JP2005336263A - 膜形成用インクおよび膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の膜形成用インクは、Ru(III)のβ−ジケトン錯体、β−ケトエステル錯体およびβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種をアルコール中で予備加熱することにより得られる化合物を必須成分として含む。本発明の膜形成方法は、上記本発明の膜形成用インクを基材に塗布して加熱することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を前記基材の表面に膜として定着させる、膜形成方法である。
【選択図】 なし
Description
ところで、電子回路用の金属配線については、一般に、銀や銅が使用されることが多いが、銀系の金属配線では、銀イオンのマイグレーションによる周辺素子機能の低下・阻害や、酸化による電気抵抗値の変動等の問題があり、銅系の金属配線では、銀よりも酸化され易く、また、酸化され易いためにナノ粒子の状態で扱うことが極めて困難であり、特に金属配線の微細化や薄膜化によってこれらの問題はより深刻になりつつある。そこで近年では、これに代わる有望な金属としてルテニウム(金属ルテニウム)が注目されている。金属ルテニウムはまた、受動素子の一つであるコンデンサーの電極材料としても期待され、その他に、メモリー素子であるDRAMの微細化の要請に伴い検討されているキャパシタ用の耐酸化性に優れる電極材料としても有望であろうと考えられている。
しかしながら、金属ルテニウムについても同様にナノ粒子化してインクに用いたとしても、その特性上、銀ナノ粒子では可能であった樹脂フィルムの耐熱温度以下という温度では、十分に焼結させることができず、電子回路用金属配線として求められる膜特性を有する金属ルテニウム薄膜を形成することはできない。
一方、電子回路用の受動素子については、その材料として各種金属の酸化物(セラミクス)が使用されることが知られており、例えば、抵抗体素子には100〜108Ω/□程度の範囲内で所定の抵抗値を示す種々の金属酸化物が使用されるが、なかでも100〜103Ω/□程度の低い抵抗値を示すものとして酸化ルテニウム(ルテニウム酸化物)が有用であると期待されている。
しかしながら、酸化ルテニウム等のセラミクス材料は、ナノ粒子化して用いたとしても、樹脂フィルムの耐熱温度以下の温度で十分に焼結させることは到底できず、低温での成膜には限界がある。
また、抵抗体素子としての酸化ルテニウム薄膜を形成する他の技術として、RuO2系ペースト(RuO2微粒子含有)を塗布して乾燥し加熱する方法(例えば、特許文献1参照。)や、ルテニウム化合物またはルテニウム錯体の溶液を塗布して乾燥し高温で焼成する方法(例えば、特許文献2〜4参照。)や、ルテニウム無機塩のアルコールゾルを塗布し焼成する方法(例えば、特許文献5参照。)等が提案されているが、いずれの方法も、低温成膜性に欠け、電子回路用抵抗体素子膜として求められる膜特性が得られない等の問題がある。
したがって、本発明にかかる膜形成用インクは、Ru(III)のβ−ジケトン錯体、β−ケトエステル錯体およびβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種をアルコール中で予備加熱することにより得られる化合物を必須成分として含む。
本発明にかかる膜形成方法は、上記本発明にかかる膜形成用インクを基材に塗布して加熱することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を前記基材の表面に膜として定着させる、膜形成方法である。
〔膜形成用インク〕
本発明にかかる膜形成用インク(以下、本発明のインクと称することがある。)は、前述したように、Ru(III)(3価のルテニウム元素)のβ−ジケトン錯体、Ru(III)のβ−ケトエステル錯体、および、Ru(III)のβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種のルテニウム化合物錯体を、アルコール中で予備加熱するという特定の方法により得られる化合物(以下、前駆体化合物と称することがある。)を、必須成分として含むことが重要である。
(前駆体化合物)
前駆体化合物は、特定のルテニウム化合物錯体とアルコールとを出発原料とし上記特定の方法により得られる化合物であり、好ましくは、該出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を予備加熱状態にする過程を経て生成する化合物であって、別途加熱する(本加熱する)ことにより金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を生成し得る、これらの前駆体となる化合物である。
前記出発原料となる特定のルテニウム化合物錯体のうち、Ru(III)のβ−ジケトン錯体については、Ru(III)原子に配位するβ−ジケトンが、下記一般式(1):
で表される化合物であればよく、限定はされないが、具体的には、下記一般式(2):
同様に、Ru(III)のβ−ケトエステル錯体については、Ru(III)原子に配位するβ−ケトエステルが、下記一般式(3):
で表されるアセト酢酸アルキル等が好ましく挙げられ、なかでも、安価であるなど工業的に入手が容易な点で、上記一般式(4)で表されるアセト酢酸アルキルのうち、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルおよびアセト酢酸プロピルがより好ましい。これらβ−ケトエステルは、1種のみ配位されていてもよいし2種以上配位されていてもよい。
同様に、Ru(III)のβ−ジエステル錯体については、Ru(III)原子に配位するβ−ジエステルが、下記一般式(5):
RlおよびRmは、上記一般式(1)におけるRc(あるいはRd)と同様であり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。)
で表される化合物であればよく、限定はされないが、具体的には、マロン酸ジアルキル等が好ましく挙げられ、なかでも、安価であるなど工業的に入手が容易な点で、マロン酸ジアルキルのうち、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルおよびマロン酸ジプロピルがより好ましい。これらβ−ジエステルは、1種のみ配位されていてもよいし2種以上配位されていてもよい。
上記特定の方法における予備加熱の加熱条件(温度×時間)は、出発原料として用いるルテニウム化合物錯体に含有されるルテニウムの実質的に全量が、金属としてのルテニウムにまで還元される加熱条件(温度×時間)よりマイルドな条件下であること好ましく、例えば、100〜180℃が好ましく、より好ましくは140〜160℃である。このように予備加熱して前駆体化合物を調製しインクの成分として存在させておくことにより、ルテニウム化合物錯体をアルコール等の溶媒に溶解させただけのインクに比べ、成膜温度を格段に低温化できるという効果(金属ルテニウムや酸化ルテニウムの結晶生成温度の低温化効果)が得られる。上記予備加熱の温度が、100℃未満であると、ルテニウム化合物錯体から前駆体化合物への反応が十分に進行せず、前述した本発明の効果が得られないおそれがあり、180℃を超えると、予備加熱の段階で金属ルテニウム(粒子状)が多く生成してしまい前駆体化合物を十分に存在させることができず、前述した本発明の効果が得られないおそれがあり、例えば酸化ルテニウム膜を形成しようとする場合は、成膜温度が数十度またはそれ以上高くなってしまうおそれがある。
上記予備加熱の時間は、限定はされないが、例えば、前記出発原料の混合系が100℃以上となっている合計時間が、0.1分〜8時間であることが好ましく、より好ましくは1分〜2時間である。予備加熱の時間が、0.1分未満であると、予備加熱効果が不十分となり、前駆体化合物が十分に生成されないおそれがあり、8時間を超えると、生産性が低下し高価となるおそれがある。
(膜形成用インク)
本発明のインクは、全体として液状態を保持し、基材等への良好な塗工性を発揮させるため、および、本発明の効果を得るため、前駆体化合物とともに、該前駆体化合物を溶解させ得る溶媒をも必須成分とする。
上記溶媒が、π電子を有するアルコールを1成分とする混合系である場合、該π電子を有するアルコールと組み合わせて用い得る他の成分となる溶媒としては、具体的には、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール−t−ブチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体等が好ましく挙げられる。
上記溶媒を必須成分とする膜形成用インクは、前駆体化合物の調製液から、以下のようにして得られることが好ましい。すなわち、前駆体化合物の調製液をそのまま用いるか、該調製液を濃縮するか、該調製液(必要に応じ濃縮しておいてもよい)に他の溶媒成分を添加混合するか、あるいは、該調製液について加熱溶媒置換等を施すことで他の溶媒成分に置換する、等の方法により好ましく得ることができる。
本発明のインクにおいては、前駆体化合物が溶媒中に完全溶解していることには限定はされず、その一部が析出し不溶物となっていてもよい。該不溶物が認められる場合、その含有割合は、ルテニウム換算で、前駆体化合物中のルテニウム全量に対し50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。上記不溶物の含有割合が50重量%を超えると、成膜温度の低温化効果が十分に得られないおそれがある上、膜形成率が低下し経済性に劣ることとなるおそれがある。なお、ここで言う不溶物は、粒子状の金属ルテニウムではない。
本発明のインクは、ルテニウム元素以外の金属元素からなる金属粒子や該金属元素を含む金属酸化物粒子等の導電体、半導体または絶縁体の粒子を、得られる膜の導電性を制御する等の目的で、本発明の効果が損なわれない範囲において、含有していてもよい。
本発明のインクは、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の膜の形成用インクであり、例えば、ルテニウム酸化物の膜を形成する場合は、電子回路用の抵抗体素子膜やDRAMのキャパシタ用の電極膜等の形成用インクとして好適であり、特に、表示デバイスや光電変換デバイス等の高い透明度が要求される電極薄膜形成用インクとしても好適である。
本発明にかかる膜形成方法(以下、本発明の方法と称することがある。)は、前述したように、上記本発明にかかる膜形成用インクを基材に塗布して加熱(本加熱)することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を上記基材の表面に膜として定着させる方法である。好ましくは、上記加熱(本加熱)により、上記基材の表面に、金属ルテニウム結晶および/または酸化ルテニウム結晶を生成させ、該結晶の膜として定着させる方法であり、結晶生成を伴う膜形成でないと、例えば、ルテニウム酸化物膜では所望の表面抵抗値が得られない等、所望の物性・特性が発揮されないおそれがある。
本発明の方法に用い得る基材の材質としては、限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したもの;銀や銅やシリコン等の各種金属類;ガラス繊維コンポジットエポキシ樹脂およびシリカコンポジットエポキシ樹脂などの有機質無機質コンポジット類;などが好ましく挙げられる。また、上記基材の材質は、機能面においても、限定はされず、例えば、光学的には透明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn型の半導体、低誘電体または高誘電体;磁気的には磁性体、非磁性体;など、用途・使用目的等に応じて選択すればよい。
基材の形状・形態としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられ、用途・使用目的等に応じて選択すればよく、限定はされないが、小型化・軽量化等を考慮するとフィルム状、シート状等が好ましい。
基材としては、銅貼りフィルムや、ガラスエポキシ積層基板、ビルドアップ積層基板などのプリント配線基板に例示される、いわゆる2次加工品も用いることができる。
本発明の方法は、前述した本発明のインクを塗布液として用い、上記基材を対象として、後述のように実施することができる。
基材への塗布方法は、限定はされず、バーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法およびスピンコート法などの従来公知の塗布方法を用いることができ、また、基材の一部または全部を本発明のインクに漬けたあと取り出すことで基材表面に塗布する、いわゆるディッピング法を用いることもできる。また、例えば電子回路用素子膜(抵抗体素子等)や(透明)電極薄膜として形成する等、基材に直接パターン形成する場合は、マスクを用いた塗布方法やスクリーン印刷方式を用いた塗布方法、または、インクジェット方式を用いた塗布方法を採用することもできる。
塗布して加熱(本加熱)する際の加熱温度は、本発明のインク中の前駆体化合物から、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を生成させ得る温度であれば、限定はされず、例えば、160℃以上、500℃未満が好ましく、より好ましくは160℃以上、400℃未満、さらに好ましくは160〜300℃であるが、特に、ルテニウム酸化物膜の形成に際しては200〜250℃が好ましい。上記加熱温度が、160℃未満であると、金属ルテニウムやルテニウム酸化物の結晶生成が十分に進行せず、所望の膜形成ができないおそれがあり、高すぎると、耐熱性等の面で基材が限定されることとなり、特に樹脂フィルム等については使用し難くなるおそれがある。
本発明の方法は、各種工程のほかに、必要に応じて他の工程を含むことができる。例えば、上記塗布して加熱した後に、基材表面に形成させた膜を洗浄する工程などが挙げられる。
本発明の方法により形成される膜は、金属ルテニウム膜であってもよいし、ルテニウム酸化物膜であってもよいし、金属ルテニウムおよびルテニウム酸化物(金属ルテニウム結晶および酸化ルテニウム結晶)を共に含んでなる膜であってもよく、限定はされないが、一般には、用途等に応じ、加熱温度や加熱雰囲気等の各種加熱(本加熱)条件を適宜制御することで、金属ルテニウム膜およびルテニウム酸化物膜のいずれかの膜が形成される。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<インクの均一性>
得られた膜形成用インクを1日静置して、沈殿物の生成の有無を目視により観察し、以下の基準により評価した。
○:沈殿物なし
△:少量であるが沈殿物あり
×:沈殿物あり(多い)
<インク中の前駆体化合物濃度>
得られた膜形成用インク中の前駆体化合物の濃度を、元素分析することによりルテニウム(Ru)含有量を求め、ルテニウム酸化物(RuO2)に換算した。
(結晶化試験)
得られた膜形成用インク中の前駆体化合物濃度(RuO2換算濃度)が1.5wt%となるように、必要に応じてアセトンを加えて濃度調整し、試験溶液とした。
試験溶液を、試験基材(ポリイミドフィルム)にバーコーターでウエット膜厚30μmとなるように塗布し、50℃に加熱されたホットプレート上で20分間加熱(膜の定着のための加熱)した後、220℃のオーブンで10分間加熱処理した。
加熱処理後、オーブンから取り出して、室温下で十分に冷却し、得られた膜付き基材を下記薄膜X線回折装置(マックーサイエンス社製、製品名:MXP−3VA(型式))により下記条件下で測定して、RuO2膜の生成の有無を以下の基準により判定した。
走査範囲:2θ=20〜80°
スキャンスピード:5°/min
X線入射角度:0.5°
○:RuO2に帰属する回折ピークが観測され、RuO2結晶を含有する膜と判断される。
×:RuO2に帰属する回折ピークが観測されず、RuO2結晶を含有する膜ではないと判断される。
上記結晶化試験において得られた膜付き基材の、膜部分の中央部における表面抵抗値(Ω/□)を、三菱化学製の低抵抗率計(製品名:ロレスタ−GP)を用いた四端子四探針法により、測定した。
<膜の均一性(成膜均一性)>
形成した膜の表面外観を目視により観察し、その均一性を以下の基準により評価した。
○:色むら、塗りムラがない。
△:部分的に斑点が見られるなど部分的にムラがあるがほぼ均一な外観である。
〔実施例1−1〕
攪拌機、添加槽に直結した添加口、温度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器、及び、添加口につながった添加槽、留出ガス出口につながった冷却器(トラップに直結)を備えた反応装置を用意した。
反応器内に、ルテニウム化合物錯体としてのトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ルテニウム(III)65部と、アルコール(反応溶媒)としての1−オクタノール600部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、攪拌しながら(常温(約20℃)から)160℃まで昇温し、160℃±1℃にて10分間加熱保持した後、冷却することにより、前駆体化合物溶液(S1)を得、これを膜形成用インク(11)とした。膜形成用インク(11)は、赤褐色であり、沈殿物を多く含む液であった。
〔実施例1−2〜1−3〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体およびアルコール(反応溶媒)それぞれの種類および量、ならびに、仕込み後の加熱条件を、表1に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(S2)〜(S3)を得、これを膜形成用インク(12)〜(13)とした。
〔実施例1−4〜1−6〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体およびアルコール(反応溶媒)それぞれの種類および量を表1に示すようにし、さらに、表1に示すカルボン酸も反応器内に仕込むとともに、仕込み後の加熱条件を表1に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(S4)〜(S6)を得、これを膜形成用インク(14)〜(16)とした。
〔実施例1−7〜1−10〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体およびアルコール(反応溶媒)それぞれの種類および量を表2に示すようにし、さらに、表2に示すカルボン酸および非アルコール溶媒(他の溶媒)も反応器内に仕込むとともに、仕込み後の加熱条件を表2に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(S7)〜(S10)を得、これを膜形成用インク(17)〜(110)とした。
〔比較例1−1〜1−4〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体および反応溶媒それぞれの種類および量、ならびに、仕込み後の加熱条件を、表3に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(cS1)〜(cS4)を得、これを膜形成用インク(c11)〜(c14)とした。
実施例1−6で得られた膜形成用インク(16)は、目視では沈殿物の生成は見られないが、TEMで観察した結果、1〜2nm程度(最大で3nm程度)の粒子状物が、僅かではあるが確認された。
該インク(16)を遠心分離し、同じ溶媒を加えて再分散した後、再度、遠心分離を行って得られた沈殿物を、<インク中の前駆体化合物濃度>に記載したのと同様の方法で元素分析し、Ru含有量を求めた。
実施例1−6で得られた膜形成用インク(16)を、ベンジルアルコールと2−ブトキシエタノール(1:1)の混合溶媒で、RuO2換算濃度0.75wt%に希釈したものを、ポリイミドフィルムにバーコーターでウエット膜厚30μmに塗布し、60℃で乾燥させた。
得られた乾燥膜付きフィルムについてX線回折測定を行った結果、基材フィルムであるポリイミドに帰属される回折ピーク以外には、回折ピークは観測されなかった(アモルファスな膜)。例えば、原料であるルテニウム(III)2,4−ペンタンジオナト、金属Ru、RuO2に帰属される回折ピークは観察されなかった。
比較例1−3で得られた膜形成用インク(c13)について、同様に希釈した後、ポリイミドフィルムにバーコーターでウエット膜厚30μmに塗布し、60℃で乾燥させた。
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
反応器内に、ルテニウム化合物錯体としてのルテニウム(III)2,4−ペンタンジオナト40部と、アルコール(反応溶媒)としてのベンジルアルコール400部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、密閉状態にし、攪拌しながら(常温(約20℃)から)160℃まで昇温し、160℃±1℃にて20分間加熱保持した後、冷却することにより、前駆体化合物溶液(SR1)を得た。
得られた前駆体化合物溶液(SR1)100部に、他の溶媒としてのプリピレングリコールメチルエーテルアセテート100部を添加混合することにより、膜形成用インク(21)を調製した。
得られた膜付きガラス板は、外観において膜厚ムラを示唆する縞模様が一部認められ、前述した評価方法による膜の均一性(成膜均一性)は「△」であった。また、膜部分の中央部における表面抵抗値(Ω/□)を、三菱化学製の低抵抗率計(製品名:ロレスタ−GP)を用いた四端子四探針法により測定したところ、0.1kΩ/□であった。これらの結果を表4に示した。
実施例2−1において、他の溶媒として、プリピレングリコールメチルエーテルアセテートの代わりに表4に示す溶媒を用いた以外は、同様にして、膜形成用インク(22)〜(25)を調製した。
実施例2−1において、膜形成用インク(21)の代わりに膜形成用インク(22)〜(25)を用い、基材、塗布膜厚および加熱条件を表4に示すようにした以外は、同様にして、各膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材それぞれについて、実施例2−1と同様に、膜の均一性(成膜均一性)の評価および表面抵抗値の測定を行った。これらの結果を表4に示した。
市販のインクジェットプリンターのインク送液ラインとインクジェットヘッドを用いて、簡易式のインクジェット描画装置を作製した。インクジェットヘッドはノズル径100μmの複数のノズルからなり、各ノズルは共通した送液ラインより分岐してなる。また、インクジェットヘッドと基板との距離は基板を固定するホットプレート面の昇降により調整可能である。
基板としてポリイミドフィルムを用い、該フィルムをホットプレート面上に固定して、インクジェットヘッドとの距離が1cmとなるようにした。
インクジェットヘッドを走査しながら、膜形成用インク(23)を送液ラインより供給し、吹き付け速度20μL/分(1ノズル当たり)で、ポリイミドフィルム表面へ吹き付け、幅6mm、長さ20mmの長方形のパターンで塗布膜を形成した。
ホットプレートの温度を230℃に昇温することにより、塗布膜付きフィルムを加熱し、前記の長方形のパターン膜付きフィルムを得た。
Claims (4)
- Ru(III)のβ−ジケトン錯体、β−ケトエステル錯体およびβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種をアルコール中で予備加熱することにより得られる化合物を必須成分として含む、膜形成用インク。
- 前記予備加熱が炭素数2以上のカルボン酸の存在下でなされている、請求項1に記載の膜形成用インク。
- 前記アルコールがπ電子を有するアルコールを必須とする、請求項1または2に記載の膜形成用インク。
- 請求項1から3までのいずれかに記載のインクを基材に塗布して加熱することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を前記基材の表面に膜として定着させる、膜形成方法。
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