JP2006059474A - 磁気記録方法、磁気記録媒体、および磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録方法、磁気記録媒体、および磁気記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 充分な高記録密度化を図るのに適した磁気記録方法、磁気記録媒体、および磁気記録装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の磁気記録方法では、キュリー温度の異なる複数の記録磁性層12A,12Bと、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層12aと、を含む多層記録膜12を有する磁気記録媒体10が用いられる。本方法は、磁気記録媒体10の複数の記録磁性層12A,12Bを一旦昇温させる工程と、昇温工程を経た複数の記録磁性層12A,12Bの各々を、相対的にキュリー温度の高い層から低い層にかけて順次、記録磁界を印加して当該磁界の方向に磁化する工程とを含む。本発明の磁気ディスク装置X1は、このような方法を実行すべく、多層記録膜12を局所的に昇温するための昇温手段22と、情報記録の実行時の媒体回転動作の方向Dに沿って位置する複数の磁界印加手段23A,23Bとを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱アシストを伴って磁気記録媒体に情報を記録するための磁気記録方法、並びに、熱アシスト記録方式の磁気記録媒体および磁気記録装置に関する。
コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、ハードディスクなどの記憶装置を構成する磁気記録媒体に対しては、記憶容量の増大が要求される。そのような要求に応え得る媒体として、近年、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体が注目を集めている。
図25は、垂直磁気記録方式の従来の磁気記録媒体の一例である磁気ディスク70の部分断面模式図である。磁気ディスク70は、基板71と、記録層72と、保護層73とからなる積層構造を有する。記録層72は、垂直磁化膜よりなり、磁化方向の変化として所定の信号が記録される部位である。保護層73は、記録層72を外界から物理的および化学的に保護するための部位である。
磁気ディスク70への情報記録に際しては、保護層73の側から記録層72に記録用の磁気ヘッド(図示略)を近接して対向させ、当該磁気ヘッドにより、記録層72に対し、その保磁力より強い記録磁界を印加する。磁気ディスク70に対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの磁界の向きを変化させることにより、記録層72において、垂直方向に磁化されて交互に反転する複数の磁区72aが磁気ディスク70のトラック方向に連なって形成される。このような記録処理により、記録層72において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報が記録される。一方、磁気ディスク70の情報再生に際しては、記録層72の内部に形成されている磁区72aの磁化方向の変化が、当該磁区72aに由来する磁界の方向の変化として、読取り用の磁気ヘッド(図示略)を介して検出される。
磁気記録媒体の技術分野においては、上述のような記録処理に際して安定に形成し得る最小の磁区72a’が微小ないし幅狭であるほど(即ち、磁区72a’について図25に示す長さWが小さいほど)、より高い記録密度を実現できることが知られている。また、記録層72の保磁力が高いほど、磁区72aの熱安定性が高く、微小で安定した磁区72aを形成しやすいことも、知られている。したがって、磁気ディスク70の高記録密度化を図るためには、記録層72の保磁力をより高く設定することにより、安定に形成し得る最小磁区72a’をより微小に設定することが考えられる。
上述のような記録処理においては、記録層72に印加される磁界は記録層72の保磁力より強い必要があるところ、印加磁界強度を高めるためには、記録用磁気ヘッドにより発生される磁界の強度を増大するか、或は、記録用磁気ヘッドと磁気ディスク70ないし記録層72との離隔距離を小さくすることが考えられる。しかしながら、記録用磁気ヘッドの発生磁界強度の増大は、記録速度の低減を招来し、高記録密度化の実効を損うことが知られている。また、離隔距離については、既に数nm程度が実現されており、更に小さく設定するのは技術的に困難な状況にある。
そこで、磁気ディスク70への情報記録においては、いわゆる熱アシスト記録方式が採用される場合がある。熱アシスト記録方式で磁気ディスク70に情報記録が実行される場合、まず、例えばレーザ光照射により、記録層72の所定の箇所が局所的に昇温される。記録層72における昇温箇所は、その周囲の非昇温箇所よりも保磁力が低下する。次に、昇温箇所の保磁力より強い記録磁界を記録用磁気ヘッドにより昇温箇所に印加することによって、当該昇温箇所が所定方向に磁化される。この磁化は、当該磁化箇所の冷却の過程で定着することとなる。熱アシスト記録方式によると、加熱により保磁力が低下した箇所に対する磁界印加により情報記録が実行されるため、情報保持時や情報再生時の常温での記録層72の保磁力を高く設定する場合であっても、記録用磁気ヘッドにより発生すべき磁界の強度を過度に増大する必要はない。また、記録用磁気ヘッドと磁気ディスクとの離隔距離を過度に小さく設定する必要もない。このような熱アシスト記録方式の磁気記録技術については、例えば下記の特許文献1や特許文献2に記載されている。
特開2000−207723号公報 特開2001−189002号公報
以上から理解できるように、垂直磁気記録方式の磁気ディスク70において熱アシスト記録方式を採用すると、記録用磁気ヘッドによる発生磁界の強度を過度に増大せずとも、また、記録用磁気ヘッドと磁気ディスク70との離隔距離を過度に小さく設定せずとも、常温における記録層72の保磁力を高く設定することにより、安定に形成し得る最小磁区72a’を微小に設定することが可能である。安定に形成し得る最小磁区72a’が微小なほど、トラック延び方向においてもトラック横断方向においても記録密度を高めるのに好適である。
しかしながら、そのような2次元的な高記録密度化は、技術的に形成し得る安定最小磁区72aの大きさによる制約を受ける。そのため、垂直磁気記録方式および熱アシスト記録方式を共に採用する磁気ディスク70であっても、磁気記録媒体において充分な高記録密度化を実現することができない場合がある。
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、充分な高記録密度化を図るのに適した磁気記録方法、磁気記録媒体、および磁気記録装置を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によると磁気記録方法が提供される。本方法では、キュリー温度の異なる複数の記録磁性層と、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層と、を含む多層記録膜を有する磁気記録媒体が用いられる。本方法は、複数の記録磁性層を一旦昇温させるための昇温工程と、昇温工程を経た複数の記録磁性層の各々を、相対的にキュリー温度の高い記録磁性層から低い記録磁性層にかけて順次、記録磁界を印加して当該記録磁界の方向に記録磁化するための磁界印加工程と、を含む。本発明において記録磁化するとは、当該記録磁化後に磁化方向を定着させて信号を構成するために磁化することである。
本方法で用いられる磁気記録媒体においては、非磁性層を介して積層された複数の記録磁性層を含む多層記録膜が例えば所定の基材上に広がって記録面を構成する。昇温工程では、例えば、当該記録面の所定箇所に対して基材の側から或は基材とは反対の側からレーザ光を局所的に照射することにより、当該所定箇所を局所的に加熱し、多層記録膜の厚さ全体にわたって当該所定箇所を局所的に例えば最高キュリー温度以上に昇温させる。この最高キュリー温度とは、複数の記録磁性層の複数のキュリー温度のうち最も高い温度である。昇温工程の後に当該所定箇所は次第に降温するところ、磁界印加工程では、各記録磁性層について、当該記録磁性層がそのキュリー温度未満にある状態で記録用磁気素子により所定の外部磁界(記録磁界)を印加することによって磁化する。このとき、一の記録磁性層に対し、当該記録磁性層の保磁力以上であり且つ他の所定の記録磁性層(当該一の記録磁性層以外の記録磁性層の全て又は一部)の保磁力未満である所定の記録磁界を印加することにより、当該一の記録磁性層の磁化方向を、当該他の所定の記録磁性層の磁化方向とは独立して、決定することができる。このようにして各記録磁性層が磁化された当該所定箇所の記録面側には、読取り用磁気素子で読み取るべき信号磁界が形成される。この信号磁界のとり得る状態(大きさ及び方向)は、各記録磁性層の磁化の大きさ及び方向ならびに各記録磁性層の厚さに応じて異なり得る。各記録磁性層の磁化の大きさについては、各記録磁性層の組成を調節することにより適宜設定することができ、各記録磁性層の磁化の方向については、磁界印加工程において各記録磁性層に印加する記録磁界の方向を適宜選択することにより決定することができる。信号磁界のとり得る状態は多層記録膜に含まれる記録磁性層の数により異なり得るところ、本方法における多層記録膜には複数(2以上)の記録磁性層が含まれるため、信号磁界のとり得る状態は3以上である。すなわち、信号磁界は3以上に多値化している。このように、本方法によると、3値以上の多値記録方式で情報を記録することができるのである。
加えて、本方法においては、各記録磁性層は、昇温工程を経て保磁力が低下した箇所に対する磁界印加により磁化されるため(即ち熱アシストを伴って各記録磁性層が磁化されるため)、記録用磁気素子により発生すべき記録磁界の強度を小さく維持しつつ、例えば常温での各記録磁性層の保磁力を高く設定することができる。各記録磁性層の保磁力が高いほど、各記録磁性層内に安定に形成し得る最小磁区をより微小とすることができ、従って、記録面内方向において2次元的に高い記録密度を得ることが可能である。また、記録用磁気素子により発生すべき記録磁界の強度を小さく維持することができるため、各記録磁性層の高保磁力化に起因する高記録密度化の実効を記録速度を低減させずに確保することができる。更には、記録用磁気ヘッドと磁気ディスクとの離隔距離を過度に小さく設定する必要もない。
以上のように、本発明の第1の側面の磁気記録方法によると、熱アシストを伴う多値記録方式において、充分な高記録密度化を図ることができるのである。
本発明の第2の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、キュリー温度の異なる複数の記録磁性層と、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層と、を含む多層記録膜を有する。このような構成の磁気記録媒体は、本発明の第1の側面の磁気記録方法における磁気記録媒体として使用することができる。
本発明の第3の側面によると磁気記録装置が提供される。この磁気記録装置は、磁気記録媒体と、昇温手段と、複数の磁界印加手段とを備える。磁気記録媒体は、キュリー温度の異なる複数の記録磁性層および当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層、を含む多層記録膜を有し、情報記録の実行時に回転動作を伴う。昇温手段は、多層記録膜を局所的に昇温するためのものである。複数の磁界印加手段は、昇温手段による昇温を経た多層記録膜に磁界を印加するためのものであり、磁気記録媒体の複数の記録磁性層と同数であって情報記録の実行時の回転動作の方向に一列に位置する。このような構成の磁気記録装置によると、本発明の第1の側面の磁気記録方法を適切に実行することができる。
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、磁気記録媒体について情報再生が実行される所定の再生環境下において、複数の記録磁性層の各々は磁化を有し、記録磁性層ごとの磁化の大きさと厚さとの積は、相互に異なる。この場合、好ましくは、記録磁性層ごとの磁化の大きさと厚さとの積の総和は、当該複数の積の全ての加減組み合わせで異なる。これらの構成によると、上述の信号磁界について適切に多値化することができる。
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、磁気記録媒体は、多層記録膜を支持するための基材を備え、複数の記録磁性層の複数のキュリー温度は、基材に近いほど或は基材から遠いほど、高い。このような構成によると、磁界印加工程において、基材に近い記録磁性層から順に、或は基材から遠い記録磁性層から順に、各記録磁性層を磁化することができ、従って、既に磁化が定着された2つの記録磁性層の間に位置する記録磁性層を磁化すべく当該記録磁性層に対して記録磁界を印加する必要は、ない。そのため、本構成によると、磁界印加工程において、記録磁性層ごとに記録磁界を適切に作用させることができる。
本発明の第3の側面における磁気記録装置は、好ましくは、情報記録の実行時に多層記録膜に対向しつつ磁気記録媒体に対して浮上配置される浮上スライダを更に備え、昇温手段および複数の磁界印加手段は、当該浮上スライダに設けられている。このような構成によると、本磁気記録装置の昇温手段および磁界印加手段の機能を効率よく確保することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録方法を実行するための磁気ディスク装置X1の部分構成を表す。磁気ディスク装置X1は、磁気ディスク10および浮上スライダ20を備え、熱アシスト記録方式での情報記録と情報再生とを磁気ディスク10について実行することができるように構成されている。
磁気ディスク10は、図1に加えて図2にも示すように、基板11、多層記録膜12、および保護層13からなる積層構造を有し、垂直磁気記録方式かつ熱アシスト記録方式の磁気記録媒体として構成されたものである。
基板11は、磁気ディスク10の剛性を確保するための部位であり、ディスク形状を有する。また、基板11は、例えば、アルミニウム合金基板、ガラス基板、または樹脂基板である。
多層記録膜12は、記録磁性層12A,12Bおよび非磁性層12aからなる積層構造を有し、各所に4値の信号が記録され得る記録面を構成する。
記録磁性層12A,12Bは、各々、層を構成する磁性膜の膜面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有して磁化された垂直磁化膜であり、例えば、所定の組成比のTbFe、TbFeCo、FePt、またはCoCrよりなる。本実施形態では、記録磁性層12A,12Bのキュリー温度を各々Tc1およびTc2とすると、Tc1>Tc2であり、且つ、記録磁性層12A,12Bの保磁力を各々Hc1およびHc2とすると、情報記録時に多層記録膜12のとり得る温度範囲においてはHc1>Hc2である。図3は、これらの条件の下に構成されている記録磁性層12A,12Bについて、保磁力Hcの温度依存性の一例を表すグラフである。図3のグラフにおいて、線G1は記録磁性層12Aの保磁力変化を表し、線G2は記録磁性層12Bの保磁力変化を表す。また、本実施形態では、記録磁性層12Aの磁化および厚さをMr1およびd1とし、記録磁性層12Bの磁化および厚さをMr2およびd2とすると、磁化の大きさ(絶対値)と厚さとの積である|Mr1|×d1および|Mr2|×d2は異なる。各記録磁性層について単に「磁化」とは、本発明では再生環境下での磁化である。また、キュリー温度、保磁力、および磁化の大きさについては、記録磁性層12A,12Bの構成元素種の選択や組成比の調節により適宜設定することが可能である。このような記録磁性層12A,12Bの厚さは、各々、例えば5〜50nmである。
非磁性層12aは、記録磁性層12A,12B間に交換結合作用が生じないように記録磁性層12A,12Bの間に介在し、例えば、Al、C、Si、SiO2、またはSiNよりなる。このような非磁性層12aの厚さは、例えば1〜10nmである。
保護層13は、多層記録膜12を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。
このような磁気ディスク10の製造においては、例えばスパッタリング法により、基板11上に、記録磁性層12A、非磁性層12a、記録磁性層12B、および保護層13を順次形成する。また、本発明においては、記録磁性層12Aを形成する前に、基板11上に密着下地層や軟磁性層などを形成してもよい。
磁気ディスク装置X1において、磁気ディスク10は、図外のスピンドルモータに支持され、スピンドルモータが回転駆動することによって回転動作する。スピンドルモータの回転駆動は、所定の制御部からの制御信号に基づいて制御される。
浮上スライダ20は、スライダボディ21、レーザ素子22、記録ヘッド23A,23B、および再生ヘッド24を有し、磁気ディスク装置X1による情報記録および情報再生の実行時には、磁気ディスク10の保護層13に対向して配置される。
レーザ素子22は、熱アシスト記録方式における媒体加熱手段(具体的には、多層記録膜12を局所的に昇温するための昇温手段)であり、電圧印加時にレーザ光を出射可能な半導体素子である。本発明においては、このようなレーザ素子22を浮上スライダ20に搭載するのに代えて、光源、プリズム、信号検出器などを有する固定光学部を別途設け、且つ、光源からのレーザ光を磁気ディスク10に向けて照射するための光導波路を浮上スライダ20内などに形成してもよい。このような代替構成をとり得ることは、下記の他の実施形態においても同様である。
記録ヘッド23A,23Bは、各々、多層記録膜12に対して所定の磁界を印加するためのものであり、磁界発生用の電流を流すためのコイルと、発生磁界を強い磁界に変換するための磁極とからなる。このような記録ヘッド23A,23Bとレーザ素子22とは、浮上スライダ20において、レーザ素子22、記録ヘッド23A、および記録ヘッド23Bの順で、磁気ディスク10の回転方向D(ないし周方向)に相当する方向に沿って一列に配されている。
再生ヘッド24は、多層記録膜12に由来する信号磁界を検知して電気信号に変換するためのものであり、例えばGMR素子やMR素子により構成されている。
このような浮上スライダ20は、板バネ状のサスペンションアーム(図示略)を介して図外のアクチュエータに連結されている。サスペンションアームは、浮上スライダ20に対し、磁気ディスク10に向けて付勢力を作用させるためのものである。アクチュエータは、例えばボイスコイルモータにより構成されている。
図4〜図6は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録方法に基づいて磁気ディスク装置X1において実行される熱アシスト情報記録の過程を表す。図4〜図6において、磁気ディスク10については、基材11および記録磁性層12A,12B以外を省略して簡略化し、周方向(トラック延び方向)に沿った部分断面を表す。また、図4〜図6の各々において、浮上スライダ20に対する磁気ディスク10の移動方向(回転方向)を矢印Dで示す。
情報記録に際しては、磁気ディスク10を所定の速度で回転動作させる。これにより、磁気ディスク10と浮上スライダ20との間に気体潤滑膜が生じ、浮上スライダ20は、磁気ディスク10に対して浮上配置されることとなる。そして、浮上配置された浮上スライダ20のレーザ素子22からレーザ光を出射し続ける。このとき、記録磁性層12A,12Bを所定の温度(初期温度)に一旦昇温させるための熱エネルギを供給する程度の光量および強度で、レーザ光を照射する。初期温度は、好ましくは、記録磁性層12Aのキュリー温度Tc1(>Tc2)を超える温度である。このようなレーザ光照射により、多層記録膜12(記録磁性層12A,12B)は局所的に昇温し、多層記録膜12の内部には、初期温度をピークとして周方向(トラック延び方向)に温度勾配を伴う温度分布が生ずる。図4〜図6の各々には、この温度分布を表すグラフを付す。
図4に示すように、記録面(多層記録膜12)における局所的な領域P1がレーザ素子22の直下に至ってレーザ照射されると、領域P1における記録磁性層12A,12Bは、初期温度まで昇温する(昇温工程)。本工程では、設定されている初期温度に応じて、記録磁性層12A,12Bの各々の保磁力Hc1,Hc2は、所定の値まで低下する。初期温度がTc1を超える温度に設定されている場合には、領域P1における記録磁性層12A,12Bは、図4のグラフに示すようにTc1を超える温度まで昇温し、これにより、領域P1における記録磁性層12A,12Bは、共に、自発磁化を消失し、従って保磁力を失う。
次に、図5に示すように、矢印D方向への媒体移動によって領域P1が記録ヘッド23Aの直下に至ったとき、記録ヘッド23Aにより領域P1に第1記録磁界B1を印加することによって、記録磁性層12A,12Bを第1記録磁界B1の方向に磁化する(磁界印加工程の第1磁化ステップ)。本工程では、領域P1の温度はTc1未満であって、領域P1の少なくとも記録磁性層12Aは保磁力Hc1を有し、第1記録磁界B1はHc1より大きい(Hc1<B1)。上述の初期温度がTc1を超える温度に設定される場合には、図4に示す位置から図5に示す位置に領域P1が移動する間に、領域P1が初期温度からTc1未満の所定の温度に降温するように、例えば、磁気ディスク10の回転速度を前提に、レーザ素子22と記録ヘッド23Aとの間の距離や、記録磁性層12Aの材料組成などを調整しておく。このように、磁界印加工程の第1磁化ステップにおいて、記録磁性層12Aを記録磁化する。
一方、このように領域P1が第1磁化ステップにあるとき、浮上スライダ20に対して領域P1よりも媒体回転方向上流に位置する所定の領域P2は、図4を参照して領域P1に関して上述したのと同様の昇温工程に付される。また、領域P1から領域P2までの区間(1または2以上の局所的な領域からなる)は、領域P1の昇温工程終了後から領域P2の昇温工程までの間に昇温工程に付される。
次に、図6に示すように、矢印D方向への媒体移動によって領域P1が記録ヘッド23Bの直下に至ったとき、記録ヘッド23Bにより領域P1に第2記録磁界B2を印加することによって、記録磁性層12Bを第2記録磁界B2の方向に磁化する(磁界印加工程の第2磁化ステップ)。本工程では、領域P1の温度はTc2未満であって、領域P1の記録磁性層12A,12Bは各々保磁力Hc1,Hc2を有し、第2記録磁界B2はHc2より大きく且つHc1未満である(Hc2<Bc1<Hc1)。そのため、記録磁性層12Aは第2記録磁界B2の作用を実質的には受けずに、記録磁性層12Bは第2記録磁界B2の作用を受けて磁化される。また、第2記録磁界B2の方向は第1記録磁界B1のそれと同じ又は反対である(図6においては反対の場合を示す)。第1磁化ステップの時点で領域P1の温度がTc2を超えている場合、図5に示す位置から図6に示す位置に領域P1が移動する間に、領域P1がTc2未満の所定の温度に降温するように、例えば、磁気ディスク10の回転速度を前提に、記録ヘッド23Aと記録ヘッド23Bとの間の距離や、記録磁性層12Bの材料組成などを調整しておく。このように、磁界印加工程の第2磁化ステップにおいて、記録磁性層12Bを記録磁化する。
一方、このように領域P1が第2磁化ステップにあるとき、領域P2は、図5を参照して領域P1に関して上述したのと同様の第1磁化ステップに付され、浮上スライダ20に対して領域P2よりも回転方向上流に位置する所定の領域P3は、図4を参照して領域P1に関して上述したのと同様の昇温工程に付される。また、領域P1から領域P2までの区間は、領域P1の第1磁化ステップ終了後から領域P2の第1磁化ステップまでの間に第1磁化ステップに付され、領域P2から領域P3までの区間は、領域P2の昇温工程終了後から領域P3の昇温工程までの間に昇温工程に付される。
以上のような昇温工程および磁界印加工程(第1磁化ステップ,第2磁化ステップ)をレーザ素子22や記録ヘッド23A,23Bの直下位置に順次至る各領域に対して実行することにより、図7に示すように、磁気ディスク10の多層記録膜12(記録磁性層12A,12B)において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報を記録することができる。図7においては、図の簡潔化の観点より、磁気ディスク10について基板11および記録磁性層12A,12B以外を省略する。
磁気ディスク10の記録面(多層記録膜12)の各領域における記録磁性層12A,12Bは、多層記録膜12に対して垂直な2方向のいずれかの方向に磁化されており、且つ、上述のように、記録磁性層12A,12Bにおいて|Mr1|×d1および|Mr2|×d2は異なる(図7においては|Mr1|×d1<|Mr2|×d2の場合を示す)。したがって、各領域における記録磁性層12A,12Bの|Mr1|×d1および|Mr2|×d2の総和は、当該|Mr1|×d1および|Mr2|×d2の全ての加減組み合わせで異なる。具体的には、記録面の各領域は、|Mr1|×d1+|Mr2|×d2(これを磁気状態S1とする)、|Mr1|×d1−|Mr2|×d2(これを磁気状態S2とする)、−|Mr1|×d1+|Mr2|×d2(これを磁気状態S3とする)、および−|Mr1|×d1−|Mr2|×d2(これを磁気状態S4とする)の4つの状態をとり得る。
磁気ディスク装置X1による情報再生に際しては、磁気ディスク10を所定の速度で回転動作させる。これにより、磁気ディスク10と浮上スライダ20との間に気体潤滑膜が生じ、浮上スライダ20は、磁気ディスク10に対して浮上配置されることとなる。この状態において、再生ヘッド24により、記録面(多層記録膜12)の磁気状態S1〜S4に由来して形成される信号磁界(4つの値をとり得る)を検知する。図7には、本図に示される磁気状態にある多層記録膜12について再生ヘッド24により読み取りを実行した場合の再生信号の電圧波形を付す。このようにして、多層記録膜12内に記録されている4値信号を読み出すための情報再生が実行される。
以上のように、本実施形態の方法によると、4値方式で情報を記録再生することができる。加えて、本方法においては、熱アシストを伴って記録磁性層12A,12Bが記録磁化されるため、記録ヘッド23A,23Bにより発生すべき記録磁界の強度を小さく維持しつつ、例えば常温での記録磁性層12A,12Bの保磁力を高く設定することができる。記録磁性層12A,12Bの保磁力が高いほど、記録磁性層12A,12B内に安定に形成し得る最小磁区をより微小とすることができ、記録面内方向において2次元的に高い記録密度を得ることが可能である。したがって、本実施形態の磁気記録方法によると、熱アシストを伴う4値記録再生方式において、充分な高記録密度化を図ることができるのである。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る磁気記録方法を実行するための磁気ディスク装置X2の部分構成を表す。磁気ディスク装置X2は、磁気ディスク30および浮上スライダ40を備え、熱アシスト記録方式での情報記録と情報再生とを磁気ディスク30について実行することができるように構成されている。
磁気ディスク30は、図8に加えて図9にも示すように、基板31、多層記録膜32、および保護層33からなる積層構造を有し、垂直磁気記録方式かつ熱アシスト記録方式の磁気記録媒体として構成されたものである。
基板31は、磁気ディスク30の剛性を確保するための部位であり、ディスク形状を有する。また、基板31は、例えば、アルミニウム合金基板、ガラス基板、または樹脂基板である。
多層記録膜32は、記録磁性層32A,32B,32Cおよび非磁性層32aからなる積層構造を有し、各所に8値の信号が記録され得る記録面を構成する。
記録磁性層32A,32B,32Cは、各々、垂直磁化膜であり、例えば、所定の組成比のTbFe、TbFeCo、FePt、またはCoCrよりなる。本実施形態では、記録磁性層32A,32B,32Cのキュリー温度を各々Tc1,Tc2,Tc3とすると、Tc1>Tc2>Tc3であり、且つ、記録磁性層32A,32B,32Cの保磁力を各々Hc1,Hc2,Hc3とすると、情報記録時に多層記録膜32のとり得る温度範囲においてはHc1>Hc2>Hc3である。図10は、これらの条件の下に構成されている記録磁性層32A,32B,32Cについて、保磁力Hcの温度依存性の一例を表すグラフである。図10のグラフにおいて、線G1は記録磁性層32Aの保磁力変化を表し、線G2は記録磁性層32Bの保磁力変化を表し、線G3は記録磁性層32Cの保磁力変化を表す。また、本実施形態では、記録磁性層32A,32B,32Cの磁化を各々Mr1,Mr2,Mr3とし、記録磁性層32A,32B,32Cの厚さを各々d1,d2,d3とすると、磁化の大きさ(絶対値)と厚さとの積である|Mr1|×d1、|Mr2|×d2、および|Mr3|×d3は相互に異なる。キュリー温度、保磁力、および磁化の大きさについては、記録磁性層32A,32B,32Cの構成元素種の選択や組成比の調節により適宜設定することが可能である。このような記録磁性層32A,32B,32Cの厚さは、各々、例えば5〜50nmである。
非磁性層32aは、記録磁性層間に交換結合作用が生じないように2つの記録磁性層間に介在し、例えば、Al、C、Si、SiO2、またはSiNよりなる。このような非磁性層32aの厚さは、例えば1〜10nmである。
保護層33は、多層記録膜32を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、例えば、SiN、SiO2、またはDLCよりなる。
このような磁気ディスク30の製造においては、例えばスパッタリング法により、基板31上に、記録磁性層32A、非磁性層32a、記録磁性層32B、非磁性層32a、記録磁性層32C、および保護層33を順次形成する。また、本発明においては、記録磁性層32Aを形成する前に、基板31上に密着下地層や軟磁性層などを形成してもよい。
磁気ディスク装置X2において、磁気ディスク30は、所定の制御部からの制御信号に基づいて制御される図外のスピンドルモータに支持され、スピンドルモータが回転駆動することによって回転動作する。
浮上スライダ40は、スライダボディ41、レーザ素子42、記録ヘッド43A,43B,43C、および再生ヘッド44を有し、磁気ディスク装置X2による情報記録および情報再生の実行時には、磁気ディスク30の保護層33に対向して配置される。
レーザ素子42自体、各記録ヘッド43A,43B,43C自体、および再生ヘッド44自体の構成は、各々、第1の実施形態におけるレーザ素子22、記録ヘッド23A,23B、および再生ヘッド24の構成と同様である。また、記録ヘッド43A,43B,43Cとレーザ素子42とは、浮上スライダ40において、レーザ素子42、記録ヘッド43A、記録ヘッド43B、および記録ヘッド43Cの順で、磁気ディスク30の回転方向D(ないし周方向)に相当する方向に沿って一列に配されている。
このような浮上スライダ40は、板バネ状のサスペンションアーム(図示略)を介して図外のアクチュエータに連結されている。サスペンションアームは、浮上スライダ40に対し、磁気ディスク30に向けて付勢力を作用させるためのものであり、アクチュエータは、例えばボイスコイルモータにより構成されている。
図11〜図14は、本発明の第2の実施形態に係る磁気記録方法に基づいて磁気ディスク装置X2において実行される熱アシスト情報記録の過程を表す。図11〜図14において、磁気ディスク30については、基材31および記録磁性層32A,32B,32C以外を省略して簡略化し、周方向(トラック延び方向)に沿った部分断面を表す。また、図11〜図14の各々において、浮上スライダ40に対する磁気ディスク30の移動方向(回転方向)を矢印Dで示す。
情報記録に際しては、磁気ディスク30を所定の速度で回転動作させる。これにより、磁気ディスク30と浮上スライダ40との間に気体潤滑膜が生じ、浮上スライダ40は、磁気ディスク30に対して浮上配置されることとなる。そして、浮上配置された浮上スライダ40のレーザ素子42からレーザ光を出射し続ける。このとき、記録磁性層32A,32Bを所定の温度(初期温度)に一旦昇温させるための熱エネルギを供給する程度の光量および強度で、レーザ光を照射する。初期温度は、好ましくは、記録磁性層32Aのキュリー温度Tc1(>Tc2>Tc3)を超える温度である。このようなレーザ光照射により、多層記録膜32(記録磁性層32A,32B,32C)は局所的に昇温し、多層記録膜32の内部には、初期温度をピークとして周方向(トラック延び方向)に温度勾配を伴う温度分布が生ずる。図11〜図14の各々には、この温度分布を表すグラフを付す。
図11に示すように、記録面(多層記録膜32)における局所的な領域P1がレーザ素子42の直下に至ってレーザ照射されると、領域P1における記録磁性層32A,32B,32Cは、初期温度まで昇温する(昇温工程)。本工程では、設定されている初期温度に応じて、記録磁性層32A,32B,32Cの各々の保磁力Hc1,Hc2,Hc3は、所定の値まで低下する。初期温度がTc1を超える温度に設定されている場合には、領域P1における記録磁性層32A,32B,32Cは、図11に示すようにTc1を超える温度まで昇温し、これにより、領域P1における記録磁性層32A,32B,32Cは、共に、自発磁化を消失し、従って保磁力を失う。
次に、図12に示すように、矢印D方向への媒体移動によって領域P1が記録ヘッド43Aの直下に至ったとき、記録ヘッド43Aにより領域P1に第1記録磁界B1を印加することによって、記録磁性層32A,32B,32Cを第1記録磁界B1の方向に磁化する(磁界印加工程の第1磁化ステップ)。本工程では、領域P1の温度はTc1未満であって、領域P1の少なくとも記録磁性層32Aは保磁力Hc1を有し、第1記録磁界B1はHc1より大きい(Hc1<B1)。上述の初期温度がTc1を超える温度に設定される場合には、図11に示す位置から図12に示す位置に領域P1が移動する間に、領域P1が初期温度からTc1未満の所定の温度に降温するように、例えば、磁気ディスク30の回転速度を前提に、レーザ素子42と記録ヘッド43Aとの間の距離や、記録磁性層32Aの材料組成などを調整しておく。このように、磁界印加工程の第1磁化ステップにおいて、記録磁性層32Aを記録磁化する。
一方、このように領域P1が第1磁化ステップにあるとき、浮上スライダ40に対して領域P1よりも媒体回転方向上流に位置する所定の領域P2は、図11を参照して領域P1に関して上述したのと同様の昇温工程に付される。また、領域P1から領域P2までの区間は、領域P1の昇温工程終了後から領域P2の昇温工程までの間に昇温工程に付される。
次に、図13に示すように、矢印D方向への媒体移動によって領域P1が記録ヘッド43Bの直下に至ったとき、記録ヘッド43Bにより領域P1に第2記録磁界B2を印加することによって、記録磁性層32B,32Cを第2記録磁界B2の方向に磁化する(磁界印加工程の第2磁化ステップ)。本工程では、領域P1の温度はTc2未満であって、領域P1の少なくとも記録磁性層32A,32Bは各々保磁力Hc1,Hc2を有し、第2記録磁界B2はHc2より大きく且つHc1未満である(Hc2<B2<Hc1)。そのため、記録磁性層32Aは第2記録磁界B2の作用を実質的には受けずに、記録磁性層32B,32Cは第2記録磁界B2の作用を受けて磁化される。また、第2記録磁界B2の方向は第1記録磁界B1のそれと同じ又は反対である(図13においては反対の場合を示す)。第1磁化ステップの時点で領域P1の温度がTc2を超えている場合、図12に示す位置から図13に示す位置に領域P1が移動する間に、領域P1がTc2未満の所定の温度に降温するように、例えば、磁気ディスク30の回転速度を前提に、記録ヘッド43Aと記録ヘッド43Bとの間の距離や、記録磁性層32Bの材料組成などを調整しておく。このように、磁界印加工程の第2磁化ステップにおいて、記録磁性層32Bを記録磁化する。
一方、このように領域P1が第2磁化ステップにあるとき、領域P2は、図12を参照して領域P1に関して上述したのと同様の第1磁化ステップに付され、浮上スライダ40に対して領域P2よりも媒体回転方向上流に位置する領域P3は、図11を参照して領域P1に関して上述したのと同様の昇温工程に付される。また、領域P1から領域P2までの区間は、領域P1の第1磁化ステップ終了後から領域P2の第1磁化ステップまでの間に第1磁化ステップに付され、領域P2から領域P3までの区間は、領域P2の昇温工程終了後から領域P3の昇温工程までの間に昇温工程に付される。
次に、図14に示すように、矢印D方向への媒体移動によって領域P1が記録ヘッド43Cの直下に至ったとき、記録ヘッド43Cにより領域P1に第3記録磁界B3を印加することによって、記録磁性層32Cを第3記録磁界B3の方向に磁化する(磁界印加工程の第3磁化ステップ)。本工程では、領域P1の温度はTc2未満であって、領域P1の記録磁性層32A,32B,32Cは各々保磁力Hc1,Hc2,Hc3を有し、第3記録磁界B3はHc3より大きく且つHc2未満である(Hc3<B3<Hc2<Hc1)。そのため、記録磁性層32A,32Bは第3記録磁界B3の作用を実質的には受けずに、記録磁性層32Cは第3記録磁界B3の作用を受けて磁化される。また、第3記録磁界B3の方向は第1および第2記録磁界B1,B2のそれと同じ又は反対である。第2磁化ステップの時点で領域P1の温度がTc3を超えている場合、図13に示す位置から図14に示す位置に領域P1が移動する間に、領域P1がTc3未満の所定の温度に降温するように、例えば、磁気ディスク30の回転速度を前提に、記録ヘッド43Bと記録ヘッド43Cとの間の距離や、記録磁性層32Cの材料組成などを調整しておく。このように、磁界印加工程の第3磁化ステップにおいて、記録磁性層32Cを記録磁化する。
一方、このように領域P1が第3磁化ステップにあるとき、領域P2は、図13を参照して領域P1に関して上述したのと同様の第2磁化ステップに付され、領域P3は、図12を参照して領域P1に関して上述したのと同様の第1磁化ステップに付され、浮上スライダ40に対して領域P3よりも媒体回転方向上流に位置する領域P4は、図11を参照して領域P1に関して上述したのと同様の昇温工程に付される。また、領域P1から領域P2までの区間は、領域P1の第2磁化ステップ終了後から領域P2の第2磁化ステップまでの間に第2磁化ステップに付され、領域P2から領域P3までの区間は、領域P2の第1磁化ステップ終了後から領域P3の第1磁化ステップまでの間に第1磁化ステップに付され、領域P3から領域P4までの区間は、領域P3の昇温工程終了後から領域P4の昇温工程までの間に昇温工程に付される。
以上のような昇温工程および磁界印加工程(第1〜第3磁化ステップ)をレーザ素子42や記録ヘッド43A,43B,43Cの直下位置に順次至る各領域に対して実行することにより、図15に示すように、磁気ディスク30の多層記録膜32(記録磁性層32A,32B,32C)において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報を記録することができる。図15においては、図の簡潔化の観点より、磁気ディスク30について基板31および記録磁性層32A,32B,32C以外を省略する。
磁気ディスク30の記録面(多層記録膜32)の各領域における記録磁性層32A,32B,32Cは、多層記録膜32に対して垂直な2方向のいずれかの方向に磁化されており、且つ、上述のように、記録磁性層32A,32B,32Cにおいては、|Mr1|×d1、|Mr2|×d2、および|Mr3|×d3は相互に異なる。したがって、各領域における記録磁性層32A,32B,32Cの|Mr1|×d1、|Mr2|×d2、および|Mr3|×d3の総和は、当該|Mr1|×d1、|Mr2|×d2、および|Mr3|×d3の全ての加減組み合わせで異なる。具体的には、記録面の各領域は、|Mr1|×d1+|Mr2|×d2+|Mr3|×d3、|Mr1|×d1+|Mr2|×d2−|Mr3|×d3、|Mr1|×d1−|Mr2|×d2+|Mr3|×d3、|Mr1|×d1−|Mr2|×d2−|Mr3|×d3、−|Mr1|×d1+|Mr2|×d2+|Mr3|×d3、−|Mr1|×d1+|Mr2|×d2−|Mr3|×d3、−|Mr1|×d1−|Mr2|×d2+|Mr3|×d3、および−|Mr1|×d1−|Mr2|×d2−|Mr3|×d3の8つの磁気状態をとり得る。
磁気ディスク装置X2による情報再生に際しては、磁気ディスク30を所定の速度で回転動作させる。これにより、磁気ディスク30と浮上スライダ40との間に気体潤滑膜が生じ、浮上スライダ40は、磁気ディスク30に対して浮上配置されることとなる。この状態において、再生ヘッド44により、多層記録膜32の磁気状態に由来して形成される信号磁界(8つの値をとり得る)を検知する。このようにして、多層記録膜32内に記録されている8値信号を読み出すための情報再生が実行される。
以上のように、本実施形態の方法によると、8値方式で情報を記録再生することができる。加えて、本方法においては、熱アシストを伴って記録磁性層32A,32B,32Cが磁化されるため、記録ヘッド43A,43B,43Cにより発生すべき記録磁界の強度を小さく維持しつつ、例えば常温での記録磁性層32A,32B,32Cの保磁力を高く設定することができる。記録磁性層32A,32B,32Cの保磁力が高いほど、記録磁性層32A,32B,32C内に安定に形成し得る最小磁区をより微小とすることができ、記録面内方向において2次元的に高い記録密度を得ることが可能である。したがって、本実施形態の磁気記録方法によると、熱アシストを伴う8値記録再生方式において、充分な高記録密度化を図ることができるのである。
図16は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録方法を実行するための磁気ディスク装置X3の部分構成を表す。磁気ディスク装置X3は、磁気ディスク50および浮上スライダ60を備え、熱アシスト記録方式での情報記録と情報再生とを磁気ディスク50について実行することができるように構成されている。
磁気ディスク50は、図16に加えて図17にも示すように、基板51、多層記録膜52、および保護層53からなる積層構造を有し、垂直磁気記録方式かつ熱アシスト記録方式の磁気記録媒体として構成されたものである。
基板51は、磁気ディスク50の剛性を確保するための部位であり、ディスク形状を有する。また、基板51は、例えば、アルミニウム合金基板、ガラス基板、または樹脂基板である。
多層記録膜52は、記録磁性層L1,L2,・・・Lnおよび非磁性層52aからなる積層構造を有し、各所に多値(例えば2n値)の信号が記録され得る記録面を構成する。
記録磁性層L1,L2,・・・Lnは、各々、垂直磁化膜であり、例えば、所定の組成比のTbFe、TbFeCo、FePt、またはCoCrよりなる。本実施形態では、記録磁性層L1,L2,・・・Lnのキュリー温度を各々Tc1,Tc2,・・・Tcnとすると、Tc1>Tc2>・・・>Tcnであり、且つ、記録磁性層L1,L2,・・・Lnの保磁力を各々Hc1,Hc2,・・・Hcnとすると、情報記録時に多層記録膜52のとり得る温度範囲においてはHc1>Hc2>・・・>Hcnである。また、本実施形態では、記録磁性層L1,L2,・・・Lnの磁化を各々Mr1,Mr2,・・・Mrnとし、記録磁性層L1,L2,・・・Lnの厚さを各々d1,d2,・・・dnとすると、磁化の大きさ(絶対値)と厚さとの積である|Mr1|×d1〜|Mrn|×dnは相互に異なるのが好ましい。キュリー温度、保磁力、および磁化の大きさについては、記録磁性層L1,L2,・・・Lnの構成元素種の選択や組成比の調節により適宜設定することが可能である。このような記録磁性層L1,L2,・・・Lnの厚さは、各々、例えば5〜50nmである。
非磁性層52aは、記録磁性層間に交換結合作用が生じないように2つの記録磁性層間に介在し、例えば、Al、Al、C、Si、SiO2、またはSiNよりなる。このような非磁性層52aの厚さは、例えば1〜10nmである。
保護層53は、多層記録膜52を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボンよりなる。
このような磁気ディスク50は、例えばスパッタリング法により基板51上に各層を順次形成することによって、製造することができる。
磁気ディスク装置X3において、磁気ディスク50は、所定の制御部からの制御信号に基づいて制御される図外のスピンドルモータに支持され、スピンドルモータが回転駆動することによって回転動作する。
浮上スライダ60は、スライダボディ61、レーザ素子62、記録ヘッドK1,K2,・・・Kn、および再生ヘッド63を有し、磁気ディスク装置X3による情報記録および情報再生の実行時には、磁気ディスク50の保護層53に対向して配置される。
レーザ素子62自体、各記録ヘッドK1,K2,・・・Kn自体、および再生ヘッド63自体の構成は、各々、第1の実施形態におけるレーザ素子22、記録ヘッド23A,23B、および再生ヘッド24の構成と同様である。また、記録ヘッドK1,K2,・・・Kn、とレーザ素子62とは、浮上スライダ60において、レーザ素子62および記録ヘッドK1,K2,・・・Knの順で、磁気ディスク50の回転方向D(ないし周方向)に相当する方向に沿って一列に配されている。
このような浮上スライダ60は、板バネ状のサスペンションアーム(図示略)を介して図外のアクチュエータに連結されている。サスペンションアームは、浮上スライダ60に対し、磁気ディスク50に向けて付勢力を作用させるためのものであり、アクチュエータは、例えばボイスコイルモータにより構成されている。
図18は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録方法に基づいて磁気ディスク装置X3において実行される熱アシスト情報記録を表す。図18において、磁気ディスク50については、基材51および記録磁性層L1,L2,・・・Ln以外を省略して簡略化し、周方向(トラック延び方向)に沿った部分断面を表す。また、浮上スライダ60に対する磁気ディスク50の移動方向(回転方向)については矢印Dで示す。
情報記録に際しては、磁気ディスク50を所定の速度で回転動作させる。これにより、磁気ディスク50と浮上スライダ60との間に気体潤滑膜が生じ、浮上スライダ60は、磁気ディスク50に対して浮上配置されることとなる。そして、浮上配置された浮上スライダ60のレーザ素子62からレーザ光を出射し続ける。このとき、記録磁性層L1,L2,・・・Lnを所定の温度(初期温度)に一旦昇温させるための熱エネルギを供給する程度の光量および強度で、レーザ光を照射する。初期温度は、好ましくは、記録磁性層L1のキュリー温度Tc1(>Tc2>・・・>Tcn)を超える温度である。このようなレーザ光照射により、多層記録膜52(記録磁性層L1,L2,・・・Ln)は局所的に昇温し、多層記録膜52の内部には、初期温度をピークとして周方向(トラック延び方向)に温度勾配を伴う温度分布が生ずる。図18には、この温度分布を表すグラフを付す。
本実施形態の熱アシスト情報記録においては、記録面(多層記録膜52)の各領域に対して昇温工程およびこれに続いて磁界印加工程が実行される。磁界印加工程では、第1磁化ステップから第n磁化ステップまでが順次実行される。
昇温工程では、多層記録膜52における所定領域がレーザ素子62の直下に至ってレーザ照射され、この領域における記録磁性層L1,L2,・・・Lnは、初期温度まで昇温する。本工程では、設定されている初期温度に応じて、記録磁性層L1,L2,・・・Lnの各々の保磁力Hc1,Hc2,・・・Hcnは、所定の値まで低下する。初期温度がTc1を超える温度に設定されている場合には、当該領域における記録磁性層L1,L2,・・・LnはTc1を超える温度まで昇温し、これにより、当該領域における記録磁性層L1,L2,・・・Lnは、共に、自発磁化を消失し、従って保磁力を失う。
磁界印加工程の第1磁化ステップでは、記録ヘッドK1により所定領域に第1記録磁界B1を印加することによって、記録磁性層L1,L2,・・・Lnを第1記録磁界B1の方向に磁化する。本ステップに付される領域では、温度はTc1未満であって、少なくとも記録磁性層L1は保磁力Hc1を有し、第1記録磁界B1はHc1より大きい(Hc1<B1)。そのため、本ステップでは記録磁性層L1が第1記録磁界B1の方向に記録磁化される。
第2磁化ステップでは、記録ヘッドK2により所定領域に第2記録磁界B2を印加することによって、記録磁性層L2,・・・Lnを第2記録磁界B2の方向に磁化する。本ステップに付される領域では、温度はTc2未満であって、少なくとも記録磁性層L1,L2は保磁力Hc1,Hc2を有し、第2記録磁界B2はHc2より大きく且つHc1未満である(Hc2<B2<Hc1)。そのため、記録磁性層L1は第2記録磁界B2の作用を実質的には受けずに、記録磁性層L2〜Lnは第2記録磁界B2の作用を受けて磁化される。このようにして、本ステップでは記録磁性層L2が記録磁化される。
このように、各記録ヘッドによる記録磁界印加によって各磁化ステップが実行されて各記録磁性層が記録磁化され、記録磁性層Lnの記録磁化は第n磁化ステップにて実行される。第n磁化ステップでは、具体的には、記録ヘッドKnにより所定領域に第n記録磁界Bnを印加することによって、記録磁性層Lnを第n記録磁界Bnの方向に磁化する。本ステップに付される領域では、温度はTcn未満であって、記録磁性層L1,L2,・・・Lnは保磁力Hc1,Hc2,・・・Hcnを有し、第n記録磁界BnはHcnより大きく且つHcn-1未満である(Hcn<Bn<Hcn-1<・・・<Hc1)。そのため、記録磁性層L1〜Ln-1は第n記録磁界Bnの作用を実質的には受けずに、記録磁性層Lnは第n記録磁界Bnの作用を受けて磁化される。このようにして、本ステップでは記録磁性層Lnが記録磁化される。
以上のような昇温工程および磁界印加工程(第1〜第n磁化ステップ)をレーザ素子62や記録ヘッドK1,K2,・・・Knの直下位置に順次至る各領域に対して実行することにより、磁気ディスク50の多層記録膜52において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報を記録することができる。磁気ディスク50の記録面(多層記録膜52)の各領域における記録磁性層L1,L2,・・・Lnは、多層記録膜52に対して垂直な2方向のいずれかの方向に磁化されており、記録面の各領域における記録磁性層L1,L2,・・・Lnの|Mr1|×d1〜|Mrn|×dnの総和は、複数の値をとる。好ましくは、記録磁性層L1,L2,・・・Lnの|Mr1|×d1〜|Mrn|×dnは全て相互に異なり、且つ、当該|Mr1|×d1〜|Mrn|×dnの総和は、当該|Mr1|×d1〜|Mrn|×dnの全ての加減組み合わせで異なる。この場合、記録面(多層記録膜52)の各領域は2n個の磁気状態をとり得る。
磁気ディスク装置X3による情報再生に際しては、磁気ディスク50を所定の速度で回転動作させる。これにより、磁気ディスク50と浮上スライダ60との間に気体潤滑膜が生じ、浮上スライダ60は、磁気ディスク50に対して浮上配置されることとなる。この状態において、再生ヘッド63により、多層記録膜52の磁気状態に由来して形成される信号磁界を検知する。このようにして、多層記録膜52内に記録されている多値信号を読み出すための情報再生が実行される。
以上のように、本実施形態の方法によると、多値方式で情報を記録再生することができる。加えて、本方法においては、熱アシストを伴って記録磁性層L1,L2,・・・Lnが磁化されるため、記録ヘッドK1,K2,・・・Knにより印加すべき記録磁界の強度を小さく維持しつつ、例えば常温での記録磁性層L1,L2,・・・Lnの保磁力を高く設定することができる。記録磁性層L1,L2,・・・Lnの保磁力が高いほど、記録磁性層L1,L2,・・・Ln内に安定に形成し得る最小磁区をより微小とすることができ、記録面内方向において2次元的に高い記録密度を得ることが可能である。したがって、本実施形態の磁気記録方法によると、熱アシストを伴う多値記録再生方式において、充分な高記録密度化を図ることができるのである。
〔磁気ディスクの作製〕
図19に示す積層構成を有して第1の実施形態に相当する磁気ディスクを、本実施例の磁気ディスクとして作製した。
具体的には、まず、アルミニウム合金製のディスク基板(直径65mm)の上に、スパッタリング法によりTb20Fe80を成膜することによって、記録磁性層12Aとして厚さ25nmのTb20Fe80層を形成した。本スパッタリングでは、TbターゲットおよびFeターゲットを用いて行うコスパッタリングにより、基板上にTb20Fe80を成膜した。また、本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を2.5Paとし、スパッタ電力を80W(Tbターゲット)および300W(Feターゲット)とした。
次に、スパッタリング法によりTb20Fe80層上にAlを成膜することによって、非磁性層12aとして厚さ3nmのAl層を形成した。本スパッタリングでは、Alターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を0.6Paとし、スパッタ電力を500Wとした。
次に、スパッタリング法によりAl層上にTb16Fe84を成膜することによって、記録磁性層12Bとして厚さ25nmのTb16Fe84層を形成した。本スパッタリングでは、TbターゲットおよびFeターゲットを用いて行うコスパッタリングにより、基板上にTb16Fe84を成膜した。また、本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を2.5Paとし、スパッタ電力を80W(Tbターゲット)および300W(Feターゲット)とした。
次に、スパッタリング法によりTb16Fe84層上にダイアモンドライクカーボン(DLC)を成膜することによって、保護層13として厚さ10nmのDLC層を形成した。本工程では、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を0.25Paとし、スパッタ電力を1500Wとした。以上のようにして、本実施例の磁気ディスクを作製した。
〔保磁力測定〕
本実施例の磁気ディスクにおける各記録磁性層と同一組成のTb20Fe80膜およびTb16Fe84膜の各々について、保磁力Hcの温度依存性を測定した。その結果のグラフを図20に示す。図20のグラフにおいて、横軸は膜の温度(℃)を表し、縦軸は膜の保磁力Hc(Oe)を表し、線F1はTb20Fe80膜の測定結果を表し、線F2はTb16Fe84膜の測定結果を表す。
〔飽和磁化測定〕
本実施例の磁気ディスクにおける各記録磁性層と同一組成のTb20Fe80膜およびTb16Fe84膜の各々について、飽和磁化Msの温度依存性を測定した。その結果のグラフを図21に示す。図21のグラフにおいて、横軸は膜の温度(℃)を表し、縦軸は膜の飽和磁化Ms(emu/cc)を表し、線F1’はTb20Fe80膜の測定結果を表し、線F2’はTb16Fe84膜の測定結果を表す。
〔評価〕
図20のグラフに示すように、Tb20Fe80膜のキュリー温度は130℃であり、Tb16Fe84膜のキュリー温度は110℃であった。また、図21のグラフに示すように、Tb20Fe80膜の25℃での飽和磁化は80emu/ccであり、Tb16Fe84膜の飽和磁化は180emu/ccであった。25℃における飽和磁化がこの程度に異なるので、これら磁性膜における常温での磁化も有意に異なり得る。したがって、本実施例の磁気ディスクでは、記録磁性層12AであるTb20Fe80層(厚さ25nm)と記録磁性層12BであるTb16Fe84層(厚さ25nm)とのキュリー温度は異なり、且つ、これら各層の常温での磁化の大きさと厚さとの積は異なる。このような磁気ディスクによると、図4〜図6を参照して上述した熱アシスト記録方式かつ多値記録方式の情報記録を適切に実行することができる。
〔磁気ディスクの作製〕
図22に示す積層構成を有して第2の実施形態に相当する磁気ディスクを、本実施例の磁気ディスクとして作製した。
具体的には、まず、アルミニウム合金製のディスク基板(直径65mm)の上に、スパッタリング法によりTb23Fe77を成膜することによって、記録磁性層32Aとして厚さ25nmのTb23Fe77層を形成した。本スパッタリングでは、TbターゲットおよびFeターゲットを用いて行うコスパッタリングにより、基板上にTb23Fe77を成膜した。また、本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を2.5Paとし、スパッタ電力を80W(Tbターゲット)および300W(Feターゲット)とした。
次に、スパッタリング法によりTb23Fe77層上にAlを成膜することによって、非磁性層32aとして厚さ3nmのAl層を形成した。本スパッタリングでは、Alターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を0.6Paとし、スパッタ電力を500Wとした。
この後、実施例1において基板上にTb20Fe80層、Al層、Tb16Fe84層、およびDLC層を順次形成したのと同様にして、Al層上に、記録磁性層32BとしてTb20Fe80層(厚さ25nm)、非磁性層32aとしてAl層(厚さ3nm)、記録磁性層32CとしてTb16Fe84層(厚さ25nm)、および保護層33としてDLC層を順次形成した。
〔保磁力測定〕
本実施例の磁気ディスクにおける記録磁性層32Aと同一組成のTb23Fe77膜について、保磁力Hcの温度依存性を測定した。その結果と、Tb20Fe80膜およびTb16Fe84膜についての上述の保磁力測定結果とを合せたグラフを図23に示す。図23のグラフにおいて、横軸は膜の温度(℃)を表し、縦軸は膜の保磁力Hc(Oe)を表し、線F3はTb23Fe77膜の測定結果を表し、線F1はTb20Fe80膜の測定結果を表し、線F2はTb16Fe84膜の測定結果を表す。
〔飽和磁化測定〕
本実施例の磁気ディスクにおける記録磁性層32Aと同一組成のTb23Fe77膜について、飽和磁化Msの温度依存性を測定した。その結果と、Tb20Fe80膜およびTb16Fe84膜についての上述の飽和磁化測定結果とを合せたグラフを図24に示す。図24のグラフにおいて、横軸は膜の温度(℃)を表し、縦軸は膜の飽和磁化Ms(emu/cc)を表し、線F3’はTb23Fe77膜の測定結果を表し、線F1’はTb20Fe80膜の測定結果を表し、線F2’はTb16Fe84膜の測定結果を表す。
〔評価〕
図23のグラフに示すように、Tb23Fe77膜のキュリー温度は150℃であった。上述のように、Tb20Fe80膜のキュリー温度は130℃であり、Tb16Fe84膜のキュリー温度は110℃である。また、図24のグラフに示すように、Tb23Fe77膜の25℃での飽和磁化は40emu/ccであった。上述のように、Tb20Fe80膜の25℃での飽和磁化は80emu/ccであり、Tb16Fe84膜の飽和磁化は180emu/ccである。25℃における飽和磁化がこの程度に異なるので、これら磁性膜における常温での磁化も有意に異なり得る。したがって、本実施例の磁気ディスクでは、記録磁性層32AであるTb23Fe77層(厚さ25nm)と、記録磁性層32BであるTb20Fe80層(厚さ25nm)と、記録磁性層32CであるTb16Fe84膜(厚さ25nm)とのキュリー温度は異なり、且つ、これら各層における常温での磁化の大きさと厚さとの積は異なる。このような磁気ディスクによると、図11〜図14を参照して上述した熱アシスト記録方式かつ多値記録方式の情報記録を適切に実行することができる。
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)キュリー温度の異なる複数の記録磁性層と、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層と、を含む多層記録膜を有する磁気記録媒体に情報を記録するための方法であって、
前記複数の記録磁性層を一旦昇温させるための昇温工程と、
前記昇温工程を経た前記複数の記録磁性層の各々を、相対的にキュリー温度の高い記録磁性層から低い記録磁性層にかけて順次、記録磁界を印加して当該記録磁界の方向に記録磁化するための磁界印加工程と、を含む磁気記録方法。
(付記2)前記昇温工程では、前記複数の記録磁性層を最高キュリー温度以上に昇温させる、付記1に記載の磁気記録方法。
(付記3)キュリー温度の異なる複数の記録磁性層と、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層と、を含む多層記録膜を有する磁気記録媒体。
(付記4)前記複数の記録磁性層の各々は磁化を有し、前記複数の記録磁性層において、磁化の大きさおよび厚さの積は、相互に異なる、付記3に記載の磁気記録媒体。
(付記5)前記記録磁性層ごとの前記積の総和は、当該複数の積の全ての加減組み合わせで異なる、付記4に記載の磁気記録媒体。
(付記6)キュリー温度の異なる複数の記録磁性層および当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層、を含む多層記録膜を有し、情報記録の実行時に回転動作を伴う、磁気記録媒体と、
前記多層記録膜を局所的に昇温するための昇温手段と、
前記昇温手段による昇温を経た多層記録膜に磁界を印加するための、前記情報記録の実行時の前記回転動作の方向に一列に位置する、前記複数の記録磁性層と同数の磁界印加手段と、を備える磁気記録装置。
(付記7)前記情報記録の実行時に前記多層記録膜に対向しつつ前記磁気記録媒体に対して浮上配置される浮上スライダを更に備え、前記昇温手段および前記複数の磁界印加手段は、当該浮上スライダに設けられている、付記6に記載の磁気記録装置。
(付記8)付記1から7のいずれか一つに記載の磁気記録媒体は、前記多層記録膜を支持するための基材を備え、前記複数の記録磁性層の複数のキュリー温度は、前記基材に近いほど或は前記基材から遠いほど、高い。
本発明の第1の実施形態に係る磁気記録方法を実行するための磁気ディスク装置の部分構成を表す。 第1の実施形態における磁気ディスクの積層構成を表す。 第1の実施形態における各記録磁性層について、保磁力Hcの温度依存性の一例を表す。 第1の実施形態に係る磁気記録方法の一のステップを表す。 第1の実施形態に係る磁気記録方法の他のステップを表す。 第1の実施形態に係る磁気記録方法の他のステップを表す。 第1の実施形態の磁気記録方法により情報記録が実行された磁気ディスクについて、多層記録膜における磁気状態の一例と、再生した場合に得られる再生信号の一例を表す。 本発明の第2の実施形態に係る磁気記録方法を実行するための磁気ディスク装置の部分構成を表す。 第2の実施形態における磁気ディスクの積層構成を表す。 第2の実施形態における各記録磁性層について、保磁力Hcの温度依存性の一例を表す。 第2の実施形態に係る磁気記録方法の一のステップを表す。 第2の実施形態に係る磁気記録方法の他のステップを表す。 第2の実施形態に係る磁気記録方法の他のステップを表す。 第2の実施形態に係る磁気記録方法の他のステップを表す。 第2の実施形態の磁気記録方法により情報記録が実行された磁気ディスクについて、多層記録膜における磁気状態の一例を表す。 本発明の第3の実施形態に係る磁気記録方法を実行するための磁気ディスク装置の部分構成を表す。 第3の実施形態における磁気ディスクの積層構成を表す。 第3の実施形態に係る磁気記録方法を表す。 実施例1の磁気ディスクの積層構成を表す。 実施例1の磁気ディスクにおける各記録磁性層について、保磁力Hcの温度依存性を表す。 実施例1の磁気ディスクにおける各記録磁性層について、飽和磁化Msの温度依存性を表す。 実施例2の磁気ディスクの積層構成を表す。 実施例2の磁気ディスクにおける各記録磁性層について、保磁力Hcの温度依存性を表す。 実施例2の磁気ディスクにおける各記録磁性層について、飽和磁化Msの温度依存性を表す。 従来の垂直磁気記録媒体の一例の部分断面模式図である。
符号の説明
X1,X2,X3 磁気ディスク装置
10,30,50,70 磁気ディスク
11,31,51 基板
12,32,52 多層記録膜
12A,12B,32A,32B,32C,L1〜Ln 記録磁性層
12a,32a,52a 非磁性層
13,33,53 保護層
20,40,60 浮上スライダ
22,42,62 レーザ素子
23A,23B,43A,43B,43C,K1〜Kn 記録ヘッド
24,44,63 再生ヘッド

Claims (5)

  1. キュリー温度の異なる複数の記録磁性層と、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層と、を含む多層記録膜を有する磁気記録媒体に情報を記録するための方法であって、
    前記複数の記録磁性層を一旦昇温させるための昇温工程と、
    前記昇温工程を経た前記複数の記録磁性層の各々を、相対的にキュリー温度の高い記録磁性層から低い記録磁性層にかけて順次、記録磁界を印加して当該記録磁界の方向に記録磁化するための磁界印加工程と、を含む磁気記録方法。
  2. 前記昇温工程では、前記複数の記録磁性層を最高キュリー温度以上に昇温させる、請求項1に記載の磁気記録方法。
  3. キュリー温度の異なる複数の記録磁性層と、当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層と、を含む多層記録膜を有する磁気記録媒体。
  4. 前記複数の記録磁性層の各々は磁化を有し、前記複数の記録磁性層において、磁化の大きさおよび厚さの積は、相互に異なる、請求項3に記載の磁気記録媒体。
  5. キュリー温度の異なる複数の記録磁性層および当該記録磁性層間ごとに設けられた非磁性層、を含む多層記録膜を有し、情報記録の実行時に回転動作を伴う、磁気記録媒体と、
    前記多層記録膜を局所的に昇温するための昇温手段と、
    前記昇温手段による昇温を経た多層記録膜に磁界を印加するための、前記情報記録の実行時の前記回転動作の方向に一列に位置する、前記複数の記録磁性層と同数の磁界印加手段と、を備える磁気記録装置。
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