JP2005329461A - 脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物およびその製造方法 - Google Patents

脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 溶接ビードに沿って伝播する脆性き裂を停止させ、脆性破壊による破壊を食い止めることのできる脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 厚みtが10mm以上の鋼板同士を溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物において、鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に一対以上配設されており、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、造船分野でも特に大形船舶、タンク圧力容器分野でも特に石油やLNG貯蔵タンクなどの溶接大形鋼構造物の脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物およびその製造方法に関するものである。
大形船や大形貯蔵タンクなどは構造物自体が多数の鋼板の付き合わせ溶接により製作されている。このような構造物では脆性破壊が溶接接合部の溶接欠陥から発生することが懸念されているが、脆性き裂が発生すると、溶接残留応力によって母材側へ逸れるのが一般的であり、母材側での脆性き裂伝播停止特性が十分に高い場合には伝播停止が期待できる。しかし、万が一溶接ビードに沿って脆性き裂が大きく伝播すること危険性を考慮し、例えば円筒型タンクでは鋼板の溶接線が負荷方向と直角方向に一列に並ばないよう、脆性き裂が溶接部をもし伝播してもできるだけ速やかに比較的脆性き裂伝播停止特性の高い母材に突入するように施工するのが一般的である。
造船分野でも甲板やデッキで生じた脆性き裂が船体を大きく伝播しないよう、脆性き裂伝播停止性能の高い鋼材が要所に用いられることがある。脆性き裂伝播停止性能の高い鋼材としては例えば、合金成分としてNi含有する鋼材や結晶粒径が小さい鋼材(特許文献1、特許文献2、特許文献3)などがある。
その他、脆性き裂の伝播を停止させる方法としては金沢らがクラックアレスターの一連の研究で種々の方法を検討しており、1:き裂伝播経路の両側に穴をあける方法(非特許文献1)、2:鋼板を貼り付ける方法(非特許文献2)、3:リベットスチフナーを取り付けたもの(非特許文献3)、4:スチフナーを溶接接合したもの(非特許文献1)などが考えられている。
特開平10−088281号公報 特開平10−102183号公報 特開平11−140584号公報 金沢ら:クラックアレスターに関する基礎的研究(第1報),造船協会論文集,第115,pp78−88,1964. 金沢ら:クラックアレスターに関する基礎的研究(第2報)−Patch型アレスターモデルについての基礎的考察−,造船協会論文集,第116,pp124−135,1964. 吉識ら:クラックアレスターに関する基礎的研究(第3報)−実験的検討−,造船協会論文集,第118,pp192−203,1965. 金沢ら:クラックアレスターに関する基礎的研究(第6報)−スチフナ型アレスタの有効性について,日本造船学会論文集,第124,pp321−330,1968.
従来の技術では、溶接部で生じた脆性き裂は溶接残留応力により母材側に逸れることが多いため、母材の伝播停止特性を確保することで安全性を確保してきたが、工期の短縮や溶接効率のために行われる大入熱溶接などでは溶接部の破壊靭性が著しく低下する場合や溶接熱影響部が軟化する場合があるため、熱影響を受けていない素材では十分な脆性破壊伝播阻止特性を持っていたとしても、母材側に逸れず、溶接ビードに沿って溶接熱影響部付近をき裂が伝播し、大規模破壊に至る危険性が高い。
溶接構造物の施工では溶接ビードが一列に並んだ方が溶接しやすく、工期を短く、施工費用を安くすることが可能であるため、例えば大型船では大きなブロックごとに組み立てられ、そのブロック同士を溶接接合することで製作されている。特にブロックごとの溶接に大入熱溶接を利用することは溶接効率や工期の点で優れているが、溶接ビードに沿う脆性き裂伝播の危険性が高いため採用できないことが多い。
前記の部材の主応力方向に対して直角に近い方向に大入熱溶接ビードを一列に連続させた場合には、脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材を脆性き裂の進行すると考えられる方向に配置することで大規模脆性破壊を防止する方法を用いたとしても、素材のままでは脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材であっても溶接によって熱影響部の脆性き裂伝播停止特性が低下し、溶接ビードに沿う溶接熱影響部での脆性き裂の伝播が起こりやすくなるため、脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材を用いた効果がなくなってしまう場合がある。このため、特許文献1、特許文献2、特許文献3にある脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材でも溶接ビードの溶融線に沿う脆性破壊は停止させることができない場合がある。
以上のことから、脆性き裂伝播停止特性の低い溶接ビードに沿う溶接熱影響部から脆性き裂を速やかに母材側へ逸らし脆性き裂伝播停止特性の高い部位へ誘導することおよび、溶接部で脆性き裂の伝播を阻止する方法が望まれている。
前記非特許文献の技術を溶接部を伝播する脆性き裂の停止のために利用することを考えると、非特許文献1では鋼板に穴をあけてしまうため船やタンクなどの外板には適用できない。非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4は鋼板に付加物を取り付けることになり、重量の増加や取り付け溶接部からの疲労き裂発生や形状による腐食の懸念など、脆性き裂伝播以外の問題が生じるため適用できないことが多い。
そこで、本発明は、溶接鋼構造物の溶接部に添って伝播する脆性き裂を脆性き裂伝播停止性能の高い母材側に逸らし脆性き裂の伝播を停止させることと溶接部に沿う脆性き裂の伝播を停止させることの二つの効果をもつ脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物において、 前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、前記き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設されており、該圧縮予ひずみ部は、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有することを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物。
(2)厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製される鋼構造物であって、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定され、該脆性き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード(脆性き裂初期伝播ビード)方向には、溶接溶融線付近に脆性き裂の発生が想定される鋼板(脆性き裂発生鋼板)、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板が順に配設されるとともに、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれシャルピー破面遷移温度の異なる異種鋼板同士は、前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードにほぼ直交する突き合わせ溶接またはT継手溶接(これらを総称して直交溶接という。)により接合されてなる溶接鋼構造物において、
前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、前記脆性き裂発生鋼板の前記脆性き裂初期伝播ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設されており、各圧縮予ひずみ部は、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置であり、前記直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離cが2√(A/3)以内となる位置関係を有することを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物。
(3)前記脆性き裂発生鋼板と前記高靱性鋼板との接合部のなす角度dが20°〜180°であることを特徴とする(2)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物。
(4)厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物の製造方法において、
前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部を、前記き裂の初期伝播方向に沿った溶接を行った後に、該溶接ビードに沿って、該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設する溶接鋼構造物の製造方法であって、
該圧縮予ひずみ部は、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有することを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物の製造方法。
(5)厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製される鋼構造物であって、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定され、該脆性き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード(脆性き裂初期伝播ビード)方向には、溶接溶融線付近に脆性き裂の発生が想定される鋼板(脆性き裂発生鋼板)、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板が順に配設されるとともに、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれシャルピー破面遷移温度の異なる異種鋼板同士は、前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードにほぼ直交する突き合わせ溶接またはT継手溶接(これらを総称して直交溶接という。)により接合されてなる溶接鋼構造物の製造方法において、
前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部を、前記脆性き裂発生鋼板の前記脆性き裂初期伝播ビードを溶接した後に、該溶接ビードの沿いであって、該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設する溶接鋼構造物の製造方法であって、
各圧縮予ひずみ部は、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置であり、前記直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離cが2√(A/3)以内となる位置関係を有することを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物の製造方法。
本発明は脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材をあわせて使うことで、溶接鋼構造物の溶接部に沿って伝播する脆性き裂を、脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材側へ逸らすことによって、溶接構造物の脆性破壊を小規模に食い止めることができる。
また、脆性き裂が脆性き裂伝播停止特性の高い鋼材側に逸れなくても、き裂伝播方向の応力を低下させ、脆性き裂の伝播を妨げることに効果がある。
さらに、溶接後の穴あけや溶接を行うことが無いため、従来の方法より手数がかからず、簡易に脆性き裂伝播停止特性を向上させることができる。
本発明は、大形船やタンクなど溶接鋼構造物の溶接継手部の両側に圧縮負荷を与えることにより脆性き裂の経路となりやすい溶接部の一部に圧縮残留応力を与え、脆性き裂の伝播を阻止することと、同時に溶接部から離れた位置に引張応力を発生させることで鋼板の脆性き裂を脆性き裂伝播停止特性の高い部位に導き、脆性き裂を停止させることを特徴とするものである。
具体的には、請求項1の発明は、厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物において、前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、前記き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設されており、該圧縮予ひずみ部は、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有することを特徴とする。
本発明の対象を、厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物とするのは、厚みtが10mm以下では脆性破壊が極めて起こりにくいためであり、また、脆性き裂の発生伝播は溶接により破壊靭性の低下している部位で起こる危険性が高いからである。
また、前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部を、前記き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設するのは、圧縮予ひずみ部の周りに圧縮残留応力を発生させるためからである。
さらに、該圧縮予ひずみ部は、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有するのは、aが5mmより小さい場合には圧縮予ひずみ付加部の変形により溶接ビードのトウ部も変形してしまう可能性があり、き裂を誘発する可能性があるためであり、また、bがtより大きい場合には圧縮予ひずみ付加による溶接ビードの熱影響部付近の残留圧縮応力が低下するため、本発明の効果が減少するからである。
図1は、 請求項1に記載の本発明の一実施例を示す図である。
図1において、1は鋼板、2は圧縮予ひずみ部、3は溶接ビード、4は脆性き裂を示す。
図1のaは、圧縮予ひずみ部の溶接溶融線からの最短距離を示す。
図1のbは、圧縮予ひずみ部の溶接金属中央線からの最短距離を示す。
請求項2の発明は、厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製される鋼構造物であって、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定され、該脆性き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード(脆性き裂初期伝播ビード)方向には、溶接溶融線付近に脆性き裂の発生が想定される鋼板(脆性き裂発生鋼板)、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板が順に配設されるとともに、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれシャルピー破面遷移温度の異なる異種鋼板同士は、前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードにほぼ直交する突き合わせ溶接またはT継手溶接(これらを総称して直交溶接という。)により接合されてなる溶接鋼構造物において、 前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、前記脆性き裂発生鋼板の前記脆性き裂初期伝播ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設されており、各圧縮予ひずみ部は、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置であり、前記直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離cが2√(A/3)以内となる位置関係を有することを特徴とする。
本発明の対象を、請求項1の条件に加えて、該脆性き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード(脆性き裂初期伝播ビード)方向には、溶接溶融線付近に脆性き裂の発生が想定される鋼板(脆性き裂発生鋼板)、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板が順に配設され溶接鋼構造物とするのは、脆性き裂を高靭性鋼板に誘導することにより停止させることができるからである。
また、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれシャルピー破面遷移温度の異なる異種鋼板同士は、前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードにほぼ直交する突き合わせ溶接またはT継手溶接(これらを総称して直交溶接という。)により接合されてなる溶接鋼構造物とするのは、鋼板の溶接組み立ての場合、溶接効率の面から溶接線が直線であることが望ましく、鋼板の形状については長方形であることが切断による端材の発生が少なく鋼板を無駄なく用いることが出来るため溶接組み立ては直交溶接が望まれるからである。
さらに、各圧縮予ひずみ部、請求項1の条件に加えて、前記直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離cが2√(A/3)以内となる位置関係を有するのは、脆性き裂の伝播を停止させるためには、脆性き裂が溶接ビードから逸れ圧縮予ひずみ部の周りを伝播して直交ビードに突入し、破断した後に高靭性鋼板に突入することが必要であるが、cが大きい場合には、脆性き裂が直交ビードを破断する以前に初めに伝播してきた溶接ビードに戻ってしまい、高靭性鋼板の溶接ビードに沿って伝播してしまう可能性が高まるからである。
図2は、 請求項2に記載の本発明の一実施例を示す図である。
図2において、5は脆性き裂発生鋼板、6は脆性き裂、7は脆性き裂初期伝播溶接ビード、8は高靭性鋼板、9は直交溶接ビード、10は圧縮予ひずみ部を示す。
図2のaは、圧縮予ひずみ部の溶接溶融線からの最短距離を示す。
図2のbは、圧縮予ひずみ部の溶接金属中央線からの最短距離を示す。
図2のCは、圧縮予ひずみ部の直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離を示す。
請求項3の発明は、請求項2において、前記脆性き裂発生鋼板と前記高靱性鋼板との接合部のなす角度dが20°〜180°であることを特徴とする。これは、鋼板同士の突き合わせ溶接においてdが180°以上の角度となることはありえなく、またdが20°より小さい場合には圧縮負荷を行う装置を鋼板の間に挿入することが困難であるため所定の圧縮負荷を行うことが出来ないからである。
図3は、 請求項3に記載の本発明の一実施例を示す図である。
図3において、5は脆性き裂発生鋼板、6は脆性き裂、7は脆性き裂初期伝播溶接ビード、8は高靭性鋼板、9は直交溶接ビード、10は圧縮予ひずみ部、11は溶接ビードに続く溶接ビード、12は溶接交差部を示す。
図3のdは脆性き裂発生鋼板5と高靱性鋼板8との接合部のなす角度を示す。
本発明の溶接鋼構造物における圧縮予ひずみ部近傍の応力状態を確認するために、図6に示す直径40mmの円形の圧縮面を持つポンチで板厚40mmの鋼板15に2.5%の圧縮塑性歪を与えた後に、鋼板の降伏応力の半分(165MPa)の引張負荷を与えた場合について有限要素法解析を行い、図4に示す鋼板内部の最大主応力分布を試算した。圧縮予ひずみ部13の上下部に最大主応力の最大が現れ、圧縮予ひずみ部の間の応力は遠方の応力より低くなっている。脆性き裂は主応力の高い部位を伝播する特性があるため、本発明は圧縮予ひずみの残留応力と構造物に作用する応力とを合成した場合の最大主応力が大きい位置を脆性き裂の伝播を防止したい溶接ビード14に沿った溶接熱影響部から離すことによって脆性き裂の経路を溶接熱影響部から鋼板の素材側へ誘導する効果がある。さらに、脆性き裂が溶接ビード14から遠ざかることにより、経路16で溶接熱影響部より脆性き裂伝播停止特性の高い素材部で伝播を停止させることが可能である。また圧縮予ひずみ部の間に発生する圧縮応力による溶接部を伝播する脆性き裂先端に作用する応力を低下させる効果があり、万一脆性き裂が溶接溶融線付近から逸れない場合でも、脆性き裂の伝播を阻止することができる。
また、前記有限要素法解析結果に基づく図5を用いて請求項2について説明する。鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製される鋼構造物であって、脆性き裂初期伝播ビード方向には、脆性き裂発生鋼板20、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板21が順に配設されるとともに、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビード18または該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれ脆性き裂発生鋼板20と高靱性鋼板21は、直交溶接ビード19により接合されてなる溶接鋼構造物に本発明の請求項2を適用した場合には、脆性き裂発生鋼板の溶接ビード18に沿って伝播したき裂は前記のき裂誘導効果により溶接ビード18から脆性き裂発生鋼板側20へ逸れる。その後、さらに脆性き裂は直行溶接19へ伝播し、高靱性鋼板21へ突入するという経路22をたどることになり、脆性き裂伝播停止性能の高い高靱性鋼板21で伝播を停止することになり、溶接構造物の大規模な脆性き裂伝播を防止することができる。
前記圧縮予ひずみを与える方法としては、図6に示すように円形や矩形の平面の断面を持つ押しポンチ23をプレス装置等を用いて鋼板24に押し当てる方法が考えられるが、同様の圧縮負荷を与えられる装置であれば他の装置でも可能である。なお、押しポンチ23で圧縮予ひずみを与えた場合、押しポンチ23の角部が鋼板24に段差を作ることになるが、この段差は応力集中を発生させるためできるだけ滑らかになるよう、面取りや曲面加工しておくことが望ましい。
ポンチの断面形状については円形や矩形以外にも適用が可能であり、効果には大きな差は出ないと考えられるため、自由にデザインできるが、ポンチの寿命や圧縮荷重をできるだけ低くするためには外に凸の中実断面が合理的である。
ポンチの大きさについては鋼材の内部にまで十分に塑性歪を与えることが重要であるためポンチの寸法は板厚と比例させる必要がある。また、面積に比例して大きな圧縮荷重が必要となり、負荷が困難となることがあるため注意が必要である。圧縮予ひずみ付与面積Aは板厚tに対して0.75t2〜3.15t2と定めたが、大きい方が広い領域に渡って圧縮残留応力残すことができるため、可能であればより大きいポンチを使うことも同様の効果がある。しかし、予ひずみを付与するために必要な荷重が面積に比例して大きくなるため実施する設備が大きくなるため困難である。
圧縮負荷の回数は所定のひずみの範囲になるまで複数回押してよく、ポンチの大きさと鋼材の強度の関係から圧縮負荷装置の負荷荷重が十分に取れない場合には、ポンチの位置をずらしながら、面積が0.75t2以上3.15t2以下の領域を面積が0.5t2以上のポンチを用いて複数回圧縮負荷を与えることにより、0.5%以上かつ5%未満のひずみを圧縮負荷により与えることで同様の効果が得られる。
また、予ひずみの付与は脆性き裂の伝播を想定する溶接部を溶接した後に行わなければ脆性き裂をそらす効果が期待できない。予ひずみの付与が溶接前である可能性がある場合には磁歪法などにより予ひずみ部の周辺の溶接部の残留応力分布を測定することで、予ひずみ付与と溶接の前後関係を確認することができる。たとえば、溶接後の予ひずみ付与であれば、圧縮予ひずみ部付近の溶接金属部の引張残留応力分布が乱れるが、溶接前の予ひずみ付与であれば、圧縮予ひずみ部付近での溶接方向の引張残留応力には前記の残留応力分布は見られず、単調な応力勾配となっていることで溶接と圧縮予ひずみの順番が確認できる。
溶接熱影響を受けない素材部の場合、−40℃のシャルピー衝撃吸収エネルギーが約200Jであって、脆性き裂伝播停止性能も6000N/mm1.5と高い特性を有した、板厚50mmの2枚のJIS G3106のSM490Bに相当する鋼板26を1層大入熱溶接と多層盛溶接の二種類の溶接法により突合せ溶接28し、図7のESSO試験体を作製した。鋼板26は1層大入熱溶接では熱影響部の約15mmの幅において鋼材の結晶粒径が粗大化するため、−40℃のシャルピー衝撃試験で10J程度であり、脆性き裂伝播停止性能も大きく低下している鋼材である。一方、鋼板26は多層盛溶接の場合、溶接入熱が低く、母材と溶接金属の境界の3mm程度の幅の位置に粗大化した結晶粒が確認できる程度であるため、−40℃のシャルピー衝撃試験で100J程度であり、脆性き裂伝播停止性能の低下も少ない。
前記2種の溶接を行った鋼板26を用いて作製したESSO試験体に本発明を適用した。圧縮予ひずみ処理は該鋼板の溶接前および後に400トン万能試験機により直径が50mmの円形断面を持つポンチを用いて行った。ポンチ間の距離eは板厚tに対して1.5tとし、また、残留の圧縮ひずみは2.5%とした。
試験は−40℃で、応力を降伏応力の2/3レベルと1/2レベルの二段階で付与し、表1に示すそれぞれの条件でESSO試験を行った。表1の結果に欄に示すように本発明である圧縮予ひずみ処理を溶接後に行ったものについてはいずれも脆性き裂の伝播を停止させることができた。
なお、試験体1−5は溶接熱影響部の靭性があまり低下していないことと、負荷応力が低いため溶接残留応力の影響により母材側へき裂が逸れたものと考えられる。
また、圧縮予ひずみを溶接前に行った場合には、表1の結果の欄に示すようにき裂を母材側にそらす効果はみられなかった。
Figure 2005329461
本発明の効果の範囲を明らかにする目的でポンチの大きさと距離を変化させた実験を行った。使用した鋼材は実施例1と同様の板厚50mmおよびJIS G3106 SM490Bであって板厚15mm鋼材である。これらの鋼材を用いて1層大入熱溶接による突合せ溶接を行い、図7のESSO試験体を作製した。溶接後本発明の圧縮負荷処理を表2に示す種々の条件で行い、ポンチの位置eと寸法の効果を確認した。なお、ポンチの断面形状は円形とした。
実験は−40℃で試験応力は降伏応力の1/2である。実験の結果、ポンチの距離が大きく、ポンチの大きさが小さくなると効果が小さくなることを確認し、板厚が変わっても同様の傾向があることを確認した。この結果を元に必要断面面積とポンチ距離を定めた。
Figure 2005329461
シャルピー破面遷移温度が−40℃であって、板厚が15mmのJIS G3106 SM490A鋼33とほぼ同強度であってシャルピー破面遷移温度が−62℃であって板厚が15mmのJIS G3106 SM490B鋼34をCO2溶接により付き合わせ溶接36により接合して作製した鋼板2枚を同鋼種同士が隣り合い、溶接部が十字になるよう、大入熱1層溶接35によりつき合わせ溶接を行った。こうして4枚の鋼板を溶接して作成した鋼板から試験体記号3−4に相当する図8のESSO試験片を作製し、続いて試験片中央部に直径20mmの円形断面を持つポンチを用いて請求項1および請求項2の圧縮予ひずみ負荷を行なった。この試験体に対して−40℃で試験応力を100MPaとしてESSO試験を行ない、溶接ビード29付近の初期切欠部から伝播してきた脆性き裂を停止できることを確認した。発明の有効性を確認するため、請求項1および請求項2の圧縮ひずみを与えない場合と破壊靭性の高いSM490B鋼を用いずにすべてSM490A鋼を用いた場合について、表3に示す試験体3−1、試験体3−2、試験体3−3を作成し、−40℃でESSO試験を行なった。
この結果、表3に示すように本発明の圧縮負荷処理を施さなかった試験体3−1と試験体3−2の場合、試験体上部から生じ、溶接ビード35の溶接溶融線付近を伝播した脆性き裂は溶接熱影響部を通り試験体を貫通した。特に脆性き裂伝播停止特性が高い鋼材を用いた試験体3−2でも、大入熱溶接の熱影響部は著しく脆化したためSM490B鋼素材の本来の特性を発揮できなかったものと考えられる。
一方、試験体3−3では本発明の請求項1のき裂を溶接部から逸らす効果により脆性き裂は溶接部35の熱影響部の外へ逸れるものの、伝播停止には至らなかった。以上のことから本発明の有効性を確認した。
Figure 2005329461
請求項1に記載の本発明の一実施例を示す図である。 請求項2に記載の本発明の一実施例を示す図である。 請求項3に記載の本発明の一実施例を示す図である。 図1の実施例の場合の鋼板の応力分布を説明する図である。 図2の実施例の場合の鋼板の応力分布を説明する図である。 本発明の圧縮負荷方法の一つの例を概略的に説明する図である。 実施例1および実施例2で用いたESSO試験片を説明する図である。 実施例3で用いたESSO試験片を説明する図である。
符号の説明
1: 鋼板、2:圧縮予ひずみ部、3:溶接ビード、4:脆性き裂、5:脆性き裂発生鋼板、6:脆性き裂、7:脆性き裂初期伝播溶接ビード、8:高靭性鋼板、9:直交溶接ビード、10:圧縮予ひずみ部、11:溶接ビードに続く溶接ビード 、12:溶接交差部、13:圧縮予ひずみ部、14:溶接ビード、15:鋼板、16:脆性き裂伝播経路、17:圧縮予ひずみ部、18:溶接ビード、19:直交溶接ビード、20:脆性き裂発生鋼板、21:高靭性鋼板 、22:脆性き裂伝播経路、23:ポンチ、24:鋼板、25:溶接ビード、26:鋼板、27:圧縮予ひずみ部、28:溶接ビード、29:荷重負荷方向、30:衝撃負荷方向、31:初期切欠 、32:タブ板、33:脆性き裂発生鋼板、34:試験鋼板、35:溶接ビード、36:直交溶接ビード、37:圧縮予ひずみ部、38:衝撃負荷方向、39:初期切欠、40:荷重負荷方向、41:タブ板

Claims (5)

  1. 厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物において、
    前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、前記き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設されており、該圧縮予ひずみ部は、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有することを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物。
  2. 厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製される鋼構造物であって、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定され、該脆性き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード(脆性き裂初期伝播ビード)方向には、溶接溶融線付近に脆性き裂の発生が想定される鋼板(脆性き裂発生鋼板)、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板が順に配設されるとともに、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれシャルピー破面遷移温度の異なる異種鋼板同士は、前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードにほぼ直交する突き合わせ溶接またはT継手溶接(これらを総称して直交溶接という。)により接合されてなる溶接鋼構造物において、
    前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部が、前記脆性き裂発生鋼板の前記脆性き裂初期伝播ビード沿いで該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設されており、各圧縮予ひずみ部は、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置であり、前記直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離cが2√(A/3)以内となる位置関係を有することを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物。
  3. 前記脆性き裂発生鋼板と前記高靱性鋼板との接合部のなす角度dが20°〜180°であることを特徴とする、請求項2に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物。
  4. 厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製され、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接鋼構造物の製造方法において、
    前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部を、前記き裂の初期伝播方向に沿った溶接を行った後に、該溶接ビードに沿って、該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設する溶接鋼構造物の製造方法であって、
    該圧縮予ひずみ部は、各々、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置となる位置関係を有することを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物の製造方法。
  5. 厚みtが10mm以上の鋼板同士を主として突き合わせ溶接および/またはT継手溶接により組み立てて作製される鋼構造物であって、鋼板素材のシャルピー破面遷移温度より高いシャルピー破面遷移温度である溶接溶融線付近に脆性き裂の発生、伝播が想定され、該脆性き裂の初期伝播方向に沿った溶接ビード(脆性き裂初期伝播ビード)方向には、溶接溶融線付近に脆性き裂の発生が想定される鋼板(脆性き裂発生鋼板)、さらに該鋼板より素材シャルピー破面遷移温度が20°K以上低い高靱性鋼板が順に配設されるとともに、それぞれ同種の鋼板同士は前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードとなる突き合わせ溶接にて接合され、それぞれシャルピー破面遷移温度の異なる異種鋼板同士は、前記脆性き裂初期伝播ビードまたは該ビードの延長ビードにほぼ直交する突き合わせ溶接またはT継手溶接(これらを総称して直交溶接という。)により接合されてなる溶接鋼構造物の製造方法において、
    前記鋼板の板厚方向圧縮ひずみが0.5%以上5%未満であり、該鋼板面上に占める面積Aが0.75t2〜3.15t2である圧縮予ひずみ部を、前記脆性き裂発生鋼板の前記脆性き裂初期伝播ビードを溶接した後に、該溶接ビードの沿いであって、該溶接ビードの両側のほぼ線対称位置に、一対以上配設する溶接鋼構造物の製造方法であって、
    各圧縮予ひずみ部は、鋼板端部から板厚tの3倍以上離れた鋼板面内位置で、前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接溶融線からの最短距離aが5mm以上離れた位置であり、かつ前記脆性き裂初期伝播ビードの溶接金属中央線からの最短距離bが板厚相当距離t以内の位置であり、前記直交ビードの高靱性鋼板側の溶接溶融線からの最短距離cが2√(A/3)以内となる位置関係を有することを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物の製造方法。


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