JP2006037158A - イオンビームを用いた炭素系多層薄膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】貫通ピンホールがほとんどなく十分な強度を有し、しかも製造が極めて簡単で品質にも優れた炭素系多層薄膜を提供する。
【解決手段】所定の低運動エネルギを与えた炭素イオンをターゲットに対し一定時間照射し、sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層を生成するグラファイト状薄膜層生成ステップと、所定の高運動エネルギを与えた炭素イオンを前記ターゲットに対し一定時間照射し、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層を生成するダイヤモンド状薄膜層生成ステップとを交互に繰り返し、前記グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層とが交互に積層してなる多層薄膜を製造するようにした。
【選択図】図2





Description

本発明は、基体に炭素イオンを照射して炭素系多層薄膜を製造する炭素系多層薄膜の製造方法等に関するものである。
従来、腐食性環境にさらされる表面部品(配管部品等)や摩擦摩耗にさらされる工業部品(切削具等)の表面に薄膜を被覆し、耐腐食性の向上や硬度の向上を図ることがしばしば行われている。
さらに近時では、かかる表面被膜を多層化すれば膜生成時に形成される貫通ピンホールの低減、解消が図れ、耐腐食性のさらに向上させることができるのではないかとか、その多層被膜を硬い薄膜と柔らかい薄膜との交互積層構造にすれば、衝撃吸収も含めた総合的な強度向上が見込めるのではないかといった考えも見られるようになってきている。
例えば非特許文献1には、アルゴン雰囲気中に窒素を混合させるか否かをコントロールすることで、チタン(Ti)と窒化チタン(TiN)との交互積層薄膜をスパッタリング形成した例が記載されている。
しかしながら、上述したスパッタリングやCVDなどの方法では結果として形成される薄膜の特性の装置依存性等が大きくなるうえ、種々の成膜パラメータが相互に依存し合うため、膜厚や膜物性等の制御が難しく、常に安定した品質の多層薄膜を形成することが困難になる。また、複数の薄膜形成装置を利用しなければならなかったり、或いは層間における界面での剥離の問題が生じたりして、製造上のコストや所要時間等の点においても実用化に多くの課題を有している。
E. kusano, M.Kitagawa, H.Nanto,and A.Kinbara, J. Vac. Sci. Technol. A16(3) pp.1272-1276 , May/Jun1998
そこで本発明は、炭素イオンに着目してはじめてなされたものであって、貫通ピンホールがほとんどなく十分な強度を有し、しかも製造が極めて簡単で品質にも優れた炭素系多層薄膜を提供することをその主たる所期課題としたものである。
すなわち本発明に係る炭素系多層薄膜の製造方法は、所定の低運動エネルギを与えた炭素イオンをターゲットに対し一定時間照射し、sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層を生成するグラファイト状薄膜層生成ステップと、所定の高運動エネルギを与えた炭素イオンをターゲットに対し一定時間照射し、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層を生成するダイヤモンド状薄膜層生成ステップとを交互に繰り返し、前記グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層とが交互に積層してなる多層薄膜を製造するようにしたものであることを特徴とする。ここで「交互に」とは、ステップ間或いは層間に隙間無くという意味の他に、後述するようにその間に中間ステップや中間層が介在するという意味も含む。「イオン」とはいわゆるドライイオンのことである。
このようなものであれば、炭素イオンは自身が有する運動エネルギに応じて積層する際に物性が変わるため、炭素イオンに与えるエネルギのみを変化させるという非常に簡単な方法で、柔らかいグラファイト状薄膜層と硬いダイヤモンド状薄膜層という2つの性質の異なる層を交互に有した多層膜を形成できる。そしてこの多層構造によって厚み方向に貫通するピンホールの解消を図れるうえ、かかる多層構造は、硬い薄膜と柔らかい薄膜との交互多層構造でもあるため、耐衝撃にも優れた総合的な強度の向上をも図れる。そしてその結果、表面被膜を利用する多くの産業分野への新しい利用可能性が一気に拡がる。さらに、膜厚に密接に関連する炭素イオンの量は、その照射に係る電流量を測定することにより、非常に精度よくかつ容易に制御できるため、膜厚の管理も簡単になり、品質の安定した多層薄膜を提供できるというメリットも得られる。
グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層との間の剥離の問題を軽減するには、前記グラファイト状薄膜層生成ステップとダイヤモンド状薄膜層生成ステップとの間に中間層生成照射ステップをさらに設け、その中間層生成ステップにおいて、前記低運動エネルギと高運動エネルギとの間で時間的に徐々に変化していく運動エネルギを炭素イオンに与え前記膜形成領域に照射するようにしておけばよい。このように炭素イオンに対するエネルギーの付与波形を制御するだけで、前記グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層との間に、グラファイト状炭素とダイヤモンド状炭素との比率が厚み方向に進むに連れ徐々に変化していく中間層を介在させることができ、層間の剥離を防止できる。
sp2、sp3構造の形成には炭素イオンの運動エネルギのみが寄与し、電荷の効果はあまりないので、使用する炭素イオンは、負イオンでも正イオンでも構わない。
実施の上で好ましい運動エネルギとしては、前記低運動エネルギの値が炭素原子1つあたり30eV以下であり、前記高運動エネルギの値が30eVを超えて200eV以下の範囲であればよい。この程度の運動エネルギであれば、炭素イオンが正イオンであってもチャージアップに関して実用上大きな問題点が生じにくいと考えられる。
かかる多層薄膜でコーティングする具体的な対象物としては、ベリリウム薄膜を挙げることができる。ベリリウム薄膜は非常にX線を透過しやすい金属であり、X線を利用した機器に窓材として広く使われている。このようなベリリウム薄膜上に前記炭素系多層薄膜を形成することにより、窓材を化学的にも物理的も大幅に強化できることとなり、例えばプロセス型X線分析装置において、窓材の性質(強度)が制限となって従来では測り得なかった改質前の石油等の対象物を測定することが可能になる。
このような炭素系多層薄膜の製造方法を実現する装置としては、炭素イオン源と、その炭素イオン源から炭素イオンを引き出し、所定の運動エネルギを与えて基体に照射するエネルギ付与部と、そのエネルギ付与部を制御する制御部とを備え、前記制御部が前記エネルギ付与部を制御して炭素イオンに与える運動エネルギを所定の低値と所定の高値との間で周期的に変化させるように構成しているものを挙げることができる。
要すれば、このような炭素系多層薄膜の製造方法或いは炭素系多層薄膜の製造装置によって、sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層と、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層とが交互に積層されてなる炭素系多層薄膜を製造することができる。
このように本発明によれば、単に炭素イオンに与えるエネルギを変化させるだけという非常に簡単な方法で、貫通ピンホールがほとんどなく十分な強度を有し、しかも製造が極めて簡単で品質にも優れた炭素系多層薄膜を提供することが可能になる。
以下に本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図では理解の簡単のため、一部省略している構造もある。また後述する各実施形態において、対応する部材には同一の符号を付している。
<第1実施形態> 本実施形態に係る炭素系多層薄膜の製造装置10は、図1に模式的に示すように、炭素イオン源1、イオン加速電源2、質量分離器3、偏向器4、イオン減速電源5、基板ホルダ6及び制御部7を備えたものである。
各部を詳述する。
炭素イオン源1は、例えば内部に導入された炭化水素ガスや炭酸ガスなどの炭素を含むガスを放電により分解して、正の炭素原子イオン、炭素分子イオン等を生成するものである。
イオン加速電源2は、イオン源筐体11に一定の正の電位(加速電圧V)を与えるもので、接地された引き出し部8との間で電位差を形成し、イオン源1の内部から炭素原子イオン等を加速電圧Vにて一方向に加速し、イオンビームとして引き出すために用いられる。ここでは、例えばイオン源1の電位(加速電圧V)を10〜30kVに設定し、一価のイオンを約10〜30keV(より具体的には前記加速電圧によって与えられた運動エネルギ+初期エネルギ)で輸送できるようにしている。なお請求項7記載のエネルギ付与部は、このイオン加速電源2と後述するイオン減速電源5とに相当する。
質量分離器3は、イオン源1から射出されたイオンビームを磁場を利用して湾曲させ、出口ポートから出力するタイプのもので、質量及びエネルギの揃ったイオンを抽出する(もちろん、これとは異なった質量及びエネルギを有したイオンであって、それらの比率から同一軌道を辿るものもわずかに含まれることにはなるが)ために用いられる。すなわち、前記イオン源1中に存在するイオンは、プラズマポテンシャルに相当する分(その他、例えばスパッタされたイオンの場合であればスパッタ粒子の初速度の分)の、個々にばらついた初期エネルギを有しているため、イオン加速電源2で加速されたイオンのエネルギも、前記初期エネルギのばらつきに対応して個々にばらついている。また、前述したようにイオン源1中には、炭素原子イオン、炭素分子イオン等の質量の異なったイオンが混在している。ところがこの質量分離器3を通過させることで、質量、エネルギともにばらついているイオン中から質量及びエネルギの揃ったイオンを抽出することができる。
偏向器4は、前記質量分析器から出たイオンの進行方向に直角に電場をかけ、イオンビームを偏向させて基板ホルダ6に支持させたターゲット基板61に導くものである。この偏向器4は、荷電変換などで発生した中性粒子を除去するためものであるが、印加電圧を変化させることにより、イオンビームをターゲット基板61上で走査させ、広い面積の膜を生成する際にも用いることができる。
イオン減速電源5は、基板ホルダ6(ターゲット基板61)に正の電位(減速電圧v)を与え、前記偏向器4を通過してきたイオンの運動エネルギを、その減速電圧vをもって減少させ、ターゲット基板61に照射されるイオンの最終的な運動エネルギを決定するものである。このイオン減速電源5は、可変電圧出力タイプのものであり、外部又は内蔵された制御部7からの指令信号により前記減速電圧vを時間的に変化させることができる。なお、図1中、ターゲット基板61の直前に設けられている符号62は補助電極を示しており、ターゲット基板61の直前までイオンビーム輸送空間の電位を同一にするために設置されている。
そして最終的にターゲット基板61に照射されるイオンの運動エネルギEは、その価数をN、初期エネルギをEiとして、以下のように表される。
E=Ei+N・V−N・v (1)
制御部7は、周知のもので、CPUを利用したデジタル回路やアナログディスクリート回路等を利用して、イオン減速電源5に与える前記指令信号を生成するものである。
次に、このように構成した本薄膜製造装置10を用いて炭素系多層薄膜を製造する方法について以下に説明する。
ここでは加速電源2の電圧Vを例えば15kVに設定し、イオン源1から引き出したイオンを質量分離器3を通過させることで、15eVの初期エネルギを有する炭素単原子イオン(C)のみを抽出するようにしている。このようにして15eV(初期エネルギ)+15keV(加速電源2により付与されたエネルギ)=15.015keVの運動エネルギを有した炭素単原子イオンが、偏向器4を通過し、イオン減速電源5による電圧vで減速されてターゲット基板61に照射される。
一方、前記制御部7は所定の指令信号を送出し、イオン減速電源5による電圧vの波形が、図2に示すように、14.99kVと14.9kVとの高低値をとるような矩形波となるように制御している。
このことによって、図3にフローチャートで示すように、低運動エネルギの炭素原子イオンが一定時間、ターゲット基板61に照射される時(グラファイト状薄膜層生成ステップS1)と、高運動エネルギの炭素原子イオンが一定時間ターゲット基板61に照射される時(ダイヤモンド状薄膜層生成ステップS2)とが交互に繰り返される。ここで低運動エネルギの時とは、前記減速電圧が高値の時で、その値は前記(1)式から25eVである。また、高運動エネルギの時とは、前記減速電圧が低値の時で、その値は前記(1)式から115eVである。
しかして、図4(□で表示されている部分が正のイオンを示している)から明らかなように、単原子あたり30eVを超えた高運動エネルギを与えられた炭素イオンは、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層となり、単原子あたり30eV以下の低運動エネルギを与えられた炭素イオンは、sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層となる。したがって前述したようなステップS1、S2を交互に繰り返されることにより、図5に示すように、グラファイト状薄膜層Gとダイヤモンド状薄膜層Dとがほぼ間に何も介在しないでその界面で急峻に入れ替わって交互に積層してなる多層薄膜が製造される。
なお、電圧を印加する時間は、予めそれぞれのエネルギでの成膜速度を計測しておき、所望の膜厚となるような時間に設定するようにしている。ちなみにここでの各層の厚みは50nm〜500nm程度の間である。また基板ホルダ6(ターゲット基板61)には電流計が設けてあるので、この電流計でイオン照射により流れた電流を測定し、各層の厚みを制御するようにしてもよい。
したがってこのように構成した本実施形態によれば、炭素イオンに与えるエネルギのみを変化させるという非常に簡単な方法で、柔らかいグラファイト状薄膜層Gと硬いダイヤモンド状薄膜層Dという2つの性質の異なる層を交互に有した多層膜を形成できる。そしてその結果、図5に示すように、各層G、DにピンホールPが形成されても、それが各層G、D毎に分散し、重なることはほとんど無いため、多層膜の厚み方向に貫通する貫通ピンホールを解消できる。また、硬い薄膜と柔らかい薄膜との多層化によって耐衝撃性等にも優れた総合的な強度の向上をも図れる。そしてこのようなことから、表面被膜を利用する多くの産業分野への新しい利用可能性を一気に拡げることが可能になる。
また、この実施形態では、エネルギ付与部としてイオン加速電源2とターゲット基板61直前に配置したイオン減速電源5との2つを設け、イオン加速電源2の電圧Vを一定にしつつ、イオン減速電源5の電圧vのみをコントロールして炭素イオンの運動エネルギを制御しているため、それらの中間に介在する質量分離器3や偏光器等のイオン選別機器類に対しては、初期設定さえ行えば後はなんらパラメータを変更する必要が無いというメリットも有する。つまり、イオン加速電源2の電圧Vをコントロールして炭素イオンの輸送途中の運動エネルギを制御しようとすると、その電圧の変化に応じて質量分離器3の磁場や偏光器の電圧を変化させる必要が生じ、非常に制御が難しくなるところ、本実施形態では、イオン減速電源5の電圧vのみ独立してコントロールすればよいので、非常に制御が容易になる。
さらに、膜厚に密接に関連する炭素イオンの量は、その照射に係る電流量を電流計9で測定することにより、非常に精度よくかつ容易に制御できるため、膜厚の管理も簡単になり、品質の安定した多層薄膜を提供できるというメリットも得られる。
一方、前記制御部7の指令信号を、例えば図6に示すように、イオン減速電源5による電圧vの波形を、高値と低値との間で緩やかに変化する台形波に変えるだけで、前記グラファイト状薄膜層生成ステップS1とダイヤモンド状薄膜層生成ステップS2との間に、炭素イオンの有する運動エネルギが時間的に徐々に変化する期間(中間層生成ステップS3)が設けられることになる(図7フローチャート参照)。
その結果、図8に示すように、グラファイト状薄膜層Gとダイヤモンド状薄膜層Dとの間に、sp構造が支配的なグラファイト状炭素とsp構造が支配的なダイヤモンド状炭素との比率が厚み方向に進むに連れ徐々に変化していく中間層Mが形成されることになり、グラファイト状薄膜層Gとダイヤモンド状薄膜層Dとの間の剥離の問題を大きく改善することができる。
<第2実施形態> 本実施形態に係る炭素系多層薄膜の製造装置10は、図9に示すように、第1実施形態のものと装置構成はほとんど同じであるが、イオン源1を接地電位に保つとともに、イオン加速電源2に代えてイオン引き出し電源を設け、引き出し部8をそのイオン引き出し電源で負電位にしている点が異なる。また、イオン源1からターゲット基板61までの途中経路(ビーム輸送部)も同様に負電位に設定している。質量分離器3、偏向器4等の中間装置のパラメータは同一である。
そしてイオン引き出し電源の電圧を一定にしつつ、第1実施形態同様、イオン減速電源5の電圧をコントロールすることで、最終的にターゲット基板61に照射されるイオンの運動エネルギを制御するようにしている。
一例をあげる。ここではイオン引き出し電源の電圧V’を例えば−15kVに設定し、イオン源1から引き出したイオンを質量分離器3を通過させることで、15eVの初期エネルギを有する炭素の単原子イオン(C)のみを抽出するようにしている。一方、イオン減速電源5の電圧vの波形を、図10に示すように、−10Vと−100Vとの高低値をとるような矩形波となるように制御部7によって制御している。
このことによって、第1実施形態同様、低運動エネルギ(25eV)の炭素原子イオンが一定時間ターゲット基板61に照射される時(グラファイト状薄膜層生成ステップ)と、高運動エネルギ(115eV)の炭素原子イオンが一定時間ターゲット基板61に照射される時(ダイヤモンド状薄膜層生成ステップ)とが交互に繰り返され、グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層とが交互に積層してなる多層薄膜が製造される。なお、イオン減速電源5による電圧vの波形を台形波にして中間層を形成するようにしても構わないのは言うまでもない。
しかして本実施形態によれば、前記第1実施形態同様の効果を奏するうえ、イオン加速電源2とイオン減速電源5との相互の電圧の精度が問題にならないため、より一層正確にイオンのエネルギを制御することができる。
<第3実施形態> 本実施形態に係る炭素系多層薄膜の製造装置10は、第1、第2実施形態とは異なり、質量分離器3を有しない構成のものである。これらについても簡単に説明しておく。この場合、イオン減速電源5のある構成(図11参照)とイオン減速電源5のない構成(図12参照)とが考えられる。
前者では、イオン減速電源5又は/及びイオン加速電源2の電圧を変化させることでイオンのエネルギを変化させることができる。一方、後者では当然イオン加速電源2の電圧のみでイオンのエネルギを変化させることとなる。
ところで、質量分離器3を持たないこのような装置構成の場合、例えばプラズマ型イオン源1を利用すると、メタンなどの炭素原子が1つしか含まれないガスを導入して放電を生じさせても、炭素原子が2つ以上結合した分子状のイオンが発生し、それらが薄膜形成に寄与する可能性が生じる。
sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層を形成するときには、1イオンあたりに与えるエネルギを30eV以下にしておけば、少なくとも分子イオンにおける単原子あたりのエネルギはこれより小さいものとなるわけであるから、問題が生じることはない。
一方、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層を形成するときには、1イオンあたりに与えるエネルギを例えば50eVとすると、単原子イオンであればよいが、2原子分子に対しては単原子あたり25eVとなってしまい、グラファイト状炭素が混成されてしまい不具合が生じ得る。したがって1イオンあたりに与えるエネルギは、イオン源1で生成される分子の原子数に30eVを掛けた値、すなわちこの場合であれば3原子分子までが生成される可能性が高いため、90eVを超えた値(実質的には100eV)にすることが必要である。
<その他の実施形態>
前記第1、第2実施形態では、単原子イオンを照射するようにしていたが、質量分離器3のパラメータを調整するなどして、2原子分子イオン、3原子分子イオンを照射するようにしてもよい。
また、前記各実施形態ではイオン源1で正イオンを発生させた場合について述べたが、図3に示すように、炭素負イオンは、正イオン同様に運動エネルギによって物性が変化するため、これを用いてよく、その場合は各電位を正負逆転させればよい。特に負イオンの場合、スパッタ型負イオン源を用いれば、水素が入らないので質量分離がしやすい(C、C などのみ)という利点がある。正イオン源では気体状の材料(CH、C等)を導入する必要があり、C、CH、CH 、CH 等を分離しなければならない場合が多くなるからである。
イオン源としては、前記実施形態のものの他にも多種が知られており、例えば、カウフマン型、フリーマン型、バーナス型、電子衝撃型、マイクロ波放電型、スパッタ型、スパッタ型負イオン源、デュオプラズマトロン、PIGイオン源、高周波放電型等が挙げられるが、その使用態様に応じて適宜用いればよい。
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
本発明の第1実施形態における薄膜製造装置の全体構成を示す模式図。 同実施形態においてイオンエネルギに与える運動エネルギの時間変化の一例を示す波形図。 同実施形態における薄膜製造方法の一例を示す概略フローチャート。 運動エネルギによってsp構造の割合が変化することを示したデータ。 同実施形態において製造された炭素系多層膜の一例を示す模式的部分断面図。 同実施形態においてイオンエネルギに与える運動エネルギの時間変化の他の例を示す波形図。 同実施形態における薄膜製造方法の他の例を示す概略フローチャート。 同実施形態において製造された炭素系多層膜の他の例を示す模式的部分断面図。 本発明の第2実施形態における薄膜製造装置の全体構成を示す模式図。 同実施形態においてイオンエネルギに与える運動エネルギの時間変化の一例を示す波形図。 本発明の第3実施形態における薄膜製造装置の全体構成を示す模式図。 同実施形態における薄膜製造装置の変形例を示す模式図。
符号の説明
1・・・炭素イオン源
61・・・ターゲット(ターゲット基板)
2、5・・・エネルギ付与部(イオン加速電源、イオン減速電源)
7・・・制御部
G・・・グラファイト状薄膜層
D・・・ダイヤモンド状薄膜層
M・・・中間層

Claims (9)

  1. 所定の低運動エネルギを与えた炭素イオンをターゲットに対し一定時間照射し、sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層を生成するグラファイト状薄膜層生成ステップと、所定の高運動エネルギを与えた炭素イオンを前記ターゲットに対し一定時間照射し、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層を生成するダイヤモンド状薄膜層生成ステップとを交互に繰り返し、前記グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層とが交互に積層してなる多層薄膜を製造するようにした炭素系多層薄膜の製造方法。
  2. 前記グラファイト状薄膜層生成ステップとダイヤモンド状薄膜層生成ステップとの間に中間層生成ステップをさらに設け、その中間層生成ステップにおいては、前記低運動エネルギと高運動エネルギとの間で時間的に徐々に変化していく運動エネルギを炭素イオンに与え、前記膜形成領域に照射するようにしている請求項1記載の炭素系多層薄膜の製造方法。
  3. 炭素イオンが負イオンである請求項1又は2記載の炭素系多層薄膜の製造方法。
  4. 炭素イオンが正イオンである請求項1又は2記載の炭素系多層薄膜の製造方法。
  5. 前記低運動エネルギの値が炭素単原子あたり30eV以下であり、前記高運動エネルギの値が炭素単原子あたり30eVを超えて200eV以下の範囲である請求項1乃至4いずれかに記載の炭素系多層薄膜の製造方法。
  6. ベリリウム薄膜上に多層薄膜を形成するようにしている請求項1乃至5いずれかに記載の炭素系多層薄膜の製造方法。
  7. 炭素イオン源と、
    その炭素イオン源から炭素イオンを引き出し、所定の運動エネルギを与えてターゲットに照射するエネルギ付与部と、
    そのエネルギ付与部を制御する制御部とを備え、
    前記制御部が前記エネルギ付与部を制御して炭素イオンに与える運動エネルギを所定の低値と所定の高値との間で周期的に変化させるように構成している炭素系多層薄膜の製造装置。
  8. sp構造が支配的なグラファイト状薄膜層と、sp構造が支配的なダイヤモンド状薄膜層とが交互に積層されてなることを特徴とする炭素系多層薄膜。
  9. 前記グラファイト状薄膜層とダイヤモンド状薄膜層との間に、sp構造をなすグラファイト状炭素とsp構造をなすダイヤモンド状炭素との比率が厚み方向に進むに連れ徐々に変化していく中間層を介在させている請求項8記載の炭素系多層薄膜。
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