JP2005290022A - 装飾シート用塩化ビニル系樹脂ペースト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂、減粘剤、可塑剤からなる塩化ビニル系樹脂ペーストであって、減粘剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し5〜35重量部であり、かつ該減粘剤は、沸点が280℃以上、および炭素数が17以上である。
塩化ビニル系樹脂は、平均1次粒子径0.1〜20μmの粒度分布内で2〜4ピークの粒径分布を有し、前記無機質充填剤は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウム、アルミナ等から選ばれる単独または混合物であって、比表面積が1500〜4000cm2/gである。
Description
この塩化ビニル系樹脂ペーストを、ロータリースクリーン、コンマコーター、ロールコート、バーコートなどの塗布方法により、壁紙用などの基材の上に塗工し、表面に種々の印刷や凹凸模様などを施すことで装飾性を高め、このようにして得られるシート(装飾シート)が、壁紙などに用いられている。
しかし、従来の壁紙等の装飾シートにおいては、製造工程や得られた製品から塩化ビニル系樹脂ペースト中に配合された希釈剤や二次可塑剤などに含まれている揮発性の高い成分が、装飾シートから揮発することがあり、人体や環境に与える影響が懸念されている。
そのため、この揮発成分、すなわち揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound;以下、VOCと記載することがある)の使用をできる限り減少させることが試みられ、樹脂ペースト中の配合剤の種類やその配合量を検討することがなされている。
加えて、粘性の高いペーストを用いた装飾シートでは、その平面平滑性に不具合を生じることもあり、製品不良となる可能性もある。
このような実情の下で、従来から、揮発成分を含む希釈剤や二次可塑剤を使用しなくとも、現行の塗工設備において塗工可能な塗料粘度を維持でき、かつ良好な塗工面を形成することのできる塩化ビニル系樹脂ペーストの開発が試みられている。
このとき、(1)塩化ビニル系樹脂ペーストに使用する塩化ビニル系樹脂は、平均1次粒子径0.1〜20μmの粒度分布内で、粒径分布のピークが2〜4個有するものが好ましく、さらに(2)無機質充填剤は、比表面積が1500〜4000cm2/gのものが好ましく、通常使用されている無機質充填材が使用でき、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウム、アルミナ等であり、これらの無機質充填材は単独でも、あるいは適宜の組み合わせによる2種以上を混合使用しても良い。
減粘剤は、5重量部未満であると、減粘効果を得ることがむずかしく、35重量部を超えると、減粘効果は飽和し、添加量を増やしても減粘効果の更なる向上を得ることはできないばかりか、使用する減粘剤によっては、ブリードアウトが発生し、ベタツキ等が発生してしまったり、発泡剤を使用した場合に発泡性能が阻害されることもある。
この沸点が280℃以上、または炭素数が17以上の減粘剤は、生産工程中、及び常温下において塗工後の製品から揮発するVOC量が低い。
このような減粘剤を用いることによって、本発明の樹脂ペーストによれば、VOCの放散が低い製品を得ることができる。
これらの塩化ビニル系樹脂は、いずれかを単独、あるいは適宜の組み合わせによる2種以上を混合して使用することができる。
また、粒径分布のピークが2〜4個有するものは、1個のピークを有するものに比べて、粒径の異なる大小の樹脂粒子が存在することで最密充填されやすく、可塑剤はこの最密充填状態の粒子間に入り込みにくくなるため、流動に寄与する可塑剤の量を減少させても、樹脂ペーストの増粘化を防止することが可能となる。この結果、本発明の目的である、希釈剤や二次可塑剤を使用せずに、揮発性の低い減粘剤を使用することのみであっても、塗工性をより一層優れたものとすることができ、良好な塗工面を形成することができる樹脂ペーストとなる。
但し、通常は、無機質充填剤の添加により、樹脂ペーストが増粘傾向となり、本発明の阻害要因となるものである。そこで、本発明における無機質充填剤は、比表面積が1500〜4000cm2/gのものを使用することが好ましい。
従って、本発明では、上記のような比表面積を有する無機質充填剤を用いることが好ましく、これにより、樹脂ペーストの増粘性を抑えることができ、この結果として塩化ビニル系樹脂ペースト中における減粘剤の使用のみで、VOC低放散製品の素材として好適に使用することができ、生産性等においても問題ないものとなる。
上記の比表面積を有するこれらの無機質充填剤であれば、無機質充填剤添加による樹脂ペーストの増粘性を抑制することができ、本発明の目的を効果的に達成することができる。
10重量部未満では、無機質充填剤を添加する効果があまり得られず、150重量部を超えると、塗工作業性に支障をきたす可能性がある。
これらのフタル酸系およびアジピン酸系以外の可塑剤として、本発明では、粘度やその他の性状面からクエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、グリセリンジアセトモノラウレート等も使用することができる。
ただし、アジピン酸系可塑剤は、本発明においては減粘剤として使用することができ、この使用量が35重量部を超えるとベタツキ等の問題が発生するため、アジピン酸系以外のフタル酸系などの可塑剤を単独使用したり、あるいは2種以上を混合使用して、アジピン酸系可塑剤は減粘剤としての使用にとどめることが好ましい。
また、減粘剤として、アジピン酸系可塑剤以外のものを使用する場合においても、可塑剤としてのアジピン酸系可塑剤の使用量は、35重量部以下とし、他の可塑剤を併用することが好ましい。
安定剤としては、具体的には、バリウム系、カリウム系、亜鉛系等の安定剤が好ましく使用でき、液状である場合においては、標準圧力における沸点が280℃以上のものが好ましい。
安定剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し1〜10重量部が好ましい。
具体的な粘度として、本発明では、BM型粘度計、ローターNo.4を用いて25℃、60rpmで測定した値が500〜5000mPa・sとすることが好ましい。
この揮発成分の放散量は、JIS A 1901に基づく小型チャンバー試験で、1日後の放散量が400μg/m3以下のものがVOC低放散製品の素材として好適なペーストであり、本発明の装飾シート用塩化ビニル樹脂系ペーストはこれを満足するものである。
このため、本発明の塩化ビニル系樹脂ペーストを使用して得られる塩化ビニル系樹脂シートは、壁紙、天井紙、家具類等の表面に貼着して使用される装飾シートにおいて、VOC低放散製品の実現をもたらすことができるものである。
塩化ビニル樹脂に対して、減粘剤、可塑剤、無機質充填剤、および安定剤を表1に示す割合で配合し、ラボミキサーで均一に攪拌分散した後、減圧下で脱泡して、本発明の塩化ビニル系樹脂ペーストを調製した。
次に、これらの配合からなる各塩化ビニル系樹脂ペーストを、市販の壁紙用普通紙にコンマコーターを用いて220g/m2塗布し、乾燥させて、シートを得た。
○:従来品と同様安定した塗料の性状を示し、特に問題ない。
△:若干増粘傾向、又は沈降傾向は見られるが、塗工工程での調整範囲である。
×:塗料の安定性が悪く、現状の設備では作業できない。
○:従来品と同等に塗工でき、特に問題がない。
△:塗工時に多少の問題があるが、塗工自体に支障はない。
×:塗工できないか、生産性に問題がある。
○:特に問題なし。
△:多少問題はあるが、製品として使用可能。
×:表面仕上がり的に問題があり、製品として使用できない。
○:1日後の放散量が400μg/m3以下。
×:1日後の放散量が400μg/m3を超えてしまう。
〔ポリ塩化ビニル樹脂〕
P85B:新第一塩ビ(株)製、粒径分布が2個ピークを有し、各ピークの平均1次粒子径は0.3μm、2μmである。
PSL700:鐘淵化学工業(株)製、粒径分布が3個ピークを有し、各ピークの平均1次粒子径は0.2μm、1.8μm、9μmである。
P24Z:新第一塩ビ社製、粒径分布が1個ピークを有し、平均1次粒子径は0.8μmである。
BY20386:ビックケミー社製、沸点325℃以上(標準圧力:101.3kPa)
DINA:(株)ジェイ・プラス製、沸点227℃(低圧力:0,67kPa)
(なお、この値は標準圧力でのデータではなく、これを標準圧力に換算すると280℃以上と推測される。)
N−デカン:関東化学(株)製、沸点174℃(標準圧力:101.3kPa)
N−テトラデカン:関東化学(株)製、沸点253℃(標準圧力:101.3kPa)
NN#200:日東粉化工業(株)製、比表面積1,500cm2/g
MC−35:旭鉱末(株)製、比表面積3,500cm2/g
NN#500:日東粉化工業(株)製、比表面積5,000cm2/g
BF−400:備北粉化工業(株)製、比表面積1,200cm2/g
また、比表面積の大きい無機質充填剤を添加した実施例7は、塗工性及び表面仕上がりが僅かに劣っており、比表面積の小さい無機質充填剤を用いた実施例8と粒径分布のピークが1個のポリ塩化ビニル樹脂を使用した実施例9は、ペーストの安定性と塗工性においても僅かに劣っていた。
これに対して、揮発性の高い成分を含む減粘剤を用いた比較例1及び比較例2は、VOC放散量が目標値を超えており、減粘剤を添加しない比較例3は、ペーストの安定性、塗工性及び表面仕上がりが劣っており、減粘剤を多く添加した比較例4は、表面仕上がりが劣っており、また比較例4の減粘剤は、アジピン酸系可塑剤であるDINAであり、しかもその配合量は、35重量部を超えていたため、表面にベタツキが発生して、製品として問題があった。
従って、この樹脂ペーストからなる塩化ビニル系樹脂シートは、壁紙、天井紙、床材、家具類の表面に貼り付けられる化粧シート等に使用される装飾シートにおいてVOCの放散が少ない製品の実現をもたらすことができるものである。
Claims (3)
- 少なくとも塩化ビニル系樹脂、減粘剤、可塑剤からなる装飾シート用塩化ビニル系樹脂ペーストであって、
前記減粘剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し5〜35重量部であり、かつ該減粘剤は、沸点が280℃以上、または炭素数が17以上であることを特徴とする装飾シート用塩化ビニル系樹脂ペースト。 - 塩化ビニル系樹脂が、平均1次粒子径0.1〜20μmの粒度分布内で、粒径分布のピークが2〜4個を有することを特徴とする請求項1に記載の装飾シート用塩化ビニル系樹脂ペースト。
- 無機質充填材が添加され、無機質充填剤の比表面積1500〜4000cm2/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の装飾シート用塩化ビニル系樹脂ペースト。
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