JP2006028412A - 緑藻由来の抗酸化剤 - Google Patents

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聡 田中
Hitoshi Miyasaka
均 宮坂
Kazunobu Ikeda
和宣 池田
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Abstract

【課題】
安全な天然原料から低いコストで大量生産することができかつ優れた抗酸化作用を示す天然由来の抗酸化剤を提供する。
【解決手段】
クラミドモナス属に属する緑藻由来の成分を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。好ましくは、クラミドモナス属に属する緑藻はクラミドモナス属W80株(FERM P−18474であり、前記緑藻由来の成分は前記緑藻の細胞自体又は水、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール及びこれらの混合物からなる群から選択された溶媒を抽出溶媒として前記緑藻細胞から抽出された抽出物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、天然原料から製造される抗酸化剤に関し、より詳細には食品、医薬品、化粧品などでの使用に好適なクラミドモナス属に属する緑藻由来の抗酸化剤に関する。
従来、食品、医薬品、化粧品などに用いられている抗酸化剤としてはブチルヒドロキシアニソール(BHA)やブチルヒドロキシルトルエンに代表される合成抗酸化剤と、アスコルビン酸やトコフェロールに代表される天然抗酸化剤とがある。しかし、合成抗酸化剤は、その安全性に問題を生じる可能性があることから消費者の拒否反応が強く、安全性が高い天然抗酸化剤に対する需要が大きい。
ところが、アスコルビン酸やトコフェロールは、天然原料から抽出するにはコストと手間がかかるため、実際には安価な化学合成品のアスコルビン酸やトコフェロールを用いることが多い。ここで近年、合成の薬品類の安全性の問題がクローズアップされてきたため、消費者の化学合成品の安全性に対する関心が高まってきているという現状がある。
アスコルビン酸、トコフェロール以外の他の天然抗酸化剤としては、例えばノーストック属、ユーグレナ属等に属する微細藻類から抽出された抗酸化剤が知られている(特許文献1)。しかし、この抗酸化剤は実用に供せるほどの優れた抗酸化作用を示さず、未だ商業化されていない。
特開2002−69443号公報
本発明は上述の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、安全な天然原料から低いコストで大量生産することができかつ優れた抗酸化作用を示す抗酸化剤を提供することである。
本発明者はかかる目的を達成するために、クラミドモナス(Chlamydomonas)属に属する緑藻のうちストレス耐性に優れた種由来の成分に高い抗酸化作用をもつ物質が含まれているとの仮定の下に鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。
即ち、本発明はクラミドモナス属に属する緑藻由来の成分を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤である。
本発明の好ましい実施態様によれば、クラミドモナス属に属する緑藻はクラミドモナスW80株(FERM P−18474)である。
本発明の更に好ましい実施態様によれば、クラミドモナス属に属する緑藻由来の成分は、クラミドモナス属に属する緑藻の細胞又は前記細胞の抽出物である。
本発明の特に好ましい実施態様によれば、クラミドモナス属に属する緑藻の細胞抽出物は、水、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール及びこれらの混合物からなる群から選択された溶媒を抽出溶媒として前記細胞から抽出された抽出物である。
本発明の抗酸化剤は、緑藻を単に培養することにより製造できるため低いコストで大量生産することができる。また、本発明の抗酸化剤は、効果の点でも市場で汎用されているアスコルビン酸やBHAに匹敵しうる優れた抗酸化作用を示す。また、本発明の抗酸化剤は化学合成を用いずに緑藻を原料として作られるため、極めて安全性が高く、食用や薬用に供しても全く問題はない。さらに、本発明の抗酸化剤は乾燥状態でも極めて安定しており、優れた保存性を有する。従って、本発明の抗酸化剤は食品、医薬品、化粧品などとして又はこれらの製品への添加物として用いるのに極めて有用である。
本発明の抗酸化剤は、天然物を原料とし、具体的にはクラミドモナス属に属する緑藻を原料とする。クラミドモナスは遺伝学の実験材料としてしばしば用いられる単細胞の緑藻であり、安価に入手することができる。本発明においてはクラミドモナス属に属する緑藻であればいかなる緑藻も原料とすることができるが、特にクラミドモナスW80株を原料とすることが、培養の容易さ及び抗酸化作用の顕著さの観点から好ましい。クラミドモナスW80株は日本国近畿地方の沿岸で採集された海産性のクラミドモナスである。クラミドモナスW80株は特許生物寄託センター[日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)]にFERM P−18474として寄託されている。
本発明の抗酸化剤はクラミドモナス属に属する緑藻細胞により生産されて緑藻細胞中に蓄積される成分であり、例えばクラミドモナスW80株を通常の条件(明所での独立栄養条件)下で培養することにより、藻体細胞中に蓄積される。従って、培養した藻体細胞それ自体を本発明の抗酸化剤の有効成分として使用することができる。または、培養した藻体細胞は乾燥処理した後、あるいは任意の溶媒で抽出した抽出物の形で本発明の抗酸化剤の有効成分として使用することができる。クラミドモナスW80株の培養に用いる培地は、一般的な海産性緑藻を培養する場合に用いられているものであれば特に制限なく、例えば以下の表に示す組成を有するModified Okamoto Medium(MOM)培地を用いることができる。
Figure 2006028412
クラミドモナスW80株の培養は少量であれば例えば700mL容ガラス製扁平フラスコにて、上記表に示す培地を用い、温度25℃、白色蛍光灯(照度約8000lux)で24時間連続照射し、2〜5%の炭酸ガスを含む空気を、ガラス製棉ろ管を用い、約100mL/分で通気することにより行うことができる。培養期間は5〜7日間が適当である。
また、クラミドモナスW80株の大量培養は屋外大型プールで行うことが好適である。屋外での培養の場合、コンタミによる原生動物の繁殖を抑えるため、培地のNaCl濃度を1%以上にすることが望ましい。
屋外大型プールでクラミドモナスW80株を培養する場合、プールとしては例えば直径20m、培養面積314mのコンクリート製の円形プールが用いられる。培養液の攪拌はアーム長10mの攪拌羽(10cm×400cm、1個)により約2回転/分、周辺部の攪拌速度約110m/分の速度で行なえばよい。炭酸ガスの供給は流量15L/分の空気と流量5L/分の100%炭酸ガスの混合気体(炭酸ガス濃度:約25%)を、プールの排水溝付近の最も液深が深い地点(プール底面よりも17cm深い)に設置したエアーストーン(径30mm、長さ3000mm、ポアサイズ20μm、1個)より通気すればよい。培養開始時の培養液の深さは5cm、培養液量17mとする。培養期間は7日程度が望ましい。
屋外大型プールでの培養はクラミドモナスW80株を一度に大量に得ることができるため、本発明の抗酸化剤を低いコストで大量生産する上で極めて有利である。クラミドモナスW80株は海産性の緑藻であるため、塩を含む培地で培養しても問題がなく、この場合、屋外で培養しても原生動物の培地へのコンタミは抑制される。
培養された藻体細胞の回収は、培養終了後、遠心分離等の常法を用いて行えばよい。回収した細胞はそれ自体で、あるいは任意の溶媒による抽出物の形態で本発明の抗酸化剤として用いることができる。回収した細胞それ自体を本発明の抗酸化剤として用いる場合、回収した細胞は死滅させて又は死滅させずにそのまま、又はフリーズドライ、スプレードライ等の乾燥物の形態で用いることができる。本発明の抗酸化剤は藻細胞の乾燥物中でも極めて安定である。
細胞抽出物を本発明の抗酸化剤として用いる場合、抽出に用いる溶媒としては水、水性溶媒、有機溶媒のいずれも用いることができ、具体的には水、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール等又はこれらの混合物を用いることができる。この内、抗酸化作用の顕著さの観点からはメタノール又はエタノールを用いることが好ましい。本発明の抗酸化剤の抽出は、回収した藻体細胞それ自体又は回収した細胞をさらに上述のように乾燥処理した乾燥物を原料として行うことができる。
本発明の抗酸化剤はその安全性を活かして抗酸化作用を有する食品(例、健康食品)、医薬品(例、炎症防止剤)、化粧品(例、美白用化粧品)などの有効成分として、又はこれらの製品中の酸化を受けやすい他の成分(不飽和脂肪酸など)の酸化による変質を防止するための添加物として用いることができる。また、本発明の抗酸化剤は酸及びアルカリの両方に対して比較的安定である。従って、本発明の抗酸化剤は食品や経口投与される医薬品で使用するのに極めて有利である。
本発明の抗酸化剤に使用されるクラミドモナス属に属する緑藻の生産する成分のうち、何が有効成分であるかについては今だ十分明らかになっていない。しかし、本発明の抗酸化天然剤の有効成分はアスコルビン酸活性を有さないので(データは示さず)、代表的な天然抗酸化剤の成分であるアスコルビン酸を含まないことが明らかである。また、本発明の抗酸化剤の有効成分は水溶性ラジカルの消去能と同時に脂質の酸化抑制効果も有する。従って、本発明の抗酸化剤の有効成分は水溶性の抗酸化物質及び脂溶性の抗酸化物質の少なくとも2種の抗酸化物質を含有している可能性がある。
実施例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例の記載は純粋に発明の理解のためのみに挙げるものであり、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
1. DPPH法によるクラミドモナスW80株由来の成分の抗酸化活性の評価
クラミドモナスW80株由来の成分についてDPPH法によりその抗酸化活性を評価した。ここで、DPPH法は、水溶性ラジカルであるDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)ラジカルを消去する能力を測定することにより物質の抗酸化活性を評価する方法であり、特に水溶性の抗酸化剤の活性評価に用いられる方法である。
クラミドモナスW80株由来の成分の測定サンプル
測定サンプルとしてクラミドモナスW80株の生藻体、フリーズドライ物、スプレードライ物及びメタノール抽出物を用いた。生藻体、フリーズドライ物及びスプレードライ物については、これらからの抽出液をさらに調製して測定サンプルとした。また、メタノール抽出物については、抽出物固体再溶解液をさらに調製して測定サンプルとした。各サンプルの調製手順は以下の通りであった。
(1)生藻体抽出液(100mg−fw/mL)
培養したクラミドモナスW80株500mLを遠沈ボトルに取り、4℃、3000rpmで5分間遠心分離した。上澄みをデカンテーションで捨て、薬サジで沈殿ペレットを1g、50mLディスポ遠沈管へ分取した。これに蒸留水10mLを加え、沈殿が無いように十分攪拌した。タイテック社ソニケーター(出力300W)を用い、氷上で出力3/10 30%間欠で5分間ソニケーション処理を行った。その後、4℃、3000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを孔径0.45μm、0.2μmのカートリッジフィルターでろ過し、ろ液を抽出液とした。
抗酸化活性測定時には、抽出液を抽出溶媒でさらに1/10希釈(10mg−fw/mL)したものを測定サンプルとして試験に供した。
(2)フリーズドライ藻体抽出液及びスプレードライ藻体抽出液(20mg−dw/mL)
クラミドモナスW80株培養物からドラバル型遠心分離器Y−250(斉藤遠心機工業製)を用いて細胞を回収(条件:約25℃、5000rpm、5000×g、滞留時間約5〜60秒:初期と終期の差が大きい)し、井戸水で細胞を洗浄した後、蒸留水を加えて約110g/L蒸留水の濃縮液とした。
フリーズドライの場合、濃縮液を続いて日本ドライフーズ社製凍結乾燥機又は東京理科製の凍結乾燥機(FD−81)で凍結乾燥した。処理時間は前者の場合、25時間であり、後者の場合48時間であった。凍結乾燥の温度条件はトラップ温度 −80℃、チャンバー圧力 0.4〜1Paであった。
スプレードライの場合、濃縮液を続いてニロスプレイドライヤー(機種:AS0340D、ニロ社製)により熱風噴霧乾燥した。温度条件は排風温度120℃、熱処理時間約3秒であった。
成分分析の結果、クラミドモナスW80株の含水率は80%であったので、得られたフリーズドライ物又はスプレードライ物0.2gに蒸留水10mlを加え、(1)と同様の手順で抽出液を調製した。
抗酸化活性測定時には、抽出液を抽出溶媒でさらに1/10希釈(2mg−dw/mL)したものを測定サンプルとして試験に供した。
(3)抽出物固体再溶解液(0.05mg/mL)
(2)と同種の手順でクラミドモナスW80株培養物から細胞を回収し、濃縮後、乾燥処理して乾燥藻体を得た。
藻体0.2gに溶媒としてのメタノール10mLを加えて50mL容遠心チューブへ収容し、氷冷しながらソニケーター(タイテック社製)で出力3、30%間欠で5分間破砕処理を行った。4℃、12000rpmで5分間遠心分離し、上澄みをφ0.2μmのメンブレンフィルターでろ過した後、エバポレーター用のナス型フラスコに収容し、20℃の加温条件下でロータリーエバポレーターによる濃縮・乾固処理を行ない、抽出物個体を得た。収量は乾燥藻体の15%程度であった。得られた抽出物固体には99.9%エタノールを0.05mg/mlとなるように加え、再溶解液を調製した。
抽出物固体と元の藻体の量的関係は以下のようになる。
抽出物固体 1g → 乾燥藻体 約6.6g−dw → 生藻体 約33g−fw
比較のため、天然の代表的な抗酸化剤であるアスコルビン酸(化学合成品、50μg/mL)及び合成の代表的な抗酸化剤であるBHA(50mM)を準備した。
抗酸化活性の測定
試験管を用いて試薬を下記のように混合し、室温、暗所で30分間インキュベートした。その後、分光光度計で520nmでの吸光度を測定した。
測定サンプル 2mL
0.5M酢酸緩衝液 0.4mL
99.9% EtOH 1.6mL
0.5mM DPPH−EtOH 1mL
計 5mL
測定サンプルを含む試薬の520nmでの吸光度(OD520)及び測定サンプルを含まないコントロールの試薬の520nmでの吸光度から以下の式に従い、抗酸化活性の一つの指標であるラジカル消去率を求めた。
ラジカル消去率(%)={1−(測定サンプルのOD520÷コントロールのOD520)}×100
さらに、以下の式に従い、IC50を求めた。
IC50=x*50/y[mg/ml]
ただし、xは抗酸化剤溶液(測定サンプル)の濃度(mg/ml)であり、yはラジカル消去率(%)である。
IC50は50%ラジカル消去率濃度として定義され、本実施例の場合、100μMのDPPHラジカル(OD520で定量する)溶液のうち50μMを消去できる抗酸化剤濃度を意味する。この値が小さいほど、少ない量でラジカルを消去できるため、優れた抗酸化剤であるといえる。IC50を算出することにより、DPPHに加える抗酸化剤(測定サンプル)の濃度が異なっていても抗酸化活性の比較が可能となる。
抗酸化活性の測定結果を図1に示す。図1では、参考例として特開2002−69443号公報(特許文献1)の実施例(試験例1)で測定された藻類のうち、五つの藻類のIC50値も並記している。特開2002−69443号公報の[0028][表2]には製造例1と製造例2の二つのデータが示されているが、図1にはIC50値が小さい製造例2のデータを示した。なお、特開2002−69443号公報のDPPH法では初期DPPH濃度が125μM(本実施例は100μM)であり、このままでは比較できないので、特開2002−69443号公報で示されているIC50値に100/125を乗じたものを図1に示した。
特開2002−69443号公報の実施例では抽出物固体の濃度が明記されていないが、IC50を用いる場合、上述の通り抽出物固体の濃度が異なっても比較が可能である。
図1から明らかな通り、アスコルビン酸は優れた抗酸化活性(小さいIC50値)を示す。一方、BHAは脂溶性であるため、DPPH法では劣った抗酸化活性(大きいIC50値)を示す。本発明の抗酸化剤は0.22〜30.5までの様々なIC50値を示す。参考例の抗酸化剤は1.9〜16.0までの様々なIC50値を示す。
本実施例で比較として用いたアスコルビン酸は化学合成された純物質であるのに対し、本実施例の抗酸化剤(藻体粗抽出物)は藻体細胞によって生産される様々な化合物の混合物である。このような天然抗酸化剤は通常、合成抗酸化剤と比べて抗酸化作用が大きく劣るが、本発明の抗酸化剤は合成抗酸化剤と比べて1/8程度の抗酸化作用を有し(最も抗酸化作用が優れる抽出物固体再溶解液のIC50値とアスコルビン酸のIC50値との比較)、既知の藻体抽出物の合成抗酸化剤と比べた抗酸化作用の比率である1/70(参考例のうち、最も抗酸化作用が優れるN.flagelliformeエキスとアスコルビン酸との比較)を大きく上回る。従って、本実施例で測定サンプルとして用いた藻体粗抽出物中に含まれる抗酸化成分を単離することにより、アスコルビン酸に匹敵もしくは上回る抗酸化物質を得ることも可能である。
また、図1から藻体の後処理の種類により抗酸化活性はかなり変動することがわかる。最も抗酸化活性が優れているのは抽出物固体再溶解液であり、次いでフリーズドライ藻体抽出液、スプレードライ藻体抽出液であり、生藻体抽出液は他の後処理と比べて抗酸化活性がかなり劣っていた。
2. 抽出溶媒の種類の抗酸化活性に対する影響
抽出溶媒の種類が本発明の抗酸化剤に対してどのような影響を与えるか知るため、水、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン及びメタノールの五つの種類の溶媒を用いて1.(3)と同様の手順で本発明の抗酸化剤を抽出して測定サンプルを調製し、抗酸化活性を測定した。測定結果を図2に示す。なお、図2では比較するサンプルの濃度が同一であるので、IC50ではなくラジカル消去率の値を示してある。ラジカル消去率の場合、IC50とは反対に値が大きいほど抗酸化活性が優れる。
図2に示す通り、メタノールを抽出溶媒として用いたものが他の溶媒を抽出溶媒として用いたものより明らかに高い抗酸化活性を示した。従って、抽出溶媒としてはメタノール(又はエタノール)を用いることが好適であるといえる。
3. 酸、アルカリ処理の抗酸化活性に対する影響
酸、アルカリ処理が本発明の抗酸化剤にどのような影響を与えるかを知るため、塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液で抽出液のpHを約3又は約9.6にそれぞれ調整して2時間処理し、再びpHを中性に戻してから1.と同様の手順で抗酸化活性(ラジカル消去率)を測定した。抽出液としては1.(3)の手順で調製したメタノール抽出物固体再溶解液を用いた(濃度2mg−dw/mL及び1mg−dw/mL)。測定結果を図3に示す。
図3から明らかな通り、酸処理を行ったサンプル、アルカリ処理を行ったサンプルのいずれも抗酸化活性は処理前の70%程度に減少した(30%しか減少しなかった)。従って、本発明の抗酸化剤は食品等として経口摂取されて消化液と接触した場合でも、ある程度の活性が保持されるといえる。これに対し、アスコルビン酸は酸性条件下では比較的安定であるが、アルカリ性条件下では容易に酸化されることが知られている。従って、アルカリに対する耐性の点で本発明の抗酸化剤はアスコルビン酸に対して特に優れているといえる。
4.βカロチン退色法によるクラミドモナスW80株由来の成分の抗酸化活性の評価
クラミドモナスW80株由来の成分についてβカロチン退色法によりその抗酸化活性を評価した。ここで、βカロチン退色法は、リノール酸の自動酸化に伴い生じるリノール酸過酸化物が、βカロテンの二重結合と反応することによって、βカロテンの色が消失することを利用する、簡便な抗酸化性測定法であり、脂質に対する抗酸化活性を反映する手法である。βカロチン退色法の具体的な手順は以下の通りである。
(1)試薬の調製

まず、以下の試薬を調製した。
リノール酸溶液
1gのリノール酸をクロロホルムに溶解して10mLとする。
βカロチン溶液
10mgのβカロチンをクロロホルムに溶解して10mLとする。
Tween40溶液
2gのTween40をクロロホルムに溶解して10mLとする。
リン酸緩衝液
50mLの0.2mol/L KHPOに2mol/LのNaOHを滴下することにより、pHを6.8に調整した後、蒸留水で100mLにメスアップする。

次に、これらの試薬を用いて以下の手順でリノール酸+βカロチンエマルジョンを作成した。
100mLの三角フラスコにリノール酸溶液0.1mL、βカロチン溶液0.25mL、Tween40溶液0.5mLをとり、このフラスコにNガスを吹き込みクロロホルムを完全に飛ばした後、45mLの蒸留水を加えて溶解する。
次にこの溶液に5mLのリン酸緩衝液を加える。

(2)抗酸化活性の測定
試験管に測定するサンプルを100μL採取する。
次いで、4.9mLのリノール酸+βカロチンエマルジョンをピペットで勢いよく加える。
リノール酸+βカロチンエマルジョンを添加後、直ちにOD470nmを計測し、素早く試験管にサンプルを戻し、50℃の浴槽で10分間加温する。
10分ごとに吸光度の減少を測定する。
以下の式に従って酸化抑制率を求め、抗酸化活性の指標とした。

酸化抑制率(%)={1−(A−C)/(B−D)}*100
ただし、A:抗酸化物質添加サンプル中のβカロチンの初期吸光度
B:コントロール中のβカロチンの初期吸光度
C:抗酸化物質添加サンプル中のβカロチンの120分後の吸光度
D:コントロール中のβカロチンの120分後の吸光度
サンプルとして1.(3)の手順で調製したメタノール抽出物固体再溶解液を用いた(濃度500μg−dw/mL及び20mg−dw/mL)。また、コントロールとして蒸留水を用いた。測定結果を図4に示す。
図4から明らかな通り、酸化抑制率でみると水溶性のアスコルビン酸は負の酸化抑制率を示し、脂質の自動酸化をむしろ促進している。これに対し、本発明の抗酸化剤は合成の抗酸化剤であるBHA同様高い正の酸化抑制率を示し、脂質の酸化を抑制している。つまり、本発明の抗酸化剤は水溶性ラジカルの消去能(図1参照)と同時に脂質の酸化抑制効果も示す。従って、本発明の抗酸化剤は水溶性及び脂溶性の少なくとも2種の抗酸化物質を含有している可能性があるといえる。
5. 抽出物の分画のDPPH測定
本発明の抗酸化剤の有効成分が何であるかを調べるため、1.(3)で作成した抽出物固体を酸性・中性・アルカリ性条件下、水/酢酸エチル系で溶媒転溶し、それぞれの分画成分について1.と同様の手順でDPPHラジカル消去能を測定した。同様にGPCによる分子量分画を行い、各分画のラジカル消去能を測定した。測定結果を図5に示す。
図5から明らかな通り、抽出物固体の抗酸化活性はアルカリ性の分画でもっとも高かった。しかし、酸性及び中性の分画の抗酸化活性もかなり高いため、本発明の抗酸化剤は複数の抗酸化活性成分を含む可能性がある。また、GPC分画の結果から、本発明の抗酸化剤の抗酸化成分は低分子の物質であると考えられる。
6.考察
以下の実施例から以下のことがわかる:
(1)本発明の抗酸化剤は水溶性の抗酸化活性と脂溶性の抗酸化活性の両方の活性を示す。それぞれの抗酸化活性は公知の抗酸化剤であるアスコルビン酸及びBHAの抗酸化活性に匹敵しうる。
(2)本発明の抗酸化剤の調製方法としては、藻体細胞からメタノール(又はエタノール)を抽出溶媒として抽出する方法が、抗酸化活性の高さの点から最も好ましい。
(3)本発明の抗酸化剤は酸、アルカリに対して比較的強い。この性質は、食品等の経口摂取される用途において極めて有用である。
(4)本発明の抗酸化剤は低分子の複数の抗酸化活性の成分の混合物であると考えられる。
DPPH法によるクラミドモナスW80株由来の成分の抗酸化活性の評価を示す。 抽出溶媒の種類の抗酸化活性に対する影響を示す。 酸、アルカリ処理の抗酸化活性に対する影響を示す。 βカロチン退色法によるクラミドモナスW80株由来の成分の抗酸化活性の評価を示す。 抽出物の分画のDPPH測定を示す。

Claims (4)

  1. クラミドモナス属に属する緑藻由来の成分を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
  2. クラミドモナス属に属する緑藻が、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)であることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
  3. クラミドモナス属に属する緑藻由来の成分が、クラミドモナス属に属する緑藻の細胞又は前記細胞の抽出物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗酸化剤。
  4. クラミドモナス属に属する緑藻の細胞抽出物が、水、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール及びこれらの混合物からなる群から選択された溶媒を抽出溶媒として前記細胞から抽出された抽出物であることを特徴とする請求項3に記載の抗酸化剤。
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