JP2005323573A - 遺伝子発現データ解析方法および、疾患マーカー遺伝子の選抜法とその利用 - Google Patents

遺伝子発現データ解析方法および、疾患マーカー遺伝子の選抜法とその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 DNAチップやDNAマイクロアレイで得られる発現データをもとに2群間での有意な発現変動を解析する手法を提供する。該解析手法により糖尿病の疾患マーカー、および該疾患マーカーを利用した疾患、特に糖尿病の検出方法、該疾患の改善に有用な薬物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】 異なる2条件間の遺伝子発現変動を、複数遺伝子の遺伝子発現データを対象にして多変量解析し、2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、DNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析して得られる複数遺伝子の発現データをもとに、例えば、疾患状態と正常状態などの異なる2条件の違いに相関した遺伝子発現変動を、数学的手法(例えば、多変量分析等)を用いて高精度に解析できる、という特徴を有する遺伝子発現データ解析方法および、疾患マーカー遺伝子の選抜法とその利用に関する。
さらには、上記で選抜した疾患マーカー遺伝子から生産することのできる疾患マーカーを利用しての疾患の改善薬または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法および疾患の検出方法に関する。
疾患での発現変動遺伝子は、該疾患の疾患マーカー遺伝子として、疾患の検出プローブや該疾患に治療効果を有する物質のスクリーニングなどに利用可能なことが期待されるため、疾患による遺伝子の発現変動の解析は多数行われている。
近年使用されるようになったDNAチップ解析技術やDNAマイクロアレイ解析技術は、非常に多くの遺伝子の発現を一度に高精度に調べることができるので、遺伝子発現レベルの比較から疾患に関連して発現変動を示す遺伝子の抽出、疾患マーカー遺伝子の選抜に大きな貢献をしてきた。しかしながら、DNAチップ解析やDNAマイクロアレイ解析から得られたデータをもとに発現変動遺伝子を抽出する基準となる条件は特になく、研究機関ごと、さらには解析ごとに設定され、異なっているのが現状である。
例えば、発現比較での発現変動データで発現比が2倍以上の大きな遺伝子を変動遺伝子として抽出する、というようなことは同様の解析においてよく行われているが、発現比による抽出では、コントロールとなる組織や細胞での発現が多い遺伝子の示す変動比と、発現が少ない遺伝子の変動比では、発現が少ない遺伝子の変動比の方が大きくなるため、統計学的に有意な発現変動を示していても抽出できないことがある。
また、DNAチップ解析やDNAマイクロアレイ解析の発現量データには、サンプル間の誤差、実験誤差が含まれるため、発現比が2倍以上、またはさらに大きくとも有意な発現差でないこともある。このため、特にDNAチップ解析では発現量の比較を高精度に行うソフトウェアの開発や、得られた発現量データの分析に数学的な統計解析手法を導入するなどして、より高精度で有意な発現変動を見いだす手法の取り組みが精力的に行われている(非特許文献1、非特許文献2)。
Nature Review Drug Discovery 1, 951-960 (2002) Nucleic Acids Research 31, e15 (2003)
本発明者らは、DNAチップ解析を活用することで、様々な疾患に関連する多くの遺伝子の発現変動を解析しており、これら発現変動遺伝子の中から疾患マーカー遺伝子の選抜を行ってきた。通常用いられる方法(例えば、アフィメトリクス社DNAチップではアフィメトリクス社GeneChip Workstation Systemの解析ソフトMicroarray Suite version 5.0など)での解析では、発現変動倍率などを指標にして発現変動の比較的大きな遺伝子を選抜することで疾患マーカー遺伝子を選抜することが可能であるが、この選抜法では選抜条件に明確な基準があるわけではないため、選抜基準を検討して適宜設定する必要がある。また、選抜した複数の疾患マーカー遺伝子の中から、特に重要な疾患マーカー遺伝子を選抜する方法は、数学的手法を用いるなどして様々な取り組みがなされているが明確な方法は示されておらず、重要な疾患マーカー遺伝子をいち早く選抜して、優先的に疾患治療薬の研究、開発を進める上では大きな課題となっていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、例えば、疾患状態と正常状態などの異なる2条件間の遺伝子発現変動を、複数遺伝子の遺伝子発現データを対象にして複数の数学的手法(例えば、主成分析、有意差検定、判別分析等)を組み合わせて用いることで、高精度に解析する方法を見いだした。
また、同様の解析を行うことで、疾患で有意な発現変動を示すまたは、病態と相関した発現変動を示す重要な疾患マーカー遺伝子を、効率的に選抜する方法を見いだした。
さらに、こうして得られた疾患マーカー遺伝子から生産することのできる疾患マーカーは、その発現変動を指標にした疾患の検出方法および/または遺伝子診断方法に有用であるばかりでなく、該疾患の予防、改善または治療薬の探索を目的とした候補物質の評価、選別(スクリーニング)に有効であるとの知見を得た。
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
〔1〕 下記の工程(a)及び(b)を含む、遺伝子発現データの解析方法:
(a) 生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
〔2〕 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、上記1記載の遺伝子発現データの解析方法
〔3〕 異なる2条件が疾患状態と正常状態または、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合である上記2記載の遺伝子発現データの解析方法
〔4〕 疾患が糖尿病である上記3記載の遺伝子発現データの解析方法
〔5〕 疾患治療効果を有する物質が糖尿病治療薬である上記3記載の遺伝子発現データの解析方法
〔6〕 糖尿病治療薬がメトホルミンである上記5記載の遺伝子発現データの解析方法
〔7〕 下記の工程を含む、疾患マーカー遺伝子の選抜方法:
(a) 生体組織あるいは細胞で、疾患状態と正常状態または、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合の2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b)複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
(c) 上記(a)における2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する遺伝子を当該疾患の疾患マーカー遺伝子として選抜する工程
〔8〕 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、上記7記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
〔9〕 疾患が糖尿病である上記7または、8記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
〔10〕 疾患治療効果を有する物質が糖尿病治療薬である上記7または8記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
〔11〕 糖尿病治療薬がメトホルミンである上記10記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
〔12〕 下記(a)、(b)および(c)を含む物質の薬効評価方法:
(a) 生体組織あるいは細胞で、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合の2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、多変量解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
(c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する複数の遺伝子の発現を指標に第二の物質の薬効を評価する方法
〔13〕 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、上記12記載の薬効評価方法
〔14〕 上記12の(c)における複数の遺伝子が上記7〜11いずれかで選抜される疾患マーカー遺伝子を含む、薬効評価方法
〔15〕 上記12の(c)における複数の遺伝子が上記9〜11いずれかで選抜される糖尿病の疾患マーカー遺伝子を含む、糖尿病の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、薬効評価方法
〔16〕 上記7〜11いずれかで選抜される疾患マーカー遺伝子を利用した、疾患の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法であるスクリーニング方法
〔17〕 疾患マーカー遺伝子が上記9〜11いずれかで選抜される糖尿病の疾患マーカー遺伝子である上記16のスクリーニング方法
〔18〕 上記12〜15いずれかに記載の薬効評価方法を利用した疾患の改善剤または治療剤の有効成分のスクリーニング方法
〔19〕 上記15に記載の薬効評価方法を利用した糖尿病の改善剤または治療剤の有効成分のスクリーニング方法
〔20〕 下記(a)、(b)および(c)を含む疾患の検出方法:
(a) 生体組織あるいは細胞で、疾患状態と正常状態の2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、多変量解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
(c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する複数の遺伝子の発現を指標に疾患の罹患を判断する工程
〔21〕 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、上記20記載の疾患の検出方法
〔22〕 上記20の(c)における複数の遺伝子が上記7〜11いずれかで選抜される疾患マーカー遺伝子を含む疾患の検出方法
〔23〕 上記20の(c)における複数の遺伝子が上記9〜11いずれかで選抜される糖尿病の疾患マーカー遺伝子を含む糖尿病の検出方法
〔24〕 上記1〜6記載の方法を実行させるコンピュータ読み取り可能なプログラム。
〔25〕 上記24記載のプログラムを格納した電子媒体。
〔26〕 下記の工程を含む遺伝子発現データの解析装置:
(a)生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b)複数の遺伝子発現データを入力する手段、
(c)複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
(d)上記(c)の判定結果を出力する工程。
〔27〕 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、上記26記載の遺伝子発現データの解析装置
〔28〕 異なる2条件が疾患状態と正常状態または、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合である上記26記載の遺伝子発現データの解析装置
〔29〕 疾患が糖尿病である上記28記載の遺伝子発現データの解析装置
〔30〕 疾患治療効果を有する物質が糖尿病治療薬である上記29記載の遺伝子発現データの解析装置
〔31〕 糖尿病治療薬がメトホルミンである上記30記載の遺伝子発現データの解析装置

本発明によって、DNAチップ解析などから得られる遺伝子発現データをもとに、効率的な疾患マーカー遺伝子の選抜方法が確立された。この選抜方法により見いだされた疾患マーカー遺伝子は、当該疾患の遺伝子診断に用いられる疾患マーカー(例えば、プローブ、プライマー等)としても有用である。かかる疾患マーカーを用いることによって疾患であるかどうか、その原因を明らかにすることができ診断精度が向上するなど、より適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、疾患の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
更に、選抜した遺伝子の発現変動と疾患との関連性から、該遺伝子の発現を改善の方向へと変動させる物質は、疾患の治療薬として有用であると思われる。従って、本発明の遺伝子を用いることによって、その発現の変動を指標にすることにより、疾患の治療薬となり得る候補薬の薬効を評価、選別(スクリーニング)することが可能である。すなわち、本発明は、疾患の治療薬の開発に有用である。
以下、本発明において、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチドまたは、ポリヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, European Journal of Biochemistry, 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
本発明における「遺伝子発現データ」とはDNAチップやDNAマイクロアレイを用いて遺伝子またはポリヌクレオチドの発現量を測定したデータを指す。前記遺伝子または、ポリヌクレオチドとは、特定の塩基配列で示されるRNAまたはDNAだけでなく、ヒト、マウス、ラットなどの生物種間で保存されるオーソログ遺伝子など、これらにコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードする「遺伝子」または「ポリヌクレオチド」が含まれる。かかる同族体、変異体または誘導体をコードする「遺伝子」または「ポリヌクレオチド」としては、具体的には、後述の疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーの 項に記載のストリンジェントな条件下で、特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する遺伝子またはポリヌクレオチドを挙げることができる。
上記DNAとは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
従って、本発明においてDNAとは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。
なお、DNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
上記のRNAは、1本鎖RNAのみならず、それに相補的な配列を有する1本鎖RNA、さらにはそれらから構成される2本鎖RNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれ、上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
例えばヒト由来のタンパク質のホモログをコードする遺伝子としては、当該タンパク質をコードするヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト遺伝子名や塩基配列のアクセション番号をLocusLink(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink/)の検索にかけて該当するヒト遺伝子データを見いだす。そのデータのリンクメニューにあるHomoloGeneにアクセスして表示された他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、ヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子を遺伝子(ホモログ)として選抜することができる。また、Incyte社のBioknowledgeデータベースでも該データベースの利用方法に従って遺伝子検索することで、ヒト遺伝子に対するマウスやラットホモログ遺伝子を調べ、見いだすことができる。
上述のタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドには、特定のアミノ酸配列で示されるタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドだけでなく、ヒト、マウス、ラットなどの生物種間で保存されるオーソログ遺伝子からの翻訳産物である「タンパク質」または「ポリペプチド」、およびその断片など、アミノ酸配列で示されるタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドと生物学的機能が同等であることを限度として、その同族体(例えば、ホモログやスプライスバリアント等)、変異体、誘導体、およびアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトのタンパク質に対応するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演繹的に同定することができる。
また変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、および人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含され、具体的にはアミノ酸のリン酸化体が挙げられる。
上記抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
本発明の「DNAチップ」とは、アフィメトリクス社GeneChipに代表される、基盤上に合成し、高密度に整列化したプローブDNAに対し、サンプルから調製したハイブリダイゼーション溶液を反応させることで複数の遺伝子の発現をモニタリングするためのものである。
本発明の「DNAマイクロアレイ」とは、スライドガラスなどの上にスポットし、整列化したプローブDNAに対し、サンプルから調製したハイブリダイゼーション溶液を反応させることで複数の遺伝子の発現をモニタリングするためのものである。
DNAマイクロアレイはアマシャムバイオサイエンス社からCodeLink Expression Bioarrayが入手可能である他、DNA断片をスライドガラス上にスポットするDNAスポッター等を使用すれば作製可能である。なお、DNAマイクロアレイは広義で上記DNAチップを含む意味で使用されることもあり、これによりDNAチップもDNAマイクロアレイも複数の遺伝子の発現をモニタリングするものとして同義である。
本発明の「発現量データ」とはDNAチップやDNAマイクロアレイの解析で得られる個々の遺伝子の発現を反映した測定値である他、加減乗除などによる計算によって一律に変換されたものや、統計学的手法によって変換された値も含まれる。また、「DNAチップデータ」や「発現量」、「発現データ」、「Signal値」なども個々の遺伝子の発現を反映する値を指すものとして同義である。
本発明の解析手法は、DNAチップまたはDNAマイクロアレイで得られた異なる2条件の複数のサンプルについての複数遺伝子の発現データに対して、2条件間での発現が有意に異なると判定可能な「多変量解析」の解析手法を用いる。
本発明の「多変量解析」とは、複数の変数を同時に分析する統計分析手法であり、この場合、複数のサンプルについての複数遺伝子の発現データについて分析する統計分析手法を指す。「多変量解析」に含まれる統計分析手法は主成分分析、因子分析、自己組織化地図、クラスター分析、判別分析、重回帰分析、正準相関分析などの手法があるが、これらに限定されず、異なる2条件の複数のサンプルについての複数遺伝子の発現データに対して、2条件間での発現が有意に異なると判定可能な統計分析手法であればよい。
これらを用いて2条件間での発現が有意に異なると判定するには、それぞれの解析手法によって得られる数値パラメータや分類パターンの基準設定が必要であるが、これらは同業者であれば適宜選択し、調整可能である。判別分析法としては具体的には、線形判別法、決定木、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなどの解析手法を挙げることができる。
また、統計分析手法は1分析手法から構成されるものだけではなく、複数の分析手法からなるものでもよい。複数の分析手法の構成は、例えば、複数の分析手法により得られたそれぞれ分析結果の共通の結果を判定に使用するような並列的構成も可能であるし、ある分析手法で得られた結果データを数値化して変数として利用し、他の分析手法にかけて得た結果の判定を使用するような連続的な構成であってもよい
本発明の「異なる2条件」とは、例えば年齢、疾患と正常、あるいは発症後の経過時間の違いなど自然に起こる条件の変化だけでなく、薬剤投与の有無、投与濃度の違い、といった人的加えた処理による違いも含まれる。対象サンプルの由来が明らかに異なる組織の違い、個体の違いといったことも条件の違いに含まれる。このように異なる条件とは明示的、暗示的にかかわらずあらゆる条件の違いを含む物であれば、上記に限定されるものではない。条件の数は通常2つであるが、それ以上であれば特に限定されるものではない。
本発明の「主成分分析」(PCA; Principal Component Analysis)とは、個々のサンプルでの複数遺伝子の発現データを変量データとし、それらを圧縮してDNAチップ解析に用いた各サンプルの特性を分析するものとして用いる。こうした解析例はNature Review Drug Discovery 1, 951-960 (2002)で紹介されており、公知である。
また、主成分分析は、各サンプル特性を示す第1主成分、第2主成分、第3主成分を求めるものとして用いる。第1主成分、第2主成分、第3主成分は、市販の統計解析ソフト、例えばSpotfire DecisionSite 7.2(スポットファイアー社製)で、それぞれPCA1、PCA2、PCA3として算出することができる他、オープンソースのソフトウェアR(http://www.r-project.org/)でも解析できる。
本発明の「有意差検定」とは、比較対象である2群間の平均値の差を検定する解析手法(例えば、t検定など)あるいは、そうした解析手法を多変量に拡張した解析手法(ウィルクスのΛなど)を指す。
具体的には、主成分分析で得られた第1主成分、第2主成分、第3主成分のすべて、あるいはその一部で特徴付けられた個々のサンプルを2群に区分設定した際、2群間の平均(平均値ベクトル)が同じであるかを、有意水準5%あるいは有意水準1%で検定する場合に用いる。なお、ウィルクスのΛの解析はhttp://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/R/wilks.htmlで記載されているプログラムをオープンソースのソフトウェアR(http://www.r-project.org/)を用いて実行できる。解析で得られる有意確率が0.05以下である場合、解析対象の2群は5%水準で有意差があるとされ、有意確率が0.01以下である場合、2群は1%水準で有意差があるとされる。
本発明の「判別分析」とは、比較対象である2群のサンプルを判別(グループ分け)する解析手法を指す。具体的には、主成分分析で得られた第1主成分、第2主成分、第3主成分のすべて、あるいはその一部で特徴付けられた個々のサンプルを2群に区分設定した際、2群のサンプル判別を、パターン認識法として優れているサポートベクターマシン(Support Vector Machine、以下SVM)により判別の可否を行うものである。SVMとは、あるカーネル関数によって特徴ベクトルを適切な特徴空間に写像した後に、2つのカテゴリー(クラス)を分離する超平面を2次計画問題の解により求める手法である。
求める超平面は、線形分離を実現するもののうち、超平面と訓練パターンの距離の最小値であるマージンの量を最大にするものであり、汎化能力の点で優れたものである。SVM分析の概念は例えば、津田 宏治“サポートベクターマシンとは何か”, 電子情報通信学会誌, 83, 6, pp. 460-466, 2000のFigure 1に示されている。
SVMは数理システム社のVisual Mining Studio 1.4にある解析ツールにより解析できる。解析で得られる2群それぞれのサンプルの判定結果が区分設定に対してすべて正しい(True)となった場合、2群は区分設定条件で判別可能(SVMでの判定で誤判定なし)とされる。
本発明の解析方法による「遺伝子発現が有意に異なるとの判定」は、DNAチップやDNAマイクロアレイの発現データをもとに多変量解析(例えば、有意差検定、判別分析)することを特徴とするものであり、下記実施例にある主成分分析(PCA)、有意差検定(ウィルクスのΛ)、判別分析(SVM)の、データ設定や解析ツールソフトウェア、その解析パラメータを必ずしも制限するものではない。しかしながら、各々の分析方法が行われる設定には、その分析が有効に機能するデータ設定、解析パラメータであることが望ましい。そのような各分析のデータ設定や解析パラメータは、同業者であれば適宜選択し、調整可能である。
本発明の解析手法はこれらを組み合わせて用いることで、複数遺伝子の発現データをもとに特徴付けられた複数サンプルを2群に区分設定した場合の2群間での当該遺伝子の発現の明らかな違いを、発現量の多少に関係なく効率的に解析し、表現するものとして用いられる、有効な解析手法である。
本発明の「疾患マーカー」とは疾患の罹患の有無や罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、また該疾患の予防、改善または治療に有効な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには疾患の罹患に関連して、生体内において発現が変動する遺伝子、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはタンパク質、ポリペプチド、およびそれらを特異的に認識し、また結合することのできるポリヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらのヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内で発現した上記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、またヌクレオチドポリヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして、さらにタンパク質は結合する物質のスクリーニングに有効に利用することができる。
従って本発明における「疾患マーカー遺伝子」とは、疾患マーカーを生産することのできる遺伝子のことを指す。具体的には前出の遺伝子発現データの解析手法により、疾患に相関して発現変動があるとされた遺伝子セット、あるいは遺伝子セットに含まれる遺伝子を指す。
本発明において診断対象となる「生体組織」とは、疾患に伴い、疾患マーカー遺伝子が発現変動する組織を指す。具体的には、例えば糖尿病では肝臓組織等を指す。
本発明の第1の態様は遺伝子発現データの解析方法に関する。具体的には、下記の(a)および(b)の工程を含む、遺伝子発現データの解析方法に関する。
(a) 生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
図1は本発明解析方法の手順を示すフローチャートである。以下図1を参照して本発明の解析方法を説明する。
本発明の手順を説明するためここでは、多変量解析の具体例として、主成分分析、有意差検定、判別分析を用いて説明するが、本発明の多変量解析の手法は前記に限られるものではない。
101で生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する。
102でDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析された発現データの多変量解析をおこなう。
前記の具体例における本発明の解析方法は、101の解析で得られた複数遺伝子の発現データの主成分分析と、有意差検定を行う工程(1)、または、主成分分析と判別分析とを行う工程(2)が含まれる。工程(1)および工程(2)はそれぞれに解析を行う工程であっても、両者を含む工程であっても構わない。
103で、102の方法で解析した複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する。
前述のとおり、DNAチップは、例えばアフィメトリクス社GeneChip、DNAマイクロアレイは、例えばアマシャムバイオサイエンス社CodeLink Expression Bioarrayが挙げられるが、この限りではなく、スライドガラスなどの上にスポットし作成されたDNAマイクロアレイ、その他DNAマイクロアレイについても解析可能である。
有意に異なる判定とは、例えば主成分分析で第1主成分、第2主成分、第3主成分を算出し、設定した2群間での平均ベクトルの差をウィルクスのΛによる有意差検定で行い、1%有意水準で有意差を検定、さらに該2群間での判別分析をSVMで行い、誤判定なしであることで有意な発現変動を検出、解析することであるが、例えば、主成分分析で第1主成分、第2主成分のみを使用して、t検定による有意差検定を行ってもよい。あるいは、有意差検定では5%水準での有意差検定でもよい。
また、下記実施例では、20サンプル、5プローブ以上の発現データを対象に主成分分析を行っているが、これに制限されない。例として、3遺伝子(あるいは3プローブ)以上、かつ4サンプル以上(2群区分設定で1群2サンプル以上)の発現データを挙げることができ、好ましくは4遺伝子(あるいは4プローブ)以上、且つ10サンプル以上(2群区分設定で1群5サンプル以上)、さらに好ましくは5遺伝子(あるいは5プローブ)以上、且つ20サンプル以上(2群区分設定で1群5サンプル以上)の発現データを対象とするものである。
104で判定結果を出力する。出力された判定結果は、画像処理装置等を用いて画像等に出力する方法の他、紙、電子媒体等の記録媒体に記録できる。
本発明の第2の態様は疾患マーカー遺伝子の選抜方法に関する。具体的には以下の(a)〜(c)の工程を含む疾患マーカー遺伝子の選抜方法に関する。
図1のフローチャートに示される本発明解析方法は、本発明の疾患マーカー遺伝子の選抜に有用である。本発明の疾患マーカー遺伝子の選抜方法を説明するためここでは、多変量解析の具体例として、主成分分析、有意差検定、判別分析を用いて説明するが、本発明の多変量解析の手法は前記に限られるものではない。
(a)生体組織あるいは細胞で、疾患状態と正常状態の異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、多変量解析例えば、主成分析と有意差検定および/または判別分析を含む数学的手法を用いて解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
(c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する遺伝子セットの中から当該疾患の疾患マーカー遺伝子を選抜する工程
疾患状態と正常状態の異なる2条件とは、例えば炎症組織サンプルと正常組織サンプル、糖尿病患者の組織サンプルと糖尿病でない患者の組織サンプル、糖尿病治療薬投与あり細胞サンプルと投与なし細胞サンプルなど、疾患とそうでない組織や細胞で設定可能な一組の異なる2条件や状態等をを指す。
本発明の解析方法による解析では、異なる2群(条件)サンプルでの遺伝子発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なるとの結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子について病態と相関した発現変動があると見なすことができる。
よって、病態サンプルと正常サンプルを対象としたDNAチップ解析で、複数の遺伝子の発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(病態サンプルと正常サンプルの2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし、との結果が得られる)との結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子は、病態と相関した発現変動がある疾患マーカー遺伝子と見なすことができる。
本発明の疾患マーカー遺伝子の選抜方法では、疾患マーカー遺伝子の選抜に用いる場合でも、前述の本発明解析方法と同様に、該解析手法のデータ設定や解析ツールソフトウェア、その解析パラメータを制限しない。しかしながら、各々の分析方法が行われる設定には、その分析が有効に機能するデータ設定、解析パラメータであることが望ましい。そのような各分析のデータ設定や解析パラメータは、同業者であれば適宜選択し、調整可能である。
選抜される疾患マーカー遺伝子の数についても制限はない。この場合、選抜される複数の疾患マーカー遺伝子は、マーカー遺伝子群として以下に示すような物質の薬効評価方法あるいはスクリーニング方法や疾患の検出方法に利用される。また、個々の遺伝子も疾患マーカー遺伝子として物質の薬効評価方法あるいはスクリーニング方法や疾患の検出方法に利用される他、疾患マーカーの生産に利用される。
個々の遺伝子を疾患マーカー遺伝子として選抜する場合、その遺伝子が選抜した複数遺伝子の中で病態と相関した発現変動が顕著である、重要な遺伝子であることが望ましい。そうした遺伝子は、例えば、上記第1の態様記載の本発明解析方法での解析における対象遺伝子のうち、特定の遺伝子を除外して同条件で再解析し、除外前に有意な発現変動と判断された遺伝子群が、除外後に有意な発現変動でないと判断された場合、この除外遺伝子を選抜することで可能である。さらには、同様疾患を対象とした別途設定された条件での遺伝子発現変動の解析で相関が示された遺伝子を参考にして選抜することでも可能である。
糖尿病のマーカー遺伝子を選抜する場合には、具体的には糖尿病治療薬メトホルミン投与の有無による病態、正常サンプルをDNAチップで解析後、本発明による解析を行うことにより糖尿病マーカー遺伝子を選抜できる。さらに選抜した複数の糖尿病マーカー遺伝子から重要な遺伝子を選抜するには、上記のように選抜した複数の疾患マーカー遺伝子に対して、個々に除外しながら再解析を行うことによって解析できる。具体的には実施例5に示すように重要な糖尿病マーカー遺伝子はALDH2遺伝子である。

疾患マーカーのポリヌクレオチドは、疾患マーカー遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、疾患マーカー遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイスすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、疾患マーカー遺伝子の塩基配列、またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
疾患マーカーのポリヌクレオチドは、具体的には、疾患マーカー遺伝子の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、疾患マーカー遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、疾患マーカー遺伝子またはこれに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT-PCR法においては疾患マーカー遺伝子またはこれに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物が疾患マーカー遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
疾患マーカーのポリヌクレオチドは、疾患マーカー遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3 (http://www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には疾患マーカー遺伝子の塩基配列をprimer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
疾患マーカーのポリヌクレオチドは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
疾患マーカーのポリヌクレオチドは、上記遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
疾患マーカーのポリヌクレオチドをプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
また、疾患マーカーのポリヌクレオチドは、ノーザンブロット法、RT-PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。
さらには、疾患マーカーのポリヌクレオチドはDNAマイクロアレイのプローブとして使用することができる。かかるDNAマイクロアレイを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブ(本発明疾患マーカー)と標識DNAまたはRNAとの複合体を、該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での特定遺伝子の発現が評価できる。
疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーのポリヌクレオチドは、疾患の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。更に疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーのポリヌクレオチドは、疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて疾患マーカー遺伝子の発現変動を検出するためのプローブとして有用である。該疾患マーカーを利用した疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングは、被験物質を添加した細胞における疾患マーカー遺伝子の発現レベルと被験物質を添加しない細胞での疾患マーカー遺伝子の発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
例えば、下記実施例5および実施例6で示すように糖尿病の疾患マーカー遺伝子としてALDH2遺伝子が挙げられる。よって、糖尿病の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)にALDH2遺伝子から生産される疾患マーカーのポリヌクレオチドは有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した糖尿病の診断は、被験者の生体組織と正常者の生体組織におけるALDH2遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
同様に糖尿病の疾患マーカー遺伝子であるALDH2遺伝子から生産される疾患マーカーのポリヌクレオチドは、疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて疾患マーカー遺伝子の発現変動を検出するためのプローブとして有用である。該疾患マーカーを利用した疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングは、被験物質を添加した細胞における疾患マーカー遺伝子の発現レベルと被験物質を添加しない細胞での疾患マーカー遺伝子の発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
疾患マーカーの抗体は、疾患マーカー遺伝子の翻訳産物であるタンパクを特異的に認識することを特徴とする抗体である。
疾患マーカーの抗体は、その形態に特に制限はなく、疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらに当該タンパクのアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、これらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology , Chapter 11.12〜11.13(2000))。具体的には、抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)を用いて、あるいは常法に従って当該タンパクの部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)、あるいは該タンパクの部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
抗体の作製に免疫抗原として使用される疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)は、疾患マーカー遺伝子の配列情報に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
疾患マーカー遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)を回収することによって、疾患マーカーの抗体製造のための免疫抗原としてのタンパクを得ることができる。また疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の部分ペプチドは、疾患マーカー遺伝子により提供される塩基配列の情報から演繹的に得られるアミノ酸配列によって提供される。従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
なお、タンパクにおけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その免疫学的活性が保持される限り制限はない。免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパクが元のタンパクと同等の免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパクの構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
また疾患マーカーの抗体は、疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってよい。かかる抗体の製造のために用いられるオリゴ(ポリ)ペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、該タンパクと同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つ疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)のアミノ酸配列において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるオリゴ(ポリ)ペプチドを例示することができる。
かかるオリゴ(ポリ)ペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム-パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
疾患マーカーの抗体は疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した該タンパクを特異的に検出することができる。即ち、当該抗体は被験者の組織内における疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現の有無を検出するためのプローブとして利用できる。
具体的には、被験者の生体組織の一部をバイオプシ等で採取するか、もしくは血液などを採取し、そこから常法に従って調製した組織抽出物やタンパク質を用いて、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、疾患マーカーの抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)を検出することができる。
疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーの抗体は、疾患の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。更に疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーの抗体は、疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現変動を検出するためのプローブとして有用である。該疾患マーカーを利用した疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングは、被験物質を添加した細胞における疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現レベルと被験物質を添加しない細胞での疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
例えば、下記実施例5および実施例6で示すように糖尿病の疾患マーカー遺伝子としてALDH2遺伝子が挙げられる。よって、糖尿病の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)にALDH2遺伝子から生産される疾患マーカーの抗体は有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した糖尿病の診断は、被験者の生体組織と正常者の生体組織におけるALDH2タンパクの発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
同様に糖尿病の疾患マーカー遺伝子であるALDH2遺伝子から生産される疾患マーカーの抗体は、疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現変動を検出するためのプローブとして有用である。該疾患マーカーを利用した疾患の改善、治療に有用な候補物質のスクリーニングは、被験物質を添加した細胞における疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現レベルと被験物質を添加しない細胞での疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)の発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
本発明の第3の態様は物質の薬効評価方法に関する。
具体的には以下の(a)〜(c)の工程を含む薬効評価に関する。
薬効評価方法を説明するためここでは、多変量解析の具体例として、主成分分析、有意差検定、判別分析を用いて説明するが、本発明の多変量解析の手法は前記に限られるものではない
本発明の図1のフローチャートに示される本発明解析方法は、以下の工程からなる物質の薬効評価に有用である。
(a) 生体組織あるいは細胞で、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合の異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップやDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、主成分析と有意差検定および/または判別分析を含む数学的手法を用いて解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
(c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する遺伝子セットを指標に第二の物質の薬効を評価する方法。
疾患治療効果を有する物質とは、例えば治療薬の成分である低分子物質やタンパク、具体的には糖尿病治療薬であるメトホルミンなどを指す。
異なる2群(条件)サンプルでの遺伝子発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なるとの結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子について病態と相関した発現変動があると見なすことができる。
よって、疾患治療効果を有する物質を加えたサンプルと加えないサンプルを対象としたDNAチップ解析で、複数の遺伝子の発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(添加サンプルと無添加サンプルの2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし、との結果が得られる)との結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子は、疾患治療効果と相関した発現変動がある遺伝子と見なすことができる。
本発明の薬効評価方法で物質の薬効評価を行う場合は、予め機能別に分類した遺伝子群(遺伝子セット)を解析対象遺伝子として用いることで可能である。この場合の機能別に分類した遺伝子セットとは、一群の遺伝子の変動から薬効が推測可能と考えられる遺伝子群を指し、具体的には、前述の疾患マーカ遺伝子選抜方法で選抜された疾患マーカー遺伝子群であり、あるいは、一連のパスウェイ(例えば、糖新生/糖代謝パスウェイや脂肪酸代謝パスウェイ、あるいはホスファチジルイノシトールシグナルパスウェイなど)に関連する遺伝子セットである。該遺伝子セットでの有意な発現変動が判定された場合、遺伝子セットが疾患連遺伝子群ならば対象物質の該疾患への薬効が期待される。あるいは遺伝子セットがパスウェイ関連遺伝子ならば物質の該パスウェイ遺伝子(タンパク)に対する影響が推察される。なお、この場合の薬効は、物質添加による影響を総じて表現するものとして使用しており、特定の治療効果や発現変動の増減についても規定するものではない。
解析対象の遺伝子セットについては構成する遺伝子は制限されず、追加、削除可能である。パスウェイに関連する遺伝子セットは下記実施例4に示す方法で取得可能である。パスウェイ情報は、KEGGデータベース(http://www.genome.ad.jp/kegg/)の他、GenMAPPデータベース(http://www.genmapp.org/)などが利用できる。
本発明の薬効評価方法において物質の薬効評価に用いる場合でも、第1の態様である解析方法と同様に該解析手法のデータ設定や解析ツールソフトウェア、その解析パラメータを制限しない。しかしながら、複数物質を対象とする薬効評価の場合は、解析は対象遺伝子(遺伝子セット)は同じとし、解析ツールのパラメータや判断基準も同一基準にて行う。
被験物質の薬効評価を行う場合は、解析に用いる遺伝子セットを同じくして、基準となる物質での本発明解析方法による解析結果と比較対照の物質での本発明による解析方法による解析結果を比較することで可能である。具体的には、2物質の該解析での有意な発現変動を示す遺伝子セットが同一であった場合、被験物質には基準となる物質(薬効が予め既知の物質)と同様の薬効が期待される。この場合、解析に用いる対象遺伝子セットを複数としても得られる結果が同一であれば、2物質の薬効はより高い確率で同様であると見なされる。なお、遺伝子セットは上述するパスウェイに関連する遺伝子を含むことが望ましい。
本発明解析方法では、異なる2群(条件)サンプルでの遺伝子発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なるとの結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子について条件変化と相関した発現変動があると見なすことができる。
よって、例えば物質A添加のサンプルと無添加のサンプルを対象としたDNAチップ解析で、複数の遺伝子の発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(物質A添加サンプルと無添加サンプルの2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし)との結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子セットおよび解析対象に用いたサンプルからなる発現データおよび該データを用いた解析方法は、物質Aの薬効と相関した発現変動を検出することができる解析方法、あるいは薬効の評価方法と見なすことができ、これを利用して被験物質を行うことができる。
具体的には、被験物質添加のサンプルを用いてDNAチップやDNAマイクロアレイで解析した発現データを物質Aの薬効評価が可能な発現データに追加して行った本発明解析方法による解析結果と、物質Aの薬効評価が可能な発現データでの本発明解析方法による解析結果とを比較することで可能である。例えば、被験物質添加のサンプルを物質A添加のサンプルに加えて1群として、他群(物質Aおよび/または被験物質を添加しないのサンプル)との有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし)との結果が得られた場合、被験物質は物質Aと同様の薬効を有する可能性が高いことが判定される。
糖尿病の治療効果を示す物質の薬効評価を行う場合は、例えば実施例3あるいは実施例4に示す糖尿病治療薬メトホルミン投与で有意な発現変動を示す複数の疾患マーカー遺伝子やパスウェイに関連する遺伝子セットを対象として、同様の解析を行い、得られる結果を基準にして比較することで、薬効評価が可能である。また、メトホルミン以外の糖尿病治療薬を基準に薬効評価可能である。また、肝臓組織以外の組織でも薬効評価の対象となり得る。例えば、糖尿病治療薬ではピオグリダゾン(ケーエスケー社から入手可能)などが挙げられる。組織では例えば、筋肉、脂肪組織などが挙げられる。
さらには、被験物質添加のサンプルを用いてDNAチップやDNAマイクロアレイで解析した発現データをメトホルミンの薬効評価が可能な発現データに追加して行った本発明解析方法による解析結果と、メトホルミンの薬効評価が可能な発現データでの本発明解析方法による解析結果とを比較することで可能である。例えば、被験物質添加のサンプルをメトホルミン添加のサンプルに加えて1群として、他群(メトホルミンおよび/または被験物質を添加しないのサンプル)との有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし)との結果が得られた場合、被験物質はメトホルミンと同様の糖尿病に対する薬効を有する可能性が高いことが判定される。
本発明の第4の態様は疾患治療薬の成分となる候補物質のスクリーニング方法である。詳しくは、以下の(a)〜(c)の工程からなるスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング方法を説明するためここでは、多変量解析の具体例として、主成分分析、有意差検定、判別分析を用いて説明するが、本発明の多変量解析の手法は前記に限られるものではない
本発明のスクリーニング方法は、本発明解析方法により選抜された疾患マーカー遺伝子を利用したスクリーニング方法である。具体的には本発明による解析方法により選抜された疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカー、疾患マーカーのポリヌクレオチドおよび疾患マーカーの抗体等を利用したスクリーニング方法である。さらには、本発明薬効評価方法による、疾患の予防、改善または治療に有効な候補物質のスクリーニング方法である。

(a) 被験物質と疾患マーカー遺伝子(タンパク)を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞における疾患マーカー遺伝子(タンパク)の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記遺伝子(タンパク)の発現量と比較する工程、
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、疾患マーカー遺伝子(タンパク)の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
上記スクリーニングにおける疾患マーカー遺伝子は、本発明の疾患マーカー遺伝子の選抜方法により得られる疾患マーカー遺伝子である。また、かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、複数の疾患マーカー遺伝子のすべてまたはその一部を発現し得る細胞を挙げることができる。疾患マーカー遺伝子の発現は、公知のノーザンブロット法やRT-PCR法あるいはDNAチップ解析にて遺伝子発現を検出することにより、容易に確認することができる。疾患マーカー遺伝子の翻訳産物(タンパク)を指標とする場合は、タンパクの発現は公知のウエスタンブロット法などで確認することができる。
上記「被験物質を接触させた細胞における疾患マーカー遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記遺伝子の発現量と比較する工程」および「比較結果に基づいて、疾患マーカー遺伝子の発現量を変動させる被験物質を選択する工程」は前述する本発明薬効評価と同様にして実施可能である。
疾患マーカー遺伝子が選抜した複数遺伝子の中で病態と相関した発現変動が顕著である、重要な遺伝子であれば、該遺伝子の発現量を指標にスクリーニングすることもできる。例えば、実施例5に示すように糖尿病のマーカー遺伝子ではALDH2遺伝子の発現量を指標に糖尿病の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質をスクリーニングすることもできる。その際、糖尿病マーカー遺伝子であるALDH2遺伝子から生産されるALDH2のポリヌクレオチドや抗体は、(3)項、(4)項で前述するように疾患マーカーとして利用される。
このようなスクリーニング方法における遺伝子やタンパクの発現レベルの検出及び定量は、疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーのポリヌクレオチド、疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーである抗体等の疾患マーカーを用いて、遺伝子レベルではノーザンブロット法、RT-PCR法など公知の方法、あるいはDNAチップ解析などを利用する方法で、タンパクの発現レベルはウエスタンブロット法など公知の方法に従って実施できる。
指標とする遺伝子発現レベルあるいはタンパク発現レベルの変動は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における疾患マーカー遺伝子あるいはの発現変動が、病態から正常への該遺伝子あるいは該タンパクの発現変動と同じであることをもって、行うことができる。また、指標とする発現変動レベルの変動の程度は、被験物質(候補物質)を接触させた細胞における遺伝子あるいはタンパクの発現が、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%以上、好ましくは20%以上、特に好ましくは50%以上の変動を例示することができる。
スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(疾患マーカー遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記組織および/または細胞と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
スクリーニング方法には、疾患マーカー遺伝子(タンパク)の発現レベルを指標として、その発現を変動させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、疾患に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法は、疾患マーカー遺伝子の発現を変動させる物質を探索することによって、疾患に対する改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
例えば、実施例6で示されるように、ALDH2遺伝子は糖尿病治療薬メトホルミン(400mg/kg)の投与2時間後により発現減少を示すので、被験物質を添加した細胞におけるALDH2遺伝子(タンパク)の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞でのALDH2遺伝子(タンパク)の発現レベルと比べて10%以上減少、好ましくは20%以上減少、より好ましくは50%以上減少していれば、被験物質を糖尿病の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質として選抜することができる。
本発明のスクリーニング方法により選別される物質は、ALDH2遺伝子の遺伝子(タンパク)発現抑制剤として位置づけることができる。これらの物質は、ALDH2遺伝子(タンパク)の発現を抑制することによって、糖尿病を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
本発明の第5の態様は疾患の検出方法および/または診断方法に関する。本発明の疾患の検出方法および/または診断方法を説明するためここでは、多変量解析の具体例として、主成分分析、有意差検定、判別分析を用いて説明するが、本発明の多変量解析の手法は前記に限られるものではない。
本発明の疾患検出方法は、図1のフローチャートに示す101〜104の手順による解析方法により選抜された疾患マーカー遺伝子を利用した疾患の検出方法である。具体的には本発明による解析方法により選抜された疾患マーカー遺伝子から生産される疾患マーカーのポリヌクレオチドおよび疾患マーカーの利用した疾患の検出方法である。さらには、本発明解析方法を利用した疾患の検出方法である。
本発明の疾患の検出方法は、以下の工程からなる。
(a) 生体組織あるいは細胞で、疾患状態と正常状態の異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップやDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、主成分析と有意差検定および/または判別分析を含む数学的手法を用いて解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
(c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する遺伝子セットを指標に疾患の罹患を判断する工程
上記疾患の検出方法および/または診断方法における疾患マーカー遺伝子は、本発明の疾患マーカー遺伝子の選抜方法により得られる疾患マーカー遺伝子である。
本発明の疾患の検出方法および/または診断方法は、被験者の生体組織の一部をバイオプシ等で採取するか、もしくは血液などを採取し、そこに含まれる疾患マーカー遺伝子の遺伝子発現レベルをDNAチップやDNAマイクロアレイで解析し、その発現データをもとに前述する本発明解析方法で解析することにより、疾患の罹患の有無またはその程度を検出(診断)するものである。また本発明の検出(診断)方法は、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における、患者における該疾患の改善の有無またはその程度を検出(診断)することもできる。
ここで用いられる生体試料としては、被験者の生体組織から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料を挙げることができる。かかるRNAを含む試料は、被験者の生体組織の一部をバイオプシ等で採取するか、もしくは血液を採取し、そこから常法に従って調製することができる。
本発明の検出方法および/または診断方法は、測定試料RNA中の疾患マーカー遺伝子の発現レベルをDNAチップやDNAマイクロアレイで測定することによって実施される。その際、前述の疾患マーカーのポリヌクレオチドをプローブとして用いる。例えば、アフィメトリクス社GeneChip(DNAチップ)を用いた、測定試料RNA中の疾患マーカー遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例1に示すとおりである。
ここでいう疾患状態のサンプルとは、検出対象の疾患の症状があり、好ましくは他の検査方法により、該疾患であると診断された患者の生体組織、生体試料あるいは測定試料を指す。また、正常状態のサンプルとは、「疾患状態のサンプル」に該当しない人の生体組織、生体試料あるいは測定試料を指す。よって正常状態のサンプルは、検出対象の疾患以外の疾患を有する人のサンプルが含まれるが、より好ましくは、検出対象以外の疾患についても正常状態のサンプルと見なされる、人の生体組織、生体試料あるいは測定試料である。なお、本明細書中では「疾患状態のサンプル」を、疾患を有する患者のサンプルと、「正常状態のサンプル」を正常者のサンプルと表すことがある。
本発明解析方法では、異なる2群(条件)サンプルでの遺伝子発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なるとの結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子について条件変化と相関した発現変動があると見なすことができる。
よって、疾患を有する患者のサンプルと正常者のサンプルを対象としたDNAチップ解析で、複数の遺伝子の発現データを用いて主成分分析、有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(疾患を有する患者のサンプルと正常者のサンプルの2群の区分設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし)との結果が得られた場合、解析に使用した遺伝子セットおよび解析対象に用いたサンプルからなる発現データおよび該データを用いた解析方法は、疾患と相関した発現変動を検出することができる解析方法、あるいは疾患の検出方法と見なすことができ、これを利用して被験者の疾患の検出を行うことができる。
具体的には、被験者のサンプルを用いてDNAチップやDNAマイクロアレイで解析した発現データを疾患の検出が可能な発現データに追加して行った本発明解析方法による解析結果と、疾患の検出が可能な発現データでの本発明解析方法による解析結果とを比較することで可能である。例えば、被験者サンプルを疾患を有する患者のサンプルに加えて1群として、他群(正常者のサンプル)との有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし)との結果が得られた場合、被験者は疾患を有する可能性が高いことが判定される。あるいは、被験者サンプルを正常者のサンプルに加えて1群として、他群(疾患を有する患者のサンプル)との有意差検定、判別分析を行い、両者の発現が有意に異なる(2群の設定で有意差検定において有意差がある、および/またはSVMでの判定で誤判定なし)との結果が得られた場合、被験者は該疾患を有しない可能性が高いことが判定される。
前出第1の態様の項で述べたように、疾患の検出に用いる場合でも、該解析手法のデータ設定や解析ツールソフトウェア、その解析パラメータを制限しない。しかしながら、各々の分析方法が行われる設定には、その分析が有効に機能するデータ設定、解析パラメータであることが望ましい。そのような各分析のデータ設定や解析パラメータは、同業者であれば適宜選択し、調整可能である。
糖尿病の検出および/または診断に際しては、例えば実施例2あるいは実施例4中に示される疾患マーカー遺伝子、糖尿病を有する患者のサンプルと正常者のサンプルのDNAチップやDNAマイクロアレイによる発現データを用いることで、上述と同様の解析を行い、被験者が糖尿病であるかを判断できる。この場合、対象とする生体組織は、糖尿病の場合には肝臓等組織である。

本発明の第6の態様は以下の工程を含むコンピュータ読み取り可能なプログラムに関する。
(a)生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップやDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b)複数の遺伝子発現データを入力する手段、
(c)複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
(d)上記(c)の判定結果を出力する工程。
具体的には、図1の101〜104の解析方法を実行させるプログラムで、これらは、図1に示したアルゴリズムの手順にそって1つのモジュールであっても、それぞれのパート毎に書かれたモジュールを組み合わせて使用してもよい。これらは磁気または、磁気光ディスク、光ディスク等の記録媒体に記録されている。
上記プログラムは、前記第1の態様〜第5の態様に含まれる本発明を実行させる全てのプログラムを含む。
本発明の第7の態様は、以下の工程を実行させる装置である。
(a)生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップやDNAマイクロアレイで解析する工程、
(b)複数の遺伝子発現データを入力する手段、
(c)複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
(d)上記(c)の判定結果を出力する工程。
本発明装置の構成を図2に示す。202〜204は、本発明の方法にてデータ入力、演算、分析、選別に使用するための装置である。205は201〜204の装置の実行結果を出力するおよび/または記録するための装置である。
202の装置で、複数の遺伝子の発現データを入力し、
203の装置で多変量解析を実行する。多変量解析は例えば、201の解析で得られた複数遺伝子の主成分分析と、有意差検定を行う工程(1)、または、主成分分析と判別分析とを行う工程(2)が含まれる。工程(1)および工程(2)はそれぞれに解析を行う工程であっても、両者を含む工程であっても構わない。
204で203の装置で得られた計数結果をもとに異なる2条件間の遺伝子発現が有意になると判定する手段を実行させる。
201〜204の装置の実行結果は205の装置の出力部で紙などの記録媒体に印刷することもでき、画像処理部で表示することもでき、FD,MO,CD−RW,DVD−RW等の磁気または、磁気光ディスク、光ディスク等の記録媒体に出力することもできる。
201〜205の装置は、全てが含まれて一体化した装置でも、各々が分離した装置でも、一部の手段を実行させる装置を含んだ装置を複数組み合わせた装置であってもよい。
上記の装置は、電子計算機であればよく、サーバー、パーソナルコンピュータ(以下PC)等が挙げられ、計算機の能力は制限しない。
本発明解析方法を実行させるプログラムを動作させるオペレーションシステムも汎用ソフトウェア例えば、Linux系OS、マイクロソフトウインドウズ(登録商標)シリーズ等でよい。
上記装置は、前記第1の態様〜第5の態様に含まれる本発明を実行させる全てのプログラムを実行させる装置を含む。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
糖尿病治療薬メトホルミン投与による糖尿病モデルマウス肝臓での遺伝子の発現変動の解析(DNAチップ解析)
メトホルミン(1,1-Dimethylbiguanide hydrochloride; シグマ社製)400mg/kg、あるいは50mg/kgを経口投与後2時間経過したdb/dbマウス(C57BL/Ksj-db/db Jcl; 日本クレア社から入手)の肝臓(各5個体)と、溶媒のみ投与した後2時間経過したdb/dbマウス(vehicle)の肝臓(5個体)、さらには、未処理のdb/dbマウスの肝臓(5個体)からそれぞれtotal RNAを調製し、DNAチップ解析による遺伝子発現量の解析を行った。肝臓サンプルからのtotal RNAの調製は、TRIZOL Reagent(インビトロジェン社製)を用いて付属のプロトコールに従って行った。前記で得られたtotal RNAをRNeasy(キアゲン社製)を用いてさらに精製した後にDNAチップ解析に供した。
DNAチップ解析は、各total RNA、あるいは各4群(メトホルミン400mg/kg投与群、メトホルミン50mg/kg投与群、溶媒投与群、未処理群)5サンプルのtotal RNAを等量混合して調製した混合RNAからcDNAの調製、該cDNAからラベル化cRNAの調製、ラベル化cRNAのフラグメント化、フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、プローブアレイの染色、プローブアレイのスキャン、及び遺伝子発現解析、の順に、J. Biol. Chem. 277, 41147-41156 (2002) に記載の方法と同様の方法で行った。なお、DNAチップ解析はアフィメトリクス社Gene Chip Murine Genome U74A ver.2を用いた。遺伝子の発現量はGeneChip Workstation System(アフィメトリクス社製)の解析ソフトMicroarray Suite version 5.0によって解析した。解析で得られたそれぞれの細胞試料由来の遺伝子発現量(Signal)と発現の有無(Detection)のデータは必要に応じて、遺伝子発現量の比較解析や主成分分析等に用いた。
400mg/kgメトホルミン投与による糖尿病モデルマウス肝臓での遺伝子発現変動の解析
実施例1の混合RNAでのDNAチップ解析で得られた、メトホルミン400mg/kg投与サンプルのDNAチップデータと溶媒投与サンプルのDNAチップデータを比較して1.5倍以上の発現変動(Microarray Suite version 5.0での解析で、ChangeがIあるいはD、かつ、Signal Log Ratioが0.6以上あるいは-0.6以下であり、さらにChange p-valueが0.05以下)を示したDNAチッププローブを抽出したところ、25プローブ(23遺伝子)あった(表1)。
Figure 2005323573
主成分分析と有意差検定、判別分析を用いた400mg/kgメトホルミン投与による発現変動遺伝子の解析
実施例1のDNAチップ解析で得られた個々の肝サンプル(メトホルミン400mg/kg投与の5サンプル、メトホルミン50mg/kg投与の5サンプル、溶媒投与の5サンプル、未処理の5サンプル)のDNAチップデータのうち、表1に示した25プローブに該当する発現データ(Signal値)を使用して、Spotfire DecisionSite 7.2(スポットファイアー社製)にていったんZ-スコアに変換(ノーマライズした)後、主成分分析(Principal Component Analysis)を行った。メトホルミン投与後2時間のdb/dbマウスの血中グルコース濃度は、400mg/kgメトホルミン投与群のマウスのみで、溶媒投与群と比べて有意な減少がみられた(メトホルミンの薬効がみられた)ため(図3)、400mg/kg投与群5サンプルと、その他の15サンプル(メトホルミン50mg/kg投与の5サンプル、溶媒投与の5サンプル、未処理の5サンプル)の2群を設定し、主成分分析で得られた各サンプルの第一主成分(PCA1)、第2主成分(PCA2)、第3主成分(PCA3)の値(表2)をもとに2群間での有意差検定をウィルクスのΛ(R(http://www.r-project.org/)で公開されている解析プログラム)で解析した。
Figure 2005323573
また、同様に400mg/kg投与群5サンプルと、その他15サンプルの2群の設定で、各サンプルの第一主成分(PCA1)、第2主成分(PCA2)、第3主成分(PCA3)の値をもとにSVMによる判別分析を数理システム社のVisual Mining Studio 1.4で行った。SVMによる解析はカーネル関数をLinear、カーネル関数のパラメータを0.1、Slack変数の計数を100、回帰分析の精度を0.1に設定して解析した。その結果、有意差検定では1%水準で2群間に有意差がある(算出された有意確率を示すp値は0.0000002)、かつ判別分析ではすべてのサンプルに対して誤判定なし、との結果が得られた。以上により、DNAチップ解析により得られた発現データを用いて、上記の条件にて解析を行うことにより、発現比を求める以外の方法で、遺伝子発現変動の解析が可能となった。また、ここでの解析の対象にした25プローブ(23遺伝子、表1)は、糖尿病治療薬メトホルミンの薬効と相関した発現変動を示す遺伝子であるので、これらは糖尿病に関連した疾患マーカー遺伝子である。
400mg/kgメトホルミン投与により影響を受ける代謝パスウェイの解析
実施例3で用いた25プローブ(23遺伝子:表1)の代わりに、代謝パスウェイごとのプローブのセット(遺伝子セット)を用意し、400mg/kgメトホルミン投与による発現変動への影響が大きいパスウェイの解析を行った。
代謝パスウェイごとのプローブのセットは、アフィメトリクス社で公開しているNetAffxデータベース(http://www.affymetrix.com/analysis/index.affx)から得られる各プローブのアノテーション情報をもとに作成した。具体的には、まず、解析に使用したGene Chip Murine Genome U74A ver.2とGene Chip Human Genome U133のプローブを公開されているオーソログ情報をもとに対応付けた。次にGene Chip Human Genome U133の各プローブに付加情報として与えられている酵素のEC番号データを参照して、Gene Chip Murine Genome U74A ver.2の各プローブにEC番号を対応付けた。最終的には、KEGGパスウェイデータベース(http://www.genome.ad.jp/kegg/)で公開されているマップごと(例Glycolysis/Gluconeogenesis、Citrate cycle(TCA cycle)などパスウェイマップ別)に含まれるEC番号に対して、先に作成したGene Chip Murine Genome U74A ver.2の各プローブとEC番号の対応付けデータをあわせることで、代謝パスウェイごとのGene Chip Murine Genome U74A ver.2プローブのセットを作成した。Gene Chip Murine Genome U74A ver.2プローブが対応付けられた代謝パスウェイは108種類であった。このうち、Gene Chip Murine Genome U74A ver.2のプローブが5以上含まれる(実施例1で取得した20サンプルの発現の有無(Detection)データにおいて、すべてAbsentであったプローブを除く)代謝パスウェイは66種類であった。
上記66種類の代謝パスウェイを対象に、それぞれの代謝パスウェイに含まれる複数のプローブの発現データ(実施例1で取得した20サンプル個々の発現データ)を使用して、実施例3と同様に400mg/kg投与群5サンプルと、その他15サンプルの2群の設定で、主成分分析、有意差検定、判別分析を行った。その結果、Glycolysis/Gluconeogenesis(表3)、Fatty acid metabolismパスウェイ(表4)、Bile acid biosynthesisパスウェイ(表5)、 Citrate cycle(TCA cycle)(表6)、Pyruvate metabolism(表7)、 Valine, leucine and isoleucine degradation(表8)、Lysine degradation(表9)、Arginine and proline metabolism(表10)、Tryptophan metabolism(表11)、Phenylalanine, tyrosine and tryptophan biosynthesis(表12)、Glycerolipid metabolism(表13)、Phosphatidylinositol signaling system(表14) を対象とした解析において、有意差検定では1%水準で2群間に有意差がある(算出された有意確率を示すp値が0.01以下)、かつ判別分析ではすべてのサンプルに対して誤判定なし、との結果が得られた(表15)。
Figure 2005323573

Figure 2005323573
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Figure 2005323573
Figure 2005323573
以上により、Glycolysis/Gluconeogenesis(表3)、Fatty acid metabolismパスウェイ(表4)、Bile acid biosynthesisパスウェイ(表5)、 Citrate cycle(TCA cycle)(表6)、Pyruvate metabolism(表7)、 Valine, leucine and isoleucine degradation(表8)、Lysine degradation(表9)、Arginine and proline metabolism(表10)、Tryptophan metabolism(表11)、Phenylalanine, tyrosine and tryptophan biosynthesis(表12)、Glycerolipid metabolism(表13)、Phosphatidylinositol signaling system(表14)パスウェイに含まれる遺伝子は、糖尿病治療薬メトホルミンの薬効と相関した発現変動を示す遺伝子であるので、これらは糖尿病に関連した疾患マーカー遺伝子である。
メトホルミンについては肝臓において糖新生の抑制による血糖降下作用や脂質代謝改善作用が報告されている(N. Engl. J. Med. 333, 541-549,1995)。今回の行ったパスウェイ解析では、薬効を示す濃度(400mg/kg)のメトホルミン投与により、Glycolysis/Gluconeogenesis、Fatty acid metabolism、Bile acid biosynthesis、Citrate cycle(TCA cycle)、Pyruvate metabolism、 Valine, leucine and isoleucine degradation、Lysine degradation、Arginine and proline metabolism、Tryptophan metabolism、Phenylalanine, tyrosine and tryptophan biosynthesis、Glycerolipid metabolism、Phosphatidylinositol signaling systemのパスウェイ遺伝子で有意な発現変動が検出された。このことからメトホルミンと同様な糖尿病改善作用をもつ物質の薬効評価に、実施例4に示す解析手法が有効である、さらにはその薬効評価に基づく物質の選抜(スクリーニング)にも同様の解析手法が有効であると考えられた。
400mg/kgメトホルミン投与により発現変動が顕著である、重要な遺伝子の解析
実施例4で示す複数のパスウェイに共通に含まれるALDH2遺伝子が、400mg/kgメトホルミン投与により発現変動が顕著である、重要な遺伝子であるかどうかを解析した。ALDH2遺伝子が含まれるGlycolysis/Gluconeogenesis(表3)、Fatty acid metabolismパスウェイ(表4)、Bile acid biosynthesisパスウェイ(表5)、 Pyruvate metabolism(表7)、 Valine, leucine and isoleucine degradation(表8)、Lysine degradation(表9)、Arginine and proline metabolism(表10)、Tryptophan metabolism(表11)、Glycerolipid metabolism(表13)の9パスウェイについて、ALDH2遺伝子に該当するプローブ(MG- U74A ver.2プローブセットID:96057_at及び96058_s_at)の発現データを除外して、実施例4と同じ条件で主成分分析、有意差検定、判別分析を行った。その結果、有意差検定で1%水準で2群間に有意差がある(算出された有意確率を示すp値が0.01以下)、かつ判別分析ではすべてのサンプルに対して誤判定なし、との結果が得られたパスウェイはGlycolysis/Gluconeogenesis パスウェイのみであった(表16)。同様にしてALDH9遺伝子に該当するプローブ(MG- U74A ver.2プローブセットID:96243_f_at)の発現データを除外して、同じ条件で主成分分析、有意差検定、判別分析を行った結果では、対象のパスウェイすべてで、有意差検定で1%水準で2群間に有意差がある(算出された有意確率を示すp値が0.01以下)、かつ判別分析ではすべてのサンプルに対して誤判定なし、との結果が得られた。以上により、ALDH2遺伝子は糖尿病治療薬メトホルミンの薬効と相関した発現変動が顕著である、重要な遺伝子であり、よってALDH2遺伝子は糖尿病との関連が強い重要な遺伝子であると推測された。
Figure 2005323573
メトホルミン投与による糖尿病モデルマウス肝臓でのALDH2遺伝子の発現変動
実施例5のALDH2遺伝子の発現変動について調べた。メトホルミン400mg/kgを投与後2時間のdb/dbマウスの肝臓と、溶媒のみ投与した後2時間のdb/dbマウス(vehicle)の肝臓におけるALDH2遺伝子の発現を比較した結果、ALDH2遺伝子(MG- U74A ver.2プローブセットID:96057_at及び96058_s_at)の発現量(表17;5個体でのSignal値の平均値±標準偏差で示す)は、400mg/kgメトホルミン投与により明らかに減少していた。
メトホルミン投与後2時間のdb/dbマウスの血中グルコース濃度は、溶媒のみ投与した後2時間のdb/dbマウス(vehicle)に比べて有意に減少していた(図3)ことから、ALDH2遺伝子の発現減少は、糖尿病の改善と関連があると考えられた。よって、ALDH2遺伝子の発現減少を指標に生活習慣病(糖尿病)を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能である。
Figure 2005323573
本発明の解析手法は、疾患、特に糖尿病の診断、および該疾患の予防、改善または治療に有用な候補物質の薬効評価(スクリーニング)に用いる疾患マーカー遺伝子の選抜に利用することができる。
従って、疾患マーカー遺伝子、および疾患マーカー遺伝子から得られる疾患マーカー〔ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体〕は、疾患、特に糖尿病の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの疾患マーカー遺伝子、および疾患マーカー遺伝子から得られる疾患マーカー〔ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体〕は、上記疾患、特に糖尿病の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。
図1は、解析方法のプログラムを示すフローチャートである。 図2は、解析装置の構成を示すフローチャートである。 図3は、メトホルミン投与後2時間のdb/dbマウスの血中グルコース濃度(メトホルミン400mg/kg投与、メトホルミン50mg/kg投与、溶媒投与、未処理ともdb/dbマウス各5個体でのデータの平均)を示す。400mg/kgメトホルミン投与群で、溶媒投与群と比べて有意な減少(有意水準1%での検定)がみられた。

Claims (31)

  1. 下記の工程(a)及び(b)を含む、遺伝子発現データの解析方法:
    (a) 生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
    (b) 複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
  2. 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、請求項1記載の遺伝子発現データの解析方法
  3. 異なる2条件が疾患状態と正常状態または、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合である請求項2記載の遺伝子発現データの解析方法
  4. 疾患が糖尿病である請求項3記載の遺伝子発現データの解析方法
  5. 疾患治療効果を有する物質が糖尿病治療薬である請求項3記載の遺伝子発現データの解析方法
  6. 糖尿病治療薬がメトホルミンである請求項5記載の遺伝子発現データの解析方法
  7. 下記の工程を含む、疾患マーカー遺伝子の選抜方法:
    (a) 生体組織あるいは細胞で、疾患状態と正常状態または、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合の2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
    (b)複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
    (c) 上記(a)における2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する遺伝子を当該疾患の疾患マーカー遺伝子として選抜する工程
  8. 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、請求項7記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
  9. 疾患が糖尿病である請求項7または、8記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
  10. 疾患治療効果を有する物質が糖尿病治療薬である請求項7または8記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
  11. 糖尿病治療薬がメトホルミンである請求項10記載の疾患マーカー遺伝子を選抜する方法
  12. 下記(a)、(b)および(c)を含む物質の薬効評価方法:
    (a) 生体組織あるいは細胞で、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合の2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
    (b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、多変量解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
    (c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する複数の遺伝子の発現を指標に第二の物質の薬効を評価する方法
  13. 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、請求項12記載の薬効評価方法
  14. 請求項12の(c)における複数の遺伝子が請求項7〜11いずれかで選抜される疾患マーカー遺伝子を含む、薬効評価方法
  15. 請求項12の(c)における複数の遺伝子が請求項9〜11いずれかで選抜される糖尿病の疾患マーカー遺伝子を含む、糖尿病の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、薬効評価方法
  16. 請求項7〜11いずれかで選抜される疾患マーカー遺伝子を利用した、疾患の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法であるスクリーニング方法
  17. 疾患マーカー遺伝子が請求項9〜11いずれかで選抜される糖尿病の疾患マーカー遺伝子である請求項16のスクリーニング方法
  18. 請求項12〜15いずれかに記載の薬効評価方法を利用した疾患の改善剤または治療剤の有効成分のスクリーニング方法
  19. 請求項15に記載の薬効評価方法を利用した糖尿病の改善剤または治療剤の有効成分のスクリーニング方法
  20. 下記(a)、(b)および(c)を含む疾患の検出方法:
    (a) 生体組織あるいは細胞で、疾患状態と正常状態の2条件間の遺伝子の発現をDNAチップまたはDNAマイクロアレイで解析する工程、
    (b) 複数の遺伝子(遺伝子セット)の発現データを対象にして、多変量解析することで、2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する工程。
    (c) 2条件間での遺伝子発現を有意に異なると判定する複数の遺伝子の発現を指標に疾患の罹患を判断する工程
  21. 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、請求項20記載の疾患の検出方法
  22. 請求項20の(c)における複数の遺伝子が請求項7〜11いずれかで選抜される疾患マーカー遺伝子を含む疾患の検出方法
  23. 請求項20の(c)における複数の遺伝子が請求項9〜11いずれかで選抜される糖尿病の疾患マーカー遺伝子を含む糖尿病の検出方法
  24. 請求項1〜6記載の方法を実行させるコンピュータ読み取り可能なプログラム。
  25. 請求項24記載のプログラムを格納した電子媒体。
  26. 下記の工程を含む遺伝子発現データの解析装置:
    (a)生体組織あるいは細胞で、異なる2条件間の遺伝子の発現をDNAチップやDNAマイクロアレイで解析する工程、
    (b)複数の遺伝子発現データを入力する手段、
    (c)複数の遺伝子の発現データを対象にして、多変量解析することで、上記(a)における2条件間での遺伝子発現が有意に異なると判定する工程。
    (d)上記(c)の判定結果を出力する工程。
  27. 多変量解析が、主成分分析と有意差検定および/または判別分析を含む解析方法である、請求項26記載の遺伝子発現データの解析装置
  28. 異なる2条件が疾患状態と正常状態または、疾患治療効果を有する物質を加えた場合と加えない場合である請求項26記載の遺伝子発現データの解析装置
  29. 疾患が糖尿病である請求項28記載の遺伝子発現データの解析装置
  30. 疾患治療効果を有する物質が糖尿病治療薬である請求項29記載の遺伝子発現データの解析装置
  31. 糖尿病治療薬がメトホルミンである請求項30記載の遺伝子発現データの解析装置
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