JP2006116633A - 硬質被膜被覆工具、コーティング被膜、および被膜のコーティング方法 - Google Patents

硬質被膜被覆工具、コーティング被膜、および被膜のコーティング方法 Download PDF

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博昭 杉田
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Takaomi Doihara
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Abstract

【課題】 比較的平滑な被膜表面が得られるスパッタリング法による被膜のコーティング技術において、被膜の付着強度を一層高くして加工工具にも適用できるようにする。
【解決手段】 スパッタリング法により硬質被膜をコーティングする際の前処理として、工具母材20に−200Vのバイアス電圧を印加してエッチング(表面荒し処理)を行う際に、そのバイアス電圧を250kHzの周波数で周期的に印加するとともに、1周期毎の負電圧の非印加時間(パルスリバースタイム)を500nsec程度としたため、工具母材20に対する硬質被膜の付着強度が向上し、スクラッチ試験における臨界荷重で100N以上の優れた付着強度が得られるようになり、剥離等による脱落が抑制されて、切削工具として実用上満足できる耐久性が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は硬質被膜被覆工具、コーティング被膜、および被膜のコーティング方法に係り、特に、優れた表面粗さの被膜を高い付着強度で設けることができるコーティング技術に関するものである。
TiAlN等の被膜を所定の部材にコーティングする技術として、従来からアークイオンプレーティング法およびスパッタリング法が多用されている。特許文献1はアークイオンプレーティング法の一例で、特許文献2はスパッタリング法の一例である。
特開平8−333675号公報 特開平5−9011号公報
しかしながら、アークイオンプレーティング法ではマクロパーティクルと称する細かな粒子が発生し、例えば図4の(a-2) 、(b-2) 、(c-2) に示すようにそのマクロパーティクルが表面に突起状に現れるため、加工工具に適用した場合、その突起により加工面粗さが損なわれたり切り屑の排出の妨げになったりすることがあり、研磨加工が必要である。これに対し、スパッタリング法ではそのようなマクロパーティクルが少なく、比較的平滑な被膜表面が得られるが、母材に対する付着強度(密着力)が弱くて剥離し易いという問題があった。このため、スパッタリングに先立って、母材の表面に負のバイアス電圧を印加することによりアルゴンイオン等の正イオンを衝突させて表面荒し処理を行い、その後にスパッタリング法によりコーティングされる被膜の付着強度を向上させることが提案されているが、使用時に被膜に大きな負荷が作用する加工工具に適用するには十分でなかった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、比較的平滑な被膜表面が得られるスパッタリング法による被膜のコーティング技術において、被膜の付着強度を一層高くして加工工具にも適用できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、工具母材の表面に硬質被膜がコーティングされている硬質被膜被覆工具において、(a) 前記硬質被膜はスパッタリング法によって設けられているとともに、前記工具母材に対するその硬質被膜の付着強度はスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であり、(b) その硬質被膜の表面に存在するマクロパーティクルの最大径は10μm以下で、且つ、その硬質被膜を垂直方向から見た平面視においてそのマクロパーティクルが占める面積の割合は10%以下であることを特徴とする。
上記スクラッチ試験は、ダイヤモンドコーン等の圧子針を所定の押付荷重(N)で試験品に押し付けて引っ掻く際に、その押付荷重を連続的に増加させることにより、被膜が破壊したり剥離したりする際に発生するアコースティックエミッション(AE)を検出し、その検出信号が急激に立ち上がった時の荷重を臨界荷重として測定するもので、その臨界荷重の大小で被膜の付着強度を評価することができる。
また、マクロパーティクルの最大径(被膜表面に露出している突起の最長寸法)や占有面積は、例えば走査型電子顕微鏡等により1000倍程度以上の倍率で観察(写真撮影など)することにより測定することができる。因みに、アークイオンプレーティング法の場合に被膜表面に見られるマクロパーティクルの最大径は、被膜組成によっても異なるが一般に15μm以上であり、占有面積は一般に15%以上である。
第2発明は、所定の母材の表面にスパッタリング法によって設けられるコーティング被膜であって、(a) 前記母材に対する付着強度はスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であるとともに、(b) 被膜表面に存在するマクロパーティクルの最大径は10μm以下で、且つ、その硬質被膜を垂直方向から見た平面視においてそのマクロパーティクルが占める面積の割合は10%以下であることを特徴とする。
第3発明は、母材に負のバイアス電圧を印加することによりその母材の表面に正イオンを衝突させて表面荒し処理を行った後に、スパッタリング法によりその母材の表面に被膜をコーティングする方法であって、前記表面荒し処理を行う際に前記バイアス電圧を周期的に変化させることを特徴とする。
第4発明は、第3発明の被膜コーティング方法において、前記負のバイアス電圧を、0より大きく且つ350kHz以下の所定の周波数で周期的に印加することを特徴とする。
第5発明は、第4発明の被膜コーティング方法において、前記負のバイアス電圧を、150〜350kHzの範囲内の周波数で周期的に印加するとともに、1周期毎の負電圧の非印加時間は50〜2000nsecの範囲内であることを特徴とする。
第1発明の硬質被膜被覆工具は、硬質被膜がスパッタリング法によって設けられており、その被膜表面に存在するマクロパーティクルの最大径が10μm以下で、且つ、マクロパーティクルが占める面積の割合が10%以下であるため、そのような工具によって加工される被加工物の加工面粗さが向上するとともに、マクロパーティクルに起因する被膜表面の突起を除去するための研磨加工等が必ずしも必要でなくなる。また、工具母材に対する硬質被膜の付着強度は、スクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であるため、剥離等による脱落が抑制され、工具として実用上満足できる耐久性が得られる。
第2発明は、コーティング被膜そのものに関するもので、必ずしも硬質被膜や加工工具に限られるものではないが、第1発明と同様の作用効果が得られる。すなわち、被膜表面に存在するマクロパーティクルの最大径が10μm以下で、且つ、マクロパーティクルが占める面積の割合が10%以下であるため、平滑な被膜表面が得られるとともに、母材に対する付着強度がスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であるため、剥離等による脱落が抑制されて優れた耐久性が得られる。
第3発明は、母材に負のバイアス電圧を印加することによりその母材の表面に正イオンを衝突させて表面荒し処理を行った後に、スパッタリング法によりその母材の表面に被膜をコーティングする技術に関するもので、表面荒し処理を行う際にバイアス電圧を周期的に変化させるようにしたため、母材に対する被膜の付着強度が向上し、例えばスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上の優れた付着強度が得られるようになる。また、スパッタリング法によって被膜をコーティングするため、例えば被膜表面に存在するマクロパーティクルの最大径が10μm以下で、且つ、マクロパーティクルが占める面積の割合が10%以下となるようにできるなど、研磨等の後加工を行うことなく比較的平滑な被膜表面が得られる。
第4発明は、上記表面荒し処理を行う際のバイアス電圧を、0より大きく且つ350kHz以下の所定の周波数で周期的に印加すようにした場合で、第5発明は、そのバイアス電圧を150〜350kHzの範囲内の周波数で周期的に印加するとともに、1周期毎の負電圧の非印加時間を50〜2000nsecの範囲内とした場合で、母材に対する被膜の付着強度が一層向上する。
第1発明は、例えばエンドミルやフライス、ドリルなどの回転切削工具、或いはその他の切削工具に適用されるが、盛上げタップや転造ダイス等の切削以外の加工工具にも好適に適用される。工具母材としては、超硬合金や高速度工具鋼が好適に用いられるが、炭素鋼など他の種々の工具材料を用いることもできる。第2発明以下の母材としては、上記工具母材の他にバイアス電圧を印加できる種々の材料を採用できる。
スパッタリング法によって設けられる硬質被膜は、例えばTiAlN、TiCN、TiCrN、TiNなど、元素の周期表の IIIb族、IVa族、Va族、VIa族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、或いはこれらの相互固溶体が好適に用いられる。単一組成の単層であっても良いが、ターゲットや導入反応ガスを切り換えることにより、組成が異なる複数種類の被膜を積層して設けることもできるなど、種々の態様が可能である。硬質被膜の膜厚は、被膜の種類や工具などによって適宜定められるが、例えばTiAlNの場合1〜5μm程度が適当である。第2発明以下の被膜としては、上記硬質被膜の他に目的に応じて種々の組成の被膜を採用できる。
第1発明、第2発明では、硬質被膜や被膜の付着強度がスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であるが、第3発明以下の実施に際しては必ずしも80N以上である必要はない。バイアス電圧の周波数を適宜設定することにより、スクラッチ試験における臨界荷重で100N以上の付着強度が得られるようにすることも可能である。
第4発明は、負のバイアス電圧を周期的に印加するもので、例えば負のバイアス電圧をON、OFFするように構成されるが、負電圧を確実に遮断できるように、OFFする際に+(プラス)側のリバース電圧を発生させることが望ましい。このリバース電圧は、例えば負のバイアス電圧の数十%以下(例えば十〜数十V程度)で良く、負電圧の非印加時間の間に一時的に印加するだけでも良いし、負電圧の非印加時間=リバース電圧の印加時間としても良い。バイアス電圧は、パルスすなわち矩形状に変化させることが望ましいが、連続的に変化する波形状などの他の形状で変化させることもできる。
表面荒し処理を行う際に負のバイアス電圧によって母材に衝突させられる正イオンとしては、例えばアルゴンなどの希ガス元素の正イオンが好適に用いられるが、メタルイオン等の他の正イオンを用いることも可能である。表面荒し処理は、スパッタリング装置のチャンバー内で行うことが簡便であり、その場合はスパッタリング法で被膜をコーティングする際にターゲットに衝突させられる正イオン(アルゴンイオンなど)を用いて表面荒し処理を行うことが望ましい。表面荒し処理を行う際の負のバイアス電圧の最大値は、例えば−100〜−300V程度が適当である。
第5発明では1周期毎の負電圧の非印加時間が50〜2000nsecの範囲内とされているが、例えば1周期を基準として1/2以下、或いは1周期の1/100〜1/2の範囲内、1/50〜1/2の範囲内などとしても良い。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたボールエンドミル10を示す図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は先端側から見た底面図、(c) は表面近傍の拡大断面図である。このボールエンドミル10は、円柱形状のシャンク12と、そのシャンク12と同軸上に設けられた刃部14とを一体に備えており、刃部14には、先端の半球状部に軸心に対して対称的に一対のボール刃16が設けられているとともに、そのボール刃16に連続して軸心まわりに捩じれた外周刃18が溝に沿って設けられている。そして、軸心まわりに回転駆動されつつ被削材に対して相対移動させられることにより、上記ボール刃16および外周刃18によって切削加工が行われる。
ボールエンドミル10は、超硬合金製の工具母材20を主体として構成されているとともに、刃部14における工具母材20の表面には硬質被膜22がコーティングされている。硬質被膜22は、膜厚が2〜5μm程度のTiAlN、TiCN、TiCrN、TiNなどで、スパッタリング法によって設けられている。
図2および図3は、硬質被膜22のコーティング方法を説明する図で、図2は前処理として工具母材20の表面を粗面化するエッチング工程であり、図3は硬質被膜22をスパッタリング法でコーティングするスパッタリング工程である。何れもスパッタリング装置30を用いて行われ、図2のエッチング工程では、(a) に示すように、チャンバー32内に配置された工具母材20にバイアス電源34により負のバイアス電圧を印加することにより、正のアルゴンイオンAr+ を工具母材20に衝突させて粗面化する。その場合に、本実施例ではコントローラ36により、(b) に示すようにバイアス電圧を周期的に変化させる。具体的には、−200Vの負のバイアス電圧を250kHzの周波数でパルス状に印加するもので、1周期毎の負電圧の非印加時間にはプラス(+)側のリバース電圧(例えば+20V程度)を印加するとともに、その負電圧の非印加時間(=リバース電圧の印加時間)であるパルスリバースタイムは約500nsecで、1周期(4000nsec)の約1/8である。図2のエッチング工程は表面荒し処理工程である。
図3のスパッタリング工程では、硬質被膜22を構成しているTiAl、Ti等のターゲット38に電源40により負の一定のバイアス電圧(例えば−50〜−60V程度)を印加するとともに、バイアス電源34により工具母材20に負の一定のバイアス電圧(例えば−100V程度)を印加することにより、アルゴンイオンAr+ をターゲット38に衝突させてTiAl、Ti等の構成物質を叩き出す。チャンバー32内には、アルゴンガスの他に窒素ガス(N2 )や炭化水素ガス(CH4 、C2 2 )の反応ガスが所定の流量で導入され、その窒素原子Nや炭素原子Cがターゲット38から叩き出されたTiAlやTi等と結合してTiAlN、TiCN、TiN等となり、工具母材20の表面に硬質被膜22として付着させられる。なお、工具母材20に正の電圧を印加するようにしても良い。
このような本実施例のボールエンドミル10によれば、硬質被膜22がスパッタリング法によって設けられているため、その硬質被膜22の表面に存在するマクロパーティクルの最大径は10μm以下で、且つ、マクロパーティクルが占める面積の割合は10%以下になり、平滑な被膜表面が得られる。これにより、かかるボールエンドミル10によって切削加工される被削材(被加工物)の加工面粗さが向上するとともに、マクロパーティクルに起因する被膜表面の突起を除去するための研磨加工等が不要となる。
また、スパッタリング法により硬質被膜22をコーティングする際の前処理として、工具母材20に−200Vのバイアス電圧を印加してエッチング(表面荒し処理)を行う際に、そのバイアス電圧を250kHzの周波数で周期的に印加するとともに、1周期毎の負電圧の非印加時間(パルスリバースタイム)を500nsec程度としたため、工具母材20に対する硬質被膜22の付着強度が向上し、例えばスクラッチ試験における臨界荷重で100N以上の優れた付着強度が得られるようになり、剥離等による脱落が抑制されて、切削工具として実用上満足できる耐久性が得られる。
因みに、図4の(a-1) は、工具母材が超硬合金製のφ10の2枚刃スクエアエンドミルに上記実施例と同じコーティング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsecによるエッチング+スパッタリング)でTiAlN被膜をコーティングした場合で、(a-2) は同じスクエアエンドミルにアークイオンプレーティング法でTiAlN被膜をコーティングした場合であり、何れも切れ刃の同じ部分を走査型電子顕微鏡により1000倍に拡大して撮影したものである。図4の(b-1) は、工具母材が超硬合金製のR0.4の2枚刃のボールエンドミルに上記実施例と同じコーティング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsecによるエッチング+スパッタリング)でTiAlN被膜をコーティングした場合で、(b-2) は同じボールエンドミルにアークイオンプレーティング法でTiAlN被膜をコーティングした場合であり、何れも切れ刃の同じ部分を走査型電子顕微鏡により1000倍に拡大して撮影したものである。また、図4の(c-1) は、工具母材が超硬合金製のR0.1の2枚刃のボールエンドミルに上記実施例と同じコーティング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsecによるエッチング+スパッタリング)でTiAlN被膜をコーティングした場合で、(c-2) は同じボールエンドミルにアークイオンプレーティング法でTiAlN被膜をコーティングした場合であり、何れも切れ刃の同じ部分を走査型電子顕微鏡により1000倍に拡大して撮影したものである。
図4の各写真から明らかなように、本発明品(a-1) 、(b-1) 、(c-1) は、アークイオンプレーティング法による比較品(a-2) 、(b-2) 、(c-2) に比べて表面のマクロパーティクルが少なく、極めて平滑な被膜表面が得られる。この写真で測定した範囲では、比較品(a-2) 、(b-2) 、(c-2) におけるマクロパーティクルの最大径は18μm程度で、占有面積は20%以上であるのに対し、本発明品(a-1) 、(b-1) 、(c-1) におけるマクロパーティクルの最大径は6μm程度で、占有面積は6%程度であった。
図5は、スクラッチ試験により被膜の付着強度を調べた結果で、この場合は膜厚が約2.5μmのTi0.5 Al0.5 被膜を超硬合金の平坦な表面にコーティングしてスクラッチ試験を行なった。「従来エッチング+スパッタリング」は、−200Vの一定のバイアス電圧でエッチングを行なった後にスパッタリングによりTi0.5 Al0.5 被膜をコーティングした場合で、「新エッチング+スパッタリング」は、前記実施例と同じエッチング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsec)でエッチングした後スパッタリングによりTi0.5 Al0.5 被膜をコーティングした場合で、「アークイオンプレーティング」は、アークイオンプレーティング法でTi0.5 Al0.5 被膜をコーティングした場合である。
そして、スクラッチ試験では、ダイヤモンドコーンを試験品に押し付けて引っ掻く際に、その押付荷重(N)を連続的に増加させることにより、被膜が破壊したり剥離したりする際に発生するアコースティックエミッション(AE)を検出し、その検出信号が急激に立ち上がった時の荷重を臨界荷重として測定した。かかる図5から明らかなように、本発明方法である「新エッチング+スパッタリング」では臨界荷重が110Nで、「従来エッチング+スパッタリング」に比べて約2倍になり、「アークイオンプレーティング」の場合と同程度の付着強度が得られた。
図6は、ユニファイねじ用の盛上げタップ(No4−40)について、本発明方法に従ってTiAlN被膜をコーティングしたもの(新エッチング+スパッタリング)と、アークイオンプレーティング法でTiAlN被膜をコーティングしたもの(アークイオンプレーティング)とをそれぞれ2本ずつ用意し、以下の加工条件でねじ立て加工を行なって工具寿命に達するまでの加工穴数を調べた結果である。本発明方法による「新エッチング+スパッタリング」は、前記実施例と同じコーティング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsecによるエッチング+スパッタリング)による。また、工具寿命に達したか否かは、加工された雌ねじに対する通りねじゲージのゲージアウト(通り抜け不可)によって判断した。
(加工条件)
被加工部材:S45C
盛上げ加工速度:10m/min
下穴形状:通り穴、φ2.55×6mm
有効長さ:6mm
切削油剤:塩素フリータイプ水溶性
使用機械:立型マシニングセンタ
図6の結果から明らかなように、本発明方法の「新エッチング+スパッタリング」によれば、「アークイオンプレーティング」に比べて工具寿命が30%程度向上した。これは、スパッタリング法はアークイオンプレーティング法に比べてマクロパーティクルが少なく、工具表面の面粗さが優れていることから、盛上げ性が良くなり、新エッチングによる付着強度の向上と相まって、被膜の耐久性が向上したためと考えられる。
図7は、工具母材が超硬合金製のφ9.5の2枚刃スクエアエンドミルについて、(b) に示す3種類の試験品を用意し、(a) に示す2種類の切削加工を行って耐久性(摩耗幅)を調べた結果を(c) および(d) に示した図である。(b) の3種類の試験品の「アーク放電式」は、アークイオンプレーティング法によりTiAlN被膜をコーティングした場合で、「スパッタ条件1」は、前記実施例と同じコーティング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsecによるエッチング+スパッタリング)でTiAlN被膜をコーティングした場合で、「スパッタ条件2」は、−200Vの一定のバイアス電圧でエッチングを行なった後にスパッタリングによりTiAlN被膜をコーティングした場合である。上記「スパッタ条件1」によるコーティング方法は、本発明方法に相当する。なお、「アーク放電式」においても、アークイオンプレーティング法によるコーティングに先立って、−1000Vの一定のバイアス電圧によりメタルイオンを用いたエッチング処理が施されている。
図7の(c) は、(a) の試験No1による切削加工で56m加工した時点における逃げ面摩耗幅を示したもので、図7の(d) は、(a) の試験No2による切削加工で77m加工した時点における逃げ面摩耗幅を示したものであるが、何れの場合も本発明方法「スパッタ条件1」によれば、「スパッタ条件2」は勿論「アーク放電式」に比べても、摩耗幅が少なくて優れた耐久性が得られる。これは、スパッタリング法による被膜表面の面粗さの向上と、新エッチング(パルス印加)による付着強度の向上とが相まって、被膜の耐久性が向上するためと考えられる。
図8は、工具母材が超硬合金製のφ10の2枚刃スクエアエンドミルについて、本発明方法に従ってTiAlN被膜をコーティングしたもの(新エッチング+スパッタリング)と、アークイオンプレーティング法でTiAlN被膜をコーティングしたもの(アークイオンプレーティング)とを用意し、以下の加工条件で切削加工を行なって被削面の面粗さ(工具軸方向の輪郭曲線)を調べた結果である。本発明方法による「新エッチング+スパッタリング」は、前記実施例と同じコーティング方法(−200V、250kHz、パルスリバースタイム=500nsecによるエッチング+スパッタリング)による。
(加工条件)
被削材:S50C
加工方法:側面切削(ダウンカット)
切削速度:200m/min
送り速度:0.05mm/t
切込み:aa=10mm、ar=0.1mm
切削油剤:エアブロー
図8の(a) の最大高さRzは1.0μmで、(b) の最大高さRzは2.6μmであり、(a) の本発明方法「新エッチング+スパッタリング」によれば、(b) の「アークイオンプレーティング」に比べて加工面粗さが大幅に向上する。
図9は、図8と同じ2種類のスクエアエンドミルを用意し、以下に示すように図8とは異なる加工条件で切削加工を行なって被削面の面粗さ(工具軸方向の輪郭曲線)を調べた結果である。図9の(a) の最大高さRzは2.0μmで、(b) の最大高さRzは4.0μmであり、(a) の本発明方法「新エッチング+スパッタリング」によれば、(b) の「アークイオンプレーティング」に比べて加工面粗さが大幅に向上する。
(加工条件)
被削材:SUS304
加工方法:側面切削(ダウンカット)
切削速度:50m/min
送り速度:0.03mm/t
切込み:aa=10mm、ar=0.1mm
切削油剤:エアブロー
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明方法に従って硬質被膜がコーティングされたボールエンドミルの一例を説明する図で、(a) は概略正面図、(b) は底面図、(c) は刃部の表面の拡大断面図である。 図1のボールエンドミルの硬質被膜をコーティングする際のエッチング工程を説明する図である。 硬質被膜をコーティングするスパッタリング工程を説明する図である。 本発明方法に従って硬質被膜がコーティングされた工具およびアークイオンプレーティング法によって硬質被膜がコーティングされた工具の切れ刃部分の電子顕微鏡写真を比較して示す図である。 本発明方法に従ってコーティングした被膜および従来方法でコーティングした被膜の付着強度を調べた結果を示す図である。 本発明方法に従って硬質被膜がコーティングされた工具およびアークイオンプレーティング法によって硬質被膜がコーティングされた工具の耐久性を調べた結果を示す図である。 本発明方法に従って硬質被膜をコーティングした工具および従来方法で硬質被膜をコーティングした工具の耐久性(摩耗幅)を調べた結果を説明する図である。 本発明方法に従って硬質被膜がコーティングされた工具およびアークイオンプレーティング法によって硬質被膜がコーティングされた工具を用いて所定の切削加工を行ない、被削面の面粗さ(工具軸方向の輪郭曲線)を測定した結果を示す図である。 図8と同じ2種類の工具を用いて異なる切削加工を行ない、被削面の面粗さ(工具軸方向の輪郭曲線)を測定した結果を示す図である。
符号の説明
10:ボールエンドミル(硬質被膜被覆工具) 20:工具母材(母材) 22:硬質被膜(被膜)

Claims (5)

  1. 工具母材の表面に硬質被膜がコーティングされている硬質被膜被覆工具において、
    前記硬質被膜はスパッタリング法によって設けられているとともに、前記工具母材に対する該硬質被膜の付着強度はスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であり、
    該硬質被膜の表面に存在するマクロパーティクルの最大径は10μm以下で、且つ、該硬質被膜を垂直方向から見た平面視において該マクロパーティクルが占める面積の割合は10%以下である
    ことを特徴とする硬質被膜被覆工具。
  2. 所定の母材の表面にスパッタリング法によって設けられるコーティング被膜であって、
    前記母材に対する付着強度はスクラッチ試験における臨界荷重で80N以上であるとともに、
    被膜表面に存在するマクロパーティクルの最大径は10μm以下で、且つ、該硬質被膜を垂直方向から見た平面視において該マクロパーティクルが占める面積の割合は10%以下である
    ことを特徴とするコーティング被膜。
  3. 母材に負のバイアス電圧を印加することにより該母材の表面に正イオンを衝突させて表面荒し処理を行った後に、スパッタリング法により該母材の表面に被膜をコーティングする方法であって、
    前記表面荒し処理を行う際に前記バイアス電圧を周期的に変化させる
    ことを特徴とする被膜のコーティング方法。
  4. 前記負のバイアス電圧を、0より大きく且つ350kHz以下の所定の周波数で周期的に印加する
    ことを特徴とする請求項3に記載の被膜のコーティング方法。
  5. 前記負のバイアス電圧を、150〜350kHzの範囲内の周波数で周期的に印加するとともに、1周期毎の負電圧の非印加時間は50〜2000nsecの範囲内である
    ことを特徴とする請求項4に記載の被膜のコーティング方法。
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