JP2006052991A - 蒸気濃度計測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料への蛍光剤の混合に要する手間を少なくし、又、燃料蒸気の計測精度を向上させる。
【解決手段】液体燃料にエキシマ蛍光剤としてのピレンを混合する(S1)。ピレン混合液体燃料の噴霧領域を形成する(S2)。燃料噴霧領域に、所要波長のレーザシートを照射し(S3)、このレーザシート照射領域の像を、ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光に個別に対応した2台のCCDカメラにより同時にそれぞれ撮影し(S4)、ピレンのエキシマ蛍光による画像を基に、燃料の液滴群の空間分布を計測すると共に、ピレンのモノマ蛍光による画像を基に、燃料蒸気の濃度分布を計測するようにする(S5)。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射装置等より噴霧される液体燃料の液滴群の空間分布と、燃料蒸気の濃度分布を同時計測するために用いる蒸気濃度計測方法に関するものである。
石油に代表される液体燃料は、一部の例外を除いて液相で反応することはなく、一旦蒸発して気相となった後に、燃料蒸気が酸素と反応して燃焼する。このため、液体燃料の燃焼過程と蒸発過程は密接に関係しており、燃料蒸気の挙動や周囲気体との混合による混合気の形成過程の究明が重要となる。将来的に、燃焼前の燃料蒸気と周囲気体との相互作用による混合気形成過程を明らかにすれば、燃焼現象の予測が可能となり、最終的には、上記液体燃料の保有するエネルギの高効率利用法や排ガス中の有害成分低減方法を見出し得ると考えられる。
内燃機関における燃焼室内の燃料蒸気濃度を計測するための手法の一つとしては、光学的なポイント計測を行う方法が提案されている。すなわち、燃料の蒸気によって吸収されて強度が減衰する所定波長の光を、燃焼室内の点火栓近傍位置に設定された燃料蒸気濃度計測部に対し出射して該計測部を透過させ、更に、上記計測部を透過した後の光を受光してその光の強度を検出し、この検出された光の強度の上記出射した光に対する減衰量から、上記燃料蒸気濃度計測部に存在している燃料蒸気の濃度を計測するようにすることや、点火栓の中心電極の内部に点火栓の中心軸に沿って光学素子を設けて、該光学素子を通して上記所定波長の光の出射と受光を共に行わせることにより、上記燃料蒸気濃度計測部を、内燃機関における一般的な点火栓の放電位置と同じ位置に設定できるようにすることも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
ところで、液体燃料の燃焼で工学的に最もよく用いられている噴霧燃焼を行う機器、たとえば、ディーゼルエンジン等のように液体燃料を噴射する機器では、その性能評価を行う場合には、燃料噴射装置より噴霧された液体燃料の液滴群の空間分布(数密度)や燃料蒸気の空間的な濃度分布を計測することが求められている。
しかし、前述の燃料蒸気濃度の光学的なポイント計測方法は、燃料蒸気濃度計測部を所定波長の光が透過する際の減衰量を基にして、該燃料蒸気濃度計測部に存在する燃料蒸気全体の濃度を計測するものであって、燃料噴射装置より噴霧される液体燃料の液滴と燃料蒸気とを分離して計測を行えるものではない。しかも、ある空間に噴霧された液体燃料の液滴群の空間分布や燃料蒸気の濃度分布に関する情報を得ることができるものではなく、このため、燃料噴射装置より液体燃料が噴射されるときの燃料蒸気の挙動や周囲気体との混合による混合気の形成過程を明らかにできるものとはなっていない。
そのため、噴霧された液体燃料の液滴群の空間分布と、燃料蒸気の濃度分布を同時計測できる手法として従来提案されているものに、エキサイプレックス(Exciplex)蛍光法がある。
かかるエキサイプレックス蛍光法は以下に示す原理に基づいている。すなわち、液体燃料、たとえば、トリデカンに、蛍光剤としてテトラメチルフェニレンジアミン(TMPD)とナフタレンを、該各蛍光剤同士の質量比が1対9となるように予め添加、混合しておき、この2種類の蛍光剤を混合した液体燃料に対して上記TMPDを励起し得る波長のレーザ光を照射すると、液体燃料中に混合されているTMPDの分子が励起光を吸収して励起状態とされる。この励起状態とされたTMPDの分子が、モノマの状態で失活して基底状態となるときには、図12に線Xで示す如く、約390nmにピーク波長を有する蛍光(以下、モノマ蛍光と云う)としてエネルギを放射する。一方、上記励起状態とされたTMPDの分子が、ナフタレンの分子と衝突すると、極めて速やかにTMPDとナフタレンの励起錯体(エキサイプレックス)が形成され、このエキサイプレックスが失活して基底状態のTMPD及びナフタレンへ戻る際には、上記エキサイプレックスの形成時にエネルギの一部が既に奪われているため、図12に線Yで示す如く、上記TMPDのモノマ蛍光に比して長波長側にシフトした約480nmにピーク波長を有する蛍光(以下、エキサイプレックス蛍光と云う)としてエネルギが放射される。
上記モノマ蛍光とエキサイプレックス蛍光のいずれが放射されるかは、上記液体燃料が燃料蒸気となって気相の状態にあるか、あるいは、液相の状態にあるかに依存する。すなわち、上記液体燃料が液相の状態の場合には、分子同士の衝突確率が極めて高いことから、上記励起状態とされたTMPDとナフタレンによるエキサイプレックスが形成され易く、このため、上記液体燃料の液相からは、エキサイプレックス蛍光が支配的に放射されることになる。一方、上記液体燃料が燃料蒸気となって、分子が比較的離散的に存在する気相となっている場合には、分子同士の衝突確率が低いため、上記励起状態のTMPDとナフタレンによるエキサイプレックスの形成は進行せず、よって、燃料蒸気から放射される蛍光は、モノマ蛍光が支配的となる。このことから、上記TMPDとナフタレンを混合した液体燃料にTMPDの励起光を照射したときに発せられる蛍光の波長の違いを基に、燃料が液相であるか気相となっているかを識別できることになる。
したがって、上記液体燃料を噴霧する噴霧領域に、上記TMPDの励起光として、たとえば、シート状のレーザ光(レーザシート)を照射し、かかるレーザシートの照射領域の像を、ダイクロイックミラーにてモノマ蛍光とエキサイプレックス蛍光に分光させた後、エキサイプレックス蛍光に対応するバンドパスフィルタを備えた高速度CCDカメラと、モノマ蛍光に対応するバンドパスフィルタを備えた高速度CCDカメラにて同時撮影することにより、上記レーザシート照射領域より放出されるエキサイプレックス蛍光とモノマ蛍光の強度をそれぞれ個別に計測して、液相と気相の分離を行うと共に、上記エキサイプレックス蛍光の画像により上記噴霧領域における液体燃料の液滴群の空間分布を、又、上記モノマ蛍光の画像により燃料蒸気の濃度分布をそれぞれ個別に計測できるようにしてある(たとえば、非特許文献1参照)。
なお、上記気相より発せられるモノマ蛍光は微弱であり且つ波長が紫外領域にあるため、モノマ蛍光を撮影するための高速度CCDカメラでは、バンドパスフィルタを通過した画像は、イメージインテンシファイアにより輝度増強並びに波長変換が行なわれた後、リレーレンズを介して結像されるようにしてある。図12では、エキサイプレックス蛍光(線X)及びモノマ蛍光(線Y)は、いずれも最高強度を基準として各波長における強度分布を示すようにしてある。
特開2004−93282号公報 メルトン(Melton, L. A.),「スペクトル分光によるディーゼル燃料液滴および蒸気の蛍光特性(Spectrally Separated Fluoresence Emissions for Diesel Fuel Droplets and Vapor)」,アプライド オプティクス(Applied Optics),(米国),1983年,22−14,p.2224−2226
ところが、上述したTMPDとナフタレンを蛍光剤とするエキサイプレックス蛍光法による蒸気濃度計測手法では、TMPDとナフタレンという2種類の蛍光剤を燃料に混合しなければならず、しかも、燃料に混合する上記TMPDとナフタレンの量は、1対9の割合で厳密に設定しなければならないことから、液体燃料への蛍光剤の混合作業に手間を要するという問題がある。更に、燃料に対してTMPDとナフタレンを上記所定の比率で共に混合する必要があることから、適用できる燃料の種類に制約を受ける虞も懸念される。
又、図12から明らかなように、気相より発せられるTMPDのモノマ蛍光(線X)と、液相より発せられるエキサイプレックス蛍光(線Y)に、波長の重なりがあることから、精度を確保することが難しいという問題もある。
更に、上記エキサイプレックス蛍光法で用いるTMPDは、蛍光量子収率が小さい。このため、励起されたTMPDより発せられるモノマ蛍光は非常に弱いことから、該TMPDのモノマ蛍光に基づいて燃料蒸気の撮影を行うカメラでは、イメージインテンシファイアのゲインを大きく設定しなければならない。すなわち、モノマ蛍光に基づいて燃料蒸気の撮影を行う際には、全体的に蛍光の強度が弱いために、輝度の強い部分と弱い部分との差が少なく、このため、上記のようにイメージインテンシファイアのゲインを上げることで、全体的に輝度を増強させるようにしているのであるが、元々の輝度差が少ないために、燃料蒸気領域が大きな固まりとして観測されてしまう。又、イメージインテンシファイアのゲインを上げることに伴い、撮影時に生じるノイズの影響を受け易くなってしまうことから、正確な画像は得にくいという問題もある。
しかも、後述する実施例との比較例の図10(ロ)に示す結果から明らかなように、超音波浮揚装置を用いて燃料の単一の液滴(単滴)を浮揚させた場合には、該単滴の周りから蒸発しているはずの燃料蒸気を観察することができないという問題もある。この原因の1つとしては、使用したイメージインテンシファイアのゲインが不十分であるということが考えられる。すなわち、単滴の周りから蒸発している燃料蒸気量が少ないために、用いたイメージインテンシファイアのゲインを最大値に設定しても、蛍光強度が低くてCCDカメラで検知できていない虞がある。この場合は、ゲインをより大きく設定することが可能なイメージインテンシファイアが必要になると共に、ゲインの更なる増加に伴い、撮影時に生じるノイズの影響を更に受け易くなる虞も懸念される。
又、浮揚させた単滴の周り燃料蒸気の相の観察を行なうことができない別の原因としては、エキサイプレックス蛍光法では上記単滴の周りの燃料蒸気は計測できないという可能性もある。すなわち、蛍光強度は蛍光分子の蛍光量子収率Φの大小により左右される。
つまり、光吸収により生じた励起一重項は、周囲の媒体に熱エネルギと緩和する無放射過程、蛍光放射過程、三重項状態への項間交差過程が存在する。このときの各過程の反応速度定数をkIC、k、kISCとすると、蛍光量子収率Φは、
Φ = k/(kIC+k+kISC) = 蛍光分子数/吸収された光子数
で求めることができる。
ここで、アインシュタインの光等量則により、1つの分子は通常1つの光子を吸収して反応するので、この値が大きければ大きいほど、より蛍光を放射する分子が多い、すなわち、より強い蛍光強度を得やすいこととなる。しかし、上記TMPDは、モノマ蛍光の蛍光量子収率が低いために、分子の密集度の低い燃料蒸気濃度が低い場合の気相領域は、エキサイプレックス蛍光法では観察できないということが考えられる。
しかも、上記TMPDを励起させるための励起光として用いるレーザシートは、Nd・YAGレーザの各高調波のうち、波長355nmである第3高調波しか用いることができない。これは、励起波長としてNd・YAGレーザの第4高調波である266nmの励起光を用いると、TMPDだけではなくナフタレンまでもが励起されるため、様々な波長の蛍光が放射されてしまい、TMPDのモノマ蛍光と、TMPDとナフタレンのエキサイプレックス蛍光との分離が困難になってしまうためである。
そこで、本発明者は、噴霧された燃料の液滴と燃料蒸気の濃度分布の同時計測を行うために燃料へ混合する蛍光剤の混合作業に要する手間を削減できるようにし、しかも、気相である燃料蒸気の計測精度を向上させることができるようにするための工夫、研究を重ねた結果、本発明をなした。
したがって、本発明の目的とするところは、蛍光剤により燃料噴霧領域における燃料の液滴群の空間分布と燃料蒸気の濃度分布を同時計測する際、燃料への蛍光剤の混合作業に要する手間を削減できるようにし、更に、気相である燃料蒸気から発せられる蛍光の強度を高めることができて、燃料蒸気の濃度分布をより精度よく計測できる蒸気濃度計測方法を提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、エキシマ蛍光剤を所要濃度で混合してなる燃料の噴霧領域に、上記エキシマ蛍光剤の励起波長のレーザシートを照射し、該レーザシートの照射された燃料噴霧領域より放射されるエキシマ蛍光剤のモノマ蛍光とエキシマ蛍光を、それぞれの蛍光波長に対応した別々のカメラで撮影し、得られるエキシマ蛍光の像より上記燃料の液滴群の空間分布を計測すると共に、モノマ蛍光の像より燃料の蒸気濃度分布を計測する方法とする。
又、上記請求項1に係る発明におけるエキシマ蛍光剤としてピレンを用いるようにする。
更に、上記におけるレーザシートとして、Nd・YAGレーザの第4高調波を用いるようにする。
本発明の蒸気濃度計測方法によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)エキシマ蛍光剤混合燃料の噴霧領域に、エキシマ蛍光剤を励起させるレーザシートを照射し、この際放射されるエキシマ蛍光剤のエキシマ蛍光の像より上記燃料の液滴群の空間分布を計測すると共に、上記エキシマ蛍光剤のモノマ蛍光の像より燃料の蒸気濃度分布を計測する方法としてあるので、燃料噴霧領域における燃料の液滴群の空間分布と燃料蒸気の濃度分布を個別に且つ同時に計測することができる。
(2)燃料へ混合するエキシマ蛍光剤は1種でよいため、エキサイプレックス蛍光法の場合のように2種の蛍光剤を燃料に混合する必要がない。しかも、燃料にエキシマ蛍光剤を混合する割合は、厳密に決定する必要がなく、燃料の特性を変化させない範囲内で、且つ液相内でエキシマを形成することが可能な濃度範囲で混合量を自在に設定できることから、燃料への蛍光剤の混合作業を容易なものとすることができる。
(3)エキシマ蛍光剤としてピレンを用いるようにすることにより、ピレンは、モノマ蛍光の中心波長が390nm、エキシマ蛍光の中心波長が480nmであるため、エキサイプレックス蛍光法で用いられている画像撮影用機器を流用することが可能であり、計測装置を容易に用意することができる。
(4)又、ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光は、蛍光スペクトルの重なりが小さいため、ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光における波長の分離性に基づいて、燃料の気相部と液相部とをより正確に分離できる。更に、ピレンのモノマ蛍光は、エキサイプレックス蛍光法で用いるTMPDのモノマ蛍光よりも蛍光強度が強いことから、ピレンのモノマ蛍光による像を撮影する際、カメラに装着するイメージインテンシファイアのゲインを大きく上げる必要をなくすことができ、このため、撮影時に生じるノイズの影響を受け難くすることができて、より正確な画像を得ることができる。したがって、燃料噴霧領域における燃料蒸気の濃度分布に関する計測精度を、従来のエキサイプレックス蛍光法に比して高めることができる。
(5)更には、ピレンの蛍光量子収率がTMPDに比して大きいことから、従来のエキサイプレックス蛍光法では観測できないような燃料蒸気濃度が低い場合であっても燃料蒸気濃度分布を計測することができる。
(6)レーザ光として、Nd・YAGレーザの第4高調波を用いるようにすることにより、ピレンのモノマ蛍光による燃料蒸気濃度分布の観測に有利なものとすることが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の蒸気濃度計測方法の実施の一形態を示すものである。
図1は、本発明の蒸気濃度計測方法の実施手順のフローを示すもので、先ず、液体燃料にエキシマ蛍光剤としてのピレンを所要濃度で混合する(ステップ1:S1)。次に、該ピレンを混合してなる液体燃料の噴霧領域を形成する(ステップ2:S2)。次いで、該噴霧領域に、ピレンの励起光としての所要波長のレーザシートを照射する(ステップ3:S3)。しかる後、該レーザシート照射領域の像を、上記ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光に個別に対応した2台の高速度CCDカメラにより同時にそれぞれ撮影(ステップ4:S4)する。上記ピレンのエキシマ蛍光による画像を基に、燃料の液滴群の空間分布を計測すると共に、上記ピレンのモノマ蛍光による画像を基に、燃料蒸気の濃度分布を計測するようにする(ステップ5:S5)。
以下、詳述するに、先ず、本発明の蒸気濃度計測方法の原理を説明する。
多環芳香族等のある種の蛍光剤には、励起されると基底状態にある同じ蛍光剤と会合して励起二量体(エキシマ)を形成する性質を有するものがあり、このエキシマが失活するときに放射される蛍光(エキシマ蛍光)は、エキシマを形成することでエネルギの一部が既に奪われているため、上記蛍光剤が励起後に単独で失活されるときのモノマ蛍光に比して長波長側にシフトした別のピーク波長を有する蛍光となる。
そこで、本発明者等は、上記のようなエキシマ形成能を有する蛍光剤(エキシマ蛍光剤)に着目して、かかるエキシマ蛍光剤を液体燃料に混合すれば、液体燃料が液相の状態の場合には、分子同士の衝突確率が極めて高いことから、上記励起状態とされたエキシマ蛍光剤の分子が別のエキシマ蛍光剤の分子と衝突してエキシマが形成され易く、このため、上記液体燃料の液相からは、エキシマ蛍光が支配的に放射されること、一方、上記液体燃料が燃料蒸気となって、分子が比較的離散的に存在する気相となっている場合には、分子同士の衝突確率が低いため、上記励起状態とされたエキシマ蛍光剤はエキシマを形成することなくモノマのまま失活されること、よって、上記液体燃料の燃料蒸気から放射される蛍光は、モノマ蛍光が支配的となると考え、したがって、液体燃料に混合したエキシマ蛍光剤のエキシマ蛍光とモノマ蛍光をそれぞれ指標とすることにより、従来のエキサイプレックス蛍光法と同様に、液体燃料が液相又は気相のいずれの状態であるかを識別して、液体燃料の噴霧領域における燃料の液滴群の空間分布と燃料蒸気の濃度分布を同時撮影計測することを考えた。
かかる考えに基いて、従来のエキサイプレックス蛍光法と同様の気相液相同時分離計測を行う場合において、エキシマ蛍光剤に求められる条件としては、以下のことがある。すなわち、
(i)気相と液相から得られる各蛍光の波長が近いと、気相を撮影する際に液相からの蛍光
が混入する可能性があって、不都合であることから、気相から得られるモノマ蛍光の蛍光波長スペクトルと、液相から得られるエキシマ蛍光の蛍光波長スペクトルができるだけ離れているものである必要があること。
(ii)エキシマ蛍光剤のモノマ蛍光とエキシマ蛍光の波長ができるだけ重なっていないことが要求されること。すなわち、エキサイプレックス蛍光法では、TMPDのモノマ蛍光の中心波長付近でTMPDとナフタレンのエキサイプレックス蛍光がかなり重なり合っていたため、上記TMPDのモノマ蛍光のみをとり出すことがかなり困難で、精度の確保が困難であると云う問題が生じていたため、本発明で用いるエキシマ蛍光剤のモノマ蛍光とエキシマ蛍光では、波長をより精度よく分離できるように、上記各蛍光の波長の重なりが、従来用いられていたエキサイプレックス蛍光法におけるエキサイプレックス蛍光とTMPDのモノマ蛍光との波長の重なりよりも小さいことが望まれる。
(iii)エキシマ蛍光剤分子の基底状態における光の吸収性があり、具体的には、エキシマ
蛍光剤の励起波長が、既存のレーザ光源より出射可能な波長であることが望まれること。
すなわち、蛍光剤分子が励起されて蛍光を発するためには、光を吸収することが必要である。しかも、蛍光剤分子が励起される波長は、ある特定の波長領域の光だけであることから、励起光としてレーザシートを照射するようにするためには、既存のレーザ光源より得られる波長の励起光によって励起されるエキシマ蛍光剤であることが好ましい。
(iv)エキサイプレックス蛍光法では濃度計測できないような燃料蒸気濃度が低い場合の気相領域であっても検出が可能となるようにするために、蛍光量子収率が、エキサイプレックス蛍光法で用いるTMPDの蛍光量子収率よりも大となることが望まれること。
(v)上記エキシマ蛍光剤は、液体燃料に混ぜて噴霧することから、著しく人体に悪影響を
与えるものではないこと。
本発明者等は、以上のような選定条件に基づき、本発明の蒸気濃度計測方法に用いるエキシマ蛍光剤としてピレンを選定した。
図2はピレンの吸収スペクトルを示すもので、この吸収スペクトルから明らかなように、ピレンは、Nd・YAGレーザの第3高調波である波長355nmの励起波長、及び、第4高調波である波長266nmの励起波長のいずれでも励起することができることが明らかである。しかも、図3(イ)に示す如く、励起波長355nmの励起光により励起させた場合と、図3(ロ)に示す如く、励起波長266nmの励起光により励起させた場合のいずれであっても、放射されるピレンのモノマ蛍光(線A)の中心波長は390nmであり、エキシマ蛍光(線B)の中心波長は480nmとなっている。これにより、従来のエキサイプレックス蛍光法におけるTMPDのモノマ蛍光(中心波長、約390nm)とエキサイプレックス蛍光(中心波長、約480nm)の場合と同様に、上記ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光を、光学的に分離することが可能である。
更に、図3(イ)(ロ)から明らかなように、励起波長を355nmとした場合、及び、266nmとした場合のいずれでも、上記ピレンのモノマ蛍光(線A)とエキシマ蛍光(線B)のスペクトルはほとんど重なっていない。このことから、ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光における波長の分離性に基づいて、液体燃料の気相部と液相部とをより正確に分離できることとなる。
次に、図4にピレンのモノマ蛍光強度及びエキシマ蛍光強度の励起波長に対する相関を示す。図中の線Cはモノマ蛍光について、又、線Dはエキシマ蛍光についてそれぞれ示している。これにより、より強いモノマ蛍光を得たい場合には、励起波長を266nmとする方がよく、一方、より強いエキシマ蛍光を得たい場合には、励起波長を355nmとする方が適していることになる。本発明は、燃料蒸気の濃度分布をより正確に計測できるようにすることを目的としているため、ピレンの励起光としては、より強いモノマ蛍光を発生させることができるようにするために、波長266nmのNd・YAGレーザの第4高調波を用いるようにすることが、より好ましい。
本発明の蒸気濃度計測方法は、上述したような特性を有するエキシマ蛍光剤としてのピレンを、液体燃料に所要濃度で混合し、このピレン混合液体燃料の噴霧領域を形成し、該燃料噴霧領域に、波長266nmのNd・YAGレーザの第4高調波をレーザシートとして照射させるようにする。これにより、上記液体燃料に混合されているピレンが励起される。この状態にて、上記波長266nmのレーザシートが照射されている上記燃料噴霧領域の像を、上記ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光に個別に対応した2台のCCDカメラにより同時にそれぞれ撮影すると、上記ピレンのエキシマ蛍光により上記燃料噴霧領域にて液相となって存在する液体燃料、すなわち、液滴が撮影され、又、上記ピレンのモノマ蛍光による画像を基に燃料蒸気が撮影されるようになる。
このように、本発明の蒸気濃度計測方法によれば、後述する実施例の図7(イ)(ロ)の結果より明らかなように、エキシマ蛍光剤であるピレンのエキシマ蛍光の像により、上記燃料噴霧領域における上記液体燃料の液滴群の空間分布の計測を、又、後述する実施例の図8(イ)(ロ)に示す結果より明らかなように、ピレンのモノマ蛍光の像により、上記燃料噴霧領域における上記液体燃料の燃料蒸気の濃度分布の計測を、それぞれ行なうことができる。よって、従来のエキサイプレックス蛍光法と同様に、燃料の液滴群の空間分布と燃料蒸気の濃度分布を個別に同時計測することができる。
更に、計測対象となる液体燃料に対しては、エキシマ蛍光剤であるピレンを1種のみ混合すればよいことから、エキサイプレックス蛍光法の場合のように2種の蛍光剤を燃料に混合する必要はなく、しかも、燃料にエキシマ蛍光剤を混合する割合は、厳密に決定する必要はなく、液体燃料の特性を変化させない範囲内で、且つ液体燃料の液相内でエキシマを形成させることが可能な濃度範囲で混合量を自在に設定できる。このことから、燃料への蛍光剤の混合作業を容易なものとすることができる。
上記エキシマ蛍光剤としてのピレンは、モノマ蛍光の中心波長が390nmであり、且つエキシマ蛍光の中心波長が480nmであるため、エキサイプレックス蛍光法で用いられているTMPDのモノマ蛍光撮影用のカメラ、及び、エキサイプレックス蛍光撮影用のカメラをそれぞれ流用してピレンのモノマ蛍光及びエキシマ蛍光の撮影を行なうことが可能であるため、計測用の装置を容易に入手することが可能になる。
又、ピレンは、モノマ蛍光とエキシマ蛍光の蛍光スペクトルの重なりが小さいため、ピレンのモノマ蛍光とエキシマ蛍光における波長の分離性に基づいて、液体燃料の気相部と液相部とをより正確に分離できることとなる。更に又、ピレンのモノマ蛍光は、エキサイプレックス蛍光法で用いるTMPDのモノマ蛍光よりも蛍光強度が強いことから、ピレンのモノマ蛍光による像を撮影する際、カメラに装着するイメージインテンシファイアのゲインを大きく上げる必要をなくすことができる。このため、撮影時に生じるノイズの影響を受け難くすることができて、より正確な画像を得ることができる。したがって、燃料噴霧領域における燃料蒸気の濃度分布に関する計測精度を、従来のエキサイプレックス蛍光法に比して高めることが可能となり、蒸気濃度分布をより正確に計測することができる。
更には、後述する実施例の結果より明らかなように、従来のエキサイプレックス蛍光法では観測できないような燃料蒸気濃度が低い場合であっても燃料蒸気濃度分布を計測することができる。
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、ピレン混合液体燃料の燃料噴霧領域へ照射するレーザシートとしては、ピレンより発せられるモノマ蛍光とエキシマ蛍光の強度を考慮すると、Nd・YAGレーザの第4高調波である266nmの光を用いることが望ましいが、Nd・YAGレーザの第3高調波である355nmの光を用いるようにしてもよい。更には、ピレンよりモノマ蛍光とエキシマ蛍光をそれぞれ所要の強度で発生させることができるような励起波長であれば、Nd・YAGレーザ光源以外のレーザ光源より発生させたレーザ光によるレーザシートを用いるようにしてもよい。
又、エキシマ蛍光剤は、前述したような気相液相同時分離計測を行うためのエキシマ蛍光剤に要求される各選定条件に適合するもの、あるいは、少なくとも、所要波長の励起光により励起されると、気相となる燃料蒸気中では所要波長のモノマ蛍光を、エキサイプレックス蛍光法で用いるTMPDのモノマ蛍光よりも強い蛍光強度で発生し、且つ液相となる液体燃料の液滴中ではエキシマを形成して上記モノマ蛍光とは光学的に分離可能なエキシマ蛍光を発生するものであれば、ピレン以外のエキシマ蛍光剤を用いるようにしてもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
以下、本発明者等の行った実験結果について説明する。
図5は本発明の蒸気濃度計測方法の実験に用いた装置を示すものである。図中1は超音波浮揚装置であり、該超音波浮揚装置1は、振動子2の表面の中央に設けてある窪みに注入された液体燃料(図示せず)を、超音波振動子により微粒化させて浮揚させて上記液体燃料の噴霧領域3を形成させることができるようにしてあると共に、該燃料噴霧領域3にて、時間の経過に伴い、液滴が定在音波の節付近に集まるようにして油滴群(単滴)を形成させることができるようにしてある。
又、Nd・YAGレーザ光源4を設けると共に、プリズム5と、シリンドリカルレンズ群6とからなる光学系を設けて、上記レーザ光源より出射されるレーザ光7を、高さ約30mm、厚さ約0.2mmのレーザシート7aとして上記超音波浮揚装置1による燃料噴霧領域3に対して照射できるようにしてある。
更に、上記燃料噴霧領域3における上記レーザシート7aとは垂直方向の位置に、図6に線Eで示す如き透過特性を備えて上記燃料噴霧領域3における気相と液相から発せられる蛍光の分光を行うためのダイクロイックミラー8と、該ダイクロイックミラー8にて分光された液相からの蛍光を撮影するための図6に線Fで示す如き透過特性を有するバンドパスフィルタ10を備えた高速度CCDカメラ(以下、液相撮影用カメラという)9、及び、上記ダイクロイックミラー8にて分光された気相からの蛍光を撮影するための図6に線Gで示す如き透過特性を有するバンドパスフィルタ12と、イメージインテンシファイア13と、リレーレンズ14を備えた高速度CCDカメラ(以下、気相撮影用カメラという)11からなる蛍光画像撮影系を設けた構成としてある。15は各カメラ9,11の画像処理用のコンピュータである。
本発明の蒸気濃度計測方法に従い、液体燃料としてのトリデカンに所要濃度のピレンを混合し、該ピレン混合トリデカンを、上記超音波浮揚装置1の振動子2の窪みに、マイクロシリンジにて注入した後、該超音波浮揚装置1を運転して、ピレン混合トリデカンの噴霧領域3を形成させ、この状態にて、上記Nd・YAGレーザ光源4より出射させた波長266nmの第4高調波を、レーザシート7aとして上記超音波浮揚装置1における燃料噴霧領域3へ照射し、該レーザシート3の照射された燃料噴霧領域3より発せられるピレンのエキシマ蛍光の像と、モノマ蛍光の像を、上記液相撮影用カメラ9及び気相撮影用カメラ11にてそれぞれ同時撮影した。なお、この際、上記気相撮影用カメラ11のイメージインテンシファイア13のゲインのアジャスト目盛りは1として撮影を行った。
その結果、上記液相撮影用カメラ9より図7(イ)(ロ)に示す如きエキシマ蛍光による液相の画像が、又、上記気相撮影用カメラ11より図8(イ)(ロ)に示す如きモノマ蛍光による気相の画像が得られた。ここで、図7(イ)及び図8(イ)は、いずれも上記超音波浮揚装置1にてピレン混合トリデカンが多数の微細液滴に微粒化された状態のときの観測画像であり、又、図7(ロ)及び図8(ロ)は、いずれも上記超音波装置1にてピレン混合トリデカンが多数の微細液体に微粒化された後、時間の経過と共に合体して、一つの大きな液滴(単滴)として浮揚している状態のときの観測画像である。
比較例として、図5に示したと同様の構成としてある実験装置にて、エキサイプレックス蛍光法による燃料蒸気の濃度計測を行った。
すなわち、図5に示した実験装置における超音波浮揚装置1にて、ピレン混合トリデカンに代えて、TMPD及びナフタレンを1対9の比となるようにそれぞれ所要濃度で混合してなるトリデカンを浮揚(噴霧)させ、その燃料噴霧領域3に、Nd・YAGレーザ光源より出射させた波長355nmの第3高調波を、レーザシート7aとして照射し、該レーザシート7aの照射された燃料噴霧領域3より発せられるTMPD及びナフタレンによるエキサイプレックス蛍光の像と、TMPDのモノマ蛍光の像を、上記液相撮影用カメラ9と気相撮影用カメラ11にてそれぞれ同時撮影した。なお、この際、上記気相撮影用カメラ11においては、上記イメージインテンシファイアのゲインのアジャスト目盛りを10とすると共に、ピレン混合トリデカンの気相を撮影する場合に比して、露光時間を約1.5倍に設定した。
その結果、上記液相撮影用カメラ9より図9(イ)(ロ)に示す如きエキサイプレックス蛍光による液相の画像が、又、上記気相撮影用カメラ11より図10(イ)(ロ)に示す如きTMPDのモノマ蛍光による気相の画像が得られた。ここで、図9(イ)及び図10(イ)は、上記ピレン混合トリデカンの場合と同様に、いずれも上記超音波浮揚装置1にてTMPD・ナフタレン混合トリデカンが多数の微細液滴に微粒化された状態のときの観測画像である。又、図9(ロ)及び図10(ロ)は、上記超音波浮揚装置1にてTMPD・ナフタレン混合トリデカンが多数の微細液体に微粒化された後、時間の経過と共に合体して、一つの大きな液滴(単滴)として浮揚している状態のときの観測画像である。
図7(イ)(ロ)より明らかなように、エキシマ蛍光剤としてのピレンを用いることにより、該ピレンのエキシマ蛍光の画像により、図9(イ)(ロ)に示す如きエキサイプレックス蛍光法におけるTMPD及びナフタレンのエキサイプレックス蛍光の画像と同様に、上記超音波浮揚装置1にて形成した燃料噴霧領域3にて液相として存在するトリデカン、すなわち、トリデカンの液滴群の空間分布を計測することができることが判明した。
又、図8(イ)(ロ)より明らかなように、エキシマ蛍光剤としてのピレンを用いることにより、該ピレンのモノマ蛍光の画像により、図10(イ)(ロ)に示す如きエキサイプレックス蛍光法におけるTMPDのモノマ蛍光の画像と同様に、上記超音波浮揚装置1にて形成した燃料噴霧領域3にて気相として存在するトリデカン、すなわち、トリデカンの燃料蒸気の濃度分布を計測することができることが判明した。
図7(イ)(ロ)及び図8(イ)(ロ)の結果から、全体的な傾向として、上記燃料噴霧領域3では気相が液相のまわりに覆うように存在し、その存在領域が液相よりも広いことが判る。これは、液相の方が気相に比べて分子が密集しているため、微粒化した際に遠くに分散し難いためと考えられる。又、液相の表面から蒸発が進んでいるため、液体燃料の液滴のまわりを気相である燃料蒸気が取り巻いていると考えられる。すなわち、ピレンも液相表面から蒸発してモノマ蛍光を発していると考えられる。このことから、エキシマ蛍光剤として用いる物質の飽和温度等の蒸発特性が異なっていたとしても、つまり、エキシマ蛍光剤の飽和温度がかなり高かったとしても、エキシマ蛍光剤が全く蒸発しないわけではないので、蛍光剤の飽和温度が計測対象となる液体燃料の飽和温度とほぼ一致するとの条件は無視してエキシマ蛍光剤を選定することができることが示唆される。
更に、図8(イ)(ロ)と図10(イ)(ロ)の比較から明らかなように、図8(イ)(ロ)に示した本発明の蒸気濃度計測方法におけるピレンのモノマ蛍光による気相の像は、図10(イ)(ロ)に示したエキサイプレックス蛍光法によるTMPDのモノマ蛍光による気相の像に比して、離散的に観察されている。すなわち、上記TMPDのモノマ蛍光の像では燃料蒸気が全体的に固まりとなって観察されているが、ピレンのモノマ蛍光の像では、液滴のまわりに輝度の強いモノマ蛍光があり、その強いモノマ蛍光の間に輝度の弱いモノマ蛍光が観測できる。この原因としては、気相撮影用カメラ11に装着して用いたイメージインテンシファイア13のゲインが大きく影響していると考えられる。
すなわち、上記イメージインテンシファイア13のゲインのアジャスト目盛りとルミナンスゲインは、図11に示す如き関係にあり、したがって、上記ゲインの目盛りを1とした場合と10とした場合には、ルミナンスゲインが100倍も大きいということが判る。
つまり、本発明の蒸気濃度計測方法におけるピレンのモノマ蛍光と、エキサイプレックス蛍光法によるTMPDのモノマ蛍光が画像上で同じ輝度値を示したとしても、実際には、TMPDのモノマ蛍光の像の方が100分の1程度の輝度しか発していない。これは、TMPDの蛍光量子収率が小さく、したがって、気相からの蛍光が非常に弱いために生じており、全体的に蛍光が弱いことから、輝度の強い部分と弱い部分との差が少ないため、イメージインテンシファイアのゲインを上げるようにするが、全体的に輝度が上昇してしまい、更に、輝度差が少ないために燃料蒸気領域が大きな固まりとして観測されたと考えられる。この場合、イメージインテンシファイアのゲインを上げていることに伴い、ノイズも同時に大きくなってしまうため、正確な画像は得難いものとなっている。
これに対し、本発明の蒸気濃度計測方法で用いるエキシマ蛍光剤としてのピレンは、蛍光量子収率が大きいため、液滴付近の輝度が強い部分と液滴から離れた輝度の弱い部分との差が大きくなり、このため、イメージインテンシファイアのゲインを下げることができ、蒸気濃度の低い領域からの蛍光画像の輝度が小さくなり、これにより、蒸気領域が離散的に観測されたと考えられる。したがって、上記イメージインテンシファイアのゲインが小さい分、より正確に燃料蒸気濃度分布が得られるものと考えられる。
更に、エキサイプレックス蛍光法では、図9(ロ)に示されるように、燃料噴霧領域3にてトリデカンの単滴が浮揚されている状態のときには、この状態に対応するTMPDのモノマ蛍光の像である図10(ロ)から明らかなように、気相である燃料蒸気の観測を行なうことができていない。これに対し、本発明の蒸気濃度計測方法によれば、図8(ロ)から明らかなように、図7(ロ)に示される如く燃料噴霧領域3にてトリデカンの単滴が形成されている場合には、そのまわりに形成されている気相である燃料蒸気の観測を行なうことができる。
この原因としても、本発明の蒸気濃度計測方法で用いるエキシマ蛍光剤としてのピレンの蛍光量子収率が大きいため、該ピレンより発生されるモノマ蛍光強度が強く、したがって、蛍光量子収率の小さいTMPDのモノマ蛍光では可視化できないような蒸気濃度の非常に低い蒸気領域であっても、燃料蒸気の可視化が行えたものと考えられる。
本発明の蒸気濃度計測方法の手順のフローを示す図である。 図1の方法で用いるエキシマ蛍光剤の一例としてのピレンの吸収スペクトルを示す図である。 ピレンのモノマ蛍光及びエキシマ蛍光の波長スペクトルを、(イ)は波長355nmの励起光で励起させた場合、(ロ)は波長266nmの励起光で励起させた場合についてそれぞれ示す図である。 ピレンのモノマ蛍光強度及びエキシマ蛍光強度の励起波長に対する相関性を示す図である。 本発明の蒸気濃度計測方法の有効性の検証に用いた実験装置を示す概要図である。 図5の実験装置で用いるダイクロイックミラーとバンドパスフィルタの透過特性を示す図である。 本発明の蒸気濃度計測方法に従い、エキシマ蛍光剤としてのピレンのエキシマ蛍光を基に液体燃料としてのトリデカンの液滴群の空間分布を観測した結果を示すもので、(イ)は燃料噴霧領域にてトリデカンが多数の微細液滴に微粒化された状態、(ロ)はトリデカンが単滴として浮揚している状態をそれぞれ示す観測画像である。 本発明の蒸気濃度計測方法に従い、エキシマ蛍光剤としてのピレンのモノマ蛍光を基に液体燃料としてのトリデカンの蒸気濃度分布を観測した結果を示すもので、(イ)は燃料噴霧領域にてトリデカンが多数の微細液滴に微粒化された状態、(ロ)はトリデカンが単滴として浮揚している状態をそれぞれ示す観測画像である。 エキサイプレックス蛍光法により、TMPDとナフタレンのエキサイプレックス蛍光を基に液体燃料としてのトリデカンの液滴群の空間分布を観測した結果を示すもので、(イ)は燃料噴霧領域にてトリデカンが多数の微細液滴に微粒化された状態、(ロ)はトリデカンが単滴として浮揚している状態をそれぞれ示す観測画像である。 エキサイプレックス蛍光法により、TMPDのモノマ蛍光を基に液体燃料としてのトリデカンの蒸気濃度分布を観測した結果を示すもので、(イ)は燃料噴霧領域にてトリデカンが多数の微細液滴に微粒化された状態、(ロ)はトリデカンが単滴として浮揚している状態をそれぞれ示す観測画像である。 図5の実験装置で用いる気相撮影用カメラに装着したイメージインテンシファイアのゲインのアジャスト目盛りとルミナンスゲインとの相関を示す図である。 エキサイプレックス蛍光法で用いられるTMPDのモノマ蛍光及びTMPDとナフタレンのエキサイプレックス蛍光の蛍光スペクトルを示す図である。
符号の説明
3 燃料噴霧領域
7a レーザシート
9 液相撮影用カメラ(カメラ)
11 気相撮影用カメラ(カメラ)

Claims (3)

  1. エキシマ蛍光剤を所要濃度で混合してなる燃料の噴霧領域に、上記エキシマ蛍光剤の励起波長のレーザシートを照射し、該レーザシートの照射された燃料噴霧領域より放射されるエキシマ蛍光剤のモノマ蛍光とエキシマ蛍光を、それぞれの蛍光波長に対応した別々のカメラで撮影し、得られるエキシマ蛍光の像より上記燃料の液滴群の空間分布を計測すると共に、モノマ蛍光の像より燃料の蒸気濃度分布を計測することを特徴とする蒸気濃度計測方法。
  2. エキシマ蛍光剤としてピレンを用いるようにする請求項1記載の蒸気濃度計測方法。
  3. レーザシートとして、Nd・YAGレーザの第4高調波を用いるようにする請求項2記載の蒸気濃度計測方法。
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