JP2005501814A - ビブリオリシンまたはその改変体を用いるプリオンの破壊 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ビブリオリシンまたはその改変体を用いてプリオンの活性を減少させる方法を提供する。ビブリオリシン含有溶液は、プリオン汚染された設備および器具を衛生化するため、ならびに食品および生物学的組織を除染するために用いられる。本発明は、動物およびヒトにおけるプリオン関連疾患を処置する方法を提供し、この方法は、薬学的に受容可能なキャリアを伴うビブリオリシンまたはその改変体の処方物の投与を包含する。そのような新規処方物は、症状発現前の段階で蓄積する細胞から神経細胞および疾患の進行した段階で脳へのプリオンの天然の経路を追跡するように操作される。本発明は、プリオン標的細胞にアクセスする増強した能力、および特定の条件(例えば、pHの範囲または酵素的切断)により調節され得る酵素活性を有する天然および組み換えのビブリオリシンならびにそれらの改変体を包含する方法ならびに処方物を提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、ビブリオリシンまたはその改変体を用いて感染性プリオンの活性を減少させる方法に関する。本発明は、それにより、プリオン汚染された設備および器具の衛生化ならびにプリオン汚染された食品および生物学的組織からの残余プリオンの除去の方法を提供する。本発明は、動物およびヒトにおけるプリオン関連疾患を処置する方法ならびにビブリオリシンを含む組成物の新規処方物をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
本願は、2001年5月16日出願、米国特許仮出願番号第60/291,665号から導かれた通常出願である。
【0003】
(発明の背景)
1985年に、2報の報告が、感染されたハムスターの脳からのスクレイピー感染性の精製を記載しており、このスクレイピー感染性は、推定Mr28,000〜30,000のタンパク質に非常に富んでいるフラクションを含んでいた。このタンパク様感染性物質は、問題の名称「プリオン」を与えられた(McGeochら、J.Gen.Virol.67:813−830(1986))。プリオンは、現在、核酸に影響する手順による不活性化に耐性であり、そして主にタンパク様感染性物質(PrPScと呼ばれる)からなる小さいタンパク様感染性粒子として規定されている。哺乳動物のPrP遺伝子は、可溶性タンパク質PrPを発現し、これは、不溶性形態(PrPSc)に変換され得る。プリオン病は、なお定義されていない翻訳後事象による正常な形態のプリオンタンパク質(PrP)から異常な形態(PrPSc)への変換から生じる。PrPは、グリコイノシトールリン脂質アンカーにより細胞の外部表面に結合しているが、一方でPrPScは、培養細胞の細胞質小胞内に蓄積する。正常な形態のプリオンタンパク質のアミノ酸配列と疾患形態のプリオンタンパク質のアミノ酸配列との間に検出可能な差異はないが、PrPScは、より高いβシート含有量およびより低いαへリックス含有量を有するコンフォメーションを有する(GabizonおよびPrusiner、Biochem.J.266:1−14(1990);Prusiner、Science 252:1522(1991);Prusiner、Acquired Immune Deficiency Syndromes 6(6):663−665(1993);Panら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10962−10966(1993);Safaxら、J.Biol.Chem.268:20276−20284(1993))。
【0004】
感染したヒトおよび動物の脳内の異常なPrPSc形態の存在は、プリオン病の唯一の疾患特異的診断マーカーである。PrPSc形態は、プリオン病(海綿状脳障害を含む)の伝染および病因の両方を媒介し、そして神経変性において重要な役割を果たす(Prusiner、The Molecular and Genetic Basis of Neurological Disease、第二版、pp.103−143(1997))。プリオン病(例えば、スクレイピー)は、規定される不溶性状態でのコンフォメーション変化したタンパク質への正常な可溶性タンパク質の集合および分解の異常な過程により特徴付けられる。不溶性タンパク質の他の例としては、アルツハイマー病および脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)のアミロイド斑におけるAβペプチド、パーキンソン病レーヴィ体におけるαサイヌクレイン(alpha synuclein)沈着物、前方側頭痴呆およびピック病における神経細線維もつれにおけるタウ、筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ、およびハンティングトン病におけるハンティングトンが挙げられる(Glenmerら、J.Neurol.Sci.92:1−28(1989);Haanら、Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310(1990))。
【0005】
ヒツジにおいてスクレイピーを誘発することに加えて、プリオンは、畜牛におけるウシ海綿状脳障害(BSE)(狂牛病としても知られている)を引き起こすことが知られている。ヒトにおいて、プリオンはまた、ヒトの脳を共食いするヒトにおけるクールー病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シェインカー症候群(GSS)と呼ばれる遺伝的に受け継がれた形態、およびクロイツフェルト−ヤーコプ病(CJD)の形態を引き起こす(HaseltineおよびPatarca、Nature 323(6084):115−116(1986);Bazanら、Nature 325:581(1987);ChatignyおよびPrusiner、Reviews Infectious Diseases 2(5):713−724(1980);Prusiner、Science 216:136−144(1982);McGeochら、J.Gen.Virol.67:813−830(1986);Manuelidisら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:5124−5128(1995);Prusiner、Science 278:245−251(1997))。最近、Supattaponeら(Mol.Cell.Biol.21(7):2608−2616(2001))は、PrP106と呼ばれる短縮系のプリオンタンパク質を改変して、PrP61と呼ばれる61残基のペプチドを作製した。このPrP61を発現するトランスジェニックマウスは、運動失調により自然に死亡し、そしてそれらの神経樹状体および神経細胞体内にPrP61を蓄積していた。
【0006】
脳への直接的な注射によるプリオン感染は、明白な疾患状態を生じるために最も効率的であるが、プリオンの経口摂取もまた、動物モデルにおいて、より低い頻度および兆候の延長された持続を伴って疾患を引き起こし得る。最近、畜牛へのスクレイピー感染したヒツジの肉を含む栄養補充での飼育により、英国において、177,490頭の動物の感染を引き起こし、プリオン病のウシ形態を伴ったことが明らかになった(Donnelly、Nature 408:787−788(2000))。この疾患は、仏国および他の欧州各国により少ない程度で広まった。さらに、研究は、異なる種由来のプリオンが、同じ種に最も効率的に感染するが、減少した効率では種の障壁を超え得ることを実証した。感染したウシをヒトが消費することで、感染したウシを消費した英国民において、改変体形態のCJD(vCJD)を導いたことが、現在、認識されている。数千人の英国民および他の欧州民が、症状発症前の状態でプリオンを保有しており、感染の数年後に、vCJDを発症することが考えられる。従って、これらの知見(vCJDとBSEとを関連付ける最近の確証を含む)は、感染したウシを食べることによりヒトvCJDに罹患する危険性に関する現在の懸念の基礎となる(Robertsら、Curr.Biol.6(10):1247−9(1996);Collinge、Lancet 354(9175):317−323(1999);Bruceら、Immunology Today 21:442−445(2000);Donnelly、Nature 408:787−788(2000))。
【0007】
プリオンが末梢経路経由で体内に入る際、これらは、神経を介して脊髄または脳幹へと移動し、次いで脳へ移動する前に、リンパ性細網組織中に蓄積する。伝播可能な海綿状脳障害(TSE)のホールマークは、神経組織およびリンパ組織におけるPrPScの蓄積である。経口で摂取されたプリオンは、細網内皮細胞系内の胚中心の小胞樹状細胞(FDC)を介して体内に入る。研究は、脾臓、リンパ節、およびパイアー斑の胚中心のFDCが、伝播可能な海綿状脳障害(TSE)の病因において重要な役割を果たすことを示した。これらの細胞は、通常、天然の抗原を捕捉し、そしてB細胞に対してプロセシングされた形態の抗原を提示するように機能する(CardoneおよびPocchiari、Nature Medicine 7(4):410−411(2001);Bruceら、Immunology Today 21:442−445(2000))。
【0008】
研究は、補体系が、プリオンの取り込み、リンパ性細網系における複製、およびCNS侵襲に関与することを示した(CardoneおよびPocchiari、Nature Medicine 7(4):410−411(2001))。この補体系は、抗体−抗原複合体または微生物の表面により活性化されて、タンパク質分解反応のカスケードを受け、細胞膜傷害複合体の集合を生じ得る血清タンパク質を含む。補体因子はまた、食細胞が、攻撃を受ける微生物に結合し、それを摂取し、そしてそれを破壊する能力を増加させる。正常な体液性免疫応答では、抗体−抗原複合体は、Fc−γレセプターに結合して、補体付加物に共有結合するようになる。次いで、これらの結合した複合体は、補体レセプターに結合して、抗原破壊を開始する。初期補体因子または補体レセプターのうちのいずれか一方の枯渇が、スクレイピーを有するマウスにおける疾患の兆候の開始、病原性プリオンタンパク質の脾臓での蓄積、および感染性を有意に遅延させる。プリオンは、補体因子に結合し得、次いで生じたプリオン−補体因子の複合体は、補体レセプターを介してFDCにより捕捉され得る。従って、補体系は、プリオン粒子にオプソニンを作用させ、そしてFDCへの補体レセプター媒介の取り込みを増強する際に重要な役割を果たし得る。次いで、FDCにおけるプリオンは、発症前に潜伏し、FDCまたはいくつかの型の白血球細胞により脳に輸送される前に、濃度を上昇させる(CardoneおよびPocchiari、Nature Medicine 7(4):410−411(2001);Mabbottら、Nature Medicine 4(7):485−487(2001);Kleinら、Nature Medicine 7(4)488−492(2001))。
【0009】
これらのプロテアーゼ耐性プリオンの特性は、それらの耐久性、従って、それらの分解および除去の困難さに寄与する。プリオンは、それらのマウス形態において208アミノ酸のプリオンタンパク質フラグメントを有するが、より小さなフラグメントもプリオンを作製し得る。このプリオンタンパク質は、2つの炭水化物側鎖およびグリコホスファチジル−イノシトールアンカー、膜内に挿入する脂質テイルを含む。プリオンは、熱、界面活性剤に対して耐性であり、かつ高度に強力な潜在的プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)に対して耐性である。プリオンタンパク質は、非常に疎水性であり、βプリーツシート構造を形成しており、このことは、消化を困難にする。オートクレービングが、このプリオンを除去するのに十分であるか否かは、不明確である。この非常に耐性のある粒子に接触し、そして接種する危険を考慮して、プリオンを確実に破壊もしくは除去するか、またはプリオンの有害な作用を中和するための方法が、非常に所望される(Supattaponeら、Mol.Cell.Biol.21(7):2608−2616(2001);ChatignyおよびPrusiner、Reviews of Infectious Diseases 2(5):713−724(1980))。
【0010】
米国特許第6,214,366 B1号は、分岐鎖ポリカチオン剤(例えば、樹状ポリカチオン)、またはそのような分岐鎖ポリカチオン剤を含む薬学的組成物を用いて不溶性タンパク質沈着の負荷を減少させることによって生理学系の欠陥を停止、予防、および/または逆転させる方法を開示する。細胞からPrPSc形態の浄化を増強する方法は、薬学的に受容可能な賦形剤と共に非結合体化樹状ポリカチオンを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。しかし、そのような方法は、感染性プリオン粒子の完全な除去において有用でない場合がある。米国特許第5,756,678号は、少なくとも5logの保護を得るためにプリオンを不活性化するための結合組織材料(例えば、コラーゲン)の処置方法を開示し、この方法は、結合組織材料の液体溶液と、水酸化ナトリウムとを、この溶液中の水酸化ナトリウムが、0.1M〜0.7Mの範囲をとるように、25℃以下の温度で、結合組織の機能に有害に影響することなくプリオンを不活性化するのに十分な期間にわたり、接触させる工程を包含する。この方法は、インビボでの使用に関して実用的でなく、そして高濃度の水酸化ナトリウムへの十分な曝露の必要性は、いくつかの組織移植物に損傷を与え得る。
【0011】
Schroderら(Neurotoxicology 19(4−5):683−688(1998))は、プリオンSc誘導性神経細胞死の機構を研究し、そしてNMDAレセプターアンタゴニストが、ラット皮質ニューロンにおいてアポトーシスを誘導するPrPScの効果をブロックしたことを見出した。アポトーシスの誘導に加えて、PrP106−126は、神経細胞における細胞内グルタチオン(GSH)レベルの有意な降下を引き起こした。GSHは、プロト癌原遺伝子産物Bcl−2と一緒になって、おそらく細胞内の反応性酸素種(ROS)の負荷を低減することを通して、アポトーシス細胞死から神経細胞を保護する。従って、細胞内のROSの負荷を低減する薬剤は、プリオンのアポトーシス効果を中和し得る。Supattaponeら(J.Virol.75(7):3453−3461(2001))は、インビトロで分岐鎖ポリアミンが、培養物中のスクレイピー感染した神経芽細胞腫細胞において、プリオンロッドを分解し、PrP27−30のβシート含有量を減少させ、そしてPrP27−30にタンパク質分解に対する感受性を与えたことを示した。しかし、分岐鎖ポリアミンにより誘導されるタンパク質分解消化に対するPrPScの感受性は、種に依存し、ここでウシ海綿状脳障害に感染した脳由来のPrPScは、感受性であり、天然のヒツジスクレイピーに感染した脳由来のPrPScは、感受性でなかった。分岐鎖ポリアミンがリソソーム中に特異的に蓄積するので、この酸性区画は、これらの薬剤がPrPSc浄化を媒介する部位であると信じられている。
【0012】
ビブリオリシンは、グラム陰性海洋微生物Vibrio proteolyticusによって分泌されるタンパク質分解酵素である。このエンドプロテアーゼは、タンパク質の疎水性領域に対して特異的な親和性を有し、そして疎水性アミノ酸に隣接するタンパク質を切断し得る。タンパク質の内部は、通常疎水性であるため、ビブリオリシンは、変性された疎水性タンパク質の切断において有用な強力なプロテアーゼであり、そして広範囲のpHおよび温度条件で活性である(Durhamら、J.Burn Care Rehabil.14(5):544〜51(1993))。細胞外中性プロテアーゼ、ビブリオリシン(NprV)をコードする遺伝子(nprV)は、Escherichia coli中で構築されたV.proteolyticus DNAライブラリーから単離された。クローン化nprV遺伝子のヌクレオチド配列は、609個のアミノ酸をコードするオープンリーディングフレームを明らかにし、これらは、171個のアミノ酸からなる長い「プロ」配列に従う推定のシグナルペプチド配列を含む。V.proteolyticusの培養物から精製された成熟NprVを、Bacillus thermolyticus由来の天然のプロテアーゼ(サーモリシン)およびBacillus stearthermophilus由来の天然のプロテアーゼの配列と比較し、そして保存された相同性の広範な領域を同定した。これらは、活性部位残基、亜鉛結合残基およびカルシウム結合部位を含んでいた(Davidら、Gene 112(1):107〜112(1992))。ビブリオリシン遺伝子(配列番号1)のDNA配列は、図2に示される。示されたDNA配列は、Vibrio proteolyticus遺伝子の6.7kbのHindIIIフラグメントの部分を含み、これは、米国特許第4,966,846号および同第5,505,943号に記載される。約249〜2078塩基のオープンリーディングフレームがあり、これらの中にビブリオリシンをコードするDNA領域が見出される。このDNA配列は、Vibrio株Vibrio proteolyticus ATCC53559から単離されたプロテアーゼをコードする。このようなビブリオリシンプロテアーゼは、いくつかの名前で知られ、これらとしては、ビブリオリシン(DBSource pir:遺伝子座JT0903、EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio proteolyticus;中性プロテアーゼ前駆体(ビブリオリシン)(エアロモノリシン)(DBSource swissprot:遺伝子座NPRV_VIBPR、登録番号000971、EC_番号=「3.4.24.25」;および中性プロテアーゼ[Vibrio proteolyticus](DBSource遺伝子座VIBNEUP登録番号M64809.1)(Davidら、Gene 112:107〜112(1992))が挙げられる。他のビブリオリシンが、以前に記載されており、そしてそれらとしては、以下が挙げられる:(1)病原性メタロプロテアーゼ前駆体(ビブリオリシン)(Miltonら、J.Bacteriol.174(22):7325〜7244(1992);Norqvistら、Infect.Immun.58(11):3731〜3736(1990));(2)血球凝集素/プロテイナーゼ前駆体(HA/プロテアーゼ)(ビブリオリシン)(Haseら、J.Bacteriol.173(11):3311〜3317(1991);Heidelbergら、Nature 406(6795):477〜483(2000);Haseら、Infect.Immun.58(12):4011〜4015(1990));(3)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体[確証された]−Vibrio cholerae(群O1株N16961)(Haseら、Infect.Immun.58(12):4011〜4015(1990));Haseら、J.Bacteriol.173(11):3311〜3317(1991);Heidelbergら、Nature 406(6795):477〜483(2000));(4)亜鉛メタロプロテイナーゼ(EC3.4.24.−)前駆体−Legionella pneumophila(Blackら、J.Bacteriol.172(5):2608〜2613(1990));(5)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio vulnificus(Chengら、Gene 183(1〜2):255〜257(1996));および(6)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio anguillarum(Norqvistら、Infect.Immun.58(11):3731〜3736(1990);Miltonら、J.Bacteriol.174(22):7235〜7244(1992))。
【0013】
ビブリオリシンは、やけどの創傷の焼痂の壊死組織切除について特に有用であることが示されている。インビトロの実験は、ビブリオリシンが、変性されたフィブリン、エラスチンおよびコラーゲンを含む焼痂のタンパク質成分の加水分解において有効であることを示した。ビブリオリシンは、所望の特性を示し、所望の特性としては、生きている組織ではなく死んだ組織の選択的加水分解、流血なしでの壊死組織切除、付属の治療との適合性および室温で親水性組成物中での貯蔵安定性が挙げられる。さらに、ビブリオリシンは、顆粒組織または新しい真皮(neodermis)を刺激することが示され、これによって、真皮の修復プロセスに有益な効果を有し得る(Durhamら、J.Burn Care Rehabil.14(5):544〜51(1993);Nanneyら、Wound Rep.Reg.3:442〜8(1995))。米国特許第5,145,681号および同第5,505,943号および国際出願番号WO98/55604は、創傷清拭のための組成物を教示し、これらは、有効な量のプロテアーゼと混合された薬学的に受容可能な局所的キャリア;またはその変異体およびハイブリッドを含み、このプロテアーゼは、以下によって生成され得る:(1)Vibrio属由来の微生物、または(2)Vibrio属由来の微生物によって生成されたプロテアーゼについて、発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた組換え宿主細胞による発現。創傷清拭における使用について企図され、そして非効果的かつ全身および局所的な毒性が示された他のタンパク質分解剤とは異なり、ビブリオリシンは、壊死組織切除特性および創傷治癒を促進する能力を含む優れた特徴を有することが示された。
【0014】
疎水性タンパク質を分解するビブリオリシンの傾向のため、ビブリオリシンは、感染性のプリオン粒子のタンパク質分解の切断によりプリオンタンパク質を破壊し得るプロテアーゼの優れた候補として働くことが、本明細書中で推定される。他の用語において、ビブリオリシンは、酵素が、装置および表面を洗浄もしくは滅菌するための非感染溶液としてか、または動物およびヒトにおけるプリオン関連疾患またはプリオン様疾患の処置のための治療剤として処方される場合、プリオンを分解する能力と一定の特性によって特徴付けられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面は、プリオンの感染性を低減し得る組成物に関連し、この組成物は、プリオンの感染性を減少するのに有効な量でビブリオリシンまたはその改変体、および1つ以上の洗浄補助剤を含む。本発明の別の局面は、ビブリオリシンまたはその改変体をコードするDNA配列に関連し、ここでこのビブリオリシンまたはその改変体は、体内にプリオンを蓄積させる標的部位へのアクセスを増加させる能力を有する。
【0016】
本発明のなお別の局面は、感染性プリオンの活性を低減する方法に関連し、この方法は、プリオンを切断もしくは分解、またはその感染活性を破壊するのに有効な量でプリオンとビブリオリシンプロテアーゼまたはその改変体とを接触させる工程を包含する。
【0017】
本発明の重要な局面は、プリオンで汚染された装置または器具を滅菌する方法に関連し、この方法は、器具および装置のプリオン汚染を減少するか、または根絶するのに有効な量のビブリオリシンプロテアーゼまたはその改変体を含む溶液とプリオンとを接触させる工程を包含する。
【0018】
本発明のなお別の局面は、治療を必要とする被験体または生物学的組織におけるプリオンが原因の疾患、プリオン関連疾患またはプリオン様疾患を処置または予防する方法に関連し、プリオンが原因の疾患、プリオン関連疾患またはプリオン様疾患の処置または予防に有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと共にビブリオリシンプロテアーゼ、またはその改変体を含む薬学的組成物の処方物を、被験体に投与する工程を包含する。
【0019】
言い換えれば、本発明は、ビブリオリシンまたはプロテアーゼの改変体を用いてプリオンの活性を低減する方法を提供する。
【0020】
本発明の重要な実施形態は、実際にまたは潜在的にプリオン汚染された装置および器具を滅菌する手段を提供する。本発明のなお別の実施形態は、残りのプリオンを除去するビブリオリシンの処方物を用いたヒトおよび動物の食品および栄養補助の汚染除去である。別の実施形態は、コラーゲン、腱または骨移植片のようなヒト移植物において使用される組織の汚染除去である。
【0021】
本発明は、処置を必要とする被験体または生物学的組織におけるプリオンが原因の疾患、プリオン関連疾患またはプリオン様疾患を処置または予防する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:プリオンが原因の疾患、プリオン関連疾患またはプリオン様疾患を処置または予防するために、有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと共にビブリオリシンプロテアーゼまたはその改変体を含む薬学的組成物の処方物を、被験体に投与する工程。
【0022】
より詳細には、本発明は、動物およびヒトにおけるプリオン関連疾患を処置する方法を提供し、この疾患としては、スクレイピー、ウシの海綿状脳症(BSE)、クールー病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(Gerstmann−Straussler−Scheinker Syndrome)(GSS)、およびクロイツフェルトヤコブ(CJD)病の形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
好ましい実施形態は、症状発現前の段階でのプリオン関連疾患を処置する方法であり、ここで、小胞の樹状細胞(FDC)または他の細胞内でインキュベートされたプリオンは、プリオン感染細胞によって取り込まれる場合、ビブリオリシンまたはその改変体によって切断される。この方法は、薬学的に受容可能なキャリアと一緒に、ビブリオリシンまたはその改変体を含む薬学的組成物の処方物を投与する工程を包含する。
【0024】
本発明は、ビブリオリシンおよびその改変体の新規処方物を提供し、これらは、細胞への経口摂取からプリオンの天然の経路を通る酵素の能力を増大し、ここで、プリオンは、症状発現前の段階で蓄積し、疾患の進行段階で、プリオンが神経細胞および脳に移動する。このような新規処方物および種々の投与の経路が、記載される。別の好ましい実施形態は、プリオンが神経細胞および脳に感染した場合の進行段階でのプリオン関連疾患の処置である。
【0025】
本発明は、血液脳関門を横切って輸送し得るビブリオリシンの新規処方物を提供し、そしてプリオンが進行段階で蓄積する場合、神経細胞およびリソソームに取り込まれる。
【0026】
本発明はまた、ビブリオリシンの新規処方物を提供し、ここでその酵素活性は、pHのような条件の変化またはタンパク質分解酵素への曝露によって調節される。
【0027】
本発明の別の実施形態は、プリオンの標的部位(例えば、プリオンを蓄積するか、または血液脳関門を横切って輸送する細胞(例えば、FDC)または小器官(リソソーム)への取り込み)への酵素のアクセスを増大するように操作されたビブリオリシンまたはその改変体をコードするDNA配列である。本発明のなお別の実施形態は、ビブリオリシンまたはその改変体をコードするDNA配列であり、これは、特定の条件(例えば、pHにおける変化、温度、化学組成、または濃度)あるいはタンパク質分解酵素への曝露の際に不活性形態から活性形態へ形質転換するように操作されている。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ビブリオリシンまたはその改変体を用いるプリオンの感染活性を低減する方法を提供する。好ましくは、感染プリオンの生物学的活性または感染プリオンの構造は、破壊される。
【0029】
ビブリオリシンは、疎水性領域内のタンパク質を切断し得るエンドプロテアーゼである。強力なプロテアーゼとして、ビブリオリシンは、変性されたタンパク質を切断し得、そして広範なpHおよび温度条件に渡って活性を維持し得る。疎水性タンパク質を分解するその傾向のために、ビブリオリシンは、タンパク質分解的に感染性プリオン粒子を切断することによって、プリオンタンパク質を破壊し得るプロテアーゼの優れた候補として働く。プロテアーゼが活性である所定の広範な条件としては、大半のタンパク質が溶解される過剰のアルカリ条件(pH10〜14)が挙げられ、ビブリオリシンは、全てのタンパク質を溶解し、そして感染性プリオンをタンパク質分解的に切断する溶液で処方され得ることが予想される。
【0030】
本発明の利点は、洗浄のためのビブリオリシンまたはその改変体の使用であり、汚染除去の目的は、好ましくは感染性プリオン粒子の感染性を低減するか、または破壊するための化学物質(例えば、漂白剤)の使用である。なぜならば、ビブリオリシンまたはその改変体は、それ自体は、ヒトおよび家畜に焼灼性でも有害でもないからである。
【0031】
本発明はまた、プリオンタンパク質を分解し得る活性および特性を有するビブリオリシンのタンパク質改変体を提供する、ビブリオリシンプロテアーゼの改変体は、以下のことが可能であるエンドプロテアーゼを包含する:(1)疎水性領域内でタンパク質を切断し、そして広範なpHおよび温度条件に渡って活性を維持すること;ならびに(2)活性部位の残基を含むアミノ酸配列を有すること。改変体は、天然に存在してもヒトが作製してもよい。天然に存在するビブリオリシン改変体のリストが、上記される。ヒトが作製した改変体ビブリオリシンは、任意の天然に存在するビブリオリシンの改変体の1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。当業者は、標準的な部位特異的変異手順を用いて、天然には見出されないアミノ酸配列を有する改変体ビブリオリシンを作製し得、そしてプリオンタンパク質を切断するその能力を試験する(実施例を参照のこと)。この様式において、必須アミノ酸(プリオンタンパク質を切断する改変体の完全な能力を生じるアミノ酸位置における置換基)および非必須アミノ酸(プリオンタンパク質を切断する改変体が増加されたか、変更されたいないかまたは低減された(しかし、完全な低減ではない)、能力を生じるアミノ酸位置における置換基)が、決定され得る。本発明は、非必須アミノ酸位置で1つ以上のアミノ酸置換基を有する改変体ビブリオリシンを包含する。同様に、上記で概要を述べた方法を用いて、欠失および/またはビブリオリシンへのアミノ酸の挿入は、プリオンタンパク質を切断する活性を保持する他の改変体を決定し得る。代表的に、ビブリオリシンプロテアーゼの改変体は、天然のビブリオリシンプロテアーゼに対して、少なくとも90%の相同性、好ましくは、少なくとも95%、そしてより好ましくは少なくとも98%の相同性を有する。
【0032】
本発明の方法は、Vibrioによって生成および分泌される天然のビブリオリシン、ならびに組み変え方法によって生成されるビブリオリシン、ならびに天然のビブリオリシンおよびその組換えビブリオリシンの両方の改変体の使用を包含する。以前に記載されたビブリオリシンタンパク質としては以下が上げられる:(1)病原性メタロプロテアーゼ前駆体(ビブリオリシン)(Miltonら、J.Bacteriol.174(22):7235〜7244(1992);Norqvistら、Infect.Immun.58(11):3731〜3736(1990));(2)血球凝集素/プロテイナーゼ前駆体(HA/プロテアーゼ)(ビブリオリシン)(Haseら、J.Bacteriol.173(11):3311〜3317(1991);Heidelbergら、Nature 406(6795):477〜483(2000);Haseら、Infect.Immun.58(12):4011〜4015(1990));(3)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体[確証した]−Vibrio cholerae(群O1株N16961(Haseら、Infect.Immun.58(12):4011〜4015(1990));Haseら、J.Bacteriol.173(11):3311〜3317(1991);Heidelbergら、Nature 406(6795):477〜483(2000));(4)亜鉛メタロプロテイナーゼ(EC3.4.24.−)前駆体−Legionella pneumophila(Blackら、J.Bacteriol.172(5):2608〜2613(1990));(5)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio vulnificus(Chengら、Gene 183(1〜2):255〜257(1996));(6)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio anguillarum(Norqvistら、Infect.Immun.58(11):3731〜3736(1990);Miltonら、J.Bacteriol.174(22):7235〜7244(1992));(7)ビブリオリシン(EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio proteolyticus(Davidら、Gene 112(1):107〜112(1992));(8)中性プロテアーゼ前駆体(ビブリオリシン)(エアロモノリシン)(Davidら、Gene 112(1):107〜112(1992));および(9)中性プロテアーゼ[Vibrio proteolyticus](Davidら、Gene 112:107〜112(1992))。
【0033】
本発明の重要な実施形態は、プリオンで汚染された装置および/または器具の滅菌方法を提供する。滅菌溶液について、ビブリオリシンプロテアーゼの酵素安定性および活性が、高度に所望される。例えば、ビブリオリシンは、pH10〜14のアルカリ溶液中で処方され得、この溶液は、洗浄のためにタンパク質および脂質の溶解を助け、そしてプリオンの効果的に破壊するのを可能にする。ビブリオリシンまたはその改変体を含む非感染溶液は、残りのプリオンを絶滅させるために外科用器具または肉調理器具を滅菌するために使用され得る。非感染溶液はまた、プリオンの蓄積または移動を防止するために調理台の表面または調理室を滅菌するために使用され得る。本発明のなお別の実施形態は、残りのプリオンを除去するためのビブリオリシンを含む処方物を用いた、ヒトおよび動物の食品および栄養補助(例えば、タンパク質溶液または他の化合物)の処理である。例えば、カゼイン加水分解物または動物の食品補助は、全ての可能性のある残りのプリオンを除去するためにビブリオリシンを用いてさらにタンパク質分解され得る。本発明のさらなる実施形態は、ヒト移植物(例えば、コラーゲン、腱または骨移植片)において使用される組織の汚染除去である。日本における全国調査は、死体の硬膜移植による43症例のCJDを1996年5月に報告した(Nakamuraら、Neurology 53(1):218〜20(1999))。ドナープール中に現れるプリオン感染した角膜ドナーの危険性が、1年当たり0.045症例であると予測され、そしてデータが年齢および感染の可能性があるが無症状のCJD患者について補正した場合、潜在的な角膜ドナーについて1年あたり2.12症例に増加すると予測された(Hoganら、Cornea 18(1):2〜11(1999))。従って、ビブリオリシンおよびその改変体の処方物は、移植のために使用される組織および器官の汚染除去において有益である。
【0034】
本発明はまた、動物およびヒトにおける種々のプリオン関連疾患を予防および処置するための新規方法および処方物を提供し、これらの疾患としては、ヒツジにおけるスクレイピー、ウシにおけるBSEおよびクールー病、ヒトにおけるGSSおよびCJD疾患の形態が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、イギリスのウシおよびより少ない程度だがヨーロッパのウシにおけるウシの海綿状脳症または狂牛病の流行により、本発明は、イギリスおよびヨーロッパで特に重要である。プリオンに汚染された食物および流体の摂取を介して、プリオンは、FDCまたは網内皮細胞の他の血液細胞に感染し得、そしてこれによって体および脳のような特定の体の部位へのアクセスが増加し得る。処置を必要とする被験体においてプリオン関連疾患を処置する方法は、薬学的に有効なキャリアと一緒に、ビブリオリシンまたはその改変体を含む薬学的組成物の処方物を投与する工程を包含する。上記のように、Vibrioによって生成されるプロテアーゼを含む組成物は、WO98/55604、および米国特許第5,130,250号、同第5,145,681号および同第5,505,943号に記載されている。本明細書中で引用されるこれらおよび全ての他の米国特許は、本明細書中でその全体が詳細に参考として援用される。米国特許第5,130,250号は、グラム陰性細菌(例えば、E.coliまたはSerratia)由来の中性プロテアーゼ遺伝子のクローニングおよび発現を開示する。米国特許第5,145,681号および同第5,505,943号は、Vibrio proteolyticus株によって生産されるか、または上記の中性プロテアーゼの発現を提供する発現ベクターで形質転換もしくはトランスフェクトされた組換え宿主細胞によって発現される、中性プロテアーゼ組成物を開示する。これらの特許はまた、細胞外中性プロテアーゼおよび組換え中性プロテアーゼの変異体を含む組成物を教示する。以下に記載されるように、ビブリオリシンのこのような薬学的組成物は、感染性プリオンへのビブリオリシンのアクセスを増大するために新しく処方され得る。ビブリオリシンの新しい処方物もまた提供され、ここで、酵素活性は、条件(例えば、pH)の変化またはタンパク質分解酵素での切断によって調節され得る。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態は、疾患の症状発現前段階の間にプリオン関連疾患を処置する方法を提供し、ここでプリオンは、脳に感染する前にFDC内でインキュベートされる。症状発現前段階で、プリオン感染細胞によって取り込まれるビブリオリシンまたはその改変体は、FDCまたは他の細胞内でインキュベートされているプリオンを切断し得る。従って、一旦、ビブリオリシンまたはその改変体が、プリオン感染細胞のリソソームにアクセスすると、酵素は、プリオンタンパク質を分解し、そしてプリオン関連疾患(例えば、CJD)の発症を遅延または予防する。別の好ましい実施形態は、疾患の進行段階の間にプリオン関連疾患を処置する方法であり、ここで、プリオンは、神経細胞および脳細胞に感染している。
【0036】
(組成物および処方物)
本発明は、1つ以上のビブリオリシンまたはその改変体を含む組成物または処方物を提供する。組成物または処方物は、本開示で教示される任意の方法に適切である。好ましくは、ビブリオリシンまたはその改変体の量は、処方物の組成物の0.0001重量%〜約10重量%を含む。ビブリオリシンの濃度は、好ましくは、少なくとも0.01g/mlである。より好ましくは、ビブリオリシンの濃度は、少なくとも1g/mlである。なおより好ましくは、ビブリオリシンの濃度は、少なくとも10g/mlである。なおさらにより好ましくは、ビブリオリシンの濃度は、少なくとも100g/mlである。一般に、ビブリオリシンの濃度は、1〜1,000g/mlである。
【0037】
この組成物または処方物は、ビブリオリシンが天然には見出されない状態でビブリオリシンまたはその改変体を含む。ビブリオリシンは、天然の供給源から単離され得るか、または精製され得る。ビブリオリシンはまた、天然またはヒトが作った供給源の粗製抽出物から獲得され得るか、または使用され得る。ビブリオリシンの天然の供給源は、ビブリオリシンを産生する細菌であり得る。ビブリオリシンのヒトが作った供給源は、ビブリオリシンまたはその改変体を生成するインビボまたはインビトロの発現系である。インビボの発現系は、微生物(例えば、細菌もしくは酵母)、または天然でビブリオリシンを発現しない任意の器官であり得る。
【0038】
組成物および処方物の使用は、感染性プリオン粒子数の少なくとも10倍の減少を生じ得る。好ましくは、減少は、少なくとも100倍である。より好ましくは、減少は、少なくとも1000倍である。なおより好ましくは、減少は、少なくとも10,000である。なおさらにより好ましくは、減少は、少なくとも1,000,000倍である。
【0039】
この組成物または処方物は、薬学的または非薬学的目的のためであり得る。この組成物または処方物はさらに、プリオンタンパク質を切断し得るか切断し得ないかのいずれかである、別の非ビブリオリジン(非ビブリオリジン)プロテアーゼを含み得る。非ビブリオリジンプロテアーゼの例としては、アミノアシルペプチドヒドロラーゼ、ペプチジルアミノ酸ヒドロラーゼ、アシルアミノヒドロラーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、チオールプロテイナーゼ、カルボキシルプロテイナーゼ、およびメタロプロテイナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。プロテアーゼの他の例としては、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、および酸プロテアーゼ、ならびにエンドプロテアーゼおよびエキソプロテアーゼがある。さらなる例としては、トリプシン、キモトリプシンおよびサブチリシンがある。ビブリオリジンまたはそれらの改変体以外のプロテアーゼが、組成物または処方物中に存在する場合、使用の条件および組成物または処方物の構成成分は、プロテアーゼがプリオンタンパク質または非プリオンタンパク質、あるいはプリオンタンパク質のフラグメントを切断し得るように存在する。
【0040】
薬学的目的のために使用されていない組成物または処方物は、滅菌される必要はなく、ビブリオリジンまたはその改変体を産生するために使用された細胞由来の細胞の細片または構成成分を含み得る。
【0041】
この組成物または処方物は、1つ以上の洗剤、洗浄剤、または洗浄補助物質(ビブリオリジンの活性または保存期間を減少せず、そしてまた洗浄機能および/または除染機能をさらに提供する)をさらに含み得る。適切な補助剤は、感染性プリオンの活性を減少させる際に、ビブリオリジンまたはそれらの改変体の有効性を減少させない型および濃度の補助剤である。洗浄補助物質の例としては、洗剤、界面活性剤、溶媒、緩衝剤、酵素、土壌(soil)離型剤、粘土質土壌(clay soil)除去剤、分散剤、酵素安定剤、ビルダー、漂白剤、色素、染料、香水、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な型の洗剤の例は、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルグルコシド、アルキルマルトシド、アルキル硫酸塩(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、アルキルチオグルコシド、ベタイン、Big CHAP系、胆汁酸、CHAP系、ジギトニン、グルカミド、レシチン/リゾレシチン、非イオン性ポリオキシエチレンベースの洗剤(例えば、TRITON、TWEEN、BRIJ、GENAPOLおよびTHESIT)、四級アンモニウム化合物などである。適切な洗剤は、慣用的な実験法を用いて決定され得る(Neugebauer,J.,A Guide to the Properties and Use of Detergents in Biology and Biochemistry,Calbiochem Novabiochem Corp.,La Jolla,California,1988を参照のこと)。洗剤は、溶解性を増加させることによって、ビブリオリジンの有効性の増強を補助し得る。組成物または処方物の形態は、液体、顆粒、散剤、棒状、ペースト剤、噴霧剤、錠剤、ゲル剤の形態などであり得る。
【0042】
この組成物または処方物は、組成物または処方物の保存期間を増強するために、1つ以上の化合物、因子、化学物質、分子、または緩衝剤を、単独または組み合わせてさらに含み得る。アルカリ条件下で、ビブリオリジンまたはその改変体の生物学的活性は、長期間維持され得る。好ましくは、この期間は、少なくとも6ヶ月である。より好ましくは、この期間は、少なくとも1年である。なおより好ましくは、この期間は、少なくとも2年である。なおさらにより好ましくは、この期間は、少なくとも3年である。なおさらにより好ましくは、この期間は、少なくとも5年である。さらに、ビブリオリジンまたはその改変体の効力、または酵素的活性もしくは生物学的活性は、適用、接触または投与の後、長期間持続し得る。このことは、プリオンの感染性を減少または破壊する十分な能力が持続することを意味する。この効力は、適用、接触または投与の後、少なくとも1日持続し得る。好ましくは、この効力は、少なくとも2日持続し得る。より好ましくは、この効力は、少なくとも3日持続し得る。なおより好ましくは、この効力は、少なくとも1週間、持続し得る。ビブリオリジンまたはその改変体の保存期間および適用におけるこの持続は、自己溶解しないその性質に帰因する。対照として、Proteinase Kは、高価かつ不安定であり、10倍以上強力であったとしても、適切ではない。本発明のビブリオリジンまたはその改変体は、使用者により繰り返し使用され得る。
【0043】
組成物または処方物のアルカリ度に関して、組成物または処方物のpHは、7、7以上〜8、8〜10、10〜12、あるいは12〜14であり得る。好ましくは、組成物または処方物は、7より高いpHを有する。より好ましくは、pHは、pH8〜14である。なおより好ましくは、pHは、pH8〜12である。
【0044】
この組成物または処方物は、存在するプリオンの感染性の低下または破壊を必要とする任意の目的のために使用され得る。これらの対象は、実際にかまたは潜在的にプリオンが混入する設備および器具を含む。これらの設備および器具は特に、(1)プリオンによる混入の可能性を有する、および/または(2)ヒトまたは家畜の感染を回避または減少させるために、プリオンにより混入されない必要性を有する、設備および器具を含む。これらの対象は、部屋、設備、器具、食品、動物の飼料などであり得る。これらの対象は、任意の塗装面であり得るか、または1つ以上の塗装面を含み得る。好ましくは、これらの対象は、家畜(例えば、ウシ)およびヒトのような動物と接触する高い可能性を有する対象である。より好ましくは、これらの対象は、動物および/またはヒトの粘膜表面に摂取され得るか、吸収され得るか、または接触され得る。部屋または設備の例としては、動物またはヒトによって侵入され得、特に、医学的または外科的な目的のために使用され得るか、あるいは動物または家畜の屠殺に関連するか、または食品の原料または動物の飼料を処理するために使用される任意の部屋または設備である。器具の例は、歯科用器具、医療器具、および外科用器具、調理用具、刃物類、食肉処理場/屠殺場/肉切り用具などである。組成物または処方物はまた、プリオンが使用されるか、またはプリオンタンパク質と接触する高い可能性を有する研究に関連する器具および設備の除染および/または消毒および/または洗浄のために使用される。
【0045】
前臨床段階での処置について、ビブリオリジンの薬学的組成物は、酵素がプリオン感染系路に追跡する能力を増大するように処方される。上記のように、感染性プリオン粒子は、プリオン混入食品製品の摂取によって身体に入り得る。経口摂取されたプリオンは、網内皮系内の胚中心のFDCに取り込まれる。プリオンは、補体因子と結合し得、次いで生じたプリオン−補体因子複合体は、FDCによって、補体レセプター(例えば、CR1/2)を介して捕捉される。これらの細胞は、ネイティブ抗原を捕捉するように正常に機能し、そしてB細胞への提示のために免疫複合体を形成する。従って、補体系は、プリオン粒子をオプソニン化し、そして補体レセプターが媒介するFDCへの取り込みを増強する際に、重要な役割を果たし得る。次いで、FDC中のプリオンは、臨床前にインキュベートされ、FDCまたはいくつかの型の白血球によって脳へと輸送される前に、力価および濃度を増大し得る。従って、末梢経路を介してプリオンが体内に入る場合、脊髄または脳幹内に、次いで脳へと神経を介して移動する前に、プリオンはリンパ細網組織で複製する。
【0046】
本発明は、ビブリオリジンまたはその改変体を含む薬学的組成物の処方を提供する。ここで、この酵素は、感染性プリオン粒子と類似する構造へと処方される(図1)。このような構造は、プリオン感染経路を追跡し、身体内にプリオンを蓄積する標的部位に接近する酵素の能力を増強する、結晶化形態、粒子形態、脂質結合体化形態またはリポソーム形態を有し得る。例えば、ビブリオリジンまたはその改変体は、微結晶形態または等価形態へと処理され、そして正常なpH(7.0〜7.4)で、酵素の不溶性および酵素の不活化を一時的に維持するように架橋によって安定化される。次いで、微晶構造は脂質化(lipidate)され、ここで脂肪酸は、「有機体(organism)」様構造を形成するように、結晶表面に結合される。脂質コートは、乳び管による脂肪と一緒での腸内への取り込み、および胸管、リンパ系の経路(腸から血流へと脂肪を正常に移動させる)による循環への粒子の侵入を増大する。米国特許第5,618,710号;5,849,296号;5,976,529号;および6,011,001号は、多官能性架橋剤を用いて架橋され、そして外因性のタンパク質分解に対する耐性を有するタンパク質結晶を開示する。このようなタンパク質は、酵素または抗体であり得る。米国特許第5,849,296号はまた、多官能性架橋剤を用いて架橋され、そして外因性のタンパク質分解に対する耐性を有するリパーゼ結晶を開示する。米国特許第5,976,529号および同第6,011,001号は、架橋された酵素結晶を経口投与することにより、タンパク質治療および酵素治療を実施するための方法を記載する。米国特許第6,042,824号は、架橋されたタンパク質結晶処方物を作製するための方法、およびそれらを使用して、有機溶媒中で化学反応を最適化するための方法(工業規模での化学処理において使用される方法を含む)を記載する。このような方法は、ビブリオリジンおよびそれらの改変体をプリオン様構造へと処方する際に有用である。
【0047】
さらなる実施形態は処方であり、ここでプリオン様構造は、脂質表面を有するコーティング粒子によって、リポソームで観察されるように、補体活性化を促進するように改変される。上記のように、補体タンパク質による粒子のオプソニン化は、胚中心のFDCへのそれらの取り込みを生じる。FDCのリソソームへの取り込み後、脂質コートは、リソソーム環境内に溶解される酸リパーゼおよびビブリオリジン酵素によって分解される。
【0048】
進行した段階での処置について、ビブリオリジンの薬学的組成物は、ニューロンに取り込みそして血液脳関門を通過する酵素の能力を増大させるように処方される。上記のように、ビブリオリジンタンパク質およびそれらの改変体は、プリオンに類似の構造へと処方され、酵素が、リンパ細網組織から神経を介して脊髄または脳幹へと、次いで脳へのプリオンの経路を追跡し得るようにする。血液脳関門を越えて脳への侵入は、普通、小さな疎水性分子に限定され、特に、輸送される栄養素(例えば、グルコースおよび特定のアミノ酸)、そして詳細には、経細胞輸送される高分子(例えば、トランスフェリンに限定される(StaddonおよびRubin、Curr.Opin.Neurobiol.6:622−627(1996))。本発明は、ビブリオリジン構造がさらに、受動的キャリアならびに血液脳関門および神経細胞膜を横切る能動輸送系に接近するように操作される処方物を提供する。血液脳関門のビブリオリジンに対する透過性は、以下によって増強される:(1)脂質溶解性を増大するための、ビブリオリジン構造の改変;(2)リポソームリンカーまたはナノ粒子技術を用いた輸送系由来のペプチドへの、ビブリオリジン分子の結合(C&EN,2000年9月18日,58頁);および(3)血液脳関門の透過性を増加させることが示されている薬剤(ブラジキニンBレセプターアゴニスト、セロトニン、およびHレセプターアゴニスト(米国特許第5,112,596号および5,268,164号;Emerichら、Br.J.Cancer 80:964−70;Mackieら、Pharm.Res.16:1360−1365(1999);Wahlら、Immunopharmacology 33:257−263(1996);Morelら、Inflammation 14(5):571−583(1990);Abbott,Cell.Mol.Neurobiology 20:131−147(2000);Mashitoら、Immunopharmacology 43:249−253(1999))を含む)での投与。
【0049】
(投与経路)
治療剤としての使用について、ビブリオリジンプロテアーゼの活性は、循環中の血液凝固成分の分解を予防するために、リソソームに限定される。従って、本発明の別の実施形態は、リソソーム内に取り込み得るビブリオリジンの処方物である。ビブリオリジンのリソソームへの取り込みは、以下によって増強され得る:(1)補体活性表面特性;(2)ビブリオリジンタンパク質の、リソソーム酵素(例えば、α−L−イズロニダーゼ(普通、マンノース−6−リン酸レセプターによって取り込まれ、そしてリソソームへと標的化される)でタグ化;および(3)酵素の結合親和性およびマンノース−6−リン酸レセプターによる取り込みを増加させるために、細網内皮系のマクロファージを標的化する結合における、十分な量のマンノース−6−リン酸残基の結合またはマンノース糖もしくはマンノースを有するタンパク質の添加。
【0050】
本発明のさらなる実施形態は、ビブリオリジンの処方である。ここでその酵素活性は、条件(例えば、pH)の変化によってか、またはリソソーム酵素によって調節され得る。米国特許第6,140,475号は、架橋されたタンパク質結晶の制御された溶解のための方法を開示する。この方法は、多官能性架橋剤で架橋されたタンパク質結晶を作製する工程を包含し、ここで生じるタンパク質結晶は、環境における変化(温度、pH、化学的組成、濃度、および剪断力(shear force)における変化を含む)の際に、不溶性かつ安定な形態から可溶性かつ活性な形態へと変化する能力によって特徴付けられる。多官能性架橋剤は、0.076%(vol/vol)と約0.05%との間の濃度のグルタルアルデヒドである。国際特許出願番号WO 9955310は、タンパク質または核酸の結晶の処方物および組成物、タンパク質および核酸の結晶化の方法、タンパク質および核酸の結晶の安定化の方法、ならびにヒトおよび動物への生物学的送達のために、タンパク質、糖タンパク質、酵素、抗体、ホルモン、およびペプチドの結晶または結晶処方物を組成物中にカプセル化する方法を開示する。従って、ビブリオリジン酵素は、微結晶性の脂質化プリオン様形態で投与される。このプリオン様形態は不活性であるが、特定の条件(例えば、リソソーム内でのpH、温度またはリソソームの酵素の組成もしくは濃度の変化)に曝された際にのみ活性化され得る。ビブリオリジンの活性または保存期間はまた、酵素を、他のリソソームプロテアーゼによる分解、または特定の条件(例えば、酸性環境)下での、適切な期間内での変性に対する感受性を与え、そしてそれにより、過剰のビブリオリジン活性ならびに任意の潜在的なリソソームの破壊および細胞死を予防し得るように操作することによって限定され得る。
【0051】
治療酵素は、多数の経路(例えば、非経口的投与、局所的投与、鼻腔内投与、吸入投与または経口投与)で投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア(固体、半固体、または液体であり得るか、あるいは食物摂取可能な(ingestible)カプセル剤であり得る)と一緒に薬学的組成物中で酵素を投与するために提供される。本発明において有用な薬学的組成物の例としては、錠剤およびドロップ剤(例えば、点鼻剤)が挙げられる。局所適用のための組成物としては、軟膏、ゼリー、クリーム、および懸濁物、吸入用エアロゾル、鼻内噴霧、ならびにリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
経口適用のための、治療酵素を含む薬学的組成物を作製するために、酵素は、固体の、微粉キャリアと混合され得る。このキャリアとしては、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉(例えば、ジャガイモ澱粉またはトウモロコシ澱粉)、アミロペクチン、ラミナリア(laminaria)粉末、柑橘類の髄の粉末、セルロース誘導体、およびゼラチンが挙げられ得るが、これらに限定されない。薬学的組成物はまた、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、またはCarbowax(登録商標)もしくは他のポリエチレングリコールワックス)を含み得、そしてこれらは、錠剤または糖衣錠のコアを形成するために圧縮され得る。かげろう型毛針(drake)が必要とされる場合、そのコアは、例えば、濃縮された糖溶液によりコートされ得る。この糖溶液は、アラビアゴム、タルクおよび/または二酸化チタン、あるいは揮発性の有機溶媒または有機溶媒の混合物に容易に溶解されるフィルム形成剤を含み得る。染料は、例えば、異なる含量の活性物質間を識別するために、このようなコーティングに加えられ得る。ゼラチンまたは可塑剤としてのグリセロールからなる軟性のゼラチンカプセル剤、あるいは類似の閉じられたカプセル剤の組成物について、活性物質は、Carbowax(登録商標)または適切な油(例えば、ごま油、オリーブ油またはラッカセイ油)と一緒に混合され得る。硬いゼラチンカプセル剤は、固体の、微粉のキャリア(例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉(例えば、ジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉またはアミロペクチン)、およびセルロース誘導体、またはゼラチン)と一緒に、活性物質の顆粒を含み得、そしてこれらはまた、潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸を含み得る。
【0053】
本発明の治療酵素はまた、非経口的に、例えば、皮下注射、筋内注射もしくは静脈内注射によってか、または徐放性の皮下移植片によって、投与され得る。皮下注射、筋内注射または静脈内注射において、治療酵素または他の活性成分は、液体キャリアビヒクル中に溶解または分散され得る。非経口的投与のために、活性物質は、受容可能なビヒクル(好ましくは種々の植物油(例えば、ラッカセイ油、綿実油など))と適切に混合され得る。他の非経口的ビヒクル(例えば、ソルケタール(solketal)、グリセロール、ホルムアル(formal)、および水と組み合わせた(partnered)処方物を用いた有機組成物)もまた、使用され得る。注射による非経口適用について、組成物は、本発明に従う活性酸の、水溶性の薬学的に受容可能な塩の水溶液(望ましくは、0.5〜10%の濃度で)を、そしてまた必要に応じて、水溶液中に安定化剤および/または緩衝物質を含み得る。溶液の投薬単位は、有利に、アンプル中に密閉され得る。治療酵素が皮下移植片の形態で投与される場合、化合物は、当業者に公知のゆっくりと分散される物質に懸濁されるかまたは溶解され得るか、あるいは一定の駆動力(例えば、浸透圧ポンプ)の使用により活性物質を徐放するデバイスで投与され得る。このような場合、長期間にわたる投与が可能であり得る。
【0054】
局所適用について、薬学的組成物は、軟膏剤、ゲル剤、懸濁物、クリームなどの形態において適切である。活性物質の量は、例えば、活性物質の0.05〜20重量%の間で変化し得る。局所的適用のためのこのような薬学的組成物は、活性物質を公知のキャリア物質と混合することによって、公知の様式で調製され得る。このキャリア物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イソプロパノール、グリセロール、パラフィン、ステアリルアルコール、またはポリエチレングリコール。薬学的に受容可能なキャリアとしてはまた、公知の化学的吸収促進剤が挙げられ得る。吸収促進剤の例としては、ジメチルアセトアミド(米国特許第3,472,931号)、トリクロロエタノールまたはトリフルオロエタノール(米国特許第3,891,757号)、ならびに特定のアルコールおよびそれらの混合物(英国特許第1,001,949号)がある。破壊されていない皮膚への局所適用のためのキャリア物質はまた、英国特許明細書第1,464,975号(40〜70%(v/v)のイソプロパノールおよび0〜60%(v/v)グリセロールを含む溶媒、あるとしても、溶媒の全体積の40%を越えない希釈剤の不活性成分であるバランスからなるキャリア物質を開示する)に記載される。
【0055】
酵素を含む薬学的組成物が投与される投薬量は、広い範囲内で変化し得、種々の因子(例えば、感染の重症度および患者の年齢)に依存し得る。この投薬量は、個々に調整されなければならないかもしれない。治療酵素を含む薬学的組成物は、それらが単一の投薬単位としてかまたは複数の投薬単位としてのいずれかで、これらの範囲内で用量を提供するように、適切に処方され得る。治療酵素を含むことに加え、薬学的組成物は、組成物中の治療酵素によって触媒される反応のための1つ以上の基質または補因子を含み得る。
【0056】
本発明は、トランスジェニック動物において、またはプリオン関連疾患を処置するための遺伝子治療として使用され得る、ビブリオリジンまたはその改変体をコードするDNA配列を提供する。本発明による治療酵素は、この治療酵素がタンパク質またはリボ核酸配列である場合、治療酵素をコードする核酸で形質転換された患者の細胞を用いて投与され得る。治療酵素をコードする核酸配列は、処置されるべき被験体の細胞内に形質転換するためのベクター中に組み込まれ得る。ベクターは、被験体の染色体中に組み込むように(例えば、レトロウイルスベクター)、または宿主細胞において自律的に複製するように、設計され得る。治療酵素をコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、酵素の持続発現または調節された発現を提供するように設計され得る。さらに、治療酵素をコードする遺伝子ベクターは、細胞ゲノム中に安定に組み込まれるようにか、または一時的にのみ存在するように設計され得る。従来の遺伝子治療の一般的な方法論は、治療酵素をコードするポリヌクレオチド配列に適用され得る。従来の遺伝子治療技術の総説は、Friedman,Science 244:1275−1281(1989);Ledley,J Inherit.Metab.Dis.13:587−616(1990);およびTososhevら、Curr Opinions Biotech.1:55−61(1990)において見出され得る。
【0057】
好ましい実施形態は、組換型ビブリオリジンタンパク質またはその改変体であり、これらは特に、プリオンを蓄積することが公知のFDCのような細胞を標的化し、そして接近し得る。別の好ましい実施形態は、組換型ビブリオリジンタンパク質またはその改変体であり、ここでその酵素活性(例えば、活性形態と不活性形態との間の形質転換)は、特定の条件(例えば、感染性プリオン粒子、特定のpH範囲、またはタンパク質分解酵素への曝露)によって調節される。なお別の好ましい実施形態は、組換型ビブリオリジンタンパク質またはその改変体であり、これらは、酵素切断(例えば、リソソーム酵素による)によって活性化される、不活性な「前駆形態(pro−form)」で存在する。
【実施例】
【0058】
(実施例)
プリオン疾患の動物形態(ヒツジにおけるスクレイピー、ウシにおけるウシ海綿状脳傷害(BSE))ならびにこの疾患のヒト形態(異型のクロイツフェルト−ヤーコプ病(vCJD))由来のプリオンタンパク質または感染性タンパク質は、プロテアーゼ消化に対して耐性である特殊な性質を有する。この性質は、一部それらの伝播および身体からのプリオンの排除における困難さにおける重要な特性であると考えられる。プリオンは、大きい凝集体を形成する非常に疎水性のプリオンタンパク質から構成される。ビブリオリジン(タンパク質の疎水性領域を切断する傾向を有するプロテアーゼ)は、プリオンタンパク質を切断し得るプロテアーゼの有望な候補である。以下の実験を、プリオンタンパク質を切断するビブリオリジンの能力を評価するために実施した。
【0059】
(方法および材料)
vCJDに冒された脳のサンプルを採取し、そしてリン酸緩衝化生理食塩水において20%のホモジネートを調製した。このホモジネートを、Tris−HCl溶液およびNaCl溶液を用いて10% w/v 溶液に希釈して、最終的に10% vCJD脳のホモジネート、100mM Tris−HCl、および150mM NaCl、pH8.0を生じた。増加した濃度のビブリオリジンを、10%の脳ホモジネートのアリコートに加え、そしてその混合物を20℃(図3A)または40℃(図3B)のいずれかでインキュベートした。1時間後、8mMのAEBSFを含むSDS−PAGEローディング緩衝液を加えることによって、この反応を停止した。このサンプルを100℃で10分間煮沸し、そしてこのチューブを遠心して、凝縮物を回収した。このサンプルを標準のSDS−PAGEゲルで電気泳動し、そのタンパク質を標準のウェスタンブロット法を用いてPVDFに移した。プリオンタンパク質を、マウスモノクローナル抗体IgG2(ICSM35)を用いて可視化した。一次抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合体化されたヤギ抗マウス二次抗体を用いて発色させ、そして化学発光検出を行った。
【0060】
(結果)
ヒトvCJD脳におけるプリオンの消化は、ビブリオリジンが、特に、最高濃度1mg/mlで、1時間にわたりプリオンタンパク質を切断し得ることを示す。試験される条件がビブリオリジンに最適な条件でない場合、より高いpHおよび温度で、より高い効力でさえ、可能であることが期待される。このデータは、ビブリオリジンが、外科用器具の消毒または他の目的において有用であり得る、プリオン消化活性を有することを示す。さらに、独特の安定性、pH特性および自己消化の欠如は、プリオンの消毒および除染へのプロテアーゼの商用適用のために、ビブリオリジンを最適な酵素にする。
【0061】
本発明、ならびに本発明を作製しそして使用する様式およびプロセスは、本明細書中で、本発明が属するいずれの当業者にも本発明を作製しそして使用することが可能なように、完全に、明確に、簡潔に、そして正確な用語で記載される。上記は、本発明の好ましい実施形態を記載し、そしてその改変が、特許請求の範囲に示されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これらの実施形態においてなされ得ることが理解されるべきである。特に、本発明に関する主題を指摘し、明確に特許請求するために、添付の特許請求の範囲が、本明細書を完了させる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、ビブリオリシンの処方ならびにその投与および作用の図式である。この描写において、活性ビブリオリシンは、立方体として描かれるが、ビブリオリシンはまた、前駆体形態または不活性形態で処方され得る。1.活性なビブリオは、完全な活性のために必要な特性に依存し、そしてまた安定性およびバイオアベイラビリティの必要な特性に依存する粒子サイズで、凝集または結晶化してビブリオリシン分子の蓄積を形成する。この凝集におけるビブリオリシンは、このようなタンパク質が結晶中の酵素にアクセス不可能であるため、タンパク質に対して比較的不活性である。2.他のプロテアーゼおよび消化管中の条件で生存する目的のために凝集物を安定化および維持するのを補助するために、凝集物は、多重架橋(multi−crosslinking)剤を用いて架橋される。例えば、0.2%のグルタルアルデヒドは、例えば短期間の曝露を伴なう多重架橋剤である。結晶または凝集物は、中性のpHでは速やかに再溶解しない。3.架橋された凝集物または結晶は、タンパク質上に曝露されたヒドロキシルまたは他の部分に脂肪酸または他の同様の疎水性鎖を付着させることによって、脂質化される。十分な脂質が、以下の3つの特徴を生じる膜様表面を作製するために添加される:(1)脂肪中の酵素の溶解性、これによって乳び管および局部リンパ中への吸収を増大させ、粒子を含む脂肪は、プリオン取り込みと同様に吸収される;(2)白色細胞(例えば、FDC)による取り込みのための粒子の補体およびオプソニン作用の活性化を誘因する、外来膜の外観の粒子の脂質化による作成;ならびに(3)リソソーム内の酸リパーゼによる脂質層の崩壊までの脂質内の不活性な状態の酵素の維持。4.脂質化、架橋粒子は、油状物中で経口投与されるか、または脂肪性の食事で投与され、ここで、ビブリオリシン粒子は、リンパ系に入り、そしてリンパ細胞または循環に輸送される。脂質表面は、迅速に補体を活性化する。5.活性化補体成分は、粒子に結合およびオプソニン作用し、次いで、これらは、補体レセプター媒介取り込みによってFDCまたは類似の細胞に輸送される。6.脂質被膜は、酸リパーゼによって除去されるか、またはpH変化を生じ、これによって結晶の凝集物をリソソームの状態に曝露する。7.リソソーム内の条件は、凝集物の分解およびビブリオリシンの緩慢な溶解を誘因する。8.再溶解されたビブリオリシンは、疎水性タンパク質凝集物を消化し、そして酵素活性が特定の持続時間に渡って減少するような濃度および安定性に処方される。図式の任意の部分は、プリオン貯蔵の部位に到達する特定の対象物を増大するために改変され得るか、または除外され得、ここで、プリオンが活性化される。プリオンの活性化は、プリオン貯蔵のこのような部位を制限するままである。
【図2】図2は、ビブリオリシン遺伝子(配列番号1)のDNA配列を示し、そしてVibrio proteolyticus遺伝子の6.7kbのHindIIIフラグメントの部分を含み、これは、米国特許第4,966,846号および同第5,505,943号に記載される。約249〜2078塩基のオープンリーディングフレームがあり、この中にビブリオリシンをコードするDNA領域が見出される。このDNA配列は、Vibrio株Vibrio proteplyticus ATCC53559から単離されたプロテアーゼをコードする。このビブリオリシンプロテアーゼは、いくつかの名前で知られ、この名前としては、ビブリオリシン(DBSourece pir:遺伝子座JT0903、EC3.4.24.−)前駆体−Vibrio proteolyticus;中性プロテアーゼ前駆体(ビブリオリシン)(エアロモノリシン)(DBSource swissprot:遺伝子座NPRV_VIBPR、登録番号000971、EC_番号=「3.4.24.25」;および中性プロテアーゼ(Vibrio proteolyticus)(DBSource遺伝子座VIBNEUP登録番号M64809.1)(Davidら、Gene112:107〜112(1992))が挙げられる。
【図3】図3は、ビブリオリシンによる改変体クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)脳由来のプリオンタンパク質の消化を描写する。図3Aは、20℃の温度で示されるようなビブリオリシンの濃度増加を伴なうvCJD脳を含むプリオンの消化のウェスタンブロット分析のX線フィルムを描写する。図3Bは、40℃の温度でのビブリオリシンによるプリオン流出物の消化のウェスタンブロット分析のX線フィルムを描写する。図3Aおよび3Bの両方において、最高濃度のビブリオリシンは、1時間の消化後、約10倍のプリオン成分を減少した。この条件は、ビブリオリシンに対して最適な条件ではなく、故により良好な消化が、より高いpHおよびより高い温度で期待される。

Claims (39)

  1. プリオンの感染性を減少させ得る組成物であって、該組成物が、プリオンの感染性を減少させるのに有効な量のビブリオリシンまたはその改変体、および1つ以上の清掃添加物質を含む、組成物。
  2. pHがpH7より高い、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記pHがpH8〜pH12である請求項2に記載の組成物。
  4. 前記組成物の製造の1年後に、該組成物がプリオンの感染性を減少させる能力を維持し得る、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記組成物の製造の5年後に、該組成物がプリオンの感染性を減少させる能力を維持し得る、請求項4に記載の組成物。
  6. 界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
  7. 感染性プリオンの活性を減少させる方法であって、該プリオンを切断もしくは分解するか、または該プリオンの感染性活性を破壊するのに有効な量のビブリオリシンプロテアーゼまたはその改変体と、該プリオンとを接触させる工程を包含する、方法。
  8. 前記感染性プリオンが破壊される、請求項7に記載の方法。
  9. プリオンで汚染された設備または器具を衛生化する方法であって、該方法は、該プリオンと、該器具および設備のプリオン汚染を減少または根絶するのに有効な量のビブリオリシンプロテアーゼまたはその改変体を含む溶液とを接触させる工程を包含する、方法。
  10. 前記溶液が、界面活性剤を含む、請求項9に記載の方法。
  11. ビブリオリシンまたはその改変体をコードするDNA配列、および薬学的キャリアを含む薬学的組成物であって、該ビブリオリシンまたはその改変体は、プリオンを体内に蓄積させる標的部位へのアクセスを達成する能力を有する、薬学的組成物。
  12. ビブリオリシンまたはその改変体をコードするDNA配列、および薬学的キャリアを含む薬学的組成物であって、該ビブリオリシンまたはその改変体は、不活性状態から、プリオンを切断し得る活性状態に変換する能力を有する、薬学的組成物。
  13. ビブリオリシンまたはその改変体を含む薬学的組成物の処方物であって、該処方物は、リンパ性細網組織から神経、脊髄、脳幹、または脳へのプリオンの感染経路を追跡し得るプリオン様構造である、処方物。
  14. 請求項13に記載の処方物であって、前記プリオン様構造は、ビブリオリシン結晶を含み、該ビブリオリシン結晶が多官能基性架橋剤を用いて架橋されておりかつ外因性タンパク質分解に対する耐性および脂質鎖の被覆を有する、処方物。
  15. 前記プリオン様構造が、プリオンを体内に蓄積する1つ以上の標的部位への該構造のアクセスを増加するように改変されている、請求項13に記載の処方物。
  16. 前記1つ以上の標的部位が、小胞樹状細胞を含む、請求項15に記載の処方物。
  17. 前記1つ以上の標的部位が、リソソームを含む、請求項15に記載の処方物。
  18. 前記1つ以上の標的部位が、中枢神経系を含む、請求項15に記載の処方物。
  19. 前記プリオン様構造が、補体系の因子を活性化しかつ細網内皮系の細胞への該構造の取り込みを増強するように改変されている、請求項13に記載の処方物。
  20. 前記細胞が、小胞樹状細胞である、請求項19に記載の処方物。
  21. 前記プリオン様構造が、マンノースレセプターによる取り込みを増強し、かつリソソームに転移させる部分の付着により改変されている、請求項13に記載の処方物。
  22. 前記プリオン様構造が、血脳関門を横切る中枢神経系への該構造の通過を増加させるように改変されている、請求項13に記載の処方物。
  23. 前記プリオン様構造が、不活性状態から活性化状態に変換し得るビブリオリシンまたはその改変体を含み、該ビブリオリシンまたはその改変体は、環境の変化の際にプリオンを切断し得る、請求項13に記載の処方物。
  24. 前記環境の変化が、pH、温度、濃度、または化学的組成の変化である、請求項23に記載の処方物。
  25. プリオンにより引き起こされた疾患、プリオンに関連する疾患、またはプリオン様疾患を処置または予防する必要がある被検体または生物学的組織における、プリオンにより引き起こされた疾患、プリオンに関連する疾患、またはプリオン様疾患を処置または予防する方法であって、該被検体に、該プリオンにより引き起こされた疾患、プリオンに関連する疾患、またはプリオン様疾患を処置または予防するのに有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと共にビブリオリシンプロテアーゼまたはその改変体を含む薬学的組成物の処方物を投与する工程を包含する、方法。
  26. 前記プリオンに関連する疾患が、スクレイピー、ウシ海綿状脳障害、クールー病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シェインカー症候群、およびクロイツフェルト−ヤーコプ病からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
  27. 前記プリオン様疾患が、アルツハイマー病、脳のアミロイドアンギオパチー、パーキンソン病、前方側頭痴呆、およびピック病、筋萎縮性側索硬化症、およびハンチングトン病からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
  28. 前記処方物が、リンパ性細網組織から神経、脊髄、脳幹、または脳へのプリオンの感染経路を追跡し得るプリオン様構造である、請求項25に記載の方法。
  29. 請求項28に記載の方法であって、前記プリオン様構造は、ビブリオリシン結晶を含み、該ビブリオリシン結晶が多官能基架橋剤を用いて架橋されておりかつ外因性タンパク質分解に対する耐性および脂質鎖の被覆を有する、方法。
  30. 前記プリオン様構造が、プリオンを体内に蓄積する1つ以上の標的部位への該構造のアクセスを増加するように改変されている、請求項28に記載の方法。
  31. 前記1つ以上の標的部位が、小胞樹状細胞を含む、請求項30に記載の方法。
  32. 前記1つ以上の標的部位が、リソソームを含む、請求項30に記載の方法。
  33. 前記1つ以上の標的部位が、中枢神経系を含む、請求項30に記載の方法。
  34. 前記プリオン様構造が、補体系の因子を活性化しかつ細網内皮系の細胞への該構造の取り込みを増強するように改変されている、請求項28に記載の方法。
  35. 前記細胞が、小胞樹状細胞である、請求項31に記載の方法。
  36. 前記プリオン様構造が、マンノースレセプターによる取り込みを増強し、かつリソソームに転移させる部分の付着により改変されている、請求項28に記載の方法。
  37. 前記プリオン様構造が、血脳関門を横切る中枢神経系への該構造の通過を増加させるように改変されている、請求項28に記載の方法。
  38. 前記プリオン様構造が、不活性状態から活性化状態に変換し得るビブリオリシンまたはその改変体を含み、該ビブリオリシンまたはその改変体は、環境の変化の際にプリオンを切断し得る、請求項28に記載の方法。
  39. 前記環境の変化が、pH、温度、濃度、または化学的組成の変化である、請求項38に記載の方法。
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