JP2005336263A - 膜形成用インクおよび膜形成方法 - Google Patents

膜形成用インクおよび膜形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005336263A
JP2005336263A JP2004155040A JP2004155040A JP2005336263A JP 2005336263 A JP2005336263 A JP 2005336263A JP 2004155040 A JP2004155040 A JP 2004155040A JP 2004155040 A JP2004155040 A JP 2004155040A JP 2005336263 A JP2005336263 A JP 2005336263A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
ruthenium
ink
forming
alcohol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004155040A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005336263A5 (ja
Inventor
Masahiro Yoshimura
昌弘 吉村
Takeshi Fujiwara
武 藤原
Mitsuo Takeda
光生 武田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
Nippon Shokubai Co Ltd
Tokyo Institute of Technology NUC
Original Assignee
Japan Science and Technology Agency
Nippon Shokubai Co Ltd
Tokyo Institute of Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Agency, Nippon Shokubai Co Ltd, Tokyo Institute of Technology NUC filed Critical Japan Science and Technology Agency
Priority to JP2004155040A priority Critical patent/JP2005336263A/ja
Publication of JP2005336263A publication Critical patent/JP2005336263A/ja
Publication of JP2005336263A5 publication Critical patent/JP2005336263A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Abstract

【課題】 金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の膜を、ポリイミド等の樹脂フィルム基板にも成膜可能なより低い温度で形成させることができる膜形成用インク、および、これを用いた膜形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明の膜形成用インクは、Ru(III)のβ−ジケトン錯体、β−ケトエステル錯体およびβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種をアルコール中で予備加熱することにより得られる化合物を必須成分として含む。本発明の膜形成方法は、上記本発明の膜形成用インクを基材に塗布して加熱することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を前記基材の表面に膜として定着させる、膜形成方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、膜形成用のインクおよびこれを用いた膜形成方法に関する。詳しくは、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の膜(結晶薄膜)の形成に用いるインク、および、これを用いて金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を基材の表面に膜(結晶薄膜)として定着させる膜形成方法に関する。
電子機器の小型化、高密度化、省エネ化および低価格化が求められる中で、電子機器の心臓部とも言えるプリント配線基板等の半導体実装分野においても同様の要請があり、簡易かつ高密度に電子回路を形成する技術の開発が必要とされている。そのためには、(i)電子回路を構成する受動素子(高誘電体素子や抵抗体素子等)の薄膜素子への移行、(ii)これら受動素子や電子回路用金属配線の薄膜パターン形成技術のレジスト方式からダイレクトパターニング方式への移行、さらに、(iii)セラミクス基板からフィルム基板(特に、ポリイミド等の絶縁性の樹脂フィルム基板)への移行に向けた低温成膜技術等の要素技術の開発、などが必要とされる。
このような社会的および産業的要請に応えるべく、樹脂フィルム基板に受動素子や金属配線の薄膜を該樹脂の耐熱温度以下という低温で成膜しようとする技術や、これらの薄膜をスクリーン印刷方式やインクジェット方式等により直接パターン形成しようとする技術の研究・開発が活性化してきている。
ところで、電子回路用の金属配線については、一般に、銀や銅が使用されることが多いが、銀系の金属配線では、銀イオンのマイグレーションによる周辺素子機能の低下・阻害や、酸化による電気抵抗値の変動等の問題があり、銅系の金属配線では、銀よりも酸化され易く、また、酸化され易いためにナノ粒子の状態で扱うことが極めて困難であり、特に金属配線の微細化や薄膜化によってこれらの問題はより深刻になりつつある。そこで近年では、これに代わる有望な金属としてルテニウム(金属ルテニウム)が注目されている。金属ルテニウムはまた、受動素子の一つであるコンデンサーの電極材料としても期待され、その他に、メモリー素子であるDRAMの微細化の要請に伴い検討されているキャパシタ用の耐酸化性に優れる電極材料としても有望であろうと考えられている。
金属配線となる金属薄膜をより低温で基材表面に形成する技術としては、例えば、金属粒子のナノサイズ化による低温焼結性を利用し、銀ナノ粒子を含むインクを塗布して乾燥した後、焼結させる方法が提案されている。この方法によれば、樹脂フィルム基板に対しても該樹脂フィルムの耐熱温度以下という低温で銀薄膜を形成できると考えられている。
しかしながら、金属ルテニウムについても同様にナノ粒子化してインクに用いたとしても、その特性上、銀ナノ粒子では可能であった樹脂フィルムの耐熱温度以下という温度では、十分に焼結させることができず、電子回路用金属配線として求められる膜特性を有する金属ルテニウム薄膜を形成することはできない。
また、金属ルテニウム薄膜が形成可能な技術として、スパッタリング法やCVD法も知られているが、装置が高価であるため生産コストが高く、工業的実用性に欠けるという問題がある。
一方、電子回路用の受動素子については、その材料として各種金属の酸化物(セラミクス)が使用されることが知られており、例えば、抵抗体素子には10〜10Ω/□程度の範囲内で所定の抵抗値を示す種々の金属酸化物が使用されるが、なかでも10〜10Ω/□程度の低い抵抗値を示すものとして酸化ルテニウム(ルテニウム酸化物)が有用であると期待されている。
近年では、このような酸化ルテニウム等のセラミクス材料についても、前述の銀ナノ粒子を用いた低温焼結による薄膜形成技術と同様に、ナノ粒子化したものを用いて薄膜形成し、抵抗体素子や高誘電体素子等の受動素子膜を得ようとする技術の提案がなされている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、酸化ルテニウム等のセラミクス材料は、ナノ粒子化して用いたとしても、樹脂フィルムの耐熱温度以下の温度で十分に焼結させることは到底できず、低温での成膜には限界がある。
また、抵抗体素子としての酸化ルテニウム薄膜を形成する他の技術として、RuO系ペースト(RuO微粒子含有)を塗布して乾燥し加熱する方法(例えば、特許文献1参照。)や、ルテニウム化合物またはルテニウム錯体の溶液を塗布して乾燥し高温で焼成する方法(例えば、特許文献2〜4参照。)や、ルテニウム無機塩のアルコールゾルを塗布し焼成する方法(例えば、特許文献5参照。)等が提案されているが、いずれの方法も、低温成膜性に欠け、電子回路用抵抗体素子膜として求められる膜特性が得られない等の問題がある。
特開昭60−127754号公報 特開平1−54701号公報 特開平4−214602号公報 特許第2699381号公報 特許第3257279号公報 「日経エレクトロニクス」,日経BP社,2002年12月,第2号,p32−33
そこで、本発明が解決しようとする課題は、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の膜を、ポリイミド等の樹脂フィルム基板にも成膜可能なより低い温度で形成させることができる膜形成用インク、および、これを用いた膜形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、特定のルテニウム化合物錯体を特定の溶媒中で予備加熱して得られる化合物(前駆体化合物)が、該溶媒中に安定して溶解している状態の溶液をインクとして用いれば、樹脂フィルムにも成膜可能な低い温度で金属ルテニウムや酸化ルテニウムの結晶薄膜を形成させ得ることを見出した。具体的には、インクとしての上記前駆体化合物溶液を基材に塗布(供給)し、例えば200℃以下という低温で加熱(本加熱)することでも、電子回路用金属配線として使用可能な金属ルテニウム膜や、電子回路用抵抗体素子として使用可能な酸化ルテニウム膜を、基材の表面に形成できるのである。
本発明はこのようにして完成された。
したがって、本発明にかかる膜形成用インクは、Ru(III)のβ−ジケトン錯体、β−ケトエステル錯体およびβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種をアルコール中で予備加熱することにより得られる化合物を必須成分として含む。
本発明にかかる膜形成方法は、上記本発明にかかる膜形成用インクを基材に塗布して加熱することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を前記基材の表面に膜として定着させる、膜形成方法である。
本発明によれば、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の膜を、ポリイミド等の樹脂フィルム基板にも成膜可能なより低い温度で形成させることができる膜形成用インク、および、これを用いた膜形成方法を提供することができる。また、本発明の膜形成用インクは、実質的に均一系と言える液であるため、任意の厚みの膜を膜厚分布が極めて均一な状態で形成させることができ、しかも、スクリーン印刷方式やインクジェット方式によるダイレクトパターニングに用いるインクとして好適に使用できる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔膜形成用インク〕
本発明にかかる膜形成用インク(以下、本発明のインクと称することがある。)は、前述したように、Ru(III)(3価のルテニウム元素)のβ−ジケトン錯体、Ru(III)のβ−ケトエステル錯体、および、Ru(III)のβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種のルテニウム化合物錯体を、アルコール中で予備加熱するという特定の方法により得られる化合物(以下、前駆体化合物と称することがある。)を、必須成分として含むことが重要である。
以下では、まず本発明のインクに含まれる成分について具体的に説明し、引き続き、膜形成用インクについて説明する。
(前駆体化合物)
前駆体化合物は、特定のルテニウム化合物錯体とアルコールとを出発原料とし上記特定の方法により得られる化合物であり、好ましくは、該出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を予備加熱状態にする過程を経て生成する化合物であって、別途加熱する(本加熱する)ことにより金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を生成し得る、これらの前駆体となる化合物である。
また、前駆体化合物は、出発原料のルテニウム化合物錯体とは異なるX線回折パターンを示すものである。具体的には、前駆体化合物を含む液(本発明のインク)を基材に塗布し乾燥させて得られた膜について、X線回折測定を行った場合、出発原料のルテニウム化合物錯体の回折パターンと異なるパターンを示すか、あるいは、明確な回折ピークを示さないものであることが好ましい。
前記出発原料となる特定のルテニウム化合物錯体のうち、Ru(III)のβ−ジケトン錯体については、Ru(III)原子に配位するβ−ジケトンが、下記一般式(1):
Figure 2005336263
(ただし、RおよびRは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれかであり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよく、RおよびRは、水素原子ならびに置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれかであり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。)
で表される化合物であればよく、限定はされないが、具体的には、下記一般式(2):
Figure 2005336263
で表されるアセチルアセトンのほか、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン等が好ましく挙げられ、なかでも、安価であるなど工業的に入手が容易な点で、上記一般式(4)で表されるアセチルアセトン、ベンゾイルアセトンおよびジベンゾイルメタンがより好ましい。これらβ−ジケトンは、1種のみ配位されていてもよいし2種以上配位されていてもよい。
同様に、Ru(III)のβ−ケトエステル錯体については、Ru(III)原子に配位するβ−ケトエステルが、下記一般式(3):
Figure 2005336263
(ただし、RおよびRは、上記一般式(1)におけるR(あるいはR)と同様であり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよく、RおよびRは、上記一般式(1)におけるR(あるいはR)と同様であり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。)で表される化合物であればよく、限定はされないが、具体的には、下記一般式(4):
Figure 2005336263
(ただし、Rは上記一般式(3)におけるRと同様である。)
で表されるアセト酢酸アルキル等が好ましく挙げられ、なかでも、安価であるなど工業的に入手が容易な点で、上記一般式(4)で表されるアセト酢酸アルキルのうち、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルおよびアセト酢酸プロピルがより好ましい。これらβ−ケトエステルは、1種のみ配位されていてもよいし2種以上配位されていてもよい。
同様に、Ru(III)のβ−ジエステル錯体については、Ru(III)原子に配位するβ−ジエステルが、下記一般式(5):
Figure 2005336263
(ただし、RおよびRは、上記一般式(1)におけるR(あるいはR)と同様であり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよく、
およびRは、上記一般式(1)におけるR(あるいはR)と同様であり、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。)
で表される化合物であればよく、限定はされないが、具体的には、マロン酸ジアルキル等が好ましく挙げられ、なかでも、安価であるなど工業的に入手が容易な点で、マロン酸ジアルキルのうち、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルおよびマロン酸ジプロピルがより好ましい。これらβ−ジエステルは、1種のみ配位されていてもよいし2種以上配位されていてもよい。
前記出発原料となるアルコールとしては、限定はされないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、不飽和脂肪族1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。なかでも、前駆体化合物をより低い温度(予備加熱温度)で生成させ得る点で、1級のアルコール性水酸基を有するアルコールが好ましく、金属ルテニウムおよび/または酸化ルテニウムの膜を形成する際に金属ルテニウム結晶や酸化ルテニウム結晶をより低い温度(成膜温度)で生成させることができる点で、1価アルコールが好ましく、導電性の高い金属ルテニウムおよび/または酸化ルテニウムの膜をより低い温度(成膜温度)で形成できる点で、π電子を有するアルコールが好ましい。特に、π電子を有するアルコールとしては、上記効果がより顕著に得られる点で、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールや、アリルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール等がより好ましい。これら各種アルコールは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
上記特定の方法においては、ルテニウム化合物錯体とアルコールとの配合比については、限定はされず、ルテニウム化合物錯体中のルテニウム元素とアルコールとのモル比「アルコール/ルテニウム化合物錯体中のルテニウム元素」で、1〜100であることが好ましく、より好ましくは3〜50である。上記モル比が1未満であると、予備加熱による前駆体化合物の生成効率が低下し、金属ルテニウムおよび/または酸化ルテニウムの膜の成膜温度の低温化効果が十分に得られないおそれがあり、100を超えると、ルテニウム化合物錯体の濃度(ひいては前駆体化合物の濃度)が低く生産性に劣り高価となるおそれがある。
上記特定の方法においては、出発原料であるルテニウム化合物錯体とアルコールは、前記予備加熱の開始時点か又は予備加熱中に、前述した配合比で混合されているか又は混合されるようにすればよく、限定はされないが、少なくとも予備加熱の開始時点には前述の配合比で混合されているようにすることが、加熱方法や加熱装置を任意に選択することができ、安価に行うことができる等の点で、好ましい。
上記特定の方法における予備加熱の加熱条件(温度×時間)は、出発原料として用いるルテニウム化合物錯体に含有されるルテニウムの実質的に全量が、金属としてのルテニウムにまで還元される加熱条件(温度×時間)よりマイルドな条件下であること好ましく、例えば、100〜180℃が好ましく、より好ましくは140〜160℃である。このように予備加熱して前駆体化合物を調製しインクの成分として存在させておくことにより、ルテニウム化合物錯体をアルコール等の溶媒に溶解させただけのインクに比べ、成膜温度を格段に低温化できるという効果(金属ルテニウムや酸化ルテニウムの結晶生成温度の低温化効果)が得られる。上記予備加熱の温度が、100℃未満であると、ルテニウム化合物錯体から前駆体化合物への反応が十分に進行せず、前述した本発明の効果が得られないおそれがあり、180℃を超えると、予備加熱の段階で金属ルテニウム(粒子状)が多く生成してしまい前駆体化合物を十分に存在させることができず、前述した本発明の効果が得られないおそれがあり、例えば酸化ルテニウム膜を形成しようとする場合は、成膜温度が数十度またはそれ以上高くなってしまうおそれがある。
上記予備加熱する方法は、限定はされず、例えば、回分式(耐圧)反応装置を用いる方法や、マイクロリアクター等の管状加熱反応炉を備えた装置を用いる方法等が挙げられる。なお、予備加熱時は、常圧下でも加圧下でもよく、限定はされない。
上記予備加熱の時間は、限定はされないが、例えば、前記出発原料の混合系が100℃以上となっている合計時間が、0.1分〜8時間であることが好ましく、より好ましくは1分〜2時間である。予備加熱の時間が、0.1分未満であると、予備加熱効果が不十分となり、前駆体化合物が十分に生成されないおそれがあり、8時間を超えると、生産性が低下し高価となるおそれがある。
上記特定の方法においては、前述した予備加熱がカルボン酸の存在下でなされていることが好ましい。一般に、アルコール中においてルテニウム化合物錯体を加熱(予備加熱)すると、その直後に又はその後経時的に、沈殿物が生成する場合があるが、カルボン酸の存在下で加熱する(すなわちカルボン酸の共存下で加熱する)ようにすると、該沈殿物の生成を効果的に抑制することができる。そうすると、予備加熱後に得られるインクは、不溶物の少ない、より均一性に優れた液となり、膜厚や結晶子径の揃った緻密な膜が形成されやすく、酸化ルテニウム膜であれば導電性に優れた膜が形成されやすい。一方、該沈殿物を多く含んだインクを用いた場合でも成膜すること自体は可能ではあるが、その場合、ロット毎に膜厚が異なる等の問題が生じる。また、成膜前にろ過等により該沈殿物を除いておくようにすることもできるが、結局のところ、出発原料に対する膜形成率(金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の収率)が低下し、経済性に劣ることとなるのは回避し難い。
上記カルボン酸としては、限定はされないが、上記沈殿物の生成抑制効果に優れる点、酸化ルテニウム膜であれば導電性に優れた膜を形成しやすい点で、例えば、1価のカルボン酸が好ましく、より好ましくは1価の脂肪族カルボン酸、さらに好ましくは炭素数2以上のカルボン酸である。このようなカルボン酸としては、限定はされないが、酢酸やプロピオン酸が、予備加熱の際に用いるアルコールとの相溶性にも優れる点で、特に好ましい。上記カルボン酸は、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なお、炭素数2未満のカルボン酸(ギ酸)であると、還元力が強く、予備加熱時に金属ルテニウム(粒子状)が生成されてしまうおそれがあるが、酢酸やプロピオン酸等の炭素数2以上のカルボン酸であると、このような金属ルテニウム(粒子状)の生成を効果的に抑えることができるのである。
上記カルボン酸を用いる場合、その配合比(モル比)は、ルテニウム化合物錯体中のルテニウム元素に対し0.1〜20であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5である。上記モル比が0.1未満であると、沈殿物の生成抑制効果が十分に得られないおそれがあり、20を超えると、基材に均一な膜厚で塗布することが困難となるおそれがある。
(膜形成用インク)
本発明のインクは、全体として液状態を保持し、基材等への良好な塗工性を発揮させるため、および、本発明の効果を得るため、前駆体化合物とともに、該前駆体化合物を溶解させ得る溶媒をも必須成分とする。
上記溶媒としては、限定はされず、例えば、水、炭化水素、ケトン、アルデヒド、エステル(カルボン酸エステル等)およびアルコール等が好ましく挙げられるが、塗布する際の基材への濡れ性や均一成膜性に優れる点で、2種以上のアルコールの混合系や、2種以上の非アルコール溶媒の混合系や、アルコールと非アルコール溶媒との混合系がより好ましく、なかでも、さらに好ましくは、少なくとも1成分がアルコールである混合系であり、特に好ましくは、少なくとも1成分がπ電子を有するアルコールである混合系である。π電子を有するアルコールを必須とすることにより、本発明のインク中において前駆体化合物をそのままの状態で安定して保持することができ、例えば、膜形成の反応に用いるまでの間(すなわち本加熱するまでの間)において、前駆体化合物を変性・変質させず、安定に保持することができる。
上記溶媒として用い得るアルコール(π電子を有するアルコールも含む)としては、具体的には、前述した前駆体化合物の説明で列挙したアルコールと同様のものが好ましく挙げられる。
上記溶媒が、π電子を有するアルコールを1成分とする混合系である場合、該π電子を有するアルコールと組み合わせて用い得る他の成分となる溶媒としては、具体的には、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール−t−ブチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体等が好ましく挙げられる。
上記溶媒としてアルコールを用いる場合、該アルコールは、予備加熱による前駆体化合物の調製の際に用いたアルコールであってもよいし、それとは別に加えたアルコールであってもよく、これらの組み合わせであってもよいが、前駆体化合物の調製の際に用いたアルコールを少なくとも一部に含むことが好ましい。
上記溶媒を必須成分とする膜形成用インクは、前駆体化合物の調製液から、以下のようにして得られることが好ましい。すなわち、前駆体化合物の調製液をそのまま用いるか、該調製液を濃縮するか、該調製液(必要に応じ濃縮しておいてもよい)に他の溶媒成分を添加混合するか、あるいは、該調製液について加熱溶媒置換等を施すことで他の溶媒成分に置換する、等の方法により好ましく得ることができる。
本発明のインクにおいては、前駆体化合物の含有割合は、ルテニウム酸化物(RuO)換算で、上記溶媒に対し0.1〜10wt%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5wt%である。上記含有割合が0.1wt%未満であると、生産性に劣ることとなるほか、ウエット膜厚を厚くして基材に塗布する必要が生じ、均一な膜厚が得られないおそれがあり、10wt%を超えると、前駆体化合物が十分に溶解できず過剰に析出してしまうおそれがある。
本発明のインクにおいては、前駆体化合物が溶媒中に完全溶解していることには限定はされず、その一部が析出し不溶物となっていてもよい。該不溶物が認められる場合、その含有割合は、ルテニウム換算で、前駆体化合物中のルテニウム全量に対し50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。上記不溶物の含有割合が50重量%を超えると、成膜温度の低温化効果が十分に得られないおそれがある上、膜形成率が低下し経済性に劣ることとなるおそれがある。なお、ここで言う不溶物は、粒子状の金属ルテニウムではない。
本発明のインクは、一般に、本発明の効果がより顕著に得られる点で、粒子状の金属ルテニウムを含まないものであることが好ましいが、これに限定はされず、一部に含むものであってもよい。本発明のインクに含まれ得る金属ルテニウム粒子は、一般には、前記特定の方法により前駆体化合物を調製した際に副生されるものである。なお、この金属ルテニウム粒子とは、前駆体化合物を含む上記調製後の液を試料としてTEMで観察したときに粒子状のものとして観察可能なものであり、かつ、上記調製後の液を、非酸化条件下で、例えば、(i)50℃以下で遠心分離や真空乾燥して回収するか、または、(ii)ガラス板等の基板上において50℃以下で真空乾燥して該基板上に定着させる、ことで得られた粒子を試料として粉末X線回折、薄膜X線回折および電子線回折のうちのいずれかの測定方法により該粒子がルテニウム金属からなることが確認できるものを言う、と定義する。
本発明のインクにおいて金属ルテニウム粒子が含まれる場合、その含有量は、出発原料として用いたルテニウム化合物錯体中のルテニウム元素に対し、該粒子中のルテニウム元素の割合が、50原子%未満となる量であることが好ましく、より好ましくは30原子%以下、さらに好ましくは10原子%以下である。上記割合が50原子%以上であると、成膜温度を十分に低温化することができず、前述した本発明の効果が得られないおそれがある。
本発明のインクは、ルテニウム元素以外の金属元素からなる金属粒子や該金属元素を含む金属酸化物粒子等の導電体、半導体または絶縁体の粒子を、得られる膜の導電性を制御する等の目的で、本発明の効果が損なわれない範囲において、含有していてもよい。
本発明のインクは、前述した各種成分を含むものであればよく、各種成分の混合方法や添加方法等、その調製方法は何ら限定されず、公知の混合方法や添加方法等を適宜選択し採用すればよい。
本発明のインクは、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物の膜の形成用インクであり、例えば、ルテニウム酸化物の膜を形成する場合は、電子回路用の抵抗体素子膜やDRAMのキャパシタ用の電極膜等の形成用インクとして好適であり、特に、表示デバイスや光電変換デバイス等の高い透明度が要求される電極薄膜形成用インクとしても好適である。
〔膜形成方法〕
本発明にかかる膜形成方法(以下、本発明の方法と称することがある。)は、前述したように、上記本発明にかかる膜形成用インクを基材に塗布して加熱(本加熱)することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を上記基材の表面に膜として定着させる方法である。好ましくは、上記加熱(本加熱)により、上記基材の表面に、金属ルテニウム結晶および/または酸化ルテニウム結晶を生成させ、該結晶の膜として定着させる方法であり、結晶生成を伴う膜形成でないと、例えば、ルテニウム酸化物膜では所望の表面抵抗値が得られない等、所望の物性・特性が発揮されないおそれがある。
(基材)
本発明の方法に用い得る基材の材質としては、限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したもの;銀や銅やシリコン等の各種金属類;ガラス繊維コンポジットエポキシ樹脂およびシリカコンポジットエポキシ樹脂などの有機質無機質コンポジット類;などが好ましく挙げられる。また、上記基材の材質は、機能面においても、限定はされず、例えば、光学的には透明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn型の半導体、低誘電体または高誘電体;磁気的には磁性体、非磁性体;など、用途・使用目的等に応じて選択すればよい。
本発明のインクを用いることによる成膜温度の低温化効果を考慮すると、基材の材質としては、各種樹脂または有機質無機質コンポジット類を好適に用いることができ、なかでも、耐熱性の樹脂または有機質無機質コンポジット類がより好ましく、ポリイミド等の絶縁特性に優れた樹脂または有機質無機質コンポジット類がさらに好ましい。
基材の形状・形態としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられ、用途・使用目的等に応じて選択すればよく、限定はされないが、小型化・軽量化等を考慮するとフィルム状、シート状等が好ましい。
基材としては、銅貼りフィルムや、ガラスエポキシ積層基板、ビルドアップ積層基板などのプリント配線基板に例示される、いわゆる2次加工品も用いることができる。
(膜形成方法)
本発明の方法は、前述した本発明のインクを塗布液として用い、上記基材を対象として、後述のように実施することができる。
基材への塗布方法は、限定はされず、バーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法およびスピンコート法などの従来公知の塗布方法を用いることができ、また、基材の一部または全部を本発明のインクに漬けたあと取り出すことで基材表面に塗布する、いわゆるディッピング法を用いることもできる。また、例えば電子回路用素子膜(抵抗体素子等)や(透明)電極薄膜として形成する等、基材に直接パターン形成する場合は、マスクを用いた塗布方法やスクリーン印刷方式を用いた塗布方法、または、インクジェット方式を用いた塗布方法を採用することもできる。
基材への塗布においては、塗布膜厚は、限定はされず、膜の構成成分や用途に応じ、または、所望の物性(表面抵抗値など)を発揮するよう、適宜設定すればよいが、例えば、計算膜厚(加熱(本加熱)後の膜厚)が0.002〜1μmとなるようにすることが好ましく、より好ましくは上限が0.5μm以下、さらに好ましくは上限が0.1μm以下である。
塗布して加熱(本加熱)する際の加熱温度は、本発明のインク中の前駆体化合物から、金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を生成させ得る温度であれば、限定はされず、例えば、160℃以上、500℃未満が好ましく、より好ましくは160℃以上、400℃未満、さらに好ましくは160〜300℃であるが、特に、ルテニウム酸化物膜の形成に際しては200〜250℃が好ましい。上記加熱温度が、160℃未満であると、金属ルテニウムやルテニウム酸化物の結晶生成が十分に進行せず、所望の膜形成ができないおそれがあり、高すぎると、耐熱性等の面で基材が限定されることとなり、特に樹脂フィルム等については使用し難くなるおそれがある。
上記加熱(本加熱)の方法は、限定はされず、公知の加熱装置を用いた方法を採用すればよい。例えば、ホットプレート等のヒーターを用いた加熱や、加熱炉を用いた熱風による加熱等が一般的であるが、これらに限定はされず、紫外線照射などの手段を採用することもできる。上記加熱の際は、常圧下、加圧下および減圧下のいずれの圧力下で行ってもよい。また、加熱雰囲気は、酸化性雰囲気下であっても、非酸化性雰囲気下であってもよく、限定はされないが、金属ルテニウム膜の形成に際しては、一般には、非酸化性雰囲気下で行うようにする。一方、ルテニウム酸化物膜の形成に際しては、一般には、酸化性雰囲気下で行うようにする。低原子価ルテニウム(Ru(III)、Ru(II)、Ru(I))の酸化物膜を形成する場合は、酸素濃度の制御された雰囲気下で行うようにすることが好ましい。
なお、本発明の方法においては、上述した塗布と加熱とは、独立した工程として別々に行ってもよいし(塗布した後に加熱する等)、少なくとも一部を同時に行ってもよく(塗布しながら加熱する等)、限定はされない。
本発明の方法は、各種工程のほかに、必要に応じて他の工程を含むことができる。例えば、上記塗布して加熱した後に、基材表面に形成させた膜を洗浄する工程などが挙げられる。
本発明の方法により形成される膜は、金属ルテニウム膜であってもよいし、ルテニウム酸化物膜であってもよいし、金属ルテニウムおよびルテニウム酸化物(金属ルテニウム結晶および酸化ルテニウム結晶)を共に含んでなる膜であってもよく、限定はされないが、一般には、用途等に応じ、加熱温度や加熱雰囲気等の各種加熱(本加熱)条件を適宜制御することで、金属ルテニウム膜およびルテニウム酸化物膜のいずれかの膜が形成される。
本発明の方法により形成される膜は、本発明のインクを用いて得られた膜であるため、緻密性、基材への密着性、機械的強度、膜厚の均一性等に優れた膜であり、ウエットプロセスでありながら、極めて薄い膜(例えば、数ナノメートル〜数十ナノメートル)でも導電性に優れた膜となり得る。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<インクの均一性>
得られた膜形成用インクを1日静置して、沈殿物の生成の有無を目視により観察し、以下の基準により評価した。
○:沈殿物なし
△:少量であるが沈殿物あり
×:沈殿物あり(多い)
<インク中の前駆体化合物濃度>
得られた膜形成用インク中の前駆体化合物の濃度を、元素分析することによりルテニウム(Ru)含有量を求め、ルテニウム酸化物(RuO)に換算した。
<インクの成膜試験>
(結晶化試験)
得られた膜形成用インク中の前駆体化合物濃度(RuO換算濃度)が1.5wt%となるように、必要に応じてアセトンを加えて濃度調整し、試験溶液とした。
試験溶液を、試験基材(ポリイミドフィルム)にバーコーターでウエット膜厚30μmとなるように塗布し、50℃に加熱されたホットプレート上で20分間加熱(膜の定着のための加熱)した後、220℃のオーブンで10分間加熱処理した。
加熱処理後、オーブンから取り出して、室温下で十分に冷却し、得られた膜付き基材を下記薄膜X線回折装置(マックーサイエンス社製、製品名:MXP−3VA(型式))により下記条件下で測定して、RuO膜の生成の有無を以下の基準により判定した。
X線:CuKα1線(波長:1.54056Å)/40kV/200mA
走査範囲:2θ=20〜80°
スキャンスピード:5°/min
X線入射角度:0.5°
○:RuOに帰属する回折ピークが観測され、RuO結晶を含有する膜と判断される。
×:RuOに帰属する回折ピークが観測されず、RuO結晶を含有する膜ではないと判断される。
(膜の表面抵抗値)
上記結晶化試験において得られた膜付き基材の、膜部分の中央部における表面抵抗値(Ω/□)を、三菱化学製の低抵抗率計(製品名:ロレスタ−GP)を用いた四端子四探針法により、測定した。
<膜の均一性(成膜均一性)>
形成した膜の表面外観を目視により観察し、その均一性を以下の基準により評価した。
○:色むら、塗りムラがない。
△:部分的に斑点が見られるなど部分的にムラがあるがほぼ均一な外観である。
×:全体的に色ムラ、塗りムラがあり、明らかに顕著な膜厚ムラがある。
〔実施例1−1〕
攪拌機、添加槽に直結した添加口、温度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器、及び、添加口につながった添加槽、留出ガス出口につながった冷却器(トラップに直結)を備えた反応装置を用意した。
反応器内に、ルテニウム化合物錯体としてのトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ルテニウム(III)65部と、アルコール(反応溶媒)としての1−オクタノール600部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、攪拌しながら(常温(約20℃)から)160℃まで昇温し、160℃±1℃にて10分間加熱保持した後、冷却することにより、前駆体化合物溶液(S1)を得、これを膜形成用インク(11)とした。膜形成用インク(11)は、赤褐色であり、沈殿物を多く含む液であった。
膜形成用インク(11)について、前述した方法により、各種測定および評価を行い、その結果を表1に示した。
〔実施例1−2〜1−3〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体およびアルコール(反応溶媒)それぞれの種類および量、ならびに、仕込み後の加熱条件を、表1に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(S2)〜(S3)を得、これを膜形成用インク(12)〜(13)とした。
膜形成用インク(12)〜(13)について、前述した方法により、各種測定および評価を行い、その結果を表1に示した。
〔実施例1−4〜1−6〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体およびアルコール(反応溶媒)それぞれの種類および量を表1に示すようにし、さらに、表1に示すカルボン酸も反応器内に仕込むとともに、仕込み後の加熱条件を表1に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(S4)〜(S6)を得、これを膜形成用インク(14)〜(16)とした。
膜形成用インク(14)〜(16)について、前述した方法により、各種測定および評価を行い、その結果を表1に示した。
〔実施例1−7〜1−10〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体およびアルコール(反応溶媒)それぞれの種類および量を表2に示すようにし、さらに、表2に示すカルボン酸および非アルコール溶媒(他の溶媒)も反応器内に仕込むとともに、仕込み後の加熱条件を表2に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(S7)〜(S10)を得、これを膜形成用インク(17)〜(110)とした。
膜形成用インク(17)〜(110)について、前述した方法により、各種測定および評価を行い、その結果を表2に示した。
〔比較例1−1〜1−4〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
実施例1−1において、反応器内に仕込むルテニウム化合物錯体および反応溶媒それぞれの種類および量、ならびに、仕込み後の加熱条件を、表3に示すようにした以外は、同様にして、前駆体化合物溶液(cS1)〜(cS4)を得、これを膜形成用インク(c11)〜(c14)とした。
膜形成用インク(c11)〜(c14)について、前述した方法により、各種測定および評価を行い、その結果を表3に示した。
実施例1−6で得られた膜形成用インク(16)は、目視では沈殿物の生成は見られないが、TEMで観察した結果、1〜2nm程度(最大で3nm程度)の粒子状物が、僅かではあるが確認された。
該インク(16)を遠心分離し、同じ溶媒を加えて再分散した後、再度、遠心分離を行って得られた沈殿物を、<インク中の前駆体化合物濃度>に記載したのと同様の方法で元素分析し、Ru含有量を求めた。
その結果、全Ru含有量(インク中に溶解しているもの+微粒子状のもの)(RuO換算で2.0wt%であり、表1に記載)に対し、Ru原子量換算で10wt%以下であることが確認された。
実施例1−6で得られた膜形成用インク(16)を、ベンジルアルコールと2−ブトキシエタノール(1:1)の混合溶媒で、RuO換算濃度0.75wt%に希釈したものを、ポリイミドフィルムにバーコーターでウエット膜厚30μmに塗布し、60℃で乾燥させた。
得られた乾燥膜付きフィルムについてX線回折測定を行った結果、基材フィルムであるポリイミドに帰属される回折ピーク以外には、回折ピークは観測されなかった(アモルファスな膜)。例えば、原料であるルテニウム(III)2,4−ペンタンジオナト、金属Ru、RuOに帰属される回折ピークは観察されなかった。
実施例1−3についても、同様に、得られた乾燥膜付きフィルムについてX線回折測定を行った結果、原料であるルテニウム(III)2,4−ペンタンジオナト、金属Ru、RuOに帰属される回折ピークは観察されず、原料錯体、RuO、金属Ruとは異なる位置に回折ピークが観察された。低角域(2θ=9.36°、11.0°、13.16°)にシャープな回折ピークが存在することから、原料錯体とは異なる錯体がRu化合物の主成分として含有されていると考えられる。
比較例1−3で得られた膜形成用インク(c13)について、同様に希釈した後、ポリイミドフィルムにバーコーターでウエット膜厚30μmに塗布し、60℃で乾燥させた。
得られた乾燥膜付きフィルムについてX線回折測定を行った結果、原料であるルテニウム(III)2,4−ペンタンジオナトに帰属される回折ピークが観察された。
Figure 2005336263
Figure 2005336263
Figure 2005336263
〔実施例2−1〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意した。
反応器内に、ルテニウム化合物錯体としてのルテニウム(III)2,4−ペンタンジオナト40部と、アルコール(反応溶媒)としてのベンジルアルコール400部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、密閉状態にし、攪拌しながら(常温(約20℃)から)160℃まで昇温し、160℃±1℃にて20分間加熱保持した後、冷却することにより、前駆体化合物溶液(SR1)を得た。
得られた前駆体化合物溶液(SR1)100部に、他の溶媒としてのプリピレングリコールメチルエーテルアセテート100部を添加混合することにより、膜形成用インク(21)を調製した。
膜形成用インク(21)を、基材としてのガラス板に、バーコーターにより塗布膜厚(ウエット膜厚)15μmなるように塗布し、40℃で10分間加熱(膜の定着のための加熱)した後、300℃のホットプレート上で10分間加熱し、その後、室温下で十分に冷却して、膜付きガラス板を得た。
得られた膜付きガラス板は、外観において膜厚ムラを示唆する縞模様が一部認められ、前述した評価方法による膜の均一性(成膜均一性)は「△」であった。また、膜部分の中央部における表面抵抗値(Ω/□)を、三菱化学製の低抵抗率計(製品名:ロレスタ−GP)を用いた四端子四探針法により測定したところ、0.1kΩ/□であった。これらの結果を表4に示した。
〔実施例2−2〜2−5〕
実施例2−1において、他の溶媒として、プリピレングリコールメチルエーテルアセテートの代わりに表4に示す溶媒を用いた以外は、同様にして、膜形成用インク(22)〜(25)を調製した。
実施例2−1において、膜形成用インク(21)の代わりに膜形成用インク(22)〜(25)を用い、基材、塗布膜厚および加熱条件を表4に示すようにした以外は、同様にして、各膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材それぞれについて、実施例2−1と同様に、膜の均一性(成膜均一性)の評価および表面抵抗値の測定を行った。これらの結果を表4に示した。
Figure 2005336263
〔実施例3−1〕
市販のインクジェットプリンターのインク送液ラインとインクジェットヘッドを用いて、簡易式のインクジェット描画装置を作製した。インクジェットヘッドはノズル径100μmの複数のノズルからなり、各ノズルは共通した送液ラインより分岐してなる。また、インクジェットヘッドと基板との距離は基板を固定するホットプレート面の昇降により調整可能である。
基板としてポリイミドフィルムを用い、該フィルムをホットプレート面上に固定して、インクジェットヘッドとの距離が1cmとなるようにした。
上記描画装置のインクセルに、実施例2−3で得られた膜形成用インク(23)を注入し、固定したポリイミドフィルムが50℃になるよう、ホットプレートを加熱しておいた。
インクジェットヘッドを走査しながら、膜形成用インク(23)を送液ラインより供給し、吹き付け速度20μL/分(1ノズル当たり)で、ポリイミドフィルム表面へ吹き付け、幅6mm、長さ20mmの長方形のパターンで塗布膜を形成した。
ホットプレートの温度を230℃に昇温することにより、塗布膜付きフィルムを加熱し、前記の長方形のパターン膜付きフィルムを得た。
得られたパターン膜の膜厚は100nmであった。また、得られたパターン膜の中央部における表面抵抗値(Ω/□)を、三菱化学製の低抵抗率計(製品名:ロレスタ−GP)を用いた四端子四探針法により測定したところ、1kΩ/□であった。
本発明にかかる膜形成用インクおよび本発明にかかる膜形成方法は、例えば、電子回路用の抵抗体素子膜やDRAMのキャパシタ用電極膜等のほか表示デバイスや光電変換デバイス等の高い透明度が要求される電極薄膜にも用いることのできるルテニウム酸化物膜や、電子回路用の金属配線等に用いることのできる金属ルテニウム膜の、低温での膜形成に好適である。

Claims (4)

  1. Ru(III)のβ−ジケトン錯体、β−ケトエステル錯体およびβ−ジエステル錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種をアルコール中で予備加熱することにより得られる化合物を必須成分として含む、膜形成用インク。
  2. 前記予備加熱が炭素数2以上のカルボン酸の存在下でなされている、請求項1に記載の膜形成用インク。
  3. 前記アルコールがπ電子を有するアルコールを必須とする、請求項1または2に記載の膜形成用インク。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載のインクを基材に塗布して加熱することにより、生成する金属ルテニウムおよび/またはルテニウム酸化物を前記基材の表面に膜として定着させる、膜形成方法。
JP2004155040A 2004-05-25 2004-05-25 膜形成用インクおよび膜形成方法 Pending JP2005336263A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004155040A JP2005336263A (ja) 2004-05-25 2004-05-25 膜形成用インクおよび膜形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004155040A JP2005336263A (ja) 2004-05-25 2004-05-25 膜形成用インクおよび膜形成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005336263A true JP2005336263A (ja) 2005-12-08
JP2005336263A5 JP2005336263A5 (ja) 2007-02-22

Family

ID=35490178

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004155040A Pending JP2005336263A (ja) 2004-05-25 2004-05-25 膜形成用インクおよび膜形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005336263A (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002201162A (ja) * 2000-06-08 2002-07-16 Jsr Corp ルテニウム膜および酸化ルテニウム膜、ならびにその形成方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002201162A (ja) * 2000-06-08 2002-07-16 Jsr Corp ルテニウム膜および酸化ルテニウム膜、ならびにその形成方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
DE60125174T2 (de) Direktes drucken von dünnschicht-leitern mit metallchelat-tinten
TWI399759B (zh) 形成太陽電池之電極用組成物及該電極之形成方法以及使用依該形成方法所得電極之太陽電池
JP5068374B2 (ja) 複数のインクから光起電性の導電性フィーチャを形成するプロセス
JP5309440B2 (ja) 太陽電池の電極形成用組成物及び該電極の形成方法並びに該形成方法により得られた電極を用いた太陽電池の製造方法
KR101802458B1 (ko) 금속 나노입자 분산액
US20110180764A1 (en) Silver-containing powder, method for producing the same, conductive paste using the same, and plastic substrate
US20070279182A1 (en) Printed resistors and processes for forming same
KR20080088716A (ko) 금속 나노 입자의 제조방법, 이를 포함하는 전도성 잉크조성물 및 이를 이용한 전도성 패턴의 형성방법
KR101777342B1 (ko) 금속 나노입자 분산액의 제조 방법
WO2004103043A1 (ja) 銅微粒子焼結体型の微細形状導電体の形成方法、該方法を応用した銅微細配線ならびに銅薄膜の形成方法
JP2008500151A (ja) パターン膜形成方法、装置と材料および製品
JP2016058227A (ja) 導電膜の製造方法
TWI548640B (zh) A zinc oxide film forming composition, and a method for producing a zinc oxide film
JP6071913B2 (ja) インクジェット用導電インク組成物
WO2014156326A1 (ja) 導電膜形成用組成物およびこれを用いる導電膜の製造方法
CN103702786B (zh) 银微颗粒以及含有该银微颗粒的导电性膏、导电性膜和电子器件
TW201415489A (zh) 導電膜形成用組成物及導電膜的製造方法
JP2005336263A (ja) 膜形成用インクおよび膜形成方法
JP6727174B2 (ja) 導電膜形成用組成物、導電膜の製造方法、ギ酸銅錯体
KR101582637B1 (ko) CuO 나노입자와 그의 잉크 및 마이크로파 조사를 통한 CuO 박막으로부터 Cu박막으로 환원시키는 이들의 제조방법
TW201343823A (zh) 導電墨水、附導體之基材及附導體之基材之製造方法
JP2008235035A (ja) 金属ナノ粒子ペースト及び当該金属ナノ粒子ペーストの製造方法
JP6109130B2 (ja) 導電膜形成用組成物、導電膜の製造方法、および、導電膜
JP2012153820A (ja) 印刷用液状組成物及びそれを用いて得られる導体配線及びその形成方法、熱伝導路、接合材
WO2014097817A1 (ja) 導電膜およびその前駆体膜ならびに導電膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070109

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070109

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100205

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100216

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100706