JP2005350567A - 炭化水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐熱多層金属管を用いて炭化水素原料ガスを熱分解させる場合において、稼働条件を最適化し、炭化水素の製造コストを大幅に低減すること。
【解決手段】 本発明に係る炭化水素の製造方法は、耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層を形成した耐熱多層金属管からなる炉管を所定の温度に加熱し、前記炉管の内部に炭化水素原料ガスを供給し、該炭化水素原料ガスを熱分解させる熱分解工程と、前記炉管の内面に堆積した炭素を除去するデコーキング工程と、前記母管のみからなる炉管を用いて、同一条件下で前記熱分解を行った場合における前記母管の寿命より長い操業時間が経過したところで前記炉管の交換を行う炉管交換工程とを備えていることを特徴とする。
【選択図】 図6
【解決手段】 本発明に係る炭化水素の製造方法は、耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層を形成した耐熱多層金属管からなる炉管を所定の温度に加熱し、前記炉管の内部に炭化水素原料ガスを供給し、該炭化水素原料ガスを熱分解させる熱分解工程と、前記炉管の内面に堆積した炭素を除去するデコーキング工程と、前記母管のみからなる炉管を用いて、同一条件下で前記熱分解を行った場合における前記母管の寿命より長い操業時間が経過したところで前記炉管の交換を行う炉管交換工程とを備えていることを特徴とする。
【選択図】 図6
Description
本発明は、炭化水素の製造方法に関し、さらに詳しくは、ナフサなどの炭化水素原料ガスと水蒸気とを高温に加熱された炉管内に供給し、炭化水素原料ガスを熱分解させてエチレン、プロピレン等を製造する炭化水素の製造方法に関する。
従来、エチレンやプロピレン等の炭化水素は、ナフサ等の炭化水素原料ガスを熱分解させることにより製造されている。このような炭化水素原料ガスの熱分解には、一般に、全長数100m〜1000m程度の長さを有する炉管と、この炉管を外部から加熱する加熱手段とを備えた熱分解炉が用いられている。
熱分解炉を用いた炭化水素原料ガスの熱分解は、一般に、以下のような手順により行われる。すなわち、まず、所定の温度に加熱された炉管内に炭化水素原料ガス及び水蒸気を高速で供給する。加熱された炉管内に炭化水素原料ガス及び水蒸気が供給されると、炭化水素原料ガスが水蒸気によって熱分解され、エチレンやプロピレン等の目的とする炭化水素を含む分解ガスが生成する。
一方、炭化水素原料ガスの熱分解に伴い、副生成物として炭素(コーク)が生成し、炉管の内面に堆積する。炉管の内面に炭素が堆積すると炉管の熱伝導率が低下するので、加熱手段からの入熱量が一定である場合には、炭素の堆積に伴い、炉管の内部温度が徐々に低下する。分解ガスの組成は、主として分解温度(炉管の内部温度)に依存するので、目的とする炭化水素を一定の収率で製造するためには、分解温度を一定に保つ必要がある。通常は、炉管の表面温度(内部管表面温度(TMT))、管出口温度(COT)、単位時間当たりの原料投入量(以下、これを単に「原料投入量」という。)等を管理することによって、分解温度が一定に保たれている。
所定の条件下で一定期間、熱分解炉を連続稼働させると、炉管の内面に堆積した炭素の層が徐々に厚くなり、これに伴い炉管の圧力損失も増大する。圧力損失が無視できない大きさになったところで、稼働を中断し、炉管の内面に堆積した炭素の除去(デコーキング)を行う。デコーキングは、通常、炉管内に水蒸気のみを供給し、炭素を燃焼除去することにより行われる。
炭化水素原料ガスの熱分解は、このような一定期間の連続稼働とデコーキングとを繰り返すことにより行われる。炉管は、その内面に炭素が堆積した状態で高温に曝されるため、時間の経過に伴い炉管の内部に炭素が拡散し、徐々に劣化する。そのため、ある一定の操業時間が経過したところで、稼働を停止し、炉管の交換を行う。
ところで、エチレン分解炉において、高価なエチレン及びプロピレンの収率を上げることは長年の課題となっている。過去、エチレンの収率を上げるために、主に分解温度を高くする工夫がなされてきた。そのため、炉管については、従来用いられていたステンレス鋼管(例えば、SUS304、SUS310等)に代えて、現在では高温強度の高い耐熱遠心鋳造管が用いられるようになっている。その結果、分解温度は、760〜780℃から800〜920℃まで上昇している。
しかしながら、現在も収率を上げるための開発、努力が続いているが、炉管の材質についてはほぼ限界に近くなっている。そのため、従来の材料からなる炉管を用いて分解温度を上げようとすると、炉管への浸炭が短時間で進行し、脆化による折損等の炉管短寿命が懸念される。一方、分解温度をさらに上げるために、TD−Ni合金、TD−Ni−Cr合金等の粒子分散強化合金(ODS合金)やセラミックスなどの使用も検討されているが、これらの材料は非常に高価であり、商業的な使用は困難と考えられている。
そこでこの問題を解決するために、特許文献1には、耐熱性金属の内面及び/又は外面にCr−Ni−Mo系合金の肉盛層を形成した耐熱多層金属管が本願出願人により提案されている。また、特許文献2には、耐熱性金属の内面及び/又は外面に、Crを35wt%以上含有し、Ni%≧0.5Cr%であるCr−Ni合金の肉盛り層を形成した耐熱多層金属管が開示されている。特許文献1、2には、炉管としてこのような耐熱多層金属管を用いることによって、耐コーキング性が向上する点が記載されている。
特許文献1、2に開示された耐熱多層金属管は、耐熱性及び耐コーキング性に優れている。一方、耐熱多層金属管は、肉盛溶接法等を用いて炉管の内面に表面層を形成する必要があるので、耐熱金属のみからなる従来の炉管に比べて高コストとなる。従って、耐熱多層金属管の特性を最大限に引き出すためには、熱分解炉における稼働条件を最適化する必要がある。しかしながら、このような耐熱多層金属管に適した操業方法が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、このような耐熱多層金属管を用いて炭化水素原料ガスを熱分解させる場合において、稼働条件を最適化し、炭化水素の製造コストを大幅に低減することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る炭化水素の製造方法は、耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層を形成した耐熱多層金属管からなる炉管を所定の温度に加熱し、前記炉管の内部に炭化水素原料ガスを供給し、該炭化水素原料ガスを熱分解させる熱分解工程と、前記炉管の内面に堆積した炭素を除去するデコーキング工程と、前記母管のみからなる炉管を用いて、同一条件下で前記熱分解を行った場合における前記母管の寿命より長い操業時間が経過したところで前記炉管の交換を行う炉管交換工程とを備えていることを要旨とする。
炉管として、耐熱多層金属管を用いると、炉管の耐熱性及び耐コーキング性が向上する。そのため、炉管の寿命は、耐熱金属のみからなる従来の炉管より長くなる。
また、耐熱多層金属管を用いると、炉管の寿命を大幅に低下させることなく内部管表面温度の上限値を高くすることができる。その結果、原料投入量を同一とした場合、デコーキングまでの稼働時間を従来より長くすることができる。一方、デコーキングまでの稼働時間を同一とした場合、原料投入量を従来より増加させることができる。
また、耐熱多層金属管を用いると、炉管の寿命を大幅に低下させることなく内部管表面温度の上限値を高くすることができる。その結果、原料投入量を同一とした場合、デコーキングまでの稼働時間を従来より長くすることができる。一方、デコーキングまでの稼働時間を同一とした場合、原料投入量を従来より増加させることができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
初めに、耐熱多層金属管について説明する。本発明において、耐熱多層金属管とは、耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層が形成されたものをいう。
初めに、耐熱多層金属管について説明する。本発明において、耐熱多層金属管とは、耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層が形成されたものをいう。
母管は、炭化水素原料ガスの熱分解温度に耐えうる耐熱性を有する耐熱金属からなる。
母管を構成する耐熱金属としては、具体的には、
(1)8%以上のCrを含有する鉄基合金(例えば、SUS304、SUS310等のステンレス鋼)、
(2)耐熱鋳鋼(例えば、HK材(25Cr−20Ni)、HP材(25Cr−35Ni)、HP−Nb材(25Cr−35Ni−Nb)等)、
(3)Ni基超合金(例えば、Inconel600H等)、
などが挙げられる。これらの中でも、耐熱鋳鋼からなる遠心鋳造管は、高い耐熱性を有し、かつ、相対的に低コストであるので、母管として好適である。
母管を構成する耐熱金属としては、具体的には、
(1)8%以上のCrを含有する鉄基合金(例えば、SUS304、SUS310等のステンレス鋼)、
(2)耐熱鋳鋼(例えば、HK材(25Cr−20Ni)、HP材(25Cr−35Ni)、HP−Nb材(25Cr−35Ni−Nb)等)、
(3)Ni基超合金(例えば、Inconel600H等)、
などが挙げられる。これらの中でも、耐熱鋳鋼からなる遠心鋳造管は、高い耐熱性を有し、かつ、相対的に低コストであるので、母管として好適である。
母管の外径及び肉厚は、特に限定されるものではなく、母管の材質、熱分解炉の構造、熱分解条件、炭化水素原料ガスの種類等に応じて最適なものを選択する。例えば、ナフサを熱分解し、エチレン、プロピレン等を製造する場合、一般に、内径が2〜4インチ(50.8〜101.6mm)程度、肉厚が9〜11mm程度の炉管が用いられる。
表面層は、Cr−Ni合金からなる。所定の組成を有するCr−Ni合金は、高い耐熱性と、耐浸炭性(耐コーキング性)に優れているので、母管の内面を保護する表面層として好適である。
Crは、表面層の耐酸化性を高める上で必要であるとともに、耐コーキング性を高めるためにきわめて重要な元素である。このような効果を得るためには、Cr量は、36wt%以上が好ましい。耐酸化性及び耐コーキング性は、いずれもCr量が多くなるほど高くなるが、Cr量が多くなりすぎると、オーステナイト組織が不安定になり、加工性が低下する。従って、Cr量は、49wt%以下が好ましい。Cr量は、さらに好ましくは、40〜47wt%である。
Niは、エチレン分解炉のように炉管が高温の使用環境に曝される場合において、炉管の組織を安定に維持し、かつ耐コーキング性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、Ni量は、35wt%以上が好ましい。Ni量が多くなるほど、組織は安定化するが、Ni量が多くなりすぎると、高コスト化を招く。従って、Ni量は、63wt%以下が好ましい。Ni量は、好ましくは、Cr量の0.5倍以上、さらに好ましくは、Cr量の1.0〜1.4倍である。
なお、Niの一部は、Coで置換することができる。Niの一部をCoで置換すると、耐コーキング性をさらに向上させることができる。但し、Coは、Niよりさらに高価であるので、Co量が多くなりすぎると、炉管が高コスト化する。従って、Coによる置換量は、Ni量の10wt%以下が好ましく、さらに好ましくは、Ni量の5wt%以下である。
また、表面層を構成するCr−Ni合金は、Cr及びNiのみからなるものでも良いが、Cr及びNiに加えて、さらに、Mo(5.0wt%以下)、B(0.015wt%以下)、Zr(0.015wt%以下)、REM(0.002wt%以下)、Si(1.5wt%以下)、Al(3.0wt%以下)等が含まれていても良い。これらの元素を適量添加することにより、溶接性の向上、溶着金属の割れ感受性の低下等の効果を得ることができる(特許文献2参照)。
また、高い耐コーキング性を確保するためには、Cr−Ni合金に含まれる不純物は、ある一定の量以下に規制することが望ましい。含有量を規制すべき合金元素としては、具体的には、Fe(10wt%以下、好ましくは5wt%以下)、C(0.1wt%以下)、N(0.3wt%以下)、Mn(1.5wt%以下)、P+S(0.02wt%以下)、O(0.3wt%以下)等がある(特許文献2参照)。
表面層の厚さは、少なくとも1.0mm以上が好ましい。表面層を肉盛り溶接により形成する場合、母材である耐熱金属管からFe等の不純物元素が肉盛層に混入するが、肉盛層の厚さが1.0mm未満になると、肉盛層の表面にこれらの不純物元素を含む層が形成される場合があるので好ましくない。
また、表面層を肉盛り溶接により形成する場合において、表面層の厚さが厚くなるほど、表面層の最表面部分に含まれる不純物元素の量が少なくなるので、耐コーキング性が向上する。しかしながら、表面層を厚くしすぎても、実益がなく、むしろ高コスト化を招く。従って、表面層の厚さは、5mm以下が好ましい。表面層を肉盛り溶接により形成する場合、表面層の厚さは、さらに好ましくは、1.5〜3.0mmである。
このような表面層を備えた耐熱多層金属管は、肉盛り溶接、HIP、CIP、爆発圧着、拡散接合、圧接等、種々の方法を用いて製造することができる。これらの中でも、プラズマ・トランスファー・アーク溶接法、特に、溶加材として粉末を用いるプラズマ・パウダー溶接法(PPW)が好適である。PPW法は、熱源として高温の熱プラズマを利用するため、基材表面を深く溶融させることがなく、基材金属による肉盛層の汚染を抑制することができる。また、溶加材として粉末を用いることができ、溶加材をワイヤやロッドの形状にする必要がないので、難加工材であっても容易に肉盛りすることができる。
次に、本発明に係る炭化水素の製造方法について説明する。本発明に係る炭化水素の製造方法は、熱分解工程と、デコーキング工程と、炉管交換工程とを備えている。
熱分解工程は、耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層を形成した耐熱多層金属管からなる炉管を所定の温度に加熱し、炉管の内部に炭化水素原料ガスを供給し、炭化水素原料ガスを熱分解させる工程である。
一般に、炭化水素原料ガスを熱分解させることにより得られる分解ガスの組成は、分解温度に依存する。例えば、ナフサを熱分解してエチレンを製造する場合、分解温度を約1000℃とすると、エチレンの収率は最大となる。一方、炉管の耐熱性は、母管の材質に制約される。従って、分解温度は、これらを考慮して最適な温度を選択するのが好ましい。例えば、エチレンを製造する場合において、炉管としてHP材等の耐熱鋳鋼を母管とする耐熱多層金属管を用いるときには、分解温度は、800℃〜920℃が好ましい。
熱分解初期には、炉管の内面に炭素が堆積していないので、炉管の表面温度(内部管表面温度。以下、これを「TMT」という。)が相対的に低い場合であっても、高い分解温度が得られる。一方、連続稼働を続けると、炉管の内面に炭素が堆積し、熱伝導率が低下するので、一定の分解温度に保つためには、TMTを上昇させる必要がある。実炉においては、分解温度が所定の温度に保たれるように、TMTや、管出口温度(以下、これを「COT」という)を用いて、炉管の温度管理が行われる。
また、TMTを用いて分解温度を管理する場合において、熱分解開始直後のTMT(以下、これを「初期TMT」という)は、目的とする分解ガスの組成、母管の材質、分解ガスの製造コスト等を考慮して、最適な温度を選択する。一般に、分解温度が一定である場合、初期TMTが高くなるほど、炉管への原料投入量を多くすることができる。
一方、一般に、初期TMTが高くなるほど、浸炭が加速されるので、炉管が短寿命化する。しかしながら、本発明においては炉管として耐熱多層金属管を用いているので、初期TMTを高くしても、母管のみからなる炉管に比べて、浸炭による劣化が著しく抑制される。
炉管として、母管が耐熱鋳鋼からなる耐熱多層金属管を用いた場合において、高い生産効率を得るためには、初期TMTは、具体的には、940℃以上が好ましく、さらに好ましくは、960℃以上、さらに好ましくは、980℃以上である。但し、初期TMTが高くなりすぎると、コーキングが著しくなり、あるいは、浸炭が加速されるので好ましくない。従って、初期TMTは、最も高い生産効率が得られるように、耐熱多層金属管の耐熱限界以下の温度において、最適な温度を選択するのが好ましい。
また、ある初期TMTで熱分解を開始した場合、TMTを徐々に上昇させながら稼働を続行し、TMTがある上限値(以下、これを「上限TMT」という)に達したところで、稼働を中断する。一般に、上限TMTが高くなるほど、デコーキングまでの稼働時間を長くすることができ、原料の投入量を多くすることができ、あるいは、分解温度を高くすることができるが、浸炭が加速され、炉管が短寿命化する。
しかしながら、本発明においては炉管として耐熱多層金属管を用いているので、炉管の寿命を大幅に低下させることなく、上限TMTを高くすることができる。炉管として、耐熱鋳鋼を母管とする耐熱多層金属管を用いた場合において、高い生産効率を得るためには、上限TMTは、具体的には、1120℃以上が好ましく、さらに好ましくは、1130℃以上、さらに好ましくは、1140℃以上、さらに好ましくは、1150℃以上である。但し、上限TMTが高くなりすぎると、炉管がクリープ変形し、あるいは、浸炭が加速されるので好ましくない。従って、上限TMTは、最も高い生産効率が得られるように、耐熱多層金属管の耐熱限界以下の温度において、最適な温度を選択するのが好ましい。
原料投入量は、初期TMT及び上限TMT、目的とする分解温度、耐熱多層金属管の耐熱限界、生産効率等に応じて、最適な量を選択する。一般に、分解温度が一定である場合、初期TMTが高くなるほど、原料投入量を多くすることができる。また、初期TMT及び上限TMTが一定である場合、原料投入量が少なくなるほど、分解温度を高く維持することができる。
熱分解を開始してからデコーキングを行うまでの時間(以下、これを「稼働時間」という)は、初期TMT及び上限TMT、原料投入量、耐熱多層金属管の耐熱限界、生産効率等に応じて、最適な時間を選択する。一般に、コーキングが発生しにくい条件で熱分解を行う場合、TMTの上昇率は小さいので、稼働時間を相対的に長くすることができる。一方、コーキングが発生しやすい条件で熱分解を行う場合、TMTの上昇率は大きくなるので、稼働時間は相対的に短くなる。
また、炭化水素原料ガスを熱分解させると、一般に、触媒コークと、サーマルコークの2種類が発生する。本発明においては、炉管として、所定の表面層が形成された耐熱多層金属管を用いているので、触媒コークの発生が抑制される。従って、相対的に穏やかな熱分解条件下では、コーキングが生じにくくなるので、母管のみからなる炉管に比べて、稼働時間を長くすることができる。
一方、相対的に過酷な熱分解条件下では、サーマルコークの発生量が多くなるので、稼働時間を長くする効果は小さくなる。しかしながら、表面層によって浸炭が抑制されるので、過酷な条件下で熱分解を行った場合であっても、母管のみからなる炉管に比べて、炉管寿命を大幅に増加させることができる。
図1(a)及び図1(b)に、TMTと稼働時間(R/L)との関係を示す。本発明においては、炉管寿命を大幅に短縮することなく、上限TMTを上昇させることができるので、生産効率を大幅に向上させることができる。
すなわち、図1(a)に示すように、初期TMT(TMT0)及び原料投入量が一定である場合、上限TMT(TMTmax)を上昇させることにより、稼働時間(R/L)を長くすることができる。
具体的には、上限TMTを上昇させることにより、稼働時間は、母管のみからなる炉管を用いて同一の初期TMT(又は、分解温度)で熱分解を行った場合の1.3倍以上とすることができる。また、熱分解条件を最適化すれば、稼働時間は、母管のみからなる炉管を用いた場合の1.8倍以上とすることができる。
すなわち、図1(a)に示すように、初期TMT(TMT0)及び原料投入量が一定である場合、上限TMT(TMTmax)を上昇させることにより、稼働時間(R/L)を長くすることができる。
具体的には、上限TMTを上昇させることにより、稼働時間は、母管のみからなる炉管を用いて同一の初期TMT(又は、分解温度)で熱分解を行った場合の1.3倍以上とすることができる。また、熱分解条件を最適化すれば、稼働時間は、母管のみからなる炉管を用いた場合の1.8倍以上とすることができる。
また、図1(b)に示すように、稼働時間(R/L)を同一に設定した場合、上限TMT(TMTmax)(及び、初期TMT(TMT0))を上昇させることにより、原料投入量を増加させることができる。
具体的には、上限TMTを上昇させることにより、原料投入量は、母管のみからなる炉管を用いて同一の稼働時間で熱分解を行う場合の1.05倍以上とすることができる。
具体的には、上限TMTを上昇させることにより、原料投入量は、母管のみからなる炉管を用いて同一の稼働時間で熱分解を行う場合の1.05倍以上とすることができる。
この場合、上限TMTの上昇に伴い、炉管の寿命は短くなる。しかしながら、いずれの場合においても、炉管の寿命は、母管のみからなる炉管を用いた場合の2倍以上、あるいは、熱分解条件によっては3倍以上となる。また、初期TMT及び上限TMTを上げることにより、デコーキング頻度を減少させることができ、あるいは、原料投入量を増加させることができるので、生産コストを大幅に低減することができる。
デコーキング工程は、所定の稼働時間が経過した後、稼働を中断し、炉管の内面に堆積した炭素を除去する工程である。炭素の除去方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。通常は、炉管への炭化水素原料ガスの供給を止め、水蒸気のみを供給することにより行う。
炉管交換工程は、所定の操業時間(熱分解を開始してから、炉管交換を行うまでの時間)が経過したところで、炉管の交換を行う工程である。
図2に、熱分解の際のTMTと時間の関係を示す。実炉における熱分解は、図1に示すように、予め定められた初期TMT(TMT0)において熱分解を開始し、TMTが予め定められた上限TMT(TMTmax)になるまで連続稼働を行う。所定の稼働時間(=t1−t0)が経過し、TMTが上限TMT(TMTmax)に達したところで、操業を中断し、デコーキングを行う。
図2に、熱分解の際のTMTと時間の関係を示す。実炉における熱分解は、図1に示すように、予め定められた初期TMT(TMT0)において熱分解を開始し、TMTが予め定められた上限TMT(TMTmax)になるまで連続稼働を行う。所定の稼働時間(=t1−t0)が経過し、TMTが上限TMT(TMTmax)に達したところで、操業を中断し、デコーキングを行う。
デコーキング後、所定の初期TMT(TMT0)で熱分解を再開する。そして、所定の稼働時間(=t2−t1)が経過し、TMTが上限TMT(TMTmax)に達したところで、2回目のデコーキングを行う。以下、同様にして、所定の稼働時間(=tk+1−tk)での連続稼働と、デコーキングとを繰り返し、操業時間(=tn−t0)が炉管の寿命に達したところで、炉管交換を行う。
ここで、「炉管の寿命」とは、表面層の寿命(A)と母管の寿命(B)との和(A+B)と定義される。また、「表面層の寿命」とは、表面層から母管への炭素の拡散が開始するまでの時間と定義される。さらに、「母管の寿命」とは、浸炭によって母管の炭素量がある一定値を超えた時と定義される。
例えば、母管のみからなる炉管の場合、炭化水素原料ガスの熱分解に伴い、炉管の内面から炭素が拡散し、炭素量がある一定値を超えるとグラファイトが析出する。析出したグラファイトは破壊の起点となるので、折損事故を回避するためには、遅くとも炉管の全断面においてグラファイトが析出する前に炉管交換を行う必要がある。
グラファイトが析出する炭素量は、炉管の材質によって異なる。例えば、耐熱鋳鋼の一種であるHP−Nb材の場合、グラファイトが析出し始める炭素量は、約5wt%である。HP−Nb材のみからなる炉管を用いて炭化水素原料ガスの熱分解を行った場合において、炉管の内表面側の炭素量が約5%に達する時間は、熱分解条件により異なるが、相対的に穏やかな熱分解条件下(具体的には、上限TMTが1100℃未満)では約3〜5年程度である。
これに対し、炉管として耐熱多層金属管を用いた場合、炉管の内面から拡散してくる炭素は、まず、表面層にトラップされる。しかも、上述した組成を有するCr−Ni合金の場合、グラファイトが析出し始める炭素量は、約7wt%であり、母管より多い。また、耐熱多層金属管の場合、強度は母管が担っているので、表面層の全断面においてグラファイトが析出しても、これが破壊の起点となることはない。さらに、耐熱多層金属管は、表面層の炭素量がある一定値を超えるまで、母管への炭素の拡散が抑制されるという特徴がある。
母管への炭素の拡散が開始するのは、表面層の組成によって若干異なるが、表面層の界面側の炭素量が約3wt%に達した時である。これは、表面層の界面側のマトリックスに固溶している炭素量に換算すると、約0.03wt%に相当する。これらの点は、本願発明者らが初めて見出したものである。
Cr−Ni合金からなる表面層の場合、母管への炭素の拡散が開始するまでの時間(すなわち、表面層の寿命)は、具体的には、同一条件下で熱分解を行った場合における母管の寿命の1倍以上となる。また、表面層の寿命は、熱分解条件等によっては、母管の寿命の2倍以上、あるいは、2.5倍以上となる。
その結果、耐熱多層金属管を用いた場合、炉管の寿命は、母管のみからなる炉管を用いて同一条件下で熱分解を行った場合における炉管の寿命より長くなる。具体的には、耐熱多層金属管の寿命は、母管のみからなる炉管の寿命の2倍以上、熱分解条件等によっては3倍以上になる。
その結果、耐熱多層金属管を用いた場合、炉管の寿命は、母管のみからなる炉管を用いて同一条件下で熱分解を行った場合における炉管の寿命より長くなる。具体的には、耐熱多層金属管の寿命は、母管のみからなる炉管の寿命の2倍以上、熱分解条件等によっては3倍以上になる。
炉管の浸炭量は、炉管が曝される温度と時間に依存するが、実炉における実際の浸炭量は、加速浸炭試験データに基づき、時間温度パラメータ法(TTP法)により推定することができる。TTP法の一種であるラーソン・ミラー・パラメータ(LMP)は、次の(a)式により表すことができる。
LMP=(20+T)(20+logt) ・・・(a)
但し、Tは温度(℃)、tは時間(hr)である。
LMP=(20+T)(20+logt) ・・・(a)
但し、Tは温度(℃)、tは時間(hr)である。
実際の浸炭量は、浸炭条件によって異なる。上述した組成を有するCr−Ni合金からなる表面層の炭素量が約3wt%に達するまでの温度と時間(t1)の関係は、LMPを用いて、次の(b)式で表すことができる。
(20+TMTm)(20+logt1)≧32.5×103 ・・・(b)
但し、TMTmは、内部管表面温度の平均値(平均TMT)、
t1は、操業時間(hr)である。
(b)式より、Cr−Ni合金からなる表面層を備えた炉管の寿命(t)は、次の(1)式で表すことができる。
t≧t1 ・・・(1)
但し、t1=exp{[32.5×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
TMTmは、平均内部管表面温度(℃)。
(20+TMTm)(20+logt1)≧32.5×103 ・・・(b)
但し、TMTmは、内部管表面温度の平均値(平均TMT)、
t1は、操業時間(hr)である。
(b)式より、Cr−Ni合金からなる表面層を備えた炉管の寿命(t)は、次の(1)式で表すことができる。
t≧t1 ・・・(1)
但し、t1=exp{[32.5×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
TMTmは、平均内部管表面温度(℃)。
(1)式は、表面層の炭素量が約3wt%に達するのは、例えば、
(a)熱分解時の平均TMTが1020℃である場合は、約15.6年、
(b)熱分解時の平均TMTが1030℃である場合は、約10.0年、
(c)熱分解時の平均TMTが1040℃である場合は、約 6.5年、
(d)熱分解時の平均TMTが1050℃である場合は、約 4.2年、
(e)熱分解時の平均TMTが1060℃である場合は、約 2.8年、
(f)熱分解時の平均TMTが1070℃である場合は、約 1.8年、
であることを意味する。
いずれの場合においても、(1)式の条件下では、母管への浸炭はほとんど進行していないので、炉管の寿命は、上述した年数に母管の寿命を加えたものとなる。
(a)熱分解時の平均TMTが1020℃である場合は、約15.6年、
(b)熱分解時の平均TMTが1030℃である場合は、約10.0年、
(c)熱分解時の平均TMTが1040℃である場合は、約 6.5年、
(d)熱分解時の平均TMTが1050℃である場合は、約 4.2年、
(e)熱分解時の平均TMTが1060℃である場合は、約 2.8年、
(f)熱分解時の平均TMTが1070℃である場合は、約 1.8年、
であることを意味する。
いずれの場合においても、(1)式の条件下では、母管への浸炭はほとんど進行していないので、炉管の寿命は、上述した年数に母管の寿命を加えたものとなる。
また、耐熱鋳鋼からなる母管の内表面側の炭素量が約5wt%に達するまでの温度と時間(t2)の関係は、LMPを用いて、次の(c)式で表すことができる。
(20+TMTm)(20+logt2)≧31.9×103 ・・・(c)
但し、TMTmは、内部管表面温度の平均値(平均TMT)、
t2は、操業時間(hr)である。
(b)式及び(c)式より、耐熱鋳鋼からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層が形成された炉管の寿命(t)は、次の(2)式で表すことができる。
t≧t1+t2 ・・・(2)
但し、t1=exp{[32.5×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
t2=exp{[31.9×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
TMTmは、平均内部管表面温度(℃)。
(20+TMTm)(20+logt2)≧31.9×103 ・・・(c)
但し、TMTmは、内部管表面温度の平均値(平均TMT)、
t2は、操業時間(hr)である。
(b)式及び(c)式より、耐熱鋳鋼からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層が形成された炉管の寿命(t)は、次の(2)式で表すことができる。
t≧t1+t2 ・・・(2)
但し、t1=exp{[32.5×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
t2=exp{[31.9×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
TMTmは、平均内部管表面温度(℃)。
(2)式は、表面層の界面側の炭素量が約3wt%に達し、かつ母管の内表面側の炭素量が約5wt%に達するのは、例えば、
(a)熱分解時の平均TMTが1020℃である場合は、約21.0年、
(b)熱分解寺の平均TMTが1030℃である場合は、約13.5年、
(c)熱分解時の平均TMTが1040℃である場合は、約 8.7年、
(d)熱分解時の平均TMTが1050℃である場合は、約 5.7年、
(e)熱分解時の平均TMTが1060℃である場合は、約 3.7年、
(f)熱分解時の平均TMTが1070℃である場合は、約 2.5年、
であることを意味する。
いずれの場合においても、(2)式の条件下では、母管の内表面側にグラファイトが析出し始めているので、可及的速やかに炉管交換を行うのが好ましい。
(a)熱分解時の平均TMTが1020℃である場合は、約21.0年、
(b)熱分解寺の平均TMTが1030℃である場合は、約13.5年、
(c)熱分解時の平均TMTが1040℃である場合は、約 8.7年、
(d)熱分解時の平均TMTが1050℃である場合は、約 5.7年、
(e)熱分解時の平均TMTが1060℃である場合は、約 3.7年、
(f)熱分解時の平均TMTが1070℃である場合は、約 2.5年、
であることを意味する。
いずれの場合においても、(2)式の条件下では、母管の内表面側にグラファイトが析出し始めているので、可及的速やかに炉管交換を行うのが好ましい。
表1に、耐熱鋳鋼からなる母管の内面にNi−Cr合金からなる表面層が形成された炉管の寿命と、初期TMT、上限TMT及び平均TMTとの関係を示す。
本発明に係る炭化水素の製造方法は、炉管として耐熱多層金属管を用いているので、母管のみからなる炉管を用いた場合に比べて、耐酸化性及び耐浸炭性が著しく向上する。そのため、炉管の寿命は、母管のみからなる炉管を用いて、同一条件下で熱分解を行った場合の寿命に比べて、2倍以上、熱分解条件によっては、3倍以上に向上する。
また、耐熱多層金属管であっても、上限TMT(すなわち、平均TMT)を上昇させると、浸炭が加速されるために、炉管の寿命は低下する。しかしながら、耐熱多層金属管は、耐浸炭性に優れているので、上限TMTを上昇させても、炉管寿命の低下率は、母管のみからなる炉管に比べて著しく小さい。そのため、本発明に係る方法を用いると、デコーキングの頻度を低減することができ、原料投入量を増加させることができ、あるいは、分解温度を理想温度に近づけることができる。また、これによって、エチレン等の炭化水素の生産コストを大幅に削減することができる。
(実施例1)
プラズマ・パウダー溶接法(PPW)を用いて、HP−Nb材からなる遠心鋳造管(母管)の内面に、44.5%Cr−Ni合金からなる表面層(PPW層)を肉盛溶接し、耐熱多層金属管(PTT)を作製した。なお、母管は、外径80.1mm、内径63.5mmとし、表面層の厚さは、2mmとした。得られた耐熱多層金属管を炉管として用いて、加速浸炭試験、並びに、実炉によるナフサの熱分解を行った。
プラズマ・パウダー溶接法(PPW)を用いて、HP−Nb材からなる遠心鋳造管(母管)の内面に、44.5%Cr−Ni合金からなる表面層(PPW層)を肉盛溶接し、耐熱多層金属管(PTT)を作製した。なお、母管は、外径80.1mm、内径63.5mmとし、表面層の厚さは、2mmとした。得られた耐熱多層金属管を炉管として用いて、加速浸炭試験、並びに、実炉によるナフサの熱分解を行った。
(比較例1)
HP−Nb材からなる遠心鋳造管を炉管として用いて、加速浸炭試験、並びに、実炉によるナフサの熱分解を行った。なお、炉管は、外径80.1mm、内径63.5mmのものを用いた。
HP−Nb材からなる遠心鋳造管を炉管として用いて、加速浸炭試験、並びに、実炉によるナフサの熱分解を行った。なお、炉管は、外径80.1mm、内径63.5mmのものを用いた。
(評価)
加速浸炭試験、及び、実炉による一定期間の熱分解が終了した後、浸炭計を用いて、管内面及び管外面の炭素量を測定した。
図3(a)に、炉管としてHP−Nb材を用いて、実炉によるナフサの熱分解を行った場合の炉管の炭素量を示す。浸炭は、炉管の内面から進行するので、炉管の内径(ID)側の炭素量は、外径(OD)側より多くなっている。浸炭速度は、熱分解条件によって異なり、条件B1及び条件B2では約4年、条件B3では約2年で、内径側の炭素量が約4.5wt%となった。HP−Nb材の場合、炭素量が約5wt%を超えるとグラファイトが析出するので、HP−Nb材の寿命は、約3〜5年程度であることがわかる。
加速浸炭試験、及び、実炉による一定期間の熱分解が終了した後、浸炭計を用いて、管内面及び管外面の炭素量を測定した。
図3(a)に、炉管としてHP−Nb材を用いて、実炉によるナフサの熱分解を行った場合の炉管の炭素量を示す。浸炭は、炉管の内面から進行するので、炉管の内径(ID)側の炭素量は、外径(OD)側より多くなっている。浸炭速度は、熱分解条件によって異なり、条件B1及び条件B2では約4年、条件B3では約2年で、内径側の炭素量が約4.5wt%となった。HP−Nb材の場合、炭素量が約5wt%を超えるとグラファイトが析出するので、HP−Nb材の寿命は、約3〜5年程度であることがわかる。
また、図3(b)に、PPWにより作製した耐熱多層金属管(PTT)を用いて加速浸炭試験を行った場合(条件A1)、及び、実炉によるナフサの熱分解を行った場合(条件A2)の炭素量を示す。図3(b)より、実炉において13月間の熱分解を行った場合、PPW層の炭素量は、約1.5wt%であり、かつ、母管への炭素の拡散が生じていないことがわかる。また、LMP=32.3×103の条件下で加速浸炭試験を行った場合、内径(ID)側の浸炭量は、約3.5%であることがわかる。また、界面側の炭素量は、約2%であり、母管への炭素の拡散が生じていないことがわかる。
次に、実炉による熱分解(条件A2)後のPTT、及び、実炉による熱分解(条件B1〜B3)後のHP−Nb材を管軸に対して垂直に切断し、断面の硬度を測定した。図4に、その結果を示す。
図4より、HP−Nb材からなる炉管を用いた場合、いずれも、炉管の内表面に近くなるほど硬度が高くなっていることがわかる。これは、炉管の内表面から炉管の外表面に向かって炭素が拡散するためである。一方、PTTの場合、PPW層の硬度は高くなっているが、母管の硬度は、条件B1〜B3に比べて低くなっていることがわかる。これは、PPW層が、炉管の内表面から拡散した炭素を捕捉し、母管への炭素の拡散を抑制しているためである。
また、これらの炉管について、炉管の内表面から約4mmの地点の炭素量を測定した。その結果、HP−Nb材の場合、条件B1で1.06wt%、条件B2で2.21wt%、条件B3で1.04wt%であった。これに対し、PTTを用いた条件A1の場合、炭素量は、0.35wt%であり、熱分解を行う前の炭素量とほぼ同等であった。
図5に、炉管としてHP−Nb材を用いた場合のLMPと、炉管の内面側の炭素量との関係を示す。また、図6に、炉管としてPTTを用いた場合のLMPと、PPW層の表面側及び界面側の炭素量との関係を示す。
HP−Nb材の場合、図5に示すように、実炉による熱分解条件(条件B1、B2、B3)が若干異なっても、LMPと炭素量との間に良好な相関が認められた。また、LMPが31.9×103である場合、炭素量は約5wt%であり、炉管にグラファイトが析出し始める限界炭素量に近づいていることがわかる。これは、例えば、平均TMTを1020℃とした場合、約5年に相当する。
PTTの場合も同様であり、図6に示すように、実炉による熱分解条件(条件A2、A3、A4、A5)が若干異なっても、LMPと炭素量との間に良好な相関が認められた。また、LMPが32.5×103である場合、PPW層の界面側の炭素量は約3%に達することがわかる。これは、例えば、平均TMTを1020℃とした場合、約16年に相当する。すなわち、熱分解条件が同一である場合、PTTの寿命は、HP−Nb材の約4倍になることを示している。
図7(a)に、PTT及びHp−Nb材について測定された加速浸炭試験後の浸炭量とマトリックス中のC量を示す。また、図7(b)に、PTT及びHp−Nb材について測定された加速浸炭試験後及び実炉による熱分解(PTT:条件A2〜A5、HP−Nb材:条件B1)後の浸炭量とマトリックス中のCr量との関係を示す。なお、PTTのデータは、いずれも、PPW層の界面側の値である。
図7に示すように、Hp−Nb材の場合、浸炭量の増加に伴い、マトリックス中のCr量は減少し、かつ、マトリックス中の炭素量は増加していることがわかる。これは、炉管の内表面から拡散してきた炭素の一部が炭化クロムの生成に消費され、残りの一部が外表面側に向かって拡散し続けることを示している。
これに対し、PTTの場合、浸炭量が約3wt%(マトリックス中の炭素量で約0.03wt%)までは、PPW層のマトリックス中のCr量が急激に減少しているのに対し、PPW層のマトリックス中のC量はほとんど増加しないことがわかる。これは、PPTの内表面から拡散してきた炭素のほとんどすべてが炭化クロムの生成に消費され、PPW層が母管への炭素の拡散を抑制していることを示している。一方、PPW層の浸炭量が3wt%を超えると、PPW層のマトリックス中の炭素量が急増し、母管のマトリックス中の炭素量を超えていることがわかる。これは、PPW層の浸炭量が約3wt%を超えると、母管への炭素の拡散が始まることを示している。
これに対し、PTTの場合、浸炭量が約3wt%(マトリックス中の炭素量で約0.03wt%)までは、PPW層のマトリックス中のCr量が急激に減少しているのに対し、PPW層のマトリックス中のC量はほとんど増加しないことがわかる。これは、PPTの内表面から拡散してきた炭素のほとんどすべてが炭化クロムの生成に消費され、PPW層が母管への炭素の拡散を抑制していることを示している。一方、PPW層の浸炭量が3wt%を超えると、PPW層のマトリックス中の炭素量が急増し、母管のマトリックス中の炭素量を超えていることがわかる。これは、PPW層の浸炭量が約3wt%を超えると、母管への炭素の拡散が始まることを示している。
さらに、実炉による熱分解を行った後の炉管内面のCr欠乏層の厚さ、及び、その成分分析を行った。表2に、その結果を示す。実炉においては、デコーキングの際に、炉管の内面が酸化雰囲気に曝されるので、炉管の内面には、酸化によってCr欠乏層ができる。HP−Nb材の場合、2〜4年の操業によって、内表面に、0.15〜0.45mmのCr欠乏層が形成されているのに対し、PTTの場合、13月の操業によって内表面に形成されるCr欠乏層は、僅か0.05mmであった。これは、同一の操業時間に換算した場合、PTTの内面に形成されたCr欠乏層の厚さは、HP−Nbと同等以下であること(すなわち、PTTの耐酸化性は、HP−Nbと同等以上であること)を示している。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
例えば、上記実施例においては、母管として耐熱鋳鋼からなる遠心鋳造管を用いた例について主に説明したが、母管としてステンレス鋼やNi基超合金等の他の耐熱金属を用いた場合も同様であり、内面にCr−Ni合金からなる表面層を形成することによって、その寿命は、母管のみからなる炉管の寿命の2倍以上、熱分解条件によっては、3倍以上となる。また、耐浸炭性が向上するので、寿命を大幅に低下させることなく、上限TMTを高くすることができる。
本発明に係る炭化水素の製造方法は、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレン等を製造する方法の他、炉管の耐熱性及び耐浸炭性が要求される種々のガス発生方法、ガス製造方法等としても用いることができる。
Claims (11)
- 耐熱金属からなる母管の内面にCr−Ni合金からなる表面層を形成した耐熱多層金属管からなる炉管を所定の温度に加熱し、前記炉管の内部に炭化水素原料ガスを供給し、該炭化水素原料ガスを熱分解させる熱分解工程と、
前記炉管の内面に堆積した炭素を除去するデコーキング工程と、
前記母管のみからなる炉管を用いて、同一条件下で前記熱分解を行った場合における前記母管の寿命より長い操業時間が経過したところで前記炉管の交換を行う炉管交換工程とを備えた炭化水素の製造方法。 - 前記母管は、耐熱鋳鋼からなる遠心鋳造管である請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
- 前記Cr−Ni合金は、Cr:36〜49wt%、Ni:35〜63wt%を含むものからなる請求項1又は2に記載の炭化水素の製造方法。
- 前記炉管交換工程は、前記母管の寿命の2倍以上の操業時間が経過したところで前記炉管の交換を行うものである請求項1から3までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
- 前記炉管交換工程は、操業時間(t(hr))が、次の(1)式に示す関係を満たした時に前記炉管の交換を行うものである請求項1から4までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
t≧t1 ・・・(1)
但し、t1=exp{[32.5×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
TMTmは、平均内部管表面温度(℃)。 - 前記炉管交換工程は、操業時間(t(hr))が、次の(2)式に示す関係を満たした時に前記炉管の交換を行うものである請求項1から4までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
t≧t1+t2 ・・・(2)
但し、t1=exp{[32.5×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
t2=exp{[31.9×103/(273+TMTm)−20]×ln10}、
TMTmは、平均内部管表面温度(℃)。 - 前記炉管交換工程は、平均内部管表面温度1030℃以下での操業時間が13年以上に達したところで前記炉管の交換を行うものである請求項1から6までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
- 前記炉管交換工程は、平均内部管表面温度1030℃以上1050℃以下での操業時間が5年以上に達したところで前記炉管の交換を行うものである請求項1から6までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
- 前記炉管交換工程は、平均内部管表面温度1050℃以上1070℃以下での操業時間が2年以上に達したところで前記炉管の交換を行うものである請求項1から6までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
- 前記デコーキング工程は、内部管表面温度が1120℃以上に達したところで、前記炉管の内面に堆積した炭素を除去するものである請求項1から9までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
- 前記デコーキング工程は、内部管表面温度が1140℃以上に達したところで、前記炉管の内面に堆積した炭素を除去するものである請求項1から9までのいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
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