JP2005511095A - D−アミノ酸オキシダーゼのバイアレリック・マーカー及びその用途 - Google Patents

D−アミノ酸オキシダーゼのバイアレリック・マーカー及びその用途 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヒトDAO遺伝子、ポリヌクレオチド及びバイアレリックマーカーに関する。またh、本発明は、総合失調症と前記バイアレリックマーカーとの間に構築された関連に関する。本発明は、総合失調症または関連CNS障害に対する個体の病因素質を測定する方法ならびに疾患の診断及び予測手段を提供する。

Description

本発明は、薬理ゲノム科学の分野における、D−アミノ酸オキシダーゼ(DAO)遺伝子又はその近傍に位置するバイアレリック・マーカー及びこれら、マーカーの用途に、基本的に向けられている。本発明は、これらのマーカーと、統合失調症及び他の気分関連障害のような中枢神経系障害との関連を構築する方法を包含する。また、本発明は、これらの障害に対する個体の素因を決定するための手段、ならびにこのような疾病の診断及びロイコトリエン経路に対して作用する作動薬に応答して結果として起こりえる治療の予後/検出のための手段を提供する。
この出願は、「D−アミノ酸オキシダーゼのバイアレリック・マーカー及びその用途」という名称で、2001年12月12に出願された米国仮特許出願60/340400において優先権を主張する。
基礎及び臨床の研究者が利用できる技術的医療設備における進歩により、健康状態及び疾病状態における脳及び神経系の機能のますます精巧な研究が可能になっている。多数の仮説が、神経生物学及び薬理学の両方で、精神病及び神経変性疾患を含む様々な中枢神経系(CNS)障害に関与する神経化学的機構及び遺伝的機構に関して提唱されている。しかし、CNS障害は、病因が複雑で、十分には理解されておらず、そして重複し、十分な特徴づけがなされず、また測定が困難な症状を有する。その結果として、将来の治療計画及び薬物開発の作業には、より精巧であること、そして多重遺伝子的原因に注目することが要求され、そして疾患集団を分け、かつCNS障害に罹患している患者に対してより正確な診断及び予後情報を提供するための新しいアッセイが必要である。
CNS障害の神経学的基礎
様々な神経伝達物質が体中でシグナル伝達物質としての役割を果たす。従って、神経伝達に影響を及ぼす疾患は深刻な結果をもたらすことがある。例えば、30年以上にわたって、うつ病などの多くの精神障害の生物学的基礎を説明する最も有力な理論は、モノアミン仮説であった。この理論では、うつ病は、部分的には、3つの主要な生体モノアミン、すなわちドーパミン、ノルエピネフリン及び/又はセロトニンの1つが欠損しているためであると提唱されている。モノアミン仮説に加えて、非常に多くの議論は、脳の全体的な機能を考慮に入れることに重要性を示す傾向があり、単一ニューロン系を検討することだけにはもはや重要性を示さない傾向がある。このような情況において、現在では、二次及び三次のメッセンジャー系を含む中枢性のアミン作動性系に対する二重の特異的作用の重要性が明らかにされている。
CNS障害の内分泌的基礎
さらに、主要なモノアミン系、すなわちドーパミン、ノルエピネフリン及びセロトニンにより、多くのCNS障害の病態生理学が完全には説明されないことは明らかである。特に、CNS障害が内分泌的要素を有することがあることは明らかである。すなわち、副腎皮質刺激ホルモン放出因子及びグルココルチコイドの作用を含む視床下部−下垂体−副腎(HPA)系が、CNS障害の病態生理学では重要な役割を果たしている。視床下部−下垂体−副腎(HPA)系において、視床下部は、ホルモン分泌を調節する階層の頂上に位置する。視床下部は、脳の基底部において下垂体に作用するペプチド(アミノ酸の短鎖)を産生し、放出し、これにより、下垂体による血液中への様々なホルモンの放出を刺激又は阻害する。これらのホルモンは、その中でも成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、標的となる腺からの他のホルモンの放出を制御する。神経系の外部で機能することに加えて、下垂体ホルモンに応答して放出されるホルモンはまた、下垂体及び視床下部にフィードバックする。下垂体及び視床下部に対して、それらは、過剰なホルモンの生合成を制限するように作用する阻害シグナルを送達する。
CNS障害
神経伝達物質及びホルモンの異常は、運動障害(例えば、パーキンソン病、ハンチングトン病、運動ニューロン疾患など)、気分障害(例えば、単極性うつ病、双極性障害、不安など)及び認知を伴う疾患(例えば、アルツハイマー病、レヴィー小体痴呆、統合失調症など)に関係している。さらに、これらの系は、昏睡、頭部損傷、脳梗塞、てんかん、アルコール中毒及び小児期において特に認められる代謝起源の精神遅滞状態などの多くの他の障害に関係している。
複合形質の遺伝学的分析
最近まで、感知できる特性と関連した遺伝子の確認は、主として、連鎖解析とよばれる統計学的アプローチに頼られてきた。連鎖解析は、遺伝子マーカーの伝達と家族内での世代にわたる特定の形質のそれとの間の相関関係を構築することに基づいている。連鎖解析は、多発情動個体を伴う家族の研究を含み、遺伝した形質の検出において有用であり、それは単一遺伝子又はもしかすると非常に少ない遺伝子に起因する。しかし、連鎖研究は、複合遺伝学的形質に適用される場合、立証することが困難であった。
医学的に直接関連するほとんどの形質は、メンデルの単一遺伝子の遺伝に単純には従わない。しかし、複合疾患は、しばしば家族内に集約され、それは、見出されるべき遺伝学的要素があることを示唆する。そのような複合形質は、しばしば多重遺伝子の結合作用ならびに環境要因のためである。そのような複合形質は、心臓疾患、高血圧症、糖尿病、癌及び炎症性疾患に対する感受性を含む。薬物効能、応答及び耐性/毒性はまた、複合疾患と同様に遺伝学的要素を含む多重因子的形質とみなされることがある。
連鎖解析は、多くの情報を与える家族には全く有用でない形質の研究に適用することができない。さらに、それらの低い浸透度のため、そのような複合形質は、一つの世代から次世代に伝えられるというような、明確にカットされたメンデルの手法で分離することができない。そのような疾患を染色体上に位置づける試みは、結論の出ない結果によって悩まされており、より精巧な遺伝子的ツールの必要性がはっきりと証明されている。
神経系及び内分泌系における遺伝学的変化についての認識は、なぜ疾病に対してより影響されやすいヒトもいれば、治療に対して好ましい反応を示すのが困難なヒトもいるのかを理解する上で重要である。遺伝的多型を同定する方法、それらがどのように疾患感受性に強い衝撃を与え、予測し、治療に対して応答するかを分析する方法が必要である。神経系及び内分泌系に含まれる遺伝子は主な薬物標的を象徴し、薬学的研究に高く直接的に関連するが、われわれは、未だ、それらの遺伝子におけるシーケンス変化及びその調節因子の範囲及び本質に関する認識に乏しい。
多型性が認められている場合、変化の関連性はめったに理解されない。多型性は、どの遺伝子が複遺伝子性又は量的形質に寄与するかの決定における遺伝子マーカーとしての使用に有望であるが、これらのマーカーを開発する適切なマーカー及び適切な方法は未だ見出されておらず、脳又は神経系の障害に関連するほんのわずかな遺伝子をもたらすに過ぎない。これらの目標達成の基礎は、これらの形質の感受性を予測するマーカーを検出するための遺伝子関連分析を用いることである。
近年、遺伝子学及び分子生物学の分野での進歩は、疾患をもたらすヒト遺伝子の形態又は対立遺伝子の同定を可能にしている。これまで同定されたヒトの疾患の要因となる遺伝学的変化のほとんどは、単一遺伝子障害の分類に属する。この名称が意味するように、単一遺伝子障害の発生が、単一遺伝子の対立遺伝子によって明らかにされ又は多分に影響される。これらの障害を引き起こす対立遺伝子は、一般に、それらを伴う個体に対して非常に有毒である(及び高い浸透性を有する)。従って、これらの対立遺伝子及びそれに伴う疾患は、いくつかの例外を除いて、ヒト集団において非常にまれな傾向にある。対照的に、医薬製剤に対する生理学的応答のような、ほとんどの一般的な疾患及び非疾患の形質は、多くの複雑な因子の結果として捕らえることができる。これらは、環境にさらされること(毒素、対立遺伝子ゲン、感染要因、気候及び外傷)ならびに多数の遺伝学的因子を含むことができる。
関連研究は、血縁関係のない(少なくとも直接の血縁関係がない)個体集団に現存する染色体の分布の分析を得ようとしている。この種の研究における仮説は、一般の形質に対する感受性をもたらす遺伝学的対立遺伝子は、集団における多くの世代を通して代々伝えられた染色体における大昔の突然変異の発生によって生じたというものである。これらの対立遺伝子は、そのような対立遺伝子に影響される形質が有害なものである場合、それらを伝える個体のうち、ごく少数でしか発現されないため、集団全体にわたる一部において普通になることがある。対立遺伝子のすぐ近くを取り囲むDNA領域以外では、遺伝マーカーは組み換えプロセスを通して形質感受性対立遺伝子から分離されやすいという事実のため、これら「祖先の」染色体の同定は困難になる。感受性対立遺伝子を取り囲むDNAのフラグメントに含まれる遺伝マーカーの同定は、対立遺伝子が発生する祖先の染色体から得られるものと同様であろう。従って、集団の中に複雑な形質を発現する個体がある場合、その個体は、形質を発現しない個体よりも、より高い頻度で感受性対立遺伝子の近傍に同様のセットの遺伝マーカーをもっていることが予想される。つまり、これらのマーカーは、形質との関連を示すことになる。
統合失調症
統合失調症は主な精神病性障害の中でも最も重篤で衰弱につながるもののひとつである。統合失調症は通常、思春期後期または成人した後の早い段階で始まり、慢性化して身体障害になることも多い。この病気を発症する危険性に男女差はないが、ほとんどの男性は16歳から25歳の間に羅患するのに対して、女性の場合は症状が見られるのが25歳から30歳の間である。統合失調症の人々は「陽性」症状(妄想、幻覚、支離滅裂な思考および激越など)と「陰性」症状(気力または物事に対する意欲の減退、社会生活からの引きこもり、無関心および感情鈍磨など)の両方を経験することが多い。世界人口の1%が統合失調症に羅患している。世界中で推定4500万人が統合失調症であり、このうち3300万人以上は開発途上国にいるとみられている。
この疾患は、直接的および間接的に必要になる費用と疾患に関連して社会的に非難されるという両方の面で、ときには何世代にもわたって患者の家族や親類にとって大きな重圧となる。このような非難が原因で孤立して怠慢になることもある。
さらに、統合失調症は、精神衛生費全体の4分の1を占め、精神病院のベッド3床に1床が統合失調症患者のために使われている。ほとんどの統合失調症患者は決して仕事をすることができない。統合失調症が社会に与えるコストは甚大である。たとえば米国では、統合失調症治療のための直接的な費用は国民総生産の0.5%に近いと推定されている。統合失調症患者の標準化死亡比(SMR)は一般人口の場合と比べて2〜4倍高いと推定されており、全体でみた推定寿命は一般人口の場合よりも20%短い。統合失調症患者の間で最も一般的な死因は自殺(患者の10%)であるが、これは一般人口の場合と比べて20倍の危険性である。心臓疾患および呼吸器や消化器系の疾患での死亡も統合失調症患者の間で増加している。
双極性障害
双極性障害は、重篤で潜在的な無能力作用を伴う比較的一般的な疾患である。患者の社会的発達に対する重度の影響に加えて、双極性患者における自殺完遂率は約15%である。双極性障害は、興奮相と、多くの場合にはうつ病相とによって特徴づけられる。興奮相は躁病又は軽躁病と呼ばれるもので、うつ病相が交互に又は様々な混合状態で発生することがあり、そして異なる重症度で、様々な期間にわたって生じることがある。双極性障害はさまざまな形態で存在し得るものである上にさまざまな症状を呈するため、双極性障害の分類は幅広い研究の焦点となり、結果として双極性障害のサブタイプが定義され、以前であれば別の障害に羅患しているとされた患者まで含む形に全体の概念が広がってきている。双極性障害は、特定の臨床徴候、症状、治療および神経生物学的な特徴が一般の精神異常と共通していることが多いため、いかに正確な診断を下すかが精神科医にとっての課題のひとつになっている。さらに、双極性障害、さまざまな気分や精神障害の経過は事例により大きく異なるため、長期間にわたって疾患を管理するための手段を得るには、疾患の特徴をできるだけ早期に特定することが重要である。
双極性障害は、人口の約1.3%で発生しており、精神科クリニックで認められる気分障害の約半分を構成すると報告されている。双極性障害は、障害の型が性に依存して異なることが見出されている。例えば、双極性障害I型は男性と女性との間で同程度に見られるが、双極性障害II型は、女性の方がより一般的であると報告されている。双極性障害の発症年齢は、一般には十代であり、診断がなされるのは、一般には患者の20代早期である。また、双極性障害は、通常は医学的な機能障害または神経学的な機能障害の結果として高齢者にも発生する。
社会に与える双極性障害の費用は莫大である。この疾患に関連する躁病は行動に弊害を与え、精神病を引き起こし、時には入院に至らしめる。この疾患は、直接的および間接的に必要になる費用と病気に関連して社会的に非難されるという両方の面で、ときには何世代にもわたって患者の家族や親類にとって大きな重圧となる。このような非難が原因で孤立して怠慢になることも多い。さらに、年齢が若ければ若いほど、教育や社会開発が中断されることによる影響は一層重大である。
双極性障害に関するDSM−IV分類では躁病または軽躁病の程度と期間に応じて障害を4通りに区別し、一般身体疾患またはその治療によるものであることが明白なものと物質の乱用によるものとを2通りに区別している。躁病は、高揚した、開放的なまたは易怒的な気分ならびに注意散漫、衝動行為、活力増大、誇大感、爽快感、競争心および多弁などによって認識される。躁状態の程度と期間とに応じて定義される4通りの双極性障害のうち、DSM−IVには以下のものが含まれる。
−双極性障害I型、これには、少なくとも1週間にわたって躁病を示す患者が含まれる、
−双極性障害II型、これには、躁病よりも穏やかな興奮症状によって特徴付けられ、少なくとも4日間にわたる軽躁病を示す患者が含まれるが、この患者は以前には躁病を示したことがないが、以前に大うつ病の症状発現に苦しんだことがある、
−特定不能(NOS)型双極性障害、これには、それ以外の点では双極性障害II型の特徴を示すが、興奮相については4日の持続期間を満たさない患者、又は大うつ病の症状発現を伴なわない軽躁病を示す患者が含まれる、及び
−循環気質、これには、軽躁病又は大うつ病に対する基準を満たさないが、無症状の間隔が2ヶ月を越えることはなく2年間にわたって非常に多くの躁病性症状及びうつ病性症状を示す患者が含まれる。
DSM−VIにて分類されている残りの2通りの双極性障害は、さまざまな医学的障害およびその治療によることが明白であるか、またはこれによって引き起こされた障害ならびに、物質の乱用に伴うまたは関連した障害である。双極性障害を引き起こし得る医学的障害には一般に、内分泌障害および脳血管傷害が含まれ、双極性障害を引き起こし得る医学的な治療にはグルココルチコイドおよび刺激物質の乱用が含まれることが知られている。物質の使用または乱用に関連した障害は「躁病性特徴または混合性特徴の物質誘発性気分障害」と呼ばれている。
双極性障害の診断は極めて厄介な場合がある。特に問題の多い難点のひとつが、混合状態で躁および気分変調または鬱が同時に認められるにもかかわらず、少なくとも1週間、躁状態および大鬱状態として特定するのに必要な基準のすべてを毎日満たすわけではないためDSM−IVの分類には当てはまらない患者がいるという点である。また、患者が興奮エピソードと鬱病エピソードとを不規則な周期で繰り返すことが多いため、病相の期間に基づいて患者をDSM−IVのグループに分類することにも無理がある。特に、抗鬱剤を使用すると病相の「頻回化」が発生して疾患の経過が悪い方に変化する場合があることが報告されている。また、双極性障害の患者、特に第III期躁病として知られる状態にある患者には、双極性障害患者のまとまりを欠く思考や行動が共通して見られることが診断を一層困難なものとしている。さらに、精神科医は激越鬱状態と混合性躁状態とを鑑別しなければならない。大鬱状態の患者が(14日間またはそれ以上)激越状態を示し、結果として双極性障害に近い特徴が認められることは珍しくない。問題をさらに複雑にする要素として、双極性障害の患者では、物質、特にアルコールの乱用率が例外的に高いことがあげられる。アルコール中毒患者での躁病有病率は低いが、物質乱用者が興奮症状を見せる場合があることはよく知られている。したがって、物質の乱用歴がある双極性障害患者を診断するのは困難である。
治療
現在のところ、統合失調症又は双極性障害に対する治療法がないため、治療の目的は、症状の重症度を、可能な限り寛解点まで軽減させることである。症状が類似していることから、統合失調症及び双極性障害は、いくつかの同じ医薬品を用いて治療されることが多い。この双方の疾患は、多くの場合、抗精神病薬及び神経遮断薬を用いて治療される。
例えば、統合失調症の場合、抗精神病薬による薬物療法が最も一般的かつ最も有益な治療である。統合失調症のために一般に処方されている抗精神病性薬物には、主に4種類ある。第1に、クロルプロマジン(トラジン)によって代表される神経遮断薬は、陽性(精神病性)症状を軽減させ、その再発を防止することによって、統合失調症患者の治療に大変革をもたらしている。クロルプロマジンが投与された患者は、精神病院から退院することが可能になり、そして地域社会プログラム又は患者自身の家で生活することが可能になっている。しかし、これらの薬物は理想からほど遠いものである。約20%〜30%の患者が薬物に全く応答せず、他の患者は最終的には再発する。これらの薬物は、様々な重篤な神経学的副作用を引き起こすので、神経遮断薬と名づけられた。そのような副作用には、腕及び下肢における硬直及び振戦、筋痙攣、異常な身体運動及びアカシジア(休みなく歩き回り、そわそわすること)が含まれる。これらの副作用はとても煩わしいので、多くの患者は薬物を服用することを簡単に拒絶する。さらに、神経遮断薬は統合失調症のいわゆる陰性症状を改善せず、その副作用はこれらの症状を悪化させることさえあり得る。従って、神経遮断薬の明らかな有益な効果にもかかわらず、良好な短期応答を有する患者でさえも、全体的な機能が最終的には悪化する患者がいる。
標準的な神経遮断薬におけるよく知られている欠陥により、新しい治療に対する探索が活発化され、非定型神経遮断薬と呼ばれる新しい種類の薬物が登場した。最初の非定型神経遮断薬であるクロザピンは、標準的な神経遮断薬に応答しない患者の約1/3に対して有効である。クロザピンは、陽性症状と同様に陰性症状を軽減させるようであり、又は少なくとも陰性症状を標準的な神経遮断薬の場合よりも悪化させない。さらに、クロザピンは、全体的な機能に対して有益な効果を有しており、統合失調症患者における自殺を図る機会を減少させることができる。クロザピンは標準的な神経遮断薬の煩わしい神経学的症状を生じさせないか、又は、ホルモンであるプロラクチンの血中レベルを上昇させない。過剰なプロラクチンは、女性において月経不順及び不妊症を生じさせることがあり、男性において性的不能又は***拡大を生じさせることがある。標準的な神経遮断薬に耐えることができない多くの患者は、クロザピンを服用することが可能になった。しかし、クロザピンには様々な制限がある。クロザピンは、顆粒球減少症、すなわち、致死的な白血球産生不能を生じさせる原因となり得ることから、当初は市場から回収された。顆粒球減少症は依然として脅威であり、そのため、注意深い監視及び定期的な血液検査が要求される。クロザピンはまた、発作及び不安にさせる他の副作用(例えば、嗜眠状態、血圧低下、流涎、夜尿症及び体重増加)を引き起こし得る。従って、クロザピンは、通常的には、他の薬物に応答しない患者によってのみ服用される。
研究者は、クロザピンの欠点がなく、クロザピンの長所を有する第3の種類の抗精神病性薬物を開発した。これらの薬物の1つがリスペリドン(リスパダール)である。初期の研究により、リスペリドンは、陽性症状については標準的な神経遮断薬と同じくらい効果的であり、陰性症状についてはいくらかより効果的であり得ることが示唆される。リスペリドンは、クロザピンよりも多くの神経学的副作用をもたらすが、標準的な神経遮断薬よりも副作用が少ない。しかし、リスペリドンはプロラクチンのレベルを上昇させる。現在のところ、リスペリドンは広範な精神病患者に処方されているが、多くの臨床医は、リスペリドンの方が安全であると考えているので、標準的な薬物に応答しない患者に対しては、リスペリドンをクロザピンの前に使用するようである。
別の新しい薬物はオランザピン(ジプレキサ)である。これは、陽性症状については標準的な薬物と少なくとも同じくらい効果的であり、陰性症状についてはより効果的である。オランザピンは、通常の臨床的用量では神経学的副作用をほとんど有しておらず、プロラクチンのレベルを著しく上昇させない。オランザピンは、顆粒球減少症などのクロザピンの非常に厄介な副作用をほとんど生じさせないが、オランザピンを服用する患者の一部は、鎮静化又はめまいが生じたり、口渇を起こしたり、あるいは体重が増加することがある。まれではあるが、肝機能検査が一時的に異常になることもある。
統合失調症における結果の研究は、通常、病院での治療研究に基づくものであり、統合失調症患者の集団を代表しない可能性がある。結果の極端な事例では、20%の患者が、精神病の1回の症状発現の後、完全に回復するようにみえるが、14%〜19%の患者は慢性の寛解しない精神病を発症し、決して完全には回復しない。一般には、5年目の臨床結果は1/3の法則に従うようである。つまり、患者の約35%が不十分な結果の部類に入り、36%が良好な結果の部類に入り、そして残りは中間の結果である。統合失調症における予後は5年後に悪化するようには思えない。
どのような理由にせよ、疾患の経過中の初期に長期間にわたって統合失調症を治療せずに放置しておくことは、結果に負の影響をもたらすことがあるという証拠が増え続けている。しかし、疾患の最初の症状発現を経験している患者については、薬物の使用が遅れることが多い。患者は、自分が病気であることに気付かなかったり、又は助けを求めることをためらっていることがある。家族は、ときには、問題が簡単に消失することを望むか、又は治療を求めるように患者を説得することができない。臨床医は、診断が確定できないときには、副作用の可能性のために抗精神病薬による薬物療法を処方することを躊躇することがある。実際に、疾患の最初の発現では、統合失調症は、双極性の躁−うつ病性障害、重症のうつ病、薬物関連障害及びストレス関連障害と区別することが難しい。最適な治療はこれらの疾患において異なるため、障害の長期の予後もまた、治療の開始によって異なる。
統合失調症及び双極性障害のいずれの場合でも、治療のために使用されている知られている分子は、副作用を有しており、疾患の症状に対してのみ作用するだけである。関連した副作用を伴なわず、そして統合失調症及び双極性障害の原因となる機構に関与する標的に指向する新しい分子が強く求められている。従って、これらの標的の発見及び特徴づけを容易にする手段が必要であり、そのような手段は有用である。
現在、統合失調症及び双極性障害は、脳疾患であると考えられており、その症状を研究する上において、生物学的決定基が重視されている。総合失調症の場合、神経撮像及び神経病理学上の研究は、総合失調症における脳異常の証拠を示している。これらの病理学的変化のタイミングは不明であるが、おそらく、初期の脳発達における欠損である。深在性の変化は、また、総合失調症における神経伝達物質の異常に関する仮説に現れている。ドーパミンの仮説は、大々的に見直されており、もはや主たる原因となる症例とはみなされていない。
統合失調症及び双極性障害が家系に集まっていること、双生児及び養子の研究からの証拠、そして世界的な発生率において変動がないことは、環境的危険因子もまた、必要な原因、十分な原因又は相互作用的な原因としていくらかのレベルで関与するが、統合失調症及び双極性障害が本来的には遺伝的状態であることを示している。例えば、統合失調症は一般集団の1%に発生する。しかし、祖父母の1人が統合失調症に罹患している場合、病気になる危険率は約3%に増大し、父母の1人が統合失調症に罹患している場合には約10%に増大する。両親が統合失調症に罹患している場合、危険率は約40%に上昇する。
従って、統合失調症及び双極性障害に関与する遺伝子を同定することが強く求められている。これらの遺伝子について分かれば、研究者は、統合失調症及び双極性障害の病因を解明することが可能になり、そして、その症状に対してだけなく、これらの疾患の原因に対して向けられた薬物及び薬物療法がもたらされるかもしれない。
統合失調症及び双極性障害に対する感受性を検出するための新しい方法、ならびにこれらの疾患の発症を防止又は追跡調査するための新しい方法もまた強く求められている。診断手段もまた、極めて有用なものとなり得るであろう。実際に、そのような総合失調症を発症するおそれのある被験者を早期に確認することにより、早期治療及び/又は予防的治療を施すことが可能になる。さらに、医薬品の最終的な有効性ならびに医薬品に対する患者の最終的な耐性を正確に評価することにより、臨床医は、統合失調症及び双極性障害に対する治療法の受益性/危険性比率を高めることが可能になる。
本発明は、DAOに関連するバイアレリックマーカーを含む新規な多型の同定およびDAO遺伝子のバイアレリックマーカーの対立遺伝子と疾患との間の遺伝的関連の確認から派生したものである。なお、これらはヒト被験者集団において確認及び特徴づけられるものである。本発明は、D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の新規なバイアレリックマーカーのセットの発見にもとづく。さらに、関連研究は、CNS障害、特に総合失調症に対するこれらバイアレリックマーカーの対立遺伝子に相互に関連している。これらのマーカーの位置及び周辺配列の認識は、マーカーの位置におけるヌクレオチドの同定を決定する際に有用であるポリヌクレオチド組成、ならびに、より複雑な関連及びアミノ酸代謝を含む疾病状態の遺伝学的基礎を決定するのに有用であるハプロタイピング研究をデザインするために用いられている。加えて、このマーカーは、個体が総合失調症又はいずれかの形質を発現する危険にあるかどうかを決定する本発明の方法、医薬品及び診断方法の開発、ならびに、医薬品への異なる効果的な応答及び医薬品からの副作用の特徴づけのための目標を同定する本発明の方法において使用することができる。
本発明のさらなる目的は、本発明において述べられた核酸配列のいずれかを含む組換えベクター、具体的には、DAOのプロモータ領域又はDAO酵素をコードする配列を含む組換えベクター、ならびに前記核酸配列又は組換えベクターを含む宿主細胞からなる。
本発明は、また、DAOゲノム配列(配列番号1)に位置するバイアレリックマーカーに向けられており、これらのバイアレリックマーカーはDAO遺伝子の特定の対立遺伝子と1種又はいくつかのCNS障害、特に総合失調症との統計学的に有意な関連を確認するための有用なツールを示す。
本発明は、sbg1、g34665、sbg2、g35017及びg35018タンパクをコードする新規はヒト遺伝子のゲノム配列を含む核酸分子、これらによってコードされるタンパク、ならびにそれらに対する抗体に関する。このsbg1、g34665、sbg2、g35017及びg35018ゲノム配列は、また、前記遺伝子の被転写部分の上流(5’末端)及び下流(3’末端)に位置する調節配列を含むものであってもよく、これら調節配列も、本発明の一部である。本発明は、sbg1及びg35018タンパクをコードするcDNA配列についても述べる。
特定のsbg1、g34665、sbg2、g35017又はg35018ゲノム配列又はcDNA配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ又はプライマーもまた、本発明の一部であり、さらには、このプライマー及びプローブを用いるDNA増幅及び検出方法も本発明の一部である。
本発明のさらなる目的は、上述した核酸配列のいずれかを含む組み換えベクター、特に、sbg1、g34665、sbg2、g35017又はg35018調節配列又はsbg1、g34665、sbg2、g35017又はg35018タンパクをコードする配列を含む組み換えベクター、ならびに前記核酸配列又は組み換えベクターを含む細胞宿主及びトランスジェニック非ヒト動物からなる。
また、本発明は、sbg1、g34665、sbg2、g35017又はg35018遺伝子のバイアレリックマーカー及びその使用に関する。本発明のバイアレリックマーカーを遺伝子型判定する際に使用されるプローブ及びプライマーが包含される。
本発明の実施形態には、固体担体に結合させた本発明のいずれかのポリヌクレオチドが含まれる。ここで、ポリヌクレオチドは、本明細書に開示される配列を含むことができ、任意に、前記ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるいずれかのポリヌクレオチドを含む、からなる又はから実質的になるものであってもよい。任意に、前記判定は、ハイブリダイゼーションアッセイ、配列決定アッセイ、ミクロ配列決定アッセイ又は酵素に基づくミスマッチ検出アッセイにおいて行ってもよい。任意に、前記ポリヌクレオチドは、固体担体、アレイ又はアドレス指定可能なアレイに結合させてもよい。任意に、前記ポリヌクレオチドを標識してもよい。
本発明のさらに好ましい実施形態は、個体を同定する法医学的方法において又は遺伝子疾患を有する個体を同定する診断方法において、特に染色体標識として法医分析で又はDNAフィンガープリンティングで、本発明のDAOバイアレリックマーカーを使用する方法に向いている。
最後に、本発明は、疾患におけるDAOヌクレオチド及びポリヌクレオチドの役割に基づく薬物スクリーニングアッセイ、及び統合失調症、双極性障害又は関連するCNS障害を治療するための物質をスクリーニングする方法に向いている。
上述されたように、本発明のいくつかの局面は、統合失調症と、DAO遺伝子に位置するバイアレリックマーカーの対立遺伝子との遺伝的関連の同定に派生する。本発明は、DAO遺伝子におけるバイアレリックマーカーの対立遺伝子と、統合失調症又は他のCNS障害、あるいは総合失調症又は他のCNS障害症状に対して作用する薬剤(これには、クロルプロマジン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、セルチンドール、クエチアピン及びジプラシドンのような薬剤が含まれる)を投与することから生じる副作用又は利益のいずれかとのさらなる遺伝的関連を明らかにするための適切なツールを提供する。
本発明は、DAO遺伝子におけるバイアレリックマーカーの対立遺伝子と形質とのさらなる遺伝的関連を確立するための適切なツールを提供する。種々の方法及び製品が、統合失調症及び双極性障害又は他のCNS障害に対するヒトにおける遺伝的感受性を分子的に検出するために提供される。それらは、この疾患の診断、病期判定、予後及びモニタリングのために使用することができ、そしてそのようなプロセスは治療法の中にさらに含めることができる。また、本発明は、薬物使用を最適化するための、個人の事情に合った方針を含む好適な治療的解決法の効率的な設計及び評価、ならびに潜在的な新しい医薬品候補のスクリーニングをもたらす。
さらなる実施形態は、本発明の詳細な説明及び実施例に述べる。
(配列表に示された配列の簡単な説明)
配列番号1は、本発明のバイアレリックマーカーに位置するD−アミノ酸オキシダーゼのゲノム配列である。
配列番号2及び3は、それぞれ、ヒトDAOのcDNA及びポリペプチド配列である。
配列番号4は、配列番号1のゲノム配列の外側に位置するバイアレリックマーカー27/1-61を含むポリヌクレオチドである。
配列番号5及び6は、それぞれ、ヒトDAOのcDNA及びタンパク配列である。
配列番号7及び8は、ヒトD-アスパルテートオキシダーゼ(DDO)のcDNAである。
配列番号9は、配列番号7のポリヌクレオチドによってコードされるヒトDDOポリペプチド配列である。
配列番号10は、配列番号8のポリヌクレオチドによってコードされるヒトDDOポリペプチド配列である。
配列番号11は、バイアレリックマーカー27-81-180を含む47-部分ポリヌクレオチドである。
配列番号12は、バイアレリックマーカー27-30-249を含む47-部分ポリヌクレオチドである。
配列番号13は、バイアレリックマーカー27-2-106を含む47-部分ポリヌクレオチドである。
配列番号14は、バイアレリックマーカー27-29-224を含む47-部分ポリヌクレオチドである。
配列番号15は、バイアレリックマーカー27-1-61を含む47-部分ポリヌクレオチドである。
配列表に関する規則によれば、下記のコードが、配列内でのバイアレリックマーカーの位置を示すとともに、多型塩基に存在する対立遺伝子のそれぞれを同定するために配列表において使用されている。配列中の記号「r」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がグアニンであり、もう一方の対立遺伝子がアデニンであることを示す。配列中の記号「y」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がチミンであり、もう一方の対立遺伝子がシトシンであることを示す。配列中の記号「m」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がアデニンであり、もう一方の対立遺伝子がシトシンであることを示す。配列中の記号「k」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がグアニンであり、もう一方の対立遺伝子がチミンであることを示す。配列中の記号「s」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がグアニンであり、もう一方の対立遺伝子がシトシンであることを示す。配列中の記号「w」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がアデニンであり、もう一方の対立遺伝子がチミンであることを示す。
(発明の詳細な説明)
統合失調症のような特有の中枢神経系障害などの特定の形質に関与する遺伝子の同定は、遺伝子マッピングのために現在使用されている2つの主要な方法、すなわち、連鎖解析及び関連研究によって行うことができる。連鎖解析は、多数の罹患個体とともに様々な家族を研究することを必要としており、現在では、単一遺伝子又は複数遺伝子によって遺伝する形質を検出することにおいて有用である。一方、関連研究は、形質を有しない(T−)コントロールと比較して、互いに血縁関係のない形質を有する(T+)個体におけるマーカー対立遺伝子の頻度を調べるもので、一般には、多因子遺伝の検出に用いられている。
バイアレリックマーカー等の遺伝子マーカーを確認、及びある形質の1又はそれ以上のマーカーにおける遺伝子型又はある形質の2又はそれ以上のマーカーのハプロタイプに相互に関係する関連研究を実行するために用いられる方法論は、米国特許出願第09/539,333号及び国際特許出願第PCT/IB00/00435号(双方とも2000年3月30日に出願されており、それらの開示はその全体が参考として本明細書により組み込まれる)においてすでに詳述されている。
遺伝的つながり又は「連鎖」は、染色体上の隣接する2つの配列のどちらが***時の交差によって最小組換えを含むかということの解析に基づく。この技術を使用して、形質に対する遺伝的な疾病素因を明らかにするいくつかの遺伝子を突き止めることが可能になっている。しかし、連鎖解析は、研究された各形質に対する適当な遺伝的モデルの選択をよりどころとしているために制約がある。さらに、連鎖解析を用いて達成することができる解像度には限界があり、この方法を通して初期に同定される典型的な20Mbの領域の解像精度をさらに上げるために、補足的な研究が必要である。また、連鎖解析は、同義遺伝子及び/又は環境的要因の複合作用による遺伝的形質などの複雑な遺伝的形質に対して適用されたときには困難であることが判明している。そのような場合、これらの状況に対して連鎖解析を適用するために必要とされる十分な数の罹患家族を集めるために、多大の労力及び費用が必要となる。最後に、連鎖解析は、多数の情報提供家族を利用することができない形質の研究には適用することができない。
本発明では、DAO遺伝子のマーカーと形質、好ましくは総合失調症又は双極性障害との間の連鎖解析よりもむしろ関連研究を行うための代替手段を開示する。
この出願では、DAO遺伝子の新規なバイアレリックマーカーを開示する。さらに、総合失調症と関連するDAO遺伝子のバイアレリックマーカーを開示する。総合失調症と関連するこれらのバイアレリックマーカーの同定により、統合失調症を発症する素因に関与する遺伝的決定因子を含むことが疑われる染色体領域をさらに明らかにすることができ、統合失調症を発症する素因と関連する新規な遺伝子配列の同定がもたらされた。さらに、配列情報は、そのような領域における新しい遺伝子のさらなる同定に対する情報源を提供する。さらに、統合失調症に関連する遺伝子を含む配列は、例えば、推定される遺伝子ファミリーにおける他の遺伝子を単離するために、他の種から相同体を同定するために、疾患を治療するために、そして本明細書中に記載されるような診断アッセイ又はスクリーニングアッセイのためのプローブ及びプライマーとして有用である。
これらの同定された多型は、統合失調症及び双極性障害に対する遺伝的感受性を確実に検出するためのアッセイの設計において使用される。また、同定された多型は、新しい又は既存の医薬品もしくは治療法の治療的及び副作用の可能性を正確かつ効率的に評価するための薬物スクリーニングプロトコルの設計においても使用される。
定義
本明細書中で交換可能に使用される用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかで2つ以上のヌクレオチドのRNA又はDNA又はRNA/DNAハイブリッドの配列を含む。用語「ヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかで任意の長さであるRNA、DNA又はRNA/DNAハイブリッドの配列を含む分子を記載するために形容詞として本明細書中では使用される。また、用語「ヌクレオチド」は、分子を意味する個々のヌクレオチド又は様々なヌクレオチドを示すために、あるいはプリンもしくはピリミジン、リボースもしくはデオキシリボースの糖残基、及びリン酸基又はオリゴヌクレオチド内もしくはポリヌクレオチド内のヌクレオチドの場合にはホスホジエステル結合を含む、より長い核酸分子における個々のユニットを示すために名詞として使用される。用語「ヌクレオチド」はまた、少なくとも1つの修飾、すなわち、(a)選択的結合基、(b)プリンのアナログ形態、(c)ピリミジンのアナログ形態又は(d)糖のアナログ、例えば、類似的な結合基、プリン、ピリミジン及び糖の修飾(例えば、PCT国際特許出願公開WO95/04064を参照のこと、その開示は参考として本明細書中に組み込まれる)を含む「修飾ヌクレオチド」を包含するために本明細書中では使用される。しかし、本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、50%を越える従来型のデオキシリボースヌクレオチドからなり、最も好ましくは90%を越える従来型のデオキシリボースヌクレオチドからなる。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、組換え、エクスビボ作製又はそれらの組合せを含む任意の知られている方法によって、そして同様にこの分野で知られている任意の精製方法を用いることによって調製することができる。
用語「精製された」は、他の核酸、炭水化物、脂質及びタンパク質(ポリヌクレオチドの合成において使用される酵素など)(これらの限定されない)を含む他の化合物から分離されている本発明のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドベクターを記載するために、あるいは共有結合的に閉じたポリヌクレオチドが線状ポリヌクレオチドから分離されていることを記載するために本明細書中では使用される。ポリヌクレオチドは、サンプルの少なくとも約50%(好ましくは60%〜75%)が単一のポリヌクレオチド配列及び立体配座(線状対共有結合的閉環)を示すとき、実質的に純粋である。実質的に純粋なポリヌクレオチドは、典型的には、約50%、好ましくは60%〜90%(重量/重量)の核酸サンプルを含み、より一般的には約95%の核酸サンプルを含み、そして好ましくは約99%を越える純度を有する。ポリヌクレオチドの純度又は均一性は、サンプルのアガロースゲル電気泳動又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、次いで、ゲルを染色したときの単一ポリヌクレオチドバンドの可視化など、この分野でよく知られている多数の手段によって示すことができる。いくつかの目的のために、より大きい解像度を、この分野で十分に知られているHPLC又は他の手段によって提供することができる。
用語「単離された」は、物質が、その最初の環境(例えば、物質が天然に存在する場合には天然の環境)から取り出されていることを必要とする。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチド又はDNA又はポリペプチドが、天然の系において共存する物質の一部又はすべてから分離されているとき、それらは単離されたことになる。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部及び/又は組成物の一部であることがあり、従って、そのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、ベクター又は組成物がその天然の環境の一部ではないという点で、やはり単離されているとする。
用語「プライマー」は、標的ヌクレオチド配列に対して相補的であり、そして標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションさせるために使用される特異的なオリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、DNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼ又は逆転写酵素のいずれかによって触媒されるヌクレオチド重合のための開始点として機能する。
用語「プローブ」は、サンプルに存在する特定のポリヌクレオチド配列を同定するために使用することができる定義された核酸セグメント(又はヌクレオチドアナログセグメント、例えば、本明細書中に定義されるようなポリヌクレオチド)で、同定される特定のポリヌクレオチド配列の相補的なヌクレオチド配列を含む核酸セグメントを意味する。
用語「形質」及び用語「表現型」は本明細書中では交換可能に使用され、例えば、疾患の症状又は感受性などの生物の任意の臨床的に区別可能又は検出可能又は他の場合には測定可能な性質を示す。典型的には、用語「形質」又は用語「表現型」は、統合失調症又は双極性障害の症状又は感受性を示すために、あるいは統合失調症又は双極性障害に対して作用する薬剤に対する個体の応答を示すために、あるいは統合失調症又は双極性障害に対して作用する薬剤に対する副作用の症状又は感受性を示すために本明細書中では使用される。
用語「対立遺伝子」は、ヌクレオチド配列の変異体を示すために本明細書中では使用される。バイアレリック多型は2つの形態を有する。典型的には、第1の同定された対立遺伝子は原対立遺伝子(original allele)と呼ばれ、これに対して、他の対立遺伝子は交代対立遺伝子(alternative allele)と呼ばれる。複相体生物は対立遺伝子形態についてホモ接合性のこともあればヘテロ接合性のこともある。
用語「ヘテロ接合性率」は、特定の対立遺伝子においてヘテロ接合である個体の集団内の発現率を示すために本明細書中では使用される。バイアレリック系では、ヘテロ接合性率は、平均で、2Pa(1−Pa)に等しい(式中、Paは、共通性が最も低い対立遺伝子の頻度である)。遺伝学研究において有用であるためには、遺伝的マーカーが、無作為に選択された個人がヘテロ接合性であるという妥当な確率を可能にするために十分なレベルのヘテロ接合性を有さなければならない。
本明細書中で使用される用語「遺伝子型」は、個体又はサンプルに存在する対立遺伝子の同一性を示す。本発明に関連して、遺伝子型は、好ましくは、個体又はサンプルに存在するバイアレリックマーカー対立遺伝子の種目を示す。用語の、バイアレリックマーカーについてサンプル又は個体を「遺伝子型判定すること」は、バイアレリックマーカーにおいて個体によって伝達される特定の対立遺伝子又は特定のヌクレオチドを判定することを伴う。
本明細書中で使用される用語「変異」は、1%未満の頻度を有する、種々のゲノム又は個体の間におけるDNA配列における違いを示す。
用語「ハプロタイプ」は、単一染色体における個体又はサンプルに存在する対立遺伝子の組合せを示す。本発明に関連して、ハプロタイプは、特定の個体に見出され、表現型と関連している場合があるバイアレリックマーカー対立遺伝子の組合せを示すものであることが好ましい。
本明細書中で使用される用語「多型」は、種々のゲノム又は個体の間における2つ以上の交代ゲノム配列又は対立遺伝子の出現を示す。「多型(的)」は、特定のゲノム配列の2つ以上の変異体が集団内に見出され得る状態を示す。「多型部位」は、変化が生じる位置である。多型は、1つ又は複数のヌクレオチドの置換又は欠失又は挿入を含むことができる。単一ヌクレオチド多型は単一塩基対変化である。典型的には、単一ヌクレオチド多型は、1個のヌクレオチドが多型部位において別のヌクレオチドによって置換されていることである。単一ヌクレオチドの欠失又は単一ヌクレオチドの挿入もまた、単一ヌクレオチド多型を生じさせる。本発明に関連して、「単一ヌクレオチド多型」は、好ましくは、単一ヌクレオチドの置換を示す。典型的には、種々のゲノム間又は種々の個体間において、多型部位は2つの異なるヌクレオチドによって占有されることがある。
用語「バイアレリック多型」及び用語「バイアレリックマーカー」は、集団においてかなりの高頻度で2つの対立遺伝子を有する多型(好ましくは、単一ヌクレオチド多型)を示すために本明細書中では交換可能に使用される。「バイアレリックマーカー対立遺伝子」は、バイアレリックマーカー部位において存在するヌクレオチド変異体を示す。典型的には、本発明のバイアレリックマーカーの、共通性がほとんどない対立遺伝子の頻度は、1%よりも大きいと評価されており、好ましくは頻度は10%を越え、より好ましくは頻度は少なくとも20%(すなわち、少なくとも0.32のヘテロ接合性率)であり、さらにより好ましくは頻度は少なくとも30%(すなわち、少なくとも0.42のヘテロ接合性率)である。共通性がほとんどない対立遺伝子の頻度が30%以上であるバイアレリックマーカーは、「高品質バイアレリックマーカー」と呼ばれる。本発明の遺伝子型判定方法、ハプロタイプ判定方法、関連研究方法及び相互作用研究方法はすべて、任意に、高品質バイアレリックマーカーを用いて単独で行うことができる。
ポリヌクレオチドの中心に関してポリヌクレオチド内におけるヌクレオチドの位置は下記のように本明細書中で記載される。ポリヌクレオチドが奇数個のヌクレオチドを有するとき、ポリヌクレオチドの3’末端及び5’末端から等距離にあるヌクレオチドが、ポリヌクレオチドの「中心」に存在していると見なされ、中心のヌクレオチドに隣接するヌクレオチド、又は中心のヌクレオチド自体が、「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされる。奇数個のヌクレオチドがポリヌクレオチドに存在する場合、ポリヌクレオチドの中心にある5個のヌクレオチド位置はどれも、中心から2ヌクレオチド以内であると見なされるなどである。ポリヌクレオチドが偶数個のヌクレオチドを有するとき、ポリヌクレオチドの中心には結合が存在し、ヌクレオチドは存在しない。従って、2つの中心ヌクレオチドはいずれも、「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされ、ポリヌクレオチドの中心における4個のヌクレオチドはどれも、中心から2ヌクレオチド以内であると見なされるなどである。1つ又は複数のヌクレオチドの置換又は挿入又は欠失を伴う多型については、多型の置換ポリヌクレオチド又は挿入ポリヌクレオチド又は欠失ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの3’末端までの距離と、多型の置換ポリヌクレオチド又は挿入ポリヌクレオチド又は欠失ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの5’末端までの距離との差が0又は1ヌクレオチドである場合、多型、対立遺伝子又はバイアレリックマーカーはポリヌクレオチドの「中心」に存在する。この差が0〜3である場合、多型は「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされ、差が0〜5である場合、多型は「中心から2ヌクレオチド以内」であると見なされ、差が0〜7である場合、多型は「中心から3ヌクレオチド以内」であると見なされるなどである。1つ又は複数のヌクレオチドの置換又は挿入又は欠失を伴う多型については、多型の置換ポリヌクレオチド又は挿入ポリヌクレオチド又は欠失ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの3’末端までの距離と、多型の置換ポリヌクレオチド又は挿入ポリヌクレオチド又は欠失ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの5’末端までの距離との差が0又は1ヌクレオチドである場合、多型、対立遺伝子又はバイアレリックマーカーはポリヌクレオチドの「中心」に存在する。この差が0〜3である場合、多型は「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされ、差が0〜5である場合、多型は「中心から2ヌクレオチド以内」であると見なされ、差が0〜7である場合、多型は「中心から3ヌクレオチド以内」であると見なされるなどである。
用語「上流」は、特定の参照点からポリヌクレオチドの5’末端に向かう位置を示すために本明細書中では使用される。
用語「塩基対形成した」及び用語「ワトソン&クリック塩基対形成した」は、チミン残基又はウラシル残基がアデニン残基に2つの水素結合によって結合し、シトシン残基及びグアニン残基が3つの水素結合によって結合する二重らせんDNAにおいて見出される様式のようにそれらの配列特性によって相互に水素結合することができるヌクレオチドを示すために本明細書中では交換可能に使用される(Stryer,L.、Biochemistry(第4版、1995)を参照のこと)。
用語「相補的」又は用語「その相補体」は、相補的な領域の全体にわたって別の特定されたポリヌクレオチドとのワトソン&クリック塩基対形成を形成することができるポリヌクレオチドの配列を示すために本明細書中では使用される。この用語は、その配列にだけ基づくポリヌクレオチドの対に適用され、2つのポリヌクレオチドが実際に結合する状態の特定の組合せのいずれにも適用されない。
本明細書中で使用される用語「DAO関連バイアレリックマーカー」は、DAO遺伝子又はDAOヌクレオチド配列と連鎖不平衡にあるバイアレリックマーカーのセットを示す。DAO関連バイアレリックマーカーの用語には、配列表に記載されたヌクレオチド配列及び多型対立遺伝子が、特に、27-2/106、27-1/61、27-81/180、27-29/224及び27-30/249のバイアレリックマーカーが包含される(配列番号1、4及び11〜15)。
用語「ポリペプチド」は、ポリマーの長さには関係なくアミノ酸のポリマーを示す。従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質はポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドのprost発現修飾を特定も、排除もしない。例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基などの共有結合的結合を含むポリペプチドは、明らかにポリペプチドの用語によって包含される。また、(例えば、天然に存在しないアミノ酸、関連しない生物学的系において天然に存在するだけであるアミノ酸、哺乳動物系に由来する修飾されたアミノ酸などを含む)1つ以上のアミノ酸アナログを含有するポリペプチド、置換された連結を有するポリペプチド、ならびにこの分野で知られている他の修飾体(天然に存在する修飾体及び天然に存在しない修飾体の両方)もこの定義に含まれる。
用語「精製された」は、他の核酸、脂質、炭水化物及び他のタンパク質(これらの限定されない)を含む他の化合物から分離されている本発明のポリペプチドを記載するために本明細書中では使用される。ポリペプチドは、サンプルの少なくとも約50%(好ましくは60%〜75%)が単一のポリペプチド配列を示すとき、実質的に純粋である。実質的に純粋なポリペプチドは、典型的には、約50%、好ましくは60%〜90%(重量/重量)のタンパク質サンプルを含み、より通常的には約95%のタンパク質サンプルを含み、そして好ましくは約99%を越える純度を有する。ポリペプチドの純度又は均一性は、サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動、その後、ゲルを染色したときの単一ポリペプチドバンドの可視化などの、この分野で十分に知られている多数の手段によって示される。いくつかの目的のために、より大きい解像度を、この分野で十分に知られているHPLC又は他の手段によって提供することができる。
本明細書中で使用される用語「非ヒト動物」は、ヒト以外の脊椎動物、鳥類、通常は哺乳動物、好ましくは霊長類、飼育動物(ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、及びウマなど)、ウサギ又は齧歯類(より好ましくはラット又はマウス)を示す。本明細書中で使用される用語「動物」は、脊椎動物(好ましくは哺乳動物)を示すために使用される。用語「動物」及び用語「哺乳動物」はともに、用語「非ヒト」が前に付かない限り、明示的にヒトを包含する。
本明細書中で使用される用語「抗体」は、少なくとも1つの結合ドメインからなるポリペプチド又はポリペプチド群を示す。ここで、抗体の結合ドメインは、抗原の抗原性決定基の特徴に対して相補的な内部の空間形状及び電荷分布を有する三次元の結合空間を形成するために、抗体分子の可変ドメインの折り畳みで形成される。これにより、抗原との免疫学的反応を可能にする。抗体には、結合ドメインを含む組換えタンパク質、ならびにFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)2フラグメント及びF(ab’)2フラグメントを含む様々なフラグメントが含まれる。
本明細書中で使用される用語「抗原決定基」は、sbg1ポリペプチドの場合には、抗原−抗体反応の特異性を決定する抗原分子の一部である。「エピトープ」はポリペプチドの抗原決定基を示す。エピトープは、エピトープにとって特徴的な空間的立体配座にある少なくとも3個のアミノ酸を含むことがある。一般に、エピトープは少なくとも6個のそのようなアミノ酸を含み、より通常的には少なくとも8個〜10個のそのようなアミノ酸を含む。エピトープを構成するアミノ酸を決定する方法には、X線結晶学、2次元核磁気共鳴及びエピトープマッピング、例えば、Geysen等(1984)によって記載されるPepscan法(PCT国際特許出願公開WO84/03564及びPCT国際特許出願公開WO84/03506)が含まれる。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
一例であり、限定されないが、高いストリンジェントな条件を用いた方法は、以下のとおりである。
6×SSC、50mMトリス−HCl (pH7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% フィコール(Ficoll)、0.02% BSA及び500μg/ml変性サケ***DNAを含む緩衝液中、65℃で8時間から一晩かけて、DNAを含むフィルタのプレハイブリダイゼーションを行う。
48時間、好ましいハイブリダイゼーション温度である65℃にて、100μg/ml変性サケ***DNAと32P標識プローブ520×106cpmとを含むハイブリダイゼーション混合物中で、フィルタをハイブリダイズする。
その後、2×SSC、0.01% PVP、0.01% フィコール及び0.01% BSAを含む溶液中で、1時間、37℃にて、続いて0.1×SSC中で50℃にて45分間、フィルター洗浄を行ってもよい。洗浄の後、ハイブリダイズしたプローブをオートラジオグラフィによって検出することができる。
使用することができる高いストリンジェントな他の条件は、当該分野でよく知られており、Sambrookら(1989)及びAusubelら(1989)において引用されている。これらのハイブリダイゼーション条件は、約20ヌクレオチド長の核酸分子に適する。前述のハイブリダイゼーション条件が所望の核酸長に応じて適応されるべきことは言うまでもないが、以下の技術は当業者には公知である。適当なハイブリダイゼーション条件は、例えば、HamesとHiggins(1985)又はSambrookら(1989)による著述の教示に従って適応することができる。
オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマー
本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも、配列番号1の又は試験試料におけるバイアレリックマーカー、それらの補体又は変異体のヌクレオチド配列のコピーの存在を検出するために使用される。
本発明の特に好ましいプローブ及びプライマーは、配列番号1の少なくとも12, 15, 18, 20, 25, 30, 35, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 500, 1000又は2000ヌクレオチドの連続スパンを、このスパンが前記ヌクレオチド位置の範囲の長さと一致する限り含む、単離された、精製された又は組換えられたポリヌクレオチドを含む。
また、本発明のプローブ及びプライマーは、配列番号1のヌクレオチド位置40939から78463の少なくとも12, 15, 18, 20, 25, 30, 35, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 500, 1000又は2000ヌクレオチドの連続スパンと、少なくとも70, 75, 80, 85, 90又は95%同一のヌクレオチドを有する単離された、精製された又は組換えられたポリヌクレオチドを含む。本発明の好ましいプローブ及びプライマーは、また、配列番号2又は5から選択された少なくとも1つの配列と少なくとも70, 75, 80, 85, 90又は95%同一のヌクレオチドを有するDAOヌクレオチド配列を含む、単離された、精製された又は組換えられたポリヌクレオチドを含む。また、本発明の好ましいプローブ及びプライマーは、配列番号7又は8から選択された少なくとも1つの配列と少なくとも70, 75, 80, 85, 90又は95%同一のヌクレオチドを有するDDOヌクレオチド配列を含む、単離された、精製された又は組換えられたポリヌクレオチドを含む。
本発明のプローブ及びプライマーの他のセットは、配列番号1又はその相補体の少なくとも12, 15, 18, 20, 25, 30, 35, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 500, 1000又は2000ヌクレオチドの連続スパンを含む、単離された、精製された又は組換えられたポリヌクレオチドを含み、前記連続スパンは、配列番号1の41118 から78451のヌクレオチド位置のいずれか1つの範囲の少なくとも1, 2, 3, 5又は10ヌクレオチドを含む。
また、本発明は、配列番号1の40939から78463のヌクレオチド位置の少なくとも12, 15, 18, 20, 25, 30, 35, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 500, 1000又は2000ヌクレオチドの連続スパン、それらの変異体又はそれらの相補的を有し、特に、上述したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを特徴とする核酸プローブに関する。特に、上述したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを特徴とする核酸プローブが特に好ましい。
安定なハイブリッドの形成は、DNAの融点(Tm)に依存する。Tmは、プライマー又はプローブの長さ、溶液のイオン強度及びG+C含量に依存する。プライマー又はプローブのG+C含量が高くなると、融点が高くなる。G:C対が3つのH結合によって保持されている一方、A:T対はわずか2つ有するのみであるからである。本発明のプローブにおけるGC含量は、通常、10〜75%、好ましくは35〜60%、より好ましくは40〜55%の範囲である。
本発明のプローブ又はプライマーは、8〜2000ヌクレオチド長であってもよく、あるいは、少なくとも12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 60, 70, 80, 100, 250, 500 , 1000ヌクレオチド長となるように特定される。より好ましくは、これらプローブの長さは、10, 15, 20又は30から100ヌクレオチドの範囲をとることができ、好ましくは10から50、より好ましくは15から30ヌクレオチドである。プローブが短くなると、ターゲット核酸配列に対する特異性に欠ける傾向があり、一般にテンプレートで十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためにより低い温度が必要とされる。プローブが長くなると、生成するために費用がかかり、時には自己ハイブリダイズしてヘアピン構造を形成することがある。アッセイ条件の特定のセットでのプライマー及びプローブの適当な長さは、当業者が経験的に決定することができる。
プライマー及びプローブは、例えば、クローニング、適当な配列の制限及びNarangら(1979)のホスホジエステル法、Brownら(1979)のホスホジエステル法、Beaucageら(1981)のジエチルホスホラミジット(diethylphosphoramidite)法及び欧州特許第707592号に記載された固体担体法のような方法によって直接的な化学的合成を含むいずれかの適当な方法によって生成することができる。
検出プローブは、一般に、核酸配列又は、例えば、国際特許出願WO 92/20702号に開示されたペプチド核酸、米国特許第5,185,444、5,034,506及び5,142,047号に記載されたモルホリノアナログのような非荷電核酸アナログである。プローブは、付加的なdNTPがプローブに付加することができないという点で、「延長不可能」とされるべきかもしれない。それら自体のアナログは、通常、延長不可能であり、核酸プローブは、水酸基がもはや延長に加わることができないためにプローブの3'末端の修飾によって延長不可能となることがある。例えば、プローブの3'末端は、捕獲又は検出標識で官能化することができ、よって水酸基を消費又はさもなければブロックすることができる。あるいは、3'水酸基は、単に結合が切られる、置換される又は修飾されることがあり、1993年4月19日に出願された米国特許第07/049,061号は、プローブを延長不可能にするために、使用することができる修飾を示している。
本発明のいずれかのポリヌクレオチドは、所望により、分光器的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学手段によって検出することができる標識を結合させることによって、標識することができる。例えば、有用な標識は、放射性物質(32P, 35S, 3H, 125I)、蛍光染料(5-ブロモデスオキシウリジン、フルオレセイン、アセチルアミノフルオレン、ジゴキシゲニン)又はビオチンを含む。ポリヌクレオチドはそれらの3'及び5'末端で標識されることが好ましい。核酸断片の非放射性標識の例は、フランス特許第7810975号に、あるいはUrdeaら(1988)又はSanchez-Pescadorら(1988)によって示されている。さらに、本発明のプローブは、シグナル増幅させるような構造的特性を有していてもよく、そのような構造特性は、例えば、Urdeaら(1991)又は欧州特許第225807号(Chiron)によって示されたような分岐DNAプローブである。
また、標識は、プライマー又は増幅DNAのようなプライマー延長生成物のいずれかを固体担体に固定化することを促進するように、プライマーを捕獲するために用いることができる。捕獲標識は、プライマー又はプローブに付され、固相試薬の特定の結合要素(例えば、ビオチン及びストレプトアビジン)との結合対を形成する特定の結合要素となることができる。したがって、ポリヌクレオチド又はプローブによって伝達される標識のタイプに依存して、標的DNAを捕獲又は検出するために採用することができる。さらに、ここに提供されたポリヌクレオチド、プライマー又はプローブは、それ自体、捕獲標識として機能するかもしれないことが理解されるだろう。例えば、固相試薬結合要素が核酸配列の場合、それはプライマー又はブローブの相補部に結合するように選択されるかもしれず、これによりプライマー又はプローブを固相に固定することができる。ポリヌクレオチドプローブ自体が結合要素の役割を果たす場合、当業者は、プローブが配列又は標的に対して相補的でない「末端」を含むであろうことを認識するであろう。ポリヌクレオチドプライマー自体が捕獲標識としての役割を果たす場合、少なくともプライマーの一部が遊離され、固相における核酸とハイブリダイズするであろう。DNA標識技術は当該分野でよく知られている。
本発明のプローブは、いくらかの目的に有用である。それらはゲノムDNAへのサザンハイブリダイゼーションにおいて特に有用である。また、プローブは、PCR増幅生成物を検出するためにも使用することができる。それらはまた、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15のポリヌクレオチドからなる配列、あるいはsbg1、g34665、sbg2、g35017又はg35018ポリヌクレオチド、あるいは遺伝子、あるいは他の技術を用いたmRNAにおけるミスマッチを検出するのに用いることができる。
本発明のポリヌクレオチド、プライマー及びプローブのいくつかは、好都合なことに、固体担体に固定することができる。固体担体は当該分野で知られており、反応トレイのウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、ニトロセルロースストライプ、メンブレン、ラテックス粒子等の微粒子、羊(又は他の動物)の赤血球、硬膜細胞(duracytes)等を含む。固体担体は重要ではなく、当業者によって選択することができる。よって、ラテックス粒子、微粒子、磁性又は非磁性ビーズ、メンブレン、プラスチックチューブ、マイクロタイターウェルの壁、ガラス又はシリコンチップ、羊(又は他の適当な動物)の赤血球及び硬膜細胞は、全て適切な例である。固相に核酸を固定するための適当な方法は、イオン性、疎水性、共有相互作用等を含む。ここで用いられる固体担体は、不溶性の又は後の反応によって不溶性にされ得るいずれの材料をもさす。固体担体は、捕獲剤をひきつけて固定化するという本来備わっている能力によって選択することができる。あるいは、固相は、捕獲剤をひきつけて固定化する能力を有するさらなるレセプターを保持することができる。さらなるレセプターは、捕獲剤自体又は捕獲剤に結合した荷電物質に対して反対に帯電した、荷電物質を含むことができる。
さらに他の代替として、レセブター分子は固体担体に固定化(結合)された、及び特定の結合反応を通して捕獲剤を固定化する能力と有するいずれかの特定の結合要素であってもよい。レセプター分子によって、測定動作の前又は測定動作中の個体担体材料へ捕獲剤が間接的に結合することができる。よって、固相は、プラスチック、変性プラスチック、磁性又は非磁性金属、試験管のガラス又はシリコン表面、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ、羊(又は他の適当な動物)の赤血球、硬膜細胞及び当業者に知られた他の形態とすることができる。本発明のポリヌクレオチドは、個々に固体担体に結合又は固定されてもよいし、少なくとも2,5,8,10,12,15,20又は25の別個の本発明のポリヌクレオチドのグループで、単一の固体担体に結合又は固定されていてもよい。さらに、本発明以外のほかのポリヌクレオチドが、本発明の1つ又はそれ以上の、同じ固体担体に結合されていてもよい。
従って、本発明は、また、配列番号1、2、4、5、7、8、11、12、13、14及び15からなる群から選択されるヌクレオチド配列、それらの断片又は変異体、あるいはそれらに対する相補的な配列を含む核酸の存在を、試料中において検出する方法からなり、この方法は、以下の工程、
a)配列番号1、2、4、5、7、8、11、12、13、14及び15のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる核酸配列、それらの断片又は変異体、あるいはそれらに対する相補的なの配列に含まれるヌクレオチド配列でハイブリダイズすることができる1つの核酸プローブ又は複数の核酸プロープと、サンプルとを接触させてアッセイし、
b)サンプル中でプローブと核酸との間で形成されたハイブリッド複合体を検出する工程からなる。
さらに、本発明は、配列番号1、2、4、5、7、8、11、12、13、14及び15からなる群から選択されるヌクレオチド配列、それらの断片又は変異体、あるいはそれらに対する相補的な配列を含む核酸の存在を、試料中において検出するキットに関し、このキットは、
a)配列番号1、2、4、5、7、8、11、12、13、14及び15のヌクレオチド配列からなる群から選択される核酸、それらの断片又は変異体、あるいはそれらに対する相補的な配列に含まれるヌクレオチド配列でハイブリダイズすることができる1つの核酸プローブ又は複数の核酸プロープと、
b)任意に、ハイブリダイゼーション反応を行うために必要な試薬とからなる。
この検出方法及びキットの第1の好ましい態様において、1つの核酸プローブ又は複数の核酸プローブは、検出可能な分子で標識されている。この方法及びキットの第2の好ましい態様において、核酸プローブ又は複数の核酸プローブは、基体上に固定化されている。第3の好ましい態様において、核酸プローブ又は複数の核酸プローブは、配列番号1の27-81.rp、27-81.pu、27-29.rp、27-29.pu、27-2.rp、27-2.pu、27-30.rp、27-30.pu、27-81-180.mis、27-81-180.mis相補体、27-29-224.mis、27-29-224.mis相補体、27-2-106.mis、27-2-106.mis相補体、27-30-249.mis、27-30-249.mis相補体、27-81-180プローブ、27-29-224プローブ、27-2-106プローブ及び27-30-249プローブで識別された核酸配列からなる群から選択される配列、又は配列番号4の27-1-61プローブ、27-1-61.mis、27-1-61.mis相補体、27-1.pu及び27-1.rp相補体として確認されたヌクレオチド配列からなる群から選択される配列のいずれか、及びそれらの相補的な配列、又は配列番号1で確認された27-2-106、27-81-180、27-29-224及び27-30-249及び配列番号4で確認された27-1-61からなる群から選択されるバイアレリックマーカー又はそれらの相補体を含むヌクレオチド配列を含む。
本発明のバイアレリックマーカー
本発明のバイアレリックマーカーの利点
本発明のバイアレリックマーカーは、RFLP(制限酵素断片長多型)及びVNTR(タンデムリピートの繰り返し数)マーカー等の他の遺伝的マーカーにない多くの重要な利点がある。
マーカーの第1世代はRFLPであったが、それは制限酵素断片長を変更した変異体である。しかし、RFLPを同定又は分類するために用いられた方法は、比較的、材料、労力及び時間的な無駄が多かった。
マーカーの第2世代はVNTRであったが、それはミニサテライト又はマイクロサテライトのいずれかに分類することができる。ミニサテライトは、0.1〜20kb長の範囲にわたるでヒト染色体の領域に沿って分布された5〜50を単位として繰り返されるタンデムリピートのDNA配列である。それらには、多くの予想される対立遺伝子に存在するため、それらが有する情報性は極めて有益である。ミニサテライトは、サザンプロットによって解析され、試験中の個体から採取した核酸サンプル中に存在するタンデムリピートの数を確認する。しかし、サザンブロットにより分類することができる潜在的VNTRは、わずか104でしかない。さらに、RFLP及びVNTRマーカーは、いずれも大量に開発及び分析するにはコスト高であり、時間もかかる。
単一ヌクレオチド多型又はバイアレリックマーカーは、RFLP及びVNTRと同様に使用して、いくつかの利点を得ることができる。単一ヌクレオチド多型は、ヒトゲノム中に高密度で存在し、最も頻度の高いタイプの変異を示す。推定で、107を上回る数の部位が、ヒトゲノムの3×109の塩基対にそって分散している。従って、単一ヌクレオチド多型は、RFLPマーカー又はVNTRマーカーよりも高い頻度かつ高い均一性で発生するが、これは、そのようなマーカーが興味の対象となる遺伝座に極めて近いところで見つかる可能性が極めて大きいことを意味している。単一ヌクレオチド多型はVNTRマーカーに比べると可変性に欠けるが、突然変異という点では、より安定である。
また、本発明のバイアレリックマーカーのように、特徴づけられた単一ヌクレオチド多型の異なる形態は、容易に識別することが多いため、よって、通常の基準で容易に型決定をすることができる。バイアレリックマーカーには、単一ヌクレオチドベースの対立遺伝子が含まれており、それらはわずか2つの共通な対立遺伝子を有しているのみであるため、並列性の高い検出を可能とし、自動的に評点することができる。本発明のバイアレリックマーカーは、大量の個体について遺伝子型決定を迅速に、高スループットで行う可能性を提供する。
バイアレリックマーカーは、ゲノム中に高密度で含まれており、十分に情報性があり、大量にアッセイすることができる。これらの利点が組み合わせられることで、バイアレリックマーカーがゲノム研究において非常に価値のあるものとする。バイアレリックマーカーは、家族の連鎖研究において、対立遺伝子シェアリング法において、集団の連鎖不均衡研究において、症例−対照集団の関連研究において用いることができる。本発明の重要な態様は、バイアレリックマーカーをを用いることで、関連研究を行って、複雑な形質に関与している遺伝子を同定することができるという点である。関連研究は、血縁のない症例又は対照集団におけるマーカー対立遺伝子の頻度を試験し、多因子性の又は散発性の形質の検出において一般に採用されている。関連研究は、一般的な集団で行うことができるものであり、罹患家族における関連した個体に対して行われた研究(連鎖研究)に限定されるものではない。異なる遺伝子におけるバイアレリックマーカーを、疾患又は治療に対する応答との直接的な関連性に関して、並列にスクリーニングすることができる。このような多遺伝子アプローチは、特定の表現型、薬物応答、散発性形質又は複雑な遺伝学的病因を伴う疾患状態における複数の遺伝因子がどのような相乗作用を及ぼすかを試験するために必要な統計学的検出力を提供し、ヒトゲノム研究の多様性にとって強力なツーとなる。
本発明の好ましいバイアレリックマーカーは配列表にリストされており、特に、配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249、配列番号4の27-1-61及び以下の表1のものが挙げられる。ゲノムのDNA、アンプリコンのサンプルにおけるマーカの領域を増幅するために用いられたプライマー対は、接頭語である".rp"及び".pu相補体"によって、配列番号1及び配列番号4に示されている。特定のバイアレリックマーカーでの塩基を測定するために特異的な対立遺伝子の遺伝子型決定の方法に用いられているマイクロシーケンシング・プライマー対は、接頭語である".mis" 及び".mis相補体"によって、配列番号1及び配列番号4に示されている。
Figure 2005511095
多型、バイアレリックマーカー及びそれらを含むポリヌクレオチド
ひとつの態様において、本発明は、総合失調症に関連したバイアレリックマーカーに関する。また、本発明のバイアレリックマーカーと連鎖不均衡なバイアレリックマーカーを含む。
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15のいずれかの配列、並びにそれらと相補的な配列(それらの相補体)のヌクレオチドの連続スパンからなる、から本質的になる又は含むものであってもよい。「連続スパン」は、連続スパンが特定の配列番号の長さと一致する限り、少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 70, 80, 100, 250, 500, 1000又は2000のヌクレオチド長のものであってもよい。
本発明は、本発明の方法においてプライマーおよびプローブとして用いるためのポリヌクレオチドを包含する。これらポリヌクレオチドは、配列番号1又は4のいずれかの配列、並びにそれらの相補的な配列(それらの相補体)のヌクレオチドの連続スパンからなる、から本質的になる又は含むものであってもよい。「連続スパン」は、連続スパンが特定の配列番号の長さと一致する限り、少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 70, 80, 100, 250, 500, 1000又は2000のヌクレオチド長のものであってもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、配列表に列挙した多型塩基を取り囲む正確なフランキング配列を有するものに限定されるものではないことに注意すべきである。むしろ、バイアレリックマーカーやマーカーからの距離がさらに長い本発明の他の多型または本発明のプライマーまたはプローブを取り囲むフランキング配列を、意図した用途に合わせて任意の度合いで伸長または短縮してもよく、本発明では特にこのような配列も企図していることが高く評価されるであろう。配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15のポリヌクレオチドが意図した用途に合うどのような長さのものであってもよいことは高く評価されるであろう。また、連続スパンの外にあるフランキング領域がヒトの被検体に実際に起こる未変性フランキング配列と相同的である必要はない。ヌクレオチドの意図した用途に合うヌクレオチド配列を加えることが特に企図される。連続スパンは、任意に、前記配列に本発明のバイアレリックマーカーを含むものであってもよい。このバイアレリックマーカーは、一般に一塩基位置に多型を含む。したがって、各バイアレリックマーカーがポリヌクレオチド配列の2つの形態に対応することになり、これらを互いに比較すると、ひとつの位置でのヌクレオチド修飾になる。通常、ヌクレオチド修飾では、一方のヌクレオチドが他方のヌクレオチドに置換される必要がある。
任意に、表1あるいは配列番号1又は4に開示したバイアレリックマーカーの対立遺伝子1または対立遺伝子2を、本発明のバイアレリックマーカーに存在するものとして特定してもよい。任意に、連続スパンは、1つのヌクレオチドの置換、欠失ならびに複数ヌクレオチドの欠失をはじめとして、表1あるいは配列番号1又は4に記載された多型位置にヌクレオチドを含むものであってもよい。表1あるいは配列番号1又は4の多型がバイアレリックマーカーであることが確認されている。好ましいポリヌクレオチドは、配列番号1又は4の配列ならびにそれらの相補的な配列のヌクレオチドの連続スパンからなる、実質的にかかる連続スパンからなる、またはかかる連続スパンを含むものであってもよい。「連続スパン」は、その連続スパンの長さが特定の配列番号の長さと一致する限りにおいて、少なくとも8、10、12、15、18、20、25、35、40、50、70、80、100、250、500、1000又は2000ヌクレオチド長のものであってもよい。
好ましいプローブ又はプライマーは、配列番号1又は4で示されるヌクレオチド配列の群から選択されるポリヌクレオチドを含む核酸を含むものである。
本発明は、また、ストリンジェンシーの高いまたは中程度の条件下で、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15のいずれかのポリヌクレオチドならびにこれと相補的な配列とハイブリダイズされるポリヌクレオチドに関する。好ましくは、かかるポリヌクレオチドは、その長さのポリヌクレオチドが特定の配列番号と一致する限り、少なくとも20、25、35、40、50、70、80、100、250、500、1000又は2000ヌクレオチド長である。好ましいポリヌクレオチドは本発明の多型を含む。任意に、配列表の表1に開示された多型の対立遺伝子1または対立遺伝子2を、本発明の多型に存在するものとして特定してもよい。特に好ましいポリヌクレオチドは本発明のバイアレリックマーカーを含む。任意に、表1に開示されたバイアレリックマーカーの対立遺伝子1または対立遺伝子2を、本発明のバイアレリックマーカーに存在するものとして特定してもよい。ストリンジェンシーの高い条件についてさらにここで説明する。
本発明のプライマーは、当該分野で公知のいずれかの方法で、開示された配列からデザインすることができる。プライマーの好ましいセットは、配列番号1及び4のいずれかの配列と同一の連続スパンの3'末端が、プライマーの3'末端に存在するように形成されたものである。そのような配置は、プライマーの3'末端を選択した核酸配列とのハイブリダイズが可能となり、非常に効果的に増幅又はシーケンシング反応に対するプライマーの有効性を増大させることができる。プライマーの好ましいセットにおいて、連続スパンは、配列表(配列番号1及び配列番号4)に示された配列のひとつにおいて見出される。対立遺伝子特異的プライマーは、本発明のバイアレリックマーカー又は他の多型が連続スパンの3'末端に存在し、この連続スパンが、プライマーの3'末端に存在するように、デザインされていてもよい。そのような対立遺伝子特異的プライマーは、前記マーカーに存在する2つの対立遺伝子のうちのひとつを含む核酸サンプルとともに使用される限り、増幅又はシーケンシング反応を選択的に刺激しやすいものである。本発明のプライマーの3'末端は、前記配列における本発明のバイアレリックマーカー内又はそれよりも少なくとも2, 4, 6, 8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 50, 100, 250, 500又は1000のヌクレオチド上流に、あるいはシーケンシング、増幅においてそれらの企図する使用のために適したいずれか他の位置又は新規な配列又はマーカー位置に所在してもよい。本発明のバイアレリックマーカーの1ヌクレオチド上流に位置したそれらの3'末端を有するプライマーは、マイクロシーケンシングアッセイにおいて特に有用である。好ましいマイクロシーケンシングプライマーを配列表に示す(配列番号1及び4)。
本発明のプローブは、当該分野で公知の方法、特に、ここで開示された特定の配列又はマーカーが存在するかどうかを試験することができる方法のいずれかの方法で、開示された配列からデザインされていてもよい。プローブの好ましいセットは、それらが選択的にバイアレリックマーカー又は他の多型の一方の(分析条件のいずれかの特定のセットでの他方ではない)対立遺伝子に結合するような、当該分野で公知のいずれかの方法で本発明のハイブリダイゼーション分析に使用するためにデザインされるかもしれない。好ましいハイブリダイゼーションプローブは、8, 10, 12, 15, 18 又は20から25, 35, 40, 50, 60, 70又は80ヌクレオチド長であるか、あるいは、12, 15, 18, 20, 25, 35, 40又は50ヌクレオチド長のものとして特定でき、この配列における本発明のバイアレリックマーカー又は他の多型を含むものとして特定された連続スパンからなっていてもよいし、から本質的になっていてもよいし、含んでもよい。好ましい実施形態において、配列表に開示された対立遺伝子1又は2(配列番号1及び4)は、バイアレリックマーカー部位に存在するとして特定されてもよい。他の好ましい実施形態では、そのバイアレリックマーカーは、ハイブリダイゼーションプローブの中心から6,5,4,3,2又は1ヌクレオチド内に又はそのプローブの中心に存在してもよい。
本発明のひとつの実施形態では、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15のいずれか1つの8から50又はそれらの相補体のヌクレオチドの連続スパンを含む、から本質的になる、からなる、単離、精製及び組み換えポリヌクレオチドを包含し、そのスパンは、本発明の多型を含み、任意に、その多型は、バイアレリックマーカー及びそれらの相補体、又は任意にそれらと連鎖不均衡なバイアレリックマーカーである。
本発明の他の実施形態では、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15のいずれか1つの8から50又はそれらの相補体のヌクレオチドの連続スパンを含む、から本質的になる、からなる、単離、精製及び組み換えポリヌクレオチドを包含し、その連続スパンの3'末端は、ポリヌクレオチドの3'末端に配置されており、ポリヌクレオチドの3'末端は本発明のバイアレリックマーカー及びそれらの相補体、又は任意にそれらと連鎖不均衡なバイアレリックマーカーの20ヌクレオチド上流の範囲内に配置されている。さらなる実施形態では、本発明は、以下の配列、つまり配列番号11から15から選択される配列を含む、から本質的になる、からなる単離、精製、組み換えられたポリヌクレオチドを包含する。
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号1又は4におけるバイアレリックマーカー又はそれらの相補体でのヌクレオチドの同一性を測定するためのハイブリダイゼーション分析、シーケンシング分析及び酵素をベースとするミスマッチ検出分析における使用のためのポリヌクレオチド、ならびに本発明のバイアレリックマーカーを含むヌクレオチドのセグメントの増幅における使用のためのポリヌクレオチドを包含する。
これらのアレイは、一般に、フォトリソグラフィ法及び固相オリゴヌクレオチド合成(Fodorら, Science, 251:767-777, 1991)の組み合わせと一体化した化学的合成法又は光有向(light directed)合成法を用いて製造することができる。固体担体へのオリゴヌクレオチドのアレイの固定は、典型的には、プローブがチップの固相上に高密度アレイの状態で固定されている"Very Large Scale Immobilized Polymer Synthesis" (VLSIPS(登録商標))として一般に認証されている技術の開発によって可能となっている。VLSIPS(登録商標)技術の例は、米国特許5,143,854及び5,412,087、PCT公開WO 90/15070, WO 92/10092及びWO 95/11995で提供されており、光有向合成法のような技術を通してオリゴヌクレオチドアレイを形成する方法として説明している。固体担体に固定されたヌクレオチドの提供されたアレイで意図されたデザイン方法において、さらなるプレセンテーション方法は、PCT公開WO 94/12305, WO 94/11530, WO 97/29212及びWO 97/31256で開示されている。
オリゴヌクレオチドアレイは、また、サンプルが、本発明のバイアレリックマーカーの1以上の対立遺伝子を含むか否かを測定するために、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15及びそれらの相補的な配列、又はそれらの少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 70, 80, 100, 250, 500 , 1000又は2000の連続ヌクレオチド(これらの長さのフラグメントが特定の配列番号の長さと一致する限り)のフラグメントからなる群から選択された少なくとも1つの配列を含んでいてもよい。他の実施の形態では、アレイは、また、配列表における表1のバイアレリックマーカーの1以上の対立遺伝子を増幅するために、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15及びそれらの相補的な配列、又はそれらの少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 70, 80, 100, 250, 500, 1000又は2000の連続ヌクレオチド(これらの長さのフラグメントが特定の配列番号の長さと一致する限り)のフラグメントからなる群から選択された少なくとも1つの配列を含んでいてもよい。他の実施の形態では、アレイは、また、サンプルが本発明のバイアレリックマーカーの1以上の対立遺伝子を含むか否かを測定するためのマイクロシーケンシング分析を行うために、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15及びそれらの相補的な配列、又はそれらの少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 70, 80, 100, 250, 500, 1000又は2000の連続的なヌクレオチド(これらの長さのフラグメントが特定の配列番号の長さと一致する限り)のフラグメントからなる群から選択された少なくとも1つの配列を含んでいてもよい。さらなる実施の形態では、オリゴヌクレオチドアレイは、また、サンプルが、本発明の多型及びバイアレリックマーカーの1以上の対立遺伝子を含むか否かを測定するために、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15及びそれらの相補的な配列、又はそれらの少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 35, 40, 50, 70, 80, 100, 250, 500, 1000又は2000の連続的なヌクレオチド(これらの長さのフラグメントが特定の配列番号の長さと一致する限り)のフラグメントからなる群から選択された少なくとも1つの配列を含んでいてもよい。
本発明のさらなる目的は、上述したようなアプリコン又はマイクロシーケンシング・プライマーからなる群から選択された配列、又はそれらに相補的な配列、又はそれらの少なくとも8, 10, 12, 15, 18, 20, 25, 30又は40の連続ヌクレオチドのフラグメントの少なくとも1種か、少なくとも配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249及び配列番号4の27-1-61、あるいはそれらの相補体からなる群から選択される少なくとも1, 2, 3, 4, 5, 10, 20のバイアレリックマーカーからなる少なくとも1つの配列のいずれかを含む核酸配列のアレイに関する。本発明は、また、上述したようなアプリコン又はマイクロシーケンシング・プライマーからなる群から選択された配列、又はそれらに相補的な配列、又はそれらの少なくとも8の連続的なヌクレオチドのフラグメントの少なくとも1, 2, 3, 4, 5, 10, 20種か、あるいは配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249及び配列番号4の27-1-61、あるいはそれらの相補体からなる群から選択されるバイアレリックマーカーからなる少なくとも2つの配列のいずれかを含む核酸配列のアレイに関する。
本発明は、また、本発明の1以上のポリヌクレオチド、任意に必要な試薬の一部又は全部、及び本発明のバイアレリックマーカーでヌクレオチドの同一性を判定することによって試験対象を遺伝子型判定するためのインストラクションからなる診断キットを包含する。このキットのポリヌクレオチドは、任意に固体担体に結合させてもよいし、ポリヌクレオチドのアレイ又はアドレス指定可能なアレイの一部としてもよい。キットは、限定されないが、シーケンシング分析法、マイクロシーケンシング分析法、ハイブリダイゼーション分析法又は酵素をベースとしたミスマッチ検出分析法などを含む当該分野で公知の何れの方法によっても、マーカー位置でヌクレオチドの同一性を判定することができる。任意に、そのようなキットは、総合失調症への試験対象の疾病形質、総合失調症に作用する薬剤への見込みのある応答又は総合失調症に作用する薬剤に対する副作用を被る機会に関する判定結果を評点するためのインストラクションを含めてもよい。
最後に、本発明の何れの実施態様においても、バイアレリックマーカーは、任意に、
(a)配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249ならびに配列番号4の27-1-61からなる群から選択されたバイアレリックマーカー、又はより好ましくは、配列番号1の27-2-106及び27-29-224からなる群から選択されたバイアレリックマーカー、
(b)配列番号1の27-2-106及び27-29-224からなる群から選択されるバイアレリックマーカー、
(c)配列番号1のバイアレリックマーカー27-2-106又は
(d)配列番号1のバイアレリックマーカー27-29-224からなる。
任意に、ここで説明された実施形態のいずれにおいても、DAO関連バイアレリックマーカーは、配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249、ならびに配列番号4の27-1-61からなる群から選択することができる。任意に、ここで説明された実施形態のいずれにおいても、DAO関連バイアレリックマーカーは、配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249、ならびに配列番号4の27-1-61からなる群から選択することができる。このDAO関連バイアレリックマーカーのセットは、それぞれ、バイアレリックマーカーの少なくとも、1, 2, 3, 4, 5, 10, 20, 40, 50, 100又は200を含むことができる。
任意に、ここで説明された方法の構成のいずれも、明確に少なくとも1、2又は3バイアレリックマーカーを排除してもよい。
さらに、本発明のいずれの実施形態においても、DAO関連バイアレリックマーカーのセットは、少なくとも1、2、3、4又は5のバイアレリックマーカーからなっていてもよい。
バイアレリックマーカーの新規な同定方法
ゲノムフラグメントを単一ヌクレオチド多型についてスクリーニングする際には、オリゴヌクレオチドプローブを用いたディファレンシャルハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動で測定される易動度の変化の検出又は増幅した核酸の直接配列決定など、種々の方法のいずれを使用してもよい。バイアレリックマーカーを同定するための好ましい方法は、適当な数の血縁のない個体からのゲノムDNAフラグメントの比較配列決定を含む。
第1の実施形態では、血縁のない個体から得たDNA試料を一緒にプールし、続いて興味の対象となるゲノムDNAを増幅して配列決定する。このようにして得られたヌクレオチド配列を解析し、有意な多型を同定する。この方法の大きな利点の1つは、DNA試料をプールすることで、実施しなければならないDNA増幅反応と配列決定反応の回数が実質的に減少させることにつながるという事実にある。さらに、この方法は非常に感受性の高いものであるため、この方法で得られるバイアレリックマーカーでは、関連性解析を行う際に有用となる共通性の乏しい対立遺伝子が十分な頻度を示すのが普通である。通常、この方法によって同定されるバイアレリックマーカーの共通性の乏しい対立遺伝子の頻度は少なくとも10%である。
第2の実施形態では、DNA試料をプールせず、増幅と配列決定を個別に行う。この方法は、候補遺伝子内での関連性解析を行うためにバイアレリックマーカーの同定が必要な場合に用いると好ましいことが多い。好ましくは、プロモーター領域又はエキソン領域などの極めて関係の深い遺伝子領域を、バイアレリックマーカーについてスクリーニングする。この方法で得られるバイアレリックマーカーは、関連性解析を行うための情報性という点で劣ることがある。例えば、頻度の低い対立遺伝子の頻度が約10%未満になることもあり得る。しかし、そのようなバイアレリックマーカーは関連性解析を行う上では十分に情報性のあるものであり、このような情報性の低いバイアレリックマーカーを本発明のゲノム関連性解析に含めると、場合によっては原因変異を直接同定できることがあるが、浸透度によっては珍しい変異である可能性が残ることも理解できよう。
ゲノムDNA試料
本発明のバイアレリックマーカーを作出するゲノムDNA試料は、民族性のバックグラウンドが明らかになっている異種起源の個体群に対応する、血縁のない個体から得たものであると好ましい。DNA試料を得る個体の数は、好ましくは約10〜約1000、より好ましくは約50〜約200の範囲で実質的に変えることができる。通常、特定の個体群の多型性に十分な多様性を持たせ、できるだけ多くのマーカーを同定し、かつ統計的に有意な結果を生成するためには、少なくとも約100個体からDNA試料が集められる。
解析対象となるゲノムDNAのソースに関して言えば、特に制限なくどのような被検試料でも用いることが可能である。これらの被検試料としては、本願明細書において説明する本発明の方法によって試験可能な生物学的試料が挙げられる。また、全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液の他、呼吸器、腸管及び泌尿生殖器、涙、唾液、乳、白血球、骨髄腫などでのさまざまな外分泌液、細胞培養の上澄み液などの生物学的な流体、腫瘍組織及び非腫瘍組織、リンパ節組織を含む固定組織標本、骨髄吸引液及び固定細胞標本などのヒト及び動物の体液も挙げられる。本発明に使用されるゲノムDNAの好ましいソースは、各ドナーの辺縁末梢静脈血から採取したものである。ゲノムDNAを生物学的試料から調製する方法は当業者においてよく知られている。好ましい実施形態を実施例1で詳細に説明する。当業者であれば、プールしたDNA試料又はプールしていないDNA試料のどちらかを選択して増幅できる。
DNA増幅
DNA増幅方法を用いることで、ゲノムDNA試料でのバイアレリックマーカーの同定を容易にすることができる。増幅ステップのためにDNA試料をプールしても、プールしなくてもよい。DNA増幅技術は当業者においてよく知られている。バイアレリックマーカーを有するDNAフラグメントを増幅するためのさまざまな方法については、以下においてさらに詳細に説明する。PCRテクノロジーは、新しいバイアレリックマーカーの同定に使用される好ましい増幅技術である。
第1の実施形態では、本願発明者らが生成したゲノム配列情報を使用して、バイアレリックマーカーを同定する。上述したBACクローンの挿入物などのゲノムDNAフラグメントを配列決定し、500bpのフラグメントを増幅するためのプライマーの設計に利用する。これらの500bpのフラグメントをゲノムDNAから増幅し、バイアレリックマーカーでスキャンする。OSPソフトウェア(Hillier L. and Green P., 1991)を用いてプライマーをデザインしてもよい。いずれのプライマーも、配列決定用プライマーとして機能する共通のオリゴヌクレオチドを特定の標的塩基の上流に含むものであってもよい。当業者であれば、これらの目的で利用できるプライマー伸長物に馴染みがあるであろう。
本発明のもう1つの実施形態では、バイアレリックマーカーの直接スクリーニングを可能にする公共のデータベースで候補遺伝子のゲノム配列を利用できる。候補遺伝子をコードするゲノム配列の増幅に有用な好ましいプライマーとしては、遺伝子のプロモーター、エキソン及びスプライス部位に的が絞られる。遺伝子のこれらの機能領域に存在するバイアレリックマーカーが原因変異となる確率は高い。
増幅したゲノムDNAの配列決定及び一塩基多型の同定
次に、上述したように生成された増幅産物の配列を、当業者が容易に利用できる周知の適当な方法で決定する。ジデオキシ媒介法(Sanger法)又はMaxam-Gilbert法のいずれかを用いたDNAの配列決定方法は当業者間で周知である。そのような方法は、例えば、Maniatisら(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Second Edition, 1989)に開示されている。他の方法としては、Chee et al.(Science 274, 610, 1996)に記載されているような高密度DNAプローブアレイへのハイブリダイゼーションが挙げられる。
好ましくは、染料プライマーサイクルシークエンシングプロトコルを使用して、増幅したDNAで自動ジデオキシターミネーターでの配列決定反応を行う。配列決定反応での産物を配列決定用ゲルに仕込み、ゲル画像解析によって配列を決定する。多型探査は、同一の位置に異なる塩基が発生することで泳動パターンのピークに重畳が見られることを利用して行われる。各ジデオキシターミネーターには異なる蛍光分子で標識がしてあるため、バイアレリック部位に対応する2つのピークが配列上の同一位置にある2つの異なるヌクレオチドに対応する別の色として現れる。しかし、2つのピークが存在するのは自然放射によるノイズが原因のアーチファクトの可能性もある。このようなアーチファクトを排除するために、2つのDNA鎖を配列決定し、ピークとの比較を実施する。多型配列として登録されるためには、両方の鎖で多型が検出される必要がある。
上記の手順を用いることでバイアレリックマーカーを含む増幅産物の同定が可能になる。対立遺伝子の頻度が分かっているプールを配列決定して確認したところ、100個体で構成されるプールを配列決定して検出されるバイアレリック多型の頻度の検出限界はマイナー対立遺伝子で約0.1である。しかし、プーリング法によって検出されたバイアレリック多型のうち90%を超える多型では、マイナー対立遺伝子の頻度が0.25を上回っている。したがって、この方法で選択したバイアレリックマーカーの頻度は、マイナー対立遺伝子で少なくとも0.1、メジャー対立遺伝子で0.9未満である。好ましくはマイナー対立遺伝子で少なくとも0.2、メジャー対立遺伝子で0.8未満、さらに好ましくはマイナー対立遺伝子で少なくとも0.3、メジャー対立遺伝子で0.7未満であり、ヘテロ接合率は0.18より高く、好ましくは0.32より高く、さらに好ましくは0.42より高い値である。
別の実施形態では、バイアレリックマーカーが個々のDNA試料の配列決定によって検出され、このようなバイアレリックマーカーのマイナー対立遺伝子の頻度は0.1未満であってもよい。
本発明のバイアレリックマーカーの確認
個体群に両方の対立遺伝子が存在することを確認して、遺伝マーカーとしての多型の有用性を評価する。バイアレリックマーカーの確認は、本発明の方法で個体のグループの遺伝子型を判定し、両方の対立遺伝子が存在することを示して行う。対立遺伝子の遺伝子型判定には、マイクロシークエンシングが好ましい方法である。遺伝子型判定ステップによる確認は、グループの各個体から採取した個体試料ごとに行ってもよいし、2つ以上の個体から採取した試料のプールについて遺伝子型を判定して行ってもよい。問題の対立遺伝子に対して個体がヘテロ接合的なものである場合には、1個体でグループを形成することもできる。好ましくは、1つのグループに少なくとも3個体が含まれるようにし、さらに好ましくは1つのグループに5個体又は6個体が含まれるようにする。これによって、1回の確認試験で試験対象となるバイアレリックマーカー2つ以上を確認できることが多いためである。しかし、確認試験を行う対象が小さなグループであるとき、サンプリングエラーが原因で被検個体のいずれにも2つの対立遺伝子がなかった場合に、偽の負の結果となってしまうことがある。したがって、配列内の特定の位置に真のバイアレリックマーカーがあることを示す場合よりも、特定の最初の結果がアーチファクトであるということを示す上で確認プロセスの有用性が落ちる。本発明の遺伝子型判定法、ハプロタイプ判定法、関連性解析法及び相互作用解析法はいずれも、任意に、有用性が確認できたバイアレリックマーカーを用いて単独で実施できる。
本発明のイアレリックマーカーの頻度の評価
バイアレリックマーカー部位における最小共通対立遺伝子の頻度を決定することにより、有効なバイアレリックマーカーの遺伝マーカーとしての有用性をさらに評価する。最小共通対立遺伝子の決定は、本発明の方法で個体のグループの遺伝子型を判定し、両方の対立遺伝子が存在することを示して行う。遺伝子型判定ステップによる頻度判断は、グループの各個体から採取した個体試料ごとに行ってもよいし、2つ以上の個体から採取した試料のプールについて遺伝子型を判定して行ってもよい。このグループの大きさは、全体が個体群を代表できるだけのものでなければならない。好ましくは、このグループには少なくとも20個体が含まれ、さらに好ましくはグループには少なくとも50個体が含まれ、最も好ましくはグループには少なくとも100個体が含まれる。もちろん、グループが大きくなればなるほどサンプリングエラーが減るため、頻度決定の精度も高くなる。共通性の少ない対立遺伝子の頻度が30%以上のバイアレリックマーカーを「高品質バイアレリックマーカー」とする。本発明の遺伝子型判定法、ハプロタイプ判定法、関連性解析法及び相互作用解析法はいずれも、任意に、高品質バイアレリックマーカーを用いて単独で実施できる。
本発明の他の実施形態は、DAO関連バイアレリックマーカーについて前記個体群からの個体の遺伝子型を判定し、前記個体群における前記バイアレリックマーカーの比例表示を決定することを含む、個体群における対立遺伝子頻度の推定方法を含むものである。また、個体群における対立遺伝子頻度の推定方法は、本願明細書で開示したいずれかの限定のある方法あるいは単独又は組み合わせでの方法を包含する。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーは、配列番号1、4、11〜15及びそれらの相補体からなる群から個々に又は組み合わせで選択される配列に含まれるものであってもよい。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーは、表1に示すバイアレリックマーカーから選択されるものであってもよい。任意に、個体群におけるバイアレリックマーカー対立遺伝子の頻度の判定が、前記個体群の各個体のゲノムに存在する前記バイアレリックマーカーの両方のコピーについてヌクレオチドの同一性を判定し、その個体群について前記DAO関連バイアレリックマーカーにおける前記ヌクレオチドの比例表示を算出することによって達成されるものであってもよい。任意に、個体群におけるバイアレリックマーカー対立遺伝子の頻度の判定が、前記個体群の特定数の個体又は各個体から採取した生物学的試料のプールに遺伝子型判定を行い、前記ヌクレオチドの比例量を算出して全体と比較してなされるものであってもよい。
バイアレリックマーカーでの個体の遺伝子型判定方法
本発明の1種又はそれ以上のバイアレリックマーカーでの遺伝子型を生物学的試料で判定するための方法が提供される。これらの方法はいずれも、インビトロで行うことができる。このような遺伝子型判定方法は、当該分野で知られた方法で本発明のバイアレリックマーカーでのヌクレオチドの同一性を判断することを含む。これらの方法には、関連研究において症例−対照個体群での遺伝子型判定の用途、ならびに特定の形質に関連していることが知られているバイアレリックマーカーの対立遺伝子を検出する状況における用途がある。いずれの場合も、個体のゲノム中に含まれるバイアレリックマーカーの両方のコピーを判断し、個体が特定の対立遺伝子についてホモ接合性であるかヘテロ接合性であるかを判断することができる。
これらの遺伝子型判定方法は、単一の個体又はプールしたDNA試料から得た核酸試料で行うことができる。
バイアレリックマーカーの同定について上述した方法と同様の方法を用いて、あるいは後述するような他の遺伝子型判定方法を用いて、遺伝子型判定を行うことができる。好ましい実施形態では、異なる個体から採取して増幅したゲノムフラグメントの配列同士を比較し、新しいバイアレリックマーカーを同定するが、診断や関連性解析での用途で既知のバイアレリックマーカーの遺伝子型を判定する場合はマイクロシークエンシングを使用する。
本発明の他の実施形態は、DAO関連バイアレリックマーカーのヌクレオチドの同一性を判定することを含む、生物学的試料の遺伝子型判定方法を包含する。また、本発明による遺伝子型判定方法は、本願明細書で開示したいずれかの限定のある方法あるいは単独又は組み合わせでの方法を包含する。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーは、配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249、配列番号4の27-1-61及びそれらの相補体からなる群から個々に又は組み合わせで選択される配列に含まれるものであってもよい。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーは、表1、配列番号1、4又は配列番号11〜15に示すバイアレリックマーカーから個々に又は組み合わせで選択されるものであってもよい。任意に、前記方法はさらに、前記バイアレリックマーカーの第2のヌクレオチドの同一性を判定すること(前記第1のヌクレオチド及び第2のヌクレオチドが(Watson&Crick塩基対形成によって)互いに塩基対をなしていない)を含むものであってもよい。任意に、前記生物学的試料が単一の個体又は被検体に由来するものであってもよい。任意に、前記方法がインビトロで実施されるものであってもよい。任意に、前記バイアレリックマーカーが、前記個体のゲノムに存在する前記バイアレリックマーカーの両方のコピーについて判定されるものであってもよい。任意に、前記生物学的試料が複数の被検体又は個体に由来するものであってもよい。任意に、前記方法がさらに、前記判定するステップの前に、バイアレリックマーカーを含む前記配列の一部を増幅することを含むものであってもよい。任意に、前記増幅を、宿主細胞における複製開始点及び前記一部を含む組換えベクターのPCR、LCR又は複製によって行ってもよい。任意に、前記判定を、ハイブリダイゼーションアッセイ、シークエンシングアッセイ、マイクロシークエンシングアッセイ又は酵素ベースのミスマッチ検出アッセイによって行ってもよい。
遺伝子型判定用DNAのソース
所望の特異核酸配列を含んでいることが明らかであるか、あるいはその疑いが認められるのであれば、精製状態又は非精製状態のどのような核酸ソースでも起始核酸として使用できる。本願明細書にて説明するように、細胞、組織、体液などからDNA又はRNAを抽出すればよい。本発明の遺伝子型判定方法に用いられる核酸はどのような哺乳動物ソース由来のものであってもよいが、核酸試料を採取する被検体及び個体は一般にヒトであると理解される。
バイアレリックマーカーを有するDNAフラグメントの増幅
本発明によるバイアレリックマーカーを1種又はそれ以上含むヌクレオチドセグメントを増幅するための方法及びポリヌクレオチドが得られる。バイアレリックマーカーを有するDNAフラグメントの増幅は、さまざまな方法や目的で利用されるものであり、遺伝子型判定に限定されるものではないことは理解できよう。ただし、すべてではないとはいえ多くの遺伝子型判定法では、興味の対象となっているバイアレリックマーカーを有するDNA領域をあらかじめ増幅しておく必要がある。このような方法によって、バイアレリックマーカーのスパン、あるいはこれに対して遠位又は近位にある部位と配列を含む配列の濃度又は総数が明らかに増す。診断アッセイでも本発明のバイアレリックマーカーを有するDNAセグメントの増幅に依存する場合がある。
DNAの増幅は、確立されたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法、あるいはこれに手を加えて開発又は変更したものなど、当該分野で知られたいずれかの方法で行えばよい。本願明細書において使用可能な増幅法としては、欧州特許出願公開第320 308号及び同第439 182号に記載されているようなリガーゼ連鎖反応(LCR)、Gap LCR(Wolcott, M.J.)、Guatelli J.C.ら(1990)及びCompton J.(1991)に記載されている、いわゆる「NASBA」又は「3SR」技術、欧州特許出願公開第4544 610号に記載されているようなQ-beta増幅、Walkerら(1996)及び欧州特許出願公開第684 315に記載されているようなSDA法、国際特許出願公開第WO9322461号に記載されているような標的媒介増幅が挙げられるが、これに限定されるものではない。
LCR及びGap LCRは、指数関数的増幅手法であり、いずれもDNA分子にアニールされた隣接プライマーを結合するDNAリガーゼに依存している。リガーゼ連鎖反応(LCR)ではプローブ対を使用するが、これには一次(第1及び第2)プローブ2本と二次(第3及び第4)プローブ2本が含まれている。プローブはすべて標的に対してモル過剰な状態で使用される。第1のプローブは標的鎖の第1のセグメントとハイブリダイズされ、第2のプローブは標的鎖の第2のセグメントとハイブリダイズされる。第1のセグメントと第2のセグメントが連続しているため、一次プローブは5'ホスフェート-3'ヒドロキシルの関係で互いに接し、リガーゼは2本のプローブと共有結合的に融合すなわち連結して融合産物となることができる。また、第3の(二次)プローブは第1のプローブの一部にハイブリダイズすることが可能であり、第4の(二次)プローブは同様の接触方法で第2のプローブの一部にハイブリダイスすることができる。もちろん、標的が最初に二本鎖である場合は、二次プローブも第1の例で標的補体にハイブリダイズされる。一次プローブの連結鎖がいったん標的鎖から分離されると、その後は第3及び第4のプローブとハイブリダイズされるが、これを連結して相補的な二次結合産物が得られる。連結産物は機能的に標的又はその相補体に相当するものだということを理解するのは重要なことである。ハイブリダイゼーションと連結のサイクルを繰り返すことで、標的配列を増幅することができる。複合的なLCR法については、すでに説明がなされている(WO9320227)。Gap LCR(GLCR)は、プローブ同士が隣接しているのではなく、2〜3塩基分だけ離れたLCRである。
mRNAの増幅について見ると、mRNAをcDNAに逆転写し、続いてポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行うこと、米国特許第5,322,770号に記載されているように両方のステップに1つの酵素を用いること、あるいはMarshall R.L. et al.(1994)に記載されているように非対称Gap LCR(RT-AGLCR)を使用することは、いずれも本発明の範囲内である。AGLCRはGLCRに手を加えてRNAの増幅を可能にしたものである。
本願明細書にて説明するように、これらの増幅方法の中には、単一ヌクレオチド多型の検出に特に適しており、標的配列の増幅と多型ヌクレオチドの同定を同時に行うことを可能にする。
PCRテクノロジーは、本発明で用いられる好ましい増幅手法である。さまざまなPCR法が当業者になじみがある。PCRテクノロジーについては、Molecular Cloning to Genetic Engineering White, B.A. Ed.(1997)及び「PCR Methods and Applications」というタイトルの刊行物(1991, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照のこと。これらのPCR手順の各々で、増幅対象となる核酸配列の片側のPCRプライマーを、dNTP及びTaqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ又はVentポリメラーゼなどの熱安定性ポリメラーゼと共に、適宜調製した核酸試料に添加する。試料中の核酸は変性し、PCRプライマーを試料中の相補核酸配列に特異的にハイブリダイズされる。ハイブリダイズ後のプライマーを伸長させる。その後、修飾、ハイブリダイゼーション及び伸長をもう1サイクル開始する。このサイクルを複数回繰り返し、プライマー部位間に核酸配列のある増幅フラグメントを作出する。PCRについては、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号及び同第4,965,188号をはじめとするいくつかの特許にも説明されている。
プライマーは、適当な方法で調製可能なものである。例えば、Narang S.A.らのリン酸ジエステル法(1979)、Brown E.L.らのリン酸ジエステル法(1979)、Beaucageらのジエチルホスホラミダイト法(1981)及び欧州特許出願公開第707 592に記載されている固相担体法などの方法による直接化学合成が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本発明によって、本発明のバイアレリックマーカー1種又はそれ以上を有するDNAフラグメントを増幅するためのプライマーが得られる。列挙したプライマーはごく一例であり、1つ又はそれ以上の本発明のバイアレリックマーカーを含む増幅産物を産生する他のどのようなプライマー集合でもよいことは理解できよう。
増幅対象となるセグメントの長さはプライマー間の間隔によって決まる。本発明の文脈では、バイアレリックマーカーを有する増幅セグメントは少なくとも約25bp〜35kbpの大きさとすることができる。25〜3000bpの増幅フラグメントが一般的であり、50〜1000bpのフラグメントが好ましく、100〜600bpのフラグメントが極めて好ましい。バイアレリックマーカーに対する増幅プライマーは、マーカーを有するDNAフラグメントの特異的な増幅が可能なものであればどのようなものであってもよいことは理解できよう。「オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマー」というセクションで説明したように、増幅プライマーを標識又は固体担体に固定化してもよい。
DNA試料のバイアレリックマーカーでの遺伝子型判定方法
当該分野で知られた適当な方法を用いて、バイアレリックマーカー部位に存在するヌクレオチドを同定することができる。検出対象となるバイアレリックマーカー対立遺伝子が同定され、本発明において具体的に明記されているため、この検出は、当業者であればさまざまな手法のうち適当なものを用いて実施できる単純なものである。多くの遺伝子型判定方法では、興味の対象となっているバイアレリックマーカーを有するDNA領域をあらかじめ増幅しておく必要がある。現時点では標的又はシグナルを増幅するのが好ましいが、増幅を必要としない超高感受性の方法も本遺伝子型判定方法に包含される。バイアレリック多型の検出に利用することのできる当業者においてよく知られた方法としては、従来のドットブロット解析、Oritaら(1989)に記載されている一本鎖立体構造多型解析(SSCP)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)、ヘテロ二本鎖解析、ミスマッチ切断検出、Sheffield V.C.ら(1991)、Whiteら(1992)、Grompe M.ら(1989)及びGrompe M.(1993)に記載されている他の従来の手法が挙げられる。特定の多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を判定するためのもう1つの方法に、米国特許第4,656,127に記載されているような特別なエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体を用いるものがある。
好ましい方法では、シークエンシングアッセイ、酵素を用いたスマッチ検出アッセイ又はハイブリダイゼーションアッセイによって、バイアレリックマーカー部位に存在するヌクレオチドの同一性を直接判定する。いくつかの好ましい方法について以下に述べる。極めて好ましい方法はマイクロシークエンシング法である。「シークエンシングアッセイ」という用語は、本願明細書では、二本鎖プライマー/鋳型錯体のポリメラーゼ伸長を意味し、従来の配列決定とマイクロシークエンシングの両方を含むものとする。
1)シークエンシングアッセイ
配列決定法によって多型部位に存在するヌクレオチドを判定することができる。好ましい実施形態では、配列決定の前に、上述したようにしてDNA試料をPCR増幅する。DNA配列決定法については、本願明細書にて説明するとおりである。好ましくは、染料プライマーサイクルの配列決定用プロトコルを使用して、増幅したDNAで自動ジデオキシターミネーターでの配列決定反応を行う。配列解析によって、バイアレリックマーカー部位に存在する塩基を同定することができる。
2)マイクロシークエンシングアッセイ
マイクロシークエンシング法では、単一ヌクレオチドプライマー伸長反応によって、一方の対立遺伝子に特有の標的DNAの多型部位にあるヌクレオチドを検出する。この方法は、標的核酸の興味の対象となっている多型塩基のすぐ上流でハイブリダイズされる適切なマイクロシークエンシングプライマーを含む。ポリメラーゼを使用して、多型部位の選択されたヌクレオチドと相補な1つのシングルddNTP(鎖ターミネーター)でプライマーの3'末端を特異的に伸長する。次に、組み込まれたヌクレオチドの同一性を適当な方法で判定する。
一般に、マイクロシークエンシング反応は蛍光ddNTPを用いて行われ、伸長されたマイクロシークエンシングプライマーをABI 377配列決定装置での泳動によって解析し、欧州特許出願公開412 883に記載されているようにして取り込まれたヌクレオチドの同一性を判定する。あるいは、キャピラリー泳動を用いてさらに多数の検定を同時に行うようにすることもできる。本発明の文脈で使用可能な一般的なマイクロシークエンシング手順の一例を実施例4に示す。
さまざまな方法を利用して、マイクロシークエンシングプライマーに付加されたヌクレオチドを検出することが可能である。Chen及びKwok(1997)ならびにChenら(1997)に、蛍光共鳴エネルギー移動を利用した均一相検出方法が説明されている。この方法では、多型部位を有する増幅ゲノムDNAフラグメントを、対立遺伝子染料標識ジデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート及び修飾Taqポリメラーゼの存在下、5'-フルオレセイン標識プライマーでインキュベートする。鋳型に存在する対立遺伝子に特異な染料ターミネーターによって、染料標識プライマーを1塩基分だけ伸長する。遺伝子型判定反応の終了時、反応混合物における2種類の染料の蛍光強度を、分離又は精製などの処理を行わずに直接解析する。これらのステップはいずれも同一のチューブで行うことができるものであり、蛍光の変化をリアルタイムに監視できる。あるいは、MALDI-TOF質量スペクトロメトリによって伸展したプライマーを解析してもよい。マイクロシークエンシングプライマーに加わった質量によって多型部位の塩基を同定する(Haff L.A. and Smirnov I.P., 1997を参照のこと)。
確立されたマイクロシークエンシング法あるいはこれに手を加えて開発又は変更したものによって、マイクロシークエンシングを行ってもよい。他の方法としては、いくつかの固相マイクロシークエンシング法が挙げられる。プライマー又は標的分子を固相担体に固定化又は捕捉する生体外(heterogenous)検定で行うこと以外、基本的なマイクロシークエンシングプロトコルは先に説明したものと同じである。プライマーの分離と末端ヌクレオチドの付加解析を容易にするために、オリゴヌクレオチドを固相担体に結合させるか、親和分離とポリメラーゼ伸長とが可能な方法で修飾する。合成オリゴヌクレオチドの5'末端及び内部ヌクレオチドをさまざまな方法で修飾し、ビオチン化などの異なる親和分離法を可能にすることができる。単一の親和性基をオリゴヌクレオチド上で使用する場合、取り込まれたターミネーターのリジェント(regent)からオリゴヌクレオチドを分離することができる。これによって、物理的な分別又はサイズによる分別が必要なくなる。2つ以上の親和基を使用すれば、2つ以上のオリゴヌクレオチドをターミネーター試薬から分離して同時に解析することができる。これによって、1回の伸長反応で複数の核酸種又は一層多くの核酸配列情報を解析することができる。親和基は必ずしも初回刺激オリゴヌクレオチド上にある必要はなく、鋳型上にあってもよい。
例えば、ビオチン標識DNAとストレプトアビジン被覆マイクロ滴定ウェル又はアビジン被覆ポリスチレン粒子との相互作用を利用して固定化を行うことができる。同様に、オリゴヌクレオチド又は鋳型を高密度状で固相担体に結合させてもよい。このような固相マイクロシークエンシング反応では、取り込まれたddNTPを放射線標識する(Syvanen, 1994)か、あるいはフルオレセインと結合させる(Livak and Hainer, 1994)ことができる。放射線標識ddNTPの検出は、シンチレーションベースの手法で行うことができる。フルオレセイン結合ddNTPの検出は、アルカリホスファターゼと抱合した抗蛍光抗体の結合後、色素生産性基質(p-ニトロフェニルホスフェートなど)と共にインキュベートすることを基本としている。考え得る他のレポーター検出対としては、ジニトロフェニル(DNP)に結合したddNTPと抗DNPアルカリホスファターゼ抱合体(Harju et al. 1993)又はo-フェニレンジアミンを基質として用いたビオチン標識ddNTPと西洋わさびペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジン(WO92/15712)が挙げられる。さらに他の固相マイクロシークエンシング手順として、Nyrenら(1993)は、enzymatic luminometric inorganic pyrophosphate detection assay(ELIDA)でDNAポリメラーゼ活性を検出することに依存した方法を示した。
Pastinenら(1997)は、固相ミニシークエンシング原理をオリゴヌクレオチドアレイフォーマットに適用する単一ヌクレオチド多型の複合検出方法について説明している。固相担体(DNAチップ)に結合したDNAプローブの高密度アレイについては本願明細書にて説明する。
ひとつの観点では、本発明によって、ポリヌクレオチドと、マイクロシークエンシングアッセイを行うことによって本発明のバイアレリックマーカー1種又はそれ以上の遺伝子型を判定する方法が提供される。好ましいマイクロシークエンシングプライマーとしては、配列番号1及び配列番号4(接頭語".mis"及び".mis相補体"として先に示されたように)に挙げられたものを含む。配列表に挙げられたマイクロシークエンシングプライマーはごく一例であり、多型ヌクレオチドのすぐ隣に3'末端があるどのようなプライマーでも使用できることは理解できよう。同様に、マイクロシークエンシング解析が、どのようなバイアレリックマーカー又は本発明のバイアレリックマーカーの組み合わせに対して実行してもよいものであることも理解できよう。本発明の一態様は、バイアレリックマーカー部位でのヌクレオチドの同一性を判断するため、配列番号1及び4に挙げられたマイクロシークエンシングプライマー、あるいは、少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15又は少なくとも20の連続したヌクレオチドからなり、対応するバイアレリックマーカーのすぐ上流に3'末端を有するフラグメントの1つ又はそれ以上を含む固相担体である。
3)ポリメラーゼ及びリガーゼをベースとしたミスマッチ検出アッセイ
一つの観点では、本発明によれば、ポリヌクレオチドと、ポリメラーゼ及び/又はリガーゼに基づくミスマッチ検出アッセイによって、生物学的試料で本発明の1種又はそれ以上のバイアレリックマーカーの対立遺伝子を判定する方法とが提供される。これらのアッセイは、ポリメラーゼ及びリガーゼの特異性を利用したものである。重合反応では、増幅プライマーの3'末端の正しい塩基対形成という点で特に厳密であり、標的DNA配列にハイブリダイズされた2つのオリゴヌクレオチドの結合は、連結(ligation)部位付近、特に3'末端でのミスマッチに対して極めて感受性が高い。「酵素ベースのミスマッチ検出アッセイ」という用語は、本願明細書において、リガーゼ及びポリメラーゼの特異性に基づいてバイアレリックマーカーの対立遺伝子の判定方法を意味する語として使用する。好ましい方法については後述する。本発明のバイアレリックマーカーを含むDNAフラグメントを増幅するための方法については、本願明細書にてさらに説明する。
対立遺伝子特異的増幅
対立遺伝子特異的増幅、すなわち選択的方法によって、バイアレリックマーカーの2つの対立遺伝子を区別し、一方の対立遺伝子だけを増幅することができる。これは、多型塩基を一方の増幅プライマーの3'末端に所在させることによって達成される。プライマーの3'末端からの伸長のために、この位置近辺でのミスマッチは増幅に阻害的な悪影響を及ぼす。したがって、適切な増幅条件下で、これらのプライマーはそれらの相補対立遺伝子でのみ増幅を指示する。適切な対立遺伝子特異的プライマー及びこれに対応するアッセイ条件の設計方法については当業者においてよく知られている。
連結/増幅を利用した方法
「オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ」(OLA)では、標的分子の一本鎖の接触配列にハイブリダイズできるように設計された2つのオリゴヌクレオチドを利用する。一方のオリゴヌクレオチドをビオチン標識し、他方を検出可能な状態で標識する。正確な相補配列が標的分子中に見つかった場合は、末端が接して捕捉及び検出が可能な連結基質が得られるようにオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせる。OLAは、バイアレリックマーカーを検出でき、Nickerson D.A.ら(1990)に説明されているPCR法と有利に併用されるこの方法では、PCRを用いて標的DNAの指数関数的な増幅を行い、これをOLAを用いて検出する。
バイアレリックマーカーの検出に特に適している他の方法としては、本願明細書にて説明するLCR(リガーゼ連鎖反応)及びGap LCR(GLCR)が挙げられる。上述したように、LCRでは2対のプローブを用いて特異的標的を指数関数的に増幅する。各オリゴヌクレオチド対の配列を選択し、これらの対が標的の同一鎖の接触配列とハイブリダイズできるようにする。このハイブリダイゼーションによって、鋳型依存性リガーゼの基質が形成される。本発明によれば、バイアレリックマーカー部位の同一鎖の近位配列と遠位配列とを有するオリゴヌクレオチドを用いてLCRを実施することができる。一実施形態では、どちらのオリゴヌクレオチドを設計してバイアレリックマーカー部位を含むようにしてもよい。そのような実施形態では、オリゴヌクレオチド上のバイアレリックマーカーと相補な特異的ヌクレオチドが標的分子に含まれているか又は欠けている場合にオリゴヌクレオチドが連結されるように反応条件を選択する。別の実施形態では、WO90/01069に記載されているように、オリゴヌクレオチドはバイアレリックマーカーを含まず、標的分子とハイブリダイズさせたときに「間隙」が形成されるようにする。この間隙に相補dNTP又は別のオリゴヌクレオチド対を「満たす」(DNAポリメラーゼによって媒介)。このように、各サイクルの終了時、各一本鎖には次のサイクルの間に標的として機能できる補体があり、所望の配列の指数関数的な対立遺伝子特異的増幅が達成される。
核酸分子のあらかじめ選択された部位でのヌクレオチドの同一性を判定するためのもう1つの方法に、リガーゼ/ポリメラーゼ媒介遺伝的Bit Analysis(登録商標)がある(WO95/21271)。この方法は、あらかじめ選択された部位に存在するヌクレオチドと相補なヌクレオシド三リン酸をプライマー分子の終端に組み入れ、第2のオリゴヌクレオチドと連結させるものである。反応の固相に付加された特異的ラベルの検出又は溶液での検出によって反応を監視する。
4)ハイブリダイゼーションアッセイ法
バイアレリックマーカー部位に存在するヌクレオチドの同一性を判定するための好ましい方法は、核酸ハイブリダイゼーションを利用するものである。そのような反応で都合よく用いることのできるハイブリダイゼーションプローブとして、本願明細書で定義するプローブを含むことが好ましい。サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーション及び固相ハイブリダイゼーションなど、どのようなハイブリダイゼーションアッセイを用いてもよい(Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., 1989を参照のこと)。
ハイブリダイゼーションとは、相補的な塩基対によって2つの一本鎖核酸が二本鎖構造に形成されることを意味する。ハイブリダイゼーションは、正確に相補関係にある核酸鎖間又はミスマッチのマイナーな領域を含む核酸鎖間で起こり得る。一方の型のバイアレリックマーカーとハイブリダイズされ、他方とはハイブリダイズされずに、異なる対立遺伝子型を区別することのできる特異的プローブを設計することができる。対立遺伝子特異的プローブは対で用いられることが多く、対の一方が起始対立遺伝子を含む標的配列とマッチし、他方が選択的対立遺伝子を含む標的配列と完全にマッチする。
ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間のハイブリダイゼーション強度に有意な差が認められる程度にストリンジェントなものでなければならず、好ましくは本質的にバイナリ応答を呈し、これによってプローブが一方の対立遺伝子とハイブリダイズされる。ストリンジェントな配列特異的ハイブリダイゼーション条件の下で、プローブは正確に相補関係にある標的配列とのみハイブリダイズされるが、このような条件は当該分野でよく知られている(Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., 1989)。ストリンジェントな条件は配列依存であり、環境によって異なるものである。通常、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHでの特定の配列の融点(Tm)よりも約5℃低い温度に選択される。
一例であり限定するものではないが、ストリンジェンシーの高い条件を用いて行われる手順は次の通りである。6×SSC、トリス-HCl(pH7.5)50mM、EDTA 1mM、0.02% PVP、0.02%フィコール、0.02% BSA及び変性サケ***DNA 500μg/mlで構成される緩衝液にて、65℃で8時間から一晩かけて、DNAを含有するフィルタをプレハイブリダイゼーションする。好ましいハイブリダイゼーション温度である65℃にて48時間、変性サケ***DNA 100μg/mlと32P標識プローブ5〜20×106cpmとを含むプレハイブリダイゼーション混合物中でフィルタをハイブリダイズさせる。あるいは、SSC緩衝液(1×SSCが0.15M NaCl及び0.05 M Naクエン酸塩に相当)の存在下、65℃でハイブリダイゼーションステップを行うことができる。続いて、2×SSC、0.01% PVP、0.01%フィコール及びBSA 0.01%を含有する溶液中で37℃で1時間、次いで0.1×SSCで50℃にて45分かけてフィルタを洗浄することができる。あるいは、2×SSCと0.1% SDS又は0.5×SSCと0.1% SDS又は0.1×SSCと0.1% SDSを含有する溶液で68℃にて15分の間隔でフィルタを洗浄することができる。洗浄ステップの後、ハイブリダイズしたプローブをオートラジオグラフィによって検出することが可能である。
一例であり限定するものではないが、ストリンジェンシーが中程度の手順は以下の通りである。DNAを含むフィルタをプレハイブリダイズし、次いで5×SSC緩衝液と標識プローブとの存在下、60℃の温度にてハイブリダイズさせる。続いて、2×SSCを含有する溶液で50℃にてフィルタを洗浄すると、ハイブリダイズさせたプローブをオートラジオグラフィで検出可能である。ストリンジェンシーが高い又は中程度の他の使用条件は当業者においてよく知られており、Sambrook et al.(Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., 1989)及びAusubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989)に記載されている。
そのようなハイブリダイゼーションは溶液中で行うことができるが、固相ハイブリダイゼーションアッセイを利用するのが好ましい。ハイブリッド反応の前に本発明のバイアレリックマーカーを含む標的DNAを増幅してもよい。プローブと標的DNAとの間に形成される安定したハイブリッド二本鎖の有無を検出することによって、試料中の特異的対立遺伝子の存在を検出する。ハイブリッド二本鎖の検出は、さまざまな方法で行うことができる。標的又はプローブに結合する検出可能な標識を利用し、ハイブリッド二本鎖の検出を可能にするさまざまな検出アッセイ形式が周知である。一般に、ハイブリダイゼーション二本鎖をハイブリダイズされなかった核酸から分離し、二本鎖に結合した標識を検出する。当業者であれば、洗浄ステップを取り入れて余分な標的DNA又はプローブなどを洗い流してもよいことは理解できよう。プライマー及びプローブに存在する標識を用いてハイブリッドを検出するには、標準的な異質アッセイ形式が適している。
最近開発された2種類のアッセイでは、分離又は洗浄を必要とせずにハイブリッドベースの対立遺伝子を区別できる(Landegren U.ら1998を参照のこと)。TaqManアッセイでは、累積する増幅産物に特異的にアニールされたDNAプローブを消化する。蛍光エネルギー移動によって相互作用するドナーアクセプタ染料対でTaqManプローブを標識する。増幅時に進行中のポリメラーゼによってTaqManプローブが切断されると、消光アクセプタ染料からドナー染料が解離し、ドナー蛍光が大幅に増大する。2つの対立遺伝子変異体を検出するのに必要なすべての試薬を反応の最初に組み合わせ、結果をリアルタイムで監視することができる(Livakら1995を参照のこと)。選択的均質ハイブリダイゼーションを利用した手順では、分子的な指標が対立遺伝子の区別に用いられる。分子的な指標は、均質溶液中での特異的核酸の存在を示すヘアピン形のオリゴヌクレオチドプローブである。標的に結合すると、内部的に消光するフルオロフォアを保持する立体配置的な再編成が起こる(Tyagiら1998)。
対立遺伝子特異的プローブへのハイブリダイゼーションを解析することによって、特定の試料中でのバイアレリックマーカー対立遺伝子の有無を検出することができる。
「ハイブリダイゼーションアッセイ」にはアレイ形式の高スループット並列ハイブリダイゼーションが特に包含され、これについては後述する。
オリゴヌクレオチドのアドレス指定可能なアレイに対するハイブリダイゼーション
オリゴヌクレオチド配列に基づくハイブリダイゼーションアッセイでは、完全にマッチする標的配列変異体とミスマッチ変異体とに対する短いオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション安定性の違いを利用している。オリゴヌクレオチドプローブの高密度アレイが選択された位置で固体担体(チップ)に付着した基本的な構造によって、多型情報に効率的にアクセスできる。各DNAチップには、格子状のパターンに配置され、ダイム硬貨程度の大きさまで小型化された個々の合成DNAプローブを数千から数百万含むことができる。
チップテクノロジーは、すでにさまざまな事例に応用されて成功をおさめている。例えば、突然変異のスクリーニングが、BRCA1遺伝子、S. cerevisiaeミュータント株及びHIV-1ウイルスのプロテアーゼ遺伝子でなされる(Haciaら1996、Shoemaker et al. 1996、Kozalら1996)。カスタマイズベースで、Affymetrix(GeneChip(登録商標))、Hyseq(HyChip and HyGnostics)及びProtogene Laboratoriesなどで、バイアレリック多型検出用のさまざまな形態のチップを作製することができる。
一般に、これらの方法では、標的配列に多型性のマーカーが含まれる個体から得た標的核酸配列セグメントと相補関係にあるオリゴヌクレオチドプローブの配列を利用している。欧州特許出願公開785280には、単一のヌクレオチド多型検出用のタイリング(tiling)方法について記載されている。簡単に説明すると、このアレイは一般に、多数の特異的多型について「タイル張り」されてもよい。「タイリング」という用語は一般に、興味の対象である標的配列に相補な配列と、この配列のあらかじめ選択されたバリエーション(1カ所又はそれ以上の特定の位置でモノマーの基本集合のメンバ、すなわちヌクレオチド1つ又はそれ以上で置換されているなど)で構成される、規定されたオリゴヌクレオチドプローブの集合の合成を意味する。タイリング方法はさらに、PCT国際特許出願公開第WO95/11995号に記載されている。特定の態様では、多数の同定された特異的両対立遺伝子マーカー配列でアレイをタイル張りする。特に、アレイにタイル張りをして、それぞれが特定のバイアレリックマーカー又はバイアレリックマーカーの集合に特異な多数の検出ブロックが含まれるようにする。例えば、検出ブロックをタイル張りして多数のプローブが含まれるようにし、これらのプローブが特定の多型を含む配列セグメントにまたがるようにしてもよい。
各対立遺伝子に対して相補関係にあるプローブが必ず得られるようにするために、バイアレリックマーカーで異なる対のプローブを合成する。多型塩基で異なるプローブだけでなく、一置換プローブも検出ブロックの中にタイル張りされるのが普通である。これらの一置換プローブは、多型自体の部分に塩基を有し、かつ多型からいずれかの方向に一定数まで塩基を有する。これが残りのヌクレオチド(A、T、G、C、Uから選択される)で置換されている。一般に、タイル張りされた検出ブロック内のプローブには、バイアレリックマーカーから5塩基離れたところまでの配列位置の置換基が含まれる。一置換プローブによって、タイル張りされたアレイの内部が制御され、実際のハイブリダイゼーションと人為的なクロスハイブリダイゼーションとを区別できる。標的配列とのハイブリダイゼーション及びアレイの洗浄が終了したら、このアレイを走査してアレイ上での位置を判定し、この位置に標的配列をハイブリダイズさせる。次に、走査後のアレイから得られるハイブリダイゼーションデータを解析し、バイアレリックマーカーの対立遺伝子のうち試料中に存在するもの(1つ又は複数)を特定する。ハイブリダイゼーション及び走査は、国際特許出願公開第WO92/10092号及び同第WO95/11995号、さらに米国特許第5,424,186号に記載されているようにして行われる。
このように、いくつかの実施形態では、チップは、約15ヌクレオチド長のフラグメントの核酸配列のアレイを含むものであってもよい。さらに他の実施形態では、チップは、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15と、連続した少なくとも約8ヌクレオチド、好ましくは10、15、20、より好ましくは連続した25、30、40、47又は50ヌクレオチドで構成される、それらと相補な配列又はそのフラグメントと、からなる群から選択される配列少なくとも1つを含むアレイを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、チップは、本発明のポリヌクレオチド少なくとも2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上のアレイを含むものであってもよい。固相担体と固相担体に結合した本発明のポリヌクレオチドについては、「オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマー」のセクションでさらに詳細に説明する。
5)統合系
多型の解析に使用できるもう1つの技術にマルチコンポーネント統合系が挙げられる。この系は、PCR及びキャピラリー電気泳動反応などのプロセスを単一機能の装置で簡略化かつ区分化する。そのような手法の例が、PCR増幅とキャピラリー電気泳動とをチップに統合することについて説明した米国特許第5,589,136号に開示されている。
主にマイクロ流体系を使用する場合に統合系の使用を考慮することができる。これらの系は、ガラス、ケイ素、石英又はプラスチックウェーハ上に設計されたマイクロチャネルのパターンがマイクロチップ内に含まれたものである。試料の動きを、マイクロチップの異なるエリアで印加される電力、電気浸透的又は流体静動力によって制御し、機能的な顕微値を得ると共に稼働部材なしでポンプ移動させる。電圧を変えることでマイクロ加工されたチャネル間での流体の流れを制御する。バイアレリックマーカーの遺伝子型を判定するために、核酸増幅、マイクロシークエンシング、毛細管電気泳動、レーザー誘導蛍光検出などの検出方法に、マイクロ流体系を組み合わせてもよい。
本発明のバイアレリックマーカーを用いた遺伝的解析方法
複雑な形質の遺伝的解析にはいくつかの方法が利用できる(Lander及びSchork, 1994を参照のこと)。家系解析を用いて1つの座と推定形質座との間の同時分離について証拠を探査する連鎖手法と、対立遺伝子と形質又は形質誘発対立遺伝子との間の統計的に有意な関連性について証拠を探査する関連性手法の2つの主な方法を利用して、疾病感受性遺伝子の探査を行う(Khoury J. et al., 1993)。概して、本発明のバイアレリックマーカーは、遺伝子型と表現型との間の統計的に有意な相関を示すための当該分野で知られたどのような方法においても用途がある。バイアレリックマーカーをパラメトリックな連鎖解析法とノンパラメトリックな連鎖解析法に利用できる。好ましくは、本発明のバイアレリックマーカーを使用して、関連性解析によって検出可能な形質に関連のある遺伝子を同定する。この方法では、羅患家系を使用する必要がなく、複雑で散発性の形質に関連のある遺伝子でも同定できる。
本発明のバイアレリックマーカーを用いた遺伝的解析は、どのような規模で行ってもよい。本発明のバイアレリックマーカーのセット全体又は本発明のバイアレリックマーカーのサブセットを使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の1つ又は複数の候補遺伝子に対応するバイアレリックマーカーのサブセットを利用してもよい。あるいは、特定の染色体セグメントに局在する本発明のバイアレリックマーカーのサブセットを利用してもよい。さらに、本発明のバイアレリックマーカーを含む遺伝マーカーセットを用いることもできる。上述したように、本発明のバイアレリックマーカーは、ヒトゲノムの完全又は部分的な遺伝地図に含まれることを留意すべきである。これらの異なる用途は、本発明及び請求の範囲において特に考慮されているものである。
連鎖解析
連鎖解析では、一家系内で複数の世代にわたって遺伝マーカーの伝達と特異的な形質の伝達との間の相関を確立することを基本としている。したがって、連鎖解析の目的は、系図において興味の対象となる形質と同時分離を見せるマーカー座を検出することである。
パラメトリックな方法
連続した世代からデータを入手できる場合、対になった座での連鎖の度合いを研究することができる。組換え画分を推定することで、遺伝地図上で座を順序付け、そこに配置することができる。遺伝マーカーである座を用いて、遺伝地図を確立し、次いでマーカーと形質との間の連鎖の強さを計算し、これらの形質に影響するマーカー及び遺伝子の相対位置を示すことができる(Weir, B.S., 1996)。連鎖解析の伝統的な方法は、オッズ比の対数値(lod)のスコアリング(Morton N.E., 1955、Ott J, 1991を参照のこと)である。lodスコアを算出するには、その疾病の遺伝機序が詳細に分かっている必要がある(パラメトリックな方法)。一般に、連鎖解析で同定される候補領域の長さは2〜20Mbである。上述したようにして候補領域を特定した後、さらに別のマーカーを用いて組換え個体の解析を行うことで、候補領域を正確に把握することができる。連鎖解析研究では一般に、最大5,000のマイクロサテライトマーカーを使用するため、連鎖解析の最大の理論解像度は平均約600kb程度に限られてしまう。
明確なメンデル遺伝パターンを示し、浸透度(すなわち、対立遺伝子aの形質ポジティブ保因者の数と個体群におけるa保因者の総数の比)の高い単純な遺伝形質のマッピングには、連鎖解析が効果的に利用されている。しかし、パラメトリックな連鎖解析にはさまざまな欠点がある。まず、検討対象となる形質ごとに適した遺伝モデルを選ぶ上での信頼性が制約となる。さらに、上述したように、連鎖解析を使用して得られる解像度には限りがあり、連鎖解析によって最初に同定された2Mb〜20Mbの典型的な領域を追加研究でさらに正確に分析する必要がある。また、パラメトリックな連鎖解析法は、同義遺伝子及び/又は環境因子がさまざまに作用する遺伝形質などの複雑な遺伝形質に適用するのは困難であることが分かっている。これらの因子をlodスコア解析で適切な状態にモデル化するのは極めて困難である。このような場合、Risch, N.及びMerikangas,K.によって最近発表された(1996)ように、こうした状況に連鎖解析を適用できるだけの数の羅患家系を集めるのに労力と費用がかかりすぎてしまう。
ノンパラメトリックな方法
いわゆるノンパラメトリックな連鎖解析方法の利点は、疾病の遺伝機序が詳細に分かっている必要がないという点にあり、この方法は複雑な形質の解析で一層有用なものとなることが多い。ノンパラメトリックな方法では、羅患した親族が偶然とは思えないほどの高い確率で染色体領域の同一のコピーを継承することを示し、この領域の遺伝パターンがランダムなメンデル分離とは一致しないことを実証しようとしている。羅患した親族は、たとえ浸透度が不完全なポリジーン遺伝であったとしても過剰な「対立遺伝子共有」を示すはずである。ノンパラメトリックな連鎖解析では、同質的である(IBS)対立遺伝子の数又は同祖的である(IBD)対立遺伝子の数によって、2つの個体のマーカー座における一致度を測定することができる。羅患した兄弟姉妹ペアの解析は周知の特殊な事例であり、これらの方法の最も単純な形である。
本発明のバイアレリックマーカーは、パラメトリックな連鎖解析とノンパラメトリックな連鎖解析のいずれにも使用できる。好ましくは、複雑な形質に関与している遺伝子のマッピングが可能なノンパラメトリックな方法にバイアレリックマーカーを使用することができる。本発明のバイアレリックマーカーをIBD法とIBS法との両方に使用して、複雑な形質に影響している遺伝子をマッピングすることもできる。そのような解析では、バイアレリックマーカーの高い密度を有効に利用し、いくつかの隣接するバイアレリックマーカー座をプールして複数の対立遺伝子マーカーで達成される有効性を得ることができる(Zhaoら1998)。
しかし、パラメトリックな連鎖解析法とノンパラメトリックな連鎖解析法のいずれも羅患した親族を解析するため、薬剤応答性の遺伝的解析又は治療に対する副作用の解析においては、値に限度が生じることが多い。このタイプの解析では家族性の症例を利用できないため、こうした事例で使用するのは非実現的である。事実、同一の時期に同一の医薬品に曝露された2以上の個体を1家系から得られる尤度は極端に低い。
個体群関連性解析
本発明は、本発明のバイアレリックマーカーを用いて、検出可能な形質に関連のある候補遺伝子集合の中から1つ又は複数の遺伝子を同定するための方法を含む。一実施形態では、本発明は、バイアレリックマーカー対立遺伝子又はバイアレリックマーカーハプロタイプと形質との関連性を検出するための方法を含む。さらに、本発明は、本発明のバイアレリックマーカー対立遺伝子との連鎖不平衡を対立遺伝子に引き起こす形質を同定するための方法を含む。
上述したように、選択的な方法を利用して関連性解析、すなわち、ゲノムレベルでの関連性解析、候補領域の関連性解析及び候補遺伝子の関連性解析を行うことができる。候補領域解析では、形質のバイオロジーに関する情報がいくらかでも入手可能である場合に、特定の形質に関する遺伝子と遺伝子多型を明らかに手っ取り早く得ることができる。さらに、ゲノムレベルでの関連性解析を行うために、本発明のバイアレリックマーカーをヒトゲノムの遺伝マーカーの適当な地図に取り入れてもよい。米国仮特許出願第60/082,614号に、バイアレリックマーカーの高密度地図を作製するための方法が記載されている。ゲノムの特異的候補領域(特異的染色体又は特異的染色体セグメントなど)を示す適当な地図に、本発明のバイアレリックマーカーをさらに取り入れてもよい。
上述したように、関連性解析は一般的な個体群の中で行うことができるものであり、羅患した家系での血縁個体についての研究に限られるわけではない。関連性解析は、散発性の形質又は多因子性の形質を解析できる極めて価値ある手法である。さらに、関連性解析では、連鎖解析よりも数段精細に形質誘発対立遺伝子をマッピングできる精細マッピングのための強力な方法が得られる。系図に基づく研究は、形質誘発対立遺伝子の所在を狭めてしまうにすぎない。したがって、本発明のバイアレリックマーカーを用いる関連性解析法を用いて、連鎖解析法によって同定された候補領域における形質誘発対立遺伝子の所在を正確に判定できる。本発明のバイアレリックマーカーを利用して、関与している遺伝子を同定することが可能であり、このような用途は特に本発明及び請求の範囲に企図される。
1) バイアレリックマーカー対立遺伝子又はバイアレリックマーカーハプロタイプの個体群での頻度の判定
本発明の他の実施形態は、個体群においてバイアレリックマーカーの集合についてハプロタイプの頻度を推定するための方法であって、a)少なくとも1つのDAO関連バイアレリックマーカーについて前記個体群に含まれる各個体の遺伝子型を判定するステップと、b)ゲノム中に存在する第2のバイアレリックマーカーの両方のコピーについて前記第2のバイアレリックマーカーでのヌクレオチドの同一性を判定することによって、第2のバイアレリックマーカーについて前記個体群に含まれる各個体の遺伝子型を判定するステップと、c)ステップa)及びb)において特定されたヌクレオチドの同一性にハプロタイプ決定法を適用し、前記頻度の推定値を得るステップとを含む方法を包含する。
また、本発明のハプロタイプの頻度の推定方法は、本願明細書で開示したいずれかの限定のある方法あるいは単独又は組み合わせでの方法を包含する。任意に、前記ハプロタイプ決定法が、非対称PCR増幅、特定対立遺伝子の二重PCR増幅、クラーク法又は期待値最大化アルゴリズムからなる群から選択されるものであってもよい。任意に、前記第2のバイアレリックマーカーが、配列番号1の27-81-180, 27-29-224, 27-2-106及び27-30-249、配列番号4の27-1-61及びそれらの相補体からなる群から選択される配列に含まれるDAO関連バイアレリックマーカーであってもよい。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーが、表1に示されたバイアレリックマーカーから個々に又は組み合わせで選択されるものであってもよい。任意に、配列番号1、4又は11〜15の配列の各々に含まれるバイアレリックマーカーにおけるヌクレオチドの同一性が、ステップa)及びb)において判定されるものであってもよい。
関連性解析は、座の間での対立遺伝子のセットについて、頻度の関係を探索するものである。
個体群における対立遺伝子頻度の判定
「バイアレリックマーカーでの個体の遺伝子型判定方法」という見出しの部分で上述した方法のうちいずれか1つ、あるいは、このような目的に適した任意の遺伝子型判定方法を用いて、個体群におけるバイアレリックマーカーの対立遺伝子頻度を判断することができる。プールした試料又は個々の試料について、個体群のバイアレリックマーカー対立遺伝子の頻度を判定できる。必要な遺伝子型判定数を減らす方法の1つに、標本プールを使用することが挙げられる。標本プールを使用する上で主な妨げとなるものに、プールを構築する際における正確なDNAレベルを判定するための精度と再現性に関することがある。個々の標本を遺伝子型判定すれば、感受性、再現性及び精度が高くなるため、本発明における好ましい方法でもある。好ましくは、各個体を個別に遺伝子型判定し、単純な遺伝子カウントを適用して、特定の個体群でのバイアレリックマーカーの対立遺伝子又は遺伝子型の頻度を判定する。
個体群でのハプロタイプ頻度の判定
2つ以上の座で複相個体がヘテロ接合する場合、ハプロタイプの配偶子相は分からない。家系における系統学的な情報を用いて配偶子相を推論できることもある(Perlin et al., 1994)。系統学的な情報が得られない場合は、別の方法を使ってもよい。1つの可能性として、多発性部位ヘテロ接合的な複相体を解析から除外し、ホモ接合体と単一部位ヘテロ接合体の個体のみを保持するようにしてもよいが、この方法では、試料構成の偏りと低頻度ハプロタイプの過小評価が生じる可能性がある。他の可能性としては、非対称性PCR増幅(Newton et al., 1989、Wu et al., 1989を参照のこと)又は限界希釈によって1本の染色体を単離し、次いでPCR増幅する(Ruano et al., 1990を参照のこと)などの方法で、1本の染色体を独立に研究することができる。さらに、十分に近い関係のバイアレリックマーカーを得るために、特異的対立遺伝子の二重PCRによって試料をハプロタイプ判定してもよい(Sarkar, G.及びSommer S.S., 1991)。これらの方法は、技術的に複雑である、追加コストがかかる、大規模で一般化できない、あるいは偏りが出る可能性があるなどの理由で、完全に満足のいくものというわけではない。
これらの問題を解決するために、PCR増幅したDNA遺伝子型の相を推論するClark A.G.(1990)が導入したアルゴリズムを使用してもよい。簡単に説明すると、この原理では、曖昧さのない個体である完全ホモ接合体と単一部位ヘテロ接合体を調べることで、標本中に存在するハプロタイプの予備リストを埋める。次に、同一試料に含まれる他の個体で前に認識したハプロタイプが出現する可能性をスクリーニングする。結果がポジティブであったものについては、すべての個体の相情報が解明されるか、あるいは未解明として定められるかのいずれかになるまで、すでに認識されたハプロタイプのリストに相補ハプロタイプを追加する。この方法では、二重ヘテロ接合性の個体各々に単一のハプロタイプを割り当てるが、これらの個体に2つ以上のヘテロ接合部位がある場合には複数のハプロタイプもあり得る。あるいは、ハプロタイプを各個体に割り当てずに個体群においてハプロタイプ頻度を推定する方法を利用することもできる。好ましくは、ハーディワインベルグ比を推測してハプロタイプ頻度の最大尤度推定値が得られる最尤推定(EM)アルゴリズム(Dempster J.R. et al., 1977)に基づく方法(無作為交配)を使用する(Excoffier L.及びSlatkin M., 1995を参照のこと)。
EMアルゴリズムは、データが曖昧である及び/又は不完全である場合に有用な繰り返し最尤推定法を汎用化したものである。EMアルゴリズムを用いてヘテロ接合体をハプロタイプに分ける。ハプロタイプ推定については、「統計学的方法」という見出しの部分でさらに説明する。個体群におけるハプロタイプの頻度の判断又は推定には、当該分野において知られた他のどのような方法を用いてもよい。
2) 連鎖不平衡解析
連鎖不平衡は、2つ以上の座における対立遺伝子の非ランダムな関連性であり、疾患の形質に関与する遺伝子をマッピングする上での強力なツールとなる(Ajioka R.S. et al., 1997を参照のこと)。バイアレリックマーカーは、ヒトゲノム中で密に配置され、他の遺伝マーカー(RFLPマーカー又はVNTRマーカーなど)よりも多くの数で遺伝子型判定可能であるため、連鎖不平衡に基づく遺伝的解析においては特に有用なものである。本発明のバイアレリックマーカーは、当該分野で知られたどのような連鎖不平衡解析法にも利用できる。
簡単に説明すると、病因変異を最初に個体群に導入する(新しく発生させた変異又は変異保因者からの移植による)際には、1本の染色体に含まれ、被結合マーカーの単一の「背景」又は「先祖代々の」ハプロタイプに所在するようにしておくことが必須である。結果として、これらのマーカーと病因変異との間には完全な不平衡ができあがる。このとき、病因変異は特異的マーカーセット対立遺伝子の存在下に限って認められる。以後の世代では、病因変異とマーカー多型との間に組換えが起こり、不平衡は次第に消失する。この消失のペースは組換え頻度の関数になるため、病因遺伝子から離れた位置にあるマーカーよりも病因遺伝子に最も近い位置にあるマーカーの方で明らかに高い不平衡のレベルが認められることになる。組換えによって途切れてしまわない限り、「先祖代々の」ハプロタイプ及び異なる座にあるマーカー対立遺伝子間の連鎖不平衡を系図と個体群の両方から追跡することができる。連鎖不平衡は通常、1つの座における特定の対立遺伝子と他の座における別の特定の対立遺伝子との間の関連性として現れてくる。
病因座とマーカー座との間の不平衡を示すパターン又は曲線には、病因座に対応する部分に極大が認められると思われる。したがって、病因対立遺伝子とこれに近い位置で結合された遺伝マーカーとの間の連鎖不平衡の量から、病因遺伝子の位置に関する価値ある情報が得られる場合がある。病因座に関する精細マッピングでは、研究対象とした領域内のマーカー間に存在する連鎖不平衡のパターンについて知ることが大切である。上述したように、連鎖不平衡の解析によって得られるマッピング解像度は、連鎖解析によって得られる解像度よりもかなり高い。連鎖不平衡解析と併用したバイアレリックマーカーの密度の高さから、精細マッピング用の強力なツールが得られる。「統計的手法」という見出しの部分で、連鎖不平衡を算出するための別の方法についても説明する。
3) 個体群ベースの形質−マーカー関連性の症例−対照解析
上述したように、特異的対立遺伝子対は同一染色体上の異なる座に偶然に発生するわけではなく、偶然との違いが連鎖不平衡と呼ばれる。関連性解析は個体群頻度に的をあてており、連鎖不平衡の現象に頼っている。特定の遺伝子における特異的対立遺伝子が特定の形質の発生に直接的に関与している場合は、その頻度は羅患(形質陽性)個体群の方が形質陰性個体群又は無作為個体群よりも統計的に高くなる。連鎖不平衡が存在する結果、形質誘発対立遺伝子を有するハプロタイプに存在する他のすべての対立遺伝子の頻度も、形質陰性個体やランダムな対照例よりも形質陽性個体での方が高くなる。したがって、形質誘発対立遺伝子と連鎖不平衡状態にある任意の対立遺伝子(特にバイアレリックマーカー対立遺伝子)と形質との間の関連性が分かれば、そこから特定の領域に形質関連遺伝子が存在するかどうかを十分に推測することができる。バイアレリックマーカーで症例−対照個体群の遺伝子型を判定し、狭い範囲に絞って形質誘発対立遺伝子の所在を特定することができる。形質に関連した特定の1つのマーカーと連鎖不平衡状態にあるマーカーは、いずれも形質に関連することになる。連鎖不平衡によって、考えられるあらゆる機能的多型をスクリーニングする方法に代わる手段として症例−対照個体群での限られた数の遺伝的多型(特にバイアレリックマーカー)の相対頻度を解析し、形質誘発対立遺伝子を見出すことが可能になる。関連性解析では、血縁でない症例−対照個体群でのマーカー対立遺伝子の頻度を比較し、複雑な形質を詳細に解析する強力なツールが得られる。
症例−対照個体群(組み入れ基準)
個体群ベースの関連性解析では、家系での継承とは無関係であるが、特定の遺伝マーカー又はマーカーの集合の有病率を症例−対照個体群で比較する。これは、血縁のない症例(未羅患又は形質陽性)個体と血縁のない対照(未羅患又は形質陰性又は無作為)個体とを比較することに基づく症例対照研究である。この対照群は、未羅患個体又は形質陰性個体で構成されると好ましい。また、対照群は、種族的に症例個体群と一致すると好ましい。さらに、対照群は、研究対象となる形質についての既知の主な混乱要因が症例個体群と一致する(例えば、年齢に依存する形質の場合は年齢が一致する)ものであると好ましい。理想的には、2つの試料の個体を疾患の状態だけが異なると思われる形でペアにする。以下において、「形質陽性個体群」、「症例個体群」及び「羅患個体群」という用語を同義のものとして使用する。
関連性解析を用いた複雑な形質の詳細な解析において重要なステップは、症例−対照個体群の選択である(Lander and Schork, 1994を参照のこと)。症例−対照個体群の選択時の主なステップは、特定の形質又は表現型を臨床的に定義することである。形質陽性表現型の群と形質陰性表現型の群に入れる個体を慎重に選択すれば、本願明細書において提案する関連性による方法でどのような遺伝的形質でも解析することができる。臨床表現型、発病年齢、家族歴及び重症度の4つの基準を用いるとよいことが多い。連続的形質又は定量的形質(例えば血圧など)の選択手順としては、解析対象の形質の表現型分布の両端で個体を選択し、形質陽性個体群と形質陰性個体群に、表現型に重複のない個体が含まれるようにする。症例−対照個体群は、表現型的にみて一様な個体群を含むと好ましい。形質陽性個体群及び形質陰性個体群は、各々が解析対象の個体群全体の1〜98%、好ましくは1〜80%、より好ましくは1〜50%、さらに好ましくは1〜30%、最も好ましくは1〜20%であり、重複のない表現型を示す個体から選択される、表現型的にみて一様な個体の個体群を含む。2つの形質表現型の違いが明確になればなるほど、バイアレリックマーカーで関連性を検出できる確率が高くなる。劇的に異なるが比較的均一な表現型を選択すると、研究対象となる個体群のサンプルサイズが十分に有意であるという前提で、関連性解析において効率的な比較を行うことができ、遺伝レベルでの著しい差異を検出できる可能性もある。
好ましい実施形態では、50〜300の形質陽性個体、好ましくは約100個体からなる第1の群は、その表現型に基づいて募集される。これらの研究には、ほぼ同数の形質陰性個体も取り入れる。
本発明では、組み入れ基準の一般的な例に総合失調症による羅患を含む。
関連性解析
候補遺伝子を含む領域由来のバイアレリックマーカーを用いて関連性解析を行うための汎用的な方法は、個体を2つのグループ(症例−対照個体群)に分けてスキャンし、両方のグループに含まれる本発明のバイアレリックマーカーの対立遺伝子頻度を計測して統計的に比較することである。
解析したバイアレリックマーカーのうち少なくとも1つ又はそれ以上で形質との間の統計的に有意な関連性が特定された場合、関連対立遺伝子が形質を誘発する直接の原因である(すなわち、関連対立遺伝子が形質誘発対立遺伝子である)か、あるいは関連対立遺伝子が形質誘発対立遺伝子との間で連鎖不平衡状態にあるという仮説を立てることができる。このうち、後者の方が可能性としては高い。通常、遺伝子の機能に鑑みた関連対立遺伝子の特異的な特徴から、関連対立遺伝子と形質との関連性に関して別の見通し(原因性又は連鎖不平衡)が立つのが普通である。遺伝子内の関連対立遺伝子は形質誘発対立遺伝子ではない可能性が最も高いが、実際の形質誘発対立遺伝子との間で連鎖不平衡状態にあるということが、何らかの証拠によって示された場合、関連マーカー付近の配列決定によって、形質誘発対立遺伝子を見出すことができる可能性がある。
本発明の他の実施形態は、a)本発明のハプロタイプ頻度推定方法に従って、形質陽性個体群における少なくとも1種のハプロタイプの頻度を推定するステップと、b)本発明のハプロタイプ頻度推定方法に従って、対照個体群における前記ハプロタイプの頻度を推定するステップと、c)前記ハプロタイプと前記表現型との間に統計的に有意な関連性が存在するか否かを判定するステップとを含む、ハプロタイプと表現型との間の関連性の検出方法を包含する。
また、本発明のハプロタイプと表現型との間の関連性の検出方法は、本願明細書で開示したいずれかの限定のある方法あるいは単独又は組み合わせでの方法を包含する。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーが、配列番号1, 2, 4, 5, 7, 8及び11-15及びそれらの相補体からなる群から個々に又は組み合わせで選択される配列に含まれるものであってもよい。任意に、前記DAO関連バイアレリックマーカーが、表6b又は表6cに示すバイアレリックマーカーから選択されるものであってもよい。任意に、前記対照個体群が形質陰性個体群又は無作為個体群であってもよい。任意に、前記表現型が、総合失調症に関与する疾患、総合失調症に作用する薬剤に対する応答又は総合失調症に作用する薬剤に対する副作用であってもよい。
ハプロタイプ解析
上述したように、突然変異又は転移のいずれかによって病因対立遺伝子を有する染色体が最初に個体群に現れたとき、突然変異遺伝子は必ず、被結合マーカーのセットを有する染色体すなわち先祖のハプロタイプ上にある。このハプロタイプを複数の個体群にわたって追跡し、特定の形質との統計的な関連性を解析することができる。個別に行う(対立遺伝子ごとの)関連性解析を、ハプロタイプ解析とも呼ばれる多点関連性解析で補足することによって、関連性解析の統計的な効果が大きくなる。このように、ハプロタイプ関連性解析によって、先祖のキャリアハプロタイプの頻度とタイプを定義することができる。ハプロタイプ解析は、個々のマーカーでの解析の統計的な力を高めるという点で重要なものである。
ハプロタイプ頻度解析の第1ステージでは、同定された本発明のバイアレリックマーカーのさまざまな組み合わせに基づいて考え得るハプロタイプの頻度を判定する。次に、このハプロタイプ頻度を形質陽性個体と対照個体の異なる個体群とを比較する。統計的に有意な結果を得るのにこの解析で使わなければならない形質陽性個体の数は通常、30〜300の範囲であり、好ましい個体数は50〜150の範囲である。同じことが解析に使う未羅患個体(又は無作為対照個体)にもあてはまる。最初の解析の結果から、症例−対照個体群でのハプロタイプ頻度が得られ、評価した各ハプロタイプ頻度について、オッズ比が算出される。統計的に有意な関連性が見出されると、解析対象の形質で影響された特定のハプロタイプを有する個体について、相対リスクを概算することができる。
相互作用解析
本発明のバイアレリックマーカーを用いて、ポリジーンの相互作用によって生じる検出可能な形質に関連のあるバイアレリックマーカーのパターンを特定することができる。未結合座に位置する対立遺伝子間の遺伝的相互作用の解析を行うためには、本願明細書に記載の手法を用いた個体の遺伝子型判定が必要となる。選択したバイアレリックマーカーセットに関して適切な統計的有意性をもってなされる対立遺伝子相互作用解析は、ハプロタイプ解析とみなすことができる。相互解析は、第1の座についての特定のハプロタイプを基準として症例−対照個体群を層別化し、各亜個体群で第2の座との間のハプロタイプ解析を実施することを含む。
関連性解析に用いる統計的手法については本願明細書にてさらに説明する。
4) 関連性の存在下での連鎖試験
本発明のバイアレリックマーカーをTDT(伝播/不平衡テスト)にさらに使用してもよい。連鎖及び関連性を対象としたTDT法はいずれも個体群の層別化に影響されることはない。TDTに必要なのは、羅患個体とその両親に関するデータか、両親ではなく未羅患の兄弟姉妹から得たデータである(Spielmann S. et al., 1993、Schaid D.J. et al., 1996、Spielmann S. and Ewens W.J., 1998を参照のこと)。このような併用試験では一般に、別々に解析したときに発生するような擬−正誤差を減らすことができる。
統計的手法
一般に、形質及び遺伝子型のいずれかを試験して統計的に有意な相関性を示すため、当該分野で知られた方法のいかなる方法でも利用できる。
1) 連鎖解析での方法
一般に、形質及び遺伝子型のいずれかを試験して統計的に有意な相関性を示すため、当該分野で知られた方法のいかなる方法でも利用できる。
2) 個体群でのハプロタイプ頻度の推定方法
上述したように、遺伝子型をスコアリングしても、ヘテロ接合体を区別できないことは珍しくないため、ハプロタイプ頻度の推論は決して容易ではない。配偶子相が分からない場合、多座の遺伝子型データからハプロタイプ頻度を推定することができる。当業者において知られた適当な方法を用いてハプロタイプ頻度を推定することができる(Lange K., 1997、Weir, B.S., 1996を参照のこと)。期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いて、最尤ハプロタイプ頻度を算出することが好ましい(Dempsterら1977、Excoffier L. and Slatkin M., 1995を参照のこと)。この手順は、配偶子相が不明である場合に多座の遺伝子型データからハプロタイプ頻度の期待値最大化値を得ることを意図した繰り返しのプロセスである。ハプロタイプ推定は通常、EM-HAPLOプログラム(Hawley M.E.ら1994)又はArlequinプログラム(Schneiderら1997)などを使用して、EMアルゴリズムを応用することによって行われる。EMアルゴリズムは、繰り返し期待値最大化法を汎用化した方法であるが、これを以下に簡単に説明する。
本願明細書の以下の部分では、フェーズが不明な多座の遺伝子型を表現型とし、フェーズが分かっている多座の遺伝子型を遺伝子型とする。血縁のない個体N個からなる試料をK個のマーカーについてタイプ分けする。観察するデータは相が不明のK座表現型であり、これをF種類の表現型に分類できるものとする。考えられる基礎ハプロタイプがH個あるとする(Kがバイアレリックマーカーの場合、H=2K)。
表現型jについて遺伝子型cjがあり得ると仮定する。よって、以下の式が得られる。
Figure 2005511095
(式中、Pjは表現型jの確率、hk及びhlは遺伝子型iを構成する2つのハプロタイプである。)
ハーディワインベルグ平衡に基づいて、pr(hk,hl)は次のようになる。
Figure 2005511095
EMアルゴリズムの連続したステップは次のように説明できる。
ハプロタイプ頻度の初期値、P1 (0),P2 (0),......PH (0)から開始して、これらの初期値から遺伝子型頻度を推定(推測ステップ)し、もう一組のハプロタイプ頻度(最大化ステップ)、すなわち、P1 (1),P2 (1),......PH (1)を推定する。ハプロタイプ頻度のセットの変化が極めて小さくなるまで上記の2つのステップを繰り返す。
停止基準は、2回の繰り返しでハプロタイプ頻度間に見られる差が最大でも10-7未満になった時点とすることができる。所望の推定精度でこれらの値を調節することができる。詳細に説明すると、特定のs回目の繰り返しの時点で、推測ステップで以下の式から遺伝子型頻度を算出する。
Figure 2005511095
(式中、表現型jに遺伝子型iが発生し、hk及びhlが遺伝子型iを構成する。)
それぞれの確率は、上記の式1及び2から導き出される。
次に、最大化ステップでは、特定の遺伝子型についてもう一組のハプロタイプ頻度を推定するだけである。この方法は、遺伝子カウント法(Smith, 1957)として知られている。
Figure 2005511095
(式中、δitは遺伝子型iにおけるハプロタイプtの数を示す指標変数である。この指標変数の値は、0、1又は2である。)
最終的に得られる推定値が期待値最大化値になるようにするためには、出発値がいくつか必要である。得られた推定値を比較し、推定値間に差がある場合は最尤度につながる推定値の方を保持する。
3) マーカー間の連鎖不平衡算出方法
さまざまな方法を用いて任意の2つの遺伝位置間の連鎖不平衡を算出することができる。実用上、個体群から得たハプロタイプデータに統計的な関連性試験を適用して連鎖不平衡を求める。マーカーMiに対立遺伝子(ai/bi)を有し、マーカーMjに対立遺伝子(aj/bj)を有する本発明のバイアレリックマーカー(Mi, Mj)を少なくとも1つ含む任意のバイアレリックマーカー対間の連鎖不平衡を、Piazzaの式:
Figure 2005511095
(式中、
θ4= - - = Miに対立遺伝子aiがなく、Mjに対立遺伝子ajがない遺伝子型の頻度、
θ3= - + = Miに対立遺伝子aiがなく、Mjに対立遺伝子ajがある遺伝子型の頻度、
θ2= + - = Miに対立遺伝子aiがあり、Mjに対立遺伝子ajがある遺伝子型の頻度である。)
によって、対立遺伝子の組み合わせ(ai, aj; ai, bj; bi, aj及びbi, bj)それぞれについて算出することができる。
Weir(Weir B.S.、1996)によって説明されているようなδ(複合連鎖不平衡係数)に対する期待値最大化(MLE)法に基づいて、対立遺伝子の組み合わせ(ai, aj; ai, bj; bi, aj及びbi, bj)それぞれについてバイアレリックマーカー対(Mi, Mj)間の連鎖不平衡(LD)を算出することもできる。複合連鎖不平衡に対するMLEは次のとおりである。
Daiaj=(2n1 + n2 + n3 + n4/2)/N−2(pr(ai).pr(aj))
(式中、n1=Σ表現型(ai/ai, aj/aj)、n2=Σ表現型(ai/ai, aj/bj)、n3=Σ表現型(ai/bi, aj/aj)、n4=Σ表現型(ai/bi, aj/bj)、Nは試料中の個体の数である。)
ハプロタイプデータがなく遺伝子型データしか利用できない場合でも、この式によって対立遺伝子間の連鎖不平衡を推定することができる。
マーカー間の連鎖不平衡を算出するための別の手段は以下のとおりである。ハーディワインベルグ平衡を満たす一対のバイアレリックマーカーマーカーMi(ai/bi)及びMj(aj/bj)について、上述した方法で特定の個体群から4つの可能なハプロタイプ頻度を推定することができる。
aiとajとの間の配偶子不平衡の推定は、単に、
Figure 2005511095
(式中、pr(ai)は対立遺伝子aiの確率であり、pr(aj)は対立遺伝子ajの確率である。またpr(haplotype(ai, aj))は、上記の式3において推定されるとおりである。)
である。
一対のバイアレリックマーカーでは、MiとMjとの間の関連性を説明するのに必要な不平衡値は1つのみである。
次に、上記の値に対する正規化値を次のようにして算出する。
D'aiaj = Daiaj / max (-pr(ai).pr(aj) , -pr(bi).pr(bj)) , Daiaj<0
D'aiaj = Daiaj / max (pr(bi).pr(aj) , pr(ai).pr(bj)) , Daiaj>0
当業者であれば、本願の開示範囲を超える実験等を実施しなくても、他のLD方法を使用することができることは容易に理解できよう。
適当なヘテロ接合率を有する一組のバイアレリックマーカーでの連鎖不平衡を求めるには、50〜1000の血縁のない個体、好ましくは75〜200、より好ましくは100前後の血縁のない個体を遺伝子型判定すればよい。
4) 関連性試験
表現型と遺伝子型、ここではバイアレリックマーカーにおける対立遺伝子又はそのような対立遺伝子を構成するハプロタイプでの対立遺伝子の相関の統計学的な有意性を判断する方法を、当該分野でよく知られた統計学的試験によって判断できるが、この場合は統計学的な有意性の許容閾値が必要である。特定の方法及び有意性閾値の利用方法は当業者によく知られたものである。
症例個体群と対照個体群とにおけるバイアレリックマーカー対立遺伝子の頻度を判断し、これらの頻度を統計学的な試験結果と比較して関連性を試験し、研究対象のバイアレリックマーカー対立遺伝子と形質との相関を表す頻度に何らかの統計学的な有意差が認められるか否かを判断する。同様に、症例個体群と対照個体群において、特定のバイアレリックマーカーセットについて考え得るあらゆるハプロタイプの頻度を推定してハプロタイプ解析を行い、これらの頻度を統計学的な試験結果と比較して研究対象の表現型(形質)とハプロタイプとの間に統計学的に有意な相関が認められるか否かを判断する。遺伝子型と表現型との間の統計学的に有意な関連性を調べるための試験に有用な統計学的なツールを用いてもよい。好ましくは、ここで用いる統計学的試験は自由度1のカイ二乗試験である。p値を算出する(p値は、観察された値以上の統計値が偶然に発生する確率を示す)。
統計学的有意性
好ましい実施形態では、別の診断試験用の前向きなものとしてか、あるいは早期の予防的治療用の予備的な起始点としての診断上の有意性、バイアレリックマーカー関連性に関係のあるp値が、単発のバイアレリックマーカー解析では好ましくは約1×10-2以下、さらに好ましくは約1×10-4以下であり、複数のマーカーを利用するハプロタイプ解析では、約1×10-3以下、さらに好ましくは1×10-6以下、最も好ましくは約1×10-8以下である。これらの値は、マーカーが1つであろうと複数のマーカーを併用したものであろうと、どのような関連性解析にも応用できるものと思われる。
当業者であれば、上述した値の範囲を起始点として使用し、本発明のバイアレリックマーカーを用いた関連性解析を行うことができる。この場合、本発明のバイアレリックマーカーと総合失調症に関与する疾患との間の有意な関連性を証明し、診断や薬剤スクリーニングの目的で利用することができる。
表現型並べ替え検定
上述した第1段階でのハプロタイプ解析の統計的有意性を確認するために、症例−対照個体から得た遺伝子型判定データをプールし、形質表現型に関して無作為化して、さらに別の解析を行うとよい場合がある。個々の遺伝子型判定データを2つのグループに無作為に割り当てる。このとき、各グループには第1段階で得られたデータの蓄積に用いた症例−対照個体群から同数ずつの個体が含まれるようにする。第2のステージでのハプロタイプ解析は、これらの人為的なグループ、好ましくは第1段階での解析のハプロタイプに含まれていたマーカーのうち相対危険度係数が最も高かったマーカーについて行うと好ましい。この実験を少なくとも100〜10000回繰り返す。このように繰り返し行うことで、有意なp値レベルで、得られたハプロタイプの比率を求めることができる。
統計的関連性の評価
偽陽性の問題に対処するために、同一の症例−対照個体群について無作為に定めたゲノム領域で同様の解析を行ってもよい。発明の名称「Methods, Software And Apparati For Identifying Genomic Regions Harboring A Gene Associated With A Detectable Trait(検出可能な形質に関連のある遺伝子を持つゲノム領域を同定するための方法、ソフトウェア及び装置)」である米国仮特許出願に記載されているようにして、無作為に定めた領域と候補領域で得られる結果を比較する。
5) 危険因子の評定
危険因子(遺伝疫学では、危険因子はマーカー座における特定の対立遺伝子又はハプロタイプの有無である)と疾患との間の関連性は、オッズ比(OR)及び相対危険度(RR)によって測定される。P(R+)がRを有した個体で疾患が発症する可能性、P(R-)が危険因子のない個体での確率である場合、相対危険度は2つの確率の比にすぎない。すなわち、
RR= P(R+)/P(R-)
症例−対照研究では、サンプリング設計であるために相対危険度の直接的な基準を得ることができない。しかし、オッズ比から出現率の低い疾患の相対危険度に良好に近似した値を得ることができる。この値は次のように算出できる。
Figure 2005511095
(F+は症例で危険因子に曝露される頻度であり、F-は対照例で危険因子に曝露される頻度である。F+及びF-は、研究の対立遺伝子頻度又はハプロタイプ頻度を使用して算出され、基本となる遺伝モデル(優性、劣性、相加など)に依存する。)
特定の危険因子の形質を示す個体群における個体の割合について説明する、寄与危険度(AR)をさらに推定することができる。この測定は、疾患病因論及び危険因子の公衆衛生的な影響に関する特異的因子の役割の定量化する上で重要である。この測定の公衆衛生との関係は、興味の対象となる曝露がなければ防止可能な個体群における疾患症例の割合を推定することにある。ARは次のように定められる。
AR = PE(RR-1)/(PE(RR-1)+1)
(ARは、バイアレリックマーカー対立遺伝子又はバイアレリックマーカーハプロタイプに起因する危険である。PEは、研究の対象となる形質の個体群全体における出現率が比較的低い場合、オッズ比で近似できる相対的危険度である。RRは、解析の対象となる形質の個体群全体における出現率が比較的低い場合、オッズ比で近似できる相対的危険度である。)
ARは、バイアレリックマーカー対立遺伝子又はバイアレリックマーカーハプロタイプに起因する危険である。PEは、研究の対象となる形質の個体群全体における出現率が比較的低い場合、オッズ比で近似できる相対的危険度である。RRは、解析の対象となる形質の個体群全体における出現率が比較的低い場合、オッズ比で近似できる相対的危険度である。
本発明のバイアレリックマーカーと総合失調症との関連性
本発明の文脈において、DAO関連バイアレリックマーカーと総合失調症との関連性を構築した。さまざまな個体群及びそのスクリーニング試料を用いて、DAO遺伝子又はその近傍に分布した異なるバイアレリックマーカーセットを利用して、いくつかの関連性解析を実施した。これらの関連性解析及びその結果の詳細は表3に示す。
この情報は極めて価値のあるものである。総合失調症に対する潜在的な遺伝的素因について知っていれば、たとえこの素因が絶対的なものでなかったとしても、極めて有意な形で総合失調症を効率的に治療し、新たな治療薬及び診断ツールを開発しやすくなる。
本発明のバイアレリックマーカーと連鎖不平衡状態にあるバイアレリックマーカーの同定
第1のバイアレリックマーカーを興味の対象となるゲノムの領域で同定後、本発明の教示内容を使用する当業者の医師であれば、この第1のマーカーと連鎖不平衡状態にある別のバイアレリックマーカーとを容易に同定することができる。上述したように、形質に関連した第1のマーカーと連鎖不平衡状態にあるマーカーはいずれも形質に関連することになる。したがって、特定のバイアレリックマーカーと形質の間で関連性が実証された後は、この形質に関連した別のバイアレリックマーカーを見出すことが、特にこの領域のバイアレリックマーカーの密度を増加させるために非常に興味深いこととなる。形質との相関が最も高い1つのマーカー又は複数のマーカーのセット付近で原因遺伝子又は突然変異が見出されるであろう。
特定のマーカーとの連鎖不平衡状態にある別のマーカーの同定には、(a)複数の個体から得た第1のバイアレリックマーカーを有するゲノムフラグメントを増幅するステップと、(b)前記第1のバイアレリックマーカーを有するゲノム領域で第2のバイアレリックマーカーを同定するステップと、(c)前記第1のバイアレリックマーカーと第2のバイアレリックマーカーとの間の連鎖不平衡解析を実施するステップと、(d)前記第2のバイアレリックマーカーを前記第1のマーカーと連鎖不平衡状態にあるとして選択するステップと、を含む。ステップ(b)と(c)のサブコンビネーションも企図される。
バイアレリックマーカーの同定方法及び連鎖不平衡解析の指示方法は、本願明細書にて開示されており、過度の実験を行うことなく当業者らが実施可能なものである。したがって、本発明は、本発明の特定のバイアレリックマーカーと連鎖不平衡状態にあり、特定の形質との関連性という点で同様の特徴を呈すると思われるバイアレリックマーカー及び他の多型にも関する。好ましい実施形態では、本発明は、特定のバイアレリックマーカーと連鎖不平衡状態にあるバイアレリックマーカーに関する。
機能的変異の同定
本発明のバイアレリックマーカーで陽性の関連性を確認した後、選択した数の形質陽性個体と形質陰性個体の配列を比較することによって、関連した候補遺伝子配列の変異をスキャニングすることができる。好ましい実施形態では、遺伝子のエキソン及びスプライス部位、プロモーター及び他の調節領域などの機能領域の変異をスキャニングする。好ましくは、形質と関連するであろうことが示されるハプロタイプを有するものが形質陽性個体であり、形質と関連したハプロタイプ又は対立遺伝子を有さないものが形質陰性個体である。変異検出手順はバイアレリック部位の同定で用いたものと本質的には同じである。
このような変異の検出に用いられる方法は通常、(a)形質陽性患者及び形質陰性対照例のDNA試料から得た形質に関連のあるバイアレリックマーカー1つ又はバイアレリックマーカーのグループを含む候補DNA配列の領域を増幅するステップと、(b)増幅した領域を配列決定するステップと、(c)形質陽性患者のDNA配列と形質陰性対照例のDNA配列とを比較するステップと、(d)形質陽性患者に特異な変異を判断するステップとを含む。ステップ(b)と(c)のサブコンビネーションも企図される。
次に、本願明細書に記載するものなどの適当な遺伝子型判定手順によって、好ましくは個々の試験フォーマットについて述べる部分で後述するようなマイクロシークエンシング法を使用して、症例と対照の大きな個体群をスクリーニングすることによって候補多型を立証すると好ましい。多型は、それが症例及び対照において予想した関連性に匹敵する頻度で現れる場合に候補変異であるとみなされる。
本願明細書にて説明するいずれかの遺伝子型判定法を用いて羅患個体及び未羅患個体のより大きな個体群をスクリーニングすることによって、総合失調症に対する素因に関与していると疑われるsbg1核酸配列の候補多型及び変異を確認することが可能である。好ましくは、マイクロシークエンシング法を利用する。そのような多型は、検出可能な表現型との間に統計的に有意な相関が認められる場合に候補の「形質誘発」変異であるとみなされる。
遺伝診断法での本発明のバイアレリックマーカー
本発明のバイアレリックマーカーおよび他の多型を利用して、特異的な遺伝子型の結果として検出可能な形質を発現する個体、または遺伝子型がゆえに後に検出可能な形質が発生する危険性のある個体を特定できる診断試験を開発することができる。本診断法を用いて解析する形質は、総合失調症に対する素因、検出可能な症状の発病年齢、総合失調症治療に対する有益な応答またはこれに関連した副作用を含む、どのような検出可能な形質であってもよい。そのような診断は、総合失調症の監視、予後判定および/または予防または治療を行う上で有用なものとなる場合がある。
本発明の診断手法では、被検者が検出可能な形質が発生する危険度増大に関連のある遺伝子型を有するか否か、あるいは特定の突然変異の結果として個体に検出可能な形質が認められるか否かを、ファミリー研究、単***DNA解析または体細胞ハイブリッドなど、ハプロタイピングについての個体染色体の解析が可能な方法をはじめとして、さまざまな方法を利用して判断することができる。
この診断法は、DAO遺伝子内または近傍に存在する特定対立遺伝子の検出に関するものである。特に、本発明は、配列番号1、4、11-15のヌクレオチド配列、あるいは多型塩基を含むそのフラグメントまたはその相補配列の少なくとも1つを含む核酸の検出に関する。
これらの方法は、個体から核酸試料を採取し、特定のDAO関連バイアレリックマーカー(多型または突然変異(形質誘発対立遺伝子))をもっていることで形質発症の危険性があるか否か、あるいは個体がその形質を発現していることを示す少なくとも1つの対立遺伝子または少なくとも1つのバイアレリックマーカーハプロタイプが核酸試料に含まれているか否かを判断することを含む。
好ましくは、かかる診断法では、個体から核酸試料を入手し、「DNA試料のバイアレリックマーカーでの遺伝子型判定方法」にて上述した方法でこの試料の遺伝子型を判定する。この診断は単一のバイアレリックマーカーに基づくものであってもよいし、バイアレリックマーカーのグループに基づくものであってもよい。
これらの方法ではそれぞれ、被検者から核酸試料を得た上で、1種またはそれ以上の本発明のバイアレリックマーカーのバイアレリックマーカーパターンを判定する。
一実施形態では、核酸試料についてPCR増幅を行い、検出可能な表現型に関連のある多型が同定された領域を増幅する。増幅産物を配列決定し、検出可能な表現型に関連したDAO関連バイアレリックマーカーの1種またはそれ以上を個体が有しているか否かを判定する。増幅産物の生成に利用するプライマーは、配列番号1または4に列挙するプライマー(先に定義したように接頭辞".rp"および".pu補体"を有するもの)を含むものであってもよい。あるいは、上述のように核酸試料のマイクロシークエンシング反応を行い、検出可能な表現型と関連したDAO関連バイアレリックマーカー(多型)の1種またはそれ以上を個体が有しているか否かを判定する。マイクロシークエンシング反応で利用するプライマーとしては、配列番号1または4に列挙したプライマー(先に定義したように接頭辞".mis"および".mis補体"を有するもの)が挙げられる。もう1つの実施形態では、検出可能な表現型に関連のあるDAO関連対立遺伝子1種またはそれ以上と特異的にハイブリダイズされる1種またはそれ以上の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブと核酸試料とを接触させる。ハイブリダイゼーションアッセイで使用するプローブは、配列番号1または4に列挙されるプローブ(先に定義したように接頭辞".probe"を有するもの)を含むものであってもよい。もう1つの実施形態では、増幅反応時に対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドと併用する場合、増幅産物産生能をもつ第2のオリゴヌクレオチドと核酸試料とを接触させる。増幅反応時に増幅反応が存在するということは、その個体が検出可能な表現型に関連のあるDAO関連対立遺伝子の1種またはそれ以上を有していることを示す。
好ましい実施形態では、配列番号1の27-81-180、27-29-224、27-2-106および27-30-249、配列番号4の27-1-61およびそれらの相補体からなる群より選択される少なくとも1つのバイアレリックマーカーに存在するヌクレオチド同一性を判定する。検出可能な形質が総合失調症である。診断用キットは本発明のいずれかのポリヌクレオチドを含む。
特定の環境において、この診断法を用いて予防治療を開始したり、有意なハプロタイプを保有している個体について軽微な症状などの危険な徴候を予測できるという点で、この診断法は極めて有益である。
薬物に対する応答または薬物に対する副作用を解析して予測する診断法を利用して、個体を特定の薬物で治療すべきか否かを判断してもよい。たとえば、個体が特定の薬物での治療にポジティブな応答を示す尤度が診断によって示されれば、かかる薬物をその個体に投与することができる。逆に、個体が特定の薬物での治療にネガティブな応答を示す可能性が診断によって示されれば、別の治療計画を検討することができる。ネガティブな応答は、有効な応答が認められないか、あるいは中毒性の副作用が見られる状態として定義できる。
本発明のマーカーには、臨床薬治験という別の用途もある。総合失調症に作用する薬剤に対する応答、または総合失調症に作用する薬剤に対する副作用への応答を示す1種またはそれ以上のマーカーを、上述した方法によって同定することができる。次に、かかる薬剤を用いた治験の被検者になりそうな個体をスクリーニングし、薬剤に対して良好な応答を見せる可能性が最も高い個体を特定し、副作用が認められそうな個体を排除することができる。このようにして、ポジティブな応答が見られそうにない個体が試験に含まれることで測定精度を落とすことなく、かつ、安全面で望ましくない問題を生じる危険性も伴わずに、薬剤に対してポジティブな応答をする個体で、かかる薬剤による治療の有効性を測定することができる。
精神病性疾患の予防、診断および治療
素因を診断または検出する方法におけるsbg1
総合失調症および双極性障害に罹患した、またはそれらにかかりやすい個体は、DAO遺伝子の特定対立遺伝子を有する。本発明の一態様は、精神障害の診断と統計マニュアル第4版(DSM-IV)の分類に従って定義される、総合失調症、双極性障害または他の精神障害、気分障害、自閉症、物質依存症またはアルコール中毒、精神遅滞または認知障害、不安障害、摂食障害、衝動調節障害および人格障害をはじめとする他の精神病性疾患に羅患する危険性が個体にあるか否か、あるいは、現在羅患しているか否かを判定するための方法であって、ここに記載する関連研究によって明らかにされるように、個体がDAO遺伝子の特定対立遺伝子を有するか否かを判定するための方法である。
遺伝診断法での本発明のバイアレリックマーカー
本発明のバイアレリックマーカーおよび他の多型を利用して、特異的な遺伝子型の結果として検出可能な形質を発現する個体または遺伝子型がゆえに、後に検出可能な形質が発生する危険性のある個体を特定できる診断試験を開発することができる。総合失調症または双極性障害に対する素因、検出可能な症状の発病年齢、または双極性障害の治療に対する有益な応答またはこれに関連した副作用を含む検出可能な形質の診断に、本診断法を用いて解析される形質を利用してもよい。かかる診断は、総合失調症または双極性障害の監視、予後判定および/または予防または治療を行う上で有用なものとなる場合がある。
本発明による診断手法では、被検者が検出可能な形質が発生する危険度増大に関連のある遺伝子型を有するか否か、あるいは特定の突然変異の結果として個体に検出可能な形質が認められるか否かを、ファミリー研究、単***DNA解析または体細胞ハイブリッドなど、ハプロタイピングについての個体染色体の解析が可能な方法をはじめとして、さまざまな方法を利用して判断することができる。
この診断法は、DAO遺伝子内または近傍に存在する特定対立遺伝子の検出に関するものである。特に、本発明は、配列番号1、4、11-15のヌクレオチド配列あるいは、多型塩基を含むそのフラグメントまたはその相補配列の少なくとも1つを含む核酸の検出に関する。
これらの方法は、個体から核酸試料を採取し、特定のDAO関連バイアレリックマーカー(多型または突然変異(形質誘発対立遺伝子))をもっていることで形質発症の危険性があるか否か、あるいは個体がその形質を発現していることを示す少なくとも1つの対立遺伝子または少なくとも1つのバイアレリックマーカーハプロタイプが核酸試料に含まれているか否かを判断することを含む。
好ましくは、かかる診断法では、個体から核酸試料を入手し、「DNA試料のバイアレリックマーカーでの遺伝子型判定方法」にて上述した方法でこの試料の遺伝子型を判定する。この診断は単一のバイアレリックマーカーに基づくものであってもよいし、バイアレリックマーカーのグループに基づくものであってもよい。
これらの方法ではそれぞれ、被検者から核酸試料を得た上で、1種またはそれ以上の本発明のバイアレリックマーカーのバイアレリックマーカーパターンを判定する。
一実施形態では、核酸試料についてPCR増幅を行い、検出可能な表現型に関連のある多型が同定された領域を増幅する。増幅産物を配列決定し、検出可能な表現型に関連したDAO関連バイアレリックマーカー(多型)の1種またはそれ以上を個体が有しているか否かを判定する。増幅産物の生成に利用するプライマーは、配列番号1または4に列挙するプライマーを含むものであってもよい。あるいは、上述のように核酸試料のマイクロシークエンシング反応を行い、DAO遺伝子内または近傍での変異または多型によって生じる検出可能な表現型と関連したDAO関連バイアレリックマーカー(多型)の1種またはそれ以上を個体が有しているか否かを判定する。マイクロシークエンシング反応で利用するプライマーとしては、配列番号1または4に列挙したプライマーが挙げられる。もう1つの実施形態では、検出可能な表現型に関連のあるDAO関連対立遺伝子1種またはそれ以上と特異的にハイブリダイズされる1種またはそれ以上の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブと核酸試料とを接触させる。ハイブリダイゼーションアッセイで使用するプローブは、配列番号1または4に列挙されるプローブを含むものであってもよい。
もう1つの実施形態では、増幅反応時に対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドと併用する場合、増幅産物産生能を持つ第2のオリゴヌクレオチドと核酸試料とを接触させる。増幅反応時に増幅反応が存在するということは、その個体が検出可能な表現型に関連のあるDAO関連対立遺伝子の1種またはそれ以上を有していることを示す。好ましい実施態様では、検出可能な形質は総合失調症または双極性障害である。診断用キットは本発明のいずれかのポリヌクレオチドを含む。
特定の環境において、この診断法を用いて予防治療を開始したり、有意なハプロタイプを保有している個体について軽微な症状などの危険な徴候を予測できるという点で、この診断法は極めて有益である。
薬物に対する応答または薬物に対する副作用を解析して予測する診断法を利用して、個体を特定の薬物で治療すべきか否かを判断してもよい。たとえば、個体が特定の薬物での治療にポジティブな応答を示す尤度が診断によって示されれば、かかる薬物をその個体に投与することができる。逆に、個体が特定の薬物での治療にネガティブな応答を示す可能性が診断によって示されれば、別の治療計画を検討することができる。ネガティブな応答は、有効な応答が認められないか、あるいは中毒性の副作用が見られる状態として定義できる。
本発明のマーカーには、臨床薬治験という別の用途もある。総合失調症に作用する薬剤に対する応答、または総合失調症に作用する薬剤に対する副作用への応答を示す1種またはそれ以上のマーカーを、上述した方法によって同定することができる。次に、かかる薬剤を用いた治験の被検者になりそうな個体をスクリーニングし、薬剤に対して良好な応答を示す可能性が最も高い個体を特定し、副作用が認められそうな個体を排除することができる。このようにして、ポジティブな応答が見られそうにない個体が試験に含まれることで測定精度を落とすことなく、かつ、安全面で望ましくない問題を生じる危険性も伴わずに、薬剤に対してポジティブな応答をする個体で、かかる薬剤による治療の有効性を測定すればよい。
バイアレリックマーカーを用いての疾患の予防と治療
主に自殺の危険性があるがゆえに、総合失調症、双極性障害ならびに他の精神病性疾患に対する個体の羅患性を検出することは非常に重要である。したがって、本発明は:
DAO関連バイアレリックマーカー1つまたはDAO関連マーカーのバイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子、より好ましくは総合失調症または双極性障害に関連のあるDAO関連マーカーをDNAに含む個体を選択する工程;
総合失調症または双極性障害に関する症状の出現(および任意に発症)の点で前記個体を経過観察する工程;および
総合失調症または双極性障害に作用するか、あるいはその症状に作用する治療薬を、疾患の適切な病期にて前記個体に投与する工程
からなる、総合失調症または双極性障害あるいはその関連障害を治療するための方法に関する。
本発明のもう1つの実施形態では、本発明は:
DAO関連バイアレリックマーカー1つまたはDAO関連マーカーのバイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子、より好ましくは総合失調症または双極性障害と関連したDAO関連マーカーをDNAに含む個体を選択する工程;および
総合失調症または双極性障害の予防治療薬を前記個体に投与する工程
からなる、総合失調症または双極性障害を治療するための方法を含む。
さらに他の実施形態では、本発明は:
DAO関連バイアレリックマーカー1つまたはDAO関連マーカーのバイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子、より好ましくは総合失調症または双極性障害と関連したDAO関連マーカーをDNAに含む個体を選択する工程;
総合失調症または双極性障害の予防治療薬を前記個体に投与する工程;
総合失調症または双極性障害症状の前記個体での出現および発症の点で前記個体を経過観察する工程;および任意に
総合失調症または双極性障害に作用するか、あるいはその症状に作用する治療薬を、疾患の適切な病期にて前記個体に投与する工程
からなる、総合失調症または双極性障害を治療するための方法に関する。
疾患に羅患した個体の治療過程を判断するために、本発明は:
DAO関連バイアレリックマーカー1つの対立遺伝子またはDAO関連バイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子、好ましくは総合失調症または双極性障害またはその症状の危険性と関連したマーカーをDNAに含む、総合失調症または双極性障害に羅患した個体を選択する工程;および
総合失調症または双極性障害あるいはその症状に作用する治療薬を前記個体に投与する工程
からなる、総合失調症または双極性障害を治療するための方法にも関する。
また、本発明は、選択された個体群において総合失調症または双極性障害を治療するための方法に関する。その方法は:
DAO関連バイアレリックマーカー1つまたはDAO関連バイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子、好ましくは総合失調症または双極性障害またはその症状に作用する薬物を有効量で用いる治療に対するポジティブな応答と関連したマーカーをDNAに含む、総合失調症または双極性障害に罹患した個体を選択する工程;および/または
バイアレリックマーカー1つまたはDAO関連バイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子、好ましくは前記薬物を用いての治療に対するネガティブな応答と関連したDAO関連マーカーの対立遺伝子がDNAに含まれていない、総合失調症または双極性障害に羅患した個体を選択する工程;および
有効量の前記薬物を好適な間隔で前記選択された個体に投与する工程
からなる。
本発明の文脈では、薬物に対する「ポジティブな応答」は、疾患に関連する症状が緩和される状態と定義することができる。本発明の文脈では、薬物に対する「ネガティブな応答」は、薬剤投与後の観察で、薬剤に対するポジティブな応答が見られず、症状の軽減に至らない状態、あるいは副作用を生じる状態と定義することができる。
また、本発明は、薬物を用いた治療に対して被検体がポジティブに応答する可能性が高いか否かを判定する方法に関する。この方法は、前記薬物に対してポジティブに応答する個体からなる第1の個体群と、前記薬物に対してネガティブに応答する個体からなる第2の個体群を識別することを含む。前記薬物に対するポジティブな応答に関連のある第1の個体群で1つまたはそれ以上のバイアレリックマーカーを同定するか、あるいは前記薬物に対するネガティブな応答に関連のある第2の個体群で1つまたはそれ以上のバイアレリックマーカーを同定する。バイアレリックマーカーはここに記載の技術を用いて同定することができる。
次に、解析対象の被検体からDNA試料を採取する。このDNA試料を解析し、その薬物を用いての治療に対するポジティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子および/またはこの薬物での治療に対するネガティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子が含まれているか否かを判断する。
いくつかの実施形態では、薬物に対するポジティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子がDNA試料に含まれている場合および/または薬物での治療に対するネガティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子がDNA試料に含まれていない場合に、臨床試験で被検者に薬物を投与することができる。好ましい実施形態では、かかる薬物は総合失調症または双極性障害に作用する薬物である。
本発明の方法を利用して、薬物に対して良好な応答を示す可能性のある個体からなる個体群について薬効の評価を行ってもよい。
本発明のもう1つの態様は、被検体からDNA試料を採取し、薬物に対するポジティブな応答に関連したバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子がDNA試料に含まれているか否かおよび/または薬物に対するネガティブな応答に関連したバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子がDNA試料に含まれているか否かを判定し、薬物に対するポジティブな応答に関連したバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子がDNA試料に含まれている場合および/または薬物に対するネガティブな応答に関連したバイアレリックマーカー1種またはそれ以上の対立遺伝子がDNA試料に含まれていない場合に、この薬物を被検体に投与することからなる、薬物使用方法である。
また、本発明は、薬物、好ましくは総合失調症または双極性障害またはその症状に作用する薬物の臨床試験方法にも関する。この方法は:
薬物、好ましくは総合失調症または双極性障害またはその症状に作用すると思われる薬物を個体の異種個体群に投与する工程;
前記薬物に対してポジティブに応答する個体からなる第1の個体群と、前記薬物に対してネガティブに応答する個体からなる第2の個体群を識別する工程;
前記第1の個体群において、前記薬物に対するポジティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカーを同定する工程;
前記薬物に対するポジティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカーをDNAに含む個体を選択する工程;および
前記薬物を前記個体に投与する工程からなる。
薬物を使用する方法、薬物の臨床試験を行う方法、薬物を用いての治療に被検体がポジティブに応答する可能性が高いか否かを判定する方法をはじめとして、総合失調症および双極性障害を予防、診断および治療するための本発明のいずれの方法においても、前記バイアレリックマーカーは:
(a)配列番号1のバイアレリックマーカー27-81-180、27-29-224、27-2-106および27-30-249、配列番号4のバイアレリックマーカー27-1-61からなる群より選択されるバイアレリックマーカー;
(b)配列番号1のバイアレリックマーカー27-29-224および27-2-106からなる群より選択されるバイアレリックマーカー;
(c)配列番号1のバイアレリックマーカー27-2-106;または
(d)配列番号1のバイアレリックマーカー27-29-224
を任意に含むものであってもよい。
このような方法は、望ましくない副作用を引き起こす場合がある、および/またはこの薬剤が通常投与される患者個体群の一部に効果がない場合がある薬剤の投与に起因する効果/危険比を増加させるのに非常に有用であると考えられる。
個体が総合失調症または双極性障害に羅患していると診断された場合、選択試験を実施し、治療に対するポジティブな応答、あるいは副作用または無応答などの治療に対するネガティブな応答に関連したバイアレリックマーカー1つまたはバイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子がこの個体のDNAに含まれているか否かを判断する。
上述した検査方法により、本発明の方法を用いた治療の対象とする患者を選択することができる。選択対象となる個体は、治療に対するネガティブな応答に関連のあるバイアレリックマーカー1つまたはバイアレリックマーカーのグループの対立遺伝子がDNAに含まれていない個体であると好ましい。特定の薬物に対する無応答または副作用についての個体の遺伝素因を知ることにより、臨床医は総合失調症または双極性障害またはその症状に対する適切な医薬品に治療の方へ指向することができる。
患者の遺伝素因が明らかになれば、臨床医は、ネガティブな応答、特に副作用が全く報告されていない、あるいは報告されてはいるがわずかである適当な治療法を選ぶことができる。
本発明のバイアレリックマーカーは、総合失調症および双極性障害との関連性を示している。しかし、本発明はまた、関連疾患、特に関連のCNS疾患を防止、診断、管理および治療する方法において本発明のバイアレリックマーカーを用いる、本願明細書にて説明する予防方法、診断方法、予後判定方法および治療方法のいずれをも含むものである。一例として、その関連障害には、精神障害の診断と統計マニュアル第4版(DSM-IV)の分類に従って定義される、精神障害、気分障害、自閉症、物質依存症およびアルコール中毒、精神遅滞、および認知障害、不安障害、摂食障害、衝動調節障害および人格障害を含む他の精神病性疾患が挙げられる。
Thomas et al.(1987)に記載されているように、エレクトロポレーションを用いる。エレクトロポレーションの対象となる細胞をスクリーニング(例えば、選択可能なマーカーによる選択、PCR解析またはサザンブロット解析など)し、好ましくは相同的組換え現象によってゲノムに外因性の組換えポリヌクレオチドが組み込まれたポジティブ細胞を見出す。本発明で利用できるポジティブ-ネガティブ選択手順の一例は、Mansour et al.(1988)に説明されている。
次に、Bradley(1987)に記載されているように、ポジティブ細胞を単離し、クローニングし、3.5日胚のマウス胚盤胞に注入する。次に、胚盤胞をメスの宿主動物に挿入し、妊娠満期まで成長させる。
あるいは、Woodら(1993)またはNagyら(1993)に記載されているように、2.5日胚、8〜16細胞期(桑実胚)の時点でポジティブES細胞を胚と接触させる。内部移行中のES細胞は、生殖細胞系を生み出す細胞を含む胚盤胞を迅速にコロニー化する。
メス宿主の子孫を試験し、どの動物がトランスジェニックであるか、例えばどの動物が挿入された外因性のDNA配列を有し、どの動物が野生型なのかを判断する。
よって、本発明は、本発明による核酸、組換え発現ベクターまたは組換え宿主細胞を含むトランスジェニック動物にも関する。
本発明のトランスジェニック動物由来の組換え株化細胞
本発明のさらに他の目的は、ここで説明するトランスジェニック動物から得られる組換え宿主細胞を含む。一実施形態では、本発明は、本発明の組換えベクターまたはノックアウトベクターを用いた相同的組換えによって破壊された、sbg1、g34665、sbg2、g35017またはg35018核酸配列を含む遺伝子を含む非ヒト宿主哺乳動物および動物由来の細胞を包含する。
Chou(1989)およびShayら(1991)に記載されているようにして、たとえば、SV40ラージT抗原などのonc-遺伝子を発現するベクターでの一次細胞培養物のトランスフェクションなどによって、本発明によるトランスジェニック動物のいずれかの組織から得られる細胞から組換え細胞系を生体外にて確立する。
コンピュータ関係の実施形態
ここで使用される「本発明の核酸コード」という用語は:
a)配列番号1の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000または2000ヌクレオチドの連続スパンおよびそれらの相補体であって、前記連続スパンが、配列番号1のヌクレオチド位置40939〜78463の少なくとも1つを含むもの;または
b)長さが特定の配列番号と整合する限りにおいて、配列番号1、2、4、5、7、8または11-15のうちいずれかの少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000または2000ヌクレオチドの連続スパンおよびそれらの相補体のうちいずれか1つを含む、実質的にこれからなる、またはこれからなる、ヌクレオチド配列を包含する。
また、「本発明の核酸コード」はさらに、配列番号1、2、4、5、7、8または11-15の特定の配列と長さが整合する限りにおいて、少なくとも30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000または2000ヌクレオチドの連続スパンに対して相同的であるヌクレオチド配列およびそれらの相補体を包含する。「本発明の核酸コード」はまた、配列番号1の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90または100ヌクレオチドの連続スパンまたはそれらの相補体に対して相同的であるヌクレオチド配列であって、前記連続スパンが、配列番号1のヌクレオチド位置、すなわち:
(i)40939〜78463;または
(ii)41118、69461、74320または78451のうち少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を包含する。
相同配列とは、これらの連続スパンに対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%または75%相同性である配列を意味する。相同については、BLAST2Nをデフォルトのパラメーターで使用したり、いずれかのパラメーターを変更して使用するなど、ここに記載のいずれかの方法で判断できる。相同配列には、本発明の核酸コードのチミンの代わりにウリジンがあるRNA配列を含んでもよい。本発明の核酸コードが、伝統的な一符号形式(Stryer, Lubert. Biochemistry第3版 W.H Freeman & Co., New Yorkの裏表紙の内側を参照のこと)または配列でのヌクレオチドの同一性を記録する他の形式またはコードで表現できることは理解できよう。
ここで使用される「配列番号3、6、9および10のポリペプチドコード」という表現は、配列番号3、6、9および10のポリペプチド配列、配列番号3、6、9および10のポリペプチドと相同なポリペプチド配列、あるいは、上記の配列のうちいずれかのフラグメントを包含する。相同的ポリペプチド配列は、配列番号3、6、9および10のポリペプチド配列のうちの1つと少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%または75%相同であるポリペプチド配列を意味する。FASTAをデフォルトのパラメーターで使用したり、いずれかのパラメーターを変更して使用するものをはじめとして、ここに説明したコンピュータプログラムおよびパラメータのいずれかを用いて、相同性を判定することができる。ここに記載のいずれかの方法を用いて、あるいは、上述したような配列決定エラーの補正の結果として、相同配列を得ることができる。ポリペプチドフラグメントは、配列番号3、6、9および10のポリペプチドの連続した少なくとも4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100または150アミノ酸を含む。好ましくは、このフラグメントは新規なフラグメントである。配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードについては、従来の一文字形式または三文字形式(Starrier, Lubert. Biochemistry第3版 W.H Freeman & Co., New Yorkの裏表紙の内側を参照のこと)または配列におけるポリペプチドの相同性に関する他の任意の形式で表現可能であることは理解できよう。
配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コードおよび配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードは、コンピュータによる読み取りおよびアクセスが可能ないずれの媒体に格納、記録および操作が可能なものであることは、当業者であれば理解できよう。ここで使用される「記録された」および「格納された」という語は、コンピュータ媒体に情報を格納するプロセスを意味する。当業者であれば、コンピュータ読み取り可能な媒体に情報を記録するための周知の方法のいずれかを採用し、配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コード1つまたはそれ以上、あるいは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコード1つまたはそれ以上を有する実施形態を容易に生成することができる。本発明のもう1つの態様は、配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コードが少なくとも2、5、10、15、20、25、30または50記録されたコンピュータ読取可能な媒体である。本発明のもう1つの態様は、配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードが少なくとも2、5、10、15、20、25、30または50記録されたコンピュータ読取可能な媒体である。
コンピュータ読取可能媒体としては、磁気的に読み取り可能な媒体、光学的に読み取り可能な媒体、電子的に読み取り可能な媒体および磁気/光媒体があげられる。たとえば、コンピュータ読み取り可能な媒体としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)またはリードオンリーメモリ(ROM)ならびに当業者間で周知のその他の媒体であってもよい。
本発明の実施形態は、システムを含み、特に、ここに記載された配列情報を記録し、これを操作するコンピュータシステムを含む。コンピュータシステム100の一例を図19にブロック図形式で示す。ここで使用する「コンピュータシステム」は、配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コードのヌクレオチド配列、または配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードのアミノ酸配列の解析に使用される、ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネントおよびデータ記憶コンポーネントを意味する。一実施形態では、コンピュータシステム100は、Sun Enterprise 1000サーバー(カリフォルニア州パロアルト、サンマイクロシステムズ)である。コンピュータシステム100は、配列データを処理し、これにアクセスし、これを操作するためのプロセッサを備えるものであると好ましい。プロセッサ105には、インテル社から出ているPentium(登録商標)IIIの他、サン、モトローラ、コンパックまたはIBMから出ている同様のプロセッサなど、周知のどのようなタイプの中央処理装置であってもよい。
コンピュータシステム100は、プロセッサ105と、データを格納するための1つまたはそれ以上の内部データ記憶コンポーネント110と、データ記憶コンポーネントに格納されたデータを検索するための1つまたはそれ以上のデータ検索デバイスとを備える汎用システムであることが好ましい。当業者であれば、現在入手可能なコンピュータシステムであればいずれも適したものであることを容易に理解できよう。
特定の一実施形態では、コンピュータシステム100には、主記憶装置115(好ましくはRAMとして実装される)に接続されたバスに接続されたプロセッサ105と、ハードドライブおよび/またはデータが記録された他のコンピュータ読取可能媒体などの1つまたはそれ以上の内部データ記憶デバイス110とが含まれる。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム100がさらに、内部データ記憶デバイス110に格納されたデータを読み取るための1つまたはそれ以上のデータ検索デバイス118を含む。
データ検索デバイス118は、たとえば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブなどであってもよい。いくつかの実施形態においては、内部データ記憶デバイス110は、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、磁気テープなどの、制御ロジックおよび/またはデータが記録されたコンピュータ読み取り可能な取り外し可能媒体である。コンピュータシステム100は、データ検索デバイスに挿入された後でデータ記憶コンポーネントから制御ロジックおよび/またはデータを読み取るための適当なソフトウェアを含むかまたはそれでプログラミングされたものであると都合がよいことがある。
コンピュータシステム100は、出力を表示してコンピュータのユーザに示すために用いられるディスプレイ120を含む。また、コンピュータシステム100をネットワークまたはワイドエリアネットワーク内のその他のコンピュータシステム125a〜cとリンクさせ、コンピュータシステム100に対する中央アクセスを提供することも可能であることに注意されたい。
配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コードのヌクレオチド配列、あるいは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードのアミノ酸配列にアクセスしてこれを処理するためのソフトウェア(サーチツール、比較ツール、モデリングツールなど)を実行時に主記憶装置115に常駐させておいてもよい。
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム100がさらに、コンピュータ読取可能媒体に格納された上記の配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードと、コンピュータ読取可能媒体に格納された参照ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列とを比較するための配列コンペアラを備えるものであってもよい。「配列コンペアラ」は、コンピュータシステム100に実装され、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列と、配列または構造がデータ記憶手段の中に格納された他のヌクレオチド配列またはポリペプチド配列および/またはペプチド類、ペプチドを模倣した物質および化学物質を含むがこれに限定されるものではない化合物とを比較する1つまたはそれ以上のプログラムを意味する。たとえば、配列コンペアラは、コンピュータ読取可能媒体に格納された配列番号1、2、4、5、7、8、11-15の核酸コードのヌクレオチド配列または配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードのアミノ酸配列と、コンピュータ読取可能媒体に格納された参照配列とを比較し、相同性、生物学的機能と関係のあるモチーフまたは構造的なモチーフを特定するものであってもよい。本願特許明細書の他の部分で述べるさまざまな配列コンペアラのプログラムは、特に本発明の態様で使用することを意図したものである。
プロセス200は、新たな配列とデータベース内の配列との間の相同性レベルを判定すべく、新たなヌクレオチド配列またはタンパク質配列と、配列のデータベースとを比較する。配列のデータベースは、コンピュータシステム100に格納された専用データベースであってもよいし、インターネット経由で利用できるGENBANKやPIR OR SWISSPROTなどの公共データベースであってもよい。このようなプロセスの方法は、関連米国特許出願09/539,333および国際出願PCT/IB00/00435にすでに記載されている。
プロセス200は、開始状態201で開始された後、比較対象となる新たな配列をコンピュータシステム100のメモリに記憶する状態202に移る。メモリは、RAMまたは内部記憶デバイスをはじめとして、どのようなタイプのメモリであってもよい。
プロセス200は、解析および比較を行うべく配列のデータベースを開く状態204に移る。次いで、プロセス200は、データベースに記憶された第1の配列をコンピュータ上のメモリに読み出す状態206に移る。続いて状態210で比較が実行され、第1の配列が第2の配列と同一であるか否かが判定される。このステップは新たな配列とデータベース内の第1の配列との厳密な比較に限定されるものではない点に注意することが重要である。2つのヌクレオチド配列またはタンパク質配列が同一でない場合であっても、これらの配列同士を比較するための周知の方法は当業者間で周知である。たとえば、2つの被検配列間の相同性レベルを高めるために、一方の配列にギャップを導入することが可能である。比較時にギャップまたは他の特徴を配列に導入するか否かを制御するパラメータは一般に、コンピュータシステムのユーザが入力するものである。
状態210で2つの配列の比較を行った後、判断状態210では2つの配列が同一であるか否かの判定がなされる。もちろん、「同一」という用語は、完全に同一である配列に限定されるものではない。ユーザが入力した相同性パラメータ内にある配列はプロセス200では「同一である」とみなされる。
2つの配列が同一であるという判定がなされると、プロセス200は、データベースから取得した配列名を表示してユーザに示す状態214に移る。この状態では、名称の表示された配列は入力された相同性の制約を満たすものであることがユーザに通知される。格納された配列の名称をユーザに対して表示すると、プロセス200は、データベース内に他の配列が残っているか否かを判定する判断状態218に移る。データベース内に他に配列が残っていなければ、プロセス200は終了状態220で終了する。しかし、データベース内にまだ配列がある場合は、プロセス200は、データベース内の次の配列にポインタを移動し、これを新たな配列と比較できるようにする状態224に移る。このようにして、新たな配列を整列させ、データベース内の各配列と比較する。
判断状態212で配列が相同ではなかったという判定がなされると、プロセス200は、データベース内の他の配列を比較に利用できるか否かを判定すべく、すぐに判断状態218に移ることに注意されたい。
したがって、本発明の一態様は、プロセッサと、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードが格納されたデータ記憶デバイスと、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードと比較される参照ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列が検索可能な状態で格納されたデータ記憶デバイスと、比較を実行するための配列コンペアラとを備えるコンピュータシステムである。配列コンペアラは、比較する配列同士の相同性レベルを示すものであってもよいし、あるいは、上述した配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードおよび配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードの構造的なモチーフを特定するものであってもよい。また、配列コンペアラは、これらの核酸コードおよびポリペプチドコードと比較される配列における構造的なモチーフを特定するものであってもよい。いくつかの実施形態では、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30または50の配列をデータ記憶デバイスに記憶することができる。
本発明のもう1つの態様は、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードと参照ヌクレオチド配列との相同性レベルを判断するための方法であって、相同性レベルを判断するコンピュータプログラムを用いて核酸コードと参照ヌクレオチド配列とを読み取るステップと、コンピュータプログラムを使用して核酸コードと参照ヌクレオチド配列との相同性を判断するステップとからなる方法である。このコンピュータプログラムは、相同性レベルを判定するためのさまざまなコンピュータプログラムのうち任意のものであればよく、BLAST2Nをデフォルトのパラメーターで使用したり、いずれかのパラメーターを変更して使用するものなど、ここに具体的に列挙するものを含む。この方法は、上述したコンピュータシステムを用いて実現可能なものである。また、コンピュータプログラムを用いて上述した配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードを2、5、10、15、20、25、30または50読み取り、核酸コードと参照ヌクレオチド配列との相同性を判定してこの方法を実施してもよい。
別の態様は、2つの配列が相同であるか否かを判定するためのコンピュータにおけるプロセス250に関する。プロセス250は、開始状態252で開始された後、比較対象となる第1の配列をメモリに記憶する状態254に移る。次に、比較対象の第2の配列が状態256でメモリに記憶される。その後、プロセス250は、第1の配列の第1の文字を読み取る状態260、続いて第2の配列の第1の文字を読み取る状態262に移る。配列がヌクレオチド配列である場合、この文字は通常、A、T、C、GあるいはUのいずれか1つであることは理解できよう。配列がタンパク質配列である場合、第1の配列と第2の配列とを容易に比較できるように、これは単一文字アミノ酸コードとすべきものであろう。
続いて、判定状態264において、これらの2つの文字が同一であるか否か判定される。同一である場合、プロセス250は、第1の配列および第2の配列の次の文字を読み取る状態268に移る。続いて、次の文字が同一であるか否か判定される。同一である場合、プロセス250は、2つの文字が異なるまでループ処理を継続する。次の2文字が異なっているという判定がなされると、プロセス250は状態274に移り、いずれかの配列に読み取るべき文字が他にあるか否か判定する。
読み取るべき文字がない場合、プロセス250は、第1の配列と第2の配列との間の相同性レベルを表示してユーザに示す状態276に移る。相同性レベルは、第1の配列における配列の総数に対する同一配列間の文字の比率を算出して求められる。したがって、最初の100ヌクレオチド配列のすべての文字が第2の配列のすべての文字と整列配置された場合、相同性レベルは100%となる。
あるいは、コンピュータプログラムは、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列とを比較し、1つまたはそれ以上の位置で配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードが参照核酸配列と異なっているか否かを判断するコンピュータプログラムであってもよい。任意に、かかるプログラムは、参照ポリヌクレオチドの配列または配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードの配列に対する、挿入、欠失または置換されたヌクレオチドの長さおよび同一性を記録する。一実施形態では、コンピュータプログラムは、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列に対するバイアレリックマーカーまたは単一ヌクレオチド多型(SNP)を含むか否かを判断するプログラムであってもよい。これらの単一のヌクレオチド多型は、一塩基置換、挿入、または欠失を有するものであってもよいが、バイアレリックマーカーは、約1〜10の連続した塩基置換、挿入または欠失を含むものであってもよい。
本発明のもう1つの態様は、配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードと参照ポリペプチド配列との相同性レベルを判断するための方法であって、相同性レベルを判断するコンピュータプログラムを用いて配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードと参照ポリペプチド配列とを読み取るステップと、コンピュータプログラムを使用してポリペプチドコードと参照ポリペプチド配列との相同性を判断するステップとを含む方法である。
したがって、本発明のもう1つの態様は、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードが1つまたはそれ以上のヌクレオチドで参照ヌクレオチド配列と異なっているか否かを判断するための方法であって、核酸配列同士の差を識別するコンピュータプログラムを用いて核酸コードと参照ヌクレオチド配列とを読み取るステップと、コンピュータプログラムを使用して、核酸コードと参照ヌクレオチド配列との差を識別するステップとからなる方法である。いくつかの実施形態では、コンピュータプログラムが、単一ヌクレオチド多型を同定するプログラムである。この方法は、上述したコンピュータシステムおよび図21に示す方法で実現可能なものである。また、コンピュータプログラムを用いて少なくとも2、5、10、15、20、25、30または50の配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードと参照ヌクレオチド配列とを読み取り、コンピュータプログラムを使用して核酸コードと参照ヌクレオチド配列との差を識別することによって上記の方法を実施してもよい。
他の実施形態では、コンピュータベースのシステムに、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードのヌクレオチド配列または配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードのアミノ酸配列の特徴を識別するためのアイデンティファイアをさらに備えてもよい。
「アイデンティファイア」は、上述した配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードのヌクレオチド配列または配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードのアミノ酸配列の特定の特徴を識別する1つまたはそれ以上のプログラムを意味する。一実施形態では、アイデンティファイアは、配列番号2、5、7および8のcDNAコードの開いた読み枠を識別するプログラムを含むものであってもよい。
もう1つの態様は、配列において特徴の存在を検出するアイデンティファイアプロセス300である。プロセス300は開始状態302で開始され、特徴について確認される最初の配列がコンピュータシステム100のメモリ115に記憶される状態304に移る。その後、プロセス300は、配列の特徴データベースがオープンされる状態306に移る。このようなデータベースは、各特徴の名称に加えてその特徴の属性のリストを含む。たとえば、特徴名は「開始コドン」とすることができ、属性は「ATG」となる。他の例として、特徴名「TAATAA Box」および特徴属性「TAATAA」が挙げられる。このようなデータベースの一例が、ウィスコンシン大学遺伝コンピュータグループ(www.gcg.com)によって作られている。
特徴のデータベースが状態306で開かれた後、プロセス300は、第1の特徴がデータベースから読み出される状態308に移る。その後、状態310において、第1の特徴の属性と第1の配列とを比較する。次に、判定状態316において、特徴の属性が第1の配列にあったか否か判定される。属性が見つかった場合、プロセス300は、見つかった特徴の名称を表示してユーザに示す状態318に移る。
その後、プロセス300は、移動の特徴がデータベースに存在するか否かを判定する判定状態320に移る。それ以上特徴が存在しない場合、プロセス300は終了状態324で終了する。 しかし、他の特徴がデータベースに存在する場合は、プロセス300は、状態326で次の配列の特徴を読み出し、状態310に戻って次の特徴の属性と第1の配列とを比較する。
判定状態316で特徴の属性が第1の配列に見つからなかった場合は、プロセス300は判定状態320に直接移り、データベースにまだ特徴が残っているか否かを判定することに注意されたい。
もう1つの実施形態では、アイデンティファイアは、配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードの三次元構造を決定する、分子モデリングプログラムを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、分子モデリングプログラムは、周知の三次元タンパク質構造の残基の構造環境を表すプロフィールに最も近い標的配列を同定する(たとえば、1995年7月25日発行、Eisenbergらの米国特許第5,436,850号を参照のこと)。他の手法では、特定ファミリのタンパク質の周知の三次元構造を重畳し、そのファミリで構造的に保存された領域を定義する。このタンパク質モデリング手法でも相同タンパク質の周知の三次元構造を使用し、配列番号4〜8のポリペプチドコードの構造に近いものを得ている。(たとえば、1996年9月17日発行、Srinivasanらの米国特許第5,557,535号を参照のこと)。従来の相同性モデリング手法を定法で使用し、プロテアーゼおよび抗体のモデルを構築した(Sowdhaminiら, Protein Engineering 10:207, 215(1997))。興味の対象であるタンパク質と鋳型タンパク質との間の配列同一性が少ない場合、比較による方法を用いて三次元のタンパク質モデルを開発することができる。場合によっては、配列同一性が極めて少ないにもかかわらず、これらのタンパク質が折り畳まれて同様の三次元構造になることもある。たとえば、配列相同性は少ないが、多数のらせん状サイトカインの三次元構造が折り畳まれて同様の三次元トポロジーになる。
近年におけるスレッディング法の開発によって、標的と鋳型との間の構造的な関連性が配列レベルでは検出できない場合に、同様の折り畳みパターンをさまざまな状況で同定することができる。Multiple Sequence Threading(MST)を用いて折り畳みを認識するハイブリッド法では、距離幾何学プログラムDRAGONを用いてスレッディングでの出力から構造同値を推論し、低解像度モデルを構築し、QUANTAなどの分子モデリングパッケージを用いて全原子表現を構築する。
この3ステップ法によれば、複数の整列配置配列の同時スレッディングを1つまたはそれ以上の3D構造で実施できる新規な折り畳み認識アルゴリズムMSTを用いて、まず候補鋳型を同定する。第2のステップでは、MST出力から得られる構造当量を残基間距離抑制値に変換し、これを二次構造予測で得られた補助情報と共に距離幾何学プログラムDRAGONに供給する。このプログラムは、公平な方法で抑制値を組み合わせ、多数の低解像度モデルコンホメーションをすみやかに生成する。第3のステップでは、これらの低解像度モデルコンホメーションを全原子モデルに変換し、分子モデリングパッケージQUANTAを用いてエネルギー最小化を行う(Aszodiら, Proteins: Structure, Function, and Genetics, Supplement 1:38-42(1997)などを参照のこと)。
分子モデリング解析の結果を合理的な医薬品設計手法に使用して、配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードの活性を変調する薬剤を同定することができる。
したがって、本発明の他の態様は、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードの特徴の同定方法であって、コード内の特徴を識別するコンピュータプログラムを使用して、核酸コードまたはポリペプチドコードを読み出すステップと、核酸コードまたはポリペプチドコード内の特徴をコンピュータプログラムによって識別するステップとからなる。一実施形態では、コンピュータプログラムは、開いた読み枠を同定するコンピュータプログラムを含む。さらに他の実施形態では、コンピュータプログラムは、ポリペプチド配列の構造モチーフを同定する。他の実施形態では、コンピュータプログラムは、分子モデリングプログラムを含む。コンピュータプログラムを使用して、単一の配列または配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコード少なくとも2、5、10、15、20、25、30または50を読み出し、コンピュータプログラムを使用して、核酸コードまたはポリペプチドコードの特徴を識別することによって、上記の方法を実施してもよい。
配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードについては、さまざまな形式でさまざまなデータ処理装置プログラムに記憶して操作することが可能である。たとえば、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードを、MicrosoftWORDまたはWORDPERFECTなどのワードプロセッサ用のファイルとしてテキスト形式で記憶してもよい。あるいは、DB2、SYBASE、ORACLEなどの当業者間で周知のさまざまなデータベースプログラムにASCIIファイルとして記憶してもよい。また、配列コンペアラ、アイデンティファイア、あるいは配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードとの比較に用いられる参照ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のソースとして、多くのコンピュータプログラムおよびデータベースを利用できる。以下、本発明を限定するものではないが、配列番号1、2、4、5、7、8および11-15の核酸コードまたは配列番号3、6、9および10のポリペプチドコードと併用するのに有用なプログラムおよびデータベースの参考として一覧をあげる。使用可能なプログラムおよびデータベースとしては、MacPattern (EMBL)、DiscoveryBase (Molecular Applications Group)、GeneMine (Molecular Applications Group)、Look (Molecular Applications Group)、MacLook (Molecular Applications Group)、BLAST and BLAST2 (NCBI)、BLASTN and BLASTX (Altschul et al, J. Mol. Biol. 215: 403 (1990))、FASTA (Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444 (1988))、FASTDB (Brutlag et al. Comp. App. Biosci. 6:237-245, 1990), Catalyst (Molecular Simulations Inc.)、Catalyst/SHAPE (Molecular Simulations Inc.)、Cerius2.DBAccess (Molecular Simulations Inc.)、HypoGen (Molecular Simulations Inc.)、Insight II, (Molecular Simulations Inc.)、Discover (Molecular Simulations Inc.)、CHARMm (Molecular Simulations Inc.)、Felix (Molecular Simulations Inc.)、DelPhi, (Molecular Simulations Inc.)、QuanteMM, (Molecular Simulations Inc.)、Homology (Molecular Simulations Inc.)、Modeler (Molecular Simulations Inc.)、ISIS (Molecular Simulations Inc.)、Quanta/Protein Design (Molecular Simulations Inc.)、WebLab (Molecular Simulations Inc.)、WebLab Diversity Explorer (Molecular Simulations Inc.)、Gene Explorer (Molecular Simulations Inc.)、SeqFold (Molecular Simulations Inc.)、EMBL/Swissprotein database、MDL Available Chemicals Directory database、MDL Drug Data Report data base、Comprehensive Medicinal Chemistry database、Derwents's World Drug Index database、BioByteMasterFile database、Genbank database、Genseqn databaseが挙げられるが、これに限定されるものではない。本願明細書の開示内容から、当業者であれば他の多くのプログラムおよびデータベースについても分かるであろう。
上記のプログラムで検出可能なモチーフとしては、ロイシンジッパー、らせんターンらせんモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αらせんおよびβシートをコードする配列、コードされたタンパク質の分泌を指示するシグナルペプチドをコードするシグナル配列、ホメオボックス、酸性伸展、酵素活性化部位、基質結合部位および酵素切断部位などの転写調節に関与する配列が挙げられる。
本願明細書全体を通して、さまざまな刊行物や特許公報、特許出願公開公報を引用している。かかる刊行物や特許公報、公開特許明細書一切の開示内容全体を本願の開示内容に援用し、本発明が属する技術分野の状況を一層明らかにする。
実施例
本発明の方法のうちのいくつかを以下の実施例において説明する。これらの実施例は一例にすぎず、本発明を限定するものではない。本願明細書において記載する本発明には、その趣旨および範囲を逸脱することなくさまざまな修正および変更を施すことが可能であり、かかる限定は添付の特許請求の範囲に記載されている内容によってのみなされる。
実施例1
バイアレリックマーカーの同定:DNA抽出
血縁がなく健常なドナーを用いた。ドナーは異種個体群を代表するものとして十分な多様性を呈していた。100名の個体からDNAを抽出し、バイアレリックマーカーを検出するために試験を行った。
各ドナーからEDTAの存在下で辺縁末梢静脈血30mlを採取した。2000rpmで10分間遠心分離した後に細胞(ペレット)を収集した。溶解液(最終容積50ml、トリス10mM、pH7.6、MgCl2 5mM、NaCl 10mM)で赤血球を溶解した。溶解液中にペレットの懸濁液を再懸濁させた後、上澄み中に残留している赤血球を除去するのに必要な回数だけこの溶液を遠心分離(10分間、2000rpm)した。
白血球のペレットを以下の組成を有する溶解液3.7mlで42℃で終夜溶解した。
−3 mlのTE 10-2 (Tris-HCl 10 mM, EDTA 2 mM) / NaCl 0 4 M
−200 μlのSDS 10%
−500μlのK-プロテイナーゼ(TE 10-2 /NaCl 0.4M中にK-プロテイナーゼ2mg)
タンパク質を抽出するために、1ml飽和NaCl(6M)(1/3.5v/v)を添加した。強く撹拌した後、溶液を1000rpmで20分間遠心分離した。
DNAを沈降させるために、100%エタノール2〜3容量を上記の上澄みに添加し、この溶液を2000rpmで30分間遠心分離した。DNA溶液を70%エタノールで3回洗浄して塩を除去し、2000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを37℃で乾燥させ、1mlのTE 10-1または1mlの水に再懸濁させた。260nmでODを測定することによって(1単位OD=50μg/ml DNA)、DNA濃度を評価した。DNA溶液中にタンパク質が存在することを確認するために、OD 260/OD 280の比を求めた。後述する以後の実施例ではOD 260/OD 280比が1.8〜2の間にあるDNA試料のみを使用した。
各個体から得たDNAを等量ずつ混合してプールを作出した。
実施例2
バイアレリックマーカーの同定:ゲノムDNAのPCRによる増幅
先に得たDNAのプールについて、実施例1のDNA試料の特異的ゲノム配列を増幅した。また、50個体の試料を同様に増幅した。
PCRアッセイは下記のプロトコルで行った。
最終容積 25 μl
DNA 2 ng/μl
MgCl2 2 mM
dNTP (各々) 200 μM
プライマー(各々) 2.9 ng/μl
Ampli Taq Gold DNA ポリメラーゼ 0.05 unit/μl
PCR 緩衝液(10x = 0.1 M TrisHCl pH8.3 0.5M KCl) 1x
本願明細書に開示する配列番号1および4のゲノムDNA配列の配列情報と、OSPソフトウェア(Hillier & Green, 1991)とを用いて第1のプライマーの対をそれぞれ設計した。この第1のプライマー対は約20ヌクレオチド長であり、配列番号1の27-81.rpおよび27-81.pu補体に開示する配列を有するものであった。このプライマー対はマーカー27-81-180の領域を増幅する。本発明のその他のバイアレリックマーカーのプライマー対を、配列番号1および4に同様に記載する。
好ましくは、プライマーは、配列決定に有用である、増幅対象の特異塩基の上流に共通のオリゴヌクレオチドの尾を含むものであった。
GENSET UFPS 24.1合成機において、ホスホラミダイト法によってこれらのプライマーを合成した。
Genius IIサーモサイクラーでDNA増幅を行った。95℃で10分間加熱した後、40サイクルを実施した。各サイクルの構成は、95℃で30秒、54℃で1分、72℃で30秒である。最終的な伸長のために、72℃で10分間で増幅を終了した。蛍光計およびインターカレート剤(分子プローブ)としてのPicogreenを用いて、96穴マイクロタイタープレート上で、どの程度の量の増幅産物が得られたのかを判断した。
実施例3
多型の同定
a) 実施例2の増幅ゲノムDNAからのバイアレリックマーカーの同定
実施例2で得られた増幅DNAの配列決定をABI 377シークエンサで実施した。ダイターミネーターでのサイクル配列決定プロトコルを用いた自動ジデオキシターミネーター塩基配列決定反応によって、増幅産物の配列を判断した。配列決定反応の産物を配列決定ゲルにかけ、ゲル画像解析(ABI Prism DNA Sequencing Analysisソフトウェア(バージョン2.1.2))を利用して配列を求めた。
増幅フラグメントにおけるバイアレリックマーカーの有無を検出すべく、配列データをさらに評価した。上述したように同一位置に異なる塩基が座位することで生じる電気泳動パターンのピークの重畳の有無に基づいて多型探査を行った。
増幅のフラグメントにおいて検出されたバイアレリックマーカーの局在位置は以下の表2に示すとおりである。
Figure 2005511095
BMは「バイアレリックマーカー」を示す。All1およびAll2はそれぞれ、バイアレリックマーカーの対立遺伝子1および対立遺伝子2を示す。
b)オーバーラッピングBACから得たゲノムDNAを比較することによる多型の同定
同一のDNAドナー試料由来の複数のBACから得られ、配列番号1のゲノムDNA領域でオーバーラップしているゲノムDNAを配列決定した。配列決定はABI377シークエンサで行った。ダイターミネーターでのサイクル配列決定プロトコルを用いた自動ジデオキシターミネーター塩基配列決定反応によって、増幅産物の配列を判断した。配列決定反応の産物を配列決定ゲルにかけ、ゲル画像解析(ABI Prism DNA Sequencing Analysisソフトウェア(バージョン2.1.2))を利用して配列を求めた。
実施例4
マイクロシークエンシングによる多型の確認
実施例3で同定したバイアレリックマーカーをさらに確認し、マイクロシークエンシングによってそれぞれの頻度を判断した。マイクロシークエンシングは実施例1で述べた各個体のDNA試料について行った。
バイアレリックマーカーの検出について上述したようにして、配列番号1および4に記載の同一のPCRプライマーセット(接頭辞".rp"および".pu補体"を有する)を使用し、個体のゲノムDNAからの増幅をPCRで行った。
マイクロシークエンシングで使用する好ましいプライマーは約19ヌクレオチド長であり、考慮対象の多型塩基のすぐ上流でハイブリダイズされた。本発明によれば、マイクロシークエンシングに使用するプライマーは、配列番号1および4に列挙したもの(接頭辞".mis" および".mis補体"を有するもの)である。
一例として、バイアレリックマーカー27-2-106について、増幅プライマー27-2.rpおよび27-2. pu補体を使用してDNAを増幅し(実施例1と同様)、マイクロシークエンシングプライマー27-2-106.mixおよび27-2-106.mis補体をマイクロシークエンシング反応において以下のように使用する。
増幅産物の精製後、製造業者からの指示に従って、マイクロシークエンシングオリゴヌクレオチド10pmolと、1 U Thermosequenase(アマシャムE79000G)と、Thermosequenase緩衝液(260mMのトリスHCl、pH 9.5、65mMのMgCl2)1.25μlと、各被検バイアレリックマーカーの多型部位でヌクレオチドと相補的な2種類の適切な蛍光ddNTP(パーキンエルマー、ダイターミネーターセット401095)とを、最終容量20μlで添加することによってマイクロシークエンシング反応混合物を調製した。94℃で4分間の後、Tetrad PTC-225サーモサイクラー(MJリサーチ)にて、55℃で15秒、72℃で5秒、94℃で10秒のPCRサイクルを20回実施した。続いて、取込まれなかったダイターミネーターをエタノール沈降によって除去した。最後に、試料をホルムアミド-EDTA添加緩衝液に再懸濁させ、95℃で2分間加熱した後、ポリアクリルアミド配列決定用ゲルに添加した。ABIプリズム377 DNAシークエンサーでデータを収集し、GENESCANソフトウェア(パーキンエルマー)を用いて処理した。
ゲル解析に続いて、各増幅フラグメントに存在するバイアレリックマーカーの対立遺伝子の判定を可能にするソフトウェアでデータを自動的に処理した。
このソフトウェアは、上記マイクロシークエンシング法によって得られるシグナルの強度が、弱い、標準、飽和、あるいはシグナルが曖昧かといった要因を評価するものである。 また、このソフトウェアは著しいピーク(形状および高さの判定条件による)を特定する。有意なピークの中から、標的部位に対応するピークをそれらの位置に基づいて特定する。2つの有意なピークが同じ位置について検出された場合、高さ比に基づいて各試料を同型接合あるいはヘテロ接合のタイプとして分類する。
実施例5
総合失調症と本発明のバイアレリックマーカーとの間の関連性解析
羅患個体および未羅患個体からのDNA試料の収集
A)羅患個体群
試料についてはすべて、ケベック州のホスピタルセンターで1995年10月から1997年4月にかけて行われた総合失調症についての大規模な疫学的研究のなかで収集した。コーカソイドのフランス人個体から個体群を構成し、研究の設計時には症例患者とその一親等の近親(親または兄弟姉妹)2名とを確認した。
全体として、以下の組み入れ基準に従って956名の総合失調症症例を確認した。
−精神科医による診断がなされたこと。
−一過性の躁鬱精神病または鬱障害に羅患した個体を除外するために、漸増時前に少なくとも3年間診断がなされたこと。
−患者の先祖が少なくとも6世代にわたってケベック州に居住していたこと。
−近親者2名から血液試料を採取可能であること。
確認できた956例の総合失調症症例のうち、以下の理由から834の個体を解析に利用した。
−組み入れた個体症例については、DSM-IV(精神障害の診断と統計マニュアル、第4版、1994年改訂、アメリカ精神医学会出版)に従って総合失調症の診断を行った。
−***情動性障害に羅患した個体から得られた試料を除外した。
−緊張型総合失調症に羅患した個体も総合失調症症例の個体群からは除外した。
−鬱状態または気分障害に羅患した一親等の近親者1人または二親等の近親者が2人以上いる個体も除外した。
−症状の発症前に重篤な頭部外傷や重篤な産科(obstretical)の合併症、脳炎または髄膜炎の既往歴のある個体も除外した。
−癲癇に羅患している患者および鎮痙治療を受けている患者も総合失調症症例の個体群から除外した。
発症年齢は組み入れ基準に含めずにおいた。
B)未羅患個体群
対照例は、以下の累積基準(cumulative criteria)に基づいてそれぞれ確認した。
−総合失調症または他の精神病性障害に一切羅患していない個体であること。
−年齢35歳以上の個体であること。
−フランス系コーカソイド個体群に属する個体であること。
−血液試料の入手が可能な一親等の近親者が1人または2人いる個体であること。
可能な場合は症例の性別と一致させた。
C)関連性解析用に選択した症例個体群および対照個体群
解析用に保持した未羅患個体群を241の個体で構成した。また、臨床研究の初期試料を 215の症例と214の対照とで構成した。対照は男性116例と女性98例、症例は男性154例と女性64例であった。各対照について、一親等の近親者(父、母、姉妹および兄弟)2人を研究に利用することができた。症例と対照の性別とを一致させるために、両親が総合失調症または他の精神病に羅患していないことが明らかな場合に可能な範囲で女性の対照と女性の対照の両親とを入れ替えた。これによって、女性の対照27例がそれぞれの両親と入れ替えられ、結果として対照試料のサイズは241個体となった。
上記にて説明した個体群から個体を無作為に選択した関連性データを以下の表3に示す。
Figure 2005511095
症例個体群および対照個体群の両方が含まれるようにして、分かっている共通の先祖がいない、互いに血縁関係のない個体からなる2つのグループを形成する。さらに、総合失調症または精神***障害の家族歴のない人々から対照個体群の個体を選択した。
羅患個体および対照個体の遺伝子型判定
A)遺伝子型判定の結果
関連性解析を行うための汎用的なストラテジーは、上述した個体群各々に含まれるすべての個体から得たDNA試料を個々にスキャンし、バイアレリックマーカー、特に、本発明のバイアレリックマーカーの、これらの個体群各々に属する被検個体の複相ゲノム(diploid genome)での対立遺伝子頻度を求めることであった。
各個体から得たDNA試料に対してゲノムPCR処理を施し、これによって得られた増幅フラグメントにマイクロシークエンシング反応を施して、各個体群(症例および対照)における各バイアレリックマーカーの対立遺伝子頻度を判定した。ゲノムPCRおよびマイクロシークエンシングは、上記の実施例1〜3において詳細に説明したように、上述したPCRおよびマイクロシークエンシングプライマーを使用して行った。
単一バイアレリックマーカー頻度解析
この解析に用いたバイアレリックマーカーの各対立遺伝子について、未羅患個体群と総合失調症に羅患した個体群との間のバイアレリックマーカー頻度の差を算出し、その差の絶対値を求めた。特定のバイアレリックマーカー1つまたは特定のバイアレリックマーカーの集合について、バイアレリックマーカー頻度の差が大きくなればなるほど、この特定のバイアレリックマーカー1つまたはバイアレリックマーカーの集合を有するゲノム領域と総合失調症との関連性が深くなる。対立遺伝子頻度は、ハプロタイプ解析に用いたマーカーがハーディワインベルグ比(任意交配)を満たしているか否かを確認する上でも有用であった。
ここで説明する関連性解析では、いくつかの個々のバイアレリックマーカーが総合失調症と有意に関連していることが分かった。特に、27-2-106および27-29-224が、総合失調症との有意な関連性を示した。
ハプロタイプ頻度解析
マーカーの解析
上述した羅患個体群および対照個体群で、考え得る2、3および4つのマーカーハプロタイプすべての頻度を推定することによって、染色体DAO関連バイアレリックマーカーと総合失調症との関連性についてのハプロタイプ解析を実施した。上述したように、期待値最大化(EM)アルゴリズム(Excoffier and Slatkin, 1995)を適用し、EM-HAPLOプログラム(Hawley et al., 1994)を使用して、ハプロタイプを推定した。羅患個体群および対照個体群での推定ハプロタイプ頻度を、カイ二乗統計試験(自由度1)によって比較した。
実施例6
DNA配列決定法による法医学的照合
1つの具体的な方法において、頭髪、***、血液または皮膚細胞などの法医学試料からDNA試料を従来の方法によって単離する。上述したさまざまの5′ EST、あるいはそこから単離されるcDNAまたはゲノムDNAに基
づくPCRプライマーのパネルを実施例41に基づいて利用し、法医学試料からの約100-200塩基長のDNAを増幅する。対応する配列を被検体から採取する。これらの識別DNAをそれぞれ標準的な技術を用いて配列決定し、簡単なデータベース比較によって、被検体からの配列と試料からの配列との間に差がある場合にはそれを確認する。被疑者のDNA配列と試料のDNA配列との統計的に有意な差により、同一性がないことが決定的に証明された。同一性の欠如は、例えば1つの配列のみによって証明することができるが、同一性は全て一致する多数の配列によって証明されなければならない。最低でも50個の統計的に同一な100塩基長の配列を用いて被疑者と試料の同一性を証明することが好ましい。
DNA配列決定による確実な同定
上述した実施例で概説した手法をより大きな規模で用いることにより、独自のフィンガープリント式の個体識別を行うことができる。この手法では、プライマーを配列番号1および4に記載のプライマー、あるいはそこから得られるcDNAまたはゲノムDNA配列から生成する。これらのプライマーを用いて、実施例1で対象とされた個体から、PCRで生成された相当数のDNAセグメントを得る。この手法で作成された配列データベースは、配列の採取元である個体を独自に同定する。その後のいずれの時点において同じプライマーのパネルを使用して、組織またはその他の生物試料とその個体との相互関係を確実に示してもよい。
サザンブロットによる法医学的同定
上記の手順を繰り返して、個体および試料から少なくとも5つの増幅配列のパネルを得る。PCRで生成されたこのDNAは、1つの塩基特異的制限酵素、または好ましくはそれを4つ組み合わせたものを用いて消化される。かかる酵素は市販されており、当業者間で公知である。消化後、得られた遺伝子フラグメントを大きさによって多数重複ウェルのアガロースゲル上で分離し、当業者間で周知のサザンブロッティング法でニトロセルロースに転写する。
5’EST(またはそこから得られるcDNAまたはゲノムDNA)、あるいは少なくとも8、10、12、15、20、23、25、28、30、35、40、50、75、100、200、300、500または1000塩基のフラグメントの配列に基づくプローブのパネルを、例えばニックトランスレーションまたは末端標識などの当業者間で公知の方法を用いて放射能または比色法によって標識し、公知の技術によってサザンブロットにハイブリダイズする。
これらの標識プローブを少なくとも5つ使用することが好ましい。5’EST (またはそこから得られるcDNAまたはゲノムDNA)の大規模な試料のハイブリダイゼーションから発生するバンドは、独自のアイデンティファイアとなる。制限酵素***は各個体によって異なるため、サザンブロットのバンドパターンもまた独自なものになる。5’EST(またはそこから得られるcDNAまたはゲノムDNA)由来のプローブの数を増やすことにより、同定に用いるバンドセットの数が増加するため、同定の信頼性レベルが統計的に高くなる。
その他の"フィンガープリント"同定技術
本発明のバイアレリックマーカーに割り当てられたプライマーから20マーのオリゴヌクレオチドを生成する。被検者からの細胞試料を、当業者間で周知の手法を用いてDNA処理する。核酸をEcoRIやXbaIなどの制限酵素で消化する。消化後、試料をウェルに移して電気泳動に付す。その手順は公知のようにポリアクリルアミド電気泳動に適合するように変更してもよいが、本実施例では、5 ugのDNAを含む試料をウェルに入れ、0.8%アガロースゲル上で分離する。ゲルはサザンブロット法を用いてニトロセルロースに転写する。
10 ngのオリゴヌクレオチドをそれぞれプールし、P32で末端標識する。ニトロセルロースをブロッキング溶液でプレハイブリダイズし、標識プローブでハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションと洗浄の後、ニトロセルロースフィルターをX-Omat AR X線フィルムに焼き付ける。得られたハイブリダイゼーションパターンは各個体特有のものである。使用するプローブ配列の数がさらなる精度または明確性によって異なることは、本実施例の範囲内でさらに意図される。
ここに引用する全ての特許公報、PCT出願公報、参考科学文献またはその他の刊行物の開示は、参考として本明細書にそのまま組み込まれる。
本発明は特定の好ましい実施態様によって説明されるが、当業者が理解しうるその他の実施態様もまた、本発明の範囲に含まれる。したがって本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定される。

Claims (2)

  1. a)個体からポリヌクレオチドを含む生物学的試料を得る工程、及び
    b)前記ポリヌクレオチドにおいて、配列番号1又は4のDAO遺伝子のバイアレリックマーカーでヌクレオチドの同一性を測定する工程、ここで、バイアレリックマーカーでの前記ヌクレオチドは、バイアレリックマーカー27-81-180でのヌクレオチドG、バイアレリックマーカー27-81-180でのヌクレオチドA 、バイアレリックマーカー27-29-224でのヌクレオチドT、バイアレリックマーカー27-29-224でのヌクレオチドG、バイアレリックマーカー27-2-106でのヌクレオチドC、バイアレリックマーカー27-2-106でのヌクレオチドA、バイアレリックマーカー27-30-249でのヌクレオチドC、バイアレリックマーカー27-30-249でのヌクレオチドT、バイアレリックマーカー27-1-61でのヌクレオチドA、バイアレリックマーカー27-1-61でのヌクレオチドGからなる群から選択され、
    前記ヌクレオチドは前記個体の遺伝子型を決定する、
    からなる個体の遺伝子型を決定する方法。
  2. 前記対立遺伝子は前記バイアレリックマーカーでのヌクレオチドを同定することによって規定され、前記ヌクレオチドとバイアレリックマーカーとは、バイアレリックマーカー27-81-180でのヌクレオチドG、バイアレリックマーカー27-81-180でのヌクレオチドA 、バイアレリックマーカー27-29-224でのヌクレオチドT、バイアレリックマーカー27-29-224でのヌクレオチドG、バイアレリックマーカー27-2-106でのヌクレオチドC、バイアレリックマーカー27-2-106でのヌクレオチドA、バイアレリックマーカー27-30-249でのヌクレオチドC、バイアレリックマーカー27-30-249でのヌクレオチドT、バイアレリックマーカー27-1-61でのヌクレオチドA、バイアレリックマーカー27-1-61でのヌクレオチドGからなる群から選択され、
    a)少なくとも50個体での総合失調症陽性集団における対立遺伝子の総合失調症陽性頻度を測定する工程、
    b)少なくとも50個体の総合失調症陰性集団において対立遺伝子の総合失調症陰性頻度を測定する工程、
    c)工程a)の総合失調症陽性頻度と工程b)の総合失調症陰性頻度とを用いて、前記対立遺伝子と総合失調症との間に関連が存在するか否かを統計学的に測定する工程からなる配列番号1又は4のDAO遺伝子のバイアレリックマーカーの対立遺伝子と総合失調症との間に関連が存在するか否かを測定する方法。

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