JP2006049145A - カラー受像管 - Google Patents
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Abstract
【課題】 視認性が良好で、成形性及び強度に優れたシャドウマスクを備えながら、ドーミングによる色純度の劣化が生じにくいカラー受像管を提供する。
【解決手段】 パネル有効部の外面の曲率半径は10,000mm以上である。シャドウマスクの有孔部のX軸(長軸)方向長さを2L、sを0<s<1を満たす変数とし、X軸上のX=0からX=sLまで、X=sLからX=Lまでの有孔部の各落込み量差をΔZ01(s),ΔZ02、有孔部の長辺上のX=0からX=sLまで、X=sLからX=Lまでの有孔部の各落込み量差をΔZ11(s),ΔZ12(s)とし、α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))なるα(s)を定義したとき、0.2≦s≦0.8の範囲内の少なくとも一部において、dα(s)/ds≧0.4を満たす。
【選択図】 図2
【解決手段】 パネル有効部の外面の曲率半径は10,000mm以上である。シャドウマスクの有孔部のX軸(長軸)方向長さを2L、sを0<s<1を満たす変数とし、X軸上のX=0からX=sLまで、X=sLからX=Lまでの有孔部の各落込み量差をΔZ01(s),ΔZ02、有孔部の長辺上のX=0からX=sLまで、X=sLからX=Lまでの有孔部の各落込み量差をΔZ11(s),ΔZ12(s)とし、α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))なるα(s)を定義したとき、0.2≦s≦0.8の範囲内の少なくとも一部において、dα(s)/ds≧0.4を満たす。
【選択図】 図2
Description
本発明はカラー受像管に関する。特に、パネル外面の曲率半径が10,000mm以上であるカラー受像管に関する。
一般にカラー受像管は、図3に示すように、ほぼ矩形状の有効部1aと、この周囲に連設されたスカート部1bとを備えたパネル1と、スカート部1aに接合された漏斗状のファンネル2とからなる真空外囲器9を有する。パネル1の有効部1aの内面には、黒色非発光物質層とこの黒色非発光物質層が形成されていない領域に設けられた3色蛍光体層とからなる蛍光体スクリーン3が形成されている。蛍光体スクリーン3に対向して、シャドウマスク4が配置されている。シャドウマスク4は矩形枠状のマスクフレーム11に保持されており、マスクフレーム11はパネル1の内壁面に取り付けられている。ファンネル2のネック部5内に3電子ビーム6B,6G,6Rを放出する電子銃7が配設されている。ファンネル2の径大部の内側に、マスクフレーム11に取付けられた内部磁気シールド10が配置されている。ファンネル2の外側には偏向装置8が設けられている。電子銃7から放出された3電子ビーム6B,6G,6Rは偏向装置8が発生する磁界により偏向されて、シャドウマスク4に形成された電子ビーム通過孔を通過して蛍光体スクリーン3を水平方向及び垂直方向に走査して、カラー画像が表示される。
このようなカラー受像管において、蛍光体スクリーン3上に色ずれのない画像を表示するためには、シャドウマスク4に形成された電子ビーム通過孔を通過した3電子ビーム6B,6G,6Rが3色蛍光体層に正しくランディングする必要がある。そのためには、パネル1に対するシャドウマスク4の関係が重要であり、なかでも、パネル1の有効部1aの内面とシャドウマスク4の電子ビーム通過孔が形成された領域(有孔部)との間隔(q値)が所定の許容範囲内にあることが必要である。
電子銃7から放出された全電子ビームのうち、一部の電子ビームのみが蛍光体スクリーン3に達する。残りの電子ビームはシャドウマスク4に衝突し、その際、電子ビームの運動エネルギーは熱エネルギーへと変化してシャドウマスク4を加熱する。このため、シャドウマスク4はその材料の熱膨張係数に応じて熱膨張し、その形状が変化する。その結果、電子ビーム通過孔の蛍光体に対する位置が変化し、この位置の変化量が許容値を超えると電子ビームは所望の蛍光体を射突することができず、いわゆるミスランディングを生じ、表示画像の色純度を劣化させる。
電子ビーム照射によるシャドウマスク4の熱膨張のなかでも、有孔部の一部のみに多量の電子ビームが照射された場合に、電子ビーム通過孔の蛍光体に対する位置の変化量が特に大きくなり、電子ビームのミスランディングにより色純度が激しく劣化する。例えば、図4に示すように、画面中央と画面の長軸(X軸)端とのほぼ中間に位置する、短軸(Y軸)方向に延びた帯状領域20のみを白表示とし、これ以外の領域21を黒表示とした場合には、色純度が最も劣化しやすいことが一般的に知られている。このような表示を行った場合、シャドウマスク4の有孔部は図5に示すように熱変形する。即ち、有孔部のうち白表示を行う帯状領域20に対応する部分が局所的に温度上昇し、蛍光体スクリーン側に突出するように変形する(ドーミング)。このような局所的ドーミングが発生したとき、有孔部の表面の管軸方向における移動量が大きくなる長軸上において、色純度の劣化が最も激しくなる。
近年、カラー受像管の視認性を向上させるため、パネル1の有効部1aの外面の曲率半径を大きくして、平面に近づけることが要望されている。この場合、真空外囲器9の大気圧に対する強度および視認性の観点から、有効部1aの内面の曲率半径も大きくする必要がある。有効部1aの内面の曲率半径を大きくすることにともない、適正な電子ビームランディングを得るためには、シャドウマスク4の有孔部の曲率半径も大きくすることが必要となる。しかし、シャドウマスク4の有孔部の曲率半径を大きくすると、ドーミングによる電子ビーム通過孔の蛍光体に対する位置の変化量が大きくなり、電子ビームのミスランディング量が大きくなるので、色純度の劣化が大きくなる。
このため、パネル1の外面がほぼ平坦なカラー受像管では、ドーミングを抑制するために、シャドウマスク4の材料として熱膨張係数の低い、鉄及びニッケルを主成分とする合金を使用する場合がほとんどである。例えば36Niアンバー合金などが使用されることが多い。この場合、熱膨張係数は0〜100℃で1〜2×10-6とドーミング抑制に有効である反面、高コストである上、鉄−ニッケル系合金は焼鈍後に大きな弾性を有するため、曲面成型加工が難しく、所望の曲面を得るのが難しい。例えば900℃もの高温で焼鈍しても降伏点強度は28×107N/m2程度であり、一般に成型加工が容易であるとされる降伏点強度である20×107N/m2以下にするためにはかなりの高温処理が必要になる。特に、パネル外面が平坦なカラー受像管においては、シャドウマスクの有孔部の曲率半径が大きいため、成型加工はさらに難しい。
成型加工が不十分で、且つ成型後に不所望な応力がシャドウマスク4に残留している場合、カラー受像管の製造工程の中で残留応力がシャドウマスク4の形状変化を生じさせ、これが電子ビームのミスランディングを招き、色純度が大きく劣化することになる。
一方、高純度の鉄を主成分とするアルミキルド鋼であれば、800℃程度の焼鈍で降伏点強度を20×107N/m2以下にすることができるため、成型加工は非常に容易である。従って、アンバー合金では必須である成型加工時の金型温度を高温に保つ必要がなく、生産性も良好となる。
しかし、アルミキルド鋼は、熱膨張係数が0〜100℃で約12×10-6と大きいので、ドーミングに対しては不利であり、特にパネル1の有効部1aの外面がほぼ平面であるカラー受像管に適用した場合には、色純度が著しく劣化し、大きな問題となる。
特許文献1には、長軸方向の曲率半径がほぼ無限大であり、短軸方向の曲率半径が長軸方向の位置にかかわらずほぼ一定である、略円筒面状のシャドウマスクが開示されている。このようなシャドウマスクでもドーミング抑制に対してある程度の効果を有する。ところが、安価な鉄材を使用した場合には十分な効果が得られず、また、パネル重量が増加するという問題があった。
特開平10−199436号公報
上述のように、カラー受像管は視認性を向上させるためパネルの有効部の外面の曲率半径を大きくし、それにともなってシャドウマスクの有孔部の曲率半径を大きくすると、シャドウマスクの熱膨張により電子ビームのミスランディング量が大きくなり、色純度の劣化が大きくなる。
また、シャドウマスクの材料として安価で成形性の良好な鉄材を使用した場合、その大きな熱膨張係数により、シャドウマスクの熱膨張による電子ビームのミスランディング量はより大きくなり、色純度の劣化が大きくなる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、視認性が良好で、成形性及び強度に優れたシャドウマスクを備えながら、ドーミングによる色純度の劣化が生じにくいカラー受像管を提供することを目的とする。
本発明のカラー受像管は、ほぼ矩形状の有効部の内面に蛍光体スクリーンが形成されたパネルと、シャドウマスクとを備える。
前記シャドウマスクは、前記蛍光体スクリーンと対向し、多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の曲面からなる有孔部と、前記有孔部を取り囲むようにその周囲に配置された無孔部と、前記無孔部と連続し、前記無孔部に対して折り曲げられたスカート部とを備える。
前記パネルの前記有効部の外面の曲率半径は10,000mm以上である。
管軸方向軸をZ軸、前記Z軸と直交し前記有孔部の長辺方向と平行な軸をX軸、前記Z軸と直交し前記有孔部の短辺方向と平行な軸をY軸、前記有孔部のX軸上における寸法を2L、sを0<s<1を満たす変数とし、X軸上においてX=0,sL,Lの各地点でのマスク中央に対する前記有孔部の表面のZ軸方向の落込み量をZ00,Z01(s),Z02とし、前記有孔部の長辺上においてX=0,sL,Lの各地点でのマスク中央に対する前記有孔部の表面のZ軸方向の落込み量をZ10,Z11(s),Z12とし、
ΔZ01(s)=Z01(s)−Z00
により定義される、X軸上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差ΔZ01(s)と、
ΔZ02(s)=Z02−Z01(s)
により定義される、X軸上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差ΔZ02(s)と、
ΔZ11(s)=Z11(s)−Z10
により定義される、長辺上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差ΔZ11(s)と、
ΔZ12(s)=Z12−Z11(s)
により定義される、長辺上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差ΔZ12(s)とを用いて、
α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))
なるα(s)を定義したとき、0.2≦s≦0.8の範囲内の少なくとも一部において、
dα(s)/ds≧0.4
を満たす。
ΔZ01(s)=Z01(s)−Z00
により定義される、X軸上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差ΔZ01(s)と、
ΔZ02(s)=Z02−Z01(s)
により定義される、X軸上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差ΔZ02(s)と、
ΔZ11(s)=Z11(s)−Z10
により定義される、長辺上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差ΔZ11(s)と、
ΔZ12(s)=Z12−Z11(s)
により定義される、長辺上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差ΔZ12(s)とを用いて、
α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))
なるα(s)を定義したとき、0.2≦s≦0.8の範囲内の少なくとも一部において、
dα(s)/ds≧0.4
を満たす。
本発明によれば、視認性が良好で、成形性及び強度に優れたシャドウマスクを備えながら、ドーミングによる色純度の劣化が生じにくいカラー受像管を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明のカラー受像管について説明する。
本発明に係るカラー受像管の概略構成は、シャドウマスクの形状を除いて図3に示した従来のカラー受像管と同じである。
図6は本発明に係るカラー受像管に搭載されるシャドウマスク4の一実施形態の斜視図である。シャドウマスク4は、蛍光体スクリーン3と対向し、多数の電子ビーム通過孔(図示せず)が形成されたほぼ矩形状の曲面からなる有孔部41と、有孔部41を取り囲むようにその周囲に配置された無孔部42と、無孔部42と連続し、無孔部42に対して折り曲げられたスカート部43とを備える。スカート部43をマスクフレーム11の内側に嵌め込んで、両者を溶接することにより、シャドウマスク4はマスクフレーム11と一体化される。このようなシャドウマスク4は、エッチングにより電子ビーム通過孔を形成した金属平板をプレス成形することにより作成される。
本発明のカラー受像管を構成するパネル1の有効部1aの外面は、視認性を向上させるために、曲率半径が10,000mm以上のほぼ平面である。従って、外囲器9の大気圧に対する強度および視認性の観点から、有効部1aの内面の曲率半径も大きくする必要がある。適正な電子ビームランディングを得るために、有効部1aの内面の曲率半径を大きくすることにともない、シャドウマスク4の有孔部41の曲率半径も大きくすることが必要となる。一般に、シャドウマスク4の有孔部41の曲率半径を大きくすると、有孔部41の曲面の成形が困難になる。そこで、本発明では、シャドウマスク4の材料として、鉄を95%以上含む材料を使用することが好ましい。これにより、低コストで曲面の成形性を大幅に改善することが出来る。
しかし、このような材料は熱膨張係数が大きいために、図4に示したような局部的な高輝度画像パターンを表示したとき、局部的なドーミングが生じ、短時間での電子ビームの局部的なミスランディング量が大きくなる。この対策として、シャドウマスク4の有孔部41の曲率を大きくし、これに対応してパネル1の有効部1aの内面の曲率をできるだけ大きくすることが考えられる。しかし、この場合、パネル1の周辺の肉厚が大きくなることにより、製造過程で熱応力によりパネル1に割れが生じたり、画面周辺で輝度が劣化したり、重量が増加したりするなどの問題が生じる。
本発明はこのような問題を解決する。その一実施例を、対角寸法51cm、アスペクト比4:3、パネル1の有孔部1aの外面の曲率半径が20,000mmのカラー受像管の場合(以下、「実施例1」という)で説明する。
本実施例1のカラー受像管のパネル1の外面は上記のように十分に平坦化されており、シャドウマスク4は、熱膨張係数が0〜100℃で12×10-6の高純度の鉄からなる表1に示すアルミキルド脱炭鋼からなる。従って、安価でありながら十分な成型性を確保している。
図3及び図6に示すように、カラー受像管の管軸方向軸をZ軸、Z軸と直交し有孔部41の長辺41a方向と平行な軸をX軸、Z軸と直交し有孔部41の短辺41b方向と平行な軸をY軸とする。また、有孔部41のX軸上における寸法を2Lとする。
図1は、シャドウマスク4の有孔部41の1/4象限を示した斜視図である。本発明では有孔部41の表面の形状を落ち込み量で表現する。落ち込み量とは、Z軸が交差するシャドウマスク4の表面上の点(マスク中央)を基準点とし、これに対する有孔部41内のある地点のZ軸方向の変位量をいう。
sを0<s<1を満たす変数とし、図示したように、X軸上においてX=0,sL,Lの各地点でのマスク中央に対する有孔部41の表面のZ軸方向の落込み量をZ00,Z01(s),Z02とする。また、有孔部41aの長辺41a上においてX=0,sL,Lの各地点でのマスク中央に対する有孔部41の表面のZ軸方向の落込み量をZ10,Z11(s),Z12とする。
更に、これらの各地点での落ち込み量の差である落ち込み量差を図2のように定義する。即ち、落ち込み量差ΔZ01(s)は、X軸上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ01(s)=Z01(s)−Z00
により定義される。落ち込み量差ΔZ02(s)は、X軸上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ02(s)=Z02−Z01(s)
により定義される。落ち込み量差ΔZ11(s)は、長辺上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ11(s)=Z11(s)−Z10
により定義される。落ち込み量差ΔZ12(s)は、長辺上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ12(s)=Z12−Z11(s)
により定義される。
ΔZ01(s)=Z01(s)−Z00
により定義される。落ち込み量差ΔZ02(s)は、X軸上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ02(s)=Z02−Z01(s)
により定義される。落ち込み量差ΔZ11(s)は、長辺上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ11(s)=Z11(s)−Z10
により定義される。落ち込み量差ΔZ12(s)は、長辺上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差であって、
ΔZ12(s)=Z12−Z11(s)
により定義される。
更に、これら落ち込み量差を用いて、
α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))
なるα(s)を定義する。
α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))
なるα(s)を定義する。
図7は、実施例1に係るカラー受像管のシャドウマスクの有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量を示す図である。また、図8は、比較例1に係るシャドウマスク4の有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量を示す図である。比較例1に係るカラー受像管は、実施例1とシャドウマスク4の形状においてのみ相違する。有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量はX座標値xの6次式で近似することができ、各項の係数は図7及び図8の下欄に示すとおりである。実施例1と比較例1とは、シャドウマスクの平面性を一致させて比較を容易にするために、対角軸端(x=190mm,y=143mm)での落ち込み量Z12を同一に設定している(Z12=16.77mm)。比較例1のシャドウマスクの材料は実施例1と同一であるが、仮に熱膨張係数の低い材料(例えば表1のInvar合金)を使用した場合には、良好な視認性を備えながら、ドーミング量を許容範囲内に抑えることができるように、比較例1のシャドウマスクの有孔部41の曲面が設定されている。
各地点での落込み量はX軸方向の位置x、即ちsによって決定される。実施例1及び比較例1についての上記α(s)の一次微分dα(s)/dsのsに対する変化曲線を図9に示す。図9において「単一曲面1」は、対角軸端での落ち込み量Z12が実施例1及び比較例1と同一になるように設定された曲率半径が1694mmの球面形状の有孔部を備えたシャドウマスクを意味する。
図9に、0.2≦s≦0.8且つdα(s)/ds≧0.4を満たす範囲を領域30として示した。本発明に係る実施例1では、0.2≦s≦0.8の全範囲においてdα(s)/ds≧0.4を満足する。即ち、0.2≦s≦0.8の全範囲において、dα(s)/dsの変化曲線が領域30を通過する。また、dα(s)/dsの最大値は0.2≦s≦0.8の範囲内に存在する。これに対して、比較例1では0.2≦s≦0.8の範囲で|dα(s)/ds|≦0.2であり、単一曲面1ではsの値にかかわらず有孔部41の全面でdα(s)/ds=0であり、いずれもdα(s)/dsの変化曲線が領域30を通過しない。
実施例1のシャドウマスクは、対角軸端での落ち込み量Z12が比較例1と同等であるので、平坦な外面を有するパネルに適用することにより視認性に優れたカラー受像管を実現できる。また、シャドウマスクが鉄を95%以上含む材料からなるので成形性が良好で、且つ安価である。更に、X=0.5LからX=Lの範囲における落ち込み量差が大きいので、図5を用いて説明した局所的なドーミングが発生しやすいX=0.5Lの地点周辺において、電子ビームのミスランディング量の抑制効果が大きいとされるY軸方向曲率半径の縮小化が可能である。
表2に、上記の実施例1,比較例1,及び単一曲面1のシャドウマスクを備えた各カラー受像管において、図4に示す表示を行ったときの、画面中央と画面のX軸端との中間位置(長軸中間)でのドーミングによる電子ビームの移動量を示す。画像表示は、高圧側電位29kV、カソード電流1300μA、白色の帯状領域20の幅75mmとした。表2において、「対角軸平均曲率半径」は、シャドウマスクの中央及び対角軸端での各落ち込み量Z00,Z12から求められる、Z軸及び対角軸を含む面におけるシャドウマスクの見かけ上の曲率半径を意味する。実施例1,比較例1,及び単一曲面1の対角軸平均曲率半径の値が同一であることは、これらの対角軸端での落ち込み量Z12が同一であることを意味している。
表2より、単一曲面1及び比較例1では電子ビーム移動量が400μm以上であるのに対して、実施例1では300μm未満となり、単一曲面1に対して電子ビーム移動量は58%に改善される。
本発明の別のサイズへの適用例を示す。第2の適用例として対角寸法36cm、アスペクト比4:3のカラー受像管について説明する。
図10は、実施例2に係るカラー受像管のシャドウマスクの有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量を示す図である。実施例2のカラー受像管の構成は、サイズの相違を除けば実施例1のカラー受像管と概略同一である。実施例2のカラー受像管のパネル1の外面は曲率半径は10,000mm以上であり、十分に平坦化されており、シャドウマスク4は、熱膨張係数が0〜100℃で12×10-6の高純度の鉄からなる表1に示すアルミキルド脱炭鋼からなる。
図11は、比較例2に係るシャドウマスク4の有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量を示す図である。比較例2に係るカラー受像管は、実施例2とシャドウマスク4の形状においてのみ相違する。
有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量はX座標値xの6次式で近似することができ、各項の係数は図10及び図11の下欄に示すとおりである。実施例2と比較例2とは、シャドウマスクの平面性を一致させて比較を容易にするために、対角軸端(x=133mm,y=102mm)での落ち込み量Z12を同一に設定している(Z12=11.7mm)。比較例2のシャドウマスクの材料は実施例2と同一であるが、仮に熱膨張係数の低い材料(例えば表1のInvar合金)を使用した場合には、良好な視認性を備えながら、ドーミング量を許容範囲内に抑えることができるように、比較例2のシャドウマスクの有孔部41の曲面が設定されている。
図12に、実施例2、比較例2、及び単一曲面2のdα(s)/dsのsに対する変化曲線を図9と同様に示す。「単一曲面2」は、対角軸端での落ち込み量Z12が実施例2及び比較例2と同一になるように設定された曲率半径が1207mmの球面形状の有孔部を備えたシャドウマスクを意味する。
本発明に係る実施例2では、0.22≦s≦0.72の範囲においてdα(s)/ds≧0.4を満足する。即ち、0.2≦s≦0.8の範囲のうち83%(=[(0.72−0.22)/(0.8−0.2)]×100)の部分において、dα(s)/dsの変化曲線が領域30を通過する。また、dα(s)/dsの最大値は0.2≦s≦0.8の範囲内に存在する。これに対して、比較例2では0.2≦s≦0.8の範囲で|dα(s)/ds|≦0.2であり、単一曲面2ではsの値にかかわらず有孔部41の全面でdα(s)/ds=0であり、いずれもdα(s)/dsの変化曲線が領域30を通過しない。
実施例2のシャドウマスクは、対角軸端での落ち込み量Z12が比較例2と同等であるので、平坦な外面を有するパネルに適用することにより視認性に優れたカラー受像管を実現できる。また、シャドウマスクが鉄を95%以上含む材料からなるので成形性が良好で、且つ安価である。
表2に、上記の実施例2,比較例2,及び単一曲面2のシャドウマスクを備えた各カラー受像管において、図4に示す表示を行ったときの、画面中央と画面のX軸端との中間位置(長軸中間)でのドーミングによる電子ビームの移動量を示す。
表2より、単一曲面2及び比較例2では電子ビーム移動量が300μm以上であるのに対して、実施例2では243μmであり、単一曲面2に対して電子ビーム移動量は78%に改善される。dα(s)/dsの変化曲線の少なくとも一部が領域30を通過すればドーミングによる電子ビームのミスランディング量を低減することができ、更に実施例2のように、dα(s)/dsの変化曲線が0.2≦s≦0.8の範囲のうちの50%以上の部分において領域30を通過すれば、ドーミングによる電子ビームのミスランディング量を一層低減することができる。
本発明の更に別のサイズへの適用例を示す。第3の適用例として対角寸法60cm、アスペクト比4:3のカラー受像管について説明する。
図13は、実施例3に係るカラー受像管のシャドウマスクの有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量を示す図である。実施例3のカラー受像管の構成は、サイズの相違を除けば実施例1のカラー受像管と概略同一である。実施例3のカラー受像管のパネル1の外面は曲率半径は10,000mm以上であり、十分に平坦化されており、シャドウマスク4は、熱膨張係数が0〜100℃で12×10-6の高純度の鉄からなる表1に示すアルミキルド脱炭鋼からなる。有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量はX座標値xの6次式で近似することができ、各項の係数は図13の下欄に示すとおりである。
図15に、実施例3及び単一曲面3のdα(s)/dsのsに対する変化曲線を図9と同様に示す。「単一曲面3」は、対角軸端(x=225mm,y=169mm)での落ち込み量Z12が実施例3と同一に設定(Z12=18.0mm)された、曲率半径が2209mmの球面形状の有孔部を備えたシャドウマスクを意味する。本発明に係る実施例3では、0.2≦s≦0.8の全範囲においてdα(s)/ds≧0.4を満足する。即ち、0.2≦s≦0.8の全範囲において、dα(s)/dsの変化曲線が領域30を通過する。また、dα(s)/dsの最大値は0.2≦s≦0.8の範囲内に存在する。これに対して、単一曲面3ではsの値にかかわらず有孔部41の全面でdα(s)/ds=0であり、dα(s)/dsの変化曲線は領域30を通過しない。
実施例3のシャドウマスクは、平坦な外面を有するパネルに適用することにより視認性に優れたカラー受像管を実現できる。また、シャドウマスクが鉄を95%以上含む材料からなるので成形性が良好で、且つ安価である。
表2に、上記の実施例3及び単一曲面2のシャドウマスクを備えた各カラー受像管において、図4に示す表示を行ったときの、画面中央と画面のX軸端との中間位置(長軸中間)でのドーミングによる電子ビームの移動量を示す。表2より、実施例3では単一曲面3に対して電子ビーム移動量は57%に改善される。
本発明では、シャドウマスクのドーミングによる電子ビームのミスランディングを抑制しながら、シャドウマスクの対角軸端での落込み量Z12を減少させることも可能である。図14は、実施例3と同じサイズのカラー受像管に用いられ、且つ実施例3よりも対角軸平均曲率半径を大きく、即ち対角軸端での落込み量Z12を減少させた、実施例4のシャドウマスクの有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量を示す図である。実施例4のシャドウマスクは、熱膨張係数が0〜100℃で12×10-6の高純度の鉄からなる表1に示すアルミキルド脱炭鋼からなる。有孔部41のX軸及び長辺41aに沿った落込み量はX座標値xの6次式で近似することができ、各項の係数は図14の下欄に示すとおりである。
図15に、実施例4のdα(s)/dsのsに対する変化曲線を図9と同様に示す。本発明に係る実施例4では、0.24≦s≦0.8の範囲においてdα(s)/ds≧0.4を満足する。即ち、0.2≦s≦0.8の範囲のうち93%(=[(0.8−0.24)/(0.8−0.2)]×100)の部分において、dα(s)/dsの変化曲線が領域30を通過する。
実施例4のシャドウマスクも、平坦な外面を有するパネルに適用することにより視認性に優れたカラー受像管を実現できる。また、シャドウマスクが鉄を95%以上含む材料からなるので成形性が良好で、且つ安価である。
表2に、上記の実施例4のシャドウマスクを備えた各カラー受像管において、図4に示す表示を行ったときの、画面中央と画面のX軸端との中間位置(長軸中間)でのドーミングによる電子ビームの移動量を示す。
表2より、実施例4では単一曲面3に対して電子ビーム移動量は88%に改善される。実施例4のように、対角軸端での落込み量Z12を小さくすることにより、パネルの有効部の内面の曲率半径を大きくすることができるので、パネルの肉厚の減少、従って、パネルの重量の削減が可能になる。従って、実施例4によれば、パネル重量削減と、視認性の向上と、ドーミングによる電子ビームのミスランディング量の抑制の低減とを同時に実現できる。
本発明において、dα(s)/dsの最大値が0.2≦s≦0.8の範囲内に存在すると、ドーミングによる電子ビームの移動量の低減に有利であるので、好ましい。
また、本発明において、シャドウマスクに酸化ビスマスなどのドーミング抑制のためのコーティングを施しても良く、これによりドーミングによる電子ビームのミスランディング量を更に低減することができる。
本発明に係るカラー受像管は、パネル外面がほぼ平面であるので視認性に優れ、また、低コスト化のために鉄材からなるシャドウマスクを使用してもドーミングによる色ずれを低減できるので、良好なカラー表示を行うことができるカラー受像管として広く利用することができる。
1 パネル
1a パネル有効部
1b パネルスカート部
2 ファンネル
3 蛍光体スクリーン
4 シャドウマスク
41 有孔部
41a 有孔部の長辺
41b 有孔部の短辺
42 無孔部
43 スカート部
5 ネック部
6B,6G,6R 電子ビーム
7 電子銃
8 偏向装置
9 外囲器
10 内部磁気シールド
11 マスクフレーム
20 白色帯状領域
30 領域
1a パネル有効部
1b パネルスカート部
2 ファンネル
3 蛍光体スクリーン
4 シャドウマスク
41 有孔部
41a 有孔部の長辺
41b 有孔部の短辺
42 無孔部
43 スカート部
5 ネック部
6B,6G,6R 電子ビーム
7 電子銃
8 偏向装置
9 外囲器
10 内部磁気シールド
11 マスクフレーム
20 白色帯状領域
30 領域
Claims (4)
- ほぼ矩形状の有効部の内面に蛍光体スクリーンが形成されたパネルと、シャドウマスクとを備え、
前記シャドウマスクは、前記蛍光体スクリーンと対向し、多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の曲面からなる有孔部と、前記有孔部を取り囲むようにその周囲に配置された無孔部と、前記無孔部と連続し、前記無孔部に対して折り曲げられたスカート部とを備え、
前記パネルの前記有効部の外面の曲率半径は10,000mm以上であり、
管軸方向軸をZ軸、前記Z軸と直交し前記有孔部の長辺方向と平行な軸をX軸、前記Z軸と直交し前記有孔部の短辺方向と平行な軸をY軸、前記有孔部のX軸上における寸法を2L、sを0<s<1を満たす変数とし、
X軸上においてX=0,sL,Lの各地点でのマスク中央に対する前記有孔部の表面のZ軸方向の落込み量をZ00,Z01(s),Z02とし、前記有孔部の長辺上においてX=0,sL,Lの各地点でのマスク中央に対する前記有孔部の表面のZ軸方向の落込み量をZ10,Z11(s),Z12とし、
ΔZ01(s)=Z01(s)−Z00
により定義される、X軸上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差ΔZ01(s)と、
ΔZ02(s)=Z02−Z01(s)
により定義される、X軸上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差ΔZ02(s)と、
ΔZ11(s)=Z11(s)−Z10
により定義される、長辺上のX=0の地点に対するX=sLの地点の落ち込み量差ΔZ11(s)と、
ΔZ12(s)=Z12−Z11(s)
により定義される、長辺上のX=sLの地点に対するX=Lの地点の落ち込み量差ΔZ12(s)とを用いて、
α(s)=(ΔZ01(s)/ΔZ11(s))/(ΔZ02(s)/ΔZ12(s))
なるα(s)を定義したとき、0.2≦s≦0.8の範囲内の少なくとも一部において、
dα(s)/ds≧0.4
を満たすことを特徴とするカラー受像管。 - 0.2≦s≦0.8の範囲のうちの50%以上の部分において、
dα(s)/ds≧0.4
を満たす請求項1に記載のカラー受像管。 - dα(s)/dsの最大値が0.2≦s≦0.8の範囲内に存在する請求項1に記載のカラー受像管。
- 前記シャドウマスクは鉄を95%以上含む材料からなる請求項1に記載のカラー受像管。
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