本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、オープン走行時に後方からウインドデフレクタを乗り越えて流入する巻き込み風を上方に偏向して当該巻き込み風が乗員に当たるのを抑制し、乗員が不快感を感じるのを防止できる、オープンカーのウインドデフレクタを提供することにある。
上記の課題を解決するにあたり、本発明は以下の様な構成としてある。すなわち、本発明の第1の構成は、
ベルトライン部より上方の部分がウインドシールドを残して取り外し若しくは折り畳み収納可能に構成された車両における、運転席及び助手席の後方に設けられたロールバー部材に固定され若しくは取り付け可能であり、上記運転席及び助手席の後方で上記ベルトライン部の上部において後方から該車両の車室内に気流が流入するのを抑制する、オープンカーのウインドデフレクタであって、
上記デフレクタが、車両後方からの気流の一部を前方に通過させる通過手段と、当該通過した気流を上記通過手段の車両前側面近傍において上方に導く気流方向変更手段と備えていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、通過手段によってデフレクタの上端よりも下方において後方からの気流を積極的に通過させることによりデフレクタの上部を乗り越えて流れ込む気流を減少させることが出来るとともに、気流方向変更手段により通過手段によってデフレクタを通過して後方から流入する気流が上方に導かれる。従って、いわゆるオープン走行中に後方から巻き込む気流が車室内、すなわちウインドデフレクタ前方に流入して乗員の頭部が位置する近辺に吹き込むのが抑制され、巻き込み風により乗員が不快感を感じるのを防止することが出来る。
本発明の第2の構成は、
ベルトライン部より上方のルーフを含む部分がウインドシールドを残して取り外し若しくは折り畳み収納可能に構成された車両における、運転席及び助手席の後方に設けられたロールバー部材に固定され若しくは取り付け可能であり、上記運転席及び助手席の後方で上記ベルトライン部の上部において後方から該車両の車室内に気流が流入するのを抑制する、オープンカーのウインドデフレクタであって、
上記デフレクタが、気流の一部が車両前方に通過可能に空気透過性を有するものであり、該デフレクタの空気透過率が、該デフレクタの下部領域に比し上部領域が高くなされていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、デフレクタを気流が通過できるとともに、デフレクタの上部を通過する気流の速度が、下部を通過する気流の速度に対し大きくなる。つまり、デフレクタを通過した気流は、運転席及び助手席の後方において上部のものが下部のものに比べ流速が速い状態となり、上部の気圧が低くなる。従って、気流全体が上方に向くため、デフレクタを乗り越える気流があっても、その気流もデフレクタを通過した気流によって上方に偏向される。従って、いわゆるオープン走行中に後方から巻き込む気流が車室内、すなわちウインドデフレクタ前方に流入して乗員の頭部が位置する近辺に吹き込むのを効果的に抑制することが出来る。尚、デフレクタの空気透過率は、デフレクタの下部から上部にかけて連続的に大きくなされていても良いし、段階的に大きくされていても良い。また、空気透過率がデフレクタ上部領域より小さくなされる下部領域は、空気を透過させない(つまり空気透過率がゼロ)ように構成しても良い。
本発明の第3の構成は、
上記ロールバー部材が、上記運転席及び助手席にそれぞれ対応して上方に突出する2つの突出部を有するものであり、上記デフレクタが、上記突出部の間に配置されていることを特徴とするものである。
デフレクタを空気透過性を有するように構成した場合、その剛性が低くなりがちであるが、上記の様にロールバーの突出部間に配置してデフレクタの車幅方向長さを小さくすることで、剛性の低くなりがちなデフレクタが巻き込み風を受けたとしても、安定してデフレクタを支持することが出来る。また、上記の構成によれば、デフレクタが、ロールバー部材の、運転席及び助手席にそれぞれ対応して上方に突出する2つの突出部の間の空間を利用して配置される。突出部は車両前後方向に厚みを有するため、突出部に挟まれた領域としていわゆるデッドスペースが生じるが、そのデッドスペースの内側にデフレクタが配置されることになり、スペース効率が高いものとなる。
本発明の第4の構成は、
上記デフレクタが、通気孔を有するボードを含むことを特徴とするものである。
ここで、空気透過性を有する素材として布などのメッシュ材が考えられ、それらを用いて上記構成のデフレクタを構成することが考えられる。しかしながら、空気透過性を有するということは、その素材自体が空気を透過させるということであり、剛性が小さくなりがちである。そのため、その様な素材を用いてデフレクタを構成した場合には、車両のオープン走行時にメッシュ材が風圧を受けてはためき、はためき音を生じる恐れがある。そこで、デフレクタとして通気孔を有するボードを含む構成とすれば、風圧によるデフレクタのはためきが防止できる、すなわちデフレクタに空気透過性を持たせることに起因して生じる剛性低下に起因した、デフレクタのはためきという問題を解決することが出来る。また、布製のメッシュ材は、空気の透過孔に対する厚みが非常に小さいため、デフレクタを通して反対側が必ず透けて見えることになる。しかも、デフレクタの上部と下部とで空気透過率が異なるため、デフレクタの上部と下部とで外観が異なり、均一に見えないことになる。
しかしながら上記の構成とすれば、ボードが必然的にある程度大きな厚みを有するため、ボードに対する視線の角度が浅くなると、通気孔を通してボードの一方側から反対側が全く見えないようになる。従って、車外からのデフレクタに対する視認角度が浅い場合であれば、可及的に通気孔を通して反対側が透けて見えることがなくなる。すなわち、デフレクタに空気透過率を異ならせる様にボードに複数の通気孔を形成した場合に生じる、デフレクタが一様な外観とならないという状態を可及的に防止することが出来る。
本発明の第5の構成は、
上記通気孔が、上記ボードに複数形成されており、上記複数の通気孔の大きさが、上記ボードの下部領域に比し上部領域が大きくなされていることを特徴とするものである。
ボードは必然的にある程度の厚みを有するため、ボードに対する視線の角度が浅くなると、通気孔を通してボードの一方側から反対側が全く見えないようになる。しかしながら上記の構成によれば、少なくともボードの上部領域は下部領域に比べて通気孔が大きいため、運転者は、デフレクタが存在しても上部領域の通気孔を通して後方を視認できる可能性が大きくなる。つまり、通気孔を用いた後方視認性の確保を行える。
本発明の第6の構成は、
上記通気孔が、上記ボードに複数形成されており、上記複数の通気孔の大きさは実質的に一定で、かつ上記通気孔の単位面積あたりの数が上記ボードの下部領域に比し上部領域が高くなされていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、ボードが必然的にある程度の厚みを有すること、及びボードに形成される複数の通気孔の大きさが実質的に同じであるため、車外からデフレクタを見た場合、ボードに対する視線の角度が浅くなると、通気孔を通してボードの一方側から反対側が全く見えないようになる。具体的には、通気孔の径が異なる場合には、大径の通気孔と小径の通気孔があるために、小径の通気孔を通して反対側が視認できなくなる角度であっても、大径の通気孔を通して反対側が見えるという状態になり、デフレクタが一様に見えないことになる。しかしながら、通気孔の径を同じに構成すれば、視線の角度がある角度になると、通気孔を通して反対側が全く見えなくなる。すなわち、デフレクタの空気透過率を異ならせる様にボードに複数の通気孔を形成した場合に生じる、デフレクタが一様な外観とならないという状態を、回避することが出来る。
本発明の第7の構成は、
上記デフレクタが、前方若しくは後方に可倒に上記ロールバー部材に取り付けられていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、例えば車両を後退させる際に運転者がデフレクタを視界の邪魔とならないように倒すことが出来る。デフレクタが上述の様に複数の通気孔を有するボードから形成した場合、ボードの厚みに起因して通気孔越しに後方の視認が行いにくい状況が生じ得るが、デフレクタを可倒に構成することで、その様な場合でも運転者は後方の視認を行い易いものとなる。
本発明の第8の構成は、
上記車両が、上記ベルトライン部より上方のルーフを含む上記部分が上記ウインドシールドを残して折り畳み収納可能に構成されており、
収納状態における上記ルーフが、上記運転席及び助手席の後方で、その外面が上方へ向くとともに、上記ルーフの車幅方向中央部を含む少なくとも一部が上記ベルトライン部の上方に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
オープンカーにおいて、ベルトラインより上方のルーフを含む部分を折り畳むにあたっては、折り畳み後の状態において、ルーフとして機能している際のルーフ外面が上面となるようにすれば、折り畳み後もルーフ外面が露出することになり、オープン時の見栄えやオープン走行中にルーフ内面(つまり車室内側の面)が汚れるのを防止できるという点で有利と考えられる。しかしながら、ルーフはその車幅方向中央部が上方に盛り上がった形状であるのが通常であるため、特にいわゆるハードルーフ形式のオープンカーにおいて上記のような折り畳み手法を採用した場合には、オープン時に運転者がリアビューミラー越しに後方を見た場合、ルーフ中央部分が上方に突出して見えることになり、見栄え上好ましいとはいえない。
しかしながら上記の構成によれば、デフレクタが通気孔を有するボードから構成され、かつ通気孔の大きさまたは単位面積当たりの数をデフレクタ上部よりも下部より大きくしているため、オープン時に、運転者リアビューミラー越しに、デフレクタ上部の通気孔を通してある程度後方を視認することが出来るとともに、デフレクタ下部により収納状態のルーフ中央部分が隠されることになり、運転者にとっての見栄えが好ましいものとなる。また、そのような効果を、走行時の後方からの巻き込み風を低減しつつ、達成することが出来る。
本発明の第9の構成は、上記デフレクタ下部後面が、意匠部とされていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、デフレクタ下部の通気孔の大きさ又は単位面積当たりの数の小さい領域が、後方見た場合に装飾効果の高いものとなる。デフレクタ下部の通気孔の大きさ又は単位面積当たりの数の小さい領域は、そもそも運転者にとってそもそも後方視認が行いにくい領域であるため、デフレクタ下部を意匠部としても、運転者にとっての後方視認上の不都合は生じない。つまり、運転者にとって支障の少ない領域を、意匠部として活用することが出来る。尚、意匠部とは、デザイン性を考慮したもの、或いは企業ロゴマークや車両モデル名などを表記したものなども含むものとする。
本発明の第10の構成は、
ベルトライン部より上方の部分がウインドシールドを残して取り外し若しくは折り畳み収納可能に構成された車両における、運転席及び助手席の後方に設けられたロールバー部材に固定され若しくは取り付け可能であり、上記運転席及び助手席の後方で上記ベルトライン部の上部において後方から該車両の車室内に気流が流入するのを抑制する、オープンカーのウインドデフレクタであって、
上記運転席及び助手席の後方で上記ベルトライン部の上部において、該ベルトライン部から所定の間隙を残して配置された第1のデフレクタ部材と、上記運転席及び助手席の後方かつ上記第1のデフレクタ部材の前方において、上記間隙を通して上記車室内に流入する気流を上方に導く第2のデフレクタ部材と、を有することを特徴とするものである。
上記の構成によれば、第1のデフレクタ部材の下部で車両のベルトライン部との間に形成された間隙に後方からの気流を積極的に通過させることにより第1のデフレクタ部材の上部を乗り越えて流れ込む気流を減少させることが出来るとともに、第1のデフレクタ部材の前方で運転席及び助手席の後方に設けられた第2のデフレクタ部材により間隙を通過して流入する気流が上方に導かれる。従って、いわゆるオープン走行中に後方から巻き込む気流が車室内、すなわちウインドデフレクタ前方に流入して乗員の頭部が位置する近辺に吹き込むのを効果的に抑制することが出来る。
本発明の第11の構成は、
上記ロールバー部材が、上記運転席及び助手席にそれぞれ対応して上方に突出する2つの突出部を有するものであり、上記第1のデフレクタ部材及び第2のデフレクタ部材が、上記突出部の間に配置されていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、第1のデフレクタ部材及び第2のデフレクタ部材が、ロールバー部材の、運転席及び助手席にそれぞれ対応して上方に突出する2つの突出部の間の空間を利用して配置される。つまり、突出部の間のいわゆるデッドスペースを利用して各デフレクタ部材が配置されることになるため、スペース効率が高いものとなる。また、各デフレクタ部材は風を受けるためある程度の剛性を確保する必要があるが、上記の様に各デフレクタ部材を配置することで、各デフレクタ部材の車幅方向長さを小さく出来、各デフレクタ部材に求められる剛性があまり大きなものとはならないため、剛性確保のための特別な構成を追加する必要が無く、デフレクタ部材の構成を簡素なものとすることが出来る。更に運転席及び助手席はベルトラインよりも上方の部分を占めるため、デフレクタ部材が無ければ後方からの気流は各座席の間、つまりロールバー部材の突出部間から車室内に流入することになるが、上記の様に第1のデフレクタ部材及び第2のデフレクタ部材を配置することで、より効果的に気流の巻き込みを抑制することが出来る。
本発明の第12の構成は、
上記ロールバー部材が、上記車両のベルトライン部と略同じ高さ位置において上記2つの突出部の間を略水平に接続する水平部を有し、上記第2のデフレクタ部材が、ロールバー部材における上記水平部の上面に接していることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、第2のデフレクタ部材とロールバー部材の水平部との間の隙間を無いものとすることが出来、第2のデフレクタ部材の機能としての第1のデフレクタ部材の下部の間隙から流入する気流の上方への偏向を、より効果的に行うことが出来る。
本発明の第13の構成は、
上記第2のデフレクタ部材が、上記ロールバー部材の少なくとも上記水平部と一体に形成されていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、第2のデフレクタ部材とロールバー部材の水平部との間の隙間を完全に無くすことが出来るとともに、第2のデフレクタ部材を、気流を上方に偏向させるのに適した形状に容易に形成することが出来るため、第2のデフレクタ部材による気流の上方への偏向をより一層効果的に行うことが出来る。
本発明の第14の構成は、
上記第1のデフレクタ部材が、気流の一部が通過可能に空気透過性を有するよう構成されていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、第1のデフレクタ部材が気流を完全には遮断せず、気流の一部に第1のデフレクタ部材を通過させることが出来るため、後方から回り込む気流のうち第1のデフレクタ部材の上部を乗り越える成分をより少なくすることが出来る。また、第1のデフレクタを通過した気流を用いて第2のデフレクタ部材により偏向された気流の向きを確実に上方に向かわせるなと、乗員の後方に流入する気流の上方への偏向が行い易いものとなる。
上述の本発明の第14の構成は、具体的には本発明の第15の構成として上記第1のデフレクタ部材をメッシュ材料のものとしたり、或いは本発明の第16の構成として通気孔を予め有する様に樹脂成形されたボードから構成することにより実現することが出来る。
本発明によれば、オープン走行時に後方からウインドデフレクタを乗り越えて流入する巻き込み風を上方に偏向して当該巻き込み風が乗員に当たるのを抑制し、乗員が不快感を感じるのを防止できる、オープンカーのウインドデフレクタを提供することが出来る。
以下、本発明の実施形態を図1乃至図15を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1乃至図5を参照しながら本発明の第1実施形態乃至第3実施形態について説明する。まず、図1乃至図3を参照しながら、第1実施形態乃至第3実施形態に共通の構成について説明する。
図1は、本発明によるウインドデフレクタを備えた車両V(オープンカー)の車室PC付近の斜視図であり、車両VのベルトラインBより上方の、ループパネルを含む部分がウインドシールドWSを残して車室PC後方に格納された、いわゆるオープン状態のものを示している。この車両Vは、2シーターのものであり、車室PC内に運転席DSと助手席PSのみを有する。なお、本明細書において、ベルトラインBとは、車両Vがオープン状態にある場合の、ドア上端部及びドアより後方にある車体部分のドア上端の高さ位置に対応する部分を指すものとする。また、本実施形態に示す車両Vはオープン状態にあるとき、ドア上端の高さ位置が運転席DS及び助手席PS後方における車体上面にほぼ一致している。更に、本明細書において、車室PCという語は、着座した乗員の頭部の位置付近を含みそれより前方かつウインドシールドWSより後方で、着座した乗員の頭部が位置する高さ付近を含みそれより低い領域を指すものとする。
運転席DSと助手席PSの後方には、ロールバー1が設けられている。ロールバー1は、運転席DS及び助手席PSにそれぞれ対応して上方に突出する突出部1D、1Pを有し、いわゆる二山型となっている。ロールバー1において突出部1D、1Pの間をほぼ水平に接続する水平部10には、車両VのベルトラインBより上方の部分において、オープン走行時に運転席DSと助手席PSの間を通過して後方から巻き込む風を偏向させることにより、巻き込み風により乗員が感じる不快感を防止するウインドデフレクタ(以下、デフレクタと称する)2がヒンジ23を介して取り付けられている。デフレクタ2は、詳細は後述するが、樹脂製のボードから構成されるとともに、後方からの巻き込み風を透過させるべく通気孔がその前面に亘って形成されている。すなわち、本発明によるデフレクタ2は、後方からの巻き込み風を透過させるべく空気透過性を有する(図1、及び後述する図2並びに図3においては通気孔の図示を省略している)。
図2は、ロールバー1とデフレクタ2の組立体の、分解斜視図である。ロールバー1は、上述したように、いわゆる運転席DS及び助手席PSにそれぞれ対応して上方に突出する2つの突出部1D、1Pを有するいわゆる二山型のものである。具体的には、車体の幅方向におけるほぼ両端に位置する脚部11、脚部11を車両VのベルトラインBの高さ位置において連結する水平部10、及び水平部10から運転席DS及び助手席PSに対応して上方に突出する突出部1D、1P、とから構成される。脚部11は、車体に強固に固定されるとともに、水平部10はその両端が車体に強固に固定される。また、水平部10及び突出部1D、1Pは、樹脂からなるトリム12により覆われている。水平部10及び突出部1D及び1Pは脚部11に連続して形成される強度部材からなるが、これらはトリム12により前後から覆われた構成となっている(トリム12により覆われた部分を破線にて示す)。すなわち、脚部11、水平部10、突出部1D及び1P、及びトリム12により、ロールバー1が構成されている。
トリム12において水平部10を覆う部分、つまりロールバー1の水平部には、上述したデフレクタ2が取り付けられる。デフレクタ2は、ヒンジ23を介してロールバー1の水平部10に取り付けられており、車両Vをいわゆるクローズド状態としたときなど、デフレクタ2を使用する必要がない場合に、前方に折り畳むことが可能に構成されている。
すなわち、本実施形態は、運転席DS及び助手席PSにそれぞれ対応して上方に突出する突出部1D、1Pを有する、いわゆる二山型のロールバーにデフレクタ2を取り付ける構成である。このように、二山型ロールバーの突出部1D、1Pの間にデフレクタ2を配置するようにしているため、車両前後方向に厚みを有する突出部1D、1Pの間に生じるいわゆるデッドスペースの内側に、スペース効率上好ましい態様で、デフレクタ2を配置することが出来るとともに、車両のベルトラインB上部の構造を開閉する際のデフレクタ2との干渉を避けることが出来る。また、巻き込み風は運転席DSと助手席PSの間を主に通過するため、その部分を流れる巻き込み風を効果的に遮断することが出来る。更に、突出部1D、1Pの間にデフレクタ2を配置することで、デフレクタ2に必要な車幅方向長さが小さいものとなる。
以下、図3を参照しながら、デフレクタ2及びデフレクタ2をロールバー1を構成する部材としてのトリム12に取り付けるためのヒンジ23の構造について説明する。デフレクタ2は、樹脂からなり、周囲の枠状部210と、その内側のボード状の本体部211を有する。枠状部210と本体部211は、成形時に一体的に形成される。また、本体部211には、その全面に亘って通気孔が形成されている(図3においては図示省略)が、これらの通気孔も、デフレクタ2の成形時に形成される。通気孔の径は、詳細は後述するが、デフレクタ2の上部に形成されたものの方が下部に形成されたものよりも大きくなされており、デフレクタ2の上部の方が気流が通過し易く(すなわち空気透過率はデフレクタ2の上部の方が大きく)なっている。それで、車両Vに取り付けられた状態では、デフレクタ2の上部の通気孔を通過した気流の方が、下部の通気孔を通過した気流よりも速度が速くなる。このようにデフレクタ2の上部を下部よりも空気透過率を大きくすることによる作用効果、及び径を異ならせた通気孔の配置については、後で具体的に説明する。尚、本明細書においては、透過後の気流の速度の大きさを、空気透過率と定義する。つまり、透過した気流の速度が大きい状態ほど、空気透過率が大きいことになる。尚、デフレクタ2は、空気透過性を有するメッシュ材などから構成することも出来るが、剛性が低いため風圧ではためきを生じる恐れがある。従って、剛性を確保するべく樹脂製のボードに通気孔を形成したものとするのが好ましい。
デフレクタ2の下端には、車幅方向に所定間隔を空けて2箇所、上方に向けて切欠212が形成されているとともに、その各切欠212を車幅方向に跨ぐように、ヒンジ23の回動軸を構成するシャフト230がそれぞれ固定されている。また、そのシャフト230を回動自在に支持する支持部231が設けられており、ロールバー1の上面、具体的にはトリム12の上面に固定される。従って、デフレクタ2がロールバー1に取り付けられた状態においては、デフレクタ2は、支持部231に支持されたシャフト230を中心に回動する。すなわち、シャフト230と支持部231によって、ヒンジ23が構成されている。
ヒンジ23は、デフレクタ2がロールバー1に取り付けられた状態において、デフレクタ2の回動を許容しつつ、デフレクタ2を略直立した状態と前方に畳まれた状態とに保持できるよう構成されている。このようなヒンジ23の構成は、サンバイザの取り付けに従来使用されているものを用いて実現することが出来る。それで、デフレクタ2は直立した状態から前方に倒された状態に回動させることが出来るため、オープン走行を行わない場合や、オープン時に車両Vを後退させる場合などにおいて、後方の視界を妨げないものとすることが出来る。尚デフレクタ2は前方に回動可能とする代わりに、後方に回動可能、或いは前方と後方の両方に回動可能に構成しても良い。
デフレクタ2に形成される通気孔213の配置の例を、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態として図4(a)乃至図4(c)に示す。図4(a)乃至図4(c)において通気孔は1つのみ図示符号213にて示す。図4(a)に示される第1実施形態は、デフレクタ2の上部2Uに形成される通気孔213の径を、下部2Lに形成されるものの径よりも大きく形成するとともに、通気孔213の配列を、その周縁部間の距離が等しくなるようにしたものである。このように通気孔213を配列することにより、通気孔213の中心間の距離を等しくなるようにした場合に比べ、通気孔213の開口面積のデフレクタ2全体の面積に対する割合が大きくなるため、デフレクタ2の使用時における通気孔213を通した視界確保が行い易いものとなる。特に、通気孔213の径が比較的大きいデフレクタ2の上部2Uを通して、後方の視界確保が行いやすくなる。
図4(b)に示される第2実施形態は、デフレクタ2の上部2Uに形成される通気孔213の径を、下部2Lに形成されるものの径よりも大きく形成するとともに、通気孔213の配列を、その中心部間の距離が等しくなるように(すなわち、単位面積当たりの通気孔213の数としては上部2Uと下部2Lで同じになるように)したものである。このように通気孔213を配列することにより、通気孔213が同時に形成されるデフレクタ2の樹脂成形において使用する型を容易に製造することが出来る。
また、上述の様に通気孔213の径の大きさを異ならせる代わりに、図4(c)に示す様に、通気孔213の径を等しくするとともに、デフレクタ2の上部2Uの通気孔213間の距離を、下部2Lの通気孔213間の距離よりも大きくなる(すなわち、単位面積当たりの通気孔の数としては上部2Uの方が下部2Lよりも大きくなるように)ように通気孔213を配列するようにしても良い(第3実施形態)。このようにすれば、デフレクタ2の本体部がある程度の厚みを有する場合に、デフレクタ2に対する視線の角度が浅くなると、通気孔213を通してデフレクタ2の一方側から反対側が全く見えないようになり、複数の通気孔213をデフレクタ2に形成した場合に生じる見栄えが一様にならないという不都合を、低減することが出来る。
空気透過性を持たせるべく通気孔をデフレクタ2に形成すると、その剛性が低くなりがちであるが、ロールバーの突出部1D、1Pの間にデフレクタ2を配置することで、デフレクタ2に必要な車幅方向長さが小さいものとなるため、デフレクタ2に剛性を高めるための特段の工夫を施すことなく、デフレクタ2が安定して支持されることになる。
次に、デフレクタ2の上部2Uを下部2Lよりも空気透過率を大きくすることによる作用効果について、図5を参照しながら説明する。図5(a)は、従来のデフレクタ9(つまり、本発明の如く径の異なる通気孔を設けて空気透過率をその上下で異ならせたデフレクタではなく、通気孔の設けられていない従来のデフレクタ)を用いたオープンカーの、オープン走行時に生じる巻き込み風Fの流れを模式的に示し、図5(b)は一例として本発明の第1実施形態によるデフレクタ2を用いたオープンカーの、オープン走行時に生じる巻き込み風の流れを模式的に示す。尚、図5(a)及び図5(b)のいずれもロールバーの図示を省略し、デフレクタが設けられる付近を図示したものである。
図5(a)に示す従来のデフレクタ9を用いた場合、デフレクタ9後方からデフレクタ9に当たる巻き込み風Fのうち、上部の成分は、デフレクタ9の上端を乗り越えて車室PC内に流入している。この成分は乗員Pの後方から乗員の耳にほぼ対応する高さを流れることになる。
一方、図5(b)に示す本発明によるデフレクタ2を用いた場合、デフレクタ2後方からデフレクタ2に当たる巻き込み風は、デフレクタ2に形成された通気孔の径がデフレクタ2上部のものの方が下部のものよりも大きいため、通気孔を通過した後の気流の速度は、上部2Uの方が下部2Lよりも大きくなる。従って、上部2Uの気流により生じる気圧低下は、下部2Lの気流により生じる気圧低下よりも大きくなり、デフレクタ2を通過した気流は、上側に気圧のより低い側に偏向することになる。また、デフレクタ2自体を気流が通過するため、デフレクタ2を乗り越える気流そのものも、減少することになる。尚この作用効果は、図4(b)に示す第2実施形態、及び図4(c)に示す第3実施形態においても同様に奏されることは言うまでもない。
すなわち、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態によるデフレクタ2によれば、デフレクタ2そのものが気流を通過させることが出来るよう構成されているとともに、気流の透過率がデフレクタ2の上部ほど大きくなされているため、後方からの巻き込み風のうちデフレクタ2を乗り越える成分自体を少なくすることが出来るとともに、デフレクタ2を通過した気流が速度差に起因する圧力差によって上方に偏向し、デフレクタ2を乗り越えた気流の成分を上方に偏向させる。従って、デフレクタ2を通過した気流及びデフレクタ2を乗り越えた気流のいずれも、車室PC内に流入することなく上方に偏向することになる。
尚、上記の説明から明らかなように、本実施形態において、デフレクタ2に形成された通気孔213が、気流を通過させる通過手段であり、デフレクタ2の上部2Uとデフレクタ2の下部2Lとで空気透過率を異ならせた構成(上部2Uの方が下部2Lよりも空気透過率が大きく設定した構成)が、気流方向変更手段である。
通気孔213を、デフレクタ使用時において後方から前方にかけて上方に向くように、デフレクタ本体部211に形成しても良い。このように構成すれば、通気孔213自体でも、通気孔213を通過する気流を上方に偏向させることが出来、通気孔213を通過した気流を上方に変更させやすくなる。更に、上記実施形態においてはデフレクタ2の上部2Uと下部2Lとで空気透過率を2段階に異ならせているが、3段階或いはそれ以上の段階に異ならせても良く、また段階的でなく連続的に異ならせても良い。
次に、図6乃至図11を参照しながら、本発明の第4実施形態について説明する。
図6は、本発明によるウインドデフレクタを備えた車両V(オープンカー)の車室PC付近の斜視図である。ウインドデフレクタを除く構成は、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態を図示した図1のものと同様であるため、図1と共通の構成については同一の図示符号を付し、詳細な説明を省略する。
ロールバー1において突出部1D、1Pの間をほぼ水平に接続する水平部10には、オープン走行時に後方から巻き込む風を偏向させて、巻き込み風により乗員が感じる不快感を防止するウインドデフレクタ21、22が取り付けられている。ウインドデフレクタ21、22は、詳細は後述するが、後方に位置する第1のデフレクタ部材21と、前方に位置する第2のデフレクタ部材22とからなるもので、両者とも空気の流れを遮断するよう構成されているとともに、それぞれ車両VのベルトラインBより上方の部分に位置する。第1のデフレクタ部材21とロールバー1との間、つまり第1のデフレクタ部材と車体のベルトラインBとの間には、所定の間隙Cが形成されている(図1には不図示)とともに、当該間隙Cに正面視でラップして、第2のデフレクタ部材22が位置しており、後方からの巻き込み風を間隙Cを積極的に通過させるとともに、その通過風を第2のデフレクタ部材22により上方に導くよう構成されている。つまり、第2のデフレクタ部材22は、第1のデフレクタ部材21の様にロールバー1との間に間隙は形成されず、ロールバー1との間隔が実質的に生じないように、ロールバー1に接して設けられている。
図7は、ロールバー1とデフレクタ21、22の組立体の、分解斜視図である。ロールバー1の構成は、図2に示すものと同様であるため、図2と同一の図示符号を付し、その詳細な説明を省略するが、第1実施形態乃至第3実施形態と同様、脚部11、水平部10、突出部1D及び1P、及びトリム12により、ロールバー1が構成されている。
トリム12において水平部10を覆う部分、つまりロールバー1の水平部には、上述したウインドデフレクタ21、22が取り付けられる。ウインドデフレクタ21、22は上述の様に第1のデフレクタ部材21と第2のデフレクタ部材22とからなるものである。第1のデフレクタ部材21、及び第2のデフレクタ部材22は、ヒンジ236、及びヒンジ235をそれぞれ介してロールバー1の水平部10に取り付けられており、車両Vをいわゆるクローズド状態としたときなど、ウインドデフレクタ21、22を使用する必要がない場合に、折り畳むことが可能に構成されている。ヒンジ236及び235は、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態と同様の構成用いて実現することが出来るため、その詳細な説明は省略する。
図8は、第1のデフレクタ部材21の、取り付け部付近の正面図である。図8に示す様に、第1のデフレクタ部材21をロールバー1に取り付けるヒンジ236は、第1のデフレクタ部材21とロールバー1との間に間隙Cを残すよう、所定の高さを有している。一方、第2のデフレクタ部材22をロールバー1に取り付けるヒンジ235は、第2のデフレクタ部材22とロールバー1との間に間隙が生じないように構成されている(図8では第2のデフレクタ部材22及びそれをロールバー1に取り付けるヒンジ235の図示を省略している)。
次に、図9を参照しながら、本発明によるデフレクタの作用について説明する。図9(a)は、従来のデフレクタ9(つまり、本発明の如く第1及び第2のデフレクタ部材ではなく、1つのデフレクタ9を車両Vのベルトライン上部に設けた場合)を用いたオープンカーの、オープン走行時に生じる巻き込み風Fの流れを模式的に示し、図9(b)は本発明によるデフレクタ21、22を用いたオープンカーの、オープン走行時に生じる巻き込み風の流れを模式的に示す。尚、図9(a)及び図9(b)のいずれもロールバーの図示を省略し、デフレクタが設けられる付近を図示したものである。
図9(a)に示す従来のデフレクタ9を用いた場合、デフレクタ9後方からデフレクタ9に当たる巻き込み風Fのうち、上部の成分は、デフレクタ9の上端を乗り越えて車室PC内に流入している。この成分は乗員Pの後方から乗員の耳にほぼ対応する高さを流れることになる。
一方、図9(b)に示す本発明によるデフレクタ21、22を用いた場合、後方に位置する第1のデフレクタ部材21とロールバー1の水平部10(図9(a)には不図示)との間に形成された間隙Cを、巻き込み風Fが通過する。すなわち、第1のデフレクタ部材21の下部を積極的に巻き込み風Fを通過させることにより、第1のデフレクタ部材21の上部を乗り越える巻き込み風成分が、減少する。
上記間隙Cを後方から通過した巻き込み風Fは、第2のデフレクタ部材22に当たり、上方に導かれる。すなわち、第2のデフレクタ部材22が間隙Cとラップするように設けられているとともに、上方に巻き込み風を偏向させる形状とされている。従って、第1のデフレクタ部材21の下部に積極的に間隙Cを形成してその間隙Cを巻き込み風Fを敢えて通過させることで、巻き込み風Fのうち第1のデフレクタ部材21を乗り越える成分を減少させた上で、間隙Cを通過した巻き込み風Fを、第2のデフレクタ部材22により上方に偏向させて乗員に当たることの無いようにするとともに、巻き込み風Fのうち第1のデフレクタ部材21を乗り越える成分があっても、その成分は第2のデフレクタ部材22により上方に偏向された気流により、車室PC内に流入することなく上方に偏向させる様にしている。すなわち、本実施形態においては、間隙Cが気流を通過させる通過手段であり、第2のデフレクタ部材22が、気流方向変更手段である。
本件発明者らの知見によれば、第1のデフレクタ部材21の下部に設けられる間隙Cの上下方向長さL1を10 mm、第2のデフレクタ部材22における、間隙Cの下端からの上下方向長さL2を50 mm、第1のデフレクタ部材21と第2のデフレクタ部材22の間隔L3を10 mmとすれば、後方からの巻き込み風Fの、第1のデフレクタ部材21の上方を乗り越える成分を低減しつつ、間隙Cを通過する風を効果的に上方に偏向することが出来ることが明らかとなっている。しかしながら、第1のデフレクタ部材21の高さや運転席DS及び助手席PSと各デフレクタ部材21、22との距離、及び/又は各デフレクタ部材21、22の形状などに依存して、上記寸法の適切な値は異なると考えられる。
上記の実施形態は、先に説明した第1実施形態乃至第3実施形態と同様、運転席DS及び助手席PSにそれぞれ対応して上方に突出する突出部1D、1Pを有する、いわゆる二山型のロールバーに第1のデフレクタ部材21及び第2のデフレクタ部材22を取り付ける構成である。このように、二山型ロールバーの突出部1D、1Pの間に第1のデフレクタ部材21及び第2のデフレクタ部材22を配置するようにしているため、車両前後方向に厚みを有する突出部1D、1Pの間に生じるいわゆるデッドスペースの内側に、スペース効率上好ましい態様で、デフレクタ21、22を配置することが出来るとともに、車両のベルトライン上部の構造を開閉する際のデフレクタ部材21、22との干渉を避けることが出来る。また、巻き込み風Fは運転席DSと助手席PSの間を主に通過するため、その部分を流れる巻き込み風Fを効果的に偏向させることが出来る。更に、突出部1D、1Pの間にデフレクタ21、22を配置することで、各デフレクタ部材21、22に必要な車幅方向長さが小さいものとなり、各デフレクタ部材21、22に求められる剛性がさほど大きなものとはならないため、各デフレクタ部材21、22を簡素に構成することが出来る。
尚、第2のデフレクタ部材22は、上述の実施形態の様にロールバー1の水平部10の上面にヒンジ235を介して取り付ける代わりに、ロールバー1のトリム12と一体に、つまりロールバー1を構成する部材と一体に成形するようにしても良い。このようにすれば、第2のデフレクタ部材22を、気流を偏向させるのに適した形状に成形しやすいものとなる。或いは、第1のデフレクタ部材21及び第2のデフレクタ部材22は、それぞれヒンジ236、235を介して折り畳み可能に構成する代わりに、取り外し可能に取り付けられるよう構成しても良い。
更に、上記の実施形態における第1のデフレクタ部材21は、空気の流れを遮断するように構成されているが、若干の通気性を有するように構成しても良い。以下にその様に第1のデフレクタ部材を構成した例について、第5実施形態及び第6実施形態として、図10及び図11をそれぞれ参照しながら説明する。
図10(a)は、第5実施形態における第1のデフレクタ部材31の、取り付け部付近の正面図である。本実施形態による第1のデフレクタ部材31は、通気性を有する布状のメッシュ材311を枠部312の内側に展張させたものから構成されている点を除き、第4実施形態と同様の構成となっている。つまり、第1のデフレクタ部材21は、ロールバー1の水平部10の上面に、ロールバー1の水平部10との間に所定の間隙Cを残して取り付けられている。また、第2のデフレクタ部材は、ロールバー1に接して設けられている(図10(a)では第2のデフレクタ部材の図示を省略する)。
図10(b)に、第5実施形態におけるオープン走行中の巻き込み風Fの流れを模式的に示す。図10(b)は、ロールバーの図示を省略し、デフレクタが設けられる付近を図示したものである。第1のデフレクタ部材31は、通気性を有するメッシュ材から主に構成されているため、図示された様に巻き込み風Fを完全には遮断せず、その一部が通過する。しかしながら、このように巻き込み風Fの一部が第1のデフレクタ部材31を通過することで、その下部の間隙Cに加えて第1のデフレクタ部材31そのものも巻き込み風Fが通過することになるため、第1のデフレクタ部材31の上部から回り込む巻き込み風Fの成分が更に小さくなる。また、その様に第1のデフレクタ部材31そのものを通過した巻き込み風Fの成分は、それ自体が流速を有することからその気流付近の気圧が下がるため、第1のデフレクタ部材31の下部の間隙Cを通過した巻き込み風Fの成分を上方に偏向させやすくなるとともに、第2のデフレクタ部材22によって確実に上方に偏向される。また、第1のデフレクタ部材21を乗り越える成分があっても、その成分は第2のデフレクタ部材22により上方に導かれた気流により上方に偏向され、車室PC内に流入することは無い。
図11(a)は、第6実施形態における第1のデフレクタ部材41の、取り付け部付近の正面図である。本実施形態による第1のデフレクタ部材41は、予め一様に所定の径を有する通気孔411が形成された樹脂プレートから構成されている点を除き、第5実施形態と同様の構成となっている。つまり、第1のデフレクタ部材41は、ロールバー1の水平部10の上面に、ロールバー1の水平部10との間に所定の間隙Cを残して取り付けられている。また、第2のデフレクタ部材は、ロールバー1に接して設けられている(図11(a)では第2のデフレクタ部材の図示を省略する。また、通気孔411は複数形成されているが、1つに対してのみ図示符号を付す)。
図11(b)に、第6実施形態におけるオープン走行中の巻き込み風Fの流れを模式的に示す。図11(b)は、ロールバーの図示を省略し、デフレクタが設けられる付近を図示したものである。第1のデフレクタ部材41は、所定の径を有する通気孔411が一様に構成されているため、第2実施形態と同様、巻き込み風Fを完全には遮断せず、その一部が通過する。しかしながら、このように巻き込み風Fの一部が第1のデフレクタ部材41を通過することで、その下部の間隙Cに加えて第1のデフレクタ部材41そのものも巻き込み風Fが通過することになるため、第1のデフレクタ部材41の上部から回り込む巻き込み風Fの成分が更に小さくなる。また、その様に第1のデフレクタ部材41そのものを通過した巻き込み風Fの成分は、それ自体が流速を有することからその気流付近の気圧が下がるため、第1のデフレクタ部材41の下部の間隙Cを通過した巻き込み風Fの成分を上方に偏向させやすくなるとともに、第2のデフレクタ部材22によって確実に上方に偏向される。また、第1のデフレクタ部材41を乗り越える成分があっても、その成分は第2のデフレクタ部材22により上方に導かれた気流により上方に偏向され、車室PC内に流入することは無い。
更に、第6実施形態においては、第1のデフレクタ部材41が必然的にある程度の厚みを有することになる。従って、通気孔411に向きを持たせる(通気孔411を通過する気流が上方を向くよう、通気孔411を第1のデフレクタ部材41の後面から前面にかけて斜め上方に向くよう構成する)ことにより、第1のデフレクタ部材41を通過する気流を上方に向けることが出来、第1のデフレクタ部材41の下部の間隙Cを通過する気流とともにより確実に上方に偏向させることが出来る。
ところで、オープンカーの形態によっては、車両のルーフを含むベルトラインBから上方の部分を後方に折り畳むに際し、折り畳み後の状態において、ルーフとして機能している際のルーフ外面が上面となるようにするものがある。このような構成とすれば、折り畳み後もルーフ外面が露出することになり、オープン時の見栄えやオープン走行中にルーフ内面(つまり車室PC側の面)が汚れるのを防止できるという点で有利と考えられる。
しかしながら、ルーフはその車幅方向中央部が上方に盛り上がった形状であるのが通常であるため、特にいわゆるハードルーフ形式のオープンカーにおいて上記のような折り畳み手法を採用した場合には、オープン時に運転者がリアビューミラー越しに後方を見た場合、ルーフ中央部分が上方に突出して見えることになり、見栄え上好ましいとはいえない。しかしながら、本発明によれば、オープン走行時の後方からの巻き込み風を抑制しつつ、上述の見栄えの悪化という問題を解決することが出来る。そのような構成について、本発明の第7実施形態として図12乃至図15を参照しながら説明する。
図12は、本発明によるウインドデフレクタを備えた車両V(オープンカー)の車室PC付近の斜視図である。ウインドデフレクタを除く構成は、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態を図示した図1のものと同様であるため、図1と共通の構成については同一の図示符号を付し、詳細な説明を省略するが、図12においては、運転者が後方を視認するのに用いるリアビューミラーRMを図示している。また、ロールバー1の構成についても、上述の第1実施形態乃至第3実施形態のものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
デフレクタ2は、図4(a)に示す、本発明の第1実施形態と同様の構成を有する。すなわち、デフレクタ2の上部2Uに比べ、デフレクタ2の下部2Lの方が、通気孔213の径を小さく構成している。
本実施形態における車両Vをオープン状態にする際の、ループパネルを含む部分の格納について、図13を参照しながら説明する。図13において、車両VのシートDS、PS、ロールバー1、及びデフレクタ2は図示を省略している。
図13(a)は、車両Vがクローズド状態にある場合を示す側面図であり、図13(d)は車両Vがオープン状態となった場合の側面図である。クローズド状態からオープン状態へは、図13(b)及び図13(c)に示す状態を順次経ていくことになる。車両Vの後部には、車両VにおいてベルトラインBより上方の部分が収納される収納部が形成されているが、図示を省略している。
図13(a)に示す様に、車両VのベルトラインBより上部の部分5は、金属製若しくは樹脂製のルーフパネル50、同じく金属製若しくは樹脂製のリアピラー部51、及びリアウインドウ52からなり、いわゆるハードルーフの形式のオープンカーとなっている。また、その後部には、不図示の収納部を上方から覆うべく、カバー53が設けられている。オープン状態とするにあたってはまずカバー53が後方に所定距離移動し、その状態で、不図示のリンク機構を介して車体に支持されたリアピラー部51が後方に回動するとともに、リアピラー部51にリンク機構54を介して接続されたルーフパネル50が後方に移動する。リアウインドウ52は、リアピラー部51から分離してリアピラー部51の内側に位置している。この状態が図13(b)に示されている。
その後、リアピラー部51が更に後方に回動して不図示の収納部に収納されるとともに、その上部にルーフパネル50がその外面を上方に向けた状態で位置する。この状態が図13(c)に示されている。その後、カバー53が前方に移動し、ベルトラインB上部の構造の収納、つまりオープン状態への移行が完了する。この状態が図13(d)に示されている。
図14に、車両Vの運転者からリアビューミラーRM越しに見た後方の視界を示す。図14(a)は、比較例としてデフレクタの全体を透明とした場合、図14(b)は本実施形態によるデフレクタ2を用いた場合を示す。デフレクタの全体を透明に構成した場合には、図14(a)に示す様に、リアビューミラーRMに、折り畳み収納されたルーフ50の上部がデフレクタ越しに映っている。一方、本実施形態によるデフレクタ2の場合には、図4(b)に示す様に、デフレクタ2の下部2Lに形成される通気孔213の径が、デフレクタ上部2Uに形成される通気孔213の径より小さく形成されているために、運転者がリアビューミラーRM越しに後方を視認した際に、後方に位置するルーフパネル50がリアビューミラーRMに映らないものとなっている。すなわち、本実施形態によれば、運転者は、デフレクタ2の上部2Uの領域については径の大きい通気孔213を介して比較的良好に後方を視認しつつ、デフレクタの下部2Lの領域については径の小さい通気孔213によって後方に位置するルーフパネル50が隠され、リアビューミラーRMに映らず、運転者にとっての見栄えを向上している。尚、この作用効果は、第1実施形態のデフレクタ2に限らず、第2実施形態又は第3実施形態によるデフレクタ2によっても、同様に達成される。
尚、デフレクタ2の下部2Lの車両後方側の面を、意匠面としても良い。すなわち、車両Vを後方から見た場合の見栄えを向上するべく、デザイン性の高いものとしたり、或いはロゴマークなどを表記するようにしても良い。デフレクタ2の下部2Lの通気孔213の大きさ又は単位面積当たりの数の小さい領域は、そもそも運転者にとってそもそも後方視認が行いにくい領域であるため、デフレクタ2の下部2Lを意匠部としても、運転者にとっての後方視認上の不都合は生じない。つまり、運転者にとって支障の少ない領域を、意匠部として活用することが出来る。ロゴマークを表記した例を、オープン状態における車両Vを後方から見た後面図である図15に示す。図15においては、通気孔の図示を省略しているが、ロゴマークなどは、通気孔213に重ねて、或いは通気孔を避けてデフレクタ2の下部2Lの後面に貼り付けられるか、或いはデフレクタ2と一体に立体成形することにより、設けることが出来る。
以上、本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでも無い。例えば、ロールバー部材は、本実施形態の如く二山型のものに限られず、座席後方で所定高さを有するものであれば、如何なるものであっても良い。また、本発明は、本実施形態の様に2シーターのオープンカーだけでなく、前後方向に複数のシート列を有する車両にも適用可能である。この場合、ロールバー及びデフレクタは最後列のシートの後方に設けられ、車室は、最後列のシートに着座した乗員の頭部の位置を含みそれより前方かつウインドシールドより後方で、当該乗員の頭部が位置する高さ付近を含みそれより低い領域となる。このような形態の車両においても、上述した実施形態と同様、オープン走行時に後方からの巻き込み風が車室内に流入するのを抑制することが出来る。