JP2005304498A - α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体およびα−アミノアジピン酸誘導体を製造するための新規微生物と酵素、およびα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体とα−アミノアジピン酸誘導体の製造方法 - Google Patents

α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体およびα−アミノアジピン酸誘導体を製造するための新規微生物と酵素、およびα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体とα−アミノアジピン酸誘導体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酵素または微生物の働きを利用してリジンのα−アミノ保護体からα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を製造する新規方法を提供する。また、α−アミノ基に保護基を有するリジン若しくは上記α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体からα−アミノアジピン酸誘導体を製造するための酵素的または微生物的方法を提供する。
【解決手段】リジンのα−アミノ保護体のアミノメチル基のアルデヒド基への変換をRhodococcus属に由来するオキシダーゼまたは当該オキシダーゼを生産する微生物(好ましくはRhodococcus属)を用いることにより、α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を製造する。またα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体のアルデヒド基からカルボキシル基への変換を、Rhodococcus属に由来する脱水素酵素または当該脱水素酵素を生産する微生物(好ましくはRhodococcus属)を用いることにより、α−アミノアジピン酸誘導体を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、酵素または微生物を利用したα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体、およびα−アミノアジピン酸誘導体の製造方法に関する。特に本発明は、α−アミノ基が修飾されてなるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体、およびα−アミノアジピン酸誘導体の製造方法に関する。なお、α−アミノアジピン酸は、非蛋白性のアミノ酸であり、抗リュウマチ剤、乾癬治療剤及び制ガン剤として有用なメトトレキセート誘導体(特許文献1参照)等の医薬品製造の中間体として重要な化合物である。
従来より、医薬品や化粧品の製造中間体として、多くのα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体やα−アミノアジピン酸誘導体の製造方法が検討され、種々提案されている。例えばα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体の製造法としてN-アセチル-2-アミノ-6-ヘプタン酸をオゾン処理して塩酸を添加して加熱することによってN-アセチル-DL-α-アミノアジピン酸-δ-セミアルデヒドを製造する方法などの化学的合成法(例えば、非特許文献1等参照のこと)、並びにリジンをカンジタ菌由来のε−デヒドロゲナーゼで酸化する方法(例えば、非特許文献2等参照のこと)が知られている。しかしながら、かかる化学合成法は操作が煩雑で多量の副産物が生成されるという欠点が指摘されている。またカンジタ菌由来の酵素を用いる方法では、高価な補酵素の添加が必要であり、α−アミノアジピン酸セミアルデヒドの収率も低い。
また特許文献2には、α−アミノアジピン酸セミアルデヒドに関連する物質としてN−アシル−α−アミノアジピン酸−γ−セミアルデヒドエチレンアセタールの化学的製造方法が、また特許文献3には、上記N−アシル−α−アミノアジピン酸−γ−セミアルデヒドエチレンアセタールを酵素処理(アシラーゼ処理)することによってα−アミノアジピン酸−γ−セミアルデヒドエチレンアセタールを製造する方法が、さらに特許文献4には、当該α−アミノアジピン酸−γ−セミアルデヒドエチレンアセタールをアルスロバクター属に属する微生物菌体またはその処理物を用いて製造する方法がそれぞれ記載されている。しかし、これらのいずれもアルデヒド基が修飾された化合物の製造方法に関するものであり、本発明が対象とするアルデヒド基がフリーの状態にある化合物を対象とするものではない。
一方、α−アミノアジピン酸並びにその誘導体の製造方法としては、エチルアセトアミドシアノアセテートを5-ブロモ-1-ペンテンでアルキル化した後アルカリ加水分解し、得られた2-アミノ-6-ヘプタン酸をオゾン分解することによってα−L−アミノアジピン酸を製造する方法(例えば、非特許文献1等参照のこと)、L−リジンのε−ベンジルオキシカルボニル誘導体を過マンガン酸塩で酸化して、ベンジルオキシカルボニルカルバモイル体にする方法(例えば、非特許文献3等参照のこと)、あるいは上記過マンガン酸塩に代えて次亜塩素酸塩を用いて酸化生成したニトリル体を加水分解する方法(例えば、非特許文献4等参照のこと)などの化学的合成法、並びにL−リジンのα−アミノ基保護体にストレプトミセス属、ロドコッカス属、アスペルギルス属、シュードモナス属、ブレビバクテリウム属、アエロモナス属、コリネバクテリウム属、またはエンテロバクター属に属する微生物の培養物を作用して、そのアミノメチル基をカルボキシル基に変換する方法(例えば、特許文献5等参照のこと)などの微生物的方法が知られている。しかし、上記の化学的合成法では強い酸化剤や塩基を用いるために副反応を生じる可能性があり、純度高くα−アミノアジピン酸、並びにこれらの誘導体を取得することは困難である。また上記の微生物的方法では、使用する微生物が産生する酵素が明らかでないため、再現性が悪く収率も低くなるという欠点ある。また、上記特許文献5の微生物的方法はL−リジンのα−アミノ基保護体を対象とするものであって、D−リジンのα−アミノ基保護体については記載されていない。
ところで、現在までにL−リジンの6位のアミノ基に作用してα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド(非酵素的にL−Δ1−ピペリダイン−6−カルボン酸になり、両化合物は平衡状態を保つ)を生成する酵素としては、L−リジン-6-アミノ転移酵素(EC2.6.1.36)、及びリジン-6-脱水素酵素(EC1.4.1.-)が知られており、Candidaalbicans由来のリジン-6-脱水素酵素を用いたα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの製造方法(例えば、非特許文献2等参照のこと)およびL−リジン-6-アミノ転移酵素とL−Δ1−ピペリダイン−6−カルボン酸脱水素酵素を用いてα−L−アミノアジピン酸を製造する方法が報告されている(例えば、非特許文献5等参照のこと)。
しかし、これらの方法はいずれも原料として遊離のL−リジンを用いる方法であり、α−アミノ基が修飾されたL−リジンを原料としてα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはα−L−アミノアジピン酸誘導体を製造する方法は報告されていない。
WO92/09436 特開平11−140076号公報 特開平11−140077号公報 特開平11−206397号公報 特開平7−298892号公報 Aspen, A. J. and Meister, A, Biochemistry, 1, p.600-605, 1962 Hammer, T. and Bode, R.: Zentralbl. Microbiol., 147, 65-70, 1992 Int. J. Pept. Prot. Res., 30, 552, 1987 Syn. Comm., 10, 127, 1980 ファインケミカル,32巻、51-57, 2003
本発明は、α−アミノ基に保護基を有するL−リジンまたはD−リジンからα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体あるいはα−アミノアジピン酸誘導体を製造するために有用な酵素および当該酵素を産生する新規微生物を提供することを目的とする。また本発明は、上記酵素あるいは当該酵素を産生する新規な微生物を用いて、α−アミノ基に保護基を有するL−リジンまたはD−リジンからα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を製造する方法、並びにα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体からα−アミノアジピン酸誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記酵素あるいは当該酵素を産生する新規微生物を用いてα−アミノ基に保護基を有するL−リジンまたはD−リジンからα−アミノアジピン酸誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、α−アミノ基を保護したL−リジンやD−リジンからα-L-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体やα-D-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体、あるいはα-L-アミノアジピン酸誘導体やα-D-アミノアジピン酸誘導体を高い純度で製造することができる新規なロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物を、自然界から見出すことに成功した。さらに、本発明者らは、当該微生物がα−アミノ基を保護したL−リジンやD−リジンの6位のアミノメチル基(―CHNH)を酸化的脱アミノ化してアルデヒド基(―CHO)に変換するオキシダーゼを産生していることを見いだし、当該オキシダーゼあるいは当該オキシダーゼを含有する菌体を用いることによってα-L-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体あるいはα-D-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体が生成できることを確認した。そして本発明者らは、当該微生物または当該微生物が産生するオキシダーゼを用いることによって、補酵素再生系やアミノ基受容体等の第二の基質を添加することなく、α-L-アミノアジピン酸誘導体あるいはα-D-アミノアジピン酸誘導体の製造中間体として有用なセミアルデヒド誘導体を効率よく、しかも高い純度で製造することができることを確認した。
さらに本発明者らは、本発明で見出したロドコッカス属に属する微生物が、上記オキシダーゼに加えて、α-L-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体あるいはα-D-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体のアルデヒド基(―CHO)をカルボキシル基(―COOH)に変換できる脱水素酵素をも産生していることを見出し、当該脱水素酵素あるいは当該脱水素酵素を含有する菌体を用いることにより、α-L-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体あるいはα-D-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体からα-L-アミノアジピン酸誘導体あるいはα-D-アミノアジピン酸誘導体が生成できることを確認した。
さらにまた、本発明で見出したロドコッカス属に属する微生物など、上記両酵素(オキシダーゼ、脱水素酵素)が含まれる菌体を用いることにより、α−アミノ基を保護したL−リジンやD−リジンからL−リジンやD−リジンの6位のアミノメチル基(―CHNH)がアルデヒド基(―CHO)への変換を経て、カルボキシル基(―COOH)にまで変換され、一反応系でα-L-アミノアジピン酸誘導体あるいはα-D-アミノアジピン酸誘導体が生成できることも見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて開発完成されたものであり、下記の態様を含むものである。
項1. 下記式1:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCH2NH (1)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるL−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩に、これらの化合物に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化するRhodococcus属由来のオキシダーゼを作用させてアルデヒド基に変換することを特徴とする、下式2:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
項2. 上記Rhodococcus属由来のアミノメチル基を酸化的に脱アミノ反応するオキシダーゼが、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来のオキシダーゼである、項1に記載するα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
項3. L−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換する反応を、これらの化合物に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化するオキシダーゼを持つRhodococcus 属の細菌を用いて行うことを特徴とする項1に記載のα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
項4. L−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換する反応を、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)またはそれから産生されるオキシダーゼ抽出画分を用いて行うことを特徴とする項1に記載のα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
項5. 項1乃至4のいずれかの方法で得られたα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩について、アミノ保護基の脱離処理を行う、α−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドまたはその塩の製造方法。
項6. 下記式2:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で示されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩に、Rhodococcus属由来の脱水素酵素を作用させて、当該化合物のアルデヒド基をカルボキシル基に変換することを特徴とする、下式3:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCOOH (3)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項7. 上記Rhodococcus属由来の脱水素酵素が、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来の脱水素酵素である、項6に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項8. 上記のアルデヒド基からカルボキシル基への変換反応を、α−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩のアルデヒド基をカルボキシル基に変換する脱水素酵素を持つRhodococcus 属の細菌を用いて行うことを特徴とする、項6に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項9. 上記のアルデヒド基からカルボキシル基への変換反応を、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)またはそれから産生される脱水素酵素抽出画分を用いて行うことを特徴とする、項6に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項10. 項6乃至9のいずれかの方法で得られたα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩について、アミノ保護基の脱離処理を行う、α−L−アミノアジピン酸若しくはα−D−アミノアジピン酸またはその塩の製造方法。
項11. 下式1:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCH2NH (1)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるL−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換して、下式2:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で示されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を生成できるオキシダーゼまたは当該オキシダーゼを含む菌体、及び、式2で示される化合物(2)またはその塩のアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素または当該脱水素酵素を含む菌体を用いて、
式1で表される化合物(1)またはその塩のアミノメチル基をカルボキシル基に変換することを特徴とする、下式3:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCOOH (3)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項12. 式2で示される化合物(2)またはその塩のアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素としてRhodococcus属由来の脱水素酵素を使用するか、または当該脱水素酵素を含む菌体としてRhodococcus属に属する細菌を使用することを特徴とする、項11に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項13. 上記Rhodococcus属由来の脱水素酵素が、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来の脱水素酵素であるか、または上記Rhodococcus属に属する細菌がRhodococcus.Z-35-1(受託番号:FERM P−19710)株である、項12に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項14. 式1で示される化合物(1)またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換し得るオキシダーゼとしてRhodococcus属由来のオキシダーゼを使用するか、または当該オキシダーゼを含む菌体としてRhodococcus属に属する細菌を使用することを特徴とする、項11に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項15. 上記Rhodococcus属由来のオキシダーゼが、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来のオキシダーゼであるか、または上記Rhodococcus属に属する細菌がRhodococcus.Z-35-1(受託番号:FERM P−19710)株である、項14に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
項16. 請求項11乃至15のいずれかの方法で得られたα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩について、アミノ保護基の脱離処理を行う、α−L−アミノアジピン酸若しくはα−D−アミノアジピン酸またはその塩の製造方法。
項17. Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号 FERM P−19710)。
以下に本発明を詳細に説明する。
(I)α-アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法
本発明の製造方法は、Rhodococcus属由来のオキシダーゼ作用を利用することを特徴とするものであって、詳細には、下記式1:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCH2NH (1)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるL−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体(以下、本明細書において「リジンのα−アミノ基保護体」と総称する)のアミノメチル基(−CH2NH)を、オキシダーゼの作用を利用してアルデヒド基(−CHO)に変換することによって、下式2:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体(以下、本明細書において「α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体」と総称する)を製造する方法である。
ここで上記式1及び2においてRで示されるアミノ基の保護基としては、リジンのα位のアミノ基を保護しえる官能基であればよく、この限りにおいて特に制限されるものではない。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基等の炭素数1〜5の低級アルカノイル基;フェニルアセチル基、4−メトキシフェニルアセチル基等の炭素数8〜9の芳香族置換アセチル基;ベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜8の芳香族アシル基;ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基等の炭素数8〜9の芳香族置換アルキルオキシカルボニル基;p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−フェニルアゾベンジルオキシカルボニル基、p−(p’−メトキシフェニルアゾベンジルオキシカルボニル基等の置換ベンジルオキシカルボニル基;t−ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基;シクロヘキシルオキシカルボニル基;トリフルオロアセチル基等を挙げることができる。より具体的には、一般にペプチド合成で使用されるアミノ保護基の中から上記目的に適うものを適宜選択して用いることができる(例えば、「タンパク質化学1」共立出版株式会社発行、昭和54年9月15日発行、第406-443頁;「ペプチド合成の基礎と実験」丸善株式会社発行、昭和60年1月20日発行、第16-40頁;「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS」THIRD EDITION, Theodora W. Greene, Peter G.M.Wuts共著、JOHN WILEY & SONS, INC.等参照のこと)。
さらに、アミノ基とカルボキシル基とを同時に保護するタイプの保護基、例えば、環状構造を形成する保護基なども使用することができる。
これらの保護基でα−アミノ基が修飾されてなるリジンのα−アミノ基保護体は、遊離体であってもまた塩の形態であってもよく、本発明においてはこれらいずれの形態のものをも出発原料として使用することができる。
ここで塩としては、リジンのα−アミノ基保護体と共に塩を形成し得るものであればよく、例えば酢酸や酒石酸等との有機酸塩;塩酸や硫酸等との無機酸塩;トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミンピペジリン又はN―エチルピペリジン等との有機塩基塩;水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等との無機塩基塩;ナトリウムやカリウム等とのアルカリ金属塩;カルシウム等とのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;銅等との重金属錯塩;アンモニウム塩等が使用される。好ましくは、薬学的に許容される塩である。なお、生成産物であるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体の塩も、上記に対応して各種の塩を挙げることができる。
これらのL−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体は、L−リジン若しくはD−リジンを原料として周知の方法に従って合成することができるし、また簡便には商業的に入手することもできる。
上記リジンのα−アミノ基保護体に作用させるオキシダーゼとしては、上記式1で表される化合物(1)に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化する作用を有するオキシダーゼであればよいが、好適にはRhodococcus属に属する微生物が産生するオキシダーゼを挙げることができる。より好ましくは、Rhodococcus sp. Z-35-1が産生するオキシダーゼである。なお、Rhodococcus sp. Z-35-1株は、本発明者らが青森県青森市荒川の土壌から採集し単離した新規の細菌であり、平成16年3月3日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、識別のための表示を「Rhodococcus sp. Z-35-1」(受託番号:FERM P−19710)として寄託されている(通知番号:15産生寄第2021号)。なお、Rhodococcus sp. Z-35-1株の形態学的諸性質、生理学的諸性質および遺伝学的諸性質については、後述する試験例1において詳述する。
本発明で用いるオキシダーゼは、Rhodococcus属に属する細菌、好ましくは上記微生物Rhodococcus sp. Z-35-1株から単離精製して使用することもできる。Rhodococcus sp. Z-35-1株からのオキシダーゼの単離は、その分子量並びに酵素作用(酸化作用)における基質特異性などを指標として、慣用の酵素精製法(例えば、ロバートK.スコープス著「タンパク精製法―理論と実際」シュプリンガー・フェアラーク東京(株)発行、昭和63年6月1日発行など参照)に従って行うことができるが、より具体的には、上記菌体を物理的な方法で破砕した後、細胞残渣を除去して粗酵素液を調製し、この粗酵素液を硫酸アンモニュウムなどによる分画、DEAE-Toyopearlを用いたイオン交換クロマトグラフィー,Phenyl-Toyopearlによる疎水的クロマトグラフィー,ヒドロキシアパタイトをによるクロマトグラフィーおよびToyopearl HW-55 によるゲルろ過を用いて精製することができる。なお、精製に際しては、各分画のオキシダーゼ活性を指標とすることができる。なお、オキシダーゼ活性は、後述する試験例5に示すように、Nα−Z−L−リジン(L−リジンのα−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−L−リジン)またはNα−Z−D−リジン(D−リジンのα−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−D−リジン)を基質として、反応で生成する過酸化水素を、4−アミノアンチピリン、TOOS及びペルオキシダーゼを用いる発色法(Isobe et al., J. Bioscience, Bioengineering, 95巻、258頁)で測定することができる。
なお、本発明で用いるオキシダーゼは、副生成物を抑制して所望のセミアルデヒド誘導体を純度よく生成するという点からは精製オキシダーゼを用いることが好ましいが、セミアルデヒド誘導体を製造するという目的からは、特にそれに制限されるものではなく、オキシダーゼの粗精製物を用いることもできる。
オキシダーゼ生産菌は、上記の内因性オキシダーゼを生産する細菌に限らず、式1で表される化合物(1)に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化する作用を有するオキシダーゼ、特にRhodococcus sp. Z-35-1株に由来する当該オキシダーゼをコードする遺伝子(外来性遺伝子)を遺伝子工学的に導入した微生物(例えば、大腸菌や酵母など)であってもよい。本発明で用いられる上記オキシダーゼ生産菌には、かかる遺伝子組み換えによって後天的に上記オキシダーゼを生産する能力を備えた微生物も含まれる。
上記オキシダーゼ生産菌、特にRhodococcus sp. Z-35-1株を培養する培地は、Rhodococcus属に属する細菌を培養して目的の酵素、すなわち式1で表される化合物(1)に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化する作用を有するオキシダーゼが産生される培地組成を有するものであれば特に制限されない。
具体的に、窒素源としては、例えば、オキシダーゼの反応基質であるNα−Z−L−リジン(α−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−L−リジン)、Nα−Z−D−リジン(α−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−D−リジン)、L−リジン、またはD−リジンなどのアミノ酸類;n―ブチルアミンなどのアミン類;6−アミノヘキサン酸等のアミノ化合物を加えることが望ましく、そうすることによって、オキシダーゼを大量に発現産生することができる。
これらの窒素源の培地への添加量は、通常、0.01〜5%程度とすることが望ましい。また、本発明の効果を妨げないことを限度として、塩化アンモニウムやリン酸アンモニウム等の無機酸アンモニウム塩;フマル酸アンモニウムやクエン酸アンモニウム等の有機酸アンモニウム塩;ないし肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物等の天然窒素源を加えることも特に制限されない。
また炭素源としては、本発明の効果を妨げることなく、上記オキシダーゼ生産菌が利用可能なものであればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、フルクトース、シュクロース、デキストリンなどの糖類、グリセロール、ソルビトールなどの糖アルコール、フマル酸、クエン酸等の有機酸が使用できる。これらの炭素源の培地への添加量は、通常、0.1〜5%程度とすることが望ましい。また、無機塩類としては、例えば、リン酸カリウムやリン酸ナトリウム等のリン酸アルカリ金属;塩化カリウムや塩化ナトリウム等の塩化アルカリ金属;並びに硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄等の硫酸金属塩が使用できる。これらの無機塩類の培地への添加量は、通常、0.001〜1%程度とすることが望ましい。
培養法は、特に限定されるものではないが、一般に細菌の培養に用いられる液体培養法が望ましい。オキシダーゼ生産菌(好ましくはRhodococcus属に属する細菌、より好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)の培養は、上記の培地で20〜40℃、好ましくは25〜35℃、またpH4〜9、好ましくはpH5〜8の範囲で、好気的条件下で実施すればよい。
オキシダーゼ生産菌(好ましくはRhodococcus属に属する細菌、より好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)の培養物としては、その微生物の全培養液、菌体およびそれらの処理物があげられる。菌体の処理物としては、乾燥菌体やアセトン、トルエン、メタノール等の有機溶媒で処理した菌体、菌体抽出物、固定化処理物等をあげることができる。また、その培養菌体および培養液より酵素を分離精製し用いることもできる。
リジンのα−アミノ基保護体と上記オキシダーゼとの反応は、通常水性溶媒を利用して、pH4〜10、好ましくはpH4〜9、より好ましくはpH5〜9の範囲、温度条件5〜40℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは10〜30℃前後の範囲で行うことができる。水性溶媒としては、上記pH範囲で緩衝能を備える緩衝液を用いることが好ましく、リン酸緩衝液を好適に例示することができる。なお、本発明の反応を妨げないことを限度として、当該水性溶媒には有機溶媒が含まれていても良い。反応は、振とう、攪拌、または通気などの手段を採用することによって好気的条件下で行うことが望ましい。
反応に使用するオキシダーゼの量は、特に制限されないが、例えば基質100mmolに対して通常1,000〜500,000単位、好ましくは5,000〜200,000単位、より好ましくは 10,000〜100,000単位の範囲から適宜選択することができる。
反応液中のリジンのα−アミノ基保護体の量が減少して、それに対応する生成物、すなわちα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体の生成量が、実質的な量に達した時点で、反応を終了することができる。通常、上記の条件で1〜10日、好ましくは1〜4日反応することによって、反応を終了することができる。
当該反応液は、そのまま若しくは必要に応じて遠心分離などで不溶物を除去した後に、イオン交換樹脂処理、吸着処理、ゲルろ過処理、晶析、濃縮等、慣用の単離精製手段に供することができ、これによってα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を回収もしくは単離精製することができる。生成したセミアルデヒド誘導体は、簡便には後述する実施例に示すように、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー、好ましくはHPLCによって、原料であるリジンのα−アミノ基保護体と分離して取得することができる。
以上、リジンのα−アミノ基保護体を原料とする、α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体の製造は、前述するように式1で表される化合物(1)に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化する作用を有するオキシダーゼをそのまま用いて行ってもよいが、当該オキシダーゼに代えて当該オキシダーゼを産生する微生物(オキシダーゼ生産菌)、具体的にはRhodococcus属に属する細菌、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株そのもの、若しくはその培養物を使用することもできる。この場合、オキシダーゼ生産菌は上記オキシダーゼを産生しえる状態で使用される。また、オキシダーゼに代えて、さらにオキシダーゼ生産菌(特にRhodococcus属に属する細菌、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)のオキシダーゼ抽出画分を用いることもできる。
オキシダーゼ生産菌を利用した上記セミアルデヒド誘導体の製造は、具体的には、上記の反応系に、オキシダーゼに代えて、オキシダーゼ生産菌の全培養物、菌体、及びこれらの処理物を、L−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体とともに配合し、上記反応条件に従って反応処理することによって行うことができる。オキシダーゼ生産菌の培養方法は、前述の通りである。ここで、菌体の処理物としては、菌体破砕物、乾燥菌体、凍結乾燥菌体、またはアセトン,トルエンまたはメタノール等の有機溶媒で処理した菌体、菌体抽出物、固定化処理物等をあげることができる。また、全培養物の処理物としては、全培養物の濃縮物、抽出物(さらに乾燥したもの及び濃縮したものも含まれる)及び乾燥粉末を、さらに培養濾液の処理物としては、培養濾液の濃縮物、抽出物及び乾燥粉末をあげることができる。
また、オキシダーゼ生産菌を培養している培養培地に、出発原料であるリジンのα−アミノ基保護体を添加してα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を製造することもできる。
斯くして調製されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体(2)またはその塩は、さらにアミノ保護基を脱離する処理に供することもでき、それによって、下式:
HOOCCH(NH)CHCHCHCHO
で示されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドまたはその塩を調製することができる。
アミノ保護基の脱離方法は、一般に、例えば「『ペプチド合成の基礎と実験』丸善株式会社発行、昭和60年1月20日発行、第16-40頁」、または「『PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS』THIRD EDITION, Theodora W. Greene, Peter G.M.Wuts共著、JOHN WILEY & SONS, INC.」等に記載されている慣用方法に従って行うことができる。具体的には、例えばパラジウムやニッケルなどの金属を利用した水素添加法、ナトリウム/液体アンモニウムによる脱離方法、酸による脱離法(例えば、フッ化水素、スルホン酸類、ホウ素化合物、臭化水素酢酸溶液、トリフルオロ酢酸、臭化水素トリフルオロ酢酸溶液、塩化水素若しくはその溶液、TFA・チオアニソール系、ギ酸及び酢酸など)、及び塩基による脱離方法(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩、ピリジン、ヒドラジン等の有機アミン類等)を挙げることができる。
(II)α-アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法
本発明のα-アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法は、大きく下記の2種類の方法に分類することができる。
(II-1) α−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体、α−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはそれらの塩を用いて、α−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体(以下、本明細書ではこれらを総称して「α−アミノアジピン酸誘導体」ともいう)またはそれらの塩を製造する方法。
(II-2) L−リジンまたはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩を用いて、α−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体(α−アミノアジピン酸誘導体)またはそれらの塩を製造する方法。
(II-1)の方法
上記(II-1)の方法は、反応原料として、α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩に、Rhodococcus属由来の脱水素酵素を作用させて、当該化合物のアルデヒド基をカルボキシル基に変換することを特徴とするものである。なお、当該α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の由来は特に制限されず、例えば前述の(I)方法で得られるものや、別途任意の方法により調製されたものであってもよい。
具体的には、下式2:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で示されるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩に、Rhodococcus属由来の脱水素酵素を作用させて、当該化合物のアルデヒド基(−CHO)をカルボキシル基(−COOH)に変換することを特徴とする、下式3:
HOOCCH(NHR)CHCHCHCOOH (3)
(式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
で表されるα−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法である。
ここで式2及び3で示されるRのアミノ基の保護基は、前の(I)において説明の通りである。またα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体の塩も、前の(I)において説明の通りである。
式2で示される化合物(2)のアルデヒド基(−CHO)をカルボキシル基(−COOH)に変換する能力を有する酵素としては、Rhodococcus属由来の脱水素酵素を挙げることができるが、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1(受託番号:FERM P−19710)株に由来する由来の脱水素酵素である。
本発明で用いる脱水素酵素は、Rhodococcus属に属する細菌、特に上記Rhodococcus sp. Z-35-1株から単離精製して使用することもできる。Rhodococcus sp. Z-35-1株からの脱水素酵素の単離は、その分子量並びに酵素作用(酸化作用)における基質特異性などを指標として、慣用の酵素精製法(例えば、ロバートK.スコープス著「タンパク精製法―理論と実際」シュプリンガー・フェアラーク東京(株)発行、昭和63年6月1日発行など参照)に従って行うことができるが、より具体的には、上記の菌体を物理的な方法で破砕した後、細胞残渣を除去して粗酵素液を調製し、この粗酵素液を硫酸アンモニュウムなどによる分画、DEAE-Toyopearlを用いたイオン交換クロマトグラフィー,Phenyl-Toyopearlによる疎水的クロマトグラフィー,ヒドロキシアパタイトをによるクロマトグラフィーおよびToyopearl HW-55 によるゲルろ過を用いて精製することができる。なお、精製に際しては、各分画の脱水素酵素活性を指標とすることができる。なお、脱水素酵素活性は、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド(L−アミノアジピン酸セミアルデヒドのα−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド)またはNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド(D−アミノアジピン酸セミアルデヒドのα−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド)を基質として、反応で生成するNAD(P)H量を340nmの吸光度の増加速度で測定できるが、後述する試験例5に示すように、Nitro blue tetrazoliumとジアホラーゼを用いる発色法(溝口等、分析化学、45巻、111-124頁)で測定することもできる。
なお、本発明で用いる脱水素酵素は、副生成物を抑制して所望のα−アミノアジピン酸誘導体を純度よく生成するという点からは精製脱水素酵素を用いることが好ましいが、α−アミノアジピン酸誘導体を製造するという目的からは、特にそれに制限されるものではなく、脱水素酵素の粗精製物を用いることもできる。
本発明で用いる脱水素酵素生産菌は、上記の内因性脱水素酵素を生産する微生物に限らず、式2で示される化合物(2)のアルデヒド基(−CHO)をカルボキシル基(−COOH)に変換する作用を有する脱水素酵素(特にRhodococcus属に属する細菌、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株に由来する脱水素酵素)をコードする遺伝子(外来性遺伝子)を遺伝子工学的に導入した微生物(例えば、大腸菌や酵母など)であってもよい。本発明で用いられる上記脱水素酵素生産菌には、かかる遺伝子組み換えによって後天的に上記脱水素酵素を生産する能力を備えた微生物も含まれる。
上記、脱水素酵素生産菌(特にRhodococcus属に属する細菌、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)の培養に用いる培地は、当該細菌を培養することによって目的の式2で示される化合物(2)のアルデヒド基(−CHO)をカルボキシル基(−COOH)に変換する作用を有する脱水素酵素が産生されるものであれば特に制限されない。
具体的に、窒素源としては、例えば、脱水素酵素の反応基質の前駆物質であるNα−Z−L−リジン(α−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−L−リジン)、Nα−Z−D−リジン(α−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−D−リジン)、L−リジン、D−リジンなどのアミノ酸類;n-ブチルアミンなどのアミン類;6−アミノヘキサン酸等のアミノ化合物を加えることが望ましく、そうすることによって、脱水素効果を大量に発現産生することができる。
これらの窒素源の培地への添加量は、通常、0.01〜5%程度とすることが望ましい。また、本発明の効果を損なわないことを限度として、塩化アンモニウムやリン酸アンモニウム等の無機酸アンモニウム塩;フマル酸アンモニウムやクエン酸アンモニウム等の有機酸アンモニウム塩;ないし肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物等の天然窒素源を加えることも特に制限されない。
また炭素源としては、本発明の効果を損なうことなく上記脱水素酵素生産菌が利用可能なものであればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、フルクトース、シュクロース、デキストリンなどの糖類、グリセロール、ソルビトールなどの糖アルコール、フマル酸、クエン酸等の有機酸が使用できる。これらの炭素源の培地への添加量は、通常、0.1〜5%程度とすることが望ましい。また、無機塩類としては、例えば、リン酸カリウムやリン酸ナトリウム等のリン酸アルカリ金属;塩化カリウムや塩化ナトリウム等の塩化アルカリ金属;硫酸マグネシウムや硫酸第一鉄等の硫酸金属塩が使用できる。これらの無機塩類の培地への添加量は、通常、0.001〜1%程度とすることが望ましい。
培養法は、特に限定されるものではないが、一般に細菌の培養に用いられる液体培養法が望ましい。脱水素酵素生産菌(好ましくはRhodococcus属に属する細菌、より好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)の培養は、上記の培地で20〜40℃、好ましくは25〜35℃、またpH4〜9、好ましくはpH5〜8の範囲で、好気的条件下で実施すればよい。
脱水素酵素生産菌(好ましくはRhodococcus属に属する細菌、より好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)の培養物としては、その微生物の全培養液、菌体およびそれらの処理物があげられる。菌体の処理物としては、乾燥菌体やアセトン、トルエン、メタノール等の有機溶媒で処理した菌体、菌体抽出物、固定化処理物等をあげることができる。また、その培養菌体および培養濾液より酵素を分離精製し用いることもできる。
α−セミアルデヒド誘導体と脱水素酵素との反応は、通常水性溶媒を利用して、pH4〜10、好ましくはpH5〜9、より好ましくはpH6〜8の範囲、温度条件10〜50℃、好ましくは20〜40℃、より好ましくは25〜35℃前後の範囲で行うことができる。水性溶媒としては、上記pH範囲で緩衝能を備える緩衝液を用いることが好ましく、リン酸緩衝液を好適に例示することができる。なお、本発明の反応を妨げないことを限度として、当該水性溶媒には有機溶媒が含まれていても良い。反応は、振とう、攪拌、または通気などの手段を採用することによって好気的条件下で行うことが望ましい。
反応に使用する脱水素酵素の量は、特に制限されないが、例えば基質100mmolに対して通常1,000〜500,000単位、好ましくは5,000〜200,000単位、より好ましくは10,000 〜100,000単位の範囲から適宜選択することができる。
反応液中のα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体の量が減少して、それに対応する生成物、すなわちα−アミノアジピン酸誘導体の生成量が、実質的な量に達した時点で、反応を終了することができる。通常、上記の条件で1〜10日、好ましくは1〜4日反応することによって、反応を終了することができる。
当該反応液は、そのまま若しくは必要に応じて遠心分離などで不溶物を除去した後に、イオン交換樹脂処理、吸着処理、ゲルろ過処理、晶析、濃縮等、慣用の単離精製手段に供することができ、これによってα−アミノアジピン酸誘導体を回収もしくは単離精製することができる。生成したα−アミノアジピン酸誘導体は、簡便には後述する実施例に示すように、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー、好ましくはHPLCによって、原料であるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体と分離して取得することができる。
以上、α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を原料とする、α−アミノアジピン酸誘導体の製造は、前述するように式2で示される化合物(2)のアルデヒド基(−CHO)をカルボキシル基(−COOH)に変換する作用を有する脱水素酵素をそのまま用いて行ってもよいが、当該脱水素酵素に代えて、当該脱水素酵素を産生する微生物(脱水素酵素生産菌)、具体的にはRhodococcus属に属する細菌、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株そのもの若しくはその培養物を使用することもできる。この場合、脱水素酵素生産菌は上記脱水素酵素を産生しえる状態で使用される。また、脱水素酵素に代えて、さらに上記脱水素酵素生産菌(特にRhodococcus属に属する細菌、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株)が産生する脱水素酵素の抽出画分を用いることもできる。
脱水素酵素生産菌を利用した上記α−アミノアジピン酸誘導体の製造は、具体的には、上記の反応系に、脱水素酵素に代えて、脱水素酵素生産菌の全培養物、菌体、及びこれらの処理物を、α−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体とともに混和し、上記反応条件に従って反応処理することによって行うことができる。脱水素酵素生産菌の培養方法は、前述の通りである。ここで、菌体の処理物としては、菌体破砕物、乾燥菌体、凍結乾燥菌体、またはアセトン,トルエンまたはメタノール等の有機溶媒で処理した菌体、菌体抽出物、固定化処理物等をあげることができる。また、全培養物の処理物としては、全培養物の濃縮物、抽出物(さらに乾燥したもの及び濃縮したものも含まれる)及び乾燥粉末を、さらに培養濾液の処理物としては、培養濾液の濃縮物、抽出物及び乾燥粉末をあげることができる。
また、脱水素酵素生産菌を培養している培養培地に、出発原料であるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を添加してα−アミノアジピン酸誘導体を製造することもできる。
斯くして調製されるα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体(2)またはその塩は、さらにアミノ保護基を脱離する処理に供することもでき、それによって、下式:
HOOCCH(NH)CHCHCHCOOH
で示されるα−L−アミノアジピン酸若しくはα−D−アミノアジピン酸またはその塩を調製することができる。
アミノ保護基の脱離方法は、一般に、例えば「『ペプチド合成の基礎と実験』丸善株式会社発行、昭和60年1月20日発行、第16-40頁」、または「『PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS』THIRD EDITION, Theodora W. Greene, Peter G.M.Wuts共著、JOHN WILEY & SONS, INC.」等に記載されている慣用方法に従って行うことができる。具体的には、例えばパラジウムやニッケルなどの金属を利用した水素添加法、ナトリウム/液体アンモニウムによる脱離方法、酸による脱離法(例えば、フッ化水素、スルホン酸類、ホウ素化合物、臭化水素酢酸溶液、トリフルオロ酢酸、臭化水素トリフルオロ酢酸溶液、塩化水素若しくはその溶液、TFA・チオアニソール系、ギ酸及び酢酸など)、及び塩基による脱離方法(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩、ピリジン、ヒドラジン等の有機アミン類等)を挙げることができる。
(II-2) リジンのα−アミノ基保護体またはその塩を用いて、α−アミノアジピン酸誘導体またはそれらの塩を製造する方法。
上記(II-1)の方法は、例えば前述する(I)の方法に引き続いて行うことができる。すなわち、α−アミノアジピン酸誘導体は、リジンのα−アミノ基保護体またはその塩を原料として、一連の製造工程により製造することもできる。
かかる製造方法は、下記の工程からなる。
(a) 式1で示されるリジンα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換し得るオキシダーゼまたはオキシダーゼ生産菌を用いて、当該リジンα−アミノ基保護体またはその塩から、式2で示されるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩を製造する工程;及び
(b) 上記工程で得られたα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩から、そのアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素または脱水素酵素生産菌を用いて、式3で示されるα−アミノアジピン酸誘導体またはその塩を製造する工程。
なお、α−アミノアジピン酸誘導体の製造は、上記(a)と(b)の工程を、それぞれ別個の操作工程として、(a)工程に引き続いて(b)工程を実施することによって行うこともできるが、一つの操作工程として行うこともできる。この場合、α−アミノアジピン酸誘導体の製造方法は、下記のように規定することができる:
(c) リジンα−アミノ基保護体(1)またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換し得るオキシダーゼまたはオキシダーゼ生産菌、及びα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体(2)のアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素または脱水素酵素生産菌を用いて、リジンのα−アミノ基保護体(1)またはその塩からα−アミノアジピン酸誘導体(3)またはその塩を製造する工程。
なお、理論に拘束されないが、かかる一反応系において、上記の(a)の反応工程と(b)の反応工程が連続して生じているものと考えられる。
上記のリジンのα−アミノ基保護体(1)のメチルアミノ基をアルデヒド基に変換し得るオキシダーゼとしては、Rhodococcus属由来のオキシダーゼ、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1(受託番号:FERM P−19710)株に由来するオキシダーゼを挙げることができ、また当該オキシダーゼ生産菌としては、式1で示されるリジンのα−アミノ基保護体(1)のメチルアミノ基をアルデヒド基に変換する作用を有するオキシダーゼを産生するRhodococcus属に属する細菌、好適にはRhodococcus sp. Z-35-1株を挙げることができる。
また、上記のα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体(2)のアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素としては、Rhodococcus属由来の脱水素酵素、好ましくはRhodococcus sp. Z-35-1株に由来する脱水素酵素を挙げることができ、また当該脱水素酵素生産菌としては、式2で示されるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体(2)のアルデヒド基をカルボキシル基に変換する作用を有する脱水素酵素を産生するRhodococcus属に属する細菌、好適にはRhodococcus sp. Z-35-1株を挙げることができる。
これからわかるように、Rhodococcus sp. Z-35-1株は、前述する(a)の工程と(b)の工程の両方の反応を触媒する酵素を産生する能力を有している。このため、Rhodococcus sp. Z-35-1株を使用することによって、リジンのα−アミノ基保護体(1)からα−アミノアジピン酸誘導体(3)への変換生成を一反応によって実施することができる。
斯くして調製されるα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体(3)またはその塩は、さらにアミノ保護基を脱離する処理に供することもでき、それによって、下式:
HOOCCH(NH)CHCHCHCOOH
で示されるα−L−アミノアジピン酸若しくはα−D−アミノアジピン酸またはその塩を調製することができる。
アミノ保護基の脱離方法は、慣用方法に従って行うことができるが、具体的な方法は(I)において前述の通りである。
本発明によれば、式1で示されるL−リジンまたはD−リジンのα−アミノ基保護体を出発原料として、酵素的または微生物的反応によって、式2で示されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を効率よく、しかも高い純度で製造することができる。当該α−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体は、α−L−アミノアジピン酸またはα−D−アミノアジピン酸の製造中間体として有用であり、これらα−アミノアジピン酸の製造原料として有効に利用することができる。さらに本発明によれば、L−リジンまたはD−リジンのα−アミノ基保護体を出発原料として、酵素的または微生物的反応によって、式3で示されるα−L−アミノアジピン酸誘導体またはα−D−アミノアジピン酸誘導体を製造するための新規な方法を提供することができる。
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例及び実施例になんら限定されるものではない。
試験例1
(1)Nα−Z−L−リジン(L−リジンのα−アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されてなるベンジルオキシカルボニル−L−リジン)を単一窒素源として含む液体培地(0.5%グルコース, 0.2% KH2PO4, 0.1% Na2HPO4, 0.05% MgSO4・7H2O, 0.5%Nα−Z−L−リジン、pH 7.0)(以下、「Nα−Z−L−リジン含有液体培地」という)に、青森県青森市荒川で採集した土壌を少量加えて、30oCで3日間培養した。次いで、この培養物の一部を、新たに調製した同一組成のNα−Z−L−リジン含有液液体培地でさらに30oCで3日間培養した。次にこの培養物をNα−Z−L−リジン含有寒天培地で培養し、生育した菌体を分離した。
このようにして分離した菌体を、Nα−Z−L−リジン含有液体培地で3日間培養し、生育した菌体を遠心分離で集めた。そして、回収した菌体を20 mM Nα−Z−L−リジン溶液(pH 7.0)および20 mM Nα−Z−D−リジン溶液(pH 7.0)のそれぞれに加えて30oCで4日間反応し、反応生成物を薄層クロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィーで調べた。以上の方法で、Nα−Z−L−アミノアジピン酸およびNα−Z−D−アミノアジピン酸の生成量が最も高い菌株(Z-35-1株)を見出した。
(2)上記(1)の方法で土壌から新たに見出したZ-35-1株の形態学的諸性質、生理学的諸性質および遺伝学的諸性質を検討した結果を、以下に示す。なお、これらの評価には、 文献(i)BARROW,(G.I.) and FELTHAM, (R.K.A.):Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition. 1993, Cambridge University Press、及び(ii)SNEARH,(P.H.A.),MAIR,(N.S.)SHARPE, (M.E.) and HOLT, (J.G.): Bergey’s manual of Systematic Bacteriology.Vol.2.1984, Williams and Wilkins, Baltimoreを参考にして行った。
1.形態学的性質
Z-35-1株は、Nutrient Agar(Oxoid, England, UK)〔分散媒:グルタミン酸3.0g、リビトール1.5g、システイン一塩酸0.05g、0.1M リン酸緩衝液(pH7)100ml〕培地を用いて30℃で48時間培養することにより、下記の形態的特徴を示した。
(1-1)光学顕微鏡による細胞形態:桿菌(0.7〜0.8×1.5〜2.0μm)
(1-2)胞子の有無:無し
(1-3)鞭毛による運動性の有無:無し
(1-4)コロニー形態:円形、全縁滑らか、低凸条、光沢あり、淡黄色
2.生理学的性質
上記Nutrient Agar培地を用いて30℃で48時間培養したZ-35-1株の生理学的性質は下記の通りである。
(2-1)グラム染色性:陽性
(2-2)カタラーゼ反応:陽性
(2-3)オキシダーゼ反応:陰性
(2-4)ブドウ糖からの酸/ガス産生:陰性/陰性
(2-5)ブドウ糖の酸化/発酵:陰性/陰性
(2-6)培養温度:37℃で生育する、45℃で生育しない。
3.化学分類学的性質
上記Nutrient Agar培地を用いて30℃で48時間培養したZ-35-1株からDNAを抽出して、dMicroSeq(登録商標)500 16S rDNA Kit(Applied Biosystems Japan)を使用して16S rDNA 塩基配列を解析した。結果を図1に示す(塩基配列表、配列番号1)。
なお、16S rDNA 塩基配列の解析は、下記の手順により行った:
<16S rDNA 塩基配列の決定方法>
ゲノムDNAの抽出には、PrepMan Method(Applied Biosystems, CA, USA http://www.aapliedbiosystems.co.jp/website/jp/home/index_g.jsp)を使用した。抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S Ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち、5’末端側約500bpの領域を増幅した。その後、増幅された塩基配列をシーケンスし、Z-35-1株の16S rDNAの部分塩基配列を得た。PCR産物の精製、サイクルシークエンスにはMicroSeq 500 16S rDNA Bacterial Sequencing Kit (Applied Biosystems, CA, USA)を、及びDNAシーケンサーにはABI PRISM 3100 DNA Sequencer(Applied Biosystems, CA, USA)を用い、またゲノムDNA抽出からサイクルシークエンスまでの基本操作はApplied Biosystems社のプロトコール(P/N4308132 Rev.A)に従って行った。
上記で得られた16S rDNA 塩基配列から、MicroSeq Bacterial 500 Library v.0023 (Applied Biosystems, CA, USA)及びMicroSeq Microbial Identification System Software V.1.4.1を用いて相同性検索を行い、上位10株を決定し、次いで検索された上記10株とZ-35-1株の16S rDNAを用いて近隣結合法(SAITOU,(N.) and NEI,(M.):The neighbor-joining method: a new method for reconstructing phylogenetic trees. Molecular Biology and Evolution 1987, 4, 406-425)により分子系統樹を作成し、帰属分類を検討した。Z-35-1株と近縁株との近隣結合法による系統樹を図2に示す。
その結果、Z-35-1株の16S rDNA部分塩基配列が相同率98.20%でRhodococcus erythropolis(SKERMAN(V.B.D.),McGOWAN(V.) and SNEATH(P.H.A.)(editors): Approved Lists of Bacterial Names. Int. J. Syst. Bacteriol., 1980, 30, 225-420)の16S rDNAに対して最も高い相同性を示した。
以上の性質からZ-35-1株はRhodococcus属に属する細菌であると判断された。Rhodococcus erythropolisに近縁するものの、現在までに登録されているRhodococcus属にはZ-35-1株と同一の菌株は存在しなかった。よって、Z-35-1株をRhodococcussp. Z-35-1(識別のための表示)と命名し、平成16年3月3日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号:FERM P−19710として寄託した(通知番号:15産生寄第2021号)。
試験例2
上記のRhodococcus sp. Z-35-1株を、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、L−リジン、Nα−Z−L−リジン、n―ブチルアミンまたは6−アミノヘキサン酸をそれぞれ窒素源として添加した培地(上述のNα−Z−L−リジンが入った液体培地のNα−Z−L−リジンを硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、L−リジン、n―ブチルアミンまたは6−アミノヘキサン酸で置き換えた培地。添加濃度はいずれの化合物も0.5%)で30oC、3日間培養した。得られた菌体を20 mM Nα−Z−L−リジン溶液(pH 7.0)に加えて30oCで4日間反応した後、反応液を遠心分離して菌体を除去し、その上清画分をTSK-GEL DEAE-5PWカラム(東ソー株式会社)を用いてHPLC分析した。分析は、カラム温度:40oC, 流速:0.8 ml/分, UV測定波長:210 nmで行い、溶出は、A液:精製水、B液:0.5 M 塩化ナトリウム溶液を用いて0−5分:A/B=100/0(容量比), 5−15分:A/B=40/60(容量比), 15−25分:A/B=40/60(容量比)のグラジェント法により行った。
その結果、Nα−Z−L−リジン溶液との反応に、窒素源として硫酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムを添加した培地で培養した菌体を使用した場合は、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドおよびNα−Z−L−アミノアジピン酸が溶出される保持時間(Rt)にピークは認められなかったが、窒素源としてL−リジン、Nα−Z−L−リジン、n―ブチルアミンまたは6−アミノヘキサン酸を添加した培地で培養した菌体を使用した場合は、いずれも反応時間に伴って、Nα−Z−L−リジンが溶出される3.4分付近のピークが減少し、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドが溶出される24.1分付近とNα−Z−L−アミノアジピン酸が溶出される21.2分付近のピークが増大した。
そこで、24.1分付近と21.2分付近の溶出画分を分取して、アルデヒド定量用試薬である3−メチル−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)で、分画物質中のアルデヒド基について調べた。具体的には、M. A. Pazらの方法(Archives of Biochemistry and Biophysics, 109, 548-559, 1965)に準じて0.2 Mグリシン−塩酸緩衝液(pH 4.0)0.15 mlに分画液を0.05 ml加えた後、0.1% (w/v) MBTH 溶液を0.06 ml添加して25oCで10分間加温した(MBTH反応1)。次にこの反応液に0.2% (w/v) FeCl3溶液を0.75 ml添加してさらに10分間加温して、その吸収スペクトルを調べた(MBTH反応2)。その結果、24.1分付近の溶出画分ではMBTH反応2で620 nm付近と660 nm付近に極大吸収を持つスペクトルが得られ、アルデヒド基の存在が示唆された。一方、21.4分付近の溶出画分ではアルデヒド基の存在を示唆するスペクトルは得られなかった。また、21.4分付近の溶出画分をTLCで分析した結果、その移動度はNα−Z−L−アミノアジピン酸と同じであった。従って、24.1分付近に溶出された物質はNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドで、21.4分付近で溶出された物質はNα−Z−L−アミノアジピン酸であることが確認された。
この結果を表1に示す。以上の結果より、Rhodococcus sp. Z-35-1株では、L−リジン、Nα−Z−L−リジン、n―ブチルアミンあるいは6−アミノヘキサン酸などのアミノ酸やアミン類あるいは有機酸の末端にアミノ基を持つ化合物により酵素が誘導され、当該誘導された酵素は、Nα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド並びにNα−Z−L−アミノアジピン酸への生成に関与していることが明らかとなった。
Figure 2005304498
試験例3
L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの20 mM溶液を0.2 M リン酸緩衝液を用いて、pH 5.0〜pH 8.5の範囲に調整した。その各溶液10 mlに、Nα−Z−L−リジン含有培地で3日間培養したRhodococcussp. Z-35-1株の菌体を添加し、30oCで4日間振とう反応させた。そして、各反応液について、生成したNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果を図3に示す。これからわかるように、Nα−Z−L−アミノアジピン酸は反応液のpHが5.0〜8.5のいずれの範囲においても生成し、pH7付近で最も多く生成した。このことからRhodococcussp. Z-35-1株が産生するNα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸への反応はpH5.0〜8.5の範囲で速やかに進行し、最適にはpH7前後であることがわかった。
試験例4

L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの20 mM溶液を0.2 Mリン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その10 mlにNα−Z−L−リジン含有培地で3日間培養したRhodococcussp. Z-35-1株の菌体を添加し、10〜50℃の種々の温度条件下で4日間振とう反応させた。そして、各反応液について、生成したNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果を図4に示す。これからわかるように、Nα−Z−L−アミノアジピン酸は反応温度が10〜50℃のいずれでも生成したが、30℃付近で最も多く生成した。このことからRhodococcussp. Z-35-1株が産生するNα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸への反応を触媒する2種類の酵素を組み合わせたNα−Z−L−アミノアジピン酸生成反応は10〜50℃の範囲で行うことができるが、反応の最適温度は30℃前後であることがわかった。
試験例5
Rhodococcus sp. Z-35-1株をL−リジン含有培地(培養液:2リットル)で30oC、3日間培養し、その後、遠心分離して菌体を集めた。次に、得られた菌体を20 mM リン酸緩衝液(pH 7.0)15mlに懸濁して、細胞破砕機(マルチビーズショッカー、安井器械)を用いて5oCで6分間破砕した。得られた細胞破砕液を遠心分離にかけて菌体残渣を除去し、得られた上清液を用いて、Nα−Z−L−リジン、Nα−Z−D−リジン、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドおよびNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドのそれぞれに対するオキシダーゼ活性とデヒドロゲナーゼ活性を調べた。具体的には、40mM Nα−Z−L−リジン,40mMNα−Z−D−リジン,20mM Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドまたは20mM Nα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドの各溶液を基質として、この基質溶液0.4mlに上清液0.2mlと下記の組成の発色液0.4mlを添加し、各溶液のオキシダーゼ活性及びデヒドロゲナーゼ活性を測定した。
尚、オキシダーゼ活性は、反応で生成する過酸化水素を、4−アミノアンチピリン:TOOS:ペルオキシダーゼを用いる発色法(Isobe et al., J. Biosience, Bioengineering, 95巻, 258頁)を用いて測定し、デヒドロゲナーゼ活性は、反応で生成するNAD(P)Hを、Nitro blue tetrazoliumとジアホラーゼを用いる発色法(溝口他、分析化学、45巻、111−124頁)を用いて測定した。
その結果を表2に示す。
Figure 2005304498
表2に示すように、Nα−Z−L−リジンまたはNα−Z−D−リジンを基質として使用した場合にはオキシダーゼ活性が検出され、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドまたはNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドを基質として使用した場合にはデヒドロゲナーゼ活性が検出された。この結果から、Nα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドを生成する反応およびα−Z−D−リジンからNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドを生成する反応には、Rhodococcus sp. Z-35-1株に由来するオキシダーゼが関与しており、またNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドからNα−Z−L−アミノアジピン酸を生成する反応およびNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドからNα−Z−D−アミノアジピン酸を生成する反応には、Rhodococcussp. Z-35-1株に由来するデヒドロゲナーゼが関与していることが明らかとなった。
以上、試験例3と試験例4の試験結果から、本発明で見出したRhodococcus sp. Z-35-1株を用いて、Nα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドやNα−Z−L−アミノアジピン酸を製造する場合、広いpH範囲および温度条件が使用可能であるが、最適には中性領域で、35℃以下の反応温度が望ましいことが明らかとなった。また、試験例5の試験結果から、本発明で見出したRhodococcussp. Z-35-1株は、Nα−Z−L−リジン及びNα−Z−D−リジンからそれぞれNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド及びNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドへの反応を触媒するオキシダーゼ、およびNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド及びNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドからそれぞれNα−Z−L−アミノアジピン酸及びNα−Z−D−アミノアジピン酸への反応を触媒するデヒドロゲナーゼを産生することが明らかになった。
以上の試験結果を基に、本発明で見出したRhodococcus sp. Z-35-1株および当該菌株が産生する酵素を用いたNα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド、Nα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド、Nα−L−アミノアジピン酸およびNα−D−アミノアジピン酸の製造方法を、以下に実施例として示す。
尚、試験例及び実施例では反応生成物であるα−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体やα−アミノアジピン酸誘導体を分析用HPLCで分析したが、反応生成物を大量に取得するためには、分取用HPLCや一般にアミノ酸や有機酸の分離精製に使用されるイオン交換樹脂や疎水性樹脂を使用することも可能であり、また有機溶媒などによる選択的な沈殿法による精製分取も用いることができる。
Rhodococcus sp. Z-35-1株を、Nα−Z−L−リジンを窒素源として含む培地(試験例1と同一組成を使用)(以下、「Nα−Z−L−リジン含有培地」という)で30oC、1〜6日間培養し、各培養日数を経過した菌体それぞれを、20 mM Nα−Z−L−リジン溶液(pH 7.0)に加えて30oCで4日間反応させて、反応生成物の変化を検討した。結果を表3に示す。
Figure 2005304498
その結果、培養期間が1〜6日のいずれの菌体を使用した場合でもNα−Z−L−アミノアジピン酸の生成が確認された。中でもNα−Z−L−リジンの存在下で2〜4日間培養した菌体を用いた場合は、基質(Nα−Z−L−リジン)の65%以上がNα−Z−L−アミノアジピン酸に変換された。
(1)L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンを0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解して、約20 〜100 mMの濃度範囲の溶液を調製した。この溶液15mlに、Nα−Z−L−リジン含有培地で3日間培養したRhodococcussp. Z-35-1株の菌体1リットル分を添加し、30oCで4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。結果を表4に示す。
Figure 2005304498
その結果、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)中の基質(Nα−Z−L−リジン)濃度が約20 〜 50 mMの場合は、添加したNα−Z−L−リジンの60%以上がZ−α−L−アミノアジピン酸に変換され、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)中の基質(Nα−Z−L−リジン)濃度が約100 mMの場合も、添加したNα−Z−L−リジンの30%以上がNα−Z−L−アミノアジピン酸に変換された。このことから、本発明で見出したRhodococcussp. Z-35-1株によると、広い濃度範囲のリジン誘導体(Nα−Z−L−リジン)に作用して、アミノアジピン酸誘導体(Z−α−L−アミノアジピン酸)を生成することができる。
(2)L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンを0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解して、20 〜100 mMの濃度範囲の溶液を調製した。この溶液15mlに、Nα−Z−L−リジン含有培地で3日間培養したRhodococcussp. Z-35-1株の菌体2リットル分を添加し、30oCで4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。結果を表5に示す。
Figure 2005304498
その結果、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)中の基質(Nα−Z−L−リジン)濃度が約20 〜 50 mMの場合は、添加したNα−Z−L−リジンの80%以上がZ−α−L−アミノアジピン酸に変換され、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)中の基質(Nα−Z−L−リジン)濃度が約100 mMの場合も、添加したNα−Z−L−リジンの50%以上がNα−Z−L−アミノアジピン酸に変換された。このことから、本発明で見出したRhodococcussp. Z-35-1株によると、広い濃度範囲のリジン誘導体(Nα−Z−L−リジン)に作用して、アミノアジピン酸誘導体(Z−α−L−アミノアジピン酸)を生成することができる。
(1)L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンを0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解して、92 mMのNα−Z−L−リジン含有溶液を調製し、その15 mlに予めL−リジン含有培地で2日間培養しておいたRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体500 mL分を添加し、30℃で4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、92mMのNα−Z−L−リジンから52mMのNα−Z−L−アミノアジピン酸が生成した(変換率56.5%)。
(2)L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンを0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解して、100 mMのNα−Z−L−リジン含有溶液を調製し、その15 mlに予めL−リジン含有培地で2日間培養しておいたRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体1L分を添加し、30℃で4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、100 mMのNα−Z−L−リジンから92 mMのNα−Z−L−アミノアジピン酸が生成した(変換率92%)。
L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの20 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その15 mlに予めNα−Z−L−リジン含有培地で3日間培養したRhodococcussp. Z-35-1株の菌体を、1L、2Lまたは4L添加し、30℃で4日間振とう反応した。そして、反応2日目及び4日目に、生成するNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。結果を表6に示す。
Figure 2005304498
その結果、反応に使用する菌体量を増加するとNα−Z−L−アミノアジピン酸の生成量は増大した。この結果は、上記実施例2と3の結果を裏付けるものである。
D−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−D−リジンの45mM および90mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その1.5 mlに、予めNα−Z−L−リジン含有培地200 mlで3日間培養しておいたRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体を添加して、30℃で4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−D−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、45mMのNα−Z−D−リジンから42 mMのNα−Z−D−アミノアジピン酸が生成され、その変換率は約93%であった。また90mMのNα−Z−D−リジン溶液からは81.2mMのNα−Z−D−アミノアジピン酸が生成され、その変換率は約90%であった。これらのことから、Rhodococcussp. Z-35-1株を用いることにより、D−リジンのα−アミノ基保護体からD体のアミノアジピン酸誘導体(α−D−アミノアジピン酸誘導体)を生成させることができることがわかった。
(1)D−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−D−リジンの45mM および90mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その15 mlに、予めL−リジン含有培地で3日間培養しておいたRhodococcussp. Z-35-1株の菌体を500ml添加して、30℃で4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−D−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、45mMのNα−Z−D−リジンから34.2 mMのNα−Z−D−アミノアジピン酸が生成され、その変換率は約76%であった。また90mMのNα−Z−D−リジン溶液からは41.2mMのNα−Z−D−アミノアジピン酸が生成され、その変換率は約46%であった。これらのことから、Rhodococcussp. Z-35-1株を用いることにより、D−リジンのα−アミノ基保護体からD体のアミノアジピン酸誘導体(α−D−アミノアジピン酸誘導体)を生成させることができることがわかった。
(2)D−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−D−リジンの50 mM および100 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その15 mlに、予めL−リジン含有培地で2日間培養しておいたRhodococcussp. Z-35-1株の菌体を1L添加して、30℃で4日間振とう反応させた。そして、生成するNα−Z−D−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、50 mMのNα−Z−D−リジンから48 mMのNα−Z−D−アミノアジピン酸が生成され、その変換率は約96%であった。また100 mMのNα−Z−D−リジン溶液からは94 mMのNα−Z−D−アミノアジピン酸が生成され、その変換率は約94%であった。これらのことから、Rhodococcussp. Z-35-1株を用いることにより、D−リジンのα−アミノ基保護体からD体のアミノアジピン酸誘導体(α−D−アミノアジピン酸誘導体)を生成させることができることがわかった。
(1)試験例4での結果より、Nα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸を生成する反応はpH5.0〜8.5のいずれの範囲においても可能で、pH7付近が最適であったので、Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成率が低いpH5.5とpH6.0でNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの生成量を調べた。すなわち、L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの30 mM溶液を0.2 M リン酸緩衝液pH 5.5で調製し、この溶液10 mlに、Nα−Z−L−リジン含有培地で1日間培養したRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体を添加し、30oCで2日間振とう反応した。そして、反応液中に生成したNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、pH5.5では、基質であるNα−Z−L−リジンのほぼ100%がNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換された。また、pH6では2日間の反応でNα−Z−L−リジンの約90%がNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換された。以上のことから、Rhodococcussp. Z-35-1株は第2の反応を触媒する酵素の活性が低いpHで菌体反応することにより、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドを効率的に生成できることがわかる。
(2)Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成率が低いpH5.0でNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの生成量を調べた。すなわち、L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの100 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 5.0)で調製し、その15 mlに予めL−リジン含有培地で1日間培養したRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体500 mL分を添加し、30℃で1日間振とう反応した。その結果、培養1日目の菌体を用いて、酸性領域で反応することにより、添加したNα−Z−L−リジンの約97%がNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換され(変換率97%)、Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成量は2%以下であった。
(1)試験例4での結果より、Nα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸を生成する反応は10〜50℃のいずれの範囲においても可能で、30℃付近が最適であったので、Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成率が低い10℃と20℃でNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの生成量を調べた。すなわち、L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの30 mM溶液を0.2 M リン酸緩衝液pH7で調製し、この溶液10 mlに、Nα−Z−L−リジン含有培地で1日間培養したRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体を添加し、10℃と20℃で2日間振とう反応した。そして、反応液中に生成したNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、10℃では基質であるNα−Z−L−リジンのほぼ100%がNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換され、20℃では約84%がNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換された。よって、Rhodococcus sp. Z-35-1株は中性付近でも第2の反応を触媒する酵素の活性が低い温度で菌体反応することにより、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドを効率的に生成できた。
(2)上記(1)と同様にして、10℃、pH 7.0の条件で、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの生成量を調べた。すなわち、L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したL−リジンの100 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その15 mlに予めNα−Z−L−リジン含有培地で1日間培養したRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体500 mL分を添加し、10℃で1日間振とう反応した。その結果、培養一日目の菌体を用いて中性領域で低い温度のもとで反応することにより、添加したNα−Z−L−リジンの約93%がNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換され(変換率93%)、Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成量は5%以下であった。
(1)D−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−D−リジンの100 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 5.0)で調製し、その15 mlに予めL−リジン含有培地で1日間培養したRhodococcus sp. Z-35-1株の菌体500 mL分を添加し、30℃で1日間振とう反応した。その結果、培養1日目の菌体を用いて、酸性領域で反応することにより、添加したNα−Z−D−リジンの約98%がNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換され(変換率98%)、Nα−Z−D−アミノアジピン酸の生成量は2%以下であった。
(2)D−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−D−リジンの100 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その15 mlに予めL−リジン含有培地で1日間培養したRhodococcussp. Z-35-1株の菌体500 mL分を添加し、10℃で2日間振とう反応した。その結果、培養一日目の菌体を用いて中性付近でも第2の反応を触媒する酵素の活性が低い温度で菌体反応することにより、添加したNα−Z−D−リジンの約96%がNα−Z−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドに変換され(変換率96%)、Nα−Z−D−アミノアジピン酸の生成量は3%以下であった。
L−リジンのα−アミノ基をベンジルオキシカルボニル基で保護したNα−Z−L−リジンの100 mM溶液を0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.0)で調製し、その1.5 mlに予めL−リジン含有培地で2日間培養しておいたRhodococcussp. Z-35-1株の菌体100 mlを添加し、この反応液を30℃で4日間振とう反応させた(フェナジンメソサルフェイト無添加反応)。一方、前記と同じように調製した反応液に5 mMフェナジンメソサルフェイトを添加して30oCで4日間振とう反応させた(フェナジンメソサルフェイト添加反応)。次いで、上記両反応によって生成するNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドとNα−Z−L−アミノアジピン酸の量を試験例2と同様にTSK-GEL DEAE-5PWカラムを用いてHPLCで分析した。その結果、フェナジンメソサルフェイト無添加の場合、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドとNα−Z−L−アミノアジピン酸の生成量は、それぞれ約35mMと52mMであった。一方、フェナジンメソサルフェイトを添加した場合は、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの生成量は約97mMで、Z−α−L−アミノアジピン酸の生成量は約5mMであった。
このことから、Rhodococcus sp. Z-35-1株を用いることにより、Nα−Z−L−リジンからNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドとNα−Z−L−アミノアジピン酸の両化合物を同時に生成して、両生成物を分離することが可能であり、またフェナジンメソサルフェイトの存在下で反応させることによって、Nα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドをNα−Z−L−アミノアジピン酸に変換する酵素反応を止めてNα−Z−L−アミノアジピン酸セミアルデヒドの生成量を高めることも可能であることがわかった。
α−L−アミノアジピン酸やα−D−アミノアジピン酸は、非タンパク性のアミノ酸であり、ペプチド性抗生物質や、ペプチド性ホルモンなどの生理活性ペプチドの合成原料として用いられる。またβ−ラクタム抗生物質の発酵生産において前駆体として用いられる。本発明は、α−L−アミノアジピン酸、α−D−アミノアジピン酸またはこれらの誘導体、並びにその製造中間体であるセミアルデヒド体を効率よく、工業的に製造するための新たな方法および新たな方法に用いることができる酵素および新たな酵素を産生する能力を有する微生物を提供するものである。
Rhodococcus sp. Z-35-1株の16S rDNA塩基配列を示す図である。 Rhodococcus sp. Z-35-1株と近縁株との近隣結合法による系統樹を示す図である。 Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成に対する反応pHの影響を示す図である。 Nα−Z−L−アミノアジピン酸の生成に対する反応温度の影響を示す図である。

Claims (17)

  1. 下記式1:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCH2NH (1)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で表されるL−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩に、これらの化合物に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化するRhodococcus属由来のオキシダーゼを作用させてアルデヒド基に変換することを特徴とする、下式2:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で表されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
  2. 上記Rhodococcus属由来のアミノメチル基を酸化的に脱アミノ反応するオキシダーゼが、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来のオキシダーゼである、請求項1に記載するα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
  3. L−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換する反応を、これらの化合物に含まれるアミノメチル基を酸化的に脱アミノ化するオキシダーゼを持つRhodococcus 属の細菌を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
  4. L−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換する反応を、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)またはそれから産生されるオキシダーゼ抽出画分を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかの方法で得られたα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩について、アミノ保護基の脱離処理を行う、α−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒドまたはその塩の製造方法。
  6. 下記式2:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で示されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩に、Rhodococcus属由来の脱水素酵素を作用させて、当該化合物のアルデヒド基をカルボキシル基に変換することを特徴とする、下式3:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCOOH (3)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で表されるα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  7. 上記Rhodococcus属由来の脱水素酵素が、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来の脱水素酵素である、請求項6に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  8. 上記のアルデヒド基からカルボキシル基への変換反応を、α−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体またはその塩のアルデヒド基をカルボキシル基に変換する脱水素酵素を持つRhodococcus 属の細菌を用いて行うことを特徴とする、請求項6に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  9. 上記のアルデヒド基からカルボキシル基への変換反応を、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)またはそれから産生される脱水素酵素抽出画分を用いて行うことを特徴とする、請求項6に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  10. 請求項6乃至9のいずれかの方法で得られたα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩について、アミノ保護基の脱離処理を行う、α−L−アミノアジピン酸若しくはα−D−アミノアジピン酸またはその塩の製造方法。
  11. 下式1:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCH2NH (1)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で表されるL−リジン若しくはD−リジンのα−アミノ基保護体またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換して、下式2:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCHO (2)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で示されるα−L−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸セミアルデヒド誘導体を生成できるオキシダーゼまたは当該オキシダーゼを含む菌体、及び、式2で示される化合物(2)またはその塩のアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素または当該脱水素酵素を含む菌体を用いて、
    式1で表される化合物(1)またはその塩のアミノメチル基をカルボキシル基に変換することを特徴とする、下式3:
    HOOCCH(NHR)CHCHCHCOOH (3)
    (式中、Rはアミノ基の保護基を表す)
    で表されるα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  12. 式2で示される化合物(2)またはその塩のアルデヒド基をカルボキシル基に変換し得る脱水素酵素としてRhodococcus属由来の脱水素酵素を使用するか、または当該脱水素酵素を含む菌体としてRhodococcus属に属する細菌を使用することを特徴とする、請求項11に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  13. 上記Rhodococcus属由来の脱水素酵素が、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来の脱水素酵素であるか、または上記Rhodococcus属に属する細菌がRhodococcus.Z-35-1(受託番号:FERM P−19710)株である、請求項12に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  14. 式1で示される化合物(1)またはその塩のアミノメチル基をアルデヒド基に変換し得るオキシダーゼとしてRhodococcus属由来のオキシダーゼを使用するか、または当該オキシダーゼを含む菌体としてRhodococcus属に属する細菌を使用することを特徴とする、請求項11に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  15. 上記Rhodococcus属由来のオキシダーゼが、Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号:FERM P−19710)由来のオキシダーゼであるか、または上記Rhodococcus属に属する細菌がRhodococcus.Z-35-1(受託番号:FERM P−19710)株である、請求項14に記載するα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩の製造方法。
  16. 請求項11乃至15のいずれかの方法で得られたα−L−アミノアジピン酸誘導体若しくはα−D−アミノアジピン酸誘導体またはその塩について、アミノ保護基の脱離処理を行う、α−L−アミノアジピン酸若しくはα−D−アミノアジピン酸またはその塩の製造方法。
  17. Rhodococcus sp.Z-35-1株(受託番号 FERM P−19710)。
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