JP2005261337A - 微生物の高感度検出法、微生物検出のための発光測定用試薬キット及びシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】微生物に対する検出限界が高く、多数検体の迅速な測定に適しており、広いpH領域での測定が可能な微生物の検出方法、発光測定用試薬キット及びシステムを提供する。
【解決手段】培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光試薬と反応させて定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法。前記反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行う。酸化型キノン、化学発光試薬、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物の少なくとも1種、を含む微生物検出のための発光測定用試薬キット。このキット及び微生物溶液の濃縮器具を含む、微生物検出のための発光測定用システム。
【選択図】なし
【解決手段】培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光試薬と反応させて定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法。前記反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行う。酸化型キノン、化学発光試薬、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物の少なくとも1種、を含む微生物検出のための発光測定用試薬キット。このキット及び微生物溶液の濃縮器具を含む、微生物検出のための発光測定用システム。
【選択図】なし
Description
本発明は、微生物の高感度検出法、微生物検出のための発光測定用試薬キット及びシステムに関する。
日常行われている微生物検査は、寒天培地に微生物を含む培養液あるいは抽出物を混合し、これを培養器でコロニーが目視観察されるまで培養する方法である。この方法は精度の高い方法と考えられてきたが、最近では、生きているが培養不可の微生物の存在が知られるようになったので、新たな生存微生物の計測方法が必要になってきた。
培養方法に頼らないで、生存微生物を測定する方法として酵素活性や細胞のATPを測定する方法がある。ATP法は細胞内のアデノシン三リン酸(ATP)の濃度をD−ルシフェリンとルシフェラーゼを用いた生物化学発光で測定し、微量の微生物の濃度を知る方法である。しかし、操作方法の違いによって微生物の生死の判別ができない結果をもたらすことがある。その原因として、死んだ微生物にもATPが含まれていることがあり、また微生物以外のATPが実験操作時に混入することが指摘され続けてきた。特に、微生物以外のATPの除去が最大の問題で、微生物の体外に存在するATPの除去法として、ATP分解酵素による処理がある。しかし、この操作を行っても数百個程度の微生物に匹敵するATPが残存する。そのため、微生物の検出感度をこれ以上に上げることはできなかった。
特開平1-169499号公報には、生細胞にキノンを加えたとき生成する過酸化水素量を化学発光を利用して測定する方法が開示されている。しかし、この方法では、過酸化水素のみの定量のため、O2-が主たる生成物である場合この方法では正確な測定はできなかった。
特許2883149号公報には、生細胞又は生組織を単なる薬品の添加だけで持続的に発光させて、生細胞に関する定量的測定を非破壊的に迅速に実施するための方法として、メナジオンと鉄キレート剤を使用して生細胞数を測定する方法が開示されている。この方法は、アルカリ条件下でメナジオンとルミノールと鉄キレート剤を同時に添加して、個々の持続的な発光を数分間測定する方法である。そのため、多数の検体を迅速に測定できず、アルカリ溶液で活性を維持できない微生物やメナジオンとの反応性の低い微生物にも不適であった。
特開2001−120299号公報には、培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光法で定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法が開示されている。この方法は、多様多種の微生物の増殖や活性を調べるためには、多様な培養液の使用が可能で、かつ微生物のカタラーゼやその他の酵素で測定が妨害されず、酸素の有無にも影響されない方法である。
特開平1−160499号公報
特許2883149号公報
特開2001−120299号公報
今日、多種多様な食品が生産され、これらの食品衛生を管理するために、製造現場で迅速簡便に微生物検査ができる方法が要求されるようになった。これに対応するために、ATP法はいろいろ工夫されてきたが、コスト面・技術面でユーザーに安易に使用できるまでには至っていない。さらに、特許文献1〜3に記載の方法はいずれも、上記食品衛生を管理するために製造現場で行われる微生物の迅速簡便検査としては、検出限界が依然として高いという問題があった。
むしろ生菌死菌の判別とは関係のない、食材由来のATPを計測することで製造現場の洗浄度をチェックするキットが販売されている。しかし、このキットでは、食材由来のATPを計測しているに過ぎず、生存微生物の検定はなされていない。
そこで本発明の目的は、微生物に対する検出限界が、従来の方法よりも高く、かつ従来法と同様またはそれ以上に多数検体の迅速な測定に適しており、かつ広いpH領域での測定が可能な微生物の検出方法を提供することにある。
さらに本発明は、そのような方法に用いるための微生物検出のための発光測定用試薬キット及びシステムを提供することにある。
さらに本発明は、そのような方法に用いるための微生物検出のための発光測定用試薬キット及びシステムを提供することにある。
本発明者は、微生物の最適なpHの条件で適正なキノンを作用させ、そこで発生する活性酸素を瞬時に効率良く高感度で定量できるようにするため、特定の金属触媒を使用することで上記目的を達成することを見出して本発明を完成させた。
上記課題を解決するための本発明は以下の通りである。
[請求項1]培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光試薬と反応させて定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法であって、前記反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行うことを特徴とする前記方法。
[請求項2]前記金属イオンにキレート剤を併用する請求項1に記載の方法。
[請求項3] 前記生成物が還元型キノン及び/又はスーパオキシドアニオン(活性酸素)である請求項1または2に記載の方法。
[請求項4]前記化学発光試薬がルミノールまたはその誘導体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項5]前記酸化型キノンがメナジオンまたはコエンザイムQ1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]前記金属イオンの濃度が1〜100μMの範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項7]前記酸化型キノンとともにインキュベーションされる微生物が、微生物を培養し、これを遠心分離して沈殿した微生物を回収して得られたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項8]前記酸化型キノンとともにインキュベーションされる微生物が、微生物を培養し、これを脱水処理して菌液を濃縮して得られたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項9]培養した微生物が生きている微生物である請求項7または8に記載の方法。
[請求項10]酸化型キノン、化学発光試薬、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物の少なくとも1種、を含む微生物検出のための発光測定用試薬キット。
[請求項11]キレート剤をさらに含む請求項10に記載のキット。
[請求項12]請求項10または11に記載のキット及び微生物溶液の濃縮器具を含む、微生物検出のための発光測定用システム。
[請求項13]蛍光発光測定装置をさらに含む請求項12に記載のシステム。
[請求項1]培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光試薬と反応させて定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法であって、前記反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行うことを特徴とする前記方法。
[請求項2]前記金属イオンにキレート剤を併用する請求項1に記載の方法。
[請求項3] 前記生成物が還元型キノン及び/又はスーパオキシドアニオン(活性酸素)である請求項1または2に記載の方法。
[請求項4]前記化学発光試薬がルミノールまたはその誘導体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項5]前記酸化型キノンがメナジオンまたはコエンザイムQ1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]前記金属イオンの濃度が1〜100μMの範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項7]前記酸化型キノンとともにインキュベーションされる微生物が、微生物を培養し、これを遠心分離して沈殿した微生物を回収して得られたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項8]前記酸化型キノンとともにインキュベーションされる微生物が、微生物を培養し、これを脱水処理して菌液を濃縮して得られたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項9]培養した微生物が生きている微生物である請求項7または8に記載の方法。
[請求項10]酸化型キノン、化学発光試薬、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物の少なくとも1種、を含む微生物検出のための発光測定用試薬キット。
[請求項11]キレート剤をさらに含む請求項10に記載のキット。
[請求項12]請求項10または11に記載のキット及び微生物溶液の濃縮器具を含む、微生物検出のための発光測定用システム。
[請求項13]蛍光発光測定装置をさらに含む請求項12に記載のシステム。
本発明の方法、キット及びシステムによれば、ATP測定方法に匹敵する感度を持ち、かつ生きた微生物を直接、迅速・簡便に測定することができる。特に、本発明の方法、キット及びシステムによれば、食品製造現場の微生物汚染の検査だけでなく、商品の無菌試験も簡便迅速に行える。
本発明の方法は、培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光試薬と反応させて定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法である。
本発明の方法において測定対象である微生物には特に制限はないが、例えば、腸内細菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌、溶血連鎖球菌、腸球菌、バシラス、バクテロイデス、クロストリジウム等を挙げることができる。
微生物の細胞膜には呼吸鎖が存在し、グルコースやアルコールを酸化して、生命維持のエネルギーを確保している。呼吸鎖にはチトクロム成分をはじめ数多くの電子伝達機能をもつタンパク質が存在している。また、グラム陰性菌のペリプラズムや細胞質もキノン還元酵素が存在している。従って、キノンを細胞外から添加してやると、微生物によって酸化型キノンは還元され、還元生成物は更に培養液中の溶存酸素と反応して、不安定なスーパーオキシドアニオンが発生すると推測される。また、溶存酸素がなければキノンの還元体が培養液中にそのまま存在しつづけると推測される。即ち、前記微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションして得られる生成物は、還元型キノン及び/又はスーパオキシドアニオン(活性酸素)であると推測される。
本発明の方法では、グラム陰性菌やグラム陽性菌のような細菌に、メナジオン等の酸化型キノンを添加し、インキュベーションすると、好気性条件下では、スーパオキシドアニオン(O2 -)が培養液中に発生する。そして、スーパーオキシドアニオンを化学発光法により定量することで、細菌の増殖や活性を測定することができる。具体的には、ルミノールまたはその誘導体等発光試薬を用いた化学発光反応の発光強度から細菌の増殖や活性を定量することができる。ルミノールの誘導体としては、例えば、イソルミノールや8-Amino-5-chloro-7-phenylpyriod[3,4-d]pyridazine-1,4-(2H,3H)dione Sodium Salt等を挙げることができる。
さらに本発明の方法は、前記生成物と化学発光試薬との反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行う。前記金属イオンの濃度は、高い感度で測定するという観点から、1〜100μMの範囲であることが適当であり、5〜50μMの範囲であることが好ましい。
モリブデンイオンの供給源となる化合物は、例えば、Na2MoO4・2H2O、MoF6、MoO3、MoS3・2H2Oであることができる。
マンガンイオンの供給源となる化合物は、例えば、MnCl2・4H2O、(CH3COO)2Mn・4H2O、Mn(NO3)2・6H2O、MnSO4・5H2Oであることができる。
ニッケルイオンの供給源となる化合物は、例えば、NiCl2・6H2O、NiCO3、(HCOO)2Ni・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Ni(SO4)2・6H2Oであることができる。
コバルトイオンの供給源となる化合物は、例えば、CoCl2・6H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2O、Co3(PO4)2・8H2Oであることができる。
モリブデンイオンの供給源となる化合物は、例えば、Na2MoO4・2H2O、MoF6、MoO3、MoS3・2H2Oであることができる。
マンガンイオンの供給源となる化合物は、例えば、MnCl2・4H2O、(CH3COO)2Mn・4H2O、Mn(NO3)2・6H2O、MnSO4・5H2Oであることができる。
ニッケルイオンの供給源となる化合物は、例えば、NiCl2・6H2O、NiCO3、(HCOO)2Ni・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Ni(SO4)2・6H2Oであることができる。
コバルトイオンの供給源となる化合物は、例えば、CoCl2・6H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2O、Co3(PO4)2・8H2Oであることができる。
さらにこの反応は、好ましくは、キレート剤を併用する。キレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)、EDDP、Bicine、DPTA、EDDP、DTPA、EGTA、Methyl-EDTA、NTA、NTP、NTPOを挙げることができる。
金属イオンとキレート剤の選択とそれら濃度は、検体の種類に応じて適宜行うことが望ましい。キレート剤の濃度は、例えば、金属塩濃度の10倍とすることができる。
本発明の方法では、生きた微生物とキノンが反応して生じる活性酸素を効率良く化学発光で検出できるように、化学発光試薬との反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行う。より具体的には、キノン含有溶液に上記金属イオンの供給源となる化合物を含有させることができる。さらにこのキノン含有溶液には、前記キレート剤も含有させることができる。
本発明では、上記特定の金属イオンを触媒として用いることで、バックグランドの値が低下し、微弱な発光強度の変化を追跡することが可能となった。これまでは触媒として、ペルオキシダーゼが使用されていたが、バックグランドの値が高いため、上記の検出感度よりも10倍以上の微生物濃度が検出限界値であった。また、特許2883149号公報には、メナジオンと鉄キレート剤を使用して生細胞数を測定する方法が開示されているが、本発明の方法は、鉄キレート剤を使用する方法より、さらに検出限界値を低くすることができる。この点は、実施例において示す。
前記酸化型キノンとしては、例えば、メナジオンまたはコエンザイムQ1を用いることができる。メナジオンはほとんどの細胞(動物細胞・植物・酵母・細菌)と反応して、効果的に活性酸素の生成をもたらす。しかし、脂肪成分の多い細胞の場合は、コエンザイムQ1を使用する方が望ましい。例えば、結核菌のような脂肪含有量の多い菌とコエンザイムQ1を反応させると、メナジオンよりも効率よく活性酸素の生成を促し、測定感度の向上ができる。
本発明の方法は、具体的には、例えば、検体液(例えば、微生物が存在するであろう液体)50μlに、キノン含有液(酸化型キノン及びモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する)50μlを混ぜて10分間所定の温度でインキュベーションし、さらに化学発光試薬100μlを混ぜて、数秒間の発光強度を測定することで、微生物の増殖及び/又は活性を測定することができる。このように、本発明の方法は、簡便迅速な方法である。本発明の方法で検出可能な生存微生物の数は、細菌の場合、数百CFU(コロニー形成単位)/50μlであり、酵母の場合は、数十CFU/50μlである。この操作には、例えば、96穴等のプレートを使用することができ、そのため、一度に多種類の検体を測定することができる。
発光強度の測定は、市販のチューブタイプとマイクロプレートタイプのルミノメーターを用いて行うことができ、96穴等のプレートを使用する場合は、発光強度の測定に、マイクロプレートタイプのルミノメーターを使用することができる。
本発明の方法では、検体液(例えば、微生物が存在する液体)は、生きている微生物を培養し、これを遠心分離して沈殿した微生物を回収して得られたものであることができる。あるいは、検体液(例えば、微生物が存在する液体)は、生きている微生物を培養し、これを脱水処理して菌液を濃縮して得られたものであることもできる。このように濃縮した微生物含有検体液を用いることで、検出感度を高めることができる。
具体的には、前記の方法のように10分間のキノンとの反応で検出できない低濃度の微生物は、上記のように、更に培養して濃度を濃くするか、遠心分離や脱水処理(またはその併用)で培地中の微生物濃度を高めることで、検出感度を高めることができる。前者は遠心分離器が必要であるが、例えば、4000gで5分間の遠心分離で操作が終わり簡便である。後者は30分程度の吸水時間が必要であるが、ディスポタイプの吸水剤を使用することができ、遠心分離器も不要であることから簡便である。培養とこれらの濃縮操作を組み合わせることで更なる感度向上が可能となる。
例えば、大腸菌は食品の汚染指標菌に指定されており、大腸菌陰性でなければならない食品が多々ある。さらに大腸菌も含めて他の菌の無菌試験ができれば、食品の安全性が確認できることになる。本発明の化学発光法では、培養と濃縮操作を組み合わせることで、約4、5時間で無菌試験が完了することができる。従来の寒天培地による無菌試験は2日要し、ATP測定法では、培養条件が異なるが数時間の培養後にATPが定量される。
本発明は、酸化型キノン、化学発光試薬、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物の少なくとも1種を含む微生物検出のための発光測定用試薬キットを包含する。酸化型キノン、化学発光試薬、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物は、いずれも本発明の方法で説明したものを用いることができる。本発明のキットは、上記に加えて、キレート剤をさらに含むことができる。キレート剤は、本発明の方法で説明したものを用いることができる。この本発明のキットは、上記本発明の方法に利用することができる。
化学発光試薬は粉末であるが、これをアルカリ緩衝液に溶解し、測定時に使用する。長期の冷蔵保存が可能であり、発光試薬の性能も安定である。
酸化型キノンは粉末であるが、これをエタノールに溶解し保存する。測定時は金属塩とキレート剤を含む緩衝液と混合し使用する。
酸化型キノンは粉末であるが、これをエタノールに溶解し保存する。測定時は金属塩とキレート剤を含む緩衝液と混合し使用する。
これらの使用例として、まず、96穴のプレートの各穴に菌液50μlを入れ、次に酸化型キノン・金属塩・キレート剤の混合緩衝液50μlを入れて10分間所定の温度でインキュベーションする。その後、100μlの発光試薬を入れて即発光強度を測定する。
本発明は、さらに、上記本発明のキットに、微生物溶液の濃縮器具を含む、微生物検出のための発光測定用システムを包含する。微生物溶液の濃縮器具とは、遠心分離器または吸水剤(例えば、ディスポタイプであることが好ましい。)であることができる。吸水剤は、具体的には、例えば、アトー株式会社販売の「みずぶとりくん」AB-1100研究用生体溶液試料濃縮剤がある。
本発明の発光測定用システムは、蛍光発光測定装置をさらに含むことができる。
以上のような、本発明の発光測定試薬キットと濃縮操作器具を組み合わせたシステムでは、簡便な操作で微生物検定が可能であり、食品製造現場の微生物汚染の検査だけでなく、商品の無菌試験も簡便迅速に行える。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
(各種金属の触媒効果の比較)
大腸菌(Escherichia coli ATCC25922)をカチオン調整ミューラヒントン培地で、一夜前培養した後、これを同培地で希釈し、化学発光法で検出限界値をもとめた。希釈液中の生菌数はTSA培地で一夜培養し、コロニー数からCFU/mlをもとめた。化学発光法の操作は下記のようにして行った。
(1)50μlの希釈菌液と50μlのメナジオン(10mg/l)/金属(2〜200μM/EDTA(20〜2000μM)混合液を混ぜる。
(2)10分間37℃で放置する。
(3)100μlのルミノール試薬をインジェクションする。
(4)インジェクショク直後の2〜5秒間の発光強度を測定する。
実施例1
(各種金属の触媒効果の比較)
大腸菌(Escherichia coli ATCC25922)をカチオン調整ミューラヒントン培地で、一夜前培養した後、これを同培地で希釈し、化学発光法で検出限界値をもとめた。希釈液中の生菌数はTSA培地で一夜培養し、コロニー数からCFU/mlをもとめた。化学発光法の操作は下記のようにして行った。
(1)50μlの希釈菌液と50μlのメナジオン(10mg/l)/金属(2〜200μM/EDTA(20〜2000μM)混合液を混ぜる。
(2)10分間37℃で放置する。
(3)100μlのルミノール試薬をインジェクションする。
(4)インジェクショク直後の2〜5秒間の発光強度を測定する。
表1の結果は、触媒として用いる金属の一部の効果にすぎないが、金属無添加に比べて検出感度が向上するのは、20μMで添加した時であり、約30倍の感度が向上した。このように表中の金属は触媒効果を有することが分かる。さらに、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトは、鉄に比べて感度が高いことも分かる。
実施例2
(大腸菌の標準曲線の作成)
ミューラヒントン培地で一夜培養した大腸菌を希釈し、これを実施例1の化学発光法で定量した。今回の使用した金属とキレート剤は20μMのNa2MoO4・2H2Oと200μMのEDTAであった。図1のように、約200CFU/50μl(4,000CFU/ml)から106CFU/50μl(2×107CFU/ml)まで、10分間の測定で定量できた。
(大腸菌の標準曲線の作成)
ミューラヒントン培地で一夜培養した大腸菌を希釈し、これを実施例1の化学発光法で定量した。今回の使用した金属とキレート剤は20μMのNa2MoO4・2H2Oと200μMのEDTAであった。図1のように、約200CFU/50μl(4,000CFU/ml)から106CFU/50μl(2×107CFU/ml)まで、10分間の測定で定量できた。
実施例3
(大腸菌の検出時間の短縮)
実施例2の化学発光法で1夜培養後の大腸菌検出時間の短縮を試みた。
バックグランドの発光強度の1.5倍以上に達した時の培養時間と初発菌数の関係を示したのが図2である。図中の×1は遠心分離操作による菌の濃縮をしない場合、×10は遠心分離操作(4000gで5分間)で菌液を10倍濃縮した場合、×100は同様に100倍濃縮した場合を指している。増菌培養なしの場合は数万CFU/mlつまり千前後のCFU/50μlが即時検出され、100倍濃縮で数百CFU/mlが検出された。
増菌培養すると、初発菌数が数CFU/mlの場合6時間後に検出され、100倍濃縮操作で4時間後に検出された。
(大腸菌の検出時間の短縮)
実施例2の化学発光法で1夜培養後の大腸菌検出時間の短縮を試みた。
バックグランドの発光強度の1.5倍以上に達した時の培養時間と初発菌数の関係を示したのが図2である。図中の×1は遠心分離操作による菌の濃縮をしない場合、×10は遠心分離操作(4000gで5分間)で菌液を10倍濃縮した場合、×100は同様に100倍濃縮した場合を指している。増菌培養なしの場合は数万CFU/mlつまり千前後のCFU/50μlが即時検出され、100倍濃縮で数百CFU/mlが検出された。
増菌培養すると、初発菌数が数CFU/mlの場合6時間後に検出され、100倍濃縮操作で4時間後に検出された。
実施例4
(牛結核菌の標準曲線の作成)
結核菌は脂肪成分が豊富であり、メナジオンでは定量ができなかった。
そこで実施例2の方法で、培地をミドルブルック7H9とし、メナジオンの代わりに300μMのコエンザイムQ1を用いることで図3に示すように、牛結核菌が100CFU/50μl菌液つまり2000CFU/ml菌液まで検出可能であることが分かった。牛結核菌のCFUはミドルブルック7H9の寒天培地で3週間培養後に測定した。このように従来の寒天培地で計測するよりも、極めて速く化学発光で結核菌を定量できることが分かった。
(牛結核菌の標準曲線の作成)
結核菌は脂肪成分が豊富であり、メナジオンでは定量ができなかった。
そこで実施例2の方法で、培地をミドルブルック7H9とし、メナジオンの代わりに300μMのコエンザイムQ1を用いることで図3に示すように、牛結核菌が100CFU/50μl菌液つまり2000CFU/ml菌液まで検出可能であることが分かった。牛結核菌のCFUはミドルブルック7H9の寒天培地で3週間培養後に測定した。このように従来の寒天培地で計測するよりも、極めて速く化学発光で結核菌を定量できることが分かった。
本発明の方法は、食品衛生を管理するために、製造現場での微生物検査に利用可能である。
Claims (13)
- 培養液中で微生物を酸化型キノンとともにインキュベーションし、生成物を化学発光試薬と反応させて定量することを特徴とする微生物の増殖及び/又は活性の測定方法であって、前記反応をモリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下で行うことを特徴とする前記方法。
- 前記金属イオンにキレート剤を併用する請求項1に記載の方法。
- 前記生成物が還元型キノン及び/又はスーパオキシドアニオン(活性酸素)である請求項1または2に記載の方法。
- 前記化学発光試薬がルミノールまたはその誘導体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酸化型キノンがメナジオンまたはコエンザイムQ1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記金属イオンの濃度が1〜100μMの範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酸化型キノンとともにインキュベーションされる微生物が、微生物を培養し、これを遠心分離して沈殿した微生物を回収して得られたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酸化型キノンとともにインキュベーションされる微生物が、微生物を培養し、これを脱水処理して菌液を濃縮して得られたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 培養した微生物が生きている微生物である請求項7または8に記載の方法。
- 酸化型キノン、
化学発光試薬、
モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトから成る群から選ばれる金属イオンの供給源となる化合物の少なくとも1種、
を含む微生物検出のための発光測定用試薬キット。 - キレート剤をさらに含む請求項10に記載のキット。
- 請求項10または11に記載のキット及び微生物溶液の濃縮器具を含む、微生物検出のための発光測定用システム。
- 蛍光発光測定装置をさらに含む請求項12に記載のシステム。
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