JP2005501530A - 体細胞株におけるヒトインスリンのグルコース−調節された産生のために有用な核酸構築物 - Google Patents

体細胞株におけるヒトインスリンのグルコース−調節された産生のために有用な核酸構築物 Download PDF

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Abstract

グルコース-調節可能なプロモーターにより駆動されるヒトプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列、ヒトプロテアーゼにより切断できるように変更されたそのB-C及びC-A連結部を有するヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、並びにヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列の転写を駆動するCMVプロモーターを含み、このようなカセットは、各構造遺伝子の後に任意にポリアデニル化配列を有し、かつヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列は、任意にH10D変種を保持している、独自の多機能ヌクレオチド発現カセット、並びにこれにより形質転換された細胞。

Description

【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2001年6月8日に出願された米国特許仮出願第60/296,936号、及び2001年6月19日に出願された米国特許仮出願第60/299,334号に優先して請求される。
【背景技術】
【0002】
(1.発明の属する技術分野)
本発明は、ヒトインスリンのグルコース-調節された産生を達成するために細胞株を修飾するのに有用な遺伝子構築体、及びこのような遺伝子構築体により形質転換された細胞株に関する。
【0003】
(2.関連技術の背景)
真性糖尿病は脂肪、炭水化物、及びタンパク質代謝の慢性疾患である。これは、グルコースの利用低下及び絶対的又は相対的インスリン欠乏を特徴としている。完全に表徴した糖尿病に罹患したヒトは、空腹時高血糖症、糖尿の傾向があり、最終的にはアテローム性動脈硬化症、ニューロパシー、ネフロパシー及び細小血管障害を発症する傾向がある。糖尿病は、米国における主な死因の第7位(疾病による主な死因の第6位)である。これは、年齢20〜74歳のヒトの失明の新規症例の主な原因でもあり、かつ末期腎疾患の主原因でもある(新規症例の約40%を説明する)。糖尿病に罹患したヒトは、一般的集団よりも、足切断のリスクが約15〜50倍大きく、心疾患のリスクが2〜4倍であり、及び恐らく2〜4倍多く卒中に罹患するであろう。
【0004】
真性糖尿病の病理は、下記のインスリン機能不全の3種の主な作用に起因し得る:(1)体細胞によるグルコース利用の低下、これは血中グルコースの正常値を上回る増加を引き起こす;(2)脂肪貯蔵領域からの脂肪の移動の顕著な増加、これは異常な脂肪代謝に加え、アテローム動脈硬化症を引き起こす血管壁への脂質沈着を生じる;及び、(3)体組織中のタンパク質の枯渇。糖尿病は、現在完治することのない慢性疾患である。
【0005】
真性糖尿病は一般に、3つの主要型に分類される:1型インスリン依存型糖尿病(IDDM)、免疫-媒介型糖尿病と称されることが多い;2型インスリン非依存型糖尿病(NIDDM);及び、β細胞の機能又は代謝を制御する遺伝子の変種による糖尿病。IDDMは、糖尿病の全症例の約10%を説明している。1型-IDDMは、膵β細胞のほぼ完全な喪失に関連し、一生にわたるインスリン依存を生じる、免疫-媒介型疾患である。これは、あらゆる年齢で発症し、かつこれは全新生児の約1%がその生涯において本疾患を発症すると推定される。2型-NIDDMは、糖尿病症例の残りの90%とほとんどに相当する。2型-NIDDMは、インスリンシグナルに反応して適切にグルコースを利用することができない組織による末梢インスリン抵抗性に寄与する外的影響及び複雑な遺伝的影響の両方の結果生じると考えられる。インスリン遺伝子座における対立遺伝子変種それ自身は、NIDDMに関連しており、この変種は、転写調節に関連し、変更された特性を示す。非常に小さい割合の糖尿病は、β細胞の機能又は代謝を制御する遺伝子の変種に随伴する状態を有する。
【0006】
グルコースホメオスタシスは、多くの神経内分泌システムに関連しているが、ランゲルハンス膵島は、哺乳類における一次「グルコースセンサー」であると考えられている。膵島は、主にインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン又は膵臓ポリペプチドの産生により特徴付けられる4種の異なる細胞集団で構成されている。インスリン-産生β細胞は、これらの島で支配的である。しかしこの島細胞塊は、膵臓全体の小さい画分(およそ1%)を構成しているにすぎない。早期2型-IDDM及び1型-IDDMは、β-細胞機能の進行性の喪失を特徴としている。島β-細胞からのインスリン分泌は、アミノ酸、グリセルアルデヒドのような三炭糖、及び最も際だってはグルコースにより刺激される。
グルコースのβ細胞への輸送、及びそこでのグルコースの代謝は、インスリンの分泌にとって絶対要件であり、すなわち(グルコースは、それ自身の代謝を通じ、ランゲルハンス島のβ-細胞からのインスリン分泌を刺激する。)。正常なβ-細胞においてグルコース輸送能は、解糖フラックス(glycolytic flux)に過度に関連しているので、グルコースの破壊は真の律速段階である。
【0007】
グルコースは、転写、mRNAの安定性、翻訳及びタンパク質プロセッシングを増大することにより、インスリン生合成をde novoで刺激する。これは、予め貯蔵されたインスリンの放出も迅速に刺激する。ヒトインスリン遺伝子は、11番染色体短腕にコードされており、かつ3個のエキソン及び2個のイントロンを含む。インスリン遺伝子の転写制御は、細胞-特異的及びグルコース-感受性シグナル伝達分子と相互作用するフランキングDNAの短い領域を介して達成される。この調節機構の正確な性質は、余り分かっていない。しかし一般に、基本的ヘリックス-ループ-ヘリックス及びホメオドメイン-を含む因子が、インスリンのβ-細胞特異的発現を支配する転写機構の重要な成分であると考えられている。主なmRNA転写産物は、介在配列の除去及びその3'末端へのポリ-A尾部の追加によりプロセシングされ、成熟型インスリンmRNAを作成する。このmRNAの翻訳は、粗面小胞体において成され、プレプロインスリンを生じる。
【0008】
プレプロインスリンは、成熟型インスリンとは以下の2点で異なる:(1)これは、このポリペプチドをそれがタンパク質分解性にプロセシングされる粗面小胞体に方向付けるN-末端「シグナル」配列又は「プレ」配列を有する点、及び(2)A鎖とB鎖の間に、C-ペプチドとして公知の、追加の連結ペプチドを含み、このC-ペプチドが全分子の正確な折畳みを可能にする点。
プレプロインスリンのシグナル配列は、小胞体において同時翻訳的に除去され、プロインスリンを形成する。プロインスリンは、ゴルジ装置に輸送され、そこで引き続き調節された分泌小胞へ移され、そこでC-ペプチドのタンパク質分解性の切断により成熟型インスリンへプロセシングされる。
【0009】
プロインスリンプロセシングは、膵β-細胞のトランスゴルジ網(TGN)に由来した、主にクラスリン-被覆の未熟型分泌顆粒において生じる。プロインスリンのインスリンへのタンパク質分解性プロセシングは、エンドプロテアーゼのサブチリシンファミリーのプロホルモンコンバターゼによる。これらのコンバターゼは、カルボキシル-末端のペプチド結合を二塩基性残基へと、B鎖からこれらの塩基性残基を除去するカルボキシペプチダーゼE/Hと共に切断し、循環系へ分泌される成熟型機能性インスリンを産生する。すなわち、完全な転換は、C-ペプチドへのインスリンB-鎖塩基性連結残基(Arg31-Arg32)及びC-ペプチドのA-鎖へ連結している塩基性残基(Lys64-Arg65)のふたつの対への、COOH-末端の末端タンパク質分解性の切断、更にはカルボキシペプチダーゼE/Hによる残余のCOOH-末端塩基性残基のトリミングに関連している(Davidsonら、Biochem. J.、245: 575 (1987);Grimwoodら、J. Biol. Chem.、264: 15662 (1989))。分泌小胞は、非出芽(budding off)及び最終的な分離のプロセスにより、ゴルジ膜に由来している。これらの小胞は、グルコースのような分泌刺激に反応して、細胞の形質膜表面に輸送され、そこでこれらは形質膜に融合され、かつ成熟型ホルモンの貯蔵を放出する。
【0010】
グルコースの特異的刺激作用は、解糖系及び関連経路を通じ、そのフラックス速度により、媒介され、かつこれに比例していると仮定されている。島β-細胞におけるグルコース代謝の制御において、GLUT-2として公知の特異的に促進された-拡散型グルコーストランスポーター、及びグルコースリン酸化酵素であるグルコキナーゼが関与している証拠が蓄積されつつある。両タンパク質はグルコースに親和性があり、グルコースの生理的範囲にわたる活性に大きい変化をもたらす。
糖尿病は、その患者ができる限り正常な又はほぼ正常な炭水化物、脂肪及びタンパク質代謝を有するような方法で、体内のインスリン濃度を補正することにより治療される。最適療法は、糖尿病の最も急性の作用を予防する効果があり、かつ更に慢性作用を大きく遅延することがわかっている。概して過去20年間において糖尿病患者の臨床治療において進歩がほとんどないことは、了解されている。
【0011】
糖尿病の治療は、依然、外因性インスリンの1日1回又は2回の自己-注射、もしくは島がインスリンを分泌する能力が依然維持されているような重症でない糖尿病症例において、スルホニル尿素のようなインスリン分泌を刺激する薬物の使用が中心である。外因性インスリンは、新たに摘出されたブタ又はウシ膵臓からのインスリンの精製に由来するような非-組換え法によるか、又は組換え技術の使用により単離することができる。組換え法は、一般に細菌又は酵母における組換えプロインスリンの発現、それに続く成熟型インスリン分子のA鎖とB鎖の間の正確なジスルフィド結合による連結を確実にするためのプロインスリンの化学処理を含む。この成熟型インスリンペプチドは、細菌又は酵母タンパク質、更にはいずれかの追加の物質から精製される。細菌の組換え手法は、典型的には40種もの個別の工程を伴っている。
【0012】
糖尿病の治療は、通常患者に、正常な良く管理された量の炭水化物を含有する標準規定食及び規則的運動プログラムを確立することにも関連している。減少した脂肪は個体のインスリン要求を減少するので、体重管理は有用であることが多い。運動は、インスリンが存在しない場合であってもグルコースの筋細胞への輸送を増大し、その結果実際にインスリン-様作用を有する。
糖尿病の治療は、インスリン注射、規定食、及び運動プログラムと組合せて、血中グルコースの一定かつ生涯にわたるモニタリングを必要とする。多くの糖尿病患者は、これらの拘束(stricture)全てを満たすことは困難であるので、彼らは絶え間なく自身を低血糖症及び高血糖症の有害作用に曝している。従って、糖尿病患者において血液グルコース濃度を制御する方法を変更する必要性が存在する。
【0013】
多くの研究者が、インスリンポンプ及びペンのような外部装置の使用により、インスリン送達を制御することを試みている。残念なことに、このような技術は、厳密に制御された血液グルコース濃度をもたらすようには開発されていない。分配機構に加え、血中グルコースセンサーの不適切さは、現在利用可能な自動式インスリンディスペンサーを煩雑にしている。
他の研究者は、ドナー由来の膵組織を糖尿病患者へ移植することにより、糖尿病患者の血液グルコース濃度を制御することを試みている。このような移植に関連した重大な問題点は、以下を含む:ドナー組織の短命、ドナー組織の収集に関連した経費及び出費、非同系移植片移植における組織拒絶反応を防ぐための免疫抑制の必要性、並びに収集後長期間生存組織を維持することの困難。例え移植がうまくいったとしても、患者の当初の島β-細胞の破壊に寄与する固有の自己免疫機構により損なわれる。
【0014】
示唆されている別の方法は、選択的透過膜中の島組織で構成された「人工膵」に融合された生体ハイブリッド(biohybrid)の使用を伴っている。選択的透過膜は、移植された島を、患者の当初のβ-細胞の破壊に寄与する同じ自己免疫機構により認識されかつ破壊されることから保護するように作用する。被包された島の腹腔インプラントによる糖尿病のin vivo治療が、いくつかの研究者グループにより報告されている(例えば、Baeらの米国特許第5,262,055号(1993);Newgardの米国特許第5,427,940号(1992);Lumら、Diabates、40: 1511 (1991);Makiら、Transplantation、51: 43 (1991);Robertson、Diabates、40: 1085 (1991);Coltonら、J. Biomech. Eng.、113: 152 (1991);Scharpら、Diabates、39: 515 (1990);Reach、Intern. J. Art. Organs、13: 329 (1990)を参照のこと)。このような人工膵臓は、高価でありかつ作成に時間がかかり、実践において限られた有用性を示すことが分かっている。
【0015】
β-細胞株の移植に関してかなりの量の研究が行われている。β-細胞株は、典型的には、インスリノーマ及び過形成性島から作成される。不死化されたβ-細胞株を単離するために、ふたつの主要な方法が使用されている:(1)X-線で誘導したラットのインスリノーマから細胞を単離する方法;(2)島細胞の初代培養物をシミアンウイルス40(SV40)で感染しかつ形質転換する方法。いくつかのこれらの細胞株は、無傷の成体島において認められるものに類似したインスリン分泌特性、特に生理的範囲のグルコース濃度(5〜15mmol/L)に対する反応を示す。このような細胞株に関連した共通の問題点は、それらの表現型の不安定性である。すなわち、培養物中での細胞の増殖後、これらの細胞は、頻繁に生理的濃度を下回るグルコースに反応し、及び/又は減少したインスリン生産(output)を顕在化する。
不死化された細胞株由来の細胞は、宿主のβ-細胞を破壊したものと同じ自己免疫を受けるので、このようなβ細胞株は通常移植のために被包されている。被包は細胞に対する免疫学的反応を低下すると同時に、これらの細胞それ自身が迅速に細胞***しているので、被包内での増大した酸素及び栄養素の要求、更には代謝廃棄物の増加が、細胞の生存能に有害に影響する。
【0016】
数名の研究者は、増殖を制御するために不死化されたβ細胞を遺伝的に変更することを提唱している。例えばErfatの米国特許第6,114,599号は、細胞の増殖が抗生物質の有無により調節されるように、遺伝子操作された不死化されたβ細胞を開示している。このような細胞は、β細胞への、TetR-VP16遺伝子融合タンパク質をコードしているDNAを含む第一の遺伝子、並びにこの融合タンパク質の発現を制御するインスリンプロモーター、並びにSV40 T抗原をコードしているDNAを含む第二の遺伝子、並びにテトラサイクリンのオペレーター最小プロモーターの導入により作出される。両遺伝子のこのような安定した組込みが実現され、かつその増殖がテトラサイクリン又はそれらの誘導体により制御される細胞について、スクリーニングが行われる。Erfatとその同僚は、制御された発癌(oncogenesis)を使用し、ヒト島細胞をin vitroにおいて増殖し、引き続き癌遺伝子の失活後、島細胞を移植することができることを示唆している。
【0017】
Levineらの米国特許第5,723,333号(発行:1998年3月3日)は、1種又は複数の誘導性プロモーター及び/又は遺伝的要素の制御下での2種又はそれよりも多い癌遺伝子を含むベクター、好ましくはレトロウイルスベクターによる細胞の形質転換により確立された膵細胞株を開示している。このような細胞の亜集団は、高レベルのインスリンを発現することがわかっている。GiannoukakisらのPCT国際公開公報第01/11031号(公開:2001年2月15日)は、インターロイキン-1β(IL-1β)シグナル伝達のインヒビターをコードしている核酸分子を含む遺伝子操作されたβ-細胞を開示している。IL-1βは、in vitroにおけるヒト島でのグルコース-刺激されたインスリン産生の障害に直接寄与する開始サイトカインであることが示されている(MacDanielら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、211: 24 (1996))。IL-1β活性を低下することにより、それに対応した糖尿病動物におけるβ-細胞機能不全及びアポトーシスの低下が存在する。IL-1βを阻害することが可能な生物学的活性タンパク質をコードしている核酸分子は、IL-1Ra、NF-Kβインヒビター、AP1インヒビター、IL-1Rの可溶性型、fas又はFADDタンパク質の突然変異体型、IGF-1、牛痘crmAタンパク質、並びにBcl-2及びBcl-XLのようなbcl-2ファミリーの一員を含むと称されている。
【0018】
多くの研究者が、インスリン-産生細胞を分化するように胚性幹細胞を誘導することにより糖尿病を逆行することを試みてきた。胚性幹細胞は、適当な指示下であらゆる細胞型へと分化することができる始原細胞である。ブタ胎仔膵組織はラットの血液グルコース濃度を正常化することができることが明らかにされているが、これらは移植後数ヶ月間のみ生じ、かつラットの免疫抑制を必要とする。
Dinsmoreの米国特許第5,837,236号(発行:1998年11月17日)は、異種対象において免疫応答を誘起することが可能である細胞-表面抗原が、非免疫原性抗原に変更される場合には、胎仔ブタ膵細胞の生存を、異種対象において延長することができることを開示している。このような細胞がインスリン-産生細胞へと分化する人工的条件を決定するために研究が行われている。このような方法は、胚性幹細胞の分離に関連した経費、ひとつの種から別の種への組織移植に伴う種間ウイルス導入の問題、並びにヒト幹細胞に関して、このような細胞を使用することに関連して生じる倫理的問題という欠点がある。
【0019】
Shortらの論文(Am. J. Physiology、275: E748 (1998))は、二塩基性プロホルモンコンバターゼ認識配列が四塩基性フリン切断部位に変更されているようなヒトプロインスリンcDNAを含む複製能-欠損アデノウイルスの導入により形質転換された胚性腎細胞株を明らかにしている。フリンは、多くの細胞の構成的分泌経路に存在する内因性プロテアーゼである。このような細胞は、プロインスリン及び成熟型インスリンの両方を合成することがわかった。このウイルス構築体のマウスの外頚静脈への注射は、肝臓におけるインスリン遺伝子発現を生じるが、血糖状態の改善は一過性であり、約2〜3週間続く。
Stewartらの論文(J. Mol. Endocrin.、11, 335 (1993))は、メタロチオネインプロモーター及び抗生物質G418に対する耐性を付与する遺伝子を含むプラスミド中のヒトプレプロインスリンDNAによる、マウス下垂体細胞株のトランスフェクションを明らかにしている。このような細胞は、糖尿病でない無胸腺ヌードマウスに移植された場合に、非-トランスフェクション細胞のインプラントを受け取った対照マウスと比較して、ストレプトゾトシン-誘導した高血糖症を遅延することがわかっている(ストレプトゾトシンはβ-細胞を破壊する)。しかし移植された細胞は、腫瘍様の凝塊を形成することが認められた。
【0020】
Valeraらの論文(FASEB J.、8: 440 (1994))は、肝細胞を、ホスホエノールピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の制御下でヒトインスリン遺伝子を収容するように修飾することができることを説明している。このような肝細胞を収容しているトランスジェニック動物は、ストレプトゾトシンでチャレンジした場合に、正常血糖を維持する点で、非-トランスジェニック対照よりも顕著にうまくいく(fare)ことが認められた。糖尿病ラットの肝細胞におけるインスリンの異所性発現は、in vivoレトロウイルス遺伝子導入を使用し、Kolodkaらによっても報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci.、92: 3293 (1995))。
PollockらのPCT国際公開公報第97/14441号(公開:1997年4月24日)は、外因性カルビンジン遺伝子に加え、外因性又は内因性インスリン遺伝子を発現している操作した細胞を開示している。Pollockらは、このような細胞は、グルコース-感受性の様式でインスリンを分泌する能力を発揮することを示している。彼らは、これらの細胞を、インスリン補充の必要性を改善するために糖尿病動物に移植することができる半透過性多孔質マトリックス中に封入することができることも明らかにしている。
【0021】
Sugiyamaら(Horm. Metab. Res.、29: 599 (1997))は、欠損型アデノ随伴ウイルス(AAV)ビヒクルを使用する、肝細胞のラットインスリン遺伝子及びlacZによるトランスフェクションを報告している。このような細胞は、周囲の培地のグルコース濃度低下を引き起こし、及びin vivoにおいてトランスフェクションした場合は、血液グルコース濃度の低下を引き起こすと言われている。Bartlettら(Transplantation Proceedings、29, 2199 (1997))は、正常ラット又は糖尿病ラットの膝窩腱筋肉に直接注射した場合に、最大12週間プロインスリンを放出するような発現ベクターを明らかにしている。このベクターは、pAAV-CKMベクターにCKMプロモーターの直後に挿入されたプロインスリンゲノムDNAを含む。
Newgardの米国特許第5,811,266号(発行:1998年9月22日)は、インスリン遺伝子、グルコキナーゼ遺伝子、及びグルコーストランスポーター遺伝子の3種の遺伝子全ての生物学的機能及び反応性の立体配置を有する操作された細胞を提供するために、インスリン遺伝子、グルコキナーゼ遺伝子、及びグルコーストランスポーター遺伝子から選択された1種又は複数の遺伝子の導入により達成された人工的β-細胞を開示している。グルコキナーゼ、及びGLUT-2として公知の促進-拡散型グルコーストランスポーターは、β-細胞におけるグルコース代謝の制御に関連していると考えられている。
【0022】
PowersらのPCT国際公開公報第99/54451号(公開:1999年10月28日)は、インスリンを分泌する神経内分泌細胞を開示している。グルコースに反応してインスリンを分泌する操作された神経内分泌細胞は、非-グルコースインスリン分泌促進物質受容体をコードしている遺伝子及び外因性インスリン遺伝子を含む。これらの遺伝子の少なくとも一方は、組換えベクターにより細胞に導入された組換え遺伝子である。この発明者らにより、神経内分泌細胞のインスリンを正確にプロセシングする能力は、様々な神経内分泌細胞における同様のホルモンプロセシング酵素の発現を反映していると仮定されている。この非-グルコースインスリン分泌促進物質受容体は、グルカゴン-様ペプチド1、グルコース-依存型インスリン放出ポリペプチド、コレシストキニン、ガストリン、セクレチン及び胃阻害ペプチドの受容体を含むと言われている。形質転換に好ましい細胞は、下垂体及び甲状腺からのもののような、分泌顆粒を形成する固有の能力を有すると言われる。
BoschらのPCT国際公開公報第00/31267号(公開:2000年6月2日)は、前駆体筋細胞又は筋芽細胞の細胞株をインスリンをコードしている外因性遺伝子によりトランスフェクションすることを開示している。好ましい細胞株は、筋芽細胞の状態で迅速に分割しかつ***しない筋管への分化能を有するC2C12のような筋芽細胞株である。このような細胞は、筋芽細胞状態で大量に生成されやすく、かつ分化後、***していなくとも適当なプロモーターを用い組換えタンパク質を作成することが可能であると言われている。このプロモーター配列は、プロモーターが、患者の糖尿病状態の間に活性化されるか又は誘導され、かつミオシン軽鎖プロモーター、クレアチンキナーゼ及びmyoDを含むように選択される。
【0023】
Leeら(Nature、408: 483 (2000))は、C-ペプチドの35個の残渣の、短いターンを形成する(short turn-forming)ヘプタペプチドとの交換により形成される、1本鎖インスリンアナログ(「SIA」)を発現するように細胞を形質転換することが可能である組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を報告しており、これは、血液グルコース濃度に反応してSIA発現を調節する肝細胞-特異的L-型ピルビン酸キナーゼ(LPK)プロモーターの制御下で、酵素転換を伴うことなく、生物学的活性のあるインスリン活性を有する。この細胞からのSIAの分泌を促進するために、アルブミンリーダー配列がこのSIA遺伝子構築体に追加される一方で、SIA発現の基底レベルを上昇するために、シミアンウイルス40エンハンサー(SV40)が、SIA遺伝子の下流に追加された。この組換えアデノ随伴ウイルスは、ストレプトゾトシン-誘導した糖尿病ラット及び自己免疫糖尿病マウスにおいて延長された時間にわたる糖尿病の寛解を引き起こすことがわかった。
【0024】
Barryら(Human Gene Therapy、12: 131 (2001年1月20日))は、フリン発現を駆動するグルコース-反応性プロモーターをコードしているレトロウイルスベクターは、インスリンの増幅されたグルコース-調節された分泌を提供することができることを示している。このグループは、フリン-切断可能なヒトプロインスリンの構成的発現を駆動するウイルス長末端反復配列プロモーター(LTR)を伴う、マウスのフリン発現を制御するグルコース-調節可能なラットトランスフォーミング増殖因子α(TGFα)プロモーターをコードしているLhI*TFSNウイルス構築体を明らかにしている。このような構築体が、血管平滑筋細胞へ導入された場合、これらの細胞は、生理的グルコース濃度に反応することが認められた。フリン-切断可能なヒトプロインスリンは、ヒトプロインスリンcDNAを、フリン-切断可能部位をコードするように変更することにより得られた(Hosakaら、J. Biol. Chem.、255: 12127 (1991);Groskruetzら、J. Biol. Chem.、269: 6241 (1994);Grosら、Gene Ther.、8: 2249 (1997))。選択可能なneo遺伝子(細菌のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)は、シミアンウイルス40プロモーター(SV40)により発現及び駆動されるneo遺伝子と共に、この構築体に導入された。これらの細胞からのインスリン放出は、ヒトアデノシンデアミナーゼcDNA又はラットのエリスロポイエチンcDNAのいずれかを駆動するLTRプロモーター、及び選択可能なneo遺伝子を駆動するSV40プロモーターを含む、レトロウイルスベクターにより形質導入された細胞に対して判断された。遺伝的に変更された細胞は、コラーゲンマトリックス内に配置され、かつ糖尿病となりつつある(180mg/dlを超える血液グルコース)類遺伝子型DR lyp/lyp BBラットの胃被膜に作成された小さいポケットに移植された。研究者らは、8匹の処置したラットにおいて、最大3ヶ月間の処置前レベルの25%まで低くインスリン要求が大きく低下したことに加え1匹のラットでは、低血糖症を伴うことなくインスリン不要となったことを認めた。制御された細胞インプラントを受け取っている糖尿病ラットにおける腹腔内耐糖能試験は、グルコース投与後の正常ラットの血糖の特徴的漸減を示さなかった。
【0025】
多くの問題点が、先行技術の「人工的β-細胞」を悩ませている。このような細胞は、典型的には培養することは非常に困難であり、かつ実際には頻繁に培養中に非常に迅速にそれらの機能的能力が喪失されることが認められる。このような細胞株の大半は、治療的であるのに十分なインスリンを分泌しないか、もしくはインスリン産生が調節されないかのいずれかである。ある程度のグルコース-調節されたインスリン産生を示すこれらの細胞株において、最も頻繁にはグルコース反応性プロモーターは、インスリン遺伝子を直接転写により調節し、血管及び神経の機能を有することが報告されているC-ペプチドを生成しない。先行技術の遺伝的に変更された細胞の移植は、典型的には生涯にわたる免疫抑制剤の使用を必要とし、又は先行技術の細胞では装置内の過剰増殖又は急激な老化のために効果が低いことが頻繁に認められるような免疫隔離装置(immunoisolation device)への組込みも必要である。
従って、グルコース-反応様式でインスリンを産生することがプログラムされた改善された細胞株、成熟型インスリンに加え血管及び神経の機能を有することが報告されているC-ペプチドを産生することができる細胞株、並びに移植レシピエントに関して免疫抑制が不要であるように、免疫隔離装置において有意な期間にわたり機能するための増殖に適合される細胞株の必要性は大きい。
【0026】
(発明の概要)
先行技術に関連した欠点を克服するために、本願明細書において、グルコースに反応してインスリンを分泌するように細胞を操作するのに有用である多機能配列(本願明細書において「カセット」と称する)を有する組換え核酸構築体が開示されている。このような核酸構築体は、特にインスリン分泌能を非-β細胞に導入するのに有用である。同じく、プロ-インスリンプロセシングのレベルでインスリン分泌が有意に調節されるような、組換えグルコース-調節されたインスリン-産生細胞も開示されている。更に、成熟型インスリンに加えプロインスリン由来のC-ペプチドを分泌することが可能である組換えグルコース-調節されたインスリン-産生細胞も開示されている。更に別の本発明の態様において、免疫隔離装置における増殖した適合された細胞株が開示されている。
【0027】
本発明の核酸構築体は、ヒトインスリンのグルコース-調節された産生を生じるように独自の組合せ及び方向でシステムを使用する。ヒトのプロインスリンの発現に作用し、かつC-ペプチドでのその切断を調節し、かつインスリンプロテアーゼのグルコース-活性化したプロモーターによりインスリンを産生するために、様々な種類の発現調節配列及び遺伝子が、本発明の構築体において動力化(harnessed)されている。
【0028】
本発明の好ましい態様において、核酸構築体は、野生型から変更されたプロテアーゼ切断部位を有するヒトプロインスリンをコードするように変更されているヒトプロインスリンヌクレオチド配列を含む。更に本発明の遺伝子構築体が、変更されたプロテアーゼ切断部位に対する親和性を有するヒトプロテアーゼコードしているヌクレオチド配列を含むことが好ましい。有利なことに、そのプロテアーゼ切断部位が変更されているヒトプロインスリンヌクレオチド配列は、更にH10D変種(すなわち、B鎖の10位のヒスチジンがアスパラギン酸)のような変種(米国特許第4,992,418号に開示)を含み、これは成熟型インスリンのインスリン-受容体結合部位への親和性を増大している。
【0029】
本発明のひとつの態様において、野生型から変更されたプロテアーゼ切断部位を有するヒトプロインスリンをコードするように変更されているヒトプロインスリンヌクレオチド配列、変更されたプロテアーゼ切断部位に対する親和性を有するヒトプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列、好ましくは適切な翻訳開始を可能にするために翻訳開始配列に先行されたヌクレオチドプロテアーゼ配列、プロモーターの活性化時にその転写を促進することが可能であるように変更されたヒトプロインスリン配列に関して配置された構成的プロモーター、並びにインスリン分泌促進物質グルコースによる活性化時にその転写を促進するようにヌクレオチドプロテアーゼ配列に関して配置されたグルコース-反応性プロモーターを含む核酸構築体が提供される。
【0030】
本発明の特に有利な構築体は、ヌクレオチド配列を利用し、これは、変更されたサブチリシン-様セリンプロテアーゼ-切断可能な切断部位を組込むように変更されているヒトプロインスリン、変更されたヒトプロインスリンヌクレオチド配列の転写のプロモーター、変更された切断部位を切断することが可能であるヒトサブチリシン-様セリンプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列、ヒトフリンヌクレオチド配列の転写のグルコース-調節されたプロモーター、並びにその転写時に適切な翻訳を可能にするようにヒトフリンヌクレオチド配列に関して機能可能に配置されたコザックコンセンサス配列のような、翻訳開始ヌクレオチド配列の発現をコードしているcDNAであることができる。サブチリシン-様セリンプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列は、有利なことにフリンをコードしている。
【0031】
本発明のひとつの態様において、1種又は複数のウイルス長末端反復配列(LTR)プロモーター-エンハンサー、サブチリシン-様セリンプロテアーゼの特異性に順応するようにそのプロテアーゼ切断部位が人工的に変更されているヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、そのように変更されたプロインスリンヌクレオチド配列は、LTRプロモーター-エンハンサーの制御下にあるもの;フリンのような、ヒトサブチリシン-様セリンプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列;翻訳開始ヌクレオチド配列、例えばその転写時に適切な翻訳を可能にするようにヒトフリンヌクレオチド配列に関して機能可能に配置されたコザックコンセンサス配列;並びに、グルコース-調節可能なプロモーター、例えばその転写を促進するようにヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列に関して配置されたトランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)プロモーターを含む、核酸構築体が提供される。このLTRプロモーター-エンハンサーは、非-ウイルス構築体が望ましい場合には、任意に欠くことができる。
【0032】
本発明の別の態様において、ウイルスLTRプロモーター-エンハンサー、フリンの特異性に順応するためにそのプロテアーゼ切断部位が人工的に変更されているヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、ウイルスLTRプロモーター-エンハンサーの制御下のプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)プロモーター、翻訳開始ヌクレオチド配列により5'側がフランキングされているヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列、例えばコザックコンセンサス配列、(TGF-α)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーターの制御下にあるフリン-コードしているフランキングされたヌクレオチド配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neo)をコードしているヌクレオチド配列、SV40プロモーターの制御下にあるネオマイシンホスホトランスフェラーゼヌクレオチド配列、並びにNeoヌクレオチド配列の3'側のウイルスLTRプロモーター-エンハンサーを含む、細胞を形質転換するための核酸構築体が提供される。
【0033】
更に別の本発明の態様において、変更されたヒトプロインスリンの構成的発現を駆動するように、フリンの特異性に順応するためにそのプロテアーゼ切断部位が人工的に変更されているヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列に機能的に連結されたサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを更に含む、前述のような核酸構築体が提供される。このCMVプロモーターは、任意にLTRプロモーター-エンハンサーに機能的に連結され、その結果LTR cis-調節配列は、CMVプロモーターのために転写を増大することができる。このような構築体において、CMVプロモーターは、変更されたヒトプロインスリンの構成的発現を駆動するために使用されると同時に、LTRプロモーター-エンハンサーは、CMVプロモーターからの転写を増強するために使用される。LTRプロモーター-エンハンサーは、変更されたヒトプロインスリンの発現レベルを改善するために、当該技術分野において公知であるように修飾することができる(例えば、Hillbergら、PNAS USA、84: 5232 (1987);Hollandら、PNAS USA、84: 8662 (1987);Valerioら、Gene、84: 419 (1989)参照のこと)。
【0034】
更に別の好ましい本発明の態様において、フリンの特異性に順応するようにそのプロテアーゼ切断部位で人工的に変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列;変更されたヒトプロインスリンヌクレオチド配列の転写を促進するために機能可能に連結されたCMVプロモーター;ヒトプロインスリンヌクレオチド配列、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列の3'側に位置したポリアデニル化部位;グルコース濃度を増大することでその転写を促進するために、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列に機能可能に連結された、グルコース-調節可能なプロモーター、例えばTGF-αプロモーター;ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列の3'側に位置したポリアデニル化部位;選択可能なマーカー、例えばネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしているヌクレオチド配列;その転写を促進するために、選択可能なマーカーをコードしているヌクレオチド配列に機能可能に連結された、構成的プロモーター、例えばSV40;並びに、選択可能なマーカーをコードしているヌクレオチド配列の3'側に位置したポリアデニル化配列を含む核酸構築体が提供される。
【0035】
当業者に理解されるように、本発明は、説明された核酸構築体が組込まれたトランスジェニック動物及び微生物にも拡大することができ、かつその拡大は本願明細書において企図されている。同じく当業者に理解されるように、本願明細書において説明された核酸構築体による標的細胞の形質転換は、1種又は複数のベクターを用いて実現することができる。例えば、核酸構築体のひとつのベクターへの組込み及びそれによる細胞の形質転換の代わりに、フリンの特異性に順応するようにそのプロテアーゼ切断部位で人工的に変更されているヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、並びにこのような配列の転写を促進/増強することができるようにプロインスリン-コードしているヌクレオチド配列に機能的に連結されたプロモーター-エンハンサーを含むひとつのベクター、更には、コザックコンセンサス配列により5'側がフランキングされたヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列、及びこのような配列の転写を促進/増強することができるように、フリン-コードしているフランキングされたヌクレオチド配列に機能的に連結されたグルコース-感受性プロモーター-エンハンサーを含む別のベクターで、細胞を形質転換することができる。このような二重ベクター形質転換において、各ベクターは異なる選択支配的なマーカーを含み、両ベクターによりトランスフェクションされた標的細胞の選択が可能であることが好ましい。
【0036】
(発明の詳細な説明)
1.定義
下記の定義は、本願明細書において使用された特定の用語の理解を促進するために提供される:
「細胞」は、組織に保持された細胞、細胞クラスター及び個別に単離された細胞を含むが、これらに限定されるものではない、あらゆる形の細胞を含むことを意味する。
「細胞株」は、多世代にわたってin vitroにおける安定した増殖が可能である細胞を意味する。
「クローン」は、有糸***による、単細胞又は共通の祖先に由来した細胞集団を意味する。
【0037】
「CMVプロモーター」は、二本鎖DNAを含むエンベロープを伴う正二十面体ウイルスである、サイトメガロウイルス(「CMV」)、及びそれらの変種から単離されたプロモーターを意味する。サイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルス科のグループである。
「コンセンサス配列」は、各位置での塩基又はアミノ酸の最も一般的選択を反映している、DNA、RNA又はタンパク質配列の関連した一連の配列を意味する。
「構成的プロモーター」は、その作用が基質により調節されないプロモーターを意味する。
「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写及び翻訳を制御及び調節するDNA配列を意味する。RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、その後このコード配列によりコードされたタンパク質へ翻訳される場合は、コード配列は、細胞内の転写及び翻訳制御配列の「制御下」にある。
「外因性」物質は、その外側に起源を持つ細胞、生物などに導入される物質を意味する。
【0038】
「発現カセット」は、標的細胞において特定の核酸の転写をもたらす一連の特定化された核酸要素により、組換え又は合成により作成された核酸構築体を意味する。典型的には、発現ベクター中の発現カセットは、意図された宿主細胞におけるポリヌクレオチドの転写を指示する転写開始調節配列に機能的に連結されたポリヌクレオチドを含む。
「発現ベクター」は、特定の細胞においてクローニングされた遺伝子を発現するようにデザインされたベクターを意味する。
「フリン」は、コンセンサス配列Arg-X-Lys/Arg-Argに基質特異性のあるサブチリシン-様真核細胞エンドペプチターゼ、及びそれらの変種を意味する。
「遺伝子」は、言及された単独のポリペプチドを作成するのに必要とされるDNA配列のセットを意味する。例えば、「アブシシン酸反応性要素-結合因子4」遺伝子は、産生されたアブシシン酸反応性要素-結合因子4に必要なエキソンを含むDNA配列を意味する。「遺伝子」は、そのポリペプチドの変種をコードしているDNA配列を含むことを意味する。
「グルコース-調節可能なプロモーター」は、その作用が、グルコースにより調節可能であるプロモーターを意味する。
「インスリン」は、インスリン及びそれらの変種を意味する。同様に用語「プロインスリン」及び「プレプロインスリン」は、それらの変種を含むことを意味する。
物質の「単離」は、物質の環境を変更することもしくはそれを当初の環境から取り除くこと、又はこれら両方を意味する。例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチドがその天然の状態で共存する物質から分離される場合に、これは「単離される」。
【0039】
「コザックコンセンサスヌクレオチド配列」は、効率的翻訳のために真核生物においてmRNAの翻訳開始部位の共通部位をコードしているヌクレオチド配列を意味する(Kozack、Nuc. Acid Res.、12, 3873-3893, 1984)。
「長-末端反復配列」は、トランスポゾン及びレトロウイルスRNAの逆転写により形成されるプロウイルスDNAのいずれかの末端に認められる、数百のヌクレオチド長である、同じDNA配列を意味する。長末端反復配列は、逆方向反復配列、すなわち、反対方向に読む場合に同じであるいずれかの末端に近い配列である。プロウイルスにおいて、上流の長-末端反復配列は、プロモーター及びエンハンサーとして作用し、下流の長-末端反復配列は、ポリアデニル化部位として作用する。
「機能的に連結された」又は「機能可能に連結された」ヌクレオチド配列は、配列の機能性が保存されるような並列(juxtaposition)を意味する。従って、例えばプロモーターに「機能的に連結された」コード配列は、このプロモーターがコード配列の発現に作用することが可能であるように配置される。
「ポリヌクレオチド」は、ポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドのいずれかを意味し、これは未修飾のRNAもしくはDNA、又は修飾されたDNAもしくはDNAであることができる。本願明細書において使用される「ポリヌクレオチド」は、一本鎖-及び二本鎖-DNA及びRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であることができるDNA及びRNAを含むハイブリッド分子、又は一本鎖及び二本鎖領域の混合物を含むが、これらに限定されるものではない。用語「ポリヌクレオチド」は更に、RNAもしくはDNA又はDNA及びRNAの両方を含む三本鎖領域を意味する。「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然において認められるような、ポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形に加え、ウイルス及び細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学形を包含している。この用語は、長いヌクレオチドに加え、オリゴヌクレオチド、及びオリゴマーと称されることが多い、短いヌクレオチド配列の両方を包含することを意味している。
【0040】
「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼに結合し、かつ下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することが可能であるDNA調節領域を意味する。プロモーター配列内には、転写開始部位に加え、RNAポリメラーゼの結合に寄与するタンパク質結合ドメインが認められるであろう。そこで転写が始まるヌクレオチド領域は、+1と称され、かつヌクレオチドはこの位置から番号付けられ、負の数は上流ヌクレオチドを示し、正の数は下流ヌクレオチドを示す。
「組換え」又は「操作された」細胞は、人為的に組換え遺伝子が導入されている細胞を意味する。組換えにより導入された遺伝子は、cDNA遺伝子(すなわち、イントロンを欠いている)、ゲノム遺伝子のコピー(すなわち、エキソンと共にイントロンを含む)、合成手段により作出された遺伝子の形であることができ、及び/又は特定の導入された遺伝子と天然には会合していない、プロモーターに隣接するように配置された、もしくはそれらに機能的に連結された遺伝子を含むことができる。
【0041】
「レプリコン」は、in vivoにおけるDNA複製の自律的単位として機能する、すなわち、それ自身の制御下で複製することが可能である、遺伝的要素(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)を意味する。
「分泌促進物質」は、細胞からの分泌を誘導する物質を意味する。
「構造遺伝子」は、調節的役割を働く遺伝子とは対照的に、産物(例えば、酵素、構造的タンパク質、tRNA)をコードしている遺伝子を意味する。
「SV40」プロモーターは、パポーバウイルス科の、小さいDNA-含有腫瘍ウイルスである、シミアンウイルス40プロモーター、及びそれらの変種を意味する。
「治療的有効量」は、臨床的に有用な積極的方法で、状態を改善するのに十分な量を意味する。
「形質転換された細胞」は、それに外因性又は異種DNAが導入された細胞を意味する。形質転換するDNAは、細胞のゲノムを形成する染色体DNAに組込まれても(共有的結合された)、組込まれなくともよい。形質転換するDNAは、プラスミドのような、エピソーム要素上に維持されても良い。
「TGF-α」は、EGF-様ドメインを含みかつEGF受容体に結合するウイルス-形質転換された齧歯類細胞から最初に単離された、50個のアミノ酸ポリペプチドのトランスフォーミング増殖因子、及びそれらの変種、例えば、微小血管上皮細胞の増殖を刺激するポリペプチド及びそれらの変種を意味する。
【0042】
「トランスフェクション」は、核酸配列の標的細胞への導入を意味する。
「トランスフォーミング増殖因子」は、正常な細胞の増殖を刺激することができる形質転換された細胞により分泌されたタンパク質を意味する。
「翻訳開始ヌクレオチド配列」は、mRNA翻訳の開始部位をコードしているヌクレオチド配列を意味する。
「変種」は、他の配列とは異なるが、その本質的特性、すなわちその配列がその適用において利用される特性(例えば、発現の促進、結合の切断など)は維持しているポリヌクレオチド又はポリペプチドのような、配列を意味する。例えば、ポリヌクレオチドの変種は、参照ポリヌクレオチドと、1個又は複数の置換、付加、及び欠失によりヌクレオチド配列が異なることができる。「変種」は、それらの本質的特性を維持している完全長配列の断片を含むことを意味する。
「ベクター」は、遺伝子操作において、細胞の形質転換に使用される、プラスミド、ファージ、ファージミド又はコスミドのようなレプリコンを意味する。ベクターは、人工的に切断及び結合される様々な給源由来のヌクレオチド分子を含むことができる。
【0043】
2.構築体
本発明は、糖尿病の状態を改善するための先行技術の方法に関連した多くの問題点を克服している。異なるDNA配列の独自の組合せを使用することにより、本発明は、グルコース-調節された様式でインスリンを分泌するように、細胞、特に体細胞の形質転換に使用することができる核酸構築体をもたらす。
本発明は、変更されたプロテアーゼ切断部位での活性を有するヒトプロテアーゼに増大した親和性を有するように野生型から変更されたプロテアーゼ切断部位を有するヒトプロインスリン発現を提供するように変更されているヌクレオチド配列、ヒトプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列、翻訳開始を適切にするための翻訳開始ヌクレオチド配列に先行するヒトプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列、プロモーターの活性化時にその転写を促進することが可能であるように変更されたヒトプロインスリン配列に関して配置された構成的プロモーター、並びにグルコースによる活性化時にその転写を促進するようにヒトプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列に関して配置されたグルコース-反応性プロモーターを含む核酸構築体を説明している。
【0044】
ある態様において、本発明は、変更された切断部位を伴うヒトプロインスリンヌクレオチド配列の構成的発現を駆動するためのプロモーターを含む。この構成的プロモーターは、以下を含むが、これらに限定されるものではない、フリン-切断可能なインスリンの発現を駆動するために本発明の構築体において有用であるいずれかのプロモーターであることができる:サイトメガロウイルス(CMV)、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、及び伸長因子1(EF1)。本発明の構築体において有用な他のプロモーターは、インスリンラジオイムノアッセイのような、当該技術分野において公知の方法により決定することができる。この構成的プロモーターは、有利なことに、長末端反復配列(「LTR」)プロモーター-エンハンサー(「LTR」)のような、エンハンサーに機能的に連結され、これはその転写レベルを上昇する。しかしこのようなプロモーター-エンハンサーは、非-ウイルス構築体が望ましい場合は、避けることができる。変更されたヒトプロインスリンの発現は、更に変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列の3'末端のポリアデニル化により改善され得る。
【0045】
変更されたヒトプロインスリンプロテアーゼ切断部位を含むヒトプロテアーゼは、好ましくは、サブチリシン-様セリンプロテアーゼ、有利にはフリンである。ヒトプロテアーゼの発現は、翻訳を適切にするような方法で、サブチリシン-様セリンプロテアーゼをコードしているヌクレオチド配列の5'側に配置された翻訳開始ヌクレオチド配列の組込みにより有意に改善することができる。好ましい翻訳開始ヌクレオチド配列は、コザックコンセンサス配列又はそれらの変種をコードしているヌクレオチドである。ヒトサブチリシン-様セリンをコードしているヌクレオチド配列の3'側へのポリ-Aの追加も、発現を改善することを認めることができる。
【0046】
好ましいグルコース-調節可能なプロモーターは、トランスフォーミング増殖因子プロモーターである。TGF-αプロモーターは、ヒトサブチリシン-様セリンプロテアーゼ、特にフリンのグルコース調節された発現において特に有用であることが認められる。
この構築体は、好ましくは、形質転換された細胞の選択を容易にする産物をコードしているヌクレオチド配列も含む。例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(「Neo」)をコードしているヌクレオチド配列は、ネオマイシン含有培地における増殖により、形質転換された細胞の選択を可能にする構築体に組込むことができる。Neo転写は、シミアンウイルス40(SV40)プロモーターのようなプロモーターにより促進することができる。このプロモーターの活性は、有利なことにこのプロモーターの、プロモーター/エンハンサー、例えばLTRへの機能的に連結により増強することができる(LTR配列は、非-ウイルス構築体が望ましい場合は、避けることができる。)。Neoをコードしているヌクレオチド配列の3'末端のポリアデニル化を用い、Neoの発現を増加することができる。.
【0047】
当業者に理解されるように、本発明の構築体内のヌクレオチド配列及びプロモーターの順番は、変更することができ、例えば、マーカーの発現は、5'LTR又はSV40により駆動することができ、すなわち、pLChI*ThFSN又はpLNChI*ThFである。
3.形質転換された細胞株におけるインスリン発現
前述の核酸構築体は、インスリン発現している細胞株を作出するための細胞の形質転換に使用することができる。一般に、核酸構築体のポリペプチドを発現するのに適したあらゆるシステム又はベクターを使用することができる。この構築体の導入は、当業者に周知であり、例えばSambrookらの「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、Cold Spring Harbor Press社、コールドスプリングハーバー、N.Y. (1989)に説明されているような方法により成し遂げることができる。当業者に理解されるように、このような方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質-媒介型トランスフェクション、電気穿孔、トランスダクション、剥離負荷(scrape loading)、遺伝子銃(ballistic)導入又は感染を含むが、これらに限定されるものではない。
【0048】
ヒトプロインスリンは、位置指定-突然変異誘発のような、当業者に公知の技術を用い、そのプロテアーゼ切断部位において変更することができる(例えば、Unique Site Elimination Mutagenesis Kit、Pharmacia社を使用する)。プロインスリンをコードしているヒトcDNA配列は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)により、プラスミドpCHI-Iから得ることができる(Bellら、Nature、282: 525 (1979))。Grosらの論文(Human Gene Therapy、8: 2249 (1997))に説明されたように、フリン切断部位(Arg-X-(Lys/Arg)-Arg)を、B-C 連結部及びC-A連結部の両方に導入することができる。BペプチドにおけるHis-10のAspへの変化は、成熟型インスリン産物の安定性を増強するように行われることが好ましい(Groskreutzら、J. Biol. Chem.、269: 6241 (1994)参照)。
好ましい態様において、この構築体は、プラスミドにクローニングされる。ウイルス発現ベクターも使用することができる。
【0049】
Groskreutzらの論文(J. Biol. Chem.、269:6241 (1994))は、先にアデノウイルスで形質転換されたヒト腎細胞株293(「HEK-293」)は、フリン切断可能部位を有する変更されたヒトプロインスリンをコードしているプラスミドにより形質転換され、恐らく構成的分泌経路に存在するフリンのために、成熟型インスリンが得られることを報告した。しかし著者らは、切断が、HEK-293により作成されたフリン又は他のプロテアーゼ、例えば、PACE4(PACE4はFurin)によるものかどうかは確認することができなかった。
Vollenweiderらの論文(Diabates、44: 1075 (1995))は、リン酸カルシウム沈降法(Graham ら、Virology、52: 456 (1973))を用い、サル腎(COS-7)細胞の、フリン切断部位を組込むように変更されたヒトプロインスリンをコードしている第一のプラスミド、及びマウスフリンをコードしている第二のプラスミドによる、同時トランスフェクションを説明している。第一プラスミド単独を用いてCOS-7細胞を形質転換する場合、プロインスリンは、大免疫反応型(major immunoreactive)で検出された。しかし、両方のプラスミドが同時トランスフェクションされる場合、成熟型インスリンは、大免疫反応型で検出された。同時-トランスフェクションが、外因性プロテアーゼフリンを発現している同時形質転換された細胞につながる場合、認められた免疫反応型の大半(>60%)は、完全にプロセシングされた(「成熟型」)インスリンであった。
【0050】
最近、Barryら(Human Gene Therapy、12: 131 (2001年1月20日))は、フリン-切断可能なヒトプロインスリンの発現を可能にするようにそのプロテアーゼ切断部位で変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、フリン-切断可能なヒトプロインスリンの構成的発現を駆動するウイルスLTRプロモーター、マウスのフリンcDNAをコードしているヌクレオチド配列、マウスフリンcDNAの転写のヒトのトランスフォーミング増殖因子αプロモーター、並びに細菌ネオマイシンリン酸塩をコードしている選択可能なヌクレオチド配列であり、そのようなヌクレオチド配列の転写は、SV40プロモーターにより構成的に促進され、かつLTRプロモーター-エンハンサーにより増強されるものを含むベクターの構築を報告している。このような構築体を用いて、血管平滑筋を形質転換し、形質転換された細胞は、プロインスリンに加え成熟型インスリンの両方を分泌することが認められた。このような構築体により形質転換されたインスリン-分泌細胞を受け取っている糖尿病ラットは、正常なインスリンレベルを得るために著しく少ないインスリンを必要としている。低グルコース馴化培地における成熟型インスリン分泌のほぼ3-倍の増加が、高グルコース培地における細胞増殖と比べて認められた。
【0051】
本発明は、Groskreutzら(J. Biol. Chem. 269:6241 (1994))、Vollenweiderら(Diabates、44: 1075 (1995))、及びBarryら(Human Gene Therapy、12: 131 (2001年1月20日))の構築体及びのシステムに勝り、形質転換された細胞の、成熟型インスリン発現レベル、及びグルコース感受性の程度を大きく向上した。
本発明のひとつの局面において、本発明者らは予想外のことに、構成的プロモーターの制御下でプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、並びにグルコース-調節可能なプロモーターの制御下でヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列を含む、プロインスリン:フリン構築体により形質転換された細胞により産生された著しく増強されたインスリン:プロインスリンレベルを発見した。
【0052】
pSVLFur(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(「ATCC」))由来のpLHI*TFSNのマウスフリンヌクレオチド配列(Barryら、Human Gene Therapy、12: 131 (2001))に関して、本発明者らは、マウスフリンをコードしていない評判の(reputed)遺伝子配列の3'末端におよそ300bp配列があることを予想外に発見した。分析においてこのような塩基対配列は、追加のATG開始部位を含むルシフェラーゼ遺伝子コード領域の一部を含むように識別された。余分のATG部位の組込みは、転写効率を低下すると考えられる。このおよそ300bp配列の除去は、プロインスリンの成熟型インスリンへの転換を実質的に改善した。この配列の除去後、マウスフリンをコードしているヌクレオチド配列を含むベクターは、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列を代わりに含む同じ構築体とほぼ同じレベルで、HEK-293T細胞において成熟型インスリンを産生することが認められた。
【0053】
成熟型インスリン産生の更なる改善は、強力なプロモーター、特にCMVプロモーターを、変更されたプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列へ機能的に連結することにより発見された。CMVプロモーターのLTRプロモーター-エンハンサーへの機能的に連結は、形質転換された細胞に関して成熟型インスリン産生の非常に大きい増加を生じることがわかった。この変化の程度(100倍を超える)は完全に予想外であった。
図1を参照し、細胞の形質転換に有用な本発明の発現ベクター(pLChI*ThFSNと称される)が示されており、ここで:
・Lは、5' LTRプロモーター-エンハンサーであり;
・Cは、CMVプロモーターであり;
・hI*は、そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有しかつH10D変種を保持するように変更されたヒトプロインスリンをコードしているcDNAであり;
・Tは、ヒト又はマウスのTGF-αプロモーターであり;
・hFは、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列であり;
・Sは、SV40プロモーターであり;並びに
・Nは、選択可能なマーカー遺伝子である、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしているヌクレオチド配列である。
【0054】
表Iに認められるように、図1の発現ベクターは、10%FBS補充されたDMEM培地において増殖したHEK-293T細胞にトランスフェクションされた場合に、Barryらのベクター(Human Gene Therapy、12: 131 (2001))と比べ、このような構築体がヒト又はマウスのフリンを発現するようにデザインされたかどうかに関わらず、成熟型インスリンの濃度の2桁の大きさの増大を生じた。pLhI*TFSNの概略的説明を図3に示しており、ここでINSは、そのB-C及びC-A連結部でフリン切断可能部位を有しかつH10D変種を有するように変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列であり、Furinは、ヒトフリンのヌクレオチド配列であり、及びNeoRは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしているヌクレオチド配列である。
【0055】
表I
Figure 2005501530
【0056】
図2は、図1の構築体に類似しているが、ここで3種の遺伝子の順番が変更され、Neo発現が5'LTRにより駆動されかつヒトインスリンの発現がCMVプロモーターにより駆動されるような、本発明の発現プラスミド(pLNChI*ThFと称される)を図示している。表Iに認められるように、図2の発現ベクターは、10%FBS補充されたDMEM培地において増殖したHEK-293T細胞にトランスフェクションされた場合に、pLNChI*6(親、フリンなし)と比べ21〜42倍の増加を、及びBarryらのベクターと比べ少なくとも17倍の増加を生じた。
本発明者らは、更にBarryらのレトロウイルスベクター(Human Gene Therapy、12:131 (2001))よりも、成熟型インスリンの著しく高量を産生するLTR配列を欠いている非-ウイルス構築体をデザインした。このような構築体において、以下が提供される:(a)B-C及びC-A連結部にフリン-切断可能部位を組込むように変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、変更されたヒトプロインスリンヌクレオチド配列の3'側のポリアデニル化部位、並びに変更されたヒトプロインスリンヌクレオチド配列に機能的に連結されたプロモーターを含む、プロインスリン発現カセット;(b)プロインスリン発現カセットによりコードされたプロインスリンの変更された部位の切断が可能であるヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列の3'側のポリアデニル化部位、並びにプロモーターを含むヒトフリン発現カセット;並びに、(c)選択可能なマーカー、及びこのような選択可能なマーカーのプロモーターを含むヌクレオチド配列を含む選択可能なマーカー発現カセット。ある態様において、変更されたヒトプロインスリンの発現を駆動するプロモーターは、CMVである。別の態様において、ヒトフリンの発現を駆動するプロモーターは、TGF-αである。好ましい態様において、選択可能なマーカーは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼであり、これは、細胞の、G418を含有する培養培地における増殖を可能にするであろう。別の好ましい態様において、選択可能なマーカーのプロモーターは、SV40である。更に好ましくは、選択可能なマーカー配列がポリアデニル化部位の3'側にあることである。
【0057】
図4を参照し、細胞の形質転換に有用な、本発明の発現ベクター(pcDNAChI*ThFSNと称される)が示され、ここで:
・Cは、CMVプロモーターであり;
・hI*は、B-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有しかつH10D変種を保持するように変更されたヒトプロインスリンをコードしているcDNAであり;
・Tは、ヒト又はマウスのTGF-αプロモーターであり;
・hFは、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列であり;
・Sは、SV40プロモーターであり;
・Nは、選択可能なマーカー遺伝子である、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしているヌクレオチド配列であり;並びに、
・SV40 ポリAは、ポリアデニル化配列である。
表IIに示されるように、ウイルスプロモーター/エンハンサー及び転写開始部位として使用するための構築体中にLTR部位はないが、組織培養培地中で増殖されたHEK-293T細胞におけるインスリン産生は、このような構築体がヒト又はマウスフリンを発現するように構築されたかどうかに関わらず、Barryらの構築体(Human Gene Therapy、12: 131 (2001))において認められたものよりも3桁大きいものが認められた。
【0058】
表II
Figure 2005501530
【0059】
本発明者らは、更に、プロインスリン発現カセットを含む非-ウイルス構築体及びヒトフリン発現カセットを含む非-ウイルス構築体をデザインした(図5)。プロインスリン構築体において、このプロインスリン発現カセットは、そのB-C及びC-A連結部にフリン-切断可能部位を組込むように変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列、変更されたヒトプロインスリンヌクレオチド配列の3'側のポリアデニル化部位、変更されたヒトプロインスリンヌクレオチド配列に機能的に連結されたプロモーター;並びに、選択可能なマーカーを含むヌクレオチド配列、及びこのような選択可能なマーカーのプロモーターを含む1個又は複数の選択可能なマーカー発現カセットを含む。フリン構築体において、ヒトフリン発現カセットは、プロインスリン発現カセットでコードされたプロインスリンを変更された部位で切断することが可能であるヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列の3'ポリアデニル化部位、及びプロモーター;並びに、選択可能なマーカーを含むヌクレオチド配列、及びこのような選択可能なマーカーのプロモーターを含む、1種又は複数の選択可能なマーカー発現カセットを含む。好ましくはこの構築体は、1個又は複数のポリアデニル化部位を含む。
【0060】
変更されたプロインスリンカセットを含む構築体は、インスリン遺伝子の発現を駆動する特定のプロモーターの能力を決定する点で有用であることができる。更に、変更されたプロインスリンカセット又はフリンを含む構築体を使用し、あるもののコピー又は他の遺伝子を、選択された細胞へ追加することができる。例えば、細胞は、hI*プラスミドのトランスフェクションにより付与された、マーカー、例えばゲンチシン(G418)、並びにフリンプラスミドのトランスフェクションにより付与された異なるマーカー、例えばハイグロマイシンBなどに対するそれらの耐性について選択することができる。このプラスミドは、いずれかの構築体において選択可能なマーカー(複数)が代わりのマーカーで交換され得るように、構築することができる。選択マーカーは、ゲンチシン、ハイグロマイシンB、プロマイシン、ゼオシン及びアンピシリンを含むが、これらに限定されるものではない。変更されたプロインスリンカセット又はフリンを含むプラスミドは、異なるマーカーに対し既に耐性である細胞にトランスフェクションし、hI*又はフリン遺伝子のコピーを複製する細胞を作成することができる。
表IIIに認められるように、インスリン発現は、下記プロモーターにより駆動された:CMV、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、及び伸長因子1(EF1)、一方上皮増殖因子(EGF)、ヒトインスリンプロモーター(HIP)、及びホスホエノールピルビン酸キナーゼ(PEP)はほとんど作用が無かった。
【0061】
表III
Figure 2005501530
【0062】
実施例1:pLhI*ThFSNの作成
マウスFurin遺伝子を含むベクター、pLhI*TFSN(図3)は、William R.A. Osborne(ワシントン大学、シアトル、WA)から入手した。ヒトフリンcDNAは、ATCCから購入した。
pLhI*TFSNにおいて、フリン-切断可能なヒトインスリン(hI*)は、ウイルス5'LTR (L)により駆動される。ヒトインスリンの天然のコード配列は、フリンによる切断される部位を挿入しかつインスリン受容体により高い親和性で結合するインスリン(H10D変種)を得るために変更される。変更されたインスリンは、hI*と称され、これは生物学的に不活性のプロインスリンとして構成的に産生され、これは、マウスFurin(mF)によるタンパク質分解性プロセシングにより、活性インスリンであるようにプロセシングされる。mFの発現は、グルコース-反応性TGF-αプロモーターにより駆動されるので、これはグルコース濃度によって決まる。このベクターは同じく、導入された細胞を選択するために、SV40プロモーターにより駆動されたネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子も含む。
【0063】
pLhI*TFSNの配列上で、mFの第一の開始部位(ATG)の前にいくつかの未定義の配列が存在することは注目された。この未定義の配列において、フリン翻訳のために開始ATGの前に少なくとも2個以上のATGコドンが存在することが、引き続き発見された。これは、TGF-αプロモーターの制御下にある、より多くのオープンリーディングフレーム(ORF)を追加している。これは、mFの最適下限の(suboptimal)発現につながる可能性がある。この未定義の配列を取り除き、かつhFでmFを交換する戦略をとった。.
pLhI*TFSNは、BamHI及びSalIで消化した。この消化は、下記の5種の断片を生じた:6226:pLhI*TFSN:BamHI(6021)-SalI(2013);2406:pLhI*TFSN:BamHI(2814)-BamHI(5220);801:pLhI*TFSN:BamHI(5220)-BamHI(6021);778:pLhI*TFSN:SalI(2036)-BamHI(2814);23:pLhI*TFSN:SalI(2013)-SalI(2036)。SN、3' LTR、レトロ-ウイルス骨格及び5'LTR及びフリン-切断可能なヒトインスリンを含む6226bp断片が単離された。次にこの断片は、脱リン酸化し、ベクターとして使用した。
【0064】
ヒトフリンは、鋳型としてATCCからのヒトフリンcDNAを用い、PCR-増幅した:
・hFurin(フォワードプライマー) (SalI (GTC GAC)及びSnaB1 (TAC GTA) 制限部位に加えコザック配列 CCACCATGGを含むプライマー):
5' AAA GTC GAC TAC GTA CCA CCA TGG AGC TGA GGC CCT T 3' (配列番号:1)
・hFurin(リバースプライマー) (BclI (TGA TCA)及びBsiWI (CGT ACG) 制限部位を含むプライマー)
5' AAA TGA TCA CGT ACG TCA GAG GGC GCT CTG GTC TT 3' (配列番号:2)
この産物は、PCR-増幅しかつ精製し、その後BclI及びSalIで消化し、かつ先に作成されたpLhI*TFSNのBamHI/SalI-消化した6226断片へサブクローニングし、TGF-αプロモーターを伴わない、プラスミドpLhI*hFSNを作成した。これは、ClaI/SalI又はClaI/SnaBIで消化し、ゲル精製し、かつリン酸化し(phosphatase)、次工程のレシピエント断片として使用した。
【0065】
TGF-αプロモーターは、鋳型としてpLhI*TFSNを用い、PCR増幅した。
・TGFp1(フォワードプライマー) (ClaI (ATC GAT)及びHpaI (GTT AAC) 制限部位を含むプライマー):
5' AAA ATC GAT GTT AAC AGC TCC GGG TCA CTG GAG AA 3' (配列番号:3)
・TGFp2(リバースプライマー) (SalI(GTC GAC)及びSnaBI(TAC GTA) 制限部位を含むプライマー):
5'AAA GTC GAC TAC GTA GGC GGA GCG GCG CCG CGG TG 3' (配列番号:4)
この産物は、PCR-増幅しかつ精製し、その後(ClaI及びSalI)又は(ClaI及びSnaBI)のいずれかにより消化した。その後、ClaI/SalI又はClaI/SnaBI-消化したpLhI*hFSNにサブクローニングし、プラスミドpLhI*ThFSNを作成した(図3)。この構築体は、この戦略を用いて作成し、配列をチェックし、かつ一過性トランスフェクションにおけるインスリン産生についてHEK-293T細胞において試験した。この一過性トランスフェクションの結果は、表Iに示した。
【0066】
実施例2:pLChI*ThFSNの作成
ヒト突然変異体インスリンを、pcDNA 3.1 (InVitrogen社)ベクターにサブクローニングし、ここでヒトインスリンは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で発現され(pcDNAChI*pA)、このベクターは3'末端にポリA部位を含んでいる。この構築体は、HEK-293T細胞において一過性に発現された場合に、より高レベルのインスリン産生を生じた。このベクターpLhI*ThFSNは更に、下記のような、CMVプロモーターの制御下でヒトインスリンの発現を駆動するように修飾した:
pcDNA-ChI*は、MfeI及びEcoRVで消化した。この消化は、ふたつの断片を生じた;4642:pCDNA-ChI*:EcoRV(1312)-MfeI(162);及び、1150:pCDNA-ChI*:MfeI(162)-EcoRV(1312)。この1150bp断片を単離し、このような断片は、CMVプロモーター及びヒトインスリンを含んだ。
pLhI*ThFSNは、EcoRIで消化し、これは、下記のふたつの断片を生じた:9360:pLhI*ThFSN(BI6.1.1):HpaI(2012)-EcoRI(1645);及び、367:pLhI*ThFSN(BI6.1.1):EcoRI(1645)-HpaI(2012)。この9360bp断片を単離し、このような断片は、ヒトインスリンを除く全ベクターを含んだ。この断片は、脱リン酸化し、かつレシピエント断片として使用し、pcDNAChI*の1150bp断片にクローニングした。この戦略を用いて作成された構築体は、pLChI*ThFSNと称された。この配列をチェックし、かつ一過性トランスフェクションでのHEK-293T細胞におけるインスリン産生について試験した。この一過性トランスフェクションの結果は、表Iに示した。
【0067】
実施例3:非-ウイルスベクターの作成
非-ウイルスベクターにおける3種全ての遺伝子を発現するために、各コード配列は、コード配列の3'末端でポリAシグナルによりフランキングした。
PCR-増幅したヒトFurinは、pcDNA3.1にサブクローニングし、pcDNAhFを作出した。ヒトFurinは、鋳型としてATCCからのヒトフリンcDNAを用い、PCR-増幅した。
これらのプライマーは、下記のようであった:
・hFurin(フォワードプライマー) (このプライマーは、SalI (GTC GAC)及びSnaBI (TAC GTA) 制限部位に加えコザック配列 CCACCATGGを含む。):
5' AAA GTC GAC TAC GTA CCA CCA TGG AGC TGA GGC CCT T 3' (配列番号:1)
・hFurin (リバースプライマー) (このプライマーは、BclI (TGA TCA)及びBsiWI (CGT ACG) 制限部位を含む):
5' AAA TGA TCA CGT ACG TCA GAG GGC GCT CTG GTC TT 3' (配列番号:2)
【0068】
PCR-増幅産物は精製し、その後BclI及びSnaBIで消化し、次にBamHI/EcoRV-消化したpcDNA3.1へサブクローニングし、構築体pcDNAhFを作成した。
「ポリA-TGF-αプロモーター」は、pcDNAChI*にサブクローニングした。pCMV(script)hI*ThFSN3.1を、SalIで消化し、下記の断片を得た:
7000:pCMVhI*ThF SN 3.1:SalI(2670)-SalI(1074)
1596:pCMVhI*ThF SN 3.1:SalI(1074)-SalI(2670)
SV40ポリA部位及びTGF-αプロモーターを含んだ1569bp断片を単離した。pcDNAChI*を、XhoI(SalIと同等)で線状化し、かつこのベクターを脱リン酸化した。その後1596bp断片を、非-位置指定クローニングにおいてpcDNA ChI*へサブクローニングし(すなわち、挿入断片は、いずれかの方向であることができ、これは制限消化により同定することができる。)、hI*とTの間にポリ A部位を伴うpcDNAChI*Tを生じた。
【0069】
前記由来のpcDNAhFを、NotI及びAflIIで消化し、これは、下記の断片を生じた:
5356:pcDNAhF2:AflII(3368)-NotI(928)
2440:pcDNAhF2:NotI(928)-AflII(3368)
フリンコード領域を含む2440bp断片を単離した。
【0070】
pcDNAChI*Tを、NotI及びAflIIで消化し、ベクターを開き、このベクターをリン酸化(phosphatase)し、かつこの2440bpフリン断片をこのベクターにサブクローニングし、pcDNAChI*ThF(図4)を作成し、これは各hI*及びhFの3'末端にポリA部位を伴った。当初のベクターpcDNA3.1に存在するSN-ポリは、hFの3'末端であった。このベクターは、制限消化により分析し、かつ引き続きHEK-293T細胞における一過性トランスフェクションにおいて試験した。
【0071】
実施例:HEK-293T細胞株の一過性トランスフェクション
Effectene(商標)試薬(Qiagen社、バレンシア、CA)を用い、これらの細胞をトランスフェクションした。
細胞を計数し、かつ2.5x105個細胞/mlとなるように調節した。細胞を、2.5x105個細胞/60mmプレートとなるよう1.0mlの細胞を播種し、培地の容量を4.0mlとした。細胞を、一晩接着させ、集密度40〜60%とした。培地を細胞から除去し、プレート中の容積を1.5mlに減らした。1μg DNAを、滅菌したマイクロチューブへ合計150μlのDNA-濃縮緩衝液(EC緩衝液、Qiagen社)に添加した。エンハンサー(Qiagen社)8μlを、DNA/EC緩衝液に添加し、1秒間ボルテックスし、かつd2-5分間室温(RT)でインキュベーションした。
Effectene(商標)25μlを、各チューブに添加し、10秒間ボルテックスし、かつこれらのチューブを室温で5〜10分間静置した。その後培地1mlを添加し、かつ得られる混合液を、2回ピペットで上下し;DNA混合物を、細胞上に滴下した。この皿を、旋回することにより攪拌し、かつ細胞を37℃/5%CO2へ戻した。4時間後に、複合体を取り除き、かつ新鮮な培地2.0mlを添加した。細胞を24及び48時間で収集し、かつ上清のインスリンを評価した。
【0072】
当業者に理解されるように、多くの遺伝子操作された細胞株は、治療に十分なインスリンを分泌しないか、又はそのインスリン産生は適切に調節されない。若干の程度のグルコース調節されたインスリン産生が示されたほとんどの細胞株は、グルコース反応性プロモーターを用い、インスリン遺伝子を直接転写的に調節する。本発明者らの方法は、インスリン転写レベルよりもむしろ、プロインスリンプロセシングレベルで、インスリン産生を調節する前述のベクターを用い、細胞を操作する。このような構築体で形質転換された細胞は、成熟型インスリンを分泌するのみではなく、血管及び神経学的機能を有するC-ペプチドも産生するであろう。
インスリン-産生外来細胞に対する宿主防御作用を妨害するために先行技術において採用された免疫抑制剤の欠点のために、本発明者らは、免疫隔離装置において増殖について適合されたヒト細胞株を識別することを行った。
【0073】
免疫隔離装置は、栄養素の拡散を可能にする方法で細胞を収容するように構成され及び細胞に接触するように宿主の治療因子の分泌されているが、宿主の免疫攻撃から細胞を保護するような、生物に移植されるようにデザインされた装置である。多くの免疫隔離装置が提唱されている。
Dionneらの米国特許第5,869,077号(発行日:1999年2月9日)は、液体培地中に懸濁もしくはヒドロゲル又は細胞外マトリックスに固定された、細胞のような生物学的部分を含むコア、並びに単離された生物学的部分を含まず、かつ免疫学的攻撃から生物学的部分を保護するが患者とコアの間の分子の通過をもたらす分子量カットオフ値(有利には50kD〜2000kD)を有するような、過選択性(perselective)マトリックス又は膜の周囲又は末梢の領域を備えた、個体への長期移植に適した、生体適合性免疫隔離ビヒクルを開示している。このような装置のジャケットは、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルジフルオリド、ポリオレフィン、ポリスルホン及びセルロースのような材料から加工処理することができる。同様にPowersらのPCT/US99/08628号は、アルギン酸コーティング、及び半透過性ファイバーに播種された細胞を備える免疫隔離装置を開示している。市販の移植可能な免疫隔離装置は、TheraCyte(登録商標)(TheraCyte社、アービン、CA)である。この装置は、皮下又は腹腔内移植のためにデザインされており、かつ免疫抑制することなく同種細胞移植が可能であり、かつ通常の免疫抑制により異種移植片を保護すると言われている。この装置は、厚さ15μmであり、かつ孔径5μmを有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の外側血管形成(vascularizing)膜、並びに厚さ30μm及び孔径0.4μmを有する内側細胞非透過性PTFE膜を有する。この外側膜は、血管形成し、その結果生体移植可能な装置が通常遭遇する線維性被包の一般的問題点を防ぐと言われている。
本発明者らは、in vitro培養及び遺伝子修飾に良く適合され、かつ免疫隔離装置における増殖に良く適合されている多くのヒト細胞株を同定した。これらの細胞は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:
【0074】
表IV
Figure 2005501530
【0075】
これらの細胞株は、ATCCにより言及された個々の必要要件に応じて、遺伝的修飾時に培養されることが好ましい。
本発明は、好ましい態様について説明されているが、当業者は、添付された「特許請求の範囲」に定義された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び/又は修飾を行うことができることを容易に理解するであろう。本願明細書に引用された文献は、その全体本願明細書に参照として組入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、変更されたヒトプロインスリンの構成的発現を駆動するLTRプロモーター-エンハンサーに連結したCMVプロモーター、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列の転写を促進するTGF-αプロモーター、並びにネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neo)をコードしているヌクレオチド配列を含む選択可能なマーカー単位であり、その転写はSV40プロモーターにより促進されかつLTRにより増強されるものを含む、発現プラスミドを図示している。
【図2】図2は、図1の構築体に類似しているが、3種の遺伝子の順番が、Neo発現が5'LTRにより駆動されかつヒトインスリンの発現がCMVプロモーターにより駆動されるように変更されている、本発明の発現プラスミドを図示している。
【図3】図3は、発現プラスミドpLhI*TFSNの構築体を概略的に説明している。
【図4】図4は、図1の構築体に類似しているが、各構造遺伝子の3'側にポリアデニル化配列を含み、かつLTR反復配列を欠いている、本発明の発現プラスミドを図示している。
【図5】図5は、3'末端のポリ-A(1630-1636)により増強された、変更されたヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列(1109-1441)の構成的発現を駆動するCMVプロモーター(1-750)、それに続くその転写はSV40プロモーター(2394-2744)により促進されかつ3'末端のポリ-A(3667-3674)により増強されるNeo(2809-3603)、並びに第二のマーカー単位アンピシリン(Amp)(4126-4986)と1個のイントロン(890-1022)を含む、非-ウイルス発現プラスミド(上側構築体);並びに、3'末端のポリ-A(3692-3698)により増強された、ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列(1108-3492)の構成的発現を駆動するTGF-αプロモーター(1-1072)、それに続くその転写はSV40プロモーター(4456-4806)により促進されかつ3'末端のポリ-A(6082-6088)により増強されるハイグロマイシンB(Hygro)(4856-5893)、並びに第二のマーカー単位アンピシリン(Amp)(6708-7568)を含む、非-ウイルス発現プラスミド(下側構築体)を図示している。

Claims (59)

  1. 成熟型ヒトインスリンを産生するように細胞を形質転換するための組換えベクターであり、該組換えベクターが:
    a. LTRプロモーター/エンハンサー;
    b .該第一のLTRプロモーターへ機能可能に連結された第二のプロモーター;及び
    c. そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有する、ヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトプロインスリンヌクレオチド配列の転写が、該第一のLTRプロモーター/エンハンサー及び該第二のプロモーターにより駆動されるものを含む、組換えベクター。
  2. 前記第二のプロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、及び伸長因子1(EF1)からなる群より選択される、請求項1記載の組換えベクター。
  3. 前記ヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列が、野生型ヒトプロインスリン及び野生型ヒトプロインスリンと比べH10D変種を有するヒトプロインスリンからなる群より選択されるヒトプロインスリンをコードしている、請求項1記載の組換えベクター。
  4. 更に、a. グルコース-調節可能なプロモーター;及び
    b. ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトフリンヌクレオチド配列が、該グルコース-調節可能なプロモーターにより駆動されるものを含む、請求項1記載の組換えベクター。
  5. グルコース-調節可能なプロモーターが、TGF-αプロモーターである、請求項4記載の組換えベクター。
  6. 更に、構成的プロモーター;
    該構成的プロモーターに機能可能に連結された選択可能なマーカー遺伝子;及び
    該選択可能なマーカー遺伝子に機能的に連結された第二のLTRプロモーター/エンハンサーを含み;
    ここで該構成的プロモーター及びLTRプロモーター/エンハンサーが、該選択可能なマーカー遺伝子の構成的発現を駆動する、請求項4記載の組換えベクター。
  7. 前記選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼである、請求項4記載の組換えベクター。
  8. 前記構成的プロモーターが、SV40プロモーターである、請求項6記載の組換えベクター。
  9. 細胞におけるインスリン産生を誘導する発現システムであり、該システムが:
    (a)下記を含む第一の発現カセット:
    1. LTRプロモーター/エンハンサー;
    2. 該第一のLTRプロモーターに機能可能に連結されたCMVプロモーター;及び
    3. そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトプロインスリンヌクレオチド配列の転写が、該第一のLTRプロモーター及び該CMVプロモーターにより駆動されるもの、
    (b)下記を含む第二の発現カセット:
    1. グルコース-調節可能なプロモーター;及び
    2. ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトフリンヌクレオチド配列は、該グルコース-調節可能なプロモーターにより駆動されるもの、
    (c)下記を含む第三の発現カセット:
    (1)選択可能なマーカー遺伝子をコードしているヌクレオチド配列;及び
    (2)該選択可能なマーカー遺伝子に機能的に連結された該選択可能なマーカー遺伝子の構成的プロモーターを含む、発現システム。
  10. 前記第一の発現カセットのヒトプロインスリンをコードしている該ヌクレオチド配列が、野生型ヒトプロインスリン又は野生型ヒトプロインスリンと比べH10D変種を有するヒトプロインスリンからなる群より選択されるヒトプロインスリンをコードしている、請求項9記載の発現システム。
  11. 前記第一及び第二の発現カセットが連結されている、請求項9記載の発現システム。
  12. 前記第一及び第三の発現カセットが連結されている、請求項9記載の発現システム。
  13. 前記第二及び第三の発現カセットが連結されている、請求項9記載の発現システム。
  14. 前記第一、第二及び第三の発現カセットが連結されている、請求項9記載の発現システム。
  15. 前記第一及び第二の発現カセットが、個別のレプリコン中にパッケージングされ、かつここで該第一及び該第二の発現カセットが、各々該第三の発現カセットに連結されているが、少なくとも異なる該第三の発現カセットの選択可能なマーカー遺伝子を含む、請求項9記載の発現システム。
  16. 前記第三の発現カセットが更に、LTRプロモーター/エンハンサーを含む、請求項9記載の発現システム。
  17. 前記第二の発現カセットの該グルコース-調節可能なプロモーターが、TGF-αプロモーターである、請求項9記載の発現システム。
  18. 前記第三の発現カセットの該選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしているヌクレオチドである、請求項9記載の発現システム。
  19. 前記第三の発現カセットの該選択可能なマーカー遺伝子の該構成的プロモーターが、SV40プロモーターである、請求項9記載の発現システム。
  20. 成熟型ヒトインスリンを産生するように細胞を形質転換するためのLTRを含まない組換えベクターであり、該組換えベクターが:
    プロモーター;
    そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトプロインスリンヌクレオチド配列の転写が、該プロモーターにより駆動されるもの;並びに
    ヒトプロインスリンをコードしている該ヌクレオチド配列に3'側で連結されたポリアデニル化配列を含む、組換えベクター。
  21. 前記プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、及び伸長因子1(EF1)からなる群より選択される、請求項20記載の組換えベクター。
  22. 前記ヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列が、野生型ヒトプロインスリン及び野生型ヒトプロインスリンと比べH10D変種を有するヒトプロインスリンからなる群より選択されるヒトプロインスリンをコードしている、請求項21記載の組換えベクター。
  23. グルコース-調節可能なプロモーター;
    ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトフリンヌクレオチド配列が、該グルコース-調節可能なプロモーターにより駆動されるもの;及び
    ヒトフリンをコードしている該ヌクレオチド配列に3'側で連結したポリアデニル化配列を含む、請求項21記載の組換えベクター。
  24. グルコース-調節可能なプロモーターが、TGF-αプロモーターである、請求項23記載の組換えベクター。
  25. 更に、構成的プロモーター;及び
    該構成的プロモーターに機能可能に連結された選択可能なマーカー遺伝子を含む、請求項23記載の組換えベクター。
  26. 前記選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼである、請求項25記載の組換えベクター。
  27. 前記構成的プロモーターが、SV40プロモーターである、請求項25記載の組換えベクター。
  28. ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしている該ヌクレオチド配列に3'側で連結したポリアデニル化配列を含む、請求項25記載の組換えベクター。
  29. 細胞におけるインスリン産生を誘導する発現システムであり、該システムが:
    (a)下記を含む第一の発現カセット:
    1. CMVプロモーター;
    2. そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトプロインスリンヌクレオチド配列の転写が、該CMVプロモーターにより駆動されるもの;並びに
    3. ヒトプロインスリンをコードしている該ヌクレオチド配列に3'側で連結したポリアデニル化配列;
    (b)下記を含む第二の発現カセット:
    1. グルコース-調節可能なプロモーター;及び
    2. ヒトフリンをコードしているヌクレオチド配列であり、該ヒトフリンヌクレオチド配列は、該グルコース-調節可能なプロモーターにより駆動されるもの、
    3.ヒトフリンをコードしている該ヌクレオチド配列の3'側のポリアデニル化配列;
    (c)下記を含む第三の発現カセット:
    (1)選択可能なマーカー遺伝子をコードしているヌクレオチド配列;
    (2)該選択可能なマーカー遺伝子に機能的に連結された該選択可能なマーカー遺伝子の構成的プロモーター;及び
    (3)該選択可能なマーカー遺伝子をコードしている該ヌクレオチド配列の3'側のポリアデニル化配列を含む、発現システム。
  30. 前記第一の発現カセットの該ヒトプロインスリンをコードしているヌクレオチド配列が、野生型ヒトプロインスリン及び野生型ヒトプロインスリンと比べH10D変種を有するヒトプロインスリンからなる群より選択されるヒトプロインスリンをコードしている、請求項29記載の発現システム。
  31. 前記第一及び第二の発現カセットが連結されている、請求項29記載の発現システム。
  32. 前記第一及び第三の発現カセットが連結されている、請求項29記載の発現システム。
  33. 前記第二及び第三の発現カセットが連結されている、請求項29記載の発現システム。
  34. 前記第一、第二及び第三の発現カセットが連結されている、請求項29記載の発現システム。
  35. 前記第一、第二及び第三の発現カセットが、個別の形質転換ベクターにパッケージングされている、請求項29記載の発現システム。
  36. 前記第二の発現カセットの該グルコース-調節可能なプロモーターが、TGF-αプロモーターである、請求項29記載の発現システム。
  37. 前記第三の発現カセットの該選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしているヌクレオチドである、請求項29記載の発現システム。
  38. 前記第三の発現カセットの該選択可能なマーカー遺伝子の該構成的プロモーターが、SV40プロモーターである、請求項29記載の発現システム。
  39. 請求項1記載の組換えベクターによりインスリンを産生するように形質転換された細胞。
  40. 請求項6記載の組換えベクターによりインスリンを産生するように形質転換された細胞。
  41. 請求項9記載の発現システムによりインスリンを産生するように形質転換された細胞。
  42. 請求項20記載のLTRを含まない組換えベクターによりインスリンを産生するように形質転換された細胞。
  43. 請求項25記載のLTRを含まない組換えベクターによりインスリンを産生するように形質転換された細胞。
  44. 請求項29記載の発現システムを使用しインスリンを産生するように形質転換された細胞。
  45. そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしている遺伝子、並びにヒトフリンをコードしている遺伝子を含む操作された細胞であり、ここで両遺伝子は、組換え遺伝子であり、かつこの細胞は、該遺伝子が組換えベクターにより細胞へ導入された場合に、グルコースに反応してインスリンを分泌する、操作された細胞。
  46. ヒトプロインスリン遺伝子がcDNAである、請求項45記載の操作された細胞。
  47. 組換えヒトフリン遺伝子がcDNAである、請求項45記載の操作された細胞。
  48. 形質転換された細胞が、HEPM、U-2 OS、A-498、NCI-H441、SHP-77からなる群より選択される、請求項45記載の操作された細胞。
  49. 請求項47記載の該操作された細胞に由来した細胞。
  50. 真性糖尿病を治療する方法であり、該方法が、免疫隔離装置において遺伝的に操作された細胞を、それが必要な患者に投与する工程を含み、ここで該細胞は、そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしている構造遺伝子、並びに該プロインスリン構造遺伝子に機能的に連結された構成的プロモーターを含む第一のDNAセグメント、並びに、ヒトフリンをコードしている構造遺伝子及び該フリン構造遺伝子に機能的に連結されたグルコース-調節可能なプロモーターを含む第二のDNAセグメントを導入することにより操作され、ここで該第一及び第二のDNAセグメントは、該患者における治療有効量のインスリンの発現に有効である、方法。
  51. 前記DNAセグメントが、1種又は複数のベクターの完全な部分である、請求項50記載の方法。
  52. 前記DNAセグメントが、細胞において該患者に導入され、該細胞が該DNAセグメントを組込むようにin vitroにおいて処置されている、請求項50記載の方法。
  53. 前記細胞が、免疫特権化された細胞工場により患者に導入される、請求項52記載の方法。
  54. 前記細胞が、該患者の組織へ直接注入される、請求項52記載の方法。
  55. 前記細胞が、新生-器官において該患者へ導入される、請求項52記載の方法。
  56. 真性糖尿病の個体の治療法であり、該方法が:
    (a)そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリン遺伝子、並びに該ヒトプロインスリン遺伝子に機能的に連結された構成的プロモーターをコードしている核酸、並びにヒトフリン及び該ヒトフリン遺伝子に機能的に連結されたグルコース-調節可能なプロモーターをコードしている核酸を、細胞へ導入する工程;
    (b)個体の真性糖尿病を改善するために、工程(a)の細胞を、個体へ移植する工程からなる、方法。
  57. 選択的透過膜内に配置された治療有効量の細胞集団をインスリン分泌能が必要な哺乳類へ移植することを含む、哺乳類へグルコース-反応性インスリン分泌能を提供する方法であり、該細胞集団が、グルコースに反応してインスリンを分泌する操作された細胞を含み、この操作された細胞が、そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリン遺伝子をコードしている核酸、該ヒトプロインスリン遺伝子に機能的に連結された構成的プロモーター、ヒトフリンをコードしている核酸、並びに該ヒトフリン遺伝子に機能的に連結されたグルコース-調節可能なプロモーターを含む、方法。
  58. ヒトインスリン産生法であり、この方法が:
    (a)ヒトインスリンを分泌する細胞を培養する工程であり、この細胞が、そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしている遺伝子並びにヒトフリンをコードしている遺伝子を含み、ここで少なくとも両方の遺伝子が、組換えベクターにより細胞に導入される組換え遺伝子である、工程;
    (b)該細胞を刺激し、インスリンを分泌する工程;
    (c)分泌されたインスリンを収集する工程を含む、方法。
  59. ヒトインスリン産生法であり、この方法が:
    (a)グルコースに反応してヒトインスリンを分泌する細胞を得る工程であり、この細胞が、そのB-C及びC-A連結部にフリン切断可能部位を有するヒトプロインスリンをコードしている遺伝子並びにヒトフリンをコードしている遺伝子を含み、ここで少なくとも両方の遺伝子が、組換えベクターにより細胞に導入される組換え遺伝子である、工程;
    (b)工程(a)の細胞を培養培地において増殖する工程;
    (c)該細胞をグルコース-含有緩衝液と、該細胞が反応するのに十分な期間接触する工程;
    (d)該細胞と接触している培地を収集する工程;及び
    (e)収集した培地からヒトインスリンを精製する工程を含む、方法。
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