JP2005289017A - インクジェットヘッド及びそれを備えたインクジェット式記録装置、並びにインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド及びそれを備えたインクジェット式記録装置、並びにインクジェットヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】能動部の変位量を向上させるとともに上部電極の配線部の抵抗を下げ得るインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド41は、圧力室8が形成された圧力室部材7と、下面の一部が圧力室8に臨むように設けられた振動層6と、圧力室8内のインクに圧力を付与する圧電素子14とを備えている。圧電素子14は、下部電極5と圧電体層4と結晶配向制御層3と上部電極13とが順に積層されてなる。上部電極13は、圧力室8に対応する位置に設けられた能動部13aと、能動部13aに接続された配線部13bとを有する。上部電極13は、結晶配向制御層3上に設けられた第1の電極層2と、第1の電極層2上に設けられ且つヤング率が第1の電極層2よりも小さい第2の電極層12との2層からなる。
【選択図】図3

Description

本発明は、圧電効果を利用して記録を行うインクジェットヘッド及びそのインクジェットヘッドを印字手段として備えたインクジェット式記録装置、並びにインクジェットヘッドの製造方法に関するものである。
従来から、圧電素子の圧電効果を利用して記録を行うインクジェットヘッドが知られている(例えば特許文献1を参照)。このインクジェットヘッドは、例えば以下のように構成されている。すなわち、図5(f)に示すように、インクジェットヘッドは、ノズル121が形成されたノズルプレート102と加圧室110が形成された加圧室基板101と振動板層105と下地層106と下部電極171とチタン層108該チタン層108によって結晶配向性を制御される圧電体層109と上部電極172とが積層されてなる。下部電極171、チタン層108、圧電体層109及び上部電極172が圧電素子を構成している。そして、上部電極172と下部電極171との間に交流電圧を印加すると、圧電体層109に撓み振動が発生して振動板層105が変位する。それから、その変位により加圧室110内のインクに圧力が付与されて、ノズル121からインクが記録媒体に対して吐出される。
このインクジェットヘッドの製造方法は、図5(a)に示すように、加圧室基板101に振動板層105及び下地層106を成膜し、それから、図5(b)に示すように、下地層106上に下部電極171を成膜する。次に、図5(c)に示すように、下部電極171上にチタン層108を成膜した後、図5(d)に示すように、チタン層108上に圧電体層109及び上部電極172を成膜する。なお、圧電体層109はゾル・ゲル法で成膜する。次に、図5(e)に示すように、上部電極172上にレジストをスピンコートし、加圧室110を形成する位置に合わせて露光・現像してパターニングする。そして、残ったレジストをマスクとして上部電極172、圧電体層109、チタン層108及び下部電極171をエッチングして、加圧室110を形成する位置に対応するように圧電素子を分離する。続いて、図5(f)に示すように、加圧室110を形成する位置に合わせてエッチングマスクを施し、加圧室基板101を所定の深さまでドライエッチングして加圧室110を形成する。なお、加圧室基板101におけるエッチングされずに残った部分は側壁となる。
しかしながら、この製造プロセスでは、振動板層105の形成後に圧電体層109を高温で形成するので、振動板層105の構成材料や形成条件が制限を受ける。そのため、圧電素子全体の応力の調整が困難となり、その結果、変位バラツキが生じ、印字品質が低下する。
そこで、圧電素子全体の応力調整を容易にする方法として、特許文献2に示すように、圧電体層を高温で形成し、その後、振動層を形成することにより、振動層の構成材料や形成条件の制約を少なくし、圧電素子全体の応力を調整するものが開示されている。すなわち、まず、図6(a)に示すように、基板200の一方の面上に、貴金属からなる上部電極201、結晶配向制御層(初期層)202、圧電体層203、下部電極204及び振動層205を順に成膜する。この結晶配向制御層202は、圧電体層203の結晶配向性を制御するものである。次に、図6(b)に示すように、振動層205上に圧力室部材206を接合する。この圧力室部材206は、各圧力室207を互いに隔てるための隔壁208と、ノズル209が形成されたノズル板210とからなる。圧力室部材206を接合後、基板200をエッチング法で除去する。次に、図6(c)に示すように、上部電極201を所定の形状になるようにドライエッチング法でパターニングする。最後に、結晶配向制御層202及び圧電体層203を、上部電極201と同じ形状になるようにウェットエッチング法でパターニングする。
図7は、このインクジェットヘッドの要部を拡大した図である。図7のインクジェットヘッドには2ピンだけ示されているが、実際には400ピン配置されている。上部電極201は、各圧力室207に対応する位置に設けられた能動部211と、一端が能動部211に接続された配線部212と、配線部212の他端に接続され且つ能動部211に電圧を印加するための電圧印加パッド部213とを有する。そして、電圧印加パッド部213と下部電極204(共通電極)との間に交流電圧を印加すると、圧電体層203に撓み振動が発生して振動層205が変位する。それから、その変位により圧力室207内のインクに圧力が付与されて、ノズル209からインクが記録媒体に対して吐出される。
このインクジェットヘッドでは、上部電極201が貴金属からなるため、圧電体層203を高温で形成できる。また、圧電体層203の形成後に振動層205を形成するため、振動層205の構成材料や形成条件の制約が少なくなり、圧電素子全体の応力調整が容易になる。
特開2001-88294号公報 特開2001-113712号公報 特開2001-88301号公報
ところで、近年、インクジェットヘッドに対しては、高精細の印字や印画を高速度で印刷することが要請されている。その要請に応えるためには、1ピンのサイズを小さくする必要があり、さらにそのような小サイズのピンでインクを吐出するためには、振動層を大きく振動させて圧電素子の変位量を増加させる必要がある。
しかしながら、上記特許文献2で示す方法では、上部電極にヤング率が大きいIr、Pt、Ruなどの貴金属を用いているため、圧電素子の変位を妨げる要因となっている。
このような構成において圧電素子の変位量を向上させるためには、ヤング率が大きい上部電極を薄くすることが考えられる。しかしながら、上部電極を薄くすると、今度は配線部の抵抗が大きくなってしまう。一般に、抵抗とコンデンサーが直列に接続されてなる回路に交流電圧を印加した場合、入力の変化に対する出力の応答時間は、抵抗の抵抗値Rとコンデンサーの静電容量Cとの積に比例する。ここで、上記インクジェットヘッドは、配線部が抵抗として、能動部がコンデンサーとして働き、それらが直列に接続されてなるものと考えられる。よって、圧電素子の変位量を向上させるため上部電極を薄くしたことにより配線部の抵抗が大きくなると、電圧印加パッドから電圧を印加した際、コンデンサー、すなわち、能動部の充電に時間がかかる。そのため、インク吐出の応答に遅れが生じ、インクの着弾位置にずれが発生する。
そこで、配線部の抵抗を下げるため、該配線部の幅を大きくすることが考えられる。しかしながら、配線部の面積が大きくなると、配線部の静電容量が大きくなり、上述と同様に、インク吐出の応答に遅れが生じ、インクの着弾位置にずれが発生する。
さらに、圧電素子の変位量を向上させる方法として、例えば特許文献3には、圧電体層の優先配向方位との関連において上部電極又は下部電極の応力状態を設定するものが示されている。しかしながら、この方法では、上部電極又は下部電極に応力を与えるため熱アニール処理、酸化処理又は窒化処理がなされる必要があり、それゆえに、応力の制御が非常に困難である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクジェットヘッドにおいて、個別電極の配線部の抵抗を増加させることなく、圧電素子の変位量を向上させる技術を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットヘッドでは、個別電極を2層構造とした。すなわち、結晶配向制御層上に形成され且つヤング率が大きい(すなわち、剛性が大きい)第1の電極層を薄くして、さらに、その第1の電極層上に、圧電素子の変位を妨げないようなヤング率が低い(すなわち、剛性が小さい)第2の電極層を形成して、個別電極全体の層厚を確保した。このようなインクジェットヘッドによれば、圧電素子における能動部に対応する部分の変位量を向上させつつ、個別電極の配線部の抵抗が大きくなることを防ぐことができる。そのため、インクの着弾位置にずれが発生しないインクジェットヘッドを提供できる。
第1の発明では、個別電極、圧電体層及び共通電極を有し且つ該個別電極、該圧電体層及び該共通電極とが順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の上記共通電極側の面に設けられた振動層と、該振動層の上記圧電素子とは反対側の面に接合され且つインクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材とを備え、上記個別電極が、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有し、上記圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを上記ノズルから吐出させるインクジェットヘッドであって、上記個別電極は、上記結晶配向制御層上に設けられた第1の電極層と該第1の電極層上に設けられ且つヤング率が上記第1の電極層よりも小さい第2の電極層とからなることを特徴とするものである。
このような構成によれば、圧電素子における能動部に対応する部分の変位量を向上させるためヤング率が大きい第1の電極層を薄くしても、第1の電極層上にヤング率が第1の電極層よりも小さい第2の電極層が設けられているため、個別電極の配線部の抵抗が大きくなることを防ぐことができる。すなわち、第2の電極層のヤング率が第1の電極層よりも小さいため、圧電素子における能動部に対応する部分の変位を妨げることなく個別電極全体の層厚を確保することができ、その結果、個別電極の配線部の抵抗が大きくなることを防ぐことができる。
第2の発明では、上記第1の発明において、上記第1の電極層が貴金属からなることを特徴とするものである。
これにより、第1の電極層は結晶配向制御層及び圧電体層の各層をスパッタ法で成膜するときの成膜温度に十分に耐えることができる。
また、第1の電極層を、電極として適切な材料である貴金属により構成することができる。
第3の発明では、上記第1の発明において、上記第1の電極層の厚みが500Å以上3000Å以下であることを特徴とするものである。
ところで、第1の電極層の厚みが500Å未満であるときは、個別電極の配線部の抵抗が大きくなり、インク吐出の応答に遅れが生じる一因となる。また、第1の電極層の厚みが3000Åよりも大きいときは、第1の電極層の剛性が大きくなる。そのため、圧電素子における能動部に対応する部分の変位量が低下し、インクジェットヘッドの吐出性能が低下する。
ここで、本発明によれば、第1の電極層の厚みが500Å以上3000Å以下であるため、圧電素子における能動部に対応する部分の変位量を十分に確保しながら、個別電極の配線部の抵抗が大きくなることを確実に防ぐことができる。
第4の発明では、上記第1の発明において、上記第2の電極層のヤング率が0よりも大きく120Gpa以下であることを特徴とするものである。
これにより、圧電素子における能動部の変位を妨げることなく、個別電極の配線部の抵抗を小さくすることができる。
第5の発明に係るインクジェット式記録装置は、上記第1〜4のいずれか1つに記載の発明に係るインクジェットヘッドと、上記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段とを備えたことを特徴とするものである。
このインクジェット式記録装置によれば、高精細の印字や印画を高速度で印刷することができる。
第6の発明に係るインクジェットヘッドの製造方法は、基板の一方の面上に第1の電極層を成膜する工程と、上記第1の電極層上に圧電体層を成膜する工程と、上記圧電体層上に共通電極を成膜する工程と、上記共通電極上に振動層を成膜する工程と、上記振動層上に、インクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材を接合する工程と、上記基板をエッチング除去する工程と、上記第1の電極層上にヤング率が該第1の電極層よりも小さい第2の電極層を成膜する工程と、上記第1及び第2の電極層をパターニングして、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有する、該第1及び第2の電極層からなる個別電極を形成する工程と、上記圧電体層をパターニングする工程とを備えたことを特徴とするものである。
第7の発明に係るインクジェットヘッドの製造方法は、基板の一方の面上に第1の電極層を成膜する工程と、上記第1の電極層上に結晶配向制御層を成膜する工程と、上記結晶配向制御層上に圧電体層を成膜する工程と、上記圧電体層上に共通電極を成膜する工程と、上記共通電極上に振動層を成膜する工程と、上記振動層上に、インクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材を接合する工程と、上記基板をエッチング除去する工程と、上記第1の電極層上にヤング率が該第1の電極層よりも小さい第2の電極層を成膜する工程と、上記第1及び第2の電極層をパターニングして、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有する、該第1及び第2の電極層からなる個別電極を形成する工程と、上記結晶配向制御層及び上記圧電体層をパターニングする工程とを備えたことを特徴とするものである。
これらにより、第1の電極層上にヤング率が第1の電極層よりも小さい第2の電極層を成膜するため、圧電素子における能動部に対応する部分の変位を妨げることなく個別電極全体の層厚を確保することができ、個別電極の配線部の抵抗が小さいインクジェットヘッドを製造できる。
以上説明したように、本発明によれば、圧電素子の個別電極を第1の電極層とヤング率が第1の電極層よりも小さい第2の電極層とで構成しているので、圧電素子における能動部に対応する部分の変位量を向上させつつ、個別電極の配線部の抵抗を小さくすることができる。以上により、変位特性が良好で且つインクの着弾位置にずれが発生しないインクジェットヘッドを提供できる。さらに、高精細の印字や印画を高速度で印刷できるインクジェットヘッド式記録装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るインクジェット式記録装置40の主要な構成を示す図である。本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置40はインクジェットヘッド41を備えていて、このインクジェットヘッド41のインク吐出口10(図2を参照)からインク滴を記録用紙などの記録媒体42に対して吐出させ該記録媒体42上にインク滴を着弾させ記録を行うものである。インクジェットヘッド41はキャリッジ44に搭載されていて、そのキャリッジ44が記録媒体42の幅方向(以下、主走査方向Xという)に延びているキャリッジ軸43に沿って往復移動するのに伴い主走査方向Xに往復移動する。インクジェット式記録装置40は、記録媒体42を主走査方向Xと略垂直な副走査方向Yに移動させる、上下3つずつのローラ45,45,…を備えている。これらのローラ45,45,…は、キャリッジ44が主走査方向Xに一走査分だけ移動するごとに、記録媒体42を副走査方向Yに所定量だけ搬送するように構成されている。なお、本発明に係る移動手段は、キャリッジ軸43、キャリッジ44及びローラ45に対応する。
図2はインクジェットヘッド41の断面図を示す。図3はインクジェットヘッド41の斜視図を示す。図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド41は、複数のインク吐出口(ノズル)10,10,…と各インク吐出口10にそれぞれ連通する複数の圧力室8,8,…とが形成された圧力室部材7と、下面の一部が複数の圧力室8,8,…に臨むように設けられた振動層6と、振動層6上に設けられ且つ各圧力室8内のインクにそれぞれ圧力を付与する圧電素子14とを備えている。圧力室部材7は、複数の圧力室8,8,…を互いに隔てるための隔壁9と、複数のインク吐出口10,10,…が形成されたノズル板11とを有している。圧電素子14は、下部電極(共通電極)5と圧電体層4と結晶配向制御層3と上部電極(個別電極)13とが順に積層されて構成されている。なお、圧電素子14は結晶配向制御層3を含まなくてもよい。すなわち、圧電素子14は、少なくとも下部電極5、圧電体層4及び上部電極13を有し且つ該下部電極5、該圧電体層4及び該上部電極13が順に積層されて構成されていればよい。
上部電極13は、各圧力室8に対応する位置に夫々設けられた複数の能動部13a,…と、一端が各能動部13aにそれぞれ接続された複数の配線部13b,…と、各配線部13bの他端にそれぞれ接続され且つ各能動部13aにそれぞれ電圧を印加するための複数の電圧印加パッド部13c,…とを有する(図3を参照)。能動部13a及び電圧印加パッド部13cは略矩形状に形成されている。
本発明の特徴として、上部電極13は、結晶配向制御層3上に設けられ且つ貴金属からなる第1の電極層2と、その第1の電極層2上に設けられ且つヤング率が第1の電極層2よりも小さい第2の電極層12との2層からなる。第1の電極層2は、厚みが1200Åである。第2の電極層12は、厚みが2000Åであり、ヤング率が0よりも大きく120Gpa以下である。なお、第1の電極層2は、厚みが500Å以上3000Å以下であることが好ましく、800Å以上1200Å以下であることがさらに好ましい。これは、第1の電極層2の厚みが500Å未満であるときは、上部電極13の配線部13bの抵抗が大きくなり、インク吐出の応答に遅れが生じる一因となる一方、第1の電極層2の厚みが3000Åよりも大きいときは、第1の電極層2の剛性が大きくなるため、圧電素子14における能動部13aに対応する部分の変位量が低下し、インクジェットヘッドの吐出性能が低下するからである。また、第2の電極層12は、厚みが1000Å以上2000Å以下であることが好ましい。
結晶配向制御層3は、圧電体層4の成膜時に該圧電体層4の結晶配向性を制御するものである。結晶配向制御層3及び圧電体層4は、上部電極13と同じ形状である。すなわち、結晶配向制御層3及び圧電体層4は、各能動部13a、各配線部13b及び各電圧印加パッド部13cに対応する位置に形成されている。
−インクジェットヘッドの製造方法−
以下に、インクジェットヘッド41の製造方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、Si基板1の一方の面上に、厚さ0.12μm(1200Å)のPtからなる第1の電極層2をスパッタリング法で成膜する。この第1の電極層2は、Si基板1を400℃に加熱しながら、1Paのアルゴンガス(以下、Arガスという)中において200Wの高周波電力を12分間印加することにより成膜した。なお、Ptからなる第1の電極層2には、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Co、Ni、Cu、Mnなどの添加物が含まれてもよい。
次に、第1の電極層2上に、厚さ600Åのチタン酸ランタン鉛(チタン酸鉛ランタン,以下、PLTという)からなる結晶配向制御層3をスパッタリング法で成膜する。この結晶配向制御層3は、Si基板1を610℃に加熱しながら、0.5PaのAr−O2ガス(ガス体積比Ar:O2=19:2)中において300Wの高周波電力を10分間印加することにより成膜した。なお、結晶配向制御層3の構成材料はPLTに限らず、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などでもよい。さらに、結晶配向制御層3の層厚は40Å以上3000Å以下であればよい。
次に、結晶配向制御層3上に、厚さ1.5μmのPbZr0.53Ti0.473(ジルコン酸チタン酸鉛,以下、PZTという)からなる圧電体層4をスパッタリング法で成膜する。この圧電体層4は、Si基板1を610℃に加熱しながら、0.3PaのAr−O2ガス(ガス体積比Ar:O2=19:1)中において250Wの高周波電力を3時間印加することにより成膜する。なお、圧電体層4の構成材料は、PZTにSr、Nb、Alなどの添加物を添加したもの、PMN(Mg・Nbを含有)やPZN(Zn・Nbを含有)等のチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料であればよい。さらに、圧電体層4の膜厚は0.5〜5.0μmの範囲内の値であればよい。
次に、圧電体層4上に、厚さ0.2μmのPtからなる下部電極5をスパッタリング法で成膜する。この下部電極5は、Si基板1の温度を室温にして、1PaのArガス中において200Wの高周波電力を12分間印加することにより成膜した。
次に、下部電極5上に、厚さ5μmのCrからなる振動層6をスパッタリング法で成膜する。この振動層6は、Si基板1の温度を室温にして、0.3PaのArガス中において200Wの高周波電力を150分間印加することにより成膜した。
次に、図4(b)に示すように、振動層6上に圧力室部材7を接合する。この圧力室部材7は、複数の圧力室8,8,…を互いに区画するためのための隔壁9と、複数のインク吐出口10,10,…が設けられたノズル板11とからなる。圧力室部材7の接合後、Si基板1をエッチング法で除去する。
次に、図4(c)に示すように、Si基板1を除去することにより露出した第1の電極層2上に、厚さ2000ÅのAuからなる第2の電極層12をスパッタリング法で成膜する。この第2の電極層12は、室温下で、1PaのArガス中において100Wの高周波電力を10分間印加することにより成膜した。この第2の電極層12の構成材料はヤング率が第1の電極層2よりも小さい(すなわち、剛性が第1の電極層2よりも小さい)ものであって、Au(ヤング率116Gpa)、Al(ヤング率68.5Gpa)、Ag(ヤング率73.2Gpa)等であることが好ましい。
次に、図4(d)に示すように、第1及び第2の電極層2,12を、能動部13a、配線部13b及び電圧印加パッド部13cを形成する位置に対応するようにArガスを用いるドライエッチング法でパターニングして、能動部13a、配線部13b及び電圧印加パッド部13cを有する、該第1及び第2の電極層2,12からなる上部電極13を形成する。なお、この場合、ドライエッチングガスはArガスに他のガスを添加したものでもよい。また、第1及び第2の電極層2,12を別々にエッチングしてもよい。
次に、結晶配向制御層3及び圧電体層4を、上部電極13に対応するようにフッ硝酸を主成分とするエッチャントを用いるウェットエッチング法でパターニングして、結晶配向制御層3及び圧電体層4を上部電極13と同じ形状にする。
なお、結晶配向制御層3及び圧電体層4のパターニングはドライエッチングで行ってもよい。また、第2の電極層12を成膜するのは、上述のように第1の電極層2、結晶配向制御層3及び圧電体層4をパターニングする前でもよいが、第1の電極層2をパターニングした後、又は結晶配向制御層3及び圧電体層4をパターニングした後でもよい。
また、上述のように、圧電素子14が結晶配向制御層3を含まない場合は、第1の電極層2上に圧電体層4をスパッタリング法で成膜する。
−インクジェットヘッド式記録装置の動作−
以下に、インクジェット式記録装置40の動作について説明する。まず、インクジェットヘッド41をキャリッジ44によって主走査方向Xに往復移動させて、その移動時にインクジェットヘッド41のインク吐出口10からインク滴を記録媒体42に吐出させることにより、一走査分の記録を行う。この一走査分の記録が終了すると、記録媒体42をローラ45によって副走査方向Yに所定量だけ移動させて、上述のように、次の一走査分の記録を行う。
ここで、本実施形態に係るインクジェットヘッドの各層の構成材料及び厚み、並びに製造方法は、以下の実施例の結果に基づいて決定されている。
(実施例1)
本実施例に係るインクジェットヘッドは、各層の構成材料及び層厚、並びに製造方法が上記実施の形態と同じものである。このインクジェットヘッドに30Vの電圧を印加した際の圧電素子における能動部に対応する部分の変位量を20ピン分測定すると、その平均値は65nmであり、変位量が従来のインクジェットヘッドと比較して向上した。また、上部電極の配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は24.9Ωであった。さらに、吐出ばらつきはσ=2.1%であり、後述する比較例1(従来例)よりも低い値であった。
(比較例1)
本比較例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極を厚さ2000ÅのPtからなる第1の電極層のみで構成し、第2の電極層を形成しなかった。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本比較例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は54nmであった。また、配線部の抵抗値は197.3Ωであり、吐出ばらつきはσ=8.3%であった。
(実施例2)
本実施例に係るインクジェットヘッドでは、第1の電極層を厚さ800ÅのIrにより構成し、第2の電極層を厚さ1500ÅのAlにより構成した。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本実施例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は71nmであった。また、配線部の抵抗値は38.7Ωであった。さらに、吐出ばらつきはσ=2.0%であり、後述する比較例2(従来例)よりも低い値であった。
(比較例2)
本比較例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極を厚さ3500ÅのIrからなる第1の電極層のみで構成し、第2の電極層を形成しなかった。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本比較例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は48nmであった。また、配線部の抵抗値は172.8Ωであり、吐出ばらつきはσ=3.7%であった。
(実施例3)
本実施例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極の第1の電極層を厚さ1000ÅのRuにより構成し、第2の電極層を厚さ1000ÅのAlにより構成した。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本実施例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は62nmであった。また、配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は45.6Ωであった。さらに、吐出ばらつきはσ=1.8%であり、比較例1よりも低い値であった。
以上から、実施例1〜3に示すように、貴金属からなる第1の電極層を薄くして、その第1の電極層上にヤング率が第1の電極層よりも小さい第2の電極層を形成することにより、圧電素子の変位量を確保しつつ、吐出ばらつきを改善することができる。
本発明に係るインクジェットヘッド及びそのインクジェットヘッドを印字手段として備えたインクジェット式記録装置は、吐出性能が非常に高く、プリンター、ワープロ、ファクシミリ、印刷機などの記録装置等に有用である。
本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド式記録装置の概略構成図である。 インクジェットヘッドの断面図である。 インクジェットヘッドの斜視図である。 インクジェットヘッドの製造工程を示す図である。 従来のインクジェットヘッドの製造工程を示す図の一部である。 従来のインクジェットヘッドの製造工程を示す図の一部である。 従来のインクジェットヘッドの要部を拡大した図である。
符号の説明
1 基板
2 第1の電極層
3 結晶配向制御層
4 圧電体層
5 下部電極(共通電極)
6 振動層
7 圧力室部材
8 インク室
9 隔壁
10 インク吐出口(ノズル)
11 ノズル板
12 第2の電極層
13 上部電極(個別電極)
14 圧電素子
40 インクジェット式記録装置
41 インクジェットヘッド
42 記録媒体
43 キャリッジ軸(移動手段)
44 キャリッジ(移動手段)
45 ローラ(移動手段)

Claims (7)

  1. 個別電極、圧電体層及び共通電極を有し且つ該個別電極、該圧電体層及び該共通電極が順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の上記共通電極側の面に設けられた振動層と、該振動層の上記圧電素子とは反対側の面に接合され且つインクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材とを備え、上記個別電極が、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有し、上記圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを上記ノズルから吐出させるインクジェットヘッドであって、
    上記個別電極は、上記結晶配向制御層上に設けられた第1の電極層と該第1の電極層上に設けられ且つヤング率が上記第1の電極層よりも小さい第2の電極層とからなることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 上記第1の電極層は貴金属からなることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 上記第1の電極層の厚みが500Å以上3000Å以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  4. 上記第2の電極層のヤング率が0よりも大きく120Gpa以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載のインクジェットヘッドと、
    上記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段とを備えたことを特徴とするインクジェット式記録装置。
  6. 基板の一方の面上に第1の電極層を成膜する工程と、
    上記第1の電極層上に圧電体層を成膜する工程と、
    上記圧電体層上に共通電極を成膜する工程と、
    上記共通電極上に振動層を成膜する工程と、
    上記振動層上に、インクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材を接合する工程と、
    上記基板をエッチング除去する工程と、
    上記第1の電極層上にヤング率が該第1の電極層よりも小さい第2の電極層を成膜する工程と、
    上記第1及び第2の電極層をパターニングして、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有する、該第1及び第2の電極層からなる個別電極を形成する工程と、
    上記圧電体層をパターニングする工程とを備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  7. 基板の一方の面上に第1の電極層を成膜する工程と、
    上記第1の電極層上に結晶配向制御層を成膜する工程と、
    上記結晶配向制御層上に圧電体層を成膜する工程と、
    上記圧電体層上に共通電極を成膜する工程と、
    上記共通電極上に振動層を成膜する工程と、
    上記振動層上に、インクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材を接合する工程と、
    上記基板をエッチング除去する工程と、
    上記第1の電極層上にヤング率が該第1の電極層よりも小さい第2の電極層を成膜する工程と、
    上記第1及び第2の電極層をパターニングして、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有する、該第1及び第2の電極層からなる個別電極を形成する工程と、
    上記結晶配向制御層及び上記圧電体層をパターニングする工程とを備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007149858A (ja) * 2005-11-25 2007-06-14 Seiko Epson Corp 圧電素子並びに圧電素子を用いた液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
JP2010162848A (ja) * 2009-01-19 2010-07-29 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにアクチュエーター装置
JP2015088581A (ja) * 2013-10-30 2015-05-07 株式会社リコー 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置

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