JP2005344170A - プラズマアシスト蒸着装置及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蒸着物質の1層目を成膜する前のコントロールガスのガス流量Xとインピーダンスの値aをインピーダンス測定手段により測定するステップS01を有する。また、蒸着物質のn(nは2以上の整数)層目を成膜する直前のインピーダンスの値bをインピーダンス測定手段により測定し、n層目を成膜する際のコントロールガスのガス流量Yを、Y=(a/b)Xの式により求めるステップS06を有する。また、求めたガス流量Yに基づいて、コントロールガスのガス供給口を制御してガス流量を制御し、蒸着物質の成膜を行うステップS07を有する。
【選択図】図1
Description
プラズマアシスト蒸着装置の内壁に蒸着物質が付着すると、装置内の電磁場の状態が変化してしまう。プラズマの分布は、周囲の電磁場等の状態によって大きく影響されるため、成膜が進むにつれてプラズマの状態が変化すると、成膜している蒸着膜の性質(屈折率など)にも影響を与え、所望の膜質が得られないという問題があった。
第2の蒸着物質のn2(n2は2以上の整数)層目を成膜する前のインピーダンスの値b2を前記インピーダンス測定手段により測定するステップと、第2の蒸着物質のn2層目を成膜する際のコントロールガスのガス流量Y2(n2)を、Y2(n2)=(a2/b2)X2の式により求めるステップと、求めたガス流量Y2(n2)に基づいて、ガス供給口を制御してガス流量を制御するステップと、前記ガス流量Y2により基板上に第2の蒸着物質の成膜を行うステップとを有する。
プラズマアシスト蒸着装置1は、プラズマガン2、ルツボ3a及び3b、回転機構部4、基板ドーム5、防着板7、ビューポート8により構成される。
本実施形態では、SiO2とTiO2の2つの蒸着膜を交互に基板6上に成膜する場合について説明する。
プラズマアシスト蒸着装置1の下部には、プラズマガン2が設置される。プラズマアシスト蒸着装置1外のプラズマガン2内部では、Ar(アルゴン)ガスのプラズマが生成される。生成されたArプラズマは、プラズマアシスト蒸着装置1外のプラズマガン2内部のコイル、及び、プラズマアシスト蒸着装置1内のプラズマガン2内部のコイル2aを用いて磁場を制御することにより、アノード2bを介してプラズマアシスト蒸着装置1内に導かれる。
また、本実施形態では、プラズマガン2によりプラズマを生成する際に、放電電圧Vの値と放電電流Iの値を測定できるようになっている。プラズマガン2のアノード2bは、アースに接続されており、プラズマを生成する際に発生する放電電流Iは、プラズマガン2のアノード2bを介してアースに導かれる。
ルツボ(3a、3b)内の蒸着材料は、EB(Electron-Beam)ガン(図示省略)から発せられる電子により熱せられ、プラズマアシスト蒸着装置1内に蒸発して拡散していく。なお、ルツボ3a、3bの上部には、それぞれシャッタ3c、3dが設けられている。シャッタ3c、3dを開閉することによりルツボ3a、3b内の蒸着物質をプラズマアシスト蒸着装置1内に拡散させるかどうかを制御することができるようになっている。
なお、プラズマアシスト蒸着装置1の側面は、金属で形成されるが、蒸着膜を形成する際に蒸着物質がプラズマアシスト蒸着装置1の側壁に付着するという問題がある。この問題を解決するために、プラズマアシスト蒸着装置1の側壁には防着板7が取り付けられている。
また、プラズマアシスト蒸着装置1の側面であって、プラズマガン2のアノード2bの高さに相当する部分には、プラズマアシスト蒸着装置1内部におけるプラズマガン2のアノード2b付近の発光状態を観察するためのビューポート8が形成される。
なお、本実施形態では、ガス供給口からプラズマアシスト蒸着装置1に供給するコントロールガスとしてO2(酸素)を使用する場合について説明する。
基板6に成膜する際には、ガス供給口から供給される酸素と、プラズマガン2から放出されるArプラズマ中の電子とが反応して、プラズマアシスト蒸着装置1内では以下の(1)の生成式で示される反応が起こると考えられる。
プラズマガン2のアノード2bからは、プラズマアシスト蒸着装置1内に電子が放出される。アノード2bから放出される電子は、基板6が取り付けられる基板ドーム5及び防着板7に到達する。また、アノード2bから放出される電子の一部は、基板ドーム5及び防着板7には到達せずにプラズマガン2のアノード2bに戻る。
フローティング電極となる基板ドーム5、防着板7、アノード電極であるアノード2bそれぞれに対する蒸着膜の着膜による絶縁化が進むに従って、インピーダンスは変化する。着膜による絶縁化が進むと電子が流れ込みにくくなり、電流が流れにくくなるため、電子の行き場がなくなる。その結果、プラズマアシスト蒸着装置1内の電子密度が上昇する。
以下に、プラズマガン2によりプラズマを生成する際のインピーダンスの値を測定することにより、プラズマアシスト蒸着装置1内の電子密度を把握して、コントロールガス供給口から供給されるコントロールガスの流量を制御する方法について説明する。
前述したように、インピーダンスが上昇するとプラズマアシスト蒸着装置1内の電子密度も上昇するため、プラズマアシスト蒸着装置1内の電子密度を一定に制御するためには、酸素流量を減少させればよい。すなわち、第1層目と第n層目の膜質を均一にするためには、第n層目における酸素流量を以下の式(3)により求めればよい。
図3は、基板6上にSiO2膜の各層を成膜する場合(図3(A))と、TiO2膜の各層をそれぞれ成膜する場合(図3(B))のそれぞれの場合について、放電電圧0〜300Vを0〜5Vに変換した値として測定した放電電圧信号と、放電電流0〜300Aを0〜6Vに変換した値として測定した放電電流信号を示している。
なお、図3(A)、(B)の表におけるインピーダンスの値は、放電電圧信号と放電電流信号の値から式(2)を用いて算出した値である。また、1層目以降の酸素流量の値は、インピーダンスの値と、1層目の酸素流量の値から式(3)を用いて算出した値である。
SiO2成膜時においては、SiO2の1層目を成膜する直前のインピーダンスの値を測定するとともに、酸素流量を測定しておく。そして、2〜4層目のSiO2を成膜する際に、1層目のSiO2成膜直前のインピーダンスの値と酸素流量のデータを参照して、式(3)を用いてそれぞれ酸素流量を算出し、制御を行う。
このように、SiO2膜とTiO2膜の成膜する際の酸素流量を、それぞれの膜の1層目成膜直前における条件を基準として算出することにより、1層目と同じ膜質の蒸着膜を形成することができ、各層で膜質にばらつきのない均質な膜を基板6上に成膜することが可能となる。
1層目をSiO2とする場合には、始めに、SiO2膜を成膜する直前の酸素供給口から供給される酸素流量、及び、インピーダンスの値を、それぞれ記録しておく(ステップS01)。
そして、図示していないEBガンによりルツボ3a内のSiO2成膜用の蒸着材料を蒸気化した後で、ルツボ3aのシャッタ3cを開くことにより、基板6上にSiO2膜の成膜を開始する(ステップS02)。
第1層目のSiO2膜を所定の膜厚に成膜した後で、SiO2成膜用の蒸着材料のルツボ3aのシャッタ3cを閉じる。
そして、EBガンによりルツボ3b内のTiO2成膜用の蒸着材料を蒸気化した後で、ルツボ3bのシャッタ3dを開くことにより、基板6上にTiO2膜の成膜を開始する(ステップS04)。
第1層目のTiO2膜を所定の膜厚に成膜した後で、TiO2成膜用の蒸着材料のルツボ3bのシャッタ3dを閉じる。
次に、成膜を終了するかの判断を行う(ステップS05)。成膜を終了する場合には、ステップS05において「YES」と判断され、プラズマアシスト蒸着装置1の運転を止め、成膜処理を終了する。一方、SiO2膜を複数積層する場合には、ステップS05において「NO」と判断され、ステップS06に進む。
ステップS06で決定した酸素流量をプラズマアシスト蒸着装置1内に流して、プラズマアシスト蒸着装置1内の電子密度を一定に保つことにより、1層目のSiO2膜と同質な膜質のSiO2膜を成膜する(ステップS07)。
成膜を続ける場合には、SiO2成膜用の蒸着材料が入っているルツボ3aのシャッタ3cを閉じ、再度EBガンによりルツボ3b内のTiO2成膜用の蒸着材料を蒸気化した後で、TiO2成膜用の蒸着材料が入っているルツボ3bのシャッタ3dを開き、基板6上にTiO2膜の成膜を開始する。この時、ステップS03で記録しておいた、1層目のTiO2膜を生成する直前の酸素流量と、インピーダンスの値のデータとを用いて、式(3)から2層目のTiO2膜を形成する際の酸素流量を決定する(ステップS09)。
以後、SiO2膜を成膜する工程(ステップS06、S07)と、TiO2膜を成膜する工程(ステップS09、S10)を繰り返す。基板6上に所望の多層膜が形成されたところで、ステップS05又はS08で「YES」と判定し、プラズマアシスト蒸着装置1による成膜処理を終了する。
また、コントロールガスの他に不活性ガスであるAr(アルゴン)、He(ヘリウム)、Kr(クリプトン)などをプラズマアシスト蒸着装置1内に供給することにより、コントロールガスの分圧を制御することもできる。
しかし、このような構成に限定されるものではない。例えば、以前に成膜した基板6の任意の層における蒸着膜を成膜する際の成膜条件(酸素流量、インピーダンス)を記録しておき、その蒸着膜の成膜以降に基板ドーム5に取り付ける基板6に成膜する際に、その成膜条件を参照することもできる。
このような構成にすれば、プラズマアシスト蒸着装置1の基板ドーム5に基板6を取り付けて成膜を行った後、別の基板6を基板ドーム5に取り付けて成膜を行う場合であっても、基板6に成膜する蒸着膜の膜質を、前回基板6に成膜した蒸着膜の膜質と均一にすることが可能となる。
しかし、上記のように任意の成膜工程における成膜条件(酸素流量、インピーダンス)を参照可能とすることにより、前回、前々回、あるいは更にそれ以前に基板6上に成膜する際の成膜条件を参照して他の基板6に蒸着膜を成膜することができるため、何度でも均一の膜質を有する蒸着膜を基板6上に成膜することができる。よって、以前のように、基板6上に均一な膜質の蒸着膜を成膜するために、頻繁にプラズマアシスト蒸着装置1内の防着板7等のクリーニングを行う必要がなくなる。
2・・・プラズマガン
2a・・・コイル
2b・・・アノード
3a、3b・・・ルツボ
3c、3d・・・シャッタ
4・・・回転機構部
5・・・基板ドーム
6・・・基板
7・・・防着板
8・・・ビューポート
Claims (6)
- プラズマガンからプラズマを放電する際の放電電圧の値と放電電流の値に基づいてインピーダンスの値を測定するインピーダンス測定手段を有するプラズマアシスト蒸着装置の制御方法であって、
基板上に第1の蒸着膜を成膜する前のコントロールガスのガス流量Xを測定するとともに、前記インピーダンス測定測定によりインピーダンスaの値を測定するステップと、
前記第1の蒸着膜の成膜以降に成膜される第2の蒸着膜を成膜する前のインピーダンスbの値を前記インピーダンス測定手段により測定するステップと、
前記第2の蒸着膜を成膜する際のコントロールガスのガス流量Yを、インピーダンスの値a及びb、ガス流量Xの値を用いて求めるステップと、
求めたガス流量Yに基づいて、コントロールガス供給口を制御してガス流量を制御するステップと、
を有するプラズマアシスト蒸着装置の制御方法。 - 前記コントロールガスのガス流量Yを、Y=(a/b)Xの式により求めることを特徴とする請求項1に記載のプラズマアシスト蒸着装置の制御方法。
- 前記第1の蒸着膜が、前記基板上に成膜される1層目の蒸着膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマアシスト蒸着装置の制御方法。
- 前記コントロールガスとして酸素を使用することを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載のプラズマアシスト蒸着装置の制御方法。
- プラズマガンからプラズマを放電する際の放電電圧の値と放電電流の値に基づいてインピーダンスの値を測定するインピーダンス測定手段を有するプラズマアシスト蒸着装置の制御方法であって、
第1の蒸着物質の1層目を成膜する前のコントロールガスのガス流量X1を測定するとともに、インピーダンスの値a1を前記インピーダンス測定手段により測定するステップと、
第2の蒸着物質の1層目を成膜する前のコントロールガスのガス流量X2を測定するとともに、インピーダンスの値a2を前記インピーダンス測定手段により測定するステップと、
第1の蒸着物質のn1(n1は2以上の整数)層目を成膜する前のインピーダンスの値b1を前記インピーダンス測定手段により測定するステップと、
第1の蒸着物質のn層目を成膜する際のコントロールガスのガス流量Y1(n1)を、Y1(n1)=(a1/b1)X1の式により求めるステップと、
求めたガス流量Y1(n1)に基づいて、ガス供給口を制御してガス流量を制御するステップと、
前記ガス流量Y1により基板上に第1の蒸着物質の成膜を行うステップと、
第2の蒸着物質のn2(n2は2以上の整数)層目を成膜する前のインピーダンスの値b2を前記インピーダンス測定手段により測定するステップと、
第2の蒸着物質のn2層目を成膜する際のコントロールガスのガス流量Y2(n2)を、Y2(n2)=(a2/b2)X2の式により求めるステップと、
求めたガス流量Y2(n2)に基づいて、ガス供給口を制御してガス流量を制御するステップと、
前記ガス流量Y2により基板上に第2の蒸着物質の成膜を行うステップと、
を有するプラズマアシスト蒸着装置の制御方法。 - 基板上に蒸着物質を蒸着するプラズマアシスト蒸着装置において、
前記基板上に形成される第1の蒸着膜を成膜する前のコントロールガスのガス流量Xを測定するガス流量測定手段と、
前記第1の蒸着膜を成膜する前のインピーダンスの値a、及び、前記第1の蒸着膜の成膜以降に形成される第2の蒸着膜を成膜する前のインピーダンスの値bを測定するインピーダンス測定手段と、
前記インピーダンス測定手段が測定したインピーダンスの値a及びbと、前記ガス流量測定手段が測定したガス流量Xの値を用いて、前記第2の蒸着膜を成膜する際のコントロールガスのガス流量Yを求めるガス流量演算手段と、
前記ガス流量演算手段が求めたガス流量Yに基づいて、コントロールガス供給口を制御してガス流量を制御するガス流量制御手段と、
前記ガス流量制御手段が制御するガス流量Yにより、基板上に前記第2の蒸着膜の成膜を行う成膜手段と、
を有することを特徴とするプラズマアシスト蒸着装置。
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