JP2005322944A - 窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法および製造方法 - Google Patents

窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 長時間の使用によっても光出力低下が少なく信頼性の高い窒化ガリウム系半導体発光素子を作製するために適した発光素子の評価方法および製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上にn型層、発光層、p型層を有する積層構造を含み、積層構造には1つ以上のGaN層を含む窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法であって、ラマン散乱分光法を用い、積層構造の全層にわたる平均的なE2フォノンモードのラマンシフト量を測定することにより、積層構造の全層にわたる平均的なa軸格子歪み量を評価することを特徴とする窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
【選択図】 図6

Description

本発明は、紫外光から可視光領域で発光可能な窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の評価方法およびその方法を用いた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法に関する。
窒化ガリウム系半導体は青色や緑色のLEDや近紫外光レーザ素子材料として用いられている。これらの発光素子はコンタクト層としてのGaN層、発光層としてのInGaN層、キャリアや光の閉じ込め層としてのAlGaN層などにより構成されており、素子構造を積層する基板としては、他の基板に比べ比較的良好な結晶成長が可能なサファイアが用いられている。実用化されているLEDとしては、例えば、サファイア基板上にGaNバッファ層、n型GaN層、InGaN量子井戸活性層、p型AlGaN層、p型GaN層を順次積層して作成されたものがある。
基板上に半導体層を結晶成長させる工程において、サファイア基板はGaNとは格子定数や熱膨張係数が異なるため、サファイア基板上に積層されるGaN層は格子歪みを内包しやすい。また、AlGaN層を素子構造中に積層する際にAlGaN層とGaN層との格子定数差に起因してAlGaN層に引っ張り歪みが生じるが、Al組成が比較的高い場合や膜厚を厚く形成する場合あるいは成長条件によってはこの引っ張り歪みが原因と考えられるクラックが発生する場合が有る。
これらに加え、発光素子の製造プロセスには素子に歪みを与える工程が数多く存在し、素子に過度の歪み掛かる場合、素子特性や素子寿命に悪影響を与えるものと考えられる。これは、結晶成長時や素子の製造工程において成長面内に引っ張りの応力が掛かる時にはAlGaN層においてGaNとAlGaNの格子定数差により生じている引っ張り歪みがいっそう大きくなるため、AlGaN層での結晶欠陥やクラックの発生、素子駆動時の欠陥の増殖や欠陥を通した構成元素の拡散を引き起こすためである。また、結晶成長時や素子の製造工程において成長面内に圧縮の応力がかかる時には、GaNとAlGaNとの格子定数差によりAlGaN層にかかる引っ張り歪みは緩和されるためAlGaN層の劣化に起因した特性悪化は抑制されるものの、圧縮応力が大きくなるとGaN層の圧縮歪みが大きくなるため、GaN層の結晶欠陥、素子駆動時の欠陥の増殖や欠陥を通した構成元素の拡散を引き起こすためである。
上記のように、発光素子の特性および寿命の向上のためには、素子構造中の半導体層の歪みを低減する必要がある。そのためには、発光素子における素子構造中の半導体層の歪みを評価する方法が必要であるが、この目的に適した評価方法がなかった。
本発明の目的は、素子構造中の歪みに起因する素子劣化を抑制し、長時間の使用によっても光出力低下が少なく信頼性の高い窒化ガリウム系半導体発光素子を作製するために適した発光素子の評価方法および製造方法を提供することである。
本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法は、基板上にn型層、発光層、p型層を有する積層構造を含み、積層構造には1つ以上のGaN層を含む窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法であって、ラマン散乱分光法を用い、積層構造の全層にわたる平均的なE2フォノンモードのラマンシフト量を測定することにより、積層構造の全層にわたる平均的なa軸格子歪み量を評価することを特徴とする。
本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子において、E2フォノンモードのラマンシフト量を波長365nm以上の励起光で観測することができる。また、励起光の波長を1つ以上のGaN層の吸収端の波長以上とすることができる。
また、本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子において、1つのGaN層のいずれかのGaN層は積層構造中で最も厚い層であり、1つ以上のGaN層の平均的なE2フォノンモードのラマンシフト量を測定することにより、1つ以上のGaN層の平均的なa軸格子歪み量を評価することを特徴とすることができる。
また、本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子において、励起光をc面に対して実質的に垂直に照射することができる。また、励起光を基板側から照射することができる。また、基板をサファイア基板とすることができる。
さらに、本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子において、窒化ガリウム系半導体発光素子として、E2フォノンモードのラマンシフト量Ωが568.1≦Ω≦570.0cm-1である窒化ガリウム系半導体発光素子を選定することができる。
本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子の製造方法は、上記の評価方法を用いた窒化ガリウム系半導体発光素子の製造方法であって、基板上に積層構造を形成する結晶成長工程と、結晶成長工程により得られた素子構造ウエハを評価方法により評価する工程とを含み、評価方法において測定される素子構造ウエハのE2フォノンモードのラマンシフト量Ωが、568.1≦Ω≦570.0cm-1であることを特徴とする。
ここで、a軸格子歪み量εとは、a軸格子定数の無歪み状態からのずれを表わしており、無歪み状態の格子定数をa0、実際の格子定数をaとしたときに、ε=(a−a0)/a0と表わされる。εの符号が負であることは、実際の格子定数aが無歪み状態の格子定数a0よりも小さく、GaN層が圧縮歪みを受けていることを意味する。
なお、GaNは365nm以上の光に対して透過率が高いため、365nm以上の波長の励起光で観測されるラマンスペクトルは素子構造全層にわたる平均的な信号である。
本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法よれば、GaN層の歪み量を評価するためのE2フォノンモードのラマンシフト量を特定の範囲とすることで、素子を構成する各層に過度の歪みがかかるのを避ける事ができ、歪みに起因する特性劣化を抑制できる。
[実施の形態1]
LED素子構造の断面図を図1に示す。サファイア基板101上に、AlNバッファ層102、n型GaN層103、GaN層105とIn0.2Ga0.8N層106とを交互に5周期積層した多重量子井戸構造104、p型Al0.1Ga0.9N層107、p型GaN層108が順に積層されており、n型GaN層103上にn電極109、p型GaN層108上にp電極110が形成されている。
この素子の製造プロセスを説明する。結晶成長にはMOCVD法(有機金属気相成長法)を用いた。c面サファイア基板101を水素雰囲気で1100℃で熱クリーニングした後、基板温度を550℃に下げ、層厚50nmのAlNバッファ層102を堆積し、続いて基板温度を1050℃まで上げて層厚4μmのSiドープn型GaN層103を成長した。n型GaN103の上に発光層としてInGaN/GaN多重量子井戸構造発光層104を積層する際には、5nmのGaNバリア層105を900℃で成長させ、3nmのIn0.2Ga0.8N井戸層106を760℃で成長し、これを同一条件で5周期積層している。これにより、多重量子井戸活性層104の総厚は45nmになる。次に基板温度900℃にて50nmのMgドープp型Al0.1Ga0.9N層107を成長させ、続いて基板温度を1050℃まで上げて150nmのMgドープp型GaN層108を成長させた。なお、原料ガスとしてはIII族元素の供給ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)、TMI(トリメチルインジウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)を、V族元素の供給ガスとしてNH3(アンモニア)を、n型ドーパントの供給ガスとしてSiH4(シラン)を、p型ドーパントの供給ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエチルマグネシウム)を、それぞれ使用した。
次に、上記の結晶成長工程で得られた素子構造ウエハのサファイア基板101の裏面(半導体層が積層されている面とは反対側の面)を研削する。この研削工程により基板を薄くする事でチップ分割が容易になる。この研削工程において、基板裏面には加工歪みが発生し、基板が150μm程度より薄くなるとこの加工歪みの影響のため基板に反りが生じ、半導体層にはこの基板の反りによる歪みが生じる。これを利用して、基板研削量を変化させて歪み量の異なる素子構造ウエハを作製した。歪み量の評価方法に付いては後述する。
以上の様にして作製された素子構造ウエハの半導体層の一部をSiドープn型GaN層103が露出するまでエッチングを行ない、n型GaN層103の表面にn型電極109を形成する。また、Mgドープp型GaN層108の表面にp型電極110を形成する。
この後、このウエハを350μm角のサイズにチップ分割し各チップをステムにマウントしワイヤーボンディングにより各電極とリード端子とを接続してLED素子とした。
ここで、研削後の基板厚さ100μmの素子と60μmの素子に付いて特性評価した結果を説明する。以下の説明では、研削後の基板厚さ100μmの素子をLED素子A、研削後の基板厚さ60μmの素子をLED素子Bと呼ぶこととする。
素子の特性はどちらの基板厚の場合も、順方向電流20mAにおいて発光波長470nm、出力3mWで同一であった。また、この素子を順方向電流50mAにて発光させ、経時による光出力の変化を調べたところ、図2に示す結果が得られた。横軸は通電時間であり、縦軸はLED素子の光出力を表わす。LED素子Aでは図2に曲線aで示すように3000時間後の光出力低下は約5%であった。一方、LED素子Bでは3000時間後の光出力は当初の約25%となり(曲線b)、基板厚さが60μmと薄くなると、特性劣化が激しくなることがわかった。
次に図3を用いて、GaN層の歪み量の測定方法に付いて説明する。歪み量の評価にはラマン散乱分光法を用い、GaN結晶のa軸に対する応力に敏感なE2フォノンモードのラマンシフトを測定した。測定系の概略図を図3に示す。励起光300の光源301として、Arイオンレーザーを用い、励起光300として波長488nmの発振線を用いた。励起光300は回折格子302で波長488nmの発振線以外の自然放出光を除去されたのち、金属顕微鏡303に導入され対物レンズ304で試料305上に集光される。試料からの散乱光306は再び顕微鏡を通ってレンズ307で集光され、ノッチフィルター308で励起波長を除去したのち、分光器309へ導かれる。分光器309で分光された光はマルチチャンネル検出器310で検出される。分光器・マルチチャンネル検出器の制御ならびに検出信号の記録処理はパーソナルコンピューター311により行なう。波数校正は、ピーク波数が既知であるネオンランプのスペクトルを測定する事により行なった。励起光や散乱光は測定系を構成する装置に対して光軸を効率よく合わせるため、反射鏡やレンズ、プリズムなどが適宜用いられる(例えば励起光の反射鏡312)。
ここで、素子構造の全層にわたって平均的な歪み量を測定するために、すべての層に励起光が到達する必要があり、励起光波長は365nm以上とする必要がある。この波長はGaN層の吸収端の波長であり、365nmより短い波長の光を用いると、GaN層での吸収が大きくなるためごく表面に存在する層の信号しか観測できなくなる恐れが在るからである。GaN層に比べ、AlGaN層やInGaN層は薄いため、これらの層で励起光が吸収される影響は非常に小さくラマン測定においては支障とならない。また365nm以上の波長域の光に対してはサファイア基板も透明であるため、基板裏面から励起光照射してラマンスペクトルを測定する事も可能である。ここで説明した測定系は一例であり、これに限定されるものではない。
試料305は寿命試験の際と同じ状態で設置される。即ち本実施例においては、350μm角のサイズにチップ分割されており、基板裏面がステム上に接着された状態である。励起光の照射位置は、素子外周10μm及びn電極形成のためエッチングされた領域を除いてGaN層の信号が観測可能な領域であればどこでも良く、c面に対して概ね垂直に照射される。素子外周部及びエッチングされた領域についての評価が好ましくないのは、チップ分割やエッチングプロセスにより、歪み方が異なる場合があるからである。半導体層側をステムに固定したいわゆるフリップチップ方式でマウントされている場合には励起光に対しサファイア基板は透明であるため、基板側から励起光照射することができる。
素子寿命と素子歪み量との関係を調べるためには、寿命試験した状態と同状態でラマン測定を行なう事が肝要である。ただし、p型GaN層108上の全面に厚く電極や保護膜などがある場合、励起光が半導体層まで到達し難くなりラマン測定が困難となる。このときは、p型GaN層上の電極や保護膜などをエッチング除去する必要がある。このとき電極が除去されることにより寿命試験を行なったときとは表面の歪み量が変化してしまう恐れがあるが、後述する通り、ラマン測定により評価している歪み量は素子構造の全層にわたる平均的な値であり、歪み量が層毎に異なっていたり積層方向に分布がある場合でも最も厚い層(ここではn型GaNコンタクト層103)の信号が最も強いため、表面のごく一部の歪み量が変化してもラマンスペクトルへの影響は少ない。
ラマンスペクトルの例を図4に示す。図4には3種類のLED素子から得られたスペクトルをプロットしてあり、スペクトルのピーク形状を見やすくするためにゼロ点をずらして表示している。○印でプロットされたスペクトルaはLED素子Aにおいて得られたラマンスペクトルであり、△印でプロットされたスペクトルbはLED素子Bのラマンスペクトルである。E2フォノンモードのラマンシフト量Ωはこのラマンスペクトルにガウス関数をフィッティングさせる事により決定され、フィッティングの様子はスペクトルに重ねて実線で記している。また、フィッティングにより決定されたΩの値を矢印で示しており、LED素子AではΩ=568.5cm-1であり、LED素子BではΩ=571.0cm-1であった。
ラマン測定において、励起光源として用いたArイオンレーザの波長488nmの発振線は窒化ガリウム系半導体やサファイア基板に対する透過率が高いため、素子構造を構成する全ての層に到達しており、観測されるラマンスペクトルは全ての層からの信号を含んだものとなっている。しかしながら、InGaN層106やAlGaN層107はGaN層の総膜厚に比べ非常に薄いため、このスペクトルはGaN層からの信号とみなして差し支えない。また、GaN層の歪み量に積層方向に分布がある場合や、歪み量が層毎にことなっている場合には、観測されるスペクトルは例えば図4のスペクトルeに示すように、ブロードなスペクトルとなるが、この場合もE2フォノンモードのラマンシフト量Ωの決定においてはガウス関数フィッティングを行ない、得られた値をこの素子の積層方向の全層にわたる平均的な値として用いる。
E2フォノンモードのラマンシフト量Ωからa軸格子歪み量εへの換算は、図5の関係を用いた。図5はJ.Appl.Phys.82(1997)5097に報告されている結果に基づいている。このように、a軸格子歪み量εはラマンスペクトルからフィッティングにより求められたE2フォノンラマンシフト量Ωから決定される。従ってGaN層の歪み量εとは、E2フォノンモードラマンシフト量Ωと同様に、素子を構成する全てのGaN層についての平均的な値を表わすものである。この関係をもちいてE2フォノンモードのラマンシフト量Ωからa軸格子歪み量εへ換算を行なうと、LED素子AではΩ=568.5cm-1でありε=−0.04%、LED素子BではΩ=571.0cm-1でありε=−0.25%、であることがわかった。
E2フォノンモードのラマンシフト量Ω、GaN層のa軸格子歪み量ε、として本発明で議論する値は、上記の方法で決定されている。なお、図1をもとに説明した素子構造ではn型GaN層103が最も膜厚の厚い層であるため、ラマンスペクトルやE2フォノンモードのラマンシフト量Ωや歪み量εの値は、全てのGaN層の中でもn型GaN層103の影響が最も強く現われていると考えられる。
次に、E2モードのラマンシフト量測定による歪み量の評価方法を用いて、様々な歪み量の素子に付いて通電後の光出力低下と歪み量の関係を調べた結果を図6に示す。横軸はGaN層E2フォノンモードのラマンシフト量から評価したa軸歪み量εであり、縦軸は各素子を電流値50mAで3000時間通電した後の光出力を通電初期値との比率で表わしている。なお、通電初期の特性はどの素子も同一であった。
図6から明らかなように、GaN層の歪み量εがε>−0.01%、ε<−0.16%の範囲では3000時間通電後の光出力が著しく低下した。
この原因として、次のように考えている。発光素子を構成する各層は、最も膜厚の厚い層であるGaN層にa軸格子定数が概ね一致した状態で積層(コヒーレント成長)されていると考えられるため、GaN層の歪み量の変化を調べることで各層の歪みのおおよその状態を把握することができる。
一般にGaN層とAlGaN層とを含む積層構造において、AlGaN層の層厚がGaNに比して薄い場合には、AlGaN層とGaN層との格子定数差によりAlGaN層に引っ張り歪みが生じる。図1の構造においても、p型Al0.1Ga0.9N層107にはGaN層との格子定数差により成長面内に引張り歪みがかかっているが、GaN層の歪み量がε>−0.01%の範囲ではεが大きくなるほどp型Al0.1Ga0.9N層107にかかる引っ張り歪みがいっそう大きくなるため、p型Al0.1Ga0.9N層107はクラックが発生したり結晶欠陥を含みやすくなり、また引っ張り歪みの大きな状態で使用すると通電中にp型Al0.1Ga0.9N層107中の結晶欠陥が増殖したり、欠陥を通して構成元素の拡散が発生するため、素子特性に悪影響を与えていると考えられる。GaN層の歪み量がε>−0.01%の範囲で光出力が低下するのはこのためである。
一方、GaN層の歪み量がε<−0.16%の範囲(圧縮応力が大きい場合)ではεが小さくなるほど(圧縮応力が大きくなるほど)GaNとAlGaNとの格子定数差によりAlGaN層に掛かる引っ張り歪みは緩和されるため、p型Al0.1Ga0.9N層107の劣化に起因した素子劣化は抑制されるものの、圧縮応力が大きくなるとGaN層の圧縮歪みが大きくなるため、GaN層(特にn型GaN層103やp型GaN層108)において、結晶欠陥の発生や素子駆動時の欠陥の増殖や欠陥を通した構成元素の拡散を引き起こし、これが素子特性や素子寿命を悪化させている原因と考えられる。
これに対し、GaN層のa軸歪み量が−0.16%≦ε≦−0.01%の範囲である場合には、発光素子を構成する各層に過度の歪みがかかることを避けることが可能となり、光出力の経時劣化が少なく信頼性の高い発光素子が得られている。
なお、InGaN層106には格子定数差による圧縮歪みがかかっているが、結晶欠陥の発生する臨界膜厚以下の非常に膜厚の小さい層であるため、素子劣化に対する影響は少ないと考えられる。
図6には、サファイア基板の研削プロセス(研削量や研削粗さ)を異ならせる事によって得られた、歪み量の異なる素子に付いての結果を示しているが、歪み量を異ならせる方法はこれに限定されるものではない。結晶成長時のサファイア基板の厚さ、AlNバッファ層の堆積条件、n型GaN層103の厚さ、結晶成長後の冷却スピード、不純物のドーピング条件や濃度分布、素子の固定に用いる接着剤や接着方法、素子が固定されるステムやサブマウント(台座)の形状などを異ならせることによっても素子構造中のGaN層の歪み量は変化する。このように歪み量を決定する要因は多種多様であり、それぞれが複合して素子の歪み量が決まっているため、一つの要因だけで歪み量が一意に決定されるものではないが、歪み量に対する光出力低下の特性は図6と同様の結果を示すことが分かっている。
なお、図1において、AlNバッファ層102の材料はその上に窒化ガリウム系半導体層をエピタキシャル成長させることができるものであれば、AlNにこだわらず他の材料、例えばGaNやAlGaN、InGaNなどのを用いてもよい。
また、多重量子井戸構造発光層104は5周期としたが、量子井戸の数は6以上または4以下でもよく、単一量子井戸を発光層としてもよい。量子井戸106の幅は3nm、障壁層105の幅を5nmとしたが、これらの値が異なっていても構わない。
障壁層105はGaNとしたが、Inを含むInGaN層としてもよい。また、量子井戸層106のIn組成は0.2としたが、この値は所望の発光波長を得るために適宜変更される。また、障壁層、量子井戸はInGaN3元混晶に微量に他の元素、例えばAsやPなどを含んだ4元以上の混晶半導体でもよい。この場合にも混晶組成は所望の発光波長となるように適宜変更される。
また、素子構造の結晶成長をMOCVD法により行なった場合をしめしているが、GaNをエピタキシャル成長できる成長法であればよく、MBE法(分子線エピタキシャル成長法)やHVPE法(ハライド気相成長法)等の他の気相成長方法を用いる事ができる。
[実施の形態2]
図7に半導体レーザ素子の断面図を示す。サファイア基板701上にGaNバッファ層702、n型GaNコンタクト層703、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704、n型GaNガイド層705、InGaN/GaN多重量子井戸構造活性層708、Al0.2Ga0.8N蒸発防止層709、p型GaNガイド層710、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711、p型GaNコンタクト層712、が積層され、p電極713とn電極714が設けられている。715はSiO2絶縁膜である。多重量子井戸構造活性層708は、GaN障壁層706とIn0.1Ga0.9N層量子井戸層707とを積層することにより構成されている。
この素子の製造プロセスを説明する。結晶成長にはMOCVD法(有機金属気相成長法)を用いた。c面サファイア基板701を水素雰囲気で1100℃で熱クリーニングした後、基板温度を600℃に下げ、層厚35nmのGaNバッファ層702を堆積し、続いて基板温度を1050℃まで上昇させて層厚4μmのn型GaNコンタクト層703、層厚0.7μmのn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704、層厚50nmのn型GaNガイド層705を続けて成長した。
多重量子井戸構造活性層708の成長の際には、基板温度を800℃に下げ、層厚5nmのIn0.1Ga0.9N量子井戸層707、層厚5nmのGaN障壁層706、層厚5nmのIn0.1Ga0.9N量子井戸層707、層厚5nmのGaN障壁層706、層厚5nmのIn0.1Ga0.9N量子井戸層707、を順次成長した。続いて基板温度は800℃に保ったまま、層厚10nmのAl0.2Ga0.8N蒸発防止層709を成長した。次に再び成長温度を1050℃に上昇して、層厚50nmのp型GaNガイド層710、層厚0.7μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711、層厚0.2μmのp型GaNコンタクト層712を成長した。
なお、原料ガスとしてはIII族元素の供給ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)、TMI(トリメチルインジウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)を、V族元素の供給ガスとしてNH3(アンモニア)を、n型ドーパントの供給ガスとしてSiH4(シラン)を、p型ドーパントの供給ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエチルマグネシウム)を、それぞれ使用した。
ここで、結晶成長プロセスは同一であるが、最上層のp型GaNコンタクト層712を1050℃で成長した後600℃までの冷却スピードの異なるウエハを作製した。後述するが、成長後の冷却スピードを異ならせる事によってGaN層の歪み量の異なる素子が得られる。
こうして得られた、結晶成長後の冷却スピードが異なる素子構造ウエハそれぞれについて、フォトリソグラフィーとドライエッチング技術を用いて、200μm幅のストライプ状にp型GaNコンタクト層712の最表面からn型GaNコンタクト層703が露出するまでエッチングした。次に同様にフォトリソグラフィーとドライエッチング技術を用いて、残ったp型GaNコンタクト層712の最表面に、5μm幅のストライプ状にリッジ構造を形成するようにp型GaNコンタクト層712とp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711をエッチングする。続いてリッジの側面とリッジ以外のp型層表面に厚さ200μmのSiO2絶縁膜715を形成する。このSiO2絶縁膜715とp型GaNコンタクト層712の表面にニッケルと金からなるp電極713を形成し、エッチングにより露出したn型GaNコンタクト層703の表面にチタンとアルミニウムからなるn電極714を形成した。
この後、このウエハをリッジストライプに垂直な方向にへき開してレーザの共振器端面を形成し、さらに個々のチップに分割した。各チップをステムにマウントしワイヤーボンディングにより各電極とリード端子とを接続してレーザ素子を完成した。
ここで、結晶成長後の冷却スピードを−50℃/分として作製された素子と、−300℃/分として作製された素子と、について特性評価した結果を説明する。以下の説明では、結晶成長後の冷却スピードを−50℃/分として作製された素子をLD素子C、結晶成長後の冷却スピードを−300℃/分として作製された素子をLD素子Dと呼ぶこととする。これら二つのLD素子の特性は、室温にて発振波長410nm、発振閾値電流40mAで連続発振し、結晶成長後の冷却スピードに依らず同一であった。
図8はレーザ素子の寿命試験の結果を示すグラフであり、出力3mWにてAPC駆動(automatic power control)したときの駆動電流の変化を表わしている。曲線cはLD素子Cに付いての結果であり、曲線dはLD素子Dに付いての結果である。素子寿命として駆動電流が通電初期値の1.2倍となるまでの時間を評価すると、LD素子cでは15000時間以上、LD素子Dでは約3000時間であった。
次に、図8に寿命試験の結果を示した各素子に付いて、GaN層の歪み量を調べるためにラマン測定を行なった。測定系は実施の形態1に記述したものと同一である。ラマン測定の際、素子は寿命試験を行なったときと同じ状態とした。即ち、チップ分割されており、ステム上に接着されている。
実施の形態1に説明した手順でGaN層のE2フォノンモードラマンシフト量Ω、a軸格子歪み量εを求めたところ、LD素子CではΩ=568.5cm-1,ε=−0.04%であり、LD素子DではΩ=570.7cm-1,ε=−0.22%であった。このようにGaN層の歪み量によりAPC駆動時の素子寿命が異なり、歪み量が−0.04%(E2フォノンモードのラマンシフト量が568.5cm-1)の素子ではAPC駆動時の駆動電流の増加が抑制でき素子寿命が改善される事が確認できた。
電極が厚く形成されている場合は励起光が透過できなくなりラマン測定が困難になる。その際は電極部分をエッチング除去する必要がある。このとき電極が除去される事により寿命試験を行なったときとは表面の歪み量が変化してしまう恐れがあるが、前述したようにラマン測定により評価している歪み量はすべてのGaN層についての平均的な値である。歪み量が層毎に異なったり積層方向に分布がある場合でも最も厚いn型GaNコンタクト層703の信号がもっとも強く、表面のごく一部の歪み量が変化してもラマンスペクトルへの影響は少なくE2フォノンモードのラマンシフト量やa軸格子歪み量の評価には影響はない。
次に、様々な歪み量の素子に付いて、GaN層の歪み量と素子寿命の関係を調べた。歪み量の異なる素子は、結晶成長後の冷却スピードを異ならせることによって作製した。図9に結晶成長後の冷却スピードと素子の歪み量との関係を示す。図7に示した素子の特性は●印で示されている。○印のプロットについては、[実施の形態3]で説明する。この結果から冷却スピードが速いほど素子には大きな歪みが内包されることが分かる。なお、冷却スピードとは結晶成長プロセスにおいて最上層のp型GaNコンタクト層712を1050℃で成長した後600℃までの冷却に関わる速度であるが、必ずしも厳密な値を表すものではない。たとえば、冷却スピード−150℃/分とは、1050℃から600℃までの冷却に3分を要したことを表しているが、必ずしも常に−150℃/分の一定値に制御されているわけではなく、冷却の初期と終期で値が若干異なることもあり得る。
このようにして作製された歪みの量の異なる素子に付いて、GaN層の歪み量εと素子寿命との関係を調べた結果が図10である。図7に示した素子の特性は●印で示されている。○印のプロットに付いては、[実施の形態3]で説明する。横軸はGaN層E2フォノンモードのラマンシフト量から評価したa軸格子歪み量であり、ラマンシフト量から歪み量への換算には図5の関係を用いた。縦軸は素子寿命であり、出力3mWでAPC駆動したときに駆動電流が通電初期値の1.2倍となるまでの時間を評価している。なお、通電初期の特性はどの素子も同一であった。
図10に示す結果から明らかなように、GaN層の歪みεが、ε>−0.01%、ε<−0.16%の範囲では素子寿命が非常に短い。この原因として次のように考えている。ε>−0.01%の範囲ではεが大きくなるほどAlGaN層の引っ張り歪みが大きくなるため、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711やn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704中に結晶欠陥が発生しやすく、また通電中に結晶欠陥の増殖や欠陥を通した構成元素の拡散が発生しやすい事が特性悪化の原因となっているためである。ε<−0.16%の範囲ではp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711やn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704にかかる引っ張り歪みは減少されるものの、εが小さくなるほどGaN層の圧縮歪みが非常に大きくなるため結晶欠陥を多く含む事また結晶性が悪いため通電中に欠陥が増殖して素子故障の原因となっているためである。
これに対して、−0.16%≦ε≦−0.01%の範囲では素子を構成する各層に過度の歪みがかかるのを避ける事ができ、格子歪みによる結晶欠陥の発生や通電時の欠陥の増殖を抑制する事ができるため、寿命が長く信頼性の高い素子が得られている。
図10には、素子構造の結晶性長後の冷却スピードを異ならせることによって得られた、歪み量の異なる素子についての結果を示しているが、歪み量を異ならせる方法はこれに限定されるものではない。結晶成長時のサファイア基板の厚さ、サファイア基板の研削プロセス(研削量や研削粗さ)、GaNバッファ層702の堆積条件、n型GaNコンタクト層703の厚さ、不純物のドーピング条件や濃度分布、素子の固定に用いる接着剤や接着方法、素子が固定されるステムやサブマウント(台座)の形状などを異ならせることによっても素子構造中のGaN層の歪み量は変化する。このように歪み量を決める要因は多種多様であり、それぞれが複合して素子の歪み量が決まっているため、一つの要因だけで歪み量が一意に決定されるものではないが、歪み量に対する光出力低下の特性は図10と同様の結果を示すことがわかった。
なお、図7において、バッファ層702の材料はその上に窒化ガリウム系半導体層をエピタキシャル成長させることができるものであれば、GaNにこだわらず他の材料、例えばAlNやAlGaN、InGaN等を用いてもよい。
n型クラッド層704およびp型クラッド層711はAl0.1Ga0.9N以外のAl組成を持つAlGaN混晶であってもよい。この場合、Al組成を大きくすると活性層とクラッド層との禁制帯幅の差および屈折率差が大きくなり、キャリアや光が活性層に有効に閉じ込められて発振閾値電流の低減や温度特性の向上が図れる。またキャリアや光の閉じ込めが保持される範囲でAl組成を小さくして行くとクラッド層におけるキャリアの移動度が大きくなるため半導体レーザ素子の素子抵抗を小さくできる。n型クラッド層とp型クラッド層とで混晶組成が同一でなくても構わない。
また、多重量子井戸構造発光層708では3層の量子井戸層を積層したが、量子井戸の数は4層以上でもよく2層以下でもよい。単一量子井戸構造とする事もできる。量子井戸707の幅は5nm、障壁層706の幅を5nmとしたが、これらの値が異なっていてもよい。
障壁層706はGaNとしたが、Inを含むInGaN層としてもよい。また、量子井戸層707のIn組成は0.1としたが、この値は所望の発光波長を得るために適宜変更される。また、障壁層、量子井戸はInGaN3元混晶に微量に他の元素、例えばAsやPなどを含んだ4元以上の混晶半導体でもよい。
また、素子構造の結晶成長をMOCVD法により行なった場合をしめしているが、GaNをエピタキシャル成長できる成長法であればよく、MBE法(分子線エピタキシャル成長法)やHVPE法(ハライド気相成長法)等の他の気相成長方法を用いる事ができる。
[実施の形態3]
図7に断面図を示した半導体レーザ素子と同様の構造の発光素子を作製した。ただし、図7と異なる点はサファイア基板701の代わりに擬似GaN基板を用いていることである。
この擬似GaN基板の作製工程を図11を基に説明する。サファイア基板1101上にGaNバッファ層1102を堆積後、GaN層1103を2μm成長し(図11(a1))、フォトリソグラフィーとエッチング工程によりGaN層1103にストライプ状の凸部を形成した(図11(a2))。この凸部は、高さ1μm、幅5μmであり、隣接する凸部間の距離は5μmである。この上にGaN層1104を凸部上の厚さが1μmとなるように成長した。このとき凸部と凸部の間の領域(凹部)では、凸部の側壁から横方向(基板に平行な方向)への成長が優先的に生じるため、凹部は完全に埋め込まれ、基板表面は凹凸が無くなり平坦化している(図11(a3))。
擬似GaN基板を用いて作製された素子では、転位密度が106cm-2程度であり、擬似GaN基板を用いないで素子を作製した場合に比べ3桁程度低減でき、発光強度が増大し、発振閾値が低減でき、長寿命の素子が得られるという効果がある。
擬似GaN基板の構造や作製方法は上記に限定されるものではなく、低転位密度のGaN膜が得られる構成ならば凸部の高さや幅、隣接する凸部間の間隔が上記の値と異なっていても良い。図11(a2)では、GaN層1103のGaN層の途中までしかエッチングしていないが、バッファ層1102あるいはサファイア基板1101までエッチングしても構わない。またGaN層1104を基板表面が平坦化するまで成長しているが、凹凸が残っている状態でも擬似GaN基板とすることができる。
また、擬似GaN基板は図11(b)に示す構造でも良い。図11(b)の擬似GaN基板はサファイア基板1105、バッファ層1106、GaN層1107、成長抑制膜1108、GaN層1109から構成されている。成長抑制膜1108とは窒化物半導体膜が直接成長抑制膜上に結晶成長しない膜のことを指す。成長抑制膜の上部領域は側面(成長抑制膜を形成していない領域)からの横方向成長により平坦化され低転位密度のGaN膜が得られる。成長抑制膜1108としては、SiO2膜、SiNx膜、TiO2膜、Al23膜などの誘電体膜、またはタングステン膜等の金属膜、または空洞などが用いられる。
図7において擬似GaN基板を用いる場合、バッファ層702は形成しなくても良い。しかしながら、擬似GaN基板の表面モフォロジーが良好でない場合には、バッファ層を挿入した方が表面モフォロジーが改善されるため好ましい。
こうして作製した擬似GaN基板を用いて素子構造ウェハを作製し、実施の形態2で説明したのと同様に、結晶成長後の冷却スピードを異ならせる方法で、歪み量の異なる素子を作製した。擬似GaN基板上に作製した場合の冷却スピードと歪み量との関係を図9に○印でプロットした。また、擬似GaN基板上に作製した場合の歪み量と素子寿命との関係を図10に○印でプロットした。擬似GaN基板上を用いない場合に比べ素子寿命は同程度であるか、若干改善されているが、特に歪み量εが−0.16%≦ε≦−0.01%の範囲で良好な特性が得られ、歪み量εが、ε>−0.01%、ε<−0.16%の範囲では、素子寿命は著しく低下していることが分かった。この理由は実施の形態2で説明したのと同じであり、ε>−0.01%、ε<−0.16%の範囲では素子を構成する各層に過度の歪みが掛かるためであると考えられる。
図10には素子構造の結晶成長後の冷却スピードを異ならせることによって得られた、歪み量の異なる素子についての結果を示しているが、歪み量を変化させる方法はこれに限定されるものではない。結晶成長時のサファイア基板の厚さ、サファイア基板の研削プロセス(研削量や研削粗さ)、バッファ層702の堆積条件、n型GaNコンタクト層703の厚さ、不純物のドーピング条件や濃度分布、素子の固定に用いる接着剤や接着方法、素子が固定されるステムやサブマウント(台座)の形状などを異ならせることによっても素子構造中のGaN層の歪み量は変化する。また、擬似GaN基板を用いる場合には、その構造や作製条件(GaN層の凹凸構造のストライプ幅・間隔、成長抑制膜の有無、擬似GaN基板中のGaN層の厚さ、など)によっても、素子の歪み量は変化する。このように歪み量を決定する要因は多種多様であり、それぞれが複合して素子の歪み量が決まっているため、一つの要因だけで歪み量が一意に決定されるものではない。例えば、図9において、擬似GaN基板を用いる場合と用いない場合について、冷却スピードと歪み量の関係をプロットしているが、冷却スピードを同じにしても、基板の違いにより歪み量は異なった値となっている。しかし、図10に示されるように、歪み量εに対する光出力低下の特性において、−0.16%≦ε≦−0.01%の範囲で良好な特性が得られるという結果に差異は認められなかった。
[実施の形態4]
図7に断面図を示した半導体レーザ素子と同様の構造の発光素子を作製した。ただし、図7と異なる点は、多重量子井戸活性層708において、InGaN量子井戸層707の代わりにGaAsx1-x層を用いていることである。
実施の形態1、2で説明したのと同様の方法で、歪み量の異なる素子を作製し、歪み量と素子寿命との関係を調べた結果を図12に示す。GaN層のa軸格子歪み量εがε>−0.01%、ε<−0.16%の範囲では、素子寿命が非常に短い。この理由は、ε<−0.16%の範囲ではGaN層に掛かる圧縮歪みが非常に大きくなることが素子劣化の原因となっており、ε>−0.01%の範囲ではp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711やn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704に掛かる引っ張り歪みが非常に大きくなる事が素子劣化の原因となっている、と考えられる。これに対し、GaN層のa軸格子歪み量εとE2フォノンモードラマンシフト量Ωが、−0.16%≦ε≦−0.01%、568.1≦Ω≦570.0cm-1の範囲である素子では、素子を構成する各層に過度の歪みがかかるのを避ける事ができ格子歪みによる結晶欠陥の発生や通電時の欠陥の増殖を抑制する事ができるため、寿命が10000時間以上と長く、信頼性の高い素子が得られている。
なお、本実施例の構造においてGaAsx1-x量子井戸層は、GaNAsにInを含んだInyGa1-yAsz1-z4元混晶半導体でもよく、また、GaNAsに代えて、GaPuN1-u3元混晶やInvGa1-vw1-w4元混晶半導体を用いてもよい。また、障壁層706をGaNに代えてIn,As,Pを含む混晶半導体で構成してもよい。
本発明の実施の形態1の発光素子の構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態1の発光素子の光出力の経時変化を示すグラフである。 ラマンスペクトル測定系の概略の構成を示す図である。 本発明の実施の形態1の発光素子のラマンスペクトルを示すグラフである。 GaN層のE2フォノンモードのラマンシフト量とa軸格子歪み量との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態1の発光素子のa軸格子歪み量と通電後の光出力との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態2の発光素子の構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態2の発光素子の駆動電流の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施の形態2および実施の形態3の発光素子の、冷却スピードと歪み量との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態2および実施の形態3の発光素子の、a軸格子歪み量と素子寿命との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態3の発光素子の擬似GaN基板の構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態4の発光素子のa軸格子歪み量と素子寿命との関係を示すグラフである。
符号の説明
101 サファイア基板、102 AlNバッファ層、103 n型GaN層、104 多重量子井戸構造発光層、105 GaN障壁層、106 In0.2Ga0.8N量子井戸層、107 p型Al0.1Ga0.9N層、108 p型GaN層、109 n電極、110 p電極、300 励起光、301 励起光源、302 回折格子、303 金属顕微鏡、304 対物レンズ、305 試料、306 散乱光、307 レンズ、308 ノッチフィルター、309 分光器、310 マルチチャンネル検出器、311 パーソナルコンピューター、312 反射鏡、701 サファイア基板、702 GaNバッファ層、703 n型GaNコンタクト層、704 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、705 n型GaNガイド層、706 GaN障壁層、707 In0.1Ga0.9N量子井戸層、708 多重量子井戸構造活性層、709 Al0.2Ga0.8N蒸発防止層、710 p型GaNガイド層、711 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、712 p型GaNコンタクト層、713 p電極、714 n電極、715 SiO2絶縁膜、1101 サファイア基板、1102 バッファ層、1103 GaN層、1104 GaN層、1105 サファイア基板、1106 バッファ層、1107 GaN層、1108 成長抑制膜、1109 GaN層。

Claims (9)

  1. 基板上にn型層、発光層、p型層を有する積層構造を含み、前記積層構造には1つ以上のGaN層を含む窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法であって、
    ラマン散乱分光法を用い、前記積層構造の全層にわたる平均的なE2フォノンモードのラマンシフト量を測定することにより、前記積層構造の全層にわたる平均的なa軸格子歪み量を評価することを特徴とする窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  2. 前記E2フォノンモードのラマンシフト量は、波長365nm以上の励起光で観測されることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  3. 前記励起光の波長は、前記1つ以上のGaN層の吸収端の波長以上であることを特徴とする請求項2に記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  4. 前記1つのGaN層のいずれかのGaN層は前記積層構造中で最も厚い層であり、前記1つ以上のGaN層の平均的なE2フォノンモードのラマンシフト量を測定することにより、前記1つ以上のGaN層の平均的なa軸格子歪み量を評価することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  5. 前記励起光は、c面に対して実質的に垂直にされることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  6. 前記励起光は、前記基板側から照射されることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかに記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  7. 前記基板は、サファイア基板である請求項2から請求項6までのいずれかに記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  8. 窒化ガリウム系半導体発光素子として、前記E2フォノンモードのラマンシフト量Ωが568.1≦Ω≦570.0cm-1である窒化ガリウム系半導体発光素子を選定することを特徴とする請求項4に記載の窒化ガリウム系半導体発光素子の評価方法。
  9. 請求項4に記載の評価方法を用いた窒化ガリウム系半導体発光素子の製造方法であって、
    前記基板上に前記積層構造を形成する結晶成長工程と、前記結晶成長工程により得られた素子構造ウエハを前記評価方法により評価する工程とを含み、
    前記評価方法において測定される前記素子構造ウエハの前記E2フォノンモードのラマンシフト量Ωが、568.1≦Ω≦570.0cm-1であることを特徴とする窒化ガリウム系半導体発光素子の製造方法。
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