JP2006070069A - 熱可塑性樹脂材料及びそれを用いた光学素子 - Google Patents

熱可塑性樹脂材料及びそれを用いた光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、温度に対する屈折率変化の極めて小さい熱可塑性樹脂材料と、それを用いた光学素子を提供する。
【解決手段】 有機重合体からなるホスト材料中に、半導体微粒子が分散され、かつ屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、下式(A)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
式(A)
0≦|dn/dT|≦5.0×10-5
【選択図】 なし

Description

本発明は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられ、屈折率の温度変化率が小さい熱可塑性樹脂材料とそれを用いた光学素子に関する。
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1参照。)等が知られている。
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような、複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通とすることがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
一方、プラスチックを材料として適用した光学素子ユニットにおいては、ガラスレンズのような光学的安定性を有する物質であることが求められている。例えば、環状オレフィンのような光学的プラスチック物質は、湿度に関して大幅に改善された屈折率の安定性を有すのに対し、温度に対する屈折率の安定性の改良は未だ十分でないのが現状である。
上記のようなプラスチックレンズの光学的屈折率を修正する方法の1つとして、微細粒子充填材を使用する方法が、種々提案されている。
この微細粒子充填材は、光学的プラスチックの屈折率を修正するために使用され、粒子サイズが十分に小さい充填材を用いることによって、充填材による光散乱を起こさず、充填されたプラスチックは、レンズとしての十分な透明性を維持することができるものである。例えば、プラスチックの屈折率を増加させるための微細粒子の添加を記載する技術文献としては、C.BeckerとP.Mueller及びH.Schmidtの編による“シリカ微細粒子で修飾された表面を有する熱可塑性微細合成物質における光学的及び熱力学調査”、SPIE Proceedings第3469巻、1998年7月、88−98ページ、並びにB.BrauneとP.Mueller及びH.Schmidtによる“光学的応用のための酸化タンタルナノマー(Tantalum Oxide Nanomers)”、SPIE Proceedings第3469巻、1998年7月、124−132ページ等に記載されている。
上述のように、透明プラスチック材料はガラスに比べ軽量、安価なため、光学系において様々な用途に用いられている。しかし、温度及び湿度に対する屈折率の安定性は、ガラスよりも劣るため改良が望まれている。温度に対する屈折率の安定性は、一般に、下記の式(D)で表される屈折率の温度依存性dn/dTにより表すことができる。
式(D)
dn/dT=(n−1){(1/ρ)(dρ/dT)+(1/[R])(d[R]/dT)}
式中、ρは物質の密度、[R]は物質の分子屈折率を表す。
有機重合体は、ほぼ例外なく温度上昇とともに屈折率は低下する(dn/dT<0)。例えば、下記に示す様に、一般的に光学的用途に用いられる有機重合体材料のdn/dTは−10-4/Kでほぼ同等である。
〔有機重合体材料〕 〔dn/dT(10-4/K)〕
ポリメタクリル酸メチル −1.1
ポリカーボネート −1.2
ポリスチレン −1.1
dn/dTの絶対値が小さい熱可塑性樹脂材料を提供する方法としては、材料自体の熱的性質、すなわち式(C)におけるdρ/dT、具体的には密度の温度依存性を小さくする方法が考えられる。この方法としては、樹脂材料のマトリクスを強化するため、架橋剤等の添加物を混合する方法等が考えられるが、dn/dTを改良するのに充分な添加物は未だ見出されていないのが現状である。
これに対し、例えば、dn/dT<0であるホスト材料中に、dn/dT>0である物質を混合することで、dn/dTの絶対値を小さくする方法が考えられる。無機材料の中には、分子内配位の温度依存変化の結果、dn/dT>0となるものがあることが知られているため、dn/dT<0である有機重合体からなるホスト材料中に、dn/dT>0である無機微粒子を混合することによりdn/dTの絶対値を小さくすることが可能と考えられ、感温性を有するポリマー状ホスト材料と、分散された微細粒子物質から構成され、感温性が減少された微細合成物光学製品が提案されている(例えば、特許文献2〜8参照。)。しかしながら、例えば、特許文献6に記載の式2で示されるように、ホスト材料のdn/dTを50%減少するためには、無機微粒子を40質量%以上混合する必要があることが示されている。このように多量の無機微粒子を混合した樹脂材料では、比重が大きく、透明度が低いという弊害が生じる。また、樹脂中に分散した無機微粒子が凝集し、長期保存した際に性能が変化するという問題もあり、実用化に適さない樹脂材料を提供することしかできていないのが現状である。
一方、無機微粒子を含有する樹脂材料については多くの提案がなされている。半導体微粒子を含有する樹脂材料として、半導体微粒子を高分子鎖に共有結合させた樹脂組成物(例えば、特許文献9参照。)、あるいは、硫化亜鉛微粒子を含む樹脂組成物の記載(例えば、特許文献10参照。)がある。しかしながら、これらは半導体微粒子の添加による樹脂組成物の高屈折率化を目的としており、本発明の目的とするdn/dTの改良に関する記載はなく、本発明の如く樹脂材料の屈折率の温度依存性を小さくすることを目的とし半導体微粒子を樹脂中に分散することは知られていなかった。
特開2002−105131号公報 (第4頁) 特開2002−207101号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−240901号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−241560号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−241569号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−241592号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−241612号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−303701号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−105325号公報 (特許請求の範囲) 特開2003−73563号公報 (特許請求の範囲)
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、温度に対する屈折率変化の極めて小さい熱可塑性樹脂材料と、それを用いた光学素子を提供する。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
有機重合体からなるホスト材料中に、半導体微粒子が分散され、かつ屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、下式(A)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
式(A)
0≦|dn/dT|≦5.0×10-5
(請求項2)
光線透過率が70%以上である透明樹脂材料であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂材料。
(請求項3)
前記半導体微粒子の平均粒子径が、1nm以上、30nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂材料。
(請求項4)
前記有機重合体からなるホスト材料が、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
(請求項5)
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であるホスト材料中に、平均粒子径が1nm以上、30nm以下である半導体微粒子が分散され、屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、下式(B)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
式(B)
0≦|dn/dT|≦9.0×10-5
Figure 2006070069
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
Figure 2006070069
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、m及びnはそれぞれ0、1または2を表し、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基を表し、R9及びR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、また、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。〕
(請求項6)
下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを総含有量が90質量%以上になるように含有し、かつ該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体であるホスト材料中に、平均粒子径が1nm以上、30nm以下である半導体微粒子が分散され、屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、前式(B)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
Figure 2006070069
〔一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基を表し、一般式(1)〜(3)において、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。一般式(3)において、「−−−」は炭素−炭素飽和結合または不飽和結合を表す。〕
(請求項7)
前記屈折率nの温度Tに対する変化率dn/dTが、下式(C)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
式(C)
−2.5×10-5≦dn/dT≦1.0×10-6
(請求項8)
前記半導体微粒子の含有量が、前記有機重合体からなるホスト材料の質量に対し、0.01質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
(請求項9)
前記半導体微粒子が、表面処理されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
(請求項10)
請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料を用いて成型することを特徴とする光学素子。
本発明によれば、温度に対する屈折率変化の極めて小さい熱可塑性樹脂材料とそれを用いた光学素子を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、1)有機重合体からなるホスト材料中に、半導体微粒子が分散され、かつ屈折率の温度変化率の絶対値|dn/dT|が前式(A)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料、2)炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、前記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であるホスト材料中に、平均粒子径が1nm以上、30nm以下である半導体微粒子が分散され、屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、前式(B)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料、あるいは3)前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを総含有量が90質量%以上になるように含有し、かつ該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体であるホスト材料中に、平均粒子径が1nm以上、30nm以下である半導体微粒子が分散され、屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、前式(B)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料により、温度変化に対する屈折率変化が極めて小さい熱可塑性樹脂材料(以下、単に樹脂材料ともいう)を得ることができ、この熱可塑性樹脂材料を光学素子に適用することにより、屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明性が高く、さらに高温高湿環境下で長期間保存しても透明性の劣化を生じない光学素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
更に、本発明の半導体微粒子を含有する熱可塑性樹脂材料(以下、単に樹脂材料ともいう)においては、上記の構成に加えて、下記のA)〜F)のいずれか1項に記載の構成とすることにより、本発明の上記目的効果がより一層発揮されることを見出した。
すなわち、
A)光線透過率が70%以上である透明樹脂材料とすることにより、温度変化に対する屈折率変化が小さく、かつ透明性の高い熱可塑性樹脂材料及び光学素子を得ることができた。
B)平均粒子径が1nm以上、30nm以下の半導体微粒子を用いることにより、温度変化に対する屈折率変化が小さく、かつ透明性の高い熱可塑性樹脂材料及び光学素子を得ることができた。
C)有機重合体からなるホスト材料として、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、透明性が高く、さらに高温高湿環境下で長期間保存しても透明性の劣化を生じない熱可塑性樹脂材料及び光学素子を得ることができた。
D)熱可塑性樹脂材料の屈折率の温度変化率dn/dTを、前式(B)で規定する−2.5×10-5≦dn/dT≦1.0×10-6の範囲とすることにより、更に温度変化に対する屈折率変化が小さく、その結果、温度変化に対する光学特性変動が極めて小さい熱可塑性樹脂材料及び光学素子を得ることができた。
E)半導体微粒子の含有量を、有機重合体からなるホスト材料の質量に対し、0.01質量%以上、30質量%以下とすることにより、更に温度変化に対する屈折率変化が小さく、かつ透明性の高い熱可塑性樹脂材料及び光学素子を得ることができた。
F)半導体微粒子が表面処理されていることにより、更に温度変化に対する屈折率変化が小さく、かつ透明性の高い熱可塑性樹脂材料及び光学素子を得ることができた。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂材料としては、有機重合体からなるホスト材料中に、半導体微粒子が分散されていることを特徴とする。
《半導体微粒子》
はじめに、本発明に係る半導体微粒子について説明する。
本発明に係る半導体微粒子は、平均粒子径が1nm以上、30nm以下が好ましく、1nm以上、20nm以下がより好ましく、さらに好ましくは1nm以上、10nm以下である。平均粒子径が1nm未満であると、半導体微粒子の分散が困難であるため所望の性能が得られない恐れがあり、また平均粒子径が30nmを超えると、得られる材料組成物が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがある。ここでいう平均粒子径は粒子と同体積の球に換算した時の直径を言う。
本発明において用いる半導体微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、好適には球状の微粒子が用いられる。また、粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
本発明の半導体微粒子としては、半導体結晶組成の微粒子であれば特に制限はないが、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものが望ましい。
具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al23)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga23)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In23)、硫化インジウム(In23)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As23)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb23)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi23)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe34)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta25)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti25、Ti23、Ti59等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr24)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr24)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF21515や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
これらのうち、光学用途の樹脂材料として好適に用いられる半導体超微粒子は、バルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.0電子ボルト以上であるもの、例えば窒化ホウ素(BN)、砒化ホウ素(BAs)、窒化ガリウム(GaN)やリン化ガリウム(GaP)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(III−V族化合物半導体)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(II−VI族化合物半導体)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等である。また、本発明のdn/dT改良を効果的に発現させるには半導体微粒子自体のdn/dT値が正に大きい値を示すものが好ましく、dn/dT値が5×10-5以上、0.01以下であることが好ましく、特に好ましくは1×10-5以上、5×10-2以下である。
《半導体微粒子の製造方法》
本発明に係る半導体微粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、分子ビームエピタキシー法あるいはCVD法等の高真空プロセス、原料水溶液を非極性有機溶媒中の逆ミセルとして存在させ該逆ミセル相中にて結晶成長させる方法(以下、逆ミセル法と呼ぶ)、熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させる方法(以下、ホットソープ法と呼ぶ)前記のホットソープ法と類似の半導体結晶成長を伴う溶液反応であるが、酸塩基反応を駆動力として比較的低い温度で行う方法等が挙げられる。特にホットソープ法は、逆ミセル法に比べて粒径分布と純度に優れた半導体結晶が得られ、生成物は有機溶剤に通常可溶である特徴があることから好ましく用いられる。ホットソープ法における液相での結晶成長の過程の反応速度を望ましく制御する目的で、半導体構成元素に適切な配位力のある配位性有機化合物が液相成分(溶媒と配位子を兼ねる)として選択される。かかる配位性有機化合物の例としては、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のω−アミノアルカン類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類等が挙げられる。これらのうち、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類やドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等の炭素数12以上のω−アミノアルカン類等が好適であり、中でもトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、及びヘキサデシルアミン等の炭素数16以上のω−アミノアルカン類は最適である。
本発明においては、本発明に係る半導体微粒子が表面処理を施されていることが好ましい。無機粒子の表面処理に用いる表面修飾剤としては、例えば、シラン化合物、チタネート化合物、カルボキシル化合物、メルカプト化合物、アミン化合物等が挙げられるが、反応速度などの特性や表面修飾の条件などに適した化合物を用いることができる。より具体的には、例えば、硫化亜鉛の場合は、ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリー第100巻468−471頁(1996年)に記載された公知の方法を用いることができる。これらの方法に従えば、平均粒子直径5nmの酸化チタンはチタニウムテトライソプロポキサイドや四塩化チタンを原料として、適当な溶媒中で加水分解させる際に適当な表面修飾剤を添加することにより容易に製造することができる。また、1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよい。さらに、用いる化合物によって得られる表面修飾微粒子の性状は異なることがあり、材料組成物を得るにあたって用いるホスト樹脂材料との親和性を、表面修飾する際に用いる化合物を選ぶことによって図ることも可能である。表面修飾の割合は特に限定されるものではないが、表面修飾後の微粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
《有機重合体と半導体微粒子の混合》
本発明の樹脂材料は、後述する有機重合体からなるホスト材料と半導体微粒子から成るが、その調製方法は特に限定されるものではない。すなわち、有機重合体からなるホスト材料と半導体微粒子をそれぞれ独立して調製し、その後に両者を混合させる方法、予め調製した半導体微粒子が存在する条件でホスト材料を調製する方法、予め調製したホスト材料が存在する条件で半導体微粒子を調製する方法、樹脂と半導体微粒子の両者を同時に調製する方法など、いずれの方法も採用できる。具体的には、例えば、有機重合体からなるホスト材料(熱可塑性樹脂)が溶解した溶液と、半導体微粒子が均一に分散した分散液の二液を均一に混合し、この混合液を熱可塑性樹脂に対して溶解性が乏しい溶液中に添加することにより、目的とする材料材料を得る方法を好適に挙げることができるが、これに限定されるものではない。
本発明における樹脂材料において、ホスト材料と半導体微粒子の混合の状態は特に限定されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、均一に分散した状態で混合していることが望ましい。混合の程度が不十分である場合には、特に、屈折率やアッベ数、光線透過率などの光学特性に影響を及ぼすことが懸念され、また熱可塑性や溶融成形性などの樹脂加工性にも悪影響する恐れがある。混合の程度は、その調製方法に影響されることが考えられ、用いるホスト材料及び半導体微粒子の特性を十分に勘案して、適宜方法を選択することが重要である。ホスト材料と半導体微粒子の両者がより均一に混合するために、ホスト材料と半導体微粒子を直接結合させる方法等も、本発明において好適に用いることができる。
本発明に係る半導体微粒子の含有量は、本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に限定されず、ホスト材料と半導体微粒子の種類により任意に決めることができるが、半導体微粒子の含有率が高いと光散乱により、光線透過率等の光学特性が劣化するため好ましくない。従って、本発明に係る半導体微粒子の含有量は、ホスト材料に対し40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、30質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上、10質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂材料は、屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明度が高く、光学的に優れた材料組成物であり、さらには熱可塑性または射出成形性を有するために、成形加工性に非常に優れた熱可塑性材料である。この優れた光学特性と成形加工性を併せ持った材料は、これまでに開示されている材料では達成することができなかった特性であり、特定の樹脂と特定の半導体微粒子から成ることが、この特性に寄与していることが考えられる。
《屈折率の温度変化率(dn/dT)》
本発明の半導体微粒子を含有する熱可塑性樹脂材料は、屈折率の温度変化率(dn/dT)の絶対値が、前記式(A)で規定する範囲であることが特徴である。
本発明でいう屈折率nの温度Tに対する変化率の指標であるdn/dTとは、材料の屈折率(n)が温度(T)の変化に対しdn/dTの割合で変化することを示している。dn/dTの値は、各温度で樹脂材料の屈折率を測定し、屈折率の温度変化率を読みとることで求めることができる。
屈折率の測定方法としては、例えば、エリプソメトリ、分光反射率法、光導波路法、Abbe法、最小偏角法等から熱可塑性樹脂材料の形態に応じて好ましい方法を選択することができる。屈折率の温度変化率は、下記の式(D)で表されるため、物質の密度や物質の分子屈折率の温度変化率より計算によって求めることもできる。
式(D)
dn/dT=(n−1){(1/ρ)(dρ/dT)+(1/[R])(d[R]/dT)}
ここで、ρは物質の密度、[R]は物質の分子屈折率を表す。
また、本発明の樹脂材料においては、有機重合体からなるホスト材料として、請求項5に係るオレフィン系重合体、あるいは請求項6に係る脂環式炭化水素系共重合体を用いる場合、このdn/dTの絶対値である|dn/dT|が0以上、9.0×10-5以下であることが特徴であり、好ましくは|dn/dT|が0以上、5.0×10-5以下であり、更に好ましくは、前記式(B)で規定するごとく、dn/dTが−2.5×10-5以上、1.0×10-6以下である。
有機重合体は、上述のようにほぼ例外なく温度上昇とともに屈折率は大きく低下する(dn/dT≒−10-4/K)。従って、本発明の熱可塑性樹脂材料を用いることにより、従来よりも温度安定性に優れた光学素子を提供することができる。
本発明のdn/dTの絶対値が小さい熱可塑性樹脂材料を提供する方法としては、材料自体の熱的性質、すなわち前記式(D)のdρ/dTで表される密度の温度依存性を小さくする方法が考えられる。この方法としては、樹脂材料のマトリクスを強化するために架橋剤等の添加物を混合する方法等が考えられるが、本発明で規定する条件を満たすdn/dTを達成するのに充分な添加物は、従来は見出されていなかった。
これに対し、例えば、dn/dT<0であるホスト材料中に、dn/dT>0である物質を混合することでdn/dTの絶対値を小さくする方法が知られている。無機材料の中には、分子内配位の温度依存変化の結果、dn/dT>0となるものがあることが知られているため、dn/dT<0である有機重合体からなるホスト材料中に、dn/dT>0である無機微粒子を混合することによりdn/dTの絶対値を小さくすることが可能と考えられる。例えば、特開2002−207101号、同2002−241592号等にはこの考え方に基づく方法が提案され、該明細書中の式2で示されるようにホスト材料のdn/dTを50%減少するためには、無機微粒子を40質量%以上混合する必要があることが示されている。従って、該発明により本発明の熱可塑性樹脂材料を得るためには、dn/dTが正に非常に大きい無機微粒子を見出すか、あるいは無機微粒子の混合質量が多いため比重が大きく透明度の低い、実用化に適さない樹脂材料を提供することしかできないことが判る。
それに対し、本発明者等は上記2つの方法によるdn/dTの絶対値の低減効果を併せ持つ無機微粒子として、半導体微粒子を見出し、本発明を達成するに至った。
すなわち、本発明の方法によれば、特開2002−207101号に記載の方法では達成が難しかった本発明で規定する屈折率の温度依存性が小さく、しかも実用化可能な比重、透明度である熱可塑性樹脂材料を提供できる。
《有機重合体からなるホスト材料》
次いで、本発明の熱可塑性樹脂材料を構成する有機重合体からなるホスト材料について説明する。
本発明に係る有機重合体ホスト材料としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂材料であれば特に制限はないが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましく、例えば、特開2003−73559に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を表1に示す。
Figure 2006070069
本発明の樹脂材料においては、有機重合体からなるホスト材料が、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、前記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であることを特徴とする。
前記一般式(I)において、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、Ra及びRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、Ra、Rbの結合はなくなり、両側の炭素原子が結合して5員環を形成する。
1〜R18ならびにRa及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
更に、前記一般式(I)において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで、形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
Figure 2006070069
上記例示において、1または2の番号が付された炭素原子は、一般式(I)におけるそれぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常、炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基及びイソプロピリデン基を挙げることができる。
次いで、前記一般式(II)で表される環状オレフィンについて説明する。
前記一般式(II)において、p及びqは0または1以上の整数であり、m及びnは0、1または2である。またR1〜R19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。ハロゲン原子は、前記一般式(I)におけるハロゲン原子と同義である。
炭化水素基としては、それぞれ独立に炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基及びアラルキル基、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基及びフェニルエチル基が例示される。
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基などを例示することができる。これらの炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されていてもよい。
ここで、R9及びR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R9及びR13で表される基が、またはR10及びR11で表される基が、互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)またはプロピレン基(−CH2CH2CH2−)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。
更に、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、例えば、下記のようなR15とR12が更に芳香族環を形成している基が挙げられる。
Figure 2006070069
ここでqは、一般式(II)におけるqと同義である。
上記のような一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンのより具体的な例を以下に示す。一例として、
Figure 2006070069
で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネンともいう。上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこの化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
更に他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体を例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エンなどのトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン誘導体、トリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エンなどのトリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エン誘導体、
Figure 2006070069
で示されるテトラシクロ[4.4.0.125.1710]ドデカ−3−エン(以下、単にテトラシクロドデセンともいう。上記式中において、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
その置換基の炭化水素基としては、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等を例示することができる。
更に他の誘導体として、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
また、テトラシクロ[4.4.0.125.1710]ドデカ−3−エン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.136.027.0913]ペンタデカ−4−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.125.1912.0813]ペンタデカ−3−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.136.027.0913]ペンタデカ−4,10−ジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.125.1912.0813]ヘキサデカ−3−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.136.027.0914]ヘキサデカ−4−エン及びその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.136.11013.027.0914]ヘプタデカ−4−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.129.147.11117.038.01216]エイコサ−5−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.136.11017.11215.027.01116]エイコサ−4−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.129.147.11118.038.01217]ヘンエイコサ−5−エン及びその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.129.147.11118.11316.038.01217]ドコサ−5−エン及びその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.147.11320.11518.0210.038.01221.01419]ペンタコサ−5−エン及びその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.158.11421.11619.0211.049.01322.01520]ヘキサコサ−6−エン及びその誘導体などが挙げられる。
本発明で使用することのできる前記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンの具体例は、上述したごとくであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7−145213号公報の段落番号〔0032〕〜同〔0054〕に示されており、本発明においても、同公報に例示されるものを環状オレフィンとして使用することができる。
上記のような一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンの製造方法としては、例えば、シクロペンタジエンと、対応する構造を有するオレフィン類とのディールス・アルダー反応を挙げることができる。
これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明で用いられる環状オレフィンからなる処理前重合体は、前記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンを用いて、例えば、特開昭60−168708号、同61−120816号、同61−115912号、同61−115916号、同61−271308号、同61−272216号、同62−252406号及び同62−252407号などの公報において提案された方法に従い、適宜、条件を選択することにより製造することができる。
そのうち、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有している。なおα−オレフィン及び環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定される。
ここで、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を構成する炭素原子数が2〜20のα−オレフィンについて説明する。
α−オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、テトラデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、エイコサ−1−エンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチルブタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、3−エチルペンタ−1−エン、4−メチルペンタ−1−エン、4−メチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルペンタ−1−エン、4−エチルヘキサ−1−エン、3−エチルヘキサ−1−エンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
このα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位と環状オレフィンから誘導される構成単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶融した際に、その溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。例えば、極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶融することにより確認することができる。
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記一般式(III)または一般式(IV)で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
Figure 2006070069
上記一般式(III)において、n、m、q、R1〜R18ならびにRa及びRbは、前記一般式(I)におけるそれぞれと同義である。
Figure 2006070069
上記一般式(IV)において、n、m、p、q及びR1〜R19は、前記一般式(II)におけるそれぞれと同義である。
また、本発明に係るα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、必要に応じ、本発明の目的効果を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよい。
このような他のモノマーとしては、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンまたは環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)シクロヘキサ−1−エン及びシクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、ヘキサ−1,4−ジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチルヘキサ−1,4−ジエン、オクタ−1,7−ジエン、ジシクロペンタジエン及び5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類を挙げることができる。
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記のような他のモノマーから誘導される構成単位を含有させる場合には、通常、20モル%以下であり、10モル%以下の量とすることが好ましい。
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと前記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンとを用いて、前述の公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合反応を、炭化水素溶媒中で行い、この炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。
また、この共重合反応では、固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表4族の遷移金属としては、例えば、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムが挙げられ、これらの遷移金属が少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している触媒である。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。ここで、シクロペンタジエニル基にはアルキル基が置換していてもよい。これらの基は、アルキレン基などの他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
また、有機アルミニウムオキシ化合物及び有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒については、例えば、特開昭61−221206号、同64−106号及び同2−173112号公報等に記載されているものを使用することができる。
本発明において、水素添加処理の処理前重合体として用いられるグラフト変性物は、上記のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物である。
ここで用いられる変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(登録商標))などの不飽和カルボン酸、更にこれら不飽和カルボン酸の誘導体例えば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物などが例示される。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレイル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
これらの中では、α,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)及びこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、2種以上組合わせて用いることもできる。
このようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物は、所望の変性率になるように、変性剤をこの共重合体に配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性のエチレン・環状オレフィンランダム共重合体とを所望の変性率になるように混合することにより製造することもできる。
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体と変性剤とからグラフト変性物を得るには、従来公知のポリマー変性方法を広く適用することができる。例えば、溶融状態にあるエチレン・環状オレフィンランダム共重合体に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいはエチレン・環状オレフィンランダム共重合体の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法などによりグラフト変性物を得ることができる。
このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。また、グラフト反応は、有機過酸化物及びアゾ化合物などのラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
本発明では、水素添加処理の処理前重合体として、上記のようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、及びそのグラフト変性物のいずれかを単独で用いることができ、また同じグループの2種以上や、異なる2以上のグループを組み合わせて用いることもできる。
本発明に係る環状構造を有するオレフィン系重合体は、DSCで測定(昇温速度10℃/min)したガラス転移温度(Tg)が、60〜230℃であることが好ましく、更には、70〜210℃であることが好ましい。
また、環状構造を有するオレフィン系重合体は、非晶性または低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、更に好ましくは2%以下である。
135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]は、好ましくは0.01〜20dl/gであり、より好ましくは0.05〜10dl/g、更に好ましくは0.08〜5dl/gである。
軟化点は、サーモメカニカルアナライザーで測定した軟化点(TMA)として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。ここで、軟化点の測定は、デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により行った。すなわちシート上に荷重49gをかけた石英製針を乗せ、5℃/minの速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度を軟化点(TMA)とした。
上記の環状構造を有するオレフィン系重合体のなかでは、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を水添処理して得られ、軟化点(TMA)が80℃以上であり、かつ極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであるものが好ましい。
本発明における水添処理は、前記した処理前重合体を、環状飽和炭化水素を主成分とする溶媒中で、水素添加触媒の存在下に、水素添加することが好ましい。処理前重合体の溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、デカリン、シクロヘプタン、シクロペンタン、n−ヘプタン、n−オクタンなどが挙げられる。これらは1種単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
これらの中では、シクロヘキサン、n−ヘキサンが好ましく、特に、シクロヘキサンを50質量%以上含有する溶剤が好ましい。
水素添加触媒金属としては、例えば、Pt、Rh、Pd、Cu、Y、Fe、Ru、W、Znなどが挙げられる。好ましくは、ラニーニッケル、活性炭担持パラジウム、ウィルキンソン錯体が用いられる。
水素添加の方法は、例えば、処理前重合体を1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%溶融した前記水素添加用の溶媒に、この重合体に対して0.5〜10質量%の濃度の触媒(金属として)を加え、反応温度20〜200℃、好ましくは40〜120℃、水素分圧0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaにおいて行う。反応時間は、要求される色相の改善度の応じて適宜選ばれるが、通常、5分〜12時間、好ましくは5分〜6時間の間で選ばれる。反応後、触媒は濾過などにより除去される。
本発明の樹脂材料においては、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを総含有量が90質量%以上になるように含有し、かつ該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体であることを特徴とする。
前記一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。その中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基の場合が、耐熱性、低吸水性に優れるので好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができる。極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基;炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
前記一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基であり、それを構成する炭素数は、通常4個〜20個、好ましくは4個〜10個、より好ましくは5個〜7個である。脂環式構造を構成する炭素数をこの範囲にすることで、複屈折を低減することができる。また脂環式構造は単環構造に限らず、例えば、ノルボルナン環やジシクロヘキサン環などの多環構造のものでもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性、耐熱性が向上することができる。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素には、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が耐熱性、低吸水性の点で好ましい。
また、一般式(3)における「−−−」は、主鎖中の炭素−炭素飽和、又は炭素−炭素不飽和結合を示すが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性に優れる点で好ましい。
Figure 2006070069
また、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(5)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性に優れる点で好ましい。
Figure 2006070069
また、前記一般式(3)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(6)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性に優れる点で好ましい。
Figure 2006070069
上記一般式(4)、一般式(5)、及び一般式(6)において、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、Rl、Rm、Rnは、それぞれ独立に水素原子または低級鎖状炭化水素基を示し、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であることが、耐熱性、低吸水性に優れる点で好ましい。
一般式(2)及び一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の中では、一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の方が、得られる炭化水素系重合体の強度特性に優れている点で好ましい。
本発明においては、炭化水素共重合体中の一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、一般式(2)または一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量は、質量基準で、通常90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上である。合計含有量を上記範囲にすることで、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされた樹脂材料を得ることができる。
脂環式炭化水素系共重合体における鎖状構造の繰り返し単位(b)の含有量は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、質量基準で1%以上、10%未満であることが好ましく、より好ましくは1%以上、8%以下、更に好ましくは2%以上、6%以下の範囲である。繰り返し単位(b)の含有量が上記範囲にあると、低複屈折性、耐熱性、低吸水性が高度にバランスされた樹脂材料を得ることができる。
また、繰り返し単位(a)の連鎖長は、脂環式炭化水素系共重合体の分子鎖長に対して十分に短く、具体的には、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、B=(脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(脂環式構造を有する繰り返し単位数/脂環式炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))とした時、AがBの30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下の範囲である。Aがこの範囲外では、低複屈折性に劣る。
更に、繰り返し単位(a)の連鎖長が特定の分布を有しているもの好ましい。具体的には、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、C=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の数平均分子量)としたとき、A/Cが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3〜8、最も好ましくは1.7〜6の範囲である。A/Cが過度に小さいとブロック程度が増加し、過度に大きいとランダムの程度が増加して、いずれの場合にも低複屈折性に劣る。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPC)により測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、好ましくは1,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜300,000、特に好ましくは50,000〜250,000の範囲である。脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと成形物の複屈折が大きくなる。
かかる共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常2.5以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械強度と耐熱性が高度にバランスされる。
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50℃〜250℃、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは90℃〜180℃である。
次いで、本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の製造方法について説明する。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の製造方法は、(1)芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法、(2)脂環式ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、必要に応じて水素化する方法等が挙げられる。
上記の方法で本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体を製造する場合には、芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物(a′)と共重合可能なその他のモノマー(b′)との共重合体で、共重合体中の化合物(a′)由来の繰り返し単位が、D=(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、E=(炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位数/炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))とした時、DがEの30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である連鎖構造を有する共重合体の、主鎖、及び芳香環やシクロアルケン環等の不飽和環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法により効率的に得ることができる。Dが上記範囲外では、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。その中でも、本発明では(1)に記載の方法が、より効率的に脂環式炭化水素系共重合体を得ることができる点で好ましい。
上記水素化前の共重合体は、さらに、F=(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位の連鎖の数平均分子量)としたときの、D/Fが一定の範囲であるのが好ましい。具体的には、D/Fが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3以上、8以下、最も好ましくは1.7以上、6以下の範囲である。D/Fがこの範囲外では、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。
上記化合物(a′)由来の繰り返し単位の連鎖の重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、文献:Macromorecules 1983,16,1925−1928に記載の芳香族ビニル系共重合体の主鎖中不飽和二重結合をオゾン付加した後、還元分解して取り出した芳香族ビニル連鎖の分子量を測定する方法等により確認できる。
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと水素化反応性に劣る。
上記(1)に記載の方法において、使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(2)の方法において、使用する脂環式ビニル系化合物の具体例としては、例えば、シクロブチルエチレン、シクロペンチルエチレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘプチルエチレン、シクロオクチルエチレン、ノルボルニルエチレン、ジシクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレン、α−t−ブチルシクロヘキシルエチレン、シクロペンテニルエチレン、シクロヘキセニルエチレン、シクロヘプテニルエチレン、シクロオクテニルエチレン、シクロデケニルエチレン、ノルボルネニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、及びα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレンが好ましい。
これらの芳香族ビニル系化合物及び脂環式ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの鎖状ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
化合物(a′)を重合する方法は、格別制限はないが、一括重合法(バッチ法)、モノマー逐次添加法(モノマー全使用量の内の一部を用いて重合を開始した後、残りのモノマーを逐次添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特にモノマー逐次添加法を用いると、好ましい連鎖構造を有する炭化水素系共重合体が得られる。水素化前の共重合体は、前述のDの値がより小さい程、及び/又は、D/Fが大きな値を示す程、よりランダムな連鎖構造を有する。共重合体がどの程度のランダム性を有しているかは、芳香族ビニル系化合物の重合速度と共重合可能なその他のモノマーの重合速度との速度比で決まり、この速度比が小さい程、よりランダムな連鎖構造を有していることになる。
前記モノマー逐次添加法によれば、均一に混合された混合モノマーが重合系内に逐次的に添加されるため、バッチ法とは異なり、ポリマーの重合による成長過程においてモノマーの重合選択性をより下げることができるので、得られる共重合体がよりランダムな連鎖構造になる。また、重合系内での重合反応熱の蓄積が小さくてすむので重合温度を低く安定に保つことがでる。
モノマー逐次添加法の場合、まずモノマーの全使用量のうち、通常0.01質量%〜60質量%、好ましくは0.02質量%〜20質量%、より好ましくは0.05質量%〜10質量%のモノマーを初期モノマーとして予め重合反応器内に存在させた状態で開始剤を添加して重合を開始する。初期モノマー量をこのような範囲にすると、重合開始後の初期反応において発生する反応熱除去を容易にすることができ、得られる共重合体をよりランダムな連鎖構造にすることができる。
上記初期モノマーの重合転化率を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上になるまで反応を継続すると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。その後、前記モノマーの残部を継続的に添加するが、添加の速度は重合系内のモノマーの消費速度を考慮して決定される。
通常は、初期モノマーの重合添加率が90%に達するまでの所要時間をT、初期モノマーの全使用モノマーに対する比率(%)をIとしたとき、関係式[(100−I)×T/I]で与えられる時間の0.5〜3倍、好ましくは0.8〜2倍、より好ましくは1〜1.5倍となる範囲内で残部モノマーの添加が終了するように決定される。具体的には通常0.1〜30時間、好ましくは0.5時間〜5時間、より好ましくは1時間〜3時間の範囲となるように、初期モノマー量と残りモノマーの添加速度を決定する。また、モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率を上記の範囲とすると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
ラジカル重合の場合は、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法を用いることができるが、特に樹脂中への不純物等の混入等を防止する必要のある場合は、塊状重合、懸濁重合が望ましい。ラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾイソブチロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノペンタン酸、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムに代表される水溶性触媒やレドックス開始剤などが使用可能である。
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えばn−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100質量部に対して200〜10,000質量部となるような割合で用いられる。
上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
重合反応においては、また、重合促進剤や、ランダマイザー(或る1成分の連鎖が長くなるのを防止する機能を有する添加剤)などを使用できる。アニオン重合の場合には、例えばルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。
上記のラジカル重合やアニオン重合により得られた重合体は、例えばスチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法で回収できる。また、重合時に、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素添加工程に使用することができる。
次いで、不飽和結合の水素化方法について説明する。
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、且つ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒のいずれも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体に対して、質量基準にて、通常、0.01〜100部、好ましくは0.05〜50部、より好ましくは0.1〜30部である。
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合のいずれも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
なお、水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は特に限定されていない。通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
本発明においては、更には、脂環式構造を有する重合体としては、下記の重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有するブロック共重合体が好ましい。
重合体ブロック〔A〕とは、下記一般式(7)で表される繰り返し単位〔7〕を含有するブロック共重合体である。重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔7〕の含有量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
Figure 2006070069
上記一般式(7)において、R1は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。なお、R2〜R12は、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12である。
上記一般式(7)で表される繰り返し単位〔7〕の好ましい構造は、R1が水素またはメチル基で、R2〜R12がすべて水素のものである。重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔7〕の含有量が上記範囲にあれば、透明性および機械的強度に優れる点で好ましい。重合体ブロック〔A〕における、前記繰り返し単位〔7〕以外の残部は、鎖状共役ジエンや鎖状ビニル化合物由来の繰り返し単位を水素化したものである。
重合体ブロック〔B〕とは、前記繰り返し単位〔7〕ならびに下記一般式(8)で表される繰り返し単位〔8〕または下記一般式(9)で表される繰り返し単位〔9〕を含有するブロック共重合体。重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔7〕の含有量は、好ましくは40〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%である。繰り返し単位〔7〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔8〕のモル分率をm2(モル%)および、繰り返し単位〔9〕のモル分率をm3(モル%)としたときに、2×m2+m3が、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5〜60モル%、最も好ましくは10〜50モル%である。
Figure 2006070069
一般式(8)において、R13は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
上記一般式(8)で表される繰り返し単位〔8〕の好ましい構造は、R13が水素またはメチル基のものである。
Figure 2006070069
一般式(9)において、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
上記一般式(9)で表される繰り返し単位〔9〕の好ましい構造は、R14が水素原子で、R15がメチル基またはエチル基のものである。
重合体ブロック〔B〕中の前記繰り返し単位〔8〕または繰り返し単位〔9〕の含有量が少なすぎると、機械的強度が低下する。したがって、繰り返し単位〔8〕および繰り返し単位〔9〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。
重合体ブロック〔B〕は、さらに、下記一般式(10)で表される繰り返し単位〔10〕を含有していてもよい。繰り返し単位〔10〕の含有量は、本発明に係るブロック共重合体の特性を損なわない範囲の量であり、好ましくはブロック共重合体全体に対し、30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
Figure 2006070069
上記一般式(10)において、R25は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R26はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン原子を表し、R27は水素原子を表す。または、R26とR27とは相互に結合して、酸無水物基またはイミド基を形成してもよい。
また、本発明に用いるブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔7〕のモル分率をa、重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔7〕のモル分率をbとした場合に、a>bの関係があることが好ましい。これにより、透明性、および機械的強度に優れる。
さらに、本発明に用いるブロック共重合体は、ブロック〔A〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma、ブロック〔B〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmbとした場合に、その比(ma:mb)が、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma:mb)が上記範囲にある場合に、機械的強度および耐熱性に優れる点で好ましい。
本発明に用いるブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(以下、Mwと記す。)で、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは15,000〜250,000、特に好ましくは20,000〜200,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが上記範囲にあると、機械的強度、耐熱性、成形性のバランスに優れる。
ブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwと数平均分子量(以下、Mnと記す。)との比(Mw/Mn)で、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械的強度や耐熱性に優れる。
ブロック共重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、示差走査型熱量計(以下、DSCと記す。)による、高温側の測定値で、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃、特に好ましくは90℃〜160℃である。
本発明に用いる上記ブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有し、(〔A〕−〔B〕)型のジブロック共重合体であっても、(〔A〕−〔B〕−〔A〕)型や(〔B〕−〔A〕−〔B〕)型のトリブロック共重合体であっても、重合体ブロック〔A〕と重合体ブロック〔B〕とが、交互に合計4個以上つながったブロック共重合体であってもよい。また、これらのブロックがラジアル型に結合したブロック共重合体であってもよい。
本発明に用いるブロック共重合体は、以下の方法により得ることができる。その方法としては、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、および、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を含有するモノマー混合物を重合して、芳香族ビニル化合物または/および脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、および、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る。そして該ブロック共重合体の芳香環または/および脂肪族環を水素化する方法や、飽和脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、および、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を含有するモノマー混合物を重合して、脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、および、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る方法などが挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としてより好ましいものは、例えば、以下の方法により得ることができる。
(1)第一の方法としては、まず、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a′〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A′〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、且つ、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a′〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b′〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/および前記脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B′〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A′〕および重合体ブロック〔B′〕を有するブロック共重合体を得た後、該ブロック共重合体の芳香環または/および脂肪族環を水素化する。
(2)第二の方法としては、まず、飽和脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、且つ、飽和脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有するブロック共重合体を得る。
上記方法の中で、モノマーの入手容易性、重合収率、重合体ブロック〔B′〕への繰り返し単位〔7〕の導入のし易さ等の観点から、上記(1)の方法がより好ましい。
上記(1)の方法における芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等や、これらにヒドロキシル基、アルコキシ基などの置換基を有するもの等が挙げられる。中でもスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(1)方法における不飽和脂環族ビニル系化合物の具体例としては、シクロヘキセニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、およびα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等や、これらにハロゲン基、アルコキシ基、またはヒドロキシル基等の置換基を有するもの等が挙げられる。
これらの芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできるが、本発明においては、モノマー混合物〔a′〕および〔b′〕のいずれにも、芳香族ビニル化合物を用いるのが好ましく、中でも、スチレンまたはα−メチルスチレンを用いるのがより好ましい。
上記方法で使用するビニル系モノマーには、鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物が含まれる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、および1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のモノマーを含有するモノマー混合物を重合する場合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等のいずれの方法で重合反応を行ってもよいが、アニオン重合によるのが好ましく、不活性溶媒の存在下にリビングアニオン重合を行うのが最も好ましい。
アニオン重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において行う。開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
使用する不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100質量部に対して200〜10,000質量部となるような割合で用いられる。
それぞれの重合体ブロックを重合する際には、各ブロック内で、或る1成分の連鎖が長くなるのを防止するために、重合促進剤やランダマイザーなどを使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物などをランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
リビングアニオン重合によりブロック共重合体を得る方法は、従来公知の、逐次付加重合反応法およびカップリング法などが挙げられるが、本発明においては、逐次付加重合反応法を用いるのが好ましい。
逐次付加重合反応法により、重合体ブロック〔A′〕および重合体ブロック〔B′〕を有する上記ブロック共重合体を得る場合には、重合体ブロック〔A′〕を得る工程と、重合体ブロック〔B′〕を得る工程は、順次連続して行われる。具体的には、不活性溶媒中で、上記リビングアニオン重合触媒存在下、モノマー混合物〔a′〕を重合して重合体ブロック〔A′〕を得、引き続きその反応系にモノマー混合物〔b′〕を添加して重合を続け、重合体ブロック〔A′〕とつながった重合体ブロック〔B′〕を得る。さらに所望に応じて、再びモノマー混合物〔a′〕を添加して重合し、重合体ブロック〔A′〕をつなげてトリブロック体とし、さらには再びモノマー混合物〔b′〕を添加して重合し、重合体ブロック〔B′〕をつなげたテトラブロック体を得る。
得られたブロック共重合体は、例えば、スチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法によって回収する。重合反応において、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液そのままを水素化反応工程にも使用することができるので、重合溶液からブロック共重合体を回収しなくてもよい。
上記(1)の方法において得られる重合体ブロック〔A′〕および重合体ブロック〔B′〕を有するブロック共重合体(以下、水素化前ブロック共重合体という。)のうち下記の構造の繰り返し単位を有するものが好ましい。
好ましい水素化前ブロック共重合体を構成する重合体ブロック〔A′〕は、下記一般式(11)で表される繰り返し単位〔11〕を50モル%以上含有する重合体ブロックである。
Figure 2006070069
一般式(11)において、R16は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R17〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基またはハロゲン基である。
また、好ましい重合体ブロック〔B′〕は、前記繰り返し単位〔11〕を必ず含み、下記一般式(12)で表される繰り返し単位〔12〕および下記一般式(13)で表される繰り返し単位〔13〕のいずれかを少なくとも1つ含む重合体ブロックである。また、重合体ブロック〔A′〕中の繰り返し単位〔11〕のモル分率をa′、ブロック〔B′〕中の繰り返し単位〔11〕のモル分率をb′とした場合、a′>b′である。
Figure 2006070069
上記一般式(12)において、R22は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Figure 2006070069
上記一般式(13)において、R23は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R24は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を表す。
さらに、ブロック〔B′〕中には、下記一般式(14)で示される繰り返し単位〔14〕を含有していてもよい。
Figure 2006070069
上記一般式(14)において、R28は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R29はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を表し、R30は水素原子を表す。または、R29とR30とは相互に結合して、酸無水物基、またはイミド基を形成してもよい。
さらに、好ましい水素化前ブロック共重合体は、ブロック〔A′〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma′、ブロック〔B′〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmb′とした場合に、その比(ma′:mb′)が、5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma′:mb′)が上記範囲にある場合に、機械的強度や耐熱性に優れる。
好ましい水素化前ブロック共重合体の分子量は、THFを溶媒としてGPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算Mwで、12,000〜400,000、より好ましくは19,000〜350,000、特に好ましくは25,000〜300,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが過度に小さいと、機械的強度が低下し、過度に大きいと、水素添加率が低下する。
好ましい水素化前のブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwとMnとの比(Mw/Mn)で、5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、水素添加率が向上する。
好ましい水素化前のブロック共重合体のTgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、DSCによる高温側の測定値で、70℃〜150℃、より好ましくは80℃〜140℃、特に好ましくは90℃〜130℃である。
上記の水素化前のブロック共重合体の、芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素不飽和結合、および主鎖や側鎖の不飽和結合等を水素化する方法および反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、およびレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.05〜50質量部、特に好ましくは0.1〜30質量部である。
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、好ましくは0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、より好ましくは1MPa〜20MPa、特に好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、ブロック共重合体の水素化率は、 1H−NMRによる測定において、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環やシクロアルケン環の炭素−炭素不飽和結合のいずれも、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後、ブロック共重合体は、例えば濾過、遠心分離等の方法により反応溶液から水素化触媒を除去した後、溶媒を直接乾燥により除去する方法、反応溶液を、ブロック共重合体にとっての貧溶媒中に注ぎ、凝固させる方法等によって回収できる。
《その他の配合剤》
本発明の樹脂材料の調製時や樹脂組成物の成型工程においては、必要に応じて各種添加剤(配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。本発明においては、特に、重合体が少なくとも可塑剤または酸化防止剤を含有することが好ましい。
〔可塑剤〕
可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を挙げることができる。
〔酸化防止剤〕
本発明に用いられる酸化防止剤について説明する。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
〔耐光安定剤〕
本発明に用いられる耐光安定剤について説明する。
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSともいう)の中でも、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1,000〜10,000であるものが好ましく、2,000〜5,000であるものがより好ましく、2,800〜3,800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成型等の加熱溶融成型時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
このようなHALSの具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
本発明の樹脂材料に対する上記配合量は、重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生したり、樹脂への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
また、本発明の樹脂材料に、更に最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
《光学素子(光学用樹脂レンズ)の作製方法》
次いで、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズの作製方法について説明する。
本発明に係る光学用樹脂レンズは、まず、樹脂組成物(樹脂単独の場合もあれば、樹脂と添加剤との混合物の場合もある)を調製し、次いで、得られた樹脂組成物を成型する工程を含む。
本発明に係る光学用樹脂レンズは、まず、樹脂組成物(樹脂単独の場合もあれば、樹脂と添加剤との混合物の場合もある)を調製し、次いで、得られた樹脂組成物を成型する工程を含む。
本発明の熱可塑性樹脂材料の成型物は、前記樹脂組成物からなる成型材料を成型して得られる。成型方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得る為には溶融成型が好ましい。溶融成型法としては、例えば、市販のプレス成型、市販の押し出し成型、市販の射出成型等が挙げられるが、射出成型が成型性、生産性の観点から好ましい。
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における樹脂組成物(樹脂単独の場合または樹脂と添加物との混合物の両方がある)の温度は、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒケやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に、成型物の黄変を効果的に防止する観点から150℃〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200℃〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200℃〜330℃の範囲である。
本発明に係る成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズとして用いられるが、その他の光学部品としても好適である。
《光学用樹脂レンズ》
本発明に係る光学用樹脂レンズは、上記の作製方法により得られるが、光学部品への具体的な適用例としては、以下のようである。
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
本発明に係る光学用樹脂レンズの用途の一例として、光ディスク用のピックアップ装置に用いる対物レンズとして用いられる例を図1を用いて説明する。
本形態では、使用波長が405nmのいわゆる青紫色レーザ光源を用いた「高密度な光ディスク」をターゲットとしている。この光ディスクの保護基板厚は0.1mmであり、記憶容量は約30GBである。
図1は、本発明に用いられる光ピックアップ装置の一例を示す模式図である。
光ピックアップ装置1において、レーザダイオード(LD)2は、光源であり、波長λが405nmの青紫色レーザが用いられるが、波長が390nm〜420nmである範囲のものを適宜採用することができる。
ビームスプリッタ(BS)3はLD2から入射する光源を対物光学素子(OBL)4の方向へ透過させるが、光ディスク(光情報記録媒体)5からの反射光(戻り光)について、センサーレンズ(SL)6を経て受光センサー(PD)7に集光させる機能を有する。
LD2から出射された光束は、コリメータ(COL)8に入射し、これによって無限平行光にコリメートされたのち、ビームスプリッタ(BS)3を介して対物レンズOBL4に入射する。そして光ディスク(光情報記録媒体)5の保護基板5aを介して情報記録面5b上に集光スポットを形成する。ついで情報記録面5b上で反射したのち、同じ経路をたどって、1/4波長板(Q)9によって偏光方向を変えられ、BS3によって進路を曲げられ、センサーレンズ(SL)6を経てセンサー(PD)7に集光する。このセンサーによって光電変換され、電気的な信号となる。
なお対物光学素子OBL4は、樹脂によって射出成型された単玉の光学用樹脂レンズである。そしてその入射面側に絞り(AP)10が設けられており、光束径が定められる。ここでは入射光束は3mm径に絞られる。そして、アクチュエータ(AC)11によって、フォーカシングやトラッキングが行われる。
なお、光情報記録媒体の保護基板厚、更にピットの大きさにより、対物光学素子OBL4に要求される開口数も異なる。ここでは、高密度な、光ディスク(光情報記録媒体)5の開口数は0.85としている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
〔半導体微粒子1の調製〕
空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための熱電対を装着した無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製3口フラスコにトリオクチルホスフィンオキシド(以下、TOPOと略記;4g)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら乾燥アルゴンガス雰囲気で360℃に加熱した。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、セレン(単体の黒色粉末;0.1g)をトリブチルホスフィン(以下、TBPと略記;6.014g)に溶解した液体に更にジメチルカドミウム(Strem Chemical社;97%;0.216g)を混合溶解した原料溶液Aを、ゴム栓(Aldrich社から供給されるセプタム)で封をしアルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に充填した。この原料溶液Aの一部(2.0ml)を、前記のTOPOの入ったフラスコに注射器で一気に注入し、この時点を反応の開始時刻とした。反応開始20分後に熱源を除去し、約50℃に冷却された時点で精製トルエン(2ml)を注射器で加えて希釈し、メタノール(10ml)を注入して不溶物を生じさせた。この不溶物を遠心分離(3000rpm)し、デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、室温にて約14時間真空乾燥して、TOPOが表面に配位した半導体微粒子1の固形粉体を得た。
この半導体微粒子1は、XRDスペクトルにより、CdSe結晶であることを確認した。また、このCdSe結晶の平均粒径をTEM観察により測定した結果、約4nmであった。
〔半導体微粒子2の調製〕
空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための熱電対を装着した無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製3口フラスコにTOPO(4g)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら乾燥アルゴンガス雰囲気で360℃に加熱した。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛の1モル/L濃度のn−ヘキサン溶液(1.34ml;1.34ミリモル)とビス(トリメチルシリル)スルフィド(0.239g;1.34ミリモル)とをTOP(9ml)に溶解した原料溶液Bを、半導体微粒子1の調製で使用のセプタムで封をし、アルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に充填した。この原料溶液Bの一部(2.0ml)を、前記のTOPOの入ったフラスコに注射器で一気に注入し、この時点を反応の開始時刻とした。反応開始20分後に熱源を除去し、約50℃に冷却された時点で精製トルエン(2ml)を注射器で加えて希釈し、メタノール(10ml)を注入して不溶物を生じさせた。この不溶物を遠心分離(3000rpm)し、デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、室温にて約14時間真空乾燥して、TOPOが表面に配位した半導体微粒子2の固形粉体を得た。
この半導体微粒子2は、XRDスペクトルによりZnS結晶であることを確認した。また、このZnS結晶の平均粒径をTEM観察に測定した結果、約5nmであった。
〔半導体微粒子3の調製〕
3×10-4モル/Lの過塩素酸亜鉛六水和物のアルカリ性アセトニトリル溶液100mlに、ヘリウム希釈の5容量%の硫化水素ガスを通じ、5×10-4モル/Lのドデカンチオールのアセトニトリル溶液100mlを加えた。これに、ヘキサン200mlを添加し、溶媒除去及び乾燥後、白色の微粒粉末である半導体微粒子3を得た。この半導体微粒子3は、XRDスペクトルによりZnS結晶であることを確認した。また、このZnS結晶の平均粒径をTEM観察により測定した結果、40nmであった。
《樹脂組成物の作製》
〔樹脂組成物1の作製〕
日本アエロジル社製の疎水化シリカAEROSIL R976(平均粒径約12nm)微粒子0.4gを、表1記載の樹脂(3)を10質量%溶解したクロロホルム溶液10gに、撹拌しながら常温で滴下した。得られた無色透明な液を、ホモジナイザーを用いてメタノールと水の等容量混合液中に析出させ、シリカ微粒子が、ホスト材料に対し40質量%分散された樹脂組成物1を得た。
〔樹脂組成物2の作製〕
日本アエロジル社製の酸化アルミニウムC(平均粒径約13nm)微粒子0.40gを、表1記載の樹脂(3)を10質量%溶解したクロロホルム溶液10gに、撹拌しながら常温で滴下した。得られた無色透明な液を、ホモジナイザーを用いてメタノールと水の等容量混合液中に析出させ、酸化アルミニウム微粒子が、ホスト材料に対し40質量%分散された樹脂組成物2を得た。
〔樹脂組成物3の作製〕
半導体微粒子1の1gを、表1記載の樹脂(3)を10質量%溶解したクロロホルム溶液50gに、撹拌しながら常温で滴下した。得られた無色透明な液を、ホモジナイザーを用いてメタノールと水の等容量混合液中に析出させ、半導体微粒子がホスト材料に対し20質量%分散された樹脂組成物3を得た。
〔樹脂組成物4、5の作製〕
上記樹脂組成物3の調製において、半導体微粒子1に代えて、上記調製した半導体微粒子2、3を用いた以外は同様にして、樹脂組成物4、5を調製した。
《樹脂組成物の評価》
〔屈折率の測定〕
上記調製した樹脂組成物1〜5を溶融し、加熱成型することにより厚さ0.5mmの各試験用プレートを作製し、それぞれについて、アッベ屈折計(アタゴ社製、DR−M2)を用い波長500nmで測定温度を10℃から30℃変化させて屈折率を測定し、屈折率の温度変化率dn/dTを求めた。また、比較としてホスト材料である例示樹脂(3)、シリカ微粒子、酸化アルミニウム及び各半導体微粒子についても、同様にしてdn/dTを求めた。
〔透過率の測定〕
上記調製した樹脂組成物1〜5を溶融し、加熱成型することにより厚さ3.0mmの各試験用プレートを作製し、それぞれについて、直ちにASTM D1003に準拠した方法で、東京電色(株)製のTURBIDITY METER T−2600DAを用いて光線透過率を測定し、この測定した光線透過率を透過率A(%)とした。次いで、上記各試験用プレートを、65℃の環境下で48時間放置した後、上記と同様の方法で、強制劣化処理後の光線透過率を測定し、これを透過率B(%)とした。
なお、測定した光線透過率が70%以下では、透明度に乏しく、光学素子に適さないと判定した。
以上により得られた結果を、表2に示す。
Figure 2006070069
表2に記載の結果より明らかな様に、本発明の半導体微粒子を用いた樹脂組成物は、比較例に対し、屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明性が高いことが分かる。更に、強制劣化処理を行った後でも、透明性の低下幅が極めて小さく、光学素子に使用する樹脂材料として極めて有用であることがわかる。
さらに、上記樹脂組成物を用いてプラスチック製光学素子を作製して評価した結果、本発明の光学素子は、良好な光学特性を持ち、かつCDやDVDの記録、再生に用いられるBlue−Rayを長時間照射しても、白濁化等の材料変質耐性に優れていることを確認することができた。
実施例2
《樹脂組成物の調製》
〔樹脂組成物6〜9の調製〕
実施例1に記載の樹脂組成物4の調製において、例示樹脂(3)に代えて、それぞれ例示樹脂(1)、(6)、(8)、(11)を用いた以外は同様にして、樹脂組成物6〜9を調製した。
〔樹脂組成物10の調製〕
本発明の請求項5に係る環状構造を有するオレフィン系重合体である三井化学(株)製のAPL5014DPを10質量%溶解したシクロヘキサン溶液50gに、AEROSIL R976の5質量%シクロヘキサン分散液10gを滴下しながら常温で30分撹拌した。得られたやや黄色で透明な液を、ホモジナイザーを用いてメタノールと水の等容量混合液中に析出させ、無機微粒子がホスト材料に対し10質量%の濃度で分散された樹脂組成物11を得た。
〔樹脂組成物11の調製〕
本発明の請求項5に係る環状構造を有するオレフィン系重合体である三井化学(株)製のAPL5014DPを10質量%溶解したシクロヘキサン溶液50gに、日本アエロジル社製の酸化アルミニウムC(平均粒径約13nm)微粒子0.5gを撹拌しながら常温で滴下した。得られた無色透明な液を、ホモジナイザーを用いてメタノールと水の等容量混合液中に析出させ、酸化アルミニウム微粒子が、ホスト材料に対し10質量%分散された樹脂組成物11を得た。
〔樹脂組成物12の調製〕
半導体微粒子1をシクロヘキサンに10質量%となる様に添加し、超音波処理を30分行い、半導体微粒子1のシクロヘキサン分散液を得た。この分散液5gを三井化学(株)製のAPL5014DPを10質量%溶解したシクロヘキサン溶液50gに、常温で撹拌しながら滴下し、30分撹拌した。得られたやや黄色で透明な液を、ホモジナイザーを用いてメタノールと水の等容量混合液中に析出させ、半導体微粒子1がホスト材料に対し10質量%の濃度で分散された樹脂組成物12を得た。
〔樹脂組成物13、14の作製〕
上記樹脂組成物12の調製において、半導体微粒子1を半導体微粒子2、3に変更した以外は同様にして、樹脂組成物13、14を得た。
〔樹脂組成物15の作製〕
上記樹脂組成物13の調製において、半導体微粒子2のホスト材料に対する濃度を、5.0質量%に変更した以外は同様にして、樹脂組成物15を作製した。
〔樹脂組成物16〜21の作製〕
上記樹脂組成物10〜15の調製において、APL5014DPを、本発明の請求項7に係る脂環式炭化水素系重合体である日本ゼオン(株)製のZEONEX330Rに変更した以外は同様にして、樹脂組成物16〜21を得た。
《樹脂組成物の評価》
実施例1に記載の方法と同様にして、屈折率の測定及び透過率の測定を行い、得られた結果を表3に示す。
Figure 2006070069
表3に記載の結果より明らかな様に、本発明の樹脂組成物は屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明性が高い。さらにサーモ処理において透明性の劣化を生じないことから光学素子に使用する樹脂材料として極めて有用であることが分かる。
さらに、上記樹脂組成物を用いてプラスチック製光学素子を作製して評価した結果、本発明の光学素子は、良好な光学特性を持ち、かつCDやDVDの記録、再生に用いられるBlue−Rayを長時間照射しても、白濁化等の材料変質耐性に優れていることを確認することができた。
本発明の光学用樹脂レンズが対物レンズとして用いられている光ディスク用のピックアップ装置の一例を示す模式図である。
符号の説明
1 光ピックアップ装置
2 レーザダイオード
3 ビームスプリッタ
4 対物光学素子(対物レンズともいう)
5 光ディスク
5a 保護基板
5b 情報記録面
6 センサーレンズ
7 センサー
8 コリメータ
9 1/4波長板
10 絞り
11 アクチュエータ

Claims (10)

  1. 有機重合体からなるホスト材料中に、半導体微粒子が分散され、かつ屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、下式(A)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
    式(A)
    0≦|dn/dT|≦5.0×10-5
  2. 光線透過率が70%以上である透明樹脂材料であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂材料。
  3. 前記半導体微粒子の平均粒子径が、1nm以上、30nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂材料。
  4. 前記有機重合体からなるホスト材料が、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
  5. 炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であるホスト材料中に、平均粒子径が1nm以上、30nm以下である半導体微粒子が分散され、屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、下式(B)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
    式(B)
    0≦|dn/dT|≦9.0×10-5
    Figure 2006070069
    〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
    Figure 2006070069
    〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、m及びnはそれぞれ0、1または2を表し、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基を表し、R9及びR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、また、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。〕
  6. 下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを総含有量が90質量%以上になるように含有し、かつ該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体であるホスト材料中に、平均粒子径が1nm以上、30nm以下である半導体微粒子が分散され、屈折率nの温度Tに対する変化率の絶対値|dn/dT|が、前式(B)で規定する条件を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂材料。
    Figure 2006070069
    〔一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基を表し、一般式(1)〜(3)において、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。一般式(3)において、「−−−」は炭素−炭素飽和結合または不飽和結合を表す。〕
  7. 前記屈折率nの温度Tに対する変化率dn/dTが、下式(C)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
    式(C)
    −2.5×10-5≦dn/dT≦1.0×10-6
  8. 前記半導体微粒子の含有量が、前記有機重合体からなるホスト材料の質量に対し、0.01質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
  9. 前記半導体微粒子が、表面処理されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂材料を用いて成型することを特徴とする光学素子。
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