JP2005264233A - 剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板 - Google Patents

剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】 最終的に形成する被膜の張力を適正に規定することによって、過度に高温の成膜を行うことなしに、極めて低い鉄損と優れた剪断作業性とを有する方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】 フォルステライト被膜のない方向性電磁鋼板の表裏面に張力被膜を形成した電磁鋼板において、片面の被膜を除去することで生じる鋼板の反り値から求めた張力被膜の張力を、下記(I)式に従って算出される張力の1.2倍以上、かつ6MPa以上とする。

Figure 2005264233

【選択図】なし

Description

本発明は、極めて低い鉄損と優れた剪断作業性とを有する一方向性電磁鋼板に関するものである。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性体である。近年、省エネルギーの観点から、これら電気機器のエネルギーロスを小さくするニーズが高まっており、鉄心材料として用いられている方向性電磁鋼板には、従来にも増して、良好な磁気特性が求められるようになってきた。特に、地球温暖化防止の観点から、発電所からの送配電時の電力損失を最小限にするために、方向性電磁鋼板の鉄損低減への要求は年々厳しくなってきている。
鉄損は、主にヒステリシス損および渦電流損に分類される。方向性電磁鋼板の鉄損を低減するためには、二次再結晶により結晶の磁化容易軸である <001>方向を一方向(圧延方向)に高度に揃えてヒステリシス損を低減すること、鋼板が含有する不純物を低減したり表面を平滑化することによりヒステリシス損を低減すること、鋼板に高比抵抗元素(主としてSi)を含有させて渦流損を低減すること、鋼板の厚みを低減して渦流損を低減すること、粒径を制御したり鋼板の表面に溝を刻んで磁区を細分化することにより渦電流損を低減すること、などの方法がある。これらの方法が確立されることにより、20世紀後半、方向性電磁鋼板の鉄損は飛躍的に低減されてきた。しかしながら、これら従来の方法による鉄損低減はもはや限界に達しており、新たな画期的な方法を見出すことが必要な時期に来ている。
ここに、最終仕上げ焼鈍後の鋼板の表面を平滑化し、その上に張力被膜を成膜することにより、磁区を細分化し、渦流損を低減する技術は、これまで多数開示されており、発明者らも開発を行ってきた。例えば、特許文献1に、 PVD(物理蒸着)法や CVD(化学蒸着)法によって窒化物や炭化物などのセラミック被膜を鋼板表面に形成し、鉄損を低減する技術が開示されている。
しかしながら、製造コストが極めて高いこと、高温の歪取り焼鈍を施した場合に、しばしば密着性不良に起因した被膜剥離が生じ、鉄損が劣化するという問題があり、工業化されるには至っていない。
すなわち、方向性電磁鋼板は、巻きトランスの鉄心として使用される場合には、加工後の歪取り焼鈍が不可欠であり、歪取り焼鈍後にも被膜密着性、鉄損特性が維持されることが重要である。また、渦流損の低減のために板厚を薄くした効果を発揮させるために、絶縁性も要求される。
歪取り焼鈍後の被膜密着性並びに鉄損の劣化を防ぐ方法として、特許文献2および3には、二層以上のセラミック張力被膜を成膜する技術が開示されている。これらの技術により、耐歪取り焼鈍性はかなり改善されたが、安定して製造するには未だ不十分であり、また二層以上の異なるセラミック膜を形成するため、製造コストが高くなることが不可避であり、その結果、工業化されるには至っていない。
さらに、被膜張力には鋼板および被膜のヤング率と熱膨張率が影響することから、特許文献4〜6には、これらを適宜調整する手法が開示されている。
しかしながら、同文献に記載された(1)式にならってヤング率の大きな張力材料を使用したり、張力被膜厚みを増した場合は、剪断作業性が極めて劣るところに問題があった。すなわち、変圧器等に使用するには電磁鋼板を剪断加工することが必須であり、剪断作業性に劣る電磁鋼板に剪断を繰り返し行うと、剪断刃の損耗が顕著に現れ、極端な場合には鋼板割れにまで発展することになる。また、同文献に記載された(1)式は、被膜張力を増すために被膜形成温度を上昇させることも教示しているが、鋼板の軟化等の問題からいずれの手法においても概ね1000℃を大きく超える成膜温度を採用することは困難であるし、成膜に際して電気並びに電子機器類が装置に近接して用いられる、 PVDなどの手法では、概ね 600℃を超える成膜は物理的に困難である。
特公昭63-32849号公報 特開平11-131252号公報 特開2002-129309号公報 特開平6−248465号公報 特開平6−287764号公報 特開平6−287765号公報
そこで、本発明の目的は、上記の問題を有利に解決するもので、最終的に形成する被膜の張力を適正に規定することによって、過度に高温の成膜を行うことなしに、極めて低い鉄損と優れた剪断作業性とを有する一方向性電磁鋼板を提供することにある。
発明者らは、フォルステライト被膜のない電磁鋼板に張力被膜を付与する場合について、種々の検討を行って、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
1.フォルステライト被膜のない方向性電磁鋼板の表裏面に張力被膜を形成した電磁鋼板であって、片面の被膜を除去することで生じる鋼板の反り値から求めた圧延方向における張力被膜の張力が、下記(I)式に従って算出される張力の 1.2倍以上、かつ6MPa 以上であることを特徴とする剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板。

Figure 2005264233

2.前記張力被膜の上に絶縁被膜を有することを特徴とする上記1に記載の剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板。
ここでフォルステライト被膜のないとは、焼鈍分離剤を用いない、もしくは、フォルステライト被膜が形成されない焼鈍分離剤組成とすることでフォルステライトの形成を抑止するかフォルステライト被膜を除去した状態をいう。
ここで、鋼板の反り値から張力被膜の張力を求める方法について、以下に具体的に説明する。
さて、鋼板片面にのみ張力被膜が存在する場合は、図1に示すように、鋼板は一定の曲率で反りを生じる。
このとき、曲率半径:Rは、鋼板長:L(=2Rsin(θ/2))および反り高さ:X(=R(1-cos(θ/2)))より、鋼板長Lに比べて反り高さXが十分に小さい範囲において、次式(II)により求めることができる。

R=(L2+4X2)/8X ………(II)

そして、地鉄表面の被膜張力Σは、上式(II)より求めた曲率半径R、ヤング率などから次式(III)により求めることができる。

Σ=E・ε=E・(d/2R) ………(III)
ここで、
ε:地鉄表面歪(板厚中央でε=0)
d:鋼板厚み
E:地鉄長手方向のヤング率(E<100>=143GPa)
この鋼板の反り測定に際しては、同一鋼板から採取した30mm×280mm 寸法の試片を5枚用意し、その反り高さの平均値を用いて張力を求めた。
ちなみに、一般的な膜物質のヤング率および熱膨張係数については、図2に示す値を用いた。
次に、本発明を導くに到った実験結果について、詳述する。
まず、ドライコーティング法にてセラミック膜を形成する場合の成膜条件について鋭意研究した。特に、 HCD(Hollow Cathode Discharge)法での窒化チタン成膜について、バイアス電圧、基板温度および基板洗浄の影響などを詳しく検討した。なお、該セラミック被膜の上に、絶縁被膜を付与することを前提に検討した。絶縁被膜には、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムから成る被膜を用い、約2μm 厚で塗布して 800℃で焼き付ける方法をとった。実験手法は、上記特許文献3に示されるものである。
さて、上記の特許文献3の従来法においては、真空度を9×10-4Torr〜5×10-3Torrの範囲とし、十分に窒化、酸化して金属Tiを生成せずに、Ti2N、TiN 、TiO2、TiO 等を優先的に成膜することが重要であること、が述べられている。
この従来知見を参考に、Tiが十分に窒化あるいは酸化されるように反応ガス(窒素あるいは酸素)の分圧を高めた上で、真空度、基板温度、成膜前の基板洗浄(ボンバードメント)条件、反応ガスのイオン化率、試料-ターゲット間の距離、試料の微粒子ショットブラストによる影響等を種々検討し、適正化する実験を詳細に行った。
すなわち、仕上げ焼鈍済みの膜なし鋼板(厚み:0.22mm)に、上記した条件を適宜に変化して種々の TiN膜を形成し、次いで得られた鋼板の片面の被膜を除去することで生じる鋼板の反り値から張力を求める一方、上述した(I)式で計算される被膜張力も、各鋼板毎に求めた。その結果を整理して図3に示すように、反り値から求めた被膜張力が、(I)式から算出した張力の 1.2倍以上、かつ6MPa 以上である場合に、顕著な鉄損の低下が認められ、さらに鋼板の剪断作業性の向上効果が認められた。
なお、かような条件を満足する被膜を得るには、ドライコーティングにおける、反応槽圧力の上昇、基板温度の上昇、基板洗浄の強化、基板に対するバイアス電圧の増加、反応ガスのイオン化処理、試料−ターゲット距離の減少、成膜前後の鋼板に対する微粒子ショットブラストなどの1または2以上の条件を適宜に調整すればよい。
次に、 CVD法によりTiC膜を生成する場合についても、検討を行った。すなわち、磁区細分化を施した0.18mm厚の方向性電磁鋼板に、1000℃においてTiCl4+CH4混合ガスを用いて片面当たり 0.5μm 厚の TiC膜を、鋼板の両面に被成した。かくして得られた被膜の上記(I)式から算出される張力は33MPa であった。これに対し、成膜時に張力印加(鋼板の圧延方向に機械的に引張った状態で成膜)を行うか、あるいは成膜後の冷却速度を増加して、同一膜厚において片面成膜時の鋼板反り量を増加する処理を行い、この反り量から求められる実際の張力を数段階に上昇した。
かくして得られた各鋼板の鉄損および剪断作業性について調査した結果を、図4に示す。同図に示すように、 CVD法によるTiC膜においても、反り値から求めた被膜張力が(I)式から算出した張力の 1.2倍以上になると、鉄損および剪断作業性の急激な改善が認められることがわかる。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明に従う張力被膜は、Goss方位の粒からなる方向性電磁鋼板に施すことにより効果を発現するため、方向性電磁鋼板が得られれば任意の製法を用いてよいが、一般には次の方法で製造される。
まず、公知の方向性電磁鋼成分に成るスラブを熱間圧延に供するが、ここでのスラブ加熱は、高温で行ってもよいが、概ね1280℃以下のスラブ加熱を用いる方法(インヒビターを用いない方法および途中窒化法を含む)が好適に適用される。その後、スラブは熱間圧延にて 1.8〜3.0mm厚程度の熱延板とする。その際、必要に応じて熱延板焼鈍を行うことができる。
次いで、冷間圧延を行うが、この際必要に応じて、中間焼鈍を挟んで冷間圧延を複数回に分けてもよい。また、パス間で 100〜300 ℃程度の保熱を行ったり, 100〜300 ℃程度の高温で冷間圧延を行うことも、磁気特性を発現するために有効である。その後、一次再結晶焼鈍を行う。なお、鋼板中に炭素が残存する際には脱炭焼鈍を兼ねてもよい。
ここで、磁区細分化のための溝形成を、最終冷間圧延から製品出荷までの任意の段階で行うことは、低鉄損化に有効であるので推奨される。また、磁区細分化は溝形成法に限らず歪付与法も有効である。
さらに、焼鈍分離剤塗布または塗布しないで2次再結晶焼鈍(仕上げ焼鈍)を行う。この2次再結晶焼鈍後にフォルステライト被膜を有する場合には、これを酸洗など公知の手法で除去する。
かくして得られた膜なしの方向性電磁鋼板の表裏面に、張力被膜を形成する。すなわち、例えば、 CVD法や PVD法のような蒸着法でセラミック被膜等を形成する。 CVD法としては、TiCl4 等の金属塩化物ガスと、もう一方の原料ガスとして、窒化物ならばN2 ,NH3 ,(CH3)3N ,(CH3)2NHガスなど、炭化物ならば CH4,CO,C2H4,C3H6,C3H8,C2H6,i-C5H12 などとを混合した雰囲気中で鋼板を加熱することによってセラミック被膜を得る。PVD 法としては、 HCD法やマグネトロンスパッタリング法、マルチアーク放電法が挙げられる。金属源は、蒸発用のターゲットより供給され、窒素や炭素は CVD法等と同様のガスを利用することが可能である。従来よく用いられる張力被膜処理液を塗布焼付する方法も利用可能だが、本発明で規定する6MPa 以上の被膜張力を得るためには、前記蒸着法を用いることが好ましい。
ここで、形成した張力被膜において、上記した(I)式から求まる計算張力の 1.2倍以上の張力を有することが肝要である。なぜなら、 1.2倍以上とすることにより顕著な鉄損の低減を得ることができ、金型の長寿命化(かえり高さ50mmとなるまでの繰り返し剪断回数の増加)や鋼板のクラック防止といった剪断作業性の急激な改善を得ることができる。さらに、被膜の反りから求めた張力が6MPa 未満では、張力を付与しても鉄損低減効果が小さいため、同張力の下限は6MPa に定める。
この条件に適合する張力被膜を付与する手段としては、鋼板と張力被膜との間の残留応力活用、鋼板と被膜が整合配向する際の格子ミスフィットの利用および成膜時の予張力など任意の手段を用いてよい。すなわち、鋼板と張力被膜との間の残留応力活用は、たとえば、成膜後の冷却速度を増加して、冷却歪に伴う応力を残留させる方法、また、格子ミスフィットの利用は、例えば地鉄の結晶に張力被膜の結晶が整合するように張力被膜を形成し、格子定数の違いにより生じる応力を活用する方法、さらに、成膜時の予張力は、たとえば、鋼板の圧延方向に機械的に引張応力を付加状態で成膜し、その後、引張応力を解放する方法、などが考えられる。
なお、従来材において剪断作業性が劣り、本発明材料で改善される原因は必ずしも明らかでないが、発明者らは以下のように考察している。すなわち、従来材においては、剪断時に硬質の被膜を剪断する際の衝撃が導入され鋼板のクラックにつながるものと考えられ、特に大きなヤング率を有する被膜材料を厚く形成した場合に顕著である。しかしながら、本発明に従って、反りから求まる実際の張力が計算で求まる張力の 1.2倍以上となる場合、すなわち張力被膜と鋼板との間に熱膨張起因以外の残留応力が効果的に導入されることによって、鋼板が多様な応力拘束を受ける結果、一様な衝撃の伝播を緩和する効果を生じたものと考えている。
張力被膜を形成した方向性電磁鋼板では、特にヤング率が200GPaを超える張力被膜を0.05 μm 以上の厚さで付与した際に、剪断作業性が顕著に劣化することから、本発明は、このような場合に、とりわけ有効である。
なお、張力被膜と地鉄との間に、密着性や耐食性を高める目的で、張力被膜の張力効果を実質的に妨げない中間層を配置してもよい。具体的には、外部酸化により作製した薄膜の酸化シリコン層や金属クロム層、離散的に存在するフォルステライト酸化物などが利用できる。
C:0.07mass%、Si:3.2 mass%、Mn:0.08 mass%、Al:0.025 mass%、N:0.008 mass%、Se:0.02 mass%およびSb:0.03 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1400℃に加熱後、熱間圧延によって2.5mm 厚の熱延コイルとした。次いで、1000℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、その後一回目の冷間圧延(1.5mm 厚までの圧延)、1100℃で1分間の中間焼鈍、そして二回目の冷間圧延(0.22mm厚までの圧延)を施して、製品板厚とした。
次いで、鋼板の表面にアルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向とほぼ直角な方向に幅 200μm および圧延方向の間隔4mmで線状に残存するように、塗布した後、 200℃で約20秒間焼き付けた。このときのレジスト厚は、2μm であった。このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、幅 200μm および深さ20μm の線状の溝を形成したのち、有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。このときの電解エッチングは、NaCl電解液中で、電流密度10A/dm2 および処理時間20秒間の条件で行った。
その後、 850℃の湿H2中で脱炭・一次再結晶焼鈍を行った後、鋼板表面に、塩化マグネシウム1mass%および塩化アンチモン1mass%を含み残部が MgOの焼鈍分離剤をスラリー塗布し、最終仕上げ焼鈍を施した。最終仕上げ焼鈍は、 850℃で15時間保持した後、1200℃に昇温して、乾H2 中で純化処理を行う方法を採った。かくして、表面のフォルステライト被膜が剥落した、膜なし電磁鋼板を作製した。
得られた膜なし電磁鋼板に対し、真空チャンバー内で HCD法により、窒化シリコン(Si3N4) を成膜した。窒化シリコンの成膜に際しては、圧延方向にエプスタインサイズ(280mm×30mm) の試験片を採取し、以下の条件で成膜することにより被膜内に熱膨張起因以外の張力因子となる残留応力を発生させた。
・ メインガスとして導入するAr流量:150cc/min
・ 反応ガスとして導入するN2流量:30cc/min(一定)
・ 膜厚が0.5μmになるように成膜時間を調整。
・ ターゲットに対する試料基板へのバイアス電圧印加:−40V
・ 反応ガスの窒素をマグネトロンスパッタリング法でイオン化処理
・ 成膜前に微粒子によるショットブラストを実施
・ 試料(鋼板)−ターゲット距離:400mm
窒化珪素を成膜した後、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムからなる絶縁被膜を2μm 厚で塗布して 800℃で焼き付けた。さらに、 800℃で3時間、窒素雰囲気中で歪取り焼鈍を施した後、磁気特性と剪断性の評価を行った。常温(20℃)において、片面のみ成膜した際の 280mm長さ、30mm幅の試片3枚の反り量から図1に従って求められる張力の平均値は 11.4MPaであり、上記式(I)から求められる張力3.8MPaの 3.0倍であった。磁気特性は鉄損値W17/50が0.55W/kgであり、刃かえり高さが50μmに達するまでの剪断繰り返し数は8800回であった。
また、比較として、イオン化処理を実施しない、ショットブラストを行わない、そしてバイアス電圧を印加しない、こと以外は全て上記の実施例と同一条件で、張力被膜を形成したところ、得られた被膜の、反り量から図1に従って求められる張力は4.2MPaであり、鋼板の鉄損値W17/50は0.63W/kgおよび刃かえり高さが50μm に達するまでの剪断繰り返し数は2300回であった。
C:0.01mass%、Si:3.3 mass%、Mn:0.10 mass%、Al:0.003 mass%、N:0.004 mass%およびSn:0.12 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1080℃に加熱後、熱間圧延によって2.0mm 厚の熱延コイルとした。次いで、1000℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、0.18mm厚まで冷間圧延して製品板厚とした。
次いで、鋼板の表面にアルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向とほぼ直角な方向に幅 200μm および圧延方向の間隔4mmで線状に残存するように、塗布した後、 200℃で約20秒間焼き付けた。このときのレジスト厚は、2μm であった。このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、幅 200μm および深さ20μm の線状の溝を形成したのち、有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。このときの電解エッチングは、NaCl電解液中で、電流密度10A/dm2および処理時間20秒間の条件で行った。
その後、 825℃の窒素中で一次再結晶焼鈍を行った後、鋼板表面に、Al2O3 を主成分とする焼鈍分離剤をスラリー塗布し、最終仕上げ焼鈍を施した。最終仕上げ焼鈍は、 850℃で15時間保持した後、1200℃に昇温して、乾H2 中で純化処理を行う方法を採った。かくして、鏡面状外観の電磁鋼板を作製した。
かくして得られた膜なし電磁鋼板に対し、 CVD法により窒化チタンを成膜した。窒化チタンの成膜に際しては、圧延方向にエプスタインサイズ(280mm×30mm)の試験片を採取し、TiCl4:1.0mass%+HCl:0.2mass%+N2 :35mass%+残余H2 の雰囲気中で成膜を行った。なお、成膜圧力:1気圧および成膜温度:1000℃である。
この際、試料には圧延方向に2MPa の引っ張り応力を印可しつつ片面あたり 0.3μm 厚の成膜を行ったのち、 900℃から 400℃まで液体窒素ミスト吹きつけで 2.2秒で急冷した。
常温(20℃)において、片面のみ成膜した際の 280mm長さ、30mm幅の試片3枚の反り量から図1に従って求められる張力の平均値は6.9MPaであり、上記式(I)から求められる張力4.6MPaの 1.5倍であった。磁気特性は鉄損値W17/50 が0.45W/kgであり、刃かえり高さが50μm に達するまでの剪断繰り返し数は 12000回であった。
また、比較として、張力印加および急冷を行わないこと以外は全て上記の実施例と同一条件で、張力被膜を形成したところ、得られた被膜の、反り量から図1に従って求められる張力は11.2MPa であり、鋼板の鉄損値W17/50 は0.63W/kgおよび刃かえり高さが50μm に達するまでの剪断繰り返し数は2300回であった。
鋼板反り量から被膜張力を求める要領を説明する図である。 被膜物質のヤング率と熱膨張係数を示す図である。 被膜の張力と鉄損および剪断作業性との関係を示す図である。 被膜の張力と鉄損および剪断作業性との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. フォルステライト被膜のない方向性電磁鋼板の表裏面に張力被膜を形成した電磁鋼板であって、片面の被膜を除去することで生じる鋼板の反り値から求めた圧延方向における張力被膜の張力が、下記(I)式に従って算出される張力の 1.2倍以上、かつ6MPa 以上であることを特徴とする剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板。

    Figure 2005264233
  2. 前記張力被膜の上に絶縁被膜を有することを特徴とする請求項1に記載の剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板。
JP2004078542A 2004-03-18 2004-03-18 剪断作業性に優れた低鉄損方向性電磁鋼板 Pending JP2005264233A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010249616A (ja) * 2009-04-14 2010-11-04 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の被膜張力の間接測定方法

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