発明の詳細な説明
(関連出願)
本出願は、米国仮特許出願第60/303,680号の優先権の利益によるものであり、これは出典明示に本発明に含まれる。
(発明の分野)
本発明は、切断アグレカナーゼ(アグレカンase)分子、その産生方法およびそれらの分子を用いてアグレカナーゼ酵素に対する阻害剤を開発する方法の知見に関する。本発明はさらに、アグレカナーゼ酵素の阻害剤ならびにそれに対する抗体の開発に関する。これらの阻害剤および抗体は、骨関節症を含む種々のアグレカナーゼ関連症状の治療に有用であり得る。
(発明の背景)
アグレカンは、関節軟骨の主要な細胞外成分である。それは、軟骨に圧縮性および弾力性というその機能特性を付与する原因たるプロテオグリカンである。アグレカンの喪失は、関節疾患、例えば骨関節症における関節軟骨の崩壊に関与している。
骨関節症は、少なくとも三千万人のアメリカ人に影響を及ぼしている衰弱性の疾患である(MacLean et al., J Rheumatol 25:2213-8 (1998))。骨関節症は、関節軟骨の崩壊および結果的に生じる慢性痛のために生活の質をかなり低下させ得る。骨関節症のプロセスの初期の、そして重要な特徴は、細胞外マトリックスからのアグレカンの喪失である(Brandt and Mankin, 骨関節炎の病因(Pathogenesis of Osteoarthritis), in Textbook of Rheumatology, WB Saunders Company, Philadelphia, PA, at 1355-1373 (1993))。アグレカンの大部分のシュガー含有部分がそれにより細胞外マトリックスから喪失され、軟骨の生物力学な特徴の欠損を生じる。
「アグレカナーゼ」と呼ばれるタンパク質分解活性は、骨関節症および炎症性関節疾患に伴う軟骨崩壊において役割を有するアグレカンの切断の原因であると考えられている。ヒト骨関節症軟骨におけるアグレカンのデグラデーションの原因である酵素を同定するための研究が行われてきた。アグレカンは、タンパク質分解感受性球間ドメインにより分離される、2つのN末端球内ドメイン、G1およびG2、次にグリコサミノグリカン結合領域およびC末端球内ドメインを含む。少なくとも2つの酵素切断部位が、アグレカンの球内ドメイン内に同定されている。アグレカンのドメイン(Asn341−Phe342)内の1つの酵素切断部位が、いくつかの公知のメタロプロテアーゼにより切断されることが認められている。Flannery et al., J Biol Chem 267:1008-14 (1992); Fosang et al., Biochemical J. 304:347-351 (1994)。IL−1誘発軟骨アグレカン切断による、アグレカン(Glu373−Ala374)内の第2のアグレカン切断部位での切断により、ヒト滑液において見られるアグレカンフラグメントの形成が生じる(Sandy et al., J Clin Invest 69:1512-1516 (1992);Lohmander et al., Arthritis Rheum 36:1214-1222 (1993); Sandy et al., J Biol Chem 266: 8683-8685 (1991))。(Glu373−Ala374)でのアグレカン切断は、アグレカナーゼ活性に起因している(Sandy et al., J Clin Invest 69:1512-1516 (1992))。このGlu373−Ala374切断部位は、アグレカナーゼ切断部位とも称されるだろう。
近年、IL−1により刺激された軟骨により合成され、(Glu373−Ala374)部位でアグレカンを切断する「トロンボスポンジンタイプ1モチーフを有するディスインテグリン−様およびメタロプロテアーゼ」(ADAMTS)ファミリー内の2つの酵素、アグレカナーゼ−1(ADAMTS4)およびアグレカナーゼ−2(ADAMTS−11)の同一性が同定された(Tortorella et al., Science 284:1664-6 (1999); Abbaszade et al., J Biol Chem 274: 23443-23450 (1999))。アグレカナーゼ−1は、少なくとも6つのドメイン:シグナル;プロペプチド;触媒ドメイン;ディスインテグリン;TSP型−1モチーフおよびC−末端を含むことが報告されている。また、アグレカナーゼ−2も多ドメインタンパク質である。これは、シグナル配列;プロドメイン;メタロプロテイナーゼドメイン;ディスインテグリンドメインおよびタンパク質のC末端におけるTSPモチーフとTSPサブモチーフ間のスペーサードメインを有することが報告されている。一般的には、TSPドメインおよびスペーサードメインは、基質認識に重要であると考えられていた。特に、Tortorella et alは、「この領域は、アグレカン基質のグリコサミノグリカンにアグレカナーゼ−1を結合させるように作用し得る」と報告している。Tortorella et al., Science 284:1664-6 (1999)を参照のこと。
Glu373−Ala374結合でアグレカンを切断することができ、骨関節症におけるアグレカン切断に寄与し得る、ADAMTSファミリーの他の関連する酵素が存在することが予想される。これらの酵素が骨関節症のヒトの関節軟骨により合成されうる可能性がある。しかしながら、アグレカナーゼは、それらの分子の安定性が乏しく、一般的に発現レベルも低いために、大量に単離し、精製することが困難であったので、アグレカン切断に関与する疾患の治療のための阻害剤および治療方法の開発が困難であった。したがって、病状におけるそれらの役割を調査するために、新規形態のアグレカナーゼを同定し、さらに、大量のアグレカナーゼタンパク質を単離し、精製する方法を開発すること、また、アグレカン切断に関連する疾患を治療するための治療方法および組成物を開発する必要がある。
(発明の概要)
本発明は、切断アグレカナーゼタンパク質およびその変異体およびフラグメント;本発明の切断アグレカナーゼ酵素およびそのフラグメントおよび変異体をコードするヌクレオチド配列;および切断アグレカナーゼの産生方法に関する。本発明の切断アグレカナーゼは、生物学的に活性であり、それらの全長対応物よりも、より大きな安定性およびより高い発現レベルを有する。より特別には、本発明は、それぞれ全長アグレカナーゼ−1およびアグレカナーゼ−2酵素よりもより安定であり、高い発現レベルを示す、切断アグレカナーゼ−1およびアグレカナーゼ−2酵素;本発明の切断アグレカナーゼ−1および2ならびにそのフラグメントおよび変異体をコードする核酸配列;切断アグレカナーゼ1および2またはそのフラグメントおよび変異体の産生方法、を特徴とする。
一の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼは、少なくとも1つの削除されたTSPドメインを有するアグレカナーゼを含む。他の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼは、削除された少なくとも2つのTSPドメインを有するアグレカナーゼを含む。アグレカナーゼ中のTSPドメインは、基質認識に、したがって、アグレカナーゼを認識し、ついでアグレカンを切断する能力に関して重要であると考えられているが、本発明の切断アグレカナーゼタンパク質は、タンパク質の1つまたは両方のTSPドメインを削除したにもかかわらず、生物学的に活性である。
本発明の切断アグレカナーゼは、全長アグレカナーゼタンパク質と比較して、より大きな安定性を有し、より高いレベルで発現するので、本発明のアグレカナーゼの単離、精製および疾患の治療用の阻害剤および治療剤の開発における使用を容易にする。したがって、一の具体例において、本発明は、治療用の阻害剤および治療剤の開発に用いることができる、大量の精製切断アグレカナーゼを産生する方法を含む。
さらに、本発明は、本発明の切断アグレカナーゼを含む組成物、および骨関節症を含む疾患の治療用のアグレカナーゼの阻害剤の開発におけるかかる組成物の使用を含む。加えて、本発明は、酵素活性を遮断する、アグレカナーゼの阻害剤の同定および開発方法を含む。また、本発明は、これらの酵素に対する抗体を含み、一の具体例において、例えば、アグレカナーゼ活性を遮断する抗体を含む。これらの阻害剤および抗体は、関節軟骨の劣化により特徴付けられる症状の治療用の種々のアッセイおよび治療剤において用いることができる。一の具体例において、阻害剤は、アグレカナーゼに結合するペプチド分子である。
本発明は、全長アグレカナーゼタンパク質と比較してより大きな安定性を有する、生物学的に活性な切断アグレカナーゼ分子のアミノ酸配列を提供する。
一の態様において、本発明は、少なくとも1つの削除されたTSPドメイン、例えば、配列番号4のアミノ酸配列アミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#753(Glu);配列番号6のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#752(Pro);および配列番号8のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#628(Phe)ならびに置換変異体を含むその変異体およびフラグメントを有する、アグレカナーゼ活性を示すタンパク質を有する、生物学的に活性な切断アグレカナーゼ−2分子を特徴とする。
また、本発明は、少なくとも1つの削除されたTSPドメイン;例えば、配列番号13のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#520(Ala)のアミノ酸配列;そのフラグメントおよび置換変異体を含む変異体を有する、アグレカナーゼ活性を示すアグレカナーゼ−1タンパク質を有する、切断アグレカナーゼ−1分子を特徴とする。
別の具体例において、本発明は、配列番号10(図10)のアミノ酸#1〜アミ酸#527(His)のアミノ酸配列、その置換変異体を含む変異体およびフラグメントを有する、アグレカナーゼ活性を示すタンパク質を含む、少なくとも2つの削除されたTSPドメインを有する、生物学的に活性な切断アグレカナーゼ−2タンパク質を特徴とする。
1つまたは両方の削除されたTSPドメインを有する切断アグレカナーゼは生物学的に活性であり、全長アグレカナーゼ酵素よりもより安定である。
また、本発明は、本発明の切断アグレカナーゼをコードする核酸分子を特徴とする。例えば、本発明の切断アグレカナーゼ−2分子をコードする核酸分子は:配列番号4に示されるポリペプチドをコードする配列番号3(図3)のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2259(gaa);配列番号6に示されるポリペプチドをコードする配列番号5(図5)のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct);配列番号8に示されるポリペプチドをコードする配列番号7(図7)のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1884(ttt);および配列番号10に示されるポリペプチドをコードする配列番号9(図9)のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat)を含む。さらに、本発明の核酸分子は、本発明の切断アグレカナーゼ−2分子、穏やかからストリンジェントな条件下で、配列番号3、5、7または9のヌクレオチド配列およびそのフラグメントまたは変異体、本明細書に開示される核酸配列をコードするアグレカナーゼ−2の天然に生じる対立遺伝子配列および同等の縮重コドン配列をコードする、配列番号3、5、7および9のフラグメントおよび変異体にハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列を含む。
本発明の切断アグレカナーゼ−1分子をコードする核酸分子は、例えば、配列番号12および13のポリペプチドをコードするヌクレオチド;それぞれ、図23および24に示されるヌクレオチド、本発明の切断アグレカナーゼ−1分子をコードする核酸のフラグメントおよび変異体、本発明の切断アグレカナーゼ−1分子、例えば、図23および24の核酸配列、またはそのフラグメントおよび変異体、核酸配列をコードするアグレカナーゼ−1の天然に生じる対立遺伝子配列および同等の縮重コドン配列をコードする核酸配列に、穏やかからストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする、ヌクレオチド配列を含む。全長アグレカナーゼ−1分子の核酸配列は、Genbankに受託番号NM_005099で存在する(図22)。したがって、当業者は、この配列を用いて、配列番号11に示される全長アグレカナーゼ−1分子を産生することができ、あるいは、ヌクレオチド配列の一部を用いて、切断タンパク質、例えば、図12または13に示されるアグレカナーゼタンパク質を産生することができる。例えば、公開されているNM_005099配列(図23)(配列番号32)のヌクレオチド#407〜ヌクレオチド#2132を、配列番号12の切断アグレカナーゼ−1タンパク質を産生するのに用いることができる。同様に、公開されているNM_005099配列(図24)(配列番号33)のヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#1967を、図13の切断アグレカナーゼ分子の産生に用いることができる。
他の態様において、本発明は、それらの全長対応物と比較して、切断アグレカナーゼ分子の安定性および発現レベルを増加させる変異体を含む、アグレカナーゼ分子を含む。それらの活性部位に変異を有するアグレカナーゼは、特に、アグレカナーゼ阻害剤の合成に有用である。したがって、一の具体例において、本発明は、触媒ドメイン内の活性部位のアミノ酸411(E411−Q411変異)に変異を有する、アグレカナーゼ−2分子を特徴とする。E411−Q411変異を有するアグレカナーゼ−2分子のアミノ酸配列を図21(配列番号30)に示す。野生型の対応物と比較して、アグレカナーゼタンパク質の安定性を増加させる変異は、切断および全長アグレカナーゼタンパク質の両方に形成され得る。アグレカナーゼ分子の安定性を変更する変異は、アグレカナーゼタンパク質の触媒ドメイン内または触媒ドメイン外に生じうることが考えられる。かかる変異が生じるアグレカナーゼタンパク質は天然に見ることができるか、あるいは人工的に製造することができる。当業者は、変異のアグレカナーゼ分子の安定性に対する影響を、所定の多くの方法の1つで試験することができる。本発明の変異は、例えば、アミノ酸置換または修飾を含む。本発明のアグレカナーゼにおけるアミノ酸変異は、突然変異誘発、化学変換またはポリペプチドの産生に用いられるDNA配列の変更により生じさせることができる。
また、アグレカナーゼ−1分子は、それらの安定性を増加させるために、その触媒ドメインに変異を含むように産生される。例えば、図17は、配列番号12および13に示される、切断アグレカナーゼ−1分子、野生型配列の触媒ドメインにおけるEからQへのアミノ酸変異を含み、それにより、配列番号11に示される全長野生型アグレカナーゼ−1タンパク質と比較して、アグレカナーゼ−1タンパク質の安定性が増加した、フラッグ−タグ化切断アグレカナーゼ−1タンパク質を特徴とする。これらのアグレカナーゼは、特に、新規アグレカナーゼの阻害剤を開発ならびに同定するのに有用である。
さらに、本発明は、削除および/または置換変異(ここに、削除またはアミノ酸置換変異は、本発明のアグレカナーゼのものと一致するタンパク質の領域で生じる)を有する、切断および/または変異アグレカナーゼファミリーメンバーおよびアグレカナーゼ−様タンパク質を特徴とする。
さらに、本発明は、生物学的に活性な切断アグレカナーゼポリペプチドをコードする、本発明に記載の核酸配列の変異体および同等の縮重コドン配列を含む。加えて、本発明は、本発明の核酸、対立遺伝子変異体ならびに本明細書に記載の核酸分子の置換および削除変異体に、穏やかからストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする、核酸分子を含む。一の具体例において、本発明の核酸分子によりコードされる、少なくとも1つのアミノ酸置換が生じる、切断アグレカナーゼおよび/またはアグレカナーゼは、対応する全長アグレカナーゼタンパク質よりもより安定であり、全長アグレカナーゼタンパク質よりも高いレベルで発現することができる。一の具体例において、変異は、変異を起こす核酸によりコードされるタンパク質における変異、例えばアミノ酸置換を誘発する、本発明のアグレカナーゼをコードする核酸分子により誘発される。かかる変異の一の例としては、分子の活性部位でのEからQへの変異を有するアグレカナーゼ−2タンパク質をコードする核酸配列が挙げられる。他の具体例において、本発明は、その触媒ドメインにEからQへの変異を含むアグレカナーゼ−1タンパク質をコードする、アグレカナーゼ−1核酸分子を含み、したがって、全長アグレカナーゼ1および2と比較して、より安定で、より長い半減期を有し、高レベルで発現する分子の産生を誘発する。
他の種は、本明細書に記載のヒトアグレカナーゼ酵素と類似しているか、または同一であるDNA配列を有することが期待される。したがって、さらに、本発明は、ヒトまたは非ヒト種からの、切断アグレカナーゼまたはアグレカナーゼ−様分子またはこれらの生物学的活性を変更するアミノ酸置換を有するアグレカナーゼをコードする他の核酸分子を得る方法を含む。一の具体例において、本発明のアグレカナーゼをコードする核酸配列を単離する方法は、本明細書に開示した核酸配列またはその変異体もしくはフラグメント;例えば、配列番号1またはそのフラグメントもしくは変異体;配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体;配列番号5またはそのフラグメントもしくは変異体;配列番号7またはそのフラグメントもしくは変異体;配列番号9またはそのフラグメントもしくは変異体、配列番号31またはそのフラグメントもしくは変異体;配列番号32またはそのフラグメントもしくは変異体;あるいは配列番号33またはそのフラグメントもしくは変異体を利用して、アグレカナーゼ活性を有するタンパク質/ペプチドをコードする遺伝子の別の種またはコーディング領域からの、対応する遺伝子に対するスクリーニングライブラリーのためのプローブを設計することを含む。したがって、本発明は、ヒトアグレカナーゼ配列またはそのフラグメントもしくは変異体に均質化し、本発明に記載のDNA配列の少なくとも1つを用いて得ることができる、他の種からのDNA配列を含む。加えて、本発明は、本発明のアグレカナーゼのフラグメントまたは変異体をコードするDNA配列を含む。また、本発明は、アグレカナーゼタンパク質の機能的フラグメントおよびかかる機能的フラグメントをコードするDNA配列ならびに他の関連タンパク質の機能的フラグメントを含む。かかるフラグメントの機能する能力は、アグレカナーゼタンパク質のアッセイに関して記載されている多くの生物学的アッセイの1つでタンパク質をアッセイすることにより測定する。
別の態様において、本発明は、本発明の単離切断アグレカナーゼの産生方法を提供する。一の具体例において、本発明のヒトアグレカナーゼタンパク質またはその変異体もしくはフラグメントは、例えば、DNA配列:配列番号3に示されるヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#2259;図5に示されるヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#2256;または図7に示されるヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#1884;または図9に示されるヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#1701で形質転換した細胞を培養し、図4のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#753(Glu);図6のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#752(Pro);図8のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#628(Phe);または図10のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#567(His)に示されるアミノ酸配列により特徴付けられる、アグレカナーゼ−2タンパク質を、培地から回収し、精製することにより、産生することができる。同様に、切断アグレカナーゼ−1分子を発現する核酸配列;例えば、図23および24に示される核酸配列は、図12および13に示される切断アグレカナーゼ−1タンパク質を産生するのに用いることができ、ここにアグレカナーゼ−1タンパク質が、実施的に、同時に産生される他のタンパク様物質と分離している。
別の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼタンパク質は、全長DNA配列でアグレカナーゼに関して形質転換した細胞を培養し、培地から切断アグレカナーゼタンパク質を回収することにより産生することができる。したがって、一の具体例において、配列番号4に示されるアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#753(Glu)を含む、切断アグレカナーゼ−2タンパク質は、全長核酸分子で、アグレカナーゼ−2に関して形質転換した細胞;例えば、配列番号1に示される核酸分子の培地から回収される。別の具体例において、アミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#752(Pro)を含む、切断アグレカナーゼ−2分子は、核酸分子で、全長アグレカナーゼ−2に関して形質転換した細胞の培地から回収される。配列番号4の切断アグレカナーゼタンパク質は、配列番号2に示される全長アグレカナーゼタンパク質を、E753−G754で切断して、55kDaタンパク質を得ることにより得られる。全長アグレカナーゼ−2分子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1および配列番号2に示す(受託番号:NM_007038およびNP_008969)(図1A−1Cおよび2)。
培地から精製された本発明の切断アグレカナーゼは、実施的に他のタンパク様物質から分離している。少なくとも1つの削除されたTSPドメインを有する、回収された精製アグレカナーゼタンパク質は、一般的には、開示のように、アグレカンを切断することによるタンパク質分解アグレカナーゼ活性を示す。したがって、さらに、切断本発明のタンパク質は、アグレカン分解可能分子の存在を測定するアッセイにおいて、アグレカンタンパク質分解活性を示す能力により特徴付けられ得る。これらのアッセイまたはその開発は、当業者に公知のものである。かかるアッセイは、アグレカン基質を切断アグレカナーゼ分子と接触させ、アグレカンフラグメントの産生を測定することを含む(例えば、Hughes et al., Biochem J 305: 799-804 (1995); Mercuri et al., J. Bio Chem. 274:32387-32395 (1999)を参照のこと)。さらに、哺乳類細胞における産生に関して、本発明の切断アグレカナーゼの発現に用いられるDNA配列は、適当なプロペプチド5’をコードし、アグレカナーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列にフレームで結合する、DNA配列を含む。
また、本発明は、本発明の単離アグレカナーゼタンパク質に結合する抗体を提供する。一の具体例において、かかる抗体は、アグレカナーゼ活性を減少させるか、阻害するか、あるいはそれに拮抗する。さらに、本発明は、切断アグレカナーゼタンパク質を、例えば、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12または配列番号13から選択されるアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくは変異体と一緒に用いることを含む、アグレカナーゼ活性の阻害剤の開発および同定方法を提供する。一の具体例において、アグレカナーゼ活性の阻害剤は、アグレカンの切断を防止する。
加えて、本発明は、アグレカナーゼのタンパク質分解活性を阻害するための医薬組成物であって、少なくとも1つの本明細書に記載の抗体および少なくとも1つの医薬担体を含有する組成物を提供する。また、本発明は、哺乳類におけるアグレカナーゼ活性を阻害する方法であって、該哺乳類に、アグレカナーゼ活性を阻害するのに有効な量の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
別の具体例において、本発明は、アグレカナーゼの阻害剤の同定または開発方法およびそれにより産生された阻害剤を含む。一の具体例において、本発明の阻害剤は、アグレカナーゼがアグレカン分子に結合することを防止する。別の具体例において、本発明の阻害剤は、アグレカンのアグレカナーゼによる切断を防止する。
該方法は、少なくとも1つの本発明のアグレカナーゼタンパク質を、少なくとも1つの試験試料と組み合わせ;試験試料が、アグレカナーゼタンパク質の活性を阻害するかどうかを測定することを含むアッセイに基づく阻害剤の同定を必要とし得る。試験試料は、公知のまたは知られていない試料を含んでいてもよく、これらの試料は、ペプチド、タンパク質、化合物(しばしば、小分子とも称される)または抗体であってもよい。これらは、別個の、また例えばライブラリーからのバッチでの試験のために選択することができる。該技術は、かかる方法において容易に利用することができるアグレカナーゼ活性アッセイを提供する。阻害剤のアッセイは、アグレカンおよび阻害剤の混合物を、アグレカナーゼ分子と接触させ、ついで、アグレカナーゼ阻害剤を測定すること;例えば、アグレカナーゼ−感受性部位での切断により産生されるアグレカンフラグメントの検出および測定を含んでいてもよい。
また、該方法は、アグレカナーゼのアミノ酸配列の少なくとも1つに基づく結合部位、およびアグレカナーゼおよび所望によりアグレカンの三次元構造の測定を必要とする。この情報、例えば結合部位との推定構造相互作用に基づいて、構造分析に基づいてアグレカナーゼ活性を阻害することができる候補分子を開発または同定することができる。一の具体例において、かかる分子は、ペプチド、タンパク質、化合物または抗体を含みうる。候補分子は、議論したように、アグレカナーゼ酵素の実際の阻害剤活性に関してアッセイされた後者であってもよい。
したがって、本発明の他の具体例において、医薬上許容されるビヒクル中に治療的に有効な量のアグレカナーゼ阻害剤を含有する医薬組成物を提供する。
軟骨におけるアグレカナーゼ−介在アグレカン分解は、骨関節症および他の炎症性疾患に関与している。したがって、本発明のこれらの組成物は、アグレカンの分解および/またはアグレカナーゼのアップレギュレーションにより特徴付けられる疾患の治療において有用であり得る。組成物は、これらの症状の治療またはその予防において用いることができる。
さらに、本発明は、アグレカンの分解により特徴付けられる症状を患っている患者の治療方法またはかかる症状の予防方法を含む。本発明によるこれらの方法は、かかる治療を必要とする患者に、アグレカナーゼ酵素のタンパク質分解活性を阻害するのに有効な量の、アグレカナーゼ阻害剤を含む組成物を投与することを必要とする。
本発明のDNA配列は、所定の細胞群におけるアグレカナーゼをコードするmRNAを検出するためのプローブとして有用である。かくして、本発明は、iアグレカナーゼに関与する遺伝子障害、またはアグレカナーゼが、不規則に複写されるか、または発現される、細胞、臓器または組織障害を含む障害の検出または診断方法を含む。また、DNA配列は、下記するような遺伝子治療で適用するためのベクターの調製に有用である。
本発明のさらなる態様は、その発現制御配列と作用的に結合した、上記したDNA配列を含むベクターを含む。これらのベクターは、細胞株を、その発現制御配列と作用的に結合したアグレカナーゼタンパク質をコードするDNA配列で形質転換し、適当な培地で培養し、アグレカナーゼタンパク質をそこから回収し、精製する、本発明のアグレカナーゼタンパク質を産生する新規方法において用いることができる。このプロセスは、ポリペプチドの発現用の宿主細胞として、多くの公知の細胞、臓器中の原核細胞および真核細胞の両方を用いることができる。該ベクターは、遺伝子治療での適用に用いることができる。かかる使用において、ベクターは、エクスビボで患者の細胞にトランスフェクトすることができ、細胞を再び患者に戻すことができる。別法として、ベクターを、標的化トランスフェクションによりインビボで患者に導入することもできる。
さらなる態様は、記載の一部に説明されており、その部分は記載から明らかになるか、あるいは、本発明を行うことにより明らかになるだろう。本発明は、特許請求の範囲において説明し、示され、本開示は、特許請求の範囲に限定されるべきではない。下記の発明の詳細な説明は、本発明の種々の具体例の典型的な代表例であって、本発明の範囲を限定するものではない。添付する図面は、明細書の記載と共に本明細書の一部を構成し、具体例を説明するものであって、本発明を限定するものではない。
(図面の説明)
図1A−1Cは、全長アグレカナーゼ−2/ADAMTS−5分子(配列番号1)のヌクレオチド配列を示す。
図2は、配列番号1のヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#2915によりコードされる全長アグレカナーゼ−2/ADAMTS−5分子(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。
図3は、ヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド2259(gaa)(配列番号3)の本発明の切断アグレカナーゼ−2タンパク質のヌクレオチド配列を示す。
図4は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸#1〜アミノ酸#753(配列番号4)の切断アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
図5は、ヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct)(配列番号5)の本発明の切断アグレカナーゼ−2/ADAMTS−5のヌクレオチド配列を示す。
図6は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸#1〜アミノ酸#752(配列番号6)の本発明の切断アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
図7は、ヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#1884(配列番号7)の本発明の切断アグレカナーゼ−2分子のヌクレオチド配列を示す。
図8は、配列番号7に示されるヌクレオチド配列によりコードされる、アミノ酸#1〜アミノ酸#628(配列番号8)の本発明の切断アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
図9は、ヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#1701(配列番号9)の本発明の切断アグレカナーゼ−2分子のヌクレオチド配列を示す。
図10は、配列番号9に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸#1〜アミノ酸#567(配列番号10)の本発明の切断アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
図11は、全長アグレカナーゼ−1分子(配列番号11)のアミノ酸配列を示す。
図12は、アミノ酸#1〜アミノ酸#575(Pro)(配列番号12)を含む、切断アグレカナーゼ−1分子のアミノ酸配列を示す。
図13は、アミノ酸#1〜アミノ酸#520(Ala)(配列番号13)を含む切断アグレカナーゼ−1分子のアミノ酸配列を示す。
図14は、ペプチドリンカーおよびストレプトアビジンタグ(配列番号14)を含む、組み換え切断アグレカナーゼ−2タンパク質のヌクレオチド配列を示す。
図15は、配列番号14に示されるヌクレオチド配列によりコードされる、組み換え切断アグレカナーゼ−2タンパク質(配列番号15)のアミノ酸配列を示す。
図16は、アグレカナーゼELISAアッセイにより検出される、CHO細胞発現野生型(ADAMTS−5WT)または活性部位変異(ADAMTS−5ASM)からの、条件付けたのアグレカナーゼ活性を示す。
図17は、触媒ドメインにEからQへの変異を有するフラッグ−タグ化切断アグレカナーゼ−1分子の略図を示す。
図18は、ストレプトアビジンタグ化切断アグレカナーゼ−2分子の略図を示す。
図19は、全長アグレカナーゼ−2タンパク質と比較した切断アグレカナーゼ−2タンパク質の発現のウエスタンブロットを示す。
図20は、本発明の切断アグレカナーゼ−2分子により、3B3ELISAアッセイでのアグレカン切断パーセントを示す。
図21は、アミノ酸位置411でのEからQへの変異を有する全長ADAMTS−5タンパク質のアミノ酸配列を示す(配列番号30)。
図22Aおよび22Bは、全長アグレカナーゼ−1タンパク質をコードする核酸配列を示す(配列番号31)。
図23は、切断アグレカナーゼ−1分子;例えば、図12に示されるタンパク質をコードする核酸配列を示す(配列番号32)。
図24は、切断アグレカナーゼ−1分子;例えば、図13に示されるタンパク質をコードする核酸配列を示す(配列番号33)。
(発明の詳細な記載)
I.定義
本発明がより容易に理解できるように、ある種の用語を最初に定義する。付加的な定義は、詳細な記載全体にわたって説明される。
「アグレカナーゼ」なる用語は、アグレカンタンパク質を切断することができるポリペプチドのファミリーを意味する。一般的には、Glu373−Ala374アグレカナーゼ切断部位でアグレカンを切断するタンパク質が存在する。本発明のアグレカナーゼは、限定するものではないが、配列番号11(アグレカナーゼ−1)および配列番号2(アグレカナーゼ−2)の配列を含む。「アグレカナーゼ」なる用語は、1つまたはそれ以上のアッセイにおいて活性である、配列番号11および2に示される天然に生じる変異体、ならびに、配列番号11および2のフラグメントを含む。例えば、該定義には、配列番号11または2もしくはそのフラグメントのアミノ酸と、実質的に類似したまたは実質的に同一であるアミノ酸配列;あるいは、配列番号11または2もしくはそのフラグメントのアミノ酸と、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%同一であるアミノ酸配列を含む。
さらに、「アグレカナーゼ」なる用語は、開示した配列番号31および1(それぞれ、アグレカナーゼ−1および2)、そのフラグメントおよび変異体の核酸配列によりコードされるタンパク質を含む。一の具体例において、本発明の核酸は、遺伝子をコードする天然のアグレカナーゼの変異体またはそのフラグメント由来のまたはその配列を有するだろう。
「抗体」なる用語は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントを意味し、抗原結合部位を含んでいるいずれのタンパク質を包含する。該用語は、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、モノ特異的、ポリ特異的、非特異的、ヒト化、ヒト、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、移殖およびインビボで形成された抗体を含む。該用語は、特記しない限り、抗体フラグメント、例えばFab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAbおよび抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメントも含む。
「生物学的活性」なる用語は、アグレカンに結合するアグレカナーゼ酵素により、中断されるか、または開始される、少なくとも1つの細胞プロセスを意味する。一般的には、生物学的活性は、アグレカナーゼによるアグレカンのタンパク質分解性切断を意味する。アグレカナーゼ活性は、限定するものではないが、アグレカナーゼのアグレカンへの結合およびアグレカンのアグレカナーゼによる切断を含む。また、活性は、本発明のアグレカナーゼへの結合、またはそれによるアグレカンの切断を生じさせる生物学的応答を含みうる。
本明細書で用いられる場合「削除」なる用語は、アグレカナーゼの全長アミノ酸配列から少なくとも1つのアミノ酸を除去することである。また、削除なる用語は、アグレカナーゼをコードする核酸配列からヌクレオチドを除去し、それによって、切断タンパク質をコードする核酸を得ることを意味する。
アグレカナーゼまたはアグレカナーゼタンパク質をコードする核酸分子の削除は、核酸分子または要すればタンパク質のいずれの場所でも行うことができる。例えば、削除は、タンパク質内のいずれの場所;例えば、アグレカナーゼタンパク質のN末端、C末端またはいずれの他の部分で生じさせることができ、少なくとも1つのアミノ酸;例えば、約1〜約5のアミノ酸、約5〜約10のアミノ酸、約10〜約20のアミノ酸、約20〜約30のアミノ酸、約30〜約50のアミノ酸、約50〜約100のアミノ酸、約100〜約150のアミノ酸、約150〜約200のアミノ酸、約200〜約250のアミノ酸、約250〜約300のアミノ酸、約300〜約350のアミノ酸、約350〜約400のアミノ酸、約400〜約450のアミノ酸、約450〜約500のアミノ酸500以上のアミノ酸の除去を含むことができる。
また、削除は、本発明のアグレカナーゼをコードする核酸分子において行うことができ;例えば、削除は、アグレカナーゼのTSPドメインをコードする核酸の領域において行うことができる。かかる削除は、典型的には、本発明のアグレカナーゼをコードする核酸分子の3’領域を含む。しかしながら、削除はアグレカナーゼ分子を発現する核酸のいずれの場所においても行うことができると考えられる。当業者は、本発明の切断アグレカナーゼを開示多くのアッセイの1つで活性に関して試験することができる。
本発明のアミノ酸削除は、アグレカナーゼタンパク質のN末端から少なくとも1つのアミノ酸を除去することを含む。別の具体例において、削除は、アグレカナーゼタンパク質のC満タンから、少なくとも1つのアミノ酸を除去することを含む。さらなる別の具体例において、削除は、アグレカナーゼ分子のN末端およびC末端の間にある領域からのアミノ酸の除去を含む。一の具体例において、かかる削除は、本発明のアグレカナーゼの完全なドメインの除去を含む。例えば、本発明の削除を含んでいるアグレカナーゼは、1つの削除されたTSPドメインを有するアグレカナーゼ−1分子または2つの削除されたTSPドメインを有するアグレカナーゼ−1分子、あるいは、1つの削除されたTSPドメインを有するアグレカナーゼ−2分子または2つの削除されたTSPドメインを有するアグレカナーゼ−2分子を含む。本発明のアグレカナーゼは、アグレカナーゼタンパク質内のすべてのTSPドメインの削除を含んでいてもよい。また、アグレカナーゼ分子の内部の別のドメインが削除され、全長対応物よりもより安定である生物学的に活性な切断アグレカナーゼが生産されることが考えられる。
本明細書で用いられる「フラグメント」なる用語は、本発明のアグレカナーゼタンパク質、例えば、配列番号2、4、6、8、10、11、12および13に示されるアミノ酸配列の一部を意味する。一の具体例において、タンパク質のフラグメントは、提供された多くのアッセイの1つにおいてアグレカナーゼ活性を有するアミノ酸配列を意味する。また、「フラグメント」なる用語は、アグレカナーゼ活性を示すペプチドをコードするのに十分に長いヌクレオチド配列を含む。しかしながら、ヌクレオチド配列のフラグメントは、アグレカナーゼ生物学的活性を保持するタンパク質フラグメントをコードしても、しなくてもよい。本発明のタンパク質および核酸フラグメントは、それぞれ、配列番号1、3、5、7、9、31、32または33に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列の1部、または配列番号2、4、6、8、10、11、12または13に示される少なくとも1つのアミノ酸配列の一部と実質的に同一である、別の核酸分子またはタンパク質を含む。核酸配列のフラグメントは、例えば、少なくとも約20のヌクレオチド、少なくとも約50のヌクレオチド、少なくとも約100のヌクレオチド、少なくとも約150のヌクレオチド、少なくとも約200のヌクレオチド、少なくとも約250のヌクレオチド、少なくとも約300のヌクレオチド、少なくとも約400のヌクレオチド、少なくとも約500のヌクレオチド、少なくとも約600のヌクレオチド、少なくとも約700のヌクレオチド、少なくとも約800のヌクレオチドから、配列番号1に示される完全長の核酸配列までに及んでいてもよい。一の具体例において、核酸フラグメントは、アグレカナーゼ活性を有するペプチドをコードする。タンパク質フラグメントは、例えば、少なくとも約5のアミノ酸、少なくとも約10のアミノ酸、少なくとも約20のアミノ酸、約30のアミノ酸、約40のアミノ酸、約50のアミノ酸、少なくとも約100のアミノ酸、少なくとも約150のアミノ酸、少なくとも約200のアミノ酸、少なくとも約250のアミノ酸、少なくとも約300のアミノ酸、少なくとも約350のアミノ酸、少なくとも約400のアミノ酸から、配列番号2に示されるアミノ酸配列の完全長にまで及んでいてもよい。本発明の核酸のフラグメントは、核酸配列の3’部分、5’部分またはいずれの他の部分からも生じさせることができる。同様に、タンパク質フラグメントは、タンパク質のN末端、C末端または他のいずれかの部分からも生じさせることができる。一の具体例において、タンパク質のフラグメントは、アグレカナーゼ活性を保持する。他の具体例において、本発明の他のフラグメントは、アグレカナーゼ活性を有するタンパク質の一部から得ることができる。
「有効な量」なる用語は、少なくとも1つのアグレカナーゼ阻害剤または抗体が患者を治療するのに十分である本発明の組成物の投与量または量を意味する。
アグレカナーゼまたはアグレカナーゼ活性を「阻害する」または「阻害」なる用語は、アグレカナーゼまたはアグレカンの阻害剤の結合による、少なくとも1つのアグレカナーゼの活性を、低減、阻害、さもなければ減少させることを意味する。結合の低減、阻害または減少は、与えられる多くのアッセイの1つにより測定することができる。アグレカナーゼ活性の阻害は、必ずしもアグレカナーゼ活性の完全な否定を示すものではない。活性の低減は、例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上であってもよい。一の具体例において、阻害は、アグレカンの切断産物の検出が減少することにより測定することができる。本発明の阻害剤は、限定するものではないが、抗体、タンパク質、ペプチドおよび化合物(しばしば、小分子とも称される)を含む。
「単離」なる用語は、実質的にその天然環境にない核酸分子またはポリペプチド分子を記載する。例えば、単離タンパク質は、細胞物質またはそれの由来である細胞または組織源から得られた他の汚染タンパク質と実質的に遊離したものである。また、「単離」なる用語は、他のプロテアーゼと結合しておらず、アグレカナーゼタンパク質分解活性を保持している、本発明のアグレカナーゼタンパク質を意味する。加えて、「単離」なる用語は、本発明のアグレカナーゼをコードし、他の細胞物質および内容物がない、核酸分子を意味する。
「ネオエピトープ抗体」なる用語は、タンパク質分解開裂により形成される新たなN−またはC−末端アミノ酸配列を特異的に認識するが、無傷(非切断)基質のかかるエピトープに結合しない抗体を意味する。
発現制御配列と「作用的に連結」なる用語は、一般的には、転写速度または配列に結合するヌクレオチド分子の能率を制御するか、またはそれに影響を与える特異的ヌクレオチド配列または配列の存在を意味する。例えば、ヌクレオチド配列をコードするアグレカナーゼの5’末端の近位に位置するプロモーター配列は、ヌクレオチド配列をコードするアグレカナーゼと作用的に連結することができる。発現制御配列は、限定するものではないが、例えばプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御配列、またはかかる要素のいずれの組み合わせ、その発現を制御するためのヌクレオチド配列をコードするアグレカナーゼの5’または3’のいずれかを含む。しかしながら、それらのすべての要素が必要なわけではない。当業者は、適当な発現制御配列を、例えば本発明のアグレカナーゼの所望の発現レベルに応じて選択することができる。
抗体の「特異的な結合」なる用語は、抗体が少なくとも1つの本発明のアグレカナーゼ分子に結合し、抗体が、少なくとも1つの新規アグレカナーゼ分子以外の分子と有意な結合を示さないことを意味する。また、該用語は、例えば、抗体の抗原結合ドメインが、多数の抗原において示される特定のエピトープに特異的であることに適用することができ、抗原結合ドメインを有する特定の結合メンバー(抗体)は、エピトープを有する種々の抗原に結合することができるだろう。したがって、多数の新規アグレカナーゼタンパク質のエピトープに希有号するだろうと考えられる。典型的には、結合は、アフィニティー定数Kaが108M−1よりも高い場合に、特異的であると考えられる。抗体は、非特異的結合が阻害されると同時に、かかる結合が実質的に阻害されない、適当に選択された条件下で、抗体に「特異的結合」すると考えられる。該条件は、通常には、抗体濃度、溶液のイオン強度、結合時間、結合反応に関係する付加的な分子の濃度(例えば、血清アルブミン、ミルク・カゼイン)等の用語で定義される。かかる条件は、当該分野でよく知られており、当業者が用いる典型的な技法により適当な条件を選択することができる。
本明細書で用いられる「安定性」なる用語は、一般的には、タンパク質の分解速度を減少させ、したがって、その半減期、溶解性および/または発現レベルが増加することを意味する。いくつかの因子、例えば、pH、塩濃度、温度、タンパク質分解作用、例えばプロテアーゼ、金属イオン、タンパク質の自己触媒作用、疎水性等は、インビボおよびインビトロでタンパク質の安定性に影響を及ぼす。一の具体例において、本発明は、それらの全長対応物よりもより安定な切断アグレカナーゼを含む。別の具体例において、本発明は、それらの野生型対応物よりもより安定であるアグレカナーゼ活性物変異を含む。より安定なタンパク質を製造する条件は、一般的には、正常なものよりも長い折り畳み構造にタンパク質を維持し、それにより長時間その生物学的活性を保持する条件を含む。タンパク質の安定性の増加により、一般的には、その半減期および発現レベルが増加し、それにより、治療用および阻害剤の開発用に大量のタンパク質を精製することが可能になる。
「高度にストリンジェント」または「高ストリンジェンシー」なる用語は、核酸−核酸相互作用を測定するのに用いられるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載する。核酸ハイブリダイゼーションは、塩濃度、温度または有機溶媒、加えて塩基組成、相補的ストランドの長さ、およびハイブリダイゼーションする核酸間のヌクレオチド塩基不整合の数のような条件により影響を受け、これは当業者には明らかだろう。ストリンジェント条件は、核酸の長さおよび核酸の塩基組成に依存し、当該分野でよく知られた方法により決定することができる。一般的には、ストリンジェンシーは、例えば、ハイブリダイゼーションおよび洗浄中の温度および塩濃度を操作することにより、変化させるか、または制御することができる。例えば、高温および低塩濃度の組み合わせは、ストリンジェンシーを増加させる。かかる条件は、当業者には公知のものであり、例えば「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6で見ることができる。当該分やで知られている水性および非水性条件の両方を用いることができる。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例としては、約45℃、6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーション、ついで、少なくとも1回の0.2XのSSC、0.1%のSDSで50℃での洗浄が挙げられる。高度にストリンジェント条件の第2の例としては、約45℃で6XのSSC中でのハイブリダイゼーション、ついで、少なくとも1回の、0.2XのSSC、0.1%のSDSで55℃での洗浄が挙げられる。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の他の例としては、45℃で6XのSSCでのハイブリダイゼーション、ついで、少なくも1回の、0.2XのSSC、0.1%のSDSで、60℃での洗浄が挙げられる。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる例としては、45℃で6XのSSCでのハイブリダイゼーション、ついで、少なくとも1回の、0.2XのSSC、0.1%のSDSで、65℃での洗浄が挙げられる。高度にストリンジェントな条件は、65℃、0.5Mのリン酸ナトリウム、7%のSDSでのハイブリダイゼーション、ついで、少なくとも1回の、65℃、0.2XのSSC、1%のSDSでの洗浄を含む。
「中程度にストリンジェント」または「中程度のストリンジェンシー」なハイブリダイゼーションは、核酸が、少なくとも約60%、少なくとも約75%または少なくとも約85%の、核酸に対する同一性を有する相補核酸に結合することができる条件を意味し;約90%以上の、核酸に対する同一性を有することが特に好ましい。中程度にストリンジェントな条件は、限定するものではないが、例えば、42℃で50%のホルムアミド、5Xのデンハルト(Denhart)溶液、5XのSSPE、0.2%のSDSでのハイブリダイゼーション、ついで、65℃で0.2XのSSPE、0.2%のSDSでの洗浄を含む。(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照のこと)。
「実質的に同一」または「実質的に類似」なる用語は、関連するアミノ酸またはヌクレオチド配列が、開示された配列に対して、同一であるか、あるいは、それと比較して(保持されたアミノ酸置換により)実質的に違いがないことを意味する。本発明のヌクレオチドおよびポリペプチドは、例えば少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の、開示した核酸分子およびポリペプチドの配列との同一性であるものを含む。
ポリペプチドに関しては、少なくとも20、30、50、100またはそれ以上のアミノ酸が、原型のポリペプチドと原型のものと実質的に同一である変異体ポリペプチド間で比較されるだろう。ヌクレオチドに関しては、少なくとも50、100、150、300またはそれ以上のヌクレオチドが、原型の核酸と原型のものと実質的に同一である変異体核酸間で比較されるだろう。かくして、変異体は、他が相違していても、「実質的に同一」の定義を依然として満たしている場合、ある領域において実質的に同一であり得る。2つの配列間のパーセント同一性は、例えば、Altschul et al., J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990) に記載されているBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needleman et al., J. Mol. Biol., 48:444-453 (1970) のアルゴリズムまたはMeyers et al., Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988)のアルゴリズムのような標準的な配列アルゴリズムにより決定される。
「治療する」または「治療」なる用語は、治療および予防または防止的手段を意味する。治療を必要とするものは、特定の医学的障害を有する個体、ならびに最終的に障害になりうるもの(すなわち、予防的手段を必要とるすもの)を含む。治療は、アグレカナーゼ活性またはアグレカナーゼのレベルを調整し、少なくとも1つの疾患の臨床症状を予防または軽減させる。阻害剤および/または抗体は、例えばアグレカナーゼのアグレカンへの相互作用または結合を防止することにより、またはアグレカナーゼ活性を減少させるか、または阻害することにより機能することができる。
本明細書で用いられる「切断」は、それぞれ、全長アグレカナーゼ核酸分子またはアミノ酸配列において見られる、少なくとも1つのヌクレオチドが欠けている本発明のアグレカナーゼまたは少なくとも1つのアミノ酸が欠けている本発明のアグレカナーゼをコードするヌクレオチドを意味する。本発明の切断タンパク質は、一般的に、通常切断タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも1つのヌクレオチドまたは、対応する全長タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸が削除されているので、それらの全長対応物と比較して短い。
一の具体例において、例えば、本発明の切断アグレカナーゼは、配列番号11に示される全長アグレカナーゼ−1タンパク質のアミノ酸#576〜C−末端の削除を含む、配列番号12に示されるアミノ酸配列;および配列番号11に示される全長アグレカナーゼ−1タンパク質のアミノ酸#521〜C末端の削除を含む、配列番号13を含む、切断アグレカナーゼ−1タンパク質を含む。別の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼは、例えば、配列番号2に示される全長アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸#754〜C末端削除を含む配列番号4;配列番号2に示される全長アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸#753〜C末端の削除を含む、配列番号6;配列番号2に示される全長アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸#629〜C末端の削除を含む、配列番号8;および配列番号2に示される全長アグレカナーゼ−2タンパク質のアミノ酸#568〜C末端の削除を含む、配列番号10に示されるような、アグレカナーゼ−2切断タンパク質を含む。かかる削除は、アグレカナーゼをコードする核酸において行われるか、またはタンパク質の形成に続いてタンパク質自体において行うことができる。したがって、本明細書で用いられる「切断」なる用語は、切断されているアグレカナーゼをコードする核酸ならびに切断アグレカナーゼそれら自体を意味する。本発明の切断タンパク質をコードする核酸を、配列番号3、5、7、9、11、32および33に示す。本発明の切断タンパク質は、融合タンパク質として発現することができる。
本発明の切断アグレカナーゼは、対応する全長アグレカナーゼ分子よりもより大きな安定性を有する。また、本発明の切断アグレカナーゼは、対応する全長アグレカナーゼタンパク質よりもインビボおよびインビトロの両方で、より高レベルで発現することができる。本発明の切断アグレカナーゼは、生物学的に活性であり、別の変更、例えば、タンパク質の他の部分のアミノ酸置換、修飾または削除を含みうる。
「変異体」なる用語は、それぞれ、与えられたヌクレオチドおよびアミノ酸配列と、実質的に同一であるか、または類似したヌクレオチドおよびアミノ酸配列を意味する。変異体は、天然に生じることができ、例えば、アグレカナーゼまたはアグレカナーゼ−様タンパク質をコードする、天然に生じるヒトおよび非ヒトヌクレオチド配列であるか、または人工的に形成され得る。変異体の例としては、本発明のアグレカナーゼの3’および5’スプライス変異体を含むアグレカナーゼmRNAの別のスプライシング、点変異および他の変異またはアグレカナーゼタンパク質のタンパク質分解性切断を生じさせるアグレカナーゼが挙げられる。本発明のアグレカナーゼの変異体は、それぞれ、他の核酸(または最適に配列されている場合、それらの相補的ストランド)(適当な挿入または欠失を有する)またはアミノ酸配列と実質的に同一であるか、または類似している、核酸分子またはそのフラグメントおよびアミノ酸配列およびそのフラグメントを含む。一の具体例において、それぞれ、本発明の核酸分子またはタンパク質と他の核酸分子またはタンパク質間に、少なくとも約50%の同一性、少なくとも約55%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約65%の同一性、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約75%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性または少なくとも約99%の同一性がある。定義したように、変異体は、天然に生じる核酸配列、ならびに、本発明のアグレカナーゼの同等の縮重コドン配列を含む。加えて、変異体は、定義したアグレカナーゼ活性を示すタンパク質またはポリペプチドを含む。
明細書および図面に記載した配列の同定を支援するために、配列番号、図面の場所および各配列の簡単な説明を示す、以下の表(表1)を提供する。
II.新規アグレカナーゼ分子
一の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼ−2のヌクレオチド配列を、配列番号3に示し、ここに、核酸配列は、配列番号1に示されるアグレカナーゼ−2の全長核酸配列のヌクレオチド#123(atg)〜ヌクレオチド#2382(gaa)を含む。別の具体例において、切断アグレカナーゼ−2のヌクレオチド配列は、図5の(atg)の「A」で再び猪開始されるヌクレオチド#1〜ヌクレオチド#2256(cct)で示される。別の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼ−2のヌクレオチド配列は、TSPドメインをコードするヌクレオチド配列の削除を含む、図7に示されるヌクレオチド#1(atg)〜#1884(ttt)を含む。さらなる別の具体例において、本発明の切断アグレカナーゼ−2タンパク質の核酸配列は、削除されたTSPドメインの両方を有するアグレカナーゼ−2タンパク質をコードする、ヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat)を含む。さらに、本発明は、天然に生じる核酸配列およびそのフラグメントおよび変異体、ならびに人工的に製造され、図3、5、7および9に示される配列と同等の縮重コドン配列、ならびにアグレカナーゼ活性を示すポリペプチドをコードするそのフラグメントを含む。
他の具体例において、本発明のヌクレオチド配列は、切断アグレカナーゼ−1分子をコードする核酸配列を含む。例えば、図12に示される切断アグレカナーゼ−1タンパク質は、図23(配列番号32)示される核酸配列によりコードされうる。さらにTSPドメインの削除を含む本発明の切断アグレカナーゼ−1タンパク質を、図13に示す。かかる切断アグレカナーゼ−1タンパク質をコードする核酸配列を、図24(配列番号33)に示す。
単離切断アグレカナーゼ−2分子のアミノ酸配列を、図4の、アミノ酸#1(Met)〜#753(Glu)に示す。さらに、本発明は、切断アグレカナーゼ−2タンパク質をコードする、図5、7および9のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列(ここに、該アミノ酸配列はアミノ酸#1(Met)〜#752(Pro)を含む図6;アミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#628(Phe)を含む図8;およびアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#567(His)を含む図10に示される)に特徴付けられる。さらに、本発明は、切断アグレカナーゼ−1分子に関するアミノ酸配列を含む。図12のヌクレオチド配列によりコードされうる、切断アグレカナーゼ−1分子に関するアミノ酸配列を図23に示す。図24の核酸配列によりコードされうる、さらに別の本発明の切断アグレカナーゼ−1分子は、図13に特徴付けられる。さらに、本発明は、アグレカナーゼ活性を示すポリペプチドのアミノ酸配列のフラグメントおよび変異体を含む。
本発明のヒトアグレカナーゼタンパク質またはそのフラグメントは、図3のヌクレオチド#1(atg)〜#2259(gaa)のDNA配列により形質転換された細胞を培養し、図4のアミノ酸#1(Met)〜#753(Glu)で示されるアミノ酸配列により特徴付けられるタンパク質を、実質的に同時に産生された他のタンパク性物質を含まずに、培地から回収し、精製することにより、産生することができる。
別の具体例において、本発明のアグレカナーゼタンパク質は、図5のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct)のDNA配列により形質転換された細胞を培養し、図6のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#752(Pro)のアミノ酸配列を含む、アグレカナーゼタンパク質を回収し、単離することにより産生することができる。別の具体例において、本発明のアグレカナーゼタンパク質は、図5のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct)のDNA配列で形質転換された細胞をさらにGAAついでCCTと一緒に培養し、図4のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#753(Glu)のアミノ酸配列を含む、アグレカナーゼタンパク質を回収し、精製することにより産生することができる。さらに別の具体例において、本発明のアグレカナーゼタンパク質は、図1A〜1C(配列番号1)のDNA配列で形質転換された細胞を培養し、切断アグレカナーゼタンパク質を、培地から、アミノ酸#1〜アミノ酸#752(配列番号6)、またはアミノ酸#1〜アミノ酸#753(配列番号4)を含む培地から、回収し、精製し、配列番号2に示される全長アグレカナーゼ−2タンパク質の切断を生成することにより産生することができる。
さらなる具体例において、細胞培地から回収されたタンパク質は、アミノ酸#1〜#628(配列番号8);アミノ酸#1〜567(配列番号10);アミノ酸#1〜575(配列番号12)またはアミノ酸#1〜520(配列番号13)を含む。精製された発現タンパク質は、実質的に、同時に産生された別のタンパク質性物質ならびに他の汚染物質から分離している。回収された精製タンパク質は、アグレカンの切断によるタンパク質分解アグレカナーゼ活性を示す。かくして、さらに本発明のタンパク質は、アグレカン−分解可能分子の存在を示すアッセイにおいてアグレカンタンパク質分解活性を示す能力により特徴付けることができる。これらのアッセイまたはその開発は、当業者には公知のものである。かかるアッセイは、アグレカン基質を、アグレカナーゼ分子と接触させ、アグレカンフラグメントの産生を観察することを含んでいてもよい(例えば、Hughes et al., Biochem J 305: 799-804(1995); Mercuri et al, J. Bio Chem. 274:32387-32395 (1999)を参照のこと)。
哺乳類細胞の産生に関して、DNA配列は、さらに、適当なプロペプチド5’をコードし、アグレカナーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列にフレームで結合するDNA配列を含む。培地から回収した本発明のアグレカナーゼタンパク質は、それらを同時に産生される他のタンパク質性物質および他の存在する汚染物質から単離することにより精製される。単離し、精製されたタンパク質は、アグレカン基質を切断する能力により特徴付けることができる。
また、本明細書により提供されるアグレカナーゼタンパク質は、修飾または削除が天然に(例えば、ポリペプチド中にアミノ酸変化を生じさせうる、ヌクレオチド配列における対立遺伝子変異体)または人工的に生じているが、図3のヌクレオチド#1(atg)〜#2259(gaa);図5のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct);図7のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1884(ttt);図9のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat);図23のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1725(cca);および図24のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1560(gct)と類似した配列によりコードされるタンパク質を含む。例えば、合成ポリペプチドは、図4のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#753(Glu);図6のアミノ酸#1(Met)〜#752(Pro);図8のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#628(Phe);図10のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#567(His);図12のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#575(Pro);または図13のアミノ酸#1(Met)〜アミノ酸#520(Ala)のアミノ酸残基の連続した配列に、完全にまたは部分的に重複していてもよい。一次、二次または三次元構造およびアグレカナーゼ分子を有する構造上の特徴を共有する効力により、これらの配列は、それらが通常有する生物学的特性を有することができる。
例えば、多くの保存的アミノ酸置換が、タンパク質の構造および配置を有意に修飾することなく可能であり、かくして同様に生物学的特性も維持されることが公知である。例えば、保存的アミノ酸置換は、の塩基性側鎖を有するアミノ酸、例えば、リシン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)およびヒスチジン(HisまたはH);酸性側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン酸(AspまたはD)およびグルタミン酸(GluまたはE);非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)およびチロシン(TyrまたはY);無極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、イソロイシン(IleまたはI)、プロリン(ProまたはP)、フェニルアラニン(PheまたはF)、メチオニン(MetまたはM)、トリプトファン(TrpまたはW)およびシステイン(CysまたはC)の間でなされてもよいことは明らかである。かくして、これらの天然のアグレカナーゼの修飾および欠失は、天然に生じるアグレカナーゼの生物学的活性置換として、タンパク質または他のポリペプチドの開発または治療プロセスにおいて用いることができる。アグレカナーゼの変異体がアグレカナーゼの生物学的活性を維持するかどうかは、アグレカナーゼおよびアグレカナーゼの変異体ならびにその阻害剤を、実施例に記載のアッセイに付すことにより、容易に測定することができる。
また、本発明は、アグレカナーゼ分子の安定を増加させる、アミノ酸置換を含むアグレカナーゼ分子を含む。例えば、タンパク質の411位にEからQへの変位を有するアグレカナーゼ−2分子のアミノ酸配列を配列番号30に示す。さらに、図17は、図12および13の切断アグレカナーゼ−1分子の触媒ドメイン内のEからQへのアミノ酸変位の概略を示す。EからQへの変位は、分子の活性部位にあり、本発明のアグレカナーゼの分解を防止するように作用し、したがって、アグレカナーゼの安定性および半減期を増加させるが、アミノ酸変異は、アミノ酸変異は、アグレカナーゼ分子の安定性を増加させるタンパク質の他の領域にあってもよいことが考えられる。
一の具体例において、活性部位変異は、酵素の触媒活性を故意遮断するために、アグレカナーゼに導入する。これは、アグレカナーゼの結晶化および構造を決定し、ついで、アグレカナーゼの阻害剤を同定し、開発するのに有用である。本発明の切断活性斑変異アグレカナーゼの安定性の増加により、疾患の治療用の阻害剤の開発において用いるための大量のアグレカナーゼ分子を精製し、単離することを可能にする。EからQへの変異により、アグレカナーゼは生物学的に不活性となるので、患者の遺伝子治療に、または阻害剤の開発に用いるための大量の不活性タンパク質の精製を必要とする。
所望のアミノ酸置換(保守的または非保守的かどうか)は、かかる置換を所望した時点で、当業者は容易に測定することができる。例えば、アミノ酸置換は、本発明のタンパク質またはポリペプチドの重要なアミノ酸残基を同定するのに、または、本発明に記載のアグレカナーゼの活性を増加または減少させるのに用いることができる。代表的なアミノ酸置換を表2に示す。
また、ある種の具体例において、保守的アミノ酸置換は、生物学的系での合成よりもむしろ化学ペプチド合成により典型的に組み入れられる天然に生じないアミノ酸残基を含む。
記載したアグレカナーゼタンパク質の配列他の特異的な変異は、グリコシル化部位の修飾を含む。これらの修飾はO−結合またはN−結合グリコシル化部位を含んでいてもよい。例えば、グリコシル化が存在しない、または部分的なグリコシル化は、アスパラギン−結合グリコシル化認識部位でのアミノ酸置換または欠失に起因しうる。アスパラギン−結合グリコシル化認識部位は、適当な細胞グリコシル化酵素により特異的に認識されるトリペプチド配列を含む。これらのトリペプチド配列は、アスパラギン−X−トレオニンまたはアスパラギン−X−セリン(ここに、Xはアミノ酸でありうる)のいずれかである。グリコシル化認識部位の第1または第3のアミノ酸位の1つまたは両方での種々のアミノ酸置換または欠失(および/または第2位でのアミノ酸欠失)は、修飾トリペプチド配列での非グリコシル化を生じる。また、加えて、アグレカナーゼ−関連タンパク質の細菌発現も、グリコシル化部位が修飾されない場合でさえも、非グリコシル化タンパク質の産生を起こす。
III.アグレカナーゼヌクレオチド配列
本発明の範囲内の核酸は、記載した天然のアグレカナーゼDNA配列と、中程度から高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする単離DNAおよびRNA配列を含む。高度にストリンジェントな条件は、一般的には、高温および低塩濃度を用いるハイブリダイゼーションおよび洗浄を意味する。また、加えて、ホルムアミドの含有もストリンジェンシーを増加させる。例えば、ホルムアミド非存在下50〜65℃のハイブリダイゼーション条件または50%のホルムアミドと42℃のハイブリダイゼーション条件は、両方とも高度なストリンジェンシー条件である。
さらに、本発明は、高度〜中程度にストリンジェントな条件下で、配列番号3、5、7、9、32および33のDNA配列とでハイブリダイゼーションし、アグレカンを切断する能力を有する切断アグレカナーゼタンパク質をコードする、DNA配列を含む。一の具体例において、DNA配列は、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするものを含む(Maniatis et al., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Laboratory, 387-389 (1982)を参照)。かかるストリンジェントな条件は、例えば、0.1XのSSC、0.1%のSDS、65℃が含まれる。ハイブリダイゼーションにより同定されたDNA配列は、例えば、配列番号4、6、8、10、12および13に示される、本発明のタンパク質の配列、例えばアミノ酸配列と、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性または少なくとも95%の同一性であるタンパク質をコードするDNA配列を含む。また、配列番号3、5、7、9、32および33のDNAと等価であるDNAは、中程度にストリンジェントな条件下で、配列番号4、6、8、10、12および13のペプチド配列をコードするDNA配列とハイブリダイゼーションする。しかしながら、ある種の条件下で、切断タンパク質をコードする核酸分子は、全長タンパク質をコードする核酸分子にハイブリダイゼーションするだろうことが理解される。
中程度にストリンジェンシーな条件は当該分野で公知のものであり、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2 ed. Vol. 1, Cold Spring Harbor Press. (1989)に定義されている。一の具体例において、例えば、中程度にストリンジェンシーな条件は、5XのSSC/0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の予備洗浄溶液および約55℃〜60℃の温度でのハイブリダイゼーション条件および約55℃で一晩5XのSSCでの洗浄の使用を含む。当業者は、該条件が核酸配列の長さおよび組成のような因子により必要に応じて調整されうることは理解できるだろう。
さらなる本発明の態様は、アグレカナーゼタンパク質分解活性を有する切断アグレカナーゼをコードするDNA配列、またはアグレカナーゼの未だ開示されていないか、または未発見の活性である。
さらなる具体例において、本発明の核酸は、かかる分子の安定性の増加を誘発する変異を含む、アグレカナーゼをコードする核酸分子である。
最終的には、本発明の配列の対立遺伝子または変異体;例えば、それぞれ、配列番号4、6、8、10、12および13に示されるアミノ酸配列をコードする、配列番号3、5、7、9、32および33またはアグレカナーゼ活性を有する本発明のアグレカナーゼのペプチド配列変異体は、本発明に含まれる。加えて、本発明は、本発明のDNA配列のフラグメントおよびアグレカナーゼ活性を有するタンパク質のコードするかかる配列の変異体を含む。
同様に、また、アグレカナーゼタンパク質に関してコードするが、遺伝子コードの縮重または対立遺伝子の変化(アミノ酸変更を生じても、生じなくてもよい種における天然に生じる塩基変化)のために、コドン配列が異なるDNA配列は、本明細書に記載の新規アグレカナーゼをコードする。コードされるポリペプチドの活性、半減期または産生を増強するために、点変異または修飾(挿入、削除および置換を含む)を誘発することにより生じさせた、図1、3、5、7、9、31、32および33のDNA配列の変更は、本発明の範囲内に含まれる。
本発明の別の態様は、新規アグレカナーゼポリペプチドの発現方法において用いられるこれらの新規ベクターである。好ましくは、本発明のベクターは、切断アグレカナーゼまたは本発明の活性物変異アグレカナーゼをコードする、上記に記載のlDNA配列を含有する。別法として、ベクターは、本発明のアグレカナーゼタンパク質配列を適当な発現制御配列を含有する。別法として、また、上記した修飾配列を組み入れたベクターは、本発明の具体例に含まれる。別法として、図3のヌクレオチド#1(atg)〜#2259(gaa)または図5のヌクレオチド#1(atg)〜#2256(cct)または図7のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1884(ttt)または図9のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat)または図23のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#(cca)または図24のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#(gct)の配列またはアグレカナーゼタンパク質をコードする別の配列は、複合アグレカナーゼ分子を発現するように操作することができる。かくして、本発明は、正確なリーディングフレームに結合した配列番号3、5、7、9、32および33に示されるヌクレオチド配列から別のアグレカナーゼポリペプチドをコードするDNA配列までのフラグメントを含む、アグレカナーゼタンパク質をコードするキメラDNA分子を含む。配列番号3、5、7、9、32または33に示されるようなDNA分子、またはその変異体もしくはフラグメントは、5’または3’のいずれかを、別のアグレカナーゼをコードするDNA分子に結合させることができる。
IV.アグレカナーゼタンパク質の産生
本発明の他の態様により、アグレカナーゼタンパク質を産生するための方法を提供する。一の具体例において、本発明の方法は、公知の調節配列の制御下で、本発明のアグレカナーゼタンパク質をコードするDNA配列で形質転換した、適当な細胞株を培養することを含む。形質転換した宿主細胞を培養し、アグレカナーゼタンパク質を、培地から回収して、精製した。精製したタンパク質は、同時に産生される他のタンパク質ならびに他の混入物質から実質的に分離している。
適当な細胞または細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞であってもよい。適当な哺乳類宿主細胞の選択、および形質転換、培養、増幅、スクリーニング、生成物の産生および精製方法は、当該分野で公知である(例えば、Gething and Sambrook, Nature, 293:620-625 (1981); Kaufman et al., Mol Cell Biol, 5(7):1750-1759 (1985)またはHowley et al., U.S. Patent 4,419,446.)を参照)。本明細書中の実施例に記載する他の適当な哺乳類細胞株は、サルのCOS−1細胞株である。哺乳類細胞株CV−1も適当でありえる。
また、細菌細胞も適当な宿主であり得る。例えば、イー・コリの種々の株(例えば、HB101、MC1061)がバイオテクノロジーの分野において宿主細胞としてよく知られている。ビー・サブチリス(B. subtilis)、シュードモナス(Pseudomonas)、他のバシリ(bacilli)などの種々の株も、該方法に用いることができる。細菌細胞における本発明のアグレカナーゼタンパク質の発現のためには、アグレカナーゼのプロペプチドをコードするDNAが、一般的に必要ではない。
当業者に公知の多くの酵母細胞株は、本発明のタンパク質またはポリペプチドの発現のための宿主細胞として用いることができる。加えて、要すれば、昆虫細胞は、本発明の方法において、宿主細胞として用いることができる。例えば、Miller et al., Genetic Engineering, 8:277-298(Plenum Press 1986)またはそこに記載の引用文献を参照のこと。
開示した種々のベクターは、細胞株を形質転換する方法で用いることができ、通常は、選択した宿主細胞において、その複製および発現を導くことができる、本発明の配列をコードするDNAに作用的に連結した、選択した調節配列を含有する。かかるベクターの調節配列は、同業者には公知のものであり、宿主細胞に応じて選択することができる。かかる選択は慣用的なものであり、本発明の一部を形成するものではない。
当業者は、例えば、配列番号1、3、5、7、9、31、32および33に開示されている核酸配列を用いることにより哺乳類のベクターを構成することができる。
また、本発明の切断アグレカナーゼタンパク質は、タンパク質配列;例えば、配列番号4、6、8、10、12または13に示される配列、またはそのフラグメントもしくは変異体、および、例えばタグ;すなわち、アグレカナーゼタンパク質またはそのフラグメントもしくは変異体のアミノ酸配列のアミノ末端、カルボキシ末端、またはいずれかの位置に加えられる、第2のタンパク質または少なくとも1つのアミノ酸、約2〜50のアミノ酸または約50〜約100のアミノ酸を含む、機能タンパク質として発現することができる。典型的には、かかるアミノ酸タグは、得られた融合タンパク質を安定にし、または本発明のアグレカナーゼタンパク質の切断形態を含む、対応するアグレカナーゼタンパク質またはかかるタンパク質のフラグメントもしくは変異体の、発現した組み換え形態の精製を単純にする。かかるタグは当該分野で公知のものである。かかるタグの代表的な例としては、一連のヒスチジン残基、エピトープタグFLAG、ヘルペス単純糖タンパク質D、ベータ−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、ストレプトアビジンタグまたはグルタチオンS−トランスフェラーゼをコードする配列が挙げられる。一の具体例において、タグをコードする核酸配列は、タグを含む組み換えまたは融合アグレカナーゼタンパク質の一連の産生用の、本発明のアグレカナーゼをコードする核酸配列にフレームで結合する。かかる組み換えまたは融合アグレカナーゼタンパク質は、例えば、図17に示すように、切断アグレカナーゼ−1酵素を、C末端FLAGタグと、および図18に示すように、切断アグレカナーゼ−2酵素を、C−末端ストレプトアビジンタグと含む。ストレプトアビジンタグを含む切断アグレカナーゼ−2タンパク質をコードする核酸配列を図14(配列番号14)に示し、これは、図15に記載の切断アグレカナーゼ−2融合タンパク質をコードする。
同様に、安定性、発現レベルおよび/または半減期の増加を誘発する、アミノ酸変異を含有するアグレカナーゼは、例えば、配列番号30に示されるアミノ酸配列またはそのフラグメントまたは変異体および例えば上記したタグを用いて、融合タンパク質として産生することができる。これらの触媒ドメインにおけるアミノ酸変異を有するアグレカナーゼを含む本発明のアグレカナーゼ−1および−2融合タンパク質の例を、図14、15、17および18に示す。
V.抗体の産生
本発明の単離タンパク質を用いて、アグレカナーゼおよび/または他のアグレカナーゼ関連タンパク質に対するモノクローナルまたはポリクローナルいずれかの抗体を、当該分野で一般的に知られている抗体産生方法を用いて産生することができる。かくして、本発明は、アグレカナーゼまたは他の関連タンパク質に対する抗体も含む。抗体は、アグレカナーゼ活性を遮断する抗体および遮断しない抗体の両方を含む。抗体は、アグレカナーゼまたは関連タンパク質の検出および/または精製に有用であり、またはアグレカナーゼの作用を阻害または予防するのに有用であり得る。本発明のアグレカナーゼまたはその部分は、アグレカナーゼに特異的に結合する抗体を調製するのに利用することができる。
抗体は、例えば、慣用的なハイブリドーマ法(Kohler and Milstein, Nature 256:495-499 (1975))、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)または抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法(Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991))により産生することができる。種々の抗体産生法に関しては、抗体:研究室マニュアル、eds. Harlow et al., Cold Spring Harbor Laboratory (1988)を参照のこと。
本発明の抗体は、下記する疾患の治療に用いることができる。また、該抗体は、上記アッセイ法および検出法においても用いることができる。
VI.阻害剤の開発
変形性関節症のような種々の症状が、アグレカンの分解により特徴付けられることは公知のことである。したがって、アグレカナーゼの安定性および発現レベルを増加させる変異を有する、本発明の切断アグレカナーゼおよびアグレカナーゼは、アグレカナーゼの阻害剤を得るために、大量にアグレカナーゼ分子を生産することを可能にする。
したがって、本発明は、アグレカナーゼ阻害剤を含有する組成物を提供する。該阻害剤は、後でアグレカンに暴露する、アグレカナーゼ活性の阻害剤を含むアグレカン基質の混合物が関与するクリーニングアッセイにおいて、本発明のアグレカナーゼ分子を用いて開発することができる。該阻害剤は、高速処理を用いて、例えば阻害剤のライブラリーをスクリーニングすることによりスクリーニングすることができる。また、該阻害剤は、三次元構造分析および/またはコンピュータ薬剤設計を用いて作成することもできる。該方法は、アグレカナーゼおよびアグレカンの三次元構造に基づく阻害剤の結合部位を決定すること、およびアグレカナーゼまたはアグレカンの結合部位に対して反応性である分子を開発することを含みうる。候補分子を阻害活性に関してアッセイする。アグレカナーゼ分子の阻害剤を開発するためのさらなる標準的な方法は、当業者に公知のものである。アグレカン阻害剤の同定および開発に関するアッセイは、アグレカンおよび阻害剤の混合物をアグレカナーゼ分子と接触させ、ついで、アグレカナーゼ感受性部位での切断により産生されるアグレカンフラグメントを検出および測定することにより、アグレカナーゼ阻害の測定を行うことを含む。阻害剤は、タンパク質、ペプチド、抗体または化合物であってもよい。一の具体例において、阻害剤は、アグレカナーゼ分子の活性部位に結合するペプチド分子である。例えば、アグレカナーゼ−1およびアグレカナーゼ−2分子の活性部位変位は、ペプチド阻害剤の開発に用いることができる。触媒ドメインでのEからQへのアミノ酸変更を含む、アグレカナーゼ−1分子を、図17に示す。同様に、触媒ドメインの411位置でのEからQへの変更を有するアグレカナーゼ−2分子のアミノ酸配列を図21に示す(配列番号30)。
VII.疾患の治療および診断
アグレカナーゼ活性の阻害剤は、下記疾患の治療に用いることができる。また、阻害剤は、上記アッセイおよび検出方法においても用いることができる。本発明のアグレカナーゼの阻害剤を用いることにより治療することができると考えられる種々の疾患は、限定するものではないが、変形性関節症、癌、炎症性関節疾患、関節リウマチ、敗血症性関節炎、歯周病、角膜潰瘍、タンパク尿、動脈硬化性プラーク破裂からの冠状動脈血栓症、動脈瘤性大動脈疾患、炎症性腸疾患、クローン病、気腫、急性呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、脳および造血器悪性腫瘍、骨粗鬆症、パーキンソン病、偏頭痛、鬱病、末梢神経障害、ハンチントン病、多発性硬化症、眼の血管新生、黄斑変性症、大動脈瘤、心筋梗塞、自己免疫疾患、外傷性関節傷害後の変性軟骨損失、頭部外傷、ジストロフィー性表皮水疱症、脊髄損傷、急性および慢性神経変性疾患、骨骨膜炎、側頭骨顎関節疾患、神経系の脱髄性疾患、臓器移植毒性および拒絶反応、悪液質、アレルギー、組織性潰瘍、再狭窄およびアグレカナーゼ活性またはアグレカナーゼレベルの変化により特徴付けられる他の疾患を含む。
アグレカナーゼの活性を阻害する本発明の阻害剤および抗体および/またはアグレカナーゼの発現を低下させる化合物は、アグレカナーゼおよびアグレカナーゼ−関連タンパク質による、細胞外マトリックスの分解に関与する哺乳類のいずれの疾患を治療するのに用いることができる。医薬上許容されるビヒクル中の、少なくとも1つのアグレカナーゼ抗体または阻害剤の有効量は、疾患、例えば、骨関節症またはマトリックスタンパク質、例えばアグレカンの変更により、アグレカナーゼおよびアグレカナーゼ−関連タンパク質により、特徴付けられる他の開示された弛緩の治療に用いることができる。
VIII.投与
本発明の他の態様により、医薬上許容されるビヒクル中に治療的に有効な量のアグレカナーゼ阻害剤および抗体を含有する医薬組成物を提供する。したがって、本発明のこれらの組成物は、軟骨細胞におけるアグレカンのアグレカナーゼ介在分解は、骨関節症および他の炎症性疾患に関与している。したがって、本発明のこれらの組成物は、アグレカナーゼ酵素またはアグレカナーゼ−様活性を有するタンパク質によるアグレカンの分解により特徴付けられる疾患の治療に用いることができる。
本発明は、アグレカンの分解により特徴づけられる症状を患っている患者を治療する方法を含む。これらの方法は、本発明により、かかる治療を必要としている患者に、有効量の、アグレカナーゼ酵素のタンパク質分解活性を阻害する阻害剤を含む組成物を投与することを含む。本発明の阻害剤は、病状において、アグレカナーゼ活性を阻害することにより、または単純にアグレカナーゼのレベルを調節することにより機能することができると考えられる。
本発明の阻害剤は、ヒトまたは動物における種々の医学的障害を診断または治療するのに有用である。一の具体例において、本発明の抗体は、同じ抗体が結合していないアグレカナーゼタンパク質と比較して、アグレカナーゼタンパク質に関連する1つまたはそれ以上の活性を阻害または低下させるのに用いることができる。一の具体例において、本発明の阻害剤は、抗体が結合していないアグレカナーゼと比較して、1つまたはそれ以上のアグレカナーゼ分子の活性を阻害または減少させることができる。ある種の具体例において、アグレカナーゼの活性は、開示する抗体の1つまたはそれ以上が結合している場合、開示する抗体の1つまたはそれ以上が結合していないアグレカナーゼタンパク質に対して、少なくとも50%で阻害され、少なくとも60、62、64、66、68、70、72、76、78、80、82、84、86または88%で阻害されてもよく、少なくとも95%〜100%で阻害されていてもよい。
一般的には、本発明の組成物は、抗体またはそのフラグメントが、約1μg/kg〜約20mg/kg、約1μg/kg〜約10mg/kg、約1μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約100μg/kg、約100μg〜約1mg/kgまたは約500μg/kg〜約1mg/kgの投与量範囲で投与されるように、患者に投与する。また、継続注入は、最初のボーラス投与後に用いることができる。
別の具体例において、本発明は、アグレカナーゼ、例えばタンパク質、ペプチド、抗体、化合物の阻害剤の投与に関する。阻害剤の有効量とは、アグレカナーゼの活性を低下させて所望の生物学的効果を得るのに有効な投与量である。一般的には、阻害剤を投与するのに適した治療的投与量範囲は、例えば、約5mg〜約100mg、約15mg〜約85mg、約30mg〜約70mgまたは約40mg〜約60mgの範囲であってもよい。阻害剤は、1回で投与してもよく、または1日1回、週1回または月1回のように間隔をあけて投与することができる。アグレカナーゼ阻害剤の分解に関する投与スケジュールは、例えば、そのアグレカナーゼ標的に対する阻害剤のアフィニティー、阻害剤の半減期および患者の症状の重篤度に基づいて調節することができる。一般的には、阻害剤は、ボーラス投与として投与して、その循環レベルを最大限にする。継続注入は、最初のボーラス投与後に用いることができる。
かかる化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な投与量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な投与量)を決定するための、細胞培養物または実験動物モデルにおいて標準的かつ医薬的な方法により、測定することができる。毒性および治療的効果の間の投与比が治療指数であり、それはLD50/ED50比として示すことができる。大きな治療指数を示す阻害剤が、一般的には好ましい。
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトにおいて用いるための投与量の範囲を計算するのに用いることができる。かかる化合物の投与量は、ほとんどまたは全く毒性を持たないED50を示す循環濃度の範囲内である。投与量は、用いられる投与形態および用いられる投与経路に応じてこの範囲内で変化してもよい。本発明により用いられるいずれの阻害剤に関して、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイから見積もることができる。投与量を動物モデルにおいて処方して、細胞培養物により測定されるIC50(即ち、症状の最大限の阻害の半分を達成する試験抗体の濃度)を示す循環血漿濃度範囲を得ることができる。血漿におけるレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。いずれかの特定の投与量の効果は、適当な生物学的アッセイによりモニターすることができる。適当なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、転写に基くアッセイ、GDFタンパク質/受容体結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前肥満細胞の分化に基くアッセイ、肥満細胞におけるグルコースの取り込みに基くアッセイおよび免疫学的アッセイが挙げられる。
本発明の治療法は、アグレカナーゼ阻害剤組成物を、局所、全身またはインプラントまたはディバイスのような局所投与することを含む。組成物の投与に関する投与計画は、アグレカナーゼタンパク質の活性を修飾する種々の因子、病理部位、疾患の重篤度、患者の年齢、性別および食事、いずれの炎症の重篤度、投与回数および他の臨床因子に基づいて主治医の判断により決定される。一般的には、全身または注射可能な投与は、最低限有効である投与量で開始され、投与量は、ポジティブな効果が認められるまで、予め選択した時間経過に渡って増加するだろう。続いて、投与量の相対的な増加は、効果の対応する相対的な増加を生じるようなレベルに制限するが、生じ得るいずれの副作用を考慮に入れて為す。他の公知の因子を最終組成物に加えることにより投与量は影響されうる。
進行は、疾患の進行の定期的な評価によりモニターすることができる。進行は、例えば、X−線、MRIまたは他の画像化モダリティ、滑液分析および/または臨床試験によりモニターすることができる。
IX.検出のアッセイおよび方法
本発明の阻害剤および抗体は、サンプル中のアグレカナーゼの存在または不在を測定するための、またはそれを定量するためのアッセイおよび検出方法に用いることができる。本発明の阻害剤および抗体を用いて、インビボまたはインビトロでアグレカナーゼタンパク質を検出することができる。これらのタンパク質の存在またはレベルを疾患と関連づけることにより、当業者は、関連する疾患を診断し、その重篤度を決定することができる。開示される阻害剤および抗体により診断され得る疾患は上記した。
抗体との使用に関する検出方法は当該分野でよく知られており、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット、ウェスタンブロット、免疫蛍光法、免疫沈降法および他の匹敵する方法を含む。さらに、抗体は、タンパク質(例えば、アグレカナーゼタンパク質)を検出するためのこれらの方法の1つまたはそれ以上を組み込む診断キットに与えられてもよい。かかるキットは、アグレカナーゼタンパク質の検出を補助する他の成分、パッケージング、説明書または他の物質およびキットの使用に関する説明書を含んでいてもよい。タンパク質阻害剤、例えばペプチド阻害剤をかかる診断アッセイに用いる場合、タンパク質−タンパク質相互作用アッセイを用いることができる。
抗体および阻害剤が診断を目的とする場合、例えば、リガンド群(例えば、ビオチン)または検出可能なマーカー群(例えば、蛍光群、放射性同位元素または酵素)でそれらを修飾することを所望することができる。所望により、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれか)は、慣用的な方法を用いて標識化することができる。適当な標識は、フルオロフォア、クロモフォア、放射活性原子、電子密度試薬、酵素および特異的結合パートナーを有するリガンドを含む。酵素は、典型的にはその活性により検出される。例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼは、スペクトロフォトメーターを用いて定量可能な、テトラメチルベンズイジン(TMB)を青色色素に変換するその能力により検出することができる。他の適当な結合パートナーは、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、IgGおよびタンパク質Aおよび当該分野で公知の多くの受容体リガンド結合体を含む。
以下の実施例は、ヒトアグレカナーゼおよび他のアグレカナーゼ−関連タンパク質を単離し、特徴つけること、ヒトタンパク質を得ること、組み換え法によりタンパク質を発現することの本発明の処理を説明するものである。
実施例
実施例1:ADAMTS−5(アグレカナーゼ−2)のクローニング
ヒトADAMTS−5(GenBank受託番号#AF142099)の公開されている配列に対してPCRプライマーを設計した。ADAMTS−5に関する全長コーティング配列を、ヒト子宮cDNAライブラリー(Genetics Institute/Wyeth Research)から、Advantage−GC PCR キット(Clontech)を用いて増幅した。
ADAMTS−5をPCRを用いて単離した。アグレカナーゼ−5の組織発現パターンを、胎座、脳、筋肉、肺、心臓、子宮および脊髄を含む、7つの異なるオリゴdT−primedヒトcDNAライブラリーのPCR増幅により測定した。ADAMTS−5cDNAの5’および3’領域を増幅したPCRプライマーを用いた。ADAMTS−5の5’部位を増幅するためのプライマー配列は以下の通りである:5’プライマー:8bpテイル(GACTGACT)、およびADAMTS−5配列の開始コドン(ATG)の上流のEcoR1部位(GAATTC)を含む、5’GACTGACTGAATTCATACCCATAAAGTCCCAGTCGCGCA(配列番号16):および3’プライマー:5’CAGGGCTTAGATGCATCAATGCTGG(配列番号17)。ADAMTS−5の3’部位を増幅するプライマー配列は、以下の通りである:5’プライマー:5’TACCAGCATTGATGCATCTAAGCCCT(配列番号18)および3’プライマー:ADAMTS−5の停止コドン(TAG)の下流に8bpテイル(AAATGGGC)およびNot1部位(GCGGCCGC)を含む、5’AAATGGGCGCGGCCGCTGCATCGGTGCTGAATCCTCCAGTTATCT(配列番号19)。適当なサイズのPCR生成物、1404bpの5’増幅生成物および1519bpの3’増幅生成物は、基質としての子宮cDNAライブラリーを用いて見出した。Clontech社のAdvantage−GCPCRキットを、PCR反応に用いた。反応条件は、下記のように:用いたGCMeltの量が、50μlの反応あたり10μlであり;用いたNot1線形ライブラリーの量が0.2ng/μl反応であり;用いた各々のオリゴの量が2pmol/μl反応であることを除いて業者により推奨されたものとした。サイクリング条件は:1サイクル、95℃で1分;ついで、95℃15秒/68℃で2分からなる30サイクルとした。増幅による2オーバーラップPCR生成物を、EcoR1およびNsi1(5’生成物)またはNsi1およびNot1(3’生成物)で消化し、標準的なライゲーション酵素、緩衝液および条件を用いてEcoR1およびNot1で消化した、CHO発現ベクターpHTop_newにライゲーションした。ライゲーションした生成物を用いてLife Technologies(Carlsbad, CA)からのElectro MAXDH10B細胞に形質転換した。ADAMTS−5のクローン化PCRフラグメントの配列を決定し、確認した。
全長ADAMTS−5タンパク質のヌクレオチド配列を、PCR生成物由来のコンセンサス配列であった。2つのサイレントチェンジは、ADAMTS−5の公開された配列と比較してこの配列に反映されていた。これらの変更は、ヌクレオチド#711でGからAに、ヌクレオチド#2046でAからGに行った(番号付けはADAMTS−5のATG開始コドンのAを1として開始する)。ADAMTS−5ORFのオープンリーディングフレーム(ORF)ならびに5’および3’未翻訳領域(UTR)を含む全長cDNAを、哺乳類の発現ベクターpED6−dpc2にサブクローニングした。
全長ヒトアグレカナーゼ−2(hAgg−2)/ADAMTS−5タンパク質を発現するcDNAを、発現プラスミドpHTopにクローン化した。このプラスミドは、ほとんどのアデモメジャー後期プロモーターを除去し、オペレーターの6つの繰り返し部分(Gossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551 (1992))を挿入することにより、pED(Kaufman, et al., 核酸 Res. 19:4485-4490 (1991)から得た。hAgg−2を安定に発現するCHO細胞株を、pHTop/hAgg−2をCHO/A2細胞にトランスフェクトし、0.05μMのメトトレキサートにおいてクローンを選択することにより得た。クローンを、アグレカナーゼ−2に特異的なポリクローナル抗体を用いて条件付けたのウエスタン分析により、アグレカナーゼ−2発現をスクリーニングした。CHO/A2細胞株を、転写活性因子の結合、tetリプレッサーとヘルペスウイルスVP16転写活性化ドメイン間の融合(Gossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551 (1992))により、CHO DUKX B11細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77:4216-4220 (1980))から得た。
C−末端タンパク質精製タグを含む、切断ADAMTS−5タンパク質を、上記した全長ADAMTS−5構築物および合成DNAデュプレックスから、3のDNAフラグメントを用いて構築した。ADAMTS−5を、全長アグレカナーゼタンパク質のアミノ酸残基752(Pro)で切断した。全長タンパク質の752でのプロリンは、全長タンパク質の切断部位のN末端である。3つのDNAフラグメントは、pHTop_newベクターバックボーンおよびaADAMTS−5の5’部位を含有する5777bpのSgrA1/Not1フラグメント、ADAMTS−5を含有する1756bpのSgrA1/BspH1フラグメントおよびADAMTS−5を含有する304bpのBspH1/BsrG1フラグメントからなる。110bpの合成デュプレックスを構築するために用いられる4つのオリゴヌクレオチドフラグメントは下記の通りである:オリゴヌクレオチドフラグメント1:5’GTACAAAGATTGTTGGAACCTTTAATAAGAAAAGTAAGGGTTACACTGACGTGGTGAGGATTC(配列番号20);オリゴヌクレオチドフラグメント2:GSGSA(配列番号22)ペプチドリンカー、ついで、IBA融合C−末端から切断ADAMTS−5タンパク質のアミノ酸752のWSHPQFEK(配列番号23)Strep−tagIIタンパク質精製タグをコードする、5’CTGGATCCGGATCTGCTTGGAGCCACCCGCAGTTCGAAAAATAAGGC(配列番号21);オリゴヌクレオチドフラグメント3:5’GGCCGCCTTATTTTTCGAACTGCGGGTGGCTCCAAGCAGATCCGGATCCAGGAATCCTCAC(配列番号24)およびオリゴヌクレオチドフラグメント4:5’CACGTCAGTGTAACCCTTACTTTTCTTATTAAAGGTTCCAACAATCTTT(配列番号25)。各々のオリゴヌクレオチドフラグメントを、滅菌水で、最終濃度10pmol/μlに希釈した。等量(各々10μl)のオリゴヌクレオチドフラグメント1および4を混合した。等量の(各々10μl)のオリゴヌクレオチドフラグメント2および3を混合した。混合物を95℃で5分間加熱し、ついで、室温に冷却した。1μlの各々の混合物を、上記した3つのADAMTS−5DNAフラグメントの最終ライゲーションに用いた。標準的なライゲーション酵素、緩衝液および条件を用いた。ライゲーションした生成物を用いて、Life Technologies)Carlsbad, CA)からのElectro MAX DH10B細胞を形質転換した。クローン化した合成オリゴヌクレオチドを、忠実に配列決定し、配列を確認した。図18は、本発明のストレプトアビジンタグ化アグレカナーゼ−2タンパク質の概略である。
ADAMTS−5−野生型(WT)および活性部位変異(ASM)の発現
CHO/A2細胞を、ADAMTS−5−WTまたはASM発現ベクターで、リポフェクチン(Life Technologies, Inc.)を用いてトランスフェクトした。該細胞を、0.02、0.05および0.1mMのメトトレキサート(MTX)選択培地の存在下でプレートに置き、37℃、5%のCO2下、2週間培養した。コロニーを取り出し、選択培地中で培養する間、細胞株に拡張した。
別の実験において、CHO細胞を、図17に示すように、アグレカナーゼ−1の活性部位変異でトランスフェクトした。
実施例3:ADAMTS−5活性部位変異のサブクローニング
ADAMTS−5中のE411−Q411位の変異を、QuickChange部位指定突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて生成した。突然変異誘発を、pHTop/Agg−2で、QuickChange部位指定突然変異誘発キット(Stratagene、カタログ番号200518)を用いて行った。2597−Gから2597−Cへの単一の塩基対変異は、アグレカナーゼ−2タンパク質の触媒ドメインの411位置(配列番号30)で単一アミノ酸変化(EからQに)を生じさせた。この変異は、ミニ−ストロメリシン−1(Steele et al., Protein Engineering 13:397-405(2000))の触媒活性を不活性化することが示される。hAgg−2(E411Q)活性部位変異を安定に発現するCHO細胞株を、pHTop/hAgg−2(E411Q)をCHO/A2細胞にトランスフェクトし、.05μMのメトトレキサート中にクローンを選択することにより得た。クローンを、アグレカナーゼ−2発現に関して、アグレカナーゼ−2に特異的なポリクローナル抗体を用いる、条件付けたのウエスタン分析により、スクリーニングした。
加えて、本発明のアグレカナーゼ−1分子の活性部位におけるEからQへの変異を生成した。図17は、触媒ドメインにEからQへの変異を含む、本発明の組み換え切断アグレカナーゼ−1分子の概略である。これらのアグレカナーゼ−1分子をコードする核酸配列を、適当なベクター:例えば、開示したpHTopにクローン化し、続いて、適当な細胞株、例えばCHO細胞にトランスフェクトした。本発明アグレカナーゼに関して安定にトランスフェクトされたものを、上記のように選択した。活性部位アグレカナーゼ変異の発現レベルは、発現するアグレカナーゼに特異的な抗体を用いて検出することができる。
実施例4:ウエスタンブロッティング
ADAMTS−5 WTまたはASMを発現するCHO細胞からの条件付けたを、還元条件下で、12%のSDS−PAGEゲル上に置いた。ついで、試料を、ニトロセルロース膜に移した。ADAMTS−5タンパク質を、ADAMTS−5に対するポリクローナル抗体、ついで、ヤギ−抗−ウサギIgG−HRPおよび化学発光基質(Pierce, Milwaukee, WI)により検出した。
別の実験において、切断アグレカナーゼ−2タンパク質を発現するCHO細胞からの条件付けたを、12%のSDS−PAGE上に置いた。かかる実験の結果を図19に示す。簡単には、CHO細胞を、アミノ酸#1〜アミノ酸#567の切断アグレカナーゼ2もしくはアミノ酸#1〜アミノ酸#628の切断アグレカナーゼ−2をコードする核酸または全長アグレカナーゼ−2分子を発現する核酸でトランスフェクトした。適当なCHO細胞株は、アミノ酸#1〜567もしくはアミノ酸#1〜628のアグレカナーゼ−2または全長アグレカナーゼ−2分子のいずれかを発現して成長した。続いて、細胞をタンパク質に対して採取し、種々アグレカナーゼ−2分子の発現レベルを、アグレカナーゼ−2に特異的な抗体を用いてウエスタンブロット分析により測定した。図19に示す実験により示されるように、切断アグレカナーゼタンパク質は、全長アグレカナーゼ−2タンパク質と 比較して、高い安定性のために高レベルで発現する。
実施例5:マイクロキャピラリーHPLC−質量分析
組み換えADAMTS−5−WTまたはASMタンパク質を、HP−HPLCにより精製して、さらに、1D−SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。タンパク質を、Coommassie青色染色により視覚化し、インサートのタンパク質帯を、手で摘出し、ついで、還元し、アルキル化し、自動ゲル中消化ロボットを用いて、インシトゥで、トリプシンまたはエンドペプチダーゼLys−C(Promega, Madison, WI)で消化した。消化後、ペプチド抽出物を濃縮し、マイクロエレクトロスプレー逆相HPLCにより分離した。ペプチド分析を、Finnigan LCQイオントラップ質量分析計(ThermoQuest, San Jose, CA)で行った。MS/MSデータの自動分析を、全ゲノムからのタンパク質を用いてFinnigan Bioworksデータ分析パッケージ(ThermoQuest, San Jose, CA)に組み込んだSEQUESTコンピュータアルゴリズムを用いて行った。
実施例6:発現アグレカナーゼの生物学的活性
発現したアグレカナーゼタンパク質、例えば、本発明の切断アグレカナーゼの生物学的活性を測定するために、タンパク質を細胞培養物から回収し、ついでアグレカナーゼ関連タンパク質を、同時産生される他のタンパク質物質ならびに他の混入物質から単離することにより精製した。精製は、当業者に公知の標準的な方法を用いて行う。単離タンパク質は、以下のアッセイに従ってアッセイすることができる。
タンパク質が、アグレカナーゼ切断部位でアグレカンを切断することができる酵素であるかを特異的に決定するためのアッセイ:
蛍光ペプチドアッセイ:発現されたタンパク質を、アグレカンのアグレカナーゼ切断部位のアミノ酸を含む、合成ペプチドと共にインキュベートする。合成ペプチドのN末端またはC末端のいずれかはフルオロフォアで標識し、他方の末端はクエンチャーを含む。ペプチドの切断により、フルオロフォアとクエンチャーが分かれ、蛍光が顕現化する。このアッセイから、発現されたアグレカナーゼタンパク質が、アグレカナーゼ部位でアグレカンを切断することができることを決定することができ、相対的蛍光が、発現されたタンパク質の相対的活性を示す。
ネオエピトープウェスタン:発現されたタンパク質を完全なアグレカンと共にインキュベートする。得られたサンプルをいくつかの生化学的操作(透析、コンドロイチナーゼ処理、凍結乾燥、および再構築)に供した後、サンプルをSDSPAGEゲルに流す。ゲルを、アグレカナーゼ切断後に露出するアグレカン上における部位のみに特異的である抗体と共にインキュベートする。ゲルをニトロセルロースに移し、二次抗体を用いて展開し(ウェスタンアッセイと呼ばれる)、続いて、アグレカンのアグレカナーゼにより作製される切断産物と一致する分子量のところに走っているバンドパターンを得る。このアッセイにより、発現されたアグレカナーゼタンパク質がアグレカナーゼ切断部位でネイティブのアグレカンを切断したことが示され、また、切断産物の分子量も得ることができる。バンドの相対密度により、相対アグレカナーゼ活性に関するいくつかの見解を得ることができる。
発現されたタンパク質が、タンパク質のいずれかの場所でアグレカンを切断することができるかを決定するためのアッセイ(アグレカナーゼ部位に特異的でない):
アグレカンELISA:発現されたタンパク質を、プラスチックウェルに予め固着させた完全なアグレカンと共にインキュベートする。ウェルを洗浄し、ついで、アグレカンを検出する抗体と共にインキュベートする。ウェルを、二次抗体を用いて展開する。アグレカンの当初の量がウェルに残っている場合、抗体はウェルを濃厚に染色する。一方、発現されたアグレカンタンパク質のアグレカナーゼ活性によりアグレカンが消化された場合、アグレカンはプレートから除去され、抗体によりアグレカンコートされたウェルの染色は減少する。このアッセイは、発現されたタンパク質がアグレカンを(アグレカナーゼ部位だけでなく、タンパク質中のいずれかの場所で)切断することができるかどうかを示し、さらに、相対的なアグレカンの切断を測定することができる。
一のかかる実験の結果を図20に示す。これは、アグレカン切断を、アグレカンを切断アグレカナーゼ−2分子とインキュベートした後に、3B3ELISAアッセイを用いて検出した。図20に示されるかかる実験結果は、切断アグレカナーゼ;例えば、アミノ酸#1〜567のアグレカナーゼ−2およびアミノ酸#1〜628のアグレカナーゼ−2とインキュベーション後のアグレカン切断%を含む。図20に示されるように、1つまたはそれ以上の削除されたTSPドメインを有する本発明の切断アグレカナーゼは、生物学的に活性である。
単離タンパク質のタンパク質分析を、銀で染色した(Oakley, et al., Anal Biochem. 105:361 (1980))SDS−PAGEアクリルアミド(Laemmli, Nature 227:680 (1970))、および免疫ブロット(Towbin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:4350 (1979))によるなどの標準的な方法を用いて行う。上記したアッセイを用いて、発現されたアグレカナーゼ関連タンパク質を、その活性に関して評価し、有用なアグレカナーゼ関連分子を同定する。
活性アッセイ:マイクロタイタープレート(Costar)を、ヒアルロン酸(ICN)、ついで、コンドロイチナーゼ(Seikagaku Chemicals)−処理ウシアグレカンでコートした。WTADAMTS−5またはADAMTS−5 ASMを発現するCHO細胞からの条件付けたを、アグレカン−コートプレートに加えた。球間ドメイン内のE373−A374でのアグレカン切断を、洗い落とした。残った未切断アグレカンを、3B3抗体(ICN)、ついで、抗−IgM−HRP二次抗体(Southern Biotechnology)で検出した。最終着色を、3,3’’,5,5’’テトラメチルベンジジン(TMB, BioFx Laboratories)で行った。
ADAMTS−5を、不活性プロ−形態(約90kDa)で合成し、フリンにより処理して、約70kDaの成熟種を得た。ADAMTS−5でトランスフェクトしたCHO株からの条件付けたは、少量の活性な成熟タンパク質を発現した。発現された主要な種は、成熟タンパク質の切断生成物である約55kDaのタンパク質であった。
ADAMTS−5でトランスフェクトしたCHO安定株からの条件付けたは、酵素が切断されて約55kDaの種を与えることを示していた。クリップ形態の質量分析およびN−末端の配列決定により、開裂が、スペーサードメインにおいてE753−G754残基を生じさせたことが明らかとなった。EDTAまたは非特異的ヒドロキサメートメタロプロテアーゼ阻害剤の存在下では、約70kDaの全長変異タンパク質が保持された。この切断は、自己触媒性であり、CHO条件付けた中の酵素の存在によるものではない。部位特異的突然変異誘発を、ADAMTS−5の触媒HELGHモチーフ(配列番号26)内のE411−Q411を変異されるために行った。安定なCHO株を、このADAMTS−5活性部位変異(ADAMTS−5ASM)で作成した。ADAMTS−5 ASMでトランスフェクトしたCHO安定株からの条件付けたは、ELISA(図16)により示されるようにアグレカナーゼ活性を欠いていた。55kDaのクリップ形態よりむしろ約70kDaの全長タンパク質が、ADAMTS−5ASMを発現するCHO細胞からの条件付けたのウエスタンブロットにおいて優勢であった。
上記の実施例は、組み換えADAMTS−5が、スペーサードメインにおける残基E753−G754でのタンパク質分解性切断に感受性であることを示している。この開裂は、変異タンパク質のサイズを約55kDaに減少させ、EDTAおよび非特異的ヒドロキサメートメタロプロテアーゼ阻害剤により阻害される。ADAMTS−5の触媒ドメインにおける点変異は、タンパク質の酵素活性を不活性化し、切断から全長タンパク質を保護する。したがって、タンパク質分解プロセシングは自己触媒的であり、CHO細胞の条件付けたのプロテアーゼの存在によるものではないことが考えられる。
実施例7:アグレカナーゼの発現
ネズミ、ヒトまたは他の哺乳類アグレカナーゼ−関連タンパク質を産生するために、アグレカナーゼタンパク質をコードするDNAを、適当な発現ベクターにトランスフェクトし、哺乳類細胞または昆虫細胞培養系を含む他の好ましい真核細胞もしくは原核細胞宿主に、慣用的な遺伝子工学法を用いて導入した。生物学的に活性な組み換えヒトアグレカナーゼの発現系は、安定に形質転換された哺乳類、昆虫、酵母または細菌細胞であると考えられる。
当業者は、図3のヌクレオチド配列、ヌクレオチド#1(atg)〜#2259(gaa);図5のヌクレオチド配列、ヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct);図7の核酸配列、ヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1884(ttt);または図9の核酸配列、ヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat)あるいはアグレカナーゼまたはアグレカナーゼ−様タンパク質をコードするDNA配列または他の修飾配列または公知のベクター、例えばpCD(Okayama et al., Mol. Cell Biol., 2:161-170 (1982))、pJL3、pJL4(Gough et al., EMBO J., 4:645-653 (1985))およびpMT2CXMを用いて、哺乳類発現ベクターを構築することができる。
哺乳類の発現ベクターpMT2CXMは、p91023(b)の誘導体であり(Wong et al., Science 228:810-815 (1985))、テトラサイクリン耐性遺伝子の代わりにアンピシリン耐性遺伝子を含み、かつさらにクローンの挿入するためのXhoI部位を含む点で後者と異なる。pMT2CXMの機能エレメントが開示されており(Kaufman, R.J. 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:689-69)、アデノウイルスVA遺伝子、72bpのエンハンサーを含む複製SV40起源、5’スプライス部位およびアデノウイルス後期mRNA上に存在するアデノウイルス三つ組リーダー配列の大部分を含んでいるアデノウイルス主要後期プロモーター、3’スプライスアクセプター部位、DHFRインサート、SV40初期ポリアデニル化部位(SV40)およびイー・コリの増殖に必要なpBR322配列が含まれる。
プラスミドpMT2 CXMは、American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville, MD(USA)に受託番号67122の下で寄託されているpMT2−VWFのEcoRI消化により得られる。EcoRI消化により、pMT2−VWFに存在するcDNAインサートが切り出され、線状のpMT2が得られ、これをライゲートして用いて、イー・コリHB101またはDH−5をアンピシリン耐性に形質転換することができる。プラスミドpMT2DNAは、慣用的な方法により調製することができる。ついで、pMT2 CXMを、ループアウト/変異形成を用いて構築する(Morinaga, et al., Biotechnology 84: 636 (1984))。これにより、複製のSV40起源の近傍のHindIII部位およびpmT2のエンハンサー配列に関連する塩基1075〜1145が除去される。加えて、これにより、以下の配列:5’PO−CATGGGCAGCTCGAG3’(配列番号27)がヌクレオチド1145に挿入される。この配列は、制限エンドヌクレアーゼXhoIの認識部位を含む。pMT23と称されるpMT2 CXMの誘導体は、制限エンドヌクレアーゼPstI、EcoRI、SalIおよびXhoIの認識部位を含む。プラスミドpMT2 CXMおよびpMT23DNAは、慣用的な方法により調製することができる。
また、pMT21から誘導されるpEMC2β1も本発明での実施に適当であり得る。pMT21は、pMT2−VWFから誘導されるpMT2から誘導される。上記したように、EcoRI消化により、pMT−VWFに存在するcDNAインサートが切り出され、ライゲーションされうる鎖状形態のpMT2が得られ、これをライゲートして用い、イー・コリHB101またはDH−5をアンピシリン耐性に形質転換することができる。プラスミドpMT2DNAは、慣用的な方法により調製することができる。
pMT21は、以下の2つの修飾によりpMT2から誘導した。最初に、G/Cテイリングから19G残基のストレッチを含んでいる76bpのDHFRcDNAの5’非翻訳領域を削除する。この操作において、XhoI部位を挿入して、DHFRからすぐ上流に以下の配列を得る:
5' CTGCAGGCGAGCCTGAATTCCTCGAGCCATCATG (配列番号28)
PstI Eco RI XhoI
第2に、ユニークなClaI部位を、EcoRVおよびXbalでの消化、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントでの処理、およびClaIリンカー(CATCGATG)へのライゲーションにより導入した。これにより、アデノウイルス関連RNA(VAI)領域から250bpのセグメントが削除されるが、VAI RNA遺伝子の発現または機能は干渉しない。pMT21をEcoRIおよびXhoIで消化し、ベクターpEMC2B1を誘導するのに用いた。
EMCVリーダーの部分を、PMT2−ECAT1(S.K. Jung, et al, J. Virol 63:1651-1660 (1989))から、EcoRIおよびPstIでの消化により得、2752bpのフラグメントを得た。このフラグメントをTaqIで消化し、508bpのEcoRI−TaqIフラグメントを得、これを低融点アガロースゲル上での電気泳動により単離した。68bpのアダプターおよびその相補鎖を、以下の配列:
5' CGAGGTTAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTT
TaqI
GAAAAACACGATTGC 3' (配列番号29)
XhoI
を有する5’TaqI突出末端および3’XhoI突出末端を用いて合成する。
この配列は、ヌクレオチド763〜827のEMCウイルスリーダー配列に適合する。また、EMCウイルスリーダー内のポジション10ではATGがATTに変化しており、XhoI部位が続く。pMT21EcoRI−16hoIフラグメント、EMCウイルスEcoRI−TaqIフラグメントおよび68bpのオリゴヌクレオチドアダプターTaqI−16hoIアダプターの3工程のライゲーションにより、ベクターpEMC2β1が得られる。
このベクターは、複製のSV40起源およびエンハンサー、アデノウイルス主要後期プロモーター、アデノウイルス三つ組リーダー配列の大部分のcDNAコピー、小ハイブリッド介在配列、SV40ポリアデニル化シグナルおよびアデノウイルスVAI遺伝子、DHFRおよびβ−ラクタマーゼマーカーおよびEMC配列を含み、哺乳類細胞における所望のcDNAの高レベルの発現を指向する。
ベクターの構成は、アグレカナーゼ−関連DNA配列の修飾を含みうる。例えば、アグレカナーゼをコードするcDNAは、コーディング領域の5’および3’末端の非コーディングヌクレオチドを除去することにより修飾することができる。削除された非コーディングヌクレオチドは、発現に有益であることが知られている他の配列に置き換えても、置き換えなくてもよい。これらのベクターは、アグレカナーゼまたはアグレカナーゼ−様タンパク質の発現に適した宿主細胞に形質転換される。加えて、図3のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2259(gaa)または図5のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct)または図7のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1884(ttt);または図9のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat)の配列あるいはその変異体のフラグメントまたは本発明のアグレカナーゼをコードする他の配列またはアグレカナーゼ活性を有するタンパク質は、プロペプチド配列をコードするアグレカナーゼを削除し、これらを他のアグレカナーゼタンパク質完全プロペプチドをコードする配列に置き換えることにより、アグレカナーゼまたはアグレカナーゼ−様タンパク質を発現するように操作することができる。
当業者は、図3のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2259(gaa);または図5のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#2256(cct);または図7fromヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1884(ttt);または図9のヌクレオチド#1(atg)〜ヌクレオチド#1701(cat)の配列;または図23および24に示される、図12および13のアグレカナーゼ分子をコードするヌクレオチド配列またはそのフラグメントおよび変異体を、哺乳類調節配列を排除して、細菌配列を有するコーディング配列に置換して切断アグレカナーゼ分子の細胞内または細胞外発現のための細菌ベクターを作成することにより操作することができる。例えば、コーディング配列は、さらに操作することができる(例えば、別の公知のリンカーにライゲーションするか、または非コーディング配列をそれから除去することにより修飾するか、あるいは、別の公知の方法によりそこのヌクレオチドを変更する)。ついで、修飾アグレカナーゼコーディング配列を、T. Taniguchi et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77:5230-5233 (1980)に記載の方法を用いて公知の細菌ベクターに挿入することができる。ついで、この代表的なベクターを、細菌宿主細胞に形質転換して、本発明のアグレカナーゼタンパク質を発現する。細菌細胞におけるアグレカナーゼ−関連タンパク質の細胞外発現を生じさせる方法に関しては、例えば、欧州特許出願EPA177,343を参照されたい。
同様の操作を、昆虫細胞における発現のためのインサートベクターの構築のために行うことができる(例えば、欧州特許出願155,476に記載の方法を参照)。また、酵母ベクターも、酵母細胞による本発明の因子の細胞内または細胞外発現のための酵母調節配列を用いて構築することができる(例えば、PCT出願WO86/00639および欧州特許出願EPA123,289に記載の方法を参照)。
哺乳類、細菌、酵母または昆虫宿主細胞系における、高レベルのアグレカナーゼ−関連タンパク質を産生する方法は、異種アグレカナーゼ−関連遺伝子の複本を含有する細胞を構築することを含みうる。異種遺伝子を、増幅可能なマーカー;例えば、forwhich増加した遺伝子のコピーを含有する細胞をメトトレキサート(MTX)の濃度を増加させる増殖に関して選択することができる、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子を、Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol., 159:601-629 (1982)の方法に従って結合させる。この方法は、多くの異なる細胞型で用いることができる。
例えば、その発現を可能にする他のプラスミド配列およびDHFR発現プラスミドpAdA26SV(A)3(Kaufman and Sharp, Mol. Cell. Biol., 2:1304 (1982))に作用的に結合した、アグレカナーゼまたは本発明のアグレカナーゼ−様分子に関するDNA配列含有プラスミドは、リン酸カルシウム同時沈殿およびトランスフェクション、エレクトロポレーションまたは原形質融合を含む種々の方法により、DHFR−欠乏CHO細胞、DUKX−BIIに同時に導入することができる。DHFR発現形質転換細胞は、透析ウシ胎児血清を有するアルファ培地での増殖に選択され、ついで、Kaufman et al., Mol Cell Biol., 5:1750 (1983)に記載のような、MTXの増加濃度(例えば、0.02、0.2、1.0および5μMのMTXでの逐次工程)での成長による増幅に選択される。形質転換細胞をクローン化し、生物学的に活性なアグレカナーゼ発現を、上記したアッセイの少なくとも1つにより観察する。アグレカナーゼタンパク質発現が増加することによりMTX耐性のレベルも増加する。アグレカナーゼポリペプチドは、当業者に公知の標準的な方法、例えば35Sメチオニンまたはシステインでのパルス標識およびポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて特徴付ける。同様の方法を、別のアグレカナーゼまたはアグレカナーゼ−様タンパク質を産生するのに用いることができる。
一の具体例において、本発明のアグレカナーゼヌクレオチド配列は、発現ベクターpED6にクローン化することができる(Kaufman et al., Nucleic Acid Res 19:44885-4490 (1991))。COSおよびCHODUKXB11細胞を、一時的に、本発明のアグレカナーゼ配列(分離pED6プラスミド上のPACEの+/−同時トランスフェクション)で、リポフェクション(LF2000, Invitrogen)によりトランスフェクトした。2倍のトランスフェクション:(a)活性アッセイのために、条件付けた培地を回収するための一のトランスフェクションと(b)35−S−メチオニン/システイン代謝標識化のための一のトランスフェクションを、目的の各分子に関して行う。
1日目に培地を、(a)活性アッセイのために回収するために、ウェル上のDME(COS)またはアルファ(CHO)培地+1%熱不活性化ウシ胎児血清+/−100μg/mlへパリンに変更した。48時間(4日)後、条件付けた培地を活性アッセイのために回収する。
3日目に、二重ウェルセットを、(b)をMEM(メチオニン−不含/システイン不含)培地+1%熱不活性化ウシ胎児血清+100μg/mlへパリン+100μCi/ml35S−メチオニン/システイン(Redivue Pro mix, Amersham)に変更する。37℃で6時間インキュベーションした後、条件付けた培地を回収し、SDS−PAGEゲル上還元条件下に流す。タンパク質をオートラジオグラフィーにより視覚化する。
発現したアグレカナーゼ関連タンパク質、上記実施例で得たタンパク質の生物学的活性を測定するために、タンパク質を細胞培養物から回収し、ついでアグレカナーゼ関連タンパク質を、同時産生される他のタンパク質物質ならびに他の混入物質から単離することにより精製した。単離タンパク質は、上記アッセイに従ってアッセイすることができる。精製は、当業者に公知の標準的な方法を用いて行う。
タンパク質分析は、標準的な方法、例えば銀(Oakley, et al. Anal. Biochem. 105:361 (1980))で染色されたSDS−PAGEアクリルアミド(Laemmli, Nature 227:680 (1970))を用いて、免疫ブロット法(Towbin, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:4350 (1979))により実施される。
上記記載は、本発明の好ましい具体例を詳細に記載したものである。その実施における多くの修飾および変更が、これらの記載を考慮して、当業者は予想することができる。これらの修飾および変更は、本明細書に添付する請求の範囲内に包含される。
(本文に記載なし)