JP2005240785A - 浮体式風力発電装置の設計方法及び浮体式風力発電装置の設計用プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】浮体式風力発電装置の設計において、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響を精度よく見積もること。
【解決手段】浮体式風力発電装置を設計するにあたり、波浪条件と風条件との組合せを設定し(ステップS301)、ある前記組合せにおける、波浪荷重による波浪応力スペクトルを求める(ステップS303)とともに、風荷重による風応力スペクトルを求める(ステップS305)。次に、前記波浪応力スペクトルと前記風応力スペクトルとを加算して、合算応力スペクトルを求め(ステップS306)、この合算応力スペクトルから、応力振幅の確率密度分布を求める(ステップS307)。そして、応力振幅の確率密度分布から、すべての前記組合せにおける疲労被害度を求め(ステップS310)、前記組合せの発生頻度を考慮して、それぞれの前記組合せにおける疲労被害度の総和を求めて(ステップS311)、疲労被害度を評価する。
【選択図】 図11
【解決手段】浮体式風力発電装置を設計するにあたり、波浪条件と風条件との組合せを設定し(ステップS301)、ある前記組合せにおける、波浪荷重による波浪応力スペクトルを求める(ステップS303)とともに、風荷重による風応力スペクトルを求める(ステップS305)。次に、前記波浪応力スペクトルと前記風応力スペクトルとを加算して、合算応力スペクトルを求め(ステップS306)、この合算応力スペクトルから、応力振幅の確率密度分布を求める(ステップS307)。そして、応力振幅の確率密度分布から、すべての前記組合せにおける疲労被害度を求め(ステップS310)、前記組合せの発生頻度を考慮して、それぞれの前記組合せにおける疲労被害度の総和を求めて(ステップS311)、疲労被害度を評価する。
【選択図】 図11
Description
本発明は、浮体式の風力発電装置に関し、さらに詳しくは、浮体式風力発電装置の疲労強度の設計に関する。
風により回転する風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電は、石油、石炭その他の燃料を必要としない発電方法として近年注目を集めている。風力発電には、安定した風が必要になるため、陸上において風力発電装置を設置する場所は限られる。一方、湖上や海上においては、風力発電に適した安定した風が得られる場所が多いため、水上に風力発電装置を設置する試みが検討されている。
水上に風力発電装置を設置する場合、水深が浅い場合には水底に基礎を建設し、その基礎に風力発電装置を建設する。しかし、例えば沖合の海洋上のように、水深が深い場所では、風力発電装置を設置するための基礎建設が困難であり、建設費用も上昇するため、このような方式の風力発電装置は現実的ではない。このため、浮力を持った構造物上へ風力発電装置を設置する、浮体式風力発電装置が検討されており、例えば特許文献1や特許文献2には、浮体式風力発電装置の例が開示されている。
ところで、浮体式風力発電装置には、設置後、風による荷重と波浪による荷重とが繰り返して作用する。このため、浮体式風力発電装置の設計においては、前記繰り返し荷重を考慮して疲労強度を設計する必要がある。しかし、上記特許文献1、2には、この点については言及されていない。そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響を精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる浮体式風力発電装置の設計方法及び浮体式風力発電装置の設計プログラムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、浮体式風力発電装置を設計するにあたり、複数の波浪条件の下で、波浪による応力の統計値から波浪による疲労被害度を求めるとともに、複数の風条件の下で、風による応力の時系列から風による疲労被害度を求める手順と、各波浪条件の発生頻度を考慮して、各波浪条件における波浪による疲労被害度をすべて加算した総合波浪疲労被害度を求めるとともに、各風条件の発生頻度を考慮して、各風条件における風による疲労被害度をすべて加算した総合風疲労被害度を求める手順と、前記総合波浪疲労被害度と、前記総合風疲労被害度とを合算した合算疲労被害度を求める手順と、を含むことを特徴とする。
この浮体式風力発電装置の設計方法は、波浪による応力の統計値から応力振幅の確率分布を求め、この応力振幅の確率密度分布から波浪による疲労被害度を求めるとともに、風による応力の時系列から風による疲労被害度を求める。そして、想定したすべての海象及び風条件における波浪による疲労被害度と風による疲労被害度とを合算した合算疲労被害度により浮体式風力発電装置の疲労被害度を求め、設計に反映させる。これにより、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響を精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる。また、風による疲労被害度と波浪による疲労被害度とをそれぞれ別個に求めて合算するので、計算を容易にできる。
次の本発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、浮体式風力発電装置を設計するにあたり、波浪条件と風条件との組合せを設定する手順と、ある前記組合せにおける、波浪荷重による波浪応力スペクトルを求めるとともに、風荷重による風応力スペクトルを求める手順と、前記波浪応力スペクトルと前記風応力スペクトルとを加算して、合算応力スペクトルを求める手順と、前記合算応力スペクトルから、応力振幅の確率密度分布を求める手順と、前記応力振幅の確率密度分布から、すべての前記組合せにおける疲労被害度を求める手順と、前記組合せの発生頻度を考慮して、それぞれの前記組合せにおける疲労被害度の総和を求める手順と、を含むことを特徴とする。
この浮体式風力発電装置の設計方法は、波浪荷重による応力スペクトルと、風荷重による応力スペクトルとを合算し、この応力スペクトルの合算値を用いて浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度を予測する。これにより、風と波浪との相互作用も十分に考慮できるので、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる。
次の本発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、浮体式風力発電装置を設計するにあたり、波浪による荷重に基づいて応力変化の時系列を求めるとともに、風による荷重に基づいて応力変化の時系列を求める手順と、前記波浪荷重による応力変化の時系列と前記風荷重による応力変化の時系列とを加算した合算応力時系列を求める手順と、前記合算応力時系から、応力振幅の確率密度分布を求める手順と、前記応力振幅の確率密度分布から疲労被害度を求める手順と、波浪条件と風条件との発生頻度に応じて各条件における疲労被害度の総和を求める手順と、を含むことを特徴とする。
この浮体式風力発電装置の設計方法は、波浪荷重による応力変化の時系列と、風荷重による応力変化の時系列とを合算し、この応力変化の時系列の合算値を用いて浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度を予測する。これにより、風と波浪との相互作用を十分に考慮しつつ、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる。
次の本発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、上記浮体式風力発電装置の設計方法において、さらに、前記浮体式風力発電装置が受ける風と、波浪による前記浮体式風力発電装置の揺動による動きとの速度差を算出することにより相対風速を求め、この相対風速用いて、風による荷重を求めることを特徴とする。
この浮体式風力発電装置の設計方法は、前記浮体式風力発電装置の設計方法と同様の構成を備えるので、前記浮体式風力発電装置の設計方法と同様の作用、効果を奏する。さらに、この浮体式風力発電装置の設計方法では、浮体式風力発電装置の受ける風の速度が、波浪による浮体式風力発電装置の揺動で相対的に変化する影響を考慮する。これにより、波浪と風との相互作用をさらに考慮できるので、より実際の稼動条件に近い状態における評価が可能となる。これにより、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる。
次の本発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、浮体式風力発電装置を設計するにあたり、風による荷重を求める際には、前記浮体式風力発電装置が受ける風と、波浪による前記浮体式風力発電装置の揺動による動きとの速度差を算出することにより求めた相対風速を用いることを特徴とする。
この浮体式風力発電装置の設計方法では、浮体式風力発電装置の受ける風の速度が、波浪による浮体式風力発電装置の揺動で相対的に変化する影響を考慮する。これにより、波浪と風との相互作用をさらに考慮できるので、より実際の稼動条件に近い状態における評価が可能となる。これにより、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく見Tもって、疲労強度設計に反映させることできる。
次の本発明に係る浮体式風力発電装置の設計用プログラムは、前記いずれか1つの浮体式風力発電装置の設計方法を、コンピュータに実行させることを特徴とする。これにより、前述の浮体式風力発電装置の設計方法が、コンピュータを利用して実現できる。
この発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法及び浮体式風力発電装置の設計プログラムでは、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響を精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできるという効果を奏する。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
本発明の具体的な実施例を説明する前に、浮体式風力発電装置の概略を説明する。図1は、浮体式風力発電装置の一例を示す全体図である。図1に示す浮体式風力発電装置10aは、浮体1の上に風力発電装置2を設置して構成される。風力発電装置2は、羽根3とハブ4とで構成される風車を備えており、発電機7をこの風車によって駆動して、風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機7は、タワー5の頂部に取り付けられており、風車の回転面が常に風上に向くように、発電機7の角度が調整できるようになっている。また、風車の羽根3のピッチは変化させることができるように構成されている。風力発電装置2のタワー5の付け根部は、浮体1上に固定されており、これにより、風力発電装置2は浮体1上に設置される。
この浮体式風力発電装置10aが備える浮体1は、3個の中空四角柱状構造体を組み合わせて構成されている。この浮体1をタワー5の長手方向と平行な方向から見た場合、浮体1の形状は三角形状になるように中空四角柱状構造体が組み合わされる。風力発電装置2のタワー5は、三角形状をした浮体1を構成する中空四角柱状構造体の交差部分に取り付けられている。浮体1は、浮体式風力発電装置10aの総重量よりも大きい浮力を発生するように設計されており、浮体式風力発電装置10a全体を水面Wに浮かべることができる。
図2は、浮体式風力発電装置の他の例を示す全体図である。この浮体式風力発電装置10bは、中空筒状の浮体1aに風力発電装置2を取り付けて構成される。浮体1は、ケーブル6によって水底Bに設置したアンカー7と連結されている。これにより、水面Wに浮体式風力発電装置10bを浮かべるとともに、海洋や湖の所定の水域に設置することができる。ここで説明した浮体式風力発電装置10a、10bは、浮体式風力発電装置の例であり、本発明が適用できる浮体式風力発電装置はこれらに限られるものではない。以下、浮体式風力発電装置10a、10bは、便宜上浮体式風力発電装置10として説明する。次に、浮体式風力発電装置10に作用する風と波浪との影響について説明する。
図3は、浮体式風力発電装置に作用する風と波浪との影響を示す説明図である。図4は、浮体式風力発電装置が備える風車の羽根の付け根に作用する荷重を説明する概念図である。図3に示すように、浮体式風力発電装置10は、風(Wind)による荷重(以下風荷重という)を受ける。風は、時間によって風速が変化するため、風荷重は時間とともに変化する。また、浮体式風力発電装置10は、波浪(Wave)による荷重(以下波浪荷重という)も受ける。
波浪は、波向き、波高、波周期等が時間により変化するため、波浪荷重も時間とともに変化する。このように、浮体式風力発電装置10は、波浪荷重と風荷重との変化により、これらを繰り返し受けることになる。例えば図4に示すように、浮体式風力発電装置10が備える風車の羽根3の付け根3bは、波浪荷重Faと風荷重Fbとを繰返し受ける。本発明では、以下の実施例で説明するように、波浪荷重Faと風荷重Fbとを考慮して浮体式風力発電装置10の各部の疲労強度設計をする。
実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、波浪による荷重と、風による荷重とをそれぞれ別個に作用させて求めた浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度をそれぞれ加算することにより、浮体式風力発電装置の疲労被害度を予測する点に特徴がある。図5は、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計装置を示す説明図である。浮体式風力発電装置の設計装置(以下設計装置)20は、処理部20pと記憶部20mとを備えて構成される。処理部20pと記憶部20mとは、入出力ポート(I/O)29を介して接続してある。
処理部20pは、波浪荷重処理部22と、風荷重処理部23と、DF(疲労被害度)算出部24とを含んで構成される。これらが実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法を実行する。波浪荷重処理部22と、風荷重処理部23と、DF算出部24とは入出力ポート(I/O)29に接続されており、相互にデータをやり取りできるように構成されている。また、入出力ポート(I/O)29にはデータサーバ30が接続されている。そして、浮体式風力発電装置の設計方法を実行するにあたっては、処理部20pがデータサーバ30内に格納されている各種データベースDB1、DB2等を利用できるように構成されている。
記憶部20mには、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法の処理手順を含むコンピュータプログラムや、各種データベースDB1、DB2等から取得した、浮体式風力発電装置の設計方法を実行する際に用いる材料物性等のデータが格納されている。ここで、記憶部20mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組合せにより構成することができる。また、処理部20pは、メモリ及びCPUにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、処理部20pが備える波浪荷重処理部22や風荷重処理部23等へすでに記録されているコンピュータプログラムとの組合せによって、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この設計装置20は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、処理部20pが備える波浪荷重処理部22、風荷重処理部23及びDF算出部24の機能を実現するものであってもよい。なお、この設計装置20は、コンピュータプログラムを変更することによって、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法のみならず、実施例2移以降に係る浮体式風力発電装置の設計方法を実行することもできる。次に、この設計装置20を用いて、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法を実現する手順を説明する。なお、次の説明では、適宜図3〜5を参照されたい。
図6は、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法の手順を示すフローチャートである。実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法を実行するにあたっては、風荷重及び波浪荷重の疲労被害度を求める必要があるが、いずれを先に処理してもよいし、両者を同時に処理してもよく、さらには、ある処理単位毎に、波浪荷重によるものと風荷重によるものとを交互に処理してもよい(以下の実施例でも同様)。なお、以下の説明においては、便宜上、波浪荷重を処理してから風荷重を処理する。
波浪荷重を処理するにあたり、波浪荷重処理部22は、波浪の平均周期f、有義波高h、波向きdから、波浪荷重の統計値を求め(ステップS101)、これから浮体式風力発電装置10の各部(例えばタワーの付け根部や羽根の付け根部)における応力の統計値を求める(ステップS102)。波浪荷重は、これらをパラメータとして変化するからである。ここで、統計値とは、短期海象における標準偏差である。
ある海象における波浪荷重や浮体式風力発電装置10の各部における応力の極値の分布は、レーレー分布に従う。このため、波浪の平均周期f、有義波高h、波向きdが分かれば、その波浪の条件における応力の統計値を求めることができる。そして、波浪の平均周期f、有義波高h、波向きdの発生頻度を考慮すれば、波浪による浮体式風力発電装置10の疲労被害度を求めることができる。ここで、波浪の平均周期f、有義波高h、波向きdの条件を波浪条件という。
図7−1は、ある波浪条件での浮体式風力発電装置のある部分における波浪荷重による応力を表す説明図である。図7−2は、ある波浪条件での浮体式風力発電装置のある部分における波浪荷重による応力の標準偏差を表す説明図である。波浪荷重は、平均周期f、有義波高h、波向きdをパラメータとするが、説明を簡単にするため、平均周期fと有義波高hとをパラメータとして説明する。しかし、厳密には、平均周期fと、有義波高hと、波向きdとをパラメータとして、それぞれの組合せについて応力Saやその標準偏差σaを求める。
前記ステップS101、S102において、波浪荷重処理部22は、ある平均周期fと有義波高hとの組合せ(ある波浪条件)における波浪荷重から、浮体式風力発電装置10のある部分における応力Sa及びその標準偏差σaを求める。この例では、有義波高hがk通りで、平均周期fがl通りの組合せすべてについて求める。有義波高hkで平均周期flであるときの応力Saklは、例えばその条件において有限要素法等の構造解析シミュレーションにより求めることができる。
図7−3は、ある波浪条件の確率密度を表す説明図である。図7−3は、ある有義波高で、ある平均周期の波浪が発生する頻度を表している。例えば、有義波高h1で平均周期f2の波浪が発生する確率密度はPa12であり、有義波高hkで平均周期flの波浪が発生する確率密度はPklである。すなわち、確率密度は、ある条件の波浪の発生頻度を表している。これは、ある地域における波浪条件を所定期間観測することにより、予め知ることができる。図7−3の表に示す、すべての波浪条件における確率密度Paの総和ΣPkl、すなわち、P11からPklまでをすべて加算すると、1になる。次に、波浪荷重処理部22は、浮体式風力発電装置10のある部分における応力Sa及びその標準偏差σaから、前記部分における疲労被害度を求める(ステップS103)。この手順について説明する。
図8−1は、ある波浪条件での浮体式風力発電装置のある部分における波浪荷重による応力変動を表す説明図である。図8−1では、有義波高h1で平均周期f1での波浪条件における応力振幅を示している。波浪は発生周期があるため、浮体式風力発電装置10のある部分(例えば羽根の付け根部分)における波浪荷重による応力Sa11は、図8−1に示すように時間tの経過とともに変動する。すなわち、浮体式風力発電装置10のある部分は、波浪により繰り返し応力を受けることになる。このとき、前記応力Sa11の平均値はSam11で、標準偏差はσa11で、応力振幅はΔSa11で表される。なお、標準偏差σa11は、図7−2に示す標準偏差σa11と同じものである。また、前記応力Sa11は時間とともに変化するので、応力振幅ΔSa11も時間とともに変化して、複数の値を持つ。そして、応力振幅をΔSa11は極値同士の差で表され、標準偏差と相関を持つ。
前記応力Sa11の平均値Sam11からの標準偏差はσa11が分かれば、前記応力Sa11の応力振幅ΔSa11の確率密度ρaを求めることができる。図8−2は、ある条件の波浪による応力振幅と、その確率密度との関係を示す説明図である。例えば、前記標準偏差がσa11である場合、応力Sa11の応力振幅ΔSa11と確率密度ρaとの関係は、図8−2に示すようになる。なお、確率密度ρaを、応力振幅が0〜無限大まで積分すると、その値は1になる。
図8−2に示すように、有義波高h1で平均周期f1の波浪条件において、ある応力振幅をΔsaiとすると、その応力振幅Δsaの確率密度はρa(Δsai)となる。ここから、浮体式風力発電装置10のある部分において、ある波浪条件における応力振幅Δsaiの繰り返し数n(Δsai)は、ρa(Δsai)×Nで表すことができる。ここでNは、すべての波浪条件で、浮体式風力発電装置10のある部分が、その一生の間に受ける繰返し応力の総繰り返し数である。例えば、N=1×108回程度である。
図8−3は、ある材料の応力−繰り返し数線図である。一般に材料は、ある大きさの応力振幅を繰り返し与え続けた場合、ある繰り返し数で破壊する。応力振幅と、破壊する繰り返し数との関係を表したものが応力−繰り返し数線である。応力−繰り返し数線図は、応力振幅を縦軸に、繰り返し数を横軸にとって描かれており、繰り返し数は対数表示される。
例えば、図8−2に示すΔsaiの応力振幅を与えた場合、破壊繰り返し数m(Δsai)でこの材料は破断する。有義波高h1で平均周期f1の波浪条件において応力振幅Δsaiのときの波浪による疲労被害度ΔDFaは、浮体式風力発電装置10のある部分に着目した場合、その部分に前記波浪条件における応力振幅Δsaiの繰り返し数n(Δsai)を、その部分を構成する材料が前記応力振幅Δsaiで破壊する破壊繰り返し数m(Δsai)で除した値である。すなわち、ΔDFai=n(Δsai)/m(Δsai)となる。
このΔDFaiは、応力振幅Δsaiが発生する場合についてのものである。図8−2に示すように、有義波高h1で平均周期f1の波浪条件においては、応力振幅は、発生頻度を変えながら0〜ΔSa11maxまで変化する。したがって、有義波高h1で平均周期f1の波浪条件における応力振幅Δsaiを0〜ΔSa11maxまで変化させて、それぞれの応力振幅Δsaiに対して繰り返し数n(Δsai)を求め、それぞれの繰り返し数に対してΔDFaiを求める。このΔDFaiを0〜ΔSa11maxまで加算したもの[Σ(ΔDFai)]が、有義波高h1で平均周期f1の波浪条件における疲労被害度DFa11となる。そして、すべての波浪条件(有義波高hと平均周期fとの組合せ)における、波浪による疲労被害度DFa11〜DFaklを求めるまで上記手順を繰り返す(ステップS104;No)。
すべての条件で波浪による疲労被害度DFa11〜DFaklを求めたら(ステップS104;Yes)、波浪荷重処理部22は、波浪条件の発生頻度を考慮して、波浪による疲労被害度DFaを求める。図8−4は、各波浪条件に対する疲労被害度を示す説明図である。図8−4に示す表には、有義波高h1〜hkで、平均周期f1〜flのすべての組合せに対する波浪による疲労被害度DFa11〜DFaklが求められている。
すでに説明したように、ある有義波高hで、ある平均周期fの波浪が発生する頻度は、波浪条件毎に異なる(図7−3)。このため、波浪による疲労被害度DFaの発生頻度も波浪条件によって異なる。したがって、波浪による疲労被害度(総合波浪疲労被害度)DFaを求めるためには、波浪条件の発生頻度を考慮する必要がある(ステップS105)。より具体的には、有義波高hkで、ある平均周期flの波浪が発生する確率密度Paklと、有義波高hkで、ある平均周期flの波浪による疲労被害度DFaklとを乗ずる。これを全波浪条件について求めることにより、波浪条件の発生頻度を考慮した、それぞれの波浪条件における補正疲労被害度CDFaklを求めることができる。波浪による疲労被害度DFaは、全波浪条件における補正疲労被害度CDFaklの総和なので、DFa=Σ(CDFakl)=Σ(Pakl×DFakl)で求めることができる。波浪荷重処理部22は、全波浪条件に対して上記補正疲労被害度CDFaklを求め、波浪による疲労被害度DFaを求める(ステップS106)。
ここで、波浪による疲労被害度DFaは、浮体式風力発電装置10のある部分Aの一生に着目した場合、ある波浪条件における応力振幅ΔSxの繰り返し数Nを、前記部分Aを構成する材料が前記応力振幅ΔSxで破壊する破壊繰り返し数Mで除した値N/Mである。したがって、波浪による疲労被害度DFaが1以上である場合、ある部分Aは疲労破壊することになる。浮体式風力発電装置10において、このような部分Aを浮体式風力発電装置10が持つ以上、浮体式風力発電装置10の設計としては不適格と判断する。一方、波浪による疲労被害度DFaが1よりも小さい場合、浮体式風力発電装置10の一生において、ある部分Aは疲労破壊することはない。浮体式風力発電装置10の構成部がすべてこのような部分Aであれば、浮体式風力発電装置10の一生において安全に運転できる。実際には、浮体式風力発電装置10を構成する部分の重要度やメンテナンスの頻度その他の条件を勘案して、波浪による疲労被害度DFaを設計に反映させる。
次に、風荷重について説明する。風荷重を処理するにあたり、風荷重処理部23は風荷重の時系列を得る(ステップS107)。これは、例えば、ある地域における風の観測データに基づき、時間領域で数値シミュレーションすることにより求めることができる。次に、風荷重処理部23は、求めた荷重の時系列に対する浮体式風力発電装置10を構成する部分(例えば羽根やタワー等)の応答を求める。これは、荷重の時系列に基づいて、時間領域で数値シミュレーションすることにより求めることができる。これにより、浮体式風力発電装置10を構成する各部分に作用する応力振幅の確率密度を求める(ステップS108)。
このようにして求めた応力の時系列から、平均応力及び平均応力に対する応力振幅の標準偏差を求める。なお、風荷重やこれに基づく応力の時系列は、複数の平均風速の風条件に対して求め、風による疲労被害度(総合風疲労被害度)DFbを求める際に、平均風速の発生頻度を考慮する。次に、風荷重処理部23は、風荷重に起因する応力及びその統計値に基づいて、風による疲労被害度DFbを求める。この手順を説明する。
図9−1は、平均風速Vと浮体式風力発電装置のある部分における風荷重に起因する応力Sbとの関係を表す説明図である。図9−2は、平均風速と浮体式風力発電装置のある部分における風荷重に起因する応力の標準偏差σbとの関係を表す説明図である。図9−3は、ある平均風速の発生頻度Pbを表す説明図である。風による疲労被害度DFbは、波浪による疲労被害度DFaを求める手順と同様の手順で求めることができる。
図10−1は、風による応力の時間に対する変化を示す説明図である。風は強さが変化するため、浮体式風力発電装置10のある部分における風荷重による応力Sb1は、図10−1に示すように時間tの経過とともに変動する。すなわち、浮体式風力発電装置10のある部分は、風により繰り返し応力を受けることになる。このとき、前記応力Sb1の平均値はSbm1で、標準偏差はσb1で、応力振幅はΔSb1で表される。なお、標準偏差σb1は、図9−2に示す標準偏差σb1と同じものである。
図10−2は、浮体式風力発電装置に作用する波浪による相対風速の変化を示す説明図である。浮体式風力発電装置10は、風による荷重を受けるとともに、波浪により揺動する。そして、波浪による揺動により、浮体式風力発電装置10が受ける相対風速が変動する。図10−2に示す例は、波浪による揺動により、浮体式風力発電装置10が風上方向に揺動している状態を示している。このときには、浮体式風力発電装置10がvaの速度で風上方向に動いている。風速vbに対して、浮体式風力発電装置10がvaの速度で風下方向に動いている場合、両者の速度差は(vb+va)となる。この速度差(vb+va)を相対風速vrとする。そして、相対風速vrを用いて、風荷重による応力Sbの時系列、及びその標準偏差σbを求めてもよい。このようにすれば、波浪による浮体式風力発電装置10の揺動を考慮できるので、風と波浪との相互作用をより正確に評価することができる。なお、風荷重による応力Sbの時系列及びその標準偏差σbを求める際に相対風速vrを用いることは任意に選択することができる(以下の実施例でも同様)。
応力Sb1の時系列を分析(例えばレインフロー分析)することにより、応力Sb1の応力振幅ΔSb1の確率密度ρbを求めることができる。図10−3は、ある条件の風による応力振幅と、その発生頻度との関係を示す説明図である。なお、確率密度ρbを、応力振幅が0〜無限大まで積分すると、その値は1になる。
図10−3に示すように、平均風速V1の風条件において、ある応力振幅をΔsbiとすると、その応力振幅Δsbiの発生頻度は、ρb(Δsbi)となる。ここから、浮体式風力発電装置10のある部分において、ある風条件における応力振幅Δsbiに繰り返し数n(Δsbi)は、ρb(Δsbi)×Nで表すことができる。ここでNは、すべての風条件により、浮体式風力発電装置10のある部分が、その一生の間に受ける繰返し応力の総繰り返し数である。例えば、N=2×108回程度である。
次に、図8−3に示す応力振幅−繰り返し数線図に、図10−3に示すΔsbiの応力振幅を与え、破壊繰り返し数m(Δsbi)を求める。そして、平均風速V1の風条件において応力振幅Δsbiのときの波による疲労被害度ΔDFbは、浮体式風力発電装置10のある部分に着目した場合、その部分に前記波条件における応力振幅Δsbの繰り返し数n(Δsbi)を、その部分を構成する材料が前記応力振幅Δsbで破壊する破壊繰り返し数m(Δsbi)で除した値である。すなわち、ΔDFbi=n(Δsbi)/m(Δsbi)となる。
このΔDFbiは、応力振幅Δsbiが発生する場合についてのものである。図10−3に示すように、平均風速V1の風条件において、応力振幅は、発生頻度を変えながら0〜ΔSb1maxまで変化する。したがって、平均風速V1の風条件における応力振幅を0〜ΔSb1maxまで変化させて、それぞれの応力振幅に対して繰り返し数n(Δsbi)を求め、それぞれの繰り返し数に対してΔDFbiを求める。このΔDFbiを0〜ΔSb1maxまで加算したもの[Σ(ΔDFbi)]が、平均風速V1の風条件における疲労被害度DFb1となる。すべての波条件(すべての平均風速V)における、風による疲労被害度DFb1〜DFbjを求めるまで上記手順を繰り返す(ステップS110;No)。
すべての条件で、風による疲労被害度DFb1〜DFbjを求めたら(ステップS110;Yes)、風荷重処理部23は、風条件の発生頻度を考慮して、風による疲労被害度(総合風疲労被害度)DFbを求める。図10−4は、各風条件に対する疲労被害度を示す説明図である。図10−4に示す表には、平均風速Vに対する風による疲労被害度DFb1〜DFbjが求められている。
すでに説明したように、ある平均風速Vの風が発生する頻度は、風条件毎に異なる(図9−3)。したがって、風による疲労被害度DFbを求めるためには、風条件の発生頻度を考慮する必要がある(ステップS111)。より具体的には、ある平均風速Vjの風が発生する確率密度Pbjと、ある平均風速Vjの風による疲労被害度DFbjとを乗ずる。これをすべての風条件について求めることにより、風条件の発生頻度を考慮した、それぞれの風条件における補正疲労被害度CDFbjを求めることができる。風による疲労被害度(総合風疲労被害度)DFbは、すべての風条件における補正疲労被害度CDFbjの総和なので、DFb=Σ(CDFbj)=Σ(Pbj×DFbj)で求めることができる。風荷重処理部23は、すべての風条件に対して上記補正疲労被害度CDFbjを求め、風による疲労被害度DFbを求める(ステップS112)。
波浪による疲労被害度(総合波浪疲労被害度)DFaと、風による疲労被害度(総合風疲労被害度)DFbとが求まったら、DF算出部24は、浮体式風力発電装置10の疲労被害度DFを求める。この疲労被害度DFは、浮体式風力発電装置10のある部分が、その一生の間に波浪及び風によって受ける応力振幅の総和によるものである。実施例1においては、波浪による疲労被害度(総合波浪疲労被害度)DFaと風による疲労被害度(総合風疲労被害度)DFbとの合算疲労被害度(DFa+DFb)を、浮体式風力発電装置10のある部分の疲労被害度DFとする(ステップS113)。この疲労被害度DFを浮体式風力発電装置10の各部について求め、DFが1以上であるか1未満であるかによって、浮体式風力発電装置10の各部における疲労強度を推定する。実際には、浮体式風力発電装置10を構成する部分の重要度やメンテナンスの頻度その他の条件を勘案して、疲労被害度DFを設計に反映させる。
以上、実施例1に係る浮体式風力発電装置の設計方法によれば、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響を精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる。また、風による疲労被害度と波浪による疲労被害度とをそれぞれ別個に求めて合算するので、計算を容易にできる。さらに、波浪による疲労被害度は、応力の統計値を用いて統計手法により求めるので、計算量を低減することができる。これにより、ハードウェア資源を有効に利用することができる。なお、実施例1の構成は以下の実施例においても適宜適用できる。また、実施例1と同様の構成を備える以上、実施例1の奏する作用、効果と同様の作用、効果を奏する。
実施例2に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、波浪荷重による応力のスペクトルと、風荷重による応力のスペクトルとを合算し、この合算値から応力振幅の確率密度分布を求め、これを用いて浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度を予測する点に特徴がある。実施例3において、実施例1、2と共通する部分については説明を省略するとともに、同様の構成については同一の符号を付す。次に、実施例2に係る浮体式風力発電装置の設計方法の手順について説明する。次の説明においては、適宜図1〜図3、図5を参照されたい。
図11は、実施例2に係る浮体式風力発電装置の設計方法の手順を示すフローチャートである。実施例2に係る浮体式風力発電装置の設計方法を実行するにあたり、まず、波浪と風との組合せ条件を設定する(ステップS301)。説明を簡単にするため、実施例2おいて、波浪条件と風条件との組合せについては、有義波高hと平均風速Vとの組合せで組合せ条件を設定する。なお、波浪荷重は、平均周期f、有義波高h、波向きdをパラメータとする。したがって、実際には平均周期fと、有義波高hと、波向きdとを波浪荷重のパラメータとし、これらと平均風速Vとの組合せについて、波浪による応力Sa、風による応力Sbやそれらの標準偏差σa、σbを求める。
波浪荷重処理部22は、有義波高h1〜hkまでの波浪荷重の統計値を求め(ステップS302)、これから浮体式風力発電装置10の各部(例えばタワーの付け根部や羽根の付け根部)における応力の時間に対する変化を求める。図12−1は、波浪荷重による応力の時間に対する変化の一例を示す説明図である。波浪荷重処理部22は、図12−1に示すような応力の時間に対する変化から、波浪荷重による応力スペクトルを求める(ステップS303)。
また、風荷重処理部23は、平均風速V1〜Vkまでの風荷重の時系列を求め(ステップS304)、これから浮体式風力発電装置10の各部(例えばタワーの付け根部や羽根の付け根部)における応力の時系列を求める。図12−2は、風荷重による応力の時系列の一例を示す説明図である。風荷重処理部23は、図12−2に示すような応力の時系列から、風荷重による応力スペクトルを求める(ステップS305)。
図13−1は、応力スペクトルを示す説明図である。図13−2は、応力スペクトルの合算値から求めた確率密度分布と応力振幅との関係を示す説明図である。図13−1は、有義波高h1かつ平均風速V1の条件における、振動数ωに対する応力スペクトルを示している。図13−1中の一点鎖線は、ステップS303で求めた前記条件における波浪荷重の応力スペクトルSas11である。図13−1中の破線は、ステップS305で求めた風荷重の応力スペクトルSbs11である。有義波高h1かつ平均風速V1の条件における疲労被害度を求めるにあたって、実施例3においては波浪荷重の応力スペクトルSas11と風荷重の応力スペクトルSbs11とを加算した、合算応力スペクトルSs11を用いる。このため、DF算出部24は、波浪荷重の応力スペクトルSas11と風荷重の応力スペクトルSbs11とを加算する(ステップS306)。すなわち、合算応力スペクトルSs11=Sas11+Sbs11となる。
次に、DE算出部24は、合算応力スペクトルSs11を用い、統計理論に従って応力振幅ΔS11の確率密度ρ11の分布を求める(ステップS307)。例えば、合算応力スペクトルSs11が大きなピークを持つとみなせる場合、この合算応力スペクトルSs11の応力振幅の確率密度分布はレーレー分布に従う。このような規則に基づいて、応力振幅の確率密度分布を求める。
応力振幅の確率密度分布を求めたら(ステップS307)、DE算出部24は、この確率密度分布を用いて、ある波浪条件(例えば有義波高h1)とある風条件(例えば平均風速V1)との組合せにおける、応力振幅Δsiの繰り返し数n(Δsi)を求める。この繰り返し数n(Δsi)は、確率密度ρ(Δs)×Wmで求めることができる。ここで、Wmは平均振動数であり、合算応力スペクトルSs11における振動数ωの平均値である。このように、実施例3で求めた応力振幅Δsの繰り返し数n(Δsi)は、単位時間あたりにおける繰り返し数なので、定数qを乗じることによって、浮体式風力発電装置10の一生における繰り返し数へ容易に変換できる。変換後の繰り返し数nq(Δs)は、ρ(Δsi)×Wm×qとなる。
その後、DE算出部24は、有義波高h1で平均風速V1の組合せにおける応力振幅Δsiを、材料の応力振幅−繰り返し数線図(例えば図8−3に示すもの)に与える。そして、応力振幅Δsiでこの材料が破断する破壊繰り返し数m(Δsi)を求める。この破壊繰り返し数m(Δsi)と、変換後の繰り返し数nq(Δsi)とにより、有義波高h1で平均風速V1の組合せにおいて、応力振幅Δsiのときの疲労被害度ΔDFi[=nq(Δsi)/m(Δsi)]を求める(ステップS308)。
このΔDFiは、応力振幅Δsiが発生する場合についてのものである。図13−2に示すように、有義波高h1で平均風速V1の条件においては、応力振幅Δsiは、確率密度ρ(Δs)を変えながら変化する。したがって、有義波高h1で平均風速V1の組合せにおいて発生するすべての応力振幅に対して繰り返し数n(Δsi)を求め、それぞれの繰り返し数に対してΔDFiを求める。このΔDFiをすべて加算したもの[Σ(ΔDFi)]が、有義波高h1で平均風速V1の組合せにおける疲労被害度DF11となる(ステップS309)。上記ステップS301〜ステップS309を繰り返して、すべての波浪条件及び風条件(実施例3においては有義波高hと平均風速Vとの組合せ)における疲労被害度DF11〜DFklを求める(ステップS310)。
すべての波浪及び風条件における疲労被害度DF11〜DFklを求めたら(ステップS310)、DF算出部24は、波浪条件と風条件との組合せの発生頻度を考慮して、疲労被害度DFを求める。この手法は、実施例1で説明したとおりであり、有義波高hkで平均風速Vlの条件が発生する確率密度Pklと、当該条件における疲労被害度DFklとを乗じ、これを、波浪条件と風条件とのすべての組合せについて求める。これにより、波浪及び波条件の発生頻度を考慮した、それぞれの波浪及び波条件における補正疲労被害度CDFklを求めることができる。浮体式風力発電装置10のある部分における疲労被害度DFは、すべての波浪条件及びすべての波条件における補正疲労被害度CDFklの総和なので、DF=Σ(CDFkl)=Σ(Pkl×DFkl)
で求めることができる。DF算出部24は、すべての波浪条件及びすべての波条件に対して上記補正疲労被害度CDFklを求め、浮体式風力発電装置10のある部分における疲労被害度DFを求める。これにより、波浪及び波条件の発生頻度を考慮して、浮体式風力発電装置10のある部分における疲労被害度DFを求めることができる(ステップS311)。
で求めることができる。DF算出部24は、すべての波浪条件及びすべての波条件に対して上記補正疲労被害度CDFklを求め、浮体式風力発電装置10のある部分における疲労被害度DFを求める。これにより、波浪及び波条件の発生頻度を考慮して、浮体式風力発電装置10のある部分における疲労被害度DFを求めることができる(ステップS311)。
以上、実施例2に係る浮体式風力発電装置では、風荷重による応力スペクトルと、波浪荷重による応力スペクトルとを合算し、この応力スペクトルの合算値を用いて浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度を予測する。これにより、風と波浪との相互作用をより十分に考慮できるので、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく見積もって、疲労強度設計に反映させることできる。また、風条件と海条件との組合せを予め設定するので、計算量を低減しつつ、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく見積もることができる。さらに、波浪による疲労被害度は、応力の統計値を用いて統計手法により求めるので、計算量を低減することができる。これにより、ハードウェア資源を有効に利用することができる。なお、実施例2の構成は以下の実施例においても適宜適用できる。また、実施例3と同様の構成を備える以上、実施例2の奏する作用、効果と同様の作用、効果を奏する。
実施例3に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、波浪荷重による応力変化の時系列と、風荷重による応力変化の時系列とを合算し、この応力変化合算値を用いて浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度を予測する点に特徴がある。実施例3において、実施例1〜3と共通する部分については説明を省略するとともに、同様の構成については同一の符号を付す。次に、実施例3に係る浮体式風力発電装置の設計方法の手順について説明する。次の説明においては、適宜図1〜図3、図5を参照されたい。
図14は、実施例3に係る浮体式風力発電装置の設計方法の手順を示すフローチャートである。図15−1は、波浪による応力の時間変化を示す説明図である。図15−2は、風による応力の時間変化を示す説明図である。図15−3は、波浪による応力の時間変化と風による応力の時間変化とを合算した応力の時系列を示す説明図である。まず、波浪荷重処理部22は、波浪荷重の時系列を求め(ステップS401)、これから波浪による各部の応力の時系列を求める(ステップS402)。この応力変化は、例えば、図15−1に示すようになり、平均値がSam、標準偏差がσaとなる。
次に、風荷重処理部23は、風荷重の時系列を求め(ステップS403)、これから風による各部の応力の時系列を求める(ステップS404)。この応力変化は、例えば、図15−2に示すようになり、平均値がSbm、標準偏差がσbとなる。DF算出部24は、波浪による応力変化と風による応力変化とを合算した、合算応力時系列(図15−3参照)を求める(ステップS405)。この合算応力時系列は、平均値がSmで、標準偏差がσである。DF算出部24は、この合算応力時系列を用いて、ある条件における疲労被害度DFを求める(ステップS406)。これは、例えば、上記実施例1で説明した手法を適用し、合算応力時系列を分析(例えばレインフロー分析)して、応力振幅ΔSの確率密度ρを求める。これにより、設定したある波浪条件及び風条件(例えば、ある波浪とある風との組合せ)の疲労被害度DFを求めることができる。
設定したすべての条件で疲労被害度DFを求めたら(ステップS407)、波浪及び風条件の発生頻度を考慮して、疲労被害度DFを処理し、評価する(ステップS408)。この発生頻度の考慮も、実施例1〜3で説明した方法を適用できる。
以上、実施例3に係る浮体式風力発電装置では、風荷重による応力変化の時系列と、波浪荷重による応力変化の時系列とを合算し、この応力変化の時系列の合算値を用いて浮体式風力発電装置の各部における疲労被害度を予測する。これにより、風と波浪との相互作用を十分に考慮しつつ、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響をさらに精度よく評価して、疲労強度設計に反映させることできる。なお、実施例3と同様の構成を備える以上、実施例3奏する作用、効果と同様の作用、効果を奏する。
ここで、上記実施例1〜3に係る浮体式風力発電装置の設計方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記録装置のことをいう。さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を解してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであって良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるものであってもよい。
以上のように、本発明に係る浮体式風力発電装置の設計方法及び浮体式風力発電装置の設計プログラムは、疲労設計に有用であり、特に、風と波浪とが同時に作用する環境下において両者の影響を精度よく見積もることに適している。
1、1a 浮体
2 風力発電装置
3 羽根
4 ハブ
5 タワー
7 発電機
10、10a、10b 浮体式風力発電装置
20 浮体式風力発電装置の設計装置
20p 処理部
20m 記憶部
22 波浪荷重処理部
23 風荷重処理部
24 DF算出部
2 風力発電装置
3 羽根
4 ハブ
5 タワー
7 発電機
10、10a、10b 浮体式風力発電装置
20 浮体式風力発電装置の設計装置
20p 処理部
20m 記憶部
22 波浪荷重処理部
23 風荷重処理部
24 DF算出部
Claims (6)
- 浮体式風力発電装置を設計するにあたり、
複数の波浪条件の下で、波浪による応力の統計値から波浪による疲労被害度を求めるとともに、複数の風条件の下で、風による応力の時系列から風による疲労被害度を求める手順と、
各波浪条件の発生頻度を考慮して、各波浪条件における波浪による疲労被害度をすべて加算した総合波浪疲労被害度を求めるとともに、各風条件の発生頻度を考慮して、各風条件における風による疲労被害度をすべて加算した総合風疲労被害度を求める手順と、
前記総合波浪疲労被害度と、前記総合風疲労被害度とを合算した合算疲労被害度を求める手順と、
を含むことを特徴とする浮体式風力発電装置の設計方法。 - 浮体式風力発電装置を設計するにあたり、
波浪条件と風条件との組合せを設定する手順と、
ある前記組合せにおける、波浪荷重による波浪応力スペクトルを求めるとともに、風荷重による風応力スペクトルを求める手順と、
前記波浪応力スペクトルと前記風応力スペクトルとを加算して、合算応力スペクトルを求める手順と、
前記合算応力スペクトルから、応力振幅の確率密度分布を求める手順と、
前記応力振幅の確率密度分布から、すべての前記組合せにおける疲労被害度を求める手順と、
前記組合せの発生頻度を考慮して、それぞれの前記組合せにおける疲労被害度の総和を求める手順と、
を含むことを特徴とする浮体式風力発電装置の設計方法。 - 浮体式風力発電装置を設計するにあたり、
波浪による荷重に基づいて応力変化の時系列を求めるとともに、風による荷重に基づいて応力変化の時系列を求める手順と、
前記波浪荷重による応力変化の時系列と前記風荷重による応力変化の時系列とを加算した合算応力時系列を求める手順と、
前記合算応力時系から、応力振幅の確率密度分布を求める手順と、
前記応力振幅の確率密度分布から疲労被害度を求める手順と、
波浪条件と風条件との発生頻度に応じて各条件における疲労被害度の総和を求める手順と、
を含むことを特徴とする浮体式風力発電装置の設計方法。 - さらに、前記浮体式風力発電装置が受ける風と、波浪による前記浮体式風力発電装置の揺動による動きとの速度差を算出することにより相対風速を求め、この相対風速を用いて、風による荷重を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浮体式風力発電装置の設計方法。
- 浮体式風力発電装置を設計するにあたり、風による荷重を求める際には、前記浮体式風力発電装置が受ける風と、波浪による前記浮体式風力発電装置の揺動による動きとの速度差を算出することにより求めた相対風速を用いることを特徴とする浮体式風力発電装置の設計方法。
- 前記請求項1〜5のいずれか1項に記載された浮体式風力発電装置の設計方法を、コンピュータに実行させることを特徴とする浮体式風力発電装置の設計用プログラム。
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