JP2005508636A - 核酸結合タンパク質 - Google Patents

核酸結合タンパク質 Download PDF

Info

Publication number
JP2005508636A
JP2005508636A JP2003540317A JP2003540317A JP2005508636A JP 2005508636 A JP2005508636 A JP 2005508636A JP 2003540317 A JP2003540317 A JP 2003540317A JP 2003540317 A JP2003540317 A JP 2003540317A JP 2005508636 A JP2005508636 A JP 2005508636A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
seq
polynucleotide
polypeptide
amino acid
acid sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003540317A
Other languages
English (en)
Inventor
ベチャ、シャニア・ディー
ボロースキー、マーク・エル
バーフォード、ニール
チョーラ、ナリンダー・ケイ
エリオット、ビッキー・エス
エマーリング、ブルック・エム
フォーサイス、イアン・ジェイ
ギーツェン、キンバリー・ジェイ
ゴーバッド、アン・イー
グリフィン、ジェニファー・エイ
ハファリア、エープリル・ジェイ・エイ
アイソン、クレイグ・エイチ
ラル、プリーティ・ジー
リー、アーンスティーン・エイ
リー、サリー
リー、ソー・ユーン
マーキス、ジョセフ・ピー
ランクマール、ジャヤラクシミ
スプレイグ、ウィリアム・ダブリュ
スウォーナカール、アニータ
タング、ワイ・トム
ワレン、ブリジット・エイ
ヤング、ジュンミング
ユエ、ヘンリー
ゼバージャディアン、イェガネー
Original Assignee
インサイト・ゲノミックス・インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by インサイト・ゲノミックス・インコーポレイテッド filed Critical インサイト・ゲノミックス・インコーポレイテッド
Publication of JP2005508636A publication Critical patent/JP2005508636A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/46Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • C07K14/47Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P1/00Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P29/00Non-central analgesic, antipyretic or antiinflammatory agents, e.g. antirheumatic agents; Non-steroidal antiinflammatory drugs [NSAID]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6875Nucleoproteins
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2500/00Screening for compounds of potential therapeutic value
    • G01N2500/04Screening involving studying the effect of compounds C directly on molecule A (e.g. C are potential ligands for a receptor A, or potential substrates for an enzyme A)

Abstract

本発明は、ヒトの核酸結合タンパク質(NAAP)および、NAAPを同定しコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明の実施態様はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。他の実施態様は、NAAPの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。

Description

本発明は、新規の核酸、及びこれらの核酸によりコードされた核酸結合タンパク質に関する。本発明はまた、これらの核酸またタンパク質を利用した、細胞増殖異常、神経障害、発達障害、自己免疫/炎症性疾患、及び感染症の、診断・治療・予防に関する。本発明は更に、核酸及び核酸結合タンパク質の発現における、外因性化合物の効果についての評価に関する。
多細胞生物は、構造及び機能が著しく異なる多様な細胞型から構成されている。細胞型は遺伝子発現パターンの特徴によって決定され、また、異なった細胞型は発生中に、オーバーラップするが弁別的な一組の遺伝子群を発現する。遺伝子発現の空間的及び時間的な調節は、生物の発達に寄与する、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、及び他のプロセスの制御にとって極めて重要である。更に、遺伝子発現は、細胞外シグナルに応答して調節される。細胞外シグナルは、細胞間伝達を仲介し、様々な細胞型の作用を協調させる。適切な遺伝子調節はまた、細胞を効率よく機能させる。これを確実にするため、その機能が要求される遺伝子群のみが所定の時期に発現される。
転写因子
転写調節タンパク質は、遺伝子発現の制御に必須である。これらのタンパク質の一部は転写因子として機能し、遺伝子の転写を開始、活性化、抑制し、又は終了させる。転写因子は一般に遺伝子のプロモーター、エンハンサー、又は上流調節領域に、配列特異的に結合する(ただし、一部の因子は遺伝子コード領域内又はその下流の調節エレメントに結合する)。転写因子はDNAの特定の領域に単独で結合するか、又は他のアクセサリー因子との複合体として結合する(概説はLewin, B. (1990) Genes IV, Oxford University Press, New York, NY, 及び Cell Press, Cambridge, MA, 554-570ページ)
DNAの二重らせん構造とリピート配列群とがトポロジー的及び化学的な特徴を生み出し、これらの特徴は転写因子によって認識され得る。これらの特徴とは、水素結合の供与基と受容基、疎水性パッチ、主溝と副溝、及び、配列の規則的な繰り返しストレッチ群(ヘリックス内に特有な折れ曲がり群を誘導)である。通常、転写因子が特異的に認識するDNA配列モチーフ群は、約20ヌクレオチドの長さである。複数の、隣接した転写因子結合モチーフ群が遺伝子調節に必要な場合もある。
多くの転写因子はDNAの主溝に結合するαヘリックス又はβシートからなるDNA結合構造モチーフを組み込んでいる。4種の良く特徴付けられたモチーフが、ヘリックス・ターン・ヘリックス、Znフィンガー、ロイシンジッパー、及びヘリックス・ループ・ヘリックスである。これらのモチーフを持つタンパク質は、単独で単量体として作用したり、又は、ホモ二量体やヘテロ二量体を形成したりしてDNAと相互作用する。
ヘリックス・ターン・ヘリックス・モチーフは2つのαヘリックスが短いアミノ酸鎖を介して固定角度で結合したものである。一方のヘリックスが、主溝に結合する。ヘリックス・ターン・ヘリックス・モチーフの1例はホメオボックス・モチーフであり、これはホメオドメイン蛋白質に在る。ホメオドメイン蛋白質は発生期に前後体軸(anterior-posterior body axis)を決めるのに重要であり、動物界全体で保存されている。キイロショウジョウバエのアンテナペディア(Antennapedia)蛋白質及びウルトラバイソラックス(Ultrabithorax)蛋白質は、原型的なホメオドメイン蛋白質である。(Pabo, C.O. 及び R.T. Sauer (1992) Annu. Rev. Biochem. 61:1053-1095)。
マウスHES6は、Hairy/Enhancer-of-split(HES)ファミリの、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子のメンバーである。HES遺伝子は、ノッチ・シグナリングの核内エフェクターとして作用し、数種のNotch標的遺伝子の転写活性を調節する。HES6は全ての神経原基(neurogenic placodes)、その派生物、及び脳内に発現され、これらの部位で、前後軸と背腹軸とに沿ってパターン化される。HES6はまた、胚組織でも発現され、胚組織ではNotchシグナリングは細胞運命の決定を制御する。細胞運命としては例えば、体幹、後根神経節、筋節(myotomes)、及び胸腺がある。肢芽ではHES6は、骨格筋と予定運命の腱に発現される。これは胚の呼吸器、泌尿器及び消化系の上皮細胞でも発現される(Vasiliauskas, D. 及び Stern C.D. (2000) Mech. Dev. 98:133137; Pissarra, L. 他 (2000) Mech Dev 95:275278)。
Znフィンガーモチーフは亜鉛イオンに結合する。このモチーフは一般に、周期的に配置されたシステイン残基とヒスチジン残基からなる約30アミノ酸のタンデムリピート群を持つ。この配列パターンの2例、C2H2とC3HC4(「RING」フィンガー)については既に記載されている(前出のLewin)。Znフィンガータンパク質はそれぞれが1つのαヘリックスと1つの逆平衡βシートを持ち、その近接性とコンフォメーションが亜鉛イオンによって保たれている。DNAとの接触はαヘリックスの前のアルギニン及びαヘリックスの第2、第3及び第6残基によってなされる。Znフィンガーモチーフの変異体の例には、あまり解明されていないシステインリッチモチーフ群があり、これらの変異体モチーフは、亜鉛又は他の金属イオンと結合する。これらの変異体モチーフはヒスチジン残基を持たない場合があり、一般に非反復である。Znフィンガーモチーフは、タンパク質中の各ZnフィンガーのαヘリックスがDNA二重らせんの主溝と接触するような形で、タンパク質内でタンデムアレイ状にリピートしている可能性がある。この、タンパク質とDNAとの間の接触の繰り返しによって、強力且つ特異的なDNA−タンパク質相互作用が起こる。この相互作用の強度及び特異性は、タンパク質内のZnフィンガーモチーフの数によって調節され得る。Znフィンガーは、初めはDNAと直接相互作用する領域としてDNA結合タンパク質群において同定されたが、DNAと結合しない種々のタンパク質にも出現する(Lodish, H.他 (1995) Molecular Cell Biology, Scientific American Books, New York, NY, 447-451ページ)。例えばGalcheva-Gargova, Z. 他(1996, Science 272:1797-1802)はさまざまなサイトカイン受容体と相互作用するZnフィンガータンパク質類を同定している。
C2H2タイプのZnフィンガーシグネチャモチーフには、或る28アミノ酸の配列があり、この配列には、2つの保存されたCys残基、及び2つの保存されたHis残基が、1つのC−2−C−12−H−3−Hタイプのモチーフ内に含まれる。C2H2タイプのモチーフは一般に、多重タンデムリピートで出現する。或るシステインリッチドメインであってモチーフAsp−His−His−Cysを含むドメイン(DHHC−CRD)が、固有サブグループのZnフィンガータンパク質として同定されている。DHHC−CRD領域は、成長と発達とに関与すると思われている。或るDHHC−CRD突然変異体は、Rasの機能欠損を示す。Rasは小さな膜結合型GTP結合タンパク質であり、細胞の成長と分化とを調節する。一方、他のDHHC−CRDタンパク質類は、おそらくRasとは無関係の経路群で機能する(Bartels, D.J. 他(1999) Mol.Cell Biol. 19:6775-6787)。
Znフィンガー転写因子は、しばしば、モジュラー配列モチーフ群を伴う。このモチーフの例は、Kruppel-associated box(KRAB)及びSCANドメインである。例えば、低αリポ蛋白血症(hypoalphalipoproteinemia)感受性遺伝子ZNF202は、1つのSCANボックスと1つのKRABドメイン、それに続く8つのC2H2 Znフィンガーモチーフ群とをコードする(Honer, C. 他 (2001) Biochim. Biophys. Acta 1517: 441-448)。SCANドメインは、高度に保存されたロイシンリッチモチーフであり、約60アミノ酸からなり、Znフィンガー転写因子のアミノ末端に見られる。SCANドメインは、最も多くはC2H2 Znフィンガーモチーフに連結しており、この連結は、それらのカルボキシル末端を通じてなされる。生化学的な結合研究は、SCANドメインを選択的なヘテロ及びホモタイプのオリゴマー化ドメインとして確定している。SCANドメインが媒介するタンパク質複合体は、転写因子の生物学的機能を変調させるよう機能するようである(Schumacher, C. 他(2000) J. Biol. Chem. 275:17173-17179)。
KRAB(Kruppel-associated box)ドメインは、保存されたアミノ酸配列であって約75アミノ酸にまたがる。KRABドメインは、C2H2 Znフィンガーをコードする300〜700種の遺伝子のほぼ3分の1に見られる。KRABドメインは、フィンガーリピートに対してN末端側に見られる。KRABドメインは、一般に2つのエキソンによってコードされる。KRAB−A領域又はボックスが1つのエキソンによってコードされ、KRAB−B領域又はボックスが第2エキソンによってコードされる。KRABドメインの機能は、転写の抑制である。転写抑制を達成するため、KRAB-associated protein-1(1種の転写コリプレッサー)又はKRAB−A相互作用タンパク質のどちらかが動員される。KRABドメインを持つタンパク質類は、発生期に調節的な役割を果たすようである(Williams, A.J. 他 (1999) Mol.Cell Biol.19:8526-8535)。高度に近縁のヒトKRAB Znフィンガー蛋白質群は全ヒト組織で検出し得るが、或るサブグループは、ヒトTリンパ球に高度に発現される(Bellefroid, E.J. 他 (1993) EMBO J. 12:13631374)。ZNF85 KRAB Znフィンガー遺伝子はヒトZNF91ファミリのメンバーであり、正常成人精巣や、精上皮腫(seminoma)や、NT2/D1奇形癌腫細胞株に高度に発現される(Poncelet, D.A. 他 (1998) DNA Cell Biol.17:931943)。
Kruppelタンパク質は、ショウジョウバエの分節化を調節する。ヒトゲノム全体には、このようなタンパク質をコードする約300種の遺伝子がある。事実、Kruppelマルチフィンガー蛋白質類をコードする100種を超える別々のmRNAが(その殆どは新規である)、ヒト胎盤に発見されている。これらの蛋白質の9種にある106フィンガーリピート群の配列群は、高度に相同的である。αヘリカル構造内には、可変性を示す幾つかの位置がある。この可変性がこれらのタンパク質のDNA結合の特異性に影響していることを示唆する研究がある(Bellefroid, E.J.他(1989) DNA 8:377387)。
ZNF143は、ヒトZnフィンガーKruppelファミリ蛋白質のGLIタイプである。ZNF143は、アフリカツメガエルのセレノシステイン(selenocysteine)tRNA遺伝子転写活性化因子(Staf)に対して84%同一である。Stafは、核内低分子RNA(snRNA)及びsnRNAタイプの遺伝子の、RNAポリメラーゼII(Pol II)及びIII(Pol III)による転写の増強に関与すると思われる。Stafはまた、Pol II mRNAプロモーターからの発現を刺激する能力を持つ。ZNF143は、近縁のZNF138及びZNF139と共に、染色体領域7q11.2、7q21.3〜q22.1、及び11p15.3〜p15.4に局在する。これらの領域は、Williams症候群、裂手裂足症(split hand and foot disease: SHFD1)、BeckwithWiedemann症候群にそれぞれ伴う欠失及び/又は転座に関与し、これは、ZNF143遺伝子が発達障害及び悪性疾患に関与することを示唆する。ZNF143 mRNAは、多くの正常な成人組織に発現される。発現組織の例は、白血球、結腸、小腸、卵巣、精巣、前立腺、胸腺、及び脾臓の組織を含む。さらに、マウスのシャペロンをコードするCcta遺伝子はZNF143及びもう1つのStafファミリZnフィンガー転写因子であるZNF76によって調節されている。このことはこれらのRNA及びシャペロン遺伝子が活発な細胞成長中に成熟タンパク質の合成を円滑にするために共調節されていることを示唆している(Tommerup,N. 及び Vissing,H. (1995) Genomics 27: 259264 ;Myslinski, E. 他(1998) J. Biol. Chem. 273:219982006; Kubota, H. 他(2000) J. Biol. Chem. 275:28641-28648)。
C4モチーフは、ホルモン調節されるタンパク質に見られる。C4モチーフは一般に、唯2つのリピートのみを持つ。多数の真核生物タンパク質及びウイルス蛋白質には、1つの保存されたシステインリッチドメインがあり、これは40〜60残基からなり、C3HC4 Znフィンガー又はRINGフィンガーと呼ばれる。このドメインは亜鉛2原子と結合する。また、おそらくタンパク質間相互作用の仲介に関与する。亜鉛ライゲーション系の3次元の「十字(cross-brace)」構造は、RINGドメイン独自のものである。このようなドメイン内のシステイン群の間隔は、C−x(2)−C−x(9〜39)−C−x(1〜3)−H−x(2〜3)−C−x(2)−C−x(4〜48)−C−x(2)−Cである。PHDフィンガーは、或るC4HC3 Znフィンガー様モチーフであって、クロマチンが媒介する転写調節に関与すると思われる核タンパク質に見られる。
GATAタイプの転写因子には1つ又は2つのZnフィンガードメインが含まれ、DNAの、連続したヌクレオチド配列であるGATAを有する領域に特異結合する。NMR研究によると、このZnフィンガーは2つの不規則な逆平衡βシートと1つのαヘリックスとがあり、その後にフィンガーのC末端に至る長いループを持っている(Ominchinski, J.G. (1993) Science 261:438446)。このヘリックスと、2枚のβシートを接続するループとがDNAの主溝と接触し、一方、C末端部(結合の特性を決める部位)は、副溝内に巻き付きながら入り込む(wraps around into the minor groove)。
LIMモチーフには約60アミノ酸残基があり、7つの保存されたシステイン残基と1つのヒスチジンとが、1つのコンセンサス配列内に含まれる(Schmeichel, K.L. 及び Beckerle, M.C. (1994) Cell 79:211-219)。LIMファミリには、発達、分化、及び細胞成長に関与し得る、転写因子と細胞骨格タンパク質とを含む。一例のアクチン結合LIMタンパク質は、細胞骨格と細胞形態形成との調節において役割を果たし得る(Roof, D.J. 他(1997) J. Cell. Biol.138:575-588)。アクチン結合LIMタンパク質のN末端ドメインには、4つの二重Znフィンガーモチーフ群があり、LIMコンセンサス配列を有する。アクチン結合LIMタンパク質のC末端ドメインは、既知のアクチン結合タンパク質(例えばデマチン:dematin及びビリン:villin)との配列類似性を示す。アクチン結合LIMタンパク質は、Fアクチンと結合する。この結合は、デマチン様C末端ドメインを通じて行う。LIMドメインは、他のLIM結合タンパク質とのタンパク質間相互作用を仲介するように思われる。
骨髄性細胞の発達は、組織特異的な転写因子群によって制御される。骨髄性Znフィンガー蛋白質(MZF)としては、MZF−1とMZF−2とがある。MZF−1は好中性顆粒球の発生の調節において機能する。或るネズミ相同体MZF−2は、骨髄性細胞群、特に好中球系にコミットされた細胞に発現される。MZF−2はGCSFによって下方調節され、好中球の発生において独自の機能を持っているらしい(Murai, K. 他 (1997) Genes Cells 2:581591)。
ロイシンジッパーモチーフは両親媒性αヘリックスを形成できるロイシンリッチなアミノ酸領域からなる。この構造は、2つのロイシンジッパー蛋白質の二量体化のための基盤を提供する。ロイシンジッパーに隣接する領域は通常は塩基性であり、タンパク質二量体化すると、主溝に結合するのに最適であるように配置される。このようなモチーフを持つタンパク質を総称してbZIP転写因子と呼ぶ。ロイシンジッパーモチーフは癌原遺伝子であるFosとJunとに見られる。FosとJunとはヘテロ二量体転写因子であるAP1を有する。AP1は、細胞成長と、細胞系統の決定とに関わる(Papavassiliou, A.G. (1995) N. Engl. J. Med. 332:45-47)。
マウスのkreisler(kr)突然変異は、尾側後脳(caudal hindbrain)における分節化異常(segmentation abnormalities)と、内耳発達の欠損とを生じる。kr cDNAは、或る塩基性ドメイン‐ロイシンジッパー(bZIP)転写因子をコードする。この転写因子では、全ての既知のbZIPファミリメンバーのDNA結合ドメイン内に保存された1つのアスパラギン残基の代わりにセリンが置き換わっている。krの同一性、発現、及び突然変異表現型は、軸パターン形成(axial patterning)における初期の役割を標示する他、後脳と耳との発達を支配する分子機序と発生学的機序との識見を提供する(Cordes, S.P. 及び Barsh, G.S. (1994) Cell 79:10251034)。
ヘリックス・ループ・ヘリックスモチーフ(HLH)は短いαヘリックスがループを通じて長いαヘリックスにつながったものである。このループは柔軟なので、2本のヘリックスは、互いに対して折れ曲がることができ、DNAに結合できる。転写因子であるMycは、原型的なHLHモチーフを持つ。
NF-κ-B/Relシグネチャは、或るファミリの真核細胞転写因子を規定する。この転写因子は、発癌や、胚の発生、分化、及び免疫応答に関与する。Rel相同性ドメイン(RHD)を持つ殆どの転写因子は、二量体として、或るコンセンサスDNA配列モチーフであるκ−Bと結合する。Relファミリのメンバーは、高度に保存された300アミノ酸ドメインであるRel相同性ドメインを共有する。特徴的なRel C末端ドメインは、遺伝子活性化及び細胞質へのアンカリングの機能に関わる。RHDドメインを含むことが知られているタンパク質の例としては、脊椎動物の核因子NFkappaκ−B(DNA結合サブユニットと転写因子p65のヘテロダイマー)、哺乳動物の転写因子RelB及び脊椎動物のプロトオンコジーンc−rel(分化とリンパ球産生にかかわるタンパク質)がある(Kabrun, N. 及びEnrietto, P.J. (1994) Semin. Cancer Biol. 5:103112)。
或るDNA結合モチーフであるARID(ATリッチ相互作用ドメイン)は、或る進化的に保存されたファミリのタンパク質を特徴づける。約100残基のARID配列は、細胞成長、分化、及び組織特異的遺伝子発現の調節への関与が強く示唆される一連のタンパク質に存在する。ARIDタンパク質の例には、Bright(B細胞特異的遺伝子発現の調節因子)、dead ringer(発達に関与)、及びMRF2(サイトメガロウイルスエンハンサーからの発現を抑制)を含む。(Dallas, P.B. 他 (2000) Mol.Cell Biol. 20:31373146)。
ELM2(Egl−27及びMTA1 相同性2)ドメインは、腫瘍転移関連タンパク質MTA1、及びタンパク質ER1に見られる。線虫(Caenorhabditis elegans)遺伝子egl 27は、胚パターン形成に必要である。ヒトMTA1遺伝子は転移性癌で発現が上昇し、この遺伝子は、ヒストン脱アセチル酵素活性と、ヌクレオソームのリモデリング活性とを持つ或るタンパク質複合体の成分である(Solari, F. 他(1999) Development 126:2483-2494)。ELM2ドメインは通常、myb様DNA結合ドメインのN末端に見られる。ELM2はまた、或るARID DNAに会合しているのが見られる。
LEF−1は、複数のタンパク質が高次の核タンパク質複合体にアセンブリするのを促進することによってT細胞受容体α(TCRα)エンハンサーの調節に関与している転写因子である。LEF−1の機能は部分的にHMGドメインに依存する。このドメインは(他のエンハンサー結合タンパク質が特定の状況にあるときにのみ転写を刺激する)活性化ドメイン及びDNAヘリックスに鋭角的な曲がりを引き起こす。ALYは遍在的に発現されるLEF−1相互作用タンパク質であり、LEF−1とAML−1(急性骨髄白血病1)の活性化ドメインと特異的に結合する核タンパク質である。AML−1はTCRαエンハンサー複合体のもう1つのタンパク質成分である。ALYはLEF−1とAMLタンパク質の両方のDNA結合を増加させる。ALYの過剰発現は形質移入非リンパHeLa細胞のTCRαエンハンサー複合体の活性を刺激し、アンチセンス・オリゴヌクレオチドでALYを下方調節するとT細胞中のTCRαエンハンサーの活性がなくなる。LEF−1と同様に、ALYはTCRαエンハンサーの存在下で転写を刺激することができるが、異種DNA結合ドメインを通じてDNAにつながれている場合はそうでないようである。ALYはTCRαエンハンサー複合体内の複数のタンパク質の間の機能的な協力を促進することによって、状況依存的に転写活性を仲介すると示唆する研究がある(Bruhn, L.他(1997) Genes Dev. 11:640-653)。
SL3−3エンハンサー因子2(SEF2)という名前の核タンパク質ファミリは、マウスの白血病ウイルスSL3−3のエンハンサー中の糖質コルチコイド応答エレメント内のEphrussiボックス様モチーフと相互作用する。DNAの突然変異はさまざまな細胞株の基礎的なエンハンサー活性(basal enhancer activity)を減少させた。SEF2結合のために重要なヌクレオチドはほとんどのタイプのCレトロウイルスで保存されている。形成されるSEF2−DNA複合体の組み合わせとその量はさまざまな細胞タイプにおいて異なっている。SEF2結合配列と特異的に相互作用するタンパク質SEF2−1Aをコードする或るcDNAがヒトの胸腺細胞で単離されている。大腸菌で発現される組換えSER2−1Aのヌクレオチド配列特異性は核SEF2タンパク質のうちの1つのそれと対応する(Corneliussen, B. 他J(1991) J. Virol. 65:6084-6093)。
イロコイ(Iroquois:Irx)遺伝子ファミリは線虫、昆虫及び脊椎動物に見られる。Irx遺伝子は、各々が3つの遺伝子からなる1つ又は2つのゲノムクラスタとして存在するのが普通であり、特徴的なホメオドメインをもつ転写制御因子をコードする。Irx遺伝子は発生の早い時期に機能し、身体のさまざまな領域の同一性を指定する。ショウジョウバエと脊椎動物両者の発達の後期において、Irx遺伝子はそれらの領域を更に小さなドメインに細分画するために再び機能する(イロコイ遺伝子の概説としてはCavodeassi, F. 他 (2001) Development 128:28472855を参照)。たとえば、マウス及びヒトのIrx4タンパク質は83%保存されていて、マウス及びヒトの63−aaホメオドメインはショウジョウバエのイロコイパターン遺伝子と93%以上の同一性を有している。Irx4転写物は、心室で主に発現される。ホメオボックス遺伝子Irx4は心臓の発生中に心室の分化を仲介する(Bruneau, B.G. 他 (2000) Dev. Biol. 217:26677)。
ヒスチジントライアッド(HIT)タンパク質は、2つの相等しいプリンヌクレオチド結合部位を形成する、独特な二量体の10ストランドハーフバレル構造内の残基を共有している。すべての形態の生物に見出されるHint(ヒスチジントライアッドヌクレオチド結合タンパク質)関連タンパク質と、動物と真菌に見出される脆弱ヒスチジントライアッド(Fhit:fragile histidine triad)関連タンパク質は、HITスーパーファミリの2つの主要な分枝を代表する。Fhitの相同体はジアデノシンポリリン酸に結合し、切断する。Fhit−Ap(n)A複合体は上皮組織のプロアポトーシス腫瘍抑制経路で機能しているように見える(Brenner C. 他 (1999) J. Cell Physiol.181:179187)。
殆どの転写因子には特徴的なDNA結合モチーフがあり、上記モチーフ群の種々の変異体と新規のモチーフ群とが、これまでに、また現在も特徴付けられている(Faisst, S. 及び S. Meyer (1992) Nucleic Acids Res. 20:3-26)。
クロマチン結合タンパク質
核内で、DNAはクロマチンに詰められる。クロマチンはコンパクトな組織であり、DNAの、転写因子へのアクセス可能性を制限し、遺伝子調節において主要な役割を果たす(前出のLewin,409−410ページ)。クロマチンのコンパクトな構造は、クロマチン結合タンパク質によって決定され影響される。このようなタンパク質としては、ヒストン、高移動度グループ(HMG)タンパク質、及びクロモドメイン蛋白質がある。5種のクラスのヒストン、H1、H2A、H2B、H3及びH4があり、全ては高度に塩基性の低分子量タンパク質である。クロマチンの基盤ユニットであるヌクレオソームには、200塩基対のDNAと、H2A、H2B、H3及びH4それぞれ2つずつのコピーとがある。H1は、隣接ヌクレオソーム群を連結する。HMGタンパク質は、低分子量の非ヒストン蛋白質であり、DNAを巻き戻すことと、一本鎖DNAを安定させることにおいて役割を果たすと思われる。クロモドメイン蛋白質は、高度にコンパクト化されたヘテロクロマチンの形成において重要な役割を果たし、ヘテロクロマチンは転写的にはサイレント(不活動)である。
酵母のSWI/SNF複合体は、転写のクロマチン依存性抑制を妨害することによって転写アクチベータの機能を促進する。哺乳動物においては、SWI/SNF複合体はBRG1関連因子(BAF)として知られる9〜12のタンパク質(47〜250kD)からなる複数の形態で存在する。BRG1関連因子(BAF)はSWI2SNF2相同体を含むが、この相同体はヒトの免疫不全ウイルスインテグラーゼと相互作用して活性化させ、また酵母のSNF5遺伝子と相同である(Wang, W. 他(1996) Genes Dev. 10:21172130)。
遺伝子調節に関連する疾患及び障害
ヒトにおける腫瘍疾患(neoplastic disorders)の多くは、不適切な遺伝子発現によって起こり得る。悪性の細胞成長は、腫瘍促進遺伝子の過剰な発現又は、腫瘍抑制遺伝子の不十分な発現によって起こり得る(Cleary, M. L. (1992) Cancer Surv. 15:89-104)。Znフィンガー型の転写調節因子WT1は、ウィルムス腫瘍を持つ子供では不活性化されている腫瘍抑制タンパク質である。大細胞リンパ腫で重要な役割を果たすオンコジーンbcl−6もZnフィンガー蛋白質である(Papavassiliou, A.G. (1995) N. Engl. J. Med. 332:45-47)。染色体転座によっても、或る遺伝子のコード配列を別の無関係遺伝子の調節領域と融合させる、キメラ座(chimeric loci)が生成され得る。このような編成は、おそらく不適切な遺伝子転写を引き起こし、悪性腫瘍を引き起こす可能性もある。例えばバーキット型リンパ腫では、転写因子Mycが免疫グロブリン重鎖遺伝子座に転座され、Myc発現を大きく増強し、急速な細胞成長を生じて白血病をもたらす(Latchman, D. S. (1996) N. Engl. J. Med. 334:28-33)。
更に、免疫系は、細胞防御機構の漸進的な選択、増幅、及び動員を調整するイベントのカスケードを活性化することにより、感染や外傷に応答する。遺伝子の活性化及び抑制の複雑かつバランスの取れたプログラムが、このプロセスに関与している。しかしながら、遺伝子発現の不適切或いは不十分な調節によって起こる免疫系の活動過多は、組織や器官に相当な損傷を与え得る。この損傷は、関節炎、アレルゲン、心臓発作、卒中、及び感染に関連する免疫応答についての文献に詳しく記載されている(Isselbacher他、Harrison's Principles of Internal Medicine, 第13版, McGraw Hill, Inc. 及び Teton Data Systems Software, 1996)。自己免疫性多腺性内分泌不全症カンジダ症外胚葉性ジストロフィー(APECED)の原因遺伝子が最近単離され、2つのPHDタイプZnフィンガーモチーフを持つ或るタンパク質をコードすることが見出された(Bjorses, P. 他(1998) Hum. Mol. Genet. 7:1547-1553)。
更に、多細胞生物の産生は発生の適切な段階における細胞分化の誘導及び調整に基づいている。このプロセスの中心は、全身の細胞及び組織に固有性を与える差次的な遺伝子発現である。発生中に遺伝子発現の調節に失敗すると、発生/発達障害が起こり得る。Znフィンガー型転写調節因子の突然変異に起因するヒトの発達障害には以下が含まれる。泌尿生殖器の発生異常(WT1に関連);Greig頭蓋・多合指趾症候群(cephalopolysyndactyly)、Pallister-Hall症候群、及び軸後性多指症(postaxial polydactyly)タイプA(GLI3に関連);並びに、肛門、腎臓、手足及び耳の異常を特徴とするTownes-Brocks症候群(SALL1関連)である(Engelkamp, D. 及び van Heyningen, V. (1996) Curr. Opin. Genet. Dev. 6:334-342; Kohlhase, J. 他(1999) Am. J. Hum. Genet. 64:435-445)。
ヒトの急性白血病は、染色体領域11q23に位置するALL−1遺伝子をさまざまなヒト染色体上に位置する一連のパートナー遺伝子に融合する染色体相互転座を伴っている。融合された遺伝子はキメラタンパク質をコードする。AF17遺伝子は1093アミノ酸残基のタンパク質をコードする。このタンパク質は融合点の3‘の位置にロイシンジッパー二量体化モチーフを含み、またタンパク質Br140(peregrin)内のドメインに相同性を示す、システインリッチドメインをN末端に含んでいる(Prasad R. 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 91:8107-8111)。
核酸の合成
ポリメラーゼ
DNAとRNAとの複製は、細胞の複製と機能とにとって死活的なプロセスである。DNAとRNAとの複製を仲介する酵素がそれぞれDNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼであり、この仲介は「鋳型取り(templating)」プロセスで行う。このプロセスでは、DNA又はRNAストランドのヌクレオチド配列が、相補的塩基対合によってDNA又はRNAどちらかの相補的な核酸配列にコピーされる。しかし、この2つのプロセスには、根本的な相違がある。
DNAポリメラーゼが触媒する反応は、或るポリヌクレオチド鎖(プライマー鎖)の3’−OH末端へのデオキシリボヌクレオチドの逐次付加であり、このプライマー鎖は第二の(鋳型)ストランドと対合される。新たなDNAストランドは、したがって5’から3’方向へ成長する(Alberts, B. 他 (1994) The Molecular Biology of the Cell, Garland Publishing Inc., New York, NY, 251-254ページ)。この重合反応の基質は対応するデオキシヌクレオチド三リン酸であり、ポリメラーゼに認識されるためには、鋳型ストランド上の正しいヌクレオチドと塩基対合する必要がある。DNAは二重らせんとして存在するので、二本鎖のそれぞれが、新たな相補的ストランドの形成のための鋳型となり得る。したがって、***中の細胞の2個の娘細胞のそれぞれが、1本は古く1本は新しいストランドを持つ新たなDNA二重らせんを受け継ぐ。したがって、DNAは、DNAポリメラーゼによって「半保存的に」複製されると言われる。新たなDNAの合成に加え、DNAポリメラーゼはまた、損傷したDNAの修復にも関わる。これは、下記の「リガーゼ」で述べる。
DNAポリメラーゼと対照的に、RNAポリメラーゼは1本のDNA鋳型ストランドを用いてDNAをRNAに「転写」し、これにはリボヌクレオチド三リン酸を基質として用いる。DNA重合と同様、RNA重合は、5’から3’方向に、リボヌクレオシド一リン酸の、成長するRNA鎖の3’−OH末端への付加によって進む。DNA転写はメッセンジャーRNA(mRNA)を産生し、mRNAはタンパク質合成のための情報を運ぶ。DNA転写はまた、転移RNA、リボソームRNAや、構造的又は触媒的な機能を持つ他のRNAをも産生する。真核細胞では、3種の別々のRNAポリメラーゼが、3タイプのRNAを合成する(Alberts、前出 367-368ページ)。RNAポリメラーゼIは大きなリボソームRNAを作り、RNAポリメラーゼIIはタンパク質へと翻訳されるmRNAを作り、RNAポリメラーゼIIIは、種々の小さな安定したRNA(5SリボソームRNAや転移RNA(tRNA)等)を作る。どの場合も、RNA合成の開始は、RNAポリメラーゼの、DNA上のプロモーター領域への結合によってなされ、合成の開始は、プロモーター内の開始部位で起こる。合成の完了は、DNA内の停止(終了)シグナルでなされ、ここでポリメラーゼと完成したRNA鎖とが解放される。
リガーゼ
DNA修復のプロセスによって、偶発的な塩基変化(原因は例えば酸化損傷、加水分解的攻撃、DNAの無秩序なメチル化など)が、DNAの複製又は転写が起きる前に修正される。DNA修復プロセスの効率が良いので、偶発的な塩基変化の1000分の1未満のみが突然変異を起こす(Alberts、前出245-249ページ)。殆どのタイプのDNA修復に共通の3つのステップは、(1)損傷又は変容した塩基又はヌクレオチドの、DNAヌクレアーゼによる切除。(2)切除されたヌクレオチドが残したギャップへの、正しいヌクレオチドの挿入。これはDNAポリメラーゼが、相補的ストランドを鋳型として用いて行う。(3)挿入されたヌクレオチド(群)と既存DNAストランドとの間に残った切れ目の、DNAリガーゼによる埋め合わせ(sealing)、である。最後の反応において、DNAリガーゼはATP加水分解からのエネルギーを用い、切れ目の入ったホスホジエステル結合の5’末端を活性化した後、DNAストランドの3’−OHとの新たな結合を形成する。ブルーム症候群は遺伝性のヒト疾患であるが、この患者はこのDNAライゲーションが部分的に欠損しているため、癌の発症の増加を示す(Alberts、前出247ページ)。
ヌクレアーゼ
ヌクレアーゼ酵素には、DNAを加水分解するDNA分解酵素と、RNAを加水分解するRNA分解酵素とがある。2種のヌクレアーゼは、核酸代謝において別々の目的で働く。ヌクレアーゼは、隣接するヌクレオチド間のホスホジエステル結合を加水分解する。エンドヌクレアーゼは内部の位置で加水分解し、エキソヌクレアーゼは3’又は5’末端のヌクレオチド位置で加水分解する。例えばDNAポリメラーゼにおける或るDNAエキソヌクレアーゼ活性は、ポリメラーゼによって成長するDNAストランドの3’−OH末端に付着されたヌクレオチドの内、不適切に対合したヌクレオチドを除去するよう働くので、「校正」機能を提供する。上記したように、DNAエンドヌクレアーゼ活性は、DNA修復プロセスの切除ステップに関わる。
RNA分解酵素(RNase)もまた、種々の機能を提供する。例えばRNase Pはリボ核タンパク質酵素であり、tRNA前駆体群の5’末端の切断を、それらの成熟プロセスの一部として行う。RNase Hは、或るRNA/DNAハイブリッドのRNAストランドを消化する。このようなハイブリッドはレトロウイルスが侵入した細胞に生じ、RNase Hは、レトロウイルス複製サイクルにおける重要な酵素である。膵臓RNA分解酵素は膵臓によって腸内に分泌され、摂取した食物の中のRNAを加水分解する。血清と細胞抽出物とにおけるRNA分解酵素活性の上昇は、種々の癌や感染疾患で見られる(Schein, C.H. (1997) Nat. Biotechnol. 15:529-536)。RNA分解酵素活性の調節が、腫瘍血管新生、アレルギー反応、ウイルスの感染及び複製、並びに真菌感染を制御する手段として研究されている。
核酸の修飾
メチラーゼ
特定ヌクレオチドのメチル化はDNA、RNA双方で起こり、この2種の高分子において別々の機能を提供する。DNAでシトシン残基のメチル化は5−メチルシトシンを形成し、これは、DNA二重らせん内で互いに塩基対合したCG配列群内で特異的に起こる。メチル化のこのパターンは、DNA複製時に世代間で受け渡される。これを行う酵素は「維持メチラーゼ」と呼ばれ、既にメチル化されたCG配列と塩基対合したCG配列上で優先的に作用する。このようなメチル化は、活性遺伝子と非活性遺伝子との区別を、遺伝子を「オンにする(turn on)」調節タンパク質の結合を防ぐ一方、遺伝子を不活化するタンパク質の結合を許すことによって行うようである(Alberts、前出 448-451ページ)。RNA代謝では、「tRNAメチラーゼ」がtRNAにおける幾つかのヌクレオチド修飾の1つを起こす。この修飾は、この分子のコンフォメーションと塩基対合とに影響し、適切なmRNAコドンの、特異的tRNA群による認識を促進する。主なメチル化パターンとしてはグアニン残基のジメチル化があり、これはN,N−ジメチルグアニンを形成する。
ヘリカーゼ及び一本鎖結合タンパク質
ヘリカーゼ酵素は、DNA、RNA双方の二重らせん構造を不安定化し、巻き戻す。DNA複製は2本のストランドでほぼ同時に起こるので、2本のストランドは先ず分離して複製「フォーク」を産生し、DNAポリメラーゼが作用できるようにする必要がある。2種の複製タンパク質がこのプロセスに寄与する。DNAヘリカーゼと、一本鎖結合タンパク質とである。DNAヘリカーゼは、ATPを加水分解し、そのエネルギーを用いてDNAストランドを分離させる。一本鎖結合タンパク質(SSB)が次に、露出したDNAストランドに結合するが、塩基を覆いはせず、DNAポリメラーゼによる鋳型取りのためにそれらを一時的に安定化する(Alberts、前出 255-256ページ)。
RNAヘリカーゼは、RNAのコンフォメーションと2次構造とを変容させ調節する。DNAヘリカーゼと同様、RNAヘリカーゼは、ATP加水分解に由来するエネルギーを利用し、RNA二重鎖を不安定化し巻き戻す。RNAヘリカーゼの最も良く特徴付けられ偏在するファミリはDEADボックスファミリであり、その名は、保存されたBタイプATP結合モチーフに由来する。このモチーフは、このファミリのタンパク質にとって特徴的である。40種を超すDEADボックスヘリカーゼが、細菌、昆虫、酵母、両生類、哺乳類、及び植物に及ぶ多様な生物において同定されている。DEADボックスヘリカーゼは、多様なプロセスにおいて機能する。そのプロセスとしては例えば翻訳開始、スプライシング、リボソームの集合、及び、RNAの編集、輸送、安定性がある。これらのRNAヘリカーゼには、リボソームRNAプロセッシングに関与する酵母Drs1タンパク質、RNA翻訳の阻害に不可欠な酵母TIF1とTIF2及び哺乳動物eIF−4A、細胞成長と分化を調節するヒトp68抗原が含まれる(Ripmaster, T.L.他. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11131-11135; Chang, T.-H. 他(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1571-1575)。これらのRNAヘリカーゼは、強い配列相同性を、約420アミノ酸のストレッチにわたり示す。これらの保存した配列に含まれるのは、ATP結合タンパク質のAモチーフのためのコンセンサス配列、ATPase活性を関連する「DEAD box」配列、実際のヘリカーゼが解かれた領域と関連する配列SAT、RNA結合とATP加水分解に求められるオクタペプチドコンセンサス配列である(Pause, A. 他(1993) Mol.Cell Biol.13:6789-6798)。これらの保存された領域の外側の差は、各タンパク質の機能役割の差を反映すると思われる(Chang, T.-H.他(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1571-1575)。
数種のDEADボックスヘリカーゼは、***形成と胚形成とにおいて、組織特異的及びステージ特異的な役割を果たす。DEAD-box 1タンパク質(DDX1)の過剰発現は、神経芽細胞腫(Nb)と網膜芽腫(Rb)腫瘍の進行に役割を果たし得る(Godbout, R. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:21161-21168)。これらの観察の示唆するところでは、DDX1は、腫瘍進行の促進又は増強を、癌細胞内のRNAの正常な二次構造と発現レベルとを改変することによって行う。別のDEADボックスヘリカーゼ群は、腫瘍形成に直接又は間接的に関与すると思われる(前出のGodboutで考察されている)。例えばネズミp68は紫外線で誘発した腫瘍において突然変異し、ヒトDDX6は、B細胞リンパ腫に関連する或る染色体切断点(chromosomal breakpoint)に位置する。同様に、DDX10とNUP98(1種の核膜孔タンパク質:nucleoporin)とからなるキメラ蛋白質は、数種の骨髄性悪性腫瘍の病原に関与するようである。
トポイソメラーゼ
DNAストランドを複製前に分離する他に、2本のストランドは、DNAヘリカーゼによる分離の前に、互いから「巻き戻す」必要がある。この機能を行うタンパク質は、DNAトポイソメラーゼとして知られる。DNAトポイソメラーゼは、可逆的ヌクレアーゼとして効果的に作用してDNAストランド内のホスホジエステラーゼ結合を加水分解し、二本鎖を互いに対して自由に回転できるようにしてヘリックスを巻き戻した後、二本鎖の間の元のホスホジエステル結合を再結合させる。トポイソメラーゼは、転写、複製、クロマチン形成、組換え、及び染色体分離、によって生じたDNAのトポロジー的再編成を担う必須酵素である。DNAへの高次らせんコイルの導入は、進行型酵素(processive enzyme)(例えばRNAポリメラーゼ)の通過によって、又は、ヘリカーゼによるDNAストランドの複製前の分離によってなされる。DNAの合成、貯蔵、修復のプロセス中に、結び目(knotting)と連環(concatenation)とが生じ得る。全てのトポイソメラーゼの働きは、DNAのリボース‐リン酸主鎖内のホスホジエステル結合を壊して行う。この酵素上の或る触媒チロシン残基が、切れやすいホスホジエステル結合に求核攻撃することによって反応中間体を生じる。この中間体では、共有結合が、この酵素と、壊れたストランドの1端との間に形成される。まれに起こる行き止まり(dead-end)のトポイソメラーゼI型DNA中間物中のこの結合を加水分解することによりDNA修復においてチロシンDNAホスホジエステラーゼは機能する(Pouliot, J.J. 他.(1999) Science 286:552-555)。
2タイプのDNAトポイソメラーゼ、タイプIとタイプIIとがある。タイプIトポイソメラーゼは単量体として働いてDNAの一本鎖に切れ目を作る。一方、タイプIIトポイソメラーゼはホモ二量体として働き、二本鎖の双方を切断する。DNAトポイソメラーゼIは、DNAヘリックス内に一本鎖の切れ目を生じることによって、ヘリックスの二本鎖が、反対のストランドの中の、残るホスホジエステル結合を軸に回転できるようにする。DNAトポイソメラーゼIはDNAヘリックスの二本鎖の双方に一時的な切れ目を作り、ここで二本の二重らせんが互いに交差する。このトポイソメラーゼIIは、2つの連環した環状DNAを、効果的に分離できる(Alberts、前出260-262ページ)。タイプIIトポイソメラーゼは、真核生物では増殖する細胞(癌細胞など)にほとんど限られている。このためトポイソメラーゼIIは、抗癌剤の標的である。トポイソメラーゼIIは、多剤耐性(MDR)に関係すると思われている。その理由は、この酵素がDNA結合剤(ドキソルビシン:doxorubicinやビンクリスチン:vincristineなど)によるDNA損傷の修復を助けると思われるからである。
トポイソメラーゼIファミリには、トポイソメラーゼI(TopoI)とトポイソメラーゼIII(TopoIII)とを含む。ヒトのトポイソメラーゼIの結晶構造が示唆するところでは、無傷DNAストランドを軸とした回転を、この酵素が部分的に制御する。この「制御された回転」モデルにおいて、DNA−タンパク質相互作用は回転を限定するが、それはDNAのねじり鎖によって促進される(Stewart, L. 他. (1998) Science 379:1534-1541)。構造的にはTopoIは、その活性部位領域内の触媒チロシン残基と、多数の他の保存された残基で認識できる。TopoIは、転写時に機能すると思われる。2種のTopoIIIがヒトでは既知であり、これらは原核生物トポイソメラーゼに相同で、保存されたチロシンと、このファミリに特異的な活性部位シグネチャとを持つ。TopoIIIは、減数***組換え(meiotic recombination)において役割を果たすことが示唆されている。マウスのTopoIIIは精巣組織で高度に発現する。またパキテン期の細胞数の増加と共に発現は増大する(Seki, T.他(1998) J. Biol. Chem. 273:28553-28556)。
トポイソメラーゼIIファミリには、2種のイソ酵素(IIα及びIIβ)を含み、2種は別々の遺伝子がコードする。TopoIIは二本鎖DNAの切断を、再現性のある非無作為の方法で優先的に、或るATリッチ領域で行うが、切断部位選択性の原理は未知である。構造上はTopoIIには4つのドメインがある。その最初の2つは構造的に類似し、おそらく真核生物TopoIの類似ドメインとは遠い相同性を持つ。第二ドメインには触媒チロシンと、高度に保存されたペンタペプチドとを持つ。IIαイソフォームは、染色体分離時にDNAを解くこと(unlinking)に関与するようである。IIαを発現するがIIβを発現しない細胞株は、IIβが細胞プロセスに非必須であることを示唆するが、IIβノックアウトマウスは、神経発生における不全のため周産期に死亡した。後期発達事象(神経発生)で主に発生する主要な異常は、II・は有糸***ではなくむしろDNA修復中に必要であることを示唆する(Yang, X. 他(2000) Science 287:131-134)。
トポイソメラーゼは多数の病態に関わると思われており、トポイソメラーゼ毒は、数種のヒト悪性腫瘍癌に有効な抗腫瘍薬であることが示されている。TopoIはファンコニ貧血(Fanconi's anemia)では誤った場所に局在する。また、この疾患に見られる染色体切断に関わると思われる(Wunder, E. (1984) Hum. Genet. 68:276281)。毛細血管拡張性運動失調(A−T)細胞での短縮されたTopoIIIの過剰発現は、部分的にA−T表現型を抑制するが、これはおそらく優性阻害機序(dominant negative mechanism)による。このことはTopoIIIがA−Tで調節解除されることを示唆する(Fritz, E. 他.(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4538-4542)。TopoIIIはまた、ブルーム症候群(Bloom's Syndrome)遺伝子産物と相互作用する。また、腫瘍抑制因子としての役割を持つことを示唆されている(Wu, L. 他 (2000) J. Biol. Chem. 275:9636-9644)。異常なTopoII活性は、しばしば癌や、増加した癌リスクを伴う。著しく低下させたTopoII活性は、すべてではないが或るA−T細胞株に見出される(Mohamed, R. 他 (1987) Biochem. Biophys. Res. Commun. 149:233-238)。一方、TopoIIは、DNAの分断を、A−T遺伝子(ATM)の領域で行い得る。ATMは、全てのDNA損傷応答性細胞周期チェックポイントを制御する(Kaufmann, W.K. (1998) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 217:327-334)。トポイソメラーゼがDNAを分断する能力は、抗腫瘍薬の基礎として用いられている。トポイソメラーゼ毒は、デッドエンドの共有結合DNA−酵素複合体の細胞内の数を増すことによって作用し、最終的には細胞死経路の引き金となる(Fortune, J.M. 及び N. Osheroff (2000) Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 64:221-253; Guichard, S.M. 及び M.K. Danks (1999) Curr. Opin. Oncol. 11:482-489)。TopoIに対する抗体は全身性強皮症(systemic sclerosis)患者の血清中に見られ、この抗体のレベルは、この疾患に関与する肺のマーカーとして利用できそうである(Diot, E. 他 (1999) Chest 116:715-720)。最後に、ヒトのTopoIのDNA結合領域は、遺伝子治療用のDNA送達伝播体として用いられている(Chen, T.Y. 他 (2000) Appl. Microbiol. Biotechnol. 53:558-567)。
リコンビナーゼ
遺伝子組換えは、或る生物のゲノム内でのDNA配列の再編成プロセスであり、環境の変化に応じたその生物の遺伝子変異を提供する。DNA組換えによって、或る個体のゲノム内にある遺伝子の特定の組み合わせにおける変異が可能になり、これらの遺伝子の発現の時期とレベルとにおける変異も可能である(前出のAlberts、263-273ページを参照。)2種の広範なクラスの遺伝子組換え(普遍的組換えと部位特異的組換え)が広く認識されている。普遍的組換えでは、任意の相同的な1対のDNA配列間の遺伝子交換を伴う。これらの配列の位置は通常、同じ染色体の2つのコピー上にある。このプロセスを補助する酵素であるリコンビナーゼは、DNA二重鎖の一方のストランドに幾分無作為的に「ニック(切れ目)を入れ」、他の二重鎖にある相補的ストランドとの交換を可能にする。このプロセスは、通常は染色体内の遺伝子の編成を変えない。部位特異的組換えでは、リコンビナーゼは組み換える分子の一方又は双方にある特定のヌクレオチド配列を認識する。塩基対合はこの形の組み換えには関与しないので、組み換える分子の間のDNA相同性は不要である。普遍的組換えとは異なり、部位特異的組み換えは、染色体内のヌクレオチド配列群の相対位置を改変できる。
RNA代謝
リボ核酸(RNA)は直鎖の一本鎖重合体である(4種のヌクレオチドであるATP、CTP、UTP、及びGTPからなる)。殆どの生物では、RNAの転写は、デオキシリボ核酸(DNA)のコピーとしてなされ、DNAがその生物の遺伝子材料である。レトロウイルスでは、DNAでなくRNAが遺伝子材料として働く。遺伝子材料のRNAコピーは、タンパク質をコードするか、もしくは生物内で種々の構造的、触媒的、又は調節的な役割を果たす。RNAの分類は、その細胞内局在と機能とに基づく。メッセンジャーRNA(mRNA)は、ポリペプチドをコードする。リボソームRNA(rRNA)は、リボソーム蛋白質と組み合わされてリボソームとなる。リボソームは細胞質粒子であり、mRNAをポリペプチドへ翻訳する。転移RNA(tRNA)はサイトゾルのアダプター分子であり、mRNA翻訳における機能はmRNAコドンと、そのコドンに適合するアミノ酸との双方の認識である。ヘテロ核RNA(hnRNA)としては、mRNA前駆体と、他の種々のサイズの核内RNAとを含む。核内低分子RNA(snRNA)は核内スプライセオソーム複合体の一部である。この複合体は、mRNA前駆体内に介在する非コード配列(イントロン)群を除去し、エキソン群を再結合する。
タンパク質は、DNAからのRNAの転写や、RNAプロセシング、及び、タンパク質へのmRNAの翻訳の際に、RNAと会合する。タンパク質はまた、RNAが構造的、触媒的、又は調節的な目的で利用される際に、RNAと会合する。
RNAプロセシング
リボソームRNA(rRNA)は、リボソーム蛋白質と組み合わされてリボソームとなる。リボソームは細胞質粒子であり、メッセンジャーRNA(mRNA)をポリペプチドへ翻訳する。真核生物リボソームは60S(大)サブユニットと40S(小)サブユニットとからなり、両ユニットが共になって80Sリボソームを形成する。18S、28S、5S、及び5.8SのrRNAに加え、リボソームには生物の種類によって50から80種を超す別々のリボソーム蛋白質が含まれる。リボソーム蛋白質の分類は、それらが属するサブユニットによる(すなわち、大きな60Sサブユニットに関連するならL、小さい40SサブユニットならS)。E.大腸菌リボソームはもっとも詳しく研究されており、50種の蛋白質を持ち、その多くは全ての生物で保存されている。9種のリボソーム蛋白質の構造の解明が3.0D未満の分解能でなされており(すなわちS5、S6、S17、L1、L6、L9、L12、L14、L30)、共通のモチーフ群(例えばb−a−b蛋白質フォールド群)と、b−ストランドの間に位置する酸性及び塩基性のRNA結合モチーフ群とを明らかにした。殆どのリボソーム蛋白質はrRNAと直接に接触すると思われる(概説はLiljas, A. 及び Garber, M. (1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5:721-727; また、Woodson, S.A. 及び Leontis, N.B. (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8:294-300; Ramakrishnan, V. 及び White, S.W. (1998) Trends Biochem. Sci. 23:208-212を参照)。
リボソーム蛋白質は、翻訳を調節するために、翻訳後修飾を受けたり、他のリボソーム関連タンパク質と相互作用したりすることがある。例えば高度に相同な40Sリボソーム蛋白質S6キナーゼであるS6K1とS6K2とは細胞成長の調節において主要な役割を果たすが、これはタンパク質合成装置(例えばリボソーム蛋白質)を作り上げる翻訳成分の生合成を制御することにより行う。S6K1の場合、少なくとも8つのリン酸化部位が、キナーゼ活性化を階層的な手法で仲介すると思われる(Dufner 及び Thomas (1999) Exp. Cell. Res. 253:100-109)。数種のリボソーム蛋白質(L1を含む)はまた翻訳抑制因子として機能し、これはリボソーム蛋白質をコードするポリシストロニック性mRNAと結合して行う(概説は前出Liljas及び前出Garber)。
最近の証拠が示唆するところでは、多数のリボソーム蛋白質が、蛋白質生合成へのこれらの関与とは独立した二次機能を持つ。これらの蛋白質は、細胞増殖の調節因子として、また数例では細胞死の誘発因子として機能する。例えばヒトのリボソーム蛋白質L13aの発現は、アポトーシスを誘発することが示されている。これは、細胞周期のG2/M期に細胞成長を停止させて行う。L13aの発現の抑制は標的細胞内にアポトーシスを誘発し、これが示唆するところでは、この蛋白質は、適量では、細胞生存に必要である。同様の結果が酵母でも得られている。ここでは、L13aの酵母相同体である、rp22とrp23との不活化によって、重度の成長遅滞と死とを招いた。非常に近縁のリボソーム蛋白質であるL7は、G1期の細胞を停止させ、アポトーシスをも誘発する。したがって、或るサブセットのリボソーム蛋白質は、細胞周期チェックポイントとして機能すると思われ、新規ファミリの細胞増殖調節因子を構成するようである。
個々のリボソーム蛋白質の、無傷リボソームの表面へのマッピングがなされた。これには3D免疫低温電子顕微鏡(immunocryoelectronmicroscopy)を用い、これによって特定のリボソーム蛋白質群に対して産生された抗体群が可視化された。L1、L7、及びL12のマッピングに向けて進歩がなされているが、無傷リボソームの構造の解明は、わずかに20〜25Dの分解能であり、別々の粗構造(crude structures)の間には矛盾がある(Frank, J. (1997) Curr. Opin. Struct. Biol. 7:266-272)。
3種の別々の部位が、リボソーム上で同定されている。アミノアシルtRNA受容部位(A部位)は、チャージした(charged)tRNAを受け取る(例外は開始tRNAである)。ペプチジルtRNA部位(P部位)は新生ポリペプチドと結合し、A部位からのアミノ酸が、この伸長する鎖に付加される。脱アシル化したtRNA群は、脱出部位(E部位)内に結合した後、リボソームから解放されるリボソームの構造の概説は、Stryer, L. (1995) Biochemistry W.H. Freeman and Company, New York NY 888-908lページ;Lodish, H. 他 (1995) Molecular Cell Biology Scientific American Books, New York NY 119-138ページ;及び Lewin, B (1997) Genes VI Oxford University Press, Inc. New York, NYを見られたい。
種々の蛋白質が、核内で転写されたRNAのプロセシングに必要である。mRNAプロセシングの前段階としては、5’末端へのメチルグアノシンでのキャッピング、3’末端のポリアデニル化、及び、イントロンを除去するためのスプライシングを含む。DNAからの一次RNA転写物は、エキソン、イントロン双方の配列を有する遺伝子の忠実なコピーであり、イントロン配列がRNA転写物から切り出されることが、蛋白質をコードするmRNAを産出するために必要である。mRNAの「スプライシング」は、核内で、大きな多成分リボ核タンパク質複合体(スプライセオソームとして知られる)の補助を受けてなされる。スプライセオソーム複合体は、5種の低分子核内リボ核タンパク質粒子(snRNP)である、U1、U2、U4、U5、及びU6からなる。それぞれのsnRNP内には、1つの種のsnRNAと、約10種のタンパク質とを含む。数種のsnRNPのRNA成分は、イントロンのコンセンサス配列を認識し塩基対合する。タンパク質成分は、スプライセオソームアセンブリと、スプライシング反応とを仲介する。snRNPタンパク質に対する抗体は、全身性紅斑性狼瘡患者の血中に見られる(Stryer, L. (1995) Biochemistry W.H. Freeman and Company, New York NY, 863ページ)。
不均質核内リボ核タンパク質(hnRNP)の役割は、スプライシングや、成熟RNAの細胞質への移出、及び、mRNA翻訳にあることが同定されている(Biamonti, G. 他 (1998) Clin. Exp. Rheumatol. 16:317-326)。hnRNPの例としては、酵母タンパク質群である、Hrp1p(RNAの切断と3’末端でのポリアデニル化に関与)、Cbp80p(RNAの5’末端のキャッピングに関与)、及び、Npl3p(核からのmRNAの移出に関与する哺乳類hnRNP A1の相同体)がある(Shen, E.C. 他(1998) Genes Dev. 12:679-691)。hnRNPは、リウマチ性疾患における自己免疫応答の重要な標的であることが示されている(前出Biamonti)。
多くのsnRNPタンパク質及びhnRNPタンパク質は、或るRNA認識モチーフ(RRM)によって特徴付けられる(概説はBirney, E.他(1993) Nucleic Acids Res.21:5803-5816)。RRMは、約80アミノ酸の長さであり、α/βサンドイッチの形に編成された4本のβストランドと2本のαヘリックスとを形成する。RRM内には、コアのRNP−1オクタペプチドモチーフと、周囲の保存された配列群とを含む。snRNPタンパク質に加え、上記モチーフ群を持つRNA結合タンパク質の例には、新生RNAを安定させるヘテロ核リボ核タンパク質と、選択的スプライシングを調節する因子群とを含む。選択的スプライシング因子には発生的に調節されるタンパク質が含まれ、その特異的な例は下等真核生物(例えばキイロショウジョウバエや線虫Caenorhabditis elegans)において同定されている。これらのタンパク質は、それぞれ発生プロセス(例えばパターン形成や性決定)において重要な役割を果たす(例えばHodgkin, J. 他 (1994) Development 120:3681-3689を参照)。
殆どの真核生物mRNAの3’末端は、また、ポリアデニル化による転写後修飾を受ける。ポリアデニル化は、2種の、酵素的に別々のステップを経て進む。すなわち、(i)新生mRNAのヌクレオチド鎖切断が、3’非翻訳(非コード)領域内のシス作用ポリアデニル化シグナル群でなされ、(ii)ポリ(A)トラクト(poly(A) tract)が、5’mRNA断片へ付加される、である。シス作用RNA配列群の存在が、両方のステップに必要である。これらの配列としては、5’−AAUAAA−3’(切断部位の10〜30ヌクレオチド上流に位置)と、あまり保存されていないGU−リッチ配列エレメント又はU−リッチ配列エレメント(切断部位の10〜30ヌクレオチド下流に位置)とを含む。切断刺激因子(CstF)、切断因子I(CF I)、及び切断因子II(CF II)は切断反応に関わり、一方、切断及びポリ(A)付加特異性決定因子(CPSF)とポリ(A)ポリメラーゼ(PAP)とは、切断とポリアデニル化との双方に必要である。付加的酵素であるポリ(A)結合タンパク質II(PAB II)は、ポリ(A)トラクト伸長を促進する(Ruegsegger, U. 他 (1996) J. Biol. Chem. 271:6107-6113、及びその参考文献)。
翻訳
遺伝子コードの正しい翻訳は、適切な転移RNA(tRNA)との連結を形成する各アミノ酸に依存する。アミノアシル−tRNA合成酵素(aaRS)は、全ての生物に在る本質的なタンパク質である。aaRSは、タンパク質の生合成の最初の段階として、アミノ酸の活性化と、その同族tRNAとの正しい付着とを担う。原核生物は少なくとも20種の異なるタイプのaaRSを持ちアミノ酸ごとに1種類のaaRSを持つが、真核生物は通常、異なるアミノ酸の各々のために細胞質ゾル形態とミトコンドリア形態の2つのaaRSを有する。20種のaaRS酵素は2つの構造的クラスに分け得る。クラスI酵素はtRNAの3’末端で2’ヒドロキシルにアミノ酸を加え、クラスII酵素はtRNAの3’末端で3’ヒドロキシルにアミノ酸を加える。各クラスは触媒的ドメインの特有のトポロジーによって特徴づけられる。クラスI酵素には、ヌクレオチド結合した「ロスマンフォールド」に基づく触媒的ドメインがある。特に、或るコンセンサステトラペプチドのモチーフは、高度に保存的である(Prosite Document PDOC00161, Aminoacyl-transfer RNA synthetases class-I signature)。クラスI酵素は、アルギニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファン及びバリンに特異的である。クラスII酵素は、中心的触媒ドメイン(7本鎖の逆平行β−シートドメインからなる)と、N末端及びC末端調節ドメインを持つ。クラスII酵素は酵素のヘテロ二量体構造あるいはホモ二量体構造に基づく2つのグループに分けられ、後者はさらにN末端及びC末端調節ドメインの構造によって分けられる(Hartlein, M. 及び Cusack, S. (1995) J. Mol. Evol. 40:519-530)。クラスII酵素は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン及びトレオニンに特異的である。
数種のaaRSには編集(エディティング)機能もある。例えばIleRSはバリンを誤って活性化しVal−tRNAIleを形成する場合があるが、この生成物は、誤ってチャージした生成物を破壊する或る加水分解作用によって取り除かれる。この編集活性は、クラスI酵素のロスマンフォールドドメイン内の長い挿入配列である接続ポリペプチド1領域(connective polypeptide 1 region:CP1)で見つかる2番目の触媒サイト内に位置する(Schimmel, P. 他(1998) FASEB J. 12:1599-1609)。また、aaRSは、tRNAプロセシングでも役割を果たす。成熟したtRNAは細胞質に移出される前に、核の中でそれぞれのアミノ酸でチャージされることが示されている。またこのアミノ酸との結合は品質管理機構として機能し、確実にtRNAを機能的に保っている可能性がある(Martinis, S.A. 他 (1999) EMBO J. 18:4591-4596)。
最適条件下でのポリペプチド合成の進行速度は、約40アミノ酸残基/秒である。翻訳時の誤った取り込みの比率は10−4の位であり、主な原因はアミノアシル−t−RNAに間違ったアミノ酸でチャージされたことである。間違ってチャージされたtRNAは細胞毒性を持つ。その理由は、それらが間違ったアミノ酸残基を、伸長するポリペプチドに組み込むためである。翻訳の速度は、最適な伸長速度と、翻訳忠実度の必要性との折衷で決まると推測される。数学的計算による予測では、10−4が、生物系におけるタンパク質合成の最大許容エラー率である(概説は前出Stryer, L. 及び Watson, J. 他 (1987) The Benjamin/Cummings Publishing Co., Inc. Menlo Park, CA)。特にエラーの多いアミノアシル−tRNAチャージングイベントは、tRNAGlnのグルタミン(Gln)との結合である。このミスチャージングを補正する機序があり、これはその起源を進化の中に持つようである。Glnはポリペプチド合成に利用され自然界に現れる20種の天然アミノ酸の最後の集団にあった。グラム陽性真正細菌、シアノバクテリア、始原菌(Archeae)、及び真核生物のオルガネラは、Gln−tRNAGlnの合成のための非典型的経路(noncanonical pathway)を持ち、この経路はGlu−tRNAGln(Glu−tRNAシンテターゼであるGluRSが合成)のトランスフォーメーションに基づくものであり、酵素であるGlu−tRNAGlnアミドトランスフェラーゼ(Glu−AdT)を用いる。アミド基転移経路に関わる反応は次のとおりである(Curnow, A.W. 他 (1997) Nucleic Acids Symposium 36:2-4)。
GluRS
tRNAGln+Glu+ATP⇒Glu−tRNAGln+AMP+PP
Glu−AdT
Glu−tRNAGln+Gln+ATP⇒Gln−tRNAGln+Glu+ADP+P
類似の酵素であるAsp−tRNAAsnアミドトランスフェラーゼは始原菌に存在し、Asp−tRNAAsnをAsn−tRNAAsnへ転換する。ホルミラーゼ(formylase)酵素は真正細菌においてMet−tRNAfMetをfMet−tRNAfMetへ転換し、これは近縁の酵素のようである。ミスチャージしたVal−tRNAIleを破壊する加水分解活性も同定されている(Schimmel他(1998) FASEB J. 12:1599-1609)。原始的な生物形態におけるGlu−AdTの進化の、或る可能性のあるシナリオは、特異的グルタミニル−tRNAシンテターゼ(GlnRS)の不在が、Gln−tRNAGlnの合成のための代替経路を必要としたというものである。事実、グラム陽性細菌におけるGlu−AdTオペロンの欠失は致死的である(Curnow, A.W. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:11819-11826)。他の生物におけるGluRS活性の存在が自然界の翻訳機構における高度の保存性によって推測されているが、GluRSはヒトを含む全ての生物において同定されていない。このような酵素は、翻訳忠実度を確保し、欠陥ポリペプチドの合成を減らすよう働くと思われる。
タンパク質合成における機能に加えて、特定のアミノアシルtRNA合成酵素群は、細胞忠実度、RNAスプライシング、RNA輸送、アポトーシス、及び転写と翻訳の調節で役割を果たす。例えばヒトのチロシルtRNA合成酵素はたんぱく質分解により、別々のサイトカイン活性を持つ2つの部分に裂け得る。C末端ドメインは単球と白血球の走化作用を示し、また、ミエロペルオキシダーゼ、腫瘍壊死因子−α、及び組織因子の生成を刺激する。N末端ドメインはインターロイキン−8タイプA受容体に結合し、インターロイキン8様サイトカインとして機能する。ヒトのチロシルtRNA合成酵素(TyrRS)はアポトーシス段階の腫瘍細胞から分泌される。また、アポトーシスを加速する可能性がある(Wakasugi, K 及び Schimmel, P (1999) Science 284:147-151)。ミトコンドリア型のアカパンカビ(Neurospora crassa)TyrRS及び出芽酵母(S. cerevisiae)LeuRSはグループIイントロンの数種のスプライシング活性に必須であり、ヒトのミトコンドリアLeuRSは酵母のヌル種(null strain)において酵母LeuRSとして代用できる。数種のバクテリアaaRSは、それ自身の転写又は翻訳の調節に関与している(前出Martinis)。一部のaaRSは、細胞増殖、分化、及びアポトーシスで役割をもったシグナル分子のクラスである、ジアデノシン・オリゴホスフェートを合成できる(Kisselev, L.L 他(1998) FEBS Lett.427:157-163; Vartanian, A. 他(1999) FEBS Lett. 456:175-180)。
アミノアシル−tRNAに対する自己抗体は、リウマチ関節炎、皮膚筋炎、及び多発性筋炎など、自己免疫疾患の患者によって産生される。また、複雑な間質性肺疾患(ILD)と強度に相関する(Freist, W. 他(1999) Biol. Chem. 380:623-646; Freist, W. 他(1996) Biol. Chem. Hoppe Seyler 377:343-356)。これらの自己抗体はウイルス感染に応じて産生されるとみられ、コクサッキー・ウイルスは動物に実験的ウイルス性筋炎を誘発するために用いられている。
aaRS構造の、人体と病原体とでの比較は、新規の抗生物質の設計に有用となっている(Schimmel、前出)。遺伝子工学で作られたaaRSは、自然にないアミノ酸を部位特異的にたんぱく質へin vivoで取り込ませるために利用されている(Liu, D.R. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10092-10097)。
tRNAの修飾
修飾されたリボヌクレオシドであるプソイドウリジン(ψ)は、転移RNA(tRNA)、大小のリボソームRNA(rRNA)、及び核内低分子RNA(snRNA)のアンチコドン領域に偏在する。ψは、tRNAに存在する最も一般的な修飾ヌクレオシド(すなわちG、A、U、及びC以外)である。タンパク合成に無関係のわずかな酵母tRNAのみが、ψを持たない(Cortese, R. 他 (1974) J. Biol. Chem. 249:1103-1108)。ウリジンからψへの転換を担う酵素であるプソイドウリジン合成酵素(プソイドウリジル酸シンターゼ)は初め、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)から単離された(Arena, F. 他 (1978) Nucleic Acids Res. 5:4523-4536)。この酵素はそれ以後、多数の哺乳類(例えば去勢ウシやマウス)から単離されている(Green, C.J. 他 (1982) J. Biol. Chem. 257:3045-52並びにChen, J.及びPatton, J.R. (1999) RNA 5:409-419)。tRNAプソイドウリジン合成酵素は、このファミリの、最も広く研究されているメンバーである。これらの酵素の最適活性には、チオール供与体(システインなど)と、一価カチオン(アンモニアやカリウムなど)とが必要である。付加的補因子や高エネルギー分子(ATPやGTP)は不要である(Green、前出)。別の真核生物プソイドウリジン合成酵素群が同定されており、rRNAに特異的なようである(概説はSmith, C.M.及びSteitz, J.A. (1997) Cell 89:669-672)。また、或る二重特異性酵素は、tRNA基質とrRNA基質との双方を利用することが同定されている(Wrzesinski, J. 他 (1995) RNA 1: 437-448)。ψがtRNAのアンチコドンループ内に不在の場合、細菌(Singer, C.E. 他 (1972) Nature New Biol. 238:72-74)と酵母(Lecointe, F. (1998) 273:1316-1323)との双方において成長が低下するが、この遺伝子欠損は致死的ではない。
別のリボヌクレオシド修飾が主に真核細胞で起こる。これはグアノシンからN,N−ジメチルグアノシン(m G)への転換であり、サイトゾル及びミトコンドリアのtRNAのDステムの塩基位置26又は10で起こる。この転写後修飾は、tRNA構造の安定化を、別のtRNA二次構造及び三次構造の形成を防ぐことで行うと思われる。酵母tRNAAspは、この修飾を持たない点が特異である。この修飾は真正細菌には起こらず、理由はおそらく、これらの細胞とオルガネラとにおけるtRNAの構造が配列によって制約され、転写後修飾によって別の構造の形成を防ぐ必要がないためである(Steinberg, S.及びCedergren, R. (1995) RNA 1:886-891、及びその参照文献)。グアノシンからm Gへの転換を担う酵素は、63kDaのS−アデノシルメチオニン(SAM)−依存性tRNA N,N−ジメチルグアノシンメチルトランスフェラーゼである(TRM1遺伝子産物とも呼ばれ、本明細書ではTRMと呼ぶ)(Edqvist, J. (1995) Biochimie 77:54-61)。この酵素は、核とミトコンドリアとの双方に局在する(Li, J-M. 他(1989) J. Cell. Biol.109:1411-1419)。アフリカツメガエル由来のTRMでの研究に基づくと、修飾されるG26の直前のC11〜G24とG10〜C25との位置での塩基対合には或る要件があると思われ、tRNAの別の構造的特徴も、G26基質の適切な提示に必要に思われる(Edqvist. J. 他(1992) Nucleic Acids Res.20:65756581)。酵母での研究が示唆するところでは、或る弱いオーカーtRNAサプレッサ(sup3i)を有する細胞群は、TRM活性が無ければ翻訳終了を抑制できないことから、TRMが真核細胞において抑制の頻度を調整する役割を持つことを示唆する(Niederberger, C. 他(1999) FEBS Lett.464:6770)。また、TRMは、より一般的な機能である、tRNAの適切な三次元構造の確保も行うようである。
翻訳開始
翻訳の開始は、3つのステージに分けることができる。第一ステージは、或る開始転移RNA(Met−tRNA)と40Sリボソームサブユニットとから43S開始前複合体を形成する。第二ステージは、43S開始前複合体をmRNAと結合させた後、複合体を正しいAUG開始コドンに移動させる。第三ステージは、60Sリボソームサブユニットを40Sサブユニットに導き、開始コドンにおいて80Sリボソームを産生する。翻訳の調節には主に、開始プロセスにおける第一及び第二のステージが関わる(V.M. Pain (1996) Eur. J. Biochem. 236:747-771)。
数種の開始因子(その多くは複数のサブユニットを持つ)が、開始tRNAと40Sリボソームサブユニットとの複合に関わる。eIF2は1種のグアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、開始tRNAを40Sリボソームサブユニットまで動員する。eIF2はGTPと結合した時にのみ開始tRNAと会合する。eIF2Bは1種のグアニンヌクレオチド交換タンパク質であり、eIF2の、GDP結合不活性型からGTP結合活性型への転換を担う。2種の別の因子であるeIF1AとeIF3とは、40Sサブユニットと結合し安定化させ、これは18SリボソームRNA及び特定のリボソーム構造タンパク質群と相互作用して行う。eIF3はまた、40SリボソームサブユニットとmRNAとの会合にも関わる。Met−tRNA、eIF1A、eIF3及び40Sリボソームサブユニットは共に、43S開始前複合体を形成する(Pain、前出)。
eIF2は、mRNA翻訳における律速段階の維持において中心的な役割を果たす。このステップでは、eIF2はGTPとMettRNAiとを結合し、MettRNAiを40Sリボソームサブユニットへ転移する。開始プロセスの最後に、eIF2と結合していたGTPは、GDPへ加水分解される。eIF2.GDP複合体は、リボソームから解放される。eIF2に結合したGDPのGTPとの交換は、MettRNAiと結合するための前提条件であり、この交換は第二の開始因子であるeIF2B(1種のグアニンヌクレオチド交換因子)が仲介する。eIF2のαサブユニットにおけるそのリン酸化は、eIF2を、eIF2Bの基質から競合阻害因子へ転換する。したがって、eIF2αのリン酸化は、eIF2.GTP.MettRNAi複合体の形成を効果的に防ぎ、全般的なタンパク合成を阻害する。eIF2αのリン酸化が起こる種々の条件としては、ウイルス感染、アポトーシス、栄養欠乏、ヘム欠乏、数種のストレスを含む。C型肝炎ウイルス(HCV)の5’非翻訳領域は、内部リボソーム侵入部位(IRES)として機能し、HCVタンパクの翻訳はここで開始する。eIF2BガンマとeIF2ガンマとは、HCV IRESが媒介する翻訳に関与する細胞内因子である(Kimball, S.R. (1999) Int. J. Biochem. Cell Biol.31:2529; Webb, B.L.及びProud, C.G. (1997) Int. J. Biochem. Cell Biol.29:11271131; Kruger M. 他(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 97:85668571)。
43S開始前複合体がmRNA分子と結合するには、複数の付加的因子が必要であり、このプロセスは、いくつかのレベルで調節される。eIF4Fという複合体は、3種のタンパク質、eIF4E、eIF4A、eIF4Gからなる。eIF4EはmRNAの5’−末端mGTPキャップを認識して結合し、eIF4Aは二方向性のRNA依存型ヘリカーゼであり、eIF4Gは一種の足場ポリペプチドである。eIF4Gは三つの結合ドメインを持つ。eIF4GのN末端側の三分の一はeIF4Eと相互作用し、中央の三分の一はeIF4Aと相互作用し、C末端の三分の一は43S開始前複合体に結合したeIF3と相互作用する。したがって、eIF4Gは、40SリボソームサブユニットとmRNAとの橋渡しをする(M.W. Hentze (1997) Science 275:500-501)。
eIF4Fが43S開始前複合体の結合を開始する能力は、mRNAの構造的特徴によって調節される。mRNA分子は、5’キャップとAUG開始コドンとの間に非翻訳領域(UTR)を持つ。数種のmRNAでは、この領域は43S開始前複合体の結合を妨害する二次構造を形成する。eIF4Aのヘリカーゼ活性は、この二次構造を除去して43S開始前複合体の結合を促進するよう機能すると思われる(Pain、前出)。
翻訳伸長
伸長プロセスでは、付加的アミノ酸群が開始メチオニンに結合し、完全ポリペプチド鎖を形成する。伸長因子であるEF1α、EF1βγ、及びEF2が、開始後のポリペプチド鎖の伸長に関わる。EF1αは、GTP結合タンパク質である。EF1αのGTP結合型では、EF1αがアミノアシルtRNAをリボソームのA部位に導く。新規に到着したアミノアシルtRNAに付着していたアミノ酸は、ペプチド結合を開始メチオニンとの間に形成する。EF1α上のGTPはGDPへ加水分解され、EF1α−GDPはリボソームから解離する。EF1βγがEF1α−GDPと結合し、GDPをEF1αから解離させることにより、EF1αはGTPと結合できるようになり新規サイクルが始まる。
次々にアミノアシルtRNAがリボソームに導かれ、EF−G(別のGTP結合タンパク質)が、リボソームのA部位からP部位へ、そして最後にはE部位へのtRNAの移動を触媒する。これにより、リボソームとmRNAは翻訳中に結合したままでいられる。
MCMドメインは、真核生物DNAの複製に必要なDNA依存性ATPaseの中で見られる。真核生物においてはこのドメインを含む6つのタンパク質(MCM2〜MCM7)のファミリがある(Hu, B. 他(1993) Nucleic Acids Res. 21:52895293)。
翻訳終了
放出因子(release factor)であるeRFが翻訳を終了させる。eRFはmRNA内の停止コドンを認識し、ポリペプチド鎖をリボソームから遊離させる。
外胚葉頂堤(AER)は脊椎動物の四肢の発生に必須な構造である。Wnt3aはニワトリのAERの誘導中に発現される。Wnt3aの誤発現は四肢外胚葉(limb ectoderm)のAER特異的遺伝子の異所性発現を誘導する。βカテニンとLef1遺伝子はWnt3aの効果を模倣する。内因的なLef1活性をブロックするとAERの形成が妨げられる。したがって、Wnt3aはβカテニン/LEF1経路を通じてAER形成に関与する。これに対してβカテニンもLef1もWnt1aによって調節される四肢の背腹軸極性に影響を与えない。したがって2つの関連するWnt遺伝子は同じ組織において異なる細胞内経路を使用することで異なる応答を誘発する(Kengaku, M. 他(1998) Science 280:1274-1277)。
Treacher Collins症候群(TCS)は、最も多いヒト下顎顔面異骨(mandibulofacial dysostosis)障害である。TCSは、常染色体優生遺伝を示し、生児出生5万人に1人の割合で起こり、約60%は新規の突然変異による。TCSの症状は、広い可変性を示す。この疾患の原因は、第一鰓弓と第二鰓弓との発生における干渉であると推論される。TCS遺伝子であるTCOF1は、染色体5q31〜33.3に局在する。10種の突然変異がTCOF1では同定され、これにはナンセンス変異、挿入、欠失、又はスプライス変異が含まれ、明らかに、翻訳の未熟な終了をもたらしている。さらに、その全ては、それぞれの患者の家族に特有である。TCOF1は低い複雑度のタンパク質(1411アミノ酸)をコードし、そのタンパク質が持つ繰り返しモチーフは、そのエキソン群の構成の鏡像である。これらのモチーフは、別の種における核小体輸送タンパク質でも共有され、カゼインキナーゼによって高度にリン酸化される。完全長TCOF1タンパク質配列内にはまた、核と核小体との局在化シグナルと、幾つかの多型とを含む。このデータが示唆するところでは、TCSの原因は或る核小体輸送タンパク質の欠損であり、このタンパク質は、ヒトの頭蓋顔面発生に決定的に必要である(Wise, C.A.他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:3110-3115)。
乳癌
180,000例を超える新規発症の乳癌が毎年診断されており、乳癌による死亡率は45〜54歳の女性の全死亡の10%に近い(Gish, K. (1999) AWIS Magazine 28:7-10)。ただし、限局性乳癌の早期診断に基づく生存率は極めて高い(97%)。これに対して、病期が進行し腫瘍が***外に進展した場合は22%である。現在の臨床乳癌検診の手法は感度と特異性とを欠いており、乳癌の包括的な遺伝子発現プロファイルを開発する努力がなされている。このプロファイルを従来のスクリーニング法とともに用いれば、乳癌の診断と予後診断とを向上し得る(Perou, C.M. 他(2000) Nature 406:747-752)。
2種の遺伝子、BRCA1とBRCA2との突然変異が女性乳癌の大きな素因となることが知られており、この変異は親から子へ受け渡されるようである(前出Gish)。しかし、このタイプの遺伝性乳癌はわずかに乳癌の約5%〜9%であり、大多数の乳癌の原因は非遺伝性突然変異であり、乳腺上皮細胞での変異である。
上皮成長因子(EGF)とその受容体であるEGFRとの発現と、ヒト乳癌との関係は、特に良く研究されている(Khazaie, K. 他(1993) Cancer and Metastasis Rev. 12:255-274とその中の参照文献に、この分野が概説されている)。EGFRの過剰発現、特にエストロゲン受容体の下方制御と結びついた発現は、乳癌患者の不良な予後のマーカーである。また、乳腺腫瘍転移におけるEGFR発現は、しばしば原発腫瘍に比して上昇するので、EGFRが腫瘍の進行と転移とに関わることを示唆している。これを支持する証拠が蓄積されている。それはEGFが、転移の潜在能に関する細胞機能に対する効果を持つという証拠である。この機能とは例えば、細胞運動性、走化性、分泌、及び分化である。erbB受容体ファミリ(EGFRはその1つである)の他のメンバーの発現の変化も、乳癌に関わるとされている。erbB受容体(例えばHER−2/neu,HER−3及びHER−4)及びそれらのリガンドの乳癌における豊富さは乳癌の発生機序におけるそれらの機能的重要性を示しており、したがって乳癌治療の標的を提供しうる(Bacus, S. S. 他(1994) Am. J. Clin. Pathol. 102:S13-S24)。別の既知の乳癌マーカーとしては、或るヒトの分泌型frizzled protein mRNA(乳腺腫瘍では下方調節される)、マトリクスG1aタンパク質(ヒト乳癌細胞で過剰発現)、Drg1すなわちRTP(この遺伝子の発現は結腸腫瘍、乳腺腫瘍、前立腺腫瘍で低下)、maspin(この腫瘍抑制遺伝子は浸潤性乳癌で下方調節)、及びCaN19(S100蛋白ファミリのメンバーであり、このファミリは全て、乳癌細胞では正常乳腺上皮細胞に比して下方調節される)を含む(Zhou, Z. 他(1998) Int. J. Cancer 78:95-99; Chen, L. 他(1990) Oncogene 5:1391-1395; Ulrix, W. et al (1999) FEBS Lett 455:23-26; Sager, R. 他(1996) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 213:51-64;及びLee, S. W. 他(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2504-2508)。
種々の病期のヒト乳癌の乳腺上皮細胞に由来する細胞株は、悪性転換と腫瘍進行とのプロセスを研究するのに有用なモデルを提供する。その理由は、これらの細胞株が、その親腫瘍の多くの特性を、長い培養期間にわたり保持することが示されているからである(Wistuba, I.I. 他(1998) Clin.Cancer Res.4:2931-2938)。こうしたモデルが特に有用なのは、ヒト乳腺上皮細胞の表現型と分子との特徴を、悪性転換の種々の病期で比較する場合である。
前脂肪細胞
脂肪組織の最重要の機能は、脂肪を摂食時に貯蔵し空腹時に放出する能力である。白色脂肪組織は過剰エネルギー使用時のための主なエネルギー備蓄部位であり、その第一目的は、エネルギー欠乏時の動員性(mobilization)である。いかにして種々の分子が、脂肪過多症と、生理的及び病態生理的な諸状況でのエネルギーバランスを調節するかを理解すれば、ヒト肥満症の新規の治療法を開発しうる。脂肪組織はまた、インスリンの重要な標的組織の1つである。II型糖尿病における脂肪生成とインスリン耐性とは連関しており、興味深い関係を示す。II型糖尿病の殆どの患者は肥満であり、肥満は次にインスリン耐性を生じる。
脂肪細胞の生物学の、これまでの研究の大半に、形質転換したマウス前脂肪細胞株が利用されている。マウス前脂肪細胞の分化を刺激する培養条件は、ヒトの初代前脂肪細胞の分化を誘発する条件とは異なる。また、初代細胞は二倍体であるため、in vivo条件を異数体細胞株以上に反映すると思われる。ヒトの脂肪生成期の遺伝子発現プロフィールを理解すれば、脂肪過多症調節の根本機序を理解できる。更に、脂肪生成の遺伝子発現プロフィールを、正常体重ドナーと肥満ドナーとで比較すれば、非常に重要な遺伝子群、すなわち肥満とII型糖尿病との潜在的な薬物標的の同定が可能となる。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γアゴニスト
チアゾリジンジオン(thiazolidinediones:TZD)は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)のアゴニストとして作用する。PPARγは、核ホルモン受容体スーパーファミリのメンバーである。TZDは、高血糖、高インスリン血、及び高血圧の低減を、一部にはグルコース代謝を促進して、また糖新生を阻害して行う。PPARγとそのアゴニストとの役割は、広範な病態で実証されている。この病態には例えば糖尿病、肥満、高血圧、アテローム硬化、多嚢胞卵巣症候群、乳癌、前立腺癌、脂肪肉腫、及び結腸癌を含む。
TZD他のPPARγアゴニストがインスリン感受性を増強する機序は充分に理解されていないが、PPARγが脂肪生成を促進する能力に関わると思われる。培養した前脂肪細胞で異所的に発現されたPPARγは、脂肪細胞分化の強力な誘発因子である。TZDをインスリン他の因子と併用するとまた、培地でのヒト前脂肪細胞の分化を増強できる(Adams 他(1997) J. Clin. Invest. 100:3149-3153)。種々のTZDが脂肪生成をin vitroで促進する相対的な効力は、それらのin vivoでのインスリン感作効果と、PPARγにin vitroで結合し活性化するそれらの能力との双方に比例する。興味深いことに、大網脂肪貯蔵(omental adipose depots)に由来する脂肪細胞は、TZDの効果に不応である。これが示唆するところでは、TZD類のインスリン感作効果は、それらが脂肪生成を皮下脂肪貯蔵において促進する能力の結果である(Adams他、同上)。更に、PPARγ遺伝子の優性阻害突然変異(dominant negative mutations)の同定が、二名の非肥満例でなされている。彼らには重度のインスリン耐性、高血圧、及び、顕性の非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)がみられた(Barroso 他(1998) Nature 402:880-883)。
NIDDMは最も多い型の糖尿病であり、糖尿病は慢性代謝病であって世界に1.43億人の患者がいる。NIDDMの特徴は異常なグルコースと脂質との代謝であり、その原因は、末梢インスリン耐性と、欠陥のあるインスリン分泌とが組み合わさっている。NIDDMは複雑な進行性の病因を持ち、高度の遺伝率をも持つ。多数の合併症が糖尿病に併発し(例えば心臓病、卒中、腎不全、網膜症、及び末梢神経障害を含む)、高い罹患率と死亡率との一因となっている。
分子レベルでPPARγは、リガンド活性化転写因子として機能する。リガンドの存在下でPPARγはレチノイドX受容体(RXR)と共にヘテロ二量体を形成する。この二量体は標的遺伝子の転写を活性化する。この標的遺伝子は、或るPPARγ応答エレメント(PPRE)の1つ以上のコピーを持つ。脂質の貯蔵と代謝とに重要な多くの遺伝子がPPREをもち、PPARγ標的として同定されている。これには例えばPEPCK、aP2、LPL、ACS、及びFAT−Pを含む(Auwerx, J. (1999) Diabetologia 42:1033-1049)。多数のPPARγリガンドが同定されている。このリガンドとしては例えば種々の脂肪酸代謝産物や、合成薬物のうちのTZDクラス(例えばピオグリタゾン:Pioglitazone 及びロシグリタゾン:Rosiglitazone (BRL49653))並びに、数種の非グリタゾン系チロシン類似体(例えばGI262570及びGW1929)を含む。プロスタグランジン誘導体である15dPGJ2は、PPARγの強力な内因性リガンドである。
PPARγの発現は脂肪内では非常に高いが、骨格筋では殆ど検出されない。骨格筋は体内における、インスリンに刺激されたグルコース処理の主要部位である。PPARγの中程度の発現はまた、大腸、腎臓、肝臓、血管平滑筋、造血細胞、及びマクロファージに見られる。脂肪でのPPARγの高発現が示唆するところでは、TZD類のインスリン感作効果は、脂肪組織における、1つ以上のPPARγ調節遺伝子(PPARγ regulated genes)の発現における変容の結果である。PPARγ標的遺伝子群を同定すれば、糖尿、肥満その他の症状の為のより良い薬物設計と、新規治療戦略の開発とに寄与するであろう。
PPARγ標的遺伝子を同定する体系的な試みが、肥満と糖尿との数種のげっ歯類モデルでなされている(Suzuki 他(2000) Jpn. J. Pharmacol. 84:113123; Way 他(2001) Endocrinology 142:1269-1277)。しかし、深刻な欠点がげっ歯類遺伝子発現研究にはある。それは、ヒトとげっ歯類モデルでの、脂肪生成、糖尿、及び肥満の、顕著な差異である(Taylor (1999) Cell 97:9-12; Gregoire 他(1998) Physiol.Reviews 78:783-809)。したがって、ヒト組織の初代培養におけるTZD調節遺伝子を同定するための、偏向のない手法が、PPARγ活性に関連する疾患の分子的原理を充分に解明するのに必要である。
肺癌
肺癌は米国男性の癌死の主因であり、女性の癌死の第2の原因である。肺癌症例の大部分は喫煙に起因すると考えられており、第三世界におけるタバコ消費の増加から肺癌の蔓延が予想されている。気管支上皮をタバコの煙に曝露すると組織形態が変化するようであり、それが癌の前兆であると考えられている。肺癌は、4つの組織病理的に異なる群に分けられる。3群(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌)は、非小細胞肺癌(NSCLC)に分類される。第4群の癌は、小細胞肺癌(SCLC)という。NSCLCを合わせると全症例の約70%になり、SCLCは約18%である。肺癌の発生と進行に関する分子生物学及び細胞生物学的理解は不完全である。
3番染色体での欠失は肺癌に一般的であり、この領域に腫瘍抑制遺伝子の存在を示すと思われる。K−rasの活性化突然変異は肺癌で一般的に見られ、この疾患の1つのマウスモデルの基礎である。
結腸直腸癌
結腸直腸癌はアメリカ合衆国における癌死亡の第二の主要原因であり、その症例の90%が55才以上の人に発症しているため、老化による疾患であるとみなされている。広く認められている仮説は、長年にわたる幾つかの突然変異の蓄積によってこの疾患が発症するとされている。結腸直腸癌における遺伝子変化の本質を理解するために、遺伝性疾患を重視した多くの研究がなされている。第一に、家族性大腸腺腫症(FAP)は、タンパク質の短縮された形態又は不活性な形態につながる大腸腺腫様ポリポーシス遺伝子(APC)の変異により引き起こされる。この癌抑制遺伝子は染色体5qにマップされている。二番目によく知られている遺伝性疾患は遺伝性非ポリープ症結腸直腸癌(HNPCC)で、これはミスマッチの修復遺伝子における突然変異によって生じる。遺伝性大腸癌の発症率は低く、大部分の結腸直腸癌は散発的であるが、遺伝性疾患の研究から理解されることが一般に適用され得る。例えば、APCにおける体細胞の突然変異は散発的結腸腫瘍の少なくとも80%に発生する。APC突然変異は疾患進行における開始現象であると考えられている。他の突然変異が続いて起こる。大腸直腸癌の約50%にはrasの活性化突然変異があり、85%にはp53の不活性化突然変異がある。これらの遺伝子のすべての変化によって、結腸癌における遺伝子発現変化が生じる。
卵巣癌
卵巣癌は婦人科癌の死亡の主な原因となっている。卵巣癌の大半は上皮細胞に由来しており、上皮卵巣癌の患者の70%は疾患の後期段階にある。卵巣癌の早期マーカーを同定できれば、生存率を大きく増加できるであろう。卵巣癌に関係すると考えられている分子レベルのイベントとしてはたとえばp53の突然変異とミクロサテライトの不安定性がある。
その他の病気と関連因子
タンジール病(TD)は、扁桃腺、リンパ節、肝臓、脾臓、胸腺、腸等多くの組織での循環HDLのほぼ欠落とコレステロール・エステルの蓄積によって特徴付けられる遺伝病である。低レベルのHDLは早発性冠動脈疾患の明確な予測因子を示し、ホモ接合性TDは対照と比較して4〜6倍の心疾患での増加と相関する。HDLの心臓を保護する活性の主要な部分は、コレステロールの逆輸送、組織マクロファージ等の周辺の細胞から血漿リポ蛋白を介する肝臓へのコレステロールの流れにおけるその役割に起因する。HDLタンパク質であるアポリポタンパク質AIは、余分なコレステロールとリン脂質を除去するよう細胞表面と相互作用して、この過程において主要な役割を果たす。この経路はTDにおいて重大な障害がある。その欠陥は特有の遺伝子であるABC1輸送体にある。この遺伝子はATP結合カセット輸送体のファミリの1メンバ−であり、このファミリは膜を横切って多様な基質を輸送するためにATP加水分解を利用する。
肝臓代謝とホルモン除去機構への影響は、薬剤の薬力学を理解するために重要である。ヒトC3A細胞株は、成長での、強力な接触阻害に関して選択されたHepG2/C3(肝腫瘍の15才男子から単離した肝臓癌細胞株)のクローン誘導体である。クローン集団の使用は、細胞の再現性を強化する。C3A細胞は、培養中の主要なヒト肝細胞の多くの特徴を有する。すなわちi)インシュリン受容体とインシュリン様成長因子II受容体の発現、ii)αフェトプロテインと比較した血清アルブミンの高率分泌、iii)アンモニアの尿素とグルタミンへの転換、iv)芳香族アミノ酸の代謝、v)グルコースとインシュリンの無い培地での増殖、である。C3A細胞株は、成熟したヒト肝臓のin vitroモデルとして今や十分に確立されている(Mickelson 他(1995) Hepatology 22:866-875; Nagendra 他(1997) Am J Physiol 272:G408-G416)。
デキサメタゾン(DEX)は、抗炎症剤又は免疫抑制剤として使用される合成グルココルチコイドである。中枢神経系に到達する強い能力のために、DEXは脳浮腫を制御するために通常選択される療法である。グルココルチコイドは天然ホルモンであり、薬理量で投与すると、炎症及び免疫応答を防止又は抑制する。分子レベルでは、非結合グルココルチコイドは容易に細胞膜を越え、特異的細胞質レセプターと高親和性に結合する。結合後、転写とタンパク合成に影響する。この結果には、炎症部位の白血球浸潤阻害、炎症応答メディエータ機能妨害、及び液性免疫応答抑制を含みうる。コルチコステロイドの抗炎症作用は、リポコルチンと総称されるホスホリパーゼA抑制タンパク質に関係すると考えられる。逆にリポコルチンは、前駆体分子アラキドン酸の放出を阻害することによりプロスタグランジン、ロイコトリエン等炎症の強力な媒介物の生合成を制御する。
ヒトの大動脈内皮細胞(HMVECdNeos)は、ヒト皮膚の微小血管系の内皮に由来する初代細胞である。HMVECdNeosは、ヒトの血管生物学における内皮細胞の役割をin vitroで研究する実験モデルとして用いられてきた。血管内皮の活性化は、生理的過程また病態生理的過程の双方の広範囲(例えば血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、並びに炎症)で、中心的なイベントであると考えられる。
腫瘍壊死因子α(TNF−α)は、複数シグナル伝達経路の活性化により炎症反応の仲介に中心的な役割を果たす多面作用をもつサイトカインである。TNF−αは活性化したリンパ球、マクロファージ及びその他の白血球によって産生され、内皮細胞を活性化することが知られている。さらにmRNA発現のレベルでのTNF−αへの内皮細胞応答のモニタリングは、TNF−αシグナル伝達と内皮細胞生物学の両者のよりよい理解に不可欠な情報を提供する。
樹状細胞(DC)は抗体提示細胞として免疫応答の開始に重要な役割を果たす。DCはCD34+骨髄前駆体(IDC)又は末梢血単球性細胞(mDC)からin vitroで得ることができる。in vivoにおいては、DCは2つの異なる区画に存在する:すなわち、肺、皮膚、腎臓、心臓及び腸などの末梢組織及びリンパ節、脾臓及びパイエル板などの二次リンパ器官である。末梢組織においてはDCは効果的な抗原処理細胞であるが、未刺激(naive)のT細胞を活性化する能力は限られている。活性化される(損傷、炎症、感染)とDCは成熟の最終段階に入り、この段階で新しい抗原を処理する能力を下方調節し、末梢組織から出て二次リンパ系に移り、未刺激T細胞を活性化するきわめて強い能力を獲得する。CD40表面分子の架橋やTNFαの存在などの因子によってこの成熟の最終段階を誘発することができる。
CD40はTNF受容体ファミリに属するタイプI膜内在タンパク質である。このタンパク質は全ての成熟したBリンパ細胞、樹状細胞及び一部の上皮細胞で発現されている。CD40分子に特異的な抗体は、IL−4又はCD20分子に特異的な抗体を提示された場合にB細胞の増殖を誘発することができる。また、抗CD40抗体とIL−4でB細胞を刺激すると、免疫グロブリン産生のIgEアイソタイプへの切り換えを誘発することができる。
ヒトの脳における領域特異的な遺伝子発現を特徴付けることによって、分子神経生物学一般に内容とバックグラウンドを提供する。これらの組織におけるRNA発現からの情報により、脳の構造と機能の遺伝的な基礎への洞察が得られ、ひいては薬物ターゲットの発見に有用であり得る。
アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子又は無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロフィールを試験するときは、アレイは次のような試験を行うプラットフォームを提供する。即ちどの遺伝子が組織特異的か、ハウスキーピング機能を行うか、シグナル伝達カスケードの一部であるか、又は、特定の遺伝的素因や、条件、疾患、又は障害に、特異的に関連する遺伝子であるかの試験である。遺伝子発現プロファイル作成の潜在的応用は特に、疾患の、診断、予後診断、及び治療の向上に関わる。例えば、糖尿病患者に由来の組織に発現されるレベルと配列との双方を、正常組織に発現されるレベル及び配列と比較しうる。
発現プロファイル作成
マイクロアレイは、生物分析に用いる分析ツールである。マイクロアレイには複数の分子を有し、それらは或る固体支持体の表面で空間的に分布し、その表面と安定して結合している。ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び/又は抗体のマイクロアレイが開発され、その種々の用途には例えば遺伝子配列決定、遺伝子発現モニタリング、遺伝子マッピング、細菌同定、創薬、コンビナトリアルケミストリがある。
特にマイクロアレイを用いる領域は遺伝子発現分析である。アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子又は無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを試験するときは、アレイは次のような遺伝子を同定するプラットフォームを提供する。即ちどの遺伝子が組織特異的か、毒性検定においてテストされる物質に影響されるか、シグナル伝達カスケードの一部であるか、ハウスキーピング機能を実行するか、又は、特定の遺伝的素因や、条件、疾患、又は障害に、特異的に関連する遺伝子であるかの同定である。
この技法を使った細胞増殖異常、神経疾患、発生又は発達障害、自己免疫/炎症性疾患及び感染症の診断・治療・予防のために核酸及びタンパク質を含めた新規の組成物が必要である。
本発明さまざまな実施態様は、総称して「NAAP」、個別には各々「NAAP−1」、「NAAP−2」、「NAAP−3」、「NAAP−4」、「NAAP−5」、「NAAP−6」、「NAAP−7」、「NAAP−8」、「NAAP−9」、「NAAP−10」、「NAAP−11」、「NAAP−12」、「NAAP−13」、「NAAP−14」、「NAAP−15」、「NAAP−16」、「NAAP−17」、「NAAP−18」、「NAAP−19」、「NAAP−20」、「NAAP−21」、「NAAP−22」、「NAAP−23」、「NAAP−24」、「NAAP−25」、、「NAAP−26」、「NAAP−27」、「NAAP−28」、「NAAP−29」、「NAAP−30」、「NAAP−31」、「NAAP−32」、「NAAP−33」、「NAAP−34」、「NAAP−35」、「NAAP−36」「NAAP−37」、「NAAP−38」、「NAAP−39」、「NAAP−40」、「NAAP−41」、「NAAP−42」、「NAAP−43」、「NAAP−44」、「NAAP−45」、「NAAP−46」、「NAAP−47」、「NAAP−48」、「NAAP−49」、「NAAP−50」、「NAAP−51」、「NAAP−52」、「NAAP−53」、「NAAP−54」、「NAAP−55」、「NAAP−56」及び「NAAP−57」と呼ぶ、核酸結合タンパク質である、精製されたポリペプチドを提供し、またこれらのタンパク質及びそれらをコードするポリヌクレオチドを使って病気及び状態の検出、診断及び治療を行う方法を提供する。実施態様は精製された核酸結合タンパク質やそれをコードするポリヌクレオチドを、効果、投与量、毒性及び薬物学的特徴の決定を含む薬物発見プロセスに利用する方法も提供する。関連する実施態様は精製された核酸結合タンパク質やそれをコードするポリヌクレオチドを病気の病因及び医学的状態の研究に利用する方法を提供する。
或る実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択されたアミノ酸配列を持つポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択されたアミノ酸配列と90%以上同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然アミノ酸配列を持つポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1-58とからなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、とで構成される群から選択された単離したポリペプチドを提供する。別の実施態様は、SEQ ID NO:1-58のアミノ酸配列を持つ単離したポリペプチドを提供する。
また別の実施態様は(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を持つ或る天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリヌクレオチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:59-116からなる群から選択される。
また別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を持つ組換えポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様は、この組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。更に別の実施態様は、この組換えポリヌクレオチドを持つ遺伝形質転換生物を提供する。
別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%以上の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、とからなる群から選択したポリペプチドを製造する一方法を提供する。製造方法は、(a)或る細胞を該ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、この細胞を組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程からなる。この組換えポリヌクレオチドは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対し機能的に連結したプロモーター配列を持つ。
更に別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドに特異結合する、単離された抗体を提供する。
また更に別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(c):(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d):(b)に相補的なポリヌクレオチド、及び(e):(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択した、単離されたポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様で該ポリヌクレオチドは、少なくとも約20、30、40、60、80、又は100の連続したヌクレオチド群からなる場合がある。
また別の実施態様は、サンプル中に標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって該標的ポリヌクレオチドが(a)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(c):(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d):(b)に相補的なポリヌクレオチド、及び(e):(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択される方法を提供する。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなる或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する過程を含む。該プローブと該標的ポリヌクレオチドあるいはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。或る関連した実施態様で本法は、該ハイブリダイゼーション複合体の量の検出を含みうる。また別の実施態様で該プローブは、少なくとも約20、30、40、60、80、又は100の連続したヌクレオチド群からなる場合がある。
また更に別の実施態様は、サンプル中に標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって該標的ポリヌクレオチドが(a)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(c):(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d):(b)に相補的なポリヌクレオチド、及び(e):(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択される方法を提供する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、(b)前記増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の有無を検出する過程からなる。或る関連した実施態様で本法は、該増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の量の検出を含みうる。
別の実施態様は、或る有効量のポリペプチドと薬物として許容し得る或る賦形剤とからなる、或る組成物を提供する。有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択される。一実施態様では、その組成物は、SEQ ID NO:1-58からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含むことができる。他の実施態様は、機能的NAAPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
また別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを有するサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程からなる。別の実施態様は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。さらにもう1つの実施態様は、機能的NAAPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
また更に別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを有するサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程からなる。別の実施態様は、この方法で同定したアンタゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。さらにもう1つの実施態様は、機能的NAAPの過剰発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
もう1つの実施例は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性あるいは少なくとも約90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
また別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列との少なくとも90%又は少なくとも約90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドの活性をモジュレートする或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドの活性にとり許容し得る条件下で、該ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の不存在下での該ポリペプチドの活性と比較する過程からなり、この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性の変化は、該ポリペプチドの活性をモジュレートする化合物を標示する。
また更に別の実施態様は、SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変する効果に関し、或る化合物をスクリーニングする一方法を提供する。この方法は、(a)この標的ポリヌクレオチドを有するサンプルを或る化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の改変を検出する過程と、(c)可変量のこの化合物の存在下でのこの標的ポリヌクレオチドの発現と、この化合物の不在下での発現とを比較する過程とからなる。
別の実施態様は、試験化合物の毒性の算定方法を提供する。この方法には、以下の過程がある。(a)核酸群を有する生体サンプルを試験化合物で処理する過程。(b)処理済み生体サンプルの核酸群をハイブリダイズする過程。この過程には、次のようなプローブを用いる。(i)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(iii):(i)に相補的な配列を持つポリヌクレオチド、(iv):(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v):(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択した或るポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなるプローブである。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生体サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間に特異的ハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で生じる。上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:59-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%又は少なくとも約90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(iii):(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv):(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v):(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択する。あるいは標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片を持つ場合がある。毒性の算定方法には更に、以下の過程がある。(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理済み生体サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生体サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程である。処理済み生体サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の量の差異が、試験化合物の毒性を示す。
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、核酸及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、機器、材料及び方法に本発明の実施様態が限定されるものではなく、変更され得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施態様を説明する目的で用いたものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
請求の範囲及び明細書中で用いる単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もある。したがって、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には1個以上の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物などについても言及している。
本明細書中で用いる全ての技術用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施又は試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明の種々の実施態様に関係して用い得る、細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
(定義)
用語「NAAP」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたNAAPのアミノ酸配列を指す。
用語「アゴニスト」は、NAAPの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。アゴニストの例としては、NAAPと直接相互作用することによって、或いはNAAPが関与する生物学的経路の構成成分に作用することによってNAAPの活性を調節する、タンパク質、核酸、糖質、小分子その他の任意の化合物や組成物を含みうる。
用語「対立遺伝子変異体/変異配列」は、NAAPをコードする別の形の遺伝子を指す。対立遺伝子変異体群は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から生じ得る。また、変容したmRNA群を生じ得る。また、この変異体が生じ得るポリペプチドの構造又は機能は、変容することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異体を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異体を生じさせる通常の変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加又は置換による。これら各種の変化は、単独であるいは他の変化と共に、或る配列内で1回以上、生じ得る。
NAAPをコードする「変容した/改変された」核酸配列に含む配列には、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換を有し、その結果、NAAPと同一のポリペプチドを、或いは、NAAPの機能的特徴の少なくとも1つを備えるポリペプチドを生じる配列がある。この定義には、NAAPをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにNAAPをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、また、サイレント変化を生じた結果、機能的に等価なNAAPとなるような、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を持ち得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的あるいは免疫学的にNAAPの活性が保持される範囲で、残基群の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性についての、類似性に基づいて成され得る。例えば負の荷電アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正の荷電アミノ酸にはリジン及びアルギニンがありうる。親水性値が近似した極性無電荷側鎖を持つアミノ酸としては、アスパラギンとグルタミン、及びセリンとトレオニンを含みうる。親水性値が近似した無電荷側鎖を持つアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、及びフェニルアラニンとチロシンを含みうる。
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、あるいはそれらのいずれかの断片を指し、天然分子又は合成分子を指し得る。「アミノ酸配列」が或る天然タンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、記載したそのタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
「増幅」は、或る核酸の付加的複製物を作製する行為に関する。増幅には、当該分野で公知の、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術又は他の核酸増幅技術を用いうる。
用語「アンタゴニスト」は、NAAPの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子を指す。アンタゴニストは、NAAPに直接相互作用するか、或いはNAAPが関与する生物学的経路の成分と作用して、NAAPの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
用語「抗体」は、エピトープの決定基と結合できる、無傷の免疫グロブリン分子やそれらの断片例えばFab、F(ab’)、及びFv断片を指す。NAAPポリペプチド群と結合する抗体類の作製には、免疫抗原として、無傷ポリペプチド群を用いることができ、又は、当該の小ペプチド群を有する断片群を用い得る。マウス、ラット、ウサギなどの動物を免疫するために用いるポリペプチド又はオリゴペプチドの由来は、RNAの翻訳の場合や、又は化学合成があり得る。また、それらは所望により、担体タンパク質に抱合し得る。通常用いられる担体であってペプチドと化学結合する担体の例は、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン、及び、スカシガイのヘモシアニン(KLH)などがある。結合したこのペプチドは、前記動物を免疫化するために用いる。
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する、分子の領域(すなわちエピトープ)を指す。タンパク質又はタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫する場合、該タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域又は3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘発し得る。抗原決定基は、或る抗体への結合について、無傷の抗原(すなわち免疫応答を引き出すために用いられる免疫原)と競合し得る。
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する、核酸又はオリゴヌクレオチド分子を指す。アプタマーはin vitroでの進化プロセスに由来する(例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法)、米国特許第5,270,163号に記述)。これは、大規模なコンビナトリアルライブラリ群から標的特異的アプタマー配列を選択するプロセスである。アプタマーの組成は二本鎖又は一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体又は他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーの各ヌクレオチド成分は修飾された糖基を持つことがあり(例えば、リボヌクレオチドの2’−OH基は2’−F又は2’−NHによって置換され得る)、これは、ヌクレアーゼへの抵抗性又は血中でのより長い寿命など、所望の特性を向上し得る。アプタマーを他の分子(例えば高分子量キャリア)と抱合させることにより、循環系からのこのアプタマーのクリアランスを遅らせ得る。アプタマーは、たとえば架橋剤の光活性化によって各々の同族リガンドと特異的に架橋させうる(Brody, E.N.及びL. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13)。
「intramer」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
用語「スピーゲルマー(spiegelmer)」は、アプタマーの内、L−DNA、L−RNAなど左旋性ヌクレオチド誘導体又は左旋性ヌクレオチド様分子などを指す。左旋性ヌクレオチド群を持つアプタマー類は、右旋性ヌクレオチド群を持つ基質に通常は作用する、天然酵素類による分解に耐性がある。
用語「アンチセンス」は、或る特定核酸配列を持つ或るポリヌクレオチドの「センス」(コーディング)鎖との塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、修飾された主鎖結合たとえばホスホロチオ酸、メチルホスホン酸又はベンジルホスホン酸などを有するオリゴヌクレオチドや、修飾された糖基たとえば2’−メトキシエチル糖又は2’−メトキシエトキシ糖などを有するオリゴヌクレオチドや、あるいは修飾された塩基たとえば5−メチルシトシン、2’−デオキシウラシル又は7−デアザ−2’−デオキシグアノシンなどを有するオリゴヌクレオチドがあり得る。アンチセンス分子は、化学合成又は転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し二重鎖を形成して転写又は翻訳を妨害する。「負」又は「マイナス」という表示は或る参考DNA分子のアンチセンス鎖を指すことがあり、「正」又は「プラス」という表示は或る参考DNA分子のセンス鎖を意味し得る。
用語「生物学的に活性」は、或る天然分子の構造的、調節的、あるいは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」又は「免疫原性」は、天然或いは組換え体のNAAP、合成NAAP、又はそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞内の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
「相補」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5’A−G−T3’」は、相補配列「3’T−C−A5’」と対を形成する。
「〜のポリヌクレオチドを含む(持つ)組成物」又は「〜のポリペプチドを含む(持つ)組成物」は、指定のポリヌクレオチド若しくはポリペプチドを持つ、任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤又は水溶液が含まれ得る。NAAP若しくはNAAPの断片をコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。これらプローブは、凍結乾燥形態で貯蔵でき、また、糖質などの安定化剤と結合させ得る。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及び他の成分(例えばデンハート液、粉乳、サケ***DNAなど)を有する水溶液中に、プローブを分散させ得る。
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を除くためにDNA配列解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5’及び/又は3’の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、又はGELVIEWフラグメント結合システム(Accelrys, Burlington MA)又はPhrap(University of Washington, Seattle WA)などのフラグメント結合用コンピュータプログラムを用い1つ以上のオーバーラップするcDNAやEST又はゲノムDNA断片からアセンブリされた核酸配列を指す。伸長及びアセンブリの両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
「保存的なアミノ酸置換」は、置換がなされた時に元のタンパク質の特性を殆ど損なわないと予測されるような置換、即ちタンパク質の構造と特に機能が保存され、そのような置換による大きな変化がない置換を指す。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換可能で、保存的アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
元の残基 保存的な置換
Ala Gly,Ser
Arg His,Lys
Asn Asp,Gln,His
Asp Asn,Glu
Cys Ala,Ser
Gln Asn,Glu,His
Glu Asp,Gln,His
Gly Ala
His Asn,Arg,Gln,Glu
Ile Leu,Val
Leu Ile,Val
Lys Arg,Gln,Glu
Met Leu,Ile
Phe His,Met,Leu,Trp,Tyr
Ser Cys,Thr
Thr Ser,Val
Trp Phe,Tyr
Tyr His,Phe,Trp
Val Ile,Leu,Thr
保存的なアミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷又は疎水性、及び/又は(c)側鎖の大部分、を保持する。
「欠失」は、結果として1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列内の変化、あるいは1個以上のヌクレオチドが欠如するヌクレオチド配列内の変化を指す。
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。誘導体ポリヌクレオチドは、天然分子の生物学的又は免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドは、次のようなプロセスによって修飾されたポリペプチドである。すなわち、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、あるいは任意の同様なプロセスであって、誘導元のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスである。
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合あるいは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
「差次的発現」は、少なくとも2例のサンプルを比較して判定する、増加(上方制御)、あるいは減少(下方制御)、又は欠損した、遺伝子又はタンパク質の発現を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、又は病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
「エキソンシャッフリング」は、異なるコード領域(エキソン)群の組換えを意味する。或るエキソンは、コードするタンパク質の1つの構造的又は機能的ドメインを意味し得るため、安定した下部構造群の新たな組み合わせによって新規のタンパク質群をアセンブリすることが可能であり、新たなタンパク質機能の進化を促進できる。
「断片」は、NAAPの又はNAAPをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一でありうるが親配列より長さが短いものを指す。或る断片は、最長で定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さを有し得る。例えば或る断片は、約5〜約1000の連続したヌクレオチド又はアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の、連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、或るポリペプチド断片は、定義された或る配列内に見られるような或るポリペプチドの最初の250又は500アミノ酸(又は最初の25%又は50%)から選択した、或る長さの連続したアミノ酸を持ち得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表及び図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
SEQ ID NO:59-116の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:59-116を特異的に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を持ちうる。SEQ ID NO:59-116の或る断片を本発明の方法の1つ以上の実施態様、例えばハイブリダイゼーション及び増幅技術に、又はSEQ ID NO:59-116を関連ポリヌクレオチドから区別する類似の方法に用い得る。SEQ ID NO:59-116の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:59-116の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
SEQ ID NO:1-58の或る断片は、SEQ ID NO:59-116の或る断片によってコードされる。SEQ ID NO:1-58の或る断片は、SEQ ID NO:1-58を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を持ち得る。例えばSEQ ID NO:1-58の或る断片を、SEQ ID NO:1-58を特異的に認識する抗体の開発における免疫原性ペプチドとして用い得る。SEQ ID NO:1-58の或る断片の正確な長さは、また、この断片が対応するSEQ ID NO:1-58の領域は、その断片に意図する目的に基づき、本明細書に記載する、又は当分野で既知の1つ以上の分析法で判定し得る。
「完全長」ポリヌクレオチドとは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)と、それに続く1オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。或る「完全長」ポリヌクレオチド配列は、或る「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
「相同」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列又は2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、また或いは配列同一性を意味する。
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」及び「〜%同一」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた、2つ以上のポリヌクレオチド配列間での同一性の残基の一致の百分率を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
ポリヌクレオチド配列間の一致率(同一性)を判定するには、当分野で既知の、又は本明細書に記載の、1つ以上のコンピュータアルゴリズム又はプログラムを用い得る。例えば一致率を判定するには、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムの、デフォルトのパラメータ群を用い得る。このプログラムは、LASERGENEソフトウェアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。CLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp (1989; CABIOS 5:151-153)、並びにHiggins, D.G.他(1992; CABIOS 8:189-191)に記載がある。ポリヌクレオチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定される。「weighted」残基重み付け表がデフォルトで選択される。
あるいは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)が、一般的に用いられ且つ入手自由な用い得る配列比較アルゴリズム一式を提供している(Altschul, S.F.他(1990)J. Mol. Biol. 215:403-410)。BLASTアルゴリズムは幾つかの情報源から入手可能であり、メリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からも入手可能である。BLASTソフトウェア一式には様々な配列分析プログラムが含まれており、既知のポリヌクレオチド配列を種々のデータベースから得た別のポリヌクレオチド配列とアラインメントする「BLASTn」もその1つである。「BLAST 2 Sequences」というツールも入手可能であり、これは2つのヌクレオチド配列を直接のペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用できる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、BLASTn及びBLASTp(以下に記載)の両方に用い得る。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ(gap)などのパラメータをデフォルト設定にセットして用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてBLASTnを実行し得る。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: −2
Open Gap: 5 and Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100又は200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列表を含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝暗号の縮重が原因で、類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」又は「〜%同一」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の同一性の残基の一致の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の電荷及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(したがって機能も)保存する。ポリペプチド配列に用いられる用語「類似率」又は「〜%類似」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の残基の一致の百分率を指し、同一な残基の一致と保存的置換とを含む。一方、保存的置換は、ポリペプチド配列間の一致率の計算には含まれない。
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いてポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。PAM250マトリクスが、デフォルトの残基重み付け表として選択される。
あるいは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用い得る。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、「BLAST 2 sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)のBLASTpをデフォルトパラメータに設定して用い得る。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
Matrix: BLOSUM62
Open Gap: 11 and Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter: on
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得た断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、又は150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定しうる。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列表を含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
「ヒト人工染色体(HAC)」は直鎖状の微小染色体であり、約6kb〜10MbのサイズのDNA配列を持ち得る。また、染色体の複製、分離及び維持に必要な、全ての要素を持つ。
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつ、よりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列を改変した抗体分子を指す。
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、或る一本鎖ポリヌクレオチドが或る相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニーリング条件下で形成され、1回以上の「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(すなわち完全には一致しない核酸鎖対間の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに関する許容条件は、当業者が慣例的に決定できる。アニール条件はどのハイブリダイゼーション実験でも一定であり得るが、洗浄条件は、所望のストリンジェンシー、したがってハイブリダイゼーション特異性を得るように、実験ごとに変更し得る。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ***DNAが含まれる。
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全一致プローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸ハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook, J.及びD.W. Russell (2001; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版., 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY, 9章)に見られる。
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2xSSC及び約0.1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、約65℃、60℃、55℃、又は42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変更し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤の例として、約100〜200μg/mlの、せん断した変性サケ***DNAがある。特定状況下たとえばRNA:DNAハイブリダイゼーションでは、有機溶剤たとえば約35〜50%v/v濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に、高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、及びヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合の形成によって形成された、2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(Ct又はRt解析など)。あるいは、一方の核酸が溶解状態で存在し、もう一方の核酸が固体支持体(例えば紙、膜、フイルタ、チップ、ピン又はガラススライド、あるいは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸間に形成され得る。
用語「挿入」あるいは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基あるいはヌクレオチドがそれぞれ追加される、アミノ酸配列あるいはポリヌクレオチド配列における変化を指す。
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患又は遺伝性疾患などに関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけ得る。
「免疫原性断片」は、生物(例えば哺乳類)に導入すると免疫応答を引き起こし得る、NAAPのポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片である。用語「免疫原性断片」にはまた、本明細書で開示する又は当分野で既知のあらゆる抗体生産方法に有用な、NAAPの任意のポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片をも含む。
用語「マイクロアレイ」は、或る基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、又は他の化合物の構成を指す。
用語「エレメント」又は「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、又は他の化合物を指す。
用語「モジュレート」又は「活性を調節」は、NAAPの活性を変化させることを指す。例えば、モジュレートによって、NAAPのタンパク質活性の、或いは結合特性の、又はその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起き得る。
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源又は合成起源のDNA又はRNAであって一本鎖又は二本鎖であるかあるいはセンス鎖又はアンチセンス鎖を意味し得るようなDNA又はRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様又はRNA様物質を指すこともある。
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列群は非常に近接するか連続的に隣接することがあり、また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は同一リーディングフレーム内にあり得る。
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを持つ、アンチセンス分子又は抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、この組成に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNA又はRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止させる。ポリエチレングリコール化することにより、細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
NAAPの「翻訳後修飾」としては、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解的切断、及びその他の当分野で既知の修飾を含み得る。これらのプロセスは、合成的或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、NAAPの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なることとなる。
「プローブ」とは、同一、対立遺伝子、あるいは関連する核酸の検出に用いる、NAAPやそれらの相補体、又はそれらの断片をコードする核酸のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであって、検出可能な標識又はレポーター分子に付着した配列である。典型的な標識には、放射性同位元素、リガンド、化学発光剤、及び酵素がある。「プライマー」は、短い核酸、通常はDNAオリゴヌクレオチドであり、相補的塩基対を形成することで標的ポリヌクレオチドにアニーリングされ得る。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素により、標的DNA鎖に沿って伸長され得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸の増幅(及び同定)に用い得る。
本発明に用いるプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の、少なくとも15の連続したヌクレオチド群からなる。特異性を高めるため、長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又は少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーも用い得る。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列表を含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
プローブとプライマーとの調製及び使用方法は、例えばSambrook, J.及びD.W. Russell (2001; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, vol. 1-3, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY), Ausubel, F.M.他(1999; Short Protocols in Molecular Biology, 第4版, John Wiley & Sons, New York NY),及びInnis, M.他(1990; PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego CA)などの参照文献に記載がある。PCRプライマー対を既知の配列から得るには、例えば、そのためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用い得る。
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野で既知のソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、最大で各100ヌクレオチドのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び、最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって最大32キロベースのインプットポリヌクレオチド配列から得た配列を分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)を用いれば、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming library)」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト−リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域又は最小保存領域のいずれかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、独自のものであれ保存されたものであれ、オリゴヌクレオチドとポリヌクレオチド断片との同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCR又はシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、あるいは核酸のサンプルにおいて完全又は部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
「組換え核酸」は、天然核酸ではなく、配列の、2つ以上の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列を持つ核酸である。この人為的組み合わせはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換又は欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部と成し得る。
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部と成すことができ、ベクターは例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなベクターは哺乳類に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳類内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
「調節エレメント」は或る遺伝子の非翻訳領域に通常は由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5’及び3’の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳又はRNA安定性を制御する宿主タンパク質又はウイルスタンパク質と相互作用する。
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸又は抗体の標識に用いる、化学的又は生化学的な成分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、色原体、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分がある。
或るDNA分子に対する「RNA等価物」は、基準となるDNA分子と同じ直鎖のヌクレオチド配列からなるが、生じる全ての窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。NAAP、NAAPをコードする核酸群、又はその断片群を含むと推定されるサンプルとしては、体液と、細胞や細胞から単離した染色体や細胞内小器官(オルガネラ)や膜からの抽出物と、細胞と、溶液中に存在する又は基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリントなどがあり得る。
用語「特異結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドの、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基すなわちエピトープ)であって結合分子が認識する構造の有無に依存する。例えば、或る抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」と抗体とを含む或る反応の中に、エピトープAを持つポリペプチドが、あるいは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離あるいは分離された核酸配列あるいはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上除去、最も好ましくは約90%以上除去されたものを指す。
「置換」とは、1つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドを、それぞれ別のアミノ酸残基又はヌクレオチドに置き換えることである。
「基板」は、任意の好適な固体あるいは半固体の支持物を指し、膜及びフイルタ、チップ、スライド、ウェハ、ファイバー、磁気又は非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、ウェル、溝、ピン、チャネル、孔など、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
「転写イメージ(transcript image)」又は「発現プロファイル」は、所定条件下での所定時間における、或る特定の細胞タイプ又は組織による、遺伝子発現の集合的パターンを指す。
「形質転換(transformation)」とは、外因性DNAが、或る受容細胞に導入されるプロセスを言う。形質転換は、当該分野で公知の種々の方法に従って自然条件又は人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞又は真核宿主細胞に挿入する、任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージあるいはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが、自律的に複製するプラスミドとしてあるいは宿主染色体の一部として複製可能である、安定的に形質転換された細胞が含まれる。更に、限られた期間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
ここで用いる「遺伝形質転換生物(transgenic organism)」とは任意の生物体であって限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個以上の細胞が、ヒトの介入によって、例えば本技術分野で公知のトランスジェニック技術によって導入された異種核酸を有するものである。細胞への核酸の導入は、直接又は間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって行う。これは、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によってあるいは組換えウイルスの導入によって行う。別の実施態様で核酸の導入は、組換えウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを感染させて成し得る(Lois, C. 他(2002) Science 295:868-872)。本発明に基づいて企図される遺伝形質転換生物には、細菌、藍藻、真菌、及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換又はトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物に移入する技術は周知であり、前出のSambrook及びRussellなどの参照文献に提示される。
特定の核酸配列の「変異体」とは、核酸配列1本の或る長さ全体について、該特定核酸配列に対し少なくとも40%の配列同一性を有する核酸配列として決定された配列である。決定には、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてBLASTnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。変異体は、例えば、「対立遺伝子」変異体(上述)、「スプライス」変異体、「種」変異体、又は「多型」変異体と記述され得る。スプライス変異体は参照分子との顕著な同一性を有し得るが、mRNAプロセシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって通常、より多数又はより少数のヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、あるいは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチドである。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互に有意のアミノ酸同一性を持つ。多型変異体は、或る種の個体間における、或る特定遺伝子のポリヌクレオチド配列内での変異である。多型変異体にはまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチド塩基が異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の集団、病態又は病態性向を示し得る。
特定のポリペプチド配列の「変異体」とは、ポリペプチド配列1本の或る長さ全体について、該特定ポリペプチド配列に対し少なくとも40%の配列同一性又は配列類似性を有するポリペプチド配列として定義される。決定には、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてBLASTpを実行する。このようなポリペプチド対は、そのポリペプチドの一方の所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性又は配列類似性を示し得る。
(発明)
本発明の様々な実施様態は、新規のヒト核酸結合タンパク質群(NAAP)及び、NAAPをコードするポリヌクレオチド群を含む。また、これらの組成物を利用した、細胞増殖異常、神経障害、発達障害、自己免疫/炎症性障害、及び感染症の、診断、治療、又は予防を含む。
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド実施態様及びポリペプチド実施態様の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。列6は、本発明のポリペプチド配列とポリヌクレオチド配列とに対応する物理的完全長クローン群のIncyteID番号を示す。完全長クローンは、列3に示すポリペプチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を持つポリペプチドをコードする。
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチドの具体化例に相同な配列群を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、最も近いGenBank相同体のGenBank識別番号(GenBank ID NO:)と、最も近いPROTEOMEデータベース相同体のPROTEOMEデータベース識別番号(PROTEOME ID NO:)とを示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5はGenBank及びPROTEOMEデータベースの相同体の注釈を示し、更に該当箇所には関連する引用文献も示す。これらすべては特にこの参照により開示に含まれる。
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4は潜在的リン酸化部位を示し、列5は潜在的グリコシル化部位を示すが、これはGCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Accelrys, Burlington MA)によって決定された。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、及びモチーフを持つアミノ酸残基を示す。列7はタンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に用いた検索可能なデータベースを示す。
表2及び3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が、請求の範囲に記載されたポリペプチドが核酸結合タンパク質であることを確立している。例えば、SEQ ID NO:2はヒトのDNA結合タンパク質(GenBank ID g1020145)と残基T192から残基T586までで57%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは1.1e−149であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:2は、核に局在し、DNAに結合し、1つのKRABドメインを含む或るZnフィンガータンパク質であると、PROTEOMEデータベースを用いたBLAST解析により判定された。SEQ ID NO:2はまた、1つのKRABボックスと14個のC2H2タイプZnフィンガードメイン群とを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメイン群のPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS及びその他のBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:2がKRABファミリのZnフィンガータンパク質である、さらに補強証拠を提供する。
別の例において、SEQ ID NO:16はニワトリの転写因子LEF−1(GenBank ID g3258665)と残基M1からR364にかけて93%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって決定された。(表2参照)。BLAST確率スコアは9.8e−191であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:16は、核に局在し、DNA結合タンパク質として機能する転写アクチベータであると、PROTEOMEデータベースを用いたBLAST解析により判定された。SEQ ID NO:16はまた、1つのHMG(高移動度グループ)ボックスドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメイン群のPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPSからのデータ及びその他のBLAST解析は、SEQ ID NO:16がLEF−1転写因子であることの更なる補強証拠を提供する。
また他の例として、SEQ ID NO:19はリボソームタンパク質L27a(GenBank ID g550017)に対して、H19残基からA113残基まで56%同一、そしてM1残基からY48残基まで100%同一であることがBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは1.4e−31であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:19は大きな60Sリボソームサブユニットであり、結腸直腸癌において異常に発現されることが、PROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:19はまた、1つのリボゾームL15ドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメイン群のPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:19がリボソームタンパク質である、更なる補強証拠を提供する。
別の例において、SEQ ID NO:51はM1残基からH477残基まででヒトの転写因子(GenBank ID g516381)に98%の同一性を有するが、これはBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって同定される(表2参照)。BLAST確率スコアは3.5e−266であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:51はまた、さらに神経細胞に局在するタンパク質と相同性を有し、DNA結合及び転写機能を有するフォークヘッドタンパク質であることがPROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって決定された。SEQ ID NO:51はまた、1つのフォークヘッドドメインを有するが、これは隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメインのPFAMデータベースにおいて統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:51がフォークヘッドDNA結合タンパク質である、さらなる補強証拠を提供する。
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3-15、SEQ ID NO:17-18、SEQ ID NO:20-50及びSEQ ID NO:52-58については、同様の方法で分析し、注釈を付けた。SEQ ID NO:1-58の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
表4に示すように、完全長ポリヌクレオチド実施態様は、cDNA配列又はゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、あるいはこれら2種類の配列を任意に組み合わせてアセンブリした。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)及び対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、及び塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、完全長ポリヌクレオチド実施態様のアセンブリに使われたcDNA配列及び/又はゲノム配列のヌクレオチド開始位置(5’)と停止位置(3’)、及びSEQ ID NO:59-116を同定するか、又はSEQ ID NO:59-116と、関連するポリヌクレオチド配列とを区別する技術(例えば、ハイブリダイゼーション技術又は増幅技術)に有用なポリヌクレオチドの断片のヌクレオチド開始位置(5’)と終了位置(3’)を示す。
表4の列2に記載したポリヌクレオチド断片は、特に例えば組織特異的cDNAライブラリ群やプールしたcDNAライブラリ群に由来するIncyte cDNA群を指す場合もある。或いは列2に記載のポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチドのアセンブリに寄与したGenBankcDNA又はESTを指す場合もある。さらに、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、英国ケンブリッジ)データベースから由来した配列(即ち「ENST」命名を含む配列)を同定し得る。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSEQ Nucleotide SEQuence Recordsデータベースから由来する場合もあり(即ち「NM」又は「NT」の命名を含む配列)、またNCBI Refseq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。又は列2に記したポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予測エキソン群の両方からなるアセンブリ体を指す場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N_N_YYYYY_N_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列はアルゴリズムが適用される配列のクラスタの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYYであり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「縫合された」配列である(実施例5参照)。又は、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンのアセンブリ体を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は「ストレッチ」配列である。ここでXXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号又はNCBI Refseq識別番号である。(実施例5を参照。)あるRefseq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、Refseq識別番号(「NM」、「NP」、又は「NT」によって表される)が、GenBank識別(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
あるいは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、又は組み合わされた配列解析方法に由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
Figure 2005508636
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために、表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNA適用範囲が得られたが、該当するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
表5は、Incyte cDNA配列を用いてアセンブリされた完全長ポリヌクレオチドのための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリとはIncyte cDNAライブラリであり、これは、最も頻繁にはIncyte cDNA配列群によって代表されるが、これら配列は、上記ポリヌクレオチドをアセンブリ及び確認するために用いられた。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
本発明には、NAAPの変異体も含まれる。NAAPの変異体の種々の実施例は、NAAPアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約90%、あるいは、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有し、NAAPの機能的又は構造的特徴を少なくとも1つ含み得る。
種々の実施態様もまた、NAAPをコードするポリヌクレオチドをも含む。特定の実施態様において、本発明は、NAAPをコードする、SEQ ID NO:59-116からなる一群から選択された1配列を持つポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ ID NO:59-116のポリヌクレオチド配列は、配列表に示されているように等価RNA配列と同等の価値を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくシリボースから構成されている。
本発明はまた、NAAPをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このような変異体ポリヌクレオチド配列は、NAAPをコードするポリヌクレオチド配列との、少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、あるいは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を持つこととなる。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:59-116からなる一群から選択された核酸と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:59-116からなる一群から選択された配列を含む変異ポリヌクレオチドを提供する。上記したポリヌクレオチド変異配列は何れも、NAAPの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するポリペプチドをコードする。
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異体はNAAPをコードするポリヌクレオチドのスプライス変異配列である。或るスプライス変異体はNAAPをコードするポリヌクレオチドとの顕著な配列同一性を持つ部分複数を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって生ずる、配列の数ブロックの付加又は欠失により、通常、より多数又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。或るスプライス変異体には、約70%未満、又は約60%未満、あるいは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、NAAPをコードするポリヌクレオチドとの間で全長に渡って見られるが、このスプライス変異体のいくつかの部分には、NAAPをコードするポリヌクレオチドの各部との、少なくとも約70%、あるいは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%、なお又は100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。例えばSEQ ID NO:105の配列を持つポリヌクレオチドとSEQ ID NO:110の配列を持つポリヌクレオチドとは互いのスプライス変異体である。上記のスプライス変異体は何れも、NAAPの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るポリペプチドをコードし得る。
遺伝暗号の縮重により、NAAPをコードする種々のポリヌクレオチド配列が作り出され、中には、既知のいかなる天然遺伝子のポリヌクレオチド配列群とも最小の類似性しか有しない配列もあることは、当業者には理解されよう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組み合わせの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列バリエーションを企図する。これらの組み合わせは、天然NAAPのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られる。また、こうした全ての変異が明確に開示されていると考慮されたい。
NAAPをコードするポリヌクレオチド及びその変異体は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のNAAPのポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するNAAP或いはその誘導体をコードするポリヌクレオチドを作ることは有利となり得る。宿主が特定コドンを利用する頻度に基づき、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようコドンを選択し得る。コードされるアミノ酸配列を改変せずに、NAAP及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に改変する別の理由には、天然配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることもある。
本発明はまた、NAAP及びその誘導体をコードするポリヌクレオチド又はそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成ポリヌクレオチドを、当分野で公知の試薬を用いて、多くの入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、NAAP又はその任意の断片をコードするポリヌクレオチドの中に突然変異を導入することも可能である。
本発明の実施態様には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載のポリヌクレオチド、特に、SEQ ID NO:59-116に示す配列を持つポリヌクレオチド、及びそれらの断片群にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド群が含まれる(Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399-407、Kimmel, A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507-511)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載した。
DNAシークエンシングの方法は当分野では周知であり、本発明のいずれの実施態様にも、DNAシークエンシング方法を用い得る。DNAシークエンシング方法には酵素を用い得る。例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham Biosciences, Piscataway NJ)を用い得る。あるいは、例えばELONGASE増幅システム(Invitrogen, Carlsbad CA)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼとを併用し得る。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)などの装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373或いは377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)又は当分野で既知の他のシステムを用いてシークエンシングを行う。結果として得た配列を、当分野で周知の種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel他、前出、7章; Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページ)。
当分野で周知の、PCR法をベースにした種々の方法と、部分的ヌクレオチド配列とを利用して、NAAPをコードする核酸を伸長し、プロモーターや調節エレメントなど、上流にある配列を検出し得る。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic.2:318-322)。別の方法にインバースPCR法があり、これは多岐の方向に伸長するプライマー群を用いて、環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(Triglia, T.他(1988) Nucleic Acids Res.16:8186)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これにはヒト及び酵母人工染色体DNAの既知の配列群に隣接するDNA断片群をPCR増幅する方法を含む(Lagerstrom, M.他(1991) PCR Methods Applic.1:111119)。この方法では、PCRを行う前に、複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用い、未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入し得る。未知の配列群を検索するために用い得る、他の複数の方法も当分野で既知である(例えばParker, J.D.他(1991) Nucleic Acids Res.19:30553060)。更に、PCR、ネステッドプライマー類、及びPROMOTERFINDERライブラリ類(Clontech, Palo Alto CA)を用いて、ゲノムDNAをウォーキングし得る。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)あるいは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更にランダムプライマーのライブラリは遺伝子群の5’領域を有する配列群をしばしば含んでおり、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリ群は、5’非転写調節領域への、配列の伸長に有用であろう。
市販のキャピラリー電気泳動システム群を用いて、シークエンシング又はPCR産物のサイズを分析し、又はそのヌクレオチド配列を確認し得る。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチド特異的な、レーザーで刺激される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
本発明の別の実施例では、NAAPをコードするポリヌクレオチド又はその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にNAAP、その断片又は機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号に固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のポリペプチドをコードする別のポリヌクレオチドが作られ得り、これらの配列をNAAPの発現に利用可能である。
種々の目的でNAAPがコードする配列を変えるために、本発明のヌクレオチドを当分野で通常知られている方法を用いて組み換えることができる。ここで目的には、限定するものではないが遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、発現の調節がある。遺伝子断片と合成オリゴヌクレオチドとの、ランダムな断片化及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組換え得る。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異導入を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの改変、コドン選択性の変更、スプライス変異体の生成などを起こす突然変異を導入し得る。
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA, 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他(1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797; Christians, F.C. 他(1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264; Crameri, A. 他(1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319)などのDNAシャッフリング技術の対象となり得る。これにより、生物活性又は酵素活性、あるいは他の分子や化合物と結合する能力など、NAAPの生物学的特性を改変あるいは改良し得る。DNAシャッフリングは、PCRを介する遺伝子断片組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。ライブラリはその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体群を同定する、選択又はスクリーニングの手順を経る。続いて、これら好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行い得る。かくして、「人工的な」育種及び急速な分子の進化によって、多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムな点突然変異を持つ単一の遺伝子の断片を組換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングし得る。あるいは、所定の遺伝子の断片群を同種又は異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリの相同遺伝子の断片と組換えて、自然に生じる複数遺伝子の遺伝的多様性を、定方向の、制御可能な方法で最大化できる。
別の実施態様では、NAAPをコードするポリヌクレオチドは、当分野で周知の1つ以上の化学的方法を用いて、全体或いは一部を合成可能である(例えば、Caruthers, M.H.他(1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215-223; Horn, T.他(1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225-232)。或いはNAAP自体又はその断片の合成に、当分野で既知の化学的方法を用い得る。例えば種々の液相又は固相技術を用いてペプチド合成を行い得る(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY,55-60ページ; Roberge, J.Y.他(1995) Science 269:202-204)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更に、NAAPのアミノ酸配列又は任意のその一部を、直接合成の際に改変することにより、及び/又は他のタンパク質からの配列群又は任意のその一部と組み合わせることにより、或る天然ポリペプチドの配列を有するポリペプチド又は変異体ポリペプチドが作製され得る。
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.及び F.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421)。この合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンシングで確認できる(前出Creighton,28-53ページ)。
生物学的に活性なNAAPを発現させるために、NAAPをコードするポリヌクレオチド又はその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコード配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。必要なエレメントとしては、該ベクターと、NAAPをコードするポリヌクレオチド群とにおける調節配列群(エンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5’及び3’の非翻訳領域など)が含まれる。必要なエレメント群は、強度及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、NAAPをコードするポリヌクレオチドのより効果的な翻訳を達成することが可能である。開始シグナルの例には、ATG開始コドンと、コザック配列など近傍の配列とが含まれる。NAAPをコードするポリヌクレオチド配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コード配列あるいはその断片のみが挿入される場合は、インフレームATG開始コドンなど外来性の翻訳制御シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳エレメント及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(Scharf, D.他(1994) Results Probl.Cell Differ. 20:125162)。
当業者に周知の方法を用いて、NAAPをコードするポリヌクレオチド、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝的組換えがある(Sambrook及びRussell,前出、1-4,及び8章;Ausubel他、前出、1、3,及び15章)。
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、NAAPをコードするポリヌクレオチドの保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌などの微生物や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス:CaMV又はタバコモザイクウイルス:TMV)又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系等がある(Sambrook及びRussell,前出、Ausubel 他、前出、Van Heeke, G. 及び S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:55035509; Engelhard, E.K. 他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther.7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill, New York NY, 191-196ページ、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他(1997) Nat. Genet. 15:345-355)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス又はワクシニアウイルス由来の発現ベクター、又は種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ポリヌクレオチドを標的器官、組織又は細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M.他(1998) Cancer Gen. Ther. 5:350-356; Yu, M.他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6340-6344; Buller, R.M.他(1985) Nature 317:813-815; McGregor, D.P.他(1994) Mol. Immunol. 31:219-226; Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242)。本発明は使用する宿主細胞によって限定されない。
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、NAAPをコードするポリヌクレオチドの使用目的に応じて選択可能である。例えば、NAAPをコードするポリヌクレオチドの日常的なクローニング、サブクローニング及び増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)又はPSPORT1プラスミド(Invitrogen)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。NAAPをコードするポリヌクレオチドをこのベクターのマルチクローニング部位にライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を持つ形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G. 及び S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のNAAPが必要な場合は、NAAPの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーター又は誘導T7バクテリオファージプロモーターを持つベクターが使用できる。
酵母の発現系を使用してNAAPを産出することもできる。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)又はピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の、分泌か細胞内での保持かのどちらかを指示するものであり、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来ポリヌクレオチド配列群を組み込むことを可能にする(Ausubel他、前出;Bitter, G.A.他(1987) Methods Enzymol.153:516-544; Scorer, C.A.他(1994) Bio/Technology 12:181-184)。
植物系もNAAPの発現に使用可能である。NAAPをコードするポリヌクレオチドの転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307-311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。あるいは、RUBISCOの小サブユニットなどの植物プロモーター、又は熱ショックプロモーターを用い得る(Coruzzi, G.他(1984) EMBO J. 3:1671-1680; Broglie, R.他(1984) Science 224:838-843; Winter, J.他(1991) Results Probl.Cell Differ. 17:85105)。これらの構成物は、直接DNA形質転換又は病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ)。
哺乳類細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にNAAPをコードするポリヌクレオチドを連結し得る。ウイルスのゲノムの非必須のE1又はE3領域への挿入により、感染した宿主細胞にNAAPを発現する生ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655-3659)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40又はEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
また、ヒト人工染色体(HAC)類を用いて、或るプラスミドに含まれ得る断片やプラスミドから発現し得る断片より大きなDNA断片群を送達し得る。治療のために約6kb〜10MbのHACsが作製され、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、又はベシクル)で送達されている(Harrington, J.J.他(1997) Nat. Genet. 15:157-355)。
哺乳動物系内の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、細胞株におけるNAAPの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、NAAPをコードするポリヌクレオチドを株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素及び/又は内因性の発現要素や、同じベクター上に或いは別のベクター上に選択マーカー遺伝子を含み得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間、細胞を増殖させ得る。選択可能マーカーの目的は選択剤への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーの存在により、導入した配列の発現に成功するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖できる。
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質あるいは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシドであるネオマイシン及びG−418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(Wigler, M. 他(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567-3570; Colbere-Garapin, F.他(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C.及び R.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、又はルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、形質転換体を同定するだけでなく、特定のベクター系に起因しうる一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することも可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131)。
マーカー遺伝子発現の有無によって当該の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、NAAPをコードする配列が或るマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、NAAPをコードするポリヌクレオチド群を有する形質転換された細胞群は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定できる。又は、単一プロモーターの制御下で、或るマーカー遺伝子を、NAAPをコードする1配列とタンデムに配置することもできる。誘導又は選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
一般に、NAAPをコードするポリヌクレオチドを含み且つNAAPを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA−DNAハイブリダイゼーション或いはDNA−RNAハイブリダイゼーション、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出、定量、或いはその両方を行うための膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含むタンパク質の生物学的検定法又は免疫学的検定法がある。
特異的ポリクローナル抗体又は特異的モノクローナル抗体を用いてNAAPの発現の検出と計測とを行うための免疫学的方法は、当分野で既知である。このような技術の例としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)などが挙げられる。NAAP上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体群を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合試験を用いることもできる。これらのアッセイ及び他のアッセイは、当分野で周知である(Hampton, R.他(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press, St. Paul MN, Sect.IV; Coligan, J.E.他(1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience, New York NY; Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ)。
多岐にわたる標識方法及び抱合技術が当業者に知られており、様々な核酸アッセイ及びアミノ酸アッセイにこれらの技術を用い得る。NAAPをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、エンドラベリング(末端標識化)、又は標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、NAAPをコードするポリヌクレオチド群、又はその任意の断片群を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングできる。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3又はSP6などの好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えばAmersham Biosciences、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemicalなどの種々の市販キットを用いて実行できる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子あるいは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、色原体などがある。
NAAPをコードするポリヌクレオチド群で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、あるいはその両者に依存する。NAAPをコードするポリヌクレオチド群を持つ発現ベクター類は、原核細胞膜又は真核細胞膜を透過してのNAAPの分泌を指示するシグナル配列群を持つように設計できることは、当業者には理解されよう。
更に、宿主細胞株の選択は、挿入したポリヌクレオチドの発現をモジュレートする能力、又は発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」又は「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ、及び/又は活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための、特定の細胞機構及び特徴的な機序を持つ、種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、WI38など)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするように選択し得る。
本発明の別の実施例では、NAAPをコードする天然のポリヌクレオチド、修飾されたポリヌクレオチド、又は組換えのポリヌクレオチドを上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に連結させ得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラNAAPタンパク質は、NAAP活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分はまた、市販されている親和性マトリックスを用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6−Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c−myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いた、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、融合タンパク質が、NAAPをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を持つように遺伝子操作すると、精製後にNAAPが異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel他(前出、10及び16章)に記載がある。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液又はコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したNAAPの合成が可能である。これらの系は、T7、T3又はSP6プロモーターに機能的に連結したタンパク質コード配列群の、転写と翻訳とを共役させる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
本発明のNAAP又はその断片を用いて、NAAPに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。1つ以上の試験化合物をNAAPへの特異的な結合についてスクリーニングすることができる。種々の実施例において、NAAPに対する特異結合について、1、2、3、4、5、10、20、50、100又は200の試験化合物をスクリーンすることができる。試験化合物の例として、抗体、アンティカリン(anticalins)、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンドや受容体)、又は小分子が挙げられる。
関連する実施例において、NAAP、NAAPの変異体、あるいはNAAP及び/又は1つ以上のNAAP変異体とのある組み合わせへの試験化合物(抗体等)の結合/をスクリーニングするために、NAAP変異体を用いることができる。ある実施例においては、SEQ ID NO:1-58の配列の正確な配列を有するNAAPではなく、NAAPの変異体に結合する化合物のスクリーニングにSCAPの変異体を用いることができる。このようなスクリーニングを行うために使うNAAP変異体はNAAPに約50%から約99%の範囲で配列同一性を有し得る。また、種々の実施例で60%、70%、75%、80%、85%、90%,及び95%の配列同一性を有することができる。
或る実施態様でNAAPへの特異結合スクリーニングで同定された化合物は、NAAPの天然リガンドに密接に関連する場合があり、例えばリガンドやその断片であり、又は天然基質や、構造的又は機能的な擬態物質(mimetic)、あるいは自然結合パートナーである(Coligan, J.E.他(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):5章)。別の実施態様では、こうして同定した化合物は、受容体DMEの天然リガンドでありうる(Howard, A.D.他(2001) Trends Pharmacol.Sci.22:132-140; Wise, A. 他(2002) Drug Discovery Today 7:235-246)。
別の実施態様で該化合物は、NAAPへの特異結合に対するスクリーニングにおいて同定された化合物は、NAAPが結合する天然受容体に、或いは少なくとも該受容体の或る断片、又は例えばリガンド結合部位や結合ポケットの全体又は一部を含む該受容体の或る断片に密接に関連し得る。例えば該化合物は、シグナルを伝播可能なNAAP受容体の場合や、シグナルを伝播できないNAAPおとり受容体の場合がある(Ashkenazi, A.及びV.M. Divit (1999) Curr. Opin. Cell Biol.11:255-260、Mantovani, A. 他(2001) Trends Immunol. 22:328-336)。該化合物は既知の技術を用いて合理的に設計できる。こうした技術の例としては、化合物エタネルセプト(etanercept)(ENBREL; Amgen Inc., Thousand Oaks CA)作製に用いた技術を含む。エタネルセプトは、ヒトのリウマチ様関節炎の治療に有効である。エタネルセプトは遺伝子操作されたp75腫瘍壊死因子(TNF)受容体ダイマーであり、ヒトIgGのFc部分に連結されている(Taylor, P.C. 他(2001) Curr. Opin. Immunol. 13:611-616)。
ある実施態様においては、類似した、あるいは異なる特異性を持つ2つ以上の抗体を、NAAP、NAAPの断片又はNAAPの変異体への結合についてスクリーニングすることができる。このようにしてスクリーニングされた抗体の結合特異性は、その特異的結合によって、NAAPの特定の断片又は変異体を同定することができる。ある実施態様においては、NAAPの特定の断片又は変異体を優先的に同定するように抗体の結合特異性を選ぶことができる。もう1つの実施態様においては、NAAPの産生の増加、減少あるいはその他の異常産生を伴う特定の病気又は状態を優先的に診断できるように抗体の結合特異性を選ぶことができる。
ある実施態様においては、anticalinをNAAP、NAAPの断片又はNAAPの変異体への結合についてスクリーニングすることができる。anticalinはリポカリン足場に基づいて作成されたリガンド結合タンパク質である(Weiss, G.A. 及び H.B. Lowman (2000) Chem. Biol. 7:R177-R184、Skerra, A. (2001) J. Biotechnol. 74:257-275)。リポカリン類のタンパク構造には8本鎖逆平行βストランドを持つ或るβバレルを含むことがあり、このバレルはその開放端で4つのループを支持する。これらのループはリポカリンの天然リガンド結合部位を形成し、この部位はin vitroでアミノ酸置換によって再度人工操作して、新規な結合特異性を与えることができる。このアミノ酸置換は当分野で既知の方法又は本明細書に記載の方法を用いて行うことができる。また、保存的置換(例えば、結合特異性を変えないような置換)、あるいは、結合特異性を少し、中等度、又は大きく変えるような置換を行うこともできる。
一実施態様では、NAAPに特異的に結合、もしくは刺激又は阻害する化合物のスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてNAAPを発現する適切な細胞の作製が含まれる。好適な細胞としては、哺乳類、酵母、ショウジョウバエ、又は大腸菌からの細胞が含まれうる。NAAPを発現する細胞又はNAAPを含有する細胞膜分画を次に試験化合物と接触させて、NAAP又はこの化合物のどちらかの結合、刺激、又は活性の阻害を分析する。
或るアッセイでは単に試験化合物がポリペプチドに結合するのを試験でき、結合を、フルオロフォア、放射性同位体、酵素抱合体又は他の検出可能な標識により検出する。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の、あるいは固体支持物に固定されたNAAPと混合するステップと、NAAPとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法で該アッセイは、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出又は測定を行うことができる。更にこのアッセイは、無細胞再構成標本、化学ライブラリ、又は、天然物の混合物を用いて実施でき、試験化合物(群)は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定する。
アッセイを用いて、或る化合物が、その天然リガンドに結合する能力、及び/又は、その天然リガンドの、その天然受容体への結合を阻害する能力を評価しうる。こうしたアッセイの例としては、米国特許第5,914,236号及び第6,372,724号に記載されたような放射ラベルアッセイを含む。関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(受容体など)に導入され、その天然リガンドに結合する能力を向上又は改変しうる(Matthews, D.J. 及び J.A. Wells. (1994) Chem. Biol. 1:25-30)。別の関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(リガンドなど)に導入され、その天然受容体に結合する能力を向上又は改変しうる(Cunningham, B.C.及びJ.A. Wells (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3407-3411; Lowman, H.B.他(1991) J. Biol. Chem. 266:10982-10988)。
NAAP又はその断片、あるいはNAAPの変異体を用いて、NAAPの活性を変調する化合物をスクリーニングすることができる。このような化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト又は逆アゴニストなどが含まれ得る。或る実施例では、NAAPを少なくとも1つの試験化合物と混合する、NAAPの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのNAAPの活性と、試験化合物不在下でのNAAPの活性とを比較する。試験化合物の存在下でのNAAPの活性の変化は、NAAPの活性をモジュレートする化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物を、NAAPの活性に適した条件下で、NAAPを含むin vitroすなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、NAAPの活性をモジュレートする試験化合物は間接的に調節する場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、又は複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、NAAP又はその哺乳類相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(例えば米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号を参照)。例えば129/SvJ細胞系などのマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R.(1989)Science 244:1288-1292)などのマーカー遺伝子で破壊した、目的の遺伝子を持つベクターで形質転換される。このベクターは、相同組換えにより、宿主ゲノムの対応する領域に組込まれる。或いは、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的又は発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002、Wagner, K.U.他(1997) Nucleic Acids Res.25:4323-4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス株などから採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。これらの胚盤胞を偽妊娠メスに外科的移植し、得られるキメラ子孫の遺伝子型を決定し、これらを交配させてヘテロ接合性系又はホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒物で検査されうる。
NAAPをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞タイプを含む、少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他(1998) Science 282:1145-1147)。
NAAPをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)又は遺伝子組換え動物(マウス又はラット)を作製することもできる。ノックイン技術を用いて、NAAPをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫又は近交系について試験し、潜在的医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばNAAPを乳汁内に分泌するなどNAAPを過剰発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他(1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
(治療)
NAAPの領域と核酸結合タンパク質の領域との間には、例えば配列及びモチーフの文脈における、化学的及び構造的類似性が存在する。さらに、NAAPを発現する組織の例が、表6及び実施例11に見つけられる。従って、NAAPは、細胞増殖異常、神経疾患、発達障害、及び自己免疫/炎症性疾患、及び感染症においてある役割を果たすと考えられる。NAAPの発現又は活性の増大に関連する疾患の治療においては、NAAPの発現又は活性を低下させることが望ましい。また、NAAPの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、NAAPの発現又は活性を増大させることが望ましい。
従って、一実施態様では、NAAPの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にNAAP又はその断片や誘導体が投与され得る。限定するものではないが、このような疾患には細胞増殖異常、神経疾患、発達障害、自己免疫/炎症疾患、及び感染症が含まれ、細胞増殖異常には日光角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、***、頚部、結腸、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、神経疾患には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioBLASTomatosis)、脳三叉神経血管腫症候群、中枢神経系性精神遅滞及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経疾患、脊髄疾患、筋ジストロフィー他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/***病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病が含まれ、発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith-Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれ、自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環や、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫及び原虫の感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、感染症には、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス(bunyavirus)、カリチウイルス(calicivirus)、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トガウイルスに分類されるウイルス病原体による感染や、細菌による感染(肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バシラス菌、コリネバクテリウム、クロストリジウム、髄膜炎菌、淋菌、リステリア、モラクセラ、キンゲラ、ヘモフィルス、レジオネラ、百日咳菌類(ボルデテラ)や、シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを含むグラム陰性腸内細菌、シュードモナス、ビブリオ、ブルセラ、野兎病菌類(フランシセラ)、エルシニア、バルトネラ、norcardium、放線菌、ミコバクテリウム、spirochaetale、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマに分類)、真菌感染(分類はアスペルギルス、ブラストミセス、皮膚糸状菌、クリプトコッカス、コクシジオイデス、malasezzia、ヒストプラスマ、又は他の真菌症起因菌)、寄生虫感染(分類はプラスモディウムすなわちマラリア原虫、寄生性アメーバ、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスチスカリニ、腸内原虫(ジアルジアなど)、トリコモナス、組織線虫(旋毛虫など)、腸管寄生線虫(回虫など)、リンパ管フィラリア線虫、吸虫(住血吸虫など)、及び条虫(サナダムシなど))が含まれる。
別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、NAAPの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、NAAP又はその断片や誘導体を発現し得るベクターを被験者に投与し得る。
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、NAAPの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、実質的に精製されたNAAPを有する組成物を、好適な医薬用キャリアと共に被験者に投与し得る。
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、NAAPの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、NAAPの活性を調節するアゴニストを被験者に投与し得る。
更なる実施例では、NAAPの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にNAAPのアンタゴニストを投与し得る。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した細胞増殖異常、神経障害、発達障害、自己免疫/炎症性疾患、及び、感染症が含まれる。一態様では、NAAPと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはNAAPを発現する細胞又は組織に薬剤を運ぶターゲッティング機構或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
別の実施態様では、NAAPをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを被験者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含む、NAAPの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防を成し得る。
別の実施態様では、任意のタンパク質、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、相補配列、又はベクター実施態様を、別の適切な治療薬と組み合わせて投与できる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療又は予防に相乗効果をもたらし得る。この方法により、少量の各薬物で治療効力を得ることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
NAAPのアンタゴニストは、本技術分野で一般的に知られている方法を用いて製造し得る。具体的には、精製されたNAAPを用いて抗体を作るか、治療薬のライブラリをスクリーニングして、NAAPと特異結合するものを同定することが可能である。NAAPへの抗体も、本技術分野で公知の方法を用いて産生され得る。限定するものではないがこのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれ得る。或る実施態様では、中和抗体(すなわち二量体形成を阻害する抗体)を治療に用い得る。一本鎖抗体(例えばラクダ又はラマ由来)は強力な酵素阻害剤である可能性があり、ペプチド擬態物質の設計において、また免疫吸着剤とバイオセンサーとの開発において適用を持つようである(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒトなどを含む種々の宿主が、NAAP、若しくは免疫原性の特性を備えるその任意の断片又はオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバントと、界面活性剤(リゾレシチン等)、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ジニトロフェノールなどがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
NAAPに対する抗体を誘導するために用いるオリゴペプチド、ペプチド又は断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を持つものが好ましく、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものとなる。これらのオリゴペプチド、ペプチド又は断片はまた、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と実質的に同一であることが望ましい。NAAPアミノ酸類の短いストレッチ群は、KLHなど他のタンパク質の配列と融合され、このキメラ分子に対する抗体群が産生され得る。
NAAPに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV−ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G.他(1975) Nature 256:495-497; Kozbor, D.他(1985) J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote, R.J.他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole, S.P.他(1984) Mol.Cell Biol. 62:109-120)。
更に、「キメラ抗体」作製のために開発された技術、例えば、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を有する分子を得るために用いられる(Morrison, S.L. 他(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Neuberger, M.S. 他(1984) Nature 312:604-608; Takeda, S.他(1985) Nature 314:452-454)。別法では、当分野で周知の方法を用い、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、NAAP特異的一本鎖抗体を生成する。関連した特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムなコンビナトリアルの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137)。
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリ又はパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833-3837; Winter, G.他(1991) Nature 349:293-299)。
NAAPに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も産生され得る。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)断片と、F(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。あるいは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D.他(1989) Science 246:1275-1281)。
種々の免疫学的検定(イムノアッセイ)を用いてスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れかを用いる免疫放射定量測定法又は競合結合アッセイに対する数々のプロトコルは、本技術分野において公知である。このようなイムノアッセイは通常、NAAPとその特異抗体との間の複合体形成の計測を含む。2つの非干渉性NAAPエピトープに対して反応性を持つモノクローナル抗体群を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合試験も利用できる(Pound、前出)。
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、NAAPに対する抗体の親和性を評価し得る。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態下の、NAAP抗体複合体のモル濃度を、遊離抗体と遊離抗原とのモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体類は多様なNAAPエピトープに対して親和性が不均一であり、或るポリクローナル抗体製剤に関して判定したKaは、NAAPに対する抗体群の平均の親和性又は結合活性を表す。モノクローナル抗体は或る特定のNAAPエピトープに対して単一特異的であり、モノクローナル抗体の或る製剤について判定したKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が10〜1012liter/molの高親和性抗体製剤は、NAAP−抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が10〜10liter/molの低親和性抗体製剤は、NAAPが抗体から最終的に(好ましくは活性化状態で)解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D.(1988)Antibodies, Volume I: A Practical Approach, IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. 及び Cryer, A.(1991)A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
ポリクローナル抗体製剤の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う数種の適用例に対するこのような製剤の品質及び適合性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体製剤は一般に、NAAP抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(Catty、前出、Coligan他、前出)。
本発明の別の実施態様では、NAAPをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用することができる。或る実施例では、NAAPをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、又は修飾したオリゴヌクレオチド)を設計して遺伝子発現をモディフィケーションし得る。このような技術は当分野では周知であり、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又は大きな断片が、NAAPをコードする配列の制御領域から、又はコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S., 編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press., Totawa NJ)。
治療に用いる場合、アンチセンス配列を適切な標的細胞に導入するのに好適な、任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で、細胞内に送達し得る(Slater, J.E.他(1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102:469-475; Scanlon, K.J.他(1995) 9:1288-1296)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W. 及び W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63:323-347)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51:217-225; Boado, R.J.他(1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C.他(1997) Nucleic Acids Res. 25:2730-2736)。
本発明の別の実施態様では、NAAPをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療により、(i)遺伝子欠損症を治療し(例えばX染色体連鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M.他(2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重症複合型免疫不全(SCID)−X1病の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重症複合型免疫不全症候群(Blaese, R.M. 他(1995) Science 270:475-480; Bordignon, C.他(1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J.他(1993) Cell 75:207-216; Crystal, R.G.他(1995) Hum.Gene Therapy 6:643-666; Crystal, R.G.他(1995) Hum.Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症や、第8因子若しくは第9因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. 及び N. Somia (1997) Nature 389:239-242)、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば無秩序な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生体、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poeschla, E.他(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)などヒトレトロウイルス、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の寄生真菌、並びに熱帯熱マラリア原虫及びクルーズトリパノソーマ等の寄生原虫に対する保護作用を与えるタンパク質を発現できる。NAAPの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からNAAPを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
本発明の更なる実施例では、NAAPの欠損による疾患や異常症を、NAAPをコードする哺乳類発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってNAAP欠損細胞に導入することによって治療する。in vivoあるいはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポゾンの使用がある(Morgan, R.A. 及び W.F. Anderson(1993)Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z.(1997)Cell 91:501-510; Boulay, J-L. 及びH. Recipon(1998)Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)。
NAAPの発現に有効でありうる発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV−SCRIPT、PCMV−TAG、PEGSH/PERV(Stratagene, La Jolla CA)、PTET−OFF、PTET−ON、PTRE2、PTRE2−LUC、PTK−HYG(Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。NAAPを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT−REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769; Rossi, F.M.V. and H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、又はRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. and H.M. Blau, 前出)、又は(iii)正常な個体に由来するNAAPをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者は実験の各パラメータを最適化する努力をさほど要さず、ポリヌクレオチド群を、培養中の標的細胞群に送達し得る。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb(1973)Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, E. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。.初代培養細胞にDNAを導入するためには、これら標準化された哺乳類形質移入プロトコルの修正が必要である。
本発明の別の実施例では、NAAPの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や障害を、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは或る独立プロモーターのコントロール下でNAAPをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナル群と、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列と、効率的なベクター増殖に必要なコーディング配列とを伴うRev応答性エレメント(RRE)と、からなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他(1995)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6733-6737)に基づく。上記データは参照により開示に含まれる。このベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖される。VPCLは、各標的細胞上の受容体への向性を持つエンベロープ遺伝子を、又はVSVgなど汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他(1987) J. Virol. 61:1647-1650; Bender, M.A.他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646; Adam, M.A. 及び A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806; Dull, T.他(1998) J. Virol. 72:8463-8471; Zufferey, R.他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。Riggに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)にレトロウイルスパッケージング細胞株を得る方法が開示されており、該特許は参照により本願に含まれる。レトロウイルスベクター類の繁殖や、細胞集団(例えばCD4T細胞群)の形質導入、及び形質導入した細胞群の患者への戻しは、遺伝子治療分野では当業者に周知の手法であり、多数の文献に記載がある(Ranga, U.他(1997) J. Virol. 71:7020-7029; Bauer, G.他 (1997) Blood 89:2259-2267; Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716; Ranga, U.他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1201-1206; Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
ある実施態様では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、NAAPの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にNAAPをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製及びパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内に導入する目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E.他(1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクター類については、Antinozzi, P.A. 他(1999; Annu. Rev. Nutr. 19:511-544)並びにVerma, I.M.及びN. Somia (1997; Nature 18:389:239-242)を参照されたい。
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、NAAPの発現に関して1以上の遺伝子異常を持つ標的細胞に、NAAPをコードするポリヌクレオチド類を送達する。単純ヘルペスウイルス(HSV)系ベクター類は、HSVが向性を持つ中枢神経細胞にNAAPを導入する際に、特に有益たりうる。ヘルペス系ベクター類の作製及びパッケージングは、当業者に公知である。或る複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)1型系のベクターが、或るレポーター遺伝子の、霊長類の眼への送達に用いられている(Liu, X. 他(1999) Exp.Eye Res.169:385395)。HSV−1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許は参照により本願に含まれる。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的に好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外因性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクター類については、Goins, W.F.他(1999; J. Virol. 73:519-532)及びXu,H.他(1994; Dev. Biol. 163:152-161)。クローン化したヘルペスウイルス配列群の操作、大ヘルペスウイルスゲノム(large herpesvirus genomes)の様々なセグメントを持つ複数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びに細胞群へのヘルペスウイルスの感染は、当業者に公知の技術である。
もう1つの実施態様では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてNAAPをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクター類はSFVゲノムに基づく(Garoff, H. 及び K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、ウイルスのカプシドタンパク質群を通常はコードする、サブゲノムRNAが産生される。このサブゲノムRNAは完全長ゲノムRNAよりも高レベルに複製するので、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を持つウイルスタンパク質に比べてカプシドタンパク質群が過剰産生される。同様に、NAAPをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のNAAPをコードするRNAが産生され、高いレベルでNAAPが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群が持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他(1997) Virology 228:74-83)。広い宿主域を持つαウイルスにより、様々なタイプの細胞にNAAPを導入できる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの操作方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
転写開始部位(transcription initiation site)由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。この位置は、例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん対合は、ポリメラーゼ、転写因子又は制御分子と結合できるように十分に開こうとする、二重らせんの能力を阻害するので有用である。三重鎖DNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E.他(1994) in Huber, B.E. 及び B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, 163-177ページ)。相補配列又はアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を妨害するように設計することができる。
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用の機序は、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、その後に起こるヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、遺伝子工学的に作製されたハンマーヘッド型リボザイム分子が、NAAPをコードするRNA分子の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位について標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を持つ標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチド群とのハイブリダイゼーションへの到達性をテストすることによって行い得る。
相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のための当分野で既知の任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相ホスホラミダイト化学合成など、オリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、NAAPをコードするDNA分子のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6などの好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。あるいは、相補的RNAを構成的あるいは誘導的に合成するこれらのcDNA構築物を、細胞株、細胞又は組織内に導入できる。
細胞内の安定性を高め半減期を延ばすためRNA分子を修飾し得る。限定するものではないが可能な修飾としては、分子の5’末端、3’末端、あるいはその両方において隣接配列群を追加することや、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート又は2’O−メチルを使用することが含まれる。この概念は、本来はPNA群の産出におけるものであるが、これら全ての分子に拡張できる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾型や、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)を含める。
本発明の別の実施態様では、本発明の1つ以上の選択したポリヌクレオチドの発現を改変、阻害、低減、又は沈黙させるため、RNA干渉(RNAi)又は、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)法を利用でき、これらは当該分野で既知である。RNAiは遺伝子サイレンシングの転写後モードであり、ここでは標的細胞に導入した二本鎖RNA(dsRNA)が相同遺伝子(即ちdsRNAの相補配列を持つ遺伝子)の発現を特異的に抑制する。これは標的遺伝子の発現を効果的にノックアウト、又は実質的に低減する。PTGSはまた、DNA又はDNA断片を用いても達成できる。RNAi法の記載はFire, A.他(1998; Nature 391:806-811)及びGura, T.(2000; Nature 404:804-808)がある。PTGSを開始するにはまた、選択した組織にDNAの相補セグメントを導入して行え、これには本願記載の、又は当該分野で既知の、遺伝子送達及び/又はウイルスベクター送達法を用いる。
RNAiを哺乳類細胞内で誘導するには、低分子干渉(small interfering)RNA、略称siRNAの利用で可能となる。siRNAはdsRNAの短いセグメント(通常、約21〜23ヌクレオチド長)であり、in vivoで、導入したdsRNAが内因性リボヌクレアーゼの作用で切断されて生じる。siRNAは、哺乳類でのRNAi効果のメディエータであると思われる。最も有効なsiRNAは、21ヌクレオチドdsRNAで2ヌクレオチドの3’オーバーハングを持つRNAのようである。siRNAを用いたRNAiの哺乳類細胞での誘導は、Elbashir, S.M.他(2001; Nature 411:494-498)に記載がある。
siRNAを産生するには、間接的ににdsRNAを標的細胞に導入するか、直接的に、本願記載又は当該分野で既知の哺乳類トランスフェクション法及び媒介物(例えば、リポソームを介したトランスフェクション、ウイルスベクター法、又は他のポリヌクレオチド送達/導入法)で可能である。好適なsiRNAを選ぶには、AUG開始コドンから下流のヌクレオチド配列群について標的ポリヌクレオチドの転写物(例えばmRNA)を検討し、各ヌクレオチドと3’側の隣接する19〜23ヌクレオチドの出現を潜在的siRNA標的部位として記録して可能であり、21ヌクレオチド長を持つ配列が好ましい。標的siRNA部位として避けるべき領域としては、5’と3’の非翻訳領域(UTR)、及び開始コドンに近い領域(75塩基以内)があり、理由は、これらは調節タンパク質結合部位が、より豊富なためである。UTR結合タンパク及び/又は翻訳開始複合体は、siRNPエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉しうる。siRNAのために選択した標的部位は次に、適切なゲノムデータベース(例えばヒト等のもの)と比較でき、これにはBLAST又は他の、当該分野で既知の配列比較アルゴリズムを用いる。標的配列の内、他のコード配列への有意な相同性を持つ配列は、考慮から除外できる。選択したsiRNAを産生するには、当該分野で既知の化学合成法で、又はin vitro転写に市販の方法とキット例えばSILENCER siRNA作製キット(Ambion, Austin TX)を用いて可能である。
別の実施態様で、長期の遺伝子サイレンシング及び/又はRNAi効果を、選択した組織で誘導でき、これにはsiRNAを持続的に発現する発現ベクターを用いる。これは、当分野で既知の方法を用いてヘアピンRNA(shRNA)を発現するよう遺伝子操作された発現ベクターを用いて達成される(Brummelkamp, T.R. 他. (2002) Science 296:550-553、Paddison, P.J. 他.(2002) Genes Dev. 16:948-958)。これら及び関連の実施態様でshRNAを標的細胞に送達するには、当該分野で既知の発現ベクターを用い得る。siRNAの送達に好適な発現ベクターの一例はPSILENCER1.0-U6(circular)プラスミド(Ambion)である。標的組織に送達されると、shRNAはin vivoでプロセスされてsiRNA様分子となり、これは遺伝子特異的サイレンシングを行える。
種々の実施態様で、RNAi又はPTGS法が標的にする遺伝子の発現レベルの判定は、mRNA及び/又はタンパク質解析用のアッセイで行える。或る標的遺伝子のmRNAの発現レベル判定は、ノーザン解析法に例えばNORTHERNMAX-GLYキット(Ambion)を用いて、またマイクロアレイ法で、PCR法で、リアルタイムPCR法で、また他の、当該分野で既知又は本願記載のRNA/ポリヌクレオチドアッセイで行える。標的遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルの判定は、ウェスタン解析に当該分野で既知の標準技術を用いて行える。
本発明の更なる実施例は、NAAPをコードするポリヌクレオチドの発現の改変に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現改変を起こすのに有効であり得る化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチドや、転写因子などのポリペプチド転写制御因子、及び、特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学物質がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター又はプロモーターのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を改変し得る。従って、NAAPの発現又は活性の増加に関連する疾患の治療においては、NAAPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、NAAPの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、NAAPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
種々の実施態様で、或る特定ポリヌクレオチドの発現を改変する際の有効性について、1つ以上の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物を得るには、当分野で公知の任意の方法を用い得る。取得方法としては、以下の場合に有効な既知化合物の化学修飾がある。ポリヌクレオチドの発現を改変する場合と、既存の、市販の又は私的な、天然又は非天然の化学物質のライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/又は構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組み合わせ的に又は無作為に生成した化学物質のライブラリから選択する場合とである。NAAPをコードするポリヌクレオチドを持つサンプルを、このようにして得た試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルは例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、あるいはin vitro無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。NAAPをコードするポリヌクレオチドの発現における改変は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常は、NAAPをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量することにより、1つ以上の試験化合物に曝露される、又は曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較のための基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示す。或る特定ポリヌクレオチドの改変発現に有効な化合物のためのスクリーニングを実行でき、例えば***酵母(Schizosaccharomyces pombe)遺伝子発現系(aTKINS, d. 他(1999) 米国特許第5,932,435号、aRNDT, g.m. 他(2000) nUCLEIC aCIDS rES.28:e15)又はhElA細胞等のヒト細胞株(cLARKE, m.l. 他(2000) bIOCHEM. bIOPHYS. rES. cOMMUN. 268:8-13)を用いて行い得る。本発明の或る特定の実施態様は、或る特定ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性について、オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾したオリゴヌクレオチド)のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングする過程に関する(Bruice, T.W. 他(1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W.他(2000) 米国特許第6,022,691号)。
ベクターを細胞又は組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivoin vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、又はリポソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野で周知の方法を用いて実行することができる(Goldman, C.K.他(1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466)。
上記の治療方法はどれも例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サルなどの哺乳類を含め、そうした治療が必要な任意の被験体に適用できる。
本発明の或る更なる実施態様は、薬剤的に許容される或る賦形剤と共に処方される或る活性成分を一般に有する、或る組成物の投与に関する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な剤型が広く知られており、詳細はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、NAAP、NAAPの抗体、擬態物質、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターなどからなる。
種々の実施態様で本願記載の組成物(例えば医薬組成物)は任意の数の経路によって投与でき、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下又は直腸法がある。
肺から投与する組成物は、液状又は乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近発達したことにより、インスリンなどの薬物を実用的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号などを参照)。肺送達は、針注射なしに投与でき、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
NAAPを有する、又はその断片群を有する高分子群を直接、細胞内に送達すべく、特殊な種々の形状の組成物群が調製され得る。例えば、細胞不透過性高分子を有するリポソーム製剤は、その高分子の細胞融合と細胞内送達とを促進し得る。別法では、NAAP又はその断片を、HIV Tat-1タンパク質から得た短い陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他(1999) Science 285:1569-1572)。
任意の化合物に対して、先ず細胞培養アッセイ例えば新生物細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは動物モデル例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はブタ等において、治療有効用量を推定できる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
治療有効投与量とは、症状や容態を回復させる、たとえばNAAP又はその断片、NAAPの抗体、NAAPのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターなど活性成分の量を指す。治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)又はLD50(集団の50%の致死量)の統計を計算するなどして決定することができる。毒性効果の、治療効果に対する用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイと動物実験とから得られたデータは、ヒトに用いる投与量の範囲の策定に用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆どあるいは全く持たず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形、患者の感受性及び投与の経路によってこの範囲内で変わる。
正確な投与量は、治療が必要な被検者に関する要素を考慮して、実務医が決定することになる。充分なレベルの活性成分を与え、あるいは所望の効果を維持すべく、用法及び用量を調整する。被検者に関する要素としては、病態の重症度、被検者の全身健康状態、患者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、併用薬、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮しうる。長時間作用性の組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度によって3〜4日毎に1度、毎週、或いは隔週の間隔で投与し得る。
通常の投与量は投与経路にもよるが約0.1〜100,000μgで、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、当該分野の実務医は通常それを利用することができる。当業者は、ヌクレオチドの処方では、タンパク質又はそれらのインヒビター類とは異なる処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、部位などに特異的なものとなる。
(診断)
別の実施例では、NAAPに特異的に結合する抗体を、NAAPの発現によって特徴付けられる障害の診断に、又は、NAAPやNAAPのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用い得る。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で作成される。NAAPの診断アッセイには、ヒトの体液から、あるいは細胞や組織の抽出物から、抗体及び標識を用いてNAAPを検出する方法が含まれる。この抗体は、修飾して、又は修飾せずに使用される。また、レポーター分子との共有結合又は非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
NAAPを測定するための様々なプロトコル、例えばELISA、RIA、FACS等が当分野では周知であり、変容した、あるいは異常なレベルのNAAPの発現を診断するための基盤を提供する。正常あるいは標準的なNAAPの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験体から採取した体液又は細胞抽出物と、NAAPに対する抗体とを混合させることによって確定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験体、対照、及び、生検組織からの疾患サンプルでの、NAAP発現の量を標準値と比較する。標準値と被験体との偏差が、疾患を診断するパラメータを確定する。
本発明の別の実施態様によれば、NAAPをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用い得るポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。これらのポリヌクレオチドを用いて、NAAPの発現が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子発現を検出し定量し得る。この診断アッセイを用いて、NAAPの存在の有無、更には過剰な発現を判定し、治療時のNAAPレベルの調節を監視しうる。
或る実施形態では、NAAP又は近縁の分子をコードするゲノム配列を含むポリヌクレオチドを検出可能なPCRプローブ類とのハイブリダイゼーションを、NAAPをコードする核酸配列を同定するために用いることができる。プローブが高度に特異的な領域(例えば5’調節領域)から作られているか、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、プローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェンシーとによって、そのプローブがNAAPをコードする天然配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子変異体や関連配列を同定するかどうかが決まることとなる。
プローブはまた、関連する配列の検出に利用でき、また、NAAPをコードする任意の配列との少なくとも50%の配列同一性を有し得る。本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:59-116の配列、或いはNAAP遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
NAAPをコードするポリヌクレオチドに特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法としては、NAAP又はNAAP誘導体をコードするポリヌクレオチド配列を、mRNAプローブ作製用ベクターにクローニングする方法を含む。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーター基によって標識され得る。レポーター基の例としては、32P又は35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
NAAPをコードするポリヌクレオチド配列を、NAAPの発現に関係する疾患の診断に用い得る。限定するものではないが、このような疾患には細胞増殖異常、神経疾患、発達障害、自己免疫/炎症疾患、及び感染症が含まれ、細胞増殖異常には日光角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、***、頚部、結腸、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、神経疾患には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioBLASTomatosis)、脳三叉神経血管腫症候群、中枢神経系性精神遅滞及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経疾患、脊髄疾患、筋ジストロフィー他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/***病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病が含まれ、発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith-Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれ、自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環や、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫及び原虫の感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、感染症には、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス(bunyavirus)、カリチウイルス(calicivirus)、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トガウイルスに分類されるウイルス病原体による感染や、細菌による感染(肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バシラス菌、コリネバクテリウム、クロストリジウム、髄膜炎菌、淋菌、リステリア、モラクセラ、キンゲラ、ヘモフィルス、レジオネラ、百日咳菌類(ボルデテラ)や、シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを含むグラム陰性腸内細菌、シュードモナス、ビブリオ、ブルセラ、野兎病菌類(フランシセラ)、エルシニア、バルトネラ、norcardium、放線菌、ミコバクテリウム、spirochaetale、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマに分類)、真菌感染(分類はアスペルギルス、ブラストミセス、皮膚糸状菌、クリプトコッカス、コクシジオイデス、malasezzia、ヒストプラスマ、又は他の真菌症起因菌)、寄生虫感染(分類はプラスモディウムすなわちマラリア原虫、寄生性アメーバ、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスチスカリニ、腸内原虫(ジアルジアなど)、トリコモナス、組織線虫(旋毛虫など)、腸管寄生線虫(回虫など)、リンパ管フィラリア線虫、吸虫(住血吸虫など)、及び条虫(サナダムシなど))が含まれる。NAAPをコードするポリヌクレオチド配列は、変容したNAAP発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、及びマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法又は定量方法は、当分野で公知である。
或る特定の実施態様では、NAAPをコードするヌクレオチド群を、関連する障害、特に上記した障害を検出するアッセイ類に用い得る。NAAPをコードする配列に相補的なポリヌクレオチドは、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプル中のシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変化している場合は、該サンプル内の、NAAPをコードするポリヌクレオチドのレベル変化の存在が、関連する疾患の存在を示す。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を評価するため、あるいは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
NAAPの発現に関連する疾患の診断の基盤を提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーションあるいは増幅に好適な条件の下、動物あるいはヒトのいずれかの正常な被験体から採取された体液或いは細胞抽出物と、NAAPをコードする配列あるいはその断片とを混合することにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量で用いて行った実験から得た値を正常な被検体から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
障害の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。経時的なアッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
癌に関しては、個体からの生検組織における異常な量の転写物(過少発現又は過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床症状が現れる前に疾患を検出したりする方法を提供し得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防処置又は積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生又は更なる進行を防止することが可能となる。
NAAPをコードする配列群から設計したオリゴヌクレオチド群の更なる診断的利用には、PCRの利用を含み得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはNAAPをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはNAAPをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適化した条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェンシー条件下で、近縁のDNAあるいはRNA配列の検出、定量、あるいはその両方のため用いることが可能である。
特定態様においては、NAAPをコードするポリヌクレオチド配列群に由来するオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、頻回にヒトの先天性又は後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定はされないがSNPの検出法は、SSCP(single-stranded conformation polymorphism:一本鎖高次構造多型)と蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、NAAPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。このDNAは例えば、患部組織又は正常組織、生検サンプル、体液などに由来し得る。DNA内のSNP類は、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSSCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、共通のコンセンサス配列へアセンブリされるような個々のオーバーラップするDNA断片群の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、又は統計モデルとDNA配列クロマトグラムの自動分析とを用いたシークエンシングのエラーに起因する配列変異を、フイルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
SNP類を利用して、ヒト疾患の遺伝的基礎を研究しうる。例えば少なくとも16種の一般的SNP類が、インスリン非依存型糖尿病と関連している。SNP類はまた、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、慢性肉芽腫症等の単一遺伝子病の転帰の違いを研究するために有用である。例えば、マンノース結合レクチンであるMBL2における変異体群は、嚢胞性線維症における有害な肺の転帰との相関が示されている。SNP類はまた、薬理ゲノム学においても有用性を持つ。薬理ゲノム学は、患者の薬物への応答(例えば命を脅かす毒性)に影響する遺伝的変異体の同定を行う。例えばNアセチル転移酵素における或る変異は、抗結核薬であるイソニアジドに応答しての末梢ニューロパシーの高い発症率と関連する。一方、ALOX5遺伝子のコアプロモータにおける或る変異の結果、5−リポキシゲナーゼ経路を標的とする或る抗喘息薬での治療に対する臨床応答が低下する。異なる集団群におけるSNP類の分布の分析は、遺伝的浮動、突然変異、遺伝子組換え、遺伝子選択の調査に有用であり、集団の起源とその移動との追跡にも有用である(Taylor, J.G.他(2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.及びZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P. 他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
NAAPの発現を定量するために用い得る別の方法の例としては、ヌクレオチド群の放射標識又はビオチン標識、対照核酸の共増幅(coamplification)、及び、標準曲線から得た結果の補間もある(Melby, P.C 他(1993) J. Immunol. Methods 159:235-244、Duplaa, C.他(1993) Anal. Biochem. 212:229-236)。当該のオリゴマー又はポリヌクレオチドが種々の希釈度で存在し、分光応答又は比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数サンプルの定量速度を加速できる。
更に別の実施態様では、本願に記載した任意のポリヌクレオチドに由来するオリゴヌクレオチド又はより長い断片を、或るマイクロアレイにおけるエレメント群として用いることができる。多数の遺伝子の相対発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/退行をモニターし、疾病治療における薬物の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロファイルを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロファイルに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用の最も少ない治療薬を選択することができる。
別の実施例では、NAAP、NAAPの断片、NAAPに特異的な抗体を、マイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質間相互作用、薬物−標的相互作用及び遺伝子発現プロファイルをモニター又は測定できる。
或る実施態様は、或る組織又は細胞タイプの転写イメージを作製する、本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織又は細胞タイプによる、遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」;この参照により特に開示に含まれる)。従って、特定の組織又は細胞タイプの転写物又は逆転写物全体に本発明のポリヌクレオチド又はその相補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。一実施態様では、本発明のポリヌクレオチド又はそれらの相補体が1マイクロアレイ上に複数エレメントの1サブセットを持つような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルを提供するであろう。
転写イメージは、組織、細胞株、生検、又は他の生体サンプルから単離した転写物を用いて作製し得る。転写イメージは従って、組織又は生検サンプルの場合にはin vivo、又は株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的又は天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価と併せて使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを標示し、しばしば分子フィンガープリント又は毒性シグネチャ(toxicant signatures)と称される、特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他(1999) Mol. Carcinog. 24:153-159; Steiner, S.及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同様のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリント又はシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリからの発現情報を含んでいる場合に、最も有用且つ精緻である。理想的には、ゲノム全域にわたる発現の測定が、最高品質のシグネチャを提供する。たとえ発現が任意の試験された化合物によって変容しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子も重要である。ノーマライズ手順は、種々の化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。或る毒性シグネチャのエレメント群に遺伝子機能を割り当てることは毒性機序の解釈に役立つが、毒性の予測につながる、シグネチャ群の統計的マッチングには、遺伝子機能の知識は必要でない(例えばNational Institute of Environmental Health SciencesのPress Release 00-02、2000年2月29日, http://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htm参照)。したがって、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは、重要且つ望ましい。
或る実施態様では、核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより、この試験化合物の毒性を算定しうる。処理した生体サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ以上のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写物レベルを定量し得る。処理した生体サンプル中の転写レベルを、無処理生体サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写物レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
別の実施態様は、本発明で開示するポリペプチド群を用いた、或る組織又は細胞タイプのプロテオームの分析に関する。プロテオームの語は、特定の組織又は細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更なる分析にかけることができる。プロテオーム発現パターンすなわちプロファイルは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析する。したがって、或る細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織又は細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner 及び Anderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、あるいは銀染色液又は蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物又は治療薬で処理又は未処理のいずれかの生体サンプルからの、同等に位置したタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的又は酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。或るスポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、当該のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
プロテオームのプロファイルは、NAAPに特異的な抗体を用いてNAAP発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施態様では、マイクロアレイ上のエレメントとしてこれら抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することにより、タンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他(1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G.他(1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性又はアミノ反応性蛍光化合物とサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。いくつかの組織のいくつかのタンパク質については、転写物の存在量とタンパク質の存在量との相関が乏しいので(Anderson, N.L. 及び J. Seilhamer(1997)Electrophoresis 18:533-537)、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロファイルを改変するような化合物の分析において、プロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロファイル作成はこのような場合により信頼でき、情報価値があり得る。
別の実施態様では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質の量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を標示する。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
別の実施態様では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生体サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質の量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を標示する。
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法で調製、使用し、分析しうる(Brennan, T.M. 他(1995)米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他(1995)PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他(1995)PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155; Heller, M.J.他(1997) 米国特許第5,605,662号)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、Schena, M 編集(1999; DNA Microarrays:A Practical Approach, Oxford University Press, London)。
本発明の別の実施態様ではまた、NAAPをコードする核酸配列群を用いて、天然ゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブ群を産生し得る。コード配列又は非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列より非コード配列の方が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域又は人工染色体構成、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1構成、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J.他(1997) Nat. Genet. 15:345-355; Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127-134; Trask, B.J. (1991) Trends Genet.7:149-154)。一度マッピングすると、核酸配列群を用いて、例えば或る病状の遺伝を特定染色体領域の遺伝と又は制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を開発し得る(Lander, E.S.及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357)。
蛍光切片上ハイブリッド形成(FISH)は、他の物理地図及び遺伝地図データと相関し得る(Heinz-Ulrich他(1995) Meyers前出965-968ページ)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的染色体地図上の、NAAPをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、あるいは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、ポジショナルクローニングの作業を促進し得る。
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳類の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、ポジショナルクローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探る研究者にとって価値がある。いったん疾患又は症候群に関与する遺伝子(群)が、血管拡張性失調症の11q22−23領域など、特定のゲノム領域へ遺伝連鎖によって大まかに限局されると、該領域にマップされる任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子あるいは制御遺伝子を提示している可能性がある(Gatti, R.A.他(1988) Nature 336:577-580)。転座、反転などに起因する、健常者、保因者、罹病者の三者間における染色***置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
本発明の別の実施態様では、NAAP、その触媒作用断片あるいは免疫原性断片又はそのオリゴペプチド群を、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における、化合物のライブラリ群のスクリーニングに用い得る。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持体に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置しうる。NAAPと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定することもできる。
別の薬物スクリーニング技術は、当該のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen他(1984)PCT出願WO84/03564)。この方法においては、多数の様々な低分子の試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、NAAP、或いはその断片と反応してから洗浄される。次に、結合したNAAPを本技術分野で周知の方法で検出する。精製したNAAPはまた、上記した薬剤スクリーニング技術に用いるプレート上に直接コーティングできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持体に固定することもできる。
別の実施例では、NAAPと特異結合可能な中和抗体がNAAPとの結合について試験化合物と競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体を用いて、1つ以上の抗原決定基をNAAPと共有するどのペプチドの存在をも検出できる。
別の実施例では、NAAPをコードするヌクレオチド配列を、将来に開発される分子生物学技術であり、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存する新技術に用い得る。
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物、特に米国特許出願第60/348,442号、第60/337,535号、第60/335,544号、第60/344,650号及び第60/334,762号は、言及することをもって本明細書の一部となす。
1 cDNAライブラリの作製
Incyte cDNA群の由来は、LIFE SEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネートに溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールに又は変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Invitrogen)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの一相溶液である。結果として得たライセート(溶解物)は、塩化セシウムのクッション液の上に重層して遠心分離するか、クロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、あるいは別の慣例的方法で、ライセートからRNAを沈殿させた。
RNAの純度を高めるため、フェノールによるRNAの抽出及び沈殿を、必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)又はOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A)+RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて、組織溶解物からRNAを直接単離した。
場合によってはStratagene社にRNAを提供し、同社が、対応するcDNAライブラリ群を作製した。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)又はSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Invitrogen)を用いて本技術分野で公知の推奨される方法又は類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel、他、5章)。逆転写は、オリゴd(T)又はランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結し、適切な制限酵素又は酵素群でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対しcDNAのサイズ選択(300〜1000bp)には、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B又はSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Biosciences)、あるいは分取用アガロースゲル電気泳動法を用いた。cDNAは或る好適なプラスミドのポリリンカーの、適合する制限酵素部位にライゲーションした。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2-TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE(Incyte Genomics)、又はplNCY(Incyte Genomics)、又はこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRF又はSOLR、あるいはInvitrogen社のDH5α、DH10B又はElectro MAX DH10Bなど適格な大腸菌細胞に形質転換した。
2 cDNAクローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドを精製する方法は、Magic又はWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットの中から少なくとも1つを用いた。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
別法ではハイスループットフォーマットで直接結合PCRを用い、宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B.(1994)Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルをプロセスして384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKAN II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光定量した。
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミド中に回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。シークエンス反応は、標準的方法あるいは高処理装置、例えばABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)又はPTC-200サーマルサイクラー(MJ Research)を、HYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)又はMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Biosciences社が提供する試薬、又はABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、標準ABIプロトコル及び塩基呼び出し(base calling)ソフトウェアを用いるABI PRISM 373又は377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 7章)を用いて決定した。いくつかのcDNA配列を選択し、実施例8に開示する技術で配列を伸長させた。
Incyte cDNAに由来のポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基をマスクして検証した。その際、BLASTと、動的プログラミングと、隣接ジヌクレオチド分析(dinucleotide nearest neighbor analysis)とに基づく、アルゴリズムとプログラムとを用いた。次に、Incyte cDNA配列又はそれらの翻訳の問い合わせを、以下のデータベース群に対して行った。すなわち、選抜した公共のデータベース群(例えばGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、***酵母(Schizosaccharomyces pombe)及びCandida albicansからの配列群を持つPROTEOMEデータベース群(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、及び、隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリデータベース群、例えばPFAM、INCY、及びTIGRFAM(Haft, D.H. 他(2001) Nucleic Acids Res.29:41-43)、並びにHMMベースのタンパク質ドメインデータベースたとえばSMART(Schultz. J.他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864; Letunic, I. 他(2002) Nucleic Acids Res.30:242-244)である。(HMMは、遺伝子ファミリのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361-365を参照)。問い合わせは、BLAST、FASTA、BLIMPS、及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列をアセンブリし、完全長のポリヌクレオチド配列を産出した。あるいは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、又はGenscan予測コード配列群(実施例4及び5を参照)を用い、Incyte cDNAのアセンブリ体群を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いてアセンブリし、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAのアセンブリ体を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を得た。あるいは、或るポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベースや、PFAM、INCY、及びTIGRFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリデータベース群、並びにSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベース群に対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(MiraiBio, Alameda CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析する。ポリヌクレオチドとポリペプチドとの配列アラインメントは、MEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組込まれたCLUSTALアルゴリズムが指定する、デフォルトパラメータを用いて作製する。これは、アラインメントした配列間の一致率も計算する。
表7は、Incyte cDNAと完全長配列との分析とアセンブリとに用いたツールとプログラムとアルゴリズムとの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な参照文献であり、全ての文献の全体が参照により開示に含まれる。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、又は確率値が低いほど、2配列間の相同性が高くなる)。
完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列のアセンブリ及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:59-116のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集
推定上の核酸結合タンパク質は、先ず公共のゲノム配列データベース(例えばgbpriやgbhtg)に対しGenscan遺伝子同定プログラムを実行して同定した。Genscanは汎用遺伝子同定プログラムであり、様々な生物からのゲノムDNA配列を分析する(Burge, C. 及び S. Karlin(1997)J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C. 及び S. Karlin(1998)Curr. Opin. Struct. Biol. 8:346-354)。このプログラムは予測されたエキソン群を連結し、メチオニンから終止コドンに及ぶ、アセンブリされたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan予測cDNA配列の内、どの配列が核酸結合タンパク質をコードするかを判定するために、コードされるポリペプチドを、PFAMモデル群に対し核酸関連分子について問い合わせて分析した。潜在的な核酸結合タンパク質はまた、既に核酸結合タンパク質としてアノテーションが付けられたIncyte cDNA配列に対する相同性を基に同定された。これら選択したGenscan予測配列を、次にBLAST分析により、公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分な又は省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNA又は公共cDNA適用範囲の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正又は確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載のアセンブリプロセスを用い、Incyte cDNA配列及び/又は公共cDNA配列でGenscan予測コード配列をアセンブリして得た。あるいは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集後又は非編集のGenscan予測コード配列に、完全に由来する。
5 cDNA配列データを使ったゲノム配列データのアセンブリ
スティッチ配列(Stitched Sequence)
部分cDNA配列群を伸長させるため、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムが予測したエキソン群を用いた。実施例3に記載したようにアセンブリした部分cDNA群を、ゲノムDNAにマッピングし、また、関連するcDNA群と、1つ以上のゲノム配列からGenscan予測されたエキソン群とを有するクラスタ群に分解した。cDNAとゲノムとの情報を統合すべく、グラフ理論及び動的プログラミングに基づく或るアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、潜在的スプライス変異体群を生成した。配列群を続いて確認、編集又は伸長し、完全長配列を創出した。区間の全長が、2つ以上の配列に在るような配列区間群をクラスタ内で同定し、そのように同定された区間群は、推移性により、等しいと考えた。例えば、或る区間が、1つのcDNAと2つのゲノム配列とに在る場合、3つの区間は全て等しいと考えた。このプロセスにより、無関係だが連続したゲノム配列群を、cDNA配列で結び合わせて架橋し得る。このようにして同定した区間を、それらの親配列(parent sequences)に沿って現れる順にスティッチアルゴリズムで「縫い合わせ」、可能な限り最長の配列と配列変異体群とを生成した。1種類の親配列に沿って続く区間間の連鎖(cDNA−cDNA又はゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)より優先した。結果として得たスティッチ配列群を翻訳し、BLAST分析で公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。Genscanが予測した不正確なエキソン群は、genpeptからのトップBLASTヒットとの比較により補正した。必要な場合、追加cDNA配列群を用いるかゲノムDNAの検査により、配列群を更に伸長させた。
ストレッチ配列(Stretched Sequence)
部分DNA配列群を、BLAST分析に基づく1アルゴリズムで完全長まで伸長した。先ず、BLASTプログラムを用い、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載のようにアセンブリした部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列又は実施例4に記載のGenscanエキソン予測配列のいずれかと比較した。得られた高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラ蛋白質を産出し、翻訳した配列をGenBank蛋白質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に対し、キメラタンパク質内では挿入又は欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質又はその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を有するか否かを判定した。
6 NAAPをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:59-116をアセンブリするために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFE SEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:59-116と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどのアセンブリアルゴリズム(表7)を使用して、連続及びオーバーラップした配列のクラスタにアセンブリした。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethonなどの公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、いずれかのクラスタ化された配列が既にマッピングされているかを判定した。マッピングされた配列が或るクラスタに含まれている場合、そのクラスタの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲又は区間として表される。センチモルガン単位での或る区間の地図上の位置は、染色体の短腕(p−arm)の末端に対して測定する(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒトDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する)。cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap/)など公共で入手可能なヒトゲノム地図などの資源を用いて、既に同定された疾患遺伝子類が、上記の区間内若しくは近傍にマップされているかを判定できる。
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン解析は遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種又は組織からのRNAが結合している或る膜への、標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(Sambrook及びRussell前出7章、Ausubel他前出4章)。
類似の、BLASTを応用したコンピュータ技術を用いて、GenBankやLIFESEQ(Incyte Genomics)などのデータベースにおいて、同一又は関連分子を検索した。ノーザン解析は、多数の膜に基づくハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、任意の特定の一致を厳密なあるいは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を修正できる。検索の基本は積スコアであり、次式で定義する。
Figure 2005508636
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100のノーマライズされた値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。BLASTスコアを計算するには、或る高スコアリングセグメント対(HSP)内の一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基に−4を割り当てる。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
或いは、NAAPをコードするポリヌクレオチドは、由来する組織源に対して分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いてアセンブリする(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。すなわち心血管系、結合組織、消化器系、胎児構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、***、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性又は尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリー、すなわち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、NAAPをコードするcDNAの、組織特異的発現及び疾患特異的発現を反映する。cDNA配列及びcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
8 NAAPをコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長ポリヌクレオチドを、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマー群を用いて該断片を伸長させ産生する。或るプライマーは既知の断片の5’伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3’伸長を開始するべく合成した。開始プライマーは、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの区間は全て回避した。
選択したヒトcDNAライブラリ群を用い、配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要又は望ましい場合には、付加的プライマーあるいはプライマーのネステッドセットを設計した。
高忠実度の増幅を当業者に周知の方法でのPCRで得た。PCRはPTC−200サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)での96穴プレートで行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマーを有する。また、Mg2+と(NHSOと2−メルカプトエタノールを含む反応バッファ、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、ELONGASE酵素(Invitrogen)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃,3分、2:94℃,15秒、ステップ3:60℃,1分、ステップ4:68℃,2分、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回反復する。ステップ6:68℃、5分、ステップ7:4℃で保存する。C.別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃,3分、ステップ2:94℃,15秒、ステップ3:57℃,1分、ステップ4:68℃,2分、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回反復する。ステップ6:68℃、5分、ステップ7:4℃で保存する。
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
伸長したヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化して音波処理又はせん断し、pUC 18ベクター(Amersham Biosciences)への再連結を行った。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Biosciences)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1:94℃,3分、ステップ2:94℃,15秒、ステップ3:60℃,1分、ステップ4:72℃,2分、ステップ5:ステップ2、3及び4を29回反復する。ステップ6:72℃、5分、ステップ7:4℃で保存する。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNA回収率が低いサンプルは、上記同一条件で再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2,v/v)で希釈し、DYENAMICエネルギー移動シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Biosciences)又はABI PRISM BIGDYEターミネーターサイクルシークエンシングレディ反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンスした。
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチドを検証した。あるいは、完全長ポリヌクレオチドを用い、上記手順で、そのような伸長のために設計したオリゴヌクレオチド類と、或る適切なゲノムライブラリとを用いて5’調節配列を得た。
9 NAAPをコードするポリヌクレオチドにおける1塩基多型性の同定
1塩基多型(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体が、SEQ ID NO:59-116において、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いて同定された。同じ遺伝子からの配列群は共にクラスタ化され、実施例3に述べたようにアセンブリされて、その遺伝子における全ての配列変異体の同定を可能にした。一連のフイルタからなるアルゴリズムを使って、SNP類を他の配列変異体から区別した。前段フイルタは、最小限Phredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アライメントエラーや、ベクター配列、キメラ及びスプライス変異体の不適当なトリミングにより生じるエラーを取り除いた。染色体の高度解析の自動化手順により、推定SNPの近傍におけるオリジナルのクロマトグラムファイルが解析された。クローンエラーフイルタは統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ、又は体細胞突然変異によって引き起こされるエラーのような、実験処理時に導入されるエラーを識別した。クラスタエラーフイルタは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体又は偽遺伝子のクラスタ化に起因するエラー、又は非ヒト配列によるコンタミネーションにより生じたエラーを同定した。最後のフイルタ群によって、免疫グロブリン又はT細胞受容体に存在する重複(duplicates)とSNPが除去された。
幾つかのSNPは、更なる特徴付けの為に選択された。選択は高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いた質量分析によって行い、4群の異なるヒト集団におけるSNP部位での対立遺伝子頻度を分析した。白人集団は92個体(46名の男子、46名の女子)からなり、83名はユタ出身、4名はフランス人、3名はベネズエラ人、2名はアーミッシュの人々である。アフリカ集団は194個体(97名の男子、97名の女子)からなり、全員がアフリカ系アメリカ人である。ヒスパニック集団は324個体(162名の男子、162名の女子)からなり、全員がメキシコのヒスパニックである。アジア集団は126個体(64名の男子、62名の女子)からなり、報告された親の内訳は43%が中国人、31%が日本人、13%がコリアン、5%がベトナム人、8%が他のアジア人である。対立遺伝子頻度の分析は先ず白人集団においてなされ、幾つかの場合、SNPの内、対立遺伝子変異をこの集団において示さなかったSNPは、更に他の3集団においてテストされることは無かった。
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用
SEQ ID NO:59-116から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、又はゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ−32P]アデノシン3リン酸(Amersham Biosciences)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビーズカラム(Amersham Biosciences)を用いて実質的に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba I又はPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの、典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分10カウントの標識されたプローブを有するアリコットを用いる。
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。非特異的シグナル群を除去するため、最大で例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムの条件下で、ブロット群を室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィー又はそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合又は合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾ式印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler他等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な、無孔の表面を持つ固体とすべきである(Schena, M., 編集 (1999) DNA Microarrays:A Practical Approach, Oxford University Press, London)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウェハがある。あるいは、ドットブロット法又はスロットブロット法に類似した手順を利用し、熱的、紫外線的、化学的又は機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. 他(1995) Science 270:467-470; Shalon, D.他(1996) Genome Res.6:639-645; Marshall, A. 及び J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31)。
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、又はその断片又はオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片又はオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)など本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。あるいは、レーザー脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。一実施態様におけるマイクロアレイの調製及び使用について、以下に詳述する。
組織又は細胞サンプルの調製
総RNAを組織サンプルから単離するためグアニジニウムチオシアネート法を用い、ポリ(A)RNA精製にオリゴ(dT)セルロース法を用いる。各ポリ(A)RNAサンプルは、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1X 第1鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害剤、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP−Cy3(BDS)又はdCTP−Cy5(Amersham Biosciences)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte Genomics)を用い、200ngのポリ(A)RNAを含有する体積25mlで行う。特異的対照ポリ(A)RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプル精製には、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(Clontech, Palo Alto CA)を用いる。混合後、2つの反応サンプルをエタノール沈殿させるため、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム、及び300mlの100%エタノールを用いる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて完全に乾燥させ、14μlの5×SSC/0.2%SDS中で再懸濁する。
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化したcDNAインサート群と、ベクター群とを含有する細菌細胞群から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートに隣接するベクター配列群に相補的なプライマー類を用いる。30サイクルのPCRで1〜2ngの初期量から5μgより大きい最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Biosciences)を用いて精製する。
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、0.1%のSDS及びアセトン中で超音波洗浄し、処理の間及び処理後に充分に蒸留水で洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation(VWR), West Chester PA)中でエッチングし、充分に蒸留水中で洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドは、110℃のオーブンで硬化させる。
米国特許第5,807,522号に記載の手順で、コーティングしたガラス基板にアレイエレメント群を付加する。この特許は参照により開示に含まれる。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを置く。
マイクロアレイに、STRATALINKER UVクロスリンク機(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。非特異結合部位をブロックするため、マイクロアレイのインキュベートをリン酸緩衝食塩水(PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中に0.2%カゼイン、60℃で30分間行った後、前記のように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄する。
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応に用いる9μlのサンプル混合体には、Cy3又はCy5で標識したcDNA合成産物群の各0.2μgを、5×SSC,0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液中に含む。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上へ等分して1.8cmのカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。アレイを入れたチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間ずつ3回洗浄して乾燥させる。
検出
レポーター標識したハイブリダイゼーション複合体を検出するには、Cy3の励起のために488nm、Cy5の励起のために632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザー(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡を用いる。励起レーザー光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを有するスライドを、顕微鏡の、コンピュータ制御のX−Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つのフルオロフォアを順に励起する。発光された光は波長に基づき分割され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。好適なフイルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフイルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方のフルオロフォアからのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザー源において好適なフイルタを用いて、フルオロフォア1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
通常、各スキャンの感度を較正するため、cDNA対照種を或る既知濃度でサンプル混合体に添加し、対照種が発生するシグナル強度を用いる。アレイ上の或る特定の位置には或る相補DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度をハイブリダイゼーション種の重量比1:100,000と相関させる。異なる源泉(例えば代表的な試験細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なるフルオロフォアで標識し、異なる発現をする遺伝子群を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、較正するcDNAのサンプルを2種のフルオロフォアで標識し、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えることによって較正を行う。
光電子増倍管の出力をディジタル化するため、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールした12ビットRTI-835Hアナログディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いる。ディジタル化したデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラースケールへのリニア20色変換を用いて、シグナル強度がマッピングされたイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なるフルオロフォアを同時に励起及び測定する場合には、各フルオロフォアの発光スペクトルを用いて、データは先ずフルオロフォア間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重りに起因する)を補正される。
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルが次に統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte Genomics)である。少なくとも約2倍の発現変化を示し、シグナル/バックグラウンド比が少なくとも2.5で、エレメントスポットサイズが少なくとも約40%であるアレイエレメントが、差次的発現を示すとされる。
発現
SEQ ID NO:65は、癌細胞株において非癌細胞株に対して差次的発現を示すことがマイクロアレイ分析で判明した。たとえば、SEQ ID NO:65の発現は、腫瘍進行と悪性転換の異なる段階の提供者の胸水から単離した***腫瘍細胞株が、成長因子とホルモンを補足した、2つの異なるケミカリーディファインド無血清培地の内の1つで成長する時、これらの細胞で少なくとも2分の1に減少した。したがって、SEQ ID NO:65は乳癌の診断アッセイにおいて有用である。
正常***細胞株を、次のようにして得る。初代乳腺細胞の単離を、線維嚢胞性***疾患(fibrocystic breast disease)のドナーから行う。腫瘍性***細胞株は次の手順で得られる。乳癌細胞の由来は、in vitroの、腫瘍から遊出した細胞である。或いは、***腫瘍細胞は複数の提供者の侵襲性腫瘍から単離された。さらに、非悪性又は悪性初代乳腺癌細胞を複数のドナーの胸水から単離した。
さらに、SEQ ID NO:65の発現は、肥満及び正常ドナーからの処理されたヒトの脂肪細胞において、同じドナーからの未処理脂肪細胞と比較して少なくとも2分の1に減少していた。肥満度指数(BMI)が23.59の健康な女性(28才)の脂肪組織から正常なヒトの初代皮下前脂肪細胞を単離した。肥満度指数(BMI)が32.47の健康な女性(40才)の脂肪組織から肥満したヒトの初代皮下前脂肪細胞を単離した。前脂肪細胞を培養して、それらを活性成分(PPARγ・アゴニストとヒトインスリン)を含む分化培養液中で培養することによって脂肪細胞に分化するように誘導した。ヒト前脂肪細胞をヒトインスリンとPPAR−γアゴニストで3日間処理した後、インスリンを含む培養液に切り替えて24時間、48時間、4日間、8日間又は15日間処理してから採集して分析した。分化した脂肪細胞が誘発剤の入っていない培養液中で維持された未処理の前脂肪細胞と比較された。前脂肪細胞の80%から90%が最終的に脂肪細胞に分化したが、これは位相差顕微鏡下で観察された。したがって、SEQ ID NO:65は真性糖尿病及び肥満、高血圧、アテローム硬化、多嚢胞卵巣症候群、癌(乳癌、前立腺癌、結腸癌)などの病気の診断、予後又は治療に有用である。
例えばSEQ ID NO:72は、非腫瘍組織に対して腫瘍組織で差次的発現を示すことがマイクロアレイ分析で判定された。数人のドナーの肺腫瘍組織のcDNAの発現がそれぞれ同じドナーの正常肺組織のそれと比較された。GEMTOOLSプログラム(Incyte Genomics)を使って、発現が少なくとも2倍変化し、250ユニットを越すシグナル強度を示し、シグナル/バックグランド比が少なくとも2.5であり、及びエレメントスポットサイズが少なくとも40%であるアレイエレメントが差次的に発現していると同定された。
SEQ ID NO:72の発現は、同じドナーの正常な組織とマッチした時、肺扁平上皮細胞癌において少なくとも2倍に増加した。腫瘍性の肺組織は肺扁平上皮細胞癌を患う66歳の男性の肺から得た。正常な組織は、同じドナーの右肺の、肉眼で見る限り腫瘍を伴わない肺組織から単離された。したがって、SEQ ID NO:72は肺の扁平上皮細胞癌の診断アッセイに有用である。
SEQ ID NO:73の発現はまた、同じドナーの正常な組織とマッチした時、肺腺癌において少なくとも2.7分の1に減少した。腫瘍性肺組織は、中分化型腺癌を患う60才のドナーの右肺から得た。正常な組織は、同じドナーの右肺の、肉眼で見る限り腫瘍を伴わない肺組織から単離された。したがって、SEQ ID NO:73は肺腺癌の診断アッセイにおいて有用である。
SEQ ID NO:74の発現はまた、同じドナーの正常な組織とマッチした時、肺腺癌において少なくとも2.7倍に増加した。腫瘍性の肺組織は肺腺癌を患う66歳の女性の肺から得た。正常な組織は、同じドナーの、肉眼で見る限り腫瘍を伴わない肺組織から単離された。SEQ ID NO:74の発現は、同じドナーの正常な組織とマッチした時、肺扁平上皮細胞癌において少なくとも3.2倍に増加した。あるケースでは、腫瘍性の肺組織は肺扁平上皮細胞癌を患う66歳の男性の肺から得た。別のケースでは、腫瘍性の肺組織は肺扁平上皮細胞癌を患う73歳の男性の肺から得た。正常な組織は、それぞれ同じドナーの、肉眼で見る限り腫瘍を伴わない肺組織から単離された。したがって、SEQ ID NO:74は肺の腺癌及び扁平上皮細胞癌の診断アッセイに有用である。
例えば、SEQ ID NO:79の発現は結腸癌にかかった結腸組織において正常結腸組織と比較して増加することがマイクロアレイ解析で示された。遺伝子発現プロファイルは、中分化型腺癌にかかった67歳のドナー(Dukes分類 B, TNM分類)の正常結腸組織を同じドナーの癌にかかった結腸組織と比較することによって得られた。サンプルは、Huntsman Cancer Instituteから提供された。したがって、SEQ ID NO:79は結腸癌を含む細胞増殖異常の診断アッセイにおいて有用である。
例えば、SEQ ID NO:79の発現は卵巣癌にかかった卵巣組織において正常卵巣組織と比較して減少することがマイクロアレイ解析で示された。正常卵巣組織は或る79才女性から取得し、これを同じドナーから得た卵巣腫瘍と比較した。サンプルは、Huntsman Cancer Instituteから提供された。したがって、SEQ ID NO:79は卵巣癌を含む細胞増殖異常の診断アッセイにおいて有用である。
SEQ ID NO:79は、デキサメタゾンで処理されたC3A細胞において、未処理のC3A細胞と比べて発現の減少を示したことが、マイクロアレイ分析により決定された。ヒトC3A肝臓細胞株は、成長での、強力な接触阻害に関して選択されたHepG2/C3(肝臓腫瘍を患う15歳の男子から単離した肝臓癌細胞株)のクローン誘導体である。コンフルエント前期のC3A細胞は、1μM、10μM、100μMの各濃度で、1、3、6時間の間、デキサメタゾンで処理された。処理した細胞を、無処理のコンフルエント前期C3A細胞群と比較した。したがってSEQ ID NO:79は、自己免疫/炎症障害の治療モニタリングと診断アッセイとで有用である。
たとえば、SEQ ID NO:81は、タンジール病(TD)にかかった繊維芽細胞と正常繊維芽細胞をどちらもLDLコレステロールで処理した場合に差次的発現を示すことがマイクロアレイ分析により判明した。正常繊維芽細胞及びTDに由来する繊維芽細胞をコレステロール存在下で培養して比較し、またこれらの細胞をコレステロールなしで培養した同じ細胞タイプと比較した。正常な被験者及びホモ接合型のTDを患う2人の患者の両者からの皮膚外植体から、ヒトの繊維芽細胞が得られた。細胞株は、ヒトの乳頭腫ウイルス16遺伝子E6及びE7そしてネオマイシン耐性選択マーカーの形質移入によって不死化され、アポA−I仲介トリチウム化コレステロールの流出の減少によってTD由来細胞中のTDが確認された。したがってSEQ ID NO:81は、タンジール病を含む自己免疫/炎症性疾患の診断アッセイに有用である。
例えば、SEQ ID NO:93は乳癌にかかった乳腺細胞と非悪性乳腺上皮細胞で示差発現を示すことがマイクロアレイ分析によって判明した。非悪性乳腺上皮細胞株の遺伝子発現プロファイルが、腫瘍進行の様々な段階の乳癌株群の遺伝子発現プロファイルと比較された。比較した細胞株は次のとおりである。a)MCF−10A、36才の乳腺繊維嚢胞症の女性から単離された乳腺細胞株。b)MCF7、69才女性の胸水から単離された非悪性乳腺癌細胞株。c)T−47D、54才の浸潤性乳管癌の女性から得た胸水から単離された乳癌細胞株。d)Sk−BR−3、43才の女性の悪性胸水から単離された乳腺癌細胞株。e)BT−20、74才の女性から単離した腫瘍塊の薄切片からin vitroで由来した乳癌細胞株。f)MDA−mb−231、51才の女性の胸水から単離された***腫瘍細胞株。g)MDA−mb−435S、31才の転移性乳管腺癌の女性の胸水から単離された親株(435)から進化した紡錘状の細胞株。
この細胞は、供給業者の推奨する培養液中で70〜80%のコンフルエンスまでに増殖させて、RNAを収集した。6つの乳癌細胞株のうちの4つにおいて、非悪性乳腺上皮細胞株と比較して発現が少なくとも2分の1に減少した。したがって、SEQ ID NO:93は乳癌を含む細胞増殖異常の診断アッセイにおいて有用である。
別の例では、SEQ ID NO:94の腺癌にかかった組織での発現が正常な組織に比較して減少することがマイクロアレイ分析で示された。中分化型腺癌を示す右肺組織のサンプルが同じドナーの肉眼で見る限り腫瘍を伴わない肺組織と比較された(Huntsman Cancer Institute, Salt Lake City, UT)。したがって、SEQ ID NO:94は腺癌を含む細胞増殖異常の診断アッセイにおいて有用である。
別の例として、SEQ ID NO:98はCD40抗体処理済みの刺激された樹状細胞において、CD40抗体未処理の刺激された樹状細胞と比較して発現が減少した。ヒトの単球性樹状細胞(mDC)が4人の健常志願ドナーの末梢血の接着性細胞分画からin vitroで取り出された。主に単球である接着性白血球は、組換えインターロイキン4(10 ng/ml)と顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(10 ng/ ml)の存在下で13日間インキュベートされた。13日後に分化したmDCを非接着性細胞分画から採集し、可溶性のマウス抗ヒトCD40抗体の存在下で2,8、及び24時間活性化した。mDCで処理された抗CD40を未処理のmDCと比較した。したがってSEQ ID NO:98は、自己免疫/炎症障害の治療モニタリングと診断アッセイとで有用である。
別の例として、SEQ ID NO:100は腫瘍壊死因子α(TNF−α、信号伝達経路を活性化することにより炎症反応を仲介)で処理された細胞において、未処理細胞に比べて発現が減少することがマイクロアレイ分析によって示された。ヒトの大動脈内皮細胞(HMVECdNeos)は85%のコンフルエンスまで増殖させた。次いで1、2、4、6、8、及び24時間、腫瘍壊死因子(TNF−α)で処理した。これらのTNF−αで処理した細胞は、85%のコンフルエンスで回収した未処理のHMVECdNeosと比較した(0時間)。したがってSEQ ID NO:100は、細胞増殖異常の治療モニタリングと診断アッセイとで有用である。
RNA発現を評価するために、HMVECdNeoを85%コンフルエンスまで成長させ、TNF−α(10 ng/ml)で2,4,8及び24時間処理した。これらのTNF−αで処理した細胞を、85%のコンフルエンスで回収した未処理のHMVECdNeosと比較した(0時間)。テストされた最後の3つの時点において、TNF−α処理細胞におけるSEQ ID NO:108の発現は未処理細胞と比べて少なくとも2分の1減少した。したがって、SEQ ID NO:108は、核酸結合タンパク質が関与する障害を含む、細胞増殖性障害及び炎症性障害の段階決定及び診断アッセイに有用である。
痴呆化していない女性の脳から摘出された特定の脳領域を使って、ヒトの脳組織における領域特異的なRNA発現を評価した。それから脳領域をプールして対照として使用した。そして、特定の脳領域を混合脳対照と比較した。混合脳対照は脳の主要領域から単離された精製mRNAから再構成された。SEQ ID NO:109の発現は、混合脳対照組織に比べると歯状核脳組織において少なくとも2分の1減少した。したがって、SEQ ID NO:109は、核酸結合タンパク質が関与する障害を含む細胞増殖性障害や神経障害の段階決定及び診断アッセイに有用である可能性がある。
12 相補的ポリヌクレオチド
NAAPをコードする配列あるいはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然NAAPの発現を検出、低減又は阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さなあるいは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。適切なオリゴヌクレオチド群を設計するため、Oligo 4.06ソフトウェア(National Biosciences)及び、NAAPのコーディング配列を用いる。転写を阻害するためには、最も独特な5’配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコード配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、NAAPをコードする転写物にリボソームが結合するのを防ぐ。
13 NAAPの発現
NAAPの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌内でNAAPを発現させるには、抗生物質耐性遺伝子と、cDNA転写レベルを高める誘導性プロモーターとを有する好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。こうしたプロモーターとしては、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5又はT7バクテリオファージプロモーター、及びtrp-lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)などの好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性細菌にNAAPを発現させるには、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発する。真核細胞でのNAAPの発現は、昆虫細胞株又は哺乳動物細胞株に、一般にバキュロウイルスとして知られるAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子をNAAPをコードするcDNAと置換するには、相同組換えを行うか、或いは、トランスファープラスミドの媒介を伴う、細菌の媒介による遺伝子転移を行う。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高レベルのcDNA転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合は夜蛾の1種Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いるが、ヒト肝細胞への感染に用いることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスへの更なる遺伝的修飾が必要になる(Engelhard, E.K 他、(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther. 7:1937-1945)。
殆どの発現系では、NAAPが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、又はFLAGや6−Hisなどのペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製を、迅速に1ステップで行い得る。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Biosciences)。精製後、GST要素を、特異的に操作した部位においてNAAPからタンパク分解的に切断することが可能である。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6−Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現及び精製の方法は、Ausubel他(前出、10及び16章)に記載がある。これらの方法で精製したNAAPを直接用いて以下の実施例17、18、19、及び20の、適用可能なアッセイを行うことができる。
14 機能的アッセイ
NAAPの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理的に高められたレベルでの、NAAPをコードする配列の発現によって算定する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを持つ哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターとしては、PCMV SPORTプラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)及びPCR 3.1プラスミド(Invitrogen)があり、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを持つ。リポソーム製剤あるいは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株(例えば内皮由来又は造血由来の細胞株)へ、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、組換えベクターからのcDNA発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64又はCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFP又はCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、それらの細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方制御、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパク質の発現の変容、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変容とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G. (1994; Flow Cytometry, Oxford, New York NY)に記述がある。
遺伝子発現に与えるNAAPの影響は、NAAPをコードする配列と、CD64又はCD64-GFPのどちらかとが形質移入された、高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64又はCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質移入された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて効率的に分離できる(DYNAL, Lake Success NY)。mRNAは、当業者に周知の方法で細胞から精製できる。NAAPと、目的とする他の遺伝子とをコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析できる。
15 NAAPに特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488-495を参照)又は他の精製技術で実質的に精製されたNAAPを用いて、標準的なプロトコルで動物(ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を作り出す。
或いは、レーザーGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてNAAPアミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域等の、適切なエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel他、11章)。
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、FMOC化学法を用いるABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel他)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗NAAP活性を試験するには、ペプチド又はNAAPを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
16 特異的抗体を用いる天然NAAPの精製
天然NAAPあるいは組換えNAAPを実質的に精製するため、NAAPに特異的な抗体群を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィを行う。イムノアフィニティーカラムは、CNBr−活性化したSEPHAROSE(Amersham Biosciences)のような活性化クロマトグラフィ用レジンと抗NAAP抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
NAAPを有する培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、NAAPを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下で高イオン強度のバッファで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とNAAPとの結合を切るような条件で(例えば、或るpH2〜3のバッファ、あるいは高濃度の、例えば尿素又はチオシアン酸イオンなどのカオトロープで)溶出させ、NAAPを収集する。
17 NAAPと相互作用する分子の同定
NAAP又は生物学的に活性なその断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529)。マルチウェルプレートの各ウェルに予め配列しておいた候補の分子群を、標識したNAAPと共にインキュベートし、洗浄して、標識されたNAAP複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なNAAP濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したNAAPの数量、親和性、及び会合についての値を計算する。
或いは、NAAPと相互作用する分子は、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載されているような酵母2ハイブリッドシステムを用いて分析するか、又はMATCHMAKERシステム(Clontech)等の2ハイブリッドシステムに基づく市販のキットを用いて分析する。
NAAPは又はイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を判定できる(Nandabalan, K. 他(2000) 米国特許第6,057,101号)。
18 NAAP活性の実証
NAAP活性の測定を、レポーター遺伝子の転写を刺激するNAAPの能力によって行う(Liu, H. Y. 他(1997) EMBO J. 16:5289-5298)。このアッセイは、十分に特徴付けられたレポーター遺伝子作成物であるLexAop−LacZを用いる。このLexAop−LacZは、大腸菌LacZ酵素をコードする配列に融合されたLexA DNA転写調節エレメント(LexAop)からなる。融合遺伝子の作成及び発現、細胞への融合遺伝子の導入、及び、LacZ酵素活性の測定方法は、当業者に周知である。NAAPをコードする配列を、LexA転写因子に由来するDNA結合ドメインとNAAPとからなる融合タンパク質、LexA−NAAPの合成を指示するプラスミドにクローニングする。LexA−NAAP融合タンパク質をコードする得られたプラスミドを、LexAop−LacZレポーター遺伝子を持つプラスミドと共に酵母細胞内に導入する。対照細胞と比較したLexA−NAAP形質移入細胞に関連するLacZ酵素活性の量が、NAAPによって刺激された転写の量に比例する。
あるいはNAAPの活性は、亜鉛に結合する能力により測定される。5〜10μMのサンプル溶液(2.5mMの酢酸アンモニウム溶液中(pH7.4))を0.05Mの硫酸亜鉛溶液(Aldrich, Milwaukee WI)と、100μMのジチオスレイトール(10%メタノールを添加)の存在下で混合する。サンプルと硫酸亜鉛溶液とを、20分間インキュベートする。反応溶液をVYDACカラム(Grace Vydac, Hesperia, CA)に通す(約300オングストロームのボアサイズ(bore size)、5μMの粒径)。これにより、亜鉛−サンプル複合体を溶液から単離し、次に質量分析計(PE Sciex, Ontario, Canada)にかける。サンプルに結合した亜鉛の定量には、機能的原子量である63.5Daを用いる。この原子量を観測したのはWhittal, R. M. 他((2000) Biochemistry 39:8406-8417)である。
或いは、NAAPの核酸結合活性を判定する或る方法は、ポリアクリルアミドゲル泳動移動度シフトアッセイを伴う。このアッセイの調製では、NAAPは、NAAP cDNAを有する真核生物発現ベクターを用い、COS7、HeLa、若しくはCHOなど、哺乳類細胞株を形質転換することで発現される。形質転換の後、この細胞株がNAAPを発現し蓄積するのに適した条件下で、これらの細胞を48〜72時間インキュベーションする。可溶化した蛋白質を有する抽出物の調製は、NAAPを発現する細胞から行いうる。この方法は当分野で周知である。NAAPを有する抽出物の各部分を、[32P]標識したRNA又はDNAに添加する。当分野で公知の技術により放射性核酸をin vitroで合成することが可能である。混合物を5〜10分間バッファした条件下でRNA分解酵素とDNA分解酵素のインヒビターの存在下で25℃でインキュベートする。インキュベートした後に、サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分析する。その後にオートラジオグラフ法により分析する。バンドがオートラジオグラム上に存在すれば、NAAPと放射性転写物との複合体の形成を示す。同様の移動度のバンドは、非形質転換細胞から調製した対照抽出物を用いて準備したサンプル中には見られないであろう。
或いはNAAPのメチラーゼ活性を判定する或る方法では、供与体基質と受容体基質との間での放射標識メチル基の転移を測定する。反応混合液(50μlの最終容量)には、15mMのHEPES(pH 7.9)、1.5mMのMgCl、10mMジチオスレイトール、3%ポリビニルアルコール、1.5μCi[メチル−H]AdoMet(0.375μMのAdoMet)(DuPont-NEN)、0.6μgのNAAP、及び受容体基質(例えば0.4μgの[35S]RNA又は6−メルカプトプリン(6−MP)、最大1mMの最終濃度)を含む。反応混合液は30℃で30分間、次に65℃で5分間インキュベートする。
[メチル−H]RNAの分析法は次のとおりである。(1)50μlの2×ローディングバッファ(20mMのTris-HCl(pH 7.6)、1MのLiCl、1mMのEDTA、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))及び50μlオリゴd(T)−セルロース(1×ローディングバッファ中に10mg/ml)を反応混液に添加し、インキュベートを室温で振盪しながら30分間おこなう。(2)反応混液を96穴ろ過プレート(真空装置に接続)に移す。(3)各サンプルを逐次洗浄する。これには3つの2.4mlアリコットの1×オリゴd(T)ローディングバッファ(0.5%SDS又は0.1%SDSを有するものと、SDSを有しないもの)を用いる。(4)RNAの溶出を、300μlの水で96ウェル収集プレートへ行い、シンチレーションバイアル(液体シンチラントを含有)に移し、放射能を判定する。
[メチル−H]6−MPの分析法は次のとおりである。(1)500μlの0.5Mホウ酸バッファ(pH10.0)を、次に20%(v/v)でトルエンに希釈したイソアミルアルコールの2.5mlを、反応混液に添加する。(2)サンプルの混合を、10秒間、ボルテックスで良く撹拌しておこなう。(3)遠心分離を700gで10分間おこなった後、1.5mlの有機相をシンチレーションバイアル(0.5ml無水エタノールと液体シンチラントとを含有)に移し、放射能を判定する。(4)結果の補正を、6−MPの、有機相への抽出について行う(約41%)。
或いは、NAAPのタイプIトポイソメラーゼ活性のアッセイを、或るスーパーコイルDNA基質の弛緩(relaxation)に基づき行う。NAAPのインキュベートをその基質と共に、Mg2+とATPとを欠くバッファ中で行い、反応を終了させ、生成物をアガロースゲルにロードする。変容したトポアイソマーの、スーパーコイル基質からの弁別は、電気泳動でできる。このアッセイはタイプIトポイソメラーゼ活性に特異的である。その理由は、Mg2+とATPとが、タイプIIトポイソメラーゼに必要な補因子だからである。
NAAPのタイプIIトポイソメラーゼ活性のアッセイを、或るキネトプラストDNA(KDNA)基質の脱連環(decatenation)に基づいて行い得る。NAAPのインキュベートをKDNAと共に行い、反応を終了させ、生成物をアガロースゲルにロードする。単量体環状KDNAの、連環したKDNAとの弁別は、電気泳動でできる。タイプIトポイソメラーゼ活性とタイプIIトポイソメラーゼ活性とを測定する市販キットはTopogen(Columbus OH)で得られる。
NAAPのATP依存性RNAヘリカーゼ巻き戻し活性は、Zhang及びGrosse(1994; Biochemistry 33:3906-3912)に記載された方法で測定できる。RNA巻き戻し用の基質には32P−標識RNAを含み、このRNAは二本のRNAストランド(194及び130ヌクレオチドの長さ)からなり、17塩基対のduplex領域を持つ。RNA基質を、37℃で30分間、ATP、Mg2+、Tris−HClバッファ(pH7.5)で可変量のNAAPと共にインキュベートする。次に、10%SDS−ポリアクリルアミドゲルを通す電気泳動法によって一本鎖RNA生成物を二本鎖RNA基質から分離し、オートラジオグラフ法により定量する。回収した一本鎖RNAの量は、調製物中のNAAP量に比例する。
あるいはNAAP機能のアッセイは、哺乳動物細胞培養系において生理的に高められたレベルでの、NAAPをコードする配列の発現によって算定する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを持つ哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターとしては、pCMV SPORT(Life Technologies)及びpCR3.1(Invitrogen Corporation, Carlsbad CA)があり、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを持つ。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、好ましくは内皮由来又は造血由来の細胞株に一時的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。
標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、組換えベクターからのcDNA発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP; CLONTECH)、CD64又はCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFP又はCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、それらの細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。
FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方制御、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパク質の発現の変容、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変容とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M. G. (1994) Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
遺伝子発現に与えるNAAPの影響は、NAAPをコードする配列と、CD64又はCD64-GFPのどちらかとが形質移入された、高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64又はCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質移入された細胞と形質移入されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて効率的に分離できる(DYNAL, Inc., Lake Success NY)。mRNAは、当業者に周知の方法で細胞から精製できる。NAAPと、目的とする他の遺伝子とをコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析できる。
NAAPのプソイドウリジン合成酵素活性のアッセイには、トリチウム(H)放出アッセイを、Nurse他((1995) RNA 1:102-112)を改作して行い、RNA中のH−放射標識ウリジル酸(U)が異性化されてプソイドウリジン(ψ)になるときの、Uのピリミジン成分のC位置からのHの放出を測定する。典型的な500μlアッセイ混液の内容は、50mMのHEPESバッファ(pH7.5)、100mM酢酸アンモニウム、5mMジチオスレイトール、1mMのEDTA、30単位のRNase阻害剤、及び0.1〜4.2μMの[5H]tRNA(約1μCi/nmolのtRNA)である。反応を開始するには、5μlより少量のNAAPの濃縮溶液(又はNAAP含有サンプル)を添加し、インキュベートを5分間37℃で行う。NAAPを加えた後、反応混液の一部を様々な経過時間(最長30分まで)に採取し、NoritSA3(12%w/v)を含有する1mlの0.1MのHClに希釈して反応を停止する。停止した反応混液の遠心分離を5分間、最大速度のマイクロ遠心機で行い、上澄みのろ過を、グラスウールの詰め物を通して行う。ペレットを、1mlの0.1MのHCl中で2回、再懸濁して洗浄した後、遠心分離する。洗浄後の上澄みの各々を、別々にグラスウールの詰め物に通し、元のろ過物と混合する。混合したろ過物の一部を、シンチレーション液(最大10ml)と混合し、シンチレーションカウンタでカウントする。RNAから放出されたHの量、また可溶性ろ液に存在するHの量が、サンプルにおけるプソイドウリジン合成酵素活性の量に比例する(Ramamurthy, V. (1999) J. Biol. Chem. 274:22225-22230)。
あるいはNAAPのプソイドウリジン合成酵素活性のアッセイは、30〜37℃で、次の混液で行う。すなわち100mMのTrisHCl(pH8.0)、100mM酢酸アンモニウム、5mMのMgCl、2mMジチオスレイトール、0.1mMのEDTA、及び1〜2fmolの[32P]放射標識ランオフ(runoff)転写物(産生はin vitroで、適切なRNAポリメラーゼすなわちT7又はSP6で行う)を基質として含む混液である。NAAPを加えて反応を開始させるか、反応液に加えずに対照サンプルとする。インキュベート後、RNAをフェノール−クロロホルムで抽出し、エタノール中に沈殿させる。また、完全に加水分解して3−ヌクレオチド一リン酸にするためRNase T2を用いる。水解物の分析には2次元薄層クロマトグラフィを用い、32P放射ラベルの量(ψMP及びUMPスポット中に存在する量)の評価を、薄層クロマトグラフィプレートをフィルム又はPhosphorImagerスクリーンに曝した後に行う。基質RNA中のウリジル酸残基の相対数を考慮してψMPとUMPとの相対量を判定し、この量を用いてtRNA分子の量に対するψの相対量を計算する(モルψ/tRNAモル、又はモルψ/tRNAモル/分で表す)。この量が、NAAPサンプル中のプソイドウリジン合成酵素活性の量に一致する(Lecointe, F. 他(1998) J. Biol. Chem. 273:1316-1323)。
NAAPのN,Nジメチルグアノシン転移酵素((m G)メチルトランスフェラーゼ)活性の測定は、160μl反応混液に以下を含有して行う。すなわち100mMのTris-HCl(pH 7.5)、0.1mMのEDTA、10mMのMgCl、20mMのNHCl、1mMジチオスレイトール、6.2μMのS−アデノシル−L−[メチル−H]メチオニン(30〜70Ci/mM)、8μgのm G−欠損tRNA又は野生型tRNA(酵母由来)及び約100μgの精製NAAP又はNAAP含有サンプルを含む。反応液を30℃で90分間インキュベートし、氷上で冷却する。各反応液の一部を、100μgBSAを含む1mlの水に希釈する。1mlの2MHClを各サンプルに加え、酸性不溶性産物を氷上で20分間沈殿させた後、収集のためのろ過をガラス繊維フイルタで行う。収集した物質の洗浄を数回、塩酸で行い、液体シンチレーションカウンタを用いて定量する。Hが、m Gを欠損した酸性不溶性tRNAに取り込まれる量が、NAAPサンプル中のN,N−ジメチルグアノシン転移酵素活性の量に比例する。基質tRNAを含まない反応、又は既に修飾された野生型tRNAを含む反応は対照反応として役だち、この反応では酸性不溶性H−標識産物は得られないはずである。
NAAPのポリアデニル化活性の測定には、in vitroのポリアデニル化反応を用いる。反応混合液の作製は氷上で行い、以下を含む。10μlの5mMジチオスレイトール、0.025%(v/v)NONIDETP−40、50mMクレアチンリン酸、6.5%(w/v)ポリビニルアルコール、0.5ユニット/μlのRNAGUARD(Amersham Pharmacia Biotech)、0.025μg/μlクレアチン・キナーゼ、1.25mMコルジセピン5’−三リン酸、及び3.75mMのMgClで、総容量25μlとする。60fmolのCstF、50fmolのCPSF、240fmolのPAP、4μlの未精製CF II、又は部分的に精製したCF IIと、可変量CF Iを次に反応混液に加える。容量を調整して23.5μlにするため、以下を有するバッファを加える。50mMのTrisHCl(pH 7.9)、10%(v/v)グリセロール、及び0.1mMのNaEDTAである。最終的な硫酸アンモニウム濃度は20mM未満とする。反応を氷上で開始するため、15fmolの32P標識mRNA前駆体テンプレートと、2.5μgの無標識tRNAを含む1.5μlの水を加える。反応液を次にインキュベートする。これは30℃で75〜90分間行い、停止するには75μl(約2倍量)のプロテイナーゼKミックス(0.2MのTris-HCl(pH 7.9)、300mMのNaCl、25mMのNaEDTA、2%(w/v)SDS)、1μlの10mg/mlプロテイナーゼK、0.25μlの20mg/mlグリコーゲン及び23.75μlの水を加える。インキュベート後、RNAをエタノールで沈殿させ、分析を6%(w/v)ポリアクリルアミド、8.3M尿素シーケンシングゲル上で行う。乾燥したゲルをオートラジオグラフィー又はホスホイメージャーを用いて現像する。切断活性を判定するには、切断産物の量を、mRNA前駆体テンプレートの量と比較する。いずれかのポリペプチド成分を反応から除くことと、NAAPを代替することとは、mRNA前駆体ポリアデニル化におけるNAAPの特定の生物機能を同定する上で有用である(Ruegsegger, U. 他(1996)J. Biol. Chem. 271:6107-6113、及びその参考文献)。
tRNA合成酵素活性は、[14C]−標識されたアミノ酸の存在下で基質tRNAのアミノアシル化として測定される。NAAPは緩衝液中で、[14C]−標識されたアミノ酸と好適な同族tRNA(例えば、[14C]アラニン及びtRNAala)と共にインキュベートされる。14C−標識の産物は遊離[14C]アミノ酸からクロマトグラフィによって分離され、取り込まれた[14C]はシンチレーションカウンタで測定される。このアッセイでは、14C−標識産物の量がNAAPの活性に比例する。
あるいはNAAP活性を測定するため、NAAP含有サンプルのインキュベートを、以下を含む溶液で行う。1mMのATP、5mMのHepes-KOH(pH 7.0)、2.5mMのKCl、1.5mM塩化マグネシウム、及び0.5mMのDTTであり、また誤ってアシル化した[14C]−Glu−tRNAGln(例えば1μM)及び同様の濃度の無標識Lグルタミンをも含む。反応を停止させるため3M酢酸ナトリウム(pH 5.0)を加えた後、混液の抽出を同量の水‐飽和フェノールで行い、水相と有機相とを分離する遠心分離を15,000 ×g、室温で1分間おこなう。水相の沈殿を3倍量のエタノール、−70℃で15分間おこなう。沈殿したアミノアシルtRNAを回収する遠心分離を15,000 ×g、4℃で15分間おこなう。ペレットの再懸濁を25mMのKOHで行い、脱アシル化を65℃で10分間おこない、中和を0.1MのHClで行い(最終pH 6〜7)、真空乾燥する。乾燥ペレットの再懸濁を水中で行い、セルロースTLCプレート上にスポットする。プレートの展開を、イソプロパノール/蟻酸/水又はアンモニア/水/クロロホルム/メタノール中で行う。イメージを濃度計分析し、GluとGlnとの相対量の計算を、スポットのRf値と相対強度とに基づき行う。NAAP活性の計算を、GluがGlu−tRNAGlnとしてアシル化され転換した結果のGlnの量に基づき行う(Curnow, A.W. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11819-26)。
19 NAAPアゴニスト及びアンタゴニストの同定
NAAPの活性化若しくは抑制のアゴニスト若しくはアンタゴニストを、実施例18で記述したアッセイを用いてテストし得る。アゴニストはNAAP活性の増加を引き起こし、アンタゴニストはNAAP活性の減少を引き起こす。
20 NAAP分泌アッセイ
或る高処理アッセイを用いて、真核細胞内に分泌されるポリペプチドを同定しうる。このようなアッセイの1例では、ポリペプチド発現ライブラリを作製するため、5’に偏向したcDNAを、或るリーダーのないβラクタマーゼ遺伝子の5’末端に融合する。βラクタマーゼは便利な遺伝子レポーターである。理由は、この酵素が高い信号/ノイズ比と、低い内因性バックグラウンド活性とを示し、他のタンパク質に融合しても活性を保持するからである。或る2重プロモーター系によって、βラクタマーゼ融合ポリペプチドの発現を、細菌又は真核細胞でなしうる。これにはlac又はCMVプロモーターを各々用いる。
ライブラリは先ず細菌(大腸菌など)に形質転換され、真核生物系で分泌されうる融合ポリペプチドをコードするライブラリメンバーが同定される。哺乳類シグナル配列は、βラクタマーゼ融合ポリペプチドが細菌のペリプラズムへ移動するよう指示する。ペリプラズムでこれはカルベニシリンへの抗生物質耐性を授ける。カルベニシリン選択された細菌の単離を固体培地で行い、個々のクローンを液体培地で成長させ、生じた培養物を用いてライブラリメンバープラスミドDNAを単離する。
哺乳類細胞(293細胞など)の播種を96ウェル組織培養プレート上に、約40,000細胞/ウェルの密度で、フェノールレッドを含まない、100μlのDMEに10%ウシ胎児血清(FBS)(Life Technologies, Rockville, MD)を加えて行う。次の日に、精製プラスミドDNA(カルベニシリン耐性細菌から単離)を、15μlのOPTI-MEM I培養液(Life Technologies)で、形質移入すべき細胞の各ウェルに25μlの容量まで希釈する。別のプレートで、1μlのLF2000 Reagent(Life Technologies)の希釈を25μl/ウェルOPTI-MEM I中に行う。25μlの希釈したLF2000 Reagentを次に25μlの希釈したDNAと混合し、短時間混ぜ合わせ、インキュベートを20分間、室温で行う。生じたDNA-LF2000試薬複合体を次に、直接、293細胞の各ウェルに加える。細胞の形質移入はまた、適切な対照プラスミド(野生型βラクタマーゼ、リーダーのないβラクタマーゼ、又は例えばCD4融合したリーダーのないβラクタマーゼのいずれかを発現するプラスミド)で行う。形質移入の24時間後、約90μlの細胞培地のアッセイを37℃で、100MのNitrocefin(ニトロセフィン、Calbiochem, San Diego CA)及び0.5mMのオレイン酸(Sigma, St. Louis, MO)を用い、10mMリン酸バッファ(pH 7.0)中でおこなう。ニトロセフィンはβラクタマーゼの基質であり、加水分解されると黄色から赤へ顕著に変色する。βラクタマーゼ活性のモニターを、20分間以上、マイクロタイタープレートリーダーにおいて486nmで行う。486nmでの色吸収の増加が、形質移入した細胞培地でのβラクタマーゼ融合ポリペプチドの分泌に一致する。これは、融合ポリペプチドにおける真核生物シグナル配列の存在の結果である。対応するライブラリメンバープラスミドDNAのポリヌクレオチド配列分析を次に用いて、シグナル配列をコードするcDNAを同定する(2001年3月9日に提出された米国特許出願09/803,317に記載)。
当業者には、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない限りの、記載した本発明の、組成物、方法及びシステムの、種々の修正及び変更については自明であろう。本発明が、新規かつ有用なタンパク質群及びそれらをコードするポリヌクレオチド群を提供し、これらを創薬過程に利用しうること、また本発明が、これらの組成を用いた、疾患と病態との検出、診断、及び治療の方法を提供することは理解されよう。本発明について説明するにあたり幾つかの実施態様に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施態様に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。このような実施態様の記載は完全であると考慮されるべきでなく、また本発明を開示したとおりの形態に限定するものでもない。更に、1つの実施態様の要素は、他の1つ以上の実施態様の要素と容易に組み換え得る。このような組み合わせによって本発明の範囲内で多数の実施態様が形成され得る。本発明の範囲は、添付した請求の範囲及びそれらの等価物によって規定されるよう意図される。
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長のポリヌクレオチド実施態様及びポリペプチド実施態様の命名の概略である。
表2は、本発明のポリペプチド実施態様のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。また、各ポリペプチドとその相同体(1つ以上)が一致する確率スコアも併せて示す。
表3は、予測されるモチーフ及びドメインなど、ポリペプチド実施態様の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いた方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
表4は、ポリヌクレオチド実施態様をアセンブリするために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、該ポリヌクレオチドの選択された断片と共に示す。
表5は、ポリヌクレオチド実施態様の代表的cDNAライブラリを示す。
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
表7は、ポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、参照文献及び閾値パラメータと共に示す。
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636
Figure 2005508636

Claims (171)

  1. 以下からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
    (a) SEQ ID NO:1-17、SEQ ID NO:23-25及びSEQ ID NO:28-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (b) SEQ ID NO:18-22及びSEQ ID NO:26-27からなる群から選択した天然のアミノ酸配列から本質的に構成されるポリペプチド、
    (c) SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3-5、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:18-22、SEQ ID NO:2-276、SEQ ID NO:35-36、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:49-50、SEQ ID NO:53及びSEQ ID NO:58からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列から本質的に構成されるポリペプチド、
    (d) SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10-11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:28-29、SEQ ID NO:31-34、SEQ ID NO:39-40、SEQ ID NO:42-43、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:52及びSEQ ID NO:57からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列から本質的に構成されるポリペプチド、
    (e) SEQ ID NO:47のアミノ酸配列に対して少なくとも91%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (f) SEQ ID NO:23及びSEQ ID NO:38からなる群から選択したアミノ酸配列に対して少なくとも92%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (g) SEQ ID NO:55のアミノ酸配列に対して少なくとも93%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (h) (b)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列と少なくとも94%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
    (i) SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:37及びSEQ ID NO:56からなる群から選択した或るアミノ酸配列と少なくとも95%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
    (j) SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:17及びSEQ ID NO:48からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも96%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (k) SEQ ID NO:30及びSEQ ID NO:45からなる群から選択したアミノ酸配列に対して少なくとも97%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (l) SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:51及びSEQ ID NO:54からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも99%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (m) SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び
    (n) SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片
  2. 以下の(a)乃至(b)からなる群から選択した請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
    (a) SEQ ID NO:117, SEQ ID NO 23-25及びSEQ ID NO:28-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (b) SEQ ID NO:18-22及びSEQ ID NO:26-27からなる群から選択したアミノ酸配列から実質的に構成されるポリペプチド
  3. 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  5. SEQ ID NO:59-116からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチドへ機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチド。
  7. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
  8. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを有する遺伝形質転換生物。
  9. 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
    (a) 前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換される細胞を培養する過程と、
    (b) そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とからなる方法。
  10. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 請求項1に記載のポリペプチドと特異結合するような単離された抗体。
  12. 以下からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
    (a) SEQ ID NO:59-116からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (b) SEQ ID NO:59-108及びSEQ ID NO:110-116からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (c) SEQ ID NO:109のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも97%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (d) (a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (e) (b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (f) (c)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び
    (g) (a)〜(f)のRNA等価物
  13. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを持つ、単離されたポリヌクレオチド。
  14. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a) 前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を持つ少なくとも20の連続したヌクレオチドを持つプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程と、
    (b) 前記ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程とを含む方法。
  15. 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a) ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
    (b) 前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の有無を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。
  17. 請求項1のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  18. 請求項17に記載の組成物であって、以下の(a)乃至(b)からなる群から選択されたポリペプチド
    (a) SEQ ID NO:1-17、SEQ ID NO:23-25及びSEQ ID NO:28-58群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
    (b) SEQ ID NO:18-22及びSEQ ID NO:26-27からなる群から選択したアミノ酸配列から実質的に構成されるポリペプチド
  19. 機能的NAAPの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項17の組成物の投与を含む治療方法。
  20. 請求項1のポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
    (b) 前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出する過程を含むことを特徴とする方法。
  21. 請求項20に記載の方法で同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  22. 機能的NAAPの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項21の組成物の投与を含む治療方法。
  23. 請求項1のポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
    (b) 前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。
  24. 請求項23の方法で同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを有する組成物。
  25. 機能的NAAPの過剰発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項24の組成物の投与を含む治療方法。
  26. 請求項1のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
    (b) 請求項1のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程を含む方法。
  27. 請求項1のポリペプチドの活性をモジュレート(調節)する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
    (b) 請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
    (c) 試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程を含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。
  28. 請求項5の配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変するのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、該標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b) 前記標的ポリヌクレオチドの発現改変を検出する過程と、
    (c) 可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。
  29. 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
    (a) 核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
    (b) 処理した前記生物学的サンプルの核酸と、請求項12のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを持つプローブをハイブリダイズさせる過程であって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12のポリヌクレオチドまたはその断片のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである、前記過程と、
    (c) ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量する過程と、
    (d) 前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示するような方法。
  30. 生物学的サンプル中のNAAPの発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
    (a) 前記生物学的サンプルと請求項11の抗体との混合を、前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体を形成するのに適した条件下で行う過程と、
    (b) 前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。
  31. 請求項11の抗体であって、
    (a) キメラ抗体
    (b) 単鎖抗体
    (c) Fab断片
    (d) F(ab’)断片
    (e) ヒト化抗体のいずれかである抗体。
  32. 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを有する組成物。
  33. 被検者におけるNAAPの発現に関連する症状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  34. さらにラベルを含む請求項32に記載の組成物。
  35. 被検者におけるNAAPの発現に関連する症状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  36. 請求項11の抗体の特異性を持つポリクローナル抗体を調製する方法であって、
    (a) 抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列またはその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
    (b) 前記動物から抗体を単離する過程と、
    (c) 前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するポリクローナル抗体を同定する過程とを含むような方法。
  37. 請求項36の方法で産生したポリクローナル抗体。
  38. 請求項37のポリクローナル抗体と好適なキャリアとを有する組成物。
  39. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
    (a) 抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列またはその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
    (b) 前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
    (c) 前記抗体産出細胞と不死化した細胞とを融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
    (d) 前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
    (e) SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。
  40. 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
  41. 請求項40に記載のモノクローナル抗体と適切なキャリアとを有する組成物。
  42. Fab発現ライブラリのスクリーニングによって前記抗体を産出することを特徴とする、請求項11に記載の抗体。
  43. 組換え免疫グロブリンライブラリをスクリーニングすることにより産出される、請求項11に記載の抗体。
  44. サンプル中のSEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドを検出する方法であって、
    (a) 請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
    (b) 特異的結合を検出する過程とを含み、該特異結合が、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。
  45. SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドを精製する方法であって、
    (a) 請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
    (b) 前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1-58からなる群から選択したアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドを得る過程とを含むことを特徴とする方法。
  46. マイクロアレイの少なくとも1つのエレメントが請求項13に記載のポリヌクレオチドであるマイクロアレイ。
  47. ポリヌクレオチド群を有する或るサンプルの発現プロファイルを作製する方法であって、
    (a) サンプル中のポリヌクレオチドを標識化する過程
    (b) ハイブリダイゼーション複合体が形成されるのに適した条件下で請求項46のマイクロアレイのエレメントとサンプル中の標識化ポリヌクレオチドとを接触させる過程と、
    (c) サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量する過程を含む方法
  48. 固体基板上の固有の物理的位置に付着された種々のヌクレオチド分子を有するアレイであって、少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子が、或る標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチド群と特異的にハイブリダイズ可能な最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を含み、前記の標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするアレイ。
  49. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  50. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  51. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列が前記の標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  52. 請求項48に記載のアレイで、マイクロアレイであることを特徴とするアレイ。
  53. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列を有するヌクレオチド分子にハイブリダイズした前記の標的ポリヌクレオチドを有することを特徴とするアレイ。
  54. 請求項48に記載のアレイで、或るリンカーが少なくとも1つの前記のヌクレオチド分子と前記の固体基板とを連結していることを特徴とするアレイ。
  55. 請求項48に記載のアレイで、該基板上の固有の物理的位置の各々が複数のヌクレオチド分子を含み、任意の単一の固有の物理的位置でのその複数のヌクレオチド分子は同一の配列を有し、該基板上の固有の物理的位置の各々は、該基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子群の配列とは異なる或る配列を有するヌクレオチド分子群を含むことを特徴とするアレイ。
  56. SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  57. SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  58. SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  59. SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  60. SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  61. SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  62. SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  63. SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  64. SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  65. SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  66. SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  67. SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  68. SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  69. SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  70. SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  71. SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  72. SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  73. SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  74. SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  75. SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  76. SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  77. SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  78. SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  79. SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  80. SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  81. SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  82. SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  83. SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  84. SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  85. SEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  86. SEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  87. SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  88. SEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  89. SEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  90. SEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  91. SEQ ID NO:36のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  92. SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  93. SEQ ID NO:38のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  94. SEQ ID NO:39のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  95. SEQ ID NO:40のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  96. SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  97. SEQ ID NO:42のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  98. SEQ ID NO:43のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  99. SEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  100. SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  101. SEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  102. SEQ ID NO:47のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  103. SEQ ID NO:48のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  104. SEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  105. SEQ ID NO:50のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  106. SEQ ID NO:51のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  107. SEQ ID NO:52のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  108. SEQ ID NO:53のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  109. SEQ ID NO:54のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  110. SEQ ID NO:55のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  111. SEQ ID NO:56のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  112. SEQ ID NO:57のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  113. SEQ ID NO:58のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  114. SEQ ID NO:59のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  115. SEQ ID NO:60のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  116. SEQ ID NO:61のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  117. SEQ ID NO:62のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  118. SEQ ID NO:63のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  119. SEQ ID NO:64のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  120. SEQ ID NO:65のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  121. SEQ ID NO:66のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  122. SEQ ID NO:67のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  123. SEQ ID NO:68のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  124. SEQ ID NO:69のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  125. SEQ ID NO:70のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  126. SEQ ID NO:71のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  127. SEQ ID NO:72のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  128. SEQ ID NO:73のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  129. SEQ ID NO:74のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  130. SEQ ID NO:75のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  131. SEQ ID NO:76のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  132. SEQ ID NO:77のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  133. SEQ ID NO:78のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  134. SEQ ID NO:79のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  135. SEQ ID NO:80のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  136. SEQ ID NO:81のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  137. SEQ ID NO:82のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  138. SEQ ID NO:83のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  139. SEQ ID NO:84のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  140. SEQ ID NO:85のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  141. SEQ ID NO:86のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  142. SEQ ID NO:87のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  143. SEQ ID NO:88のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  144. SEQ ID NO:89のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  145. SEQ ID NO:90のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  146. SEQ ID NO:91のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  147. SEQ ID NO:92のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  148. SEQ ID NO:93のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  149. SEQ ID NO:94のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  150. SEQ ID NO:95のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  151. SEQ ID NO:96のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  152. SEQ ID NO:97のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  153. SEQ ID NO:98のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  154. SEQ ID NO:99のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  155. SEQ ID NO:100のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  156. SEQ ID NO:101のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  157. SEQ ID NO:102のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  158. SEQ ID NO:103のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  159. SEQ ID NO:104のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  160. SEQ ID NO:105のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  161. SEQ ID NO:106のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  162. SEQ ID NO:107のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  163. SEQ ID NO:108のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  164. SEQ ID NO:109のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  165. SEQ ID NO:110のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  166. SEQ ID NO:111のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  167. SEQ ID NO:112のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  168. SEQ ID NO:113のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  169. SEQ ID NO:114のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  170. SEQ ID NO:115のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  171. SEQ ID NO:116のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
JP2003540317A 2001-10-29 2002-10-29 核酸結合タンパク質 Pending JP2005508636A (ja)

Applications Claiming Priority (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US34844201P 2001-10-29 2001-10-29
US33554401P 2001-11-01 2001-11-01
US33753501P 2001-11-05 2001-11-05
US34465001P 2001-11-09 2001-11-09
US33476201P 2001-11-15 2001-11-15
PCT/US2002/034846 WO2003038052A2 (en) 2001-10-29 2002-10-29 Nucleic acid-associated proteins

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005508636A true JP2005508636A (ja) 2005-04-07

Family

ID=27541124

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003540317A Pending JP2005508636A (ja) 2001-10-29 2002-10-29 核酸結合タンパク質

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP1497315A2 (ja)
JP (1) JP2005508636A (ja)
AU (1) AU2002359333A1 (ja)
CA (1) CA2462660A1 (ja)
WO (1) WO2003038052A2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1402058A4 (en) * 2001-06-05 2006-02-01 Exelixis Inc DGKS AS P53 PATH MODIFICATORS AND METHOD OF USE
WO2006120019A2 (en) * 2005-05-13 2006-11-16 Centre National De La Recherche Scientifique Mcm9, a member of the mcm2-8 family and its use in pharmaceutical compositions
CA2810928A1 (en) 2010-09-22 2012-03-29 Alios Biopharma, Inc. Substituted nucleotide analogs
CA2860234A1 (en) 2011-12-22 2013-06-27 Alios Biopharma, Inc. Substituted phosphorothioate nucleotide analogs
CN104321333A (zh) 2012-03-21 2015-01-28 沃泰克斯药物股份有限公司 硫代氨基磷酸酯核苷酸前药的固体形式
WO2013142157A1 (en) 2012-03-22 2013-09-26 Alios Biopharma, Inc. Pharmaceutical combinations comprising a thionucleotide analog

Also Published As

Publication number Publication date
EP1497315A2 (en) 2005-01-19
WO2003038052A2 (en) 2003-05-08
AU2002359333A1 (en) 2003-05-12
CA2462660A1 (en) 2003-05-08
WO2003038052A3 (en) 2004-11-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2004087875A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
WO2003094848A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
EP1506304A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
WO2003076586A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
JP2005508636A (ja) 核酸結合タンパク質
US20040137448A1 (en) Nucleic acid-associated proteins
JP2005511028A (ja) 疾患検出および治療用分子
WO2003010329A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
US20050123912A1 (en) Nucleic-acid associated proteins
JP2004537295A (ja) 核酸結合タンパク質
JP2005521382A (ja) 細胞成長、分化および細胞死関連タンパク質
US20050118582A1 (en) Nucleic acid-associated proteins
JP2005512531A (ja) 核酸結合タンパク質
WO2004067712A2 (en) Intracellular signaling molecules
JP2005508600A (ja) 核酸関連タンパク質
WO2004011604A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
JP2005502329A (ja) 核酸結合タンパク質
JP2005504509A (ja) 核酸関連タンパク質
WO2003046151A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
JP2005520493A (ja) 構造及び細胞骨格関連タンパク質
JP2005508142A (ja) 疾患検出および治療用分子
WO2002079389A2 (en) Nucleic acid-associated proteins
JP2005508606A (ja) 核酸関連タンパク質
US20050186569A1 (en) Nucleic acid-associated proteins
WO2003023003A2 (en) Nucleic acid-associated proteins