディジタル変換部612、613での量子化誤差を低減できるようになる。従って、周波数オフセット推定、伝送路推定精度、復調精度は確保できるようになるので、変調信号数の切り換えを行った直後におけるデータの受信品質の劣化を未然に回避することができるようになる。
(4)効果
かくして本実施の形態によれば、同時に送信する変調信号の数を変化させる方式において、同時に送信する変調信号数を切り換える際に、送信変調信号数に応じて各変調信号の平均送信電力を切り換えるようにしたことにより、受信信号のアナログ・ディジタル変換の際に生じる量子化誤差を低減することができるので、受信品質を向上させることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1、2で説明した、同時に変調信号を送信するアンテナ数(変調信号数)に応じてパイロットシンボルや変調信号の送信電力を変更する方法に関して、実際の無線システムに適用する場合の具体例について述べる。特に、本実施の形態では、受信装置における自動利得制御AGC(Automatic Gain Control)のゲインコントロールの時間を長くとることによりゲインコントロールを安定させる方法を説明する。
一般的な受信装置では、受信装置に信号が入力されたことを検出すると、受信信号をアナログディジタル変換するA/D変換器のダイナミックレンジに入るように、入力信号レベルに合わせたAGCが行われる。AGCによるゲインコントロールを安定させる方法として、
(i) 受信装置に入力する信号のダイナミックレンジを安定させる
(ii) ゲインコントロールのための時間を長くとる
の2つが考えられる。(i)に関しては、実施の形態1、2で、変調信号に含まれるパイロットシンボルの送信電力を大きくしたり、変調信号の送信電力を強制的に変更したりすることで実現できることを示した。本実施の形態では、(i)を実現しつつ(ii)も実現することができるパイロットシンボルの送信電力変更方法について説明する。
本実施の形態におけるMIMOシステムとして、図6に示す、4つのアンテナT1、T2、T3、T4からそれぞれ変調信号A、変調信号B、変調信号C、変調信号Dを同時に送信し、4つのアンテナR1、R2、R3、R4によって変調信号A、B、C、Dが合成された信号を受信し、これらの信号を分離し復調する場合について説明する。
なお、本実施の形態においては、実施の形態1と比較して「実施の形態1の(1)原理」と「実施の形態1の(4)効果」は異なるが、「実施の形態1の(2)構成」と「実施の形態1の(3)動作」は実施の形態1で説明したものと同じであるため、実施の形態1の(2)構成」と「実施の形態1の(3)動作」の説明は省略する。
受信側では図6に示す4×4=16個のチャネル変動h11(t)、h21(t)、h31(t)、h41(t)、………、h44(t)を推定して復調する必要がある。そのため、変調信号A、B、C、Dに、信号検出用シンボル、利得制御用シンボル、周波数オフセット推定用シンボル、送信方法情報シンボル、電波伝搬環境推定シンボル等のパイロットシンボルを設ける必要がある。ここで、時間同期は、信号検出用シンボルや周波数オフセット推定用シンボルやガードインターバルの相関等を用いてとることができるため、以降の説明に加えていない。
図27に、変調信号A、B,C,Dのフレーム構成例を示す。図27では、一例として変調信号A、B、C、DをOFDM信号としたときの時間−周波数軸におけるフレーム構成を示している。図27の中で、2701は信号検出のためのシンボル(図7の101に相当)、2702は利得制御のためのシンボル(図7の102に相当)、2703は周波数オフセット推定のためのシンボル(図7の102に相当)、2704は送信方法情報シンボル(図7の103に相当)、2705は電波伝搬環境推定シンボル(図7の104に相当)、2706はデータシンボル(図7の105に相当)である。
パイロットシンボルのうち、信号検出用シンボル2701、利得制御用シンボル2702、周波数オフセット推定用シンボル2703、送信方法情報シンボル2704は、変調信号Aにのみ存在させる(つまり多重化しないシンボル)ことで、通信を行う構成としている。この構成の特徴を以下で説明する。
受信装置で周波数オフセットを推定する場合、複数の送信アンテナ(T1、T2、T3、T4のうち少なくとも2つ)から周波数オフセット推定用シンボル2703を送信すると、4つの受信アンテナR1、R2、R3、R4ではこれらの周波数オフセット推定用シンボル2703が多重されて受信される。その場合、チャネル推定を正確に行い、受信信号を分離する必要が生じる。
これに対し、図27の変調信号Aのように、1つの送信アンテナT1からのみ周波数オフセット推定用シンボル2703を送信すると、受信装置で受信信号を分離する必要はなくなる。これにより、周波数オフセット推定をより簡単に、かつ、より正確に行うことができるようになる。
同様の理由により、送信方法情報シンボル2704も1つの送信アンテナT1からのみ送信する。このとき、利得制御用シンボル2702を用いてゲインコントロールを行い、周波数オフセット推定用シンボル2703、送信方法情報シンボル2704の量子化誤差を小さくする。
これに対し、電波伝搬環境推定シンボル2705は各送信アンテナT1、T2、T3、T4から送信を行う。これは、前記したように、受信側での復調には図6に示す4×4=16個のチャネル変動を推定する必要があるからである。
次に、本実施の形態における、パイロットシンボルを用いて「(i)受信装置に入力する信号のダイナミックレンジを安定させ」つつ「(ii)ゲインコントロールの時間を長くとる」方法の説明とその効果を述べる。
受信装置に入力する信号のダイナミックレンジを安定させるためにパイロットシンボルの電力を大きくする方法については、実施の形態1で述べた。この方法を図27の変調信号A,B,C,Dに適用することを考える。
図28に、図27で示した変調信号A,B,C,Dを送信したときの変調信号の時間軸における波形の一例を示す。図28(a)は、変調信号A,B,C,Dのパイロットシンボルとデータシンボルの波形を示している。図28(b)は、変調信号A,B,C,Dの合成信号の波形である。ここで、図28(b)における時間iは各シンボルが送信された時間iに対応する時間とする。
図28(a)に示すように、各変調信号A,B,C,Dのパイロットシンボル、データシンボルの動作範囲を、例えば−64から64とする。すると、4つの変調信号A,B、C、Dを合成した信号は図28(b)のように、時間iからi+3まで(変調信号Aのみ送信している時間)は動作範囲が−64から64、時間i+4からi+7まで(変調信号A,B,C,Dを送信している時間)は動作範囲が−256から256になる。但し、この値は正確ではない。しかし、時間i+4からi+7における動作範囲は、時間iからi+3における動作範囲よりは大きくなる。ここでは、4つの送信アンテナで変調信号を4系統送信するときの合成信号の動作範囲と各変調信号の動作範囲の比を4としている。本実施の形態においては、時間iからi+3まで(変調信号Aのみ送信している時間)の動作範囲と時間i+4からi+7まで(変調信号A,B,C,Dを送信している時間)の動作範囲の比に着目して、この比を1に近づけることにより、上記「(ii)ゲインコントロールの時間を長くとる」ことを実現する。
図28の構成における無線通信では、時間iからi+3まで(変調信号Aのみ送信している時間)と、時間i+4からi+7まで(変調信号A,B,C,Dを送信している時間)を独立に考えて通信を行うことができる。
時間iからi+3においては、時間iで信号を検出した後、受信側における周波数オフセット推定シンボル2703(時間i+2)、送信方法情報シンボル2704(時間i+3)の動作範囲に合わせて利得制御用シンボル2702(時間i+1)の動作範囲を設定する。例えば、図28に示すように、3つのシンボル2702、2703、2704の動作範囲を同じ(−64から64)にして送信する。
時間i+4以降は、時間i+3までとは別に考え、受信側における合成信号の動作範囲が等しくなるように、合成された電波伝搬環境推定シンボル2705(時間i+5)、データシンボル2706(時間i+6,i+7)の動作範囲に合わせて利得制御用シンボル2702(時間i+4)の動作範囲を設定する。例えば、図28に示すように、変調信号A,B,C,Dの動作範囲を等しく(−64から64)する。このとき、時間i+5以降のシンボルに対するAGCは時間i+4における利得制御用シンボル2702を用いて行われるため、安定したAGCを行うためには利得制御用シンボル2702の時間を長くとりたい。しかし、利得制御用シンボル2702に長い時間を割り当てるほど、データの伝送効率は低下してしまう。
また、実施の形態1で図11を用いて説明したように、図28(b)に示す合成信号は時間i+3からi+4に変わる際動作範囲が大きく変動するため、受信装置のA/D変換部での量子化誤差が増大し、変調信号A,B,C,Dのデータシンボルの分離精度、復調精度が低下してしまう。ここで述べた「動作範囲が大きく変動する」問題に対して、実施の形態1で「送信する変調信号の数に応じて、データシンボルの合成信号レベルに合うようにパイロットシンボルの信号レベルを合わせるようにすることで受信側でのパイロットシンボルの量子化誤差を低減する」方法を説明した。
そこで、実施の形態1の方法を用いて量子化誤差を低減しつつAGCのゲインコントロールの時間を長くとる方法として、変調信号Aのみ送信している時間(時間iからi+3まで)の動作範囲と変調信号A,B,C,Dを送信している時間(時間i+4からi+7まで)の動作範囲の比を1に近づける。これにより、変調信号Aのみ送信している時間のシンボルもAGCのゲインコントロールに用いることができ、上記「(ii)ゲインコントロールの時間を長くとる」ことを実現することができる。
図29に、変調信号Aのみ送信している時間(時間iからi+3まで)のパイロットシンボルの送信電力を、変調信号A,B,C,Dを送信している時間(時間i+4からi+7まで)のシンボルの送信電力より大きくする場合の、変調信号の時間軸における波形の一例を示す。
図29(a)は、変調信号A,B,C,Dのパイロットシンボルとデータシンボルの波形を示している。図29(b)は、変調信号A,B,C,Dの合成信号の波形である。ここで、図29(b)における時間iは送信された時間iに対応する時間とする。図29(a)に示すように、変調信号Aのみ送信している時間(時間iからi+3まで)のパイロットシンボルの動作範囲を、例えば−256から256とする。また、変調信号A,B,C,Dを送信している時間(時間i+4からi+7まで)のシンボルの動作範囲を、例えば−64から64とする。
すると、合成した信号は図29(b)のように、変調信号Aのみ送信している時間(時間iからi+3まで)の動作範囲が−256から256、変調信号A,B,C,Dを送信している時間(時間i+4からi+7まで)の動作範囲も−256から256となり、前記2つの動作範囲の比が1となる。但し、この値は正確ではない。しかし、図28の場合と比較し、前記動作範囲の比が1に近づく。
このように、合成信号の動作範囲を安定させるように、変調信号Aのみ送信している時間(1本のアンテナのみから送信している時間)のパイロットシンボルの送信電力を適宜変更することで、AGCのゲインコントロールにかける時間を長くすることができ、受信装置のA/D変換部での量子化誤差を低減することができる。この結果、各変調信号A,B,C,Dのデータシンボルの分離精度、受信品質が向上する。
またこのとき、1本のアンテナのみから送信される信号検出用シンボル2701(時間i),利得制御用シンボル2702(時間i+1)、周波数オフセット推定シンボル2703(時間i+2)、送信方法情報シンボル2704(時間i+3)の送信電力は、図28の変調信号Aに含まれる信号検出用シンボル2701(時間i),利得制御用シンボル2702(時間i+1)、周波数オフセット推定シンボル2703(時間i+2)、送信方法情報シンボル2704(時間i+3)の送信電力より大きくなるため、これら4つのシンボル2701〜2704の推定精度も向上し、量子化誤差を低減することができる。
かくして、本実施の形態によれば、同時に送信する変調信号の数を変化させる方式において、送信する変調信号の数に応じて、受信装置における合成信号レベルに合うように、1つの変調信号のみ送信する場合の変調信号のレベルを合わせることにより、AGCのゲインコントロールにかける時間を長くとることができ、A/D変換部における量子化誤差の低減ができる。この結果、電波伝搬環境推定精度が向上し、データの受信品質が向上する。またこのとき、1つの変調信号のみ送信する場合の変調信号に含まれるパイロットシンボルの送信電力も大きくなるため、パイロットシンボルを用いた周波数オフセット推定精度、送信方法情報推定精度が向上し、データの受信品質が向上する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1、2、3で説明した、同時に変調信号を送信するアンテナ数(変調信号数)に応じてパイロットシンボルや変調信号の送信電力を変更する方法に関して、パイロットシンボルの信号点配置方法に関して述べる。特に、本実施の形態では、パイロットシンボル中の利得制御シンボルの信号点配置を送信アンテナ毎に変更することで、受信側においてPAPRを小さくし受信側のダイナミックレンジを安定させることができる方法を説明する。
なお、本実施の形態では、実施の形態1において図4、8を用いて説明した変調信号の信号点配置について新たな信号点配置方法を説明する。その他は実施の形態1、2、3と同じなので、その説明を省略する。
まず、送信アンテナが2本の場合を説明する。実施の形態1では、図4に示すように、パイロットシンボルにBPSK変調された信号を用いた。ここで、BPSK変調を用いる理由は、最も処理が簡単で、かつ誤り率が低くなる変調方式であるからである。これは、実施の形態3の中で説明した送信方法情報シンボル2704(図27に図示)のように、送信毎にデータが異なるシンボルに対して有効な変調方式となる。
これに対し、実施の形態3で説明した利得制御用シンボル2702(図27に図示)にBPSK変調を適用する場合を考える。利得制御用シンボル2702は利得制御が目的のシンボルであるため、送信毎に常に同じパターンで送信すればよい。したがって、ゲインコントロールを行い易いように変調信号毎の送信パターンを決定すべきである。
図30は、変調信号A、BをOFDM信号としたときのサブキャリアk(k=1,・・・,N N:FFTポイント数)の、各シンボルの同相I―直交Q面における信号点配置と、変調信号A,Bを受信した合成信号の信号点配置の一例である。ここでは、雑音の影響は考慮せずチャネル推定は理想的に行うものとして図示している。
図30では、変調信号A,Bは振幅・位相ともに同じ信号点配置を用いている。図30の合成信号を見ると、信号点振幅の大きい点が2つ存在し、その振幅は4となる(4.0,0.0)、(−4.0,0.0)の2点)。また、信号点振幅の小さい点が2つ存在し、その振幅は0となる((0.0,0.0)で重なっている2点)。したがって、振幅で評価するダイナミックレンジは4となる。
これに対して、図31は、変調信号Bの信号点配置を、振幅は変化させず位相のみ90°回転させたものを示す。そのときの合成信号の信号点配置を見ると、4点ともに振幅が2√2(約2.8)となり、振幅で評価するダイナミックレンジは2.8となり、PAPRが小さくなることが分かる。
このように、変調信号毎に信号点配置を変更することで、変更しない場合と比較してPAPRを小さくでき、ゲインコントロールを行いやすくすることができる。
図32、33は、4つの変調信号A〜DをOFDM信号としたときのサブキャリアk(k=1,・・・,N N:FFTポイント数)の、各シンボルの同相I―直交Q面における信号点配置と、変調信号A,B、C、Dを受信した合成信号の信号点配置の一例である。ここでは、雑音の影響は考慮せずチャネル推定は理想的に行うものとして図示している。
図32は各変調信号A,B,C,Dを同一信号点配置を用いて送信する場合、図33は各変調信号A,B,C,Dを異なる信号点配置を用いて送信する場合である。図32では合成信号の振幅で評価するダイナミックレンジが16となるのに対し、図33では合成信号の振幅で評価するダイナミックレンジは4√2(約5.6)に抑えられている。このように、利得制御用シンボルにおいて変調信号毎に信号点配置を変更する方法を採用すると、変調信号数の増加とともに、よりダイナミックレンジを安定化させる効果が得られる。
なお、本実施の形態では、変調信号のパターンとして、図31に示す2つのパターンを用いて説明を行ったが、このパターンに限ったものではなく、要は合成信号においてPAPRが小さくなるように、変調信号毎にパターンを変更すればよい。よって、図34のように、180°の位相差とならないBPSK信号で送信することもできる。図30と図34の合成信号を比較すると、振幅が4となる点((4.0.0.0)、(−4.0.0.0))を約3.7((3.4,1.4)、(−3.4,1.4))にし、ダイナミックレンジを小さくできていることがわかる。
また、本実施の形態では、利得制御用シンボルに対し、BPSK変調の信号点配置を変更する方法を説明した。繰り返しになるが、利得制御用シンボルは利得制御が目的のシンボルであるため、シンボルを復調した誤り率は全く関係ない。このことを考えると、各変調信号において多値変調を用い、変調信号毎に異なる送信パターンを用いて送信することで、同様のPAPR削減効果が得られダイナミックレンジを小さくできると言える。このとき、多値変調としては振幅の変動のない変調方式、例えばPSK変調が適しており、その多値数が大きい(8PSK→16PSK→32PSK・・・)ほど各変調信号においてランダムな位相となるため、ダイナミックレンジを小さくできる。したがって、所望するダイナミックレンジとなるように多値数を選定すればよい。
かくして、本実施の形態によれば、同時に送信する変調信号の数を変化させる方式において、利得制御用シンボルに対して変調信号毎に異なる信号点配置とすることでPAPR削減効果が得られダイナミックレンジを小さくでき、A/D変換部における量子化誤差を低減できる。
(他の実施の形態)
なお上述した実施の形態では、変調信号A〜Dのフレーム構成を、図3、図7及び図27に示すようにした場合について述べたが、変調信号のフレーム構成はこれに限らない。
また上述した実施の形態では、変調信号数設定手段11としてフレーム構成信号生成部507及び変調部502A〜502Dを用い、送信方法要求情報S10に応じた数の送信変調信号数を設定した場合について述べたが、これに限らず、自局で送信変調信号数を設定するようにしてもよい。例えば送ろうとするデータ量が多い場合には送信変調信号数を多く設定し、送ろうとするデータ量が少ない場合には送信変調信号数を少なく設定してもよい。要は、複数のアンテナを用いて送信する変調信号の数を設定できればよい。
また上述した実施の形態1では、送信電力変更手段12として図14に示したようなパイロットシンボルマッピング部512を用いた場合について述べたが、本発明の送信電力変更手段はこれに限らず、要は、送信変調信号数に応じて、データシンボルの送信電力とパイロットシンボルの送信電力の比を変化させることができるようなものであればよい。
また上述した実施の形態2では、送信電力変更手段12としてゲインコントロール部701A〜701D(図26)を用いた場合について述べたが、本発明の送信電力変更手段はこれに限らず、要は、送信変調信号数が切り換えられると同時に、各変調信号の送信電力を変更できるようなものであればよい。
また上述した実施の形態では、4つの送信アンテナT1〜T4が設けられた無線送信装置において、送信アンテナ数(送信変調信号数)を2つと4つの間、又は1つと4つの間で切り換えるようにした場合について述べたが、これに限らず、送信アンテナ数nでn系統の変調信号を送信するものに広く適用できる。また送信アンテナ数と送信する変調信号の数は一致する必要はなく、送信アンテナ数を、送信変調信号の数より多くし、送信アンテナを選択し、選択した送信アンテナから変調信号を送信してもよい。またアンテナは複数のアンテナで一つのアンテナ部を形成していてもよい。
また上述した実施の形態では、OFDMを行う無線送信装置を例に説明したが、これに限ったものではなく、マルチキャリア方式、シングルキャリア方式でも同様に実施することができる。またスペクトル拡散通信方式を用いてもよい。特にOFDM方式とスペクトル拡散方式とを組み合わせた方式に適用しても同様に実施することができる。
また上述した実施の形態では、特に符号化について触れなかったが、時空間符号化を施さない場合においても実施でき、また、文献“Space-Time Block Codes from Orthogonal Design”IEEE Transactions on Information Theory, pp.1456-1467,vol.45, no.5, July 1999に示されている時空間ブロック符号、文献“Space-Time Block Codes for High Data Rate Wireless Communication : Performance Criterion and Code Construction”IEEE Transactions on Information Theory, pp.744-765, vol.44, no.2, March 1998に示されている時空間トレリス符号を適用していても同様に実施することができる。
さらに変調信号として各アンテナからOFDM信号を送信する場合、変調信号の送信電力を変更するにあたっては、各サブキャリアの送信電力を変更することで変調信号の送信電力を変更してもよく、または使用するサブキャリア数を変更することで送信電力を変更するようにしてもよい。
図35を用いて、使用するサブキャリア数を変更する場合について簡単に説明する。図35は、実施の形態3で説明した図29のような電力波形を作るための具体例を示したものであり、各変調信号A〜Dがそれぞれ64本のサブキャリアから形成されている場合を想定している。時間iから時間i+3にかけては、アンテナT1から64本のサブキャリア全てを使って変調信号Aを送信する。これに対して、時間i+4から時間i+7にかけては、アンテナT1〜T4から、それぞれ16本のサブキャリアを使って各変調信号A〜Dを送信する。ここでサブキャリア1本当たりの送信電力を同じにすれば、図29に示すような電力波形を得ることができる。因みに、時間iから時間i+3で使用しているサブキャリア数と、時間i+4から時間i+7で使用しているサブキャリア数は、共に64本なので、時間iから時間i+3の合成信号の送信電力と、時間i+4から時間i+7の送信電力は等しくなる。
要は、使用するサブキャリア数を変更する場合には、変調信号を送信するアンテナ数が増えると(多重する変調信号数が増えると)、各変調信号(OFDM信号)中で使用するサブキャリア数を減らすようにする。因みに、使用するサブキャリアとは、I−Q平面上での信号点が(0,0)でないシンボルが配置されたサブキャリアをいう。例えばBPSKであれば、(1,0)又は(−1,0)のシンボルが配置されたサブキャリアをいう。逆に、使用しないサブキャリアとは、信号点(0,0)のシンボルが配置されたサブキャリアをいう。
また変調信号として各アンテナからOFDM信号を送信する場合には、各サブキャリアの送信電力を変更する方法と、使用するサブキャリア数を変更する方法の両方を併用することで、複数アンテナから送信する変調信号の合計送信電力を変更するようにしてもよい。